JP5534888B2 - エンジン始動制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、車両のエンジンを始動制御するエンジン始動制御装置に関し、特に、エンジンを車体に支承する能動型防振支持装置と組み合わせて用いられるエンジン始動制御装置に関する。
クランクパルスセンサ(CRKセンサ)を使用してエンジン振動の位相及びエンジン振動の大きさを推定し、その推定結果にもとづいてアクチュエータを伸縮駆動して、エンジン振動の車体への伝達を抑制する能動型防振支持装置が、例えば特許文献1に開示されている。特許文献1に開示される従来の技術によると、クランクパルスをサンプリングしてクランクパルス間隔の変動からエンジン振動を推定し、その推定結果にもとづいて、アクチュエータを伸縮駆動するため、アイドル状態や一定走行等、定常状態の振動に対しては、効果的な防振性能を有することができる。
しかしながら、エンジン(内燃機関)をクランキングして始動する際の初爆(燃焼室における最初の混合気の爆発)によるエンジンのロール振動は非定常な一過性の過渡振動であるため、このロール振動を能動型防振支持装置により車体に伝達されるのを抑制することは難しい技術である。
例えば、特許文献2には、クランク角速度増加率が所定値以上の場合に初爆と判定して、予め記憶された振動波形を打ち消すような電流波形を出力して、能動型防振支持装置のアクチュエータを駆動する技術が開示されている。
また、特許文献3には、エンジンを制御するエンジンECU〔(エンジンElectric Control Unit)、本願発明の明細書における「FI/MG/AT_ECU」に対応〕から初発インジェクション気筒(初爆予定の気筒に対して、吸気口噴射のエンジンなら吸気口へ、直噴エンジンなら燃焼室内へ、最初の燃料噴射をすることから「初発インジェクション気筒」と呼ぶ)を示す信号をACM_ECU(Active Controll Mount_Electric Control Unit)に出力し、初発インジェクション気筒の点火タイミングをACM_ECUの方で推定算出して、エンジン始動時の初爆以降の短時間の一過性のロール振動を抑制する技術が開示されている。
特許2005−3156号公報 特開2009−47201号公報 特開2009−216146号公報(図7〜図8参照)
しかしながら、特許文献3に開示された技術は、ACM_ECU側で予測設定したアクチュエータへの電流波形を、初発インジェクション気筒のACM_ECU側で予測設定した点火タイミングに合わせて出力する方法である。つまり、ACM_ECUは、エンジンECUからの初発インジェクション気筒を示す信号を受信した際の、クランク角やクランク角速度にもとづいてアクチュエータへの電流波形の出力タイミングを固定設定してしまう。従って、エンジンECUから初発インジェクション気筒を示す信号をACM_ECUに出力した後、エンジンの実際のクランク角速度が変化するような場合、エンジンECUは、実際のクランク角に合わせて初爆の点火時期制御をするので、初爆によるエンジンのロール振動の開始のタイミングと、能動型防振支持装置におけるアクチュエータの伸縮駆動開始タイミングがずれ、エンジンの初爆時のロール振動を十分制振できない可能性があった。
また、アクチュエータの伸縮駆動開始タイミングと初爆によるエンジンのロール振動の開始のタイミングのずれが、逆に車体へ伝わる振動を増大させるおそれもある。
さらに、最近のハイブリッド車両においては、車両の制動状態の際に回生発電に用いたり、バッテリからの電源によりエンジンの駆動力を補助するアシストモータとして用いられたりする、エンジンの出力軸に接続された発電電動機(本願発明の明細書における「モータジェネレータGM1」に対応)を、スタータモータとしても兼用する場合がある。そのような場合、発電電動機のトルクは通常のスタータモータより大きく余裕があるので、エンジンのクランキング状態でのエンジン回転速度の上昇が急激であり、エンジンECUからACM_ECUへの初発インジェクション気筒信号を出力してから、油温の差等によるエンジンのフリクショントルクの差からクランク角速度が変化して、エンジンECUが制御する実際の初爆の点火タイミングと、ACM_ECUが予測した点火タイミングにズレが生じやすい。
また、そのようなハイブリッド車両においては、低速走行時には、発電電動機のみを駆動源としてEV(Electric Vehicle)走行モードが用意されている場合がある。そのような場合、運転者のアクセルペダルの踏み込み操作により、より大きい駆動トルクが要求されたときに、エンジンと発電電動機の両方で駆動力を配分するモータアシスト走行モードに切り換わる。このように、エンジンが停止している状態からいきなりエンジンの走行モードでの運転への切り換わり時には、従来のような、ACM_ECU側での初発インジェクション気筒の点火時期タイミングの予測によるアクチュエータの駆動電流の出力開始制御では、エンジンの実際の点火時期とズレが生じる。
そこで、本発明は、能動型防振支持装置と組み合わせて用いられ、エンジン始動時に発生する過渡振動を、その振動の始まりから効果的に抑制できるエンジン始動制御装置を提供することを目的とする。
前記課題を解決するために、請求項1に係る発明のエンジン始動制御装置は、エンジンの振動状態に応じて防振制御手段がアクチュエータを伸縮駆動し、前記エンジンの振動の車体への伝達を抑制する能動型防振支持装置により支持された前記エンジンを搭載した車両における前記エンジンの始動を制御するエンジン始動制御装置であって、前記エンジンの始動の際に、前記アクチュエータの伸縮駆動開始タイミングに基づいて前記エンジンの初爆タイミングが設定され、当該設定された初爆タイミングに応じて前記エンジンの点火制御が行われることを特徴とする。
請求項1に係る発明では、エンジンの始動の際に、アクチュエータの伸縮駆動開始タイミングに基づいてエンジンの初爆タイミングが設定され、該設定された初爆タイミングに応じてエンジンの点火制御が行われる。このため、エンジンの初爆タイミングをアクチュエータの伸縮駆動開始タイミングに合わせることができる。その結果、請求項1に係る発明によれば、予測した初爆に係る点火タイミングと、実際の初爆に係る点火タイミングとの間にズレが生じた場合であっても、エンジン始動時の初爆によるロール振動を抑制することができる。
請求項2に係る発明のエンジン始動制御装置は、エンジンの始動要求指令を受けて初発インジェクション気筒を示す信号を防振制御手段に送信するエンジン始動指令発生手段を備える。防振制御手段は、初発インジェクション気筒の信号を取得し、該取得した初発インジェクション気筒を示す信号、及び、クランク角とクランク角速度に基づいて、初爆によるエンジンのロール振動抑制するためアクチュエータの伸縮駆動開始タイミングを設定するとに、設定された伸縮駆動開始タイミングを出力する。エンジン始動指令発生手段は、前記設定された伸縮駆動開始タイミングに基づいてエンジンの初爆タイミングを設定する
請求項2に係る発明では、エンジンの始動要求指令に応じて設定されたアクチュエータの伸縮駆動開始タイミングに基づいてエンジンの初爆タイミングが設定される。このため、エンジンの初爆タイミングを、アクチュエータの伸縮駆動開始タイミングに合わせ込むことができる。その結果、請求項2に係る発明によれば、予測した初爆に係る点火タイミングと、実際の初爆に係る点火タイミングとの間にズレが生じた場合であっても、エンジン始動時の初爆によるロール振動を適確に抑制することができる。
請求項3に係る発明のエンジン始動制御装置は、請求項1または請求項2に記載の発明の構成に加え、エンジンの点火時期から燃焼開始までの燃焼遅れ時間のデータを予め記憶した燃焼遅れデータ記憶手段を備え、防振制御手段は、燃焼遅れデータ記憶手段に記憶された燃焼遅れ時間のデータに基づいて初爆の燃焼遅れ時間を算出し、該算出された初爆の燃焼遅れ時間を参照して、初爆タイミングの補正設定を行うことを特徴とする。
請求項3に係る発明では、防振制御手段は、燃焼遅れデータ記憶手段に記憶された燃焼遅れ時間のデータに基づいて初爆の燃焼遅れ時間を算出し、該算出された初爆の燃焼遅れ時間を参照して、初爆タイミングの補正設定を行う。その結果、請求項3に係る発明によれば、初爆の燃焼遅れ時間を考慮してエンジンの初爆タイミングが補正されるため、初爆のロール振動を能動型防振支持装置によって一層適確に抑制することができる。
