実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態1について、図1乃至図8を参照しながら説明する。
図1は、実施の形態1に係る空気調和機100の構成を模式的に示す構成図であり、冷凍サイクルの冷媒回路も合わせて図示している。この空気調和機100は、室内に設置される室内機1と屋外に設置される室外機2とから構成されるセパレート形であり、室内機1と室外機2の間は、接続配管11a、11bで冷媒回路が接続されている。接続配管11aは凝縮工程を通過後の冷媒が流れる液側の接続配管で、接続配管11bは蒸発工程を通過後の冷媒が流れるガス側の接続配管である。
室外機2には、冷媒を圧縮して吐出する圧縮機3、冷媒の流れ方向を切換える冷媒流路切換弁4(以降、四方弁4と呼ぶ)、外気と冷媒との熱交換を行う室外熱交換器5、開度が変更可能で、高圧の冷媒を低圧に減圧する電子制御式膨張弁などの減圧装置6(以降、膨張弁6と呼ぶ)が配置され、室内機1には室内空気と冷媒との熱交換を行う室内熱交換器7が配置される。これらを接続配管11a、11bを含む配管で順次接続して冷媒回路、すなわち圧縮機3により冷媒を循環する圧縮式冷凍サイクル(圧縮式ヒートポンプサイクル)を構成している。
この空気調和機100の運転を制御する制御装置が、室内機1と室外機2にそれぞれ設置され、室内機1には室内側制御装置10a、室外機2には室外側制御装置10bが配置される。それぞれが制御基板を保有し、その基板上に空気調和機100を運転制御するための各種回路が構成されている。室内側制御装置10aと室外側制御装置10bは室内外連絡ケーブル10cにより接続されている。この室内外連絡ケーブル10cは接続配管11a、11bとともに束ねられている。
なお、室内側制御装置10aと室外側制御装置10bとは、室内外連絡ケーブル10cを介して互いに情報をやり取りして空気調和機100を制御しているので、ここでは、説明の便宜上、室内側制御装置10aと室外側制御装置10bとをあわせて制御装置10と定義する。
室外機2には、室外熱交換器5の近くに送風機である室外送風ファン8が設置され、室外送風ファン8を回転させることで、室外熱交換器5を通過する空気流を生成する。この室外機2では、室外送風ファン8としてプロペラファンを用いており、室外送風ファン8は、当該室外送風ファン8が生成する空気流において室外熱交換器5の下流側に位置している。
同様に、室内機1の内部には、室内熱交換器7の近くに室内送風ファン9が設置されていて、この室内送風ファン9の回転により室内熱交換器7を通過する空気流を生成する。この室内機1では、クロスフローファンを室内送送風ファン9として使用しており、当該室内送風ファン9が生成する空気流において室内熱交換器7の下流側に位置している。
室内機1には、当該室内機1が設置される室内の空気温度である室内温度Taを測定し、その情報信号を室内側制御装置10aに送る室内温度センサー12が設けられている。また、この空気調和機100のユーザが、空気調和機100に対して運転入切や運転内容の指示を行うワイヤレスのリモコン13から発信された指示信号を受信し、これを室内側制御装置10aに伝達するリモコン受信部14が設置されている。
圧縮機3は、起動時等を除き、通常運転時では、20〜120rpsの範囲で運転回転数を変更可能で、回転数の増加に伴って冷媒回路の冷媒循環量が増加する。圧縮機3の回転数は、室内温度センサー12によって得られる現在の室内温度Taと、ユーザがリモコン13を使って指示した設定温度Tsとの温度差ΔTに応じて、室外側制御装置10aが制御している。温度差ΔTが大きいと圧縮機3を高回転で運転し、冷媒循環量を増加させる。
室内送風ファン9の回転数も複数段階に変更(切換え)可能であり、この室内機1では、冷房や暖房の通常運転時に、強風、中風、弱風とその回転数が3段階に切換え可能なタイプである。室内機1の風速設定が自動モードとされている場合では、圧縮機3と同様に、室内送風ファン9の回転数の切換えも、現在の室内温度Taと設定温度Tsの温度差ΔTに応じて行われ、その温度差ΔTが大きく、圧縮機が高回転数で運転されているときには、切換え可能な範囲で最も高い回転数である強風にて室内送風ファンが回転し、室内熱交換器7を通過する空気流の流量(風量)を最大とする。風速自動モードでは、室内送風ファン9の回転数は概ね圧縮機3の回転数と連動しており、圧縮機3が高回転であれば、室内送風ファン9も高回転である。
室内送風ファン9の回転数の切換えは、室内側制御装置10aが制御している。同様に室外送風ファン8も複数段階に回転数の切換えが可能であり、現在の室内温度Taと設定温度Tsの温度差ΔTに応じて回転数の切換えが行われる。室外送風ファン8の回転数の切換えは、室外側制御装置10bが制御している。また、四方弁4の冷媒流れ方向の切換えや、膨張弁6の開度も、室外側制御装置10bが制御している。
室内機1には、室内送風ファン9が生成する空気流により、室内熱交換器7を通過し、その際に室内熱交換器7内を流れる冷媒と熱交換した(冷房運転ならば冷やされ、暖房運転ならば暖められた)調和空気が、室内に吹き出されるときに、その吹き出す風向を左右方向に変更可能とする左右風向板15と、上下方向に変更可能とする上下風向板16が設けられている。室内機1の風向設定が自動モードである場合には、左右風向板15と上下風向板16のそれぞれの向き(角度)、すなわち室内への吹き出し気流の風向は、室内側制御装置10aが制御する。
冷房運転では、四方弁4が実線で示すような冷媒回路に切換えられ、圧縮機3から吐出された高温高圧のガス冷媒は室外熱交換器5へ流入し、室外熱交換器5が凝縮器として動作する。室外送風ファン8の回転により生成される空気流が室外熱交換器5を通過する際に、冷媒と通過する屋外空気とが熱交換して、冷媒の凝縮熱が屋外空気に付与される。こうして冷媒は、室外熱交換器5で凝縮して高圧低温な液冷媒となり、次に膨張弁6で断熱膨張して低圧低温の二相冷媒となる。
続いて室内機1にて、冷媒は室内熱交換器7に流入し、室内熱交換器7が蒸発器として動作する。室内送風ファン9の回転で生じる空気流が室内熱交換器7を通過する際に、冷媒と通過する室内空気とが熱交換して、冷媒が室内空気から蒸発熱を奪って蒸発し、通過する室内空気は冷却される。冷媒は、室内熱交換器7にて蒸発して低温低圧な冷媒となり、圧縮機3で再び高温高圧な冷媒に圧縮される。冷房運転ではこのサイクルが繰り返される。
四方弁4を点線で示すような回路に切換えれば、冷媒は冷房運転時と逆方向に流れ、室内熱交換器7を凝縮器、室外熱交換器5を蒸発器として動作させ、室内熱交換器7を通過する室内空気に凝縮熱を与えて暖め、暖房運転となる。
図2は空気調和機100の室内機1の模式的な縦断面図であり、室内機1本体の左右方向の略中央での縦断面である。この室内機1は、室内の壁面の天井に近い上部に据付けられる壁掛けタイプのもので、左右方向が長手方向となるような略長方体の筐体20の内部に室内熱交換器7や室内送風ファン9を収納している。筐体20の前面側(正面)には、上下方向に回動して開閉可能な正面意匠パネル17が取り付けられている。
図2に示すように、筐体20の上面には、室内送風ファン9の回転で生じる空気流の室内機1への入口となる吸込口18が形成され、筐体20の下部には、その空気流への出口となる吹出口19が、室内機1本体の左右方向を長手方向とする細長い形状で形成されている。吸込口18から吹出口19に至る風路の途中に、空気流でいうと上流側に室内熱交換器7、下流側に室内送風ファン9が配置される。室内送風ファン9は、クロスフローファンの回転軸線が室内機1本体の左右方向となるように水平に設置され、その室内送風ファン9の上流側を囲うように、フィンアンドチューブ型の室内熱交換器7が設置される。そして、吸込口18と室内熱交換器7の間には、エアフィルター21が設置されている。また、図2には図示していないが、室内機1には、室内温度Taを検出する室内温度センサー12が取り付けられている。
