JP5573663B2 - 耐食性磁石の製造方法 - Google Patents

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本発明は、耐食性磁石の製造方法に関する。より詳細には、耐食性が付与されたR−Fe−B系焼結磁石の製造方法に関する。
Nd−Fe−B系焼結磁石に代表されるR−Fe−B系焼結磁石は、高い磁気特性を有していることから、今日様々な分野で使用されている。しかしながら、R−Fe−B系焼結磁石は反応性の高い希土類元素:Rを含むため、大気中で酸化腐食されやすく、何の表面処理をも行わずに使用した場合には、わずかな酸やアルカリや水分などの存在によって表面から腐食が進行して錆が発生し、それに伴って、磁気特性の劣化やばらつきを招く。さらに、錆が発生した磁石を磁気回路などの装置に組み込んだ場合、錆が飛散して周辺部品を汚染する恐れがある。
R−Fe−B系焼結磁石に対して耐食性を付与する方法は種々知られているが、その中に、磁石の表面に対して化成処理を行って化成被膜を形成する方法がある。例えば特許文献1には、リン酸塩被膜を化成被膜として磁石の表面に形成する方法が記載されており、この方法は、磁石に対して簡易に必要な耐食性を付与するための簡易防錆法として広く採用されている。
しかしながら、特許文献1に記載されているR−Fe−B系焼結磁石の表面に化成被膜としてリン酸塩被膜を形成する方法は、腐食を招きやすい環境下においては、十分な耐食性を発揮することができないことから、より耐食性に優れた化成被膜を形成する方法の開発が望まれていた。このような状況下で、本発明者らの研究グループは、リン酸塩被膜などの従来の化成被膜よりも耐食性に優れる化成被膜に関する研究をこれまで精力的に行ってきており、その研究成果として、特許文献2において、構成元素としてZr、Nd、フッ素、酸素を少なくとも含有する化成被膜(但しリンは含有しない)をR−Fe−B系焼結磁石の表面に形成することで、磁石に対して優れた耐食性を付与する方法を提案している。
特公平4−22008号公報 国際公開第2010/001878号
本発明は、本発明者らの研究グループが特許文献2において提案した、構成元素としてZr、Nd、フッ素、酸素を少なくとも含有する化成被膜(但しリンは含有しない)のR−Fe−B系焼結磁石の表面への形成を効率的に行うことによる、耐食性磁石の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の点に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、特許文献2において提案した化成処理を行うための処理液に、処理対象とするR−Fe−B系焼結磁石を浸漬し、磁石に所定の振動を与えながら化成処理を行うと、全く意外にも化成処理反応性が向上することで、磁石の表面に目的とする化成被膜を効率的に形成することができることを見出した。
上記の知見に基づいてなされた本発明のR−Fe−B系焼結磁石(Rは少なくともNdを含む希土類元素)の表面に、構成元素としてZr、Nd、フッ素、酸素を少なくとも含有する化成被膜(但しリンは含有しない)を有する耐食性磁石の製造方法は、請求項1記載の通り、少なくともZrおよびフッ素を含有する水溶液に処理対象とする磁石を浸漬し、振幅が1mm〜7mmで振動数が10Hz〜100Hzの振動を磁石に与えながら化成処理を行うことを特徴とする。
また、請求項2記載の耐食性磁石の製造方法は、請求項1記載の耐食性磁石の製造方法において、処理対象とする磁石が予め熱処理を行ったものであることを特徴とする。
本発明によれば、構成元素としてZr、Nd、フッ素、酸素を少なくとも含有する化成被膜(但しリンは含有しない)をR−Fe−B系焼結磁石の表面に形成することによる磁石に対する耐食性の付与を、化成処理反応性を向上させることによって効果的に行うことができる。
