以下、本発明に係る実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本実施形態に係る眼底カメラの光学系及び制御系の概略構成図である。光学系は、照明光学系10、被検者眼の眼底像を撮影する眼底観察・撮影光学系30、フォーカス指標投影光学系40、アライメント指標投影光学系50、前眼部観察光学系60、固視標呈示光学系70から大別構成されている。
<照明光学系> 照明光学系10は、観察照明光学系と撮影照明光学系を有する。撮影照明光学系は、フラッシュランプ等の撮影光源14、コンデンサレンズ15、円形遮光部を持つ第1遮光板17a(例えば、リングスリット)、円形遮光部を中心に有すると共にリング状の開口を有するリングスリット17b、円形遮光部を持つ第2遮光板17c(例えば、リングスリット)、リレーレンズ18、ミラー19、中心部に黒点を有する黒点板20、リレーレンズ21、孔あきミラー22、対物レンズ25を有する。
また、観察照明光学系は、ハロゲンランプ等の光源11、波長750nm以上の近赤外光を透過する赤外フィルタ12、コンデンサレンズ13、コンデンサレンズ13とリングスリット17bとの間に配置されたダイクロイックミラー16、第1遮光板17aから対物レンズ25までの光学系を有する。ダイクロイックミラー16は、赤外光源11からの光を反射し撮影光源14からの光を透過する特性を持つ。
上記光学系において、被検者眼と装置本体3の作動距離方向における位置関係が所定のアライメント基準位置(基準中心)に置かれたときに、被検者眼の瞳孔(虹彩)とリングスリット17bとが共役な位置となるように配置されている。また、リングスリット17bが瞳孔共役とされた状態で、第1遮光板17aは被検者眼の角膜、第2遮光板17cは被検者眼の水晶体後面、と共役になるように光学設計がされている。なお、照明光学系10に配置された第1遮光板17a、リングスリット17b、第2遮光板17cは、被検者眼前眼部の所定部位とそれぞれ共役になるように配置された遮光部材17を形成し、眼底撮影のための眼底照明光による角膜反射及び水晶体反射が眼底からの撮影光束に含まれて撮影用撮像素子35(後述する)に受光されるのを防止する有害反射光除去手段として機能する。
<眼底観察・眼底撮影光学系> 眼底観察・撮影光学系30は、対物レンズ25、孔あきミラー22の開口近傍に位置する撮影絞り31、光軸方向に移動可能なフォーカシングレンズ32、結像レンズ33、眼底撮影時には挿脱機構39により光路から挿脱可能な跳ね上げミラー34を備え、撮影光学系と眼底観察光学系は対物レンズ25と撮影絞り31から結像レンズ33までの光学系を共用する。撮影絞り31は対物レンズ25に関して被検者眼Eの瞳孔と略共役な位置に配置されている。フォーカシングレンズ32は、モータを備える移動機構49により光軸方向に移動される。35は可視域に感度を有する撮影用二次元撮像素子である。跳ね上げミラー34の反射方向の光路には、P偏光を反射してS偏光を透過する偏光ビームスプリッタ37、リレーレンズ36、赤外域に感度を有する観察用二次元撮像素子38が配置されている。なお、レンズ32と撮影絞り31との間には、駆動部32cの駆動によって撮影光学系30の撮影光路に対して挿脱可能な視度補正レンズ32a、32b(マイナスレンズ32a,プラスレンズ32b)が設けられている。そして、レンズ32a、32bは、被検者眼が強度の屈折異常眼の場合に、手動又は自動的に光路中に各々挿入される。レンズ32a、32bが光路に挿入されると、これに対応する視度補正量が撮影光学系30に付与される。
また、対物レンズ25と孔あきミラー22の間には、光路分岐部材としての挿脱可能なダイクロイックミラー(波長選択性ミラー)24が斜設されている。ダイクロイックミラー24は、アライメント指標投影光学系50及び前眼部照明光源58の波長光(中心波長940nm)を反射し、眼底観察用照明の波長光の光源波長(中心波長880nm)を含む波長900nm以下を透過する特性を有する。撮影時には、ダイクロイックミラー24は挿脱機構66により連動して跳ね上げられ、光路外に退避する。挿脱機構66は、ソレノイドとカム等により構成することができる。
観察用の光源11を発した光束は、赤外フィルタ12により赤外光束とされ、コンデンサレンズ13、ダイクロイックミラー16により反射されて第1遮光板17aを照明する。そして、第1遮光板17aを透過した光は、リングスリット17b、第2遮光板17c、リレーレンズ18、ミラー19、黒点板20、リレーレンズ21を経て孔あきミラー22に達する。孔あきミラー22で反射された光は、ダイクロイックミラー24を透過し、対物レンズ25により被検者眼Eの瞳孔付近で一旦収束した後、拡散して被検者眼眼底部を照明する。
また、眼底からの反射光は、対物レンズ25、ダイクロイックミラー24、孔あきミラー22の開口部、撮影絞り31、フォーカシングレンズ32、結像レンズ33、跳ね上げミラー34、偏光ビームスプリッタ37、リレーレンズ36を介して撮像素子38に結像する。なお、撮像素子38の出力は制御部80に入力され、モニタ8には、撮像素子38によって撮像される被検者眼の眼底観察像が表示される。
また、撮影光源14から発した光束は、コンデンサレンズ15を介して、ダイクロイックミラー16を透過した後、眼底観察用の照明光と同様の光路を経て、眼底は可視光により照明される。そして、眼底からの反射光は対物レンズ25、孔あきミラー22の開口部、撮影絞り31、フォーカシングレンズ32、結像レンズ33を経て、二次元撮像素子35に結像する。
<フォーカス指標投影光学系> フォーカス指標投影光学系(以下、投影光学系と省略する)40は、赤外光源41、スリット指標板42、この指標板42に取り付けられた2つの偏角プリズム43、偏光ビームスプリッタ44、を備える。また、投影光学系40は、ビームスプリッタ44〜レンズ25までの光路を照明光学系10と共用する。偏光ビームスプリッタ44は、照明光学系10の光路に配置され、照明光学系10の光路と投影光学系40の光路とを結合させる光結合部材として用いられる。
