JP5510508B2 - 溶銑吹錬用上吹きランスと、溶銑および脱りん銑の脱炭方法 - Google Patents
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Description
本発明は、例えば、製鋼用転炉において精錬用ガスを溶銑や溶鋼に吹き付けるために使用する溶銑吹錬用上吹きランスと、この溶銑吹錬用上吹きランスを用いる溶銑および脱りん銑の脱炭方法に関する。
製鋼プロセスにおいて生産性を向上させるためには、全ての溶鋼が対象となる転炉脱炭処理をいかに短縮するかが課題である。すなわち、送酸速度を上げて吹錬時間を短縮することが重要である。高速吹錬時の重要課題にスピッティングがある。
スピッティングの発生量が増大すると、ダスト発生量増加による歩留まりの低下,ダクト内のダスト堆積による設備能力の低下や設備損傷,炉口への地金付着による操業阻害等を招く。
このスピッティングを低減するためには、酸素ガスジェットが浴表面に衝突するときのエネルギーを分散させることが可能なランスの多孔化が有効であり、現状の製鋼用転炉においては多孔ランスを用いるのが一般的である。多孔ランスとは同一円周上に3孔以上のノズルが等間隔で配置されたものであり、通常各ノズル軸の延長がランス中心軸上の1点で交わるように傾斜している。多孔ランスではノズル個数が多いほどジェットの衝突エネルギーを分散させる効果が大きく、スピッティング低減に有利である。現状の転炉では4〜6孔の多孔ランスが用いられているが、今後更に高速の吹錬を要された場合、更にランスの多孔化が望まれる。
しかしながら、多孔ランスにおけるノズル数の増加にはおのずと限界がある。すなわち、ノズル数が多過ぎると各ノズルに対応するキャビティー(ジェット衝突による浴面の凹み)に重なりが生ずるが、これにより、スピッティングが助長されることが指摘されている。
この問題を解決する手段として、特許文献1には、キャビティーの直径Dと、隣接するキャビティーの中心を結んだ直線上の2つのキャビティーが重なる部分の距離dの比率であるオーバーラップ率γ(=d/D)を指標としてノズル傾斜角θを大きくとり、キャビティーの重複を小さくする方法が提案されている。幾何学的に考えて、ノズル数が多くなる程、このノズル傾斜角θを大きくする必要があるが、この場合、脱炭酸素効率(上吹き酸素と溶鋼中炭素との反応効率)の低下による吹錬時間の延長やスラグ中T.Fe(Total Fe、すなわち全鉄分)の増加、および二次燃焼率の増加による炉壁耐火物の損耗速度の増大といった問題が生じる。すなわち、ノズル傾斜角θを大きくすることは、キャビティーの重複を小さくしスピッティングの低減には効果があるものの、本来の目的である製鋼プロセスの生産性向上に対し有効な手段とは言い難い。
そこで、本出願人は、特許文献2により、ランス先端形状を複雑にせずにジェットの流速分布を平滑化することができる溶融金属精錬用上吹きランス(以下、「ねじれランス」という)に係る特許発明を提案した。
図1(a)は通常の多孔ランスの先端部を示す概要図であり、図1(b)はねじれランスの先端部を示す概要図である。図1(a)および図1(b)において、符号1はランスであり、符号2はノズルである。
通常の多孔ランス1は、図1(a)に示すように各ノズル2は、その中心軸の延長がランス1の中心軸上の1点で交わるように傾斜して配置されるのに対し、ねじれランス1は、図1(b)に示すように各ノズル2は、その中心軸の延長が相互にねじれた位置関係となるように傾斜して配置される。この特許文献2では、6孔のねじれランスにおいて、ランスの中心軸から半径方向のジェットの動圧分布を調査し、ランス中心からみて動圧が最大となる方位と、そこから30°ずれた隣接するノズルとの境界に相当する方位(最も動圧が小さくなる方位)で、各方位でのピーク動圧値が近い値になるような、すなわち円周方向の動圧変動が小さくなるようなねじれ角γの範囲を提案した。そして、このねじれランスによってスピッティング量を低減できることを開示した。
また、本出願人は、特許文献3により、ねじれランスにおいて、ランス先端中心に配置した孔(以下「中心孔」という)の面積とノズル総断面積の比を適切な値にすることによって、半径方向の動圧も平滑化し、スピッティング量を低減できることを開示した。