請求項4に係る発明のエンジン始動制御装置は、エンジンの振動状態に応じて防振制御手段がアクチュエータを伸縮駆動し、前記エンジンの振動の車体への伝達を抑制する能動型防振支持装置により支持された前記エンジンを搭載した車両における前記エンジンの始動を制御するエンジン始動制御装置であって、エンジンの始動要求指令を受けて初発インジェクション気筒を示す信号を防振制御手段に送信するエンジン始動指令発生手段を備える。防振制御手段は、エンジンの点火時期から燃焼開始までの燃焼遅れ時間のデータを予め記憶した燃焼遅れデータ記憶手段を有する。防振制御手段は、初発インジェクション気筒の信号を取得し、取得した初発インジェクション気筒を示す信号、及び、クランク角とクランク角速度に基づいて、初爆によるエンジンのロール振動を抑制するためアクチュエータの伸縮駆動開始タイミングを設定するとに、燃焼遅れデータ記憶手段に記憶された燃焼遅れ時間のデータに基づいて初爆の燃焼遅れ時間を算出し、該算出した初爆の燃焼遅れ時間を参照して、初爆タイミングの補正設定を行い、該補正設定された初爆タイミングを出力する。エンジン始動指令発生手段は、前記補正設定された初爆タイミングの出力を受けて、エンジンの初爆タイミングを設定し、該設定された初爆タイミングに応じてエンジンの点火制御を行う。
請求項4に係る発明では、エンジン始動指令発生手段は、補正設定された初爆タイミングの出力を受けて、エンジンの初爆タイミングを設定し、該設定された初爆タイミングに応じてエンジンの点火制御を行う。その結果、請求項4に係る発明によれば、初爆の燃焼遅れ時間を考慮してエンジンの初爆タイミングが補正され、補正された初爆タイミングに応じてエンジンの点火制御が行われるため、請求項3に係る発明と同様に、初爆のロール振動を能動型防振支持装置によって一層適確に抑制することができる。
請求項5に係る発明のエンジン始動制御装置は、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のエンジン始動制御装置を適用した車両は、駆動源として電動機を搭載したパラレルハイブリッド車両またはシリーズハイブリッド車両であり、電動機のみを駆動源として走行中に、運転者のアクセルペダル操作に基づいてエンジンの始動の要否を判定し、必要に応じエンジン始動要求指令を出力するエンジン始動要求判定手段を備え、エンジン始動要求判定手段から、エンジン始動要求指令を取得したとき、エンジンの始動制御が行われることを特徴とする。
請求項5に係る発明によれば、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のエンジン始動制御装置を適用したハイブリッド車両では、電動機による走行中にエンジンの始動が要求された場合や、停車中バッテリ充電のため又は電動機のトルク不足のためにエンジンが始動される場合であっても、エンジンの始動時に発生する過渡的なロール振動が車体に伝わるのを抑制することができる。
本発明によれば、能動型防振支持装置と組み合わせて用いられ、エンジン始動時に発生する過渡振動を、その振動の始まりから効果的に抑制可能なエンジン始動制御装置を提供することができる。
本発明の実施形態に係るエンジン始動制御装置を適用したハイブリッド車両の概略構成を示す図である。 図1中のFI/MG/AT_ECUの機能ブロック図である。 図1中のACM_ECUの概略構成図である。 図1中のACMの構造を示す縦断面図である。 FI/MG/AT_ECUとACM_ECUにおけるエンジン始動の際の始動振動に対する防振制御の流れを示すフローチャートである。 FI/MG/AT_ECUとACM_ECUにおけるエンジン始動の際の始動振動に対する防振制御の流れを示すフローチャートである。 エンジン始動時の前側のACMの動作の説明図であり、(a)は前側のACMの作用点の変位量の時間推移の説明図、(b)は加振板の変位量の時間推移の説明図、(c)は駆動電流の時間推移の説明図である。 エンジン始動時の後側のACMの動作の説明図であり、(a)は後側のACMの作用点の変位量の時間推移の説明図、(b)は加振板の変位量の時間推移の説明図(c)は駆動電流の時間推移の説明図である。 エンジン始動時の従来技術と本実施形態とのエンジン振動の差異を説明する図であり、(a)は、従来におけるエンジン回転速度NEの推移を示す説明図、(b)は、従来技術における初爆タイミングのずれによるエンジン振動の差異を示す説明図、(c)は、前側のACMの駆動電流の時間推移を示す説明図、(d)は、本実施形態におけるエンジン回転速度NEの推移を示す説明図、(e)は、本実施形態におけるACMへ入力されるエンジン振動と、車体への入力振動を示す説明図である。 変形例におけるFI/MG/AT_ECUとACM_ECUにおけるエンジン始動の際の始動振動を抑制する制御の流れを示すフローチャートである。
以下、本発明を実施するための最良の形態について、適宜図を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るエンジン始動制御装置を適用したハイブリッド車両の概略構成を示す図である。このハイブリッド車両(車両、パラレルハイブリッド車両)500は、例えば、内燃機関(エンジン)E、モータジェネレータ(電動機)GM1(以下、「モータGM1」と略す)、トランスミッションTを直列に直結した構造のものである。内燃機関E及びモータGM1の両方の駆動力は、例えば、オートマティック・トランスミッション(AT)あるいはマニュアルトランスミッション(MT)等のトランスミッションTから左右の駆動輪(前輪または後輪)DW、駆動輪DW間で駆動力を配分するディファレンシャルDEFを介してハイブリッド車両500の駆動輪DW,DWに伝達される。また、ハイブリッド車両500の減速時に駆動輪DW,DW側からモータGM1側に駆動力が伝達されると、モータGM1は発電機として機能して、いわゆる回生制動力を発生し、車体の運動エネルギを電気エネルギとしてバッテリ3に回収する。
ハイブリッド車両500は、いわゆる内燃機関Eによる駆動時にモータGM1で駆動力をアシスト可能なパラレル型のハイブリッド車両であり、後記するように、内燃機関Eを全筒休止運転とした状態でモータGM1のみの駆動力で走行するEV(Electric Vehicle)走行モードも可能である。
例えば、3相のDCブラシレスモータ等からなるモータGM1は、パワードライブユニット(PDU)2に接続されている。PDU2は、例えば、トランジスタのスイッチング素子を複数用いてブリッジ接続されたブリッジ回路を有するパルス幅変調によるインバータを備え、モータGM1と電力(モータGM1の力行(駆動またはアシスト)動作時にモータGM1に供給される電力や回生動作時にモータGM1から出力される回生電力)の授受を行う高圧系のニッケル−水素バッテリ(バッテリ)3が接続されている。
モータGM1の駆動及び回生は制御装置1からの制御指令を受けてPDU2により行われる。即ち、PDU2は、モータGM1の駆動時には、制御装置1から出力されるトルク指令にもとづき、バッテリ3から出力される直流電力を3相交流電力に変換してモータGM1へ供給する。また、モータGM1の回生動作時には、モータGM1から出力される3相交流電力を直流電力に変換してバッテリ3を充電する。各種補機類を駆動するための12Vの補助バッテリ4は、DC−DCコンバータである降圧コンバータ5を介して、PDU2及びバッテリ3に対して並列に接続されている。降圧コンバータ5は制御装置1により制御され、PDU2やバッテリ3の電圧を降圧して補助バッテリ4を充電する。
内燃機関Eのクランクシャフトには、ベルト及びクラッチ等を介して、空調装置用のハイブリッド・エアコンプレッサ6(以下、「HBAC6」と称する)が有する図示しない空調装置用モータの回転軸が接続される。空調装置用モータは、空調装置用インバータ7(以下、「HBAC−INV7」と称する)に接続されている。HBAC−INV7は、PDU2及びバッテリ3に対して並列に接続され、制御装置1の制御により、PDU2やバッテリ3から出力される直流電力を3相交流電力に変換して空調装置用モータへ供給し、HBAC6を駆動制御する。即ち、HBAC6は、少なくとも内燃機関Eの駆動力または空調装置用モータの力行動作時の駆動力の何れか一方の駆動力により、駆動負荷量、例えば、冷媒の吐出容量が可変制御される。
内燃機関Eは、4つの気筒が休止した状態の全気筒休止運転と、4気筒全部が駆動する4気筒運転(全筒運転)とが切り換えられるような構造となっている。この全気筒休止運転との全筒運転の切り換え可能な構成は公知の技術であり省略する。
なお、油圧によりこの全気筒休止運転との全筒運転の切り換えを行う場合は、例えば、スプールバルブ12のソレノイド12aを通電または非通電状態にして切り換えることができる。
内燃機関Eは、能動型防振支持装置(ACM:Active Control Engine Mount)19F,19Rを介して車体に搭載される。以下、能動型防振支持装置19F,19Rは、「ACM19F,19R」と、称する。
