JP5420015B2 - 硫化物蛍光体及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、硫化物蛍光体及びその製造方法に関し、より詳しくは、可視光で効率よく励起可能であって高輝度の緑色光を発光し、白色発光素子に好適に使用することができる硫化物蛍光体及びその製造方法に関する。
近年、青色LEDや近紫外LEDの開発に伴い、LEDと蛍光体を組み合わせて白色を得る白色発光素子の開発が進んでいる。
この青色LEDを用いて白色発光素子を作製する場合、例えば特許文献1、2、及び3に記載されるように、青色LEDと黄色蛍光体とを組み合わせた白色発光素子が開発されている。これらの白色発光素子は、照明用や液晶ディスプレイのバックライト光源としての利用が進んでいる。
しかしながら、このような青色とその補色とから構成された白色は、色再現性が悪く、演色性が低いため、3波長型と称される白色発光素子が開発されている。
3波長型の白色発光素子としては、例えば、
(1)青色を発光する発光素子と、発光素子の青色の発光を受けて緑色光を発光する蛍光体、及び赤色光を発光する蛍光体を用いた白色発光素子(例えば、特許文献1参照。)、
(2)紫外線を発光する発光素子と、この発光素子の紫外線の発光を受けて青色光を発光する蛍光体、緑色光を発光する蛍光体、及び赤色光を発光する蛍光体を用いた白色発光素子、の開発が進められている。
一般に、緑色光を発光する蛍光体としては、(Ba、Sr)SiO:Eu(例えば、非特許文献1参照。)やEu添加βサイアロン(例えば、特許文献2参照。)等が知られている。
(Ba、Sr)SiO:Euは、BaとSrの比率を変えることで発光波長を調整することが可能であることが開示されている。しかしながら、(Ba、Sr)SiO:Euは、発光強度は強いが発光スペクトルの形状における半値幅が80nmから100nmと広く、一方、Eu添加βサイアロンは、発光スペクトルの形状における半値幅が55nmとシャープであるが発光強度が弱い。
ところで、液晶ディスプレイのバックライト光源は、白色光をカラーフィルターで青色、緑色、赤色に分離しているが、その際、発光スペクトルの半値幅が狭くシャープであるほど色の分離がよく、色再現性が向上すると言われている。
そこで、最近になってEu添加BaSi12(BSON、例えば特許文献3参照。)が開発された。これは、発光スペクトルの半値幅が68nmと狭いが、発光ピーク波長が525nmであり、RGBテレビの理想である緑色の発光ピーク波長の544nmと比べると少し短波長側にずれている。
一方、緑色蛍光体としては、チオガレート蛍光体が知られている。代表的なチオガレート蛍光体としては、組成式が(Sr、Ca、Ba)1−xEuGaで示され、アルカリ土類金属の組成比を変えることで発光波長を変えることが可能で、発光ピーク波長が544nm、発光スペクトルの半値幅が50nm程度という特性が得られている(例えば、非特許文献2参照。)。
また、Eu添加Gaも緑色の発光を示すことが知られている(例えば、非特許文献3参照。)。しかしながら、この蛍光体は、2価のEuが3価のGa格子位置を置換し、電荷を補償するためGaの格子欠陥が発生する。そのため、発光輝度を大きくすることが難しいといえる。
これらの蛍光体材料は、青色LED(発光波長440〜470nm)で励起して緑色の蛍光を得ることが可能であり、単色のLEDランプや白色LED用蛍光体として有用である。しかしながら、ディスプレイ用に使用する場合には、カラーフィルターでの色分離のため発光スペクトルの半値幅がより狭いこと、そして青色LEDの波長変化に対して輝度変化が小さな蛍光体が必要である。特に、青色励起の赤色蛍光体は、発光スペクトルの半値幅が広いブロードな発光を示すものしかないのが実情である。
このことから、色の混合を抑制するため、赤色の発光ピーク波長を長波長側にシフトさせることが考えられる。ところが、長波長側にシフトさせると視感度が低いために画面の輝度が維持できないという問題が生じる。
そこで、赤色蛍光体等の他の蛍光体の発光ピーク波長を適正な値にするために、緑色蛍光体において、その発光スペクトルの半値幅を狭くして良好な色分離を可能にし、さらに発光輝度を向上させた蛍光体が望まれていた。
特開2000−244021号公報 特開2005−255895号公報 特開2008−138156号公報
G.BLASS et.Al.、Philips Res. Report、1968、Vol.23,No.2、p.189 T.E.Peters J.A.Baglio、J.Electrochem.Soc.、1972、vol.119、p.230 Askerov I.M., et.al.、Sov.Phys.-Semicond.(Enggl.Transl.)、1991、Vol.25、p.1230
本発明は、このような実情に鑑みて提案されたものであり、可視光で効率よく励起して、530nmから550nmの緑色領域に発光波長ピークを有し、発光スペクトルの半値幅が50nm未満であって、さらに高輝度の発光を示す緑色蛍光体を提供することを目的とする。
