以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1実施形態による光学ヘッド200の光学系を概略的に示す。なお、図1において、図27に示す構成要素と同じ構成要素については同じ符号を付して説明する。
図1に示すように、光学ヘッド200の光学系には、光源としての半導体レーザ101と、回折格子102と、ビームスプリッタ103と、コリメータレンズ104と、対物レンズ105と、シリンドリカルレンズ115と、光検出器120とが設けられている。
半導体レーザ101から出射された光束は、回折格子102によって複数の光束に分離される。回折格子102を透過した光束は、ビームスプリッタ103で反射された後、コリメータレンズ104によって平行光束に変換されて対物レンズ105に入射し、いわゆる3ビームの収束光となる。この収束光は、光ディスク201に照射される。対物レンズ105は、対物レンズアクチュエータ106により、光軸方向(フォーカス方向)及び光ディスク201のトラッキング方向(ラジアル方向)に駆動される。光ディスク201の情報層202で反射・回折された光束は、再び対物レンズ105を透過した後、コリメートレンズ104を透過してビームスプリッタ103に入射する。ビームスプリッタ103を透過した光束は、シリンドリカルレンズ115を透過した後、ホルダ130のアパーチャ131を透過して光検出器120に入射する。
図2(a)〜(c)は光検出器120の一例を示している。光検出器120は、受光部124とカバーガラス125と接着層126とを備えている。受光部124は、受光領域を有する受光面121と、回路部122と、端子部123とを備えている。接着層126は、受光部124とカバーガラス125とを接着する。すなわち、受光部124はカバーガラス125に固定されている。端子部123は、FPCまたは基板上に実装されて半田付けされている。端子部123は、受光面121で検出された受光量に応じた信号を出力する。
図3は光検出器120の受光面121を概略的に示している。受光面121には、4分割受光領域140とサブビーム受光領域141が形成されている。シリンドリカルレンズ115を透過した光束のうち、メインビーム142は4分割受光領域140により受光される。そして、4分割受光領域140のうちの二対の対角領域の信号の差分(対角領域の和信号が2つ得られるので、その差分)を加算アンプ144および差動アンプ145によって演算することにより、フォーカス信号が検出される。また、4分割受光領域140の各領域の和信号を加算アンプ144によって演算することにより、RF信号が検出される。
一方、光検出器120のサブビーム受光領域141には、光ディスク201の情報層202のトラックにて反射された反射光束であって、トラッキングエラー信号となる3ビーム法のサブビームが入射する。シリンドリカルレンズ115を透過した光束のうちサブビーム143はサブビーム受光領域141により受光される。
4分割受光領域140の受光量に応じた信号によるプッシュプル信号から、サブビーム受光領域141の受光量に応じた信号を加算アンプ141および差動アンプ142によって演算することにより、3ビーム法(いわゆるDPP法)のトラッキングエラー信号が生成される。
図4(a)〜(c)は、シリンドリカルレンズ115の構成を示している。図4(b)はシリンドリカルレンズ115の正面図であり、図4(a)は入射面側から見た斜視図であり、図4(c)は出射面側から見た斜視図である。
シリンドリカルレンズ115は、全体として円柱状に形成されており、その軸方向の一端面にシリンドリカル面116が形成されるとともに、軸方向の他端面には、レンズパワーを持った凹レンズ面117とその周囲のフラット面128とが形成されている。シリンドリカルレンズ115は、シリンドリカル面116が光束の入射面となり、凹レンズ面117が出射面となるように配置される。フラット面128は、シリンドリカルレンズ115のレンズ光軸118に垂直な面であり、レンズ光軸と同軸状の円環状である。図中、符号119はシリンドリカル面116の中央母線を示す。この中央母線は、シリンドリカル面116を形成する母線のうち、レンズ光軸と交差する母線に一致する。レンズ光軸118は凹レンズ面117の中心を通る。シリンドリカル面116は、この中央母線119の位置において最もレンズ光軸方向の内側に位置している。
第1実施形態における光学ヘッド200は、検出器ユニット127を備えている。検出器ユニット127は、シリンドリカルレンズ115とホルダ130と光検出器120とを備えており、反射光束が入射する側から順にシリンドリカルレンズ115、ホルダ130及び光検出器120が位置するように配設されている。
シリンドリカルレンズが光検出器から離れた状態で設けられる光学ヘッドと異なり、本実施形態の光学ヘッド200は、シリンドリカルレンズ115と光検出器120の間にホルダ130が存在し、かつ、シリンドリカルレンズ115と光検出器120は、それぞれホルダ130に接触している。そして、シリンドリカルレンズ115が、Z方向(反射光束の光軸方向)においてホルダ130の一側に配置された状態でホルダ130に接着される一方、光検出器120が、Z方向においてホルダ130の他側に配置された状態でホルダ130に接着されている。
図5は、光学ヘッド200を部分的に示している。図5に示すように、光学ヘッド200には光学ベース113が設けられており、光学ベース113は、一例として、半導体レーザ101(図1参照)、回折格子102(図1参照)、ビームスプリッタ103、コリメータレンズ104及び対物レンズアクチュエータ106(図1参照)を保持する。一方、検出器ユニット127は、光学ベース113に対し、外部ジグ(図示せず)によって保持部132(図6(a)参照)がチャックされた状態で、光学ベース113上でZ方向(光軸方向)に位置調整可能で、かつX−Y平面内(光軸と直交する面内)で位置調整可能である。
ここで、光学ベース113および光軸に対する検出器ユニット127の位置調整の方法について説明する。X−Y平面内での検出器ユニット127の調整は、メインビーム142が4分割受光領域140の略中心に入射するように検出器ユニット127を移動させることにより行われる。一方、Z方向の位置調整は、対物レンズ105と情報記録層202とがジャストフォーカスとなる位置関係の状態で、受光面121が非点隔差の焦点位置に位置するよう検出器ユニット127をZ方向に微調整することにより行う。これにより、4分割受光領域140に入射するメインビームが円形になってフォーカスエラー信号のオフセットがなくなり、しかも、対物レンズ105と情報記録層202がジャストフォーカスとなるためにフォーカスエラー信号の出力が0となる。また、反射光束の光軸回りの調整(θz)を行うことにより、サブビーム受光領域141の略中心にサブビーム143が入射する。このX方向及びY方向の調整によりフォーカスエラー信号のバランス調整(後に定義)を行い、回転調整(θz)によってトラッキングエラー信号のオフセット調整を行い、Z方向の調整によりフォーカスエラー信号のフォーカスオフセットの調整を行う。以上のように、検出器ユニット127のZ方向、及びX−Y方向の位置調整を行うが、本実施形態の光学ヘッド200では、シリンドリカルレンズと光検出器120がそれぞれホルダ130に固定されているため、従来の光学ヘッドに比べて、シリンドリカルレンズ115と光検出器120との相対的な位置ずれを低減することが可能である。
図6(a)〜(c)は、検出器ユニット127の構成を示している。図6(a)は光検出器側から見た側面図であり、(c)はシリンドリカルレンズ側から見た側面図であり、(b)は正面図である。
ホルダ130は、厚みが一定の平板状に形成されており、一例として、円筒形のアパーチャ131、保持部132、光検出器押当て部137、光検出器位置決め部135、シリンドリカルレンズ押当て部138、およびシリンドリカルレンズ位置決め部136等を有する。ホルダ130において、光ディスクで反射した光が入射する側の面にシリンドリカルレンズ115が接着されており、この面とは反対側の面に光検出器120が接着されている。ここで、シリンドリカルレンズ115が接着されるホルダ130の一方の主面(反射光束の光軸方向における一端面)を第1主面、光検出器120が接着されるホルダ130の他方の主面を第2主面と呼んでもよい。第1主面及び第2主面は互いに平行に設定されている。
光検出器押当て部137は、ホルダ130の第2主面に形成された部位であり、この第2主面の略中央部に位置している。つまり、第2主面の一部が光検出器押当て部137として機能する。光検出器押当て部137には、光検出器120が面接触する。光検出器位置決め部135は、第2主面に設けられていて、この光検出器位置決め部135を利用することにより、光検出器120をX方向及びY方向に位置決めすることができる。
