JP2003301170A - 蛍光体薄膜、その製造方法、およびelパネル - Google Patents

蛍光体薄膜、その製造方法、およびelパネル

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JP2003301170A
JP2003301170A JP2002118473A JP2002118473A JP2003301170A JP 2003301170 A JP2003301170 A JP 2003301170A JP 2002118473 A JP2002118473 A JP 2002118473A JP 2002118473 A JP2002118473 A JP 2002118473A JP 2003301170 A JP2003301170 A JP 2003301170A
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Japan
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thin film
phosphor thin
sulfide
phosphor
alkaline earth
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JP2002118473A
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Inventor
Yoshihiko Yano
義彦 矢野
Tomoyuki Oike
智之 大池
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TDK Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高輝度であり、しかも、色純度が良好なため
にフィルタを用いる必要がなく、かつ、輝度寿命が長
く、フルカラーELパネル用のRGBの各素子に特に適
した蛍光体薄膜を提供する。 【解決手段】 母体材料と発光中心とを含有し、母体材
料が、アルカリ土類元素と、Gaおよび/またはIn
と、硫黄(S)とを少なくとも含有し、さらにAlを含
有してもよい硫化物であるか、これらに加えさらに酸素
(O)を含有するオキシ硫化物であり、母体材料中にお
いて、アルカリ土類元素をAで表し、Ga、Inおよび
AlをBで表したとき、原子比B/Aが、 B/A=2.1〜3.5 である蛍光体薄膜。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、無機EL素子など
の発光層に用いられる蛍光体薄膜およびその製造方法
と、これを用いたELパネルとに関する。
【0002】
【従来の技術】近年、小型または、大型軽量のフラット
パネルディスプレイとして、薄膜EL素子が盛んに研究
されている。黄橙色発光のマンガン添加硫化亜鉛からな
る蛍光体薄膜を用いたモノクロ薄膜ELディスプレイは
図2に示すような薄膜の絶縁層2、4を用いた2重絶縁
型構造で既に実用化されている。図2において、基板1
上には所定パターンの下部電極5が形成されていて、こ
の下部電極5が形成されている基板1上に第1の絶縁層
2が形成されている。また、この第1の絶縁層2上に
は、発光層3、第2の絶縁層4が順次形成されるととも
に、第2の絶縁層4上に前記下部電極5とマトリクス回
路を構成するように上部電極6が所定パターンで形成さ
れている。
【0003】さらに、ディスプレイとしてパソコン用、
TV用、その他表示用に対応するためにはカラー化が必
要不可欠である。硫化物蛍光体薄膜を用いた薄膜ELデ
ィスプレイは、信頼性、耐環境性に優れているが、現在
のところ、赤色、緑色、青色の3原色に発光するEL用
蛍光体の特性が十分でないため、カラー用には不適当と
されている。青色発光蛍光体は、母体材料としてSr
S、発光中心としてCeを用いたSrS:CeやZn
S:Tm、赤色発光蛍光体としてはZnS:Sm、Ca
S:Eu、緑色発光蛍光体としてはZnS:Tb、Ca
S:Ceなどが候補であり研究が続けられている。
【0004】これらの赤色、緑色、青色の3原色に発光
する蛍光体薄膜は発光輝度、効率、色純度に問題があ
り、現在、カラーELパネルの実用化には至っていな
い。特に、青色は、SrS:Ceを用いて、比較的高輝
度が得られてはいるが、フルカラーディスプレー用の青
色としては、輝度が不足し、色度も緑側にシフトしてい
るため、さらによい青色発光層の開発が望まれている。
【0005】これらの課題を解決するため、特開平7−
122364号公報、特開平8−134440号公報、
信学技報EID98−113、19−24ページ、およ
びJpn.J.Appl.Phys.Vol.38、(1999) pp. L1291-1292に
述べられているように、SrGa24 :Ce、CaG
24 :Ceや、BaAl24 :Eu等のチオガレー
トまたはチオアルミネート系の青色蛍光体が開発されて
いる。これら、チオガレート系蛍光体では、色純度の点
では問題ないが、輝度が低く、特に多元組成であるた
め、組成の均一な薄膜を得難い。組成制御性の悪さによ
る結晶性の悪さ、硫黄抜けによる欠陥の発生、不純物の
混入などによって、高品質の薄膜が得られず、そのため
輝度が上がらないと考えられている。特に、チオアルミ
ネートは組成制御性に困難を極める。
【0006】フルカラーELパネルを実現する上では、
青、緑、赤用の蛍光体薄膜を、安定に、低コストで作製
するプロセスが必要であるが、上記したように蛍光体薄
膜の母体材料や発光中心材料の化学的あるいは物理的な
性質が、個々の材料により異なっているために、蛍光体
薄膜の種類によって、製造方法が異なる。したがって、
特定組成の蛍光体薄膜で高輝度が得られるように製膜条
件を設定すると、他の色の蛍光体薄膜では高輝度が実現
できない。そのため、フルカラーのELパネルを製造す
るためには複数種の製膜装置が必要になってしまい、製
造工程の複雑化およびパネル製造コストの高騰を招く。
【0007】また、上記した青、緑、赤のEL蛍光体薄
膜のELスペクトルは、すべてブロードであり、フルカ
ラーELパネルに用いる場合には、パネルとして必要な
RGBを、フィルタを用いてEL蛍光体薄膜のELスペ
クトルから切り出さなければならない。フィルタを用い
ると製造工程が複雑になるばかりか、最も問題なのは輝
度の低下である。フィルタを用いてRGBを取り出す
と、青、緑、赤のEL蛍光体薄膜の輝度が10%から5
0%以上もロスするため、パネルの輝度が低下し、実用
にならない。
【0008】また、ELパネルとして実用化するために
は、長期間にわたって輝度が維持されること、すなわち
輝度寿命が長いことが必要とされる。
【0009】上記した問題を解決するために、高輝度で
あり、しかも、色純度が良好なためにフィルタを用いる
必要がなく、かつ、輝度寿命が長い赤、緑、青の蛍光体
薄膜が求められている。また、このような赤、緑、青の
蛍光体薄膜を、同一の製膜手法や製膜装置を用いて製造
可能とすることが求められている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、高輝
