以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
[構成例]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るスイッチング電源装置の一構成例を表すものである。スイッチング電源装置1は、双方向動作が可能な電源装置である。すなわち、スイッチング電源装置1は、例えば、端子(入出力端子)T1,T2に接続された外部電源から直流電圧VHが入力された場合には、その電圧を降圧することにより直流電圧VLを生成し、端子(入出力端子)T3,T4を介して、接続されたバッテリBLへ供給する(以下、降圧動作モード、もしくは充電モードという)。また、スイッチング電源装置1は、例えば、端子T1,T2に接続された負荷に電力を供給する場合には、バッテリBLから供給された直流電圧VLを昇圧することにより直流電圧VHを生成し、端子T1,T2を介して、その負荷を駆動する(以下、昇圧動作モード、もしくは放電モードという)。なお、この例では、直流電圧VHは、350V程度の電圧であり、直流電圧VLは、50V程度の電圧である。ただし、直流電圧VH,VLは、この電圧に限定されるものではなく、後述する通常動作期間において直流電圧VHが直流電圧VLより高いものであればどのような値であってもよい。
このスイッチング電源装置1は、平滑コンデンサCHと、スイッチング回路10,20と、トランス30と、インダクタLchと、平滑コンデンサCLと、リセット回路50と、放出回路60と、制御部73と、SW駆動部74とを備えている。
平滑コンデンサCHは、端子T1に接続された1次側高圧ラインL1Hと端子T2に接続された1次側低圧ラインL1Lとの間に配置されており、外部から端子T1,T2間に入力された電圧を平滑化するためのものである。
スイッチング回路10は、降圧動作モードでは、外部から供給される直流電圧VHを交流電圧に変換するフルブリッジ型のスイッチング回路として機能し、昇圧動作モードでは、トランス30から供給される交流電圧を整流する整流回路として機能するものである。このスイッチング回路10は、スイッチング素子SW11〜SW14と、容量素子Cr11〜Cr14とを有している。
スイッチング素子SW11〜SW14は、例えば、MOS−FET(Metal Oxide Semiconductor-Field Effect Transistor)やIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などの素子が使用可能である。この例では、スイッチング素子SW11〜SW14は、全てNチャネルのMOS−FETにより構成されている。スイッチング素子SW11のゲートにはSW制御信号S11が供給され、ソースがスイッチング素子SW12のドレインに接続され、ドレインが1次側高圧ラインL1Hに接続されている。また、スイッチング素子SW12のゲートにはSW制御信号S12が供給され、ソースが1次側低圧ラインL1Lに接続され、ドレインがスイッチング素子SW11のソースに接続されている。また、スイッチング素子SW13のゲートにはSW制御信号S13が供給され、ソースがスイッチング素子SW14のドレインに接続され、ドレインが1次側高圧ラインL1Hに接続されている。また、スイッチング素子SW14のゲートにはSW制御信号S14が供給され、ソースが1次側低圧ラインL1Lに接続され、ドレインがスイッチング素子SW13のソースに接続されている。また、スイッチング素子SW11のソースおよびスイッチング素子SW12のドレインは、後述する共振用インダクタLrを介して後述するトランス30の1次側巻線31(後述)の一端に接続されている。また、スイッチング素子SW13のソースおよびスイッチング素子SW14のドレインは、この1次側巻線31(後述)の他端に接続されている。スイッチング素子SW11〜SW14は、この例では、それぞれボディダイオード(後述するダイオードD11〜D14)を有している。ボディダイオードは、アノードがスイッチング素子のソースに接続され、カソードがスイッチング素子のドレインに接続されている。
容量素子Cr11〜Cr14は、スイッチング素子SW11〜SW14のドレイン・ソース間にそれぞれ挿入されている。具体的には、容量素子Cr11は、スイッチング素子SW11のドレイン・ソース間に挿入され、容量素子Cr12は、スイッチング素子SW12のドレイン・ソース間に挿入され、容量素子Cr13は、スイッチング素子SW13のドレイン・ソース間に挿入され、容量素子Cr14は、スイッチング素子SW14のドレイン・ソース間に挿入されている。容量素子Cr11〜Cr14は、後述する共振用インダクタLrおよびトランス30のリーケージインダクタとで部分共振回路を形成するためのものである。
この構成により、スイッチング回路10では、降圧動作モードでは、SW駆動部74(後述)から供給されるSW制御信号S11〜S14に応じてスイッチング素子SW11〜SW14をオンオフ制御することにより、外部から供給される直流電圧VHを交流電圧に変換する。このとき、容量素子Cr11〜Cr14、共振用インダクタLr、およびトランス30のリーケージインダクタからなる部分共振回路により、いわゆるZVS(Zero Volt Switching)動作を実現することができ、スイッチング損失の低減により高効率化を図ることができる。また、昇圧動作モードでは、スイッチング素子SW11〜SW14をオフ状態に設定し、ボディダイオードを整流素子として用いることにより、トランス30から供給される交流電圧を整流するようになっている。
スイッチング回路10とトランス30の間には共振用インダクタLrが挿入されている。共振用インダクタLrは、容量素子Cr11〜Cr14、およびトランス30のリーケージインダクタと共に所定のLC共振回路を構成するためのものである。
スイッチング回路20は、昇圧動作モードでは、バッテリBLから供給される直流電圧VLを交流電圧に変換するプッシュプル型のスイッチング回路として機能し、降圧動作モードでは、トランス30から供給される交流電圧を整流する整流回路として機能するものである。このスイッチング回路20は、スイッチング素子SW21,SW22を有している。
