JP5591559B2 - 燃料噴射装置 - Google Patents

Description

本発明は、エンジンの吸気通路に燃料を噴射して供給するための燃料噴射装置に関し、殊に、エンジン始動時にインジェクタに至る燃料通路に燃料を充填するためのプライミングポンプを備えるとともに、内部に溜まった気体及び余剰燃料を燃料タンクに戻す燃料戻し通路を備えた燃料噴射装置に関する。

燃料を加圧してエンジンの吸気通路に噴射して供給する燃料噴射装置は、例えば特開２００１−１９３６１０号に記載されているように周知であり、図３に示すように燃料タンクから延設された燃料供給管５が接続されて燃料を圧送する燃料ポンプ３１と、燃料ポンプ３１から延びた高圧燃料通路３７が接続して燃料を噴射するソレノイド（インジェクタ）３２と、高圧燃料通路３７の途中に形成されて燃料噴射圧力を一定に調整する定圧室３３Ｂとを備えており、燃料を所定のタイミングで吸気通路１０に噴射してエンジンに供給するようになっている。

そして、この燃料噴射装置３Ｂには、定圧室３３Ｂから燃料戻し通路３９が延設されており、この燃料戻し通路３９が燃料タンクに至る燃料戻し管６に接続されている。また、その燃料戻し通路３９の途中には、プライミングポンプ３４Ｂが設けられており、エンジン始動時に定圧室３３Ｂを含む高圧燃料通路３７中に溜まった空気を手動で燃料タンク側に排出して、ソレノイドバルブ３２まで燃料を充填できるようになっており、エンジン運転時には、この燃料戻し通路３９を介して定圧室３３Ｂに溜まったベーパーや余剰燃料を燃料タンクに戻すようになっている。

しかし、この燃料噴射装置３Ｂを初めとする従来の燃料噴射装置では、図示したように燃料戻し通路３９が定圧室３３Ｂの下方に設けられている関係で、比重が軽く上方に集まった空気を完全には除去しにくい構造となっている。また、エンジン運転による熱で発生したベーパーも同様に上に集まりやすいことから、排出することが困難な状況となりやすい。

さらに、エンジン運転後に駆動を停止した場合には、エンジンの余熱で燃料タンクが暖められて内部の燃料が高圧になりやすく、その高圧に対応してプライミングポンプ３４Ｂを充分に作動させるためにチェックバルブのバネ圧を強く設定しておくのが通常であることから、燃料ポンプ３１が発生する吐出圧力では溜まったベーパーを充分に排出することが困難となりやすい。

このようにして燃料噴射装置３Ｂの高圧燃料通路３７中に溜まった空気やベーパー等の気体は、ソレノイドバルブ３２から吸気通路１０に排出されるまでの間、装置内で圧力の変動を生じる原因になることに加え、排出時には燃料の流出を妨げてしまうため、エンジンの運転性能に対し種々の悪影響を及ぼすことが問題となっている。

特開２００１−１９３６１０号公報

本発明は、上記のような問題を解決しようとするものであり、エンジンの吸気通路に燃料を噴射・供給する燃料噴射装置について、装置内に溜まった気体をスムースに排出できるようにすることを課題とする。

そこで、本発明は、燃料を加圧する燃料ポンプと、前記加圧された燃料をエンジンの吸気通路に噴射するソレノイドバルブと、燃料ポンプから延設され燃料を所定圧力に調整する定圧室を途中に有してソレノイドバルブに至る高圧燃料通路と、定圧室から延設されプライミングポンプを途中に有して燃料戻し管に接続される燃料戻し通路とを備えた燃料噴射装置において、定圧室はその上部空間の頂壁がソレノイドバルブに向かう高圧燃料通路の開口部よりも上方位置にあるとともに、燃料戻し通路が高圧燃料通路の開口部よりも上方位置の上部空間で開口しており、定圧室に溜まった気体をその上部空間から燃料戻し通路を経て燃料タンク側に排出することを特徴とするものとした。

このように、空気やベーパーが溜まりやすい定圧室において、ソレノイドバルブに向かう高圧燃料通路の開口部よりも上方（高い）位置の上部空間で燃料戻し通路を開口させたことにより、比重が軽く定圧室の上部空間に溜まった気体をそのまま燃料戻し通路に流入させることができるため、空気やベーパーを効率的に排出することができる。

また、この燃料噴射装置において、その定圧室は、調圧手段であるダイヤフラムの変位面が側方を向いて配置されて重力方向に直角なダイヤフラム変位方向の幅に対し上下方向の幅が大きい縦向きの空間を形成しており、その下部空間に燃料ポンプから延設された高圧燃料通路が接続されているとともにソレノイドバルブに向かう高圧燃料通路が開口し、その上部空間から燃料戻し通路が延設されている、ことを特徴としたものとすれば、空気やベーパー等の気体と液体の燃料とが上下に分かれやすくなり気体を効率的に排出しやすい。

