JP5631666B2 - 平版印刷版原版、及び、平版印刷版原版の製造方法 - Google Patents
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Description
<1>(成分f)イオン性重合開始剤、(成分a)顔料、(成分b)複素環を有する顔料分散剤、及び、(成分c)極性基を有する顔料分散剤を含有する感光層を親水性表面を有する支持体上に設けたことを特徴とする、平版印刷版原版、
<2>前記感光層が、(成分d)バインダーポリマー、(成分e)増感色素、及び、(成分g)ラジカル重合性化合物を更に含有する、<1>に記載の平版印刷版原版、
<3>成分aが、フタロシアニン顔料、ジオキサジン顔料、キナクリドン顔料、及び、ジケトピロロピロール顔料よりなる群から選択された少なくとも1種である、<1>又は<2>に記載の平版印刷版原版、
<4>成分bが、式(b−2)〜式(b−4)で表される基の少なくとも1つを有する、<1>〜<3>いずれか1つに記載の平版印刷版原版、
RAは、水素原子、又は、アルキル基を表し、
Y及びZは、各々独立に、−N=、−N(RB)−、−S−、又は、−O−を表し、
RBは、水素原子、又は、アルキル基を表し、
少なくともY又はZが、−N=又は−N(RB)−であり、
環A、環B、環C及び環Dは、各々独立に、芳香環を表す。
<5>成分bが、式(A−4)で表される基を有する、<4>に記載の平版印刷版原版、
<6>成分bが、重量平均分子量1,000以上100,000以下のグラフト型高分子化合物である、<1>〜<5>いずれか1つに記載の平版印刷版原版、
<7>成分cの極性基が、塩基性基である、<1>〜<6>いずれか1つに記載の平版印刷版原版、
<8>成分cの極性基が、アミノ基である、<1>〜<7>いずれか1つに記載の平版印刷版原版、
<9>成分b及び成分cの総重量に対する成分cの割合が1〜50重量%である、<1>〜<8>いずれか1つに記載の平版印刷版原版、
<10>成分fが、オニウム塩である、<1>〜<9>いずれか1つに記載の平版印刷版原版、
<11><1>〜<10>いずれか1つに記載の感光層を構成する成分を含む組成物を支持体上に塗設する工程を含むことを特徴とする、平版印刷版原版の製造方法。
以下、本発明の平版印刷版原版について詳細に説明する。なお、数値範囲を表す「X〜Y」の記載は、「X以上、Y以下」と同義であり、数値範囲の両端を含む。
イオン性重合開始剤は、後述する重合性化合物の硬化反応を開始、進行させる機能を有する。成分fは、熱により分解してラジカルを発生する熱分解型のラジカル発生剤、赤外線吸収剤の励起電子を受容してラジカルを発生する電子移動型のラジカル発生剤、又は、励起した赤外線吸収剤に電子移動してラジカルを発生する電子移動型のラジカル発生剤など、エネルギー(例えば熱又は光)を付与することでラジカルを生成させるものであって、イオン構造の化合物であればいかなる化合物を用いてもよい。例えば、オニウム塩、ボレート化合物などが好ましく、これらは併用してもよい。
Z21 -は1価の陰イオンを表す。具体的には、ハロゲン化物イオン、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、テトラフルオロボレートイオン、スルホン酸イオン、スルフィン酸イオン、チオスルホン酸イオン、硫酸イオン、カルボン酸イオンが挙げられる。中でも、安定性、反応性の面から過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、テトラフルオロボレートイオン、スルホン酸イオン、スルフィン酸イオン、カルボン酸イオンが好ましい。
Z31 -は1価の陰イオンを表す。具体例としては、ハロゲン化物イオン、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、テトラフルオロボレートイオン、スルホン酸イオン、スルフィン酸イオン、チオスルホン酸イオン、硫酸イオン、カルボン酸イオンが挙げられる。中でも安定性、反応性の面から、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、テトラフルオロボレートイオン、スルホン酸イオン、スルフィン酸イオン、カルボン酸イオンが好ましい。より好ましいものとして特開2001−343742号公報記載のカルボン酸イオン、特に好ましいものとして特開2002−148790号公報記載のカルボン酸イオンが挙げられる。
感光層は、その着色を目的として、顔料を含有する。これにより、印刷版としての製版後の画像の視認性や、画像濃度測定機適性といったいわゆる検版性を向上させることができる。顔料の具体例としては、色相的に限定されるものではなく、黒色顔料、黄色顔料、マゼンタ顔料、シアン顔料、オレンジ色顔料、褐色顔料、赤色顔料、紫色顔料、青色顔料、緑色顔料、蛍光顔料、金属粉顔料、その他、ポリマー結合色素が挙げられる。具体的には、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、ジスアゾ縮合系顔料、ジスアゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、アントアントロン系顔料、アミノアントラキノン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ペリレン及びペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、インダントロン系顔料、トリアリールカルボニウム系顔料、キナクリドン系顔料、キナクリドンキノン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、イソビオラントロン系顔料、ピラントロン系顔料、キノフタロン系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料、チオインジゴ系顔料、染付けレーキ顔料、アジン顔料、ニトロソ顔料、ニトロ顔料、天然顔料、蛍光顔料、無機顔料、カーボンブラック等が使用できる。
中でも、成分aがフタロシアニン顔料、ジオキサジン顔料、キナクリドン顔料、及びジケトピロロピロール顔料よりなる群から選択された染料であることが好ましい。
顔料としては、市販の顔料及びカラーインデックス(C.I.)便覧、「最新顔料便覧」(日本顔料技術協会編、1977年刊)、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)、「印刷インキ技術」CMC出版、1984年刊)に記載されている顔料を利用することができる。
また、上記のような検版性に加え重合禁止効果の観点から、吸収極大を500〜700nmの範囲に有する染料を用いることもできる。当該染料としては、特開2005−107389号公報の段落0013〜0017に記載のものが挙げられる。