処理液に浸漬した磁石に所定の振動を与える方法の一例の概略図である。
本発明のR−Fe−B系焼結磁石の表面に、構成元素としてZr、Nd、フッ素、酸素を少なくとも含有する化成被膜(但しリンは含有しない)を有する耐食性磁石の製造方法は、少なくともZrおよびフッ素を含有する水溶液に処理対象とする磁石を浸漬し、振幅が1mm〜7mmで振動数が10Hz〜100Hzの振動を磁石に与えながら化成処理を行うことを特徴とするものである。本発明によれば、処理液として用いる少なくともZrおよびフッ素を含有する水溶液に浸漬した磁石に上記の振幅と振動数の振動を与えることで、化成処理反応性が向上することによって磁石の表面に化成被膜を効率的に形成することができる。
磁石に与える振動について、振幅を1mm〜7mmと規定し、振動数を10Hz〜100Hzと規定するのは、振幅が1mm未満である場合や、振動数が10Hz未満である場合には、振動の効果が十分に発揮されない恐れがあるからである。一方、10Hz以上の振動数で7mmを超える振幅の振動や1mm以上の振幅で100Hzを超える振動数の振動を簡易に発生させることは困難だからである。磁石に与える振動の振幅は4mm以上が望ましく、振動数は30Hz〜90Hzが望ましい。
上記の振幅と振動数の振動を磁石に与えることによって化成処理反応性が向上する理由は必ずしも定かでない。しかしながら、磁石に与えられた上記の振幅と振動数の振動は、処理液によって磁石の表面がエッチングされることで起こる磁石の表面と処理液の界面近傍のpH変動を均等化することによって安定な化成処理反応を促したり、磁石の表面の濡れ性を改善することによって磁石の表面に形成される化成被膜の付きまわり性を向上したりする効果を奏していると推察される。
処理液に浸漬した磁石に上記の振幅と振動数の振動を与える方法は特段限定されるものではないが、その一例としては、図1に示したように、処理対象とする磁石の処理液への浸漬を、磁石を保持治具に載置した状態で行うこととし、保持治具に振動発生装置を取り付け、振動発生装置で発生させた振動を保持治具を介して磁石に伝える方法が挙げられる。この場合、振動発生装置としては、ピストンバイブレータなどの市販のものを利用することができる。
処理液として用いる少なくともZrおよびフッ素を含有する水溶液としては、特許文献2に記載のもの、具体的には、フルオロジルコニウム酸(HZrF)、フルオロジルコニウム酸のアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩やアンモニウム塩などのようなZrおよびフッ素を含む化合物を水に溶解して調製されたもの(さらにフッ化水素酸などを添加してもよい)が挙げられる。処理液のZr含量は、金属換算で1ppm〜2000ppmが望ましく、10ppm〜1000ppmがより望ましい。含量が1ppmよりも少ないと化成被膜を形成できない恐れがあり、2000ppmよりも多いとコストの上昇を招く恐れがあるからである。また、処理液のフッ素含量は、フッ素濃度で10ppm〜10000ppmが望ましく、50ppm〜5000ppmがより望ましい。含量が10ppmよりも少ないと磁石の表面が効率良くエッチングされない恐れがあり、10000ppmよりも多いとエッチング速度が被膜形成速度よりも速くなり、均一な被膜形成が困難になる恐れがあるからである。処理液は、ジルコニウムテトラクロライド、Zrの硫酸塩や硝酸塩などのフッ素を含まないZr化合物と、フッ化水素酸、フッ化アンモニウム、フッ化水素アンモニウム、フッ化ナトリウム、フッ化水素ナトリウムなどのZrを含まないフッ素化合物を水に溶解して調製されたものであってもよい。なお、処理液には、化成被膜の構成元素であるNdの供給源が含まれていてもよいし含まれていなくてもよい。Ndは、化成処理の過程で、R−Fe−B系焼結磁石の表面がエッチングされることで磁石から溶出し、化成被膜に取り込まれるからである。処理液のpHは1〜6に調整することが望ましい。pHが1未満であると磁石の表面が過剰にエッチングされる恐れがあり、6を超えると処理液の安定性に影響を及ぼす恐れがあるからである。