特許文献2により開示されたねじれランスによれば、円周方向の動圧変動が小さくなるため、スピッティング量が低減される。しかし、このねじれランスは、各ノズル出口とランスノズル中心との距離Lの影響を考慮していない。距離Lを大きくすることで、各ノズルから噴出されるジェット間の距離が大きくなり、火点の重なりによるスピッティング量の増加が抑制される。すなわち、特許文献2により開示されたねじれランスにおいて距離Lを最適化することができれば、スピッティング量を更に低減することが可能になる。
また、特許文献3により開示されたランスは、確かに、半径方向の動圧を平滑化してスピッティング量を低減できるものの、中心孔比率が高いため、冷却水の流路が制限されることに加えて、ランス中心直下の動圧が大きくなり、ランス地金付着が生じ易くなるため、ランスの寿命への悪影響が懸念される。
本発明の目的は、特許文献2により開示されたねじれランスにおいて、ランス寿命に悪影響を与えることなく、円周方向の動圧変動を小さくすることができるのみならず、距離Lを大きくすることで火点間の距離を適正化することができ、これにより、スピッティング量を更に低減することができる溶銑吹錬用上吹きランスと、この溶銑吹錬用上吹きランスを用いる溶銑および脱りん銑の脱炭方法を提供することである。
特許文献2では、動圧の平滑化はスピッティング低減に有効であるものの、上吹きジェットにより鋼浴に生じるキャビティーが過度に干渉するとスピッティングが増加するので、キャビティーの大きさや位置関係が大きく変化しない範囲で動圧を平滑化する必要があるとした。よって、特許文献2では鋼浴での火点間の距離を一定にしてねじれランスのスピッティング低減効果を開示している。そして、特許文献2では各ノズル出口とランス中心間の距離Lを便宜上0としており、距離Lがねじれランスのスピッティング低減効果に及ぼす影響は検討されていない。
しかし、本発明者らが調査した結果、各ノズル出口とランス中心間の距離Lを適正化することによって、ねじれランスのスピッティング低減効果が大きく向上することが判明した。本発明は、特許文献2には開示されていないこのような新規の知見に基づくものであり、以下に列記の通りである。
(1)同一円周上に等間隔で配置された3孔以上のノズルを有し、かつ各ノズル入口あるいは各ノズル出口同士がそれぞれの設置面において重ならない溶銑吹錬用上吹きランスにおいて、
ランス中心軸が水平面に対して垂直となるようにランスを設置したときに、ランス先端面とノズル軸との交点であるノズル出口中心を通り水平面に対して垂直な直線をz軸とし、前記ノズル出口中心からランス中心軸へ垂直に下ろした直線がx軸となるように定めたxyz直交座標系において、上吹きノズル数をnとし、該ノズル軸のxy平面への投影とx軸とがなす角度であるねじれ角をγ(deg)とし、該ノズル軸とz軸とがなす角度である傾斜角をθ(deg)とし、前記出口中心とランス中心軸との距離をL(mm)とし、前記ノズル入口の直径であるノズルスロート径をR(mm)としたとき、
前記角度γ、前記ノズルスロート径R、前記距離Lおよび前記上吹きノズル数nから算出される、下記(1)式で示す指標Tが下記(2)式を満たし、かつ
前記角度γが下記(3)式を満足するとともに前記角度θが下記(4)式を満足すること
を特徴とする溶銑吹錬用上吹きランス。
ランス中心軸が水平面に対して垂直となるようにランスを設置したときに、ランス先端面とノズル軸との交点であるノズル出口中心を通り水平面に対して垂直な直線をz軸とし、前記ノズル出口中心からランス中心軸へ垂直に下ろした直線がx軸となるように定めたxyz直交座標系において、上吹きノズル数をnとし、該ノズル軸のxy平面への投影とx軸とがなす角度であるねじれ角をγ(deg)とし、該ノズル軸とz軸とがなす角度である傾斜角をθ(deg)とし、前記出口中心とランス中心軸との距離をL(mm)とし、前記ノズル入口の直径であるノズルスロート径をR(mm)としたとき、
前記角度γ、前記ノズルスロート径R、前記距離Lおよび前記上吹きノズル数nから算出される、下記(1)式で示す指標Tが下記(2)式を満たし、かつ
