実施の形態1.
図1は、本発明による駆動回路としてのプリントヘッドを採用した画像形成装置の実施の形態1の制御系の要部構成を示すブロック図である。
尚、以下の説明において、モノリシック集積回路をIC、NチャネルMOSトランジスタをNMOSトランジスタ、PチャネルMOSトランジスタをPMOSランジスタと略称することがある。また正論理の場合、信号レベルの“High”を論理値“1”に、信号レベルの“Low”レベルを論理値“0”に対応させて記載することがある。更に、論理信号における正論理や負論理の別を明示する必要のある場合には、正論理信号の末尾に−Pを、負論理信号の末尾に−Nを付与して区別する場合がある。更に、煩雑さを避けるため、信号端子名とそれに入出力される信号名とに同一名称を付して説明する場合がある。
以下、複数の被駆動素子を、画像形成装置としての電子写真プリンタに用いられた発光サイリスタの列とした場合を例にして、説明する。
図1に示すように、制御系1は、印刷制御部10、モータドライバ2,4、現像・転写プロセス用モータ3、用紙送りモータ5、用紙吸入口センサ6、用紙排出口センサ7、用紙残量センサ8、用紙サイズセンサ9、定着器温度センサ23、定着器22、プリントヘッド19、帯電用高圧電源25、転写用高圧電源26、現像部27、及び転写部28を備える。
この制御系1を有する画像形成装置(後述する図35において5300が相当する)は、プリントヘッド19によって、帯電した感光体ドラム(例えば後述する図35において5303aが相当する)にプリント情報に応じて選択的に光を照射して静電潜像を形成し、この静電潜像にトナーを付着させて現像を行ってトナー像を形成し、このトナー像を用紙に転写して定着させる。以下、画像形成装置の構成及び動作について、図1の制御系のブロック図を参照しながらより詳細に説明する。
図1において、印刷制御部10は、マイクロプロセッサ、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出力ポート、タイマ等によって構成されて画像形成装置の印字部の内部に配設され、図示しない画像処理部からの制御信号SG1、ビデオ信号(ドットマップデータを一次元的に配列したもの)SG2等によって画像形成装置全体をシーケンス制御して印刷動作を行う。印刷制御部10は、制御信号SG1によって印刷指示を受信すると、先ず定着器温度センサ23によってヒータ22aを内蔵した定着器22が使用可能な温度範囲にあるか否かを検出し、使用可能な温度範囲になければヒータ22aに通電し、使用可能な温度まで定着器22の後述する加熱ローラを加熱する。
次に、モータドライバ2を介して現像・転写プロセス用モータ(パルスモータ)3を回転させ、同時にチャージ信号SGCによって帯電用高圧電源25をオンにし、現像部27の帯電を行う。そして、セットされている用紙(後述する図35において5305が相当する)の有無及び種類が用紙残量センサ8及び用紙サイズセンサ9によって検出され、用紙に合った用紙送りが開始される。ここで、用紙送りモータ(パルスモータ)5は、モータドライバ4を介して双方向に回転させることが可能となっている。これにより、1ページ印刷開始毎に、最初に用紙送りモータ5を逆転させ、セットされた用紙を用紙吸入口センサ6が検知するまで予め設定された量だけ送り、続いて正回転させて用紙を画像形成装置内部の印刷機構内に搬送する。
印刷制御部10は、用紙が印刷可能な位置まで到達した時点において、画像処理部に対してタイミング信号SG3(主走査同期信号、副走査同期信号を含む)を送信することによってビデオ信号SG2を受信する。画像処理部においてページ毎に編集され、印刷制御部10で受信されたビデオ信号SG2は、印刷データ信号HD−DATA3〜0としてプリントヘッド19に転送される。プリントヘッド19は、後述するように、それぞれが1ドット(ピクセル)の印字のために設けられた発光サイリスタを複数個直線上に配列した発光部を有する。ここでの印刷データ信号HD−DATA3〜0は後述するように4系統でパラレルに送られる。
そして、印刷制御部10は1ライン分のビデオ信号SG2を受信すると、プリントヘッド19にラッチ信号HD−LOADを送信し、印刷データ信号HD−DATAをプリントヘッド19内に保持させる。また、印刷制御部10は、画像処理部から次のビデオ信号SG2を受信している最中においても、プリントヘッド19に保持した印刷データ信号HD−DATA3〜HD−DATA0について印刷することができる。
尚、HD−CLKは、印刷データ信号HD−DATA3〜HD−DATA0をプリントヘッド19に送信するためのクロック信号であり、HD−HSYNC−Nは主走査同期信号、HD−STB−Nはストローブ信号である。
ビデオ信号SG2の送受信は、印刷ライン毎に行われる。プリントヘッド19は印刷情報に基づいて発光し、マイナス電位に帯電させられた感光体ドラム(例えば後述する図35において5303aが相当する)上を照射する。これにより、印刷される情報は感光体ドラムにおいて電位の上昇したドットとして潜像化される。そして、現像部27において、マイナス電位に帯電させられた画像形成用のトナーが、電気的な吸引力によって各ドットに吸引されてトナー像が形成される。
その後、このトナー像は転写部28に送られる。一方、転写信号SG4によって転写用高圧電源26がオンになり、これによりプラス電位が印加された転写部28(後述する図35において5312が相当する)によって、感光体ドラムの表面に形成されたトナー像を、感光体ドラムと転写部28との間を通過する記録用紙上に転写する。
転写されたトナー像を有する記録用紙は、ヒータ22aを内蔵する定着器22に当接して搬送され、定着器22の熱によってトナー像が定着され、トナー像が定着された記録用紙は、更に搬送されて画像形成装置の印刷機構から用紙排出口センサ7を通過して画像形成装置の外部に排出される。
印刷制御部10は、用紙サイズセンサ9、用紙吸入口センサ6の検知に対応し、記録用紙が転写部28を通過している間だけ転写用高圧電源26からの電圧を転写部28に印加する。そして印刷が終了して記録用紙が用紙排出口センサ7を通過すると、帯電用高圧電源25による現像部27への電圧の印加を終了し、同時に現像・転写プロセス用モータ3の回転を停止させる。以後、印刷制御部10は、制御信号SG1によって印刷指示を受信する毎に、上記の動作を繰り返す。
図2は、プリントヘッド19の要部構成を示すブロック図である。以下、図2を参照しながら、プリントヘッド19の構成及び動作について説明する。
同図に示すプリントヘッド19は、1インチ当たり600ドットの解像度でA4サイズの用紙に印刷可能なプリントヘッドを例にしている。この場合、被駆動素子としての発光サイリスタの総数は4992ドットである。これを構成するため、各々192個の発光サイリスタThy1〜Tyh192が含まれている26個の発光素子アレイCHP1〜CHP26を直線状に配列している。
各発光素子アレイCHP1〜CHP26内の発光サイリスタThy1〜Thy192は、それぞれ第1端子であるアノードと第2端子であるカソード、第3端子であるゲートの各端子を備えており、隣接配置される2個の発光サイリスタ毎にそのアノード端子が接続され、対応する駆動部としてのドライバIC101〜126の各出力端子D01〜D096とそれぞれ接続される。また発光サイリスタThy1〜Thy192の各カソード端子は共にグランドと接続されている。
更に、各発光素子アレイCHP1〜CHP26内の発光サイリスタThy1〜Thy192は、その奇数番目の発光サイリスタのゲートが、それぞれ対応するドライバIC101〜126上に設けられたゲート駆動端子G1に接続され、偶数番目の発光サイリスタのゲートが、同ドライバIC上に設けられたゲート駆動端子G2に接続されている。
例えば、発光素子アレイCHP1の発光サイリスタThy191とThy192のアノード端子同士は共にドライバIC101のアノード駆動端子であるDO96に接続され、同発光サイリスタThy191とThy192のカソードは共にグランドに接続されている。そして発光素子アレイCHP1の発光サイリスタThy192のゲート端子はドライバIC101の端子DO96の近傍に配置された端子G2と接続され、発光サイリスタThy191のゲート端子はドライバICの端子DO96の近傍に配置された端子G1と接続されている。
また、発光素子アレイCHP1の発光サイリスタThy1とThy2のアノード端子同士は共にドライバIC101のアノード駆動端子であるDO1に接続され、同発光サイリスタThy1とThy2のカソードは共にグランドに接続されている。そして発光素子アレイCHP1の発光サイリスタThy2のゲート端子はドライバIC101の端子DO1の近傍に配置された端子G2と接続され、発光サイリスタThy1のゲート端子はドライバICの端子DOの近傍に配置された端子G1と接続されている。そして後述するように、奇数番目の発光サイリスタと偶数番目の発光サイリスタとが時分割に駆動される。
図2において、上記したようにCHP1〜CHP26は発光素子アレイであり、このうちCHP3〜CHP26は図示を省略している。発光素子アレイを駆動するドライバIC101〜126は、各発光素子アレイCHP1〜CHP26に対応して配置され、それぞれ対応する発光素子アレイを駆動するが、この内ドライバIC103〜126は図示を省略している。各ドライバIC101〜126は同一回路により構成され、隣接するドライバICとカスケードに接続されている。
図2に示すように本構成では、印刷データ信号HD−DATA3〜0のデータ線を4本とし、隣接する発光サイリスタ8個のうち、奇数番目同士或いは偶数番目同士の4画素分のデータを1パルスのクロック信号毎に同時に送出する構成としている。このため、印刷制御部10(図1)から出力される4ビットの印刷データ信号HD−DATA3〜0はクロック信号HD−CLKと共にプリントヘッド19に入力され、前記した4992ドット分のビットデータが後述するフリップフロップ回路から成るシフトレジスタ中を順次転送される。但し、ここでは、奇数番目の発光サイリスタと偶数番目の発光サイリスタが時分割制御されるため、後述するように、2496ドット分ずつ2度に分けて転送される。
次に、転送されたビットデータは、後述するように、プリントヘッド19に入力されるラッチ信号HD−LOADによって、上記シフトレジスタを構成するフリップフロップ回路に対応して設けられた各ラッチ回路にラッチされる。続いて、ラッチされたビットデータと印刷駆動信号としてのストローブ信号HD−STB−Nとによって、4992(26×192)個の発光サイリスタのうち、論理値“1”のドットデータに対応するものが、奇数、偶数毎に時分割点灯される。
尚、VDDは電源、GNDはグランドであり、HD−HSYNC−Nは前記した時分割駆動において奇数番目の発光サイリスタ駆動であるか偶数番目の発光サイリスタ駆動であるかの初期状態を設定するための同期信号、VREFは発光サイリスタ駆動のための駆動電流値を指令するための基準電圧であって、プリントヘッド19内に設けられた図示しない基準電圧発生回路により発生される。
ここで、発光サイリスタの構成及びプリントヘッド19の構造について説明する。
図3は、発光サイリスタThy1〜Thy192の構成を示す図である。これらの発光サイリスタは同一の構成であるため、発光サイリスタThy192を例にして説明する。同図(a)は、発光サイリスタThy192の回路シンボルを示し、同図(b)はその断面構造を示し、同図(c)は、発光サイリスタの別の形態を示し、同図(d)は、これら発光サイリスタの等価回路である。
図3(a)に示すように、発光サイリスタThy192は、アノード端子(A)、カソード端子(K)、ゲート端子(G)の三つの端子を備え、GaAsウェハー基材を用い、公知のMO‐CVD(Metal Organic‐Chemical Vaper Deposition)法により上記基材の上層に所定の結晶をエピタキシャル成長させることで作成される。
図3(b)に示す構造の発光サイリスタThy192は、先ず上記GaAsウェハー基材の上に所定の犠牲層やバッファ層(図示しない)をエピタキシャル成長させた後、AlGaAs基材にN型不純物を含ませたN型層133と、P型不純物を含ませ成層したP型層132と、N型不純物を含ませたN型層131とを順に積層させたNPNの3層構造からなるウェハーを構成する。
次いで、最上層のN型層の一部に公知のフォトリソグラフィー法を用いて選択的にP型不純物領域134を形成し、更に、公知のドライエッチング法により溝部を形成することで素子分離を行う。また、エッチングの過程でサイリスタの最下層となるN型領域の一部を露出させ、露出した領域に金属配線を形成してカソード電極(K)を形成する。それと同時に、P型不純物領域134とN型領域131にもそれぞれアノード電極(A)とゲート電極(G)を形成する。尚、このように構成された発光サイリスタをNゲートの発光サイリスタと称す場合がある。
図3(c)に別形態の発光サイリスタThy192の構造を示す。本構成の場合も、GaAsウェハー基材を用い、公知のMO‐CVD法により上記基材の上層に所定の結晶をエピタキシャル成長させることで作成される。即ち、先ず上記GaAsウェハー基材の上に所定の犠牲層やバッファ層(図示しない)をエピタキシャル成長させた後、AlGaAs基材にN型不純物を含ませたN型層133と、P型不純物を含ませ成層したP型層132と、N型不純物を含ませたN型層131と、P型不純物を含ませ成層したP型層135を順に積層させたPNPNの4層構造のウェハーを構成する。
更に、公知のドライエッチング法を用いて溝部を形成することで素子分離を行い、エッチングの過程でサイリスタの最下層となるN型領域の一部を露出させ、露出した領域に金属配線を形成してカソード電極(K)を形成する。同様に、最上層となるP型領域の一部を露出させ、この領域に金属配線を形成してアノード電極(A)を形成し、それと同時にN型領域131にゲート電極(G)を形成する。
図3(d)は、同図(b)、(c)に示す各形態の構造に対比して描いた発光サイリスタThy192の等価回路である。同図に示すように、発光サイリスタThy192は、PNPトランジスタ141とNPNトランジスタ142とからなり、PNPトランジスタ141のエミッタが発光サイリスタThy192のアノード端子(A)に相当し、PNPトランジスタ141のベースが発光サイリスタThy192のゲート端子(G)に対応し、このゲート端子(G)はNPNトランジスタ142のコレクタとも接続される。更に、PNPトランジスタ141のコレクタはNPNトランジスタ142のベースと接続され、NPNトランジスタ142のエミッタが発光サイリスタThy192のカソード端子(K)に相当している。
尚、図3に示した構造の発光サイリスタは、GaAsウェハー基材上にAlGaAs層を構成したものであるが、これに限定されるものではなく、GaAs、GaP、GaAsP、AlGaInPといった材料を用いるものであってもよく、またはサファイヤ基板上にGaNやAlGaN、InGaNといった材料を成膜したものであっても良い。
また、上記したサイリスタ素子は、例えば特開2007‐81081号公報に開示されているエピタキシャルボンディング法を用いて、ドライバIC101〜126(図2参照)を配列したICウェハーと接着され、公知のエッチング法により不要箇所が除去されると共に、サイリスタ素子の端子箇所が露出させられる。次いで、サイリスタの各端子予定箇所と前記ドライバICの端子部とが、フォトリソグラフィー法により形成された薄膜配線を用いて接続される。更に公知のダイシング法を用いて複数のチップに分離することで発光素子・駆動素子からなる複合チップが形成される。
図4は、上記した複合チップをプリント配線基板上に配列して構成したプリントヘッド19のヘッド基板ユニット406の外観斜視図である。
同図に示すように、複合チップ405−1は、ドライバIC101が形成されたICチップ402−1とICチップ402−1の所定位置に接合された発光素子アレイCHP1とからなり、同様に、複合チップ405−2は、ドライバIC102が形成されたICチップ402−2とICチップ402−2の所定位置に接合された発光素子アレイCHP2とからなる。以下同様に、複合チップ405−3〜405−26(図示せず)は、対応するICチップ402−3〜402−26(図示せず)と発光素子アレイCHP3〜CHP26(図示せず)によって構成されている。
同じ構成のこれらの26個の複合チップ405−1〜405−26は、プリント配線基板401上に一列に配列され、各発光素子アレイが所定の間隔で並ぶように配列されている。また例えば、複合チップ405−1においては、ドライバIC101のアノード駆動端子DO1〜DO96、端子G1、端子G2等の出力端子が、図2に示すように、発光素子アレイCHP1の対応する各発光サイリスタThy1〜192に対向するように形成されており、これらの接続は、前記した薄膜配線を用いて行われる。他の複合チップ405−2〜405−26も同様に構成されている。
一方、図2に示すように、カスケード接続される各複合チップ405−1〜405−26のドライバIC101〜126の各入力部は、図4に示すように、プリント配線基板401上の図示しない配線パッドと各入力部に接続された端子間をボンディングワイヤ404で接続している。
図5は、プリントヘッド19の構成を概略的に示す構成図である。
同図に示すように、ベース部材411上には、ヘッド基板ユニット406が搭載されている。このヘッド基板ユニット406は、前記したように、プリント配線基板401とその上に一列に配列された26個の複合チップ405とからなり、26個の複合チップ405は、26個のICチップ402と発光素子アレイCHP1〜26から形成されている。
発光サイリスタThy1〜192(図2)が配列された発光素子アレイCHP1〜26上方には、発光部から出射された光を集光する光学素子としてのロッドレンズアレイ412が配設されている。このロッドレンズアレイ412は、円柱状の光学レンズをヘッド基板ユニット406の直線状に配列された発光部(例えば、発光素子アレイCHP1〜26の各発光サイリスタThy1〜192)に沿って多数配列したもので、レンズホルダ413によって所定位置に保持されている。
このレンズホルダ413は、同図に示すように、ベース部材411及びヘッド基板ユニット406を覆うように形成されている。そして、ベース部材411、ヘッド基板ユニット406、及びレンズホルダ413は、レンズホルダ413に形成された開口部413aを介して配設されるクランパ414,415によって一体的に挟持されている。従って、ヘッド基板ユニット406で発生した光はロッドレンズアレイ412を通して、感光体ドラム(例えば後述する図35において5303aが相当する)の所定部を照射する。
図6は、ドライバICの内部構成を示すブロック図である。図2に示すドライバIC101〜126は、同一回路により構成されているため、ここでは、ドライバIC101を例にして説明する。
フリップフロップ回路(以下、FF回路と称す)FFA1〜FFA25、FFB1〜FFB25、FFC1〜FFC25、FFD1〜FFD25は、クロック信号CLKを受けて印刷データのシフト転送を行うシフトレジスタ回路を構成し、ラッチLTA1〜LTD1、LTA2〜LTD2、・・・、LTA24〜LTD24は、シフトレジスタ回路の出力信号をラッチ信号HD−LOADによりラッチするラッチ回路を構成する。メモリMEM1〜MEM97、第1制御回路201、インバータ203,204、NAND205、及びプルアップ素子である抵抗202は、シフトレジスタ回路の出力信号をメモリするメモリ回路を構成し、マルチプレクサMUX1〜MUX96及び第2制御回路208は、主走査同期信号HD−HSYNCに基づいてメモリ回路から出力される奇数と偶数の発光サイリスタに対応する2種類の電流補正データを選択して出力するマルチプレクサ回路を構成し、そしてドライバ(DRV)DV1〜DV96は、マルチプレクサ回路及びラッチ回路の出力データに基づいて所定の駆動電流を対応する発光素子アレイCHP1〜CHP26の個々の発光サイリスタThy1〜Thy192毎に時分割で流す発光素子駆動回路を構成する。
セレクタ回路207は、各々4個の入力端子A3〜A0,B3〜B0と、4個の出力端子Y3〜Y0と、データ端子の選択入力端子Sを備え、選択入力端子Sが“Low”レベルのとき入力端子A3〜A0への入力データが出力端子Y3〜Y0から出力され、選択入力端子Sが“High”レベルのとき入力端子B3〜B0への入力データが出力端子Y3〜Y0から出力される。