度であり、しかも、色純度が良好なためにフィルタを用
いる必要がなく、かつ、輝度寿命が長く、フルカラーE
Lパネル用のRGBの各素子に特に適した蛍光体薄膜を
提供することである。また、本発明の他の目的は、この
ような蛍光体薄膜を利用したフルカラーELパネルを、
簡易な工程により低コストで製造可能とすることであ
る。
【0011】
【課題を解決するための手段】このような目的は、下記
(1)〜(11)の本発明により達成される。 (1) 母体材料と発光中心とを含有し、母体材料が、
アルカリ土類元素と、Gaおよび/またはInと、硫黄
(S)とを少なくとも含有し、さらにAlを含有しても
よい硫化物であるか、これらに加えさらに酸素(O)を
含有するオキシ硫化物であり、母体材料中において、ア
ルカリ土類元素をAで表し、Ga、InおよびAlをB
で表したとき、原子比B/Aが、2超3.5以下である
蛍光体薄膜。 (2) B/A=2.05〜3.0 である上記(1)の蛍光体薄膜。 (3) 母体材料中において、酸素と硫黄との合計に対
する酸素の原子比O/(S+O)が、 O/(S+O)=0.01〜0.85 である上記(1)または(2)の蛍光体薄膜。 (4) 母体材料中において、酸素と硫黄との合計に対
する酸素の原子比O/(S+O)が、 O/(S+O)=0.1〜0.85 である上記(1)または(2)の蛍光体薄膜。 (5) 下記組成式で表される上記(1)〜(4)のい
ずれかの蛍光体薄膜。 組成式 Axyzw :M [但し、Mは発光中心となる金属元素を表し、AはM
g、Ca、SrおよびBaから選ばれた少なくとも一つ
の元素であり、Bは、Ga、InおよびAlから選択さ
れた少なくとも一つの元素であり、BにはGaおよび/
またはInが必ず含まれる。x=1〜5、y=1〜1
5、z=3〜30、w=3〜30である] (6) 前記発光中心は希土類元素である上記(1)〜
(5)のいずれかの蛍光体薄膜。 (7) 上記(1)〜(6)のいずれかの蛍光体薄膜を
有するELパネル。 (8) 上記(1)〜(6)のいずれかの蛍光体薄膜を
製造する方法であって、硫化物薄膜を形成した後、酸化
雰囲気中でアニール処理を施してオキシ硫化物薄膜とす
る工程を有する蛍光体薄膜の製造方法。 (9) 上記(1)〜(6)のいずれかの蛍光体薄膜を
製造する方法であって、蒸発源として、アルカリ土類元
素の硫化物または金属を含有するものと、Ga硫化物お
よび/またはIn硫化物を含有するものとを少なくとも
用い、反応性ガスとして酸素ガスを用いる反応性蒸着法
により、オキシ硫化物薄膜を形成する工程を有する蛍光
体薄膜の製造方法。 (10) 上記(1)〜(6)のいずれかの蛍光体薄膜
を製造する方法であって、蒸発源として、アルカリ土類
元素の硫化物または金属を含有するものと、Ga硫化物
および/またはIn硫化物を含有するものとを少なくと
も用いる蒸着法により硫化物薄膜を形成した後、酸化雰
囲気中でアニール処理を施してオキシ硫化物薄膜とする
工程を有する蛍光体薄膜の製造方法。 (11) アルカリ土類硫化物を含有する蒸発源に、発
光中心が含有されている上記(9)または(10)の蛍
光体薄膜の製造方法。
【0012】
【作用】先ず発明者らは、アルカリ土類チオアルミネー
トに比べ組成制御が容易なアルカリ土類チオガレート、
アルカリ土類チオインデートを、EL用の蛍光体として
薄膜化した。得られた薄膜を用いてEL素子を作製した
が、所望の発光を得ることができなかった。得られた薄
膜の発光輝度は、高々2cd/m2 であり、ELパネルに
応用するためには、高輝度化が必要であった。
【0013】この結果を踏まえて、この組成系の蛍光体
薄膜について研究を重ねた結果、本発明に至った。すな
わち、アルカリ土類チオガレートやアルカリ土類チオイ
ンデートを主体とする母体材料において、アルカリ土類
元素に対するGaまたはInの原子比が所定範囲となる
ように制御することにより、臨界的に著しく高い輝度が
得られることを見いだした。また、母体材料に所定量の
酸素を添加してオキシ硫化物とすることにより、飛躍的
に輝度が上がり、しかも、輝度寿命が著しく長くなるこ
とを見いだした。
【0014】本発明では、このような母体材料に、発光
色に対応する各種発光中心を添加することにより、それ
ぞれ色純度の高い赤、緑、青の光を高輝度で放射する蛍
光体薄膜が得られる。しかも、これらの蛍光体薄膜は、
いずれも反応性蒸着法を用いて形成できるので、本発明
はフルカラーELパネルの低コスト化に有効である。
【0015】
【発明の実施の形態】以下本発明の実施形態について詳
細に説明する。
【0016】本発明の蛍光体薄膜は、母体材料と発光中
心とを含有する。この母体材料は、アルカリ土類元素
と、Gaおよび/またはInと、硫黄(S)とを含有
し、さらにAlを含有していてもよい硫化物であるか、
または、これらの元素に加えて酸素(O)も含有するオ
キシ硫化物である。
【0017】本発明の蛍光体薄膜は、結晶化しているこ
とが好ましいが、明確な結晶構造を有しない非晶質状態
であってもよい。本発明の蛍光体薄膜に含まれる結晶と
しては、アルカリ土類元素をAで表し、Ga、Inおよ
びAlをBで表すと、A528 、A427 、A22
5 、AB24 、AB47 、A41425 、AB8
13 、AB1219 の1種または2種以上であることが好
ましく、特にAB24結晶が含まれることが好ましい。
蛍光体薄膜中では、結晶中のSの一部をOが置換してい
てもよい。
【0018】本明細書においてアルカリ土類元素とは、
Be、Mg、Ca、Sr、BaおよびRaのいずれかで
ある。これらのなかでもMg、Ca、SrおよびBaが
好ましく、特にBaおよびSrが好ましい。
【0019】また、アルカリ土類元素と組み合わせる元
素はGaおよび/またはInであるか、Gaおよび/ま
たはInに加えAlであり、これらの元素の組み合わせ
は任意である。
【0020】本発明の蛍光体薄膜は、 組成式 Axyzw :M で表されるものであることが好ましい。上記組成式にお
いて、Mは発光中心となる金属元素を表し、Aは、M
g、Ca、SrおよびBaから選ばれた少なくとも一つ
の元素を表し、Bは、Ga、InおよびAlから選択さ
れた少なくとも一つの元素であり、BにはGaおよび/
またはInが必ず含まれる。すなわちBは、Gaおよび
/またはInであるか、GaおよびAlであるか、In
およびAlであるか、Ga、InおよびAlである。
【0021】元素B中におけるAlの原子比は、0.3
以下であることが好ましい。Alの原子比が大きすぎる
と、蛍光体薄膜の組成制御が困難となるほか、アルカリ
土類チオガレートやアルカリ土類チオインデートの組成
を最適化することにより高輝度および長寿命を得るとい
う本発明の効果が、不十分となる。
【0022】上記式において、x、y、z、wは、元素
A、B、O、Sのモル比を表す。x、y、zおよびw
は、好ましくは x=1〜5 y=1〜15 z=3〜30 w=3〜30 である。
【0023】アルカリ土類元素をAで表し、Ga、In
およびAlをBで表したとき、母体材料において、アル
カリ土類元素に対するGa、InおよびAlの合計の原
子比B/Aは、2超3.5以下であり、好ましくは3.