リモコン13からの空気調和機100の運転開始指示をリモコン受信部14が受け取ると、制御装置10は空気調和機100の各種機器の制御を開始し運転が始まる。室内機1においては、室内送風ファン9が回転を始める。室内送風ファン9の回転により、筐体20上面の吸込口18から室内機1本体(筐体20)の内部に吸い込まれ、筐体20下部の吹出口19から吹き出される室内空気の空気流が生成される。また、室外機2にて圧縮機3も運転が開始され、冷媒回路を冷媒が循環し冷凍サイクルが稼動状態になる。同時に室外送風ファン8も回転を始める。
室内機1において、吸込口18から吸い込まれた室内空気は、まずエアフィルター21を通過するが、その時に、吸い込み空気中に含まれている塵埃等がエアフィルター21で除去される。そしてその下流側に位置する室内熱交換器7を通過する際に、室内熱交換器7内を流れる冷媒と熱交換する。冷房運転であれば、室内熱交換器7が蒸発器として作用し、通過する室内空気は冷媒に蒸発熱を奪われることで冷やされ、暖房運転であれば、室内熱交換器7が凝縮器として作用し、通過する室内空気は冷媒から凝縮熱を付与されることで暖められる。
室内熱交換器7で冷媒と熱交換した室内空気は調和空気となって、室内送風ファン9の送風作用によりクロスフローファンである室内送風ファン9を横断して、吹出口19へと導かれ、そのまま吹出口19から室内へと吹き出される。室内送風ファン9から吹出口19に至る風路の途中に左右風向板15、吹出口19に上下風向板16が設置されており、調和空気は、左右風向板15によって左右方向の風向、上下風向板16によって上下方向(天井−床方向)の風向が調整されて、吹出口19から吹き出される。
空気調和機100の運転中は、リモコン13によるユーザの運転内容の指示に基づき、制御装置10が室内機1および室外機2の各種機器を制御している。制御装置10は、例えば室内温度センサー12が検出(測定)する現在の室内温度Taが、ユーザがリモコン13を使って指示する設定温度Tsに早く到達し、到達したならばその温度の状態が維持されるように、圧縮機3の回転数、膨張弁6の開度、室外送風ファン8と室内送風ファン9の回転数などを制御する。
図3は、この空気調和機100の制御装置10を中心とする構成ブロック図である。制御装置10は、マイクロコンピュータ22(以下、マイコン22と呼ぶ)を有し、マイコン22には、入力回路23、演算回路24、出力回路25が組み込まれている。入力回路23は、リモコン13からの運転入切、運転モード、設定温度Ts、風量(風速)や風向の設定(自動モードを含む)などの指示信号や、室内温度センサー12からの現在の室内温度Taの検出信号を受け取って、これらを演算回路24へ提供する。リモコン13の指示信号は実際には、室内機1本体側のリモコン受信部14が中継ぎして入力回路23へ入力される。
演算回路24は、各種の制御設定値(予め設定されている閾値、条件値や定数)やプログラムが記憶されているメモリ26と、演算処理や判断処理が行われるCPU27と、を備える。演算回路24では、入力回路23から提供された情報を用い、メモリ26とCPU27が協働して、演算、判断処理の最終結果を次の出力回路25へ提供する。出力回路25は受け取った最終結果に従って各種機器に制御信号を出力する。例えば、圧縮機3や室内送風ファン9に回転数の制御信号や、左右風向板15や上下風向板16の回動角度の信号を出力する。
前述のとおり、この空気調和機100は、室内機1と室外機2にそれぞれ制御装置10a、10bを備えているが、これらは室内外連絡ケーブル10cを介して相互に情報をやり取りし、室内機1、室外機2のそれぞれが有する各種機器を運転制御しているので、ここでは、便宜上、制御装置10a、10bを合わせて制御装置10とみなしている。実際には、制御装置10a、10bのそれぞれがマイコン22を有し、例えばメモリ16が記憶している制御設定値等は異なっている。なお、室内機1か室内機2のどちらか一方にのみ制御装置10を搭載し、その制御装置10が室内機1、室外機2のそれぞれが有する各種機器の運転を制御するようにしてもよい。
次に、図4はこの空気調和機100の制御ブロック図であり、図3における演算回路24の機能のなかで、圧縮機3と室内送風ファン9の回転数制御に係わる部分に特化して示している。演算回路24内に図示される各構成要素は、実際に図のようにそれぞれ独立して存在しているわけではなく、説明のために制御内容を機能的に区分けしたものであり、それぞれが演算回路24の保有する一連の制御プログラムに組み込まれているものである。
リモコン13からの指示信号を室内機1本体の前面側に設置されているリモコン受信部14が受信し、その信号がマイコン22の入力回路23を経て、演算回路24内でまず受信内容解析部28に伝わり、ここで指示内容が解析される。解析された情報のうち、設定温度Tsが温度差算出部30に伝えられる。設定温度Tsは、ここではユーザが希望する室内温度であり、ユーザがリモコン13にて、例えば28℃というようにセ氏温度で設定ができる。
一方、室内機1本体に取り付けられた室内温度センサー12の検出信号は、入力回路23を経て、演算回路24内でまず室内温度換算部29に伝わり、ここで電気信号から温度データに変換され、現在の室内温度データとなる。そして、この現在の室内温度Taが温度差算出部30に伝えられる。
温度差算出部30では、室内温度換算部29から届いた現在の室内温度Taと受信内容解析部28から届いた設定温度Tsとの温度差ΔTが算出される。受信内容解析部28が解析した運転モードの情報が冷房運転であれば、温度差ΔT=Ta−Tsにて算出される。そして、温度差算出部30で算出された温度差ΔTは、圧縮機3の運転を制御する圧縮機制御部31と室内送風ファン9の運転を制御する室内送風ファン制御部32にそれぞれ伝達される。
圧縮機制御部31では、温度差算出部30からの温度差ΔTに応じて圧縮機3の回転数を制御する。冷房運転において、ΔT>0であれば圧縮機3を起動し、圧縮機3の回転数を予め定められたスピードで段階的に上昇させていく。ΔTの大きさに応じて最大で圧縮機3を許容最大回転数(ここでは120rps)まで上昇させ、冷凍サイクルの冷媒循環量を増して冷房能力を高める。冷房効果により、室内温度が低下し始めると、すなわち温度差ΔT(>0)が減少傾向を示するようになると、圧縮機制御部31は、ΔTの大きさに準ずるように圧縮機3の回転数を減少させていく。ΔTがゼロ近傍(ただしΔT>0)では、許容最小回転数(ここでは20rps)にて圧縮機3を運転する。
そして、温度差算出部30からの温度差ΔTが0以下(ΔT≦0)となると、圧縮機制御部31は、過冷房防止のために圧縮機3の運転を停止し、当該空気調和機100を、上記の背景技術の欄で述べたような圧縮機停止状態にする。温度差ΔTが再びΔT>0となれば、圧縮機制御部31は、圧縮機3を再起動させ、温度差ΔTに応じて圧縮機3の回転数を制御する。なお、圧縮機3の短時間での頻繁なる運転停止と再起動の繰り返しを避けるために、上記の背景技術の欄で述べたのと同様な圧縮機再起動の規制制御をこの圧縮機制御部31も行う。
受信内容解析部28が解析した風速設定の情報が自動モードであれば、室内送風ファン制御部32も、圧縮機制御部31と同様に温度差算出部30からの温度差ΔTに応じて室内送風ファン9の回転数の切換え制御を行う。ΔTが大きいときは強風として最大風量となる空気流を生成し、ΔTの減少に追従して、中風、弱風と順に切換えて風量を減少させていく。もし、風速設定の情報が、特定の風量を指定するものであれば、その設定を優先して、温度差ΔTに応じた切換えを行わないで、例えば強風を指定する風速設定情報であれば、温度差ΔTに関係なく、強風で室内送風ファン9を回転させる。
