本発明を実施するための形態は、以下の好ましい実施例の説明を添付図面と照らし合わせて読むと、明らかになるであろう。但し、図面はもっぱら解説のためのものであって、本発明の範囲を限定するものではない。
(実施例1の画像形成装置)
図2は、本発明の実施例1における画像形成装置を示す概略の構成図である。
この画像形成装置1は、被駆動素子である発光素子(例えば、三端子スイッチ素子である発光サイリスタ)を用いた駆動装置(例えば、光プリントヘッド)が搭載された電子写真カラープリンタであり、ブラック(K)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)及びシアン(C)の各色の画像を各々に形成する4個のプロセスユニット10−1〜10−4を有し、これらが記録媒体(例えば、用紙)20の搬送経路の上流側から順に配置されている。各プロセスユニット10−1〜10−4の内部構成は共通しているため、例えば、マゼンタのプロセスユニット10−3を例にとり、これらの内部構成を説明する。
プロセスユニット10−3には、像担持体としての感光体ドラム11が図2中の矢印方向に回転可能に配置されている。感光体ドラム11の周囲には、この回転方向上流側から順に、感光体ドラム11の表面に電荷を供給して帯電させる帯電装置12と、帯電された感光体ドラム11の表面に選択的に光を照射して静電潜像を形成する露光装置(例えば、光プリントヘッド)13が配設されている。更に、静電潜像が形成された感光体ドラム11の表面に、マゼンタ(所定色)のトナーを付着させて顕像を発生させる現像器14と、感光体ドラム11上のトナーの顕像を用紙20に転写した後に残留したトナーを除去するクリーニング装置15が配設されている。なお、これら各装置に用いられているドラム又はローラは、図示しない駆動源からギア等を経由して動力が伝達され回転する。
画像形成装置1の下部には、用紙20を堆積した状態で収納する用紙カセット21が装着され、その上方に、用紙20を1枚ずつ分離させて搬送するためのホッピングローラ22が配設されている。用紙20の搬送方向におけるホッピングローラ22の下流側には、ピンチローラ23,24と共に用紙20を挟持することによってこの用紙20を搬送する搬送ローラ25と、用紙20の斜行を修正し、プロセスユニット10−1に搬送するレジストローラ26とが配設されている。これらのホッピングローラ22、搬送ローラ25及びレジストローラ26は、図示しない駆動源からギア等を経由して動力が伝達され回転する。
プロセスユニット10−1〜10−4の各感光体ドラム11に対向する位置には、それぞれ半導電性のゴム等によって形成された転写器27が配設されている。各転写器27には、感光体ドラム11上に付着されたトナーによる顕像を用紙20に転写する転写時に、各感光体ドラム11の表面電位とこれら各転写器27の表面電位に電位差を持たせるための電位が印加されている。
プロセスユニット10−4の下流には、定着器28が配設されている。定着器28は、ヒータが内蔵された加熱ローラとバックアップローラとを有し、用紙20上に転写されたトナーを加圧・加熱することによって定着する装置であり、この下流に、排出ローラ29,30、排出部のピンチローラ31,32、及び用紙スタッカ部33が設けられている。排出ローラ29,30は、定着器28から排出された用紙20を、排出部のピンチローラ31,32と共に挟持し、用紙スタッカ部33に搬送する。これら定着器28及び排出ローラ29等は、図示しない駆動源からギア等を経由して動力が伝達されて回転する。
このように構成される画像形成装置1は、次のように動作する。
先ず、用紙カセット21に堆積した状態で収納されている用紙20が、ホッピングローラ22によって、上から1枚ずつ分離されて搬送される。続いて、この用紙20は、搬送ローラ25、レジストローラ26及びピンチローラ23,24に挟持されて、プロセスユニット10−1の感光体ドラム11と転写器27の間に搬送される。その後、用紙20は、感光体ドラム11及び転写器27に挟持され、その記録面にトナー像が転写されると同時に感光体ドラム11の回転によって搬送される。同様にして、用紙20は、順次プロセスユニット10−2〜10−4を通過し、その通過過程で、各光プリントヘッド13により形成された静電潜像を各現像器14によって現像した各色のトナー像が、その記録面に順次転写されて重ね合わされる。
このようにして記録面上に各色のトナー像が重ね合わされた後、定着器28によってトナー像が定着された用紙20は、排出ローラ29,30及びピンチローラ31,32に挟持されて、画像形成装置1の外部の用紙スタッカ部33に排出される。以上の過程を経て、カラー画像が用紙20上に形成される。
(光プリントヘッドの構造)
図3は、図2中の光プリントヘッド13の構造を示す概略の断面図である。
この光プリントヘッド13は、ベース部材13aを有し、このベース部材13a上にプリント配線板13bが固定されている。プリント配線板13b上には、複数個の駆動回路(例えば、チップ状のドライバIC)100が熱硬化性樹脂等により固着され、これらのドライバIC100上に、複数個の被駆動素子アレイ(例えば、チップ状の発光サイリスタアレイ)200が配置されている。複数個の発光サイリスタアレイ200上には、柱状の光学素子を多数配列してなるロッドレインズアレイ13cが配置され、このロッドレインズアレイ13cがホルダ13dにより固定されている。ベース部材13a、プリント配線板13b及びホルダ13dは、クランプ部材13e,13fにより固定されている。
(ヘッド基板ユニット)
図4は、図3中のヘッド基板ユニットを示す斜視図である。
このヘッド基板ユニットは、プリント配線板13bを有し、このプリント配線板13b上に、複数個のチップ状のドライバIC100が固着されている。複数個のドライバIC100上には、複数個のチップ状の発光サイリスタアレイ200が配置されている。各ドライバIC100と各発光サイリスタアレイ200とは、薄膜配線を用いて接続され、これらの各ドライバIC100と各発光サイリスタアレイ200とにより、発光素子及び駆動素子からなる複合チップが形成されている。各ドライバIC100の各端子は、ボンディングワイヤ13gにより、プリント配線板13b上の図示しない配線パッドに接続されている。
(プリンタ制御回路)
図5は、図2の画像形成装置1におけるプリンタ制御回路の構成を示すブロック図である。
このプリンタ制御回路は、画像形成装置1における印字部の内部に配設された印刷制御部40を有している。印刷制御部40は、マイクロプロセッサ、読み出し専用メモリ(ROM)、随時読み書き可能なメモリ(RAM)、信号の入出力を行う入出力ポート、タイマ等によって構成され、図示しない画像処理部からの制御信号SGl、及びビデオ信号(ドットマップデータを一次元的に配列したもの)SG2等によって画像形成装置全体をシーケンス制御して印刷動作を行う機能を有している。印刷制御部40には、プロセスユニット10−1〜10−4の4個の光プリントヘッド13、定着器28のヒータ28a、ドライバ41,43、用紙吸入口センサ45、用紙排出口センサ46、用紙残量センサ47、用紙サイズセンサ48、定着器用温度センサ49、帯電用高圧電源50、及び転写用高圧電源51等が接続されている。ドライバ41には現像・転写プロセス用モータ(PM)42が、ドライバ43には用紙送りモータ(PM)44が、帯電用高圧電源50には現像器14が、転写用高圧電源51には転写器27が、それぞれ接続されている。
このような構成のプリンタ制御回路では、次のような動作を行う。
印刷制御部40は、画像処理部からの制御信号SGlによって印刷指示を受信すると、先ず、温度センサ49によって定着器28内のヒータ28aが使用可能な温度範囲にあるか否かを検出し、温度範囲になければヒータ28aに通電し、使用可能な温度まで定着器28を加熱する。次に、ドライバ41を介して現像・転写プロセス用モータ42を回転させ、同時にチャージ信号SGCによって帯電用高圧電源50をオン状態にし、現像器14の帯電を行う。
そして、セットされている図2中の用紙20の有無及び種類が用紙残量センサ47、用紙サイズセンサ48によって検出され、その用紙20に合った用紙送りが開始される。ここで、用紙送りモータ44には、図示しない遊星ギア機構が接続されており、ドライバ43を介して双方向に回転させることが可能になっている。そのため、用紙送りモータ44の回転方向を変えることにより、画像形成装置内部の異なる用紙送り用の搬送ローラ25等を選択的に駆動することができる構成となっている。
用紙1ページの印刷開始毎に、用紙送りモータ44を最初に逆転させて、用紙吸入口センサ45が検知するまで、セットされた用紙20を予め設定された量だけ送る。続いて、正回転させて用紙20を画像形成装置内部の印刷機構内に搬送する。
印刷制御部40は、用紙20が印刷可能な位置まで到達した時点において、図示しない画像処理部に対してタイミング信号SG3(主走査同期信号、副走査同期信号を含む)を送信し、ビデオ信号SG2を受信する。画像処理部においてページ毎に編集され、印刷制御部40に受信されたビデオ信号SG2は、印刷データ信号HD−DATA3〜HD−DATA0として各光プリントヘッド13に転送される。各光プリントヘッド13は、それぞれ1ドット(ピクセル)の印字のために設けられた発光サイリスタを複数個線上に配列したものである。
印刷制御部40は、1ライン分のビデオ信号SG2を受信すると、各光プリントヘッド13にラッチ信号HD−LOADを送信し、印刷データ信号HD−DATAを各光プリントヘッド13内に保持させる。又、印刷制御部40は、画像処理部から次のビデオ信号SG2を受信している最中においても、各光プリントヘッド13に保持した印刷データ信号HD−DATA3〜HD−DATA0について印刷することができる。
なお、印刷制御部40から各光プリントヘッド13に送信されるクロック信号HD−CLK、主走査同期信号HD−HSYNC−N(但し、「−N」は負論理信号を意味する。)、及び駆動オン/オフ指令信号(例えば、印刷駆動信号)HD−STB−Nの内、クロック信号HD−CLKは、印刷データ信号HD−DATA3〜HD−DATA0を光プリントヘッド13へ送信するための信号である。
ビデオ信号SG2の送受信は、印刷ライン毎に行われる。光プリントヘッド13からの発光は、マイナス電位に帯電された感光体ドラム11上に照射される。これにより、印刷される情報は、感光体ドラム11上において電位の上昇したドットとして潜像化される。そして、現像器14において、マイナス電位に帯電された画像形成用のトナーが、電気的な吸引力によって各ドットに吸引され、トナー像が現像形成される。
その後、トナー像は転写器27へ送られ、一方、転写信号SG4によってプラス電位に転写用高圧電源51がオン状態になり、転写器27は感光体ドラム11と転写器27との間隔を通過する用紙20上にトナー像を転写する。転写されたトナー像を有する用紙20は、ヒータ28aを内蔵する定着器28に当接して搬送され、この定着器28の熱によって用紙20に定着される。この定着された画像を有する用紙20は、更に搬送されて画像形成装置1の印刷機構から用紙排出口センサ46を通過して画像形成装置外部へ排出される。
印刷制御部40は、用紙サイズセンサ48、及び用紙吸入口センサ45の検知に対応して、用紙20が転写器27を通過している間だけ転写用高圧電源51からの電圧を転写器27に印加する。印刷が終了し、用紙20が用紙排出口センサ46を通過すると、帯電用高圧電源50による現像器14への電圧の印加を終了し、同時に現像・転写プロセス用モータ42の回転を停止させる。以後、上記の動作を繰り返す。
(光プリントヘッドの回路構成)
図6は、図5中の光プリントヘッド13の回路構成を示すブロック図である。
この光プリントヘッド13は、例えば、A4サイズの用紙に1インチ当たり600ドットの解像度で印刷可能な構成になっている。
光プリントヘッド13は、図4中のプリント配線板13bを有し、このプリント配線板13b上に、複数(例えば、26個)のドライバIC100(=100−1,100−2,・・・)が配列されている。図6には、2個のドライバIC100(=100−1,100−2)のみが図示されている。各ドライバIC100上には、複数(例えば、196個)の発光サイリスタ210(=211,212,・・・)が配列された発光サイリスタアレイ200(=200−1,200−2,・・・)が貼付されている。図6には、2個の発光サイリスタアレイ200(=200−1,200−2)のみが図示されている。発光サイリスタ210の総数は、4992ドット(個)である。各発光サイリスタアレイ200を構成する192個の発光サイリスタ210の第2端子であるカソードは、固定電位ノード(例えば、グランド)GNDに接続され、隣接する発光サイリスタ(例えば、211,212)の第1端子であるアノード同士が接続されて、各ドライバIC100のDO1〜DO96端子と薄膜配線等の手法を用いてそれぞれ接続されている。例えば、図6に示す発光サイリスタアレイ200−1において、それぞれのアノードがDO96端子に共通に接続された第1発光素子としての発光サイリスタ211及び第2発光素子としての発光サイリスタ212が第1発光素子群を構成し、それぞれのアノードがDO1端子に共通に接続された2つの発光サイリスタが第2発光素子群を構成する。そして、第1発光素子群に含まれる発光サイリスタ211及び第2発光素子群に含まれる第3発光素子としての一方の発光サイリスタは、それぞれの制御端子であるゲートが後述するG2端子に共通に接続されている。