前記角度γが下記(3)式を満足するとともに前記角度θが下記(4)式を満足すること
を特徴とする溶銑吹錬用上吹きランス。
(2)酸素上吹きランスと底吹き羽口とを有する上底吹き転炉を用いる溶銑および脱りん銑を用いる脱炭方法において、(1)項に記載された溶銑吹錬用上吹きランスを用いることを特徴とする溶銑および脱りん銑の脱炭方法。
溶銑浴面に精錬用ガスを吹き付ける精錬プロセスにおいて、本発明に係る溶銑吹錬用上吹きランスを使用することにより、精錬用ガスと溶銑との反応効率を低下させることなくスピッティングを大幅に低減することができる。これにより、精錬歩留まりの向上、および炉口地金付着等の操業トラブルの回避が達成され、生産性を向上することができる。
以下、本発明を実施するための形態を、添付図面を参照しながら説明する。
図2,3は、本発明に係る溶銑吹錬用上吹きランスの先端部の例を示す概要図であり、図2はある一組のノズル入口、ノズル出口およびランス中心軸との位置関係を三次元で示し、図3は、本発明に係る溶銑吹錬用上吹きランスにおける、6孔の場合の、ランス中心、ノズル出口、ノズル入口およびノズル軸をxy平面へ投影して示す。
図2,3は、本発明に係る溶銑吹錬用上吹きランスの先端部の例を示す概要図であり、図2はある一組のノズル入口、ノズル出口およびランス中心軸との位置関係を三次元で示し、図3は、本発明に係る溶銑吹錬用上吹きランスにおける、6孔の場合の、ランス中心、ノズル出口、ノズル入口およびノズル軸をxy平面へ投影して示す。
図2,3において図1と同一部品は同一符号で表す。
図2,3において、ランス中心軸が水平面に対して垂直となるようにランスを設置したときに、ランス先端面とノズル軸との交点であるノズル出口中心を通り水平面に対して垂直な直線をz軸とし、ノズル出口中心からランス中心軸へ垂直に下ろした直線がx軸となるように定めたxyz直交座標系を用いて説明する。
図2,3において、ランス中心軸が水平面に対して垂直となるようにランスを設置したときに、ランス先端面とノズル軸との交点であるノズル出口中心を通り水平面に対して垂直な直線をz軸とし、ノズル出口中心からランス中心軸へ垂直に下ろした直線がx軸となるように定めたxyz直交座標系を用いて説明する。
ランス1には一般的な多孔ランスにおけるノズル傾斜角に相当する、ノズル軸とz軸がなす角度θ(以下「傾斜角」という)と、ノズルのねじれに相当する、ノズル軸のxy平面への投影とx軸とがなす角度γ(以下、「ねじれ角」という)とを有するノズル2が、ランス軸の周りに等間隔で6個配置されている。
(1)共通する調査条件
本発明者らは、2.5t試験転炉実験により、上吹きランスにおける孔数n、ノズルのねじれ角γ(deg)、ノズル出口中心とランス中心軸との距離L(mm)、ノズル入口の直径であるノズルスロート径R(mm)が、上吹き送酸時の溶鉄飛散量に及ぼす影響を調査した。
本発明者らは、2.5t試験転炉実験により、上吹きランスにおける孔数n、ノズルのねじれ角γ(deg)、ノズル出口中心とランス中心軸との距離L(mm)、ノズル入口の直径であるノズルスロート径R(mm)が、上吹き送酸時の溶鉄飛散量に及ぼす影響を調査した。
具体的には、上底吹き転炉内に炭素を3.8質量%含有する溶鉄を2トン装入し、上吹き酸素流量を8.0Nm3/minとするとともに底吹きAr流量を0.5Nm3/minとして、9〜12分間の脱炭吹錬を行い、炭素濃度が0.3質量%以下の溶鋼を製造した。
使用した転炉の浴面の半径は0.5mである。また、ランス先端と鋼浴面間の距離は0.5mとした。上吹きランスノズル数は通常よく用いられる4,6,8とし、ノズル傾斜角度θは15°とした。底吹き羽口数は4とした。
ねじれ角γ(deg)、ノズル出口中心とランス中心軸との距離L(mm)およびノズルスロート径R(mm)を変更して、吹錬中炉内へ鉄製の箱を挿入して採取した飛散溶鉄の重量をスピッティング発生量として、その変化と各パラメータとの関係を調べた。
(2)ノズルのねじれ角γがスピッティング量Spに及ぼす影響