風速設定が自動モードの場合、圧縮機3が運転状態にあれば、室内送風ファン制御部32は、概ね圧縮機3の回転数に連動するように、室内送風ファン9を回転数制御している。圧縮機3が高回転で運転中は、室内送風ファン9を強風として最大風量で回転させ、圧縮機3の回転数低下に伴って、中風、弱風と切換えて風量を低下させていく。温度差ΔTがメモリ26に格納されている比較的にゼロに近い条件値X(ただしX>0)を下回ると、すなわちΔT<Xとなると、室内送風ファン制御部32は、室内送風ファン9を弱風として最小風量で運転する。圧縮機制御部31により圧縮機3が許容最小回転数で運転しているときには、室内送風ファン9は弱風で運転される。
ここで従来の室内送風ファン制御部では、ΔT≦0で圧縮機停止状態のときであっても、空気調和機が運転入状態であれば、圧縮機3の運転時と同じアルゴリズムに基づいて室内送風ファン9の回転数の切換え制御を行うようになっていた。そのため、ΔT≦0で圧縮機停止状態にあるということは、上記した条件値Xがゼロより大であることから、ΔT≦Xの条件を満たすこととなり、圧縮機停止状態では、室内送風ファン9を最小風量の弱風で運転していた。もしくは、圧縮機停止状態では、圧縮機3の運転停止と同時に室内送風ファン9の回転を停止させるものであった。
この実施の形態1に示す空気調和機100は、室内送風ファン制御部32に従来技術にはない固有な特徴を有している。図4に示すように、室内送風ファン制御部32には、圧縮機3が運転中の室内送風ファン9の回転数制御を行う圧縮機運転状態時制御部33と、この圧縮機運転状態時制御部33のアルゴリズムとは別なアルゴリズムを有して、ΔT≦0で圧縮機停止状態時の室内送風ファン9の回転数制御を行う圧縮機停止状態時制御部34とが存在する。すなわち、この室内送風ファン制御部32は、圧縮機停止状態では、圧縮機3の運転時と同じアルゴリズムに基づいて室内送風ファン9の回転数を決定するのではなく、圧縮機3の運転時(圧縮機運転状態時)とは異なるアルゴリズムに基づいて圧縮機停止状態における室内送風ファン9の回転数を決定するのである。
このように、この空気調和機100の室内送風ファン制御部32は、冷房運転時、温度差算出部30から温度差ΔT(ΔT=Ta−Ts)を受け取り、ΔT>0であれば、圧縮機3が運転中であると判断し、圧縮機運転状態時制御部33によって室内送風ファン9の回転数を制御し、ΔT≦0であれば、圧縮機停止状態であると判断して、圧縮機停止状態時制御部34により室内送風ファン9の回転数を制御する。
なお、圧縮機3が運転中(圧縮機運転状態)であるか、圧縮機停止状態であるかを、上記のように温度差算出部30からの温度差ΔTに基づいて、室内送風ファン制御部32自身が判断するようにはしないで、圧縮機制御部31から圧縮機3が運転中であるか、圧縮機停止状態であるかの情報を受け取るように構成してもよい。
次に、室内送風ファン制御部32が行う室内送風ファン9の具体的な回転数制御の内容について図5乃至図7により詳細に説明する。
図5は、この空気調和機100の冷房運転時における室内送風ファン9の制御動作概念を示す説明用概念図で、言い換えれば、室内送風ファン制御部32の制御内容の説明用概念図であり、横軸に現在室内温度Taと設定温度Tsとの温度差ΔT(ΔT=Ta−Ts)、縦軸に室内送風ファン9の運転回転数を示している。また、図6および図7は、この空気調和機100の冷房運転時における室内送風ファン9の制御内容を示すフローチャートであり、言い換えれば、室内送風ファン制御部32の制御内容のフローチャートとなるが、一部、圧縮機制御部31の制御内容をも含んでいる。
図5において、横軸の温度差ΔTは、矢印が示す右側に向かうほど大きくなる。温度差ΔT=0を示す点線L0より右側でΔT>0となる領域が、圧縮機運転状態であり、圧縮機3が運転されていて冷凍サイクルが稼動している状態である。この領域においては、室内機1の吹出口19からは、室内熱交換器7で冷媒と熱交換して冷やされた室内空気が冷気となって吹き出されている。そして、点線L0より左側でΔT≦0となる領域が、過冷房防止のための圧縮機停止状態を示している。
これより、図6および図7のフローチャートと図5の動作概念図とを互いに関連させながら説明をしていく。図6において、空気調和機100に対してユーザからの冷房運転開始指令により冷房運転がスタートすると、ステップS1で、制御装置10、具体的には圧縮機制御部31および室内送風ファン制御部32が、温度差算出部30から温度差ΔT(ΔT=現在室内温度Ta−設定温度Ts[℃])を取り込み(図4参照)、続くステップS2にて、圧縮機制御部31が、取り込んだその温度差ΔTが0より大きいか否かの条件判断を行う。
ここで温度差ΔTがΔT>0℃であればYESとなって、ステップS3に進み、圧縮機制御部31が圧縮機3を起動させ、圧縮機3を運転状態にする。図5において、点線L0よりも右側の領域がその対象となる。なお、ステップS1における温度差ΔTの取り込みが、冷房運転スタートから2回目以降で、すでに圧縮機3が運転状態にある場合には、ステップS3では、圧縮機制御部31は圧縮機3の運転状態を継続させる。ステップS2において、ΔT>0℃でない場合には(NOとなれば)、ステップS9に進み、圧縮機制御部31は、圧縮機3の停止状態を継続させ、(ア)を経由して図7のステップS10へと進むが、その説明は後述する。なお、冷房運転スタート後、最初にステップS1で取り込んだΔTが、ステップS2にてΔT>0℃でない場合(NOとなる場合)とは、冷房運転の指令がユーザによりなされた時点で、現在の室内温度Taが、設定温度Ts以下であることを意味する。
なお、温度差ΔTの単位として、degを用いてもよいが、ここでは現在の室内温度Taも設定温度Tsも単位に℃を使用しているので、温度差ΔTも℃を用いるものとする。また、図6および図7は、室内送風ファン9の制御内容を説明するためのものであるので、圧縮機制御部31による圧縮機3の回転数制御に関する処理手順については省略している。
ステップS3で圧縮機3が運転状態となったら、もしくは、運転状態であったら、続いてステップS4において、室内送風ファン制御部32が、ステップS1で取りこんだ温度差ΔTが3℃以上か否かの条件判断を行う。温度差ΔTがΔT≧3℃であればYESとして、ステップS5に進んで、室内送風ファン制御部32は室内送風ファン9を強風として最大風量で回転させ、再びステップS1に戻って、再び温度差ΔTを取り込み、ステップS2以降の条件判断が再び行われる。ここで、このステップS5の状態が、図5においてaで示されている区間であり、ΔT>0の圧縮機運転状態にて、区間aはここではΔT≧3℃となる範囲を表していて、室内送風ファン9の回転数(風量)は最大風量となる強風である。
ステップS4において、ΔT≧3℃でなければNOとなって、ステップS6へと進む。ステップS6では、室内送風ファン制御部32が、S1で取り込んだ温度差ΔTが、1.5℃≦ΔT<3℃であるか否かの条件判断を行う。その温度差ΔTが1.5℃≦ΔT<3℃であれば、ステップS7に進んで、室内送風ファン制御部32は室内送風ファン9を、強風より回転数が低い中風で回転させ、再びステップS1に戻る。ここで、このステップS7の状態が、図5においてbで示されている区間であり、圧縮機運転状態にて、区間bはここでは1.5℃≦ΔT<3℃となる範囲を表していて、室内送風ファン9の回転数(風量)は中風である。
