JP5423496B2 - レーザ式ガス分析計 - Google Patents
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Description
図13に、SO2ガスの吸収スペクトラム例を示す。前記の周波数変調方式と同様の装置構成によって、SO2濃度測定を行う場合、QCLの波長は7.2〜7.4μmとすることが好ましい。しかしながら、SO2ガスは濃度測定に適した波長範囲において、所定の波長で観察される吸収ピーク以外に、波長に明確に依存しないオフセット的な吸収(以下、オフセット吸収と表記)を有することが特徴である。このように、測定ガスによっては受光部における受光光量がオフセット吸収により変動し、発光部や受光部の故障等による異常が発生したと誤って判断されるおそれがあるという問題があった。レーザ素子異常と誤認されないようにするには、オフセット吸収による影響を受けない判断ロジックが必要であった。
QCLは従来のレーザ式ガス分析計で使用している半導体レーザと比較して、大きな駆動電流を必要とするため、QCLの放熱量が大きくなり、発光が安定しなくなるという特性がある。
また、MCTは300Kの背景放射によるノイズを受けることや周囲温度の変化により感度が変動するといった特性がある。
煙道内のガスにはダストが多く含まれているが、このダストが発光部や受光部に付着したり、また、レーザ光がガス内のダストにより乱反射されたり、吸収されたりして、レーザ光の受光部への透過率が低下、すなわち受光光量が減少し、レーザ異常、あるいは受光素子異常と誤認されるおそれがあった。このダストによる影響は回避できないため、上記のような異常と誤認されないようにするには、ダストの影響を予め考慮して異常判定を可能にする必要があった。
QCLやMCTが経年変化等により駆動電流に対して発光量が減少したり、また、受光量に対して出力が減少したりするという問題があった。このような異常を確実に検出したいという要請があった。
周波数変調された中赤外領域レーザ光を出射する光源部と、この光源部からの出射光をコリメートする光源側光学系と、この光源側光学系から測定対象ガスが存在する空間を介して伝播された透過光を集光する受光側光学系と、この受光側光学系により集光された光を受光する受光部と、この受光部の出力信号を処理する信号処理回路と、処理された信号に基づいて測定対象ガスの濃度を測定する中央処理部と、を有するレーザ式ガス分析計において、
前記光源部は、
中赤外領域レーザ光を発光するレーザ素子と、
前記レーザ素子の温度を安定化させる発光側温度安定化手段と、
測定対象ガスの吸収波長を走査するように前記レーザ素子の発光波長を可変とする可変駆動信号と、前記レーザ素子の発熱量を減少させるように前記レーザ素子の発光を停止するオフセット信号と、を含む波長走査駆動信号に対し、前記発光波長を変調するための高周波変調信号を合成してレーザ駆動信号として出力するレーザ駆動信号発生部と、
このレーザ駆動信号発生部から出力された前記レーザ駆動信号を電流に変換して前記レーザ素子へこの電流を供給する電流制御部と、
を備え、
前記受光部は、
中赤外領域に感度を有する受光素子と、
この受光素子の温度を安定化させる受光側温度安定化手段と、
を備え、
前記信号処理回路は、
前記受光部の出力信号から光源部における変調信号の2倍周波数成分の信号の振幅を検出して検出信号を出力する同期検波回路と、
前記受光部の出力信号から波長走査駆動信号部分を抽出する抽出手段と、
を備え、
前記中央処理部は、
最大の発光光量設定条件における受光光量の閾値を予め測定対象ガス別に登録しており、
通常時では、
前記同期検波回路からの信号に基づいてガス吸収波形信号を生成し、このガス吸収波形信号から測定対象ガスの濃度を検出するガス濃度検出手段として機能し、
前記光源部および前記受光部の異常検査時では、
発光部側の前記電流制御部および前記発光側温度安定化手段に対し、同一波長であって複数の異なる光量のレーザ光を発光するようなレーザ駆動電流およびレーザ動作温度とする制御を行い、受光部側の抽出手段からの波長走査駆動信号成分を用いて発光光量に対する受光光量の傾向を示す検量線についての測定を行う測定手段と、