投影光学系40において、光の偏角方向が上下一対の関係となるように形成された2つの偏角プリズム43が投影光軸L3を挟んで左右に並べて配置されており、指標板42に形成され左右に延びるスリットと重ねられている。
また、投影光学系40は、指標光束を所定の偏光方向とするための第1の偏光部材を持ち、観察光学系30は、第1偏光部材で得られる所定の偏光方向を持つ指標光束を撮像素子38に対して制限する偏光部材を持つ。
より具体的には、指標投影光学系40及び観察光学系30には、それぞれ偏光方向が直交関係にある直線偏光板、又は、偏光方向が直交関係にある光の一方を透過もしくは反射により被検者眼に向かわせ他方を反射もしくは透過して撮像素子38に受光させる偏光ビームスプリッタ、が配置される。これにより、指標投影光束による対物レンズ25での反射光が撮像素子38に向かうのが制限される。
例えば、偏光ビームスプリッタ44は、照明光学系10の照明光源(光源11、光源14)と孔あきミラー22との間に配置される(挿脱可能な構成を含む)。例えば、P偏光を透過してS偏光を反射する偏光ビームスプリッタが用いられる。また、投影光学系40の投影光軸L3は、眼底上でのフォーカス指標が黒点板20の影と重なるのを回避するべく、照明光学系10の光軸L2に対して垂直な方向にずれた位置に配置されるようにしてもよい。
光源41から出射された投影光束は、指標板42のスリットを通過し、プリズム43によって各方向に偏角された後、ビームスプリッタ44にて反射される。ここで、光源41からの光束(自然光)は、ビームスプリッタ44によりS偏光が反射される。
そして、ビームスプリッタ44で反射された光束(S偏光)は、リレーレンズ21、孔あきミラー22、ダイクロイックミラー24、レンズ25を経て、眼底に投影される。そして、眼底に投影されたフォーカス用の光束は、眼底で乱反射されることによりP偏光とS偏光の反射光となる。この眼底反射光束は、レンズ25、孔あきミラー22の開口部〜跳ね上げミラーを介して、偏光ビームスプリッタ37に入射される。ここで、フォーカス指標による眼底反射光は、偏光ビームスプリッタ37によりP偏光が反射されS偏光が透過される。そして、偏光ビームスプリッタ37で反射された眼底反射光(P偏光)は、リレーレンズ36を介して撮像素子38に結像される。
この場合、投影光学系40は、投影光源を有し被検者眼眼底にフォーカス用の指標を投影する指標投影光学系として用いられる。また、観察用二次元撮像素子38を有する観察光学系30は、投影光学系40による眼底反射光を受光する受光素子を有する受光光学系として用いられる。そして、投影光学系40と観察光学系30とによって、フォーカス検出光学系が形成される。
図2は撮像素子38から出力される画像をモニタ8上に表示したものである。図示するように、スプリット指標(フォーカス指標)S1・S2が眼底上に投影されると、被検者眼の眼底に対する装置のフォーカス状態に応じて眼底上で所定方向に分離される。フォーカス指標像S1・S2は、撮像素子38によって眼底像と共に撮像される。
撮像素子38から撮像信号がモニタ8に出力されると、検者は、スプリット指標の分離状態からフォーカスのずれを把握できる。また、制御部80は、スプリット指標の分離状態に基づいて眼底のフォーカス状態を電気的に検出し、その検出結果に基づいてレンズ32を自動的に移動させる(オートフォーカス制御)。
なお、フォーカス用の投影光束が対物レンズ25の各レンズ面、角膜、及び水晶体を通過する際に発生する反射光は、ほぼ鏡面反射であり、S偏光のまま偏光ビームスプリッタ37に到達し透過される。このため、フォーカス指標の投影によるフレア及びゴーストが撮像素子38に混入するのを回避できる。
光源41を含む投影光学系40の一部(光源41、スリット指標板42、偏角プリズム43)は、レンズ32と連動して、光軸方向に移動される。例えば、レンズ32が正視眼に対応する位置に置かれると、正視眼の眼底と投影板42の開口とが略共役になるように投影光学系40の一部(光源41、スリット指標板42、プリズム43)が移動される。また、所定の球面度数(例えば、−3D)を持つ被検者眼に対してピントが合う位置にレンズ32が置かれると、その被検者眼の眼底と投影板42の開口とが略共役になるように投影光学系40の一部が移動される。
移動機構46は、モータを持ち、光源41を含む投影光学系40の一部をビームスプリッタ44に対して光軸方向に移動させる。投影光学系40の移動範囲は、レンズ32の移動のみによる視度補正量に対応する移動範囲に加えて、レンズ32a、32bの挿入による視度補正量に対応する移動範囲が確保されている。すなわち、移動機構46は、視度補正レンズが挿入された状態でのフォーカシングレンズ32の移動による視度補正範囲を含む移動可能範囲を持つ。
この場合、投影光学系40の移動範囲は、撮影光路に対するレンズ32a、32bの挿脱状態に応じて移動範囲が切換えられる。挿脱状態に応じて移動範囲が設定されると、投影光学系40は、その移動範囲において、レンズ32と連動して移動される(詳しくは、後述する)。
図1の説明に戻る。<アライメント指標投影光学系> アライメント用指標光束を投影するアライメント指標投影光学系50には、図1の左上の点線A内の図に示すように、撮影光軸L1を中心として同心円上に45度間隔で赤外光源が複数個配置されており、撮影光軸L1を通る垂直平面を挟んで左右対称に配置された赤外光源51とコリメーティングレンズ52を持つ第1指標投影光学系(0度、及び180)と、第1指標投影光学系とは異なる位置に配置され6つの赤外光源53を持つ第2指標投影光学系と、を備える。この場合、第1指標投影光学系は被検者眼Eの角膜に無限遠の指標を左右方向から投影し、第2指標投影光学系は被検者眼Eの角膜に有限遠の指標を上下方向もしくは斜め方向から投影する構成となっている。なお、図1の本図には、便宜上、第1指標投影光学系(0度、及び180度)と、第2指標投影光学系の一部のみ(45度、135度)が図示されている。