本発明の平版印刷版原版は、感光層に(成分b)複素環を有する顔料分散剤を含有する。成分bの顔料分散剤を使用することにより、非画像部に発生する経時残膜を抑制することができ、これは従来のアミン系顔料分散剤と比較し、アルミ支持体への吸着性が抑制したためと推定している。顔料分散剤成分bとしては、主鎖又は側鎖に複素環を有する高分子化合物であることが好ましく、側鎖に複素環を有する高分子化合物がより好ましい。このような高分子化合物としては、式(b−1)で表される単量体、マレイミド、又は、マレイミド誘導体からなる単量体に由来する構成単位を含む重合体であることが好ましく、式(b−1)で表される単量体に由来する構成単位を含む重合体であることがより好ましい。
R1で表される好ましいアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシプロピル基、2−メトキシエチル基が挙げられ、中でも、水素原子又はメチル基がより好ましい。
式(b−1)中、Yに結合する第1の2価の連結基としては、置換若しくは無置換のアルキレン基、又は、チオ結合(−S−)が好ましい。該アルキレン基としては、炭素数1〜12のアルキレン基が好ましく、炭素数1〜12のアルキレン基がより好ましく、炭素数1〜8のアルキレン基が更に好ましく、炭素数1〜4のアルキレン基が特に好ましく、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基がより好ましい。アルキレン基が置換基を有する場合、該置換基としては、例えば、ヒドロキシ基等が挙げられる。
R2で表される2価の連結基としては、アルキレン基のYと結合する側とは反対側の末端において、ヘテロ原子(例えば、酸素原子、窒素原子、又は、硫黄原子)、又は、ヘテロ原子を含む部分構造と結合するものも好ましい。R2で表される2価の連結基としては、上記のアルキレン基の末端において、−O−、−S−、−C(=O)O−、−C(=O)NH−、−C(=O)S−、−NH(=O)NH−、−NHC(=O)O−、−NHC(=O)S−、−OC(=O)−、−OC(=O)NH−、及び−NHC(=O)−から選ばれるヘテロ原子又はヘテロ原子を含む部分構造を有するものが好ましく、アルキレン基の末端において、−O−、−NHC(=O)NH−、−NHC(=O)S−と結合するものがより好ましい。また、該ヘテロ原子又はヘテロ原子を含む部分構造を介してZと連結するものが好ましい。
前記炭素数が6以上である含窒素複素環を有する基としては、式(b−2)、式(b−3)又は式(b−4)で表される構造であることが好ましい。
Xは、単結合、アルキレン基(例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基など)、−O−、−S−、−NRA−、及び、−C(=O)−よりなる群から選ばれたいずれかの基を表す。ここでRAは、水素原子又はアルキル基を表す。RAがアルキル基を表す場合のアルキル基は、好ましくは炭素数1〜18のアルキル基、より好ましくは炭素数1〜6のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−オクタデシル基などが挙げられる。中でも、Xとしては、単結合、メチレン基、−O−、又は−C(=O)−が好ましく、−C(=O)−が特に好ましい。
複素環を有する高分子顔料分散剤の側鎖としては、ポリスチレン、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリカプロラクトン、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステル等により構成されるものが好適に挙げられる。なお、本発明において、「アクリル」及び「メタクリル」のいずれか又は双方を指す場合、それぞれ「(メタ)アクリル」等とも記載する。
本発明において所望により用いられる重合性オリゴマーは、オリゴマー鎖部分とその末端のエチレン性不飽和結合を有する重合可能な官能基の部分を有する。このようなエチレン性不飽和結合を有する基は、オリゴマー鎖の一方の末端にのみ有することが、所望のグラフト型高分子化合物を得るという観点から好ましい。エチレン性不飽和結合を有する基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基が好ましく、特に(メタ)アクリロイル基が好ましい。
これらのオリゴマー鎖は更に置換基を有していてもよく、導入可能な置換基としてはハロゲン原子、アルケニル基、アリール基、水酸基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アミノ基、アシルアミノ基、カルバモイル基等が挙げられる。
成分bを合成するのに有用なマクロモノマーとしては、式(b−5)で表されるマクロモノマーが好ましく挙げられる。
Y11は、置換基を有してもよいフェニル基、−COOR14、シアノ基、−CONR15R16を表す。ここで、R14は、炭素原子数1〜12のアルキル基、フェニル基又は炭素原子数7〜10のアリールアルキル基を表す。R15、R16は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基を表す。R14、R15、R16、及び、Y11がアルキル基、フェニル基を表す場合、これらは更に置換基を有してもよく、ここで導入可能な置換基としては、水酸基、アルコキシ基、ハロゲン原子が挙げられる。Y11は、好ましくは、フェニル基、シアノ基又は−COOR14であり、ここでR14は炭素原子数1〜12のアルキル基を表す。Y11は、分散安定性、現像性の点から、−COOR14、又は、シアノ基であることが最も好ましい。
成分bは、重合性オリゴマーに由来する構成単位を、1種のみ含むものであってもよいし、2種以上を含んでもよい。
前記「酸性基」として、例えば、カルボン酸基、スルホン酸基、モノ硫酸エステル基、リン酸基、モノリン酸エステル基、ホウ酸基が好ましい例として挙げられ、カルボン酸基、スルホン酸基、モノ硫酸エステル基、リン酸基、モノリン酸エステル基がより好ましく、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基が特に好ましい。
合成に用い得る酸性基を有するモノマーの例としては、カルボキシ基を有するエチレン性不飽和化合物やスルホン酸基を有するエチレン性不飽和化合物が挙げられる。
