フルブリッジインバータと整流回路とを組み合わせた一次側位相シフト方式のDC−DCコンバータは、基本的には図4に示されているように構成される。同図において、INVは直流電源1の出力電圧Eを高周波交流電圧Vcdに変換するフルブリッジインバータ、TsfはインバータINVの出力が入力されたトランス、Recはトランスの高周波交流出力を整流して直流出力に変換する整流回路、Fは整流回路Recの出力電圧から高調波成分を除去するフィルタ回路、Roは負荷である。
インバータINVは、スイッチ素子Q1と該スイッチ素子に並列に接続されたスナバキャパシタC1とスイッチ素子Q1に逆並列接続された帰還ダイオードD1とからなる上側アームと、スイッチ素子Q2と該スイッチ素子に並列に接続されたスナバキャパシタC2とスイッチ素子Q2に逆並列接続された帰還ダイオードD2とからなる下側アームとを直列に接続して構成した基準相のレグ2と、スイッチ素子Q3とスイッチ素子Q3に並列に接続されたスナバキャパシタC3とスイッチ素子Q3に逆並列接続された帰還ダイオードD3とからなる上側アームと、スイッチ素子Q4とスイッチ素子Q4に並列に接続されたスナバキャパシタC4とスイッチ素子Q4に逆並列接続された帰還ダイオードD4とからなる下側アームとを直列に接続して構成した制御相のレグ3とを並列に接続した回路からなっている。
このインバータにおいては、基準相のレグ2と制御相のレグ3との並列回路の上アーム側の端部及び下アーム側の端部がそれぞれプラス側入力端子a及びマイナス側入力端子bとなっており、これらの入力端子間に直流電源1の出力電圧Eが印加されている。また基準相のレグ2の上側アームと下側アームとの接続点及び制御相のレグ3の上側アームと下側アームとの接続点がそれぞれ第1及び第2のインバータ出力端子c及びdとなっており、これらのインバータ出力端子間に得られる電圧Vcdが直列リアクトルL1を通してトランスの一次コイルW1に印加されている。
トランスTsfは一次コイルW1と二次コイルW2とを有し、二次コイルW2からセンタタップtcが引出されている。整流回路Recは、トランスの二次コイルW2の一端にアノードが接続されたダイオードD5と、二次コイルW2の他端にアノードが接続され、カソードがダイオードD5のカソードに共通接続されたダイオードD6とからなり、ダイオードD5及びD6のカソードの共通接続点及びトランスの二次コイルのセンタタップtcがそれぞれ整流回路Recのプラス側出力端子e及びマイナス側出力端子fとなっている。
フィルタ回路Fは、一端が整流回路Recのプラス側出力端子eに接続されたインダクタ(チョークコイル)Loと、インダクタLoの他端と整流回路Recのマイナス側出力端子fとの間に接続されたキャパシタCoとからなっている。インダクタLoの他端及び整流回路Recのマイナス側出力端子fからそれぞれプラス側コンバータ出力端子g及びマイナス側コンバータ出力端子hが引出され、これらのコンバータ出力端子の間に負荷Roが接続されている。
図4に示したDC−DCコンバータの各部の電圧波形及び電流波形を図5に示した。図5において(A)は基準相のレグ2のスイッチ素子Q1及びQ2のゲートにそれぞれ供給される駆動信号S1及びS2を示し、(B)は制御相のレグ3のスイッチ素子Q3及びQ4のゲートにそれぞれ供給される駆動信号S3及びS4を示している。また図5(C)は、トランスに入力される電圧(インバータの出力電圧)Vcdを示し、同図(D)は、トランスの一次コイルW1に流れる電流I1を示している。図5において、Tはインバータの出力電圧の一周期を示している。
図4に示されたDC−DCコンバータにおいて、スイッチ素子Q1ないしQ4は、それぞれのゲートに駆動信号S1ないしS4が与えられた時にオン状態になって、駆動信号S1ないしS4が与えられている期間オン状態を保持し、駆動信号S1ないしS4が除去された時にオフ状態になる。このDC−DCコンバータにおいては、図5の(A)及び(B)に示されているように、インバータINVのスイッチ素子Q1及びQ2が、導通角をほぼ180°として交互にオン状態にされ、スイッチ素子Q1及びQ2のそれぞれの対角位置にあるスイッチ素子Q4及びQ3が、スイッチ素子Q1及びQ2をオン状態にするタイミングに対して所定の位相角αだけ遅れたタイミングで、導通角をほぼ180°として交互にオン状態にされる。直流電源1が短絡されるのを防ぐため、同じレグのスイッチ素子Q1,Q2をそれぞれオン状態にする期間の間、及びスイッチ素子Q3,Q4をそれぞれオン状態にする期間の間には適当なデッドタイムが設けられる。
上記のようにスイッチ素子Q1ないしQ4がオンオフさせられることにより、直流電源1の出力電圧Eが高周波交流電圧Vcdに変換される。この交流電圧Vcdはトランスにより変成され、整流回路Recにより整流されて直流電圧Vrに変換された後、フィルタ回路Fにより高調波成分が除去されて直流出力電圧Eoとして負荷Roに印加される。
図4に示されたDC−DCコンバータにおいて、駆動信号S1及びS4が与えられて、基準相のレグの上アームのスイッチ素子Q1と、制御相のレグの下アームのスイッチ素子Q4とがオン状態にあるときには、直流電源1からスイッチ素子Q1と直列リアクトルL1とトランスの一次コイルW1とスイッチ素子Q4とを通して図示の矢印方向の電流I1が流れる。このときトランスの二次コイルには、ダイオードD5に電流を流す向きの電圧が誘起し、二次コイルW2の半部W21からダイオードD5とチョークコイルLoと負荷Roとを通して負荷電流Id5が流れる。トランスTsfの一次コイルを通して流れる電流I1は、負荷電流Id5によりトランスTsfの一次側に誘起する電流にトランスTsfの励磁電流が重畳された電流である。