検量線の測定値の最大値が所定の閾値を上回る場合に前記光源部および前記受光部が正常であると判断し、他の場合を異常と判定する異常有無判定手段として機能することを特徴とする。
請求項1に記載のレーザ式ガス分析計において、
前記中央処理部は、前記波長走査駆動信号成分のうち、オフセット信号成分のレーザ未発光時の受光信号と、可変駆動信号成分のレーザ最大発光時の受光信号と、を抽出して、その差分を受光光量とする受光光量生成手段として機能することを特徴とする。
請求項1または請求項2に記載のレーザ式ガス分析計において、
前記中央処理部は、
前記検量線の測定値の最大値が閾値未満である場合にレーザ素子若しくは受光素子の異常、または、ダストの多く付着する異常であると判定することを特徴とする。
請求項3に記載のレーザ式ガス分析計において、
前記中央処理部は、
受光光量の測定値からガス濃度を測定する測定手段と、
ガス濃度から検量線の傾きの理論値を導出する導出手段と、
受光光量の測定値から検量線の傾きの実測値を生成する実測値生成手段と、
検量線の傾きの理論値からの実測値の変化率が所定範囲内である場合にダストの付着が多いと判定し、検量線の傾きの理論値からの実測値の変化率が所定範囲を超える場合にレーザ素子や受光素子の異常とする異常内容判定手段として機能することを特徴とする。
このような間欠発光条件、すなわち、信号S1と信号S2の時間の比は、QCLであるレーザ素子104eの発熱量とペルチェ素子等の温度安定化手段の性能とを勘案して決定すれば良く、例えばS1:S2=1:4とすることにより、連続発光する場合と比較して、発熱量を1/5にまで低減することができる。
周波数変調方式で距離の影響をキャンセルするためには、半導体レーザ素子の出力を周波数変調すると同時に周波数fmで振幅変調を行えばよいのであるが、半導体レーザ素子の出力に周波数変調を掛けると振幅変調も掛かるので、これが利用できる。
一方、測定対象ガスによるレーザ光の吸収がある場合は、同期検波回路108bによって出射光の変調信号の2倍周波数成分の振幅のみが抽出された信号である2倍波信号が検出される。その出力波形は図4の長方形の枠内に図示された同期検波回路108bの出力波形に示すようになる。この波形はフィルタ108dによりノイズが除去され、適宜増幅して後段のCPUやDSP等である中央処理部109へ出力される。
なお、I/V変換器108aからの出力信号は抽出手段(フィルタ)108eにも入力され、抽出された波長走査駆動信号成分が中央処理部109に送られるが、この波長走査駆動信号成分は異常判定で用いられることとなる。この点については後述する。
まず、事前に、図2のレーザ素子104eの温度をサーミスタ104fにより検出し、図3に示した波長走査駆動信号のS1の中心部分で測定対象ガス(例えばSO2ガス)が測定できる(所定の吸収特性が得られる)ように、図2の温度制御部104dによりペルチェ素子104gの通電を制御してレーザ素子104eの温度を調整する。ペルチェ素子104gはサーミスタ104fの抵抗値が一定値になるようにPID制御等で制御される。そのような設定条件で、レーザ素子104eを駆動し、壁201,202の内部の測定対象ガスが存在する空間にレーザ光を出射し、集光した光を受光部107へ入射させ、上記のような信号処理を行ってガス分析を行う。以上のように本実施形態によれば、光源部104によりレーザ素子104eの発光波長を所定範囲にわたって走査して測定対象ガスによりガス濃度を測定することが可能となる。
ガス濃度は、このピーク値がガス濃度となるため、この出力のピーク振幅を計測することにより、SO2濃度測定が可能となる。また、信号変化を積分してもよい。以上のように波長走査して、ガス濃度を測定することが可能となる。
まず、判定原理について説明する。異常判定では検量線を用いる。検量線は、図8で示すように、発光部での発光光量に対する受光部での受光光量を示す特性である。ある波長で一の発光光量に対する一の受光光量を得る。そして、同一波長で異なる複数の発光光量に対する複数の受光光量を得る。これら複数点から検量線を得る。
一方、測定環境異常の場合、すなわち、レーザ異常や受光素子異常により、発光量や受光光量が低下する場合、あるいは発光部や受光部へのダスト付着により受光光量が低下する場合は、図8でも明らかなように、検量線の傾きはほぼ変動せずに、検量線がグラフ内の左側へシフトする。