制御電圧発生回路(ADJ)210は、4本のデータ入力端子S3〜S0と、基準電圧入力端子VREFを備えている。この基準電圧入力端子VREFは、図示しない基準電圧発生回路の出力と接続されて、グランド電位を基準とする基準電圧Vrefが印加される。制御電圧発生回路(ADJ)210のV端子は出力端子であって、96個配列されているドライバDV1〜DV96に対して、制御電圧Vcontを出力している。また、前記のデータ入力端子S3〜S0はメモリ回路のメモリMEM97の端子Q3〜Q0と接続され、後述するようにメモリMEM97に格納されているチップ補正データが入力される。
FF回路FFA1〜FFA25はカスケード接続されており、FF回路FFA1のデータ入力端子DはドライバIC101のデータ入力端子DATAI0に接続され、FF回路FFA24とFFA25のデータ出力はセレクタ回路207へ入力され、セレクタ回路207の出力端子Y0はドライバIC101のデータ出力端子DATAO0に接続されている。
同様に、FF回路FFB1〜FFB25、FFC1〜FFC25、及びFFD1〜FFD25もそれぞれカスケード接続されており、FFB1、FFC1、FFD1の各データ入力端子Dは、ドライバIC101のデータ入力端子DATAI1、DATAI2、DATAI3にそれぞれ接続され、FFB24とFFB25、FFC24とFFC25、FFD24とFFD25からの各出力もセレクタ回路207に接続され、セレクタ回路207の各々の出力はドライバIC101のデータ出力端子DATAO1、DATAO2、DATAO3にそれぞれ接続されている。
従って、FF回路FFA1〜FFA25、FFB1〜FFB25、FFC1〜FFC25、及びFFD1〜FFD25は、それぞれ25段のシフトレジスタを構成しており、セレクタ回路207によってシフト段数を24段と25段とに切り替えることができる。また、FF回路FFA1〜FFA25、FFB1〜FFB25、FFC1〜FFC25、及びFFD1〜FFD25の各クロック端子は、クロック信号CLKを入力し、該信号に同期してシフト動作が行われる。ドライバICのデータ出力端子DATAO0〜DATAO3は、次段のドライバICのデータ入力端子DATAI0〜DATAI3にそれぞれ接続される。
従って、ドライバIC101〜126の各FF回路FFA1〜FFA25は、印刷制御部10(図1)から初段のドライバIC101に入力されるデータ信号HD−DATA0をクロック信号HD―CLKに同期してシフトさせる24×26段、あるいは25×26段のシフトレジスタを構成する。同様に、ドライバIC101〜126のFF回路FFB1〜FFB25、FFC1〜FFC25、及びFFD1〜FFD25は、それぞれ印刷制御部10から初段のドライバIC101に入力されるデータ信号HD−DATA1、HD−DATA2、及びHD−DATA3をクロック信号HD―CLKに同期してシフトさせる24×26段、あるいは25×26段のシフトレジスタを構成することになる。
ラッチLTA1〜LTA24、LTB1〜LTB24、LTC1〜LTC24、及びLTD1〜LTD24は、プリントヘッド19に入力するラッチ信号HD−LOAD−Pで動作する。ラッチ回路LTA1〜LTA24は、FF回路FFA1〜FFA24に格納されたデータ信号HD−DATA0をラッチする。同様に、ラッチ回路LTB1〜LTB24、LTC1〜LTC24、及びLTD1〜LTD24は、それぞれFF回路FFB1〜FFB24、FFC1〜FFC24、及びFFD1〜FFD24に格納されたデータ信号HD−DATA1、HD−DATA2、及びHD−DATA3をラッチする。
メモリ回路のNAND回路205の一方の入力端子は、インバータ203を介してドライバIC101のSTB入力端子に接続され、このSTB入力端子は、ストローブ信号HD−STB−Nを入力するプリントヘッド19(図2)の入力端子に接続されている。また、NAND回路205の他方の入力端子はインバータ204を介してドライバIC101のLOAD端子に接続され、このLOAD端子は、ラッチ信号HD−LOAD−Pを入力するプリントヘッド19(図2)の入力端子に接続されている。
NAND回路205は、その出力がドライバDV1〜DV96の各駆動オンオフ端子Sに接続され、プリントヘッド19に入力されるラッチ信号HD−LOAD−Pが“Low”レベル、且つプリントヘッド19に入力されるストローブ信号HD−STB−Nが“Low”レベルの場合に“Low”レベルとなって、ドライバDV1〜DV192に対する駆動のオン,オフを制御する駆動オンオフ指令信号S(DRVON−N)を出力する。尚、ドライバDV1〜DV192は、後述するように、駆動オンオフ指令信号Sが“Low”レベルのとき、出力可能状態となる。
メモリMEM1〜MEM96は、対応するドライバDV1〜DV96が駆動する奇数番目と偶数番目の2つの発光サイリスタ(図2参照)の光量のバラツキを補正するドット補正データを格納する。メモリMEM1〜MEM96は、印刷時とは異なる所定のタイミングでこのドット補正データを格納するべく、その書き込み制御信号入力端子W0〜W3に入力する書き込み制御信号、及びイネーブル信号入力端子E1、E2に入力する、奇数、偶数を識別するイネーブル信号に基づいて、これらの制御信号に同期して送られてくる補正データをシフトレジスタ回路(FFA1〜FFD24)からデータ入力端子に取り込み、奇数用、偶数用の2種類の4ビットのドット補正データを格納する。そして奇数に対応するドット補正データ出力部ODD及び偶数に対応するドット補正データ出力部EVNから択一的に各ドット補正データを出力する。
メモリMEM97は、発光素子アレイ毎に光量のバラツキを補正するチップ補正データを格納する。メモリMEM97は、印刷時とは異なる所定のタイミングでこのチップ補正データを格納するべく、その書き込み制御信号入力端子W0〜W3に入力する書き込み制御信号に基づいて、この書き込み制御信号に同期して送られてくる補正データをシフトレジスタ回路(FFD25)からデータ入力端子に取り込んで4ビットのチップ補正データを格納し、制御電圧発生回路210に出力する。
第1制御回路201は、後述するように、入力するストローブ信号STBとラッチ信号LOADとから、イネーブル信号及び書き込み制御信号を形成し、イネーブル信号出力端子E1、E2、及び書き込み信号出力端子W0〜W3からこれらの信号を出力する。
制御電圧発生回路210は、VREF端子に基準電圧値VREFを受け、更に入力するチップ補正データに基づいて、後述するように、発光素子アレイ単位の光量バラツキの補正がなされた制御電圧Vcontを各ドライバDV1〜DV96に供給する。尚、基準電圧値VREFは、図示しない基準電圧発生回路により発生させられるものであり、発光サイリスタの全点灯駆動時のように電源電圧が一瞬降下するような状況においても所定値を維持し、発光素子駆動電流の低下を防止する。
マルチプレクサMUX1〜MUX96は、後述するように、対応するドライバDV1〜DV96が駆動する奇数番目と偶数番目の2つの発光サイリスタ(図2参照)の駆動タイミングに同期して、入力する奇数用、偶数用の2種類の4ビットのドット補正データから対応する一方のドット補正データを選択して対応するドライバDV1〜DV96に出力する。
第2制御回路208は、後述するように、入力する主走査同期信号HSYNCとラッチ信号LOADとから、奇数・偶数の切替指令信号を生成して切替指令信号出力端子S2N,S1Nから出力する。マルチプレクサMUX1〜MUX96は、この切替指令信号に基づいて前記したドット補正データの選択を実行する。例えば、各マルチプレクサMUX1〜MUX96は、第2制御回路208の、出力端子S2Nが論理値“1”で出力端子S1Nが論理値“0”のとき、奇数用のドット補正データを選択して出力し、出力端子S2Nが論理値“0”で出力端子S1Nが論理値“1”のとき、偶数用のドット補正データを選択して出力する。
また第2制御回路208から出力される切替指令信号S1Nは、共通バッファ回路301を介してG1信号となり各端子G1から出力され、第2制御回路208から出力される切替指令信号S2Nは、共通バッファ回路302を介してG2信号となり各端子G2から出力される。また共通バッファ回路301と各G1出力端子の間にはそれぞれゲート駆動分離回路GDA1〜GDA96が配置され、共通バッファ回路302と各G2出力端子の間にはそれぞれゲート駆動分離回路GDB1〜GDB96が配置されている。
各ドライバDV1〜DV96は、同一の構成をもつものであるため、ここでは例えばドライバDV96を例にして説明する。ドライバDV96の印刷データ入力端子Eには、図6に示すように、ラッチLTD1のQN出力が入力される。このように、ドライバDV1〜DV96の各印刷データ入力端子Eには、図6に示すように対応するラッチLTA1〜LTD1,LTA24〜LTD24の反転データ出力端子QNの出力が入力される。
ドライバDV96は、印刷データ入力端子Eに入力する印刷データ及び駆動オンオフ端子Sに入力する駆動オンオフ指令信号が共に論理値“0”のときに、即ち、発光素子アレイCHP1〜CHP26を駆動するタイミング時で、且つ発光サイリスタThy191(奇数)又は発光サイリスタThy192(偶数)を点灯する指示を受けているときに、アノード駆動端子DO96から駆動電流を出力する。このときの駆動電流は、後述するように、制御電圧Vcontに応じて調整され、且つ4ビットの奇数用又は偶数用のドット補正データで重み付けされた電流を加えたものとなる。各ドライバDV1〜DV96の構成については後述する。
このように、アノード駆動端子DO96からは、時分割で発光サイリスタThy191(奇数)又は発光サイリスタThy192(偶数)用の駆動電流が出力される。他のドライバDV1〜DV95についても同様にして発光素子駆動電流がアノード駆動端子DO1〜DO95から出力される。一方、奇数、偶数の駆動電流の出力に同期して、G1,G2の各端子からそれぞれG1信号,G2信号が出力され、各信号の論理値が“0”,“1”場合には奇数の発光サイリスタを、また論理値が“1”,“0”場合には偶数の発光サイリスタを択一的に選択して駆動する。
以上のように構成されたドライバIC101〜126は、対応して直線状に配置された発光素子アレイCHP1〜CHP26の4992個(26×192)の発光サイリスタを、発光素子アレイ及び発光サイリスタ毎に、光量のバラツキを補正しながら発光駆動する。
図7は、図6に示すメモリMEM1〜MEM96の内部回路構成図である。尚、メモリMEM1〜MEM96は同一構成であるため、ここではメモリMEM96を例にして説明する。
メモリMEM96は、破線部で囲まれるメモリセル回路151、メモリセル回路152、バッファ回路181、及びインバータ182とからなり、補正データ入力端子D、書き込み制御信号入力端子W3〜W0、奇数番目ドットに関する補正データを出力する出力端子ODD0〜ODD3、偶数番目ドットに関する補正データを出力する出力端子EVN0〜EVN3、奇数番目ドットの側のデータ書き込みを許可するイネーブル信号E1、及び偶数番目ドットの側のデータ書き込みを許可するイネーブル信号E2とを備えている。またメモリセル回路151及び152は、インバータ153〜160とNMOSトランジスタ161〜176とからなる。
尚、メモリセル回路151とメモリセル回路152とは、同一の構成であるため、それぞれ対応する素子には、同一の符号が付されているものとし、簡単のため、メモリセル回路152の各素子の符号を省いて、主にメモリセル回路151を例にして構成を説明する。
図7に示すメモリMEM96の場合、補正データ入力端子Dは、図3に示すFF回路FFD1のデータ出力端子Qに接続されている。このように、メモリMEM1〜MEM96の各補正データ入力端子Dは、図6に示すように対応するFF回路FFA1,FFB1,FFC1,FFD1,…FFA24,FFB24,FFC24,FFD24等のデータ出力端子Qにそれぞれ接続され、更にメモリMEM97の補正データ入力端子DはFFD25のデータ出力端子Qに接続されている。また、書き込み制御信号入力端子W0,W1,W2,W3には、第1制御回路201(図6参照)からの書き込み制御信号W0,W1,W2,W3がそれぞれ入力される。
メモリセル回路151において、NMOSトランジスタ161と162、163と164、165と166、167と168、169と170、171と172、173と174、175と176とはそれぞれ直列に接続されている。
図7において、バッファ回路181の入力端子は、補正データ入力端子Dとなっており、バッファ回路181の出力端子は、インバータ182の入力端子と接続されると共に、メモリセル回路151及び152の各NMOSトランジスタ161,165,169,173の各第1端子に接続されている。またインバータ182の出力端子は、メモリセル回路151及び152の各NMOSトランジスタ164,168,172,176の各第1端子に接続されている。インバータ153と154、155と156、157と158、159と160とはそれぞれ直列に接続され、メモリセルを形成している。
NMOSトランジスタ162,166,170,及び174の各第2端子は、それぞれインバータ154,156,158,及び160の入力端子と接続され、NMOSトランジスタ163,167,171,及び175の各第2端子は、それぞれインバータ153,155,157,及び159の入力端子と接続されている。
メモリセル回路151及び152の、NMOSトランジスタ162,163の各ゲート端子は共に端子W0に接続され、NMOSトランジスタ166,167の各ゲート端子は共に端子W1に接続され、NMOSトランジスタ170,171の各ゲート端子は共に端子W2に接続され、NMOSトランジスタ174,175の各ゲート端子は共に端子W3に接続されている。
メモリセル回路151のNMOSトランジスタ161,164,165,168,169,172,173,176の各ゲート端子は、奇数番目ドットの側のデータ書き込みを許可するイネーブル信号E1を入力する端子に接続され、メモリセル回路152のNMOSトランジスタ161,164,165,168,169,172,173,176の各ゲート端子は、偶数番目ドットの側のデータ書き込みを許可するイネーブル信号E2を入力する端子に接続されている。
更に、メモリセル回路151において、インバータ153,155,157,159からの各出力は、それぞれ奇数番目ドットに関する補正データを出力する出力端子ODD0〜ODD3から出力され、メモリセル回路152において、インバータ153,155,157,159からの各出力は、それぞれ偶数番目ドットに関する補正データを出力する出力端子EVN0〜EVN3から出力される。
以上の構成によって、メモリMEM96は、後述するように、補正データ入力端子Dに順次入力する、奇数番目ドット用の4ビット補正データをメモリセル回路151にメモリし、偶数番目ドット用の4ビット補正データをメモリセル回路152にメモリするが、その際、それぞれの補正データをイネーブル信号E1,E2によって、メモリセル回路151,152が選択されてメモリする。
図8は、図6に示すマルチプレクサMUX1〜MUX96の内部回路構成図である。尚、マルチプレクサMUX1〜MUX96は同一構成であるため、ここではマルチプレクサMUX96を例にして説明する。
同図に示すように、マルチプレクサMUX96は、それぞれ独立した4個のマルチプレクサ回路からなっており、PMOSトランジスタ191〜198を備え、PMOSトランジスタ191,193,195,197のゲートは、切替指令信号S1Nを入力する切替指令入力端子S1Nに接続され、PMOSトランジスタ192,194,196,198のゲートは、切替指令信号S2Nを入力する切替指令入力端子S2Nに接続されている。
PMOSトランジスタ191の第1端子は端子ODD0と接続され、PMOSトランジスタ192の第1端子は端子EVN0と接続され、PMOSトランジスタ191と192の第2端子同士は端子Q0に接続されている。同様に、PMOSトランジスタ193の第1端子は端子ODD1と接続され、PMOSトランジスタ194の第1端子は端子EVN1と接続され、PMOSトランジスタ193と194の第2端子同士は端子Q1に接続され、PMOSトランジスタ195の第1端子は端子ODD2と接続され、PMOSトランジスタ196の第1端子は端子EVN2と接続され、PMOSトランジスタ195と196の第2端子同士は端子Q2に接続され、更にPMOSトランジスタ197の第1端子は端子ODD3と接続され、PMOSトランジスタ198の第1端子は端子EVN3に接続され、PMOSトランジスタ197と198の第2端子同士は端子Q3に接続されている。
以上の構成において、切替指令信号S1N、S2Nの論理値がそれぞれ“0”、“1”のとき、端子ODD0〜ODD3に入力する奇数用のドット補正データを選択して出力し、切替指令信号S1N、S2Nの論理値がそれぞれ“1”、“0”のとき、端子EVN0〜EVN3に入力する偶数用のドット補正データを選択して出力する。
上記のマルチプレクサMUX96の構成において、スイッチ素子としてPMOSトランジスタを用いているのは下記の理由であって、動作上の支障を防止しつつ、使用される素子数を削減することが可能な構成となっている。
例えば、PMOSトランジスタ191をオンさせるために、切替指令信号S1Nを“Low”レベルとするとき、ODD0信号が“High”レベルであれば、その信号レベルと略等しい電圧が端子Q0から出力される。このように“High”レベルの伝達であればPMOSトランジスタをスイッチ素子として使用した場合でも何ら支障がない。
同様に、ODD0信号が“Low”レベル(略0V)であったとすると、PMOSトランジスタ191の第2端子はその閾値電圧に近い電位にまで降下するものの、“Low”レベル(略0V)にまで下がることはなく、PMOSトランジスタ191は、このように“Low”レベルの伝達機能が完全ではない欠点を内在している。
このような欠点を解消するため、一般的な構成においては、PMOSトランジスタと並列にNMOSトランジスタを接続したアナログスイッチを構成し、データ選択のためのスイッチ手段としていた。この構成においては伝達しようとする入力信号電位と略等しい出力電位を得ることができ、スイッチ手段が介在していることによる入力電位と出力電位の差は生じない。その一方で、データ信号1本あたりにPMOSとNMOSのトランジスタ対を設ける必要があり、図8の構成に比べて2倍の素子数を要し、それを配置するためのICのチップ面積を多く占有するという欠点を内在していた。
それに対して図8の構成では、一般的なアナログスイッチを用いて構成した回路と比べて半分の素子数ですむ利点を有しているものの、“Low”レベルの伝達機能は完全ではない欠点を内在している。
しかしながら後述するように、マルチプレクサMUX1〜MUX96の出力が接続される後段回路であるドライバDV1〜DV192においては,“High”レベルとして略VDD電位と等しい入力電圧を要するのに対し,“Low”レベルとしては後述する制御電圧Vcont電位にまで下降していれば十分であり、略0Vにまで電位降下するような“Low”レベル電位を必要としていない。このため、図8に示すマルチプレクサ回路を用いることで,回路動作上の制約を回避しつつ所要素子数を削減することができる。
図9は、図6に示すドライバDV1〜DV96の回路構成図である。尚、ドライバDV1〜DV96は同一の構成を持つものであるため、ここではドライバDV96を例にして説明する。
ドライバDV96は、同図に示すように、PMOSトランジスタ220〜225、NMOSトランジスタ226、NAND回路230〜233、及びNOR回路227を備えている。また、ドライバDV96は、印刷データ入力端子E、発光サイリスタ駆動のオン,オフを指令する駆動オンオフ指令信号Sを入力する入力端子S、後述する制御電圧Vcontを入力する入力端子V、補正データ入力端子Q0〜Q3、及びアノード駆動端子DO96を備えている。
ドライバDV96の印刷データ入力端子Eには、図6に示すように、ラッチLTD1のQN出力が入力される。このように、ドライバDV1〜DV96の各印刷データ入力端子Eには、図6に示すように対応するラッチLTA1〜LTD1,LTA24〜LTD24の反転データ出力端子QNの出力が入力される。補正データ入力端子Q0〜Q3は、図8に示したマルチプレクサMUX96の補正データ出力端子Q0〜Q3に接続されている。
また駆動オンオフ端子Sには、前記したように図6に示すNAND回路205から出力される発光サイリスタ駆動のオン、オフを指令する駆動オンオフ指令信号Sが入力される。端子Vには、図6に示す制御電圧発生回路(ADJ)210からの制御電圧Vcontが入力される。アノード駆動端子DO96は、発光サイリスタ、ここでは発光素子アレイCHP1(図2)の発光サイリスタThy191,192の各アノードと、前記した薄膜配線等により接続される。尚、図2に示すように、発光サイリスタThy191,192の各カソード端子はグランドに接続されている。