カルボキシ基を有するビニルモノマーとして、(メタ)アクリル酸、ビニル安息香酸、マレイン酸、マレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、桂皮酸、アクリル酸ダイマーなどが挙げられる。また、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどの水酸基を有する単量体と無水マレイン酸や無水フタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物のような環状無水物との付加反応物、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレートなども利用できる。また、カルボキシ基の前駆体として無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸などの無水物含有モノマーを用いてもよい。中でも、共重合性やコスト、溶解性などの観点から(メタ)アクリル酸が特に好ましい。
また、スルホン酸基を有するエチレン性不飽和化合物として、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸などが挙げられ、リン酸基を有するエチレン性不飽和化合物として、リン酸モノ(2−アクリロイルオキシエチルエステル)、リン酸モノ(1−メチル−2−アクリロイルオキシエチルエステル)などが挙げられる。
成分bは、酸性基を有するモノマーに由来する構成単位を、1種のみ含むものであってもよいし、2種以上を含んでもよい。
また、成分bの数平均分子量(Mn)は、2,500〜50,000が好ましく、5,000〜30,000がより好ましく、5,000〜15,000が更に好ましい。
成分bは、重量平均分子量1,000以上100,000以下のグラフト型高分子化合物であることが好ましい。
本発明の平版印刷版原版において、その製造に使用する塗布液中に(成分a)顔料を安定に分散するために、(成分b)複素環を有する顔料分散剤に、(成分c)極性基を有する顔料分散剤を併用する。
本発明に用いる極性基を有する顔料分散剤として、好ましくはアミノ基を有する化合物、カルボン酸基を有する化合物、スルホン酸基を有する化合物、リン酸基を有する化合物などの極性基を有する化合物が好ましい。赤外線レーザ用ネガ型感光層は、重合開始剤としてオニウム塩などの高極性化合物、また塗布液用溶媒として、親水性(重合開始剤他を溶解)と疎水性(バインダー等を溶解)の中間特性の溶媒を用いる。このような溶媒中で顔料粒子を安定に分散するには、従来の疎水性立体反発機能のみ有する分散剤に対し、極性反発機能と疎水性立体反発機能の両方の機能を有する分散剤が必須である。極性反発機能を有する基として極性基があげられ、上記のような極性基を有する化合物を用いることが好ましい。
本発明に用いる極性基を有する分散剤の極性基としては、アミノ基、アンモニウム基等の塩基性基が好ましく、アミノ基がより好ましい。
また、本発明の顔料分散物は、(成分b)複素環を有する高分子顔料分散剤、及び(成分c)極性基を有する顔料分散剤を混合して用いることが好ましい。混合する顔料分散剤は2種以上であってもよく、用いる顔料分散剤種は2〜10種が好ましく、更に好ましくは2〜4種である。
混合溶剤に顔料を分散する方法としては、インク製造やトナー製造等に用いられる公知の分散技術が使用できる。分散機としては、超音波分散器、サンドミル、アトライター、パールミル、スーパーミル、ボールミル、インペラー、デスパーザー、KDミル、コロイドミル、ダイナトロン、3本ロールミル、加圧ニーダー等が挙げられる。詳細は、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている。
以下にこれらの任意成分d、成分e及び成分gについて順次説明する。
本発明の平版印刷版原版における感光層は、バインダーポリマーを含有することが好ましい。
本発明に用いることができるバインダーポリマーの化学構造は、特に限定されないが、アルカリ性処理液への溶解性、すなわち現像性の観点から酸基を有する有機高分子が好ましく、特にカルボン酸又はその塩を含有する有機高分子がより好ましい。
本発明に用いることができるバインダーポリマーとしては、カルボン酸含有のアルカリ水可溶又は膨潤性の有機高分子が例示できる。この様な有機高分子としては、側鎖にカルボン酸基を有する付加重合体、例えば、特開昭59−44615号、特公昭54−34327号、特公昭58−12577号、特公昭54−25957号、特開昭54−92723号、特開昭59−53836号、特開昭59−71048号の各公報に記載されているもの、すなわち、メタクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体等が有用である。バインダーポリマーとして、カルボン酸(塩)基を含有する(メタ)アクリル酸エステルに由来するモノマー単位を含む共重合体が好ましい。
また、側鎖にカルボン酸基を有する酸性セルロース誘導体、ヒドロキシ基を有する付加重合体に環状酸無水物を付加させたものなども有用である。更に、特公平7−120040号、特公平7−120041号、特公平7−120042号、特公平8−12424号、特開昭63−287944号、特開昭63−287947号、特開平1−271741号、特開平11−352691号の各公報に記載のポリウレタン樹脂もアルカリ水可溶又は膨潤性バインダーとして有用である。本発明に使用できるバインダーポリマーとして、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、又は、ウレタン樹脂が好ましく用いられる。
(b)ラジカル架橋性を付与するモノマー単位としては、特に限定されないが、特開2007−248863号公報の段落0041〜0053に記載の構造が好ましく用いられる。
このようなモノマー単位としては、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸アミドに由来するモノマー単位が好ましい。特に、特開2007−272134号公報の段落0061〜0084に記載のアミド基(メタ)アクリル酸アミドに由来するモノマー単位が好ましく用いられる。このモノマーの含有量は、総モノマー単位数を100とした場合、そのうちの5〜50単位であることが好ましく、5〜35単位であることがより好ましく、5〜25単位であることが更に好ましい。
本発明の平版印刷版原版における感光層は、増感色素を含有することが好ましい。本発明に用いることができる増感色素としては、特に制限はなく、公知の増感色素を用いることができる。例えば、300〜450nmに極大吸収を有する増感色素や、500〜600nmに極大吸収を有する増感色素、750〜1,400nmに極大吸収を有する増感色素(赤外線吸収剤)を添加することで、各々、当業界で通常用いられている405nmのバイオレットレーザ、532nmのグリーンレーザ、830nmのIRレーザに対応した高感度な平版印刷版原版を提供することができる。