シリンドリカルレンズ押当て部138は、ホルダ130の第1主面に形成された部位であり、この第1主面の略中央部に位置している。つまり、第1主面の一部がシリンドリカルレンズ押当て部138として機能する。シリンドリカルレンズ押当て部138には、シリンドリカルレンズ115のフラット面128が面接触する。シリンドリカルレンズ位置決め部136は、第1主面に設けられていて、アパーチャ131と同心状に形成された円弧面を有する。この円弧面は、シリンドリカルレンズ115の周面に対向する面である。このシリンドリカルレンズ位置決め部136を利用することにより、シリンドリカルレンズ115をX方向及びY方向に位置決めすることができるとともに、周方向の向きを調整するときにシリンドリカルレンズ115を光軸回りにスムーズに回転させることができる。
アパーチャ131は、光軸方向に見て光検出器押当て部137及びシリンドリカルレンズ押当て部138の範囲内に形成され、ホルダ130の厚み方向に貫通する円形断面の開口である。
ホルダ130の厚みが一定になるように管理されているため、光検出器120とシリンドリカルレンズ115との間隔を精度よく規定することができるとともに、シリンドリカルレンズ115の向きを反射光束の光軸方向に精度よく合わせることができる。ホルダ130の厚みは例えば1.5mm程度である。
光検出器120を位置決めするには、ホルダ130の保持部132を外部ジグ(図示せず)によりチャックし、この状態で、光検出器押当て部137に光検出器120を押し当てて光検出器位置決め部135により光検出器120の位置決めを行う。これにより、光検出器120は、ホルダ130に対して、X方向、Y方向およびZ方向に精度良く位置決めされる。光検出器120は、この状態で光検出器接着部133により接着固定される。
この構成により、光検出器とシリンドリカルレンズとが別体構成となっている光ヘッドとは異なり、Z方向におけるシリンドリカルレンズ115と光検出器120との位置誤差は、ホルダ130の寸法誤差のみとなる。この寸法誤差は、ホルダ130の成形精度または加工精度となる部品精度より決定されるため、約5〜20μm以下に抑えることが可能である。従来の光ヘッドにおいては、光検出器とシリンドリカルレンズとの位置ずれは、後述するように約300μ程度発生すると概算されるため、本実施形態の構成により位置ずれを大幅に低減することが可能となる。また光検出器120に入射する光ビームの位置ずれを低減できることにより、記録再生信号特性の劣化を防止することが可能となる。
シリンドリカルレンズ115は、シリンドリカルレンズ位置決め部136によってX方向及びY方向の位置決めが行われ、また、シリンドリカルレンズ115のフラット面128をシリンドリカルレンズ押当て部138に押し当てることにより、シリンドリカルレンズ115のZ方向の位置決めがなされる。さらに、シリンドリカルレンズ115は、入射面側がシリンドリカル面116となるよう配設されているため、図外のオートコリメータ等でシリンドリカル面116に平行光束を照射し反射光束の形状(シリンドリカル面116の中央母線119)を確認することにより、容易にかつ高精度にシリンドリカル面116の中央母線119の向きを確認することができる。すなわち、オートコリメータ等の外部測定装置(図示せず)を利用し、シリンドリカル面116の角度(シリンドリカル面116の中央母線119の向き)を検出してシリンドリカルレンズ115の回転方向の調整を行い、シリンドリカルレンズ接着部134によりシリンドリカルレンズ115とホルダ130とを接着固定してもよい。これにより、ホルダ130およびアパーチャ131に対して、光検出器120とシリンドリカルレンズ115をより精度良く位置決めすることができる。
また、本実施形態の光学系においては、シリンドリカルレンズ115のシリンドリカル面116が、光情報媒体からの反射光束の入射側に位置している。従来、検出光学系の倍率が小さい光学ヘッドではシリンドリカルレンズと光検出器の距離が近づくことは想定されていないため、シリンドリカル面116が光検出器側に配置する構成が採用されている。これに対し、本実施形態では、シリンドリカルレンズ115と検出器120とがホルダ130を挟むように配置されている。このため、シリンドリカルレンズ面116が光検出器120側になるように配置すると、シリンドリカル面116と光検出器120の受光面との距離が近接するため、フォーカスエラー信号性能が劣化する可能性がある。そこで、本実施形態では、光の入射面側にシリンドリカル面116が来るようにシリンドリカルレンズ115が配置されている。この構成により、検出光学系の倍率が大きい場合でも非点隔差を大きくする事ができる。
よって、前側焦線と焦点位置との距離、および後側焦線と焦点位置との距離をそれぞれ大きくかつバランスよく構成することができるため、対称性のよいフォーカスエラー信号を実現でき、フォーカスサーボの品質を向上することができる。前側焦線、焦点位置および後側焦線については、図7に示している。
また、シリンドリカル面116の中央母線119の周方向の向きを調整する際に、ホルダ130がシリンドリカルレンズ115のフラット面128に接触しているため、シリンドリカルレンズ115とホルダ130とが当接する面積が大きくなる。このため、シリンドリカルレンズ115とホルダ130の相対角度を安定させた状態で、シリンドリカル面116の中央母線119をレンズ光軸118を中心として回転調整することが可能となる。ここで、回転調整とは、4分割受光領域140の分割線の方向に対するシリンドリカル面116の中央母線119の向きを調整することである。例えば、図10に示すように、4分割受光領域140の分割線の向きに対して、前側焦線および後側焦線の角度を45°とする調整を行うことをいう。そして、フラット部128とホルダ130とが密着した状態で両者を接着固定するため、信頼性を大幅に向上することが可能となる。
図8は、図7の構成と比較するために、シリンドリカルレンズ155のシリンドリカル面116を光検出器120側に配置した構成を示したものである。また、図9(a)〜(b)は図7および図8の光検出器120上の焦点位置に対するシリンドリカル面116の位置と前側焦線の位置と後側焦線の位置との関係を示している。図9(a)は、図7の構成に対応しており、シリンドリカル面116と焦点位置(光検出器120の受光面)とが離れた構成を示している。一方、図9(b)は、図8の構成に対応しており、シリンドリカル面116と焦点位置とが近接した構成を示している。
図9(a)(b)において、焦点位置のスポット径(最小錯乱円)を1mmと仮定したとき、シリンドリカル面116が光検出器120と反対側に配置された構成(図9(a))では、焦点位置から前側焦線までの距離と、焦点位置から後側焦線までの距離との比は0.8:1となる。本実施形態では、小型の光学ヘッドにもかかわらず、S字信号のGNDに対する対称性が良く、安定したいわゆるフォーカスエラー信号を得ることが可能となる(図9(c))。
一方、シリンドリカル面116が光検出器120側に配置された構成(図9(b))では、焦点位置から前側焦線までの距離と、焦点位置から後側焦線までの距離との比は1:3となり、S字信号のGNDに対する対称性が大幅に悪化したフォーカスエラー信号となり(図9(d))、不安定なフォーカスサーボとなってしまう。さらに非点隔差距離も、シリンドリカル面116を光検出器120と反対側に配置した図9(a)の構成に対し、シリンドリカル面116を光検出器120側に配置した図9(b)の構成では2〜3割程度大きくすることが可能となる。このため、図9(a)の構成では、幅の広い引き込み範囲を確保したS字信号(フォーカスエラー信号)を得ることが可能となり、安定したフォーカスサーボを実現できる。
本実施形態の構成では、シリンドリカルレンズ115とホルダ130と光検出器120とが一体構成となった検出器ユニット127において、シリンドリカルレンズ115のフラット面128とホルダ130とが密着した状態で両者が接着によって固定されている。シリンドリカルレンズ押当て部138とフラット面128とが密着した状態でシリンドリカルレンズ接着部134によって接着されるため、接着剤の膨張および収縮によるシリンドリカルレンズ115とホルダ130との相対位置ずれおよび相対角度ずれが小さくなる。その結果、フォーカスエラー信号の品質を安定にすることができる。しかも、シリンドリカル面116が入射面側に配置されているので、シリンドリカルレンズ115の回転調整を短時間かつ高精度に行うことができる。そのため、性能の優れた光学ヘッド200を実現できる。