本件発明者らは、上述した課題を解決すべく鋭意検討を重ねた。その結果、Gaにアルカリ土類金属元素のSrを加えて硫化物とし、Ga位置をEu2+で置換して所定の組成からなる硫化物蛍光体とすることにより、上述した課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明に係る硫化物蛍光体は、一般式:Sr(Ga1−xEu1.5y+1で表され、式中のx、yは、0.008<x<0.025、11.5<y<12.5を満たすことを特徴とする。
また、本発明に係る硫化物蛍光体の製造方法は、一般式:Sr(Ga1−xEu1.5y+1で表され、式中xが0.008<x<0.025であり、yが11.5<y<12.5である硫化物蛍光体の製造方法であって、所定の組成となるように硝酸ガリウムとユーロピウム化合物とを混合して得られた混合液に、炭酸ストロンチウムを秤量して混合し、オキシカルボン酸及びアルコールを添加してゲル化させゲル体を得るゲル体作製工程と、上記ゲル体を400℃〜500℃の温度条件で熱処理し、その後大気雰囲気で550℃〜600℃の温度条件で酸化焼成処理して酸化物前駆体の中間体を得る中間体作製工程と、上記中間体を大気雰囲気で700℃〜1300℃の温度条件で仮焼成して酸化物前駆体を得る仮焼成工程と、上記仮焼成工程で得られた酸化物前駆体を、850℃〜930℃の温度条件で還元硫化処理して焼成する還元焼成工程とを有することを特徴とする。
本発明に係る硫化物蛍光体によれば、可視光で効率よく励起して、530nmから550nmの緑色領域に発光波長ピークを有し、その発光スペクトルの半値幅が50nm未満であって高輝度の発光を示す。このような硫化物蛍光体によれば、他の蛍光体と混合させた白色発光素子の作製に際して、他の蛍光体の発光ピーク波長を適正な値に制御しながら良好な色分離が可能となり、その工業的価値は極めて大きい。
実施例2、比較例3,7,8にて作製した蛍光体についてX線回折パターン、並びに、ICSDを用いてシュミレーションしたSrGa、EuGa及びGaについてのX線回折パターンを示す図である。 実施例1、比較例3,7,8、及び従来例の蛍光体についての発光スペクトルを示す図である。 実施例1、比較例3,8、及び従来例の蛍光体の発光スペクトルをピーク波長で規格化したスペクトルを示す図である。 実施例1、比較例3,7,8、及び従来例の蛍光体についての励起特性の結果を示す図である。
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態(以下、「本実施の形態」という。)について、図面を参照しながら以下の順序で詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
1.硫化物蛍光体
1−1.硫化物蛍光体の組成及び効果
1−2.硫化物蛍光体の構造解析
2.硫化物蛍光体の製造方法
2−1.製造方法の概要
2−2.液相法による酸化物前駆体を経由した硫化物蛍光体の製造方法
3.実施例
3−1.蛍光体の作製
3−2.蛍光体の性能評価
3−3.蛍光体のX線回折測定
≪1.硫化物蛍光体≫
<1−1.硫化物蛍光体の組成及び効果>
本実施の形態に係る硫化物蛍光体は、一般式(1):Sr(Ga1−xEu1.5y+1で表され、式中のx、yが、0.008<x<0.025、11.5<y<12.5を満たすものである。
上記一般式(1)で表される硫化物蛍光体では、可視光で効率よく励起することができ、530nm〜550nmの緑色領域に発光ピークを有する。また、この硫化物蛍光体では、その発光スペクトルの半値幅が50nm未満となる。このような発光特性を有する硫化物蛍光体によれば、例えば他の蛍光体と混合させた白色発光素子の作製に際しても色の混合を効果的に抑制することができ、他の蛍光体の発光ピーク波長を適正な値に制御しながら良好な色分離が可能な緑色蛍光体として好適に用いることができる。
また、上述のように、この硫化物蛍光体においては、Euの添加割合は上記一般式(1)中の「x」で示される割合として0.008<x<0.025を満たすものである。また、アルカリ土類金属であるストロンチウム(Sr)に対するガリウム(Ga)の混合割合(Ga/Sr)は、上記一般式(1)中の「y」で示される割合として11.5<y<12.5を満たすものである。
このように、Euの添加割合やGa/Srの割合を上述した範囲内とすることによって、400nm〜500nmの広い範囲で励起して発光強度の高いピーク波長を有し、効率の良い励起を可能にする。また、このような組成とすることによって、Euが効果的に置換されて従来に比して極めて輝度の高い発光を示すことができる。
ここで、本実施の形態に係る硫化物蛍光体における発光輝度の向上は、後述する構造解析の結果から分かるように、この硫化物蛍光体が、複数の結晶相から形成されてなる共晶体であることにもよる。
<1−2.硫化物蛍光体の構造解析>