この状態で、基準相のレグの上アームのスイッチ素子Q1をオフ状態にするために駆動信号S1がゼロにされる。このときスイッチ素子Q1に並列接続されているスナバキャパシタC1が、直流電源1の出力電圧Eと、直列リアクトルL1及びトランスの励磁インダクタンスに蓄積されたエネルギとにより、直流電源1→キャパシタC1→直列リアクトルL1→一次コイルW1→スイッチ素子Q4→直流電源1の経路で充電され、回路のインダクタンスに蓄積されている電磁エネルギがスナバキャパシタC1に吸収される。このとき流れるキャパシタC1の充電電流は、トランスTsfの二次コイルに流れる負荷電流によりトランスTsfの一次側に誘起する電流にトランスTsfの励磁電流が重畳された電流I1である。
ターンオフさせる基準相のレグの上アームのスイッチ素子Q1の両端のスナバキャパシタC1は、スイッチ素子Q1のターンオフの進行に伴って徐々に充電されていくため、その両端の電圧Vc1はほぼ直線的に上昇していく。これによりスイッチ素子Q1をターンオフさせる際にその両端の電圧の上昇が緩和され、スイッチ素子Q1のゼロ電圧スイッチング(ZVS:Zero Voltage Switching)が達成される。
上記のように、オフ状態にされる基準相のレグの上アームのスイッチ素子Q1の両端に接続されたスナバキャパシタC1が充電されることにより、スイッチ素子Q1に並列接続されているダイオードD1が逆バイアスされて、該ダイオードD1を通して電流が流れないようにされる。
またスナバキャパシタC1が充電される際に、基準相のレグ2の下アームのスイッチ素子(次にターンオンさせるスイッチ素子)Q2の両端に接続されたスナバキャパシタC2に蓄積されている電荷が、キャパシタC2→直列リアクトルL1→トランスの一次コイルW1→制御相のレグの下アームのスイッチ素Q4→キャパシタC2の経路で放電する。これにより、次にターンオンさせる基準相のレグの下アームのスイッチ素子Q2に並列接続されたスナバキャパシタC2の両端の電圧Vc2が直線的に低下していく。このスナバキャパシタC2の放電が完了したときに、スイッチ素子Q2に逆並列接続された帰還ダイオードD2の逆バイアスが解除されるため、直列リアクトルL1とトランスの励磁インダクタンスとに蓄積されたエネルギにより、一次コイルW1→スイッチ素子Q4→ダイオードD2→直列リアクトルL1→一次コイルW1の経路でダイオードD2に順方向電流Id2が流れるようになる。この順方向電流Id2は、トランスTsfの二次コイルを通して流れている負荷電流によりトランスの一次コイルに誘起する電流にトランスTsfの励磁電流が重畳された電流(トランスの一次電流I1)である。このようにダイオードD2に順方向電流が流れることにより、次にターンオンさせる基準相のレグ2の下アームのスイッチ素子Q2の両端の電圧がほぼゼロにされ、駆動信号S2が与えられたスイッチ素子Q2は、電流がほぼゼロの状態でターンオンする。これによりスイッチ素子Q2のゼロ電圧スイッチング(ZVS)及びゼロ電流スイッチング(ZCS:Zero Current Switching)が達成される。
駆動信号S1がゼロにされて、直列リアクトルL1とトランスの励磁インダクタンスとに蓄積されたエネルギによりダイオードD2に順方向電流Id2が流れる期間、及び基準相のレグ2の下アームのスイッチ素子Q2と制御相のレグ3の下アームのスイッチ素子Q4とが同時にオン状態にある期間においては、一次コイルW1→スイッチ素子Q4→ダイオードD2→直列リアクトルL1→一次コイルW1の経路で、図示の矢印方向の循環電流I1が流れる。この循環電流が流れる期間トランスTsfの二次側では、二次コイルW21→ダイオードD5→インダクタLo→負荷Ro→二次コイルW21の閉回路を電流が還流する。循環電流I1は、トランスの二次側を流れる還流電流によりトランスの一次コイルに誘起する電流にトランスの励磁電流が重畳された電流である。図5においては、電流I1の循環電流として流れる部分に斜線を施してある。
基準相のレグの下アームのスイッチ素子Q2と制御相のレグの下アームのスイッチ素子Q4とがオン状態にあるときに、制御相のレグの下アームのスイッチ素子Q4をターンオフさせるために駆動信号S4がゼロにされる。このとき、スイッチ素子Q1及びQ3がオフ状態になっていて、制御相のレグの下アームのスナバキャパシタC4は、直列リアクトルL1とトランスの励磁インダクタンスとに蓄積されている電磁エネルギにより、直列リアクトルL1→トランスの一次コイルW1→キャパシタC4→ダイオードD2→直列リアクトルL1の経路で充電される。このときキャパシタC4に流れる充電電流は、トランスTsfの二次側を流れる負荷電流によりトランスの一次コイルに誘起する電流にトランスの励磁電流が重畳された電流I1である。これにより、キャパシタC4の両端の電圧Vc4がほぼ直線的に上昇していき、スイッチ素子Q4の両端の電圧がほぼ直線的に上昇していくため、スイッチ素子Q4がターンオフする際にその両端の電圧の上昇が緩和される。これにより、スイッチ素子Q4のZVSが達成される。