処理液には上記の成分以外にも、化成処理反応性の向上、処理液の安定性の向上、化成被膜の磁石の表面への密着性の向上、磁石を部品に組み込む際に使用される接着剤との接着性の向上などを目的として、タンニン酸などの有機酸、酸化剤(過酸化水素、塩素酸およびその塩、亜硝酸およびその塩、硝酸およびその塩、タングステン酸およびその塩、モリブテン酸およびその塩など)、水溶性ポリアミド、ポリアリルアミンなどの水溶性樹脂などを添加してもよい。
処理液はそれ自体が保存安定性に欠ける場合、要時調製されるものであってもよい。本発明において使用可能な市販の処理液としては、日本パーカライジング社が提供する、パルシード1000MAとAD−4990から調製されるパルシード1000(商品名)が挙げられる。
処理液の温度は20℃〜80℃とすることが望ましい。該温度が20℃未満であると反応が進行しない恐れがあり、80℃を超えると処理液の安定性に影響を及ぼす恐れがあるからである。処理時間は、通常、10秒間〜10分間である。
なお、化成処理を行う際は送液ポンプなどを用いて処理液を攪拌し、磁石の表面に対して新鮮な処理液が常に供給されるようにすることが望ましい。
磁石の表面に対する所定時間の化成処理を行った後、磁石を処理液から引き上げ、乾燥処理を行う。乾燥処理の温度は、50℃未満であると十分に乾燥することができない結果、外観の悪化を招く恐れや、磁石を部品に組み込む際に使用される接着剤との接着性に影響を及ぼす恐れがあり、250℃を超えると形成された化成被膜の分解が起こる恐れがある。従って、該温度は、50℃〜250℃が望ましいが、生産性や製造コストの観点からは50℃〜200℃がより望ましい。なお、通常、乾燥処理時間は5秒間〜1時間である。
本発明の方法によって形成される、構成元素としてZr、Nd、フッ素、酸素を少なくとも含有する化成被膜(但しリンは含有しない)は、R−Fe−B系焼結磁石の表面に強固に密着しているので、膜厚が10nm以上であれば十分な耐食性を発揮する。化成被膜の膜厚の上限は限定されるものではないが、磁石自体の小型化に基づく要請や製造コストの観点から、150nm以下が望ましく、100nm以下がより望ましい。磁石の表面に形成されたこの化成被膜は、その厚みの外表面側半分の領域と磁石側半分の領域におけるZr含量を比較すると後者よりも前者の方が多いという特徴を有する。従って、外表面側半分の領域にはZrを含む化合物が多く含まれている。Zrを含む化合物としては、例えば耐食性に優れるZr酸化物が考えられるが、Zr酸化物の存在がこの化成被膜の耐食性に寄与していると推察される。
なお、処理対象とする磁石に対して事前に特別な人為的操作を行うことなく、その表面に化成被膜を形成した場合、化成被膜は、磁石の表面がエッチングされることで磁石から溶出したFeを構成元素としてさらに含有する。
また、処理対象とする磁石に対して予め熱処理を行ってからその表面に化成被膜を形成してもよい。例えば、450℃〜900℃の温度範囲において、酸素ガスの存在量の低減化が図られた、1Pa〜10Pa程度の真空中や、アルゴンガスなどの不活性ガス雰囲気中で、磁石に対して熱処理を行えば、粒界相のNdが磁石の表面に染み出し、処理雰囲気中に存在する酸素ガスと反応して生成すると考えられるNdと酸素を含む化合物(例えばNd酸化物)で構成される層が熱処理層として磁石の表面に形成されることにより、磁石の表面全体を効率的に均質化することができる(熱処理時間は5分間〜40時間が望ましく、熱処理層の厚みは100nm〜500nmが望ましい)。化成被膜はこうして磁石の表面に形成された均質な熱処理層の表面に形成してもよい(この場合には化成被膜はFeをほとんど含有しない)。