図1に、後述する実施例において作製した蛍光体についてのX線回折パターンと、ICSD(無機結晶構造データベース)を用いてシュミレーションしたSrGa、EuGa、及びGaについてのX線回折パターンを示す。図1において、実施例2にて作製したSrGa1219:Eu2%で示される蛍光体が、上記一般式(1)で表される蛍光体の一例である。
図1のX線回折パターンに示されるように、Euを1%添加したGa:Eu1%では、ICSDでシュミレーションしたGaに一致しており単相からなる蛍光体であることが分かる。一方で、本実施の形態に係る硫化物蛍光体であるSrGa1219:Eu2%では、Gaに一致するピークと、SrGa及びEuGaに近似するピークがあることが分かる。このことから、上記一般式(1)で表される硫化物蛍光体は、複数の結晶相から形成されていると推測することができる。
SrS−Gaは共晶系であることが知られている。したがって、本実施の形態に係る硫化物蛍光体では、その製造過程においてSrGaとGaの共晶反応が生じることにより少量の液相が出現し、その液相に基づく自己フラックス効果によって蛍光体表面相が高純度の結晶になり、これにより従来に比して極めて輝度の高い発光を示すようになると考えられる。
≪2.硫化物蛍光体の製造方法≫
次に、上述した硫化物蛍光体の製造方法について説明する。
<2−1.製造方法の概要>
一般に、ガリウムのようなイオン半径の小さな原子位置を、ユーロピウムのようなイオン半径の大きな元素で置換することは難しい。また、GaではGaサイトを置換したEuとGa空孔とが複合欠陥を構成すると言われている。
そこで、本発明者らは、EuがGa位置に置換した一般式:Sr(Ga1−xEu1.5y+1で表され、式中xが0.008<x<0.025であり、yが11.5<y<12.5である硫化物蛍光体を製造するためには、一旦Euを含んだGaにアルカリ土類金属のSrを加えてSrGa1.5y+1とした酸化物前駆体を作製し、その酸化物前駆体を二硫化炭素や硫化水素で還元硫化処理することで、EuがGa位置に置換した硫化物蛍光体の効率的な形成が可能となることを見出し、可視光で効率よく励起され高輝度に緑色発光する硫化物蛍光体を得ることができることが分かった。
具体的に、この酸化物前駆体である、アルカリ土類金属の酸化物と酸化ガリウム(Ga)との複合酸化物は、固相法あるいは液相法で作製できる。
例えば、固相法では、アルカリ土類金属である炭酸ストロンチウム、酸化ガリウム、及び酸化ユーロピウムを所定の組成比となるように混合し、この混合物を大気雰囲気中で700℃〜1300℃の温度条件で焼成により作製することができる。焼成に際して、その焼成温度が700℃より低いと炭酸塩が分解できないため複合酸化物ができにくい。一方で、焼成温度が1300℃より高いとGaの揮発が激しくなることや、酸化物前駆体が熔融して後の還元硫化ができなくなることがあるため好ましくない。
また、液相法では、例えば錯体重合法を用いて酸化物前駆体を作製することができる。このように液相法により酸化物前駆体を作製することによって、原料を均一に混合させることができ、より発光輝度の高い蛍光体を作製するためには好適な製造方法である。以下に、具体的な液相法を用いた製造方法を例に挙げて、より詳細に本実施の形態に係る硫化物蛍光体の製造方法について説明する。
<2−2.液相法による酸化物前駆体を経由した硫化物蛍光体の製造方法>
本実施の形態に係る硫化物蛍光体の製造方法は、一般式:Sr(Ga1−xEu1.5y+1で表され、式中xが0.008<x<0.025であり、yが11.5<y<12.5である硫化物蛍光体の製造方法である。
この製造方法は、原料を混合して得られた水溶液をゲル化させゲル体を得るゲル体作製工程と、ゲル体を熱処理して有機物を分解し、さらに酸化焼成処理により酸化物前駆体の中間体を得る中間体作製工程と、酸化物前駆体の中間体を仮焼成して酸化物前駆体を得る仮焼成工程と、酸化物前駆体に対して還元硫化処理を行う還元焼成工程とを有する。
(1)ゲル体作製工程
ゲル体作製工程では、上記一般式に示される所定の組成となるように、原料の硝酸ガリウム(Ga)とユーロピウム(Eu)化合物とを混合して得られた混合液に、炭酸ストロンチウムを秤量して混合する。そして、その混合液にオキシカルボン酸及びアルコールを添加して、所定の温度で加熱してゲル化させることによってゲル体を作製する。
具体的に、ゲル体作製工程では、先ず、硝酸ガリウムとユーロピウム化合物の水溶液を混合して混合液とし、その混合液に炭酸ストロンチウムを混合させる。
添加する賦活元素Euの化合物としては、ユーロピウムの硝酸塩や酸化物等の水溶性ユーロピウム化合物を用いることができる。例えば、硝酸ユーロピウムとしては、原料のユーロピウム酸化物を濃度40〜60質量%の硝酸溶液に溶解して1時間程度の攪拌を行うことによってユーロピウム酸化物を完全に溶解させ、その後ユーロピウム溶解液を乾燥させることによって得ることができる。
また、ストロンチウム源となる炭酸ストロンチウムは、比較的安価な材料であり、これを原料として用いることによって、コストを抑えた蛍光体を作製することができる。