またスイッチ素子Q4がターンオフする過程で、制御相の上アームのスイッチ素子Q3の両端のスナバキャパシタC3が、キャパシタC3→直流電源1の静電容量→逆バイアスが解除されている基準相のレグのダイオードD2→直列リアクトルL1→トランスの一次コイルW1→キャパシタC3の経路で放電するため、キャパシタC3の両端の電圧Vc3がほぼ直線的に低下していく。このキャパシタC3の放電が完了したときにダイオードD3の逆バイアスが解除されるため、直列リアクトルL1とトランスTsfの励磁インダクタンスとに蓄積されている電磁エネルギにより、トランスの一次コイルW1→ダイオードD3→直流電源1の静電容量→ダイオードD2→直列リアクトルL1→トランスの一次コイルW1の経路でダイオードD3に順方向電流Id3が流れる。この順方向電流Id3は、トランスTsfの二次コイルを流れている負荷電流によりトランスの一次コイルに流れる電流にトランスの励磁電流が重畳された電流(一次電流I1)である。ダイオードD3に順方向電流Id3が流れることにより、スイッチ素子Q3の両端の電圧がほぼゼロにされる。この状態でスイッチ素子Q3に駆動信号S3を与えることにより、スイッチ素子Q3を電流がほぼゼロの状態でターンオンさせ、スイッチ素子Q3のゼロ電流スイッチング(ZCS:Zero Current Switching)を達成する。これにより基準相のレグの下アームのスイッチ素子Q2と制御相のレグの上アームのスイッチ素子Q3とを同時にオンさせた状態にする。
基準相のレグの下アームのスイッチ素子Q2と制御相のレグの上アームのスイッチ素子Q3とを同時にオンさせた状態では、直流電源1からスイッチ素子Q3とトランスの一次コイルW1と直列リアクトルL1とスイッチ素子Q2とを通して、図示の矢印方向と逆方向の電流I1が流れる。このときトランスの二次コイルW2には、ダイオードD6を通して電流が流れる向きの電圧が誘起し、二次コイルの半部W22からダイオードD6とチョークコイルLoとキャパシタCoとを通して負荷電流Id6が流れる。このときトランスの一次コイルを通して流れている電流I1は、負荷電流Id6によりトランスの一次コイルに誘起する電流にトランスの励磁電流が重畳された電流である。
次いで基準相のレグ2の下アームのスイッチ素子Q2をターンオフさせるために駆動信号S2がゼロにされる。このとき、直流電源1→スイッチ素子Q3→トランスの一次コイルW1→直列リアクトルL1→キャパシタC2→直流電源1の経路で流れる電流I1によりキャパシタC2が充電され、スイッチ素子Q2の両端の電圧Vc2がほぼ直線的に上昇する。これにより基準相のレグの下アームのスイッチ素子Q2をターンオフさせる際にその両端の電圧の上昇が緩和され、スイッチ素子Q2のZVSが達成される。
またスイッチ素子Q2をターンオフする過程で、基準相のレグの上アームのスイッチ素子Q1の両端のスナバキャパシタC1が、キャパシタC1→スイッチ素子Q3→トランスの一次コイルW1→直列リアクトルL1→キャパシタC1の経路で放電し、この放電が完了したときにダイオードD1の逆バイアスが解除される。これにより、直列リアクトルL1及びトランスTsfの励磁インダクタンスに蓄積されているエネルギにより、トランスの一次コイルW1→直列リアクトルL1→ダイオードD1→スイッチ素子Q3→トランスの一次コイルW1の経路でダイオードD1に順方向電流Id1が流れる。この順方向電流Id1は、トランスTsfの二次コイルを通して流れている負荷電流によりトランスの一次コイルに誘起する電流にトランスTsfの励磁電流が重畳された電流(トランスの一次電流I1)である。このようにダイオードD1に順方向電流が流れることにより、スイッチ素子Q1の両端の電圧がほぼゼロにされる。この状態で、駆動信号S1を発生させて基準相のレグの上アームのスイッチ素子Q1を電流がほぼゼロの状態でターンオンさせ、ZVS及びZCSを達成する。これにより基準相のレグの上アームのスイッチ素子Q1と制御相のレグの上アームのスイッチ素子Q3とを同時にオンさせた状態にする。
直列リアクトルL1及びトランスの励磁インダクタンスに蓄積されているエネルギにより、ダイオードD1を通して順方向電流が流れる期間及びスイッチ素子Q1とQ3とが同時にオン状態になる期間においては、一次コイルW1→直列リアクトルL1→ダイオードD1→スイッチ素子Q3→一次コイルW1の経路で、図示の矢印方向と逆方向の循環電流I1が流れる。この循環電流が流れる期間トランスTsfの二次側では、二次コイルW22→ダイオードD6→インダクタLo→負荷Ro→二次コイルW22の閉回路を電流が還流する。循環電流I1には、この還流電流によりトランスの一次コイルに誘起する一次電流が重畳されている。
基準相のレグの上アームのスイッチ素子Q1をオン状態にした後、所定のタイミングで制御相のレグの上アームのスイッチ素子Q3の駆動信号S3をゼロにする。このときトランスTsfの一次コイルW1の励磁インダクタンスと直列リアクトルL1とに蓄積されているエネルギとにより、トランスの一次コイルW1→直列リアクトルL1→ダイオードD1→キャパシタC3の経路で、キャパシタC3が充電される。これによりキャパシタC3の両端の電圧Vc3がほぼ直線的に上昇し、スイッチ素子Q3がターンオフする際にその両端の電圧の上昇が緩和される。これによりスイッチ素子Q3のZVSが達成される。