スイッチング素子SW21,SW22は、スイッチング回路10のスイッチング素子SW11〜SW14と同様に、例えば、MOS−FETやIGBTなどの素子が使用可能である。この例では、スイッチング素子SW21,SW22は、NチャネルのMOS−FETにより構成されている。スイッチング素子SW21のゲートにはSW制御信号S21が供給され、ソースが2次側低圧ラインL2Lに接続され、ドレインがトランス30の2次側巻線32B(後述)の一端に接続されている。また、スイッチング素子SW22のゲートにはSW制御信号S22が供給され、ソースが2次側低圧ラインL2Lに接続され、ドレインがトランス30の2次側巻線32A(後述)の一端に接続されている。スイッチング素子SW21,SW22は、この例では、それぞれボディダイオード(後述するダイオードD21,D22)を有している。ボディダイオードは、アノードがスイッチング素子のソースに接続され、カソードがスイッチング素子のドレインに接続されている。
この構成により、スイッチング回路20では、昇圧動作モードでは、SW駆動部74(後述)から供給されるSW制御信号S21,S22に応じてスイッチング素子SW21,SW22をオンオフ制御することにより、バッテリBLから供給される直流電圧VLを交流電圧に変換する。また、降圧動作モードでは、スイッチング素子SW21,SW22をオフ状態に設定し、ボディダイオードを整流素子として用いることにより、トランス30から供給される交流電圧を整流するようになっている。
トランス30は、1次側と2次側とを直流的に絶縁するとともに交流的に接続するものであり、1次側巻線31および2次側巻線32A,32Bを含んで構成された3巻線型のトランスである。1次側巻線31は、上述したようにスイッチング回路10に接続されている。また、2次側巻線32Aの一端は、スイッチング回路20のスイッチング素子SW22のドレインに接続され、2次側巻線32Bの一端は、スイッチング回路20のスイッチング素子SW21のドレインに接続されている。そして、2次側巻線32A,32Bの他端同士はセンタタップCTで互いに接続され、さらに2次側高圧ラインL2に接続されている。ここで、1次側巻線31の巻数はn1(n1は整数)であり、2次側巻線32A,32Bの巻数はn2(n2は整数)である。すなわち、1次側巻線31と2次側巻線32Aとの巻数比、および1次側巻線31と2次側巻線32Bとの巻数比は、それぞれn(=n1/n2):1に設定される。この例では、nは、例えば6である。
この構成により、トランス30は、降圧動作モードでは、1次側巻線31の両端間に供給された交流電圧を1/n倍に降圧し、2次側巻線32A,32Bから出力するようになっている。また、昇圧動作モードでは、トランス30は、2次側巻線32A,32Bに供給された交流電圧を約n倍に昇圧し、1次側巻線31から出力するようになっている。
インダクタLchは、2次側高圧ラインL2と2次側高圧ラインL2Hとの間に挿入配置されており、その一端はトランス30のセンタタップCTに接続され、他端は端子T3に接続されている。
平滑コンデンサCLは、端子T3に接続された2次側高圧ラインL2Hと端子T4に接続された2次側低圧ラインL2Lとの間に配置されている。
この構成により、インダクタLchおよび平滑コンデンサCLは、降圧動作モードでは、トランス30およびスイッチング回路20から供給された電圧を平滑化する平滑回路(低域通過フィルタLPF:Low Pass Filter)として機能する。すなわち、インダクタLchは、チョークコイルとして機能する。一方、昇圧動作モードでは、平滑コンデンサCLは、バッテリBLから端子T3,T4間に供給された電圧VLを平滑化し、インダクタLchは、スイッチング回路20のスイッチング動作に基づいてエネルギーを蓄積し、その電圧VLを昇圧して、トランス30の2次側巻線32A,32Bに供給するようになっている。
リセット回路50は、スイッチング回路20およびトランス30からなるプッシュプル回路の寄生インダクタに蓄積されたエネルギーをリセットするためのRCDスナバ回路である。リセット回路50は、インダクタLchに並列に接続されている。
リセット回路50は、抵抗素子Rsと、容量素子Csと、ダイオードDsとを有している。抵抗素子Rsと容量素子Csとは互いに並列接続されている。その並列接続された抵抗素子Rsおよび容量素子Csの一端は、ダイオードDsのカソード端子と接続されている。ダイオードDsのアノード端子はインダクタLchの一端と接続され、並列接続された抵抗素子Rsおよび容量素子Csの他端はインダクタLchの他端に接続されている。
抵抗素子Rsおよび容量素子Csのインピーダンスは、プッシュプル回路の寄生インダクタに蓄積されたエネルギーをリセットできるような所定の値に設定される。すなわち、インピーダンスがその所定の値よりも小さい場合には、昇圧動作モードにおいて、リセット回路50は、プッシュプル回路の寄生インダクタだけでなく、インダクタLchに蓄積されたエネルギーをもリセットしてしまうため、十分に昇圧できなくなるおそれがある。また、降圧動作モードにおいては、リセット回路50に電流が流れてしまうため、トランス30およびスイッチング回路20から供給された電圧を十分に平滑化できないおそれがある。よって、抵抗素子Rsの抵抗値および容量素子Csの容量値は、これらを考慮して設定される。
放出回路60は、昇圧動作モードにおいて、インダクタLchに蓄積されたエネルギーをリセットするための回路である。具体的には、後述するように、放出回路60は、昇圧動作モードにおいて、端子T1,T2間の電圧を所望の値まで高めていく過程のうちの所定の期間(後述する第1起動期間P1)において、インダクタLchに蓄積されたエネルギーを取り出して消費するものである。放出回路60は、リセット回路50の抵抗素子Rsおよび容量素子Csと並列に接続されている。