具体的には、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、金属チオレート錯体等の染料が挙げられる。これらの染料のうち特に好ましいものとしては、シアニン色素、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、ニッケルチオレート錯体、インドレニンシアニン色素が挙げられる。更に、シアニン色素やインドレニンシアニン色素が好ましく、特に好ましい例として下記式(a)で表されるシアニン色素が挙げられる。
この様な増感色素としては、例えば、メロシアニン色素類、ベンゾピラン類、クマリン類、芳香族ケトン類、アントラセン類、等を挙げることができる。
300nmから450nmの波長域に吸収極大を持つ増感色素のうち、高感度の観点からより好ましい色素は下記式(IX)で表される色素である。
更に、特開2005−91617号公報の段落0178〜0230、特開2005−250438号公報の段落0202〜0250、特開2005−300817号公報の段落0170〜0176、特開2007−17948号公報の段落0058〜0081、特開2007−47742号公報の段落0230〜0265、特開2007−171406号公報の段落0033〜0036、特開2007−206216号公報の段落0023〜0055、特開2007−225701号公報の段落0018〜0037、特開2007−248863号公報の段落0208〜0243、特開2007−249036号公報の段落0077〜0112、特開2007−316582号公報の段落0037〜0046、特開2007−328243号公報の段落0027〜0113に記載の増感色素も好ましく用いることができる。
前記感光層におけるこれらの増感色素の含有量は、感光層中における均一性や感光層の耐久性の観点から、感光層を構成する全固形分に対し、0.01〜50質量%であることが好ましく、0.1〜10質量%であることがより好ましく、0.5〜10質量%であることが更に好ましい。
本発明の平版印刷版原版における感光層は、重合性化合物を含有することが好ましい。
本発明における感光層に用いることができる重合性化合物は、少なくとも1個のエチレン性不飽和基を有する化合物(「エチレン性不飽和化合物」ともいう。)であり、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物、更に好ましくは2個有する化合物から選ばれる。このような化合物群は当該産業分野において広く知られるものであり、本発明においては、これらを特に限定なく用いることができる。
エチレン性不飽和化合物の例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)や、そのエステル類、アミド類が挙げられ、好ましくは、不飽和カルボン酸とアルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸とアミン化合物とのアミド類が用いられる。
また、ヒドロキシ基やアミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル又はアミド類と単官能若しくは多官能イソシアネート類又はエポキシ類との付加反応物、及び、単官能又は多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。
また、イソシアネート基や、エポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル又はアミド類と単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類又はチオール類との付加反応物、更にハロゲノ基や、トシルオキシ基等の脱離性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル又はアミド類と単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類又はチオール類との置換反応物も好適である。
また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸の代わりに、不飽和ホスホン酸、スチレン、ビニルエーテル等に置き換えた化合物群を使用することも可能である。
前記感光層における重合性化合物の含有量は、感光層の全固形分に対して、5〜75質量%であることが好ましく、15〜70質量%であることがより好ましく、25〜60質量%であることが更に好ましい。
本発明の平版印刷版原版における感光層には、更に、必要に応じて種々の添加剤を含有させることができる。
添加剤としては、現像性の促進及び塗布面状を向上させるための界面活性剤、現像性の向上やマイクロカプセルの分散安定性向上などのための親水性ポリマー、画像部と非画像部を視認するための着色剤や焼き出し剤、感光層の製造中又は保存中のラジカル重合性化合物の不要な熱重合を防止するための重合禁止剤、酸素による重合阻害を防止するための高級脂肪誘導体、画像部の硬化皮膜強度向上のための無機微粒子、現像性向上のための親水性低分子化合物、感度向上のための共増感剤や連鎖移動剤、可塑性向上のための可塑剤等を添加することができる。これらの化合物はいずれも公知のものを使用でき、例えば、特開2007−171406号、特開2007−206216号、特開2007−206217号、特開2007−225701号、特開2007−225702号、特開2007−316582号、特開2007−328243号の各公報に記載の化合物を使用することができる。
本発明の平版印刷版原版における感光層は、必要な上記各成分を溶剤に分散及び/又は溶解して塗布液を調製し、塗布して形成することができる。ここで使用する溶剤としては、イオン性重合開始剤の溶解性の観点から溶解パラメーター(SP値)が11以上の有機溶剤と、溶解パラメーター(SP値)が11未満の有機溶剤との混合溶剤が好ましい。
溶解パラメーター(SP値)が11以上の好ましい溶剤としては、メタノール(沸点65℃、SP値14.5〜14.8)、エタノール(沸点79℃、SP値12.7)、1−プロパノール(沸点97℃、SP値12.1)、2−プロパノール(沸点82℃、SP値11.5)、ベンジルアルコール(沸点205℃、SP値12.1)、N,N−ジメチルホルムアミド(沸点153℃,SP値11.9)、ジメチルスルホキシド(沸点189℃、SP値12.9)が挙げられる。
上述したSP値が11未満の有機溶剤の中で、より好ましいのは、メチルエチルケトン及び酢酸エチルである。
塗布液の固形分濃度は、1〜50質量%であることが好ましい。
また、塗布、乾燥後に得られる支持体上の感光層の乾燥塗布量(固形分)は、用途によって異なるが、0.3〜3.0g/m2が好ましい。上記範囲であると、良好な感度と感光層の良好な皮膜特性が得られる。