また、スイッチ素子Q3をターンオフさせる過程で、制御相のレグ3の下アームのスイッチ素子Q4の両端に接続されたキャパシタC4が、キャパシタC4→一次コイルW1→直列リアクトルL1→ダイオードD1→直流電源1の静電容量→キャパシタC4の経路で放電する。この放電が完了したときにダイオードD4の逆バイアスが解除されるため、一次コイルW1→直列リアクトルL1→ダイオードD1→直流電源1の静電容量→ダイオードD4→一次コイルW1の経路でダイオードD4に順方向電流Id4が流れる。この順方向電流Id4は、トランスTsfの二次コイルを流れている負荷電流によりトランスの一次コイルに誘起する電流に励磁電流が重畳された電流である。ダイオードD4に順方向電流Id4が流れることにより、スイッチ素子Q4の両端の電圧がほぼゼロにされる。この状態で駆動信号S4を発生させることにより、制御相のレグの下アームのスイッチ素子Q4を電流がほぼゼロの状態でターンオンさせ、ZVS及びZCSを達成する。
インバータINVは、上記の動作を繰り返すことにより、直流電源1の出力電圧Eを交流電圧Vcdに変換する。この交流電圧をトランスTsfにより変成された交流電圧に変換し、この交流電圧を整流回路Recにより両波整流して直流電圧Vrに変換した後、フィルタ回路Fにより直流電圧Vrから高調波成分を除去し、フィルタ回路Fから負荷Roに高調波成分が除去された直流電圧Eoを印加する。負荷に与える直流電圧の大きさは、基準相のレグのスイッチ素子をオン状態にするタイミングと、対角位置にある制御相のレグのスイッチ素子をオン状態にするタイミングとの間の位相角αを0°ないしほぼ180°の範囲で変化させることにより制御される。
上記のように、図4に示されたDC−DCコンバータにおいては、図5に斜線で示した期間、基準相のレグ2と制御相のレグ3との間を大きな循環電流が流れるため、スイッチ素子で生じる導通損失が大きくなり、変換効率が低下するのを避けられない。この問題を解決するため、特許文献1に示されたDC−DCコンバータが提案された、特許文献1に示されたDC−DCコンバータにおいては、図6に示されているように、整流回路Recの後段のフィルタ回路Fに設けるインダクタとして、途中からタップtoが引き出されたタップ付きインダクタLotが用いられている。このDC−DCコンバータにおいては、タップ付きインダクタLotの一端及び整流回路Recのマイナス側出力端子fからそれぞれプラス側コンバータ出力端子g及びマイナス側コンバータ出力端子hが引き出され、タップ付きインダクタLotの他端とマイナス側コンバータ出力端子hとの間にアノードをマイナス側コンバータ出力端子h側に向けてフライホイールダイオードD7が接続されている。またタップ付きインダクタLotのタップtoは整流回路Recのプラス側出力端子eに接続されている。
図6に示されたDC−DCコンバータの各部の電圧及び電流波形を図7に示した。図7において(A)ないし(D)はそれぞれスイッチ素子Q1ないしQ4に与えられる駆動信号S1ないしS4を示し、(E)はインバータの出力電圧Vcdを実線で、出力電流I1を破線で示している。また(F)ないし(I)はそれぞれスイッチ素子Q1ないしQ4の両端の電圧Vq1ないしVq4を実線で示し、スイッチ素子Q1ないしQ4を流れる電流Iq1ないしいq4及び帰還ダイオードD1ないしD4を流れる電流Id1ないしId4を破線で示している。更に(J)は整流回路Recの出力電圧Vrを示し、(K)は整流回路RecのダイオードD5を流れる電流Id5を実線で、ダイオードD6を流れる電流Id6を破線で示している。また(L)はダイオードD7の両端の電圧Vd7を実線で示し、ダイオードD7を流れる電流Id7を破線で示している。
図6に示されたDC−DCコンバータにおいて、図7(A)に示すように、時刻t1で駆動信号S1がゼロになると、キャパシタC1の充電が開始されるため、図7(F)に示されているように、スイッチ素子Q1を通して流れていた電流Iq1がゼロになる。キャパシタC1の充電の進行に伴って、スイッチ素子Q1の両端の電圧Vq1がゆっくりと上昇していく。これによりスイッチ素子Q1のZVSが達成される。時刻t1でキャパシタC1の充電が開始されると、キャパシタC2が直列リアクトルL1とトランスの一次コイルW1とスイッチ素子S4とを通して放電するため、スイッチ素子Q2の両端の電圧Vq2が低下していく。時刻t2でキャパシタC2の放電が完了すると、ダイオードD2の逆バイアスが解除されて図7(G)に示すようにダイオードD2に順方向電流Id2が流れるため、スイッチ素子Q2の両端の電圧Vq2がほぼゼロに保たれる。
時刻t2でキャパシタC2の放電が完了し、ダイオードD2に順方向電流Id2が流れたときに整流回路の出力電圧VrによりインダクタLotに誘起する電圧で、フィルタ回路FのダイオードD7に電流Id7が流れ始めるため、ダイオードD5を通して流れる電流Id5が減少していく。このとき電流Id5によりトランスの一次側に誘起する電流が減少していくため、図7(E)及び(I)に示すように、一次電流I1及びスイッチ素子Q4を通して流れる電流Iq4が減少していき、ダイオードD2を通して流れる順方向電流Id2も減少していく。スイッチ素子Q2の両端の電圧Vq2がほぼゼロに保たれている時刻t3で駆動信号S2が発生すると電流ゼロの状態でスイッチ素子Q2がターンオンし、ZCSが達成される。
ダイオードD7を通して流れる電流Id7が飽和すると、トランスの二次側では、ダイオードD7→インダクタLot→キャパシタCo及び負荷Ro→ダイオードD7の閉回路を電流が還流する状態になって、トランスTsfの二次コイルに電流が流れなくなり、図7(K)に示すようにダイオードD5を通して流れる電流Id5がゼロになる。この状態では、トランスの一次電流I1はトランスTsfの励磁電流のみとなる。