26個のドライバIC100(=100−1,100−2,・・・)は、同一の回路により構成され、隣接するドライバIC100−1,100−2,・・・がカスケード接続(縦続接続)されている。
各ドライバIC100は、印刷データ信号HD−DATA3〜HD−DATA0を入力するDATAI3〜DATA0端子、ラッチ信号HD−LOADを入力するLOAD端子、クロック信号HD−CLKを入力するCLK端子、基準電圧VREFを入力するVREF端子、ストローブ信号である印刷駆動信号HD−STB−Nを入力するSTB端子、電源電圧VDDを入力するVDD端子、グランドGNDに接続されるGND端子、主走査同期信号HD−HSYNC−Nを入力するHSYNC端子、データDATAO3〜DATAO0を次段のドライバIC100へ出力するDATAO3〜DATAO0端子、各発光サイリスタアレイ200内の発光サイリスタ210のアノードに対して駆動電流DO1〜DO96を供給するDO1端子〜DO96端子、奇数(ODD)番目の発光サイリスタ210の制御端子であるゲートを共通母線220−1を介して駆動するためのゲート駆動信号G1を出力するG1端子、及び、偶数(EVEN)番目の発光サイリスタ210の制御端子であるゲートを共通母線220−2を介して駆動するためのゲート駆動信号G2を出力するG2端子を有している。
ここで、VREF端子に入力される基準電圧VREFは、発光サイリスタ駆動のための駆動電流値を指令するための基準電圧であって、光プリントヘッド13内に設けられた図示しない基準電圧発生回路から供給される。HSYNC端子に入力される主走査同期信号HD−HSYNC−Nは、前述した時分割駆動において、奇数番目の発光サイリスタ駆動であるか、偶数番目の発光サイリスタ駆動であるかの初期状態を設定するための同期信号である。
このように構成される図6の光プリントヘッド13における動作を説明する。
図6に示す構成においては、印刷データ信号HD−DATA3〜HD−DATA0は4本であり、隣接する発光サイリスタ4素子(4画素)分のデータをクロック信号HD−CLK毎に同時に送出する構成になっている。そのため、図5の印刷制御部40から出力される印刷データ信号HD−DATA3〜HD−DATA0は、CLK端子に入力されるクロック信号HD−CLKと共に、全ドライバIC100のDATAI3端子〜DATAI0端子に入力される。入力された印刷データ信号HD−DATA3〜HD−DATA0は、前述の総数4992ドット分のビットデータの内、奇数番目のデータと偶数番目のデータとが、後述する各ドライバIC100内のフリップフロップ回路(以下「FF」という。)からなるシフトレジスタ中を順次転送される。
次に、ラッチ信号HD−LOADが全ドライバIC100のLOAD端子に入力され、シフトレジスタ内に格納された前記ビットデータが、各ドライバIC100内のシフトレジスタを構成する各FFに対応して設けられたラッチ回路にラッチされる。続いて、ラッチ回路にラッチされた印刷データと、印刷駆動信号HD−STB−Nとによって、“H”レベルであるDO1,DO2,・・・端子に接続された発光サイリスタ210が点灯される。
図6に示すように、光プリントヘッド13には多数の発光サイリスタアレイ200が搭載されるため、これらの各発光サイリスタアレイ200に製造ばらつきによる特性変動があると、各発光サイリスタアレイ200間、及び同一発光サイリスタアレイ200内の各発光サイリスタ210間においてさえも、発光パワーに変動を生じ、感光体ドラム11への露光エネルギー量が異なる結果となる。
この様な現象は、感光体ドラム11を現像するときのドット面積の変動となって現れ、印刷濃度にむらを生じる原因となるため望ましくない。そのため、発光サイリスタアレイ200における各発光サイリスタ210の駆動電流DO96〜DO1を、発光パワーが一定になるように調整することが行われることが通例であり、図6の各ドライバIC100においても、後述するようにそのための回路手段を備えている。
(発光サイリスタ)
図7(a)〜(d)は、図6中の発光サイリスタ210の構造を示す模式図であり、同図(a)は回路シンボルを示す図、同図(b)は同図(a)の断面構造を示す図、同図(c)は同図(a)の他の形態の断面構造を示す図、及び、同図(d)は同図(b)、(c)と対比させて描いた発光サイリスタの等価回路を示す図である。
図7(a)に示すように、発光サイリスタ210は、第1端子であるアノードA、第2端子であるカソードK、及び制御端子であるゲートGの3つの端子を備えている。
図3(b)に示すように、発光サイリスタ210は、例えば、ガリウム・砒素(GaAs)ウェハ基材を用い、公知のMO−CVD(Meta1 Organic−Chemical Vaper Deposition)法により、GaAsウェハ基材の上層に、所定の結晶をエピタキシャル成長させることで、次のようにして作成される。
先ず、所定の犠牲層やバッファ層(図示しない)をエピタキシャル成長させた後、アルミニュウム・ガリウム・砒素(AlGaAs)基材に、N型不純物を含ませたN型層213と、P型不純物を含ませ成層したP型層212と、N型不純物を含ませたN型層211とを、順に積層させたNPNの3層構造からなるウェハを形成する。次に、公知のフォトリソグラフィ法を用いて、最上層であるN型層211の一部に、選択的にP型不純物領域214を形成する。
更に、公知のドライエッチング法により、溝部を形成することで素子分離を行う。又、前記エッチングの過程で、発光サイリスタ210の最下層となるN型層213の一部を露出させ、この露出領域に金属配線を形成してカソードKを形成する。同時に、P型不純物領域214とN型層211にもそれぞれアノードAとゲートGを形成する。
図7(c)に示す他の形態の発光サイリスタ210では、例えば、GaAsウェハ基材を用い、公知のMO−CVD法により、GaAsウェハ基材の上層に所定の結晶をエピタキシャル成長させることで、次のようにして作成される
先ず、所定の犠牲層やバッファ層(図示しない)をエピタキシャル成長させた後、AlGaAs基材にN型不純物を含ませたN型層213と、P型不純物を含ませ成層したP型層212と、N型不純物を含ませたN型層211と、P型不純物を含ませ成層したP型層215とを、順に積層させたPNPNの4層構造のウェハを形成する。
更に、公知のドライエッチング法を用いて溝部を形成することで、素子分離を行う。又、前記エッチングの過程で、発光サイリスタ210の最下層となるN型層213の一部を露出させ、この露出領域に金属配線を形成してカソードKを形成する。同様に、最上層となるP型層215の一部を露出させ、この露出領域に金属配線を形成してアノードAを形成する。同時に、N型層211にゲートGを形成する。
図7(d)の等価回路図に示すように、発光サイリスタ210は、PNPトランジスタ(以下「PNPTr」という。)221とNPNTr222とから構成されている。PNPTr221のエミッタが、発光サイリスタ210のアノードAに相当し、PNPTr221のベースが発光サイリスタ210のゲートGに対応しており、このゲートGがNPNTr222のコレクタにも接続されている。又、PNPTr221のコレクタは、NPNTr222のベースに接続され、このNPNTr222のエミッタが、発光サイリスタ210のカソードKに相当している。
なお、図7に示す発光サイリスタ210では、GaAsウェハ基材上にAlGaAs層を構成したものであるが、これに限定されるものではなく、ガリウム・リン(GaP)、ガリウム・砒素・リン(GaAsP)、アルミニュウム・ガリウム・インジュウム・リン(AlGaInP)等といった材料を用いるものであってもよく、あるいは、サファイヤ基板上にガリウム・窒素(GaN)やアルミニュウム・ガリウム・窒素(AlGaN)等といった材料を成膜したものであってもよい。
図7に示す発光サイリスタ210は、例えば、エピタキシャルボンディング法を用いて、図6に示す多数のドライバ1C100を配列したウェハと接着され、公知のエッチング法により不要箇所が除去されると共に、発光サイリスタ210の端子箇所が露出される。次いで、発光サイリスタ210の各端子予定箇所とドライバ1C100の端子部とが、フォトリソグラフィ法により形成された薄膜配線を用いて接続される。更に、公知のダイシング法を用いてドライバIC100部分を複数のチップに分離することで、発光サイリスタ及び駆動素子からなる複合チップが形成される。
(ドライバICの全体構成)
図8は、図6中のドライバIC100の詳細な回路構成を示すブロック図である。
このドライバIC100は、カスケード接続された複数のFF111(=FF111A1〜FF111A25,FF111B1〜FF111B25,FF111C1〜FF111C25,FF111D1〜FF111D25)からなるシフトレジスタ110を有している。シフトレジスタ110は、クロック入力用端子CLKから入力されるクロック信号HD−CLKに同期して、データ入力用DATAI3〜DATAI0端子から入力される印刷データ信号HD−DATA3〜HD−DATA0を取り込んでシフトする回路である。
ここで、FF111A1〜FF111A25は、カスケード接続されており、ドライバIC100のデータ入力用DATAI0端子はFF111Alのデータ入力用D端子に接続され、FF111A24とFF111A25のデータ出力用Q端子はセレクタ120のデータ入力用端子A0,B0に接続され、セレクタ120のデータ出力用Y0端子がドライバ1C100のデータ出力用DATAO0端子に接続されている。同様に、FF111Bl〜FF111B25、FF111Cl〜FF111C25、及びFF111Dl〜FF111D25も、それぞれカスケード接続されており、ドライバIC100のデータ入力用DATAI1端子、DATAI2端子、DATAI3端子が、FF111B1、FF111C1、及びFF111Dlのデータ入力用D端子にそれぞれ接続されている。FF111B24とFF111B25、FF111C24とFF111C25、FF111D24とFF111D25のデータ出力用Q端子も、セレクタ120のデータ入力用A1端子、A2端子、A3端子、B1端子、B2端子、及びB3端子にそれぞれ接続され、セレクタ120のデータ出力用Y1端子、Y2端子、及びY3端子が、ドライバIC100のデータ出力用DATAO1端子、DATAO2端子、及びDATAO3端子にそれぞれ接続されている。
これにより、FF111Al〜FF111A25、FF111Bl〜FF111B25、FF111C1〜FF111C25、及びFF111Dl〜FF111D25は、それぞれ25段のシフトレジスタ110を構成しており、セレクタ120により、シフトレジスタ110のシフト段数を24段と25段とに切り替えることが可能な構成になっている。そのため、各ドライバIC100−1,・・・のデータ出力用DATAO0端子〜DATAO3端子は、次段のドライバ1C100−2,・・・のデータ入力用DATAI0端子〜DATAI3端子にそれぞれ接続されることになる。従って、ドライバIC100−1〜100−26の全てで構成されるシフトレジスタ110,・・・は、図5の印刷制御部40から初段のドライバ1C100−1中のドライバ181−1に入力される印刷データ信号HD−DATA3を、クロック信号HD−CLKに同期してシフトさせる24×26段あるいは25×26段のシフトレジスタを構成している。
シフトレジスタ110の出力側には、ラッチ回路部130及びメモリ回路部150の入力側が接続されている。ラッチ回路部130の出力側にはドライバ部180が接続され、メモリ回路部150の入力側に制御回路141が接続され、そのメモリ回路部150の出力側にマルチプレクサ部160が接続されている。マルチプレクサ部160の入力側には、制御回路142が接続されている。ドライバIC100の駆動信号入力用STB端子には、プルアップ抵抗143及び論理反転用のインバータ144が接続され、更に、ドライバIC100のラッチ信号入力用LOAD端子に、論理反転用のインバータ145が接続されている。インバータ144,145の出力端子には、2入力の否定論理積回路(以下「NAND回路」という。)146の入力端子が接続され、このNAND回路146の出力端子に、ドライバ部180の入力側が接続されている。ドライバ部180の入力側には、駆動量指令手段(例えば、制御電圧発生回路)170も接続されている。
ここで、ラッチ回路部130は、ラッチ信号入力用LOAD端子から入力されるラッチ信号LOAD−P(但し、「−P」は正論理信号を意味する。)により、シフトレジスタ110の出力信号をラッチする回路であり、複数のラッチ回路131(=131A1,131B1,131C1,131D1〜131A24,131B24,131C24,131D24)により構成されている。各ラッチ回路131は、データ入力用D端子、ラッチ信号入力用G端子、及び反転データ出力用QN端子をそれぞれ有し、これらの出力側に、ドライバ部180が接続されている。