ステップS6において、1.5℃≦ΔT<3℃でなければ、ステップS8に進み、室内送風ファン制御部32は室内送風ファン9を、中風よりさらに回転数が小さい弱風として最小風量で回転させ、再びステップS1に戻る。ここで、このステップS8の状態が、図5においてcで示されている区間であり、圧縮機運転状態において、区間cはここでは0℃<ΔT<1.5℃となる範囲を表していて、室内送風ファン9の回転数(風量)は最小風量となる弱風である。
圧縮機運転状態が続けば、室内温度Taは徐々に低下し、温度差ΔTも小さくなっていく。室内送風ファン9の回転数も強風から中風、そして弱風へと切り換わっていく。そうなると、ステップS1乃至S8のサイクルが繰り返されていると、いずれステップS2にて、NOとなる、すなわちΔT≦0℃となるときがくる。その場合には、ステップS9へ進んで、圧縮機制御部31によって、運転している圧縮機3を停止し、過冷房防止のための圧縮機停止状態へと移行する。その後は、図6における(ア)となって、図7のステップS10に進むことになる。
このような図6に示す圧縮機運転状態における室内送風ファン9の回転制御に係る処理手順であるステップS4乃至S8は、室内送風ファン制御部32においては、圧縮機運転状態時制御部33が担っている。前述した圧縮機運転状態で室内送風ファン9の回転数を弱風とするΔTの条件値Xが、図6においては、1.5℃ということである。なお、図6に示す温度差ΔTの各条件値は一つの実施例に過ぎず、ここに示す値に限定されるものでない。条件値は適宜設定可能なものである。
また、ステップS2において、圧縮機3の起動の条件値として、ΔT>0℃とせずに、例えば、ΔT>−0.5℃やΔT>−1℃などのように、0よりも所定値だけ小さい値を用いてもよい。これは、言い換えれば、過冷房防止のための圧縮機停止状態にする条件として、現在の室内温度Taが設定温度Ts以下とするのではなく、設定温度よりも所定温度幅(例えば、上記であれば0.5℃や1℃)だけ低い基準温度Tb以下とすることである。そのような場合では、図5における点線L0は、ΔT=−0.5やΔT=−1を示すこととなる。
またここで、圧縮機運転状態におけるステップS5での室内送風ファン9の回転数を強風とするとき、同じくステップS7で中風とするとき、ステップS8で弱風とするときであるが、室内送風ファン9が停止の(回転数ゼロの)状態から、強風もしくは中風もしくは弱風にするような場合であっても、すでにステップS1乃至S8のサイクルが繰り返されていて、回転中の室内送風ファン9を、弱風から中風へ、もしくは中風から強風へ、もしくは弱風から強風へと回転数を増加させる場合、または、強風から中風へ、もしくは中風から弱風へ、もしくは強風から弱風へと回転数を低下させる場合であっても、その目標とする回転数まで一気に増加もしくは低下させるようにしている。これは、圧縮機3の回転数制御にすばやく追随して冷房能力の増加もしくは低減を敏速に実現させるためである。
ここで、この空気調和機100の室内機1においては、室内送風ファン9の回転数を強風で920rpmとして、中風で780rpm、弱風では610rpmとしている。もちろん、この回転数は一つの実施例に過ぎず、ここに示す値に限定されるものではなく、適宜設定可能なものである。
図7は、本発明の実施の形態1を示す空気調和機100の特徴部分となる室内送風ファン制御部32における圧縮機停止状態時制御部34の工程を示すフローチャートである。すなわち、圧縮機停止状態での室内送風ファン9の回転数制御に関わるフローチャートであり、図7に示すように、従来と異なり、この空気調和機100では、過冷房防止のための圧縮機停止状態においても、温度差ΔTに応じた室内送風ファン9の回転数制御を行うことを特徴としている。
図6に示すフローチャートにおいて、ステップS2でNOである場合、すなわち、ユーザから冷房運転開始の指令があったが、現在の室内温度Taが設定温度Ts以下であり、圧縮機3を起動させないとき、もしくは、現在の室内温度Taが設定温度Ts(もしくは基準温度Tb)以下となって、ステップS3で運転状態にあった圧縮機3を停止させ、圧縮機停止状態となったときには、従来の空気調和機であれば、ΔT>0となり圧縮機3が起動もしくは再起動するまでの間、最小風量である弱風で一定して室内送風ファン9を回転させるか、もしくは室内送風ファン9の回転を停止していた。
しかし、この空気調和機100では、冷房運転におけるそのようなΔT≦0のときには、図7に示すステップS10へと進み、室内送風ファン制御部32が、ステップS1で取りこんだ温度差ΔTが、−1℃<ΔT≦0℃であるか否かの条件判断を行う。その温度差ΔTが−1℃<ΔT≦0℃であれば、ステップS11に進み、室内送風ファン制御部32は、室内送風ファン9の回転数を弱風+α(ただしα>0)として回転させ、(イ)を経由して図6のステップS1に戻る。このステップS11の状態が、図5においてAで示されている区間であり、圧縮機停止状態において、区間Aはここでは−1℃<ΔT≦0℃となる範囲を表しており、室内送風ファン9は、弱風よりαだけ高い回転数で回転する。
ステップS10にて、−1℃<ΔT≦0℃でなければ、ステップS12へと進み、ステップS1で取り込んだ温度差ΔTが、−2℃<ΔT≦−1℃であるか否かの条件判断を、室内送風ファン制御部32が実施する。その温度差ΔTが−2℃<ΔT≦−1℃であれば、ステップS13へ進み、室内送風ファン制御部32は室内送風ファン9の回転数を弱風+β(ただしα>β>0)として回転させ、ステップS1に戻る。このステップS13の状態が、図5においてBで示されている区間であり、圧縮機停止状態において、区間Bはここでは−2℃<ΔT≦−1℃となる範囲を表しており、室内送風ファン9は、弱風よりβだけ高い回転数で回転する。βはステップS11におけるαよりも小さい。
ステップS12にて、−2℃<ΔT≦−1℃でなければ、ステップS14へと進み、S1で取り込んだ温度差ΔTが、−3℃<ΔT≦−2℃であるか否かの条件判断が室内送風ファン制御部32によって行われる。その温度差ΔTが−3℃<ΔT≦−2℃であれば、ステップS15に進み、室内送風ファン制御部32は室内送風ファン9の回転数を弱風+γ(ただしβ>γ>0)として回転させ、ステップS1に戻る。このステップS15の状態が、図5においてCで示されている区間であり、圧縮機停止状態において、区間Cはここでは−3℃<ΔT≦−2℃となる範囲を表しており、室内送風ファン9は、弱風よりγだけ高い回転数で回転する。γはステップS13におけるβよりも小さい。
ステップS14にて、−3℃<ΔT≦−2℃でなければ、ステップS1で取り込んだ温度差ΔTが−3℃以下(ΔT≦−3℃)ということであり、ステップS16に進み、室内送風ファン制御部32は室内送風ファン9の回転数を弱風とする。そして、ステップS1へ戻る。このステップS16の状態が、図5においてDで示されている区間であり、圧縮機停止状態において、区間DはここではΔT≦−3℃となる範囲を表しており、室内送風ファン9は、弱風の回転数で回転する。
(イ)を経由して、図6のステップS1へと戻り、続くステップS2において、ステップS1で取り込んだ温度差ΔTが、ΔT>0℃となれば、ステップS3へと進み、圧縮機3を起動させ、圧縮停止状態を終了し、圧縮機運転状態へと移行する。
図7に示す圧縮機停止状態における室内送風ファン9の回転制御に係る処理手順であるステップS10乃至S16は、室内送風ファン制御部32において、圧縮機停止状態時制御部34が担っている。なお、図7に示す温度差ΔTの各条件値は一つの実施例に過ぎず、ここに示す値に限定されるものでない。条件値は適宜設定可能なものである。また、図5にて区間A〜Dに示すように、圧縮機停止状態での室内送風ファン9の回転数を4段階に切換えるようにしているが、この段階数も4段階に限るものではなく、複数段階であれば、適宜設定可能である。さらに、この複数段階をより細かくして段階数を無限とする形として連続的に変化させるようにしてもよい。