<前眼部観察光学系> 被検者眼の前眼部を撮像する前眼部観察(撮影)光学系60は、ダイクロイックミラー24の反射側に、フィールドレンズ61、ミラー62、絞り63、リレーレンズ64、赤外域の感度を持つ二次元撮像素子(受光素子)65を備える。また、二次元撮像素子65はアライメント指標検出用の撮像手段を兼ね、中心波長940nmの赤外光を発する前眼部照明光源58により照明された前眼部とアライメント指標が撮像される。前眼部照明光源58により照明された前眼部は、対物レンズ25、ダイクロイックミラー24及びフィールドレンズ61からリレーレンズ64の光学系を介して二次元撮像素子65により受光される。また、アライメント指標投影光学系50が持つ光源から発せられたアライメント光束は被検者眼角膜に投影され、その角膜反射像は対物レンズ25〜リレーレンズ64を介して二次元撮像素子65に受光(投影)される。二次元撮像素子65の出力は制御部80に入力され、モニタ8には二次元撮像素子65によって撮像された前眼部像が表示される。なお、前眼部観察光学系60は、被検者眼に対する装置本体のアライメント状態を検出する役割を兼用する。
<固視標呈示光学系> 被検者眼を固視させるための固視標を呈示する固視標呈示光学系70は、赤色の光源74、開口穴が形成された遮光板71、リレーレンズ75を備え、偏光ビームスプリッタ37を介して跳ね上げミラー34から対物レンズ25までの観察光学系30の光路を共用する。
この場合、光源74により遮光板71が背後から照明されることにより固視標(固視灯)となる。そして、固視標からの光束は、リレーレンズ75、偏光ビームスプリッタ37、跳ね上げミラー34、結像レンズ33、フォーカシングレンズ32、孔あきミラー22、ダイクロイックミラー24、対物レンズ25を通過して被検者眼眼底に集光し、被検者は開口穴71からの光束を固視標として視認する。
<制御系> 二次元撮像素子65、38、35は制御部80に接続されている。制御部80は二次元撮像素子65に撮像された前眼部画像からアライメント指標を検出処理する。また、制御部80は、二次元撮像素子38に撮像された眼底画像からフォーカス指標を検出処理する。また、制御部80はモニタ8に接続され、その表示画像を制御する。制御部80には、他に、移動機構49、移動機構46、挿脱機構39、各種のスイッチを持つスイッチ部84、記憶手段としてのメモリ85、各光源等が接続されている。なお、スイッチ部84には、フォーカス調整を行うためのフォーカス調整スイッチ84a、撮影開始スイッチ84b、レンズ32a、32bを挿脱させるための切換スイッチ84c、等が配置されている。
上記のような構成を持つ装置の動作を説明する。まず、検者は、被検者の顔を図示無き顔支持ユニットにより支持する。ここで、検者は、図示無きジョイスティックの操作により前述の光学系が内蔵された装置本体を左右上下に移動させて、被検者眼に対するアライメントを行う。この場合、前眼部観察光学系60によって撮像される前眼部画像をモニタ8に出力することで、アライメントをスムーズに行える。
ラフなアライメントが完了されると、撮像素子38による眼底像がモニタ8に表示される。検者はこの眼底画像を見ながら、所望する状態で撮影できるように、さらに図示無きジョイスティックの手動操作にてアライメント状態を微調整する。
眼底像の観察によりアライメントの微調整を行った後は、図2に示されるように、中心にフォーカス視標投影光学系40によるフォーカス指標像S1、S2が投影されているので、この指標像に基づいてレンズ32を光軸方向に移動させ、眼底のフォーカス合わせを行う。
なお、初期状態においては、撮影光路に視度補正レンズが挿入されていないので、制御部80は、レンズ32の移動のみによる視度補正範囲に対応する移動範囲内において、レンズ32の移動に連動するように指標投影光学系40を光軸方向に移動させる(図3(a)参照)。
なお、フォーカス合わせは、フォーカス調整スイッチ84aを用いた検者のマニュアルフォーカス、又は制御部80によるオートフォーカス、によって行われる。なお、オートフォーカスの場合、制御部80は、フォーカス指標像S1,S2が一致するように移動機構49を駆動制御する。なお、フォーカス合わせが完了した後、自動もしくも手動にて出力されるトリガ信号にもとづいて撮影が実行される。
ここで、撮影開始のトリガ信号が発せられると、制御部80は、挿脱機構39を駆動させることにより跳ね上げミラー34を光路から離脱させ、挿脱機構66を駆動することによりダイクロイックミラー24を光路から離脱させると共に、撮影光源14を発光する。このとき、二次元撮像素子35によって眼底像が撮影され、メモリ85に撮影された画像データが記憶される。そして、制御部80は、モニタ8の表示画面を二次元撮像素子35で撮影されたカラーの眼底画像に切換える。
なお、上記構成において、被検者眼が強度近視眼又は強度遠視眼でフォーカスが合わせられない場合、検者は、切換スイッチ84cを押して、レンズ32a、32bを撮影光路に挿入してフォーカスを合わせる。この場合、レンズ32a、32bが自動的に挿入されるようにしてもよい。例えば、レンズ32が移動限界位置に達しても、フォーカスが一致しなかった場合、視度補正レンズが自動的に挿入される。
ここで、制御部80は、挿入された視度補正レンズとレンズ32の移動位置とによる視度補正量に対応する移動位置に、投影光学系40の一部を移動機構49を用いて移動させる。
より具体的には、視度補正レンズの挿脱状態に応じて,投影光源41を含む指標投影光学系40の一部の移動位置を補正する。なお、制御部80は、レンズ32a,レンズ32bの近傍に設置可能なセンサ(例えば、フォトセンサ)、切換スイッチ84cから出力される切換信号、駆動部からの駆動信号等から、撮影光路に対する視度補正レンズの個々の挿入状態を判別できる。
図3は、各レンズ32a,32bの退避時、レンズ32a挿入時、レンズ32b挿入時、に応じて設定される指標投影光学系40の移動範囲を示す具体例である。レンズ32a、32bの退避時においては、図3(a)に示すように、レンズ32a、32bが退避された状態でのレンズ32の移動による所定の視度補正範囲(−12D〜0D〜+12D)に対応する移動範囲が設定される。