0以下である。B/Aをこの範囲とすることにより、臨
界的に著しく高い輝度が得られる。ただし、組成ばらつ
き(B/Aのばらつき)による輝度ばらつきを小さくす
るためには、B/Aを好ましくは2.05以上とし、よ
り好ましくは2.1以上とすることが望ましい。
【0024】母体材料中における、酸素と硫黄との合計
に対する酸素の原子比O/(S+O)、すなわち上記組
成式におけるz/(w+z)は、好ましくは0.01〜
0.85、より好ましくは0.01〜0.5、さらに好
ましくは0.05〜0.5、最も好ましくは0.1〜
0.4である。酸素量をこのように制御することによ
り、臨界的に輝度寿命が長くなるとともに、高輝度が得
られる。
【0025】なお、Axyzwが化学量論組成の化合
物であるとき、この化合物はx{A(O,S)}と(y
/2){B2(O,S)3}とからなると考えることがで
きる。したがって、z+w=x+3y/2のときがほぼ
化学量論組成である。高輝度の発光を得るためには蛍光
体薄膜の組成が化学量論組成付近であることが好まし
く、具体的には 0.9≦(x+3y/2)/(z+w)≦1.1 であることが好ましい。
【0026】蛍光体薄膜の組成は、蛍光X線分析(XR
F)、X線光電子分析(XPS)、TEM−EDS(Tr
ansmission Electron Microscopy - Energy Dispersive
X-ray Spectroscopy)等により確認することができ
る。
【0027】酸素は、蛍光体薄膜の発光輝度を飛躍的に
高める効果がある。また、発光素子は発光時間の経過と
共に輝度が劣化するため、寿命が存在するが、酸素を添
加することにより、寿命特性を向上させ、輝度劣化を防
止することができる。硫化物に酸素が添加されると、こ
の母体材料の成膜時または、成膜後のアニール等の後処
理時に結晶化が促進され、希土類元素等の発光中心が化
合物結晶場内で有効な遷移を有し、高輝度で安定な発光
が得られるものと考えられる。また、母体材料自体も純
粋な硫化物に比べ、空気中で安定になる。これは、膜中
の硫化物成分を安定な酸化物成分が大気から保護するた
めと考えられる。
【0028】発光中心として含有される元素Mは、M
n、Cu等の遷移金属元素、希土類金属元素、Pb、お
よびBiから選択される1種または2種以上の元素を挙
げることができる。希土類元素は、少なくともSc、
Y、La、Ce、Pr、Nd、Gd、Tb、Ho、E
r、Tm、Lu、Sm、Eu、DyおよびYbから選択
されるが、青色蛍光体としては、Eu、およびCe、緑
色蛍光体としては、Eu、Ce、TbおよびHo、赤色
蛍光体としては、Pr、Eu、Sm、YbおよびNdの
いずれかが好ましい。これらのなかでも母体材料との組
み合わせでEu、Pr、TbおよびSmのいずれかが好
ましく、Eu、Smがより好ましく、Euが最も好まし
い。発光中心は、アルカリ土類元素に対して0.1〜1
0原子%添加することが好ましい。
【0029】前述したように、酸素が添加された蛍光体
薄膜は、希土類元素等の発光中心が化合物結晶場内で有
効な遷移を有し、高輝度で安定な発光が得られるものと
考えられる。この効果は、結晶場に敏感な発光中心での
み顕著であり、発光中心がEu2+である場合に特に著し
い。
【0030】また、アルカリ土類チオガレートとして、
SrGa24:Ceが青色用の蛍光体として研究されて
きたが、Ceは、SrS:Ceでも問題となっているよ
うに、母体材料中においてCe3+とCe4+とが共存して
しまう。そのため、発光スペクトルが単一のピークをも
たなくなるので、色制御が難しい。これに対し、Eu添
加の場合には、単一の発光ピークが得られる。なお、酸
素添加による輝度向上効果がCe添加の場合に低いの
は、Ce3+とCe4+との共存が関係しているとも考えら
れる。
【0031】このような蛍光体薄膜を得るには、たとえ
ば、以下の方法によることが好ましい。ここでは、Ba
xGayzw :Eu蛍光体薄膜を例にとり説明する。
【0032】第1の方法では、Euを添加したバリウム
ガレートペレットを蒸着源とし、反応性ガスとしてH2
Sガスを用いた反応性蒸着により蛍光体薄膜を形成す
る。ここでH2Sガスは、膜中に硫黄を導入するために
用いている。
【0033】第2の方法では、多元蒸着法を用いる。多
元蒸着法としては、たとえば、 (1)蒸発源として、Euを添加した酸化バリウムペレ
ットおよび酸化ガリウムペレットを用い、反応性ガスと
してH2Sガスを用いた2元反応性蒸着; (2)蒸発源として、Euを添加した硫化バリウムペレ
ットおよび酸化ガリウムペレットを用い、反応性ガスを
用いない2元真空蒸着; (3)蒸発源として、Euを添加した酸化バリウムペレ
ットおよび硫化ガリウムペレットを用い、反応性ガスを
用いない2元真空蒸着; (4)蒸発源として、Euを添加した硫化バリウムペレ
ットおよび硫化ガリウムペレットを用い、反応性ガスと
してO2 ガスを用いた2元反応性蒸着を用いることが好
ましい。
【0034】また、上記方法(1)におけるEuを添加
した酸化バリウムペレットに替えて、また、上記方法
(4)におけるEuを添加した硫化バリウムペレットに