ACM19F,19Rは、内燃機関Eの運転状態、即ち、全筒休止運転からのエンジン始動に伴う車体振動の発生や、全筒運転時のアイドリング状態等の車体振動を抑制するように後記するACM_ECU32に制御されるようになっている。また、内燃機関Eには、図示しないスロットルバルブを電子制御する電子制御スロットル・システム(ETCS:Electronic Throttle Control System)20が備えられている。以下、電子制御スロットル・システム20を、「ETCS20」と称する。
ETCS20は、例えば、運転者による図示しないアクセルペダルの踏み込み量に係るアクセルペダル開度AP、及び、車両の速度(車速)VPやエンジン回転速度NE等の車両の運転状態、及び内燃機関EとモータGM1との間のトルク配分等にもとづいて制御装置1にて算出されるスロットル開度に応じて、ETCSドライバ86(図2参照)を駆動し、スロットルバルブを直接制御する。
例えば、オートマティック・トランスミッションTでは、ロックアップクラッチ(LC)21を有するトルクコンバータ(TC)22を備え、更に、トルクコンバータ22及びトランスミッションTの変速動作を駆動制御するための油圧を発生する電動オイルポンプ(EOP)28が備えられている。尚、電動オイルポンプ28は、バッテリ3からの電力供給により制御装置1により駆動制御される。
トルクコンバータ22は、内部に充填された作動油(ATF:Automatic Transmission Fluid)の螺旋流によってトルクの伝達を行うものであって、ロックアップクラッチ21の締結(係合)が解除されたLC−OFF状態では、作動油を介してモータGM1の回転軸からトランスミッションTの入力軸へとトルクが伝達される。また、ロックアップクラッチ21が締結状態に設定されたLC−ON状態では、作動油を介さずに直接にモータGM1の回転軸からトランスミッションTの入力軸へと回転駆動力が伝達される。
ちなみに、図1において、符号BSは倍力装置を、符号S9はブレーキマスターパワー内の負圧を検出するマスターパワー内負圧センサを示す。
制御装置1には、例えば、車速VPを検出する車速センサS1からの検出信号と、エンジン回転速度NEを検出するエンジン回転速度センサS2からの検出信号と、トランスミッションTのシフトポジションSHを検出するシフトポジションセンサS3からの検出信号と、ブレーキ(Br)ペダルの操作状態BRK_SWを検出するブレーキスイッチS4からの検出信号と、アクセルペダルの操作量に係るアクセルペダル開度APを検出するアクセルペダル開度センサS5からの検出信号と、スロットル開度THを検出するスロットル開度センサS6からの検出信号と、吸気管負圧PBを検出する吸気管負圧センサS7からの検出信号と、バッテリ3の温度TBATを検出するバッテリ温度センサS8からの検出信号と、マスターパワー内負圧センサS9からの検出信号と、気筒休止時において気筒休止解除側通路14の油圧を検出する油圧センサS10からの検出信号と、PDU2の温度TPDUを検出するPDU温度センサS11からの検出信号と、降圧コンバータ5の温度TDVを検出するDV温度センサS12からの検出信号等が入力されている。
その他に、制御装置1には、ハイブリッド車両500におけるイグニッションキーの操作による動力源接続ON状態を検出するイグニッション・スイッチIG−SWからの信号、ステアリングホイールに設けられているクルーズコントロール・スイッチC/C−SWからの信号、エンジン冷却水温度を検出するエンジン冷却水温度センサS13からの信号、クランクパルスセンサS15(以下、「CRKセンサS15」と称する)からの信号、TDC(Top Dead Center)パルスセンサS16(以下、「TDCセンサ」と称する)からの信号、ATの潤滑油の油温を検出する図示省略のAT油温センサ等が入力される。
制御装置1は、例えば、ブレーキデバイス29を駆動制御して車両の挙動を安定化させるVSA(VSA:Vehicle Stability Assist)_ECU31と、ACM19F,19Rを駆動制御して内燃機関Eの運転状態に起因する車体振動の発生を抑制するACM_ECU32と、モータGM1の駆動及び回生作動を制御するモータ制御ECU33(以下、「MOT_ECU33」と称する)と、空調装置用のHBAC6及びHBAC−INV7を駆動制御する空調装置用ECU34(以下、「A/C_ECU34」と称する)と、例えば、PDU2、バッテリ3、降圧コンバータ5及びモータGM1等からなる高圧電装系の監視及び保護、PDU2及び降圧コンバータ5の動作制御を行う高圧電装系制御ECU35(以下、「HV_ECU35」と称する)と、燃料噴射・モータジェネレータ・自動変速機_制御ECU36(以下、「FI(Fuel Injection)/MG(Motor Generator)/AT_ECU36」と称する)とを備えて構成され、各ECU31,・・,36は相互に通信可能に接続されている。
ここで、FI/MG/AT_ECU36は、内燃機関Eと、例えば、トランスミッションTと、モータGM1を含むパワートレインを制御するECUである。
また、各ECU31,・・,36は各種の状態量を表示する計測器類からなるメータ37に接続されている。
各ECU31,・・,36は、CPU,ROM,RAMを有するマイクロコンピュータを含んでおり、ROMに格納されたプログラムやデータをCPUが読み出して実行することにより、各ECU31,・・,36の後記する各機能部の機能を実現する。
ちなみに、FI/MG/AT_ECU36には、内燃機関Eの回転が停止した場合のクランク角を記憶するための不揮発メモリを有している。
ここで、ACM_ECU32は、特許請求の範囲に記載の「防振制御手段」を構成し、FI/MG/AT_ECU36は、特許請求の範囲に記載の「エンジン始動制御装置」を構成する。
図2に示すようにFI/MG/AT_ECU36は、機能部として、例えば、FI(Fuel Injection)/MG(Motor Generator)制御部60、AT制御部62を有している。
FI/MG制御部60は、内燃機関Eの制御とモータGM1の制御を行う機能部であり、内燃機関Eへの燃料供給制御するA/F(空燃比)制御部50(以下、「A/F制御部50」と称する)、内燃機関Eの各気筒のクランク角を演算するクランク角演算部51、点火タイミングを制御するイグニッション制御部52(以下、「IG制御部52」と称する)、内燃機関EやモータGM1の出力トルクを制御するトルクマネージメント部54を有する。FI/MG/AT_ECU36は、その他にパワーマネージメント部56、エネルギ・マネージメント部58と、を含んでいる。
AT制御部62は、トランスミッションTの変速動作及びロックアップクラッチ21の作動状態等を制御する。
以下、各機能部の詳細な構成について説明する。
クランク角演算部51は、CRKセンサS15からのパルス信号及びTDCセンサS16からのパルス信号を読み込み、内燃機関Eの各気筒のクランク角を演算し、A/F制御部50及びIG制御部52に出力する。また、内燃機関E及びモータGM1の回転が停止した際は、各気筒のクランク角をFI/MG制御部60を実行するCPUに接続された図示しない不揮発メモリに記憶させる。
そして、内燃機関E及びモータGM1の回転開始の際は、前記した不揮発メモリに記憶された各気筒のクランク角を読み出して、CRKセンサS15からのパルス信号及びTDCセンサS16からのパルス信号にもとづいて現在の各気筒のクランク角を演算する。
なお、クランク角演算部51は、前記した不揮発メモリに記憶された各気筒のクランク角にもとづいたクランク角の演算結果を、必要に応じてCRKセンサS15からのパルス信号及びTDCセンサS16からのパルス信号の組み合わせにもとづいたクランク角と一致しているか判定し、一致していない場合は、前記した2種のパルス信号の組み合わせにもとづいたクランク角に補正する機能も有している。
さらに、クランク角演算部51は、クランク角から各気筒のクランク角速度を演算し、IG制御部52や通信回線を介してACM_ECU32に出力する。
A/F制御部50は、エアーフローメータ90(以下、「AFM90」と称す)からの吸気量やエンジン回転速度NE等をパラメータにしたマップデータにもとづいて燃料噴射量を設定する。そして、A/F制御部50は、エンジン回転速度NE、クランク角演算部51が演算した各気筒のクランク角にもとづいて、所定のクランク角の範囲(所定のTDC前のクランク角から所定のTDC後のクランク角)で前記設定された燃料噴射量が実行できる燃料噴射時間を演算し、燃料噴射弁を制御し、気筒内噴射を行わせる。
ちなみに、アイドル制御部84からアイドリング制御信号を受けている場合は、アイドル運転状態用の燃料噴射量を設定する前記したマップデータとは別個のマップデータを用いるようにしても良い。
