JP5598640B1 - 静電荷像現像用トナー - Google Patents
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Abstract
Description
R1−COO−R2 式(1)
(上記式(1)中、R1は炭素数15〜21の直鎖アルキル基を示し、R2は炭素数16〜22の直鎖アルキル基を示す。)
本発明のトナーは、結着樹脂、着色剤、軟化剤、及び特定の定着助剤を含有する着色樹脂粒子、並びに外添剤を含有する。
以下、本発明に使用される着色樹脂粒子の製造方法、当該製造方法により得られる着色樹脂粒子、当該着色樹脂粒子を用いた本発明のトナーの製造方法及び本発明のトナーについて、順に説明する。
一般に、着色樹脂粒子の製造方法は、粉砕法等の乾式法、並びに乳化重合凝集法、懸濁重合法、及び溶解懸濁法等の湿式法に大別され、画像再現性等の印字特性に優れたトナーが得られ易いことから湿式法が好ましい。湿式法の中でも、ミクロンオーダーで比較的小さい粒径分布を持つトナーを得やすいことから、乳化重合凝集法、及び懸濁重合法等の重合法が好ましく、重合法の中でも懸濁重合法がより好ましい。
(A−1)重合性単量体組成物の調製工程
まず、重合性単量体、着色剤、軟化剤、及び定着助剤、さらに必要に応じて添加される帯電制御剤等のその他の添加物を混合し、重合性単量体組成物の調製を行う。重合性単量体組成物を調製する際の混合には、例えば、メディア式分散機を用いて行う。
本発明では、架橋性の重合性単量体を、モノビニル単量体100質量部に対して、通常、0.1〜5質量部、好ましくは0.3〜2質量部の割合で用いることが望ましい。
マクロモノマーは、モノビニル単量体100質量部に対して、好ましくは0.03〜5質量部、さらに好ましくは0.05〜1質量部用いる。
なお、共重合体の酸価は、日本工業標準調査会(JICS)制定の規準油脂分析手法である、JIS K 0070に準拠して測定される値である。
共重合体の重量平均分子量(Mw)が6,000未満である場合には、重量平均分子量が小さすぎるため、耐熱保存性、耐久性が悪化する。一方、共重合体の重量平均分子量(Mw)が50,000を超える場合には、重量平均分子量が大きすぎるため、低温定着性が悪化する。
溶離液:THF
流量:0.5〜3.0mL/min
温度:25〜50℃
共重合体のガラス転移温度が60℃未満である場合には、ガラス転移温度が低すぎるため、後述する比較例4に示すように、耐熱保存性に乏しい。一方、共重合体のガラス転移温度が85℃を超える場合には、低温定着性が悪化する。
上記共重合体のガラス転移温度Tgは、例えば、ASTM D3418−82に準拠して求めることができる。具体的には、示差走査熱量計(セイコー電子工業社製:SSC5200)等を用いて共重合体試料を昇温速度10℃/分で昇温し、その過程で得られたDSC曲線の最大級熱ピークを示す温度をガラス転移温度とすることができる。
上記4種類の単量体単位の比は、共重合体合成時のアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリル酸、及びメタクリル酸の添加量の質量比により調節することができる。当該添加量の質量比としては、例えば、(アクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステル):(アクリル酸及び/又はメタクリル酸)=(99〜99.95):(0.05〜1)であってもよく、(アクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステル):(アクリル酸及び/又はメタクリル酸)=(99.4〜99.9):(0.1〜0.6)であることが好ましく、(アクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステル):(アクリル酸及び/又はメタクリル酸)=(99.5〜99.7):(0.3〜0.5)であることが更に好ましい。なお、これら重合性単量体の内、アクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルは、本発明の効果を損なわない範囲で、前記結着樹脂を構成するモノビニル単量体に例示されているスチレン誘導体、ニトリル化合物及びアミド化合物等のその他の単量体で置換されても良い。その割合は、アクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルの総添加量の10質量%以下、好ましくは2質量%以下であり、置換されないことが好ましい。