図3(b)に示すように、レンズ32aの挿入時においては、レンズ32a(例えば、視度補正量が−18Dのレンズ)が挿入された状態でのレンズ32の移動による所定の視度補正範囲(例えば、−30D〜−18D〜−6D)に対応する移動範囲が設定される。
より具体的には、レンズ32aが挿入されたとき、制御部80は、レンズ32aが持つ視度補正量(例えば、−18D)に対応する投影光学系40の移動方向(−方向)及び移動距離を設定する。例えば、制御部80は、レンズ挿入前の投影光学系40の移動位置(例えば、−12D)に対して視度補正レンズ32aの視度補正量(−18D)を加えた移動位置(−30D)に、投影光学系40を移動させる。
この場合、制御部80は、移動機構49の駆動を制御し、レンズ32a挿入前の視度補正量に対応する移動位置にレンズ32を移動させるようにしてもよい。これにより、レンズ挿入状態に移行後、レンズ32a挿入前の視度補正量からのフォーカス調整が可能となる。
図3(c)に示すように、レンズ32bの挿入時においては、レンズ32b(例えば、視度補正量が+18Dのレンズ)が挿入された状態でのレンズ32の移動による所定の視度補正範囲(例えば、+6D〜+18D〜+30D)に対応する移動範囲が設定される。なお、具体的な動作については、レンズ32aと同様の手法を用いることができるため、詳しい説明を省略する。
上記のように投影光学系40の移動が完了されると、強度屈折異常眼に対するフォーカス合わせができるようになる。そこで、制御部80は、フォーカス指標像S1,S2の分離情報を基に、両者が一致するように移動機構49を駆動制御して眼底のフォーカス合わせを行う。また、指標像S1,S2が一致されるように、検者によるマニュアルフォーカスも可能である。
この場合、制御部80は、挿入された視度補正レンズとレンズ32の移動とによる視度補正範囲に対応する移動範囲内において、レンズ32の移動と連動するように指標投影光学系40を光軸方向に移動させる。例えば、レンズ32aが挿入された場合、制御部80は、レンズ32aに対応する移動範囲内において、投影光学系40を移動させる。そして、レンズ32が移動されたら、制御部80は、レンズ32の移動による視度補正分、投影光学系40を移動させる。
上記のような構成とすれば、被検者眼が強度の屈折異常眼であって、視度補正用レンズが撮影光学系30の撮影光路に挿入された状態であっても、眼底上のフォーカス指標がフォーカス検出可能な状態で撮像素子38上に受光される。このため、適正なオートフォーカス制御が可能となる。また、検者は、視度補正レンズが挿入されていない状態と同様の動作にて、マニュアルフォーカスを行うことができる。
なお、上記構成において、視度補正レンズの挿入に対応する補正レンズを投影光学系40の光路中に挿脱可能な構成としてもよい。例えば、レンズ32aが挿入された場合、ビームスプリッタ44とプリズム43との間に、レンズ32aが持つ視度補正量に対応するマイナスレンズが挿入される。このようにすれば、投影光学系40の移動量が少なくて済む。この場合、レンズ32aが挿入された状態での投影光学系40の移動可能範囲と、レンズ32aが外された状態での投影光学系40の移動可能範囲と、を略同一とすることも可能である。
次に、第2の実施形態に係る構成について説明する。なお、図4において、図1と同様の番号を付したものついては、特段の説明がない限り、同様の構成・機能を有するものとする。図4においては、被検者眼眼底とのフォーカス状態を検出する構成として、被検者眼の瞳孔中心部を介して被検者眼眼底にスポット状の光束を投影する指標投影光学系140と、被検者眼眼底からの反射光を被検者眼前眼部から所定のパターン像(例えば、リングパターン像、または、複数のスポット像)として取り出して二次元受光素子に受光させる受光光学系160と、が設けられている。
図4(a)において、投影光学系140は、投影光軸L3上に配置されたLEDやSLD等の赤外点光源141、投影レンズ142、フォーカス光束と眼底観察光束を分岐する光路分割部材としてのビームスプリッタ144を含み、さらに、ビームスプリッタ144〜レンズ32〜対物レンズ25までの光路を眼底観察光学系30と共用する。なお、ダイクロイックミラー137は、可視光を反射し赤外光を透過する特性を有する。
一方、受光光学系160は、対物レンズ25〜ビームスプリッタ169までの光路を照明光学系10と共用し、さらに、ビームスプリッタ169の反射方向に、略眼底共役位置に配置されるピンホール開口161、コリメータレンズ163、リングレンズ165、及び略眼底共役位置に配置される二次元受光素子167を含む。なお、受光素子167を含む受光光学系160の一部(例えば、ピンホール開口161〜二次元受光素子167)は、移動機構46の駆動によって、レンズ32の移動に連動して光軸方向に移動可能な構成となっている。例えば、レンズ32が正視眼に対応する位置に置かれると、正視眼の眼底と開口161とが略共役になるように受光光学系160の一部が移動される。また、所定の球面度数(例えば、−3D)を持つ被検者眼に対してピントが合う位置にレンズ32が置かれると、その被検者眼の眼底と開口161とが略共役になるように投影光学系40の一部が移動される。レンズ32の移動に連動して移動される受光光学系160の一部は、図1に示した第1実施形態における投影光学系40の一部と同様に、レンズ32a、32bの挿入に応じて移動位置が補正される。受光光学系160の移動と共に、光源140を含む投影光学系140の一部が移動されるような構成であってもよい。
ここで、リングレンズ165は、レンズ部と、リング開口を持つリング指標板と、から構成され、瞳孔と略共役な位置に配置される。また、二次元受光素子167は、レンズ部の焦点位置に配置され、眼底と撮像素子38(撮像素子35)とのフォーカスがあっているときに眼底と共役となる。ここで、リング指標板は、レンズ32と二次元受光素子167との間の被検者眼前眼部と略共役な位置(例えば、被検者眼瞳孔と略共役な位置、又は被検者眼角膜と略共役な位置)に配置される。
