以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
図1は、通信装置100の通信環境の一例を概略的に示す。通信装置100は、通信端末200との通信を確立して、通信端末200との間でデータ信号を送受信する装置である。例えば、通信装置100は、無線LANにおけるアクセスポイントである。通信装置100は、インフラストラクチャモードにおけるアクセスポイントであってよい。また、通信装置100は、アドホックモードにおいて一時的にアクセスポイントの役割を担う通信端末であってよい。通信端末200は、通信装置100と通信を確立できる装置である。例えば、通信端末200は、スマートフォンである。
通信装置100は、通信端末200との通信を確立するための制御信号を含む電波を発信する。そして、通信装置100が、制御信号を受信した通信端末200から通信確立要求を受信して、通信確立応答を通信端末200に送信することにより、通信装置100と通信端末200との通信が確立する。通信が確立した通信装置100と通信端末200との間で、データ信号が送受信される。通信装置100は、データ信号を含む電波を発信することによってデータ信号を送信する。
通信可能エリア150は、通信装置100により発信されるデータ信号を含む電波が到達可能なエリアを示す。本実施形態では、通信装置100が無指向性アンテナを用いた場合の通信可能エリア150を例に挙げて説明するが、通信装置100が指向性アンテナを備えてもよい。
基地局300は、無線通信網を構成する基地局である。例えば、基地局300は、第2世代移動通信システム(2G)および第3世代移動通信システム(3G)等の移動通信システムにおける基地局である。基地局300は、通信装置100の他の通信装置の一例であってよい。無線通信エリア310は、基地局300によってカバーされる通信エリアを示す。通信端末200は、通信装置100との間の通信と、基地局300との間の通信とを、切り換え可能であってよい。
図2は、通信装置100が発信するデータ信号を含む電波の強度分布を概略的に示す。通信装置100が発信する電波の強度は、原則として通信装置100に対する距離が近い位置ほど強く、通信装置100に対する距離が遠いほど弱い。電波の強度が弱いと、送信データが消失しやすくなることから、通信のスループットが低下する。したがって、通信可能エリア150内の通信端末200の位置が、通信可能エリア150の外縁に近いほど、通信装置100と通信端末200との間の通信のスループットは低下する。
通信安定エリア160は、通信可能エリア150のうち、通信装置100と通信端末200とが安定して通信できるエリアを示す。通信装置100と通信端末200とが安定して通信できるエリアとは、例えば、通信装置100が発信するデータ信号を含む電波の電波強度が一定の閾値を超えるエリアである。通信可能エリア150内であって、通信安定エリア外のエリアをフリンジエリアと呼ぶ場合がある。
ここで仮に、通信可能エリア150の外で基地局300と通信している通信端末200が、フリンジエリア内に移動して、フリンジエリア内で通信装置100との通信に切り換えた場合、基地局300との通信よりも通信が不安定になる場合がある。例えば、通信装置100がWi−Fi(登録商標)のアクセスポイントであり、基地局300が3Gの基地局である場合のように、より高いスループットで通信を行うべく通信装置100との通信に切り換えたにも関わらず、通信装置100との通信が不安定であることから逆にスループットが低くなってしまう場合がある。このような問題を解決するべく、本実施形態に係る通信装置100は、制御信号を含む電波が到達可能なエリアを制限する。
図3は、通信装置100が発信する制御信号を含む電波が到達可能な通信確立可能エリア170および制御信号を含む電波の強度分布を概略的に示す。通信装置100は、例えば、制御信号を含む電波の送信レベルを制御することにより、通信確立可能エリア170を制限する。
通信装置100は、制御信号を含む電波の送信レベルを、データ信号を含む電波の送信レベルよりも低減させることによって、通信確立可能エリア170を通信可能エリア150の一部のエリアに制限してよい。これにより、通信可能エリア150内の、通信可能エリア150の外縁付近に、制御信号を含む電波が到達しなくなる。よって、電波強度の弱いエリアで通信装置100と通信端末200との通信が確立してしまうことを防止できる。
通信装置100は、電波の強度が予め定められた閾値を超える一部のエリアに、通信確立可能エリア170を制限してよい。すなわち、通信装置100は、通信装置100と通信端末200との間のスループットが予め定められた閾値を越える一部のエリアに、通信確立可能エリアを制限してよい。これにより、通信装置100と通信端末200とが、予め定められた閾値を超えるスループットで通信できないエリアにおいて、通信装置100と通信端末200との通信が確立してしまうことを防止できる。
図4は、通信装置100の機能構成を概略的に示す。データ信号送信部102は、通信端末200にデータ信号を送信する。受信部104は、通信端末200からデータ信号および制御信号を受信する。通信制御部106は、通信装置100と通信端末200との間の通信を制御する。端末情報記憶部108は、通信端末200の識別情報を記憶する。例えば、端末情報記憶部108は、識別情報として、通信端末200のMACアドレスを記憶してよい。