図9に示すように、発光サイリスタを駆動するPMOSトランジスタ220〜223の各ゲート端子は、それぞれNAND回路230〜233の出力端子に接続され、PMOSトランジスタ224のゲート端子は、ドレーン端子同士が接続されたPMOSトランジスタ225とNMOSトランジスタ226のドレーンに接続されている。
NOR回路227の2個の入力端子は、それぞれ端子S、端子Eに接続され、NAND回路230〜233の第1入力端子は、NOR回路227の出力端子に接続され、NAND回路230〜233の第2入力端子は,それぞれ補正データ入力端子Q0〜Q3に接続されている。
また、PMOSトランジスタ220〜224の各ソース端子は、共に電源VDDに接続され、PMOSトランジスタ220〜224の各ドレーン端子は、共にアノード駆動端子DO96に接続されている。更にPMOSトランジスタ220〜224はゲート長があい等しく構成され、その内PMOSトランジスタ220〜223のゲート幅は、入力端子Q0〜Q3に入力するマルチプレクサMUX96からの補正データq0〜q3のビット重みに対応してそれぞれ1:2:4:8のサイズ比に設定されている。
一方,NAND回路230〜233及びNOR回路227の電源は、図示しない電源VDDと接続され、これら回路のグランドは端子Vと接続され、制御電圧Vcont電位に保たれる。後述するように電源VDDの電位と制御電圧Vcont電位との電位差はPMOSトランジスタ220〜224がオンするときのゲート・ソース間電圧に略等しく、この電圧を変化させることでPMOSトランジスタ220〜224のドレーン電流を調整することが可能となる。図6に示す制御電圧発生回路210は、基準電圧VrefとメモリMEM97からのチップ補正データとを受けて、例えばPMOSトランジスタ220〜224等のドレーン電流の合計値が所定値となるように制御電圧Vcontを制御するために設けられている。
図9において、印刷データ入力端子Eに入力する印刷データがオン(このときの端子Eの入力レベルは“Low“レベル)であり、入力端子Sに入力する駆動オンオフ指令信号Sが“Low”レベルとなって駆動オンを指令しているとき、NOR回路227の出力は“High”レベルとなる。このとき、NAND230〜233の出力信号レベルは、補正データ入力端子Q0〜Q3の端子データに従ってVDD電位或は制御電圧Vcont電位となり、PMOSトランジスタ225とNMOSトランジスタ226とで構成されるインバータの出力は、制御電圧Vcont電位となっている。
PMOSトランジスタ224は、発光素子に主たる駆動電流を供給する主駆動トランジスタであり,PMOSトランジスタ220〜223は、発光素子の駆動電流をドット毎に調整して光量補正するための補助駆動トランジスタである。主駆動トランジスタ224は端子Eに入力する印刷データに従って駆動され、補助駆動トランジスタ220〜223は、227の出力が“High”レベルであるときに、マルチプレクサMUX96の出力Q0〜Q3の出力に従って選択的に駆動される。
後述するように、マルチプレクサMUX96の出力Q0〜Q3からは、各ドットを構成する個々の発光サイリスタ(ここでは発光サイリスタThy191とThy192)の発光ばらつきを補正するための奇数、偶数の補正データが、切替指令信号S1N,S2Nに従って順次出力される。
つまり、主駆動トランジスタ224と共に、補正データに従って補助駆動トランジスタ220〜223が選択的に駆動され、主駆動トランジスタ224のドレーン電流に、選択された補助駆動トランジスタの各ドレーン電流が加算された駆動電流が、端子DO96から発光サイリスタに供給される。PMOSトランジスタ220〜223が駆動されているとき、NAND回路230〜233の出力は“Low”レベル(即ち、ほぼ制御電圧Vcontに等しいレベル)にあるので、PMOSトランジスタ220〜223のゲート電位は、ほぼ制御電圧Vcontに等しくなる。
このとき、PMOSトランジスタ225はオフ状態にあり、NMOSトランジスタ226はオン状態にあって、PMOSトランジスタ224のゲート電位もまたほぼ制御電圧Vcontに等しくなる。従って、PMOSトランジスタ220〜224のドレーン電流値を、制御電圧Vcontにより一括して調整することができる。
更にこのとき、NAND回路230〜233は、電源VDDと制御電圧Vcontとを、それぞれ電源電位、グランド電位として動作しているので、その入力信号の電位も電源VDD電位とグランドとしての制御電圧Vcont電位に即したものであって良く、“Low”レベルは必ずしも0Vであることを必要としない。このため、図8で説明した構成によるマルチプレクサMX96を用いても支障なく動作させることができる。
図10は、図6に示す第1制御回路201の回路構成図である。
同図に示すように、第1制御回路201は、FF回路241〜245、NOR回路246、2入力のAND回路247,248、及び3入力のAND回路250〜253を備えている。また、制御回路201は、入力端子LOAD及びSTBと、書き込み制御信号出力端子W0〜W3及びイネーブル信号出力端子E1,E2を備えている。図6に示したように、ドライバIC101のSTB入力端子には印刷制御部10(図1)からの負論理のストローブ信号HD−STB−Nが入力され、該端子の入力信号はインバータ203により論理反転され、正論理のストローブ信号STB−Pとなる。この正論理のストローブ信号STB−Pは、図10に示す制御回路201内のFF回路241,242のクロック端子に入力されている。
一方、第1制御回路201のLOAD端子には図6に示すようにラッチ信号LOAD−P信号が入力され、該信号はFF回路241〜245のリセット端子に入力される。第1制御回路201の出力端子W0は、メモリMEM1〜MEM97の各端子W0に接続されている。同様に、第1制御回路201の出力端子W1、W2、W3は、それぞれメモリ回路MEM1〜MEM97の各端子W1、W2、W3にそれぞれ接続されている。
FF回路241,242と、NOR回路246とでリングカウンタ回路を構成している。このリングカウンタ回路は、ラッチ信号LOAD−Pが“Low”レベルのときリセットされ、インバータ203からのストローブ信号STB−Pの立ち上がりで動作する。FF回路241のデータ入力端子Dは、NOR回路246の出力端子に接続され、FF回路241のデータ出力端子Qは、FF回路242のデータ入力端子Dに接続されている。NOR回路246の2個の入力端子は、FF回路241,242のデータ出力端子Qにそれぞれ接続されている。
一方、FF回路244,245はジョンソンカウンタ回路を構成している。このカウンタ回路は、ラッチ信号LOAD−Pが“Low”レベルのときリセットされ、アンド回路247の出力の立ち上がりで動作する。FF回路244のデータ入力端子Dは、FF回路245の反転データ出力端子に接続されており、FF回路245のデータ入力端子Dは、FF回路211のデータ出力端子Qに接続されている。
AND回路250の3個の入力端子は、FF回路244,245の反転データ出力端子、及びFF回路242のデータ出力端子にそれぞれ接続され、AND回路250の出力は第1制御回路201の端子W0に接続される。AND回路251の3個の入力端子は、FF回路244の反転データ出力端子、FF回路245のデータ出力端子、及びFF回路242のデータ出力端子にそれぞれ接続され、AND回路251の出力は制御回路(CTRL)201の端子W1に接続される。
AND回路252の3個の入力端子は、FF回路244のデータ出力端子、FF回路2254のデータ出力端子、及びFF回路242のデータ出力端子にそれぞれ接続され、AND回路252の出力は制御回路(CTRL)201の端子W2に接続される。AND回路253の3個の入力端子は、FF回路244のデータ出力端子、FF回路245の反転データ出力端子、及びFF回路242のデータ出力端子にそれぞれ接続され、AND回路253の出力は制御回路(CTRL)201の端子W3に接続される。
AND回路253は、上記両カウンタのカウント値に従い、補正データのビットb3に対する書き込み制御信号b3−WR(W3)を生成する。同様に、AND回路252,251,250は、上記両カウンタ回路のカウント値に従い、それぞれ補正データのビットb2、b1、b0に対する書き込み制御信号b2−WR(W2)、b1−WR(W1)、b0−WR(W0)を生成する。
FF回路243は、ラッチ信号LOAD−Pが“Low”レベルのときリセットされ、FF回路241の出力信号の立ち上がりで動作する。FF回路211のデータ入力端子Dは、その反転データ出力端子に接続されている。アンド回路247の一方の入力端子はFF回路243のデータ出力端子に接続され、アンド回路248の一方の入力端子はFF回路241の反転データ出力端子に接続され、アンド回路247,248の各他方の入力端子には、共にラッチ信号LOAD−Pが入力される。アンド回路247の出力端子はFF回路244,245の各クロック端子及びイネーブル信号出力端子E1に接続され、アンド回路248の出力端子はイネーブル信号出力端子E2に接続されている。
以上の構成において、制御回路201は、後述するように、ラッチ信号HD−LOADが“High”レベルのとき、ストローブ信号STBの反転動作によって、書き込み制御信号W3,W2,W1,W0を、イネーブル信号出力端子E1,E2に同期する所定のタイミングで、順次所定の期間だけ“High”レベルとするように動作する。詳細は図14で説明する。
図11は、図6に示す第2制御回路208の回路構成図である。
同図に示すように、第2制御回路208は、FF回路261、バッファ回路262,263、入力端子HSYNC及びLOAD、及び切替指令信号出力端子S2N,S1Nを備えている。FF回路261のクロック端子はLOAD端子と接続されてLOAD‐P信号が入力され、負論理のリセット端子(R)はHSYNC端子と接続されてHSYNC‐N信号が入力される。またデータ入力端子Dは自身の反転データ出力端子QNと接続され、データ出力端子Qはバッファ回路263を介して切替指令信号出力端子S2Nに接続され、反転データ出力端子QNはバッファ回路262を介して切替指令信号出力端子S1Nに接続されている。これらの切替指令信号S1N,S2Nは、図6に示すマルチプレクサ回路MUX1〜96に対するデータ選択指令信号として出力されている。
図12は、図2、図6に示すように、ドライバIC101〜126毎に1回路ずつ設けられている制御電圧発生回路210の回路構成図である。これらの制御電圧発生回路(ADJ)210は、全て同一の構成を持つものであるため、ドライバIC101、即ち図6に示す制御電圧発生回路(ADJ)210を例にして説明する。
同図に示すように、制御電圧発生回路210は、マルチプレクサ回路273、演算増幅器271、PMOSトランジスタ272、及び抵抗R0〜R15を有する。PMOSトランジスタ272のソースは電源VDDに接続され、ゲート端子は演算増幅器271の出力端子に接続されると共に端子Vに接続される。PMOSトランジスタ272は、各ドライバ(DRV)のPMOSトランジスタ220〜224(図9にドライバDV96の例を示す)と、ゲート長があい等しく構成されている。
また、PMOSトランジスタ220〜224の動作時における各ゲートには、PMOSトランジスタ272のゲート電圧と同一の制御電圧Vcontが印加されるためゲート・ソース間電圧が相等しくされて、PMOSトランジスタ220〜224とPMOSトランジスタ272とは、カレントミラーの関係が構成される。即ち、PMOSトランジスタ272のドレーン電流Irefを制御することによって、PMOSトランジスタ220〜224の駆動電流を一括して調整することができる。
一方、演算増幅器271の反転入力端子はVREF端子に接続されて、図示しない基準電圧発生回路から出力される基準電圧Vrefが印加され、演算増幅器271の非反転入力端子は後述するマルチプレクサ回路273の出力端子Yに接続され、演算増幅器271の出力端子はPMOSトランジスタ272のゲート端子に接続されると共に、各ドライバDV1〜DV96のV端子に接続された出力端子Vに接続されている(図6参照)。
抵抗R0〜R15は直列に接続され、抵抗R15の最端部がPMOSトランジスタ272のドレーンに接続され、抵抗R0の最端部がグランドに接続されている。またマルチプレクサ回路273の端子P15が抵抗R0とR1との接続部に、端子P14が抵抗R1とR2との接続部に接続されている。同様にして、各抵抗の接続部が端子P13〜端子P1に接続され、端子P0がPMOSトランジスタ272のドレーンに接続されている。
マルチプレクサ回路273の、アナログ電圧が入力される16個の入力端子P0〜P15と、アナログ電圧を出力する出力端子Yとは、4個のデータ入力端子S3〜S0に入力される4ビットの論理信号であるチップ補正データS3〜S0により設定される16通りの信号論理の組み合わせによって、前記端子P0〜P15のうちの何れかの端子が選択され、選択された端子と出力端子Yとが直結され、ドレーン電流Irefが設定される。
演算増幅器271、抵抗列R0〜R15、及びPMOSトランジスタ272でフィードバック制御回路を構成しており、演算増幅器271の非反転入力端子の電位が基準電圧Vrefと略等しくなるように動作する。このため、PMOSトランジスタ272のドレーン電流Irefは、抵抗R0〜R15のうち、マルチプレクサ回路273により選択される端子とグランド間に直列接続されている合成抵抗値と、演算増幅器271に入力される基準電圧Vrefとによって決定される。
更に具体的に説明すると、入力端子S3〜S0の論理値が“1111”となっていて、補正状態が最大と指令されているとき、マルチプレクサ回路273の端子P15とY出力端子とが導通状態とされ、端子P15の電位が前記Vref電位と略等しくなるように制御される。この結果、前記したPMOSトランジスタ272のドレーン電流Irefは
Iref=Vref/R00
となる。
一方、入力端子S3〜S0の論理値が“0111”となっていて、補正状態の中心が指令されているとき、マルチプレクサ回路273の端子P7とY出力端子とが導通状態とされて端子P7の電位が前記Vref電位と略等しくなるように制御される。この結果、PMOSトランジスタ222のドレーン電流Irefは、
Iref=Vref/(R00+R01+・・+R07+R08)
となる。
更に、入力端子S3〜S0の論理値が“0000”となっていて、補正状態の最小が指令されているとき、マルチプレクサ回路273の端子P0とY出力端子とが導通状態とされ、端子P0の電位が前記Vref電位と略等しくなるように制御される。この結果、PMOSトランジスタ272のドレーン電流Irefは、
Iref=Vref/(R00+R01+・・+R14+R15)
となる。
前記したように、PMOSトランジスタ272は、各ドライバのPMOSトランジスタ220〜224(図9にドライバDV96の例を示す)と、ゲート長があい等しく構成され、これらトランジスタは飽和領域で動作するように制御されているので、PMOSトランジスタ272と各PMOSトランジスタ220〜224とはカレントミラーの関係となり、PMOSトランジスタ200〜204は、オンとなるとき、PMOSトランジスタ272のドレーン電流Irefに比例し、且つ重みづけされたドレーン電流を生じる。
この結果、マルチプレクサ回路273の入力端子S3〜S0に与える論理値状態により、前記Iref電流を16段階に調整することができ、各ドライバDV1〜DV96のPMOSトランジスタ220〜224(図9にドライバDV96の例を示す)のドレーン電流もまた16段階に調整可能とすることができる。
図13は、図6に示すゲート駆動分離回路GDA1〜GDA96,GDB1〜GDB96の構成の説明に供する図である。これらのゲート駆動分離回路は、全て同一の構成を持つものであるため、ゲート駆動分離回路GDB96を例にして説明する。
図13(a)はゲート駆動分離回路GDB96の回路図シンボルであり、同図(b)はその回路構成を示し、同図(c)はその回路を集積回路として実現したときの当該箇所のチップ断面の構成を示しており、同図(d)はゲート駆動分離回路GDB96の特性を示すグラフである。
図13(b)に示すように、ゲート駆動分離回路GDB96はPMOSトランジスタであって、そのゲート端子はグランドに接続され、第1端子(1)と第2端子(2)を備える。ゲート駆動分離回路(PMOSトランジスタ)GDB96において、第1端子(1)や第2端子(2)は、一般にソース端子やドレーン端子と呼ばれるものであるが、ここでの動作においては、ゲート駆動分離回路(PMOSトランジスタ)GDB96の第1端子(1)はソース端子やドレーン端子としての機能を合わせ備えている。
図13(b)に示すように、矢印にて示される電流I1が生じるとき、ゲート駆動分離回路(PMOSトランジスタ)GDB96の第2端子(2)はソース端子として機能し、その第1端子(1)はドレーン端子として機能する。同様にして電流I2が生じるとき、ゲート駆動分離回路(PMOSトランジスタ)GDB96の第1端子(1)はソース端子として機能し、その第2端子(2)はドレーン端子として機能する。
図13(c)において、P型不純物を含んだチップ基材(Psub)321には、ドライバIC101等が形成されており、チップ基材(Psub)321上の所定箇所には、N型不純物を注入してNウェル領域(Nwell)322が形成され、Nウェル領域Nwell322内には、P型不純物を注入して形成したP型領域323,324、N型不純物を拡散させて形成したN型領域325が存在し、ポリシリコンからなるMOSトランジスタのゲート電極326が形成されている。
尚、図13(c)においては、図を簡略化するため、ゲート酸化膜、コンタクトホールやパッシベーション保護膜等は省略し、各不純物拡散領域と接続されるメタル配線も省略している。P型拡散層323はゲート駆動分離回路(PMOSトランジスタ)GDB96の第1端子(1)と接続され、P型拡散層324はゲート駆動分離回路(PMOSトランジスタ)GDB96の第2端子(2)と接続され、Nウェル領域322と接続されるN型拡散層325はゲート駆動分離回路(PMOSトランジスタ)GDB96のサブストレート端子となっており、図13(b)に示すように電源VDDと接続されている。
図13(d)は、図13(b)に示したゲート駆動分離回路(PMOSトランジスタ)GDB96の特性グラフを示している。同グラフの横軸は、図13(b)に示す第1端子(1)と第2端子(2)間に印加される電圧(V)を示している。縦軸は第1端子(1)と第2端子(2)間に流れる電流(I)を示しており、同特性グラフの、第1象限の縦軸を電流I1とし、第4象限の縦軸を電流I2としている。尚、このとき図13(d)の第1象限のグラフをIoLとし、第2象限のグラフをIoHとして図中に記載している。
図13(d)の特性グラフから明らかなように、同図(b)において、電流I1を流そうとするとき第1端子(1)と第2端子(2)間に印加される電圧の絶対値がVtを越えると電流が流れる特性となっている。ここでVtはPMOSトランジスタの閾値電圧であり、典型的な設計例では略1.5Vとなるように設定される。
また、同図(b)において、電流I2を流そうとするとき、ゲート駆動分離回路(PMOSトランジスタ)GDB96の第2端子(2)の電位をVDD電位とし、第1端子(1)の電位を略VDD電位とした場合には、第2端子から流れ出る電流I2は略ゼロとなり、ここから第2端子(2)の電位を降下すると、この電位降下に従って、流れ出る電流I2の絶対値は増加するものの、やがて所定値Idに飽和する、定電流性の特性を示す。
図14は、画像形成装置の電源投入後に、プリントヘッド19に対して行われる補正データ転送処理と、その後に行われる印刷データ転送のようすを概略的に示すタイミングチャートである。尚、同図中のA部〜X部、a部〜d部は、各波形の発生タイミング位置を示す案内番号である。
補正データの転送開始に先立ち、続いて送られる転送データが補正データであることを示すため、ラッチ信号HD‐LOAD信号を“High”レベルとする(I部)。次いで、奇数番目に属するドットについて1ドット当たり4ビットからなる補正データのうち、先ずbit3のものをデータ入力端子DATAI0、DATAI1、DATAI2、DATAI3(図6)から、クロック信号HD‐CLKに同期して入力し、図6に示すFF回路FFA1〜FFD25で構成されるシフトレジスタ中へシフト入力する。
このシフト入力が完了すると、A部に示すようにストローブ信号HD‐STB‐Nが3パルス入力され、図10に示した第1制御回路201が動作する。
図14に示す出力信号Q1,Q2は、図10に示す第1制御回路201のFF回路241,242の出力信号であり、同様に、出力信号Q3,Q4,Q5は、それぞれFF回路243,244,245の出力信号である。また図14に示すイネーブル信号E1,E2は、それぞれ図10に示す第1制御回路201のAND回路247,248の出力信号であり、図14に示す書き込み制御信号W0〜W3は、それぞれ図10に示す第1制御回路201のAND回路250〜253の出力信号である。更に図14に示す切替指令信号出力端子S1N,S2Nは、それぞれ図11に示すバッファ回路262,263の出力信号である。