共重合体の当該添加量が0.5質量部未満である場合には、共重合体の添加量が少なすぎるため、上述した本発明の効果、すなわち、耐熱保存性及び低温定着性のバランスに優れ、且つ、幅広い温度及び湿度環境下において優れた印字耐久性を発揮できる効果を十分享受できないおそれがある。また、共重合体の当該添加量が4質量部を超える場合には、低温定着性が低下するおそれがある。
共重合体の添加量は、結着樹脂100質量部に対して1.0〜3.5質量部であることがより好ましく、1.5〜3.0質量部であることが更に好ましい。
まず、反応容器内に溶媒を適宜加え、反応容器内を不活性雰囲気に置換した後、昇温し、原料モノマーであるアクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステル、並びに、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を反応容器に加える。このとき、重合開始剤を共に加えることが好ましい。また、原料モノマー及び重合開始剤の混合物を、反応容器内に徐々に滴下することが好ましい。
次に、重合反応が進行する温度まで昇温し、重合を開始する。重合終了後、適宜溶媒を留去することにより、所望の共重合体が得られる。
ブラック着色剤としては、例えば、カーボンブラック、チタンブラック、並びに酸化鉄亜鉛、及び酸化鉄ニッケル等の磁性粉等を用いることができる。
R1−COO−R2 式(1)
上記式(1)中、R1は炭素数15〜21の直鎖アルキル基を示し、R2は炭素数16〜22の直鎖アルキル基を示す。R1及びR2は同じ基であってもよいし、互いに異なる基であってもよい。式(1)に示すモノエステル化合物において、原料脂肪酸における炭素数(すなわちR1の炭素数に1を加えた炭素数)と、原料アルコールにおける炭素数(すなわちR2の炭素数)との差は、0〜6であることが好ましく、4〜6であることがより好ましい。
モノエステル化合物の融点は、63〜72℃であることがより好ましく、65〜70℃であることがさらに好ましい。
軟化剤の含有量は、着色樹脂粒子100質量部に対して、より好ましくは12〜22質量部であり、さらに好ましくは15〜20質量部である。
上記モノエステル化合物は、上述した酸価及び水酸基価の条件をいずれも満たすことがより好ましい。
帯電制御剤としては、一般にトナー用の帯電制御剤として用いられているものであれば、特に限定されないが、帯電制御剤の中でも、重合性単量体との相溶性が高く、安定した帯電性(帯電安定性)をトナー粒子に付与させることができることから、正帯電性又は負帯電性の帯電制御樹脂が好ましく、さらに、正帯電性トナーを得る観点からは、正帯電性の帯電制御樹脂がより好ましく用いられる。
正帯電性の帯電制御剤としては、ニグロシン染料、4級アンモニウム塩、トリアミノトリフェニルメタン化合物及びイミダゾール化合物、並びに、好ましく用いられる帯電制御樹脂としてのポリアミン樹脂、並びに4級アンモニウム基含有共重合体、及び4級アンモニウム塩基含有共重合体等が挙げられる。
負帯電性の帯電制御剤としては、Cr、Co、Al、及びFe等の金属を含有するアゾ染料、サリチル酸金属化合物及びアルキルサリチル酸金属化合物、並びに、好ましく用いられる帯電制御樹脂としてのスルホン酸基含有共重合体、スルホン酸塩基含有共重合体、カルボン酸基含有共重合体及びカルボン酸塩基含有共重合体等が挙げられる。
本発明では、帯電制御剤を、モノビニル単量体100質量部に対して、通常、0.01〜10質量部、好ましくは0.03〜8質量部の割合で用いることが望ましい。帯電制御剤の添加量が、0.01質量部未満の場合にはカブリが発生することがある。一方、帯電制御剤の添加量が10質量部を超える場合には印字汚れが発生することがある。