通信品質取得部110は、通信装置100と通信端末200との間の通信品質を取得する。通信品質取得部110は、例えば、受信部104が受信したデータ信号の信号強度を、通信装置100と通信端末200との間の通信品質として取得する。また、通信品質取得部110は、通信装置100と通信端末200との間のスループットを、通信装置100と通信端末200との間の通信品質として取得してもよい。通信品質取得部110は、例えば、通信端末200に対してpingコマンドを実行して、pingコマンドの応答を解析することによって、通信装置100と通信端末200との間のスループットを取得する。
ここで、通信制御部106は、通信品質取得部110が取得した通信品質が予め定められた基準値を下回った場合に、通信装置100と通信端末200との間の通信を切断してよい。これにより、通信装置100と通信端末200との間の通信が確立した状態が、通信品質が低いまま継続してしまうことを防止することができる。なお、通信制御部106は、通信切断要求を通信端末200に送信することによって通信を切断してよい。通信装置100は、例えば、ディスアソシエーション信号を通信端末200に送信することにより通信を切断する。
予め定められた基準値とは、基地局300と通信端末200との間の通信の通信品質であってよい。例えば、通信制御部106は、通信品質取得部110が取得した通信装置100と通信端末200との間のスループットが、基地局300と通信端末200との間のスループットを下回った場合に、通信装置100と通信端末200との間の通信を切断する。通信装置100との通信を切断された通信端末200が、基地局300との通信を確立することにより、通信装置100との通信に比べて、より高いスループットで通信を行うことができるようになる。すなわち、本実施形態に係る通信装置100によれば、通信端末200を、より通信品質の高い通信に切り換えるべく誘導することができる。
なお、通信制御部106は、基地局300と通信端末200との間の通信品質を示すデータを、基地局300または通信端末200から取得してよい。この場合、基地局300または通信端末200は、基地局300と通信端末200との通信中に通信品質を取得しておく。例えば、通信制御部106は、基地局300と通信端末200との間の通信の最大スループットおよび平均スループットを通信品質として取得してよい。なお、通信制御部106は、通信装置100の通信に関するパラメータを設定する設定者によって入力されたスループットを、基地局300と通信端末200との間の通信の通信品質として取得してもよい。
また、通信制御部106は、通信品質が予め定められた基準値を下回ったことによって通信端末200との間の通信を切断した場合に、予め定められた時間が経過するまでの間、当該通信端末200との通信の確立を禁止してよい。例えば、通信端末200が、通信安定エリア160からフリンジエリアに移動することにより、通信品質が予め定められた基準値を下回って通信を切断された場合に、その後すぐに通信を再確立しても、通信端末200が通信安定エリア160内に移動していることが期待できず、安定した通信が期待できない。
そこで、予め定められた時間が経過するまでの間、通信制御部106が通信端末200との通信の確立を禁止することにより、通信品質が低い状態で通信装置100と通信端末200との通信が確立してしまうことを防止できる。また、これにより、通信端末200が、フリンジエリア内に位置したり、フリンジエリアと通信安定エリア160との境界を行ったり来たりするような場合などに、通信装置100と通信端末200との間で通信の確立と切断とを繰り返してしまうことを防止できる。
ここで、予め定められた時間とは、数秒、数十秒、数百秒等の単位で、設定されてよい。また、予め定められた時間は、通信装置100の通信に関する設定を行う設定者によって、設定および変更されてよい。
通信制御部106は、通信品質が予め定められた基準値を下回ったことによって通信端末200との間の通信を切断した場合に、端末情報記憶部108に、通信端末200の識別情報に対応付けて、切断時刻を記憶させてよい。通信制御部106は、通信端末200から通信確立要求を受信した場合に、端末情報記憶部108を参照して、現在時刻と、前回の切断時刻との差が、予め定められた時間を経過していない場合に、通信端末200との通信の確立を禁止してよい。
エリア制御部112は、制御信号を含む電波が到達可能な通信確立可能エリア170を、データ信号を含む電波が到達可能な通信可能エリア内の一部のエリアに制限する。エリア制御部112は、例えば、制御信号を含む電波の送信レベルを制御することにより、通信確立可能エリア170を制限する。エリア制御部112は、送信レベルを低減させることにより、通信確立可能エリア170をより小さくできる。