本発明者らは、調査の結果から、ねじれランスにおいては、ノズル出口中心とランス中心軸との距離L(mm)と、ノズル入口の直径であるノズルスロート径R(mm)が変化することによって、スピッティング量Spがねじれ角γが0°のときに比べて減少をするときのねじれ角γ(deg)の範囲や、ねじれ角γ(deg)の増加によるスピッティング量Spの減少量が大きく変化することを見出した。
本発明者らは、調査の結果から、ねじれランスにおいては、ノズル出口中心とランス中心軸との距離L(mm)と、ノズル入口の直径であるノズルスロート径R(mm)が変化することによって、スピッティング量Spがねじれ角γが0°のときに比べて減少をするときのねじれ角γ(deg)の範囲や、ねじれ角γ(deg)の増加によるスピッティング量Spの減少量が大きく変化することを見出した。
そして、本発明者らが、ノズル条件から算出できる、ジェットの干渉・合体の程度を示す指標T((1)式)を用いて測定結果を整理した結果、4.5<T<48で、かつねじれ角γが90°以下の範囲にある場合において、ねじれランスのスピッティング低減効果がより顕著になることが判明した。
以下に調査結果の詳細を述べる。調査に用いた上吹きランスの諸元とスピッティング発生量Spを表1に示す。
表1におけるHeat1〜22では、ノズル出口中心とランス中心軸との距離L(mm)を10,15,25mmとして、ノズルのねじれ角γ(deg)がスピッティング発生量Spに及ぼす影響を調査した。表1におけるスピッティング発生量Spは、Heat1のスピッティング発生量を1.0として規格化した値である。ねじれランスによるスピッティング発生量低減効果の評価として、表1の評価欄に、スピッティング発生量Spが0.5以下である結果には○を付け、スピッティング発生量Spが0.5より大きい結果に対しては×をつけた。
(1)−1[L=10mm]
Heat1〜7、距離Lが10mmのときのねじれ角γ(deg)とスピッティング発生量Spの関係について説明する。
Heat1〜7、距離Lが10mmのときのねじれ角γ(deg)とスピッティング発生量Spの関係について説明する。
ねじれ角γが5°であるときのスピッティング発生量Spは、それぞれ0.96でHeat1と同程度だったが、ねじれ角γが10°,30°,60°のときには、スピッティング発生量Spが0.27〜0.47となり、ねじれ角が0°であるときと比べて大きく減少した。
しかし、ねじれ角γを75°,90°と更に増加させたときのSpはそれぞれ1.11,1.45となり、Heat1と比べて大きく増加した。
すなわち、ねじれ角γが5°と小さい場合は、ねじれ角付与による上吹きジェットの動圧の平滑化が不十分であったために、スピッティング発生量Spに変化がなかったと考えられる。一方、ねじれ角γが75°,90°と大きい場合はジェット同士の距離が小さ過ぎてジェットが過剰に干渉してスピッティング発生量Spが増加したと考えられる。
(2)−2[L=15mm]
Heat8〜14、距離L=15mmのときのねじれ角γ(deg)とスピッティング発生量Spとの関係を説明する。
Heat8〜14、距離L=15mmのときのねじれ角γ(deg)とスピッティング発生量Spとの関係を説明する。
距離Lが15mmの場合、ねじれ角γが10°のときのスピッティング発生量Spは0.90であり、Heat1と大きく変わらなかったが、ねじれ角γが15°,45°,60°,90°のときには、スピッティング発生量Spが0.30〜0.47となり、ねじれ角γが0°であるときに比べて大きく減少した。
しかし、ねじれ角γを95°まで増加させた場合にはスピッティング発生量Spは2.1となり、ねじれ角γが0°のときに比べてスピッティング発生量Spが倍増した。
距離L=10mmのときと同様に、ねじれ角γが10°と小さい場合は、ねじれ角付与による上吹きジェットの動圧の平滑化が不十分だったため、スピッティング発生量Spの変化が小さかったと考えられる。一方、ねじれ角γが95°と大きい場合は、ジェット同士の距離が小さ過ぎてジェットが過剰に干渉してスピッティング発生量Spが増加したと考えられる。ただし、距離L=10mmのときに比べて、スピッティング発生量Spが低減されるねじれ角γの範囲が広かった。
(3)−3[L=25mm]