本発明の平版印刷版原版は、感光層における傷等の発生防止、酸素遮断、高照度レーザー露光時のアブレーション防止のため、必要に応じて、感光層の上に保護層を設けてもよい。
本発明においては、好ましくは露光を大気中で行うが、保護層は、感光層中で露光により生じる画像形成反応を阻害する大気中に存在する酸素、塩基性物質等の低分子化合物の感光層への混入を防止し、大気中での露光による画像形成反応の阻害を防止する。したがって、保護層に望まれる特性は、酸素等の低分子化合物の透過性が低いことであり、更に、露光に用いられる光の透過性が良好で、感光層との密着性に優れ、かつ、露光後の機上現像処理工程で容易に除去することができるものであることが好ましい。このような特性を有する保護層については、以前より種々検討がなされており、例えば、米国特許第3,458,311号明細書及び特公昭55−49729号公報に詳細に記載されている。また、保護層としては、特開2008−15503号、特開2008−89916号、特開2008−139813号の段落0200〜0261の各公報に記載されている保護層を好適に用いることができる。
平版印刷版原版に用いることができる支持体は、特に限定されず、寸度的に安定な板状な支持体であればよいが、親水性支持体であることが好ましく、アルミニウム板がより好ましい。
支持体としては、例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等)、前記金属がラミネートされ若しくは蒸着された紙又はプラスチックフィルム等が挙げられる。好ましい支持体としては、ポリエステルフィルム及びアルミニウム板が挙げられる。中でも、寸法安定性がよく、比較的安価であるアルミニウム板が好ましい。
アルミニウム支持体と処理方法としては、具体的には、特開2005−88300号公報に記載されているアルミニウム支持体及び処理方法が好ましく例示できる。
平版印刷版原版においては、支持体上に下塗り層(「中間層」ともいう。)を設けることが好ましい。下塗り層が用いられるときは、感光層は下塗り層の上に設けられる。下塗り層は、露光部においては支持体と感光層との密着性を強化し、また、未露光部においては、感光層の支持体からの剥離を生じやすくさせるため、現像性が向上する。
前記下塗り層としては、重合性基を含有する化合物を含むことが好ましい。
下塗り層としては、具体的には、特開平10−282679号公報に記載されている付加重合可能なエチレン性二重結合反応基を有しているシランカップリング剤、特開平2−304441号公報記載のエチレン性二重結合反応基を有しているリン化合物などが好適に挙げられる。特に好ましい化合物として、メタクリル基、アリル基などの重合性基とスルホン酸基、リン酸基、リン酸エステルなどの支持体吸着性基を有する化合物が挙げられる。重合性基と支持体吸着性基に加えてエチレンオキシド基などの親水性付与基を有する化合物も好適な化合物として挙げることができる。
下塗り層の乾燥塗布量(固形分)は、0.1〜100mg/m2であることが好ましく、1〜30mg/m2であることがより好ましい。
支持体に表面処理を施した後、又は、下塗り層を形成させた後、必要に応じて、支持体の裏面にバックコート層を設けることができる。
バックコート層としては、例えば、特開平5−45885号公報に記載されている有機高分子化合物、特開平6−35174号公報に記載されている有機金属化合物又は無機金属化合物を加水分解及び重縮合させて得られる金属酸化物からなる被覆層が好適に挙げられる。中でも、Si(OCH3)4、Si(OC2H5)4、Si(OC3H7)4、Si(OC4H9)4等のケイ素のアルコキシ化合物を用いることが、原料が安価で入手しやすい点で好ましい。
なお、バックコート層を設けた場合、本発明の平版印刷版原版の積層体における「支持体裏面」とは、バックコート層を含む。すなわち、その場合は、本発明の平版印刷版原版の積層体は、本発明の平版印刷版原版を、第3保護層とバックコート層(支持体裏面)とを直接接触させて複数枚積層してなる。
本発明の平版印刷版の製版方法は、本発明の平版印刷版原版を使用した方法であれば、特に制限はないが、平版印刷版原版を画像露光する工程(以下、「露光工程」ともいう。)、現像液により現像処理する工程(以下、「現像工程」ともいう。)を含む製版方法であることが好ましく、版面処理剤を用いて版面処理する工程(以下、「版面処理工程」ともいう。)を含む製版方法であることがより好ましい。
本発明の平版印刷版の製版方法は、平版印刷版原版を画像露光する工程、及び、現像液により現像処理する工程を含むことが好ましい。
ここで、現像処理とは、現像液により、感光層の非露光部を除去して、露光部に対応する画像を形成することをいう。
本発明に用いることができる露光光源は、感光層の態様に応じて適宜選択し得るが、350nm以上450nm以下の可視光レーザー、波長760nm以上1,200nm以下の赤外線を放射する固体レーザー及び半導体レーザーであることが好ましく、これらにより平版印刷版原版が画像露光されることが好ましい。
アルカリ水溶液の調製に用いる無機アルカリ塩としては、例えば、ケイ酸ナトリウム、同カリウム、第三リン酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、第二リン酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、炭酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、ほう酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、水酸化ナトリウム、同アンモニウム、同カリウム及び同リチウム等の無機アルカリ塩が挙げられる。
また、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、n−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、エチレンイミン、エチレンジアミン、ピリジン等の有機アルカリ剤も用いることができる。
これらのアルカリ剤は、1種単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
現像液又は補充液のpHとしては、14以下であることが好ましく、8〜13であることがより好ましく、11〜13であることが更に好ましい。
好ましい界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系及び両性界面活性剤が挙げられる。
好ましい有機溶剤としては、ベンジルアルコール等が挙げられる。また、ポリエチレングリコール若しくはその誘導体、又は、ポリプロピレングリコール若しくはその誘導体等の添加も好ましい。また、アラビット、ソルビット、マンニット等の非還元糖を添加することもできる。