本発明において用いられるR−Fe−B系焼結磁石における希土類元素(R)は、少なくともNdを含み、Pr、Dy、Ho、Tb、Smのうち少なくとも1種を含んでいてもよく、さらに、La、Ce、Gd、Er、Eu、Tm、Yb、Lu、Yのうち少なくとも1種を含んでいてもよい。また、通常はRのうち1種をもって足りるが、実用上は2種以上の混合物(ミッシュメタルやジジムなど)を入手上の便宜などの理由によって用いることもできる。R−Fe−B系焼結磁石におけるRの含量は、10原子%未満であると結晶構造がα−Feと同一構造の立方晶組織となるため、高磁気特性、特に高い保磁力(Hcj)が得られず、一方、30原子%を超えるとRリッチな非磁性相が多くなり、残留磁束密度(B)が低下して優れた特性の永久磁石が得られないので、Rの含量は組成の10原子%〜30原子%であることが望ましい。
Feの含量は、65原子%未満であるとBrが低下し、80原子%を超えると高いHcjが得られないので、65原子%〜80原子%の含有が望ましい。また、Feの一部をCoで置換することによって、得られる磁石の磁気特性を損なうことなしに温度特性を改善することができるが、Co置換量がFeの20原子%を超えると、磁気特性が劣化するので望ましくない。Co置換量が5原子%〜15原子%の場合、Bは置換しない場合に比較して増加するため、高磁束密度を得るのに望ましい。
Bの含量は、2原子%未満であると主相であるRFe14B相が減少し、高いHcjが得られず、28原子%を超えるとBリッチな非磁性相が多くなり、Bが低下して優れた特性の永久磁石が得られないので、2原子%〜28原子%の含有が望ましい。また、磁石の生産性の改善や低価格化のために、PとSのうち、少なくとも1種、合計量で2.0wt%以下を含有していてもよい。さらに、Bの一部を30wt%以下のCで置換することによって、磁石の耐食性を改善することができる。
さらに、Al、Ti、V、Cr、Mn、Bi、Nb、Ta、Mo、W、Sb、Ge、Sn、Zr、Ni、Si、Zn、Hf、Gaのうち少なくとも1種の添加は、保磁力や減磁曲線の角形性の改善、生産性の改善、低価格化に効果がある。なお、R−Fe−B系焼結磁石には、R、Fe、Bおよびその他の含有してもよい元素以外に、工業的生産上不可避な不純物を含有するものでも差し支えない。
なお、本発明の方法によって形成される化成被膜の表面に、さらに別の耐食性被膜を積層形成してもよい。このような構成を採用することによって、化成被膜の特性を増強・補完したり、さらなる機能性を付与したりすることができる。本発明の方法によって形成される化成被膜は、樹脂被膜との密着性に優れるので、化成被膜の表面に樹脂被膜を形成することにより、磁石に対してより高い耐食性を付与することができる。磁石がリング形状の場合、化成被膜の表面への樹脂被膜の形成は、電着塗装によって行うことが、均一な被膜形成を行う上において望ましい。樹脂被膜の電着塗装の具体例としては、エポキシ樹脂系カチオン電着塗装などが挙げられる。
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明は以下の記載に限定して解釈されるものではない。
実施例1:
例えば、米国特許第4770723号公報に記載されているようにして、公知の鋳造インゴットを粗粉砕し、微粉砕後に成形、焼結、時効処理、表面加工を行うことによって得られた17Nd−1Pr−75Fe−7B組成(原子%)の外径:43mm×内径:37mm×長さ:48mm寸法のラジアルリング焼結磁石に対し、真空中(2Pa)で570℃×3時間の熱処理を行った後、降温してさらに460℃×6時間の熱処理を行い、Ndと酸素を含む化合物で構成される厚みが約150nmの熱処理層を磁石の表面に形成した(透過型電子顕微鏡およびエネルギー分散型X線分析装置による被膜の断面観察による)。次に、こうして熱処理を行った磁石に対し、図1に示した方法で振動を与えながら化成処理を行った。なお、この実施例においては、磁石保持治具を、5段重ねした上方開口網籠(縦:530mm×横:300mm×高さ:70mm寸法)と、これらを支持するフレーム部材で構成し、フレーム部材の上部に振動発生装置としてピストンバイブレータ(エクセン社製)を左右対称に2個取り付けた。磁石は各段の網籠にそれぞれ78個ずつ間隔を詰めて整列させて載置した(磁石の合計個数:390個)。化成処理に先立って、各段の網籠に磁石を載置した保持部材を、イオン交換水をオーバーフローさせた470Lの浴槽に浸漬し、1200Wの投げ込み式超音波振動子を用いて超音波水洗を1分間行った。その後、23.8kgのパルシード1000MAと8.3kgのAD−4990を全量が475Lとなるようにイオン交換水に溶解し、アンモニア塩でpHを3.6に調整して調製した処理液(日本パーカライジング社の商品名:パルシード1000)を満たした500Lの処理槽に、超音波水洗を行った各段の網籠に磁石を載置した保持部材を浸漬し、ピストンバイブレータに圧縮空気を印加して振幅が5.7mmで振動数が63Hzの振動を磁石に与えながら化成処理を2分間行った。なお、化成処理は、処理液の浴温を55℃とし、マグネットポンプ(三相電機社製)を用いて処理液を常に攪拌した状態で行った。化成処理を行った後、各段の網籠に磁石を載置した保持部材を処理液から引き上げ、イオン交換水を満たした300Lの浴槽に浸漬し、化成処理の際と同じ振幅と振動数の振動を磁石に与えることによる洗浄を1分間行い、続いて、60℃の温水を満たした300Lの浴槽に浸漬し、化成処理の際と同じ振幅と振動数の振動を磁石に与えることによる洗浄をさらに1分間行った。その後、各段の網籠に磁石を載置した保持部材にエアブロアでエアを吹き付けて磁石の表面に付着している水滴を十分に除去してから、160℃で35分間乾燥処理を行うことで、磁石の表面に化成被膜を形成した。各段の網籠から無作為に1個選択した合計5個の磁石の表面を目視観察したところ、隣接する磁石との接触に起因する化成被膜の形成不良は認められなかった。各磁石の表面に形成された化成被膜の膜厚はいずれも約60nmであり、構成元素としてZr、Nd、フッ素、酸素を少なくとも含有していた(但しリンは含有しない)(透過型電子顕微鏡およびエネルギー分散型X線分析装置による被膜の断面観察による。以下同じ)。また、化成被膜の外表面側のZr含量が多い層の厚みはいずれも約23nmであった(透過型電子顕微鏡による被膜の断面観察による。以下同じ)。さらに、各磁石を径方向に12等分した断片の外側表面のZr強度は10.0kcps〜12.0kcpsであり、平均値は11.3kcpsであった(リガク社製の蛍光X線分析装置:SMX−10を用いた管電圧50kV/50mAで40秒間のZr−Kα強度の測定平均値。以下同じ)。
比較例1:
振幅が9.5mmで振動数が5Hzの振動を磁石に与えること以外は実施例1と同様にして、磁石の表面に化成被膜を形成した。各段の網籠から無作為に1個選択した合計5個の磁石の表面を目視観察したところ、いずれの磁石にも隣接する磁石との接触に起因する化成被膜の形成不良が認められた。各磁石の表面に形成された化成被膜の膜厚はいずれも約53nmであり、構成元素としてZr、Nd、フッ素、酸素を少なくとも含有していた(但しリンは含有しない)。また、化成被膜の外表面側のZr含量が多い層の厚みはいずれも約18nmであった。さらに、各磁石を径方向に12等分した断片の外側表面のZr強度は7.5kcps〜9.5kcpsであり、平均値は8.0kcpsであった。なお、化成被膜の膜厚、化成被膜の外表面側のZr含量が多い層の厚み、断片の外側表面のZr強度は、いずれも化成被膜の形成不良箇所以外の箇所で測定した。