また、シリンドリカル面116と凹レンズ面117とを比較した場合、同じ曲率のレンズ面でも金型加工およびレンズ成形において、シリンドリカル面116の方が難易度が高い。一方、シリンドリカル面116を入射面側に配置することにより、シリンドリカル面116と検出器120の受光面121との相対距離を長くする事が可能となる。この距離を長くすることによりシリンドリカル面116のレンズパワーを比較的小さくする事が可能となるため、シリンドリカル面116の金型加工および成形が容易となる。
ここで、ホルダ130のうち、光検出器120との当接面の特徴について簡単に説明する。本実施形態では、ホルダ130の表面うち、光検出器120との当接面である光検出器押当て部137の所定範囲において、摩擦係数が低くなっていることを特徴とする。これにより、光検出器120の位置調整がし易くなっている。具体的には、ホルダ130を形成するための金型(モールド)において、光検出器押当て部137の所定範囲に相当する部位の表面粗度が他の部分の表面粗度よりも小さくなっている。このため、孤当該部分の表面が滑らかになっている。本実施形態では、ホルダ130の保持部132を外部ジグ(図示せず)によりチャックした状態で、光検出器120をホルダ130の光検出器押当て部137に押し当て、この状態でX−Y面内での光検出器120の位置調整が行われる。そのため、ホルダ130の表面のうち、光検出器120と当接する面の摩擦係数を低くすることにより、1ミクロン以下の微小な動きが可能となり、光検出器120の位置決め調整を精確に行うことができるようになる。また、光検出器120と接する部分の摩擦係数を重点的に低くすることにより、光検出器押当て部137(第2主面とも言う)の全体において摩擦係数を低くする場合と比較して、より低価格でホルダ130を形成できるという利点を有する。ここで、光検出器120と当接する面とは、ホルダ130の光検出器押当て部(第2主面とも言う)の中心部、すなわち重心位置を含む領域である可能性が高い。すなわち、重心点を含む領域の表面粗度を低くしておくことにより、少なくとも平面調整をスムーズに行うことができるという所期の効果を奏することができる。
一方、ホルダ130の表面うち、シリンドリカルレンズ115との当接面であるシリンドリカルレンズ押当て部138の所定範囲において、摩擦係数が低くなっている。これにより、シリンドリカルレンズ115の位置調整がし易くなっている。本実施形態では、ホルダ130の保持部132を外部ジグ(図示せず)によりチャックした状態で、シリンドリカルレンズ115をホルダ130のシリンドリカルレンズ押当て部138に押し当て、この状態でX−Y面内でのシリンドリカルレンズ115の位置調整が行われる。そのため、ホルダ130の表面のうち、シリンドリカルレンズ115と当接する面の摩擦係数を低くすることにより、1ミクロン以下の微小な動きが可能となり、シリンドリカルレンズ115の位置決め調整を精確に行うことができるようになる。また、シリンドリカルレンズ115と接する部分の摩擦係数を重点的に低くすることにより、シリンドリカルレンズ押当て部138(第1主面とも言う)の全体において摩擦係数を低くする場合と比較して、より低価格でホルダ130を形成できるという利点を有する。ここで、シリンドリカルレンズ115と当接する面とは、ホルダ130のシリンドリカルレンズ押当て部(第1主面とも言う)の中心部、すなわち重心位置を含む領域である可能性が高い。すなわち、重心点を含む領域の表面粗度を低くしておくことにより、少なくとも平面調整をスムーズに行うことができるという所期の効果を奏することができる。
また、シリンドリカルレンズ位置決め部136の円弧面についても、シリンドリカルレンズ押当て部138の表面粗度と同程度の表面粗度としてもよい。
従来の光検出器では、ホルダに光検出器を当接させた状態で、光検出器の位置合わせを行う必要性がない。それに対し、本実施の形態では、ホルダ130に光検出器120を当接させた状態で光検出器120の位置決め調整が行われる。よって、ホルダ130の光検出器押当て部137のうち所定範囲、(例えばホルダ130と光検出器120とが接触する範囲と、第2主面での位置調整範囲となる300ミクロンの範囲)において、ホルダ表面の摩擦係数を周囲の表面より低くすることにより、より精確な位置合わせが可能となる。また、本実実施形態では、ホルダ130にシリンドリカルレンズ115を当接させた状態でシリンドリカルレンズ115の位置決め調整が行われる。よって、ホルダ130のシリンドリカルレンズ押当て部138のうち所定範囲(例えばホルダ130とシリンドリカルレンズ115とが接触する範囲と、第1主面での位置調整範囲となる300ミクロンの範囲)において、ホルダ表面の摩擦係数を周囲の表面より低くすることにより、より精確な位置合わせが可能となる。
本実施形態では、第2主面の少なくとも一部(光検出器押当て部137)の表面粗度がその他の部位の表面粗度よりも小さくなっているが、この構成に限られるものではない。例えば、第2主面全体の表面粗度が、ホルダ130の側面(光軸に平行な面)の表面粗度よりも小さい構成であってもよい。また、本実施形態では、第1主面の少なくとも一部(シリンドリカルレンズ押当て部138)の表面粗度がその他の部位の表面粗度よりも小さくなっているが、この構成に限られるものではない。例えば、第1主面全体の表面粗度が、ホルダ130の側面(光軸に平行な面)の表面粗度よりも小さい構成であってもよい。
図11は検出器ユニット127と光学ベース113との固定方法を示す図である。
検出器ユニット127について、X方向、Y方向、Z方向の位置調整および光軸回りの回転調整を行った後、光学ベース113とホルダ130との接着部であるホルダ接着部139に接着剤を塗布し、光学ベース113に対して検出器ユニット127を固定する。
小型かつ多層光ディスクの記録及び再生に対応した光学ヘッドを実現するためには、対物レンズ105、コリメートレンズ104および光検出器120を有する、いわゆる検出光学系の横倍率を大きくし、他層で反射した迷光がサブビーム受光領域に入射しない構成にするとともに、検出光学系を小型化する必要がある。他層で反射した迷光がサブビーム受光領域に入射すると、トラッキングエラー信号にオフセットが発生し、トラッキングサーボの性能が大幅に劣化し、その結果、記録再生性能が低下するためである。
そのためには、光学ヘッドの検出光学系を大きくする必要がある。一方、検出光学系を小型化するためには、シリンドリカルレンズに曲率半径の小さなレンズ面を持たせ、大きなレンズパワーを発生させることが必要となる。
ここで、図12(a)に、検出光学系の倍率(横倍率β)とシリンドリカルレンズの凹レンズ部(凹レンズ面)の半径との関係、および、光検出器上でのメインビームに対するサブビームのズレ量の概算値を示す。ここでいう検出光学系とは、対物レンズ105から光検出器120に至る反射光束の通る経路の光学系であり、対物レンズ105、コリメートレンズ104およびシリンドリカルレンズ115を有する。また、横倍率とは、対物レンズ105の焦点距離に対する、コリメートレンズ104及びシリンドリカルレンズ115を合成した光学系での焦点距離の比を表す。光検出器120上でのメインビームに対するサブビームのズレは、シリンドリカルレンズ115と光検出器120の間の距離に誤差が生じることによって発生する。
シリンドリカルレンズと光検出器とが離れた構成となっている場合には、光軸方向の調整を行ったとしても、シリンドリカルレンズと光検出器との間の距離のずれとして、最大約300μmのずれが発生する。なお、図12(a)は、シリンドリカルレンズと光検出器の距離のずれ量を約100μmとして、サブビームのスポット位置ズレを計算した結果を表している。
光学ヘッドのサイズを一定とした場合において、多層光ディスクに対応するために検出光学系の倍率(横倍率)を従来の5〜10倍の構成に代えて10倍を超える構成にすると、倍率を大きくするに従って、凹レンズ部の半径は急激に小さくなる。このため、シリンドリカルレンズと光検出器との光軸方向の位置ズレに敏感になり、メインビームに対するサブビームのズレが増大する。
次に、サブビームの位置ずれ量をPDバランスに変換して検討する。一般的に、PDバランスが30%ずれるとトラッキングサーボの特性は大幅に劣化し、再生又は記録の信号特性に与える影響が無視できなくなると考えられている。
図12(b)、図7、10を参照して、PDバランスの定義について説明する。
図7は、シリンドリカルレンズ115のシリンドリカル面の中央母線119と4分割受光領域140との関係を示した図である。シリンドリカルレンズ115は、互いに焦点位置の異なる非点隔差を発生する。この非点隔差は、X-Y面内(反射光束の光軸に対し直交する面内)において互いに90度の角度となる前側焦線および後側焦線との間で生ずる。図7ではシリンドリカル面の中央母線119は紙面に垂直な方向に設定されているが、光検出器120の4分割受光領域140の分割線に対して45度傾いた角度に配置されている(図10)。