さらに、上述した燃料噴射装置において、そのプライミングポンプは、燃料戻し通路の途中で所定間隔を置いて側方から接続された２つのチェックバルブと、この２つのチェックバルブの開口側を覆ってポンプ室を形成する弾性素材によるカップ状の吸引・押出手段からなるものであり、その２つのチェックバルブの間にバイパス路が形成されてこのバイパス路に流体の通過を燃料戻し方向のみに制限する逆止弁を備えており、プライミングポンプ使用時に逆止弁が閉弁して流体を通過させず、燃料戻し時及び気体の排出時には逆止弁が開弁して流体を通過させることにすれば、プライミングポンプ不使用時に余剰燃料及び気体を排出しやすくなり、プライミングポンプ使用時には燃料の呼び込みが良好なものとなる。

さらにまた、上述した燃料噴射装置は外形が略直方体に形成されており、その底面内側にダイヤフラムを底面に平行にして燃料ポンプが設けられており、その１側面の内側でダイヤフラムをその側面に平行にして定圧室が設けられている、ことを特徴としたものとすれば、各機能部分を嵩張ることなく効率的に設けることができ、全体としてコンパクトに収めやすくなる。

定圧室内の気体をソレノイドバルブに向かう高圧燃料通路の開口部よりも上方（高い）位置の上部空間から排出するものとした本発明によると、装置内に溜まった気体をスムースに排出することができるものである。

本発明における実施の形態としての燃料噴射装置を配設したエンジンの燃料供給システムの配置図である。 図１の燃料噴射装置の詳細な構成を説明するための縦断面図である。 従来例の縦断面図である。

以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための形態を説明する。尚、本発明において、上下方向とはエンジンを登載した機器の通常の使用状態において、重力方向に一致する方向を指す。また、上部空間、下部空間とは、通常の使用状態において所定の空間内の上下方向の中間位置を基準として、上側の空間、下側の空間を指すものとする。

図１は、本実施の形態である燃料噴射装置３Ａを配設したエンジン１の燃料供給システムの構成を示した配置図であり、エンジン１の吸気通路１０の一部を構成するように配設された燃料噴射装置３Ａには、燃料タンク２から延設された燃料供給管５が接続されており、吸気通路１０に噴射口側を露出したソレノイドバルブ３２により燃料を所定のタイミングで噴射してエンジン１に供給するものである。

図２を参照して、この燃料噴射装置３Ａには、ダイヤフラムで区画された燃料加圧室を有した燃料ポンプ３１が付設されており、その背圧室側にエンジン１の脈圧を導入することによりダイヤフラムを往復変位させて燃料を加圧し、高圧燃料通路３６を介してソレノイドバルブ３２に供給するようになっている。また、高圧燃料通路３６の途中には、燃料ポンプ３１で加圧されて高圧となった燃料を一定圧力に調整する定圧室３３Ａが配設されている。

さらに、定圧室３３Ａからは燃料戻し通路３８が延設されており、燃料戻し管６に接続されて余剰燃料を燃料タンク２に戻すようになっている。そして、この燃料戻し通路３８の途中には、２つのチェックバルブ３４１，３４２が所定間隔で側方から接続されて、そのバルブ開口部が露出する側面の空間を覆うように吸引・押出手段として弾性樹脂製のカップ状部材３４３が付設されており、これらでプライミングポンプ３４Ａを構成している。

そして、本実施の形態において、この定圧室３３Ａはその上部空間の頂壁がソレノイドバルブ３２に向かう高圧燃料通路３６の開口部よりも上方（高い）位置にあるとともに、燃料戻し通路３９の開口部が高圧燃料通路３６の開口部よりも上方（高い）位置で上部空間に配置されており、定圧室３３Ａに溜まった空気やベーパー等の気体を、この上部空間から燃料戻し通路３８を経て燃料タンク側２に排出するように形成されている。

本実施の形態では、定圧室３３Ａはその圧力を調整するためのダイヤフラム３３Ａがその変位面を側方に向けて配置されており、その変位方向の幅に対し上下方向の幅が大きい縦向きの空間を形成しており、円盤を上面が横に向くように立たせたような形状となっている。また、その上部空間において頂壁に近接した位置からは燃料戻し通路３８が延設され、その下部空間において底壁に近接した位置から燃料ポンプ２から延びた高圧燃料通路３６が接続されているとともにそのやや上方でソレノイドバルブ３２に向かう高圧燃料通路３６が開口している。

このような構成としたことで、比重の軽い空気やベーパー等の気体は、重力方向に対し平行に延びて縦方向に長い定圧室３３Ａの上部空間に集まって液体燃料と上下に分離されやすくなり、上部空間の頂壁に近接して開口した燃料戻し通路３８からスムースに排出される。一方、ソレノイドバルブ３２に向かう高圧燃料通路３６の開口部は、燃料戻し通路３８の開口部とは離れた位置の下部空間にあることから、気体がソレノイドバルブ３２側に流入しにくいため、エンジン運転性能を良好に維持しやすいものとなる。