分子量調整剤としては、一般にトナー用の分子量調整剤として用いられているものであれば、特に限定されず、例えば、t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、及び2,2,4,6,6−ペンタメチルヘプタン−4−チオール等のメルカプタン類;テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、N,N’−ジメチル−N,N’−ジフェニルチウラムジスルフィド、N,N’−ジオクタデシル−N,N’−ジイソプロピルチウラムジスルフィド等のチウラムジスルフィド類;等が挙げられる。これらの分子量調整剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明では、分子量調整剤を、モノビニル単量体100質量部に対して、通常0.01〜10質量部、好ましくは0.1〜5質量部の割合で用いることが望ましい。
本発明では、少なくとも重合性単量体、着色剤、軟化剤及び定着助剤を含む重合性単量体組成物を、分散安定剤を含む水系媒体中に分散させ、重合開始剤を添加した後、重合性単量体組成物の液滴形成を行う。液滴形成の方法は特に限定されないが、例えば、(インライン型)乳化分散機(太平洋機工社製、商品名:マイルダー)、高速乳化分散機(プライミクス株式会社製、商品名:T.K.ホモミクサー MARK II型)等の強攪拌が可能な装置を用いて行う。
上記(A−2)のようにして、液滴形成を行い、得られた水系分散媒体を加熱し、重合を開始し、着色樹脂粒子の水分散液を形成する。
重合性単量体組成物の重合温度は、好ましくは50℃以上であり、更に好ましくは60〜95℃である。また、重合の反応時間は好ましくは1〜20時間であり、更に好ましくは2〜15時間である。
着色樹脂粒子が分散している水系媒体中に、シェル層を形成するための重合性単量体(シェル用重合性単量体)と重合開始剤を添加し、重合することでコアシェル型の着色樹脂粒子を得ることができる。
重合により得られた着色樹脂粒子の水分散液は、重合終了後に、常法に従い、ろ過、分散安定化剤の除去を行う洗浄、脱水、及び乾燥の操作が、必要に応じて数回繰り返されることが好ましい。
粉砕法を採用して着色樹脂粒子を製造する場合、以下のようなプロセスにより行われる。
まず、結着樹脂、着色剤、軟化剤、及び定着助剤、さらに必要に応じて添加される帯電制御剤等のその他の添加物を混合機、例えば、ボールミル、V型混合機、FMミキサー(:商品名)、高速ディゾルバ、インターナルミキサー等を用いて混合する。次に、上記により得られた混合物を、加圧ニーダー、二軸押出混練機、ローラ等を用いて加熱しながら混練する。得られた混練物を、ハンマーミル、カッターミル、ローラミル等の粉砕機を用いて、粗粉砕する。更に、ジェットミル、高速回転式粉砕機等の粉砕機を用いて微粉砕した後、風力分級機、気流式分級機等の分級機により、所望の粒径に分級して粉砕法による着色樹脂粒子を得る。
上述の(A)懸濁重合法、又は(B)粉砕法等の製造方法により、着色樹脂粒子が得られる。
以下、トナーを構成する着色樹脂粒子について述べる。なお、以下で述べる着色樹脂粒子は、コアシェル型のものとそうでないもの両方を含む。
上記着色樹脂粒子の平均円形度が0.96未満の場合、印字の細線再現性が悪くなるおそれがある。
本発明においては、上記着色樹脂粒子を、外添剤と共に混合攪拌して外添処理を行うことにより、着色樹脂粒子の表面に、外添剤を付着させて1成分トナー(現像剤)とする。なお、1成分トナーは、さらにキャリア粒子と共に混合攪拌して2成分現像剤としてもよい。
なお、これらの外添剤は、それぞれ単独で用いることもできるが、2種以上を併用して用いることができる。中でも粒径の異なる2種以上のシリカを併用することが好ましい。
上記工程を経て得られる本発明のトナーは、耐熱保存性及び低温定着性のバランスに優れ、且つ、高温高湿(H/H)環境下、常温常湿(N/N)環境下、及び低温低湿(L/L)環境下のいずれにおいても優れた印字耐久性を発揮できるトナーである。
所定量のトナーを容器に入れて密閉した後、当該容器を所定の温度条件下放置する。所定時間経過後、容器からトナーを篩の上に移し、粉体測定機(ホソカワミクロン社製、商品名:パウダテスタPT−R)等にセットする。所定の振幅の条件下で所定時間振動した後、篩上に残ったトナーの質量を測定し、これを凝集したトナーの質量とする。この凝集したトナーの質量が所定の閾値以下となる最大の温度を、そのトナーの耐熱温度に決定する。