硝酸ガリウム、ユーロピウム化合物、炭酸ストロンチウムの添加量は、所望とする蛍光体の組成の金属比となるように秤量して混合する。本実施の形態においては、その組成が一般式:Sr(Ga1−xEu1.5y+1で表され、式中xが0.008<x<0.025であり、yが11.5<y<12.5となるように、原料の硝酸ガリウム、ユーロピウム化合物、及び炭酸ストロンチウムを秤量して混合する。供給する原料中の原子比と得られる蛍光体の原子組成比とは略一致することから、所望とする組成比となるように原料をそれぞれ秤量して混合することによって、それぞれの原子を上述した範囲とすることができる。
次に、ゲル体作製工程では、このように原料化合物を混合させた溶液に、オキシカルボン酸を添加することによって金属元素を錯化させ、金属元素を錯化させた溶液にアルコールを添加することによって水溶液をゲル化させる。このように、原料を混合させた水溶液をゲル化させてゲル体とすることによって、その原料を均一に分散させることができ、特に発光中心となる希土類元素のユーロピウムを均一に分散させることができ、高輝度の発光を示す蛍光体を得ることができる。
ここで、オキシカルボン酸としては、例えばクエン酸、リンゴ酸、酒石酸、タルトロン酸、グリセリン酸、オキシ酪酸、ヒドロアクリル酸、乳酸、グリコール酸等を用いることができ、その中でもクエン酸を用いることがより好ましい。
オキシカルボン酸の添加量としては、Ga、Eu、及びSrからなる全金属元素(Ga+Eu+Sr)のモル数に対して、そのモル比で3倍〜5倍モル程度とすることが好ましい。オキシカルボン酸の添加量が全金属元素に対して3倍モル未満であると、原料となる炭酸ストロンチウムを完全に溶解させることができず、また金属元素の錯化が十分に進行しない可能性がある。一方で、添加量が5倍モルを超えると、コストが増大して経済性が悪化するため好ましくない。
オキシカルボン酸を添加することによる金属元素の溶解処理と錯化処理に際しては、特に限定されないが、例えば水溶液を50℃〜160℃程度に加温して、1時間〜8時間程度の時間で攪拌することによって行う。
また、金属元素を錯化させた溶液に添加するアルコールとしては、グリコールを用いることが好ましい。具体的に、グリコールとしては、エチレングリコール又はプロピレングリコールを用いることが好ましい。
アルコールの添加量としては、Ga、Eu、及びSrからなる全金属元素(Ga+Eu+Sr)のモル数に対して、そのモル比で8倍〜12倍モル程度とすることが好ましい。アルコールの添加量が全金族元素に対して8倍モル未満であると、後述するエステル化反応が起こりにくくゲル化が効率的に進行しない可能性がある。一方で、添加量が12倍モルを超えると、それ以上にアルコール添加の効果が増大せず、コストが増大して経済性が悪化するため好ましくない。
アルコールの添加によるゲル化反応では、例えば水溶液の液温を120℃〜250℃、より好ましくは180℃〜220℃に加熱昇温して攪拌する。このようにして水溶液を加熱して攪拌することにより、水溶液中でエステル化反応が生じて重合してポリエステルが生成され、これにより水溶液がゲル化する。
上述したゲル化温度について、120℃未満ではゲル化時間が長くなり、250℃を超えると均一なゲル化が難しくなる。また、ゲル化時間としては、水溶液の水分量によって変化するが、上述したゲル化温度において4時間〜16時間攪拌してゲル化させることが好ましい。
なお、水溶液のゲル化にあたって、エステル化反応が進行すると水溶液中の硝酸が急激に分解して赤黒いガスが発生するとともに、ポリエステル中に泡が形成されて急激に膨張する場合がある。その泡は、水で容易に溶解するので、適宜水を加えて再度水溶液を作製することによって攪拌重合してポリエステル化すればよい。また、水溶液中に硝酸が残っていると、有機物の加熱分解時に急激な反応が起きることがあることに注意する。
(2)中間体作製工程
中間体作製工程では、ゲル体作製工程で得られたゲル体に対して熱処理を施してゲル体を熱分解するとともに、続いて大気雰囲気中で所定の温度条件で酸化焼成処理することによって酸化物前駆体の中間体を作製する。
ゲル体作製工程で得られたゲル体には、添加した原料(炭酸塩、オキシカルボン酸、アルコール等)に由来する有機物が含まれている。そのため、先ず、中間体作製工程においては、ゲル体に対して熱処理を施すことによって、ゲル体に含まれる有機物の分解を行う。これにより、残留する有機物の未分解物による輝度の低下を抑制し、得られる蛍光体の発光強度を高めることができ、高輝度の発光を示す蛍光体を作製することができる。
ゲル体に対する熱処理温度としては、400℃〜500℃とすることが好ましく、440℃〜460℃とすることがより好ましい。また、熱処理時間としては、1時間〜20時間とすることが好ましく、4時間〜12時間とすることがより好ましい。また、はじめに100℃〜200℃で熱処理してから、400℃〜500℃に温度を上げて熱処理することにより、ゲル体に含まれる有機物の急激な分解の影響を避けることができる。
また、中間体作製工程では、上述した熱処理に続いて、ゲル体の熱処理物に対して大気雰囲気中で550℃〜600℃の温度条件で酸化焼成処理を施すことによって、後述する酸化物前駆体の中間体を作製する。