本発明の平版印刷版原版の製造方法は、版面処理剤を用いて版面処理する工程を含むことが好ましい。
版面処理剤の使用態様は、特に制限されるものではないが、自動ガム塗布機などを使用すると、均一に塗布することができ、好ましい。
版面処理剤による処理は、現像工程の後、無水洗で直ちに行うこともできるし、現像処理後(水洗工程、流水循環水洗あるいは少量の塗りつけ水洗を含む。)あるいは界面活性剤を含有するリンス液で処理した後に行うこともできる。
本発明に用いることができるガム液は、特に限定なく、公知のものが使用できるが、水溶性高分子化合物や界面活性剤が含まれていることが好ましい。
ガム液における水溶性高分子化合物としては、特に限定はなく、大豆多糖類、変性澱粉、アラビアガム、デキストリン、繊維素誘導体(例えばカルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、メチルセルロース等)及びその変性体、プルラン、ポリビニルアルコール及びその誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド及びアクリルアミド共重合体、ビニルメチルエーテル/無水マレイン酸共重合体、酢酸ビニル/無水マレイン酸共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体等が挙げられる。
界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアリールエーテルスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキル硫酸エステル塩類及びアルキルナフタレンスルホン酸塩類等のアニオン系界面活性剤;アルキルアミン塩類、第四級アンモニウム塩類、ポリオキシエチレンアルキルアミン塩類、ポリエチレンポリアミン誘導体などカチオン系界面活性剤;ソルビトール及び/又はソルビタン脂肪酸エステルのエチレンオキサイド付加物、ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物、ジメチルシロキサン−エチレンオキサイドブロックコポリマー、ジメチルシロキサン−(プロピレンオキサイド−エチレンオキサイド)ブロックコポリマー、多価アルコールの脂肪酸エステル等のノニオン系界面活性剤;アルキルジメチルアミンオキシド、アルキルベタイン、アルキルアミノ脂肪酸ナトリウム等の両性界面活性剤が挙げられる。
また本発明では、保護層の除去、現像処理及びガム液処理を1浴で行うことも好ましい。
このような自動処理においては、各処理液に処理量や稼働時間等に応じてそれぞれの補充液を補充しながら処理することができる。また、実質的に未使用の処理液で処理するいわゆる使い捨て処理方式も適用できる。このような処理によって得られた平版印刷版はオフセット印刷機に掛けられ、多数枚の印刷に用いられる。
〔合成例1:重合体No.1の合成〕
M−11 10.0部、末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレート〔数平均分子量6,000:AA−6:東亞合成(株)製、表1中に(MM−1)と記載〕75.0部、メタクリル酸15.0部、及び1−メトキシ−2−プロパノール334.0部を、窒素置換した三口フラスコに導入し、撹拌機(新東科学(株):スリーワンモータ)にて撹拌し、窒素をフラスコ内に流しながら加熱して90℃まで昇温した。
これに、2、2−アゾビス(2、4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業(株)製の「V−65」)を0.5部加え、90℃にて2時間加熱撹拌を行った。2時間後、更にV−65を0.5部加え、3時加熱撹拌の後、メチルメタクリレート、メタクリル酸由来の主鎖に、MM−1由来の側鎖を有するグラフト型高分子化合物(重合体No.1)の30%溶液を得た。
得られた高分子化合物(重合体No.1)の重量平均分子量をポリスチレンを標準物質としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)により測定した結果、20,000であった。
また、水酸化ナトリウムを用いた滴定によれば、固形分あたりの酸価は、98mgKOH/gであった。
・MM−3:末端メタクリロイル化メチルメタクリレート・アクリロニトリル共重合体(60/40質量%)(数平均分子量 5,000)
・MAA:メタクリル酸
〔顔料分散物の調製〕
C.I.ピグメントブルー15:6 15.0部に、下記表2に記載の分散剤7.5部、溶媒としてメチルエチルケトン31.0部、メタノール15.5部、1−メトキシ−2−プロパノール31.0部の合計100部を混合し、ダイノミルで30分間分散し、顔料分散物(No.1)の顔料分散物を調製した。
顔料分散物2〜10は、表2に記載の顔料、分散剤に変更した以外は実施例1と同様にして、顔料分散物を調製した。表2における各成分の仕込量は、実施例1の各成分と同量である。
・アジスパーPB822:ポリアリルアミン/ポリカプロラクトン顔料分散剤(味の素ファインテクノ(株)製)
・ヒノアクトT−8000:ポリアルキレンポリアミン系分散剤(川研ファインケミカル(株)製)
・表2に記載の染料(エチルバイオレットEV−1)の構造について下記に示す。
<表面処理>
表面処理は、以下の(a)〜(j)の各種処理を連続的に行った。なお、各処理及び水洗の後には、ニップローラで液切りを行った。
(a)機械的粗面化処理
図1に示したような装置を使って、比重1.12の研磨剤(パミス)と水との懸濁液を研磨スラリー液としてアルミニウム板の表面に供給しながら、回転するローラ状ナイロンブラシにより機械的粗面化処理を行った。図1において、21はアルミニウム板、22及び24はローラ状ブラシ、23は研磨スラリー液、25、26、27及び28は支持ローラである。研磨剤の平均粒径は30μm、最大粒径は100μmであった。ナイロンブラシの材質は6・10ナイロン、毛長は45mm、毛の直径は0.3mmであった。ナイロンブラシはφ300mmのステンレス製の筒に穴をあけて密になるように植毛した。回転ブラシは3本使用した。ブラシ下部の2本の支持ローラ(φ200mm)の距離は300mmであった。ブラシローラはブラシを回転させる駆動モータの負荷が、ブラシローラをアルミニウム板に押さえつける前の負荷に対して7kWプラスになるまで押さえつけた。ブラシの回転方向はアルミニウム板の移動方向と同じであった。ブラシの回転数は200rpmであった。
(b)アルカリエッチング処理
上記で得られたアルミニウム板を苛性ソーダ濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%、温度70℃の水溶液を用いてスプレーによるエッチング処理を行い、アルミニウム板を10g/m2溶解した。その後、スプレーによる水洗を行った。