所定のプリンターを用いて、所定の温度におけるトナーの定着率を測定する。定着率は、当該プリンターにより試験用紙に印刷した黒ベタ領域の、所定のテープ剥離操作前後の画像濃度の比率から計算する。即ち、テープ剥離前の画像濃度をID(前)、テープ剥離後の画像濃度をID(後)とすると、定着率は、次式から算出することができる。なお、画像濃度は、分光光度計(X−Rite社製、商品名:スペクトロアイ)等を用いて測定する。
定着率(%)=(ID(後)/ID(前))×100
この定着試験において、定着率が所定の閾値以上となる定着温度を、そのトナーの最低定着温度に決定する。
本実施例及び比較例において行った試験方法は以下のとおりである。
[製造例1]
反応容器内にトルエン200部を投入し、トルエンを攪拌しながら反応容器内を十分に窒素で置換した後、90℃に昇温させ、その後メタクリル酸メチル97部、アクリル酸n−ブチル2.6部、アクリル酸0.4部、及びt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(日本油脂社製、商品名:パーブチルO)3部の混合溶液を、2時間かけて反応容器中へ滴下した。更に、トルエン還流下で10時間保持することにより、重合を完了させ、その後、減圧下で溶媒を蒸留除去した。このようにして得られた共重合体を共重合体1とする。得られた共重合体1の特性を表1に示す。
製造例1において、単量体の組成比及び開始剤の量を表1に示す通りに変更したこと以外は、製造例1と同様の工程により、共重合体2〜15を合成した。得られた共重合体2〜15の特性を表1に示す。
(1)共重合体のガラス転移温度(Tg)
ASTM D3418−82に準拠して、共重合体1〜共重合体15の最大吸熱ピークを示す温度(最大吸熱ピーク温度)を測定した。より具体的には、示差走査熱量計(セイコー電子工業社製、商品名:SSC5200)を用いて、共重合体試料を昇温速度10℃/分で昇温し、その過程で得られたDSC曲線の最大吸熱ピークを示す温度を測定し、当該温度をその共重合体のガラス転移温度(Tg)とした。
共重合体1〜共重合体15、及び軟化剤として使用するモノエステル化合物の酸価は、日本工業標準調査会(JICS)制定の規準油脂分析手法である、JIS K 0070に準拠して測定した。
軟化剤として使用するモノエステル化合物の水酸基価は、日本工業標準調査会(JICS)制定の規準油脂分析手法である、JIS K 0070に準拠して測定した。
精秤した共重合体試料0.1gをそれぞれ100mLガラス製サンプル瓶に入れた後、THF49.9gをそれぞれ加えた。次に、スターラーチップを入れ、マグネティックスターラーを用いて室温で1時間攪拌後、0.2μmPTFE製フィルターで濾過して、共重合体のTHF溶液を得た。最後に、THF溶液のそれぞれ100μLをGPC測定装置に注入してGPC測定した。重量平均分子量(Mw)は、得られたGPCの溶出曲線を基に市販の単分散標準ポリスチレンによる検量線から換算した。
(GPC測定条件)
GPC:HLC−8220(東ソー社製)
カラム:TSK−GEL MULTIPORE HXL−M 2本直結(東ソー社製)
溶離液:THF
流量:1.0mL/min
温度:40℃
[実施例1]
モノビニル単量体としてスチレン70部及びアクリル酸n−ブチル30部、ブラック着色剤としてカーボンブラック(三菱化学社製、商品名:#25B)7部、架橋性の重合性単量体としてジビニルベンゼン0.7部、分子量調整剤としてt−ドデシルメルカプタン1.0部、及び上記製造例1で得られた共重合体1を2部、メディア型湿式粉砕機を用いて湿式粉砕を行った後、帯電制御剤として正帯電性の帯電制御樹脂(4級アンモニウム基含有スチレン/アクリル共重合体)1部、及び軟化剤としてステアリン酸ベヘニル(分子式:C17H35−COO−C22H45、融点:70℃、酸価:0.1mgKOH/g、水酸基価:0.3mgKOH/g)20部をさらに混合して、重合性単量体組成物を得た。
上記製造例1で得られた共重合体1を2部添加する替わりに、上記製造例2〜8で得られた共重合体2〜8を2部添加した他は、実施例1と同様にして、実施例2〜8の静電荷像現像用トナーを製造した。また、上記製造例1で得られた共重合体1の添加量を、2部から1部又は3部に変更した他は、実施例1と同様にして、実施例9及び10の静電荷像現像用トナーを製造した。