メモリ回路部150は、制御回路141によりアクセス制御され、発光サイリスタ210の光量ばらつき補正のための補正データ(即ち、ドット補正データ)や各発光サイリスタアレイ200毎の光量補正データ(即ち、チップ補正データ)、もしくは各ドライバIC100毎の固有データを格納するものである。このメモリ回路部150は、複数のメモリ回路151(=151A1,151B1,151C1,151D1〜151A24,151B24,151C24,151D24)とメモリ回路152とにより構成されている。各メモリ回路151は、データ入力用D端子、信号入力用W0端子〜W3、信号入力用E1端子、E2端子、データ出力用EVN端子、及びODD端子をそれぞれ有している。更に、メモリ回路152は、データ入力用D端子、信号入力用W0端子〜W3、信号入力用E1端子、データ出力用Q0端子〜Q3端子を有している。このメモリ回路部150の出力側には、マルチプレクサ部160及び制御電圧発生回路170が接続されている。
メモリ回路部150を制御する制御回路141は、ラッチ信号入力用LOAD端子、駆動信号入力用STB端子、信号出力用W0端子〜W3端子、E1端子、及びE2端子を有し、前記補正データを複数のメモリ回路151(=151A1,151B1,151C1,151D1〜151A24,151B24,151C24,151D24)やメモリ回路152に対して書き込みする時の書き込み指令信号をW0端子〜W3端子、E1端子及びE2端子から出力する回路である。
マルチプレクサ部160は、制御回路142により制御され、メモリ回路部150中の複数のメモリ回路151(=151A1,151B1,151C1,151D1〜151A24,151B24,151C24,151D24)から出力されるドット補正データにおいて、隣接した発光サイリスタドットの内、奇数番目ドットの補正データと偶数番目ドットの補正データとを切り替えるものであり、複数のマルチプレサ161(=161A1,161B1,161C1,161D1〜161A24,161B24,161C24,161D24)により構成されている。各マルチプレクサ161は、データ入力用EVN端子、ODD端子、信号入力用S1N端子、S2N端子、及びデータ出力用Q0端子〜Q3端子をそれぞれ有し、これらの出力側に、ドライバ部180が接続されている。
マルチプレクサ部160を制御する制御回路142は、主走査同期信号入力用HSYNC端子、ラッチ信号入力用LOAD端子、信号出力用S1N端子、及びS2N端子を有し、マルチプレクサ部160に対し奇数番目ドットの補正データと偶数番目ドットの補正データとの切り替え指令信号をS1N端子及びS2N端子から出力する回路である。S1N端子には、第2駆動部(例えば、ゲート駆動用バッファ)162を介してゲート駆動信号用G1端子が接続され、更に、S2N端子にも、第2駆動部(例えば、ゲート駆動用バッファ)163を介してゲート駆動信号用G2端子が接続されている。
ドライバ部180の入力側に接続された制御電圧発生回路170は、データ入力用S0〜S3端子、基準電圧入力用VREF端子、及び制御電圧出力用V端子を備え、例えば、図示しないレギュレータ回路等から発生された基準電圧VREFを入力し、発光サイリスタ駆動のための駆動量指令信号(例えば、制御電圧)VをV端子から発生してドライバ部180へ供給する機能を有している。この制御電圧発生回路170は、発光サイリスタ210の全点灯駆動時のように電源電圧VDDが一瞬降下するような状況においても、基準電圧VREFを所定値のままとでき、発光サイリスタ駆動電流の低下を発生させない構成になっている。
ドライバ部180は、ラッチ回路部130、NAND回路146、マルチプレクサ部160、及び制御電圧発生回路170の出力信号に基づき、発光サイリスタアレイ200を駆動するための駆動電流DO1〜DO96を複数のDO1端子〜DO96端子から出力する回路であり、複数の第1駆動部であるドライバ181(=181−1〜181−96)により構成されている。各ドライバ181は、データ入力用Q0端子〜Q3端子、E端子、信号入力用S端子、及び制御電圧入力用V端子をそれぞれ有している。
このドライバ部180の各信号入力用S端子に接続されたNAND回路146には、STB端子に入力される印刷駆動信号HD−STB−Nと、LOAD端子に入力されるラッチ信号LOAD−Pとが、インバータ144,145を介して入力され、ドライバ部180に対する駆動のオン/オフを制御する信号を生成する機能を有している。
(図8中のメモリ回路)
図9は、図8中のメモリ回路151の構成を示す回路図である。
図9のメモリ回路151(例えば、151A1)では、発光サイリスタ光量補正のためのドット補正データは4ビットであり、発光サイリスタ駆動電流をドット毎に16段階に調整することで光量補正を行うものとしている。
このメモリ回路151A1には、隣接する2個(2ドット)のメモリセル回路300−1,300−2が示されている。左側のメモリセル回路300−1は、奇数番目のドット(例えば、ドットNo.1)の補正データを格納するものであり、右側のメモリセル回路300−2は、偶数番目のドット(例えば、ドットNo.2)の補正データを格納するためのものである。
メモリ回路151A1は、シフトレジスタ110中のFF111A1のデータ出力用Q端子から出力される補正データを入力するD端子と、制御手段である制御回路141の端子E1から出力される奇数番目ドットの側のデータ書き込みを許可する書き込みイネーブル信号を入力するE1端子と、制御回路141のE2端子から出力される偶数番目ドットの側のデータ書き込みを許可する書き込みイネーブル信号を入力するE2端子と、制御回路141のW0端子〜W3端子から出力される書き込み制御信号を入力するW0端子〜W3端子と、奇数番目ドットに関する補正データを出力するODD0端子〜ODD3端子と、偶数番目ドットに関する補正データを出力するEVN0端子〜EVN3端子とを有している。
補正データ入力用D端子には、入力された補正データを駆動するバッファ301が接続され、このバッファ301に、前記補正データの論理を反転して反転補正データを生成するインバータ302が接続されている。バッファ301の出力端子及びインバータ302の出力端子には、メモリセル回路300−1,300−2が接続されている。
メモリセル回路300−1は、メモリ手段(例えば、メモリセル)311〜314と、バッファ301の出力データをメモリセル311〜314へ伝送するスイッチ手段(例えば、NチャネルMOSトランジスタ、以下「NMOS」という。)321〜328と、インバータ302の出力データをメモリセル311〜314へ伝送するスイッチ手段(例えば、NMOS)331〜338とを有している。
メモリセル311は、リング状に直列接続された第1及び第2のインバータ311a,311bにより構成されている。同様に、メモリセル312は、リング状に直列接続されたインバータ312a,312bにより、メモリセル313は、リング状に直列接続されたインバータ313a,313bにより、メモリセル314は、リング状に直列接続されたインバータ314a,314bにより、それぞれ構成されている。各インバータ311a,311b,312a,312b,313a,313b,314a,314bの電源端子は、電源電圧VDD(例えば、一定の略5V)が印加されるVDD端子に接続されている。
NMOS321,323,325,327のゲートは、書き込みイネーブル信号入力用端子E1に共通に接続され、NMOS322,324,326,328のゲートは、書き込み制御信号入力用W0端子、W1端子、W2端子及びW3端子にそれぞれ接続されている。バッファ301の出力端子には、NMOS321,322、補正データ端子ODD0及びメモリセル311の直列回路と、NMOS323,324、補正データ端子ODD1及びメモリセル312の直列回と、NMOS325,326、補正データ端子ODD2及びメモリセル313の直列回路と、NMOS327,328、補正データ端子ODD3及びメモリセル314の直列回路とが、共通に接続されている。
NMOS331,333,335,337のゲートは、書き込み制御信号入力用W0端子、W1端子、W2端子及びW3端子にそれぞれ接続され、NMOS332,334,336,338のゲートは、書き込みイネーブル信号入力用端子E1に共通に接続されている。インバータ302の出力端子には、NMOS332,331及びメモリセル311の直列回路と、NMOS334,333及びメモリセル312の直列回路と、NMOS336,335及びメモリセル313の直列回路と、NMOS338,337及びメモリセル314の直列回路とが、共通に接続されている。
メモリセル回路300−2は、メモリセル回路300−1の書き込みイネーブル信号入力用端子E1に代えて、書き込みイネーブル信号入力用端子E2に接続され、更に、メモリセル回路300−1の補正データ出力用ODD0端子〜ODD3端子に代えて、補正データ出力用EVN0端子〜EVN3端子に接続されている他は、メモリセル回路300−1と同様の構成である。
(図8中のマルチプレクサ)
図10は、図8中のマルチプレクサ161の構成を示す回路図である。
図10のマルチプレクサ161(例えば、161A1)は、メモリ回路151A1のODD0端子〜ODD3端子から出力される補正データODD0〜ODD3を入力するODD0端子〜ODD3端子と、メモリ回路151A1のEVN0端子〜EVN3端子から出力される補正データEVN0〜EVN3を入力するEVN0端子〜EVN3端子と、制御回路142のS1N端子及びS2N端子から出力される奇数ドットデータと偶数ドットデータとの切り替え指令信号S1N,S2Nを入力するS1N端及びS2N端子と、補正データQ0〜Q3を出力するQ0端子〜Q3端子と、入力データ切り替え用のPチャネルMOSトランジスタ(以下「PMOS」という。)341〜348とを有している。
PMOS341,343,345,347は、S1N端子から入力される切り替え指令信号S1Nによりゲート制御され、入力側のODD0端子〜ODD3端子と出力側のQ0端子〜Q3端子との間をそれぞれオン/オフする構成になっている。更に、PMOS342,344,346,348は、S2N端子から入力される切り替え指令信号S2Nによりゲート制御され、入力側のEVN0端子〜EVN3端子と出力側のQ0端子〜Q3端子との間をそれぞれオン/オフする構成になっている。
このようなマルチプレクサ161の構成において、スイッチ素子としてPMOS341〜348を用いているのは次の理由によるものであって、動作上の支障を防止しつつ、使用される素子数を削減することが可能な新規な構成となっている。
即ち、PMOS341をオンさせるために切り替え指令信号S1Nを“L”レベルにする時、補正データODD0が“H”レベルであれば、この補正データODD0の“H”レベルと略等しい電圧の補正データQ0が出力される。このように“H”レベルの伝達であれば、PMOS341をスイッチ素子として使用した場合でも何ら支障がない。
一方、補正データODD0が“L”レベル(略0V)であったとすると、PMOS341の第2端子であるドレイン端子(以下単に「ドレイン」という。)は、このPMOS341の閾値電圧に近い電位にまで降下するものの、“L”レベル(略0V)にまで下がることはなく、“L”レベルの伝達機能が完全ではない欠点を内在している。
このような欠点を解消するため、従来技術による構成においては、例えば、PMOSと並列にNMOSを接続したアナログスイッチを構成してデータ選択のためのスイッチ手段としている。この構成においては、伝達しようとする入力電圧と略等しい出力電圧を得ることができ、スイッチ手段が介在していることによる入力電圧と出力電圧の差は生じない。しかし、データ線1本当たりにPMOSとNMOSのトランジスタ対を設ける必要があり、図10の構成に比べて2倍の素子数を要し、それを配置するためのICのチップ面積を多く占有するという欠点を内在している。
これに対し、本実施例1の図10の構成では、従来のアナログスイッチを用いて構成した回路と比べて、半分の素子数で済むという利点を有しているものの、“L”レベルの伝達機能が完全ではないという欠点を内在している。ところが、後述するように、マルチプレクサ161の出力側に接続される後段のドライバ181においては、“H”レベルとして略電源電圧VDDと等しい入力電圧を要するのに対し、“L”レベルとしては後述する制御電圧Vcontの電位にまで下降していれば十分であり、略0Vにまで電位降下するような“L”レベル電位を必要としていない。そのため、図10に示すマルチプレクサ回路を用いることで、回路動作上の制約を回避しつつ、所要素子数を削減することができる。
(図8中のドライバ)
図11は、図8中のドライバ181の構成を示す回路図である。