なお、A/F制御部50は、気筒休止制御部(エンジン始動要求判定手段)76からIG制御部52を介しての全筒休止運転や全筒運転の指令を受ける。そして、A/F制御部50は、全筒休止運転の指令を受けた場合は、気筒内への燃料噴射を停止する燃料カット(F/C:Fuel Cut)を行う。また、A/F制御部50は、気筒休止制御部76からの指令が、全筒休止運転の指令から全筒運転の指令に切り換わったときは、内燃機関Eの始動のモードと判定し、IG制御部52の始動時点火制御部(エンジン始動指令発生手段)52aが初発インジェクション気筒を設定するのを受けて、当該の初発インジェクション気筒に対して、クランク角演算部51からのクランク角を読み取り、初発用の燃料噴射をする。例えば、圧縮行程噴射をする。その後は、次気筒以降に対して適切なクランク角で燃料噴射を行う。
IG制御部52は、図2に示すようにエンジン始動時点火制御部(エンジン始動指令発生手段)52a、エンジン始動時燃焼遅れ時間データ部(燃焼遅れデータ記憶手段)52b、通常運転時点火制御部52cを含んでいる。
ここで、始動時点火制御部52aは、内燃機関Eの始動の際に、ACM19F、19Rによるエンジン始動時の振動を車体に伝達するのを抑制する制御(以下、「防振制御」と称する)を開始するに必要な時間的余裕をみて初発インジェクション気筒を決定し、A/F制御部50に通知するとともに、通信回線を介してACM_ECU32にも初発インジェクション気筒を示す信号を通知する。
この初発インジェクション気筒の決定を行うのは、排気ガス制御の観点から、エンジン始動時に燃焼しなかった生ガスを排気することの無いように、FI/MG/AT#ECU36の始動時点火制御部52aは、クランクパルス信号とTDC信号、及びエンジン回転速度NEにもとづいて、初爆をどの気筒で行わせるかを決め、A/F制御部50に指令して燃料噴射を制御させて、その決められた気筒から始めてその次の爆発させる気筒へと順に燃料をインジェクションさせていく。
そして、ACM_ECU32が、初発インジェクション気筒を示す信号を受けて、後記するフローチャートのステップS011において「初爆による振動のピーク位置予測タイミングと、電流切り換えタイミングを通知」するのを、始動時点火制御部52aは受信する。そして、始動時点火制御部52aは、エンジン始動時燃焼遅れ時間データ部52bに一時保持された(具体的には、RAMに一時保持された)後記する燃焼遅れ時間データを用いて、燃焼遅れ時間を算出し、初爆のタイミングを設定する。
エンジン始動時燃焼遅れ時間データ部52bは、初発インジェクション気筒の初爆タイミングを決定するため燃焼遅れ時間を算出するマップデータを、ROMから読み出して一時保持する機能部分である。この燃焼遅れ時間を算出するためのマップデータは、例えば、エンジン冷却水温度センサS13からの信号、クランク角、クランク角速度等をパラメータとして参照して、燃焼遅れ時間を算出可能に予めROMに記憶されたものである。
通常運転時点火制御部52cは、内燃機関Eの全筒運転時の点火時期を制御する。この制御は、A/F制御部50の空燃比や、クランク角速度またはエンジン回転速度NEを参照して、図示しない予め記憶されたマップデータにもとづいて行われる。
トルクマネージメント部54は、ドライバ要求トルク算出部64、クルーズコントロール制御部66(以下、「C/C制御部66」と称する)、選択部68、減速ロックアップクラッチ判断部70(以下、「減速LC判断部70」と称する)、補機トルク−エンジンフリクション算出部71(以下、「HAC−ENGフリクション算出部71」と称する)、第1加算部72、トルク配分算出部74、気筒休止制御部76、減算部78、目標スロットル算出部80(以下、目標TH算出部80)と称する)、アイドル制御部84、エンジントルク算出部88(以下、「ENGトルク算出部88」と称する)、補正部92、第2加算部94、実トルク算出部96を含んでいる。
トルクマネージメント部54の前記した各構成の機能は、特開2007−118780号公報に開示された公知のものであり、説明を省略する。
なお、気筒休止制御部76における全筒休止運転と全筒運転の切り換えの際には、その切り換えを示す信号を、IG制御部52に出力するとともに、スプールバルブ12(図1参照)のソレノイド12aを、例えば、通電状態から非通電状態に切り替える。
また、パワーマネージメント部56、エネルギ・マネージメント部58及びAT制御部62の各構成の機能も、特開2007−118780号公報に開示された公知のものであり、説明を省略する。
(ACM及びACM_ECUの構成)
次に、図3、図4を参照し、適宜、図1、図2を参照しながらACM19F,19R及びACM_ECU32の構成を説明する。図3は、図1中のACM_ECUの概略構成図であり、図4は、図1中のACMの構造を示す縦断面図である。
る。
前記したようにCRKセンサS15は、内燃機関Eの図示しないクランクシャフトが発生するクランクパルスを検出するセンサである。4気筒直列エンジンの場合、クランクパルスは、内燃機関Eにおけるクランク角が、例えば、6°毎に発生し、CRKセンサS15はこのクランクパルスを検出してFI/MG/AT#ECU36に入力する。TDCセンサS16は、各気筒の上死点毎に1回、TDC信号を出力するセンサであり、クランクシャフトの1回転につき2回、TDC信号を出力する。
そして、前記したようにクランク角演算部51(図2参照)は、クランクパルスの歯欠け形状とTDCパルの波形の組み合わせから、代表気筒の特定のクランク角を検出するようになっている。
FI/MG/AT#ECU36は、エンジン回転速度NEを制御したり、内燃機関Eに備わる図示しないエンジン回転速度センサS2を介してエンジン回転速度NEを検出したりする。そして、検出したエンジン回転速度NEやCRKセンサS15、TDCセンサS16から入力されるクランクパルス信号やTDC信号をACM_ECU32に通信回線を介して入力する。
さらに、IG−SW信号がONの状態で、気筒休止制御部76からの制御指令により内燃機関Eを始動する時には、FI/MG/AT#ECU36は、クランクパルス信号及びTDC信号にもとづいて、内燃機関Eが最初の爆発(以下、「初爆」と称する)するときにどの気筒を最初に爆発させる気筒(以下、「初発インジェクション気筒」と称する)とするか決め、その決められた初発インジェクション気筒に対して最初に燃料噴射を行う制御を行う。
FI/MG/AT#ECU36は、ハイブリッド車両500(図1参照)に配線されている通信回線を介して、前記した初発インジェクション気筒を特定する信号をACM_ECU32に出力する。
ACM_ECU32は、CPU321b、ROM321c、RAM321d、不揮発メモリで構成される記憶部321e等を備えるマイクロコンピュータ及び信号入出力部321a等を含む周辺回路、駆動回路322A,322B等から構成される。
信号入出力部321aは、FI/MG/AT#ECU36から入力されるエンジン回転速度NEやクランクパルス信号、TDC信号、初発インジェクション気筒を特定する信号等の信号を受信して、CPU321bに入力したり、CPU321bから出力されるACM19F,19Rのアクチュエータ19b,19b(図4参照)への通電制御の信号を駆動回路322A,322Bへ出力したりする。
ここで、ACM19F,19Rは、例えば、特許文献3の段落[0025]〜[0043]、並びに図2、図3に記載のような構成であり、詳細な説明は省略する。
ちなみに、駆動回路322Aは、ACM19Fが備える符号省略のコイルに電流を通電する図示しないスイッチング回路とコイルに実際に流れる電流値を検出する電流センサ322aを含んでいる。駆動回路322Aの前記スイッチング回路はCPU321bに制御され、駆動回路322Aがバッテリから供給される直流電源を、コイルに供給可能となっている。駆動回路322Bも同様な構成である。コイルが励磁されると加振板19a(図4参照)を下方に変位させ、コイルが無励磁になると加振板19aが上方に変位する。
そして、CPU321bは、例えば、ROM321cに格納されたプログラムによって動作する。また、記憶部321eには、ACM19F,19Rを制御するために必要なデータ等が記憶されている。
ただし、特許文献3では、V型6気筒エンジンンの場合の例で説明されている。
そして、内燃機関Eの始動時、停止時を除く通常運転状態における、ACM19F,19R、ACM_ECU32による防振制御機能は、特許文献3の段落[0053]〜[0060]、並びに、図5、図6に記載されているものと同様であるので詳細な説明を省略する。
(エンジン始動時の振動に対する防振制御)