図5の点線LOから左側に示されるΔT≦0の圧縮機停止状態の領域、および図7のフローチャートが示すように、この空気調和機100では、過冷房防止のための圧縮機停止状態において、温度差ΔTの大きさに応じて、室内送風ファン9の回転数を変化させている。そして、その回転数は、圧縮機3の運転状態すなわちΔT>0℃にて、ΔTが0に近い条件値X未満のときの回転数で最小風量となる弱風を最小回転数として、ΔT≦0においてΔTが大きいほど、すなわちΔTが負から0に近づくほど、段階的に高いものである。
図5に示すように、圧縮機停止状態における室内送風ファン9の回転数は、圧縮機停止状態へ移行する判断基準線である点線L0(ここではΔT=0である)に最も近い区間Aがいちばん高く、弱風+αであり、最も遠い区間Dがいちばん低く、この区間Dが、圧縮機運転状態において点線L0に最も近い区間cと同じ弱風である。区間AとDの間は、その間の回転数を補うように区間Aに隣接する区間Bと、区間Dに隣接する区間Cの2区間を介在させ、区間AからDに向けて、すなわち温度差ΔTが低下する方向に、段階的に回転数を減少させるようになっている。
なお、この空気調和機100では、圧縮機停止状態での最小回転数(最小風量)は区間Dの弱風で、これは圧縮機運転状態における区間cの最小回転数と同じとしているが、圧縮機運転状態の最小回転数よりも低い回転数、すなわち弱風−ε(ε>0)としてもよい。
圧縮機運転状態において、その冷房効果で温度差ΔTが小さくなっていき、ステップS9で、運転中の圧縮機3を停止して圧縮機停止状態になった場合では、現在の室内温度Taが急激に低下することがないので、大概において、圧縮機停止状態になって最初の条件判断となるステップS11で条件に該当する(YESとなる)こととなり、室内送風ファン9は、圧縮機3の運転停止前の弱風から弱風+αと、回転数が高まる、すなわち風量が増加することになるのである。
これは、圧縮機停止状態となって冷凍サイクル内の冷媒循環が停止され、室内機1の吹出口19からは、室内熱交換器9で冷やされた冷気が出なくなるので、冷気が出なくなったことによるユーザの体感温度の上昇分を、風量の増加で補って、ユーザが急に暑さを感じてしまうことがないようにするためである。
圧縮機運転状態の最小風量である弱風で圧縮機停止状態の間は一定して継続回転させていた従来では、圧縮機3の運転状態から過冷房防止のための圧縮機停止状態に移行すると、吹出口19から吹き出される空気流の吹き出し風量(風速)は変わらずに、その空気流が、冷媒と熱交換した冷気であったものが、現在の室内温度Taとほぼ変わらない温度のものに変化することになる。そのため、圧縮機停止状態に入ると、ユーザが急に暑さを感じてしまうようなことが起こり得たのである。
しかし、上記のとおり、この空気調和機100では、そのような状況においては、吹出口19からの吹き出し風量を、圧縮機3の停止直前の回転数よりもα回転数だけ増加させるので、風量増によりユーザの体感温度の上昇を抑えることができるのである。ここで、図8は、体感温度を25℃とする場合の室内温度と風速の関係を示す等体感温度線図であり、横軸は室内温度を、縦軸はユーザと見立てる人体の近傍の風速を示している。
体感温度とは、人体(ユーザ)が感じているであろう暑さや寒さの度合を定量的に算出して表すものであり、被空調空間の室内温度だけでなく、風速、湿度、壁や天井などからの輻射温度、人体の着衣の熱抵抗を示す着衣量、人体の代謝量といった要素によって決まることがよく知られている。体感温度は、新標準有効温度(SET)の快適性指標など複数の快適性評価方法により算出が可能となっている。図8の曲線が示す等体感温度25℃ラインは、上記のSETの快適性指標に基づき、輻射温度を室内温度と同一、相対湿度70%、着衣量を夏季の一般的服装として0.6clo、人体の代謝量を58.2w/m2として、室内温度と風速をパラメータとして、体感温度25℃となる等体感温度曲線(ライン)を算出し図示したものである。
図8の等体感温度25℃ラインが示すように、室内温度が高くなっても、その上昇分に見合うだけ風速を高めれば、体感温度を同じにすることができるのである。なお、風速を高めるとは、これがクロスフローファンである室内送風ファン9であれば、回転数を高めることであり、すなわち風量を増加させることである。
そこで、この空気調和機100では、図5において、圧縮機運転状態の区間cから圧縮機停止状態の区間Aに移行する際に、室内送風ファン9の回転数をα回転数だけ増加させることで、吹出口19から吹き出される空気流が、冷気から室内温度とほぼ同等な温度の空気に変わることによるユーザの体感温度の上昇を風量(風速)の増加で抑制し、圧縮機停止状態になっても、ユーザが急に暑さを感じてしまうことがなく、増加した風量によって適度な冷涼感が得られることで、ユーザの快適性を確保することができる。
このように、圧縮機停止状態のユーザの快適性が確保できることにより、圧縮機停止状態中にユーザが暑さを感じて、設定温度を下げてしまうといった行為を回避でき、設定温度を下げることによって圧縮機3の運転時間を余計に発生させてしまうことなく、消費電力量の増加を未然に防ぐことができる。冷房運転時に節電効果が高い過冷房防止のための圧縮機停止状態を、ユーザの設定温度を下げるという行為に結びつけることなく、効果的に利用することとなって、空気調和機100は節電に大きく貢献することができるのである。
また、言い換えれば、圧縮機停止状態のユーザの快適性が確保できることから、今までの設定温度よりも高い設定温度とすることができるようになる。圧縮機停止状態であっても、吹き出し空気流の風量(風速)を増加させて、体感温度として、高めた設定温度幅に相当する程度の冷涼感が得られることになるので、例えば、今までユーザが26℃と設定していた設定温度を、27℃や28℃へと高めることができ、設定温度の上昇により、大きな節電効果が得られることになる。
この空気調和機100では、制御装置10が、冷房運転中に、室内温度センサー12が検出した現在の室内温度Taが設定温度Ts以下となる、もしくは現在の室内温度Taが設定温度Tsよりも所定の温度幅だけ低い基準温度Tb以下となると、すなわち温度差ΔT≦0となると、圧縮機3の運転を停止して圧縮機停止状態に移行させるとともに、この圧縮機停止状態への移行に際して、室内送風ファン9の回転数を、この移行が行われる直前の圧縮機3が運転状態の時の回転数(ここでは弱風)よりも所定数(ここではα)だけ増加させることにより、圧縮機停止状態になっても、ユーザが急に暑さを感じてしまうことがなく、増加した風量による適度な冷涼感により、ユーザの快適性を確保することができるものである。
屋外の外気温度や日射量が大きく変化しない状況にあれば、圧縮機停止状態となった場合、冷凍サイクルの稼動停止により、冷気の吹き出しがなくなるので、壁や天井、窓からの輻射熱により室内温度は徐々に上昇し、ΔT>0℃となって、圧縮機3が再起動されることになる。これは、図5において、圧縮機停止状態の区間Aから圧縮機運転状態の区間cへの移行となるわけであるが、図5に示すとおり、室内送風ファン9の回転数は、弱風+αから弱風へと低下することになる。
このように、圧縮機停止状態の快適性確保のために区間Aで弱風+αに風量を高めているが、温度差ΔTが小さい区間cの圧縮機運転状態に移行して再び吹出口19から冷気が吹き出されるようになってからも、この高めた風量(弱風+α)を維持することなく弱風に低下させることで、温度差ΔTが小さい、すなわち冷房負荷が小さく圧縮機3が低回転数で運転されている状態で、必要以上に大きい回転数で室内送風ファン9を回転させてしまうことを避けることができる。圧縮機3の回転数に、すなわち冷凍サイクルの冷媒循環量に見合った室内送風ファン9の回転数にすることができ、室内送風ファン9の無駄な電力消費を抑えられる。