図11のドライバ181(例えば、181−93)は、ラッチ回路131A1の反転出力用端子QNから出力される負論理の印刷データ信号を入力する端子Eと、NAND回路146から出力される負論理のLED駆動オン/オフ指令信号を入力するS端子と、マルチプレクサ161A1の端子Q0〜端子Q3から出力される補正データQ0〜Q3を入力するQ0端子〜Q3端子と、制御電圧発生回路170のV端子から出力される制御電圧Vcontを入力するV端子と、電源電圧VDDが入力されるVDD端子と、図示しない薄膜配線により接続された発光サイリスタ210のアノードに対して駆動電流DOを供給するDO端子(=DO93端子)とを有している。
E端子及びS端子は、2入力の否定論理和回路(以下「NOR回路」という。)350の入力端子に接続されている。NOR回路350は、電源端子がVDD端子に接続され、グランド端子がV端子に接続されて制御電圧Vcontに保持されている。NOR回路350の出力端子とQ0端子〜Q3端子とは、2入力NAND回路351〜354の入力端子にそれぞれ接続されている。各NAND回路351〜354は、電源端子がVDD端子に接続され、グランド端子がV端子に接続されて制御電圧Vcontに保持されている。更に、NOR回路350の出力端子は、CMOSインバータ355を構成するPMOS355a及びNMOS355bの各ゲート端子(以下単に「ゲート」という。)に共通に接続されている。PMOS355a及びNMOS355bは、VDD端子とV端子との間に直列に接続されている。
NAND回路351〜354の出力端子には、PMOS356〜359のゲートがそれぞれ接続され、更に、CMOSインバータ355の出力端子に、PMOS360のゲートが接続されている。各PMOS356〜360の第1端子であるソース端子(以下単に「ソース」という。)及び第2端子であるドレインは、VDD端子とDO端子との間に並列に接続されている。PMOS360は、発光サイリスタ210に主たる駆動電流DOを供給する主駆動トランジスタであり、PMOS356〜359は、発光サイリスタ210の駆動電流DOをドット毎に調整して光量補正するための補助駆動トランジスタである。
ここで、VDD端子の電位と、V端子から入力される制御電圧Vcontの電位との電位差は、PMOS356〜360がオンする時のゲート・ソース間電圧に略等しく、この電圧を変化させることで、PMOS356〜360のドレイン電流を調整することが可能となる。制御電圧Vcontを供給するための図8中の制御電圧発生回路170は、基準電圧VREFを受けて、PMOS356〜360等のドレイン電流が所定値となるように制御電圧Vcontを制御するために設けられている。
このように構成されるドライバ181−93は、次のように動作する。
E端子に入力される印刷データ信号がオン(=“L”レベル)であり、S端子に入力される発光サイリスタ駆動オン/オフ指令信号がオン(=“L”レベル)の時、NOR回路350の出力信号が“H”レベルとなる。この時、Q3端子〜Q0端子の補正データQ3〜Q0に従い、NAND回路351〜354の出力レベル、及びCMOSインバータ355の出力レベルが、電源電圧VDDあるいは制御電圧Vcontとなる。
主駆動用のPMOS360は、E端子に入力される印刷データ信号に従って駆動される。図9のメモリ回路151A1には、発光サイリスタ各ドットの発光ばらつきを補正するための補正データQ0〜Q3が格納されているので、この補正データQ0〜Q3が、マルチプレクサ161A1のQ0端子〜Q3端子から出力される。補助駆動用のPMOS356〜359は、NOR回路350の出力レベルが“H”レベルである時に、マルチプレクサ161A1のQ0端子〜Q3端子から出力される補正データQ0〜Q3に従って選択的に駆動される。
つまり、主駆動用のPMOS360と共に、補正データQ0〜Q3に従って補助駆動用のPMOS356〜359が選択的に駆動され、PMOS360のドレイン電流に対し、選択されたPMOS356〜359の各ドレイン電流が加算された駆動電流DOが、DO93端子から発光サイリスタ210に供給される。
PMOS356〜359が駆動されている時、NAND回路351〜354の出力レベルは“L”レベル(≒制御電圧Vcont)であるので、PMOS356〜359のゲート電圧は、略制御電圧Vcontに等しくなる。この時、PMOS355aはオフ状態にあり、NMOS355bはオン状態にあって、PMOS360のゲート電圧もまた略制御電圧Vcontに等しくなる。そのため、PMOS356〜360のドレイン電流値を、制御電圧Vcontにより一括して調整することができる。この際、NAND回路351〜354は、電源端子に電源電圧VDD、及びグランド端子に制御電圧Vcontが印加されて動作しているので、その入力信号の電圧も電源電圧VDDと制御電圧Vcontに即したものであってよく、“L”レベルは必ずしも0Vであることを必要としない。従って、図10に示す構成のマルチプレクサ161を用いても、支障なく動作させることができる。
(図8中の制御回路141)
図12は、図8中の制御回路141の構成を示す回路図である。
この制御回路141は、正論理のラッチ信号LOAD−Pを入力するLOAD端子と、図8中のインバータ144から出力される正論理の印刷駆動信号STB−Pを入力するSTB端子と、書き込み制御信号W0〜W3を図8中のメモリ回路部150へ出力するW0端子〜W3端子と、書き込みイネーブル信号E1,E2をメモリ回路部150へ出力するE1端子及びE2端子と、FF361〜365と、2入力のNOR回路366と、2入力の論理積回路(以下「AND回路」という。)367,368と、3入力のAND回路370〜373とを備えている。
各FF361,362は、LOAD端子から入力されるラッチ信号LOAD−Pを入力する負論理リセット用R端子と、STB端子から入力される印刷駆動信号STB−Pを入力するクロック入力用CK端子と、データ入力用D端子と、非反転データ出力用Q端子とを有している。各FF363〜365は、LOAD端子から入力されるラッチ信号LOAD−Pを入力する負論理リセット用R端子と、クロック入力用CK端子と、データ入力用D端子と、非反転データ出力用Q端子と、反転データ出力用QN端子とを有している。
FF361,362のQ端子は、NOR回路366の入力端子と接続され、このNOR回路366の出力端子がFF361のD端子に接続されている。FF361のQ端子は、FF363のCK端子に接続され、このFF363のQN端子がD端子に接続されている。FF363のQ端子とLOAD端子とは、AND回路367の入力端子に接続され、このAND回路367の出力端子がE1端子に接続されている。FF363のQN端子とLOAD端子とは、AND回路368の入力端子に接続され、このAND回路368の出力端子がE2端子に接続されている。
AND回路367の出力端子は、FF364,365のCK端子に接続され、このFF364,365のR端子が、LOAD端子に接続されている。FF364のQN端子は、FF365のD端子に接続されている。FF364,365のQ端子及びQN端子とFF362のQ端子とには、AND回路370〜373の入力端子が接続され、このAND回路370〜373の出力端子が、W0端子〜W3端子に接続されている。
即ち、AND回路373の第1入力端子はFF365のQ端子、及び第2入力端子はFF364のQN端子にそれぞれ接続され、AND回路372の第1入力端子はFF365のQ端子、及び第2入力端子はFF364のQ端子にそれぞれ接続され、AND回路371の第1入力端子はFF365のQN端子、及び第2入力端子はFF364のQ端子にそれぞれ接続され、AND回路370の第1入力端子はFF365のQN端子、及び第2入力端子はFF364のQN端子にそれぞれ接続されている。
(図8中の制御回路142)
図13は、図8中の制御回路142の構成を示す回路図である。
この制御回路142は、FF381及びバッファ382,383を有している。FF381は、HSYNC端子からの負論理の主走査同期信号HSYNC−Nを入力する負論理のリセット用R端子と、LOAD端子からの正論理のラッチ信号LOAD−Pを入力するクロック入力用CK端子と、相互に接続されたデータ入力用D端子及び反転データ出力用QN端子と、非反転データ出力用Q端子とを有し、これらのQ端子及びQN端子が、バッファ382,383を介して切り替え指令信号用S2N端子及びS1N端子にそれぞれ接続されている。
この制御回路142では、CK端子に入力されるラッチ信号LOAD−Pに同期して、“H”又は“L”の切り替え指令信号S1N,S2NをS1N端子及びS2N端子から出力する構成になっている。
(図8中の制御電圧発生回路)
図14は、図8中の制御電圧発生回路170の構成を示す回路図である。
この制御電圧発生回路170は、ドライバIC100毎に1回路ずつ設けられ、演算増幅器(以下「オペアンプ」という。)391と、PMOS392と、直列接続された分圧抵抗R00〜R15からなる分圧回路393と、アナログ形のマルチプレクサ394とにより構成されている。
オペアンプ391は、反転入力端子が基準電圧入力用VREF端子に接続され、非反転入力端子がマルチプレクサ394の出力用Y端子に接続され、出力端子がPMOS392のゲート及び制御電圧出力用V端子に接続されている。PMOS392は、図11中の各PMOS356〜360とゲート長が等しく、ソースがVDD端子に接続され、ゲートがオペアンプ391の出力端子及び端子Vに接続され、ドレインが分圧回路393を介してグランドGNDに接続されている。
マルチプレクサ394は、直列接続された分圧抵抗R15〜R00における各接続点からのアナログ電圧が入力される16個の入力用P0端子〜P15端子と、アナログ電圧を出力する出力用Y端子と、図8中のメモリ回路152の出力用Q0端子〜Q3端子から供給される論理信号Q0〜Q3が入力される4個の入力用S0端子〜S3端子とを有し、この4本の論理信号S0〜S3により設定される16通りの信号論理の組み合わせによって、入力用P0端子〜P15端子の内の何れか1つの端子を選択し、この端子に印加されるアナログ電圧をY端子からオペアンプ391の非反転入力端子へ出力する回路である。換言すれば、マルチプレクサ393における入力用S3端子〜S0端子の論理信号レベルによって、入力用P0端子〜P15端子の内の何れか1つの端子が選択され、出力用Y端子との間に電流経路が形成される。
オペアンプ391と分圧抵抗R00〜R15及びPMOS392とで構成される回路により、フィードバック制御回路が構成され、オペアンプ391の非反転入力端子の電位が、略基準電圧VREFと等しくなるように制御される。このため、PMOS392のドレイン電流Irefは、分圧抵抗R00〜R15の内、マルチプレクサ394により選択される部位の合成抵抗値と、オペアンプ391に入力される基準電圧VREFとから決定されることになる。
例えば、マルチプレクサ394の入力用S3端子〜S0端子の論理値が“1111”となっていて、補正状態の最大が指令されている時、マルチプレクサ394の入力用P15端子と出力用Y端子とが導通状態になり、入力用P15端子の電圧が基準電圧VREFと略等しくなるように制御される。この結果、PMOS392のドレイン電流Irefは、
Iref=VREF/R00
となる。
一方、入力用S3端子〜S0端子の論理値が“0111”となっていて、補正状態の中間が指令されている時、マルチプレクサ394の入力用P7端子と出力用Y端子とが導通状態になり、入力用P7端子の電圧が基準電圧VREFと略等しくなるように制御される。この結果、PMOS392のドレイン電流Irefは、
Iref=VREF/(R00+R01+・・・+R07+R08)
となる。
更に、入力用S3端子〜S0端子の論理値が“0000”となっていて、補正状態の最小が指令されている時、マルチプレクサ394の入力用P0端子と出力用Y端子とが導通状態となり、入力用P0端子の電圧が前記基準電圧VREFと略等しくなるように制御される。この結果、PMOS392のドレイン電流Irefは、
Iref=VREF/(R00+R01+・・・+R14+R15)
となる。
このように、図11中のPMOS356〜360と図14中のPMOS392とは、ゲート長が相等しく構成され、これらPMOSが飽和領域で動作するように制御されているので、各PMOSはカレントミラーの関係となり、PMOS356〜360がオン状態となる時、基準電圧VREFに比例するドレイン電流Irefを生じる。この結果、マルチプレクサ394の入力用S3端子〜S0端子に与える論理値状態により、ドレイン電流Irefを16段階に調整することができ、図11中のPMOS356〜360のドレイン電流もまた16段階に調整可能とすることができる。
(図8中のゲート駆動用バッファ)
図1(a)、(b)は、本発明の実施例1における図8中のゲート駆動用バッファ162,163の構成を示す回路図であり、同図(a)は回路シンボルを示す図、及び、同図(b)は回路図である。