ところで、内燃機関Eは、燃焼室における混合気の爆発がピストンを押し下げる力を、コネクティングロッドを介してクランクシャフトの回転運動に変換するもので、内燃機関E本体にはクランクシャフトの回転の反作用としてのクランクシャフト回りのロールモーメントが作用する事になる。
内燃機関Eが全筒休止運転状態でモータGM1によるEV走行モードで運転していて、全筒運転状態に切り換わる際には、初発インジェクション気筒での爆発行程と、それに続く気筒での爆発行程にともない、エンジン始動時の振動(以下、「始動振動」と称する)が短期間発生する。
始動振動に対するACM_ECU32によるACM19F,19Rの防振制御は、従来は特許文献3に記載のように、初発インジェクション気筒を示す信号を受信して、ACM_ECU32側で初爆のタイミングを算出し、その初爆、及びそれに続く所定の期間の爆発による始動振動の防振制御を行ってきた。そのため、モータGM1によるエンジン回転速度NEの変化により実際の初爆とACM_ECU32側で予測演算した初爆のタイミングがずれる可能性がある。
以下に、図5から図8を参照し、適宜、図1から図4を参照しながら本実施形態における、FI/MG/AT_ECU36のIG制御部52の始動時点火制御部52aが、ACM_ECU32と協調して、初爆タイミングを制御して、始動振動の防振制御をする方法について説明する。
図5、図6は、FI/MG/AT_ECUとACM_ECUにおけるエンジン始動の際の始動振動を抑制する制御の流れを示すフローチャートである。図7は、エンジン始動時の前側のACMの動作の説明図であり、(a)は前側のACMの作用点の変位量の時間推移の説明図、(b)は加振板の変位量の時間推移の説明図、(c)は駆動電流の時間推移の説明図である。図8は、エンジン始動時の後側のACMの動作の説明図であり、(a)は後側のACMの作用点の変位量の時間推移の説明図、(b)は加振板の変位量の時間推移の説明図、(c)は駆動電流の時間推移の説明図である。
図5、図6のフローチャートにおいて、左側にFI/MG/AT_ECU36における制御を示し、右側にACM_ECU32の制御を示す。
運転者が停止状態のハイブリッド車両500(図1参照)を走行状態に入れるためにイグニッション・スイッチIG−SW(図2参照)をスタート位置に回すとVSA_ECU31、ACM_ECU32、MOT_ECU33、HV_ECU35、FI/MG/AT_ECU36(図1参照)等の各ECUが起動する。そして、運転者がアクセルペダルを踏み込むと、FI/MG/AT_ECU36の気筒休止制御部76(図2参照)においてパワーマネージメント部56(図2参照)から入力されるMOT制限トルクと、第1加算部72(図2参照)から入力されるP/Pトルクとを比較する。ハイブリッド車両500のバッテリ3(図1参照)の充電量が十分である場合は、P/PトルクがMOT制限トルクに対して予め設定された所定量以上の余裕をもって上回るので、気筒休止制御部76は、モータGM1(図1参照)のみによる走行可能として全筒休筒運転、つまり、EV走行モードが可能として、トルク配分算出部74(図2参照)に全筒休筒運転の指令を出力する。そして、トルク配分算出部74は、モータGM1に対して入力されたP/Pトルクをそのまま出力するようにMOT_ECU33に通信線を介して指令する。
もし、バッテリ3の充電量が当初から不十分な場合、またはEV走行モードで走行を開始してからバッテリ3の充電量が不足した場合は、P/PトルクがMOT制限トルクに対して予め設定された所定量以上の余裕をもって上回らないので、気筒休止制御部76は、モータGM1のみによる走行不能としてトルク配分算出部74に全筒運転の指令を出力する。そして、トルク配分算出部74は、入力されたP/PトルクのうちのMOT制限トルク以下の所定のトルクをモータGM1に対して出力するようにMOT_ECU33に通信線を介して指令する。このとき、気筒休止制御部76は、IG制御部52にエンジン始動指令を出力し、内燃機関E(図1参照)のモータGM1によるモータリングを開始する。この内燃機関EのモータGM1によるモータリングは、ハイブリッド車両500の低速走行状態でも可能であるし、停止状態でも可能である。
ステップS001では、IG制御部52の始動時点火制御部52aは、気筒休止制御部76からエンジン始動の指令を入力されたか否かをチェックする(「エンジン始動?」)。エンジン始動の指令を受けた場合(Yes)は、ステップS002へ進み、受けていない場合(No)は、ステップS001を繰り返す。始動時点火制御部52aは、CRKセンサS15(図1参照)からのクランクパルス信号とTDCセンサS16(図1参照)からのTDCパルス信号にもとづいて初発インジェクション気筒を決定し、初発インジェクション気筒を示す信号を、通信回線を介してACM_ECU32(図1参照)に出力する。始動時点火制御部52aは、この初発インジェクション気筒を示す信号を出力したタイミングを時間t=0として設定し、計時開始をする。
ステップS002の後、始動時点火制御部52aにおける点火時期の制御は、結合子(A)に従って、図6のステップS021へ進む。
ステップS003では、ACM_ECU32のCPU321bは、FI/MG/AT_ECU36から初発インジェクション気筒を示す信号を受信したか否かをチェックする。初発インジェクション気筒を示す信号を受信した場合は、ステップS004へ進み、そうでない場合(No)は、ステップS003を繰り返す。ステップS004では、CPU321bは、初発インジェクション気筒を判別する。
ここで、「初発インジェクション気筒を示す信号を受信」がACM_ECU32における「始動振動に対する防振制御の開始の条件」となる。また、この初発インジェクション気筒を示す信号を受信したときを、時間t=0として計時を開始する。
次いで、ステップS005では、CPU321bは、初発インジェクション気筒を判別したタイミングで、ACM19F,19R(図1参照)に所定のDC電流を出力するように駆動回路322A,322Bに指令し、駆動回路322A,322BからDC電流を出力させる(「ACMにDC電流を印加」)。
ここで、ACM19F,19Rに印加されるDC電流は図7の(c)及び図8の(c)に示すように異なった電流値IiF,IiRで(IiF<IiR)ある。ACM19Fは、図7の(a)に示すように押し側動作をさせるため、加振板19a(図4参照)を無通電の場合の位置PiVより低い初期位置PiFまで移動させて保持する(図7の(b)参照)。ACM19Rは、図8の(a)に示すように引き側動作をさせるため加振板19aを無通電の場合の位置PiVより低い位置PiRまで移動させて保持している(図8の(b)参照)。
ちなみに、加振板19aの前記初期位置はPiF>PiRである。また、ステップS005における所定のDC電流値IiF,IiRの印加は、図7の(c)及び図8の(c)に示すように立ち上がりをゆっくりとしているので、加振板19aの無通電時の位置PiVからそれぞれ初期位置PiF,PiRに移動しても、ACM19R,19Rのエンジン取付部(作用点)は上下に移動せず無通電時の初期位置PiMを保ったままである。
そして、ステップS006では、CPU321bは、例えば、AT油温センサからの信号、つまり、AT油温やエンジン回転速度NEを参照して、記憶部321eまたはROM321cに格納されているデータにもとづいて始動振動の抑制期間を設定する(「始動振動の抑制期間の設定」)。ステップS007では、CPU321bは、AT油温及びエンジン回転速度NEを参照して記憶部321eまたはROM321cに格納されているデータから始動振動の抑制ゲインを設定する(「始動振動の抑制ゲインの設定」)。
ここで、始動振動の抑制期間は、始動振動を抑制する防振制御の周期数で設定される。始動振動の抑制期間及び始動振動の抑制ゲインが、エンジン回転速度NEを参照するのは、初発のインジェクション気筒を示す信号を受信したときのエンジン回転速度NEが大きいほど始動振動の期間が短くなる傾向にあり、始動振動の振幅も小さい傾向にあるからである。また、AT油温を参照するのは、AT油温が低いと、初爆時のオートマティック・トランスミッションATのトルクコンバータ22における反動力が大きく、その反動力が始動振動を増幅したり、始動振動の期間を長くしたり作用するためである。
そして、ここでは、ステップS007で設定される始動振動の抑制ゲインは、最初の振動周期の抑制ゲインに対してそれに続く振動周期の抑制ゲインは、所定の比率だけ減衰させたものとしている。
ステップS008では、CPU321bは、エンジン回転速度NEにもとづいて、始動振動の振動数である始動振動数を設定する。
ステップS009では、CPU321bは、仮想電流波形の設定を行う。この仮想電流波形は交流電流波形であり、ステップS006で設定された始動振動の抑制期間、ステップS007で決められた始動振動の抑制ゲイン、ステップS008により決められた始動振動数にもとづいて仮想電流波形が設定される。