さらに、室内送風ファン制御部32は、圧縮機停止状態(ここではΔT≦0℃)においても、温度差ΔTの大きさに応じて、ΔTが小さくなる(負方向へ進む)ほど室内送風ファン9の回転数を最小回転数である弱風に向かって段階的に減少させている。日中、屋外の外気温度や日射量が大きく変化しない状況にあれば、冷気の吹き出しが止まっている圧縮機停止状態において、温度差ΔTが低下していく、すなわち、現在の室内温度Taが下がっていく状態は起こり難いが、夕方から夜間にかけて日射量が急激に低下する状況では、外気温度の低下や天井や壁、窓からの輻射熱の大幅な低下が生じて、現在の室内温度Taが減少する状態も十分に起こり得る。
この空気調和機100では、このような状態において、図5の点線L0より左側の圧縮機停止状態に示すとおり、圧縮機停止状態の間中ずっと室内送風ファン9を弱風+αの回転数で回転させているのではなく、室内送風ファン制御部32が、その室内温度Taの低下、すなわち温度差ΔTの低下に対応するように、圧縮機停止状態への移行に際して弱風+αに高めた室内送風ファン9の回転数を、最小回転数(風量)である弱風に向けて段階的に減少させる制御を行うので、現在の室内温度Taに見合った適度な空気流の風速をユーザが感じることができる。
このため、圧縮機停止状態の間に室内温度Taが低下していくような状況において、圧縮機停止状態への移行にあたって弱風+αに回転数を高めた室内送風ファン9の風速でユーザが徐々に肌寒さを感じるようになってしまうことはなく、現在の室内温度Taに見合った適度な冷涼感を得ることができ、圧縮機停止状態の間に室内温度Taが低下していくような状況にあっても、圧縮機停止状態でのユーザの快適性を確保することができる。
また、室内温度Taの低下に応じて、室内送風ファン9の回転数を最小回転数(風量)である弱風に向けて減少させるので、圧縮機停止状態の間中ずっと弱風+αの回転数で室内送風ファン9を回転させることに比べて、室内送風ファン9の回転駆動に消費する電力を節約できる。
ここで、この空気調和機100では、圧縮機停止状態における室内送風ファン9の回転数を、図5に示すように、最小風量である区間Dの弱風を含めて区間AからDに4段階に切換えるようにしているが、区間Aが最も大きい回転数で弱風+α、区間Bが次いで大きく弱風+β、次が区間Cで弱風+γとなっており、α>β>γ>0である。このα、β、γであるが、図8に示すような室内温度と風速をパラメータとした等体感温度ラインを参考とするなどして、室内温度Taの変化に対して、なるべくユーザの体感温度が変化しないような風速となる回転数に設定するのが望ましい。
この空気調和機100では、αを150rpmとして、区間Aでは室内送風ファン9の回転数を760rpmに上昇させている。回転数の増加により、送風に伴う騒音も増加することになるので、圧縮機停止状態においてユーザが送風に伴う騒音を不快に感じることがないようにするためにも、圧縮機停止状態における最大風量は、圧縮機運転状態における中風もしくは最小風量(弱風)と最大風量(強風)の平均程度以下とするのがよい。
そして、βを100rmp、γを50rpmとしており、区間Bが710rpm、区間Cが660rpmであり、区間Dは弱風で、区間cと同じ610rpmとなっている。なお、圧縮機停止状態における室内送風ファン9の各回転数は、一つの実施例に過ぎず、ここに示す値に限定されるものでなく、切換えの段階数を含めて適宜設定可能なものである。
このようにこの空気調和機100では、圧縮機停止状態において、温度差ΔTの低下に応じて室内送風ファン9の回転数を段階的に減少させているが、図7のフローチャートに従えば、その逆方向も成立する。すなわち、圧縮機停止状態において、温度差Δtの上昇に応じて、すなわち現在の室内温度Taの上昇に応じて室内送風ファン9の回転数を段階的に増加させるものである。
例えば、朝方、日の出前もしくは直後の設定温度よりも室内温度が低い涼しい状況で冷房運転の開始が指示され、図6のステップS2でNOとなって、圧縮機3が起動されることなく最初から圧縮機停止状態に突入する場合に、太陽の上昇とともに日射量が増し、外気温度の上昇、天井や壁、窓からの輻射熱の増加が生じることで、圧縮機停止状態において、現在の室内温度Taが上昇していくような状況が起こり得る。
このような状況であっても、温度差ΔT≦0の範囲で、室内温度Taが上昇し、ΔT=0に向かって温度差ΔTが上昇する場合に、そのΔTの上昇に対応させて室内送風ファン9の回転数を増加させ、吹出口19からの吹き出し風量を増加させるので、冷気を伴わないその吹き出し空気流により、ユーザは現在の室内温度Taに見合った適度な冷涼感を得ることができ、圧縮機停止状態でのユーザの快適性を確保できる。このため、ユーザが設定温度より低い温度であるのにも関わらず室内温度上昇に暑さを感じ冷気を求めて設定温度を下げてしまうといった行為を回避することでき、圧縮機3の運転開始を早めることなく、節電に貢献することができる。
冷房運転において、設定温度を1℃上昇させると約10%の節電効果があると言われているが、この発明の実施の形態1に示す空気調和機100のここまで説明したとおりの圧縮機停止状態における室内送風ファン9の制御を行うことで、圧縮機停止状態でのユーザの快適性を確保し、ユーザによる設定温度の低下を未然に防ぐことができる。そのため、設定温度の低下に伴う消費電力量の増加を阻止できるとともに、節電効果の大きい過冷房防止のための圧縮機停止状態を効果的に利用することができるので、省エネルギー、節電への貢献度が高い空気調和機を提供することができる。
前述したとおり、冷房運転時に、過冷房防止のための圧縮機停止状態に入る条件判断として、現在の室内温度Taが設定温度Ts以下ではなく、現在の室内温度Taを常に設定温度以下に維持するために、設定温度Tsよりも例えば0.5℃や1℃など所定の温度幅e(e>0)だけ低いTs−eなる基準温度Tb以下としてもよい。
また、圧縮機停止状態への圧縮機3の停止、圧縮機停止状態からの圧縮機3の再起動の繰り返し頻度を低くするために、例えば、圧縮機停止状態に入るときの条件判断は、温度差Δt≦−0.5℃、圧縮機停止状態から圧縮機を再起動させるときの条件判断は、温度差ΔT≧0.5℃というように、2つの条件判断の条件値を異ならせて制御するようにしてもよい。
同様に、圧縮機運転中の室内送風ファン9の回転数切換え制御について、圧縮機3の回転数が増加傾向にあるときと、減少傾向にあるときとで、すなわち室内送風ファン9の回転数を増加させるときと低下させるときで、回転数切換えに関わる温度差ΔTの条件値を異なるように設定してもよい。
また、前述のとおり、圧縮機運転状態では、冷房能力の増加もしくは低減を素早く実現させるために室内送風ファン9の回転数切換えに関して、目標とする回転数まで一気に変化させていたが、圧縮機停止状態においては、冷凍サイクル内を冷媒が循環しておらず室内熱交換器7で冷媒と熱交換するわけではないので、目標とする回転数にするとき、例えば、区間cの弱風から圧縮機停止状態に突入して区間Aの弱風+αに高めるときに、必ずしも一気に変化させる必要がない。
そのため、この空気調和機100では、圧縮機停止状態における室内送風ファン9の回転数切換えに関して、室内送風ファン制御部32が、目標とする回転数まで一気に変化させないで、例えば毎秒1.5rpmで連続的にとか、10秒毎に12.5rpmずつ階段状になど、徐々に変化させるようにしている。これにより、ユーザが圧縮機停止状態における室内送風ファン9の回転数変化に、聴感上でも、吹き出し空気流が身体に当たる感じの上でも、急に変化したという違和感を持たれることがなく、圧縮機停止状態でのユーザの快適性をより高めることができる。