図8中のゲート駆動用バッファ162及び163は、同一の回路構成である。例えば、ゲート駆動用バッファ162は、制御回路142のS1N端子に接続された入力端子INを有し、この入力端子INに、第1インバータとしての信号反転用インバータ401が接続されている。インバータ401の出力端子側ノードN401には、第2インバータとしてのインバータ402の入力端子及びタイミング調整回路405の入力端子が接続されている。タイミング調整回路405は、例えば、NMOS405a及び第3PチャネルMOSトランジスタとしてのPMOS405bが並列接続されたアナログスイッチにより構成され、この出力端子側ノードN405に、第1PチャネルMOSトランジスとしてのPMOS403の,第1ゲート端子としてのゲートが接続されている。NMOS405aのゲートは、電源であるVDD端子に接続され、PMOS405bのゲートが、グランドGNDに接続されている。
PMOS403のソースは、VDD端子に接続されている。PMOS403のドレインには、降圧回路を構成する第4PチャネルMOSトランジスとしてのPMOS406のソースが接続され、このPMOS406のゲート及びドレインが、出力端子OUTに接続されている。出力端子OUTは、第2PチャネルMOSトランジスとしてのPMOS404のソース・ドレインを介して、グランドGNDに接続されている。PMOS404の第2ゲート端子としてのゲートは、インバータ402の出力端子側ノードN402に接続されている。
図15は、図1のゲート駆動用バッファ162の比較例として示すゲート駆動用バッファ162Aの回路図である。
この比較例のゲート駆動用バッファ162Aでは、図1のタイミング調整回路405及びPMOS406が省略され、インバータ401の出力端子がPMOS403のゲートに接続され、このPMOS403のドレインが、出力端子OUTに接続されている。
比較例のバッファ162Aでは、入力端子INが“H”レベルになると、インバータ401の出力端子が“L”レベル、更に、インバータ402の出力端子が“H”レベルになる。そのため、PMOS403がオン状態、PMOS404がオフ状態になるので、出力端子OUTが電源電圧VDDに略等しい電圧となる。
これに対し、本実施例1の図1のバッファ162では、特に、タイミング調整回路405を付加している。
タイミング調整回路405を設ける目的は、インバータ401の出力端子側ノードN401からタイミング調整回路405の出力端子側ノードN405の信号波形の遅延時間を、インバータ402の遅延時間と略等しくすることである。このようにすることで、PMOS403とPMOS404の切り替わり時刻を略等しくすることができ、VDD端子及びグランドGND間に流れる貫通電流による誤動作を未然に防止できる効果が得られる。
即ち、比較例のように、タイミング調整回路405を設けない場合には、前記スイッチングに伴って、インバータ402の伝搬遅延時間に相当する時間分、PMOS403及び404が一瞬同時にオン状態になってしまう。この時、VDD端子からグランドGND間に貫通電流を生じてしまい、VDD端子やグランドGND配線に大きなノイズ電圧を生じることになって、このノイズ電圧によってドライバIC100の内部回路が誤動作する可能性がある。これを防止するために、本実施例1のバッファ162,163では、タイミング調整回路405を設けている。
なお、タイミング調整回路405は、アナログスイッチにより構成されているが、他の回路構成に変更してもよい。例えば、インバータを偶数段接続する回路構成にしてもよい。又、前記貫通電流を問題としない場合には、前記タイミング調整回路405を設けずに、インバータ401の出力端子側ノードN401とPMOS403のゲートとを、直接接続することもできる。
(光プリントヘッドの全体の動作)
図16は、本発明の実施例1における画像形成装置1の電源投入後に、図6の光プリントヘッド13に対して行われる補正データ転送処理と、その後に行われる印刷データ転送の様子を示すタイムチャートである。
補正データの転送開始に先立ち、引き続くデータ転送が補正データであることを示すため、ラッチ信号HD−LOADを“H”とする(I部)。
次いで、奇数番目に属するドットについて1ドット当たり4ビットからなる補正データの内、bit3のものを印刷データ信号HD−DATA3〜HD−DATA0からクロック信号HD−CLKに同期して入力して、図8のFF111A1〜FF111D24で構成されるシフトレジスタ110中へシフト入力する。シフト入力が完了すると、A部に示すように、印刷駆動信号HD−STB−Nが3パルス入力され、図12の制御回路141の動作が行われる。
図16中のQ1,Q2,Q3,Q4,Q5は、図12のFF361,362,363,365,364の各出力端子であり、E1,E2は、AND回路367,368から出力される書き込みイネーブル信号であり、W3〜W0は、AND回路370〜373から出力される書き込み制御信号である。更に、SlN,S2Nは、図13中のバッファ382,383から出力される奇数ドットデータと偶数トッドデータとの切り替え指令信号である。
図16のA部において、印刷駆動信号HD−STB−Nの1パルス目が入力されると、J部に示すように、Q1端子の信号が発生し、次いで印刷駆動信号HD−STB−Nの2パルス目で、K部に示すように、Q2端子の信号が発生する。又、Q1端子の信号が立ち上がる毎にQ3端子の信号が状態反転し、L部に示すように、Q3端子の信号が“H”レベルに遷移する。Q3端子の信号の遷移に引き続き、書き込みイネーブル信号E1,E2が発生する。
書き込みイネーブル信号E1の立ち上がりエッジに引き続き、M部に示すように、Q4端子の信号が立ち上がり、書き込みイネーブル信号E1の次の立ち上がりで、Q5端子の信号が立ち上がり、更に、書き込みイネーブル信号Elの次の立ち上がりで、Q4端子の信号が立ち下がり、書き込みイネーブル信号Elの次の立ち上がりで、Q5端子の信号が立ち下がる。
書き込み制御信号W3〜W0は、Q2端子の信号に引き続いて発生するものであるが、O部、P部に示すように、書き込み制御信号W3が2回に亘って出力され、次いで、各書き込み制御信号W2,Wl,W0においても、それぞれ2パルスずつ発生する。
各書き込み制御信号W3〜W0のパルスが発生する毎に、図9のメモリ回路151にデータの書き込みが行われ、書き込み制御信号W3〜W0の1パルス目で、メモリセル回路300−1内の奇数ドット用メモリセル311〜314へのデータ書き込みが行われ、2パルス目で、メモリセル回路300−1内の偶数ドット用メモリセルへのデータ書き込みが行われる。
前記1パルス目の書き込み制御信号W3〜W0(O部等)は、A部、C部、E部、G部について入力された印刷駆動信号HD−STB−Nを基に発生されるものであり、前記2パルス目の書き込み制御信号W3〜W0(P部等)は、B部、D部、F部、H部について入力された印刷駆動信号HD−STB−Nを基に発生されるものである。
以上の過程を経て、補正データb3〜b0(Odd=ODD3〜ODD0,Even=EVN3〜EVN0)のbit3〜bit0の全てのデータ書き込みが完了すると、Q部に示すように、ラッチ信号HD−LOADを“L”レベルにして、印刷データ信号HD−DATA3〜HD−DATA0の転送が可能な状態に遷移する。1ラインの印刷開始に際し、引き続くデータ転送が奇数ドットのものであることを示すため、主走査同期信号HD−HSYNC−Nが入力される(R部)。
次いで、U部で奇数ドットの印刷データ信号HD−DATA3〜HD−DATA0が転送され、S部のラッチ信号HD−LOADのパルスにより、シフトレジスタ110にシフト入力された印刷データ信号HD−DATA3〜HD−DATA0が、ラッチ部130にラッチされる。
更に、W部に示すように、印刷駆動信号HD−STB−Nが“L”レベルへと遷移して、発光サイリスタ201,202,・・・の発光駆動が行われる。印刷データ信号HD−DATA3〜HD−DATA0がオン状態であると、W部やX部の印刷駆動信号HD−STB−Nが“L”レベルとなる期間、発光サイリスタ201,202,・・・が発光駆動されることになる。
同様にV部では、偶数ドットのデータ転送が行われ、このデータはT部のパルスによりラッチされる。なお、図8に示すように、制御回路142から出力される切り替え指令信号S1Nは、図1のバッファ162を介してゲート駆動信号G1となり、共通母線220−1を介して奇数番目の発光サイリスタ212のゲートが駆動される。更に、制御回路142から出力される切り替え指令信号S2Nは、図1のバッファ163を介してゲート駆動信号G2となり、共通母線220−2を介して偶数番目の発光サイリスタ211のゲートが駆動される。
(補正データ転送の詳細)
図17〜図20は、図16のタイムチャートにおいてドライバ1C100(=100−1,100−2,・・・)を1チップのみに簡略化した場合における補正データ転送の詳細波形を示すタイムチャートである。
ここで、図17は図16のA部とB部の詳細を示すタイムチャート、図18は図16のC部とD部の詳細を示すタイムチャート、図19は図16のE部とF部の詳細を示すタイムチャート、更に、図20は図16のG部とH部の詳細を示すタイムチャートである。
図16において、各ドライバ1C100毎に設定されるチップ補正データb3〜b0は、奇数ドット転送(例えば、A部)と偶数ドット転送(例えば、B部)の内、いずれか1回について行えば十分である。
このため、図17〜図20においては、A部、C部、E部、G部の奇数ドットの補正データ転送時に、シフトレジスタ110の段数を1段多くなるように切り替えて、送出データ列の先頭位置にチップ補正データ(Chip−b3,Chip−b2,Chip−b1,Chip−b0等)を割り当てて送出するように工夫されている。
(ゲート駆動用バッファの動作)
図21−1(a)、(b)は、図8における発光サイリスタ210のゲート駆動用バッファ162,163の動作を説明する図であり、同図(a)は発光サイリスタ210のシンボルと各端子の電圧及び電流の記号を示す図、及び、同図(b)はバッファ162とこれに接続された発光サイリスタ210の要部を抜き出して示した図である。なお、図21−1(b)中の発光サイリスタ210は、等価回路で示されており、PNPTr221及びNPNTr222により構成されている。
例えば、図21−1(b)において、発光サイリスタ210のターンオン過程を説明するために、ゲート駆動用バッファ162の入力端子INが“L”レベルになっているとする。この時、図1で示すバッファ162内のインバータ401の出力端子側ノードN401は、“H”レベルとなり、タイミング調整回路405が常にオン状態になっているので、このタイミング調整回路405の出力端子側ノードN405も“H”レベルであり、PMOS403はオフ状態である。
一方、バッファ162内のインバータ402の出力端子側ノードN402は、“L”レベルであるので、PMOS404がオン状態となって、出力端子OUTの電圧を引き下げる。この電圧は、PMOS404のゲート・ソース間電圧Vgsに等しく、最終的にPMOS404の閾値電圧Vtにまで降下することになる。
図21−1(b)において、発光サイリスタ210を駆動するために、図6のドライバIC100におけるDO端子から駆動電流であるアノード電流Iaが出力される。このアノード電流Iaは、発光サイリスタ210のアノード・ゲート間のPN接合(即ち、PNPTr221のエミッタ・ベース間)を順方向電流となって流れ、ゲート電流Igを生じる。この結果、発光サイリスタ210には、アノード電圧Vaを生じる。この時のゲート電圧はVgである。
ゲート電流Igは、発光サイリスタ210内のPNPTr221のベース電流Ibに相当するものであり、このベース電流Ibが流れることで、PNPTr221はオン状態への移行を開始して、PNPTr221のコレクタに、コレクタ電流を生じる。このコレクタ電流は、NPNTr222のベース電流となり、NPNTr222をオン状態へと移行させる。これにより生じたコレクタ電流は、PNPTr221のベース電流Ibを増強し、PNPTr221のオン状態への移行を加速させることになる。
一方、NPNTr222が完全にオン状態に移行した後には、このコレクタ・エミッタ間電圧が低下して、図1のバッファ162内のPMOS404の閾値電圧Vtよりも小さな電圧となる。この結果、図21−1の発光サイリスタ210のゲートからバッファ162の出力端子OUT側へ流れるゲート電流Igは略ゼロとなって、発光サイリスタ210のカソードには、アノード電流Iaと略等しいカソード電流Ikが流れることになり、発光サイリスタ210は完全にオン状態となる。
図21−2(a)〜(c)は、図21−1の発光サイリスタ210におけるターンオン過程を説明するための電流・電圧波形図である。
図21−2(a)の電流・電圧波形図では、横軸にアノード電流Ia、縦軸にアノード電圧Vaが示されている。
発光サイリスタ210の消灯状態においては、アノード電流Iaは略ゼロであり、図21−2(a)の波形図における原点(0,0)の状態にある。発光サイリスタ210のターンオン開始に伴い、アノード駆動が行われると、図21−2(a)中の矢印で示したように、アノード電圧Vaが上昇して電圧Vpに到達する。発光サイリスタ210のアノード・ゲート間電圧Vagは、内部のPNPTr221のエミッタ・ベース間電圧Vbeと等しく、バッファ162の“L”レベル出力電圧VoLは、図1のバッファ162内のPMOS404のゲート・ソース間電圧Vgsに相当するので、前記電圧Vpとの間には、次式の関係がある。