図14のA部において、ラッチ信号HD‐STB‐Nの1パルス目が入力されるとJ部に示すように出力信号Q1にパルスが発生し、ついでラッチ信号HDHD‐STB‐Nの2パルス目が入力されるとK部に示すように出力信号Q2にパルスが発生する。また出力信号Q1が立ち上がるごとに出力信号Q3は状態反転し、L部では出力信号Q3が“High”レベルに遷移している。
出力信号Q3の遷移に伴って、イネーブル信号E1,E2の状態が遷移する。イネーブル信号E1の立ち上がりエッジに引き続き、M部のように出力信号Q4が立ち上がり、イネーブル信号E1の次の立ち上がりで出力信号Q5信号が立ち上がり、更にイネーブル信号E1の次の立ち上がりで出力信号Q4が立ち下がり、イネーブル信号E1の次の立ち上がりで出力信号Q5が立ち下がる。
書き込み制御信号W3〜W0は、出力信号Q2のパルス発生に引き続いてパルスを発生するが、O部、P部のように先ず書き込み制御信号W3が2回連続してパルスを発生し、ついで書き込み制御信号W2,W1,W0の各信号においても同様に2ずつパルスを発生する。書き込み制御信号W3〜W0の各パルスによって、図7に示す回路構成のメモリMEM1〜96にデータの書き込みが行われるが、1パルス目では奇数ドット用のメモリ素子へのデータ書き込みが行われ、2パルス目では偶数ドット用のメモリ素子へのデータ書き込みが行われる。
上記した各書き込み制御信号W3〜W0の1パルス目は、それぞれA部、C部、E部、G部にて入力されたラッチ信号HD‐STB‐N信号をもとに発生されるものであり、同2パルス目は、それぞれB部、D部、F部、H部にて入力されたラッチ信号HD‐STB‐N信号をもとに発生されるものである。以上の過程をへて、補正データのbit3〜bit0の全てのデータ書き込みが完了すると、Q部のようにラッチ信号HD‐LOADを“Low”レベルとして、印刷データの転送が可能な状態に遷移する。
尚、A部〜H部において転送される補正データの内容については、後で詳細に説明する。
1ラインの印刷開始に際し、引き続くデータ転送が奇数ドットのものであることを示すため主走査同期信号HD‐HSYNC‐Nの負論理パルスが入力される(R部)。次いで、U部で奇数ドットの印刷データが転送され、S部で発生するラッチ信号HD‐LOADのパルスにより、シフトレジスタ(FF回路FFA1〜FFD1・・・FF回路FFA24〜FFD24)にシフト入力された印刷データをラッチ回路(ラッチLTA1〜LTD1、LTA2〜LTD2、・・・、LTA24〜LTD24)でラッチする。
更に、W部のようにHD‐STB‐N信号が“Low”レベルへと遷移すると、駆動オンオフ指令信号S(DRVON−N)が“Low”レベルとなり、ドライバDV96を示す図9で説明したように、発光素子の発光駆動が可能となる。従って、印刷データEがオン(“Low”レベル)であって、W部のようにHD‐STB‐N信号が“Low”レベルとなる期間、各ドットの発光サイリスタは発光駆動されることになる。
同様に、V部で偶数ドットの印刷データが転送され、T部で発生するラッチ信号HD‐LOADのパルスにより、シフトレジスタ(FFA1〜FFD1・・・FFA24〜FFD24)にシフト入力されたデータをラッチ回路(ラッチLTA1〜LTD1、LTA2〜LTD2、・・・、LTA24〜LTD24)でラッチする。
そして、X部のようにHD‐STB‐N信号が“Low”レベルへと遷移すると、駆動オンオフ指令信号S(DRVON−N)が“Low”レベルとなり、発光素子の発光駆動が可能となる。従って、印刷データEがオン(“Low”レベル)であって、X部のようにHD‐STB‐N信号が“Low”レベルとなる期間、各ドットの発光サイリスタは発光駆動されることになる。
更にこのとき、切替指令信号S1Nがゲート駆動分離回路GDA1〜GDA96を介してG1信号となって、奇数番目の発光サイリスタを選択的に駆動し、切替指令信号S2Nがゲート駆動分離回路GDB1〜GDB96を介してG2信号となって、偶数番目の発光サイリスタを選択的に駆動する。従って、W部では、“Low”レベル状態にある(a部)G1信号によって奇数番目の発光サイリスタが選択されて駆動され、X部では、“Low”レベル状態にある(b部)G2信号によって偶数番目の発光サイリスタが選択されて駆動される。
図15は、画像形成装置が行う印刷動作時の各部の動作タイミングを示すタイミングチャートであり、図14におけるR部以降の動作タイミングをより詳細に示すものである。尚、同図中のA部〜T部は、各波形の発生タイミング位置を示す案内番号である。
発光素子(ここでは発光サイリスタ)の時分割駆動による1ラインの印刷開始に先立ち、主走査同期信号HD‐HSYNC‐Nが入力される(A部)。続くB部において奇数ドットの印刷データ(0dd印刷データ)を転送するため、クロック信号HD‐CLKに同期してデータ信号HD‐DATA3〜0が入力される。
尚、本プリントヘッド19においては26個のドライバIC101〜126がカスケードに接続され、各IC毎に96個の発光素子の駆動端子DO1〜DO96を備えており、1パルスのクロック信号により4画素分の印刷データが一度に転送される。このため奇数ドット又は偶数ドット用の印刷データを一度に転送するのに必要なクロックパルス数は
(96/4)×26=24×26=624
である。
B部において、1ラインデータの内の奇数ドット用の印刷データの転送が完了すると、C部に示すように、ラッチ信号HD‐LOADのパルスが入力され、シフトレジスタ(FF回路FFA1〜FFD1・・・FF回路FFA24〜FFD24)にシフト入力された印刷データがラッチ回路(ラッチLTA1〜LTD1、LTA2〜LTD2、・・・、LTA24〜LTD24)にラッチされる。このとき、奇数番目の発光サイリスタを選択駆動するため、ゲート駆動信号G1が“Low”レベルとされ(L部)、ゲート駆動信号G2が“High”レベルとされる(N部)。
次いで発光素子駆動を指示するため、ストローブ信号HD−STB−Nが“Low”レベルへと遷移し(D部)、ドライバIC101〜126の端子DO1〜DO96は印刷データによる指令値(論理値が1又は0)に基づき選択的にオン状態となって駆動電流が出力される(Q部)。このとき駆動されるのは、前記G1信号がゲート端子に接続される奇数ドットの発光サイリスタであって、図2における発光サイリスタThy1、・・・Thy191等である。
例えば図2において、このときドライバIC101の端子DO96から駆動電流が流し出された場合、発光サイリスタThy191のアノード、カソード端子を経てグランドへと至る電流経路が形成されることになる。一方、発光サイリスタThy192は、ゲート端子のレベルが“High”レベルとなっていてオフ状態とされ、ドライバIC101の端子DO96からの駆動電流は流れず消灯状態のままとされる。この結果、奇数ドットの発光サイリスタThy191が発光し、感光体ドラム(例えば後述する図35において5303aが相当する)上に静電潜像を形成することで印刷ドットを発生する。次いでF部において、負論理のストローブ信号HD‐STB‐Nが“High”レベルとなると、ドライバIC101〜126による駆動がオフとなって発光サイリスタはすべて消灯となる(R部)。
続いて偶数ドットの発光サイリスタの発光が行われる。E部において偶数ドットの印刷データ(Even印刷データ)を転送するため、クロック信号HD‐CLKに同期してデータ信号HD‐DATA3〜0が入力される。この時、上記した奇数ドットの印刷データの転送時と同様に、一度のデータ転送に必要なクロックパルス数は624である。
E部において、1ラインデータの内の偶数ドット用の印刷データの転送が完了すると、G部に示すように、ラッチ信号HD‐LOADのパルスが入力され、シフトレジスタ(FF回路FFA1〜FFD1・・・FF回路FFA24〜FFD24)にシフト入力された印刷データがラッチ回路(ラッチLTA1〜LTD1、LTA2〜LTD2、・・・、LTA24〜LTD24)にラッチされる。このとき、偶数番目の発光サイリスタを選択駆動するため、ゲート駆動信号G1が“High”レベルとされ(M部)、ゲート駆動信号G2が“Low”レベルとなる(O部)。
次いで発光素子駆動を指示するため、ストローブ信号HD−STB−Nが“Low”レベルへと遷移し(H部)、ドライバIC101〜126の端子DO1〜DO96は印刷データによる指令値(論理値が1又は0)に基づき選択的にオン状態となって駆動電流が出力される(S部)。このとき駆動されるのは、上記G2信号がゲート端子に接続される偶数ドットの発光サイリスタであって、図2における発光サイリスタThy2、・・・Thy192等である。
例えば図2において、このときドライバIC101の端子DO96から駆動電流が流し出された場合、発光サイリスタThy192のアノード、カソード端子を経てグランドへと至る電流経路が形成されることになる。一方、発光サイリスタThy191は、ゲート端子のレベルが“High”レベルとなっていてオフ状態とされ、ドライバIC101の端子DO96からの駆動電流は流れず消灯状態のままとされる。この結果、偶数ドットの発光サイリスタThy192が発光し、感光体ドラム上に静電潜像を形成することで印刷ドットを発生する。次いでJ部において、負論理のストローブ信号HD‐STB‐Nが“High”レベルとなると、ドライバIC101〜126による駆動がオフとなって発光サイリスタはすべて消灯となる(T部)。
以上のように、発光素子列のうち、奇数番目の素子と偶数番目の素子とを順に、時分割に駆動することで1ライン分の発光素子を駆動することができる。
図16は、図14におけるA,B部の詳細図である。但し、簡単のため、図14では、26個あるドライバIC101〜126の内の一つ、たとえば図6に示すドライバIC101に入力される印刷データのみを記している。従って、実際には、奇数ドット用の印刷データ及び偶数ドット用の印刷データは、前記したようにそれぞれ(24×26=624)のクロックパルスで取り込まれる。同様に、図17は図14におけるC,D部の詳細図であり、図17は図14におけるE,F部の詳細図であり、図18は図14におけるG,H部の詳細図である。
図16〜図19において、
“DUMMY”で示すデータは、ダミーデータである。
“Chip−b(n)”で示すデータは、メモリ97にメモリされるチップ補正データのbit(n)(0〜3)のビット値である。
“DOT(m)−b(n)”で示すデータは、m(mは1〜192)番目のドットの補正データのbit(n)(nは0〜3)のビット値である。
図16に示すA部において、図6に示す24段のシフトレジスタ回路(FFA1〜FFD24)は、それぞれ対応する奇数ドット用の補正データ、例えばFF回路FFA24がDOT1−b3のデータを保持し、FF回路FFD1がDOT191−b3のデータを保持する。更にこの奇数ドット用の補正データの取り込み時には、FFD25がChip−b3のデータを保持する。そしてこれらのデータは、続いて発生する書き込み制御信号W3のパルス1によって、それぞれ対応するメモリMEM1〜96の奇数ドットのビット3用のメモリ素子へ書き込まれる。尚、奇数ドット用の補正データ取り込み時には、同時にメモリMEM97による、チップ補正データのChip−b3の書き込みも行われる。
尚、セレクタ回路207は、選択入力端子Sに入力するイネーブル信号E2によって、奇数ドット用の補正データを転送時には、各ドライバICのFFD25がChip−b3のデータを保持できるように、入力端子B3〜B0への入力データを選択して出力し、偶数ドット用の補正データを転送時には、その必要がないので、入力端子A3〜A0への入力データを選択して出力する。
同様に、図16に示すB部において、図6に示す24段のシフトレジスタ回路(FFA1〜FFD24)は、それぞれ対応する偶数ドット用の補正データ、例えばFF回路FFA24がDOT2−b3のデータを保持し、FF回路FFD1がDOT192−b3のデータを保持する。そしてこれらのデータは、続いて発生する書き込み制御信号W3のパルス2によって、それぞれ対応するメモリ1〜96の偶数ドットのビット3用のメモリ素子へ書き込まれる。
同様に、図17に示すC部において、図6に示す24段のシフトレジスタ回路(FFA1〜FFD24)は、それぞれ対応する奇数ドット用の補正データ、例えばFF回路FFA24がDOT1−b2のデータを保持し、FF回路FFD1がDOT191−b2のデータを保持する。更にこの奇数ドット用の補正データの取り込み時には、FFD25がChip−b2のデータを保持する。そしてこれらのデータは、続いて発生する書き込み制御信号W2のパルス3によって、それぞれ対応するメモリMEM1〜96の奇数ドットのビット2用のメモリ素子へ書き込まれる。尚、この奇数ドット用の補正データ取り込み時には、同時にメモリMEM97による、チップ補正データのChip−b2の書き込みも行われる。
同様に、図17に示すD部において、図6に示す24段のシフトレジスタ回路(FFA1〜FFD24)は、それぞれ対応する偶数ドット用の補正データ、例えばFF回路FFA24がDOT2−b2のデータを保持し、FF回路FFD1がDOT192−b2のデータを保持する。そしてこれらのデータは、続いて発生する書き込み制御信号W2のパルス4によって、それぞれ対応するメモリ1〜96の偶数ドットのビット2用のメモリ素子へ書き込まれる。
同様に、図18に示すE部において、図6に示す24段のシフトレジスタ回路(FFA1〜FFD24)は、それぞれ対応する奇数ドット用の補正データ、例えばFF回路FFA24がDOT1−b1のデータを保持し、FF回路FFD1がDOT191−b1のデータを保持する。更にこの奇数ドット用の補正データの取り込み時には、FFD25がChip−b1のデータを保持する。そしてこれらのデータは、続いて発生する書き込み制御信号W1のパルス5によって、それぞれ対応するメモリMEM1〜96の奇数ドットのビット1用のメモリ素子へ書き込まれる。尚、この奇数ドット用の補正データ取り込み時には、同時にメモリMEM97による、チップ補正データのChip−b1の書き込みも行われる。
同様に、図18に示すF部において、図6に示す24段のシフトレジスタ回路(FFA1〜FFD24)は、それぞれ対応する偶数ドット用の補正データ、例えばFF回路FFA24がDOT2−b1のデータを保持し、FF回路FFD1がDOT192−b1のデータを保持する。そしてこれらのデータは、続いて発生する書き込み制御信号W1のパルス6によって、それぞれ対応するメモリ1〜96の偶数ドットのビット1用のメモリ素子へ書き込まれる。
同様に、図19に示すG部において、図6に示す24段のシフトレジスタ回路(FFA1〜FFD24)は、それぞれ対応する奇数ドット用の補正データ、例えばFF回路FFA24がDOT1−b0のデータを保持し、FF回路FFD1がDOT191−b0のデータを保持する。更にこの奇数ドット用の補正データの取り込み時には、FFD25がChip−b0のデータを保持する。そしてこれらのデータは、続いて発生する書き込み制御信号W0のパルス7によって、それぞれ対応するメモリMEM1〜96の奇数ドットのビット0用のメモリ素子へ書き込まれる。尚、この奇数ドット用の補正データ取り込み時には、同時にメモリMEM97による、チップ補正データのChip−b0の書き込みも行われる。
同様に、図19に示すH部において、図6に示す24段のシフトレジスタ回路(FFA1〜FFD24)は、それぞれ対応する偶数ドット用の補正データ、例えばFF回路FFA24がDOT2−b0のデータを保持し、FF回路FFD1がDOT192−b0のデータを保持する。そしてこれらのデータは、続いて発生する書き込み制御信号W0のパルス8によって、それぞれ対応するメモリ1〜96の偶数ドットのビット0用のメモリ素子へ書き込まれる。
尚、上記した説明では、ドライバIC101が使用する補正データのみを対象にして、補正データの書き込み処理について説明したが、前記したように実際には、ドライバIC101〜126が使用する補正データを書き込み処理するものである。また、メモリMEM1〜96が書き込んだ補正データ、及びメモリMEM97が書き込んだチップ補正データに基づいて行われる発光サイリスタの発光駆動については、前記した通りである。
次に、図6、図13等で説明した、発光サイリスタThy1〜Thy192のゲート端子駆動用のゲート駆動分離回路GDA1〜GDA96、GDB1〜GDB96の動作、特に発光サイリスタのターンオン過程での動作について説明する。
図20(a)は、共通バッファ回路301と、破線で囲んで示すゲート駆動分離回路GDA1と、発光サイリスタThy1の接続関係を示す図であり、図20(b)は、発光サイリスタThy1の内部構成を等価回路で示している。尚、ゲート駆動分離回路GDA1は、PMOSトランジスタで構成され、図13で説明したゲート駆動分離回路GDB96と全く同じ構成、特性のものであり、発光サイリスタThy1は、PNPトランジスタ141とNPNトランジスタ142で構成され、図3で説明した発光サイリスタThy192と全く同じ構成、特性のものである。
図20(b)に示すように、ゲート駆動分離回路GDA1はPMOSトランジスタで構成され、発光サイリスタThy1は、PNPトランジスタ141とNPNトランジスタ142で構成されている。同図中において、IbはPNPトランジスタ141のベース電流であり、Igは発光サイリスタThy1のゲート電流であり、Vgはそのゲート端子の端子電圧であり、Ikはカソード電流である。
ここでは、発光サイリスタThy1のターンオン過程を説明するため、共通バッファ回路301の入力を“Low”レベルとしている。次いで、発光サイリスタThy1を駆動するためにドライバDV1のアノード駆動端子DO1から電流が供給され、アノード電流Iaが流れる。
このとき共通バッファ回路301の出力は“Low”レベルとなり、発光サイリスタThy1のアノード端子から注入された電流IaはPNPトランジスタ141のエミッタ・ベース間をIbとして流れ、更に発光サイリスタThy1のゲート電流Igとしてゲート駆動分離回路(PMOSトランジスタ)GDA1の第2端子、第1端子間を流れて、共通バッファ回路301の出力端子に流れ込むことになる。
図13で説明したように、ゲート駆動分離回路(PMOSトランジスタ)GDA1のサブストレート端子は電源VDDに接続されており、この端子には電流が流れないため、ゲート駆動分離回路GDA1(PMOSトランジスタ)の第2端子から流入した電流は第1端子から流れ出る。
このとき、共通バッファ回路301の出力は“Low”レベルであり、その電位はグランド電位に略等しい0Vであるので、ゲート駆動分離回路(PMOSトランジスタ)GDA1の第1端子はドレーン端子として機能し、その第2端子はソース端子として機能し、そのゲート・ソース間電圧が閾値電圧Vt(図13(d)参照)を超えるときに電流Igを生じる。
図20(b)において、このときのゲート電流Igは、発光サイリスタThy1の内部にあるPNPトランジスタ141のベース電流Ibに相当するものであり、このベース電流Ibが流れることでPNPトランジスタ141がオン状態への移行を開始して、そのコレクタにコレクタ電流を生じる。このコレクタ電流は、NPNトランジスタ142のベース電流となり、NPNトランジスタ142をオン状態へと移行させる。これにより生じたコレクタ電流は、PNPトランジスタ141のベース電流Ibを増強し、PNPトランジスタ141のオン状態への移行を加速させることになる。
一方、NPNトランジスタ142が完全にオン状態に移行した後には、そのコレクタ・エミッタ間電圧Vce1は低下し、ゲート駆動分離回路(PMOSトランジスタ)GDA1の前記した閾値電圧Vtよりも小さい電位となる。前記したように、閾値電圧Vtの典型例は1.5Vであり、これに対して発光サイリスタThy1のゲート・カソード間電圧、即ちNPNトランジスタ142のコレクタ・エミッタ間電圧Vce1は略0.2Vである。
この結果、発光サイリスタThy1のゲート端子からゲート駆動分離回路(PMOSトランジスタ)GDA1の第2端子の側に流れる電流Igは略ゼロとなって、発光サイリスタThy1のカソード端子にはアノード電流Iaと略等しいカソード電流Ikが流れることになり、発光サイリスタThy1は完全にオン状態となる。
図20(c)は、上記した発光サイリスタThy1のターンオン過程を説明するグラフであって、横軸はアノード電流Iaを示し、縦軸はアノード端子電位Vaを示している。発光サイリスタThy1の消灯状態においてアノード電流Iaは略ゼロであり、ドライバDV1のアノード駆動端子DO1から駆動電流が供給されて、グラフの原点(0,0)の状態にある発光サイリスタThy1のターンオンが開始すると、同図(c)に矢印で示したようにアノード電位Vaが上昇して電位値Vpに到達する。