通常は、上記の2つの現象が混在するため、検量線のシフトは一義的には決定されない。
すなわち、受光光量が閾値の2.0V未満の場合であって、検量線の傾きの変化率が±5%以上となったときに、光学系異常(レーザ異常、あるいは受光素子異常)と判定し、保守アラーム(測定中止/部品交換)を出力する。
また、受光光量が閾値の2.0V未満の場合であって、検量線の傾きの変化率が±5%未満となったときに、ダスト付着による受光光量低下と判定し、保守ガイダンス(測定中断/窓部清掃推奨)を出力する。
中央処理部109は、図示しない内部メモリまたは外部メモリに、(a)検査時の駆動電流およびレーザ動作温度、(b)発光光量に対する受光光量の傾向を示す検量線について予め設定された傾きの理論値、(c)最大の発光光量における受光光量の閾値、および、(d)SO2濃度に対する検量線の傾き、がそれぞれ登録されているものとする。
以下、同様に操作を行い、発光光量(QCL光量)が異なるように波形信号を代えて異なる受光光量(MCT電圧)を得る。
続いて中央処理部109は、検量線の最大値が閾値未満である場合に測定環境異常であると判定する手段として機能するものであり、具体的には受光光量(Y)が所定の閾値(Y0)未満(本形態では2.0V未満)となるか否かについて判定する(ステップS2)。受光光量が所定の閾値よりも上であるときは、レーザ式ガス分析計の光源部および受光部は正常であると判断し、通常測定へ戻り、一方、受光光量が所定の閾値未満のときは測定環境の異常であると判定する。中央処理部109は、さらにこの異常内容を詳しく調べるための異常判定モードへ移行する(ステップS3)。
傾き=(受光光量(1)−受光光量(2))/(発光光量(1)−発光光量(2))
傾きの理論値a = αX+a0
=(SO2濃度依存係数)×ある測定濃度+各分析計固有の定数(SO2濃度ゼロ時の傾き)
傾きの変化率(%)
=(傾きの理論値(a)−傾きの実測値(b))×100/傾きの理論値(a)
仮にQCLを連続発光する場合は、光源部の発熱が過大となり、従来の構成では放熱不足となることからペルチェ素子による温度制御が困難であったが、このようにオフセット部分S1という発光しない冷却期間が存在するため、光源部の過大な発熱を防ぎ、ペルチェ素子でも温度制御可能としている。加えて、そして信号処理回路や冷却性能に関する発光部および受光部の装置構成を簡素化し、低コスト化している。そして、冷却化によりQCLやMCTが安定動作するため、異常・正常の判定が確実になる。
煙道内の測定ガスに含まれるダストにより、光源部104から発せられる光が散乱ないし吸収され、受光部107の受光光量が低下したり、QCLやMCTの異常により受光部107の受光光量が低下したりするが、本発明では、測定対象ガスの濃度が測定可能範囲上限時のオフセット吸収の影響を考慮しても十分に低い受光光量の閾値を設け、受光光量が閾値を下回った場合に測定環境異常と判定する、というものである。これにより、測定対象ガスのオフセット吸収の影響を排除し、異常・正常の判定が確実になる。
QCLの駆動電流及び動作温度を操作することにより、同一波長複数の光量で発光させるようにしたため、前記複数のQCL光量から得られる受光光量の検量線を取得できるようにした。この検量線の傾きを指標とし、検量線の傾きの測定対象ガス濃度による変動を考慮することにより、測定対象ガスのオフセット吸収の影響を排除し、レーザ異常や受光素子異常による受光光量低下と、ダストのような外乱による光量低下とを区別可能であることを見出した。具体的には、任意のレーザ駆動条件における受光光量が閾値未満、かつ前記検量線の傾きの変化率が閾値以上である場合には、光学系異常(レーザ異常や受光素子異常)による光量低下と判定する。なお、レーザ駆動条件は、所定の検出波長において最大光量となる条件が好ましい。
本発明によれば、上記(ア)〜(ウ)の効果が相乗的に相俟って異常判定を確実に行うことができるようになる。
101a,101b:フランジ
101c:出射窓
101d:入射窓
102a,102b:取付座
103a,103b:カバー
104:光源部
104a:波長走査駆動信号発生部
104b:高周波変調信号発生部
104c:電流制御部
104d:温度制御部