圧縮機停止状態における室内送風ファン9の回転数切換えにあたって、室内送風ファン制御部32による、目標とする回転数まで連続的もしくは階段状に徐々に変化させる制御は、図5において室内送風ファン9の回転数を区間cの弱風から圧縮機停止状態に突入して区間Aの弱風+αに高めるとき、その逆で、区間Aの弱風+αから圧縮機3が再起動して区間cの弱風に低下させるときも含まれる。なお、図5の圧縮機停止状態においては、この徐々に回転数を変化させる態様は示しておらず、圧縮機運転状態のときと同様な一気に変化させる態様の図示となっている。また、圧縮機運転状態においても、冷房能力の増加もしくは低減を素早く実現させることよりも、ユーザに室内送風ファン9の回転数の切換えに違和感を持たれないことを優先させて、室内送風ファン9の回転数切換えに際し、目標とする回転数まで連続的もしくは階段状に徐々に変化させる制御を取り入れてもよい。
なお、図5や図6、図7のフローチャートを用いてここまで説明した室内送風ファン9の制御は、風速設定が自動モードになっている場合のものであり、ユーザがリモコン13により例えば風速設定を弱風に指定していれば、制御装置10(室内送風ファン制御部32)は、これを優先して、圧縮機運転状態、圧縮機停止状態の如何に関わらず、常に弱風で室内送風ファン9を運転させる。
さらに、風向設定が自動モードになっている場合、制御装置10は、圧縮機停止状態の間中、左右風向板15、上下風向板16の少なくともどちらかをスイング動作させるように制御する。このように吹き出し空気流の風向をスイング動作させることで、室内にいるユーザに間欠的に吹き出し空気流が当たるようになり、空気流が当たっている状態と当たっていない状態が交互に訪れることによる気流刺激により、冷涼感を強く感じることができるようになって、圧縮機停止状態でのユーザの快適性をより高めることができる。
また、左右風向板15、上下風向板16の両方をスイング動作させれば、室内のどこにユーザがいても、また複数のユーザが点在していても、室内にいるユーザのすべてに間欠的に吹き出し空気流を当てることができ、圧縮機停止状態でのユーザの快適性をより高めることができる。なお、ここで、スイング動作とは、左右風向板15であれば、吹き出し空気流の風向を所定の角度範囲内で左右方向に往復させながら繰り返し変更させることであり、上下風向板16であれば、吹き出し空気流の風向を同じく上下方向に往復させながら繰り返し変更させることである。
また、室内機1本体の前面側に、例えばLEDの点灯や点滅等により、圧縮機停止状態であることを示す表示部を設置して、この表示部の表示により、過冷房防止のために圧縮機停止状態であることをユーザに伝えるようにしてもよい。
なお、前述したが、圧縮機3が運転中(圧縮機運転状態)であるか、圧縮機停止状態であるかを、温度差算出部30からの温度差ΔTに基づいて、室内送風ファン制御部32自身が判断するようにしていれば、圧縮機3の停止、すなわち圧縮機停止状態への移行とほぼ同時に、室内送風ファン9の回転数を、移行直前の圧縮機3が運転状態であった時の回転数(例えば、弱風)よりも増加(例えば弱風+αに)させていくことができる。
しかし、室内送風ファン制御部32が、圧縮機制御部31から圧縮機3が運転中であるか、圧縮機停止状態であるかの情報を受け取るように構成されている場合では、圧縮機制御部31が室外側制御装置10bに、室内送風ファン制御部32が室内側制御装置10aに組み込まれていることが多く、圧縮機3が停止して圧縮機停止状態となった情報が、室外側制御装置10bの圧縮機制御部31から室内側制御装置10aの室内送風ファン制御部32へ室内外連絡ケーブル10cを介して伝えられることになるので、その通信に2、3秒程度の時間が掛かり、圧縮機3の停止、すなわち圧縮機停止状態への移行と同時には、室内送風ファン9の回転数を増加させていくことはできない。
圧縮機3の停止から、室内外連絡ケーブル10cを介した通信に掛かる2、3秒のタイムラグがあって、室内送風ファン9の回転数増加が始まる。このようなタイムラグがあっても、圧縮機停止状態への移行に際して、室内送風ファン9の回転数を増加させる、ということの技術範疇に入るものである。なお、圧縮機停止状態から圧縮機を起動させて圧縮機運転状態へと移行する場合についても同様で、室内外連絡ケーブル10cを介した通信のためのタイムラグがあっても、圧縮機の起動に際して、室内送風ファン9の回転数を減少させる、ということの技術範疇に入るものである。
実施の形態2.
図9は、この実施の形態2に係る空気調和機110の制御装置10を中心とする構成ブロック図である。実施の形態1に示す空気調和機100との相違点は、空気調和機100の構成に、さらに被空調空間である室内に存在するユーザ(在室者)の位置を検出する人体検知センサー35を室内機1が有している点である。その他の構成は、実施の形態1と同様であり、実施の形態1と同一または相当するものは、同一の符号を付して、その説明は省略する。
この人体検知センサー35は、室内機1の前面側に室内に臨むように設置されているもので、CCDやCMOSなどのイメージセンサーを用いたカメラか、人体から発生している赤外線を検知する赤外線センサーが用いられる。
この人体検知センサー35による在室者(人体)の位置のセンシングを、圧縮機運転状態のみならず過冷房防止のための圧縮機停止状態の間中も継続し、圧縮機停止状態での室内の在室者(ユーザ)の位置を検出する。その検出信号をマイコン22への入力回路23が受け取って、演算回路24へ提供し、演算回路24は、室内の人***置を考慮した演算処理や判断処理を行い、その結果を出力回路25へ提供する。
人体検出センサー35の検出信号により室内の在室者(ユーザ)の位置が特定できるため、圧縮機停止状態において、制御装置10が左右風向板15や上下風向板16を回動制御して、吹き出し空気流をその在室者の位置の方向へ整流して吹き出すようにすることができる。また、前述のとおり、空気流が当たっている状態と当たっていない状態が交互に訪れることによる気流刺激で冷涼感を強く感じることがあるので、左右風向板15や上下風向板16を、回動範囲全体に渡るスイングではなく、特定した在室者の位置を中心としたより小幅なスイング動作をさせて、上記の気流刺激の繰り返し頻度を高めてより冷涼感を感じさせることもできる。
また、図5において、圧縮機運転状態の区間cから圧縮機停止状態の区間Aに移行する際に、制御装置10が、左右風向板15や上下風向板16を回動制御して、室内送風ファン9が弱風+αの回転数で回転して生成する空気流を、検出した在室者(ユーザ)の位置へ向けて吹き出させ、直接身体に当て続けるようにしてもよい。また、移行直後からしばらくは、在室者(ユーザ)の位置へ向けて吹き出させ、直接身体に空気流を当てるようにして、移行して所定時間経過後からは、スイング動作に変更して、ユーザに空気流が当たっている状態と当たっていない状態が交互に繰り返すようにして気流刺激を与えて、ユーザにより強い冷涼感を提供するようにしてもよい。
以上のように、制御装置10が、人体検出センサー35の検出信号によって室内の在室者(ユーザ)の位置を特定し、その位置に基づいて、左右風向板15や上下風向板16を回動制御して、圧縮機停止状態における吹き出し空気流の吹き出し方向を調整することで、圧縮機停止状態でのユーザの快適性をより高めることができる。また、ユーザが存在しない位置に吹き出し空気流を吹き出し続けてしまうという無駄をなくし、節電効果を高めることができる。
実施の形態3.