時刻t4で駆動信号S4がゼロになるが、このときキャパシタC4は、トランスの励磁電流で充電されるだけであるため、キャパシタC4の充電はほとんど行なわれず、スイッチ素子Q4のZVSは行なわれない。駆動信号S4がゼロにされた後、所定のターンオフタイムが経過した時にスイッチ素子Q4がターンオフし、電流Iq4が遮断される。このとき回路の静電容量及びインダクタンスにより振動が生じる。次いで駆動信号S3が発生すると、スイッチ素子Q3がオン状態に遷移していき、時刻t5でスイッチ素子Q3のターンオンが完了する。
時刻t6で駆動信号S2がゼロになると、キャパシタC2の充電が開始され、スイッチ素子Q2を通して流れていた電流Iq2がゼロになる。キャパシタC2の充電の進行に伴ってスイッチ素子Q2の両端の電圧Vq2がゆっくりと上昇していく。これによりスイッチ素子Q2のZVSが達成される。時刻t6でキャパシタC2の充電が開始されると、キャパシタC1の放電が開始されるため、スイッチ素子Q1の両端の電圧Vq1が低下していく。時刻t7でキャパシタC1の放電が完了すると、ダイオードD1の逆バイアスが解除されて図7(F)に示すようにダイオードD1に順方向電流Id1が流れるため、スイッチ素子Q1の両端の電圧Vq1がほぼゼロに保たれる。
時刻t7でキャパシタC1の放電が完了すると、整流回路Fの出力電圧VrによりインダクタLotに誘起する電圧によりフィルタ回路FのダイオードD7に電流Id7が流れ始め、ダイオードD6を通して流れる電流Id6が減少していく。このとき電流Id6によりトランスの一次側に誘起する電流が減少していくため、図7(E)及び(F)に示すように、一次電流I1及びダイオードD1を通して流れる順方向電流Id1が減少していく。スイッチ素子Q1の両端の電圧Vq1がほぼゼロに保たれている時刻t8で駆動信号S1が発生すると電流ゼロの状態でスイッチ素子Q1がターンオンし、ZCSが達成される。
上記のように、図6に示したDC−DCコンバータにおいては、スイッチ素子Q1がターンオフした後、ダイオードD2が導通し、トランスTsfの二次側の回路に電流が還流する期間に、タップ付きインダクタLotの作用により、インダクタLot→負荷→ダイオードD7→インダクタLotの閉回路を通して電流Id7を流すことにより、トランスの一次側と二次側とを切り離して、トランスの二次側を流れる還流電流により、トランスの一次側に電流が流れないようにすることができるため、図7(G)に示されているように、ダイオードD2を通して流れる電流Id2を減衰させることができ、循環電流が流れる際に生じる損失を少なくすることができる。
同様に、スイッチ素子Q2がターンオフした後、ダイオードD1が導通した際に、インダクタLotに誘起する過渡電圧でインダクタLot→負荷→ダイオードD7→インダクタLotの閉回路を通して電流Id7を流すことにより、トランスの一次側と二次側とを切り離して、トランスの二次側を流れる還流電流によりトランスの一次側に電流が流れるのを防ぐことができるため、図7(F)に示されているようにダイオードD1を通して流れる電流Id1を減衰させることができ、循環電流が流れる際に生じる損失を少なくすることができる。
図1ないし図3を参照して、本発明に係わるDC−DCコンバータの一実施形態について説明する。図1において、図6に示したDC−DCコンバータの各部と同等の部分にはそれぞれ図4及び図6に示された符号と同一の符号を付してある。
図1に示されたDC−DCコンバータは、図6に示されたDC−DCコンバータと同様に、フルブリッジインバータINVと、インバータINVの出力が入力されたトランスTsfと、トランスTsfの高周波交流出力を整流して直流出力に変換する整流回路Recと、整流回路Recの出力電圧から高調波成分を除去するフィルタ回路Fとにより構成され、フィルタ回路Fの出力端子間に負荷Roが接続される。
インバータINVは、スイッチ素子Q1と該スイッチ素子に並列に接続されたスナバキャパシタC1とスイッチ素子Q1に逆並列接続された帰還ダイオードD1とからなる上側アームと、スイッチ素子Q2と該スイッチ素子に並列に接続されたスナバキャパシタC2とスイッチ素子Q2に逆並列接続された帰還ダイオードD2とからなる下側アームとを直列に接続して構成した基準相のレグ2と、スイッチ素子Q3とスイッチ素子Q3に並列に接続されたスナバキャパシタC3とスイッチ素子Q3に逆並列接続された帰還ダイオードD3とからなる上側アームと、スイッチ素子Q4とスイッチ素子Q4に並列に接続されたスナバキャパシタC4とスイッチ素子Q4に逆並列接続された帰還ダイオードD4とからなる下側アームとを直列に接続して構成した制御相のレグ3とを並列に接続した回路からなっている。各スイッチ素子としては、駆動信号が与えられた時にオン状態に遷移して駆動信号が与えられている間オン状態を保持し、駆動信号が除去されたときにオフ状態に遷移する半導体スイッチ素子を用いる。各スイッチ素子としては、MOSFETやIGBTのように、スイッチ損失が小さいものを用いることが好ましい。
図示のインバータINVにおいては、基準相のレグ2と制御相のレグ3との並列回路の上アーム側の端部及び下アーム側の端部がそれぞれプラス側入力端子a及びマイナス側入力端子bとなっており、これらの入力端子間に直流電源1の出力電圧Eが印加されている。また基準相のレグ2の上側アームと下側アームとの接続点及び制御相のレグ3の上側アームと下側アームとの接続点がそれぞれ第1及び第2のインバータ出力端子c及びdとなっていて、これらのインバータ出力端子間に得られる電圧Vcdが直列リアクトルL1を通してトランスの一次コイルW1に印加されている。