光ディスク201の面振れ等により、情報層202と対物レンズ105との相対距離が変化することにより、前側焦線および後側焦線で焦点を結ぶ。受光面121は図中の焦点位置に配置されることとなる。検出光学系の倍率(横倍率β)は、対物レンズ105の焦点距離と、コリメートレンズ104の焦点距離と、シリンドリカルレンズ115の凹レンズ面117の光学パワーにより決定される。
図10は、光軸方向に見たときの前側焦線および後側焦線の形状、および4分割受光領域140上での光束の形状を示している。4分割受光領域140の各受光領域での検出信号をそれぞれA,B,C,Dとすると、フォーカスエラー信号は(A+C)−(B+D)によって演算され、PDバランスとして、PDバランス(X方向)は、((A+B)−(C+D))/(A+B+C+D)によって演算され、PDバランス(Y方向)は、((A+D)−(B+C))/(A+B+C+D)によって演算される。
ここで、PDバランス(X方向)およびPDバランス(Y方向)が0により近くなるように、検出器ユニット127をX方向及びY方向に位置調整する。
光検出器上でのサブビームの1μmのズレは、サブビームのPDバランスでは約5%のずれに相当する。このため、検出光学系の倍率が16倍の場合には、サブビームのPDバランスが約20%ずれてしまう。また、シリンドリカルレンズと光検出器との距離が300μmずれている場合には、PDバランスは約60%ずれることになる。このため、トラッキングエラー信号のオフセットが増大し、トラッキングサーボの性能が大幅に悪化することになる。
このため、小型でかつ検出光学系の倍率の大きい光学ヘッドでは、シリンドリカルレンズと光検出器とを別体で調整する構成は困難となる。
これ対して、本実施形態では、シリンドリカルレンズ115と光検出器120とのZ軸方向の位置ずれを約5μm〜20μm以下に低減することができるため、検出倍率が16倍のレンズを用いた場合であっても、PDバランスは約4%程度となる。この値は、従来の光学ヘッドに比べて非常に低い値であり、高い検出倍率を有する対物レンズを使用する場合においても、良好な再生信号特性を保持できることがわかる。なお、第1実施形態では、横倍率が14倍〜16倍が望ましく、横倍率が14倍の場合には、シリンドリカル面の曲率半径を2.6mm以下にすればよい。
図13(a)は、2層の光ディスク201において他の記録層からの表面反射を概略的に示したものであり、図13(b)は、多層の光ディスク301において他の記録層からの表面反射を概略的に示したものである。この他層からの反射光がサブビーム受光領域141に入射すると、トラッキングエラー信号にオフセットを与え、トラッキングサーボの品質を劣化させる。図13(a)では、2層ディスクである光ディスク201の場合において、ある記録層に収束光300の焦点を結んだ時に、他の記録層からの迷光の発生の様子を示す。L0層(記録層)に焦点を結んだ時、L1層(記録層)で反射した光が他層迷光となる。
また、図13(b)では、4層ディスクである光ディスク301の場合において、ある記録層に収束光300の焦点を結んだ時に、他の記録層からの迷光の発生の様子を示す。図13(b)では、L2層(記録層)に焦点を結んでおり、L0層、L1層、L3層(記録層)で反射した光が他層迷光となる。図13(a)に示す2層ディスクのときには、L0層とL1層の層間隔d2は規格上25±5μmとなっており、最小でも20μm、最大でも30μmである。このため、光検出器120上での他層迷光の大きさはある程度制限される。一方、図13(b)に示す4層ディスク等の3層以上の光ディスクの場合、最も層間隔の小さい層間隔d4min(図の例では、L2層とL3層の層間隔)は、2層の場合と比べて小さくなる可能性が高い。また、もっとも離れた層同士の層間隔d4max(図例では、L0層とL3層の層間隔)は、光検出器120に入射する他層迷光の大きさは、2層の場合と比べて大幅に大きくなる。従って、安定したトラッキングエラー信号を検出し、多層の光ディスクの記録再生に対応するためには、他層迷光がサブビーム受光領域141に漏れ込まないように、検出光学系の倍率(横倍率β)を大きくするとともに、メインビーム142を受光する4分割受光領域140とサブビーム143を受光するサブビーム受光領域141との距離を離す必要がある。
図14(a)および(b)には、光検出器120上におけるメインビーム142とサブビーム143との距離と他層迷光147の大きさとの関係が示されている。光検出器120上におけるメインビーム142とサブビーム143との距離は、情報記録層202(図1参照)のトラックに集光されたメインビームとサブビームの間隔に、検出光学系の横倍率を掛けた値となる。たとえば、情報記録層202のトラック上におけるメインビームとサブビームとの間隔を20μmとし、検出光学系の横倍率を6倍程度とすると、光検出器120上におけるメインビーム142とサブビーム143との距離は、約120μmとなる。しかし、多層の光ディスクの記録再生に対応すべく、安定したトラッキングエラー信号を検出するには、他層迷光の大きさを約150μmとして、検出光学系の横倍率は略10倍必要となる。このときのメインビーム142とサブビーム143との距離は、約200μmとなる。ここで、情報層202のトラック上におけるメインビームとサブビームとの間隔は略20μmとしたが、この値は光ディスク201の内周から外周への移動時のトラッキングエラーのオフセットに影響する値であり、機器ごとにあらかじめ設定される値である。一般的には10μm〜20μmが選定される。
一方、光学ヘッド200の小型化を実現するためには検出光学系の寸法を小さくする必要があるが、他層迷光の影響を考慮した上での検出光学系の小型化が必要となる。ここで、他層迷光の影響を考慮すれば、検出光学系の倍率を大きくする必要がある。しかし、横倍率を維持したまま対物レンズ105とコリメートレンズ104のみで検出光学系の小型化を行う場合には、対物レンズ105の焦点距離を小さくすることとなるため、光ディス201の表面と対物レンズ105との間のワーキングディスタンスが短くなる。そのため、フォーカスサーボが困難になるという課題が発生するため実現は難しい。しかし、前述のようにシリンドリカルレンズ115の出射面側に凹レンズ面117を配置する構成により、対物レンズ105の焦点距離を変えずに横倍率を大きくし、かつ検出光学系の寸法を小さくすることが可能となる。
4分割受光領域140とサブビーム受光領域141との距離を大きくするためには、対物レンズ105、コリメートレンズ104、シリンドリカルレンズ115の凹レンズ117で構成される検出光学系の横倍率を約10倍から20倍の範囲とすることが望ましい。
また、横倍率を大きくした上で光学ヘッド200の小型化を実現するためには、検出光学系の寸法を小さくする必要があり、シリンドリカルレンズ115の凹レンズ117として、曲率半径が約5mm〜1mm(1mm以上で、5mm以下)である極めて大きなレンズパワーを有するレンズが必要となる。
このように、検出光学系の倍率が大きく、かつシリンドリカルレンズ115が大きなレンズ効果を有している構成では、シリンドリカルレンズ115と光検出器120の受光面121との相対距離の誤差によって、検出光学系の横倍率が大きく変化する。そのため、トラッキングエラー信号の生成に必要なサブビーム143がサブビーム受光領域141より外れた位置に入射する可能性が増す。例えば、シリンドリカルレンズ115と光検出器120との間の距離が所定の距離よりも短くなると、検出光学系の横倍率が小さくなり、サブビーム143は4分割受光領域140側に近づくことになる。反対に、シリンドリカルレンズ115と光検出器120との間の距離が所定の距離よりも長くなると、検出光学系の横倍率が大きくなり、サブビーム143は、サブビーム受光領域141の外側に入射することになる。
横倍率が10倍以上の検出光学系では、シリンドリカルレンズ115と光検出器120との間の相対的な距離の誤差が50μmを超えると、横倍率の変化は約0.7%以上となる。すなわち、サブビーム143が数μmだけY方向に移動し、トラッキングエラー信号のオフセット変化が約10%を超え、これにより、トラッキングサーボの性能が大幅に劣化する。従って、横倍率の大きな検出光学系では、シリンドリカルレンズ115と光検出器120の相対距離の誤差は50μmよりも大幅に小さくすることが必須となる。
本実施形態の光学ヘッド200では、検出器ユニット127での位置調整を行う際に、ホルダ130に対してシリンドリカルレンズ115と光検出器120を予め精度良く位置決めすることができる。そのため、光学ベース113上でXY平面内での光検出器120の位置調整を行う場合、およびZ方向(光軸方向)のシリンドリカルレンズ115の位置調整を行う場合において、ホルダ130に対するシリンドリカルレンズ115および光検出器120の相対位誤差を大幅に低減することが可能となる。このため、検出光学系の横倍率の誤差を大幅に低減できるとともに、トラッキングエラー信号の劣化を大幅に低減することが可能となる。