放出回路60は、抵抗素子Rpと、スイッチング素子SW23とを有している。抵抗素子Rpは、例えば、個別に設けられた抵抗部品や、抵抗成分を有する接続配線などを用いることができる。スイッチング素子SW23は、スイッチング回路10,20のスイッチング素子SW11〜SW14,SW21,SW22と同様に、例えば、MOS−FETやIGBTなどの素子が使用可能である。この例では、スイッチング素子SW23は、NチャネルのMOS−FETにより構成されている。放出回路60において、スイッチング素子SW23のゲートにはSW制御信号S23が供給され、ソースがリセット回路50の抵抗素子Rsおよび容量素子Csの一端に接続され、ドレインが抵抗素子Rpの一端に接続されている。抵抗素子Rpの他端は、リセット回路50の抵抗素子Rsおよび容量素子Csの他端に接続されている。すなわち、抵抗素子Rpとスイッチング素子SW23とは直列に接続されている。スイッチング素子SW23は、この例では、それぞれボディダイオードを有している。ボディダイオードは、アノードがスイッチング素子SW23のソースに接続され、カソードがスイッチング素子SW23のドレインに接続されている。このボディダイオードの向きは、リセット回路50のダイオードDs、抵抗素子Rpおよびスイッチング素子SW23からなる直列回路において、ダイオードDsの向きと反対になっている。これにより、スイッチング素子SW23がオフ状態の場合には、インダクタLchの両端間がいかなる電圧であっても、抵抗素子Rpを介して電流が流れないようになっている。
この構成により、放出回路60は、後述するように、昇圧動作モードにおける第1起動期間P1(後述)において、SW駆動部74(後述)から供給されるSW制御信号S23に応じてスイッチング素子SW23をオン状態にすることにより、インダクタLchに蓄積されたエネルギーをリセットするようになっている。また、昇圧動作モードにおけるその他の期間、および降圧動作モードでは、SW駆動部74(後述)から供給されるSW制御信号S23に応じてスイッチング素子SW23をオフ状態にすることにより、インダクタLchはエネルギーを蓄積し、その本来の動作を行うようになっている。
制御部73は、降圧動作モードにおいては端子T3,T4間の電圧VLが所定の電圧を保つように、そして、昇圧動作モードにおいては端子T1,T2間の電圧VHが所定の電圧を保つように、スイッチング素子SW11〜SW14,SW21,SW22を制御するための指示をSW駆動部74に対して供給するものである。また、制御部73は、昇圧動作モードにおける第1起動期間P1(後述)において、放出回路60のスイッチング素子SW23がオン状態になるように、SW駆動部74に対して指示する機能も有している。
SW駆動部74は、制御部73からの指示に基づいて、SW制御信号S11〜S14を生成してスイッチング素子SW11〜SW14に対して供給し、SW制御信号S21,S22を生成してスイッチング素子SW21,SW22に対して供給し、SW制御信号S23を生成してスイッチング素子SW23に対して供給することにより、これらをオンオフ制御するように駆動するものである。
スイッチング電源装置1では、端子T1,T2間の電圧VHを検出するために、1次側高圧ラインL1Hと1次側低圧ラインL1Lとの間に電圧検出回路71が挿入されている。また、端子T3,T4間の電圧VLを検出するために、2次側高圧ラインL2Hと2次側低圧ラインL2Lとの間に電圧検出回路72が挿入されている。
この構成により、制御部73は、電圧検出回路71,72における検出結果に基づいてSW駆動部74に対して指示を行い、SW駆動部74が制御部73からの指示に基づいてスイッチング素子SW11〜SW14,SW21〜SW23を駆動するようになっている。
ここで、直流電圧VHは、本発明における「第1の直流電圧」の一具体例に対応する。直流電圧VLは、本発明における「第2の直流電圧」の一具体例に対応する。スイッチング回路10は、本発明における「1次側スイッチング回路」の一具体例に対応する。スイッチング回路20は、本発明における「2次側スイッチング回路」の一具体例に対応する。抵抗素子Rpは、本発明における「放出手段」の一具体例に対応する。スイッチング素子SW23は、本発明における「放出スイッチ」の一具体例に対応する。抵抗素子Rsは、本発明における「リセット抵抗」の一具体例に対応する。容量素子Csは、本発明における「リセット容量」の一具体例に対応する。2次側巻線32A,32Bは、本発明における「第1および第2の2次側巻線」の一具体例に対応する。スイッチング素子SW21,SW22は、本発明における「第1および第2のスイッチング素子」の一具体例に対応する。
[動作および作用]
続いて、本実施の形態のスイッチング電源装置1の動作および作用について説明する。
(降圧動作モードにおける定常動作)
まず最初に、図1を参照して、降圧動作モード(充電モード)におけるスイッチング電源装置1の動作を説明する。
降圧動作モードでは、スイッチング電源装置1は、外部電源BHから端子T1,T2に供給された直流電圧VHを降圧し、その降圧した直流電圧VLを端子T3,T4から出力し、接続されたバッテリBLを充電する。
具体的には、スイッチング回路10は、スイッチング素子SW11〜SW14をスイッチングすることにより、直流電圧VHを交流電圧に変換し、トランス30の1次側巻線31の両端間に供給する。そしてトランス30は、この交流電圧を1/n倍に変圧(降圧)し、2次側巻線32A,32Bから変圧された交流電圧を出力する。スイッチング回路20は、降圧動作モードにおいては整流回路として機能し、この交流電圧を整流する。インダクタLchおよび平滑コンデンサCLは、降圧動作モードにおいては平滑回路として機能し、この整流された信号を平滑化し、直流電圧VLを生成する。
図2は、降圧動作モードにおけるスイッチング電源装置1の動作を表すものであり、(A)〜(D)はSW制御信号S11〜S14の波形をそれぞれ示し、(E)はSW制御信号S21,S22の波形を示し、(F)はSW制御信号S23の波形を示す。この例では、スイッチング素子SW11〜SW14,SW21〜SW23は、そのゲートに印加されたSW制御信号S11〜S14,S21〜S23が高レベルの時にオン状態となり、低レベルの時にオフ状態になるものである。