替えて、金属Euおよび金属Baを蒸発源としてもよ
い。
【0035】第2の方法のうち特に好ましいのは、真空
槽内に、硫化ガリウム蒸発源と、発光中心が添加された
硫化バリウム蒸発源とを少なくとも配置してO2 ガスを
導入し、これらの蒸発源の各々から硫化ガリウムおよび
硫化バリウムを蒸発させ、蒸発物質が基板上に堆積する
際に酸素を結合させてオキシ硫化物薄膜を得る方法であ
る。
【0036】第3の方法では、アニール処理により蛍光
体薄膜中に酸素を導入する。すなわち、硫化物薄膜を形
成後、酸化雰囲気中でアニール処理を施してオキシ硫化
物薄膜とする。
【0037】第3の方法において用いる蒸着法として
は、たとえば (1)蒸発源として、Euを添加した硫化バリウムペレ
ットおよび硫化ガリウムペレットを用い、反応性ガスと
してH2Sガスを用いた2元反応性蒸着、 (2)蒸発源として、Euを添加した硫化バリウムペレ
ットおよび硫化ガリウムペレットを用い、反応性ガスを
用いない2元反応性蒸着、 (3)蒸発源として、Euを添加したバリウムチオガレ
ートペレットを用いる2元真空蒸着、 (4)蒸発源として、Euを添加したバリウムチオガレ
ートペレットを用い、反応性ガスとしてH2Sガスを用
いた2元反応性蒸着が好ましい。
【0038】また、上記方法(1)および(2)におけ
るEuを添加した硫化バリウムペレットに替えて、金属
Euおよび金属Baを蒸発源としてもよい。
【0039】第3の方法におけるアニールは、酸素中ま
たは空気中などの酸化雰囲気中で行う。アニール雰囲気
中の酸素濃度は、空気中の酸素濃度以上であることが好
ましい。また、アニール温度は、好ましくは500℃〜
1000℃、より好ましくは600℃〜800℃の範囲
内に設定する。このアニールにより、蛍光体薄膜中に酸
素が導入されるとともに、蛍光体薄膜の結晶性が著しく
向上する。
【0040】第3の方法のうち特に好ましいのは、蒸着
法として上記方法(1)または(2)を用いる方法であ
る。
【0041】上記各方法のうち最も好ましいのは、第3
の方法である。第3の方法は、蛍光体薄膜中における酸
素量の制御が容易であるほか、結晶性の高い蛍光体薄膜
を得やすい。
【0042】発光中心の元素は、金属、フッ化物、酸化
物または硫化物の形で蒸発源に添加する。蒸発源の発光
中心含有量と、その蒸発源を用いて形成された薄膜中の
発光中心含有量とは異なるので、薄膜中において所望の
含有量となるように蒸発源中の発光中心含有量を調整す
る。
【0043】上記各方法では、発光中心をアルカリ土類
硫化物に添加しておくことが好ましく、特に、アルカリ
土類硫化物(たとえばBaS)蒸発源中において発光中
心が硫化物(たとえばEuS)として存在していること
が好ましい。アルカリ土類硫化物には、数 mol%以下の
発光中心を均一に添加することが可能である。発光中心
を添加したアルカリ土類硫化物からなるペレット、粉
体、圧粉体、固まりなどを蒸発させると、発光中心は、
アルカリ土類硫化物とともに蒸発して基板上に達するの
で、形成される薄膜中に微量の発光中心を制御性よく添
加できる。すなわちアルカリ土類硫化物は不純物物質
(発光中心)のキャリアとして働くため、薄膜中へ1 m
ol%以下の発光中心を精度よく、均一に添加することが
できる。
【0044】蒸発源として用いるアルカリ土類硫化物
は、化学量論組成に対し10%程度偏倚していてもよい
が、アルカリ土類硫化物に発光中心を加えて蒸発源を作
製する際に発光中心の添加量の精度を上げるためには、
できるだけ化学量論組成に近いことが好ましい。
【0045】上記各方法において、蒸着中の基板温度
は、室温〜600℃、好ましくは、100℃〜300℃
とすればよい。基板温度が高すぎると、母体材料の薄膜
表面の凹凸が激しくなり、薄膜中にピンホールが発生
し、EL素子に電流リークの問題が発生してくる。ま
た、薄膜が褐色に色づいたりもする。このため、上述の
温度範囲が好ましい。
【0046】形成されたオキシ硫化物薄膜は、高結晶性
の薄膜であることが好ましい。結晶性の評価は、たとえ
ばX線回折により行うことができる。結晶性を上げるた
めには、できるだけ基板温度を高温にする。また、上記
した酸化雰囲気中でのアニールに限らず、真空中、N2
中、Ar中、S蒸気中、H2S中でのアニールも結晶性
向上に効果的である。
【0047】蛍光体薄膜の膜厚としては、特に制限され
るものではないが、厚すぎると駆動電圧が上昇し、薄す
ぎると発光効率が低下する。具体的には、蛍光体材料に
もよるが、好ましくは100〜2000nm、特に150
〜700nm程度である。
【0048】蒸着時の圧力は好ましくは1.33×10
-4 〜1.33×10-1 Pa(1×10-6 〜1×10-3
Torr)であり、酸素を添加するためのO2 ガス、硫化を
促進するためのH2Sガスの導入量を共に調整して、圧
力を6.65×10-3 〜6.65×10-2 Pa(5×1
-5 〜5×10-4 Torr)に保つことがより好ましい。
圧力がこれより高くなると、Eガンの動作が不安定とな
り、組成制御が極めて困難になってくる。H2Sガス、
またはO2ガスの導入量としては、真空系の能力にもよ