また、光源141から出射された光は、レンズ142〜跳ね上げミラー34〜対物レンズ25を経て、被検者眼眼底上に投影され、眼底上にスポット状の点光源像が投影される。また、眼底に投影された点光源像は反射・散乱されて被検者眼を射出し、対物レンズ25〜ホールミラーの反射面を経て、ビームスプリッタ169、ピンホール開口161、コリメータレンズ163を介して、リングレンズ165によって収束された後、二次元受光素子167上にリング像として結像される。
ここで、二次元受光素子167からの受光信号は、制御部80に入力される。ここで、被検者眼眼底のフォーカスがあっているときには、二次元受光素子167上にはリングレンズ165と同じサイズのぼけの少ない細いリング像が結像される。一方、被検者眼眼底のフォーカスが合っていないとき、二次元受光素子167上には、ぼけた太いリング像であって、フォーカスがあっている状態のリング像の大きさと異なるリング像が受光される。この場合、被検者眼の球面屈折誤差がある場合、リング像は、被検者眼の球面屈折誤差の大きさに比例した大きさとなる。また、乱視屈折誤差がある場合は、二次元受光素子167にできるリング像は、乱視屈折誤差に応じて楕円形状となる。
したがって、制御部80は、二次元受光素子167上にできるリング像を解析することにより、被検者眼のフォーカス状態を検出できる。そして、制御部80は、検出されるフォーカス状態に基づいて移動機構46及び移動機構49を駆動制御して眼底のフォーカス合わせを行う。この場合、制御部80は、移動機構49を用いてレンズ32を光軸方向に移動させると共に、移動機構46を用いて受光光学系160の一部を移動させる。例えば、二次元受光素子167上のリング像が最も細くなる或いは最も明るくなるようにして、二次元受光素子167を被検者眼の眼底と共役な位置にあわせる。これにより、眼底撮影用の撮像素子35(又は眼底観察用の撮像素子38)と被検者眼眼底とのフォーカス調整がなされる。
また、上記第2実施形態において、ビームスプリッタ144、ビームスプリッタ169に代えて第1実施形態にて示したような、偏光方向が互いに直交する光のうち、一方の光を反射して他方の光を透過する特性を有する偏光ビームスプリッタを用いるようにしてもよい。
また、上記構成において、乱視検出やリング像の取得をしない場合、図4(b)に示すように、パターン指標板として受光光軸から等距離離れた位置に2つの開孔が形成された2穴絞り170と、集光部材として2穴絞り170を通過した光を二次元受光素子167上で集光させる結像レンズ171と、を用いるようにしてもよい。なお、図4(b)の場合、フォーカスが合っているときに、2つのスポット像が重なって二次元受光素子167上における受光光軸上で1つのスポット像となり、フォーカスがずれているときに、二次元受光素子167上で2つのスポット像となる。
なお、フォーカス検出光学系として、リング指標像を二次元受光素子に受光させる構成(図4(a)参照)を設けることにより、画像のぼけが何に起因するものかを判断可能となる。被検者眼が乱視眼の場合における二次元受光素子167上のリング像は、長径と短径を持つ楕円形状となる。そして、リング像の長径及び短径は、被検者眼の乱視度数に応じて変化する。
ここで、制御部80は、二次元受光素子167によって取得されるリング画像に基づいてフォーカス状態を検出する。そして、制御部80は、検出されたフォーカス状態に基づいて被検者眼の等価球面度数に対応する位置にレンズ32が配置されるように移動機構49を駆動制御する。また、制御部80は、レンズ32の移動に連動して受光光学系160の一部を移動させる(以下、同様)。なお、本実施形態においては、被検者眼の等価球面度数に対応する位置がフォーカス終了位置として設定される。
この場合、制御部80は、リング像の各経線方向の像位置を検出し、検出された像位置情報に基づいて球面度数(S)、乱視度数(C)、乱視軸角度(A)を算出する。そして、制御部80は、球面度数及び乱視度数に基づいて等価球面度数(SE=S+1/2C、以下SE値と省略する)を算出し、算出されたSE値に対応する移動機構49の駆動信号(例えば、基準位置からの移動量)をメモリ85から取得する。そして、取得された駆動信号に基づいて移動機構49を駆動制御して、レンズ32を被検者眼のSE値に対応する位置に移動させる。
例えば、被検者眼がS=−3.0D、C=−2.0の場合、SE=−4.0Dとなるから、制御部80は、0Dに対応する位置(基準位置)に配置されたレンズ32を−4.0Dに対応する位置に移動させる。なお、SE値に対応する移動機構49の駆動信号(例えば、パルスモータに供給するパルス数)は、予め演算等により算出され、メモリ85に記憶される。
上記構成において、制御部80は、被検者眼が所定値を上回る強度の屈折異常眼の場合、駆動機構32cを駆動させて、これに対応する視度補正レンズを撮影光学系30の撮影光路中に挿入する。
なお、屈折異常眼に対して眼底撮影を行う場合、レンズ32が初期位置にあるときのリング像はぼけが大きく、精密な像位置検出が困難であることから、SE値の算出結果に測定誤差が生じる可能性がある。そこで、制御部80は、SE値に対応する位置にレンズ32を移動させる場合、リング画像から被検者眼のSE値を算出しなくとも、リング像の像位置データに基づいて移動機構49を駆動制御するようにしてもよい。
ここで、制御部80は、リング像の長径方向と短径方向の中間位置に相当する経線方向を特定し、特定された経線方向でのリング直径が基準画像(例えば、正視眼のときのリング画像)のリング直径と一致するように移動機構49を駆動制御する。なお、例えば、リング像の長径方向が0度、リング像の短径方向が90度であれば、45度が中間位置に相当する。上記のようにして、レンズ32がSE値に対応する位置に配置されると、制御部80は、移動機構49の駆動を停止させる。