降圧動作モードでは、SW駆動部74は、周期的なSW制御信号S11〜S14を生成し、スイッチング素子SW11〜SW14にそれぞれ供給する(図2(A)〜(D))。また、SW駆動部74は、低レベルに固定されたSW制御信号S21〜S23を生成し、スイッチング素子SW21〜SW23にそれぞれ供給する(図2(E),(F))。
図2に示したように、SW駆動部74は、SW制御信号S11,S12を、同時に高レベルにならないように生成する(図2(A),(B))。このため、スイッチング素子SW11,SW12は、同時にオン状態になることはない。同様に、SW駆動部74は、SW制御信号S13,S14を、同時に高レベルにならないように生成する(図2(C),(D))。このため、スイッチング素子SW13,SW14は、同時にオン状態になることはない。つまり、スイッチング電源装置1では、1次側高圧ラインL1Hと1次側低圧ラインL1Lとが電気的に短絡しないようになっている。このように、1次側高圧ラインL1Hと1次側低圧ラインL1Lとが電気的に短絡するのを回避するためにとられる時間的間隔は、デッドタイムTdと称される。
また、図2に示したように、SW駆動部74は、SW制御信号S11,S14を、同時に高レベルになる期間T11を有するように生成する(図2(A),(D))。同様に、SW駆動部74は、SW制御信号S12,S13を、同時に高レベルになる期間T12を有するように生成する(図2(B),(C))。
図3,4は、降圧動作モードにおけるスイッチング電源装置1の動作を表すものであり、図3は、期間T11における動作を示し、図4は、期間T12における動作を示す。図3,4において、ダイオードD11〜D14,D21,D22は、スイッチング素子SW11〜SW14,SW21,SW22のボディダイオードにそれぞれ対応する。なお、これらの図では、説明の便宜上、スイッチング素子SW11〜SW14,SW21〜SW23を、その動作状態(オン状態もしくはオフ状態)を表すスイッチの形状で示す。また、説明の便宜上、その説明に直接必要のない回路ブロックや素子などについては、適宜図示を省略する。
期間T11では、図2(A)〜(D)に示したように、スイッチング回路10のスイッチング素子SW11,SW14がオン状態になるとともに、スイッチング素子SW12,SW13がオフ状態になる。これにより、スイッチング電源装置1の1次側では、図3に示したように、スイッチング素子SW11、共振用インダクタLr、トランス30の1次側巻線31、スイッチング素子SW14、外部電源BHおよび平滑コンデンサCHを順に通る、1次側ループ電流Ia11が流れる。一方、2次側では、ダイオードD21、トランス30の2次側巻線32B、インダクタLch、バッテリBLおよび平滑コンデンサCLを順に通る2次側ループ電流Ia21が流れる。
一方、期間T12では、図2(A)〜(D)に示したように、スイッチング回路10のスイッチング素子SW12,SW13がオン状態になるとともに、スイッチング素子SW11,SW14がオフ状態になる。これにより、スイッチング電源装置1の一次側では、図4に示したように、スイッチング素子SW13、トランス30の1次側巻線31、共振用インダクタLr、スイッチング素子SW12、外部電源BHおよび平滑コンデンサCHを順に通る、1次側ループ電流Ia12が流れる。一方、2次側では、ダイオードD22、トランス30の2次側巻線32A、インダクタLch、バッテリBLおよび平滑コンデンサCLを順に通る2次側ループ電流Ia22が流れる。
このように、スイッチング電源装置1では、期間T11,T12において、2次側ループ電流Ia21,Ia22が流れる。この期間T11,T12の長さは、図2に示したように、SW制御信号S11,S14間の位相差φ、およびSW制御信号S12,S13間の位相差φにより制御される。すなわち、例えば、位相差φが小さくなると、期間T11,T12の長さが長くなり、2次側ループ電流Ia21,Ia22が流れる時間が長くなるため、この降圧動作モードにおいて生成される電圧VLが高くなる。制御部73は、電圧検出回路72において検出された電圧VLに基づいて、電圧VLが所定の電圧を保つように、この位相差φを制御する。
(昇圧動作モードにおける定常動作)
次に、図1を参照して、昇圧動作モード(放電モード)におけるスイッチング電源装置1の動作を説明する。
昇圧動作モードでは、スイッチング電源装置1は、バッテリBLから端子T3,T4に供給された直流電圧VLを昇圧し、その昇圧した直流電圧VHを端子T1,T2から出力し、接続された負荷Lを駆動する。
具体的には、スイッチング回路20は、スイッチング素子SW21,SW22をスイッチングすることにより、直流電圧VLを交流電圧に変換する。その際、インダクタLchは、この交流電圧を昇圧し、トランス30の2次側巻線32A,32BのセンタタップCTに供給する。そしてトランス30は、この交流電圧をn倍に変圧(昇圧)し、1次側巻線31から変圧された交流電圧を出力する。スイッチング回路10は、昇圧動作モードにおいては整流回路として機能し、この交流電圧を整流する。平滑コンデンサCLは、この整流された信号を平滑化し、直流電圧VHを生成する。
図5は、昇圧動作モードにおけるスイッチング電源装置1の動作を表すものであり、(A),(B)はSW制御信号S21,S22の波形をそれぞれ示し、(C)はSW制御信号S23の波形を示し、(D)はSW制御信号S11〜S14の波形を示し、(E)はインダクタLchに流れる電流Ichの波形を示し、(F)はトランス30の2次側巻線32A,32Bの電圧V32B−V32Aの波形を示し、(G)はトランス30の1次側巻線31の電圧V31の波形を示す。
昇圧動作モードでは、SW駆動部74は、周期的なSW制御信号S21,S22を生成し、スイッチング素子SW21,SW22にそれぞれ供給する(図5(A),(B))。また、SW駆動部74は、低レベルに固定されたSW制御信号S23,S11〜S14を生成し、スイッチング素子SW23,SW11〜SW14にそれぞれ供給する(図5(C),(D))。