るが5〜200SCCM、特に10〜30SCCMが好ましい。
【0049】また、必要により蒸着時に基板を移動、ま
たは回転させてもよい。基板を移動、回転させることに
より、膜組成が均一となり、膜厚分布のバラツキが少な
くなる。
【0050】基板を回転させる場合、基板の回転速度と
しては、好ましくは10回/min 以上、より好ましくは
10〜50回/min 、特に10〜30回/min 程度であ
る。基板の回転速度をこれ以上速くしようとすると、真
空槽の気密を保つためのシールが難しくなる。また、遅
すぎると槽内の膜厚方向に組成ムラが生じ、作製した蛍
光体薄膜の特性が低くなる。基板を回転させる回転手段
は、モータ、油圧回転機構等の動力源と、ギア、ベル
ト、プーリー等とを組み合わせた動力伝達機構・減速機
構等を用いた公知の回転機構により構成することができ
る。
【0051】蒸発源や基板を加熱する加熱手段は所定の
熱容量、反応性等を備えたものであればよく、たとえば
タンタル線ヒータ、シースヒータ、カーボンヒータ等が
挙げられる。加熱手段による加熱温度は、好ましくは1
00〜1400℃程度、温度制御の精度は、1000℃
で±1℃、好ましくは±0.5℃程度である。
【0052】本発明の発光層を形成するための装置の構
成例の一つを図1に示す。ここでは、硫化ガリウムと硫
化バリウムとを蒸発源とし、酸素を導入しつつ、酸素添
加バリウムチオガレート:Euを作製する方法を例にと
る。図において、真空槽11内には、発光層が形成され
る基板12と、EB蒸発源14、15が配置されてい
る。
【0053】硫化ガリウムと硫化バリウムの蒸発手段と
なるEB(エレクトロンビーム)蒸発源14、15は、
硫化ガリウム14aおよび発光中心の添加された硫化バ
リウム15aが納められる”るつぼ”40、50と、電
子放出用のフィラメント41a、51aを内蔵した電子
銃41、51とを有する。電子銃41、51内には、ビ
ームをコントロールする機構が内蔵されている。この電
子銃41、51には、交流電源42、52およびバイア
ス電源43、53が接続されている。
【0054】電子銃41、51からは電子ビームがコン
トロールされ、あらかじめ設定したパワーで、るつぼ4
0、50に照射され、発光中心の添加された硫化ガリウ
ム14aおよび硫化バリウム15aを所定の比率で蒸発
させることができる。また、一つのEガンで多元同時蒸
着を行う多元パルス蒸着法といわれる方法を用いてもよ
い。
【0055】真空槽11は、排気ポート11aを有し、
この排気ポートからの排気により、真空槽11内を所定
の真空度にできるようになっている。また、この真空槽
11は、酸素ガスや硫化水素ガスを導入する反応性ガス
導入ポート11bを有している。
【0056】基板12は基板ホルダー12aに固定さ
れ、この基板ホルダー12aの回転軸12bは図示しな
い回転軸固定手段により、真空槽11内の真空度を維持
しつつ、外部から回転自在に固定されている。そして、
図示しない回転手段により、必要に応じて所定の回転速
度で回転可能なようになっている。また、基板ホルダー
12aには、ヒーター線などにより構成される加熱手段
13が密着・固定されていて、基板を所望の温度に加
熱、保持できるようになっている。
【0057】このような装置を用い、EB蒸発源14、
15から蒸発させた硫化ガリウム蒸気と硫化バリウム蒸
気とを基板12上に堆積するとともに、導入した酸素と
結合させ、オキシ硫化物薄膜を形成する。そのとき、必
要により基板12を回転させることにより、堆積される
薄膜の組成と膜厚分布をより均一なものとすることがで
きる。なお、上記例ではEB蒸発源を2つ用いる場合を
示して説明したが、蒸発源はEB蒸発源に限定されるも
のではなく、用いる材料や条件により抵抗加熱蒸発源等
の他の蒸発源を用いてもよい。
【0058】以上述べたように、本発明の蛍光体薄膜材
料および蒸着による製造方法によると、高輝度に発光
し、寿命が長い蛍光体薄膜が容易に形成可能となる。
【0059】本発明の蛍光体薄膜を用いて無機EL素子
を得るには、たとえば、図2に示すような構造とすれば
よい。
【0060】図2は、本発明の蛍光体薄膜を発光層3に
用いた無機EL素子の一例である2重絶縁型構造の素子
を示す斜視図である。図2において、基板1上には所定
パターンの下部電極5が形成されていて、この下部電極
5上に厚膜の第1の絶縁層(厚膜誘電体層)2が形成さ
れている。また、この第1の絶縁層2上には、発光層
3、第2の絶縁層(薄膜誘電体層)4が順次形成される
とともに、第2の絶縁層4上に前記下部電極5とマトリ
クス回路を構成するように上部電極6が所定パターンで
形成されている。
【0061】基板1、電極5、6、第1の絶縁層2、第
2の絶縁層4のそれぞれの間には、密着を上げるための
層、応力を緩和するための層、反応を防止する層、など
中間層を設けてもよい。また厚膜表面は研磨したり、平
坦化層を用いるなどして平坦性を向上させてもよい。
【0062】基板は、厚膜形成温度、発光層の形成温
度、発光層のアニール温度に耐えうる耐熱温度ないし融
点が600℃以上、好ましくは700℃以上、特に80
0℃以上の材料から構成され、所定の強度を維持できる