また、エリア制御部112は、制御信号を含む電波の送信レートを制御することにより、通信確立可能エリア170を制御してよい。制御信号を含む電波の送信レートが高くなるほど、制御信号の到達可能エリアがより小さくなる。よって、エリア制御部112は、制御信号を含む電波の送信レートを向上させることによって、通信確立可能エリア170を制限する。
設定情報記憶部114は、通信確立可能エリア170を制限するときに用いられる設定情報を記憶する。設定情報記憶部114は、例えば、制御信号を含む電波の送信レベルと、制御信号を含む電波の到達距離とを対応付ける第1対応テーブル116を記憶する。第1対応テーブル116は、複数の電波の送信レベルのそれぞれに対して、電波の到達距離を対応付ける。エリア制御部112は、制御信号を含む電波の目標到達距離が決定した場合に、第1対応テーブル116において目標到達距離に対応する送信レベルを参照することにより、制御信号を含む電波の送信レベルを決定してよい。
第1対応テーブル116は、実験により予め生成されてよい。例えば、制御信号を含む電波の送信レベルを切り換えながら、その電波の到達距離を実測していくことにより、送信レベルと到達距離との対応付けが行われる。実験は、障害物のない実験空間で行われてよく、通信装置100が設置される場所の環境に合わせて準備された実験空間で行われてもよい。
設定情報記憶部114は、通信装置100から通信端末200への距離と、通信装置100と通信端末200との間のスループットとを対応付ける第2対応テーブル118を記憶してよい。第2対応テーブル118は、複数の距離のそれぞれに対して、通信装置100と通信端末200とがその距離分離間している場合の通信装置100と通信端末200との間のスループットを対応付ける。
第2対応テーブル118は、実験により予め生成されてよい。例えば、通信端末200と通信装置100との距離を徐々に変更しながら、通信装置100と通信端末200との間のスループットを実測していくことにより、距離とスループットとの対応付けが行われる。
また、第2対応テーブル118は、通信装置100が実際に設置された環境において、通信装置100と通信端末200との通信が行われるのにあわせて更新されてよい。例えば、通信装置100は、通信端末200からデータ信号を受信した場合に、通信装置100と通信端末200との間のスループット、および通信装置100と通信端末200との距離を取得して、第2対応テーブル118を更新する。通信装置100は、例えば、通信端末200から位置情報を受信することにより、通信装置100と通信端末200との距離を取得する。
エリア制御部112は、スループットがある閾値を超える一部のエリアに通信確立可能エリア170を制限する場合に、第2対応テーブル118を参照することによって、その閾値に対応する距離を取得してよい。そして、エリア制御部112は、第1対応テーブル116を参照することによって、その距離に対応する送信レベルを取得してよい。
制御信号送信部120は、エリア制御部112の制御に従って制御信号を含む電波を発信することにより、制御信号を送信する。制御信号送信部120が送信する制御信号は、例えば、無線LANにおけるビーコンである。エリア制御部112によって、ビーコンを含む電波の到達可能エリアを通信可能エリア150の一部のエリアに制限することにより、その一部のエリア外に位置する通信端末200に、通信装置100の存在を認知できなくさせることができる。これにより、データ通信が可能なエリアのうち、データ信号を含む電波の強度が低く、スループットが低くなるエリアに位置する通信端末200と、通信装置100との通信が確立してしまうことを防止できる。
また、制御信号送信部120が送信する制御信号は、無線LANにおけるプローブ応答であってもよい。エリア制御部112によって、プローブ応答を含む電波の到達可能エリアを通信可能エリア150の一部のエリアに制限することにより、その一部のエリア外に位置する通信端末200に、プローブ応答を受信できなくさせることができる。これにより、通信装置100が、通信端末200によって送信したプローブ要求を認証した場合であっても、通信端末200が通信確立可能エリア外に位置する場合には、通信装置100と通信端末200との通信が確立してしまうことを防止できる。
図5は、通信装置100が通信端末200との通信を確立してデータ通信を実行するフローチャートの一例を示す。ステップS502では、制御信号送信部120が、ビーコンを送信する。制御信号送信部120は、エリア制御部112の制御に従って、ビーコンの到達可能エリアを通信可能エリア150内の一部のエリアに制限して、ビーコンを送信する。
ステップS504では、受信部104が、ビーコンを受信した通信端末200から、プローブ要求を受信する。ステップS506では、制御信号送信部120が、通信端末200に対してプローブ応答を送信する。制御信号送信部120は、エリア制御部112の制御に従って、プローブ応答の到達可能エリアを通信可能エリア150の一部のエリアに制限して、プローブ応答を送信する。
ステップS508では、受信部104が、プローブ応答を受信した通信端末200から、通信確立要求を受信する。ステップS510では、通信制御部106が、端末情報記憶部108を参照して、通信確立要求を送信した通信端末200の識別情報に対応付けられた前回の切断時刻から、予め定められた時間経過しているか否かを判定する。