実施例2:
実施例1と同様にして作製した17Nd−1Pr−75Fe−7B組成(原子%)の外径:20mm×内径:15.8mm×長さ:12.6mm寸法のラジアルリング焼結磁石を用いることと、熱処理を行った磁石を各段の網籠の中央部付近に2個ずつ離間して載置すること以外は実施例1と同様にして、磁石の表面に化成被膜を形成した。各段の網籠から無作為に1個選択した合計5個の磁石の表面に形成された化成被膜の膜厚はいずれも約68nmであり、構成元素としてZr、Nd、フッ素、酸素を少なくとも含有していた(但しリンは含有しない)。また、化成被膜の外表面側のZr含量が多い層の厚みはいずれも約26nmであった。さらに、各磁石を径方向に12等分した断片の外側表面のZr強度は12.5kcps〜13.1kcpsであり、平均値は12.9kcpsであった。
比較例2:
実施例1と同様にして作製した17Nd−1Pr−75Fe−7B組成(原子%)の外径:20mm×内径:15.8mm×長さ:12.6mm寸法のラジアルリング焼結磁石を用いることと、熱処理を行った磁石を各段の網籠の中央部付近に2個ずつ離間して載置すること以外は比較例1と同様にして、磁石の表面に化成被膜を形成した。各段の網籠から無作為に1個選択した合計5個の磁石の表面に形成された化成被膜の膜厚はいずれも約58nmであり、構成元素としてZr、Nd、フッ素、酸素を少なくとも含有していた(但しリンは含有しない)。また、化成被膜の外表面側のZr含量が多い層の厚みはいずれも約20nmであった。さらに、各磁石を径方向に12等分した断片の外側表面のZr強度は8.0kcps〜10.0kcpsであり、平均値は9.0kcpsであった。
実施例3:
実施例1と同様にして作製した12Nd−3Pr−78Fe−1Co−6B組成(原子%)の縦:50mm×横:46.8mm×高さ:15mm寸法の平板状焼結磁石を用いること、熱処理を行った磁石を各段の網籠の中央部付近に2個ずつ離間して載置すること、振幅が6.5mmで振動数が30Hzの振動を磁石に与えること以外は実施例1と同様にして、磁石の表面に化成被膜を形成した。各段の網籠から無作為に1個選択した合計5個の磁石の表面に形成された化成被膜の膜厚はいずれも約65nmであり、構成元素としてZr、Nd、フッ素、酸素を少なくとも含有していた(但しリンは含有しない)。また、各磁石の対向する横辺の中央部同士を結ぶ線上の10箇所において測定したZr強度は10.0kcps〜13.3kcpsであり、平均値は12.3kcpsであった。
実施例4:
実施例1と同様にして作製した12Nd−3Pr−78Fe−1Co−6B組成(原子%)の縦:50mm×横:46.8mm×高さ:15mm寸法の平板状焼結磁石を用いること、熱処理を行った磁石を各段の網籠の中央部付近に2個ずつ離間して載置すること、振幅が2.0mmで振動数が90Hzの振動を磁石に与えること以外は実施例1と同様にして、磁石の表面に化成被膜を形成した。各段の網籠から無作為に1個選択した合計5個の磁石の表面に形成された化成被膜の膜厚はいずれも約70nmであり、構成元素としてZr、Nd、フッ素、酸素を少なくとも含有していた(但しリンは含有しない)。また、各磁石の対向する横辺の中央部同士を結ぶ線上の10箇所において測定したZr強度は11.0kcps〜14.4kcpsであり、平均値は13.3kcpsであった。
比較例3:
実施例1と同様にして作製した12Nd−3Pr−78Fe−1Co−6B組成(原子%)の縦:50mm×横:46.8mm×高さ:15mm寸法の平板状焼結磁石を用いること、熱処理を行った磁石を各段の網籠の中央部付近に2個ずつ離間して載置すること、振幅が0.7mmで振動数が120Hzの振動を磁石に与えること以外は実施例1と同様にして、磁石の表面に化成被膜を形成した。各段の網籠から無作為に1個選択した合計5個の磁石の表面に形成された化成被膜の膜厚はいずれも約50nmであり、構成元素としてZr、Nd、フッ素、酸素を少なくとも含有していた(但しリンは含有しない)。また、また、各磁石の対向する横辺の中央部同士を結ぶ線上の10箇所において測定したZr強度は7.3kcps〜8.3kcpsであり、平均値は7.7kcpsであった。
実施例5:
磁石に対して熱処理を行わないこと以外は実施例1と同様にして、磁石の表面に化成被膜を形成した。各段の網籠から無作為に1個選択した合計5個の磁石の表面を目視観察したところ、隣接する磁石との接触に起因する化成被膜の形成不良は認められなかった。各磁石の表面に形成された化成被膜の膜厚はいずれも約60nmであり、構成元素としてZr、Nd、フッ素、酸素、Feを少なくとも含有していた(但しリンは含有しない)。また、化成被膜の外表面側のZr含量が多い層の厚みはいずれも約25nmであった。さらに、各磁石を径方向に12等分した断片の外側表面のZr強度は10.5kcps〜12.4kcpsであり、平均値は11.5kcpsであった。
試験例1:耐食性評価試験
実施例1〜実施例5、比較例1〜比較例3において得られた表面に化成被膜を有する焼結磁石に対し、温度:60℃×湿度:90%RHの高温高湿条件下での耐食性試験を100時間行い、試験後の表面発錆面積を測定した(表面写真の画像解析による)。結果を表1に示す(実施例1と実施例5と比較例1については各段の網籠から無作為に1個選択した合計5個の磁石の測定値であり、その他の実施例と比較例については化成被膜分析に供しなかった残りの合計5個の磁石の測定値である)。
まとめ:
表1から明らかなように、実施例1〜実施例5においては、磁石に所定の振動を与えながら化成処理を行ったことで、化成処理反応性が向上し、膜厚が厚くてZr強度が強い化成被膜を磁石の表面に形成することができること、磁石の表面に形成された化成被膜の耐食性は極めて優れていることがわかった。しかしながら、磁石に与える振動の振動数が小さすぎると、振幅を増やしても化成処理反応性は向上しないこと(比較例1と比較例2)、磁石に与える振動の振幅が小さすぎると、振動数を増やしても化成処理反応性は向上しないこと(比較例3)がわかった。また、実施例1と比較例1の比較から、複数個の磁石を間隔を詰めた状態で処理しても、磁石に所定の振動を与えた場合には隣接する磁石同士の接触状態を開放することで、隣接する磁石同士の接触に起因する化成被膜の形成不良が効果的に防止されることがわかった。
本発明は、構成元素としてZr、Nd、フッ素、酸素を少なくとも含有する化成被膜(但しリンは含有しない)をR−Fe−B系焼結磁石の表面に形成することによる磁石に対する耐食性の付与を、化成処理反応性を向上させることによって効果的に行うことができる耐食性磁石の製造方法を提供することができる点において産業上の利用可能性を有する。

Claims (2)

  1. R−Fe−B系焼結磁石(Rは少なくともNdを含む希土類元素)の表面に、構成元素としてZr、Nd、フッ素、酸素を少なくとも含有する化成被膜(但しリンは含有しない)を有する耐食性磁石の製造方法であって、少なくともZrおよびフッ素を含有する水溶液に処理対象とする磁石を浸漬し、振幅が1mm〜7mmで振動数が10Hz〜100Hzの振動を磁石に与えながら化成処理を行うことを特徴とする耐食性磁石の製造方法。
  2. 処理対象とする磁石が予め熱処理を行ったものであることを特徴とする請求項1記載の耐食性磁石の製造方法。
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