この電位値Vpは、ゲート駆動分離回路(PMOSトランジスタ)GDA1の閾値電圧VtとPNPトランジスタ141のエミッタ・ベース間電圧Vbeの加算値に対応するものであり、この電圧が順方向に印加されることでゲート電流Ig(これはPNPトランジスタ141のベース電流Ibに等しい)を生じる。図20(c)において、丸印を付して示すポイント(Ip,Vp)は、発光サイリスタThy1のオフ領域(A)とオン遷移領域(B)との境目に相当している。
次いで、アノード電流Iaが増加するに伴いアノード電位Vaは低下していき、丸印を付して示すポイント(Iv,Vv)に到達する。このポイントは、発光サイリスタThy1のオン遷移領域(B)とオン領域(C)との境目に相当し、このときのゲート電流Igは略ゼロにまで低下していて、ゲート駆動分離回路(PMOSトランジスタ)GDA1は、実質的に発光サイリスタThy1から切り離されたのと等価な状態にある。
更にアノード電流Iaが増加するに伴い、アノード電位Vaは増加していき、丸印を付して示すポイント(I1,V1)に到達する。このポイントは発光サイリスタの発光駆動の最終動作ポイントであり、ドライバDV1のアノード駆動端子DO1から供給される最大流量が調整されたアノード電流Iaに応じた所定の発光パワーで発光駆動がなされる。
図20(c)を用いて発光サイリスタThy1のターンオン過程を説明したが、後述するように、ゲート駆動分離回路(PMOSトランジスタ)GDA1を適用することにより、オン状態にある発光サイリスタThy1からのゲート電流の流れ込みを防止して、アノード電流Iaとカソード電流Ikを略等しくしたオン状態駆動とすることができるため、前記したように調整されたアノード電流Iaを流すことにより、それに応じた発光パワーを得ることができる。
以上の動作は、共通バッファ回路301の出力と発光サイリスタThy1のゲート端子間にゲート駆動分離回路(PMOSトランジスタ)GDA1を介在させたことによって初めて実現される動作である。
通常のCMOS出力回路で構成した共通バッファ回路301と発光サイリスタThy1のゲート端子とを直結した場合には、その“Low”レベル出力は略0V電位にまで降下してしまうので、PNPトランジスタ141のベース電流は共通バッファ回路301の側にIgとして流れ続け、その分NPNトランジスタ142のコレクタ電流が減少し、発光サイリスタThy1のカソード電流Ikも減少してしまう。その結果、発光サイリスタThy1の発光出力が変動して所望状態で動作させることができず、発光サイリスタを用いてプリントヘッドを実現することを困難にしていた。
それに対し、上記したように図20に示したゲート駆動分離回路(PMOSトランジスタ)GDA1を適用した構成においては、上記した不具合が生じることが無くなり、印刷品位に優れたプリンタ装置を実現することが可能となる。
次に、共通バッファ回路301によって、複数の発光サイリスタを同時に点灯する際のゲート駆動分離回路(PMOSトランジスタ)GDA1等の働きについて説明する。図21は、この説明に供する図であり、同図(a)は、図6におけるゲート駆動分離回路GDA1,GDA2と、図2において示した発光サイリスタThy1,Thy3の接続関係を示す図であり、同図(b)は、発光サイリスタThy1,Thy3の内部構成を等価回路で示している。
図21では、説明を簡略化するため、2個の発光サイリスタThy1,Thy3について示しているが、実際には、図2及び図6に示す構成から明らかなように、奇数トッド用の同一構成の発光サイリスタThy1,Thy3・・・Thy191の各ゲート端子が、対応して配置されたゲート駆動分離回路(PMOSトランジスタ)GDA1〜GDA96を介して全て共通バッファ回路301の出力端子に接続されている。
図21において、共通バッファ回路301は、発光サイリスタThy1,Thy3のオン制御するためにその入力が“Low”レベルとされ、同図においてはグランドに接続して示している。共通バッファ回路301の出力は、共通ゲート配線g1と接続され、共通ゲート配線g1とゲート駆動分離回路(PMOSトランジスタ)GDA1,GDA2の第1端子とが接続されている。また、ゲート駆動分離回路GDA1,GDA2の第2端子はそれぞれサイリスタThy1,Thy3のゲート端子と個別に接続されている。
尚、ゲート駆動分離回路GDA1,GDA2は、PMOSトランジスタで構成され、発光サイリスタThy1はPNPトランジスタ141aとNPNトランジスタ142aで構成され、発光サイリスタThy3はPNPトランジスタ141bとNPNトランジスタ142bで構成されている。更にVce1は、NPNトランジスタ142aのコレクタ・エミッタ間電圧であり、Vce3は、NPNトランジスタ142bのコレクタ・エミッタ間電圧である。
図21(b)は、複数の発光サイリスタ(ここではThy1,Thy3のみ示す)が同時にオンしている状況を示している。図20の説明で記述したように、本実施の形態におけるゲート駆動分離回路GDA1においては、発光サイリスタThy1のターンオン指令のため、その第2端子の電圧を“Low”レベルとして発光サイリスタThy1をオンさせた後には、そのゲート端子からゲート駆動分離回路GDA1に向かって流れ込む電流を略ゼロとすることができる。
このため図21(b)において、ゲート配線g1に接続される共通バッファ回路301の影響は除外して考えることができ、同図(b)においては共通バッファ回路301を破線にて描いている。いま、発光サイリスタThy1がオンしていて、そのアノード端子から駆動電流Ia1が流入しているとする。このとき、発光サイリスタThy1のゲート電流Igの流れる経路として破線矢印で示す経路を考える。
発光サイリスタThy1のゲート電流Igが流れると仮定すると、このゲート電流はPNPトランジスタ141aのエミッタ・ベース間を通り、ゲート駆動分離回路(PMOSトランジスタ)GDA1の第2端子、第1端子間を通り、閾値電圧Vtだけ電位降下したのち、共通ゲート配線g1を経由して別のゲート駆動分離回路(PMOSトランジスタ)GDA2の第1端子、第2端子間を通り閾値電圧Vtだけ電位降下して、発光サイリスタThy3を構成するNPNトランジスタ142bのコレクタ・エミッタ間を経由してグランドに流出するものとなる。
そのため、発光サイリスタThy1のゲート端子からゲート電流Igの流出側に向かって積算した電位Vgは、
Vg=Vt+Vt+Vce3
となる。
しかしながら、発光サイリスタThy1中のNPNトランジスタ142aのコレクタ・エミッタ間電圧Vce1は、前記電圧Vgの計算値よりも小さいので、PNPトランジスタ141aのベース端子を流れた電流Ibは破線矢印の経路を通ることなく、NPNトランジスタ142aのコレクタ電流となって、自分自身のカソード電流Ikとして合流することになる。
図2、図6を参照して明らかなように、同時に点灯する発光サイリスタThy1,Thy3等において、そのゲート端子には個別にゲート駆動分離回路GDA1,GDA2等が配備されており、各発光サイリスタのゲート端子間を流れる電流成分は発生しないことになる。この結果、発光サイリスタThy1,Thy3等に供給するアノード電流はすべて個々の素子のアノード・カソード間を流れカソード電流となり、アノード電流とカソード電流とが等しいので、各発光サイリスタの発光出力は個々のアノード電流のみにより変化させることができる。
従って、個々の発光サイリスタは、各アノード電流を別々に調整することによってその発光パワーを任意に調整することができる。以上のように、本実施の形態の構成においては、同時にオンしている個々の発光サイリスタのゲート端子間での回りこみ電流が生じることはなく、それぞれに対応するアノード駆動電流により発光出力を調整することができる。
次に、本実施の形態の制御系に対する比較例について説明する。
図22は、比較例としてのプリントヘッド1019の要部構成を示すブロック図である。この比較例としてのプリントヘッド1019が、前記した本実施の形態によるプリントヘッド19と異なる点は、各発光サイリスタThy1〜Thy192のゲート端子の駆動方法である。
即ち、本実施の形態のプリントヘッド19では、図2及び図6の説明で記述したように、共通バッファ回路301の出力端子は、奇数、偶数の一対の発光サイリスタを駆動するアノード駆動端子DO1〜DO96の近傍に配置された各ゲート駆動端子G1に、それぞれ対応して設けられたゲート駆動分離回路GDA1〜GDA96を介して接続され、又共通バッファ回路302の出力端子が、奇数、偶数の一対の発光サイリスタを駆動するアノード駆動端子DO1〜DO96の近傍に配置された各ゲート駆動端子G2に、それぞれ対応して設けられたゲート駆動分離回路GDB1〜GDB96を介して接続されている。
これに対し、比較例のプリントヘッド1019では、図6に示す共通バッファ回路301の出力端子が図22に示すゲート駆動端子G1に直接接続され、同じく図6に示す共通バッファ回路302の出力端子が図22に示すゲート駆動端子G2に直接接続され、そして各発光素子アレイCHP1〜CHP26内で、ゲート駆動端子G1が、発光サイリスタThy1〜Thy192のうち、奇数ドットの発光サイリスタのゲート端子にそれぞれ接続され、ゲート駆動端子G2が、発光サイリスタThy1〜Thy192のうち、偶数ドットの発光サイリスタのゲート端子にそれぞれ接続されている。
次に、共通バッファ回路301によって、複数の発光サイリスタを同時に点灯する際の動作について説明する。図23は、この説明に供する図であり、同図(a)は、図6に示す共通バッファ回路301と図22に示した発光サイリスタThy1,Thy3の接続関係を示す図であり、同図(b)は、発光サイリスタThy1,Thy3の内部構成を等価回路で示している。
図23では、説明を簡略化するため、2個の発光サイリスタThy1,Thy3について示しているが、実際には、図22に示す構成から明らかなように、奇数トッド用の同一構成の発光サイリスタThy1,Thy3・・・Thy191の各ゲート端子が全て共通バッファ回路301の出力端子に直接接続されている。
図23において、共通バッファ回路301は、発光サイリスタThy1,Thy3のオン制御するためにその入力が“Low”レベルとされ、同図においてはグランドに接続して示している。共通バッファ回路301の出力は、サイリスタThy1,Thy3のゲート端子に直接接続されている。
図23(b)では、バッファ回路301の出力を“Low”レベルとさせて発光サイリスタをオンさせた後には、発光サイリスタのゲート端子からバッファ回路301の出力端子に向かって流れ込む電流は略ゼロとすることができるものと仮定し、共通ゲート配線g1に接続される共通バッファ回路301を破線にて描いている。いま、発光サイリスタThy1がオンしていて、そのアノード端子から駆動電流Ia1が流入しているとする。このときの駆動電流Ia1は、図23(b)に示すように電流I1,I2,I3の合計となる。
即ち、電流I1は、アノード端子からPNPトランジスタ141aのエミッタ・コレクタ間を通り、NPNトランジスタ142aのベース・エミッタ間を通じてグランドに至る実線矢印で示す電流であり、電流I2は、アノード端子からPNPトランジスタ141aのエミッタ・ベース間を通り、NPNトランジスタ142aのコレクタ・エミッタ間を通してグランドに至る破線矢印で示す電流であり、電流I3は、アノード端子からPNPトランジスタ141aのエミッタ・ベース間を通り、共通ゲート配線g1を介して発光サイリスタThy3のゲート端子から流入して、その内部のNPNトランジスタ142bのコレクタ・エミッタ間を通じてグランドに至る一点鎖線矢印で示す電流である。
本実施の形態で設定される発光サイリスタThy1〜Thy192は、その発光が、主としてPNPトランジスタ141に流れる電流によって生じる特性を備えており、上記した電流I1〜I3の、電流ごとの発光パワー(P)の成分(Pi1,Pi2,Pi3)への寄与の大きい順に記せば、
Pi1>Pi2>Pi3
となる。そのため、一点鎖線で示す電流I3が生じることによって、本来流すべき電流I1の成分が減少し、全体としての発光出力が減少してしまうことになる。
このように、比較例として示したプリントヘッド1019の構成においては、同時に発光している発光サイリスタ間の相互にゲート配線g1を介して回り込み電流(I3)を生じる。一方、回り込み電流(I3)の大きさは、サイリスタThy1,Thy3等のゲート・カソード間電圧のバラツキ、駆動状態や、ゲート配線g1の微小な配線抵抗値などによって様々に変動してしまう。この結果、光量変動により印刷濃度にムラが生じて印刷品位が著しく低下する。
以上のように、本実施の形態1のプリントヘッド19によれば、共通ゲート配線g1、g2と各Nゲート発光サイリスタのゲート間にゲート駆動分離回路を介在させることで、同時点灯する発光サイリスタのゲート端子間に流れる回り込み電流を略ゼロとすることができる。更にゲート駆動分離回路をPMOSトランジスタ1つで構成することができ、チップ上におけるゲート駆動分離回路の占有面積を必要最小限に抑えることができ、チップ面積の大きな削減が可能となる。
実施の形態2.
図24は、本発明による実施の形態2のプリントヘッド2019の要部構成を示すブロック図である。このプリントヘッド2019が前記した図2に示す実施の形態1のプリントヘッド19と主に異なる点は、実施の形態1のプリントヘッド19では、Nゲート発光サイリスタを用いてゲート分離駆動回路としてPMOSトランジスタを設けたのに対して、本実施の形態のプリントヘッド2019では、Pゲート発光サイリスタを用いてゲート分離駆動回路としてNMOSトランジスタを設け点である。従って、このプリントヘッド2019を採用する画像形成装置の制御系が前記した実施の形態1のプリントヘッド19を採用する画像形成装置の制御系1(図1)と共通する部分には同符号を付して、或いは図面を省いて説明を省略し、異なる点を重点的に説明する。
図24は、実施の形態2のプリントヘッド2019の要部構成を示すブロック図である。以下、図24を参照しながら、プリントヘッド2019の構成及び動作について説明する。
同図に示すプリントヘッド2019は、1インチ当たり600ドットの解像度でA4サイズの用紙に印刷可能なプリントヘッドを例にしている。この場合、被駆動素子としての発光サイリスタの総数は4992ドットである。これを構成するため、各々192個の発光サイリスタThy2001〜Tyh2192が含まれている26個の発光素子アレイCHP2001〜CHP2026を直線状に配列している。
各発光素子アレイCHP2001〜CHP2026内の発光サイリスタThy2001〜Thy2192は、それぞれ第1端子であるアノードと第2端子であるカソード、第3端子であるゲートの各端子を備えており、隣接配置される2個の発光サイリスタ毎にそのカソード端子が接続され、対応するドライバIC2101〜2126のカソード駆動端子D01〜D096の各出力端子とそれぞれ接続される。また発光サイリスタThy2001〜Thy2192の各アノード端子は共に電源VDDと接続されている。
更に、各発光素子アレイCHP2001〜CHP2026内の発光サイリスタThy2001〜Thy2192は、その奇数番目の発光サイリスタのゲートが、それぞれ対応するドライバIC2101〜2126上に設けられたゲート駆動端子G1に接続され、偶数番目の発光サイリスタのゲートが、同ドライバIC上に設けられたゲート駆動端子G2に接続されている。
例えば、発光素子アレイCHP2001の発光サイリスタThy2191とThy2192のカソード端子同士は共にドライバIC2101のカソード駆動端子であるDO96に接続され、同発光サイリスタThy1191とThy2192のアノードは共に電源VDDに接続されている。そして発光素子アレイCHP2001の発光サイリスタThy2192のゲート端子はドライバIC2101の端子DO96の近傍に配置された端子G2と接続され、発光サイリスタThy2191のゲート端子はドライバICの端子DO96の近傍に配置された端子G1と接続されている。
また、発光素子アレイCHP2001の発光サイリスタThy2001とThy2002のカソード端子同士は共にドライバIC2101のカソード駆動端子であるDO1に接続され、同発光サイリスタThy2001とThy2002のアノードは共に電源VDDに接続されている。そして発光素子アレイCHP2001の発光サイリスタThy2002のゲート端子はドライバIC2101の端子DO1の近傍に配置された端子G2と接続され、発光サイリスタThy2001のゲート端子はドライバICの端子DOの近傍に配置された端子G1と接続されている。そして後述するように、奇数番目の発光サイリスタと偶数番目の発光サイリスタとが時分割に駆動される。
図24において、上記したようにCHP2001〜CHP2026は発光素子アレイであり、このうちCHP2003〜CHP2026は図示を省略している。発光素子アレイを駆動するドライバIC2101〜2126は、各発光素子アレイCHP2001〜CHP2026に対応して配置され、それぞれ対応する発光素子アレイを駆動するが、この内ドライバIC2103〜2126は図示を省略している。各ドライバIC2101〜2126は同一回路により構成され、隣接するドライバICとカスケードに接続されている。
これらのドライバIC2101〜2126が行う信号処理は、実施の形態1で説明しドライバIC101〜126が行う信号処理と略同一なので、共通する信号処理についての説明は省略し、異なる点を主に説明する。異なる点は、各ドライバIC2101〜2126のDO1〜DO96が、カソード駆動端子となっている点と、ゲート駆動端子G1、G2の出力論理値が、実施の形態1の場合と逆になっている点である。これらの相違点については、後述する。
次に、本実施の形態における発光サイリスタ及びゲート駆動分離回路の構成について説明する。
図25は、発光サイリスタThy2001〜Thy2192の構成を示す図である。これらの発光サイリスタは同一の構成であるため、発光サイリスタThy2192を例にして説明する。同図(a)は、発光サイリスタThy2192の回路シンボルを示し、同図(b)はその断面構造を示し、同図(c)は、発光サイリスタの別の形態を示し、同図(d)は、これら発光サイリスタの等価回路である。
図25(a)に示すように、発光サイリスタThy2192は、アノード端子(A)、カソード端子(K)、ゲート端子(G)の三つの端子を備え、GaAsウェハー基材を用い、公知のMO‐CVD法により上記基材の上層に所定の結晶をエピタキシャル成長させることで作成される。
図25(b)に示す構造の発光サイリスタThy2192は、先ず上記GaAsウェハー基材の上に所定の犠牲層やバッファ層(図示しない)をエピタキシャル成長させた後、AlGaAs基材にN型不純物を含ませたN型層133と、P型不純物を含ませ成層したP型層132と、N型不純物を含ませたN型層131とを順に積層させたNPNの3層構造からなるウェハーを構成する。
次いで、最上層のN型層の一部に公知のフォトリソグラフィー法を用いて選択的にP型不純物領域2134を形成し、更に、公知のドライエッチング法により溝部を形成することで素子分離を行う。また、エッチングの過程でサイリスタの最下層となるN型領域の一部を露出させ、露出した領域に金属配線を形成してカソード電極(K)を形成する。それと同時に、P型領域2134とP型領域132にもそれぞれアノード電極(A)とゲート電極(G)を形成する。尚、このように構成された発光サイリスタをPゲートの発光サイリスタと称す場合がある。
図25(c)に別形態の発光サイリスタThy2192の構造を示す。本構成の場合も、GaAsウェハー基材を用い、公知のMO‐CVD法により上記基材の上層に所定の結晶をエピタキシャル成長させることで作成される。即ち、先ず上記GaAsウェハー基材の上に所定の犠牲層やバッファ層(図示しない)をエピタキシャル成長させた後、AlGaAs基材にN型不純物を含ませたN型層133と、P型不純物を含ませ成層したP型層132と、N型不純物を含ませたN型層2131と、P型不純物を含ませ成層したP型層2135を順に積層させたPNPNの4層構造のウェハーを構成する。
更に、公知のドライエッチング法を用いて溝部を形成することで素子分離を行い、エッチングの過程でサイリスタの最下層となるN型領域の一部を露出させ、露出した領域に金属配線を形成してカソード電極(K)を形成する。同様に、最上層となるP型領域の一部を露出させ、この領域に金属配線を形成してアノード電極(A)を形成し、それと同時にP型領域132にゲート電極(G)を形成する。