ものであれば特に限定されるものではない。具体的に
は、ガラス基板や、アルミナ(Al23 )、フォルス
テライト(2MgO・SiO2 )、ステアタイト(Mg
O・SiO2 )、ムライト(3Al23 ・2SiO
2 )、ベリリア(BeO)、窒化アルミニウム(Al
N)、窒化シリコン(Si34)、炭化シリコン(Si
C+BeO)等のセラミック基板、結晶化ガラスなどの
耐熱性ガラス基板を挙げることができる。これらのなか
でも特にアルミナ基板、結晶化ガラス基板が好ましく、
熱伝導性が必要な場合にはベリリア、窒化アルミニウム
または炭化シリコンからなる基板が好ましい。
【0063】また、このほかに、石英基板、熱酸化シリ
コンウエハーを用いることができ、チタン、ステンレ
ス、インコネル、鉄系などの金属基板を用いることもで
きる。金属等の導電性基板を用いる場合には、内部に下
部電極を設けた絶縁性厚膜を基板上に形成した構造が好
ましい。
【0064】厚膜誘電体層(第1の絶縁層)には、公知
の誘電体厚膜材料から比較的誘電率の大きな材料を選択
して用いることが好ましい。このような材料としては、
たとえばチタン酸鉛系、ニオブ酸鉛系、チタン酸バリウ
ム系等の材料が好ましい。
【0065】厚膜誘電体層の抵抗率としては、108 Ω
・cm以上、特に1010 〜1018 Ω・cm程度である。ま
た、その比誘電率εとしては、好ましくはε=100〜
10000程度である。膜厚としては、5〜50μm が
好ましく、10〜30μm が特に好ましい。
【0066】厚膜誘電体層の形成方法は特に限定されな
いが、10〜50μm 厚の膜が比較的容易に得られる方
法、たとえばゾルゲル法、印刷焼成法などが好ましい。
【0067】印刷焼成法による場合には、材料の粒度を
適当に揃え、バインダーと混合し、適当な粘度のペース
トとする。このペーストを用いてスクリーン印刷法によ
り基板上に塗膜を形成し、乾燥させる。この塗膜を適当
な温度で焼成し、厚膜を得る。
【0068】薄膜誘電体層(第2の絶縁層)の構成材料
としては、たとえば酸化シリコン(SiO2 )、窒化シ
リコン(SiN)、酸化タンタル(Ta25 )、チタ
ン酸ストロンチウム(SrTiO3 )、酸化イットリウ
ム(Y23 )、チタン酸バリウム(BaTiO3 )、
チタン酸鉛(PbTiO3 )、チタン酸ジルコン酸鉛
(PZT)、ジルコニア(ZrO2 )、シリコンオキシ
ナイトライド(SiON)、アルミナ(Al23 )、
ニオブ酸鉛、Pb(Mg1/3Ni2/3)O3とPbTiO3
との混合物(PMN−PT)が好ましい。薄膜誘電体層
は、これらの少なくとも1種を含有する層の単層または
多層からなる構造とすればよい。薄膜誘電体層を形成す
る方法としては、蒸着法、スパッタ法、CVD法など既
存の方法を用いればよい。薄膜誘電体層の膜厚として
は、好ましくは50〜1000nm、特に100〜500
nm程度である。
【0069】下部電極は、基板と第1の絶縁層との間ま
たは第1の絶縁層内に形成される。下部電極は、発光層
のアニール時に高温にさらされ、また、第1の絶縁層を
厚膜から構成する場合には、第1の絶縁層形成時にも高
温にさらされる。そのため、下部電極構成材料は耐熱性
に優れることが好ましく、具体的には、主成分としてパ
ラジウム、ロジウム、イリジウム、レニウム、ルテニウ
ム、白金、タンタル、ニッケル、クロム、チタン等の1
種または2種以上を含有することが好ましい。
【0070】また、上部電極は、通常、発光を基板と反
対側から取り出すため、所定の発光波長域で透光性を有
する透明な電極が好ましい。透明電極は、基板および絶
縁層が透光性を有するものであれば、発光光を基板側か
ら取り出すことが可能なため下部電極に用いてもよい。
この場合、ZnO、ITOなどの透明電極を用いること
が特に好ましい。ITOは、通常In23 とSnOと
を化学量論組成で含有するが、O量は多少これから偏倚
していてもよい。In23 に対するSnO2の混合比
は、1〜20質量%、さらには5〜12質量%が好まし
い。また、IZOでのIn23 に対するZnOの混合
比は、通常、12〜32質量%程度である。
【0071】また、電極は、シリコンを主成分として含
有するものでも良い。このシリコン電極は、多結晶シリ
コン(p−Si)であっても、アモルファス(a−S
i)であってもよく、必要により単結晶シリコンであっ
てもよい。
【0072】シリコン電極は、主成分のシリコンに加
え、導電性を確保するため不純物をドーピングする。不
純物として用いられるドーパントは、所定の導電性を確
保しうるものであればよく、シリコン半導体に用いられ
ている通常のドーパントを用いることができる。具体的
には、B、P、As、SbおよびAlが好ましい。ドー
パントの濃度としては0.001〜5at%程度が好まし
い。
【0073】これらの材料で電極を形成する方法として
は、蒸着法、スパッタ法、CVD法、ゾルゲル法、印刷
焼成法など既存の方法を用いればよいが、特に、基板上
に内部に電極を有した厚膜を設けた構造とする場合、誘
電体厚膜と同じ方法が好ましい。
【0074】電極の好ましい抵抗率としては、発光層に
効率よく電界を付与するため、1Ω・cm以下、特に0.