図5に示したように、SW駆動部74は、SW制御信号S21,S22を、交互に高レベルになるように生成する。その際、SW駆動部74は、SW制御信号S21,S22を、同時に高レベルになる期間を有するように生成する。具体的には、SW駆動部74は、SW制御信号S21,S22が同時に高レベルになる期間T21と、SW制御信号S21が高レベルになるとともにSW制御信号S22が低レベルになる期間T22と、期間T21と、SW制御信号S21が低レベルになるとともにSW制御信号S22が高レベルになる期間T23とが巡回するように、SW制御信号S21,S22を生成する。
図6〜8は、昇圧動作モードにおけるスイッチング電源装置1の動作を表すものであり、図6は、期間T21における動作を示し、図7は、期間T22における動作を示し、図8は、期間T23における動作を示す。図6〜8において、トランス30の各端子間電圧V31,V32A,V32Bの方向を矢印で示す。
期間T21では、図5(A),(B)に示したように、スイッチング回路20のスイッチング素子SW21,SW22は同時にオン状態となる。これにより、スイッチング電源装置1の2次側では、図6に示したように、インダクタLch、トランス30の2次側巻線32B、スイッチング素子SW21、バッテリBLおよび平滑コンデンサCLを順に通る、2次側ループ電流Ib21が流れるとともに、インダクタLch、トランス30の2次側巻線32A、スイッチング素子SW22、バッテリBLおよび平滑コンデンサCLを順に通る、2次側ループ電流Ib22が流れる。このとき、トランス30の2次側巻線32A,32Bでは、2次側ループ電流Ib21により生成される磁界と2次側ループ電流Ib22により生成される磁界とが互いに打ち消し合うため、1次側に電流を誘起せず、よって、インダクタLchから見たトランス30のインピーダンス(負荷)はほぼゼロとなる。このようにして、期間T21において、インダクタLchには、2次側ループ電流Ib21,Ib22が流れ(図5(E))、これらに基づいてエネルギーが蓄積されることとなる。
期間T22では、図5(A),(B)に示したように、スイッチング回路20のスイッチング素子SW21がオン状態になるとともに、スイッチング素子SW22がオフ状態になる。これにより、スイッチング電源装置1の2次側では、図7に示したように、インダクタLch、トランス30の2次側巻線32B、スイッチング素子SW21、バッテリBLおよび平滑コンデンサCLを順に通る、2次側ループ電流Ib21が流れる。このとき、2次側巻線32Bの両端電圧V32Bは、バッテリBLの電圧VLに、この期間T22に先立つ期間T21においてインダクタLchに蓄積されたエネルギーに基づく電圧ΔVを加えたもの(VL+ΔV)となる(図5(F))。一方、1次側では、図7に示したように、ダイオードD14、トランス30の1次側巻線31、共振用インダクタLr、ダイオードD11、負荷Lおよび平滑コンデンサCHを順に通る1次側ループ電流Ib11が流れる。このとき、1次側巻線31の両端電圧V31は、2次側巻線32Bの両端電圧V32B(電圧VL+ΔV)にトランス30の巻線比を掛け合わせた、n×(VL+ΔV)となる。
また、期間T23では、図5(A),(B)に示したように、スイッチング回路20のスイッチング素子SW21がオフ状態になるとともに、スイッチング素子SW22がオン状態になる。これにより、スイッチング電源装置1の2次側では、図8に示したように、インダクタLch、トランス30の2次側巻線32A、スイッチング素子SW22、バッテリBLおよび平滑コンデンサCLを順に通る、2次側ループ電流Ib22が流れる。このとき、2次側巻線32Aの両端電圧V32Aは、バッテリBLの電圧VLに、この期間T23に先立つ期間T21においてインダクタLchに蓄積されたエネルギーに基づく電圧ΔVを加えたもの(VL+ΔV)となる(図5(F))。一方、1次側では、図8に示したように、ダイオードD12、共振用インダクタLr、トランス30の1次側巻線31、ダイオードD13、負荷Lおよび平滑コンデンサCHを順に通る1次側ループ電流Ib12が流れる。このとき、1次側巻線31の両端電圧V31は、2次側巻線32Aの両端電圧V32A(電圧VL+ΔV)にトランス30の巻線比を掛け合わせた、n×(VL+ΔV)となる。
このように、昇圧動作モードでは、定常動作状態においては、スイッチング素子SW21,SW22は、同時にオフ状態にする期間T21を有するように動作する。この期間T21においてインダクタLchがエネルギーを蓄積することにより、例えば期間T22において、2次側巻線32Bに、バッテリBLの電圧VLを上回る電圧VL+ΔVを供給することができ、n×VLよりも高い電圧を電圧VHとして出力することが可能となる。
スイッチング電源装置1では、期間T22,T23において、1次側巻線31の両端には、n×(VL+ΔV)の電圧が現れ、1次側ループ電流Ib11,Ib12が流れる。この期間T22,T23の長さを制御することにより、この昇圧動作モードにおいて生成される電圧VHを制御することができる。具体的には、期間T21,T22,T21,T23からなる“1周期期間”における期間T21の占める割合を大きくすることにより、電圧VHを高くすることができる。制御部73は、電圧検出回路71において検出された電圧VHに基づいて、電圧VHが所定の電圧(目標電圧VT)を保つように、期間T22,T23の時間と期間T21の時間との比を制御する。
(昇圧動作モードにおける詳細動作)
次に、昇圧動作モード(放電モード)におけるスイッチング電源装置1の詳細動作を説明する。
図9は、昇圧動作モードにおけるスイッチング電源装置1の起動動作を表すものであり、(A),(B)はSW制御信号S21,S22の波形をそれぞれ示し、(C)はSW制御信号S23の波形を示し、(D)は電圧VHの波形を示す。
スイッチング電源装置1は、起動時において、第1起動期間P1,第2起動期間P2を経て、上述した定常動作(定常動作期間P3)を行う。
第1起動期間P1では、図9(A),(B)に示したように、SW駆動部74は、SW制御信号S21,S22を、交互に高レベルになるように生成する。その際、SW駆動部74は、上述した定常動作とは異なり、SW制御信号S21,S22を、同時に低レベルになる期間を有するように生成する。また、SW駆動部74は、SW制御信号S21,S22を、それらのパルス幅が徐々に大きくなるように生成する。この第1起動期間P1では、電圧VHを、電圧VLにトランス30の巻線比を掛け合わせた電圧(n×VL)まで上昇させることができる。いいかえれば、スイッチング電源装置1は、この第1起動期間P1の初めにおいては降圧動作を行い、そしてその後は昇圧動作を行いながら電圧VHを徐々に上昇させる。