図25(d)は、同図(b)、(c)に示す各形態の構造に対比して描いた発光サイリスタThy2192の等価回路である。同図に示すように、発光サイリスタThy2192は、PNPトランジスタ141とNPNトランジスタ142とからなり、PNPトランジスタ141のエミッタが発光サイリスタThy2192のアノード端子(A)に相当し、NPNトランジスタ142のベースが発光サイリスタThy2192のゲート端子(G)に対応している。またPNPトランジスタ141のコレクタはNPNトランジスタ142のベースと接続されると共に、そのベースがNPNトランジスタ142のコレクタに接続され、NPNトランジスタ142のエミッタは発光サイリスタThy2192のカソード端子(K)に相当している。
尚、図25に示した構造の発光サイリスタは、GaAsウェハー基材上にAlGaAs層を構成したものであるが、これに限定されるものではなく、GaAs、GaP、GaAsP、AlGaInPといった材料を用いるものであってもよく、またはサファイヤ基板上にGaNやAlGaN、InGaNといった材料を成膜したものであっても良い。
また、上記したサイリスタ素子は、例えば特開2007‐81081号公報に開示されているエピタキシャルボンディング法を用いて、ドライバIC2101〜2126(図24参照)を配列したICウェハーと接着され、公知のエッチング法により不要箇所が除去されると共に、サイリスタ素子の端子箇所が露出させられる。次いで、発光サイリスタの各端子予定箇所と前記ドライバICの端子部とが、フォトリソグラフィー法により形成された薄膜配線を用いて接続される。更に公知のダイシング法を用いて複数のチップに分離することで発光素子・駆動素子からなる複合チップが形成される。
図26は、本実施の形態2において、図6に示すゲート駆動分離回路GDA1〜GDA96,GDB1〜GDB96(実施の形態1の場合)に代えて、同位置に、Pゲートを備えた発光サイリスタThy2001〜Thy2192の各ゲート端子に対応して配置されるゲート駆動分離回路GDA2001〜GDA2096,GDB2001〜GDB2096の構成の説明に供する図である。これらのゲート駆動分離回路は、全て同一の構成を持つものであるため、ゲート駆動分離回路GDB2096を例にして説明する。
図26(a)はゲート駆動分離回路GDB2096の回路図シンボルであり、同図(b)はその回路構成を示し、同図(c)はその回路を集積回路として実現したときの当該箇所のチップ断面の構成を示しており、同図(d)はゲート駆動分離回路GDB2096の特性を示すグラフである。
図26(b)に示すように、ゲート駆動分離回路GDB2096はNMOSトランジスタであって、そのサブストレート端子はグランドと接続され、第1端子(1)と第2端子(2)を備える。ゲート駆動分離回路(NMOSトランジスタ)GDB2096において、第1端子(1)や第2端子(2)は、一般にソース端子やドレーン端子と呼ばれるものであるが、ここでの動作においては、ゲート駆動分離回路(NMOSトランジスタ)GDB2096の第1端子(1)はソース端子やドレーン端子としての機能を合わせ備えている。
図26(b)に示すように、矢印にて示される電流I1が生じるとき、ゲート駆動分離回路(NMOSトランジスタ)GDB2096の第2端子(2)はドレーン端子として機能し、その第1端子(1)はソース端子として機能する。同様にして電流I2が生じるとき、ゲート駆動分離回路(NMOSトランジスタ)GDB2096の第1端子(1)はドレーン端子として機能し、その第2端子(2)はソース端子として機能する。
図26(c)において、チップ基材(Psub)321には、ドライバIC2101等が形成されており、チップ基材(Psub)321上の所定箇所には、N型不純物を注入してNウェル領域(Nwell)322が形成され、Nウェル領域(Nwell)322内の所定領域はP型不純物を注入して形成したPウェル領域(Pwell)2327が形成され、その領域内の所定領域にはN型不純物を注入して形成したN型領域329,2330、P型不純物を注入して形成したP型領域2328、ポリシリコンからなるMOSトランジスタのゲート電極326が形成され、Nウェル領域(Nwell)322にはN型不純物を拡散させて形成したN型領域325が形成されている。
尚、図26(c)においては、図を簡略化するため、ゲート酸化膜、コンタクトホールやパッシベーション保護膜等は省略し、各不純物拡散領域と接続されるメタル配線も省略している。ゲート電極326は電源VDDに接続されており、P型領域2328はゲート駆動分離回路(NMOSトランジスタ)GDB2096のサブストレート端子となって、図26(b)においてはグランドに接続され、N型拡散層2330は、ゲート駆動分離回路(NMOSトランジスタ)GDB2096の第1端子と接続され、N型拡散層329は、ゲート駆動分離回路(NMOSトランジスタ)GDB2096の第2端子と接続されている。
図26(d)は、図26(b)に示したゲート駆動分離回路(NMOSトランジスタ)GDB2096の特性グラフを示している。同グラフの横軸は、図26(b)の第1端子(1)と第2端子(2)間に印加される電圧(V)を示している。縦軸は第1端子(1)と第2端子(2)間に流れる電流(I)を示しており、同特性グラフの、第1象限の縦軸を電流I1とし、第4象限の縦軸を電流I2としている。尚、このとき図13(d)の第1象限のグラフをIoLとし、第2象限のグラフをIoHとして図中に記載している。
図26(d)の特性グラフから明らかなように、同図(b)において、電流I1を流そうとするとき、第1端子の電位は“Low”である略0Vの電位とされる。ゲート駆動分離回路(NMOSトランジスタ)GDB2096のゲート端子は電源VDDと接続されているため、ゲート駆動分離回路(NMOSトランジスタ)GDB2096は、その第1端子はソース端子として機能しオン状態となっている。そのため第2端子の電位が増加するに伴い、電流I1が増加していき、所定値Idで示される飽和状態にまで達する。このように、IoL特性は定電流特性を備えていることになる。
また図26(b)において、電流I2を流そうとするとき、即ちゲート駆動分離回路(NMOSトランジスタ)GDB2096の第1端子を略VDD電位とした場合、第2端子の電位をVDD電位とするとき、第2端子から流れ出る電流I2は略ゼロとなり、第1端子と第2端子間に印加される電圧の絶対値がVtを越えると電流が流れる特性となっている。ここでVtはNMOSトランジスタの閾値電圧であり、典型的な設計例では略0.8Vとなるように設定される。
次に、図6、図26等で説明した、発光サイリスタThy2001〜Thy2192(図24)のゲート端子駆動用のゲート駆動分離回路GDA2001〜GDA2096、GDB2001〜GDB2096(尚、図6でのGDA1〜GDA96、GDB1〜GDB96に代えて配置される)の動作、特に発光サイリスタのターンオン過程での動作について説明する。
図27(a)は、共通バッファ回路301と、破線で囲んで示すゲート駆動分離回路GDA2001と、発光サイリスタThy2001の接続関係を示す図であり、図27(b)は、発光サイリスタThy2001の内部構成を等価回路で示している。尚、ゲート駆動分離回路GDA2001は、NMOSトランジスタで構成され、図26で説明したゲート駆動分離回路GDB2096と全く同じ構成、特性のものであり、発光サイリスタThy2001は、PNPトランジスタ141とNPNトランジスタ142で構成され、図25で説明した発光サイリスタThy2192と全く同じ構成、特性のものである。
図27(b)に示すように、ゲート駆動分離回路GDA2001はNMOSトランジスタで構成され、発光サイリスタThy2001は、PNPトランジスタ141とNPNトランジスタ142で構成されている。同図中において、IbはNPNトランジスタ142のベース電流であり、Igは発光サイリスタThy2001のゲート電流であり、Vgはそのゲート端子の端子電圧であり、Ikはカソード電流である。
ここでは、発光サイリスタThy2001のターンオン過程を説明するため、共通バッファ回路301の入力を“High”レベルとしている。この時の電位は、電源VDDに略等しい。次いで、発光サイリスタThy2001を駆動するためにドライバDV1のカソード駆動端子DO1に、流量が制御されたカソード電流Ikが流れるようにする。
従って、本実施の形態では、図6に示す共通バッファ回路301,302の出力論理値は、実施の形態1の場合とは逆になり、ここでは、例えば共通バッファ回路301,301として、反転型のバッファ回路が用いられるものとする。更に、各ドライバIC2101〜2126のドライバDV1〜DV96は、実施の形態1の場合とは異なり、その回路構成を示す図9において、PMOSトランジスタ220〜224の各ソース端子は、共にカソード駆動端子となるDO96に接続され、PMOSトランジスタ220〜224の各ドレーン端子はグランドに接続されている。
このとき共通バッファ回路301の出力は“High”レベルとなり、ゲート駆動分離回路(NMOSトランジスタ)GDA2001の第1端子に印加される。このとき、ゲート駆動分離回路(NMOSトランジスタ)GDA2001は、発光サイリスタThy2001のゲート端子に接続された第2端子が、発光サイリスタThy2001のカソード端子がドライバDV1の駆動オンに伴うカソード駆動端子DO1の電位降下によってLow側に遷移するのに伴って降下し、VDD電位に対してゲート駆動分離回路(NMOSトランジスタ)GDA2001の閾値電圧Vtより低下すると、オン状態に遷移する。
その結果、発光サイリスタThy2001のゲート端子からカソード端子に向かう方向にゲート電流Igが発生する。このゲート電流Igは、NPNトランジスタ142のベース・エミッタ間電流Ibとして流れる。これはまた、発光サイリスタThy2001のゲート電流Igとしてゲート駆動分離回路(NMOSトランジスタ)GDA2001の内部を流れることになる。
図27(b)において、このときのゲート電流Igは、NPNトランジスタ142のベース電流Ibに相当するものであり、このベース電流Ibが流れることでNPNトランジスタ142はオン状態への移行を開始し、NPNトランジスタ142のコレクタにはコレクタ電流を生じる。このコレクタ電流はPNPトランジスタ141のベース電流となり、PNPトランジスタ141をオン状態へと移行させる。
これにより生じたコレクタ電流は、NPNトランジスタ142のベース電流Ibを増強し、NPNトランジスタ142のオン状態への移行を加速させることになる。これに合わせてPNPトランジスタ141もまたオン状態となる。
一方、PNPトランジスタ141が完全にオン状態に移行した後には、そのコレクタ・エミッタ間電圧Vce1は低下し、ゲート駆動分離回路(NMOSトランジスタ)GDA2001の閾値電圧Vtよりも小さい電位となって、発光サイリスタThy2001のゲート電位は上昇することになる。前記したように、閾値電圧Vtの典型例が0.8Vであるのに対して、発光サイリスタThy2001のアノード・ゲート間電圧、即ちPNPトランジスタ141のコレクタ・エミッタ間電圧Vce1は略0.2Vである。
この結果、ゲート駆動分離回路(NMOSトランジスタ)GDA2001の第2端子から発光サイリスタThy2001のゲート端子の側に流れる電流Igは略ゼロとなって、発光サイリスタThy2001のアノード端子にはカソード電流Ikと略等しいカソード電流Iaが流れることになり、発光サイリスタThy2001は完全にオン状態となる。
図27(c)は、上記した発光サイリスタThy2001のターンオン過程を説明するグラフ図であって、横軸はカソード電流Ikを示し、縦軸はアノード・カソード間電位Vaを示している。発光サイリスタThy2001の消灯状態においてはアノード電圧Va、カソード電流Ikは略ゼロであり、グラフの原点(0,0)の状態にある。発光サイリスタThy2001のターンオン開始に伴い、ドライバDV1のカソード駆動端子DO1によるカソード駆動が行われるとカソード電位が降下し、同図(c)に矢印で示したようにアノード・カソード間に電位差を生じてVp電位に到達する。
この電位差Vpは、ゲート駆動分離回路(NMOSトランジスタ)GDA2001の閾値電圧VtとNPNトランジスタ142のベース・エミッタ間電圧Vbeの加算値に対応するものであり、この電圧が発光サイリスタThy2001のゲート・カソード間に順方向に印加されることでゲート電流(これはNPNトランジスタ142のベース電流Ibに等しい)を生じる。同図(c)において、丸印を付して示すポイント(Ip,Vp)は、発光サイリスタThy2001のオフ領域(A)とオン遷移領域(B)との境目に相当している。
次いで、カソード電流Ikが増加するに伴いアノード・カソード間電圧Vaは低下していき、丸印を付して示すポイント(Iv,Vv)に到達する。このポイントは発光サイリスタのオン遷移領域(B)とオン領域(C)との境目に相当し、このときのゲート電流Igは略ゼロにまで低下していて、ゲート駆動分離回路(NMOSトランジスタ)GDA2001は、実質的に発光サイリスタThy2001から切り離されたのと等価な状態にある。
更に、カソード電流Ikが増加するに伴い、アノード・カソード間電圧Vaは増加していき、丸印を付して示すポイント(I1,V1)に到達する。このポイントは発光サイリスタの発光駆動の最終動作ポイントであり、ドライバDV1のカソード駆動端子DO1に流れ込むことを許されたカソード電流Ikに応じた所定の発光パワーで発光駆動がなされる。
図27(c)を用いて発光サイリスタThy2001のターンオン過程を説明したが、後述するように、ゲート駆動分離回路(NMOSトランジスタ)GDA2001を適用することにより、オン状態にある発光サイリスタThy2001へのゲート電流の流れ込みを防止して、アノード電流Iaとカソード電流Ikを略等しくしたオン状態駆動とすることができるため、前記したようにカソード電流Ikを調整することにより、それに応じた発光パワーを得ることができる。
以上の動作は、共通バッファ回路301の出力と発光サイリスタThy2001のゲート端子間にゲート駆動分離回路(NMOSトランジスタ)GDA2001を介在させたことによって初めて実現される動作である。通常のCMOS出力回路で構成した共通バッファ回路301と発光サイリスタThy2001のゲート端子とを直結した場合には、その“High”レベル出力は略VDD電位にまで上昇してしまうので、共通バッファ回路301の出力端子からNPNトランジスタ142のベースに側に向かって電流Igが流れ続け、その分NPNトランジスタ142のコレクタ電流が減少し、発光サイリスタThy2001のアノード電流Iaも減少してしまう。その結果、発光サイリスタThy2001の発光出力が変動してしまい所望状態で動作させることができず、発光サイリスタを用いてプリントヘッドを実現することを困難にしていた。
それに対して、上記した図27に示したゲート駆動分離回路(NMOSトランジスタ)GDA2001を適用した構成においては、上記した不具合が生じることが無くなり、印刷品位に優れたプリンタ装置を実現することが可能となる。
次に、共通バッファ回路301によって、複数の発光サイリスタを同時に点灯する際のゲート駆動分離回路(NMOSトランジスタ)GDA2001等の働きについて説明する。図28は、この説明に供する図であり、同図(a)は、図6におけるゲート駆動分離回路GDA1,GDA2に置き換わるゲート駆動分離回路GDA2001,GDA2002と、図24において示した発光サイリスタThy2001,Thy2003の接続関係を示す図であり、同図(b)は、発光サイリスタThy2001,Thy2003の内部構成を等価回路で示している。
図28では、説明を簡略化するため、2個の発光サイリスタThy2001,Thy2003について示しているが、実際には、図6及び図24に示す構成から明らかなように、奇数トッド用の同一構成の発光サイリスタThy2001,Thy2003・・・Thy2191の各ゲート端子が、対応して配置されたゲート駆動分離回路(NMOSトランジスタ)GDA2001〜GDA2096(図6のGDA1〜GDA96に置き換えた)を介して全て共通バッファ回路301の出力端子に接続されている。
図28において、共通バッファ回路301は、発光サイリスタThy2001,Thy2003の同時オンの状況を示すためにその入力を“High”レベルとし、これに伴ってその出力電位は略VDD電位にまで上昇している。共通バッファ回路301の出力は、共通ゲート配線g1と接続され、共通ゲート配線g1とゲート駆動分離回路(NMOSトランジスタ)GDA2001,GDA2002の第1端子とが接続されている。また、ゲート駆動分離回路GDA2001,GDA2002の第2端子はそれぞれサイリスタThy2001,Thy2003のゲート端子と個別に接続されている。
尚、ゲート駆動分離回路GDA2001,GDA2002は、NMOSトランジスタで構成され、発光サイリスタThy2001はPNPトランジスタ141aとNPNトランジスタ142aで構成され、発光サイリスタThy2003はPNPトランジスタ141bとNPNトランジスタ142bで構成されている。更にVce1は、PNPトランジスタ141aのコレクタ・エミッタ間電圧であり、Vce3は、PNPトランジスタ141bのコレクタ・エミッタ間電圧である。
図28(b)は、複数の発光サイリスタ(ここではThy2001,Thy2003のみ示す)が同時にオンしている状況を示している。図27の説明で記述したように、本実施の形態におけるゲート駆動分離回路GDA2001においては、発光サイリスタThy2001のターンオン指令のため、その第2端子の電圧を“High”レベルとして発光サイリスタThy2001をオンさせた後には、ゲート駆動分離回路GDA2001から発光サイリスタThy2001のゲート端子に向かって流れ込む電流を略ゼロとすることができる。このため、共通バッファ回路301からの出力電流もまた略ゼロとなる。
このため図28(b)において、ゲート配線g1に接続される共通バッファ回路301の影響は除外して考えることができ、同図(b)においては共通バッファ回路301を破線にて描いている。いま、発光サイリスタThy2001がオンしていて、そのカソード端子から駆動電流Ik1が流入しているとする。このとき、発光サイリスタThy2001のゲート電流Igの流れる経路として破線矢印で示す経路を考える。
発光サイリスタThy2001のゲート電流Igが流れると仮定すると、このゲート電流はPNPトランジスタ141aのコレクタ端子(この電位は電源VDDの電位に対してVce1だけ降下した電位である)から、ゲート配線g1に向かって流れる必要があるが、配線g1の電位は略VDDであるため、この方向への電流は発生しないことが判る。
一方、発光サイリスタThy2003の側においても、オン状態にある発光サイリスタThy2003のゲート電位はPNPトランジスタ141bのコレクタ端子(この電位は電源VDDの電位に対してVce3だけ降下した電位である)に等しい。このとき、ゲート駆動分離回路(NMOSトランジスタ)GDA2002について考えると、そのゲート端子は電源VDDに接続されており、これがオンするためにはその第2端子の電位が閾値電圧Vtよりも降下している必要があるが、
Vt>Vce3
の関係となる結果、ゲート駆動分離回路(NMOSトランジスタ)GDA2002の第1端子から第2端子の側へ向かう電流は生じない。この結果、破線矢印で示す電流Igは生じないことが判る。
図6、図24を参照して明らかなように、同時に点灯する発光サイリスタThy2001,Thy2003等において、そのゲート端子には個別にゲート駆動分離回路GDA2001,GDA2002等が配備されており、各発光サイリスタのゲート端子間を流れる電流成分は発生しないことになる。この結果、発光サイリスタThy2001,Thy2003等に供給するアノード電流はすべて個々の素子のアノード・カソード間を流れカソード電流となり、アノード電流とカソード電流は等しいので、各発光サイリスタの発光出力は個々のカソード電流のみにより変化させることができる。
従って、個々の発光サイリスタは、カソード電流を別々に調整することによってその発光パワーを任意に調整することができる。以上のように、本実施の形態の構成においては、同時にオンしている個々の発光サイリスタのゲート端子間には回りこみ電流を生じることはなく、それぞれに対応するカソード駆動電流により発光出力を調整することができる。
以上のように、本実施の形態2のプリントヘッドによれば、共通ゲート配線g1、g2と各Pゲート発光サイリスタのゲート間にゲート駆動分離回路を介在させることで、同時点灯する発光サイリスタのゲート端子間に流れる回り込み電流を略ゼロとすることができる。更にゲート駆動分離回路をNMOSトランジスタ1つで構成することができ、チップ上におけるゲート駆動分離回路の占有面積を必要最小限に抑えることができ、チップ面積の大きな削減が可能となる。
実施の形態3.