図10は、この実施の形態3に係る空気調和機120の制御装置10を中心とする構成ブロック図である。実施の形態1に示す空気調和機100との相違点は、空気調和機100の構成に、さらに室内、すなわち被空調空間内の輻射温度(例えば壁や床の表面温度)を検出する輻射温度センサー36を室内機1が有している点である。その他の構成は、実施の形態1と同様であり、実施の形態1と同一または相当するものは、同一の符号を付して、その説明は省略する。
この輻射温度センサー36は、室内機1の前面側に室内に臨むように設置されているもので、この空気調和機120では、一般的にはサーモパイルセンサーと呼ばれている、壁面や床面などから放射される赤外線を受け、その入射エネルギー量に応じた熱起電力を発生する熱型の赤外線センサーが用いられている。
実施の形態1では、設定温度Tsに対して、室内温度センサー12が検出(測定)した室内温度Taを使用し、これらの差異である温度差ΔT(ΔT=Ta−Ts)を算出して、図6や図7のフローチャートに示すように、このΔT値を制御のための条件判断に用いていた。しかし、この空気調和機120は、室内温度センサー12に加えて、輻射温度センサー36を備えており、壁面温度や床温度といった簡易的な輻射温度を把握することができる。そこで、輻射温度センサー36の検出信号をマイコン22への入力回路23が受け取って、演算回路24へ提供し、演算回路24は、室内温度Taに輻射温度Tfを加味して、例えば(Ta+Tf)/2のような簡易的な算出方法により、室内の体感温度Tkを算出することができる。なお、輻射温度の1つとして、天井温度も加えるようにしてもよい。
そこで、制御装置10は、現在の室内温度Taに変えて、この体感温度Tkを制御温度として使用して、すなわち、現在の室内温度Taを体感温度Tkに置き換えて、温度差ΔTをΔT=Tk−Tsで算出し、この体感温度Tkを用いたΔTを条件判断に使用することで、ユーザの体感温度に近い状態で温度制御を行うことができるようになる。圧縮機停止状態においても、体感温度Tkにより求めた温度差ΔTを使用することで、温度差ΔTに応じた風量(室内送風ファン9の回転数)の変更が、ユーザの体感温度に近い状態で行われることになるので、圧縮機停止状態でのユーザの快適性をより高めることができる。この場合、設定温度Tsは、ユーザが希望する体感温度とみなすことができる。
また、図示はしないが、さらに室内機1に室内、すなわち被空調空間内の相対湿度を検出する湿度センサーを備え、この湿度センサーが検出した相対湿度も体感温度Tkの算出に用いることで、よりユーザの体感温度に近い体感温度Tkが算出できて、圧縮機停止状態でのユーザの快適性をさらに高められる。
また、実施の形態2に示した空気調和機110が備える人体検知センサー35を、実施の形態3の空気調和機120にさらに加えて、圧縮機停止状態において、ユーザの体感温度に近い温度に基づいた温度差ΔTに応じて室内送風ファン9の風量を変更するとともに、人体検知センサー35により室内のユーザの位置を特定し、その位置に基づいて、左右風向板15や上下風向板16を回動制御して、圧縮機停止状態における吹き出し空気流の吹き出し方向を調整することで、圧縮機停止状態でのユーザの快適性をより高めることでできる。
輻射温度センサー36として、多素子のサーモパイルセンサーを使用すれば、被空調空間を縦横に多数に分割して、二次元配列状に各分割要素での輻射温度を熱画像(二次元配列状の輻射温度データ)として検出できる。そして、この熱画像の時系列的な差分から人体の位置の検出が可能となる。さらには時系列的な差分比較を継続することで、人体の活動状態までも検出できるようになる。このように輻射温度センサー36として、多素子のサーモパイルセンサーを使用することで、人体検知センサー35を特別に装備してなくても、人体検知の作用をも実現することができる。さらには、人体の活動量も検出できて、この検出結果を体感温度Tkの算出に使用することで、体感温度Tkがよりユーザの体感温度に近いものとなる。
このような多素子のサーモパイルを輻射温度センサー36に使用する場合では、左右方向、場合によっては上下方向に輻射温度センサー36を回動させることで、室内空間のほぼ全域に渡る熱画像を作成することができる。
なお、ここまで説明した空気調和機は四方弁3を備えて、冷房運転だけでなく暖房運転も可能な空気調和機であったが、四方弁3を有さない冷房専用機であってもこの発明は適用でき、同様な効果が得られる。また、セパレート形でなく、窓掛け型のような一体形であってもよい。また、この室内機1は、室内の壁面上部に設置される壁掛けタイプのものであったが、天井埋込タイプや床置きタイプなど他の形式であってもよく、室内送風ファン9もクロスフローファンでなく、室内機のタイプに応じて、ターボファンやプロペラファンなど他の形式のファンであってもよい。そして、この発明は、空気調和機として、家庭用のルームエアコンに限らず、店舗やオフィス等で使われる業務用エアコンにも適用でき、同様な効果を得ることができる。
実施の形態4.
ここまでは、ユーザが自ら設定する設定温度Tsを基準として、圧縮機停止状態と圧縮機運転状態との境目(図5における点線L0)が形成されていた。すなわち、ユーザの意思でこの境目を自由に変更することができるものであった。この実施の形態4では、そのような圧縮機停止状態と圧縮機運転状態との境目を予め固定した新しい運転モードを提供するものであり、以下に説明する。なお、実施の形態4の説明において、実施の形態1から3と同一または相当なものについては、同一の符号を付して説明を省略する。
例えば、この運転モードをここでは涼風モードと名付ける。この涼風モードは、既存の冷房モード(冷房運転)とも送風モード(送風運転)とも異なるものである。冷房モードは、設定された設定温度Tsに基づき運転制御され、この設定温度Tsもしくは先に説明した基準温度Tb以下で過冷房防止のために圧縮機停止状態となって、室内送風ファン9の回転による冷気を伴わない空気流が吹出口19から吹き出され、設定温度Tsもしくは基準温度Tbを超えれば、圧縮機3を起動して冷凍サイクルを稼動状態にして、吹出口19から室内熱交換器7で冷媒と熱交換して冷却された冷気を吹き出し、室内温度Taを低下させるようにする。また、送風モードは、運転中に圧縮機3を起動することなく、室内送風ファン9を回転させ、吹出口19から冷気を伴わない空気流を吹き出すのみである。
この涼風モードは、冷房モードにおける設定温度Tsもしくは基準温度Tbに相当する温度を予め固定しておくものであり、ここではこの温度を、移行温度Tmとする。ユーザが涼風モード運転を指定すると、現在の室内温度Taもしくは体感温度Tkがこの移行温度Tm以下であれば、圧縮機3を起動せずに冷気を伴わない空気流(室内送風ファン9が生成)を吹き出し、室内温度Taが上昇し、移行温度Tmを超えれば、自動的に圧縮機3を起動し冷気を吹き出すようにして、室内を冷やそうとするものである。
もちろん、この移行温度Tm以下で圧縮機3の運転がなされていないときの送風作用では、実施の形態1で示した圧縮機停止状態と同じように、温度差ΔT(ここではΔT=Ta−Tm、もしくはΔT=Tk−Tm)の大きさに応じて、風量(室内送風ファン9の回転数)を変更させ、ユーザに現在の室内温度Taに見合った適度な冷涼感を与える。
気温31℃を超えると熱中症の厳重警戒領域となって熱中症の危険が高まると一般的にいわれているが、例えば、この31℃を移行温度Tmとしておけば、現在の室内温度Taもしくは体感温度Tkがこの温度を超えれば、自動的に吹出口19から冷気が吹き出て室内を冷やして室内温度Taを下げるので、熱中症の危険性を低減させる効果が期待でき、ユーザの健康を配慮した節電運転を行うことができる。
ユーザによって暑さ寒さの感じ方、捉え方は異なるので、この移行温度Tmをユーザの手で変更可能としてもよいが、その場合では、冷房モードの設定温度のようにリモコン13で簡単に変更できるようにはせずに、複雑な処理でないと変更できないようにして、冷房モードとの差異を明確にすることが望ましい。また、既存の送風モードをこの実施の形態4に示した涼風モードとして設定してもよい。