ここで、制御部80は、レンズ32がフォーカス終了位置に配置されたときに二次元受光素子167によって取得されたリング指標像を被検者眼観察画像に合成して表示モニタ8上に表示する。より具体的には、制御部80は、レンズ32が被検者眼の等価球面度数に対応する位置に移動されたときに二次元受光素子167によって取得されたリング像をメモリ85に記憶させると共に、メモリ85に記憶されたリング像Rをモニタ8上における所定の表示領域に眼底観察画像と合成して表示する(図2(b)参照)。これにより、レンズ32がフォーカス終了位置に配置された状態で取得されたリング像が眼底観察像と共にモニタ8に表示される。
なお、SE値に対応する位置にレンズ32が配置されると、各経線方向における屈折異常がバランス良く矯正された状態となる。よって、被検者眼が乱視眼であっても鮮明な眼底画像を取得できる。ただし、被検者眼の乱視度数が大きい場合、SE値に対応する位置にレンズ32が配置されても、各主経線方向の眼底フォーカス位置とSE値とのフォーカス位置とのずれ量が大きいので、鮮明な眼底画像が取得できず、ぼけてしまう可能性がある。
そこで、前述のようにフォーカス調整が終了した状態で取得したリング像をモニタ8上に出力することにより、検者は、フォーカス調整の信頼性を確認できるため、被験者に対して適切な処置を施すことができる。
例えば、モニタ8に表示されるリング像の長径と短径の差が大きい場合、又はリング像の長径/短径方向におけるぼけが目立つような場合、検者は、被検者眼の乱視量が大きいことを確認できる。そこで、検者は、モニタ8に表示される眼底観察画像を見ながら必要な部分(例えば、被検者眼の黄斑部)で鮮明な眼底画像が表示されるようにフォーカス調整スイッチ84aを操作するようなことが考えられる。また、上記のようなリング像の場合、被検者眼の負担を軽減するべく、絶対値の等しい2枚の円柱レンズを用いて被検者眼の乱視補正を行う乱視補正機能付の眼底カメラでの撮影を薦めるようなことも考えられる。
なお、取得されたリング像の像位置情報を検出し、検出された像位置情報に応じた電子的なグラフィックを表示させるようにしてもよい。この場合、例えば、二次元受光素子167によって取得されるリング指標像を模した電子的なグラフィック表示が表示される。また、他の手法としては、二次元受光素子167によって取得されたリング像の像位置情報を検出することにより被検者眼の乱視度数の大きさを計測し、被検者眼の乱視度数の大きさに応じてインジケータを増減させるようなことが考えられる。
より具体的には、制御部80は、二次元受光素子167上に受光されたリング像の各経線方向の像位置情報を取得し、取得された像位置情報に基づいてリング像を模したグラフィック表示のリング形状・色・明るさ・太さ・等を変化させるようにモニタ8を表示制御する。
例えば、取得されたリング画像を所定の光量レベルにて二値化処理をし、所定の光量レベルを超えた画素領域に対応する部分を白色とし、所定の光量レベルを下回る画素領域に対応する部分を黒色で示すような手法が考えられる。また、制御部80は、リング画像の像位置情報に対して楕円近似処理を施し、楕円近似された後の像位置情報に基づいてリング像を模したグラフィック表示の形状を変化させるようなことが考えられる。
なお、フォーカス終了状態にて取得されたリング像情報をモニタ8に表示する場合、フォーカス終了位置(例えば、被検者眼のSE値に対応する位置)からレンズ32が移動されて二次元受光素子167によって取得されるリング指標像が変化しても、フォーカス終了位置にレンズ32が配置されたときに二次元受光素子167によって取得されたリング指標像もしくはリング指標像に基づく電子的なグラフィック表示を表示モニタ8に固定表示するのが好ましい。
より具体的には、制御部80は、前述のようなオートフォーカス制御によりレンズ32の位置が自動的に調整された状態でリング像を取得し、モニタ8上に表示した後は、検者のマニュアル操作によってレンズ32が移動され、二次元受光素子167に受光されるリング像が変化しても、これに応じてリング像の形状を変化させない。このような固定表示制御を行うことにより、被検者眼の乱視がバランス良く矯正された適正なフォーカス位置(被検者眼のSE値に対応する位置)に配置された状態で取得されたリング像(リング像グラフィック)を表示した状態が維持される。これにより、所定のフォーカス終了位置からレンズ32が移動された場合であっても、適正なフォーカス位置に配置された状態でのフォーカス調整の信頼性を検者が把握できる。なお、レンズ32がフォーカス終了位置から移動された状態で取得されたリング像をモニタ8に表示すると、リング像が大きくぼけてしまい、適正なフォーカス位置に置かれた状態(SE値に対応する位置)での被検者眼の屈折異常の状態の確認が困難となる。
ここで、モニタ8に表示されたリング像を用いてフォーカス終了状態における被検者眼の状態を確認をした後、検者は、撮影スイッチ84bを押して被検者眼の眼底撮影を行う。撮影終了後、モニタ8の表示は撮像素子35で撮影されたカラーの眼底画像に切換えられる。撮像素子35で撮影された眼底像は、メモリ85に記憶される。
また、以上のようにして被検者眼の眼底像が撮像された後、制御部80は、取得されたカラー眼底画像に対応付けてフォーカス終了時に取得されたリング像をモニタ8上に同時に表示出力する。これにより、検者は、レンズ32がフォーカス終了位置に配置された状態でのフォーカス調整の信頼性をリング像から確認できるため、モニタ8に表示される眼底像からでは分かりにくい眼底像の鮮明度及びぼけ具合を予測できる。すなわち、リング像の楕円度合が大きければ、屈折異常によって眼底像がぼけてしまっている可能性が高いことが予想できるので、検者は、適切な処理を行うことができる。