図29は、本発明による実施の形態3のプリントヘッドに採用されるゲート駆動分離回路GDA3001〜3096、GDB3001〜3096の構成の説明に供する図である。尚、このゲート駆動分離回路GDA3001〜3096、GDB3001〜3096は、図2に示す実施の形態1のドライバIC101〜126において、図6に示すゲート駆動分離回路GDA1〜96、GDB1〜96に替えて採用されるものである。
本実施の形態のプリントヘッドが、前記した図2に示す実施の形態1のプリントヘッド19と主に異なる点は、実施の形態1において、図6に示すゲート駆動分離回路GDA1〜96、GDB1〜96を、本実施の形態によるゲート駆動分離回路GDA3001〜3096、GDB3001〜3096に置き換えた点である。従って、本実施の形態のプリントヘッドを採用する画像形成装置の制御系が、前記した実施の形態1のプリントヘッド19を採用する画像形成装置の制御系1(図1)と共通する部分には同符号を付して、或いは図面を省いて説明を省略し、異なる点を重点的に説明する。
これらのゲート駆動分離回路は、全て同一の構成を持つものであるため、ゲート駆動分離回路GDB3096(図6のGDB96に置き換わる)を例にして説明する。図29(a)はゲート駆動分離回路GDB3096の回路図シンボルであり、同図(b)はその回路構成を示し、同図(c)はその回路を集積回路として実現したときの当該箇所のチップ断面の構成を示しており、同図(d)はゲート駆動分離回路GDB3096の特性を示すグラフである。
図29(b)に示すように、ゲート駆動分離回路GDB3096はPMOSトランジスタであって、そのゲート端子はグランドに接続され、第1端子(1)と第2端子(2)を備える。ゲート駆動分離回路(PMOSトランジスタ)GDB3096において、第1端子(1)や第2端子(2)は、一般にソース端子やドレーン端子と呼ばれるものであり、サブストレート端子は第1端子と接続されている。また破線で示すダイオードは、後述する拡散領域のP型,N型の間に寄生的に生じる寄生ダイオード3001である。
図29(b)に示すように、矢印にて示される電流I1が生じるとき、ゲート駆動分離回路(PMOSトランジスタ)GDB3096の第2端子(2)から流入した電流I1は、上記した寄生ダイオード3001を順方向に流れ、その第1端子(1)から流出する。同様に、電流I2が生じるとき、ゲート駆動分離回路(PMOSトランジスタ)GDB3096の第1端子(1)から流入した電流I2は、ゲート駆動分離回路(PMOSトランジスタ)のソース・ドレイン端子間を通り、その第2端子(2)から流出する。
図29(c)において、P型不純物を含んだチップ基材(Psub)321には、ドライバIC101等が形成されており、チップ基材(Psub)321上の所定箇所には、N型不純物を注入してNウェル領域(Nwell)322が形成され、Nウェル領域Nwell322内には、P型不純物を注入して形成したP型領域323,324、N型不純物を拡散させて形成したN型領域325が存在し、ポリシリコンからなるMOSトランジスタのゲート電極326が形成されている。
尚、図29(c)においては、図を簡略化するため、ゲート酸化膜、コンタクトホールやパッシベーション保護膜等は省略し、各不純物拡散領域と接続されるメタル配線も省略している。P型拡散層323はゲート駆動分離回路(PMOSトランジスタ)GDB3096の第1端子(1)と接続され、P型拡散層324はゲート駆動分離回路(PMOSトランジスタ)GDB3096の第2端子(2)と接続され、Nウェル領域322と接続されるN型拡散層325は、ゲート駆動分離回路(PMOSトランジスタ)GDB3096のサブストレート端子となっており、図29(b)に示すように自身の第1端子と接続されている。この結果、同図(b)に示す寄生ダイオード3001を生じている。
図29(b)で説明したように、ゲート駆動分離回路(PMOSトランジスタ)GDB3096のサブストレート端子と第1端子(1)とは接続されているので、図29(c)のN型拡散層325とP型拡散層323とは接続されていることになる。
図29(d)は、図29(b)に示したゲート駆動分離回路(PMOSトランジスタ)GDB3096の特性グラフを示している。同グラフの横軸は、図29(b)に示す第1端子(1)と第2端子(2)間に印加される電圧(V)を示している。縦軸は第1端子(1)と第2端子(2)間に流れる電流(I)を示しており、同特性グラフの、第1象限の縦軸を電流I1とし、第4象限の縦軸を電流I2としている。尚、このとき図29(d)の第1象限のグラフをIoLとし、第2象限のグラフをIoHとして図中に記載している。
図29(d)の特性グラフから明らかなように、同図(b)において、電流I1を流そうとするとき第1端子(1)と第2端子(2)間に印加される電圧の絶対値がVfを越えると電流が流れる特性となっている。ここでVfは寄生ダイオード3001の順方向電圧であり、典型的な設計例では略0.6Vとなるように設定される。
また、同図(b)において、電流I2を流そうとするとき、ゲート駆動分離回路(PMOSトランジスタ)GDB3096の第2端子(2)の電位をVDD電位とし、第1端子(1)の電位を略VDD電位とした場合には、第2端子から流れ出る電流I2は略ゼロとなり、ここから第2端子(2)の電位を降下すると、この電位降下に従って、流れ出る電流I2の絶対値は増加するものの、やがて所定値Idに飽和する、定電流性の特性を示す。
次に図6、図29等で説明した、発光サイリスタThy1〜Thy192のゲート端子駆動用のゲート駆動分離回路GDA3001〜GDA3096、GDB3001〜GDB3096の動作、特に発光サイリスタのターンオン過程での動作について説明する。
図30(a)は、共通バッファ回路301と、破線で囲んで示すゲート駆動分離回路GDA3001と、発光サイリスタThy1の接続関係を示す図であり、図30(b)は、発光サイリスタThy1の内部構成を等価回路で示している。尚、ゲート駆動分離回路GDA3001は、PMOSトランジスタで構成され、図29で説明したゲート駆動分離回路GDB3096と全く同じ構成、特性のものであり、発光サイリスタThy1は、PNPトランジスタ141とNPNトランジスタ142で構成され、図3で説明した発光サイリスタThy192と全く同じ構成、特性のものである。
図30(b)に示すように、ゲート駆動分離回路GDA3001はPMOSトランジスタで構成され、発光サイリスタThy1は、PNPトランジスタ141とNPNトランジスタ142で構成されている。同図中において、IbはPNPトランジスタ141のベース電流であり、Igは発光サイリスタThy1のゲート電流であり、Vgはそのゲート端子の端子電圧であり、Ikはカソード電流である。
ここでは、発光サイリスタThy1のターンオン過程を説明するため、共通バッファ回路301の入力を“Low”レベルとしている。次いで、発光サイリスタThy1を駆動するためにドライバDV1のアノード駆動端子DO1から電流が供給され、アノード電流Iaが流れる。
このとき、共通バッファ回路301の出力は“Low”レベルとなり、発光サイリスタThy1のアノード端子から注入された電流IaはPNPトランジスタ141のエミッタ・ベース間をIbとして流れ、更に発光サイリスタThy1のゲート電流Igとしてゲート駆動分離回路(PMOSトランジスタ)GDA3001に生じる寄生ダイオード3001を順方向間に流れて、共通バッファ回路301の出力端子に流れ込むことになる。
図29で説明したように、ゲート駆動分離回路(PMOSトランジスタ)GDA3001は、ゲート端子がグランドに接続されており、該端子には電流が流れないため、その第2端子から流入した電流は、寄生ダイオード3001を介して第1端子から流れ出る。
このとき、共通バッファ回路301の出力は“Low”レベルであり、その電位はグランド電位に略等しい0Vであるので、ゲート駆動分離回路(PMOSトランジスタ)GDA3001の第2端子の電位が、寄生ダイオード3001の順方向電圧Vf(図29(d)参照)を超えるときに電流Igを生じる。
図30(b)において、このときのゲート電流Igは、発光サイリスタThy1の内部にあるPNPトランジスタ141のベース電流Ibに相当するものであり、このベース電流Ibが流れることでPNPトランジスタ141がオン状態への移行を開始して、そのコレクタにコレクタ電流を生じる。このコレクタ電流は、NPNトランジスタ142のベース電流となり、NPNトランジスタ142をオン状態へと移行させる。これにより生じたコレクタ電流は、PNPトランジスタ141のベース電流Ibを増強し、PNPトランジスタ141のオン状態への移行を加速させることになる。
一方、NPNトランジスタ142が完全にオン状態に移行した後には、そのコレクタ・エミッタ間電圧Vce1は低下し、寄生ダイオード3001の前記した順方向電圧Vfよりも小さい電位となる。前記したように、順方向電圧Vfの典型例は0.6Vであり、これに対して発光サイリスタThy1のゲート・カソード間電圧、即ちNPNトランジスタ142のコレクタ・エミッタ間電圧Vce1は略0.2Vである。
この結果、発光サイリスタThy1のゲート端子からゲート駆動分離回路(PMOSトランジスタ)GDA3001の第2端子の側に流れる電流Igは略ゼロとなって、発光サイリスタThy1のカソード端子にはアノード電流Iaと略等しいカソード電流Ikが流れることになり、発光サイリスタThy1は完全にオン状態となる。
図30(c)は、上記した発光サイリスタThy1のターンオン過程を説明するグラフであって、横軸はアノード電流Iaを示し、縦軸はアノード端子電位Vaを示している。発光サイリスタThy1の消灯状態においてアノード電流Iaは略ゼロであり、ドライバDV1のアノード駆動端子DO1から駆動電流が供給されて、グラフの原点(0,0)の状態にある発光サイリスタThy1のターンオンが開始すると、同図(c)に矢印で示したようにアノード電位Vaが上昇して電位値Vpに到達する。
この電位値Vpは、寄生ダイオード3001の順方向電圧VfとPNPトランジスタ141のエミッタ・ベース間電圧Vbeの加算値に対応するものであり、この電圧が順方向に印加されることでゲート電流Ig(これはPNPトランジスタ141のベース電流Ibに等しい)を生じる。図30(c)において、丸印を付して示すポイント(Ip,Vp)は、発光サイリスタThy1のオフ領域(A)とオン遷移領域(B)との境目に相当している。
次いで、アノード電流Iaが増加するに伴いアノード電位Vaは低下していき、丸印を付して示すポイント(Iv,Vv)に到達する。このポイントは、発光サイリスタThy1のオン遷移領域(B)とオン領域(C)との境目に相当し、このときのゲート電流Igは略ゼロにまで低下していて、ゲート駆動分離回路(PMOSトランジスタ)GDA3001は、実質的に発光サイリスタThy1から切り離されたのと等価な状態にある。
更にアノード電流Iaが増加するに伴い、アノード電位Vaは増加していき、丸印を付して示すポイント(I1,V1)に到達する。このポイントは発光サイリスタの発光駆動の最終動作ポイントであり、ドライバDV1のアノード駆動端子DO1から供給されるアノード電流Iaに応じた所定の発光パワーで発光駆動がなされる。
図30(c)を用いて発光サイリスタThy1のターンオン過程を説明したが、後述するように、ゲート駆動分離回路(PMOSトランジスタ)GDA3001を適用することにより、オン状態にある発光サイリスタThy1からのゲート電流の流れ込みを防止して、アノード電流Iaとカソード電流Ikを略等しくしたオン状態駆動とすることができるため、前記したように調整されたアノード電流Iaを流すことにより、それに応じた発光パワーを得ることができる。
以上の動作は、共通バッファ回路301の出力と発光サイリスタThy1のゲート端子間にゲート駆動分離回路(PMOSトランジスタ)GDA3001を介在させたことによって初めて実現される動作である。
次に、共通バッファ回路301によって、複数の発光サイリスタを同時に点灯する際のゲート駆動分離回路(PMOSトランジスタ)GDA3001等の働きについて説明する。図31は、この説明に供する図であり、同図(a)は、図6におけるゲート駆動分離回路GDA1,GDA2に置き換わるゲート駆動分離回路GDA3001,GDA3002と、図2において示した発光サイリスタThy1,Thy3の接続関係を示す図であり、同図(b)は、発光サイリスタThy1,Thy3の内部構成を等価回路で示している。
図31では、説明を簡略化するため、2個の発光サイリスタThy1,Thy3について示しているが、実際には、図2及び図6に示す構成から明らかなように、奇数トッド用の同一構成の発光サイリスタThy1,Thy3・・・Thy191の各ゲート端子が、対応して配置されたゲート駆動分離回路(NMOSトランジスタ)GDA3001〜GDA3096(図6のGDA1〜GDA96に置き換えた)を介して全て共通バッファ回路301の出力端子に接続されている。
図31において、共通バッファ回路301は、発光サイリスタThy1,Thy3のオン制御するためにその入力が“Low”レベルとされ、同図においてはグランドに接続して示している。共通バッファ回路301の出力は、共通ゲート配線g1と接続され、共通ゲート配線g1とゲート駆動分離回路(PMOSトランジスタ)GDA3001,GDA3002の第1端子とが接続されている。また、ゲート駆動分離回路GDA3001,GDA3002の第2端子はそれぞれサイリスタThy1,Thy3のゲート端子と個別に接続されている。
尚、ゲート駆動分離回路GDA3001,GDA3002は、PMOSトランジスタで構成され、発光サイリスタThy1はPNPトランジスタ141aとNPNトランジスタ142aで構成され、発光サイリスタThy3はPNPトランジスタ141bとNPNトランジスタ142bで構成されている。
ゲート駆動分離回路(PMOSトランジスタ)GDA3001,GDA3002の各第2端子とサブストレート端子間には、それぞれに対応する寄生ダイオード3001a,3001bが寄生的に生じている。更にVce1は、NPNトランジスタ142aのコレクタ・エミッタ間電圧であり、Vce3は、NPNトランジスタ142bのコレクタ・エミッタ間電圧である。
図31(b)は、複数の発光サイリスタ(ここではThy1,Thy3のみ示す)が同時にオンしている状況を示している。図30の説明で記述したように、本実施の形態におけるゲート駆動分離回路GDA3001においては、発光サイリスタThy1のターンオン指令のため、その第2端子の電圧を“Low”レベルとして発光サイリスタThy1をオンさせた後には、そのゲート端子からゲート駆動分離回路GDA3001に向かって流れ込む電流を略ゼロとすることができる。
このため図31(b)において、ゲート配線g1に接続される共通バッファ回路301の影響は除外して考えることができ、同図(b)においては共通バッファ回路301を破線にて描いている。いま、発光サイリスタThy1がオンしていて、そのアノード端子から駆動電流Ia1が流入しているとする。このとき、発光サイリスタThy1のゲート電流Igの流れる経路として破線矢印で示す経路を考える。
発光サイリスタThy1のゲート電流Igが流れると仮定すると、このゲート電流はPNPトランジスタ141aのエミッタ・ベース間を通り、ゲート駆動分離回路(PMOSトランジスタ)GDA3001中の、第2端子、第1端子間の寄生ダイオード3001aを通り、順方向電圧Vf分降下したのち、共通ゲート配線g1を経由して別のゲート駆動分離回路(PMOSトランジスタ)GDA3002の第1端子、第2端子間を通り、発光サイリスタThy3を構成するNPNトランジスタ142bのコレクタ・エミッタ間を経由してグランドに流出するものとなる。
そのため、発光サイリスタThy1のゲート端子からゲート電流Igの流出側に向かって積算した電位Vgは、
Vg=Vf+Vce3
となる。
しかしながら、発光サイリスタThy1中のNPNトランジスタ142aのコレクタ・エミッタ間電圧Vce1は、前記Vg電圧の計算値よりも小さいので、PNPトランジスタ141aのベース端子を流れた電流Ibは破線矢印の経路を通ることなく、NPNトランジスタ142aのコレクタ電流となって、自分自身のカソード電流Ikとして合流することになる。
図2、図6を参照して明らかなように、同時に点灯する発光サイリスタThy1,Thy3等において、そのゲート端子には個別にゲート駆動分離回路GDA3001,GDA3002等が配備されており、各発光サイリスタのゲート端子間を流れる電流成分は発生しないことになる。この結果、発光サイリスタThy1,Thy3等に供給するアノード電流はすべて個々の素子のアノード・カソード間を流れカソード電流となり、アノード電流とカソード電流とが等しいので、各発光サイリスタの発光出力は個々のアノード電流のみにより変化させることができる。
従って、個々の発光サイリスタは、各アノード電流を別々に調整することによってその発光パワーを任意に調整することができる。以上のように、本実施の形態の構成においては、同時にオンしている個々の発光サイリスタのゲート端子間には回りこみ電流を生じることはなく、それぞれに対応するアノード駆動電流により発光出力を調整することができる。
以上のように、本実施の形態3のプリントヘッドによれば、共通ゲート配線g1、g2と各Nゲート発光サイリスタのゲート間にゲート駆動分離回路を介在させることで、同時点灯する発光サイリスタのゲート端子間に流れる回り込み電流を略ゼロとすることができる。更にゲート駆動分離回路をPMOSトランジスタ1つで構成することができ、チップ上におけるゲート駆動分離回路の占有面積を必要最小限に抑えることができ、チップ面積の大きな削減が可能となる。
実施の形態4.