Vp=Vag+VoL=Vag+Vgs
前記電圧Vpが順方向に印加されることで、発光サイリスタ210のゲート電流Ig(=PNPTr221のベース電流Ib)を生じる。図21−2(a)において丸印を付して示されたポイント(Ip,Vp)は、発光サイリスタ210のオフ領域Z1とオン遷移領域Z2との境目に相当している。
次いで、アノード電流Iaが増加するに伴い、アノード電圧Vaは低下していき、図21−2(a)において丸印を付して示されたポイント(Iv,Vv)に到達する。このポイント(Iv,Vv)は、発光サイリスタ210のオン遷移領域Z2とオン領域Z3との境目に相当しており、この時のゲート電流Igは略ゼロにまで低下していて、実質的にバッファ162は、発光サイリスタ210のゲートから切り離されたのと等価な状態にある。
更にアノード電流Iaが増加するに伴い、アノード電圧Vaは増加していき、図21−2(a)において丸印を付して示されたポイント(I1,V1)に到達する。このポイント(I1,V1)は、発光サイリスタ210の発光駆動の最終動作ポイントであり、ドライバIC100側から供給されるアノード電流Iaに応じた電流値I1により、所定の発光パワーで発光駆動が行われる。
図21−2(b)は、図21−2(a)に対応する電流波形図であって、横軸にアノード電流Ia、縦軸にゲート電流Igが示されている。この図21−2(b)では、前記発光サイリスタ210のターンオン過程において生じるゲート電流Igとこのピーク値Ig1と前記アノード電圧Vpとアノード電流Ipとの関係を示している。
又、図21−2(c)は、図21−2(a)に対応する電流・電圧波形図であって、横軸にアノード電流Ia、縦軸にゲート・カソード間電圧Vgkが示されている。
発光サイリスタ210のターンオン過程において、ゲート電流Igを生じ、これに伴いバッフア162の“L”レベル出力電圧VoL(=発光サイリスタ210のゲート・カソード間電圧Vgk)が決定されるが、発光サイリスタ210が完全にオン、即ち、NPNTr222がオンして飽和状態になると、前記電圧VoLは、図21−2(c)に示す電圧V2にまで降下する。この電圧V2は、NPNTr222のコレクタ・エミッタ間の飽和電圧Vce(sat)に対応するものである。
これにより、バッファ162内のPMOS404のゲート・ソース間電圧は、閾値電圧Vt以下、即ち、
V2<Vt
となり、PMOS404はオフ状態(正確にはサブスレッショルド動作状態であるが)となって、図21−1(b)に示すゲート電流Igが略ゼロとなる。
以上、図21−1及び図21−2を用いて発光サイリスタ210のターンオン過程を説明したが、図1で示すゲート駆動用バッファ162を用いることで、オン状態に移行した後の発光サイリスタ210からのゲート電流Igの流れ込みを防止して、アノード電流Iaとカソード電流Ikを略等しくしたオン状態駆動とすることができる。これにより、アノード電流Iaの調整をすることで、これに応じた発光パワーを得ることができる。このような動作は、図1(b)に示すバッファ162の“L”側出力部をPMOS404を用いて構成したことによる効果である。
これに対し、通常のCMOS出力回路のように、PMOS404に替えてNMOSを用いた場合には、その“L”レベル出力電圧VoLは略0Vにまで降下してしまうので、PNPTr221のベース電流Ibはバッファ162側へゲート電流Igとして流れ続け、その分NPNTr222のコレクタ電流が減少して、発光サイリスタ210のカソード電流Ikも減少してしまう。この結果、発光サイリスタ210の発光出力が変動してしまう可能性がある。これを解決するために、本実施例1では、図1に示すゲート駆動用バッファ162を用いているので、前記不具合を未然に防止することができる。
次に、図1に示すゲート駆動用バッファ162における“H”レベル出力時の動作を説明する。これは図21−1に示す発光サイリスタ210がオフ状態にある場合に相当している。
例えば、図1に示すバッファ162の入力端子INが“H”レベルにあるとする。この時、バッファ162内のインバータ401の出力端子側ノードN401は、“L”レベルとなる。又、インバータ402の出力端子側ノードN402は、“H”レベルであるので、PMOS404がオフ状態となる。
一方、ノードN401の電位が“L”になると、タイミング調整回路405は常にオン状態とされているので、このタイミング調整回路405の出力端子側ノードN405も“L”レベルであり、PMOS403はオン状態となる。これにより、PMOS403のドレイン電圧は略電源電圧VDDとなり、それに接続されたPMOS406もオンさせて、出力端子OUTの電位を“H”レベルとする。
ところが、PMOS406のゲートは、出力端子OUTに接続されているので、この出力端子OUTの電位が上昇し、(VDD−Vt)に等しい電位にまで上昇すると、PMOS406のゲート・ソース間電圧Vgsが閾値電圧Vtに略等しい値にまで低下して、PMOS406はオフすることになる。このようにして、バッファ162の出力端子OUTは“H”レベルとなるものの、その電位は(VDD−Vt)に等しい電位にまでしか上昇せず、図15に示す比較例のバッファ162Aのように、電源電圧VDDの電位にまで上昇することはない。
(駆動波形の説明)
図22−1は、図6の構成の内の隣接する発光サイリスタ211,222のみに簡略化して描いたモデル図である。
図22−1において、ドライバIC100は、図6のドライバIC100が簡略化して示されており、駆動電流出力用DO端子を有するドライバ181、及び、切り替え指令信号S1N,S2Nをそれぞれ入力してゲート駆動信号G1,G2をそれぞれ出力するゲート駆動用バッファ162,163を備えている。発光サイリスタ211,222は、アノード同士が接続されてドライバIC100のDO端子に接続され、ゲートはドライバIC100の端子G1,G2にそれぞれ接続されている。G1,G2端子は、共通母線220−1,220−2に接続されて複数の発光サイリスタ212,211,・・・のゲートに接続されるものであるが、図22−1においては各々1素子のみが図示されている。
なお、図22−1においては、DO端子から出力される駆動電流をIa、発光サイリスタ212,211のゲート電流をIgl,Ig2として図示されている。Vgk1,Vgk2は、発光サイリスタ212,211のゲート・カソード間電圧である。
図22−2は、図22−1の発光サイリスタ211,212における動作を説明するためのタイムチャートである。
図22−2では、発光サイリスタ211,222を時分割に駆動する状況が示されている。ラッチ信号LOADは、図6のラッチ信号HD−LOADに相当する信号である。負論理のストローブ信号である印刷駆動信号STB−Nは、図6の印刷駆動信号HD−STB−Nに相当する信号であって、図8のSTB端子に入力されるものである。切り替え指令信号SlN,S2Nは、図8の制御回路142から出力される信号であって、これをゲート駆動用バッファ162,163に入力することで、発光サイリスタ212,211のゲート駆動信号G1、G2を作成している。
図22−2において、主走査同期信号HSYNC−NがドライバIC100に入力されることで、初期状態に設定され、切り替え指令信号S1Nが“H”、S2Nが“L”となっており、これらの切り替え指令信号S1N,S2Nがバッファ162,163に入力されることで、これらのバッファ162,163から出力されるゲート駆動信号G1が“H”、G2が“L”にそれぞれ設定される。
この時のゲート駆動信号G1,G2の電位であるが、前述したように図1の構成においては、“H”レベル出力電圧VoHは、電源電圧VDDからPMOS406のゲート・ソース電圧Vgsを減じた(VDD−Vgs)であり“L”レベル出力電圧VoLは、PMOS404のゲート・ソース間電圧Vgsに相当するものであって、前記ゲート・ソース間電圧Vgsは閾値電圧Vtより僅かに大きな値をとる。
ゲート・ソース間電圧Vgsは、PMOS406,404のゲート長やゲート幅、ソースとサブストレートの間の基板バイアス電圧を調整することでも変化させることが可能であるが、概略設計例として電源電圧VDD=5V、Vgs=2Vとする時、“H”レベル出力電圧VoH=3V、“L”レベル出力電圧VoL=2Vであり、これらの値が数値例として図22−2中に図示されている。
図22−2の時刻T1において、A部で示すように、ラッチ信号LOADが入力されると、B部に示すように、切り替え指令信号S1Nが“L”に、S2Nが“H”に遷移する。これにより、C部に示すように、ゲート・カソード間電圧Vgk1の波形は、略3Vから略2Vに降下し、D部のように、ゲート・カソード間電圧Vgk2が略2Vから略3Vに上昇している。なお、ゲート・カソード間電圧Vgk1,Vgk2の波形の近傍には(0V)としてグランド電位が注記されている。
時刻T2において、発光サイリスタ212の点灯指令のためにストローブ信号STB−Nが発生して、E部に示すように、ストローブ信号STB−Nが“L”レベルに遷移し、F部に示すように、アノード電流Iaが立ち上がり遷移する。図21−1で説明したように、発光サイリスタ212のターンオン過程において、アノードから注入されたアノード電流Iaがゲートから流出することでゲート電流Igとなり、これにより発光サイリスタ212がオン状態に遷移する。
アノード電流Iaの立ち上がり波形で、ハッチングされたH部に相当するものがゲート電流Ig1となり、G部で示すゲート電流Ig1となる。このゲート電流Ig1が流入することで、バッファ162の出力電圧Vgk1は、I部に示すように僅かに上昇するものの、発光サイリスタ212がターンオンするのに従い、このゲート電圧Vgk1はサイリスタ自身による駆動能力によって電圧が低下して、K部に示すように略0.2Vまで低下する。なお、前記0.2Vは、図21−2で説明したNPNTr221のコレクタ・エミッタ間の飽和電圧Vce(sat)に相当するものである。
この時、前記ゲート電流Ig1は、発光サイリスタ212をターンオンさせて発光させる。しかし、発光サイリスタ211のゲート電圧Vgk2は、略3Vの“H”レベルとなっていて、アノードからゲートに至るゲート電流Ig2を生じない。この結果、発光サイリスタ211は、非点灯のままとすることができる。
時刻T3において、印刷駆動信号STB−Nが“H”レベルとなる(L部)。これにより、アノード電流Iaは立ち下げられて、M部のように減少していく。このアノード電流Iaが、発光サイリスタ211,222の特性により決まる保持電流以下となると、発光サイリスタ212はターンオフして、このアノード電圧の上昇に伴ってゲート電流Ig1を生じる(N部)。N部のゲート電流Ig1は、前記O部のアノード電流Iaにより生じたものであり、ハッチングにて示すO部の電流に相当するものである。N部のゲート電流Ig1が消滅するに従い、発光サイリスタ212はオフして、このゲート・カソード間電圧Vgk1が上昇して、P部で示すように、バッファ162自身の“L”レベル出力電圧VoLである略2Vの電圧となる。
時刻T4において、Q部に示すようにラッチ信号LOADが入力され、切り替え指令信号S1Nが“H”レベル、S2Nが“L”レベルへと遷移する(R部)。これに伴い、ゲート駆動信号G1,G2も“H”,“L”となるが、前述したようにバッファ162の“H”レベル出力電圧VoHは、S部に示すように略3Vであって、電源電圧VDDまでは上昇しない。又、T部に示すように、ゲート・カソード間電圧Vgk2は、略2Vにまで低下していく。
時刻T5において、U部に示すように印刷駆動信号STB−Nが“L”レベルへ遷移し、再びアノード電流Iaを生じて、V部に示すように電流波形が立ち上がる。図21−1で説明したように、発光サイリスタ211のターンオン過程において、アノードから注入された電流がゲートから流出することでゲート電流Ig2となり、これにより発光サイリスタ211がオン状態へ遷移する。
アノード電流Iaの立ち上がり波形でハッチングされたX部に相当するものが、発光サイリスタ211のゲート電流Ig2となり、W部で示す電流波形を生じる。ゲート電流Ig2が流入することで、バッファ163の出力電圧Vgk2は、Y部に示すように僅かに上昇するものの、発光サイリスタ211がターンオンするのに従い、このゲート電圧Vgk2が低下して、Z部に示すように略0.2Vにまで低下する。なお、前記0.2Vは、図21−2で説明したNPNTr222のコレクタ・エミッタ間の飽和電圧Vce(sat)に相当するものである。
この時、ゲート電流Ig2は、発光サイリスタ211をターンオンさせて発光させる。しかし、発光サイリスタ212のゲート電圧Vgk1は、略3Vの“H”レベルとなっていて、アノードからゲートに至るゲート電流Ig1を生じない。この結果、発光サイリスタ212は、非点灯のままとすることができる。その後、時刻T6において、印刷駆動信号STB−Nが“H”レベルへ遷移し、以後の点灯動作が行われる。