本実施形態の光学ヘッド200によれば、シリンドリカルレンズ115と光検出器120とが一体構成となっているので、光検出器120に対するシリンドリカルレンズ115のZ方向の位置誤差は、ホルダ130の寸法誤差によるもののみとなる。この寸法誤差は5〜20μm程度に抑えることが可能であるため、シリンドリカルレンズ115と光検出器120のZ方向の位置誤差を50μm以下に低減する事が可能である。また、光検出器120に対するシリンドリカルレンズ115のX方向及びY方向の相対位置誤差も50μm以下に抑えることができるため、多層の光ディスク301に対しても横倍率の大きな光学ヘッド200を採用でき、光学ヘッド200の小型化と高性能化を実現できる。
また、検出器ユニット127ではシリンドリカルレンズ115と光検出器120とが予めホルダ130に対して固定されているため、光学ベース113上で検出器ユニット127自体をXY平面内で位置調整できるとともに光軸方向(Z方向)の位置調整をも行うことができる。これにより、検出光学系の横倍率の変化を低減することができる。そのため、トラッキングエラー信号のオフセット変動の少ない安定した光学ヘッド200の記録再生性能を実現することができるとともに、信頼性に優れた光学ヘッド200を実現できる。
図15(a)、(b)は、Z方向の調整時におけるアパーチャ131の径への影響を示している。アパーチャ131とシリンドリカルレンズ115と光検出器120を一体化した構成においても、アパーチャ131の開口径が広い方が、アパーチャ131とシリンドリカルレンズ115と光検出器120の調整時の誤差の許容幅が大きくなるため、本来は好ましい。ただし、本実施形態のように、アパーチャ131とシリンドリカルレンズ115と光検出器120とを一体化するにあたっては、多層光ディスク301の記録又は再生が行えるようにすべく、10倍以上の倍率の有する検出光学系が使用される。このような多層光ディスク301で記録再生を行う際には、記録又は再生しようとする層以外の情報記録層からの反射光(他層迷光)が入射し、再生信号品質に大きな影響を与えてしまうので、これらの多層迷光をカットする必要がある。このような観点からは、アパーチャ131の面積をより小さくする必要がある。
アパーチャ131および光検出器120に対してシリンドリカルレンズ115が分離する一方で、アパーチャ131と光検出器120とが一体となっている光学ヘッドにおいては、光検出器120の調整量が、アパーチャ131とシリンドリカルレンズ115との相対位置に誤差を与えることは避けられない。このため、光検出器120の光軸と直交する面内での調整量(一般的には0.05mm〜1mm程度)以上の開口径の寸法余裕が少なくとも必要となる。それに対し、本実施形態では、アパーチャ131とシリンドリカルレンズ115と光検出器120とが一体化した構成であるため、アパーチャ131の開口径を小さくすることが可能になる。
図15(a)は、比較例の光学ヘッドを示す。この構成では、シリンドリカルレンズ115を前後方向(Z方向)に調整することによってシリンドリカルレンズ115とホルダ130の相対位置が変化するため、メインビームaとメインビームbとにおいて、アパーチャ131を通過する光束径が大きく変化する。そのため、アパーチャ131の径も大きくする必要があり、光検出器120のサブビーム受光領域141に入射する迷光の量も大幅に増加する。
一方、図15(b)に示す本実施形態の光学ヘッド200では、検出器ユニット127を一体でZ方向に調整する。このため、シリンドリカルレンズ115とホルダ130の相対距離が変化しないため、アパーチャ131を通過する光束径はほとんど変化しない。このため、アパーチャ131の径を限界まで小さくすることができ、光検出器120のサブビーム受光領域141に入射する迷光の量を大幅に減少させることができる。
図16(a)、(b)を参照して、X方向の調整時におけるアパーチャ131の径の差を説明する。図16(a)は比較例の光学ヘッドを示しており、この光学ヘッドでは、光検出器120を左右(X方向)に調整することによってシリンドリカルレンズ115とホルダ130の相対位置関係が変化し、そのために、メインビームaとメインビームbとにおいて、アパーチャ131を通過する光束径が大きく変化する。そのため、アパーチャ131の径も大きくする必要があり、光検出器120のサブビーム受光領域141に入射する迷光の量も大幅に増加する。
これに対し、図16(b)に示す本実施形態の光学ヘッド200では、検出器ユニット127が一体となってX方向に移動するため、シリンドリカルレンズ115とホルダ130の相対距離が変化せず、アパーチャ131を通過する光束径はほとんど変化しない。そのため、アパーチャ131の径を限界まで小さくすることができ、これにより、光検出器120のサブビーム受光領域141に入射する迷光の量を大幅に減少させることができる。
図16(c)を参照して、本実施形態の光学ヘッドにおけるメインビームaの寸法に対するアパーチャ131の寸法の関係を説明する。
アパーチャ径は、反射光束径と、ホルダ130のアパーチャ131に対するシリンドリカルレンズ115のX方向(またはY方向)の位置ずれ量と、ホルダ130のアパーチャ131に対する光検出器120のX方向(またはY方向)の位置ずれ量と、光検出器ユニット127のZ方向の位置調整によるアパーチャ131の位置での反射光束径の増加量と、の和とすることが可能である。すなわち、光検出器ユニット127のX方向(またはY方向)の調整寸法(0.05mm〜1mm程度)を除外することができるため、アパーチャ径を大幅に縮小することが可能となる。
なお、本実施例ではアパーチャ131は円筒形の孔形状としたが、図17に示すように円錐台形の孔形状としてもよい。この構成により、斜めに入射するサブビーム143がある場合を考慮しても、アパーチャ径を一層小さくすることができる。
なお、第1実施形態では、光源となる半導体レーザ1の発振波長はCD用の略780nm、DVD用の略650nm、BD用の略405nmのいずれでも適用可能なことはいうまでも無い。
図18は、前記光学ヘッド200が適用された光情報装置としての光ディスクドライブ400の構成例を示す。光学ディスク201は、クランパー401とターンテーブル402とによって挟まれて固定され、この状態でモーター(回転系)403によって回転する。光学ヘッド200は、トラバース(移送系)404上に乗っており、光が照射する点が光ディスク201の内周から外周まで移動できるようになっている。制御回路405は光学ヘッド200から受けた信号により、フォーカス制御、トラッキング制御、トラバース制御、モーター403の回転制御等を行う。また信号処理回路406は、再生信号から情報の再生を行い入出力回路407に出力したり、入出力回路407から入ってきた信号を制御回路405を通じて光ヘッド200へ送出したりする。
なお、本実施形態は、高い凹レンズパワーのシリンドリカルレンズ115を有し、かつ検出光学系の倍率の大きな光学ヘッド200とすることにより、より顕著な効果を奏するものである。さらに、シリンドリカルレンズ115のシリンドリカル面116が光検出器120とは反対側に位置するので、サーボ信号の性能を一層向上させることができる。しかし、本発明は、シリンドリカルレンズのレンズパワーの大小に関わらず適用可能であり、他の光学ヘッドに適用することを妨げるものではない。この場合でも、同様にシリンドリカルレンズと光検出器の相対位置誤差を低減することが可能である。
なお、本実施の形態ではシリンドリカルレンズ115はガラスを材料とし、亜鉛またはアルミ等の金属で構成されたホルダに130に接着される構成としたが、シリンドリカルレンズ115およびホルダ130は樹脂でもよい。また、シリンドリカルレンズ115およびホルダ130を樹脂で一体成形する構成であってもよい。
(実施形態2)
次に、本発明の第2実施形態による光学ヘッドについて説明する。
図19(a)〜(c)は、第2実施形態に設けられた検出器ユニット127を示しており、光検出器120とシリンドリカルレンズ115とホルダ130とアパーチャ131との関係を示している。
本実施形態の検出器ユニット127には、光検出器位置決め部135とシリンドリカルレンズ位置決め部136とが無く、検出器ユニット127のホルダ130は、アパーチャ131と保持部132と光検出器押当て部137とシリンドリカルレンズ押当て部138と光検出器接着部133とシリンドリカルレンズ接着部134とを有する。この検出器ユニット127では、アパーチャ131と光検出器120との相対位置関係の調整が行われるとともに、アパーチャ131とシリンドリカルレンズ115との相対位置関係の調整が行われる。この調整時には、光検出器120の受光面121が、X−Y平面上において、ホルダ130の保持部132とアパーチャ131に対してX方向及びY方向の位置調整が行われるとともに光軸回りの角度θzの調整が行われ、その後、ホルダ130に固定される。これにより、光検出器120はホルダ130に対して精度よく位置決めされる。