ステップS009の後、CPU321bにおける防振制御は、結合子(B)に従って、図6のステップS010へ進む。
ステップS010では、CPU321bは、初発インジェクション気筒の現在のクランク角とクランク角速度にもとづいて、DC電流から仮想電流波形に切り換えるタイミングを設定する。
ステップS010を具体的に説明すると、CPU321bは、初発インジェクション気筒の現在のクランク角とクランク角速度及び初発インジェクション気筒の点火タイミングとして予め設定されているクランク角を参照して、マップデータにもとづき初発インジェクション気筒に点火されて燃焼を開始し、初爆による振動のピークとなるタイミングtexp(以下、「初爆による振動のピーク位置予測タイミングtexp」と称する)を算出する。
そして、CPU321bは、ACM19Fに対する交流の仮想電流波形の最初のピークPF1が、図7の(c)に示すように初爆による振動のピーク位置予測タイミングtexpに位置するように設定し、所定のDC電流値IiFと時刻tSFから始まる最初の仮想電流波形とが交わる点、時間tCFをACM19Fに対する電流切り換えタイミング(以下、「電流波形切り換えタイミング」と称する)として設定する。
この電流波形切り換えタイミングが、特許請求の範囲に記載の「アクチュエータの伸縮駆動開始タイミング」に対応する。
さらに、CPU321bは、ACM19Rに対する交流の仮想電流波形の最初のボトムBR1が、図8の(c)に示すように初爆による振動のピーク位置予測タイミングtexpに位置するように設定し、所定のDC電流値IiRと時刻tSRから始まる最初の仮想電流波形とが交わる点、時間tCRをACM19Rに対する電流切り換えタイミングとして設定する。
前記したように初爆による振動のピーク位置予測タイミングtexpの算出に用いられるマップデータは、ステップS003における初発インジェクション気筒を示す信号を受けたとき(時間t=0)に、そのときのクランク角と初発インジェクション気筒と、ステップS010を演算時のクランク角及びクランク角速度と、初発インジェクション気筒の点火タイミングとして予め設定されているクランク角と、始動振動数と、をパラメータとして予めROM321cまたは記憶部321eに格納されている
同様に、電流波形切り換えタイミングの設定に係る時間tCF,tCRを算出するために、ステップS003における初発インジェクション気筒を示す信号を受けたとき(時刻t=0)に、そのときのクランク角と、初発インジェクション気筒と、ステップS010を演算時のクランク角及びクランク角速度と、初発インジェクション気筒の点火タイミングとして予め設定されているクランク角と、始動振動数と、をパラメータとして電流波形切り換えタイミングである時間tCF,tCRを対応させたマップデータが、予めROM321cまたは記憶部321eに格納されている。
ステップS011では、CPU321bは、初爆による振動のピーク位置予測タイミングtexpと、電流波形切り換えタイミングtCF,tCRを、通信線を介してFI/MG/AT_ECU36の始動時点火制御部52aに通知する。
ステップS012では、CPU321bは、電流波形切り換えタイミングtCF,tCRに合わせて、ACM19F,19Rそれぞれの駆動電流を、DC電流から仮想電流波形に切り換えて出力する(「電流波形切り換えタイミングに合わせて、仮想電流波形を出力」)。
ちなみに電流波形切り換えタイミングtCF,tCRは、図7の(c)及び図8の(c)に示すようにACM19F,19R間でタイミングが異なる。
そして、ACM19F,19Rそれぞれに対する仮想電流波形に応じてACM19F,19Rのアクチュエータ19bは、防振動作する。
ステップS012における仮想電流波形の出力によって、ACM19Fでは、時刻tCFにおいてDC電流値IiFから最初の仮想電流波形に移行し、最初の仮想電流波形の山PF1と、それに続く2番目の仮想電流波形との間の谷BF(電流値0A)と、2番目の仮想電流波形の山PF2とが、初爆からの始動振動に伴うACM19Fに対する入力荷重変化の山―谷―山に合致するように制御される。
なお、ACM19Fのエンジン取付部(作用点)の押し側の変位量を最大限に確保するためには、谷BFにおける電流値を0Aとする。
その結果、図7の(b)に示す曲線CF2のように加振板19aは、当初のDC電流値IiFにより保持されていた初期位置PiFから一度下一杯の位置に移動してからACM19Fにおける入力荷重変化の山―谷―山に合致するように上下動をする。そのような加振板19aの変位の推移を受けて、図7の(a)に示す曲線CF1のようにエンジン取付部は、当初のDC電流値IiFにより保持されていた初期位置PiMから一度仮想の0点P0Fに移動してからACM19Fにおける入力荷重変化の山―谷―山に合致するように上下動をする。
同様に、ステップS012における制御の開始によって、ACM19Rでは、時刻tCRにおいてDC電流値IiRから最初の仮想電流波形に移行し、最初の仮想電流波形に続く2番目の仮想電流波形との間の谷BR1(電流値0A)と、2番目の仮想電流波形の山PRと、2番目の仮想電流波形に続く3番目の仮想電流波形との間の谷BR2とが、初爆からの始動振動に伴うACM19Rにおける荷重変化の谷―山―谷に合致するように制御される。
なお、ACM19Rのエンジン取付部(作用点)の引き側の変位量を最大限に確保するためには、谷BR1における電流値を0Aとする。
その結果、図8の(b)に示す曲線CR2のように加振板19aは、当初のDC電流値IiRにより保持されていた初期位置PiRから一度上一杯の位置に移動してからACM19Rにおける荷重変化の谷―山―谷に合致するように上下動をする。そのような加振板19aの変位の推移を受けて、図8の(a)に示す曲線CR1のようにエンジン取付部(作用点)は、当初のDC電流値IiRにより保持されていた初期位置PiMから一度仮想の0点P0Rに移動してからACM19Rにおける荷重変化の谷―山―谷に合致するように上下動をする。
ステップS013では、CPU321bは、始動振動の抑制期間が経過したか否かをチェックし、始動振動の抑制期間を経過した場合(Yes)は、一連の始動振動の抑制制御を終了し、アクチュエータ19bへの駆動電流を0として、ステップS003で開始した計時を停止する。図7の(c)及び図8の(c)に示す例では、連続する仮想電流波形が谷(電流値0)に達した時点で駆動電流の出力を止めるという制御をしており、ACM19FとACM19Rとの間で、制御終了のタイミングを異ならせている。このような制御をすることにより、ACM19F,19Rの制御を止めるときに車体への振動の伝達が小さくなる。
ACM19F,19Rの防振制御が終了すると、加振板19aは無通電時の位置PiVに復帰し、エンジン取付部(作用点)も無通電時の初期位置PiMに復帰する。
始動振動の抑制期間を経過していない場合(No)は、仮想電流波形の出力を続け、ACM19F,19Rのアクチュエータ19bは、始動時振動の防振動作を制御する。
ステップS002の後、結合子(A)に従って、図6のステップS021に進むと、始動時点火制御部52aは、初爆による振動のピーク位置予測タイミングtexp(図7、図8参照)と、電流波形切り換えタイミングtCF(図7参照),tCR(図8参照)をACM_ECU32から受信したか否かをチェックする。受信した場合(Yes)は、ステップS022へ進み、受信していない場合(No)は、ステップS021を繰り返す。
ステップS022では、始動時点火制御部52aは、エンジン始動時燃焼遅れ時間データ部52bに一時保持された燃焼遅れ時間データにもとづいて、点火時期から燃焼開始までの燃焼遅れ時間を算出する。
点火時期から燃焼開始までの燃焼遅れ時間は、具体的には、初発インジェクション気筒の点火時期tFfire(図9参照)から燃焼開始するまでの燃焼遅れ時間ΔtSfire(図示せず)と、点火時期tFfireから爆発によるエンジントルク変動のピークとして現れるまでの燃焼遅れ時間ΔtPfire(図示せず)の値の2つの燃焼遅れ時間データから構成されていることが好ましい。
具体的には、これらの燃焼遅れ時間ΔtSfire,ΔtPfireは、空燃比、エンジン冷却水温度を参照して燃焼遅れ時間データにもとづいて算出される。
初発インジェクション気筒に対する点火時期tFfireは、所定のクランク角に設定されている。しかし、EV走行中に、例えば、運転者がアクセルペダルを踏み込み、要求されるP/Pトルクが増加した場合と、イグニッション・スイッチIG−SWをスタート位置に回したときに、バッテリ3の充電量不足によりモータGM1をスタータとして用いて内燃機関Eを始動する場合とでは、A/F制御部50が設定する空燃比が異なる。その結果、これらの燃焼遅れ時間ΔtSfire,ΔtPfireは、内燃機関Eの始動が要求される状態で変動する。また、これらの燃焼遅れ時間ΔtSfire,ΔtPfireは、内燃機関Eの温度、つまり、冷却水温度の影響も受ける。そこで、エンジン始動時燃焼遅れ時間データ部52bに一時保持される燃焼遅れ時間データは、例えば、空燃比、エンジン冷却水温度をパラメータとしたマップデータとする。