上記製造例1で得られた共重合体1を添加しなかった他は、実施例1と同様に、比較例1の静電荷像現像用トナーを製造した。
上記製造例1で得られた共重合体1を2部添加する替わりに、上記製造例9〜15で得られた共重合体9〜15を2部添加した他は、実施例1と同様にして、比較例2〜8の静電荷像現像用トナーを製造した。しかしながら、比較例8では液滴が上手く調製できず重合は実施しなかった。したがって、その後の評価も実施できなかった。
上記実施例1〜実施例10及び比較例1〜比較例7のトナー、並びにトナーに使用した着色樹脂粒子について、特性を調べた。詳細は以下の通りである。
(1)着色樹脂粒子の粒径特性
着色樹脂粒子の体積平均粒径Dv、個数平均粒径Dp、及び粒径分布Dv/Dpを粒径測定機(ベックマン・コールター社製、商品名:マルチサイザー)により測定した。このマルチサイザーによる測定は、アパーチャー径:100μm、分散媒体:アイソトンII(:商品名)、濃度10%、測定粒子個数:100,000個の条件で行った。
具体的には、着色樹脂粒子サンプル0.2gをビーカーに取り、その中に分散剤としてアルキルベンゼンスルホン酸水溶液(富士フイルム社製、商品名:ドライウエル)を加えた。そこへ、更に分散媒体を2mL加え、着色樹脂粒子を湿潤させた後、分散媒体を10mL加え、超音波分散器で1分間分散させてから上記の粒径測定機による測定を行った。
トナー10gを100mLのポリエチレン製の容器に入れて密閉した後、所定の温度に設定した恒温水槽の中に該容器を沈め、8時間経過した後に取り出した。取り出した容器からトナーを42メッシュの篩の上にできるだけ振動を与えないように移し、粉体測定機(ホソカワミクロン社製、商品名:パウダテスタPT−R)にセットした。篩の振幅を1.0mmに設定して、30秒間、篩を振動させた後、篩上に残ったトナーの質量を測定し、これを凝集したトナーの質量とした。
この凝集したトナーの質量が0.5g以下になる最大の温度を、耐熱温度とした。
(a)トナーの定着温度測定
市販の非磁性一成分現像方式のプリンター(解像度600dpi、印刷速度28枚/分)の定着ロールの温度を変化できるように改造したプリンターを用いて、定着試験を行った。定着試験は、改造プリンターの定着ロールの温度を変化させ、それぞれの温度でのトナーの定着率を測定した。
定着率は、改造プリンターで試験用紙に印刷した黒ベタ領域の、テープ剥離操作前後の画像濃度の比率から計算した。すなわち、テープ剥離前の画像濃度をID(前)、テープ剥離後の画像濃度をID(後)とすると、定着率は、次式から算出することができる。
定着率(%)=(ID(後)/ID(前))×100
ここで、テープ剥離操作とは、試験用紙の測定部分(黒ベタ領域)に粘着テープ(住友スリーエム社製、商品名:スコッチメンディングテープ810−3−18)を貼り、一定圧力で押圧して付着させ、その後、一定速度で紙に沿った方向に粘着テープを剥離する一連の操作である。また、画像濃度は、分光光度計(X−Rite社製、商品名:スペクトロアイ)を用いて測定した。この定着試験において、定着率が80%以上になる最低定着ロール温度をトナーの最低定着温度とした。
上記プリンターに印字用紙をセットし、当該プリンターにトナーを入れた。温度20℃、湿度20%RHの低温低湿(L/L)環境下で24時間放置した後、同環境下にて、5%印字濃度で20,000枚まで連続印字を行った。500枚毎にベタ印字(印字濃度100%)をして反射式画像濃度計(マクベス社製、商品名:RD918)でそのベタ印字部の印字濃度を測定した。さらに、その後、白ベタ印字(印字濃度0%)を行い、白ベタ印字の途中でプリンターを停止させ、現像後の感光体上にある非画像部のトナーを粘着テープ(住友スリーエム社製、製品名:スコッチメンディングテープ810−3−18)に付着させ、それを印字用紙に貼り付けた。次に、その粘着テープを貼り付けた印字用紙の白色度(B)を、白色度計(日本電色社製)で測定し、同様にして、未使用の粘着テープだけを印字用紙に貼り付け、その白色度(A)を測定し、この白色度の差(B−A)をカブリ値とした。この値が小さい方が、カブリが少なく良好であることを示す。
印字濃度が1.3以上で、且つカブリ値が5以下の画質を維持できる連続印字枚数を調べた。