Heat15〜20、距離Lが25mmのときのねじれ角γとスピッティング発生量Spについて説明する。
Heat15〜20、距離Lが25mmのときのねじれ角γとスピッティング発生量Spについて説明する。
距離Lが25mmの場合、ねじれ角γが15°のときのスピッティング発生量Spは0.76であり、ねじれ角γが0°とのときよりも小さかったが減少量はそれほど大きくなかった。しかし、ねじれ角γが20°,60°,90°のときにはスピッティング発生量Spが0.26〜0.39となり、ねじれ角γが0°であるときと比べて大きく減少した。しかし、ねじれ角γを95°と更に増加させるとスピッティング発生量Spは2.3となり、ねじれ角γが0°であるときに比べてスピッティング発生量Spが倍増した。
すなわち、距離L=10,15mmのときと同様に、ねじれ角γが15°と小さい場合は、ねじれ角付与による上吹きジェットの動圧の平滑化が不十分だったため、スピッティング発生量Spの変化が小さかったと考えられる。一方、ねじれ角γが95°と大きい場合はジェット同士の距離が小さ過ぎてジェットが過剰に干渉してスピッティング発生量Spが増加したと考えられる。距離L=15mmのときに比べて、スピッティング発生量Spが減少する最小のねじれ角γが小さかったため、スピッティング発生量Spが低減されるねじれ角γの範囲は狭かった。
表1における○,×による評価を見ると、いずれの距離Lの場合でも、ねじれ角γがある範囲にあるときに○であり、その範囲を外れたときに×であることが分かる。そして、そのねじれ角γの適正範囲は距離Lによって相違する。この適正範囲は、距離Lが10,15,25mmのときにそれぞれ10°〜60°,15°〜90°,20°〜90°だった。
このような傾向は、ノズル出口中心とランス中心軸間の距離Lが変化したことにより、ねじれランスにおける各ノズルから噴出されるジェット同士の干渉状況が変化したために顕現したと考えられる。
そこで、本発明者らは、ノズル条件(孔数n、ノズル傾斜角θ、ねじれ角γ、ノズル出口中心とランス中心軸間の距離L、ノズルスロート径R)から求められるねじれランスにおけるジェットの干渉度合いの指標Tを(1)式のように定義し、指標Tを用いて調査結果を整理した。
その結果、スピッティング発生量Spが大きく減少したときの指標Tは、ねじれ角γが90°超であるときを除いて、全て4.5<T<48の範囲にあることが分かった。
Heat21,22は、他の条件とノズル総断面積が等しくなるようにして孔数nをそれぞれ8,4としたランスであり、そのときの指標Tはそれぞれ44.1,42.2であり、スピッティング発生量Spはそれぞれ0.39,0.38であった。このことから、孔数nとノズルスロート径Rを変化させた場合のねじれランスのスピッティング低減効果も指標Tを用いて説明できることが確認された。
Heat7,20では、指標Tが4.5<T≦48を満足するにも関わらず、スピッティング発生量Spは減少するどころか増加した。このときのねじれ角γはいずれも95°であった。ねじれランスにおいて、ねじれ角γが90°超のとき、ジェットはランス中心軸方向に向かって噴出されるため、ねじれ角γが90°以下のときに比べて遥かにジェットの干渉・合体が促進されると推定できる。よって、ねじれ角γが95°であるときは指標Tの値から推定するよりも遥かにジェットの干渉・合体が顕著になっていたため、スピッティング発生量Spが増加したと考えられる。よって、ねじれ角γは90°以下にする必要がある。すなわち、ねじれランスでは、スピッティング低減効果を発揮するためには以下に示す(1)式で示す指標Tが(2)式および(3)式を満足する必要がある。
次に、本発明に係る溶銑吹錬用上吹きランスを、内径7mの転炉で、300トン/チャージ、送酸速度60000Nm3/時の吹錬を行う場合を例として、ランス先端−湯面間距離Hを決める方法を説明する。
ランス先端−湯面間距離Hを小さくし過ぎると、溶鋼飛散によるランスの溶損や熱変形が生じ易くなり、ランス寿命を短くすることになる。一方、ランス先端−湯面間距離Hが大き過ぎるとジェットの拡がりが大きくなり、ノズル傾斜角度を大きくし過ぎたときと同様に、COガスの二次燃焼や耐火物損耗の問題が生じる。以上の理由により、実際の転炉においては、ランス−湯面間距離Hは2200mm以上3800mm以下とすることが望ましい。