トランスTsfは一次コイルW1と二次コイルW2とを有し、二次コイルW2からセンタタップtcが引出されている。整流回路Recは、トランスの二次コイルW2の一端にアノードが接続されたダイオードD5と、二次コイルW2の他端にアノードが接続され、カソードがダイオードD5のカソードに共通接続されたダイオードD6とからなり、ダイオードD5及びD6のカソードの共通接続点及びトランスの二次コイルのセンタタップtcがそれぞれ整流回路Recのプラス側出力端子e及びマイナス側出力端子fとなっている。
フィルタ回路Fは、整流回路Recのプラス側出力端子eにタップtoが接続されたタップ付きインダクタLotと、タップ付きインダクタLotの一端及び整流回路Recのマイナス側出力端子fからそれぞれ引き出されたプラス側コンバータ出力端子g及びマイナス側コンバータ出力端子hと、タップ付きインダクタLotの他端とマイナス側コンバータ出力端子hとの間にアノードをマイナス側コンバータ出力端子h側に向けて接続されたフライホイールダイオードD7とを備えている。
以上の構成は、図6に示されたDC−DCコンバータの構成と同一である。本実施形態においては、インバータINVの入力端子a,b間に、コンデンサC5とC6との直列回路からなるコンデンサ分圧回路CDが接続され、このコンデンサ分圧回路CDの分圧点と第2のインバータ出力端子dとの間に共振リアクトルL2が接続されている。
図1のDC−DCコンバータの各部の電圧、電流波形を図2に示した。図2において、(A)ないし(D)はそれぞれスイッチ素子Q1ないしQ4に与えられる駆動信号S1ないしS4を示している。図2(E)は、インバータの出力電圧Vcdを実線で示し、出力電流I1を破線で示している。また図2(F)ないし(I)はそれぞれスイッチ素子Q1ないしQ4の両端の電圧Vq1ないしVq4を実線で示し、スイッチ素子Q1ないしQ4を流れる電流Iq1ないしいq4及び帰還ダイオードD1ないしD4を流れる電流Id1ないしId4を破線で示している。図2(J)は共振リアクトルL2を流れる電流IL2を示し、図2(K)は、整流回路Recの出力電圧Vrを示し、(L)は整流回路RecのダイオードD5を流れる電流Id5を実線で、ダイオードD6を流れる電流Id6を破線で示している。また(M)はダイオードD7の両端の電圧Vd7を実線で示し、ダイオードD7を流れる電流Id7を破線で示している。
図1に示されたDC−DCコンバータにおいて、コンデンサC5及びC6の静電容量が十分に大きく、かつそれぞれの静電容量が等しい場合、C5及びC6はそれぞれE/2の電圧を発生する電圧源と考えることができ、制御相のスイッチ素子Q3,Q4のオンオフにより共振リアクトルL2に一定の傾きの電流が流れる。
図1のDC−DCコンバータにおいては、制御相の下アームのスイッチ素子Q4がオン状態にあるときに、コンデンサC6→共振リアクトルL2→スイッチ素子Q4→コンデンサC6の経路と、直流電源1→コンデンサC5→共振リアクトルL2→スイッチ素子Q4→直流電源1の経路とを通して共振リアクトルL2に図示の矢印方向の電流IL2が流れる。この電流IL2は一定の傾きで増大していく。時間をtとし、共振リアクトルL2のインダクタンスをL2で表わすと、スイッチ素子Q4がオン状態にあるときに共振リアクトルL2を通して流れる電流は、IL2=(E/L2)×tで表わすことができる。また制御相の上アームのスイッチ素子Q3がオン状態にあるときには、コンデンサC5→スイッチ素子Q3→共振リアクトルL2→コンデンサC5の経路と、直流電源1→スイッチ素子Q3→共振リアクトルL2→コンデンサC6→直流電源1の経路とを通して電流IL2が流れる。この電流の傾きは、スイッチ素子Q4がオン状態にあるときに共振リアクトルL2を流れる電流の傾きと逆になる。スイッチ素子Q3がオン状態にあるときに共振リアクトルL2を通して流れる電流は、IL2=−(E/L2)×tで表わすことができる。
従って、スイッチ素子Q3がオン状態にあるときにスイッチ素子Q3に流れる電流Iq3は、図7のIq3にIL2を加算した波形になり、スイッチ素子Q4がオン状態にあるときにスイッチ素子Q4に流れる電流Iq4は、図7のIq4にIL2を加算した波形になる。
また図1の帰還ダイオードD3に流れる電流Id3は、図7のId3にIL2を加算した波形になり、図1の帰還ダイオードD4に流れる電流Id4は、図7のId4にIL2を加算した波形になる。コンデンサC5及びC6をそれぞれ流れる電流をIC5及びIC6とすると、共振リアクトルL2を通して流れる電流IL2は、IL2=IC5+IC6で表わされる。
制御相のスイッチ素子Q4をターンオフする際には、トランスTsfの励磁電流に、スイッチ素子Q4がオン状態にある期間にリアクトルL2に蓄えられたエネルギにより流れる電流が加算されて、キャパシタC4の充電とキャパシタC3の放電とが行われる。この場合、キャパシタC4の充電は、トランスの一次コイルW1→キャパシタC4→ダイオードD2→リアクトルL1→トランスの一次コイルW1の経路と、リアクトルL2→キャパシタC4→キャパシタC6→リアクトルL2の経路とで行われる。またキャパシタC3の放電は、キャパシタC3→直流電源1→ダイオードD2→リアクトルL1→トランスの一次コイルW1→キャパシタC3の経路と、キャパシタC3→キャパシタC5→リアクトルL2→キャパシタC3の経路とで行われる。