なお、上記構成において、撮影されたカラー眼底画像を所定の電子ファイリングソフトがインストールされたパソコンに転送(出力)し、パソコンに設けられた大きなディスプレイ上でカラー眼底像を表示するような場合、前述のように二次元受光素子167によって取得されたリング像データもしくはリング像を模したグラフィックデータを眼底画像データに対応づけた形式で共に転送し、カラー眼底像と共にディスプレイ上に同時に表示するようにしてもよい。このようにすれば、電子ファイリングソフト上で眼底画像を観察し、眼底像の鮮明度が低い場合、リング像からその原因を特定できる。
なお、上記のようにしてレンズ32が被検者眼のSE値に対応する位置に配置された状態において、制御部80は、被検者眼の等価球面度数に対応する位置に配置されたレンズ32の移動位置を基準に被検者眼眼底に対するフォーカス状態を検出し、被検者眼眼底に対するフォーカスのずれ量とずれ方向をモニタ8上に電子的に表示するようにしてもよい(図5参照)。なお、被検者眼のSE値に対応する位置に配置されたレンズ32の移動位置を基準に被検者眼眼底に対するフォーカス状態を検出する場合、被検者眼のSE値に対応する移動位置からのレンズ32の移動量を検出することによりモニタ8上にフォーカスのずれ量とずれ方向を電子的に表示する。この場合、レンズ32の移動量もしくは移動位置を検出する検出機構として、移動機構49の駆動モータにパルスモータを用いると共に、フォトセンサ等によって設定される原点位置を基準にパルスモータに供給したパルス数を計測することにより被検者眼の等価球面度数に対応する移動位置からのレンズ32の移動量を求めるような構成が考えられる。
なお、図5(a)においては、等価球面度数に対応する位置からのレンズ32の移動量に応じて、等価球面度数SEを基準に、プラスマイナスいずれかの方向にインジケータが増減されるようになっている。また、図5(b)において、レンズ32の位置が被検者眼の屈折力に置き換えており、眼屈折力値が記載されたゲージ表示中に被検者眼の等価球面度数を示すことにより、被検者眼の等価球面度数に対応する移動位置からのレンズ32の移動量を表示している。
ここで、検者は、モニタ8に電子的に表示されるフォーカス指標(図5参照)によりフォーカスのずれ量とずれ方向を確認しながら、検者の所望する観察部位にピントを合わせることができる。ここで、インジケータ表示が等価球面度数SEを示している状態から検者によってフォーカススイッチ84aが操作されると、フォーカススイッチ84aの操作に応じてインジケータが増減して表示される。
なお、図5に示したように被検者眼眼底に対するフォーカスのずれ量とずれ方向を電子的に表示する場合、二次元受光素子167から出力されるリング指標像に基づいて被検者眼眼底に対するフォーカス状態を検出し、その検出結果に基づいて被検者眼眼底に対するフォーカスのずれ量とずれ方向を表示するようにしてもよい。この場合、基準画像に対するリング画像の変化を検出する(例えば、基準画像に対するリング径の大小からフォーカスのずれ量とずれ方向を検出する)ことによりフォーカスのずれ量及びずれ方向を検出できる。
なお、制御部80は、二次元受光素子167によって取得されるリング指標像に基づいて被検者眼の乱視の強主経線方向の屈折度数に対応するフォーカス位置を第1のフォーカス限界位置として設定し、二次元受光素子167によって取得されるリング指標像に基づいて被検者眼の乱視の弱主経線方向の屈折度数に対応するフォーカス位置を第2のフォーカス限界位置として設定する設定し、設定された第1のフォーカス限界位置と第2のフォーカス限界位置に対応するリミット表示を表示モニタ上に行うようにしてもよい。
より具体的には、制御部80は、図5に示した電子フォーカス表示において、メモリ85に記憶されたリング画像の長径及び短径の長さを計測し、その計測結果に基づいてリング像の長径方向(被検者眼乱視の弱主経線方向)に対応する屈折度数とリング像の短径方向(被検者眼乱視の強主経線方向)に対応する屈折度数を検出する。
ここで、フォーカス終了位置にて取得されたリング像の長径方向(弱主経線方向)及び短径方向(強主経線方向)のリング直径と、基準画像におけるリング直径と、を比較し、その基準画像に対するリング直径の偏位量の大きさから屈折度数を求める。ここで、基準画像のリング直径に対する偏位量が大きいほど、乱視度数が大きく、基準画像のリング直径に対する偏位量が小さいほど、乱視度数が小さい。なお、被検者眼の乱視度数の大きさは、被検者眼のSE値(フォーカス終了位置に対応する屈折度数)に対する屈折度数の偏位量ともいえる。
次に、制御部80は、前述のように検出された被検者眼乱視の強主経線方向の屈折度数に対応するフォーカス位置を第1のフォーカス限界位置として設定し、被検者眼乱視の弱主経線方向の屈折度数に対応するフォーカス位置を第2のフォーカス限界位置として設定する。そして、制御部80は、第1のフォーカス限界位置に対応するグラフィック表示A1と第2のフォーカス限界位置に対応するグラフィック表示A2をモニタ8上に電子的に表示する。
この場合、制御部80は、フォーカス調整用のインジケータに対する表示A1及びA2の表示位置を、求められた屈折度数に対応して設定されるフォーカス限界位置によって変化させる。すなわち、被検者眼の乱視度数が大きいほど、表示A1と表示A2の幅が大きくし、被検者眼の乱視度数が小さいほど、グラフィック表示A1及びA2の範囲が小さくなる。この場合、制御部80は、前述のように検出される被検者眼の屈折度数とグラフィック表示A1及びA2の表示位置との関係を予め設定しておくようにすればよい。
ここで、検者は、グラフィック表示A1及びA2の間でインジケータ表示が収まる範囲でフォーカスノブを操作すればよいので、所定の経線方向にて被検者眼とのピントが合う範囲でレンズ32を容易に移動させることができる。したがって、検者は、被検者眼の等価球面度数に対応するフォーカス位置を含む被検者眼の乱視の強主経線方向に対応するフォーカス位置から被検者眼の弱主経線方向に対応するフォーカス位置までの間でレンズ32を選択的に移動させることができ、不要なフォーカス操作を回避できる。