003〜0.1Ω・cmである。電極の膜厚としては、形
成する材料にもよるが、好ましくは50〜2000nm、
特に100〜1000nm程度である。
【0075】本発明の蛍光体薄膜は各種ELパネルに適
用可能であり、例えば、ディスプレイ用のフルカラーパ
ネル、マルチカラーパネル、部分的に3色を表示するパ
ーシャリーカラーパネルに好適である。
【0076】
【実施例】以下、本発明の具体的実施例を示し、本発明
をさらに詳細に説明する。
【0077】実施例1 本発明の蛍光体薄膜を用いたEL素子を作製した。基
板、厚膜絶縁層とも同じ材料であるBaTiO3 系の誘
電体材料(誘電率5000)を用い、下部電極としてP
d電極を用いた。まず、基板のグリーンシートを作製
し、この上に下部電極、厚膜誘電体層をスクリーン印刷
した後、全体を焼成した。次いで、表面を研磨し、30
μm 厚の厚膜誘電体層付き基板を得た。さらに、この上
にBaTiO 3 膜をスパッタリングにより400nm厚に
形成し、700℃の空気中でアニールし、複合基板とし
た。
【0078】この複合基板上に、Al23 膜(50nm
厚)/ZnS膜(200nm厚)/蛍光体薄膜(300nm
厚)/ZnS膜(200nm厚)/Al23 膜(50nm
厚)からなる積層構造体を形成した。蛍光体薄膜の両側
に設けた各薄膜は、EL素子として安定に発光させるた
めのものである。
【0079】蛍光体薄膜は、図1に示す構成の蒸着装置
を用い、以下の手順で形成した。ただし、EB蒸発源1
4に替えて抵抗加熱蒸発源を用いた。
【0080】EuSを5 mol%添加したSrS粉を入れ
たEB蒸発源15、Ga23 粉を入れた抵抗加熱蒸発
源(14)をH2Sガスを導入した真空槽11内に設
け、それぞれの源より同時に蒸発させ、400℃に加熱
し、回転させた基板上に蛍光体薄膜を成膜した。各々の
蒸発源の蒸発速度は、蛍光体薄膜の成膜速度が1 nm/s
ec となるように調節した。H2Sガスの導入速度は20
SCCMとした。このようにして形成した蛍光体薄膜を含む
前記積層構造体を、750℃の空気中で10分間アニー
ルした。
【0081】また、組成測定のために、Si基板上にも
前記積層構造体を形成した後、アニールを行った。この
積層構造体の形成条件およびアニール条件は、EL素子
中の上記積層構造体と同じとした。この積層構造体中の
蛍光体薄膜を蛍光X線分析により組成分析した結果、原
子比(任意単位)で Sr: 5.91、 Ga:18.93、 O :11.52、 S :48.81、 Eu: 0.33 であった。すなわち、SrxGayzw :Euにおけ
る原子比は、 Ga/Sr=y/x=3.20、 O/(S+O)=z/(w+z)=0.191、 (x+3y/2)/(z+w)=1.04 であった。
【0082】さらに、前記積層構造体上にITO酸化物
ターゲットを用いたRFマグネトロンスパッタリング法
により、基板温度250℃で、膜厚200nmのITO透
明電極を形成し、EL素子を完成した。
【0083】得られたEL素子の2つの電極間に1kHz
のパルス幅50μsの電界を印加することにより、23
00cd/m2 の緑色発光輝度が再現良く得られた。図3
に発光スペクトルを示す。
【0084】実施例2 実施例1において、Euに替えてTb を用いたとこ
ろ、輝度53cd/m2 の緑の発光が得られた。
【0085】実施例3 実施例1において、Srに替えて、あるいはSrと共に
Mg、Ca、Baの1種または2種以上をそれぞれ用い
たところ、ほぼ同様な結果が得られた。この場合、青緑
色の発光が得られた。
【0086】なお、上記実施例2〜3でそれぞれ形成し
た蛍光体薄膜では、前記組成式におけるy/xは2.2
〜3.0の範囲にあり、z/(w+z)は0.13〜
0.33の範囲にあり、(x+3y/2)/(z+w)
は0.9〜1.1の範囲にあった。
【0087】実施例4 Gaに替えてInを用いて以下の手順で蛍光体薄膜を形
成したほかは実施例1と同様にして、EL素子を作製し
た。
【0088】図1の蒸着装置において、EB蒸発源14
に替えて抵抗加熱蒸発源を用いた。Euを5 mol%添加
したSrS粉を入れたEB蒸発源15、In23 粉を
入れた抵抗加熱蒸発源(14)を、O2ガスを導入した
真空槽11内に設け、それぞれの源より同時に蒸発さ
せ、400℃に加熱し、回転させた基板上に蛍光体薄膜
を成膜した。各々の蒸発源の蒸発速度は、薄膜の成膜速
度が1 nm/sec になるように調節した。O2 ガスの導
入速度は10SCCMとした。アニールは、750℃のN2
ガス中で10分間行った。
【0089】また、組成測定のために、Si基板上にも
蛍光体薄膜を含む積層構造体を形成した後、アニールを
行った。この積層構造体の形成条件およびアニール条件
は、EL素子中の積層構造体と同じとした。この積層構
造体中の蛍光体薄膜を蛍光X線分析により組成分析した
結果、原子比(任意単位)で Sr: 5.48、 In:16.81、 O : 6.65、 S :52.84、 Eu: 0.28 であった。すなわち、SrxInyzw :Euにおけ
る原子比は、 Ga/Sr=y/x=3.07、 O/(S+O)=z/(w+z)=0.111、 (x+3y/2)/(z+w)=0.94 であった。
【0090】得られたEL素子に対し実施例1と同様に
して発光特性を測定したところ、30cd/m2 の赤色発
光輝度が再現良く得られた。図4に発光スペクトルを示
す。
【0091】実施例5 蛍光体薄膜をアニールする際に、温度、雰囲気および湿
度の少なくとも1種を変更することによりO/(S+
O)が表1に示す値となるように制御したほかは実施例
1と同様にして、EL素子を作製した。
【0092】これらのEL素子を実施例1と同条件で連
続駆動し、初期の輝度と、輝度が半減するまでの時間
(輝度半減寿命)とを調べた。結果を表1に示す。
【0093】
【表1】
【0094】表1から、O/(S+O)が0.1以上で
あると、初期輝度が特に高くなり、かつ、発光寿命が十
分に長くなることがわかる。なお、各EL素子の蛍光体
薄膜は、組成式SrxGayzw :Euにおいて、y
/xが2.2〜2.7であり、(x+3y/2)/(z
+w)が0.9〜1.1であった。蛍光体薄膜の組成
は、輝度評価後に素子断面をTEM−EDSで分析する
ことにより測定した。
【0095】実施例6 原子比Ga/Srが図5に示す値となるように蛍光体薄
膜を形成したほかは実施例1と同様にして、EL素子を
作製した。原子比Ga/Srは、EB蒸発源からの蒸発
速度を制御することにより変更した。これらのEL素子
について、実施例1と同様にして輝度を測定した。結果
を表2および図5に示す。
【0096】
【表2】
【0097】表2および図5から、Ga/Srを化学量
論組成である2より大きくすることにより、臨界的に高