本発明に係る溶銑吹錬用上吹きランス1では、中心孔3を除くノズル2の設置数は3以上とする。ノズル2の設置数が2以下であると、転炉内での反応の対称性が失われるからである。ノズル2の設置数の上限は特に定めないが、ノズル2の設置数が過剰であるとランス1の先端の構造が複雑になることや、ノズル2の1本当たりのジェットの運動量が過小になり、充分な攪拌力を得られない等の理由から、10以下とすることが望ましい。
このようにして、本発明に係る溶銑吹錬用上吹きランスを、溶融金属浴面に精錬用ガスを吹き付ける精錬プロセスにおいて使用することによって、ランス寿命に悪影響を与えることなく、円周方向の動圧変動を小さくすることができるのみならず、距離Lを上述のように適正化することにより、各ノズルから噴出されるジェット間の距離が適正化され、これによりスピッティング量をさらに低減することが可能になる。
本発明に係る溶銑吹錬用上吹きランスを、300トン規模の上底吹き転炉吹錬に適用した。その際、主原料には、質量濃度で、C:4.4〜4.5%、Si:0.2〜0.5%、Mn:0.2〜0.4%、P:0.100〜0.120%を含有する溶銑を約260トン、スクラップを約20トン用い、上吹き酸素流量を溶銑1トン当たり4.0Nm3/minとし、底吹きCO2流量を0.15Nm3/minとして、ランス先端と鋼浴面間の距離は約3.5mで一定とした。そして、質量濃度で、C:0.05〜0.08%、Si≦0.01%、Mn:0.1〜0.2%、P:0.015〜0.025%の溶鋼を製造し、スピッティングロス量(Spロス)の調査を実施した。スピッティングロスとはスピッティングによる鉄歩留まりロスを示す。
表2に本発明の実施例および比較例のランスを用いた操業時のスピッティングロスを比較して示す。これらの値は、各ランスを10〜20チャージ使用したときの平均値であり、比較例1を基準として、これに対する増減を重量%で示した。評価は、スピッティングロスが−0.6%以下となったときを○とし、−0.6%より大きかった場合を×とした。
表2に示すように、各ノズル軸がランス中心軸上の一点で交わる通常の多孔ランス(比較例1)と、各ノズルの方向が互いにねじれの位置関係になるランス(比較例2〜7および実施例1〜7)とを用い、後者のランスにおけるノズルのねじれ角γは5°,10°,30°,60°,75°,90°,95°とした。
実施例6,7および比較例5,6のランスは、比較例1の6孔ランスとノズル総断面積を同じにして、孔数をそれぞれ8孔,4孔ランスとしたランスである。また、全てのランスにおいて、ランス中央部への粒鉄付着を防止する目的で、20mmφのノズルをランス中央部に配置した。
まず、比較例1,2のランスを比較して説明する。比較例1,2は、ノズル傾斜角度θを15°,ノズル数を6孔,ノズル出口中心とランス中心軸との距離Lを90mmとするとともに、ねじれ角γをそれぞれ0°,5°としたランスである。比較例2は、比較例1と比べてねじれ角γが5°と大きいが、スピッティングロス量は比較例1と同程度であった。これらの指標Tが0,2.9と小さいため、ねじれによる動圧の平滑化が殆ど発揮されなかったためと考えられる。
一方、実施例1〜5は、傾斜角θ、距離L、ノズルスロート径Rを比較例1と同一とし、ねじれ角γを10°,30°,60°,90°としたランスであり、このときのスピッティングロス量は比較例1と比べて0.6〜0.67%減少した。これらのランスでは、指標Tの値を適切な範囲することによってジェットの動圧が平滑化されたことによるスピッティング低減効果が顕著に発揮され、スピッティングロス量が減少したと考えられる。
比較例3,4は、それぞれねじれ角γを大きく、距離Lを小さくすることで指標Tをそれぞれ53,49.7として、指標Tを48より大きくしたランスである。それらのスピッティングロス量は比較例1と比べてそれぞれ1.2,0.8%増加した。これは、指標Tが大きくなり過ぎたことで、ジェットの干渉・合体による効果でスピッティングが増加したためと考えられる。