このように、図22−1及び図22−2で示す発光サイリスタ212,211は、ゲート駆動信号G1,G2を“H”,“L”レベルに切り替えることによって点灯されるべき発光サイリスタ212又は211が選択され、他方の発光サイリスタ211又は212は非点灯とすることができる。例えば、図22−2のE部の印刷駆動信号STB−Nにおいては、発光サイリスタ212が点灯されて発光サイリスク211が非点灯となり、U部の印刷駆動信号STB−Nにおいては、発光サイリスタ211が点灯されて発光サイリスタ212が非点灯となる。
以上のように、発光サイリスタ211,212を点灯する場合には、アノード電流Iaにより駆動され、発光出力はアノード電流値により定まるので、点灯する必要の無い場合には、アノード電流Iaをゼロとすればよく、そのためには印刷データ信号HD−DATA3〜HD−DATA0(図16のU部、V部)をオフ設定することになる。
(実施例1の変形例1)
図23は、図1のゲート駆動用バッファ162の変形例1を示すゲート駆動用バッファ162Bの回路図であり、図1中の要素と共通の要素には共通の符号が付されている。
この変形例1のゲート駆動用バッファ162Bは、“H”レベル出力電圧VoHを電源電圧VDDよりも降下させる働きをするPMOS406を図1の出力端子OUT側から、VDD端子側に移動させたものである。即ち、バッファ162Bにおいて、PMOS406は、ソースがVDD端子に接続され、ゲート及びドレインがPMOS403のソースに接続されている。PMOS403のドレインは、出力端子OUTに接続されている。その他の構成は、図1と同様である。
次に、図23のバッファ162Bの動作を説明する。
例えば、バッファ162Bの入力端子INが“L”レベル(略0V)である時、インバータ401の出力端子側ノードN401は“H”レベル(略5V)、インバータ402の出力端子側ノードN402は“L”レベル(略0V)である。この時、PMOS403はオフ、PMOS404はオンとなって、出力端子OUTを“L”レベル出力電圧VoLにまで低下させる。この時の電圧VoLは、PMOS404のゲート・ソース間電圧Vgsに相当し、この電圧Vgsはその閾値電圧Vtに応じて定まるものであって、典型例では略2Vである。
又、バッファ162Bの入力端子INが“H”レベル(略5V)である時、インバータ401の出力端子側ノードN401は“L”レベル(略0V)、インバータ402の出力端子側ノードN402は“H”レベル(略5V)である。この時、PMOS404はオフとなる一方で、PMOS403はオンとなって、PMOS406のゲート電圧を引き下げることで、このPMOS406もオンし、出力端子OUTが“H”レベル出力電圧VoHにまで上昇する。この時の電圧VoHは、電源電圧VDD(略5V)からPMOS406のゲート・ソース間電圧Vgsを減じた(VDD−Vgs)に相当するものである。前記電圧Vgsは、PMOSの閾値電圧Vtに応じて定まるものであって、典型例では略2Vである。そのため、電圧VoHは略3Vとなる。
(実施例1の変形例2)
図24は、図1のゲート駆動用バッファ162の変形例2を示すゲート駆動用バッファ162Cの回路図であり、図1中の要素と共通の要素には共通の符号が付されている。
この変形例2のゲート駆動用バッファ162Cは、“H”レベル出力電圧VoHを電源電圧VDDよりも降下させる働きを第1スイッチ素子(例えば、NMOS)407により行うものである。
即ち、バッファ162Cは、NMOS407及び第2スイッチ素子(例えば、PMOS)404を有し、これらのNMOS407及びPMOS404のゲートが、入力端子INに接続されている。NMOS407は、ドレインがVDD端子に接続され、ソースが出力端子OUT及びPMOS404のソースに接続されている。PMOS404のドレインは、グランドGNDに接続されている。
次に、図24のバッファ162Cの動作を説明する。
例えば、バッファ162Cの入力端子INが“L”レベル(略0V)である時、PMOS404はオンとなって、出力端子OUTの電圧をVoL電位にまで低下させる。この時のVoL電位は、PMOS404のゲート・ソース間電圧Vgsに相当し、この閾値電圧Vtに応じて定まるものであって、典型例では略2Vである。
又、バッファ162Cの入力端子INが“H”レベル(略5V)である時、NMOS407はオンとなって、出力端子OUTの電圧をVoH電位にまで上昇させる。この時のVoH電位は、電源電圧VDD(略5V)からNMOS407のゲート・ソース間電圧Vgsを減じた(VDD−Vgs)に相当しており、その電圧VgsはNMOS407の閾値電圧に応じて定まるものであって、典型例では略2Vである。そのため、前記VoH電位は、略3Vとなる。
このように、図23のバッファ162B、及び図24のバッファ162Cは、図1のバッファ162と同様の働きをしており、“L”レベル出力電圧VoLを0Vよりも高く、“H”レベル出力電圧VoHを電源電圧VDD5Vよりも低い値に設定することができる。これにより、発光サイリスタ210がターンオンした後には、このゲート電流Igを略ゼロとし、発光サイリスタ210のオフ時においては、ゲート・カソード間に印加される電圧を発光サイリスタ210の破壊電圧以内にすることができるのである。
(実施例1の効果)
本実施例1及びこの変形例1、2のゲート駆動用バッファ162,162B,162C,163、及びこのバッファ162,162B,162C,163を有するドライバIC100及び光プリントヘッド13によれば、次のような効果がある。
ドライバIC100の時分割駆動において、点灯対象となる発光サイリスタ210のゲートは“L”レベルとされ、非点灯とされる発光サイリスタ210のゲートは“H”レベルとされる。一般に、ドライバIC100はCMOSプロセスを用いて製造されており、この電源電圧VDDは5Vである。比較例の図15のようなゲート駆動用バッファ162Aにおいては、前記“H”レベルは電源電圧VDDに略等しい5Vであるが、発光サイリスタ210においては耐圧が7V程度しか確保することができず、耐圧が十分でないため、前記“H”レベル印加電圧により発光サイリスタ210が破壊されてしまうことがあった。
これに対し、本実施例1の構成を備える図1のゲート駆動用バッファ162や、変形例1である図23のゲート駆動用バッファ162B、あるいは、変形例2である図24のゲート駆動用バッファ162Cにおいては、前記“H”レベルを電源電圧VDDの5Vよりも低い値とすることができ、非点灯状態の発光サイリスタ210のゲート・カソード間電圧を発光サイリスタ自身の耐圧値以内にすることができ、素子破壊を未然に防止することができる。
更に、本実施例1及びこの変形例1,2の画像形成装置1によれば、ドライバIC100を有する光プリントヘッド13を採用するため、スペース効率及び光取り出し効率に優れた高品質の画像形成装置(プリンタ、複写機、ファクシミリ装置、複合機等)を提供することができる。即ち、光プリントヘッド13を用いることにより、上述したフルカラーの画像形成装置1に限らず、モノクロ、マルチカラーの画像形成装置においても効果が得られるが、特に露光装置を数多く必要とするフルカラーの画像形成装置において一層大きな効果が得られる。
(実施例2のゲート駆動用バッファの構成)
図25(a)〜(c)は、本発明の実施例2におけるゲート駆動用バッファの構成を示す図であり、同図(a)は回路図、同図(b)は同図(a)中のNPNTrの構成を示す平面図、及び同図(c)は同図(b)の断面図である。この図25(a)〜(c)において、実施例1のゲート駆動用バッファ162を示す図1中の要素と共通の要素には共通の符号が付されている。
図25(a)において、本実施例2のゲート駆動用バッファ162Dは、実施例1と同様の第2スイッチ素子(例えば、PMOS)404と、実施例1のPMOS403に対応する第1スイッチ素子(例えば、NPNTr)408とを有している。NPNTr408のゲート及びPMOS404のゲートは、入力端子INに接続されている。NPNTr408は、コレクタがVDD端子に接続され、エミッタが出力端子OUT及びPMOS404のソースに接続されている。PMOS404のドレインは、グランドGNDに接続されている。
図25(b)、(c)において、NPNTr408は、例えば、シリコン基材によるP型半導体基板408a中に形成されたNウェル領域408b、Pウェル領域408c、及びN型領域408dにより構成されている。ここで、Nウェル領域408bは、P型半導体基板408aの所定部にN型不純物を島状に拡散して形成されている。Pウェル領域408cは、Nウェル領域408b内にP型不純物を島状に拡散して形成されている。更に、N型領域408dは、Pウェル領域408c内にN型不純物を拡散して形成されている。
図25(c)に示すように、Nウェル領域408b、Pウェル領域408c、及びN型領域408dは、NPNの3層構造となっている。図25(c)においては図示を省略しているが、Nウェル領域408b、Pウェル領域408c、及びN型領域408dの各領域内に電極を接続し、Nウェル領域408bをコレクタ、Pウェル領域408Cをベース、N型領域408dをエミッタとするNPNTr408が構成されている。
(実施例2のゲート駆動用バッファの動作)
図25のゲート駆動用バッファ162Dにおいて、入力端子INが“L”レベル(略0V)である時、PMOS404はオンとなって、出力端子OUTを“L”レベル出力電圧VoLにまで低下させる。この時の電圧VoLは、PMOS404のゲート・ソース間電圧Vgsに相当し、その閾値電圧Vtに応じて定まるものであって、典型例では略2Vである。
又、入力端子INが“H”レベル(略5V)である時、NPNTr408はオンとなって、出力端子OUTを“H”レベル出力電圧VoHにまで上昇させる。この時の電圧VoHは、電源電圧VDD(略5V)からNPNTr408のベース・エミッタ間電圧Vbeを減じた(VDD−Vbe)に相当しており、その電圧Vbeは典型的な例では約0、6Vである。そのため、電圧VoHは略4.4Vとなる。
このように、本実施例2のバッファ162Dでは、図1に示す実施例1のバッファ162と同様の働きをしており、“L”レベル出力電圧VoLを0Vよりも高く、“H”レベル出力電圧VoHを電源電圧VDD5Vよりも低い値に設定することができる。そのため、図6中の発光サイリスタ210がターンオンした後には、そのゲート電流を略ゼロとし、発光サイリスタ210のオフ時においては、ゲート・カソード間に印加される電圧をこの発光サイリスタ210の破壊電圧以内にすることができる。
(駆動波形の説明)
図26は、例えば図25のゲート駆動用バッファ162Dを2個用いて図22−1に示す2個隣接した発光サイリスタ211,212を動作させる時のタイムチャートであり、実施例1を示す図22−2中の要素と共通の要素には共通の符号が付されている。
この図26では、実施例1の図22−2と同様に、発光サイリスタ211,222を時分割に駆動する状況が示されている。本実施例2の図26が実施例1の図22−2と異なる点は、実施例1では発光サイリスタ212,211のゲート・カソード間電圧Vgk1,Vhgk2の最大レベルが3Vであるのに対し、本実施例2ではそのゲート・カソード間電圧Vgk1,Vgk2の最大レベルが4.4Vになっている点のみである。
図26において、主走査同期信号HSYNC−NがドライバIC100に入力されることで、初期状態に設定され、切り替え指令信号S1Nが“H”、S2Nが“L”となっており、これらの切り替え指令信号S1N,S2Nが図22−1のバッファ162,163に入力されることで、これらのバッファ162,163から出力されるゲート駆動信号G1が“H”、G2が“L”にそれぞれ設定される。
この時のゲート駆動信号G1,G2の電位であるが、前述したように図25の構成においては、“H”レベル出力電圧VoHは、電源電圧VDDからNPNTr408のベース・エミッタ間電圧Vbeを減じた(VDD−Vbe)電位であり、“L”レベル出力電圧VoLは、PMOS404のゲート・ソース間電圧Vgsに相当するものである。
ゲート・ソース間電圧Vgsは、閾値電圧Vtより僅かに大きな値をとり、PMOS404のゲート長やゲート幅、ソースとサブストレートの間の基板バイアス電圧を調整することで変化させることが可能であって、概略設計例として電源電圧VDD=5V、Vbe=0.6V、Vgs=2Vとする時、“H”レベル出力電圧VoH=4.4V、“L”レベル出力電圧VoL=2Vであり、これらの値が数値例として図26中に図示されている。
図26の時刻T1において、A部で示すように、ラッチ信号LOADが入力されると、B部に示すように、切り替え指令信号S1Nが“L”レベル出力電圧VoLに、S2Nが“H”レベルに遷移する。これにより、C部に示すように、ゲート・カソード間電圧Vgk1の波形は、略4.4Vから略2Vに降下し、D部のように、ゲート・カソード間電圧Vgk2が略2Vから略4.4Vに上昇している。なお、ゲート・カソード間電圧Vgk1,Vgk2の波形の近傍には(0V)としてグランド電位が注記されている。