制御相のスイッチ素子Q3がターンオフする際には、トランスTsfの励磁電流に、スイッチQ3がオン状態にある期間にリアクトルL2に蓄えられたエネルギにより流れる電流が加算されて、キャパシタC3の充電とキャパシタC4の放電とが行われる。この場合、キャパシタC3の充電は、トランスの一次コイルW1→リアクトルL1→ダイオードD1→キャパシタC3→トランスの一次コイルW1の経路と、リアクトルL2→キャパシタC5→キャパシタC3→リアクトルL2の経路とで行われる。またキャパシタC4の放電は、キャパシタC4→トランスの一次コイルW1→リアクトルL1→ダイオードD1→直流電源1→キャパシタC4の経路と、キャパシタC4→リアクトルL2→キャパシタC6→キャパシタC4の経路とで行われる。
共振リアクトルL2は、スイッチ素子Q3及びQ4がオン状態にあるときにエネルギを蓄積し、蓄積したエネルギで、スイッチ素子Q3をオフしてからスイッチ素子Q4をオンするまでの間のデッドタイムの期間、及びスイッチ素子Q4をオフ状態にしてからスイッチ素子Q3をオン状態にするまでの間のデッドタイムの期間キャパシタC3,C4の充放電を行う。
図1に示されたDC−DCコンバータにおいて、図2(A)に示すように、時刻t1で駆動信号S1がゼロになると、スイッチ素子Q1のターンオフ動作が開始されるとともに、キャパシタC1の充電が開始されるため、図1(F)に示されているように、スイッチ素子Q1を通して流れていた電流Iq1がゼロにされる。キャパシタC1の充電の進行に伴って、スイッチ素子Q1の両端の電圧Vq1がゆっくりと上昇していく。これにより、スイッチ素子Q1がターンオフする際にその両端の電圧の上昇が緩和され、スイッチ素子Q1のゼロ電圧スイッチング(ZVS)が達成される。
時刻t1でスイッチ素子Q1のターンオフ動作が開始されると、キャパシタC2が、キャパシタC2→直列リアクトルL1→トランスの一次コイルW1→スイッチ素子S4→キャパシタC2の経路で放電するため、スイッチ素子Q2の両端の電圧Vq2が低下していく。時刻t2でキャパシタC2の放電が完了すると、ダイオードD2の逆バイアスが解除されて、直列リアクトルL1と一次コイルW1とに蓄積されたエネルギにより、直列リアクトルL1→トランスの一次コイルW1→スイッチ素子Q4→ダイオードD2→直列リアクトルL1の経路で、図2(G)に示すようにダイオードD2に順方向電流Id2が流れる。この順方向電流Id2は、トランスTsfの二次コイルを流れる電流Id5によりトランスの一次コイルに誘起する電流にトランスTsfの励磁電流が重畳された電流(トランスの一次電流I1)である。このようにダイオードD2に順方向電流が流れることにより、スイッチ素子Q2の両端の電圧Vq2がほぼゼロに保たれる。
時刻t2でキャパシタC2の放電が完了して、ダイオードD2に順方向電流Id2が流れたときに整流回路の出力電圧VrによりインダクタLotに誘起する電圧で、フィルタ回路FのダイオードD7に電流Id7(図2M)が流れ始めるため、ダイオードD5を通して流れる電流Id5(図2L)が減少していく。このとき電流Id5によりトランスの一次側に誘起する電流が減少していくため、図2(E)及び(I)に示すように、一次電流I1及びスイッチ素子Q4を通して流れる電流Iq4が減少していき、ダイオードD2を通して流れる順方向電流Id2(図2G)も減少していく。スイッチ素子Q2の両端の電圧Vq2がほぼゼロに保たれている間の時刻t3で駆動信号S2が発生すると電流ゼロの状態でスイッチ素子Q2がターンオンし、ゼロ電流スイッチング(ZCS)が達成される。
図2(M)に示されているように、ダイオードD7を通して流れる電流Id7が飽和すると、トランスTsfの二次側では、ダイオードD7→インダクタLot→キャパシタCo及び負荷Ro→ダイオードD7の閉回路を電流が還流する状態になって、トランスTsfの二次コイルに電流が流れなくなり、図2(L)に示すようにダイオードD5を通して流れる電流Id5がゼロになる。この状態では、トランスの一次電流I1はトランスTsfの励磁電流のみとなる。
時刻t4で駆動信号S4がゼロになると、スイッチ素子Q4のターンオフ動作が開始され、トランスの一次コイルW1→キャパシタC4→ダイオードD2→リアクトルL1→トランスの一次コイルW1の経路と、共振リアクトルL2→キャパシタC4→キャパシタC6→共振リアクトルL2の経路とでキャパシタC4の充電が行われる。これにより、スイッチ素子Q4の両端の電圧が直線的に上昇していき、そのターンオフがZVSにより行われる。
また時刻t4でスイッチ素子Q4のターンオフ動作が開始されると、キャパシタC3→直流電源1→ダイオードD2→リアクトルL1→トランスの一次コイルW1→キャパシタC3の経路と、キャパシタC3→コンデンサC5→共振リアクトルL2→キャパシタC3の経路とでキャパシタC3の放電が行われる。キャパシタC3の放電が完了すると、ダイオードD3の逆バイアスが解除されるため、トランスの一次コイルW1→ダイオードD3→直流電源1→ダイオードD2→直列リアクトルL1→一次コイルW1の経路と、コンデンサC6→共振リアクトルL2→ダイオードD3→直流電源1→コンデンサC6の経路と、コンデンサC5→共振リアクトルL2→ダイオードD3→コンデンサC5の経路とでダイオードD3に順方向電流が流れ、スイッチ素子Q3の両端の電圧がほぼゼロにされる。この状態で駆動信号S3が与えられると、スイッチ素子Q3のターンオフ動作がZVS及びZCSで行われ、時刻t5でそのターンオンが完了する。