また、第1起動期間P1では、図9(C)に示したように、SW駆動部74は、高レベルのSW制御信号S23を生成する。すなわち、第1起動期間P1では、放出回路60のスイッチング素子SW23はオン状態となり、抵抗素子Rpが、インダクタLchに蓄積されたエネルギーを取り出して消費する。
スイッチング電源装置1は、電圧検出回路71を用いて電圧VHをモニタし、この電圧VHが所定の電圧VT1に達したときに、第2起動期間P2に移行する。ここで、この所定の電圧VT1は、例えば、電圧(n×VL)にすることができる。
第2起動期間P2では、SW駆動部74は、SW制御信号S21,S22を、交互に高レベルになるように生成する。その際、SW駆動部74は、定常状態の場合(図5)と同様に、SW制御信号S21,S22を、同時に高レベルになる期間(図5における期間T21)を有するように生成する。そして、その同時にオン状態になる期間を徐々に長くすることにより、電圧VHを電圧VT1から目標電圧VT2に向けてさらに上昇させる。
また、第2起動期間P2では、図9(C)に示したように、SW駆動部74は、低レベルのSW制御信号S23を生成する。すなわち、第2起動期間P2では、放出回路60のスイッチング素子SW23はオフ状態となり、インダクタLchは、SW制御信号S21,S22に基づいて、エネルギーを蓄積するようになる。
そして、スイッチング電源装置1は、電圧VHが目標電圧VT2に達すると、その電圧を維持するように動作する(定常動作期間P3)。
次に、第1起動期間P1におけるスイッチング電源装置1の詳細動作を説明する。
図10は、第1起動期間P1におけるスイッチング電源装置1の一動作例を表すものであり、(A),(B)はSW制御信号S21,S22の波形をそれぞれ示し、(C)はSW制御信号S23の波形を示し、(D)はSW制御信号S11〜S14の波形を示し、(E)はインダクタLchに流れる電流Ichの波形を示し、(F)はトランス30の2次側巻線32A,32Bの電圧V32B−V32Aの波形を示し、(G)はスイッチング素子SW21の電圧V21の波形を示し、(H)はスイッチング素子SW22の電圧V22の波形を示し、(I)はトランス30の1次側巻線31の電圧V31の波形を示す。
第1起動期間P1では、SW駆動部74は、図10(A),(B)に示したように、SW制御信号S21,S22を、交互に高レベルになるように生成する。その際、SW駆動部74は、SW制御信号S21,S22を、同時に低レベルになる期間を有するように生成する。具体的には、SW駆動部74は、SW制御信号S21,S22が同時に低レベルになる期間T31と、SW制御信号S21が高レベルになるとともにSW制御信号S22が低レベルになる期間T32と、期間T31と、SW制御信号S21が低レベルになるとともにSW制御信号S22が高レベルになる期間T33とが巡回するように、SW制御信号S21,S22を生成する。
また、SW駆動部74は、高レベルに固定されたSW制御信号S23を生成し、スイッチング素子SW23に供給するとともに、低レベルに固定されたSW制御信号S11〜S14を生成し、スイッチング素子SW11〜SW14にそれぞれ供給する(図10(C),(D))。
図11は、期間T31におけるスイッチング電源装置1の動作を表すものである。期間T31では、図10(A),(B)に示したように、スイッチング回路20のスイッチング素子SW21,SW22は同時にオフ状態となる。これにより、スイッチング電源装置1の2次側では、図11に示したように、トランス30を流れるループ電流は発生せず、よって、1次側にもループ電流は誘起されない。
このとき、インダクタLchは、期間T31に先立つ期間T32,T33においてインダクタLchに流れる電流を、期間T31でも維持しようとする。すなわち、後述するように、期間T32,T33では、インダクタLchには、バッテリBLからトランス30に向かって電流が流れるため、期間T31でも、その方向に電流を流そうとする。このとき、スイッチング回路20のスイッチング素子SW21,SW22はともにオフ状態であるが、放出回路60のスイッチング素子SW23はオン状態になっているため、インダクタLch、ダイオードDs、抵抗素子Rp、スイッチング素子SW23を順に通るループ電流Ib3が流れる。言い換えれば、期間T32,T33においてインダクタLchに蓄積されたエネルギーは、このループ電流Ib3によりインダクタLchから取り除かれるとともに、抵抗素子Rpにおいて消費される。
期間T32では、図10(A),(B)に示したように、スイッチング回路20のスイッチング素子SW21がオン状態になるとともに、スイッチング素子SW22がオフ状態になる。これにより、スイッチング電源装置1の2次側では、上述した定常動作状態の場合(図7)と同様に、2次側ループ電流Ib21が流れる。このとき、定常動作状態の場合とは異なり、インダクタLchに蓄積されたエネルギーは、この期間T32に先立つ期間T31において取り除かれているため、2次側巻線32Bの両端電圧V32Bは、単に電圧VLが供給される(図10(F))。一方、1次側では、定常動作状態の場合(図7)と同様に、1次側ループ電流Ib11が流れる。このとき、1次側巻線31の両端電圧V31は、2次側巻線32Bの両端電圧V32B(電圧VL)にトランス30の巻線比を掛け合わせた、n×VLとなる(図10(I))。そして、この1次側ループ電流Ib11により、直流の出力電圧VHが負荷Lに給電される。