一方、シリンドリカルレンズ115の位置調整は、シリンドリカルレンズ115の外形またはシリンドリカルレンズ115のレンズ光軸118とアパーチャ131の中心とが一致するように、ホルダ130またはアパーチャ131に対して行われる。この位置調整は、X−Y平面上においてX方向及びY方向の位置を調整することにより行われる。また、シリンドリカルレンズ115の光軸回りの角度θzの調整を行う。この調整は、シリンドリカル面116の中央母線119が所定の向きとなるようにシリンドリカルレンズ115を光軸回りに回転させることにより行われる。
この構成により、光検出器ユニット127において、シリンドリカルレンズ115とアパーチャ131と光検出器120の受光面121とが、精度良く位置決めされて互いに固定される。これにより、アパーチャ131の内径を必要最小限まで小径化することが可能となる。このため、光検出器120の受光面121に入射する前記多層記録媒体からの他層迷光をより一層遮断することが可能となる。また、ホルダ130の形状を小さくすることができるため、光学ヘッド200の薄型化が可能となる。
なお、本実施形態では、シリンドリカルレンズ115をシリンドリカルレンズ押当て部138に押し当てることによりZ軸方向の位置調整を行った後に、シリンドリカルレンズ接着部134においてホルダ130に対してシリンドリカルレンズ115を接着固定した。しかしこれに限られるものではなく、シリンドリカルレンズ115をシリンドリカルレンズ押当て部138に押し当てることなくシリンドリカルレンズ115のZ軸方向の位置調整を行い、その後、シリンドリカルレンズ接着部134においてホルダ130に接着固定する構成でもよい。
(実施の形態3)
次に、本発明の第3実施形態による光学ヘッドについて説明する。
図20(a)〜(c)は、第3実施形態に設けられた検出器ユニット127の構成を示している。これらの図には、光検出器120、シリンドリカルレンズ115、ホルダ130、アパーチャ131、4分割受光領域140、サブビーム受光用域141が示されている。
第3実施形態では、アパーチャ131の形状が円筒形ではなく非円筒状となっている点において第1実施形態と異なっている。光検出器120の受光面121上において4分割受光領域140及びサブビーム受光用域141が一方向に並ぶように配置されており、アパーチャ131の形状はこの方向に長くなる非円形の断面形状となっている。この非円筒形のアパーチャ形状により、受光面121に入射する他層迷光を低減でき、一層安定したフォーカスサーボおよびトラッキングサーボを実現できる。
なお、第3実施形態では、アパーチャ131の形状を長方形状としたが、図20(d)に示すように周面の一部が円弧状の長孔形状でもよく、あるいは楕円等の形状でもよい。
(実施の形態4)
次に、本発明の第4実施形態による光学ヘッド200について説明する。
第4実施形態では、アパーチャ131の形状及び配置において第1〜第3実施形態とは異なっている。
図21(a)は、第4実施形態による光学ヘッド200の光学系の構成を示す。半導体レーザ101は発振波長が約405nmの光束を出射するものである。この光学系では、ビームスプリッタ103とシリンドリカルレンズ115との間にホログラム素子150が配置されている。この光学ヘッドは、いわゆる1ビーム法(APP法)のトラッキングエラー信号を発生する。
図21(b)は、ホログラム素子150の構成を示す。図中の実線はホログラム素子150の分割パターンを示し、破線はホログラム素子150を通過する光束の断面形状を示している。ホログラム素子150は、メインビーム領域151と、情報記録層202で回折された±1次光と0次光の干渉光が入射するAPPメイン領域152、153と、0次光のみが入射するAPPサブ領域154、155とを備えている。
図22(a)、(b)は、光検出器120の受光面121とアパーチャ131との相対位置関係を概略的に示している。図22(a)に示すように、光検出器120の受光部124は、回路部122と接着層126とカバーガラス125とを備えている。図22(b)に示すように、受光面121には、4分割受光領域140、APPメイン領域152、153及びAPPサブ領域154、155が形成されている。また、図22(b)中の扇形の破線は、アパーチャ131の形状を示している。すなわち、本実施形態では、受光面121が矩形状となっており、アパーチャ131は扇形となっている。そして、扇形の中心位置が受光面の121の1つの角部の近傍に位置している。
ホログラム素子150の各分割領域を透過した光束は、それぞれの受光面121に入射する。ホログラム素子150のメイン領域151を透過した光束は受光面121の4分割受光領域140に入射し、ホログラム素子150のAPPメイン領域152、153又はAPPサブ領域154、155を透過した光束はそれぞれ図の受光領域(サブビーム受光領域141)に入射する。
4分割受光領域140において、対角領域の和信号の差分(対角領域の和信号が2つ得られるので、その差分)を演算することによりフォーカスエラー信号が生成され、4分割受光領域140の各領域の信号の総和からRF信号が生成される。一方、トラッキングエラー信号は、サブビーム受光領域141の受光信号から生成される。すなわち、サブビーム受光領域141で受光した光束(APPメイン領域152、153を透過した光束)の差動から、いわゆるプッシュプル信号を生成し、この信号と、サブビーム受光領域141で受光した光束(APPサブ領域154、155を透過した光束)の受光信号との演算を行う。いわゆるAPP法により、トラッキングエラー信号が生成される。
受光面では、他層迷光がサブビーム受光領域141に入射しないように、4分割受光領域140とサブビーム受光領域141とが互いに距離を離して配置される。また、光学ヘッド200の薄型化のために、受光面121において、4分割受光領域140とサブビーム受光領域141が直線状に配置されるのではなく、L字型に配置されている。すなわち、4分割受光領域140が矩形状の受光面121の1つの角部の近傍に配置されるとともに、この角部に隣接する一方の角部の近傍にサブビーム受光領域141が配置されるとともに、前記角部に隣接するもう一方の角部の近傍にもう1つのサブビーム受光領域141が配置されている。この配置において、光軸中心は4分割受光領域140の中心に一致している。言い換えると、反射光束の光軸方向に見たときに、4分割受光領域140及びサブビーム受光領域141,141の重心位置が、光軸中心の位置(アパーチャ131の中心位置)及び受光面121の重心位置からずれている。
第1実施形態では、アパーチャ131及び光検出器120の受光面121は、4分割受光領域140の中心(光軸中心)とアパーチャ131の中心とが一致するように配置されている。これに対して、第4実施形態では、アパーチャ131が扇形(非円形)となっており、アパーチャ131の扇形の中心と4分割受光領域140の中心(メインビーム領域151を透過した光束の中心)とは一致しない構成となっている。この構成により、4分割受光領域140及びサブビーム受光領域141,141に対してアパーチャ131をぎりぎりまで小さくすることができる。よって、受光面121に入射する他層迷光の光量、および光学素子の表面反射等による迷光を大幅に低減することができる。よって、フォーカスエラー信号およびトラッキングエラー信号のオフセットを大幅に低減することができ、また光学ヘッド200の大幅な薄型化が可能となる。
図22(c)を参照して、4分割受光領域140、サブビーム受光領域141、接着層126に入射する迷光について説明する。図22(c)において、光ディスク201の表面、光学素子の表面、光学ベース113の表面等で反射した迷光を矢印で示している。光軸方向に見た状態で、アパーチャ131の周縁部を4分割受光領域140及びサブビーム受光領域141の近くまで近づけることにより、ホルダ130のアパーチャ131以外の部位によって迷光が遮られ易くなるので、4分割受光領域140及びサブビーム受光領域141への迷光の入射を大幅に低減することができる。