この酸化焼成処理は、ゲル体に対する熱処理のみでは、酸素が不足したり凝集したりして熱分解が不十分になることが多いため、十分に有機物を燃焼除去し、酸化反応を促進するために行う。そのため、ゲル体の熱処理物は、乳鉢等で軽く粉砕しておくことが望ましい。また、酸素や空気を流している場合は、中間体作製工程とこの後の工程である仮焼成工程を連続して行うことができる。
酸化焼成処理において、その焼成温度が550℃未満では、残存している有機物や硝酸が燃焼分解されにくいため好ましくない。一方で、600℃を超えると、中間体が部分的に結晶化して酸化物前駆体が均一になりにくいため好ましくない。また、その焼成時間としては、1時間〜4時間とすることが好ましい。
また、この酸化焼成処理は、上述のように大気雰囲気中、または酸素雰囲気中にて行う。酸素を含む雰囲気にて熱処理を行うことにより、ゲル体に残留する有機物を効果的に分解させることができ、表面に炭素が残って蛍光体の輝度が低下することを抑制することができる。
(3)仮焼成工程
仮焼成工程では、中間体作製工程で得られた酸化物前駆体の中間体を大気雰囲気中で仮焼成することによって、完全に酸化物とし、アルカリ土類金属であるSrの酸化物とEuを含んだ酸化ガリウム(Ga)との複合酸化物(SrGa1.5y−1)からなる酸化物前駆体を作製する。
仮焼成工程における焼成温度としては、700℃〜1300℃とすることが好ましい。焼成温度が700℃未満であると、残留する原料の炭酸塩を効率的に分解できないため複合酸化物ができにくくなる。一方で、焼成温度が1300℃を超えると、Gaの揮発が激しくなることや、複合酸化物が熔融して後工程の還元焼成工程での還元硫化反応が進行しにくくなることがあるため好ましくない。
また、仮焼成の処理時間としては、3時間〜8時間とすることが好ましく、4時間〜6時間とすることがより好ましい。
ここで、一般に、Gaは800℃より高い温度で昇華が著しくなる。そのため、この仮焼成工程では、酸化物前駆体の中間体を、一旦700℃〜800℃以下の温度で焼成して酸化物を形成し(第1の仮焼成工程)、その酸化物を再度1000℃〜1300℃の温度で焼成する(第2の仮焼成工程)という2段階の焼成処理を行うこともできる。
このように、中間体作製工程で得られた酸化物前駆体の中間体に対して2段階の焼成処理を施して仮焼成することによって、Gaの揮発ロスを少なくし、効率よく酸化物の前駆体を得ることができ、所望とする組成の蛍光体を効率的に作製することができる。
また、酸化物前駆体の中間体を800℃以下で焼成すると、結晶化せずにX線回折でピークの見えない酸化物前駆体となることがある。一般的に、非晶質で均一な酸化物前駆体を還元硫化すると、結晶の構造変化や拡散を必要としないため、低温で目的物質を合成することができる。なお、特定の結晶構造を利用して目的組成を得る場合には、高温で結晶化させればよい。
(4)還元焼成工程
還元焼成工程では、仮焼成工程で得られた酸化物前駆体を、所定の温度条件のもとに還元硫化処理して焼成する。この還元硫化処理により、酸化物前駆体が還元硫化されて母体結晶が形成されるとともに、その母体結晶のSrサイトにEuがドープされ、Euが均一に分散した硫化物蛍光体を得ることができる。
具体的に、還元硫化処理は、硫化水素ガスや二硫化炭素を含んだ不活性ガスを用いて行うことができる。その中でも特に、二硫化炭素を含んだ不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。高温条件の下に長時間に亘って還元硫化処理を行った場合、還元硫化した母体結晶から揮発し易い硫黄が抜け出る傾向があり、高輝度で且つ所望とする発光波長を有する蛍光体を製造することが困難になる。この点、二硫化炭素は還元力が強いため、酸化物を低温で硫化することが可能となり低い温度条件で焼成を行うことができ、硫黄が抜け出ることを抑制して所望とする組成の蛍光体を効果的に製造することができる。また、昇温に際しての手間と費用を低減することができ、経済的な観点からも好ましい。
そして、本実施の形態に係る製造方法では、この還元焼成工程における還元硫化処理において、焼成温度条件を制御することが重要となる。具体的には、850℃〜930℃の範囲に温度を制御して還元硫化処理を行う。
ここで、上述したように、一般式(1):Sr(Ga1−xEu1.5y+1で表される硫化物蛍光体は、複数の結晶相から形成されてなる共晶体となっている。この硫化物蛍光体を還元硫化処理して作製するにあたり、その焼成温度を850℃以上とすることによって、複数の結晶相による共晶反応により少量の液相が出現するようになる。すると、出現した液相により自己フラックス効果が生じて、得られる蛍光体表面相を高純度な結晶とすることができ蛍光特性を向上させることができる。具体的には、その半値幅が50nm未満であるシャープな発光スペクトルになるとともに、発光強度を著しく向上させることができる。一方、焼成温度が930℃を超えると、共晶反応によって生じる液相が多くなり粗大な粒子が発生して、蛍光特性が低下する。