同様の試験を、温度23℃、湿度50%RHの常温常湿(N/N)環境下、及び温度32.5℃、湿度80%RHの高温高湿(H/H)環境下で行った。
上記プリンターに印字用紙をセットし、当該プリンターにトナーを入れた。温度50℃環境下で120時間放置した後、温度23℃、湿度50%RHの常温常湿(N/N)環境下にて、上記印字耐久性試験と同様の試験を実施した。
以下、表1及び表2を参照しながら、トナー評価について検討する。
まず、比較例1のトナーについて検討する。表1及び表2より、比較例1のトナーは、定着助剤としての共重合体を含有していない。
表2より、比較例1のトナーは、最低定着温度が115℃である。したがって、比較例1のトナーについては、少なくとも低温定着性に問題は見られない。
しかし、比較例1のトナーは、耐熱温度が53℃と低く、印字耐久性試験における連続印刷枚数が、低温低湿(L/L)環境下で10,000枚、常温常湿(N/N)環境下で15,000枚、高温高湿(H/H)環境下で8,000枚、高温放置後の常温常湿(N/N)環境下で11,000枚といずれも少ない。特に、高温放置後の常温常湿(N/N)環境下における当該連続印刷枚数は、実施例1〜実施例10、及び比較例1〜比較例7のトナー中、最も少ない。
以上より、定着助剤としての共重合体を含まない比較例1のトナーは、耐熱保存性に乏しく、低温低湿環境から高温高湿環境までの温度及び湿度環境下において印字耐久性に劣ることが分かる。
表2より、比較例2のトナーは、最低定着温度が125℃である。したがって、比較例2のトナーについては、少なくとも低温定着性に問題は見られない。
しかし、比較例2のトナーは、耐熱温度が51℃と低く、印字耐久性試験における連続印刷枚数が、低温低湿(L/L)環境下で10,000枚、常温常湿(N/N)環境下で14,000枚、高温高湿(H/H)環境下で7,000枚、高温放置後の常温常湿(N/N)環境下で11,000枚といずれも少ない。特に、高温高湿(H/H)環境下における当該連続印刷枚数、及び高温放置後の常温常湿(N/N)環境下における当該連続印刷枚数は、実施例1〜実施例10、及び比較例1〜比較例7のトナー中、いずれも最も少ない。
以上より、アクリル酸エステル単量体単位及びメタクリル酸エステル単量体単位をいずれも含まず、替わりにスチレン単量体単位を含む共重合体9を用いた比較例2のトナーは、耐熱保存性に乏しく、低温低湿環境から高温高湿環境までの温度及び湿度環境下においても印字耐久性に劣り、特に高温高湿環境下に曝した場合における印字耐久性に劣ることが分かる。
表2より、比較例3のトナーは、最低定着温度が125℃である。したがって、比較例3のトナーについては、少なくとも低温定着性に問題は見られない。
しかし、比較例3のトナーは、耐熱温度が53℃と低く、印字耐久性試験における連続印刷枚数が、低温低湿(L/L)環境下で11,000枚、常温常湿(N/N)環境下で16,000枚、高温高湿(H/H)環境下で10,000枚、高温放置後の常温常湿(N/N)環境下で12,000枚といずれも少ない。
以上より、スチレン単量体単位を含む共重合体10を用いた比較例3のトナーは、耐熱保存性に乏しく、低温低湿環境から高温高湿環境までの温度及び湿度環境下において印字耐久性に劣ることが分かる。
表2より、比較例4のトナーは、最低定着温度が115℃であり、印字耐久性試験における連続印刷枚数が、低温低湿(L/L)環境下で18,000枚、常温常湿(N/N)環境下で17,000枚、高温高湿(H/H)環境下で17,000枚、高温放置後の常温常湿(N/N)環境下で17,000枚である。したがって、比較例4のトナーについては、少なくとも低温定着性及び印字耐久性に問題は見られない。
しかし、比較例4のトナーは、耐熱温度が53℃と低い。
以上より、ガラス転移温度が60℃未満である共重合体11を用いた比較例4のトナーは、耐熱保存性に乏しいことが分かる。
表2より、比較例5のトナーは、耐熱温度が60℃であり、印字耐久性試験における連続印刷枚数が、低温低湿(L/L)環境下で18,000枚、常温常湿(N/N)環境下で18,000枚、高温高湿(H/H)環境下で17,000枚、高温放置後の常温常湿(N/N)環境下で18,000枚である。したがって、比較例5のトナーについては、少なくとも耐熱保存性及び印字耐久性に問題は見られない。