(c)デスマット処理
温度30℃の硝酸濃度1質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む。)で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後、スプレーで水洗した。デスマット処理に用いた硝酸水溶液は、硝酸水溶液中で交流を用いて電気化学的粗面化処理を行う工程の廃液を用いた。
(d)電気化学的粗面化処理
60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的粗面化処理を行った。このときの電解液は、硝酸10.5g/L水溶液(アルミニウムイオンを5g/L、アンモニウムイオンを0.007質量%含む。)、液温50℃であった。交流電源波形は図2に示した波形であり、電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが0.8msec、duty比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。
電流密度は電流のピーク値で30A/dm2、電気量はアルミニウム板が陽極時の電気
量の総和で220C/dm2であった。補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流さ
せた。その後、スプレーによる水洗を行った。
(e)アルカリエッチング処理
アルミニウム板を苛性ソーダ濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%の水溶液を用いてスプレーによるエッチング処理を32℃で行い、アルミニウム板を0.50g/m2溶解し、前段の交流を用いて電気化学的粗面化処理を行ったときに生成した水
酸化アルミニウムを主体とするスマット成分を除去し、また、生成したピットのエッジ部分を溶解してエッジ部分を滑らかにした。その後、スプレーによる水洗を行った。
(f)デスマット処理
温度30℃の硝酸濃度15質量%水溶液(アルミニウムイオンを4.5質量%含む。)で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後、スプレーで水洗した。デスマットに用いた硝酸水溶液は、硝酸水溶液中で交流を用いて電気化学的粗面化処理を行う工程の廃液を用いた。
(g)電気化学的粗面化処理
60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的粗面化処理を行った。このときの電解液は、塩酸5.0g/L水溶液(アルミニウムイオンを5g/L含む。)、温度35℃であった。交流電源の波形は、電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが0.8msec、duty比1:1、台形の炬形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。
電流密度は電流のピーク値で25A/dm2、電気量はアルミニウム板が陽極時の電気
量の総和で50C/dm2であった。その後、スプレーによる水洗を行った。
(h)アルカリエッチング処理
アルミニウム板を苛性ソーダ濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%の水溶液を用いてスプレーによるエッチング処理を32℃で行い、アルミニウム板を0.10g/m2溶解し、前段の交流を用いて電気化学的粗面化処理を行ったときに生成した水
酸化アルミニウムを主体とするスマット成分を除去し、また、生成したピットのエッジ部分を溶解してエッジ部分を滑らかにした。その後、スプレーによる水洗を行った。
(i)デスマット処理
温度60℃の硫酸濃度25質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む。)で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後、スプレーによる水洗を行った。
(j)陽極酸化処理
陽極酸化装置(第一及び第二電解部長各6m、第一及び第二給電部長各3m、第一及び第二給電極部長各2.4m)を用いて陽極酸化処理を行った。第一及び第二電解部に供給した電解液としては、硫酸を用いた。電解液は、いずれも、硫酸濃度50g/L(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)、温度20℃であった。その後、スプレーによる水洗を行った。
処理を施したアルミニウム支持体上に塗布して、乾燥した。
<中間層塗布液(B)>
・下記構造の高分子化合物A(重量平均分子量:3万) 0.017部
・メタノール 9.00部
・水 1.00部
下記感光層形成用塗布液1を調製し、上記のように形成された下塗り層上(中間層上)にワイヤーバーを用いて塗布した。乾燥は、温風式乾燥装置にて125℃で34秒間行った。乾燥後の被覆量は1.0g/m2であった。
・赤外線吸収剤(IR−1:下記構造式) 0.038部
・重合開始剤A(S−1:下記構造式) 0.061部
・重合開始剤B(I−1:下記構造式) 0.094部
・メルカプト化合物(E−1:下記構造式) 0.015部
・重合性化合物(A−BPE−4:下記構造式)(商品名:A−BPE−4 新中村化学工業(株)) 0.425部
・バインダーポリマーA(B−1:下記構造式) 0.311部
・バインダーポリマーB(B−2:下記構造式) 0.250部
・バインダーポリマーC(B−3:下記構造式) 0.062部
・添加剤(増感助剤)(T−1:下記構造式) 0.079部
・重合禁止剤(Q−1:下記構造式) 0.0012部
・顔料分散物2 0.137部
・フッ素系界面活性剤(メガファックF−780−F 大日本インキ化学工業(株)、メチルイソブチルケトン(MIBK)30質量%溶液) 0.0081部
・メチルエチルケトン(MEK) 6.000部
・メタノール(MA) 3.000部
・1−メトキシ−2−プロパノール(MFG) 6.000部
実施例2〜7、比較例1〜8は、表3に記載の顔料分散物、混合溶剤種に変更した以外は実施例1と同様にして、感光層形成用塗布液を調製した。表3における各成分の仕込量は、実施例1の各成分と同量である。
形成された感光層上に、合成雲母(ソマシフMEB−3L、3.2%水分散液、コープケミカル(株)製)、ポリビニルアルコール(ゴーセランCKS−50:ケン化度99モル%、重合度300、スルホン酸変性ポリビニルアルコール、日本合成化学工業(株)製)、界面活性剤A(エマレックス710、日本エマルジョン(株)製)、及び、界面活性剤B(アデカプルロニックP−84、(株)ADEKA製)の混合水溶液(下部保護層形成用塗布液)をワイヤーバーで塗布し、温風式乾燥装置にて125℃で30秒間乾燥させた。