時刻t4からt5までのデッドタイムの期間は、L2,C3及びC4のLC回路で過渡現象が生じるが、この過渡減少で振動が生じないように、デッドタイムを十分短くしておけば、図2(J)に示したように、リアクトルL2を流れる電流IL2は、振動を伴うことなく時刻t4で増加から減少に転じ、連続した三角波形になる。時刻t5でスイッチ素子Q3がターンオンすると、強制的に共振リアクトルL2を流れる電流IL2の向きが反対にされ、コンデンサC5→スイッチ素子Q3→リアクトルL2→コンデンサC5の経路と、直流電源1→スイッチ素子Q3→共振リアクトルL2→コンデンサC6→直流電源1の経路とで図示の矢印と逆方向の電流IL2が流れる。この電流IL2は、時間の経過に伴って、増大していく。
時刻t6で駆動信号S2がゼロにされると、スイッチ素子Q2のターンオフ動作が開始され、直流電源1→スイッチ素子Q3→トランスの一次コイルW1→直列リアクトルL1→キャパシタC2→直流電源1の経路で流れる電流I1によりキャパシタC2が充電される。このキャパシタC2の充電電流I1は、トランスTsfの二次コイルを流れる負荷電流Id6(図2L)によりトランスの一次コイルに誘起する電流にトランスの励磁電流が重畳された電流である。このようにキャパシタC2が充電されることにより、スイッチ素子Q2の両端の電圧Vq2がほぼ直線的に上昇し、その両端の電圧の上昇が緩和されるため、スイッチ素子Q2のターンオフがZVSにより行われる。
スイッチ素子Q2をターンオフする過程で、基準相のレグの上アームのスイッチ素子Q1の両端のスナバキャパシタC1が、キャパシタC1→スイッチ素子Q3→トランスの一次コイルW1→直列リアクトルL1→キャパシタC1の経路で放電し、この放電が完了したときにダイオードD1の逆バイアスが解除される。これにより、直列リアクトルL1及びトランスTsfの励磁インダクタンスに蓄積されているエネルギにより、トランスの一次コイルW1→直列リアクトルL1→ダイオードD1→スイッチ素子Q3→トランスの一次コイルW1の経路でダイオードD1に順方向電流Id1が流れる。この順方向電流Id1は、トランスTsfの二次コイルを通して流れている負荷電流Id6によりトランスTsfの一次コイルに誘起する電流にトランスTsfの励磁電流が重畳された電流(トランスの一次電流I1)である。このようにダイオードD1に順方向電流が流れることにより、スイッチ素子Q1の両端の電圧がほぼゼロになる。この状態で、時刻t8で駆動信号S1が与えられると、スイッチ素子Q1のターンオンがZVS及びZCSにより行われる。
上記のように、インバータの入力端子間にコンデンサ分圧回路CDを接続するとともに、この分圧回路の分圧点と第2のインバータ出力端子との間に共振リアクトルを接続し、この共振リアクトルL2を通して電流IL2を流して、制御相のキャパシタC3,C4の充電を行わせるようにすると、電流IL2による損失が生じるが、この損失は、電流IL2をキャパシタC3,C4の充放電を行わせるために必要最小限の大きさとすることにより、スイッチ素子Q3,Q4のZVS及びZCSを行わなかった時に生じるスイッチング損失よりも大幅に少なくすることができる。
図1に示されたDC−DCコンバータにおいて、インバータを300kHzで動作させた場合の実動作波形の一例を図3に示した。図3において、aは制御相のレグのスイッチ素子Q3,Q4の両端の電圧Vq3,Vq4の波形を示し、bはスイッチ素子Q3,Q4を流れる電流Iq3,Iq4の波形を示している。図示のように、図1に示されたDC−DCコンバータにおいては、制御相のレグのスイッチ素子Q3,Q4が時刻taでターンオンする際の動作をZVS及びZCS動作し、時刻tbでターンオフする際の動作をZVS動作とすることができるため、制御相のレグのスイッチ素子のスイッチング損失の低減を図ることができる。
上記の実施形態では、トランスの二次側に設ける整流回路を両波整流回路としたが、トランスの二次側に設ける整流回路Recは、各アームをダイオードにより構成したフルブリッジ回路からなる周知のダイオードブリッジ全波整流回路としてもよい。整流回路Recをダイオードブリッジ全波整流回路とする場合には、トランスTsfの二次コイルにセンタタップを設けることなく、該二次コイルの誘起電圧を全波整流回路の交流入力端子間に印加する。
以上のように、本発明によれば、インバータの入力端子間にコンデンサ分圧回路を接続するとともに、このコンデンサ分圧回路の分圧点と第2のインバータ出力端子 (制御相の上アームのキャパシタと下アームのキャパシタとの接続点)との間に共振リアクトルを接続して、コンデンサ分圧回路を電圧源として、共振リアクトルを通して制御相のレグの上アーム及び下アームのスイッチ素子の両端のキャパシタの充放電を行わせるようにしたので、制御相のレグの上アーム及び下アームのスイッチ素子のターンオフ時にZVS動作を行わせることができ、ターンオン時に共にZVS動作及びZCS動作を行わせることができる。従って、本発明によれば、フィルタ回路に設けるタップ付きインダクタの作用により得られる循環電流低減効果に加えて、制御相のスイッチ素子のスイッチング損失を低減させる効果を得ることができ、一次側位相シフト方式のDC−DCコンバータの変換効率の向上を図ることができる。