したがって、還元硫化処理においては、その焼成温度条件を850℃〜930℃の範囲とすることによって、発光スペクトルの半値幅が50nm未満であり、発光輝度の高い蛍光体を作製することができる。
還元硫化処理の処理時間としては、特に限定されないが、上述した温度条件で1時間〜12時間保持して行うことが好ましい。
また、二硫化炭素を含んだ不活性ガス雰囲気下で還元硫化を行う場合、不活性ガスとしてはアルゴン(Ar)ガスを用いることが好ましい。また、アルゴンガス中に二硫化炭素を含ませる方法としては、アルゴンガスを液体の二硫化炭素中に流通させる方法を利用することができる。
また、二硫化炭素やアルゴンガスの温度としては、15℃以上46℃未満とすることが好ましく、20℃〜25℃とすることがより好ましい。温度が15℃未満では、アルゴンガスに含まれる二硫化炭素の濃度が低くなり還元硫化が効果的に進まない可能性がある。一方で、温度が46℃以上では、二硫化炭素の沸点以上となって蒸発量の制御が難しくなり、均一な還元硫化を行うことが困難となる。
還元硫化処理を行う焼成炉としては、特に限定されるものではなく、例えば炉芯管が石英である管状炉を用いることができる。また、昇温条件としては、例えば昇温速度を10〜30℃/分として行うことができる。
また、管状炉にて焼成を行う場合には、石英管中のガスが追い出せるように加熱開始直後から、硫化水素ガスや二硫化炭素を含んだ不活性ガス等のガスを流すことが好ましい。特に、加熱開始から10分〜20分程度の間においては、石英管全体の体積の2倍〜3倍のガスを流すことが好ましい。また、還元硫化が開始される温度では、その還元媒体となるガス量が十分量となるように供給ガス流量を調節することが好ましい。なお、焼成中においても、上述のように十分なガス量が必要となるため、冷却が完了して室温になるまでガスを流し続けておくことが好ましい。
以上のようにして還元硫化処理を行うことによって、上記一般式(1)で表される硫化物蛍光体の焼成粉末を得ることができるが、その焼成粉末の表面には炭素が付着していることがある。このような炭素が表面に付着した蛍光体では、その発光輝度が低下してしまうことがある。そのため、上述した還元硫化処理の後、得られた焼成粉末を粉砕することによって、その表面に新生面を形成させることが好ましい。これにより、蛍光体の輝度の低下を防止し、高輝度な蛍光体を得ることができる。
以上詳述した製造方法により、一般式:Sr(Ga1−xEu1.5y+1で表され、式中xが0.008<x<0.025であり、yが11.5<y<12.5である硫化物蛍光体を製造することができる。
上述したように、この製造方法では、Euを含んだGaとアルカリ土類金属であるSrの酸化物との複合酸化物の酸化物前駆体を作製するようにしている。このため、イオン半径の大きなEuをGa位置に効果的に置換させることができ、EuとGa空孔との複合欠陥の生成を抑制した酸化物前駆体を得ることができる。
そして、この製造方法では、得られた酸化物前駆体に対して、850℃〜930℃の温度範囲に制御して還元硫化処理を施すようにしているので、シャープな発光スペクトルを有し、発光強度の強い蛍光体を得ることができる。
≪3.実施例≫
以下に、本発明について実施例を用いてより詳しく説明する。なお、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
<3−1.蛍光体の作製>
[実施例1]
(ゲル体作製工程)
金属ガリウム(Ga)をGaのモル数の7倍の硝酸溶液に入れ、硝酸が揮発しないよう容器には蓋をして80℃のホットプレート上で1日攪拌して溶解させた。反応ではNOが発生するので蓋には開口部を設けた。金属ガリウムを溶解させた後、130℃のホットプレート上で余分な硝酸を蒸発除去し、水を加えて1M/Lに定溶した。
次に、硝酸ガリウム(1M/L)と硝酸ユーロピウム(Eu)(0.1M/L)を金属モル比で99:1になるようにビーカーに入れて混合し、その混合液に金属モル比でGa+Eu:Srが12:1になるように炭酸ストロンチウム(Sr)を加え、さらに全金属元素(Ga+Eu+Sr)の3倍モルのクエン酸を加えて水溶液を作製した。続いて、この水溶液を80℃のホットプレート上で1時間攪拌してストロンチウムを完全に溶解させ、さらにこの水溶液にプロピレングリコールを全金属元素のモル数の10倍量加えてホットプレートの温度を120℃として1時間、硝酸を蒸発させるため140℃として1時間の計2時間攪拌してゲル体を作製した。
(中間体作製工程)
次に、得られたゲル体を180℃に設定したマントルヒーターで1時間加熱し、450℃に設定温度を上げて2時間熱処理を施してゲル体中の有機物を分解させた。さらに、熱処理後の熱処理物をボックス炉に投入し、大気雰囲気中、550℃の温度条件で2時間の酸化焼成処理を行って、酸化物前駆体の中間体を作製した。
(仮焼成工程)
引き続いて、ボックス炉内に得られた酸化物前駆体の中間体に対して、大気雰囲気中、750℃の温度条件で2時間焼成して酸化物前駆体を作製した。