104e:レーザ素子
104f:サーミスタ
104g:ペルチェ素子
104s:レーザ駆動信号発生部
105:コリメートレンズ
106:集光レンズ
107:受光部
107a:受光素子
107b:サーミスタ
107c:ペルチェ素子
107d:温度制御部
108:信号処理回路
108a:I/V変換回路
108b:同期検波回路
108c:発振器
108d:フィルタ
108e:抽出手段(フィルタ)
109:中央処理部
Claims (4)
- 周波数変調された中赤外領域レーザ光を出射する光源部と、この光源部からの出射光をコリメートする光源側光学系と、この光源側光学系から測定対象ガスが存在する空間を介して伝播された透過光を集光する受光側光学系と、この受光側光学系により集光された光を受光する受光部と、この受光部の出力信号を処理する信号処理回路と、処理された信号に基づいて測定対象ガスの濃度を測定する中央処理部と、を有するレーザ式ガス分析計において、
前記光源部は、
中赤外領域レーザ光を発光するレーザ素子と、
前記レーザ素子の温度を安定化させる発光側温度安定化手段と、
測定対象ガスの吸収波長を走査するように前記レーザ素子の発光波長を可変とする可変駆動信号と、前記レーザ素子の発熱量を減少させるように前記レーザ素子の発光を停止するオフセット信号と、を含む波長走査駆動信号に対し、前記発光波長を変調するための高周波変調信号を合成してレーザ駆動信号として出力するレーザ駆動信号発生部と、
このレーザ駆動信号発生部から出力された前記レーザ駆動信号を電流に変換して前記レーザ素子へこの電流を供給する電流制御部と、
を備え、
前記受光部は、
中赤外領域に感度を有する受光素子と、
この受光素子の温度を安定化させる受光側温度安定化手段と、
を備え、
前記信号処理回路は、
前記受光部の出力信号から光源部における変調信号の2倍周波数成分の信号の振幅を検出して検出信号を出力する同期検波回路と、
前記受光部の出力信号から波長走査駆動信号部分を抽出する抽出手段と、
を備え、
前記中央処理部は、
最大の発光光量設定条件における受光光量の閾値を予め測定対象ガス別に登録しており、
通常時では、
前記同期検波回路からの信号に基づいてガス吸収波形信号を生成し、このガス吸収波形信号から測定対象ガスの濃度を検出するガス濃度検出手段として機能し、
前記光源部および前記受光部の異常検査時では、
発光部側の前記電流制御部および前記発光側温度安定化手段に対し、同一波長であって複数の異なる光量のレーザ光を発光するようなレーザ駆動電流およびレーザ動作温度とする制御を行い、受光部側の抽出手段からの波長走査駆動信号成分を用いて発光光量に対する受光光量の傾向を示す検量線についての測定を行う測定手段と、
検量線の測定値の最大値が所定の閾値を上回る場合に前記光源部および前記受光部が正常であると判断し、他の場合を異常と判定する異常有無判定手段として機能することを特徴とするレーザ式ガス分析計。 - 請求項1に記載のレーザ式ガス分析計において、
前記中央処理部は、前記波長走査駆動信号成分のうち、オフセット信号成分のレーザ未発光時の受光信号と、可変駆動信号成分のレーザ最大発光時の受光信号と、を抽出して、その差分を受光光量とする受光光量生成手段として機能することを特徴とするレーザ式ガス分析計。 - 請求項1または請求項2に記載のレーザ式ガス分析計において、
前記中央処理部は、
前記検量線の測定値の最大値が閾値未満である場合にレーザ素子若しくは受光素子の異常、または、ダストの多く付着する異常であると判定することを特徴とするレーザ式ガス分析計。 - 請求項3に記載のレーザ式ガス分析計において、
前記中央処理部は、
受光光量の測定値からガス濃度を測定する測定手段と、
ガス濃度から検量線の傾きの理論値を導出する導出手段と、
受光光量の測定値から検量線の傾きの実測値を生成する実測値生成手段と、
検量線の傾きの理論値からの実測値の変化率が所定範囲内である場合にダストの付着が多いと判定し、検量線の傾きの理論値からの実測値の変化率が所定範囲を超える場合にレーザ素子や受光素子の異常とする異常内容判定手段として機能することを特徴とするレーザ式ガス分析計。
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