また、期間T33では、図10(A),(B)に示したように、スイッチング回路20のスイッチング素子SW21がオフ状態になるとともに、スイッチング素子SW22がオン状態になる。これにより、スイッチング電源装置1の2次側では、上述した定常動作状態の場合(図8)と同様に、2次側ループ電流Ib22が流れる。このとき、定常動作状態の場合とは異なり、インダクタLchに蓄積されたエネルギーは、この期間T32に先立つ期間T31において取り除かれているため、2次側巻線32Bの両端電圧V32Bは、単に電圧VLが供給される(図10(F))。一方、1次側では、定常動作状態の場合(図8)と同様に、1次側ループ電流Ib12が流れる。このとき、1次側巻線31の両端電圧V31は、2次側巻線32Aの両端電圧V32A(電圧VL)にトランス30の巻線比を掛け合わせた、n×VLとなる(図10(I))。そして、この1次側ループ電流Ib12により、直流の出力電圧VHが負荷Lに給電される。
このように、第1起動期間P1では、スイッチング素子SW21,SW22は、同時にオフ状態となる期間T31を有するように動作する。よって、期間T31に先立つ期間T32,T33においてインダクタLchに電流が流れることにより蓄積されたエネルギーは、定常動作状態の場合とは異なり、期間T31においてスイッチング素子SW21,SW22を介して放出されない。仮にエネルギーの放出経路が無い場合には、以下に比較例として説明するように、このエネルギーに起因するサージ電圧が回路に発生し、スイッチング素子などを破壊するおそれがある。しかしながら、スイッチング電源装置1では、この第1起動期間P1において、放出回路60のスイッチング素子SW23をオン状態にしているので、この蓄積されたエネルギーを、放出回路60により放出することができる。
(比較例)
次に、比較例に係るスイッチング電源装置1Rについて説明する。本比較例は、スイッチング電源装置1(図1)において、放出回路60が無いものである。その他の構成は、本実施の形態(図1)と同様である。
図12は、比較例に係るスイッチング電源装置1Rの第1起動期間P1における動作を表すものであり、(A),(B)はSW制御信号S21,S22の波形をそれぞれ示し、(C)はSW制御信号S11〜S14の波形を示し、(D)はインダクタLchに流れる電流Ichの波形を示し、(E)はトランス30の2次側巻線32A,32Bの電圧V32B−V32Aの波形を示し、(F)はスイッチング素子SW21の電圧V21の波形を示し、(G)はスイッチング素子SW22の電圧V22の波形を示し、(H)はトランス30の1次側巻線31の電圧V31の波形を示す。
図12(F),(G)に示したように、スイッチング素子SW21電圧V21およびスイッチング素子SW22電圧V22には、期間T31に切り替わった瞬間にサージ電圧VSが現れる。すなわち、インダクタLchは、期間T31に先立つ期間T32,T33においてインダクタLchに流れる電流を、期間T31でも維持しようとする。しかしながら、本比較例では、上記実施の形態における放出回路60を設けていないので、期間T31においてこの電流を流す経路がない。これにより、スイッチング素子SW21,SW22のドレインの電位が上昇してサージ電圧VSが発生し、その電圧がスイッチング素子SW21,SW22の耐圧を超えて上昇した場合にはスイッチング素子SW21,SW22を破壊するおそれがある。
このように、本比較例に係るスイッチング電源装置1Rでは、期間T32,T33において蓄積したインダクタLchのエネルギーを、期間T32,T33に続く期間T31において放出する経路がないため、サージ電圧VSが回路に発生し、スイッチング素子などを破壊するおそれがある。
一方、本実施の形態に係るスイッチング電源装置1では、放出回路60を設け、第1起動期間P1においてスイッチング素子SW23をオン状態にするようにしたので、期間T32,T33において蓄積したインダクタLchのエネルギーを、期間T31において放出することができ、そのエネルギーに起因するサージ電圧VSを低減することができ、スイッチング素子などを破壊するおそれを低減することができる。
[効果]
以上のように本実施の形態では、放出回路を設けたので、インダクタに蓄積したエネルギーを放出し、サージ電圧を低減することができる。
本実施の形態では、放出回路にスイッチング素子を設けたので、必要なときにのみ、インダクタに蓄積したエネルギーを放出することができる。
本実施の形態では、放出回路のスイッチング素子を、所定の動作においてのみオン状態にするようにしたので、放出回路の設計を、その所定の動作に適したものにすることができ、設計の自由度を高めることができる。
本実施の形態では、放出回路のスイッチング素子を、昇圧動作モードにおける第1起動期間にのみオン状態にするようにしたので、その他の期間において、放出回路の影響を受けずに動作をすることが可能となる。具体的には、降圧動作モードでは、このスイッチング素子SW23をオフ状態にしたので、この動作において放出回路60に電流が流れないため、インダクタLchおよび平滑コンデンサCLは、平滑回路として機能することができる。また、昇圧動作モードでは、第2起動期間P2および定常動作期間P3において、このスイッチング素子SW23をオフ状態にしたので、この動作において、放出回路60に電流が流れないため、インダクタLchを用いて電圧VLを昇圧することができる。
本実施の形態では、インダクタに蓄積したエネルギーを放出する手段として、そのエネルギーを消費する放出回路を用いたので、抵抗素子によって構成することができ、回路の小型化を実現することができる。
[変形例1]
上記の実施の形態では、スイッチング素子SW32を、第1起動期間P1の期間中オン状態にしたが、これに限定されるものではなく、これに代えて、例えば、インダクタLchに蓄積されたエネルギーをリセットできる程度の期間だけオン状態にしてもよい。
[変形例2]
上記実施の形態では、抵抗素子Rpおよびスイッチング素子SW23からなる放出回路60を用いたが、これに限定されるものではなく、これに代えて、例えば、図13に示したように、抵抗素子Rpおよび2つのスイッチング素子SW24,SW25からなる放出回路60Bを用いてもよい。スイッチング素子SW24,SW25は、ともにSW制御信号S23によりオンオフ制御される。ここで、スイッチング素子SW24,SW25は、本発明における「第1および第2の放出スイッチ」の一具体例に対応する。この例では、スイッチング素子SW24,SW25はボディダイオードを有している。これらのボディダイオードの向きは、スイッチング素子SW24、抵抗素子Rpおよびスイッチング素子SW25からなる直列回路において、互いに反対を向いている。これにより、スイッチング素子SW24,SW25がオフ状態の場合には、インダクタLchの両端間がいかなる電圧であっても、抵抗素子Rpを介して電流が流れないようになっている。このような構成でも、上記実施の形態と同様に、昇圧動作モードで動作させた場合において、第1起動期間P1にスイッチング素子SW24,SW25をオン状態に設定することにより、インダクタLchに起因するサージ電圧VSを低減することができる。