(還元焼成工程)
次に、得られた酸化物前駆体をグラファイト製の容器に入れて管状炉内に設置し、二硫化炭素35体積%にアルゴン(Ar)ガス65体積%を混合させた混合ガス雰囲気中で、900℃の温度条件で1時間に亘って還元硫化処理することによって、組成式がSr(Ga0.99Eu0.011219である硫化物蛍光体(チオガレート蛍光体)を作製した。
[実施例2]
ゲル体作製工程において、原料の硝酸ガリウムと硝酸ユーロピウムの混合液を作製する際のGa:Euの比率を金属モル比で98:2にしたこと以外は、実施例1と同様の方法で、組成式がSr(Ga0.98Eu0.021219である硫化物蛍光体を作製した。
[実施例3]
還元焼成工程の還元硫化処理における温度条件を915℃にしたこと以外は、実施例2と同様の方法で、硫化物蛍光体を作製した。
[実施例4]
還元焼成工程の還元硫化処理における温度条件を880℃にしたこと以外は、実施例2と同様の方法で、硫化物蛍光体を作製した。
[比較例1]
ゲル体作製工程において、原料の硝酸ガリウムと硝酸ユーロピウムの混合液を作製する際のGa:Euの比率を金属モル比で99.5:0.5にしたこと以外は、実施例1と同様の方法で、組成式がSr(Ga0.995Eu0.0051219である硫化物蛍光体を作製した。
[比較例2]
ゲル体作製工程において、原料の硝酸ガリウムと硝酸ユーロピウムの混合液を作製する際のGa:Euの比率を金属モル比で97:3にしたこと以外は、実施例1と同様の方法で、組成式がSr(Ga0.97Eu0.031219である硫化物蛍光体を作製した。
[比較例3]
ゲル体作製工程において、原料の硝酸ガリウムと硝酸ユーロピウムの混合液を作製する際のGa:Euの比率を金属モル比で90:10にしたこと以外は、実施例1と同様の方法で、組成式がSr(Ga0.90Eu0.101219である硫化物蛍光体を作製した。
[比較例4〜比較例6]
ゲル体作製工程において、原料の硝酸ガリウムと硝酸ユーロピウムの混合液に炭酸ストロンチウムを加える際のSr:Gaの比率を金属モル比で1:10(比較例4)、1:11(比較例5)、1:13(比較例6)にしたこと以外は、実施例1と同様の方法で、それぞれの組成式が、Sr(Ga0.99Eu0.011019(比較例4)、Sr(Ga0.99Eu0.011119(比較例5)、Sr(Ga0.99Eu0.011319(比較例6)である硫化物蛍光体を作製した。
[比較例7]
ゲル体作製工程において、原料の硝酸ガリウムと硝酸ユーロピウムの混合液に、炭酸ストロンチウムを加えずに作製したこと以外は、実施例1と同様の方法で、組成式がGa:Euである硫化物蛍光体を作製した。
[比較例8]
ゲル体作製工程において、原料の硝酸ガリウムと硝酸ユーロピウムの混合液を作製する際のGa:Euの比率を金属モル比で90:10にしたこと以外は、比較例7と同様の方法で、組成式がGa:Euである硫化物蛍光体を作製した。
[比較例9]
還元焼成工程の還元硫化処理の温度条件を800℃にしたこと以外は、実施例2と同様の方法で、硫化物蛍光体を作製した。
[比較例10]
還元焼成工程の還元硫化処理の温度条件を950℃にしたこと以外は、実施例2と同様の方法で、硫化物蛍光体を作製した。
なお、比較例10にて得られた蛍光体は、部分的に溶融して粗大な粒子となってしまった。そのため、下記の蛍光測定に際しては、その粗大粒子を乳鉢で粉砕して測定した。
[従来例]
市販されている緑色硫化物蛍光体として、Phosphor technology社製のSrGa:Euを従来例として、下記の蛍光特性を測定した。
<3−2.蛍光体の性能評価>
(蛍光特性の測定及び測定結果)
上述した各実施例及び比較例にて作製した蛍光体について、蛍光分光光度計(FP−6500、日本分光株式会社製)を用いて励起、発光スペクトルの測定を行い、蛍光特性を測定した。蛍光測定にて得られたスペクトルは、市販のYAl12:Ce3+(YAG:Ce,化成オプトニクス株式会社製P46)のピーク強度を1として規格化することによって比較した。
下記の表1〜表3に、実施例及び比較例にて作製した蛍光体に蛍光特性を示す。また、図2に、実施例1、比較例3,7,8、及び従来例の蛍光体についての発光スペクトルを示す。また、図3に、実施例1、比較例3,8、及び従来例の蛍光体の発光スペクトルをピーク波長で規格化したスペクトルを示し、これにより半値幅を比較した。また、図4に、実施例1、比較例3,7,8、及び従来例の蛍光体についての励起特性の結果を示す。
Figure 0005420015
Figure 0005420015
Figure 0005420015
(評価)
表1〜表3、図2、図3に示す結果から分かるように、実施例1及び実施例2の蛍光体では、そのピーク波長が530nm〜550nmの緑色発光波長領域に入っており緑色の発光を示すことが分かる。また、その発光スペクトルの半値幅も46nmであり、従来例の緑色硫化物蛍光体(市販品)の半値幅53nmと比較して非常に狭くシャープな発光スペクトルであることが分かる。