この場合、制御部80は、前述のように設定された第1のフォーカス限界位置と第2のフォーカス限界位置との間でレンズ32を移動させるように移動機構49によるレンズ32の移動可能範囲を制限するようにしてもよい。より具体的には、制御部80は、フォーカス調整スイッチからの操作信号に基づいて移動されるレンズ32の移動位置が被検者眼の乱視の強主経線方向に対応するフォーカス限界位置を越える場合、及び弱主経線方向に対応するフォーカス限界位置を越える場合、制御部80は、移動機構49の駆動を停止させる。すなわち、制御部80は、被検者眼が乱視眼の場合、被検者眼の乱視の強主経線方向に対応するフォーカス位置から被検者眼の弱主経線方向に対応するフォーカス位置の間でレンズ32の移動可能範囲を設定し、レンズ32の移動範囲を制限する。このようにすれば、所定経線方向で被検者眼眼底とのピントが合う範囲を超えてレンズ32が移動されるのを回避でき、スムーズにフォーカス調整を行うことができる。
なお、以上の説明においては、被検者眼に対するフォーカス調整が終了した状態で取得されたリング像もしくはリング像に基づく電子的なグラフィックをモニタ8に表示したが、リング像に基づくリング像情報であれば、これに限るものではない。
例えば、制御部80は、フォーカス終了位置にレンズ32が移動されたときに二次元受光素子167によって取得されるリング指標像に基づいて被検者眼の乱視状態の有無を判定することにより、その判定結果を表示モニタ8上に表示するようにしてもよい。これにより、フォーカス調整の信頼性を判定できる。
より具体的には、制御部80は、フォーカス終了位置にて検出される被検者眼の乱視度数が所定の許容範囲を超えるか否かを判定し、その判定結果をモニタ8に表示する。この場合、制御部80は、前述のように検出される被検者眼の乱視度数の絶対値が1D以上の場合、フォーカス調整終了段階において、フォーカス調整の信頼性が低いことを報知するためのメッセージ(例えば、フォーカスの信頼性低い、被検者眼に乱視あり、眼底画像の鮮明度が低い可能性あり、等)又はグラフィックをモニタ8上に表示する。一方、被検者眼の乱視度数の絶対値が1Dより小さい場合、特にメッセージを表示しない,もしくはフォーカス調整の信頼性が高いことを報知するためのメッセージ(例えば、フォーカスの信頼性高い、被検者眼に乱視なし、眼底画像は鮮明である可能性高い、等)又はグラフィックをモニタ上に表示する。また、被検者眼の乱視度数が所定の許容範囲を超えるような場合、モニタ8に表示されるリング像またはリング像グラフィックの背景の色を変化させるようなことも考えられる(例えば、黒から黄色など)。
なお、以上の説明においては、被検者眼の瞳孔中心部を介して被検者眼眼底にスポット状のフォーカス用光束を投光し、眼底反射光束を被検者眼前眼部からリング指標像として取り出して二次元受光素子に受光させるものとしたが、これに限るものでなく、被検者眼の瞳孔周辺部を介して被検者眼眼底にリング状のフォーカス用光束を投光し、被検者眼の眼底に投影されたリング像を二次元受光素子に受光するものであってもよい。
なお、以上の説明において、被検者眼の視線を誘導する固視標の呈示位置を変更可能な構成(例えば、特開2007−202724号公報)を有する固視標呈示光学系70である場合、制御部80は、固視標呈示光学系70によって固視標の呈示位置が変更されたとき、再度、二次元受光素子167に受光されたリング指標像に基づいて移動機構49の駆動を制御してレンズ32を移動させると共に、レンズ32がフォーカス終了位置に配置されたときに二次元受光素子167によって取得されたリング指標像情報をこれまで表示されていたリング指標像情報に代えてモニタ8に表示するのが好ましい。ここで、固視標の呈示位置の変更に応じてモニタ8に表示されるリング指標像情報を更新することにより、被検者眼の状態を適正に把握できる。例えば、眼底中心部を撮影する標準位置と眼底周辺部を撮影する周辺位置とで固視標の呈示位置を切り換える場合、被検者眼の屈折異常の状態が実質的に異なるもの(周辺撮影の場合、被検者眼の光軸と撮影光軸L1とのずれ角が大きくなり、屈折異常が生じやすい)となるため、新たな固視標の呈示位置に対応したリング像情報に更新することにより、検者は、固視標の呈示位置に応じて変化するフォーカス調整の信頼性の変化を適切に検者に報知できる。
また、以上の説明において、二次元受光素子167に受光されたリング指標像に基づいて移動機構49を駆動制御させる場合、別筐体の眼屈折力測定装置(オートレフ)により測定された被検者眼の乱視度数を含む測定データ(例えば、被検者眼の球面度数と乱視度数)を取得し(例えば、LANケーブルを介してオートレフの測定データを得る)、取得された測定データを用いてレンズ32を駆動させることにより被検者眼の等価球面度数に対応する移動位置にレンズ32を予め移動させておくことによりレンズ32の初期位置を設定するようにしてもよい。この場合、被検者眼の等価球面度数SEは、オートレフで得られた被検者眼の球面度数Sと乱視度数Cを用いて、SE=S+1/2Cにより算出できる。
この場合、制御部80は、初期設定として、オートレフからの測定データを用いたレンズ32の移動によってフォーカス調整を行った旨(例えば、オートレフでの測定データに基づくフォーカス調整実行済み)、もしくは既にフォーカス調整が一応完了している旨を参考表示としてモニタ8上に表示する(例えば、フォーカスOK等の表示)。なお、上記のような構成の場合、例えば、スイッチ部84に配置された所定のスイッチによって所定の設定がなされ、二次元受光素子167にリング像が受光されると、リング像に基づく移動機構49の駆動制御が開始される。また、制御部80は、オートレフから取得された測定データを用いたレンズ32の駆動によりレンズ32が初期位置に配置されたときに二次元受光素子167によって取得されたリング指標像情報を参考データとして表示するようにしてもよい。
なお、以上の説明においては、被検者眼の等価球面度数に対応する位置をフォーカス終了位置としたが、検者の好みに合わせて、被検者眼の強主経線方向における屈折度数に対応する位置、又は被検者眼の弱主経線方向における屈折度数に対応する位置をフォーカス終了位置に設定できるようにしてもよい。