図32は、本発明による実施の形態4のプリントヘッドに採用されるゲート駆動分離回路GDA4001〜4096、GDB4001〜4096の構成の説明に供する図である。尚、このゲート駆動分離回路GDA4001〜4096、GDB4001〜4096は、図26に示す実施の形態2のドライバIC2101〜2126において、図6に示すゲート駆動分離回路GDA1〜GDA96,GDB1〜GDB96(実施の形態1の場合)に代えて同位置に、Pゲートを備えた発光サイリスタThy2001〜Thy2192の各ゲート端子に対応して配置されるゲート駆動分離回路GDA4001〜GDA4096,GDB4001〜GDB4096の構成の説明に供する図である。
本実施の形態のプリントヘッドが前記した図24に示す実施の形態2のプリントヘッド2019と主に異なる点は、実施の形態2において採用したゲート駆動分離回路GDA2001〜2096、GDB2001〜2096を、本実施の形態によるゲート駆動分離回路GDA4001〜4096、GDB4001〜4096に置き換えた点である。従って、本実施の形態のプリントヘッドを採用する画像形成装置の制御系が、前記した実施の形態2のプリントヘッド2019を採用する画像形成装置の制御系と共通する部分には同符号を付して、或いは図面を省いて説明を省略し、異なる点を重点的に説明する。
これらのゲート駆動分離回路は、全て同一の構成を持つものであるため、ゲート駆動分離回路GDB4096(図6のGDB96に置き換わる)を例にして説明する。図32(a)はゲート駆動分離回路GDB4096の回路図シンボルであり、同図(b)はその回路構成を示し、同図(c)はその回路を集積回路として実現したときの当該箇所のチップ断面の構成を示しており、同図(d)はゲート駆動分離回路GDB4096の特性を示すグラフである。
図32(b)に示すように、ゲート駆動分離回路GDB4096はNMOSトランジスタであって、そのゲート端子はVDDに接続され、第1端子(1)と第2端子(2)を備える。ゲート駆動分離回路(NMOSトランジスタ)GDB4096において、第1端子(1)や第2端子(2)は、一般にソース端子やドレーン端子と呼ばれるものであり、サブストレート端子は第1端子と接続されている。また破線で示すダイオードは、後述する拡散領域のP型,N型の間に寄生的に生じる寄生ダイオード4001である。
図32(b)に示すように、矢印にて示される電流I1が生じるとき、その電流は、ゲート駆動分離回路(NMOSトランジスタ)GDB4096のドレーン端子、ソース端子間を通って共通バッファ回路301(図33)向かって流れる。同様に、電流I2が生じるとき、ゲート駆動分離回路(NMOSトランジスタ)GDB4096の第1端子(1)から流入した電流I2は、寄生ダイオード4001内を順方向に流れ、その第2端子(2)から流出する。
図32(c)において、チップ基材(Psub)321には、ドライバIC2101等が形成されており、チップ基材(Psub)321上の所定箇所には、N型不純物を注入してNウェル領域(Nwell)322が形成され、Nウェル領域(Nwell)322内の所定領域はP型不純物を注入して形成したPウェル領域(Pwell)4327が形成され、その領域内の所定領域にはN型不純物を注入して形成したN型領域329,4330、P型不純物を注入して形成したP型領域4328、ポリシリコンからなるMOSトランジスタのゲート電極326が形成され、Nウェル領域(Nwell)322にN型不純物を拡散させて形成したN型領域325が形成されている。
尚、図32(c)においては、図を簡略化するため、ゲート酸化膜、コンタクトホールやパッシベーション保護膜等は省略し、各不純物拡散領域と接続されるメタル配線も同様である。ゲート電極326は電源VDDに接続されており、P型領域4328はゲート駆動分離回路(NMOSトランジスタ)GDB4096のサブストレート端子となって、図32(b)においては第1端子(1)に接続され、N型拡散層4330は、ゲート駆動分離回路(NMOSトランジスタ)GDB4096の第1端子と接続され、N型拡散層329は、ゲート駆動分離回路(NMOSトランジスタ)GDB4096の第2端子と接続されている。この結果、同図(b)に示す寄生ダイオード4001を生じている。
図32(b)で説明したように、ゲート駆動分離回路(NMOSトランジスタ)GDB3096のサブストレート端子と第1端子(1)とは接続されているので、図32(c)のN型拡散層4330とP型拡散層4328とは接続されていることになる。
図32(d)は、図32(b)に示したゲート駆動分離回路(NMOSトランジスタ)GDB4096の特性グラフを示している。同グラフの横軸は、図32(b)に示す第1端子(1)と第2端子(2)間に印加される電圧(V)を示している。縦軸は第1端子(1)と第2端子(2)間に流れる電流(I)を示しており、同特性グラフの、第1象限の縦軸を電流I1とし、第4象限の縦軸を電流I2としている。尚、このとき図32(d)の第1象限のグラフをIoLとし、第2象限のグラフをIoHとして図中に記載している。
図32(d)の特性グラフから明らかなように、同図(b)において、電流I1を流そうとするとき、第1端子の電位は“Low”である略0Vの電位とされる。ゲート駆動分離回路(NMOSトランジスタ)GDB4096のゲート端子は電源VDDと接続されているため、ゲート駆動分離回路(NMOSトランジスタ)GDB4096は、その第1端子はソース端子として機能しオン状態となっている。そのため第2端子の電位が増加するに伴い、電流I1が増加していき、所定値Idで示される飽和状態にまで達する。このように、IoL特性は定電流特性を備えていることになる。
また図32(b)において、電流I2を流そうとするとき、即ちゲート駆動分離回路(NMOSトランジスタ)GDB4096の第1端子を略VDD電位とした場合、第2端子の電位をVDD電位とするとき、第2端子から流れ出る電流I2は略ゼロとなり、第1端子と第2端子間に印加される電圧の絶対値が寄生ダイオード4001の順方向電圧Vfを越えると電流が流れる特性となっている。ここでVfは寄生ダイオード4001の順方向電圧であり、典型的な設計例では略0.6Vとなるように設定される。
次に図6、図32等で説明した、発光サイリスタThy2001〜Thy2192(図24)のゲート端子駆動用のゲート駆動分離回路GDA4001〜GDA4096、GDB4001〜GD43096(尚、図6でのGDA1〜GDA96、GDB1〜GDB96に代えて配置される)の動作、特に発光サイリスタのターンオン過程での動作について説明する。
図33(a)は、共通バッファ回路301と、破線で囲んで示すゲート駆動分離回路GDA4001と、発光サイリスタThy2001の接続関係を示す図であり、図33(b)は、発光サイリスタThy2001の内部構成を等価回路で示している。尚、ゲート駆動分離回路GDA4001は、NMOSトランジスタで構成され、図32で説明したゲート駆動分離回路GDB4096と全く同じ構成、特性のものであり、発光サイリスタThy2001は、PNPトランジスタ141とNPNトランジスタ142で構成され、図25で説明した発光サイリスタThy2192と全く同じ構成、特性のものである。
図33(b)に示すように、ゲート駆動分離回路GDA4001はNMOSトランジスタで構成され、発光サイリスタThy2001は、PNPトランジスタ141とNPNトランジスタ142で構成されている。同図中において、IbはNPNトランジスタ142のベース電流であり、Igは発光サイリスタThy2001のゲート電流であり、Vgはそのゲート端子の端子電圧であり、Ikはカソード電流である。
ここでは、発光サイリスタThy2001のターンオン過程を説明するため、共通バッファ回路301の入力を“High”レベルとしている。この時の電位は、電源VDDに略等しい。次いで、発光サイリスタThy2001を駆動するためにドライバDV1のカソード駆動端子DO1に流量が制御された、カソード電流Ikが流れる。
従って、本実施の形態では、実施の形態2の場合と同様に、図6に示す共通バッファ回路301,302の出力論理値は、実施の形態1の場合とは逆になり、ここでは、例えば共通バッファ回路301,301として、反転型のバッファ回路が用いられるものとする。更に、各ドライバIC2101〜2126のドライバDV1〜DV96は、実施の形態1の場合とは異なり、その回路構成を示す図9において、PMOSトランジスタ220〜224の各ソース端子は、共にカソード駆動端子となるDO96に接続されPMOSトランジスタ220〜224の各ドレーン端子はグランドに接続されている。
このとき共通バッファ回路301の出力は“High”レベルとなり、ゲート駆動分離回路(NMOSトランジスタ)GDA4001の第1端子に印加される。このとき、ゲート駆動分離回路(NMOSトランジスタ)GDA4001の、発光サイリスタThy2001のゲート端子に接続された第2端子が、発光サイリスタThy2001のカソード端子がドライバDV1の駆動オンに伴うカソード駆動端子DO1の電位降下によってLow側に遷移するのに伴って降下し、VDD電位に対して、寄生ダイオード4001の順方向電圧Vfより低下すると電流Igが流れる。このゲート電流Igは、NPNトランジスタ142のベース・エミッタ間電流Ibとして流れる。
図33(b)において、ゲート電流Igは、NPNトランジスタ142のベース電流Ibに相当するものであり、このベース電流Ibが流れることでNPNトランジスタ142はオン状態への移行を開始し、NPNトランジスタ142のコレクタにはコレクタ電流を生じる。このコレクタ電流はPNPトランジスタ141のベース電流となり、PNPトランジスタ141をオン状態へと移行させる。
これにより生じたコレクタ電流は、NPNトランジスタ142のベース電流Ibを増強し、NPNトランジスタ142のオン状態への移行を加速させることになる。これに合わせてPNPトランジスタ141もまたオン状態となる。
一方、PNPトランジスタ141が完全にオン状態に移行した後には、そのコレクタ・エミッタ間電圧Vce1は低下し、前記した寄生ダイオード4001の順方向電圧Vfよりも小さい電位となって、発光サイリスタThy2001のゲート電位は上昇することになる。前記したように、順方向電圧Vfの典型例が0.6Vであるのに対して、発光サイリスタThy2001のアノード・ゲート間電圧、即ちPNPトランジスタ141のコレクタ・エミッタ間電圧Vce1は略0.2Vである。
この結果、ゲート駆動分離回路(NMOSトランジスタ)GDA4001の第2端子から発光サイリスタThy2001のゲート端子の側に流れる電流Igは略ゼロとなって、発光サイリスタThy2001のアノード端子にはカソード電流Ikと略等しいカソード電流Iaが流れることになり、発光サイリスタThy2001は完全にオン状態となる。
図33(c)は、上記した発光サイリスタThy2001のターンオン過程を説明するグラフ図であって、横軸はカソード電流Ikを示し、縦軸はアノード・カソード間電位Vaを示している。発光サイリスタThy2001の消灯状態においてはアノード電圧Va、カソード電流Ikは略ゼロであり、グラフの原点(0,0)の状態にある。発光サイリスタThy2001のターンオン開始に伴い、ドライバDV1のカソード駆動端子DO1によるカソード駆動が行われるとカソード電位が降下し、同図(c)に矢印で示したようにアノード・カソード間に電位差を生じてVp電位に到達する。
この電位差Vpは、寄生ダイオード4001の順方向電圧VfとNPNトランジスタ142のベース・エミッタ間電圧Vbeの加算値に対応するものであり、この電圧が発光サイリスタThy2001のゲート・カソード間に順方向に印加されることでゲート電流(これはNPNトランジスタ142のベース電流Ibに等しい)を生じる。同図(c)において、丸印を付して示すポイント(Ip,Vp)は、発光サイリスタThy2001のオフ領域(A)とオン遷移領域(B)との境目に相当している。
次いで、カソード電流Ikが増加するに伴いアノード・カソード間電圧Vaは低下していき、丸印を付して示すポイント(Iv,Vv)に到達する。このポイントは発光サイリスタのオン遷移領域(B)とオン領域(C)との境目に相当し、このときのゲート電流Igは略ゼロにまで低下していて、ゲート駆動分離回路(NMOSトランジスタ)GDA4001は、実質的に発光サイリスタThy2001から切り離されたのと等価な状態にある。
更に、カソード電流Ikが増加するに伴い、アノード・カソード間電圧Vaは増加していき、丸印を付して示すポイント(I1,V1)に到達する。このポイントは発光サイリスタの発光駆動の最終動作ポイントであり、ドライバDV1のカソード駆動端子DO1に流れ込むことを許されたカソード電流Ikに応じた所定の発光パワーで発光駆動がなされる。
図33(c)を用いて発光サイリスタThy2001のターンオン過程を説明したが、後述するように、ゲート駆動分離回路(NMOSトランジスタ)GDA4001を適用することにより、オン状態にある発光サイリスタThy2001へのゲート電流の流れ込みを防止して、アノード電流Iaとカソード電流Ikを略等しくしたオン状態駆動とすることができるため、前記したようにカソード電流Ikを調整することにより、それに応じた発光パワーを得ることができる。
以上の動作は、共通バッファ回路301の出力と発光サイリスタThy2001のゲート端子間にゲート駆動分離回路(NMOSトランジスタ)GDA4001を介在させたことによって初めて実現される動作である。
次に、共通バッファ回路301によって、複数の発光サイリスタを同時に点灯する際のゲート駆動分離回路(NMOSトランジスタ)GDA4001等の働きについて説明する。図34は、この説明に供する図であり、同図(a)は、図6におけるゲート駆動分離回路GDA1,GDA2に置き換わるゲート駆動分離回路GDA4001,GDA4002と、図24において示した発光サイリスタThy2001,Thy2003の接続関係を示す図であり、同図(b)は、発光サイリスタThy2001,Thy2003の内部構成を等価回路で示している。
図34では、説明を簡略化するため、2個の発光サイリスタThy2001,Thy2003について示しているが、実際には、図6及び図24に示す構成から明らかなように、奇数トッド用の同一構成の発光サイリスタThy2001,Thy2003・・・Thy2191の各ゲート端子が、対応して配置されたゲート駆動分離回路(NMOSトランジスタ)GDA4001〜GDA4096(図6のGDA1〜GDA96に置き換えた)を介して全て共通バッファ回路301の出力端子に接続されている。
図34において、共通バッファ回路301は、発光サイリスタThy2001,Thy2003の同時オンの状況を示すためにその入力を“High”レベルとし、これに伴ってその出力電位は略VDD電位にまで上昇している。共通バッファ回路301の出力は、共通ゲート配線g1と接続され、共通ゲート配線g1とゲート駆動分離回路(NMOSトランジスタ)GDA2001,GDA2002の第1端子とが接続されている。また、ゲート駆動分離回路GDA4001,GDA4002の第2端子はそれぞれサイリスタThy2001,Thy2003のゲート端子と個別に接続されている。
尚、ゲート駆動分離回路GDA4001,GDA4002は、NMOSトランジスタで構成され、発光サイリスタThy2001はPNPトランジスタ141aとNPNトランジスタ142aで構成され、発光サイリスタThy2003はPNPトランジスタ141bとNPNトランジスタ142bで構成されている。更にVce1は、PNPトランジスタ141aのコレクタ・エミッタ間電圧であり、Vce3は、PNPトランジスタ141bのコレクタ・エミッタ間電圧である。
図34(b)は、複数の発光サイリスタ(ここではThy2001,Thy2003のみ示す)が同時にオンしている状況を示している。図33の説明で記述したように、本実施の形態におけるゲート駆動分離回路GDA4001においては、発光サイリスタThy2001のターンオン指令のため、その第2端子の電圧を“High”レベルとして発光サイリスタThy2001をオンさせた後には、ゲート駆動分離回路GDA2001から発光サイリスタThy2001のゲート端子に向かって流れ込む電流を略ゼロとすることができる。このため、バッファ回路301からの出力電流もまた略ゼロとなる。
このため図34(b)において、ゲート配線g1に接続される共通バッファ回路301の影響は除外して考えることができ、同図(b)においては共通バッファ回路301を破線にて描いている。いま、発光サイリスタThy2001がオンしていて、そのカソード端子から駆動電流Ik1が流入しているとする。このとき、発光サイリスタThy2001のゲート電流Igの流れる経路として破線矢印で示す経路を考える。
発光サイリスタThy2001のゲート電流Igが流れると仮定すると、このゲート電流はPNPトランジスタ141aのコレクタ端子(この電位は電源VDDの電位に対してVce1だけ降下した電位である)から、ゲート配線g1に向かって流れる必要があるが、配線g1の電位は略VDDであるため、この方向への電流は発生しないことが判る。
一方、発光サイリスタThy2003の側においても、オン状態にある発光サイリスタThy2003のゲート電位はPNPトランジスタ141bのコレクタ端子(この電位は電源VDDの電位に対してVce3だけ降下した電位である)に等しい。このとき、ゲート駆動分離回路(NMOSトランジスタ)GDA4002について考えると、破線矢印の電流は寄生ダイオード4001bを順方向に流れる必要があるが、寄生ダイオードの順電圧Vfとコレクタ・エミッタ間電圧Vce3の間には、
Vf>Vce3
の関係があるため、ゲート駆動分離回路(NMOSトランジスタ)GDA4002の第1端子から第2端子の側へ向かう電流は生じない。この結果、破線矢印で示す電流Igは生じないことが判る。
図6、図24を参照して明らかなように、同時に点灯する発光サイリスタThy2001,Thy2003等において、そのゲート端子には個別にゲート駆動分離回路GDA4001,GDA4002等が配備されており、各発光サイリスタのゲート端子間を流れる電流成分は発生しないことになる。この結果、発光サイリスタThy2001,Thy2003等に供給するアノード電流はすべて個々の素子のアノード・カソード間を流れカソード電流となり、アノード電流とカソード電流は等しいので、各発光サイリスタの発光出力は個々のカソード電流のみにより変化させることができる。
従って、個々の発光サイリスタは、カソード電流を別々に調整することによってその発光パワーを任意に調整することができる。以上のように、本実施の形態の構成においては、同時にオンしている個々の発光サイリスタのゲート端子間には回りこみ電流を生じることはなく、それぞれに対応するカソード駆動電流により発光出力を調整することができる。
以上のように、本実施の形態4のプリントヘッドによれば、共通ゲート配線g1、g2と各Pゲート発光サイリスタのゲート間にゲート駆動分離回路を介在させることで、同時点灯する発光サイリスタのゲート端子間に流れる回り込み電流を略ゼロとすることができる。更にゲート駆動分離回路をNMOSトランジスタ1つで構成することができ、チップ上におけるゲート駆動分離回路の占有面積を必要最小限に抑えることができ、チップ面積の大きな削減が可能となる。
実施の形態5.
図35は、本発明の画像形成装置に基づく実施の形態5の画像形成装置5300の要部構成を模式的に示す要部構成図である。
同図に示すように、画像形成装置5300内には、イエロー、マゼンダ、シアン、ブラックの各色の画像を、各々に形成する四つのプロセスユニット5301〜5304が記録媒体5305の搬送経路5320に沿ってその上流側から順に配置されている。これらのプロセスユニット5301〜5304の内部構成は共通しているため、例えばシアンのプロセスユニット5303を例にとり、これらの内部構成を説明する。
プロセスユニット5303には、像担持体として感光体ドラム5303aが矢印方向に回転可能に配置され、この感光体ドラム5303aの周囲にはその回転方向上流側から順に、感光体ドラム5303aの表面に電気供給して帯電させる帯電装置5303b、帯電された感光体ドラム5303aの表面に選択的に光を照射して静電潜像を形成する露光装置5303cが配設される。更に、静電潜像が形成された感光体ドラム5303aの表面に、所定色(シアン)のトナーを付着させて顕像を発生させる現像装置5303d、及び感光体ドラム5303aの表面に残留したトナーを除去するクリーニング装置5303eが配設される。尚、これら各装置に用いられているドラム又はローラは、図示しない駆動源及びギアによって回転させられる。
ここで使用される露光装置5303cとしては、実施の形態1で説明した図5に示すプリントヘッド19を採用するものである。尚、ここでは、実施の形態1のプリントヘッド19を採用するものとしたが、これに代えて実施の形態2〜4の何れかのプリントヘッドを採用してもよい。
また、画像形成装置5300は、その下部に、紙等の記録媒体5305を重ねた状態で収納する用紙カセット5306を装着し、その上方には記録媒体5305を1枚ずつ分離させて搬送するためのホッピングローラ5307を配設している。更に、記録媒体5305の搬送方向における、このホッピングローラ5307の下流側には、ピンチローラ5308,5309と共に記録媒体5305を挟持することによって、記録媒体5305の斜行を修正し、プロセスユニット5301〜5304に搬送するレジストローラ5310,5311を配設している。これ等のホッピングローラ5307及びレジストローラ5310,5311は、図示しない駆動源及びギアによって連動回転する。
プロセスユニット5301〜5304の各感光体ドラムに対向する位置には、それぞれ半導電性のゴム等によって形成された転写ローラ5312が配設されている。そして、感光体ドラム5301a〜1304a上のトナーを記録媒体5305に転写させるために、感光体ドラム5301a〜5304aの表面とこれらの各転写ローラ5312の表面との間に所定の電位差が生じるように構成されている。
定着装置5313(図1の定着器22に相当)は、加熱ローラとバックアップローラとを有し、記録媒体5305上に転写されたトナーを加圧、加熱することによって定着させる。また、排出ローラ5314,5315は、定着装置5313から排出された記録媒体5305を、排出部のピンチローラ5316,5317と共に挟持し、記録媒体スタッカ部5318に搬送する。尚、排出ローラ5314,5315は、図示されない駆動源及びギアによって連動回転する。
次に、前記構成の画像形成装置の動作について説明する。
まず、用紙カセット5306に堆積した状態で収納されている記録媒体5305がホッピングローラ5307によって、上から1枚ずつ分離されて搬送される。続いて、この記録媒体5305は、レジストローラ5310,5311及びピンチローラ5308,5309に挟持されて、プロセスユニット5301の感光体ドラム5301a及び転写ローラ5312に搬送される。その後、記録媒体5305は、感光体ドラム5301a及び転写ローラ5312に挟持され、その記録画面にトナー画像が転写されると同時に感光体ドラム5301aの回転によって搬送される。
同様にして、記録媒体5305は、順次プロセスユニット5302〜5304を通過し、その通過過程で、各露光装置5301c〜5304cにより形成された静電潜像を、現像装置5301d〜5304dによって現像した各色のトナー像がその記録画面に順次重ねて転写される。その後、定着装置5313によってトナー像が定着された記録媒体5305は、排出ローラ5314,5315及びピンチローラ5316,5317に挟持されて、画像形成装置5300の外部の記録媒体スタッカ部5318に排出される。以上の過程を経て、カラー画像が記録媒体5305上に形成される。
以上のように、本実施の形態の画像形成装置によれば、実施の形態1〜4で説明したプリントヘッドの何れか採用するため、そのプリントヘッドと同様の効果を有すると共に、各ドットの光量のばらつき等によるノイズによって印字品質が低下するのを防止し、高品位の印刷が可能となる。