さらに、実施例1及び実施例2の蛍光体では、発光強度が極めて強く、高輝度な発光を示す蛍光体であることが分かる。
一方、各比較例にて作製した蛍光体では、何れの蛍光体においても、そのピーク波長が緑色発光波長領域である530nm〜550nmの範囲に入っており、また発光スペクトルの半値幅も従来例に比して狭いものであった。しかしながら、各比較例で得られた蛍光体では、その発光強度が実施例に比べて非常に劣るものであった。
また、図4に示す励起特性の結果から分かるように、実施例1の蛍光体では400nm〜500nmの幅広い範囲で平坦なピーク波長を有し、しかもその範囲での励起で発光強度が非常に高く、効率よく励起可能であることが分かる。一方で、比較例3,7,8の蛍光体では、400nm〜500nmの幅広い範囲で平坦なピーク波長を有するものの、その発光強度は非常に弱いことが分かる。
なお、この図4に示す励起特性の結果から、実施例1の蛍光体では、上述のように400nm〜500nmの幅広い範囲で平坦であり、400nmから短波長側の励起で強度が低下することが分かる。この励起特性は、従来例としての市販の緑色蛍光体の励起特性とは大きく異なっていることが分かる。
また、表2に示すように、蛍光体の製造工程における還元硫化処理に際しての温度条件を、900℃とした実施例1、925℃とした実施例3、880℃とした実施例4では、ピーク波長が緑色発光波長領域となって発光スペクトルの半値幅も50nm未満と非常に狭くなったとともに、その発光強度が極めて強く、高輝度な発光を示す蛍光体となった。一方で、還元硫化処理の温度条件を800℃とした比較例7、950℃とした比較例8では、発光スペクトルの波長領域と半値幅は良好であったものの、その発光輝度が従来のYAGと同程度しかなく、極めて弱い発光を示すものであった。
このことから、蛍光体の製造における還元硫化処理に際しては、その焼成温度条件を850℃〜930℃程度の範囲に制御することによって、高輝度な発光を示す蛍光体になることが分かった。
<3−3.蛍光体のX線回折測定>
次に、実施例2、比較例3,7,8のそれぞれにおいて作製した蛍光体について、X線回折測定を行ってX線回折パターンを得た。また、ICSD(無機結晶構造データベース)を用いて、SrGa、EuGa、及びGaについてのX線回折パターンをシュミレーションした。図1に、それぞれのX線化回折パターンを示す。
図1に示されるように、Euを1%添加したGa:Eu1%では、ICSDでシュミレーションしたGaのX線回折パターンと一致することが分かり、単相からなるものであることが分かる。一方で、実施例2にて作製したSrGa1219では、Gaに一致するピークと、SrGa及びEuGaに近似するピークが存在し、Ga相、SrGa相、及びEuGa相の複数の結晶相から形成されていることが分かった。
このような複数の結晶相から形成される蛍光体では、その製造過程において、SrGaとGaの共晶反応によって少量の液相が出現し、その液相に基づく自己フラックス効果によって蛍光体表面相が高純度の結晶になったと考えられ、このことにより、上述のように従来に比してより高輝度の発光を示すようになったと考えられる。

Claims (5)

  1. 一般式:Sr(Ga1−xEu1.5y+1で表され、式中のx、yは、0.008<x<0.025、11.5<y<12.5を満たすことを特徴とする硫化物蛍光体。
  2. 複数の結晶相から形成されてなることを特徴とする請求項1に記載の硫化物蛍光体。
  3. 一般式:Sr(Ga1−xEu1.5y+1で表され、式中xが0.008<x<0.025であり、yが11.5<y<12.5である硫化物蛍光体の製造方法であって、
    所定の組成となるように硝酸ガリウムとユーロピウム化合物とを混合して得られた混合液に、炭酸ストロンチウムを秤量して混合し、オキシカルボン酸及びアルコールを添加してゲル化させゲル体を得るゲル体作製工程と、
    上記ゲル体を400℃〜500℃の温度条件で熱処理し、その後大気雰囲気で550℃〜600℃の温度条件で酸化焼成処理して酸化物前駆体の中間体を得る中間体作製工程と、
    上記中間体を大気雰囲気で700℃〜1300℃の温度条件で仮焼成して酸化物前駆体を得る仮焼成工程と、
    上記仮焼成工程で得られた酸化物前駆体を、850℃〜930℃の温度条件で還元硫化処理して焼成する還元焼成工程と
    を有することを特徴とする硫化物蛍光体の製造方法。
  4. 上記焼成工程では、二硫化炭素を含んだ不活性ガス雰囲気下で還元硫化処理することを特徴とする請求項3記載の硫化物蛍光体の製造方法。
  5. 上記仮焼成工程は、
    上記中間体を、大気雰囲気で700℃〜800℃の温度条件で焼成する第1の仮焼成工程と、
    上記第1の仮焼成工程を経て得られた酸化物を、大気雰囲気で1000℃〜1300℃の温度条件で焼成する第2の仮焼成工程と
    を有することを特徴とする請求項3又は4に記載の硫化物蛍光体の製造方法。
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