一方、接着層126に405nmの波長の光束が数百時間照射されるとその接着性能が劣化する。そのため、本実施形態では、接着層126がアパーチャ131の内側にはみ出ないように、ホルダ130で接着層126を完全に覆い隠す構成となっている。接着剤は、図22(b)に示すように、受光部124において、矩形状の受光面121の周縁部の近傍に位置している。そして、図22(c)に示すように、光軸方向に見て、アパーチャ131の周縁部が接着剤の内端部よりも内側に位置している。これにより、405nmの波長の光束は接着層126に照射しない。ホルダ130は、主に発散系で入射する他層迷光を遮光するとともに、光ディスク201の表面、光学素子の表面、光学ベース113の表面等で反射し、主に収束系で入射する迷光を遮光する。
この構成により、略405nmの波長の光束の照射によって接着層126が劣化することを抑制できるため、光学ヘッド200の信頼性を大幅に向上させることが可能となる。
(実施の形態5)
次に、本発明の第5実施形態について説明する。
図23(a)、(b)は、本発明の第5実施形態による光学ヘッド200に設けられた光学系の構成を示す。第5実施形態は、シリンドリカルレンズ115が光検出器120の受光面121に対して傾斜している点で、他の実施形態と異なっている。
図23(a)に示すように、光源としての半導体レーザ101から出射された光束は、回折格子102により複数の光束に分離される。回折格子102を透過した光束は平板ビームスプリッタ160によって反射され、コリメータレンズ104によって平行光束に変換された後、対物レンズ105に入射する。これにより、光束は、いわゆる3ビームの収束光となって光ディスク201に照射される。
対物レンズ105は、対物レンズアクチュエータにより光軸方向(フォーカス方向)及び光ディスク201の半径方向(ラジアル方向)に駆動される。光ディスク201の情報記録層202で反射・回折された光は、再び対物レンズ105を透過し、平板ビームスプリッタ160を透過する。平板ビームスプリッタ160を透過した光束は、シリンドリカルレンズ115を透過し、光検出器120に入射する。
ここで、ホルダ130は、第1主面(シリンドリカルレンズ押当て部)が、ホルダ130の第2主面(光検出器押当て部)に対して傾斜した傾斜面158となる断面くさび状に形成されているので、シリンドリカルレンズ115のレンズ光軸118に垂直な平面は、光検出器120の受光面121に対して角度θaだけ傾斜している。ホルダ130は、平板ビームスプリッタ160の傾いた方向に対して第1主面が反対に傾くように配設されている。
角度θaは、反射光束のコマ収差を補正するために設定され、検出光学系に配置された平板状の光学素子の厚さ及び角度に応じて角度θaの最適値を設定することができる。角度θaは、約5〜20度、より好ましくは約5〜15度程度傾いているのが好ましく、例えば、本実施形態5では、傾斜角度θaは9.5度となっている。シリンドリカルレンズ115の傾き角度θaは、ビームスプリッタ160の厚み、すなわち、ビームスプリッタ160で発生する収差量に応じて上記の範囲内で適宜設定することができる。
ビームスプリッタ103を用いた第1実施形態では、シリンドリカル面116の中央母線119の周方向の向きを示す角度θbを45度としたが、平板ビームスプリッタ160が用いられる第5実施形態では、平板ビームスプリッタ160を透過した光束に発生する非点収差をキャンセルすべく、中央母線119の周方向の向きを示す角度θbを図23(a)のX方向の軸に対して約40度から30度の範囲としている。なお、図23(a)のX方向は、ホルダ130の厚みが次第に薄くなる方向に向かう方向である。
図24(a)〜(c)は、第5実施形態5の光学ヘッド200に設けられた検出器ユニット127の構成を示している。検出器ユニット127は、光検出器120と、アパーチャ131を有するホルダ130と、シリンドリカルレンズ115とを備えている。光検出器120がホルダ130に固定されるとともに、シリンドリカルレンズ116がホルダ130の傾斜面158に押し当てられた状態で固定されることにより、シリンドリカルレンズ115のレンズ光軸118は、反射光束の光軸に対してコマ収差をキャンセルする角度だけ傾いた角度に固定される。この構成により、平板ビームスプリッタ160を透過した光束に発生するコマ収差を大幅に低減することができ、光検出器120に入射する光束の品質を改善することができる。すなわち、フォーカスエラー信号、トラッキングエラー信号およびRF信号の検出性能向上させることができる。
さらに、シリンドリカルレンズ115のシリンドリカル面116の中央母線119は、シリンドリカルレンズ115のレンズ光軸118を中心に、ホルダ130または光検出器120の受光面121におけるX方向の軸に対して、角度θbだけ回転した状態で固定される。この構成により、平板ビームスプリッタ160を透過することにより発生する非点収差をキャンセルすることができ、受光面121に入射する光束の非点収差を大幅に低減することができる。
よって、フォーカスエラー信号、トラッキングエラー信号およびRF信号の検出性能を一層向上させることができ、安定したフォーカスサーボおよびトラッキングサーボを実現できるとともに記録再生性能の大幅な向上を実現できる。
(実施の形態6)
次に、本発明の第6実施形態による光学ヘッド200について説明する。
図25(a)、(b)は、第6実施形態に設けられた検出器ユニット127と光学ベース113との接着状態を示している。ここで、第6実施形態が第1実施形態と異なるのは、ホルダ接着部139と別の面にホルダ追加接着部161が設けられることにより、ホルダ130と光学ベース113の接着部を3箇所以上とした点である。なお、ホルダ接着部139は2箇所に設けられている。
図25(a)(b)において、ホルダ接着部139およびホルダ追加接着部161はホルダ130と光学ベース113との接着部を示す。光学ベース113には、その厚み方向に貫通する貫通孔113aが形成されており、ホルダ13には、この貫通孔113aの中に挿入される部位と、光学ベース113に対して一方側に位置する部位とが設けられている。そして、光学ベース113に対して一方側に位置する部位がホルダ接着部139によって光学ベース113に固定され、また、貫通孔113aの中に挿入された部位がホルダ追加接着部161によって光学ベース113に固定されている。
第1実施形態では、ホルダ130において左右の2箇所に接着剤を塗布し、この接着部139によってホルダ130を光学ベース113に固定する構成としている。検出器ユニット127が一体構成である場合に、このような接着構造にすると、シリンドリカルレンズ115の重量が、ホルダ接着部139を支点として紙面に垂直な方向にモーメントとして作用する。その結果、検出器ユニット127がホルダ接着部139を支点として紙面の垂直方向(重力方向)に傾いてしまう虞がある。この場合、光軸が傾くことになるので、フォーカスおよびトラッキングのサーボ信号およびRF信号が劣化してしまう虞がある。
第6実施形態では、図25(a)(b)に示すように、ホルダ追加接着部161が、ホルダ接着部139とは光軸方向(Z方向)の異なる位置に配置されている。この構成により、光学ベース113に対するホルダ130の固定を大幅に安定させることができ、光学ベース113に対するホルダ130および検出器ユニット127の傾きを低減することが可能となる。検出器ユニット127が光軸方向に傾くことを防止することにより、信頼性の優れた小型の光学ヘッド200を実現できる。
なお、第6実施形態では、ホルダ130を光軸方向に大きくして、ホルダ追加接着部161を光学ベース113とホルダ130の間に設ける構成としたが、この構成に代え、図25(c)に示すように、シリンドリカルレンズ115と光学ベース113との間にホルダ追加接着部161を設ける構成としてもよい。この構成では、ホルダ130が平板状に形成されるとともに、光学ベース113の貫通孔113aには挿入されない構成となり、貫通孔113a内にはシリンドリカルレンズ115が配設される。また、接着する箇所はシリンドリカルレンズ115の重量によるモーメントをキャンセルする場所である限り、別の場所でもよく、また、接着箇所をさらに増やしてもよい。
(実施の形態7)
次に、本発明の第7実施形態による光学ヘッド200について説明する。
第5実施形態では、光源としての半導体レーザ101からの光束が光検出器120に入射する構成としたが、図26に示すように、第7実施形態の光学ヘッド200では、第1の光源としての半導体レーザ409からの光束が光検出器120に入射するとともに、第2の光源としての半導体レーザ408からの光束が光検出器120に入射する構成となっている。
第1の光源としての半導体レーザ409は、例えば405nmの波長の光束を出射する半導体レーザであり、第2の光源としての半導体レーザ408は、2波長半導体レーザであり、例えば780nmの波長の光束と、650nmの波長の光束とを出射可能である。