ちなみに、初発インジェクション気筒に対する空燃比は、A/F制御部50から出力されるものを用い、エンジン冷却水温度は、エンジン冷却水温度センサS13からの信号により得られる。
ステップS023では、始動時点火制御部52aは、初爆による振動のピーク位置予測タイミングtexpと、電流波形切り換えタイミングtCFに対応させて、燃焼遅れ時間の補正を行って初発インジェクション気筒の点火時期tFfireを設定する(初爆タイミングの設定)。
この初爆タイミングの設定は、例えば、以下のように行う。ステップS021で取得された初爆による振動のピーク位置予測タイミングtexpと電流波形切り換えタイミングtCFとの第1の差分であるΔtFを算出し、ステップS022で算出された燃焼遅れ時間ΔtSfireと、燃焼遅れ時間ΔtPfireとの第2の差分ΔtDC(=ΔtPfire−ΔtSfire)を算出する。
そして、第1の差分ΔtFと第2の差分ΔtDCを比較し、第1の差分ΔtFが第2の差分ΔtDC以上の値の場合は、振動のピーク位置予測タイミングtexpからΔtPfireを減算して得られた時期を点火時期tFfire(=texp−ΔtPfire)として設定する。
第1の差分ΔtFと第2の差分ΔtDCを比較し、第1の差分が第2の差分未満の値の場合は、次式(1)に従って点火時期tFfireを設定する。
Ffire=texp−ΔtPfire+(ΔtDC−ΔtF)/2 ・・・・(1)
このように、点火時期を初発インジェクション気筒に対して予め所定のクランク角に設定したものから再設定する。
ちなみに、第1の差分ΔtFが第2の差分ΔtDC未満の値の場合は、式(1)のように点火時期tFfireを設定するのは、図7の(a)において時間tCF〜texpの間に初爆によるエンジン振動のACM19Fへ入力される荷重の最初のピークまでの位相と、ACM19FにおけるΔtF(図7の(c)参照)の引き動作(作用点のPiMから仮想0点への変位)の位相とが対応し、両者の位相のズレを最小にするためのものである。
第1の差分ΔtFが第2の差分ΔtDC以上の値の場合は、単に、振動のピーク位置予測タイミングtexpに、初爆のエンジン振動のピークが位置するように点火時期tFfireを設定すれば、両者の位相のズレを最小にできる。
ステップS024では、始動時点火制御部52aは、ステップS023において設定された初発インジェクション気筒の点火時期tFfireに従って、初発インジェクション気筒の点火を制御する。ステップS025では、始動時点火制御部52aは、次気筒以降に対して通常の点火制御を行う。これで、一連のエンジン始動時の始動振動に対するACM19F,19Rの防振制御と、防振制御に協調した内燃機関Eの点火時期制御を終了する。
ACM19F,19Rが設けられていない場合、内燃機関Eの始動時にエンジンマウントには、内燃機関Eの発動(連続する気筒内爆発の継続による自力回転の開始)の直後からしばらくの間、内燃機関Eの始動振動が生じ大きな入力荷重がエンジンマウントに加わる。そのような、始動振動を本実施形態におけるACM19F,19Rを用いて吸収し、車体フレームに伝達されるのを抑制しようとしても、アクチュエータ19bのリニアソレノイドの形式では、押し側動作をさせる前方側のACM19Fと引き側動作をさせる後方側のACM19Rとでは、以下のような制約がある。
(1)ACM19Fの動作可能な力の範囲については、加振板19aの初期位置PiFを、予めACM19Rにおける初期位置PiRよりも高く設定しないと、開放時(駆動電流低減時)の弾性力の範囲を大きく確保できない。
(2)反対に、ACM19Rの動作可能な力の範囲については、加振板19aの初期位置PiRを予めACM19Fにおける初期位置PiFよりも低く設定しないと、吸引時(駆動電流増加時)の吸引力の範囲を大きく確保できない。
したがって、エンジン始動時に初爆直後からACM19F,19Rの駆動電流の制御を開始して始動振動に対処しようとしても、最初の交流駆動の間は、加振板19aが適切な位置に移動していないので、押し側のACM19Fについては、十分な弾性力を発揮することができず、また、引き側のACM19Rについては、十分な吸引力を発揮することができず、始動振動がある程度繰り返した時点で加振板19aの動作が安定となり、所定のエンジン取付部(作用点)の変位出力が得られることになる。これでは、初爆の最初から始動振動の車体への伝達を抑制することができない。
また、従来のようにEV走行モードを含むモータGM1によるモータリング状態において、ACM_ECU32が、FI/MG/AT_ECU36から初爆インジェクション気筒を示す信号を受信したタイミングで、ACM19F,19Rに所定のDC電流を印加して、加振板19aを初期位置PiF,PiRに移動させても、以下のような課題があった。
図9は、エンジン始動時の従来技術と本実施形態とのエンジン振動の差異を説明する図であり、(a)は、従来におけるエンジン回転速度NEの推移を示す説明図、(b)は、従来技術における初爆タイミングのずれによるエンジン振動の差異を示す説明図、(c)は、前側のACMの駆動電流の時間推移を示す説明図、(d)は、本実施形態におけるエンジン回転速度NEの推移を示す説明図、(e)は、本実施形態におけるACMへ入力されるエンジン振動と、車体への入力振動を示す説明図である。
図9では、イグニッション・スイッチIG−SWをスタートの位置にした際に、直ちにエンジン始動に入った場合で説明してある。
従来技術では、図9の(a)に示すようにACM_ECU32においてACM19F,19Rに対して駆動電流を設定した初爆による振動の開始タイミング、つまり、図9の(c)に矢印でタイミングを示した期待された点火時期tFfireと、実際の点火時期t’Ffireとがずれることがある。その場合、例えば、図9の(c)に示すように、ACM19Fに対して駆動電流が設定されてそのまま出力されてしまい、アクチュエータ19b(図4参照)の駆動が制御される。そうすると、図9の(b)に実線で示す点火時期tFfireで始まると予想していたエンジン振動が、破線で示したエンジン振動になる。ACM19F,19Rの駆動の位相がずれたことにより破線のように逆に始動振動を増大させる可能性もある。
なお、図9の(c)に矢印で示したタイミングtFinjは、初爆のための燃料噴射タイミングを示している。
これに対し、本実施形態では、ACM_ECU32側で決めた初爆による振動のピーク位置予測タイミングtexpと電流波形切り換えタイミングtCFに適合するように、所定のクランク角で設定された点火時期tFfireを燃焼遅れ時間ΔtSfire,ΔtPfire分を考慮して、FI/MG/AT_ECU36側において点火時期tFfireを再設定して調整するので、実際の始動振動の位相とACM19F,19Rの駆動の位相がずれることが防止できる。
その結果、図9の(d)に示すように初爆タイミングのずれが防止でき、図9の(e)に破線で示すようなACM19F,19Rに入力されるエンジン振動に対して、図9の(e)に実線でしめすような車体入力振動に減衰され、目標振動値(目標振幅)の範囲に始動振動を減衰できる。
《変形例》
次に図5、図10を参照して、適宜、図2、図3を参照しながら本実施形態の変形例について説明する。
図5、図10は、変形例におけるFI/MG/AT_ECU36とACM_ECU32におけるエンジン始動の際の始動振動を抑制する制御の流れを示すフローチャートである。
実施形態では、ACM_ECU32側で決めた初爆による振動のピーク位置予測タイミングtexpと電流波形切り換えタイミングtCFに適合するように、所定のクランク角で設定された点火時期を燃焼遅れ時間分を考慮して、FI/MG/AT_ECU36側において、特に、IG制御部52において点火時期tFfireを再設定して調整するものとしたが、それに限定されるものではない。本変形例では、ACM_ECU32側で点火時期tFfireを再設定してFI/MG/AT_ECU36に点火時期tFfireを通知し、FI/MG/AT_ECU36側はそれに合わせてエンジン始動の点火制御をする。
実施形態における図5、図6のフローチャートと同じステップについては、重複する説明を省略する。
そのため、図5のステップS002の後、結合子(A)に従って図10のステップS021Aへ進む。