この混合水溶液(下部保護層形成用塗布液)中の合成雲母(固形分)/ポリビニルアルコール/界面活性剤A/界面活性剤Bの含有量割合は、7.5/89/2/1.5(質量%)であり、塗布量は(乾燥後の被覆量)は0.5g/m2であった。
下部保護層上に、有機フィラー(アートパールJ−7P、根上工業(株)製)、合成雲母(ソマシフMEB−3L、3.2%水分散液、コープケミカル(株)製)、ポリビニルアルコール(L−3266:ケン化度87モル%、重合度300、スルホン酸変性ポリビニルアルコール日本合成化学工業(株)製)、増粘剤(セロゲンFS−B、第一工業製薬(株)製)、及び、界面活性剤(日本エマルジョン(株)製、エマレックス710)の混合水溶液(上部保護層形成用塗布液)をワイヤーバーで塗布し、温風式乾燥装置にて125℃で30秒間乾燥させた。
この混合水溶液(上部保護層形成用塗布液)中の有機フィラー/合成雲母(固形分)/ポリビニルアルコール/増粘剤/界面活性剤の含有量割合は、4.8/2.9/69.0/19.0/4.3(質量%)であり、塗布量は(乾燥後の被覆量)は1.2g/m2であった。
保護層を設けた側と反対の面には以下のバックコート塗布液組成物をワイヤーバー塗布し、100℃70秒間乾燥し、有機高分子化合物を含むバックコート層を得た。塗布量は0.46g/m2であった。
・テトラエトキシシラン 2.17部
・ジブチルマレイン酸エステル 0.16部
・ピロガロール樹脂(重量平均分子量3,000:下記構造式) 0.16部
・メガファックF−780−F(DIC(株)製) 0.005部
・メチルエチルケトン 22.5部
・1−メトキシ−2−プロパノール 2.5部
前記した実施例、及び比較例の感光層形成用塗布液を調製後、25℃で1時間撹拌を行い、撹拌終了後の開始剤の溶解性を評価した。開始剤が溶解し、残渣が見られないものを○、開始剤が溶解せず、残渣が見られるものを×と評価した。
前記した実施例、及び比較例の感光層形成用塗布液を25℃,5日間静置し、調液直後の液と5日間静置後の上澄み液との顔料由来の吸光度の差を測定し、顔料沈降性を評価した。吸光度測定は吸光度測定器 日立ハイテクノロジー(株)製 U−3010を使用し、顔料由来の波長600nmの吸光度値を使用し、評価を行った。吸光度測定液は塗布液を1cc採取し、MEKで500倍希釈後の液を用いた。評価は1〜5段階で行い、3が実用下限レベル、2以下は実用不可レベルとした。
5:調液直後と5日後上澄み液吸光度差0〜1%
4:調液直後と5日後上澄み液吸光度差1〜5%
3:調液直後と5日後上澄み液吸光度差5〜10%
2:調液直後と5日後上澄み液吸光度差10〜30%
1:調液直後と5日後上澄み液吸光度差30〜100%
現像して得られた各平版印刷版の画像部濃度を、マクベス反射濃度計RD−918を使用し、該濃度計に装備されている赤フィルターを用いてシアン濃度を測定した。測定した濃度が0.9を得るのに必要な露光量の逆数を感度の指標とし表3に記載した。なお、評価結果は、実施例1で得られた平版印刷版の感度を100とし、他の平版印刷版の感度はその相対評価とした。値が大きいほど、感度が優れていることになる。
室温自然経時6ヶ月経過した各平版印刷版を現像し、非画像部をマイクロスコープ(KEYENCE VHX−100F)により1,000倍で観察することにより、経時により発生する微小残膜の観察を行った。その結果を表3に記載した。評価は1〜5の官能評価で行い、3が実用下限レベル、2以下は実用上不可レベルとした。評価基準は下記の通りである。
5:観察視野に微小残膜なし
4:観察視野に微小残膜2〜5個
3:観察視野に微小残膜5〜20個
2:観察視野に微小残膜20〜100個
1:観察視野に微小残膜100個以上
更に、顔料分散剤成分b、及び成分cの総重量に対する成分cの割合を最も好ましい範囲である5〜20重量%にすることにより、塗布液中の顔料沈降安定性を維持し、微小残膜抑制性能がより向上することがわかる。
これに対し、顔料分散剤成分bのみを使用したものは、残膜抑制に対し有効であるが、顔料沈降安定性に乏しく、また、成分cのみを使用したものは、顔料沈降安定性に対し有効であるが、微小残膜が発生する。また、SP値11以上である溶剤を使用しない塗布液を作成することにより、顔料沈降性は大幅良化するが、イオン性重合開始剤溶解性が劣化する。
22,24:ローラ状ブラシ
23:研磨スラリー液
25,26,27,28:支持ローラ
Claims (11)
- (成分f)イオン性重合開始剤、(成分a)顔料、(成分b)複素環を有する顔料分散剤、及び、(成分c)極性基を有する顔料分散剤を含有する感光層を親水性表面を有する支持体上に設け、
成分bが、式(b−2)〜式(b−4)で表される基の少なくとも1つを有し、
成分cの極性基が、塩基性基であることを特徴とする、
平版印刷版原版。
R A は、水素原子、又は、アルキル基を表し、
Y及びZは、各々独立に、−N=、−N(R B )−、−S−、又は、−O−を表し、
R B は、水素原子、又は、アルキル基を表し、
少なくともY又はZが、−N=又は−N(R B )−であり、
環A、環B、環C及び環Dは、各々独立に、芳香族環を表す。 - 前記感光層が、(成分d)バインダーポリマー、(成分e)増感色素、及び、(成分g)ラジカル重合性化合物を更に含有する、請求項1に記載の平版印刷版原版。
- 成分aが、フタロシアニン顔料、ジオキサン顔料、キナクリドン顔料、及び、ジケトピロロピロール顔料よりなる群から選択された少なくとも1種である、請求項1又は2に記載の平版印刷版原版。
- 成分bが、式(b−4)で表される基を有する、請求項1〜3いずれか1つに記載の平版印刷版原版。
- 式(b−4)におけるY及びZのいずれか一方が−N=であり、他方が−NHである、請求項4に記載の平版印刷版原版。
- 成分bが、重量平均分子量1,000以上100,000以下のグラフト型高分子化合物である、請求項1〜5いずれか1つに記載の平版印刷版原版。
- 成分bが、末端にエチレン性不飽和結合を有する重合性オリゴマーに由来する構成単位を含む、請求項6に記載の平版印刷版原版。
- 成分cの極性基が、アミノ基である、請求項1〜7いずれか1つに記載の平版印刷版原版。
- 成分b及び成分cの総重量に対する成分cの割合が1〜50重量%である、請求項1〜8いずれか1つに記載の平版印刷版原版。
- 成分fが、オニウム塩である、請求項1〜9いずれか1つに記載の平版印刷版原版。
- 請求項1〜10いずれか1つに記載の感光層を構成する成分を含む組成物を支持体上に塗設する工程を含むことを特徴とする、平版印刷版原版の製造方法。
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