なお、この例では、上記実施の形態(図1など)のリセット回路50を省いているが、このリセット回路50を有していてもよい。この場合には、放出回路60Bは、図1と同様に、リセット回路50の抵抗素子Rsおよび容量素子Csに並列に接続される。
[変形例3]
上記の実施の形態では、スイッチング回路10,20において、ボディダイオードを整流素子として用いたが、これに限定されるものではなく、これに代えて、スイッチング回路10,20のスイッチング素子SW11〜SW14,SW21,SW22をオンオフ制御し、いわゆる同期整流により整流を行うようにしてもよい。以下に、一例として、昇圧動作モードにおける、同期整流を行った場合の定常動作を説明する。
図14は、昇圧動作モードにおけるスイッチング電源装置1の定常動作を表すものであり、(A),(B)はSW制御信号S21,S22の波形をそれぞれ示し、(C)はSW制御信号S23の波形を示し、(D)〜(G)はSW制御信号S11〜S14の波形をそれぞれ示す。本変形例に係るスイッチング電源装置でも、SW駆動部74は、上記実施の形態の場合と同様に、期間T21、期間T22、期間T21、および期間T23が巡回するように、SW制御信号S21,S22を生成する。
図15,16は、昇圧動作モードにおけるスイッチング電源装置1の定常動作を表すものであり、図15は、期間T22における動作を示し、図16は、期間T23における動作を示す。
期間T22では、図14に示したように、スイッチング回路20のスイッチング素子SW21がオン状態になるとともに、スイッチング素子SW22がオフ状態になる(図14(A),(B))。また、スイッチング回路10では、スイッチング素子SW11,SW14がオン状態になるとともに、スイッチング素子SW12,SW13がオフ状態になる(図14(D)〜(G))。これにより、スイッチング電源装置1の2次側では、図15に示したように、2次側ループ電流Ib21が流れる。一方、1次側では、スイッチング素子SW14、トランス30の1次側巻線31、共振用インダクタLr、スイッチング素子SW11、負荷Lおよび平滑コンデンサCHを順に通る1次側ループ電流Ib11が流れる。
また、期間T23では、図14に示したように、スイッチング回路20のスイッチング素子SW21がオフ状態になるとともに、スイッチング素子SW22がオン状態になる(図14(A),(B))。また、スイッチング回路10では、スイッチング素子SW11,SW14がオフ状態になるとともに、スイッチング素子SW12,SW13がオン状態になる(図14(D)〜(G))。これにより、スイッチング電源装置1の2次側では、図16に示したように、2次側ループ電流Ib22が流れる。一方、1次側では、スイッチング素子SW12、共振用インダクタLr、トランス30の1次側巻線31、スイッチング素子SW13、負荷Lおよび平滑コンデンサCHを順に通る1次側ループ電流Ib12が流れる。
このように同期整流を行った場合でも、上記実施の形態と同様に、昇圧動作モードで動作させた場合において、第1起動期間P1にスイッチング素子SW23をオン状態に設定することにより、インダクタLchに起因するサージ電圧VSを低減することができる。
[変形例4]
上記実施の形態等では、インダクタLchからエネルギーを取り出して消費する放出回路60を用いたが、これに限定されるものではなく、これに代えて、例えば、図17,18に示したように、トランス81(上記実施の形態におけるインダクタLchに対応)からエネルギーを取り出して電源などに回生する回生回路を用いてもよい。図17に示したスイッチング電源装置1Bは、トランス81、ダイオードD82およびスイッチング素子SW83を有する回生回路80Bを備え、スイッチング素子SW83をオン状態にしたときに、トランス81に蓄積されたエネルギーを1次側の電源に回生するものである。ここで、トランス81およびダイオードD82は、本発明における「回生手段」の一具体例に対応し、スイッチング素子SW83は、本発明における「放出スイッチ」の一具体例に対応する。また、図18に示したスイッチング電源装置1Cは、トランス81、ダイオードD84およびスイッチング素子SW85を有する回生回路80Cを備え、スイッチング素子SW85をオン状態にしたときに、トランス81に蓄積されたエネルギーをバッテリBLに回生するものである。ここで、トランス81およびダイオードD84は、本発明における「回生手段」の一具体例に対応し、スイッチング素子SW85は、本発明における「放出スイッチ」の一具体例に対応する。
以上、実施の形態および変形例を挙げて本発明を説明したが、本発明はこれらの実施の形態等には限定されず、種々の変形が可能である。
例えば、上記実施の形態等では、1次側のスイッチング回路10はフルブリッジ型の回路構成としたが、これに限定されるものではなく、これに代えて、例えばハーフブリッジ型やプッシュプル型の回路構成などが利用可能である。
また、例えば、上記実施の形態等では、スイッチング素子SW23は、NチャネルのMOS−FETとしたが、これに限定されるものではなく、スイッチとして機能するものであればどのようなものであってもよい。例えば、PチャネルのMOS−FETであってもよいし、上述したMOS−FETやIGBTなどの半導体スイッチだけでなく、リレーなどの機械式スイッチであってもよい。
また、例えば、上記実施の形態等では、スイッチング電源装置1は、直流電圧を入力し直流電圧を出力する双方向のDC/DCコンバータとしたが、これに限定されるものではなく、例えばAC/DCコンバータなど、スイッチング電源装置であればどのようなものであってもよい。