ところで、燃料戻し通路３８は、空気やベーパー等の気体を排出することに加え、燃料ポンプ３１から吐出された余剰燃料を燃料タンク２に戻すことにも使用されるが、従来の燃料噴射装置においてエンジン停止後の高温により燃料タンク内の燃料が高圧なることに対応するために、その途中に設けられたプライミングポンプ３４Ａのチェックバルブのバネ圧は強く設定してあり、この部分を通過するのに大きな抵抗を受けることになって、気体の排出と余剰燃料の流れがスムースではなかった。

そこで、本実施の形態では、燃料戻し通路３８上に所定間隔で側方から２つのチェックバルブ３４１，３４２を所定間隔で接続して、両チェックバルブ３４１，３４２の間にバイパス路を残しておき、この部分に逆止弁３５を配設して流体の通過を燃料戻し方向のみに制限するものとした。これにより、エンジン始動時にプライミングポンプ３４Ａを使用する場合には、ポンプ内に効率良く燃料を呼び込みながら吐出した燃料が逆流しないものとなり、エンジン始動時以外の場合には、プライミングポンプ３４Ａをバイパスして逆止弁３５を介し余剰燃料や空気を通過させることができ、これらの流れがスムースなものとなる。

尚、本実施の形態においては、燃料噴射装置３Ａは外形が略直方体状とされており、その底面内側にダイヤフラムを底面に平行にして燃料ポンプ３１が設けられ、その１側面の内側でダイヤフラムをその側面に平行にして定圧室３３Ａが設けられていることから、燃料噴射装置に必要な各機能部分を嵩張ることなく効率的に設けたものなっており、全体としてコンパクトに収まっている。

以上、述べたように、エンジンの吸気通路に燃料を噴射・供給する燃料噴射装置について、本発明により装置内に溜まった気体をスムースに排出できるようになり、エンジンの運転において供給燃料の安定した圧力と流量を確保しやすいものとなって、エンジン運転性能を良好に維持しやすいものとなった。

１ エンジン、２ 燃料タンク、３Ａ 燃料噴射装置、５ 燃料供給管、６ 燃料戻し管、１０ 吸気通路、３１ 燃料ポンプ、３２ ソレノイドバルブ、３３Ａ 定圧室、３４Ａ プライミングポンプ、３５ 逆止弁、３６ 高圧燃料通路、３８ 燃料戻し通路、３４１，３４２ チェックバルブ

Claims (3)

1. 燃料を加圧する燃料ポンプと、前記加圧された燃料をエンジンの吸気通路に噴射するソレノイドバルブと、前記燃料ポンプから延設され燃料を所定圧力に調整する定圧室を途中に有して前記ソレノイドバルブに至る高圧燃料通路と、前記定圧室から延設されプライミングポンプを途中に有して燃料戻し管に接続される燃料戻し通路とを備えた燃料噴射装置において、前記定圧室はその上部空間の頂壁が前記ソレノイドバルブに向かう前記高圧燃料通路の開口部よりも上方位置にあるとともに、前記燃料戻し通路が前記高圧燃料通路の開口部よりも上方位置で前記上部空間にて開口しており、前記定圧室に溜まった気体を前記上部空間から前記燃料戻し通路を経て燃料タンク側に排出する燃料噴射装置において、前記プライミングポンプは、前記燃料戻し通路の途中で所定間隔を置いて側方から接続された２つのチェックバルブと、該２つのチェックバルブの開口側を覆ってポンプ室を形成する弾性素材によるカップ状の吸引・押出手段からなり、前記２つのチェックバルブの間にバイパス路が形成されて前記バイパス路に流体の通過を燃料戻し方向のみに制限する逆止弁を備えており、前記プライミングポンプ使用時に前記逆止弁が閉弁して流体を通過させず、燃料戻し時及び気体排出時には前記逆止弁が開弁して流体を通過させることを特徴とした燃料噴射装置。
2. 前記定圧室は、調圧手段であるダイヤフラムの変位面が側方を向いて配置されて重力方向に直角なダイヤフラム変位方向の幅に対し上下方向の幅が大きい縦向きの空間を形成しており、その下部空間に前記燃料ポンプから延設された前記高圧燃料通路が接続されているとともに前記ソレノイドバルブに向かう高圧燃料通路が開口し、前記上部空間から前記燃料戻し通路が延設されていることを特徴とする請求項１に記載した燃料噴射装置。
3. 外形が略直方体に形成されており、前記略直法体の底面内側にダイヤフラムを前記底面に平行にして前記燃料ポンプが設けられているとともに、前記略直方体の１側面の内側でダイヤフラムを前記側面に平行にして前記定圧室が設けられていることを特徴とする請求項１または２に記載した燃料噴射装置。

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