実施例6,7は、傾斜角θ、ねじれ角γ、距離Lおよびノズル総断面積を実施例3と同一とし、孔数をそれぞれ4,8と変更したランスである。これらのスピッティングロス量は比較例1と比べてそれぞれ0.66,0.64%減少した。このときの指標Tはそれぞれ40、36だった。
一方、比較例5,6は、傾斜角θを15°とし、ねじれ角γをそれぞれ90°,5°とし、ノズル総断面積が比較例1と同一となるように孔数をそれぞれ8,4としたランスである。これらのスピッティングロス量は、比較例1と比べてそれぞれ0.8,0.05%増加した。このときの指標Tは、それぞれ、54,2.3であった。これらのことから、ノズル数に関わらず、指標Tを4.5<T<48とすることによって、ねじれランスのスピッティング低減効果が発揮されることが確認された。
比較例7は、孔数n、傾斜角θ、ノズルスロート径Rを比較例と同一とし、ねじれ角γと距離Lをそれぞれ95°,120mmとしたランスである。このときの指標Tは44.2であり、48より小さいもののスピッティングロス量は比較例1に対して1.37%増加した。ねじれ角γが90°を超えると、ジェットがランス中心方向に噴出されるため、ねじれ角γが90°以下の条件に比べてねじれ角γの増加によるジェットの干渉合体に及ぼす影響が大きくなると推定できる。よって、ねじれ角γが95°のときは指標Tの値から推定するよりも遥かにジェットの干渉・合体が顕著となっていたため、スピッティングロスが増大したと考えられる。
比較例8は、傾斜角θ,ねじれ角γ、距離Lおよびノズルスロート径Rがそれぞれ35°,60°,90mm,53mmの6孔ランスであり、このときの指標Tは35.3であり、スピッティングロス量も比較例1に比べて0.6%減少した。しかし、このランスを用いた場合は、炉壁耐火物の損耗が著しかった。これは、比較例8のランスの傾斜角θが大き過ぎたため、上吹きジェットの二次燃焼率が高まり、炉壁耐火物を損耗させたものと考えられる。よって、実操業に適用する場合は、傾斜角θは30°以下とすることが望ましい。
以上の検討から、指標Tが4.5以下であるとねじれランスのスピッティング低減効果は発揮されず、指標Tが48以上であるとジェットの干渉合体により、かえってスピッティングが増加することが確認された。ただし、ねじれ角γが90°超のときは指標Tの値に関わらずスピッティングは増加し、傾斜角θが30°超のときは耐火物の損耗が著しくなる。つまり、スピッティングロス低減のためにはねじれランスにおける孔数n、ねじれ角γ、ノズル出口中心とランス中心軸との距離L、ノズルスロート径Rから(1)式により算出される指標Tを4.5<T<48とし、かつねじれγ≦90°、傾斜角θ≦30°とすることが有効である。
1 ランス
2 ノズル
2 ノズル
Claims (2)
- 同一円周上に等間隔で配置された3孔以上のノズルを有し、かつ各ノズル入口あるいは各ノズル出口同士がそれぞれの設置面において重ならない溶銑吹錬用上吹きランスにおいて、
ランス中心軸が水平面に対して垂直となるようにランスを設置したときに、ランス先端面とノズル軸との交点であるノズル出口中心を通り水平面に対して垂直な直線をz軸とし、前記ノズル出口中心からランス中心軸へ垂直に下ろした直線がx軸となるように定めたxyz直交座標系において、上吹きノズル数をnとし、該ノズル軸のxy平面への投影とx軸とがなす角度であるねじれ角をγ(deg)とし、該ノズル軸とz軸とがなす角度である傾斜角をθ(deg)とし、前記出口中心とランス中心軸との距離をL(mm)とし、前記ノズル入口の直径であるノズルスロート径をR(mm)としたとき、
前記角度γ、前記ノズルスロート径R、前記距離Lおよび前記上吹きノズル数nから算出される、下記(1)式で示す指標Tが下記(2)式を満たし、かつ
前記角度γが下記(3)式を満足するとともに前記角度θが下記(4)式を満足すること
を特徴とする溶銑吹錬用上吹きランス。
- 酸素上吹きランスと底吹き羽口とを有する上底吹き転炉を用いる溶銑および脱りん銑を用いる脱炭方法において、請求項1に記載された溶銑吹錬用上吹きランスを用いることを特徴とする溶銑および脱りん銑の脱炭方法。
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