時刻T2において、図22−1の発光サイリスタ212の点灯指令のためにストローブ信号STB−Nが発生して、E部に示すように、ストローブ信号STB−Nが“L”レベルに遷移し、F部に示すように、アノード電流Iaが立ち上がり遷移する。図21−1で説明したように、発光サイリスタ212のターンオン過程において、アノードから注入されたアノード電流Iaがゲートから流出することでゲート電流Igとなり、これにより発光サイリスタ212がオン状態に遷移する。
アノード電流Iaの立ち上がり波形で、ハッチングされたH部に相当するものがゲート電流Ig1となり、G部で示すゲート電流Ig1となる。このゲート電流Ig1が流入することで、図22−1のバッファ162の出力電圧Vgk1は、I部に示すように僅かに上昇するものの、発光サイリスタ212がターンオンするのに従い、このゲート電圧Vgk1が低下して、K部に示すように略0.2Vまで低下する。なお、前記0.2Vは、図21−2で説明したNPNTr222のコレクタ・エミッタ間の飽和電圧Vce(sat)に相当するものである。
この時、前記ゲート電流Ig1は、図22−1の発光サイリスタ212をターンオンさせて点灯させる。しかし、発光サイリスタ211のゲート電圧Vgk2は、略4.4Vの“H”レベルとなっていて、アノードからゲートに至るゲート電流Ig2を生じない。この結果、発光サイリスタ211は、非点灯のままとすることができる。
時刻T3において、印刷駆動信号STB−Nが“H”レベルとなる(L部)。これにより、アノード電流Iaは立ち下げられて、M部のように減少していく。このアノード電流Iaが、発光サイリスタ211,212の特性により決まる保持電流以下となると、発光サイリスタ212はターンオフして、このアノード電圧の上昇に伴ってゲート電流Ig1を生じる(N部)。N部のゲート電流Ig1は、前記O部のアノード電流Iaにより生じたものであり、ハッチングにて示すO部の電流に相当するものである。N部のゲート電流Ig1が消滅するに従い、発光サイリスタ212はオフして、このゲート・カソード間電圧Vgk1が上昇して、P部で示すように、バッファ162自身の“L”レベル出力電圧VoLである略2Vの電位となる。
時刻T4において、Q部に示すようにラッチ信号LOADが入力され、切り替え指令信号S1Nが“H”レベル、S2Nが“L”レベルへと遷移する(R部)。これに伴い、ゲート駆動信号G1,G2も“H”,“L”となるが、前述したようにバッファ162の“H”レベル出力電圧VoHは、S部に示すように略4.4Vであって、電源電圧VDDまでは上昇しない。又、T部に示すように、ゲート・カソード間電圧Vgk2は、略2Vにまで低下していく。
時刻T5において、U部に示すように印刷駆動信号STB−Nが“L”レベルへ遷移し、再びアノード電流Iaを生じて、V部に示すように電流波形が立ち上がる。図21−1で説明したように、発光サイリスタ211のターンオン過程において、アノードから注入された電流がゲートから流出することでゲート電流Ig2となり、これにより発光サイリスタ211がオン状態へ遷移する。
アノード電流Iaの立ち上がり波形でハッチングされたX部に相当するものが、発光サイリスタ211のゲート電流Ig2となり、W部で示す電流波形を生じる。ゲート電流Ig2が流入することで、バッファ163の出力電圧Vgk2は、Y部に示すように僅かに上昇するものの、発光サイリスタ211がターンオンするのに従い、このゲート電圧Vgk2が低下して、Z部に示すように略0.2Vにまで低下する。なお、前記0.2Vは、図21−2で説明したNPNTr222のコレクタ・エミッタ間の飽和電圧Vce(sat)に相当するものである。
この時、ゲート電流Ig2は、発光サイリスタ211をターンオンさせて点灯させる。しかし、発光サイリスタ212のゲート電圧Vgk1は、略4.4Vの“H”レベルとなっていて、アノードからゲートに至るゲート電流Ig1を生じない。この結果、発光サイリスタ212は、非点灯のままとすることができる。その後、時刻T6において、印刷駆動信号STB−Nが“H”レベルへ遷移し、以後の点灯動作が行われる。
このように、図22−1で示す発光サイリスタ212,211は、ゲート駆動信号G1,G2を“H”,“L”レベルに切り替えることによって点灯されるべき発光サイリスタ212又は211が選択され、他方の発光サイリスタ211又は212は非点灯とすることができる。例えば、図26のE部の印刷駆動信号STB−Nにおいては、発光サイリスタ212が点灯されて発光サイリスク211が非点灯となり、U部の印刷駆動信号STB−Nにおいては、発光サイリスタ211が点灯されて発光サイリスタ212が非点灯となる。
以上のように、図22−1の発光サイリスタ212,211を点灯する場合には、アノード電流Iaにより駆動され、発光出力はアノード電流値により定まるので、点灯する必要の無い場合には、アノード電流Iaをゼロとすればよく、そのためには印刷データ信号HD−DATA3〜HD−DATA0(図16のU部、V部)をオフ設定することになる。
(実施例2の変形例1)
図27は、図25のゲート駆動用バッファ162Dの変形例1を示すゲート駆動用バッファ162Eの回路図であり、図23及び図25中の要素と共通の要素には共通の符号が付されている。
この変形例1のゲート駆動用バッファ162Eは、“H”レベル出力電圧VoHを電源電圧VDDよりも降下させる働きをするNPNTrに代えて、ダイオード409を設けたものである。即ち、本変形例1のゲート駆動用バッファ162Eは、図1のバッファ162の変形例1を示す図23のバッファ162BにおけるPMOS406に代えて、ダイオード409を設けた構成になっている。
入力端子INは、インバータ401及びタイミング調整回路405を介して、第1スイッチ素子(例えば、PMOS)403のゲートに接続されている。VDD端子は、ダイオード409のアノードに接続され、このダイオード409のカソードが、PMOS403を介して出力端子OUTに接続されている。更に、インバータ401の出力端子側ノードN401は、インバータ402を介して、第2スイッチ素子(例えば、PMOS)404のゲートに接続されている。出力端子OUTは、PMOS404を介して、グランドGNDに接続されている。
タイミング調整回路405は、NMOS405a及びPMOS405bからなるアナログスイッチにより構成されている。このタイミング調整回路405を設ける目的は、図1のバッファ162と同様に、インバータ401の出力端子側ノードN401からタイミング調整回路405の出力端子側ノードN405の信号波形の遅延時間を、インバータ402の遅延時間と略等しくすることである。このようにすることで、PMOS403とPMOS404の切り替わり時刻を略等しくすることができ、VDD端子及びグランドGND間に流れる貫通電流による誤動作を未然に防止できる効果が得られる。その他の構成は、図1及び図23と同様である。
次に、図27のバッファ162Eの動作を説明する。
例えば、バッファ162Eの入力端子INが“L”レベル(略0V)である時、インバータ401の出力端子側ノードN401は“H”レベル(略5V)、インバータ402の出力端子側ノードN402は“L”レベル(略0V)である。この時、PMOS403はオフ、PMOS404はオンとなって、出力端子OUTを“L”レベル出力電圧VoLにまで低下させる。この時の電圧VoLは、PMOS404のゲート・ソース間電圧Vgsに相当し、この電圧Vgsはその閾値電圧Vtに応じて定まるものであって、典型例では略2Vである。
又、バッファ162Eの入力端子INが“H”レベル(略5V)である時、インバータ401の出力端子側ノードN401は“L”レベル(略0V)、インバータ402の出力端子側ノードN402は“H”レベル(略5V)である。この時、PMOS404はオフとなる一方で、PMOS403はオンとなって、出力端子OUTを“H”レベル出力電圧VoHにまで上昇させる。この時の電圧VoHは、電源電圧VDD(略5V)からダイオード409の順電圧Vfを減じた(VDD−Vf)に相当しており、順電圧Vfの典型例では略0.6Vである。そのため、電圧VoHは略4.4Vとなる。
(実施例2の変形例2)
図28は、図25のゲート駆動用バッファ162Dの変形例2を示すゲート駆動用バッファ162Fの回路図であり、変形例1のバッファ162Eを示す図27中の要素と共通の要素には共通の符号が付されている。
この変形例2のゲート駆動用バッファ162Fは、“H”レベル出力電圧VoHを電源電圧VDDよりも降下させる働きをする変形例1のダイオード409の接続位置を、VDD端子側から出力端子OUT側に移動したものである。
即ち、VDD端子は、第1スイッチ素子(例えば、PMOS)403のソース・ドレインを介して、ダイオード409のアノードに接続され、このダイオード409のカソードが、出力端子OUT及び第2スイッチ素子(例えば、PMOS)404のソース・ドレインを介してグランドGNDに接続されている。その他の構成は、変形例1と同様である。
次に、図28のバッファ162Fの動作を説明する。
例えば、バッファ162Fの入力端子INが“L”レベル(略0V)である時、インバータ401の出力端子側ノードN401は“H”レベル(略5V)、インバータ402の出力端子側ノードN402は“L”レベル(略0V)である。この時、PMOS403はオフ、PMOS404はオンとなって、出力端子OUTを“L”レベル出力電圧VoLにまで低下させる。この時の電圧VoLは、PMOS404のゲート・ソース間電圧Vgsに相当し、この電圧Vgsはその閾値電圧Vtに応じて定まるものであって、典型例では略2Vである。
又、バッファ162Fの入力端子INが“H”レベル(略5V)である時、インバータ401の出力端子側ノードN401は“L”レベル(略0V)、インバータ402の出力端子側ノードN402は“H”レベル(略5V)である。この時、PMOS404はオフとなる一方で、PMOS403はオンとなって、出力端子OUTを“H”レベル出力電圧VoHにまで上昇させる。この時の電圧VoHは、電源電圧VDD(略5V)からダイオード409の順電圧Vfを減じた(VDD−Vf)に相当しており、順電圧Vfの典型例では略0.6Vである。そのため、電圧VoHは略4.4Vとなる。
このように、図25、図27、図28のゲート駆動用バッファ162D,162E,162Fは、図1のバッファ162と同様の働きをしており、“L”レベル出力電圧VoLを0Vよりも高く、“H”レベル出力電圧VoHを電源電圧VDD5Vよりも低い値に設定することができる。
これにより、発光サイリスタ210がターンオンした後には、そのゲート電流Igを略ゼロとし、発光サイリスタ210のオフ時においては、ゲート・カソード間に印加される電圧を発光サイリスタ210の破壊電圧以内にすることができるのである。
(実施例2の効果)
本実施例2及びこの変形例1、2のゲート駆動用バッファ162D,162E,162F,163、及びこのバッファ162D,162E,162F,163を有するドライバIC100及び光プリントヘッド13によれば、実施例1と同様に、次のような効果がある。
本実施例2及びこの変形例1、2のゲート駆動用バッファ162D,162E,162Dにおいては、前記“H”レベルを電源電圧VDDの5Vよりも低い値とすることができ、非点灯状態の発光サイリスタ210のゲート・カソード間電圧を発光サイリスタ自身の耐圧値以内にすることができ、素子破壊を未然に防止することができる。
更に、本実施例2及びこの変形例1,2の画像形成装置1によれば、ドライバIC100を有する光プリントヘッド13を採用するため、スペース効率及び光取り出し効率に優れた高品質の画像形成装置(プリンタ、複写機、ファクシミリ装置、複合機等)を提供することができる。即ち、光プリントヘッド13を用いることにより、上述したフルカラーの画像形成装置1に限らず、モノクロ、マルチカラーの画像形成装置においても効果が得られるが、特に露光装置を数多く必要とするフルカラーの画像形成装置において一層大きな効果が得られる。
(実施例の他の変形例)
本発明は、上記実施例1、2やこれらの変形例に限定されず、その他の利用形態や変形が可能である。この利用形態や変形例としては、例えば、次の(a)〜(c)のようなものがある。
(a) 発光サイリスタ210が光源として用いられる発光素子に適用した場合について説明したが、本発明はこれに限らず、他の被駆動素子(例えば、LED、有機EL素子、発熱抵抗体等)への電圧印加制御を行う場合にも適用可能である。例えば、有機EL素子のアレイで構成される有機ELヘッドを供えたプリンタや、発熱抵抗体の列で構成されるサーマルプリンタ等において利用することができる。更に、表示素子、例えば、列状あるいはマトリクス状に配列された表示素子の駆動にも適用可能である。
(b) 本発明は、3端子構造を備えた発光サイリスタ210等の被駆動素子に限らず、第1と第2の2個のゲート端子を備えた4端子サイリスタSCS(Silicon Semiconductor Controlled Switch)を駆動する場合にも適用可能である。
(c) 本発明の趣旨及び技術思想を考察して明らかなように、本発明は同一構成要素の連続的配置からなる被駆動素子列のドライバに限定されるものではなく、複数若しくは単数の駆動端子出力を備えた任意形状のICチップや、これらを搭載してなるユニット装置等に広く応用することが可能である。