しかし、比較例5のトナーは、最低定着温度が135℃と高い。比較例5の最低定着温度は、実施例1〜実施例10、及び比較例1〜比較例7のトナー中、最も高い。
以上より、ガラス転移温度が85℃を超える共重合体12を用いた比較例5のトナーは、低温定着性に乏しいことが分かる。
表2より、比較例6のトナーは、耐熱温度が50℃と低く、印字耐久性試験における連続印刷枚数が、低温低湿(L/L)環境下で15,000枚、常温常湿(N/N)環境下で16,000枚、高温高湿(H/H)環境下で15,000枚、高温放置後の常温常湿(N/N)環境下で15,000枚といずれも少ない。特に、比較例6の耐熱温度は、実施例1〜実施例10、及び比較例1〜比較例7のトナー中、最も低い。
以上より、ガラス転移温度が60℃を大きく下回り、さらに酸価が0.5mgKOH/g未満である共重合体13を用いた比較例6のトナーは、耐熱保存性に劣り、低温低湿環境から高温高湿環境までの温度及び湿度環境下においても印字耐久性に劣ることが分かる。
表2より、比較例7のトナーは、印字耐久性試験における連続印刷枚数が、常温常湿(N/N)環境下で17,000枚である。したがって、比較例7のトナーについては、少なくとも常温常湿(N/N)環境下における印字耐久性に問題は見られない。
しかし、比較例7のトナーは、耐熱温度が54℃と低く、印字耐久性試験における連続印刷枚数が、低温低湿(L/L)環境下で10,000枚、高温高湿(H/H)環境下で8,000枚、高温放置後の常温常湿(N/N)環境下で12,000枚といずれも少ない。
以上より、アクリル酸単量体単位を含まず、酸価が0.5mgKOH/g未満である共重合体14を用いた比較例7のトナーは、耐熱保存性に劣り、特に低温低湿環境下及び高温高湿環境下において印字耐久性に劣ることが分かる。
表2より、実施例1〜実施例10のトナーは、耐熱温度が57℃以上と高く、最低定着温度が130℃以下と低く、印字耐久性試験における連続印刷枚数が、低温低湿(L/L)環境下、常温常湿(N/N)環境下、高温高湿(H/H)環境下、及び高温放置後の常温常湿(N/N)環境下のいずれにおいても18,000枚以上と多い。
したがって、アクリル酸及び/又はメタクリル酸と、アクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルとの共重合体であり、且つ酸価が0.5〜7mgKOH/gであり、且つ重量平均分子量Mwが6,000〜50,000であり、且つガラス転移温度が60〜85℃である定着助剤を含有する本発明のトナーは、耐熱保存性と低温定着性とのバランスに優れ、且つ、高温高湿(H/H)環境下、常温常湿(N/N)環境下、及び低温低湿(L/L)環境下のいずれにおいても優れた印字耐久性を発揮できることが分かる。
Claims (4)
- 結着樹脂、着色剤、軟化剤、及び定着助剤を含有する着色樹脂粒子、並びに外添剤を含有する静電荷像現像用トナーにおいて、
前記定着助剤は、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルのうち少なくともいずれか一方とアクリル酸及びメタクリル酸のうち少なくともいずれか一方との共重合体であり、
前記共重合体は、酸価が0.5〜7mgKOH/gであり、且つ重量平均分子量Mwが6,000〜50,000であり、且つガラス転移温度が60〜85℃であることを特徴とする静電荷像現像用トナー。 - 結着樹脂100質量部に対して、前記共重合体を0.5〜4質量部含有することを特徴とする請求項1に記載の静電荷像現像用トナー。
- 前記軟化剤が下記式(1)の構造を有し、且つ融点が60〜75℃のモノエステル化合物であることを特徴とする請求項1又は2に記載の静電荷像現像用トナー。
R1−COO−R2 式(1)
(上記式(1)中、R1は炭素数15〜21の直鎖アルキル基を示し、R2は炭素数16〜22の直鎖アルキル基を示す。) - 前記モノエステル化合物は、酸価が1.0mgKOH/g以下であり、且つ水酸基価が10mgKOH/g以下であることを特徴とする請求項3に記載の静電荷像現像用トナー。
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