第7実施形態の光学ヘッド200は、光源408,409の他に、回折格子102と、ビームスプリッタ103と、コリメータレンズ104と、対物レンズ105と、平板ビームスプリッタ160と、ホログラム素子150と、シリンドリカルレンズ115と、ホルダ130と、光検出器120とを備えている。ビームスプリッタ103は、半導体レーザ408から出射された光束を反射し、平板ビームスプリッタ160は、半導体レーザ409から出射された光束を反射する。ホログラム素子150は、平板ビームスプリッタ160とシリンドリカルレンズ115との間に配置されている。
ホルダ130は、第1主面(シリンドリカルレンズ押当て部)が、ホルダ130の第2主面(光検出器押当て部)に対して傾斜した傾斜面158となる断面くさび状に形成されている。このため、シリンドリカルレンズ115のレンズ光軸118に垂直な平面は、光検出器120の受光面121に対して角度θaだけ傾斜している。ホルダ130は、平板ビームスプリッタ160の傾いた方向に対して第1主面が反対に傾くように配設されている。
[実施の形態の概要]
前記実施形態をまとめると、以下の通りである。
(1) 前記実施形態の光学ヘッドは、光束を出射する光源と、前記光源から出射された光束を情報記録媒体に収束光として集光する対物レンズと、前記情報記録媒体によって反射された反射光束が入射し、フォーカスエラー信号を形成するための非点収差を発生するシリンドリカルレンズと、前記シリンドリカルレンズを透過した反射光束を受光する光検出器と、前記シリンドリカルレンズ及び前記光検出器を保持するホルダと、を備え、前記ホルダは、前記反射光束の光軸と交差する方向にそれぞれ延びる第1主面及び第2主面を有し、前記シリンドリカルレンズが前記第1主面に接着され、前記光検出器が前記第2主面に接着されている。
この構成では、シリンドリカルレンズと光検出器とがホルダに対して一体的に構成されているので、シリンドリカルレンズと光検出器との相対的な位置誤差を小さくすることができる。したがって、検出光学系の検出倍率(横倍率)の誤差および変化を小さくすることができる。
さらに、光検出器へ入射する光束に対して直交する面内において、光検出器とシリンドリカルレンズとを一体的に直交二方向での位置調整と回転方向の調整を行うことができるため、より一層シリンドリカルレンズと光検出器の相対位置誤差の発生を低減することが可能となる。
(2)また、前記光学ヘッドが、前記光源からの光束の平行度を変化させるコリメートレンズをさらに備える場合には、前記対物レンズ、前記コリメートレンズ及び前記シリンドリカルレンズを備えた検出光学系の横倍率が10倍以上であるのが好ましく、この場合には、前記シリンドリカルレンズは、前記反射光束が入射する面にシリンドリカル面を有し、出射面に凹レンズ面を有するのが好ましい。
この構成では、多層光ディスクにおいて、記録再生中の情報記録層以外の層からの反射光がサブビーム受光領域に入射することによってトラッキングエラー信号のオフセットが発生することを抑制できるため、多層の光ディスクの記録再生におけるトラッキングサーボ性能を安定させることができる。
さらに、シリンドリカルレンズと光検出器とを一体構成として、シリンドリカルレンズと光検出器の相対的な位置誤差を小さくすることにより、多層の光ディスクに対応した検出光学系の検出倍率(横倍率)の大きな構成が実現できる。
また、シリンドリカルレンズに大きな凹レンズ効果を持たせることにより、検出光学系の倍率を大きくできるとともに検出光学系の寸法を短くすることができるので、多層の光ディスクに対応できる安定したトラッキングサーボを実現できるとともに、光学ヘッドの小型化を実現することができる。
また、シリンドリカル面が光検出器と反対側に配置されることにより、小型の検出光学系においてもバランスのよいフォーカスエラー信号を得ることができる。このため、安定したフォーカスサーボを実現することができる。さらに非点隔差も比較的大きく確保することが可能となるため、引き込み範囲の長いフォーカスエラー信号を得ることができる。
また、検出器ユニットの組み付け時においては、シリンドリカル面が外側に露出しているので、光検出器の受光領域の分割方向に対するシリンドリカル面の中央母線の方向を調整する際に、オートコリメータ等で容易にシリンドリカル面の中央母線の向きを検出および調整することが可能となる。このため、光学ヘッドの調整時間を大幅に短縮することが可能となる。
また、シリンドリカルレンズと光検出器を一体的にZ方向(光軸方向)に調整することができるので、検出光学系の倍率変化を低減させることができ、トラッキングエラー信号のオフセット変動の少ない安定した光学ヘッドの記録再生性能を実現することができる。
(3) 前記凹レンズ面の曲率半径は、5mm以下であってもよい。
(4) 前記シリンドリカルレンズは、前記出射面に、前記凹レンズ面に加えて平面が形成されていてもよい。
この構成では、シリンドリカルレンズのフラット面とホルダとが密着した状態でシリンドリカルレンズを接着固定できるため、信頼性に優れた光学ヘッドを実現できる。また、シリンドリカル面を入射面側に配置することによりシリンドリカルレンズの回転調整を短時間かつ高精度に行うことができるため、性能の優れた光学ヘッドを実現できる。
(5) 前記ホルダには、前記反射光束の少なくとも一部が入射する位置にアパーチャが形成されているのが好ましい。この構成では、シリンドリカルレンズを透過した光束を、ホルダのアパーチャを通して光検出器に入射させることができる。
さらに、シリンドリカルレンズ及び光検出器の位置調整時には、シリンドリカルレンズと光検出器とホルダとを一体的に動かして位置調整することができるため、シリンドリカルレンズとアパーチャと光検出器との間の光軸方向および光軸方向と直交する方向での相対的な位置ずれを小さくすることができる。このため、アパーチャ径を小さくすることが可能となるため、特に多層光ディスクの情報記録再生時において、他の層で反射した光束が迷光となって光検出器へ漏れこむ量を低減することができる。これにより、記録再生性能を向上させることが可能となるとともにホルダの小型化及び薄型化が可能となるため、光学ヘッドの小型化及び薄型化を実現できる。
(6) 前記アパーチャは、前記反射光束の寸法と、前記シリンドリカルレンズと前記アパーチャとの相対的な位置誤差と、前記光検出器と前記アパーチャとの相対的な位置誤差と、前記ホルダと前記シリンドリカルレンズと前記光検出器とを一体として光軸方向に調整したことによる前記アパーチャの位置での前記反射光束の寸法の増加量と、を加算した値に相当する寸法であるのが好ましい。
(7) 前記アパーチャの断面が非円形であってもよい。
(8) 前記アパーチャの中心が、前記反射光束の光軸の中心とは異なる位置に配置されていてもよい。この構成では、アパーチャの大きさをより小さくすることができるので、光検出器に到達する迷光を低減することができる。
(9) 前記光検出器が接着される前記第2主面の表面粗度が、前記ホルダの側面部の表面粗度よりも小さくてもよい。この構成では、光検出器の位置調整時において、微小な動きが可能になるので、より精確な位置合わせが可能となる。
(10)前記第2主面の中心部を含む所定領域の表面粗度が、前記第2主面における前記所定領域の外周の領域の表面粗度よりも小さくてもよい。この構成では、光検出器の位置調整時において、微小な動きが可能になるので、より精確な位置合わせが可能となる。
(11)前記シリンドリカルレンズが接着される前記第1主面の表面粗度が、前記ホルダの側面の表面粗度よりも小さくてもよい。この構成では、シリンドリカルレンズの位置調整時において、微小な動きが可能になるので、より精確な位置合わせが可能となる。
(12)前記第1主面の中心部を含む所定領域の表面粗度が、前記第1主面における前記所定領域の外周の領域の表面粗度よりも小さくてもよい。この構成では、シリンドリカルレンズの位置調整時において、微小な動きが可能になるので、より精確な位置合わせが可能となる。
(13)前記シリンドリカルレンズが接着される前記第1主面は、前記反射光束の光軸に垂直な面に対して傾いていてもよい。この構成では、平板ビームスプリッタを透過した光束に発生するコマ収差を大幅に低減することができ、光検出器に入射する光束の品質を改善することができる。
(14)前記光源は約405nmの波長の光束を出射するものであり、前記光検出器は、受光部と、カバーガラスと、前記受光部及び前記カバーガラスを接着する接着部と、を有する場合には、前記光検出器と前記第2主面を接着する接着部の内側端部、又は前記受光部と前記カバーガラスとを接着する前記接着部の内側端部が、前記アパーチャよりも外側に配置されていてもよい。この構成では、約405nmの波長の光束の照射によって接着剤が劣化することを抑制できるため、光学ヘッドの信頼性を大幅に向上させることが可能となる。
(15) 光情報装置は、前記光学ヘッドと、前記光学ヘッドを移送するための移送部と、前記移送部の制御及び前記光学ヘッドの制御を行う制御回路と、を備えている。