また、図5のステップS009の後、結合子(B)に従って図10のステップS010へ進む。そして、ステップS010Aへ進み、CPU321b(図3参照)は、ROM(燃焼遅れデータ記憶手段)321cまたは記憶部(燃焼遅れデータ記憶手段)321eに記憶された燃焼遅れ時間データにもとづいて、点火時期から燃焼開始までの燃焼遅れ時間を算出する。
点火時期から燃焼開始までの燃焼遅れ時間は、具体的には、前記した燃焼遅れ時間ΔtSfireと燃焼遅れ時間ΔtPfireの値の2つの燃焼遅れ時間データから構成されている。
ここで、燃焼遅れ時間データは、例えば、空燃比、エンジン冷却水温度をパラメータとしたマップデータとする。ちなみに、初発インジェクション気筒に対する空燃比、エンジン冷却水温度は、通信回線によりFI/MG/AT_ECU36からACM_ECU32に通信される。
ステップS010Bでは、CPU321bは、初爆による振動のピーク位置予測タイミングtexpと、電流波形切り換えタイミングtCFに対応させて、燃焼遅れ時間の補正を行って初発インジェクション気筒の点火時期tFfireを設定する(初爆タイミングの設定)。この設定の方法は、前記した実施形態において説明したものと同じ方法である。
ステップS010Cでは、CPU321bは、ステップS10Bで設定した点火時期tFfireを、通信回線を介してFI/MG/AT_ECU36に通知する。その後、ステップS012へ進む。
図5のステップS002の後、結合子(A)に従って図10のステップS021Aへ進むと、IG制御部52の始動時点火制御部52aが、初爆の点火時期tFfireをACM_ECU32から受信したか否かをチェックする。初爆の点火時期tFfireを受信した場合(Yes)は、ステップS024へ進み、そうでない場合(No)は、ステップS021Aを繰り返す。そして、ステップS024では、始動時点火制御部52aは、ステップS010Bにおいて設定された初発インジェクション気筒の点火時期tFfireに従って、初発インジェクション気筒の点火を制御する。ステップS025では、始動時点火制御部52aは、次気筒以降に対して通常の点火制御を行う。これで、一連のエンジン始動時の始動振動に対するACM19F,19Rの防振制御と、防振制御に協調した内燃機関Eの点火時期制御を終了する。
なお、本実施形態及びその変形例では、例えば、ACM19Fでは、時刻tCFを基準に制御を開始しているが、制御の開始時点を時刻tSFを基準として制御を開始し、電流値IiFに達した時点から電流値を設定するDutyを変化させるようにしても良い。同様に、ACM19Rでは、時刻tCRを基準に制御を開始しているが、制御の開始時点を時刻tSRを基準として制御を開始し、電流値IiRに達した時点から電流値を設定するDutyを変化させるようにしても良い。これにより、ACM19FとACM19Rとの間で、仮想電流波形を規定するマップや、プログラムの制御ステップを共通化することでシステムを簡素化することができる。
また、本実施形態及びその変形例では、内燃機関EはV型6気筒エンジンを例に説明したが、それに限定されるものではない。V型8気筒エンジン、直列4気筒エンジン、水平対向4気筒エンジン等他の多気筒エンジンにも、勿論、適用可能である。
さらに、本実施形態及びその変形例は、パラレルモード型のパラレルハイブリッド車両に対して適用した例で説明したが、それに限定されるものではなく、特許第4377898号公報に記載のような、パラレルモードとシリーズモードのいずれにも切り換え可能なハイブリッド車両にもできる。
さらに、通常のスタータモータにより内燃機関Eを始動させるような駆動源として内燃機関Eのみを備えるハイブリッド車両ではない通常の車両にも適用可能である。
従って、前記した本実施形態及びその変形例においては、気筒休止制御部76からの全筒休止運転から全筒運転への指令の切り換わりが、特許請求の範囲に記載の「エンジン始動要求指令」に対応するが、前記したハイブリッド車両ではない通常の車両においては、イグニッションキーのスタータONの信号が特許請求の範囲に記載の「エンジン始動要求指令」に対応する。
19F,19R ACM(能動型防振支持装置)
19a 加振板
19b アクチュエータ
32 ACM_ECU(防振制御手段)
36 FI/MG/AT_ECU(エンジン始動制御装置)
52 IG制御部
52a 始動時点火制御部(エンジン始動指令発生手段)
52b エンジン始動時燃焼遅れ時間データ部(燃焼遅れデータ記憶手段)
76 気筒休止制御部(エンジン始動要求判定手段)
321b CPU
321c ROM(燃焼遅れデータ記憶手段)
321e 記憶部(燃焼遅れデータ記憶手段)
E 内燃機関(エンジン)
GM1 モータ(電動機)

Claims (5)

  1. エンジンの振動状態に応じて防振制御手段がアクチュエータを伸縮駆動し、前記エンジンの振動の車体への伝達を抑制する能動型防振支持装置により支持された前記エンジンを搭載した車両における前記エンジンの始動を制御するエンジン始動制御装置であって、
    前記エンジンの始動の際に、前記アクチュエータの伸縮駆動開始タイミングに基づいて前記エンジンの初爆タイミングが設定され、当該設定された初爆タイミングに応じて前記エンジンの点火制御が行われることを特徴とするエンジン始動制御装置。
  2. 前記エンジンの始動要求指令を受けて初発インジェクション気筒を示す信号を前記防振制御手段に送信するエンジン始動指令発生手段を備え、
    前記防振制御手段は、
    前記初発インジェクション気筒を示す信号を取得し
    当該取得した初発インジェクション気筒を示す信号、及び、クランク角とクランク角速度に基づいて、初爆による前記エンジンのロール振動を抑制するために前記アクチュエータの伸縮駆動開始タイミングを設定するとに、当該設定された伸縮駆動開始タイミングを出力し、
    前記エンジン始動指令発生手段は、
    前記設定された伸縮駆動開始タイミングに基づいて前記エンジンの初爆タイミングを設定することを特徴とする請求項1に記載のエンジン始動制御装置。
  3. 前記エンジンの点火時期から燃焼開始までの燃焼遅れ時間のデータを予め記憶した燃焼遅れデータ記憶手段を備え、
    前記防振制御手段は、前記燃焼遅れデータ記憶手段に記憶された前記燃焼遅れ時間のデータに基づいて初爆の燃焼遅れ時間を算出し、当該算出された初爆の燃焼遅れ時間を参照して、前記初爆タイミングの補正設定を行うことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のエンジン始動制御装置。
  4. エンジンの振動状態に応じて防振制御手段がアクチュエータを伸縮駆動し、前記エンジンの振動の車体への伝達を抑制する能動型防振支持装置により支持された前記エンジンを搭載した車両における前記エンジンの始動を制御するエンジン始動制御装置であって、
    前記エンジンの始動要求指令を受けて初発インジェクション気筒を示す信号を前記防振制御手段に送信するエンジン始動指令発生手段を備え、
    前記防振制御手段は、前記エンジンの点火時期から燃焼開始までの燃焼遅れ時間のデータを予め記憶した燃焼遅れデータ記憶手段を有し、
    前記防振制御手段は、
    前記初発インジェクション気筒を示す信号を取得し
    前記取得した初発インジェクション気筒を示す信号、及び、クランク角とクランク角速度に基づいて、初爆による前記エンジンのロール振動を抑制するために前記アクチュエータの伸縮駆動開始タイミングを設定するとに、
    前記燃焼遅れデータ記憶手段に記憶された前記燃焼遅れ時間のデータに基づいて初爆の燃焼遅れ時間を算出し、当該算出した初爆の燃焼遅れ時間を参照して、前記初爆タイミングの補正設定を行い、
    当該補正設定された初爆タイミングを出力し、
    前記エンジン始動指令発生手段は、
    前記補正設定された初爆タイミングの出力を受けて、前記エンジンの初爆タイミングを設定し、
    当該設定された初爆タイミングに応じて前記エンジンの点火制御を行うことを特徴とするエンジン始動制御装置。
  5. 前記車両は、駆動源として電動機を搭載したパラレルハイブリッド車両またはシリーズハイブリッド車両であり、
    前記電動機のみを駆動源として走行中に、運転者のアクセルペダル操作に基づいて前記エンジンの始動の要否を判定し、必要に応じて前記エンジン始動要求指令を出力するエンジン始動要求判定手段を備え、
    前記エンジン始動要求判定手段から、前記エンジン始動要求指令を取得したとき、前記エンジンの始動制御が行われることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のエンジン始動制御装置。
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