輝度が得られることがわかる。なお、各EL素子の蛍光
体薄膜は、組成式SrxGayzw :Euにおいて、
z/(w+z)が0.14〜0.27であり、(x+3
y/2)/(z+w)が0.9〜1.1であった。蛍光
体薄膜の組成は、輝度評価後に素子断面をTEM−ED
Sで分析することにより測定した。
【0098】なお、TEM−EDSによる分析の結果、
本実施例および上記各実施例で形成した蛍光体薄膜は結
晶化しており、主な結晶相はAB24であった。
【0099】
【発明の効果】本発明の蛍光体薄膜は、赤、緑、青の発
光が可能であり、しかも、良好な色純度が得られるた
め、フルカラーELパネルや多色ELパネルに適用する
場合、フィルタを用いなくてすむ。また、本発明では、
蛍光体薄膜中におけるアルカリ土類元素に対するGaま
たはInの原子比を制御することにより、著しく高い輝
度を実現できる。さらに、本発明では、蛍光体薄膜中の
酸素含有量を制御することにより、輝度を高く、かつ輝
度寿命を長くできる。したがって、本発明により高輝度
かつ長寿命でかつ安価なELパネルが実現するので、本
発明は産業上の利用価値が大きい。
【0100】本発明の蛍光体薄膜は、アルカリ土類チオ
アルミネートに比べ組成制御が容易なアルカリ土類チオ
ガレートおよび/またはアルカリ土類チオインデートを
主成分とするため、高輝度が再現性よく得られ、輝度の
ばらつきが少なく、歩留まりが高い。
【0101】また、本発明では、化学的あるいは物理的
性質が類似した材料を用いて赤、緑、青の各色を発光す
る蛍光体薄膜が得られる。したがって、同一の製膜手法
や製膜装置を用いて各色の蛍光体薄膜を形成できるの
で、フルカラーELパネルの製造工程を簡略化すること
ができ、製造コストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の製造方法に用いる蒸着装置の構成例を
示す概略断面図である。
【図2】2重絶縁型構造の無機EL素子の一部を切り出
して示す斜視図である。
【図3】実施例1のEL素子の発光スペクトルを示した
グラフである。
【図4】実施例4のEL素子の発光スペクトルを示した
グラフである。
【図5】実施例6で作製したEL素子について、蛍光体
薄膜の原子比Ga/Srと輝度との関係を示すグラフで
ある。
【符号の説明】
1 基板 2 第1の絶縁層(厚膜誘電体層) 3 発光層 4 第2の絶縁層(薄膜誘電体層) 5 下部電極 6 上部電極(透明電極) 11 真空槽 12 基板 13 加熱手段 14 EB蒸発源 15 EB蒸発源
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) H05B 33/14 H05B 33/14 Z Fターム(参考) 3K007 AB02 AB04 AB11 AB18 BA06 DA02 DA05 DB01 DC04 EC02 FA01 4H001 CA04 CF02 XA08 XA12 XA13 XA16 XA20 XA31 XA38 XA49 XA56 YA00

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 母体材料と発光中心とを含有し、 母体材料が、アルカリ土類元素と、Gaおよび/または
    Inと、硫黄(S)とを少なくとも含有し、さらにAl
    を含有してもよい硫化物であるか、これらに加えさらに
    酸素(O)を含有するオキシ硫化物であり、母体材料中
    において、アルカリ土類元素をAで表し、Ga、Inお
    よびAlをBで表したとき、原子比B/Aが、2超3.
    5以下である蛍光体薄膜。
  2. 【請求項2】B/A=2.05〜3.0 である請求項1の蛍光体薄膜。
  3. 【請求項3】 母体材料中において、酸素と硫黄との合
    計に対する酸素の原子比O/(S+O)が、 O/(S+O)=0.01〜0.85 である請求項1または2の蛍光体薄膜。
  4. 【請求項4】 母体材料中において、酸素と硫黄との合
    計に対する酸素の原子比O/(S+O)が、 O/(S+O)=0.1〜0.85 である請求項1または2の蛍光体薄膜。
  5. 【請求項5】 下記組成式で表される請求項1〜4のい
    ずれかの蛍光体薄膜。 組成式 Axyzw :M [但し、Mは発光中心となる金属元素を表し、AはM
    g、Ca、SrおよびBaから選ばれた少なくとも一つ
    の元素であり、Bは、Ga、InおよびAlから選択さ
    れた少なくとも一つの元素であり、BにはGaおよび/
    またはInが必ず含まれる。x=1〜5、y=1〜1
    5、z=3〜30、w=3〜30である]
  6. 【請求項6】 前記発光中心は希土類元素である請求項
    1〜5のいずれかの蛍光体薄膜。
  7. 【請求項7】 請求項1〜6のいずれかの蛍光体薄膜を
    有するELパネル。
  8. 【請求項8】 請求項1〜6のいずれかの蛍光体薄膜を
    製造する方法であって、 硫化物薄膜を形成した後、酸化雰囲気中でアニール処理
    を施してオキシ硫化物薄膜とする工程を有する蛍光体薄
    膜の製造方法。
  9. 【請求項9】 請求項1〜6のいずれかの蛍光体薄膜を
    製造する方法であって、 蒸発源として、アルカリ土類元素の硫化物または金属を
    含有するものと、Ga硫化物および/またはIn硫化物
    を含有するものとを少なくとも用い、反応性ガスとして
    酸素ガスを用いる反応性蒸着法により、オキシ硫化物薄
    膜を形成する工程を有する蛍光体薄膜の製造方法。
  10. 【請求項10】 請求項1〜6のいずれかの蛍光体薄膜
    を製造する方法であって、 蒸発源として、アルカリ土類元素の硫化物または金属を
    含有するものと、Ga硫化物および/またはIn硫化物
    を含有するものとを少なくとも用いる蒸着法により硫化
    物薄膜を形成した後、酸化雰囲気中でアニール処理を施
    してオキシ硫化物薄膜とする工程を有する蛍光体薄膜の
    製造方法。
  11. 【請求項11】 アルカリ土類硫化物を含有する蒸発源
    に、発光中心が含有されている請求項9または10の蛍
    光体薄膜の製造方法。
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JP2006206892A (ja) * 2004-12-28 2006-08-10 Showa Denko Kk 蛍光体及びその製造方法並びにランプ
JP2013234247A (ja) * 2012-05-08 2013-11-21 Sumitomo Metal Mining Co Ltd 硫化物蛍光体及びその製造方法

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