通信制御部106が、前回の通信切断から予め定められた時間経過していないと判定した場合には、ステップS502に戻る。この結果、通信確立要求を送信した通信端末200に対して通信確立応答が送信されず、通信は確立されない。通信制御部106が、前回の通信切断から予め定められた時間経過していると判定した場合には、ステップS512に進む。なお、通信制御部106は、通信確立要求を送信した通信端末200の識別情報に、切断時刻が対応付けられていない場合にも、ステップS512に進む。
ステップS512では、制御信号送信部120が、通信確立応答を送信する。制御信号送信部120は、エリア制御部112の制御に従って、通信確立応答の到達可能エリアを通信可能エリア150内の一部のエリアに制限して、通信確立応答を送信する。
ステップS514では、通信装置100と通信端末200との間でデータ信号を送受信する。ステップS516では、通信品質取得部110が、通信装置100と通信端末200との間の通信の通信品質を取得する。ステップS518では、通信制御部106が、ステップS516で取得した通信品質が予め定められた基準値を下回るか否かを判定する。通信制御部106が、下回らないと判定した場合には、ステップS514に戻る。通信制御部106が、下回ると判定した場合には、ステップS520に進む。
ステップS520では、通信制御部106が、通信装置100と通信端末200との通信を切断する。ステップS522では、端末情報記憶部108が、通信装置100と通信端末200との通信を切断した切断時刻を、通信端末200の識別情報に対応付けて記憶する。
図6は、通信装置100の近傍にノイズ源400が存在する場合の通信確立可能エリア170を概略的に示す。ノイズ源400は、電波を発する機器、および電波を遮断する物体などである。通信不安定エリア410は、ノイズ源400の存在により、通信装置100が発信する電波が干渉を受けたり、遮断されたりすることによって、通信が不安定になるエリアの一例を示す。
エリア制御部112は、通信確立可能エリア170が、通信装置100からの距離が離間していることに起因するフリンジエリアと通信不安定エリア410とを含まないように、通信確立可能エリア170を制限する。また、エリア制御部112は、通信確立可能エリア170と、通信装置100からの距離が離間していることに起因するフリンジエリアおよび通信不安定エリア410との重複が少なくなるように、通信確立可能エリア170を制限してよい。通信装置100は、アレーアンテナを備え、アレーアンテナを介して制御信号を含む電波を発信することにより、制御信号を含む電波に対して指向性を実現してよい。
エリア制御部112は、通信装置100の通信に関する設定を行う設定者によって入力されたノイズ源400の位置情報に基づいて、通信確立可能エリア170を制限してよい。また、エリア制御部112は、通信装置100と通信端末200との通信の状況に応じて、通信確立可能エリア170を制限してよい。
図7は、通信装置100が、通信装置100と通信端末200との通信の状況に応じて通信確立可能エリア170を制限する処理のフローチャートの一例を示す。本フローチャートは、通信装置100が、通信端末200からデータ信号を受信した場合に開始する。
ステップS702では、通信装置100が、データ信号を送信した通信端末200の位置情報を取得する。通信装置100は、例えば、通信端末200からGPS(Global Positioning System:全地球測位システム)情報を受信することにより、通信端末200の位置情報を取得する。また、通信装置100は、アレーアンテナを備えて、アレーアンテナによりデータ信号を受信し、データ信号の到来方向および到来時間に基づいて通信端末200の位置を推定することにより、通信端末200の位置情報を取得してもよい。
ステップS704では、通信品質取得部110が、通信装置100と通信端末200との間の通信の通信品質を取得する。通信品質取得部110は、例えば、設定情報記憶部114に記憶された第2対応テーブル118を参照することにより、通信端末200から受信したデータ信号の電波強度に対応するスループットを取得する。
ステップS706では、設定情報記憶部114が、通信端末200の識別情報と、データ信号を受信した日時と、ステップS702で取得した位置情報と、ステップS704で取得したスループットとを対応付けて、通信状況登録テーブルに記憶する。
ステップS708では、エリア制御部112が、通信確立可能エリア170の変更が必要であるか否かを判定する。エリア制御部112は、例えば、スループットが予め定められた閾値を下回る通信端末200の位置が、通信確立可能エリア170内である場合に、その位置を除外するべく、通信確立可能エリア170を制限する。
また、エリア制御部112は、スループットが予め定められた閾値を上回る通信端末200の位置が、通信確立可能エリア170外である場合に、その位置を含むべく、通信確立可能エリア170を拡大してよい。エリア制御部112は、例えば、制御信号を含む電波の送信レベルを向上するまたは送信レートを低減することにより、通信確立可能エリア170を拡大してよい。
図7に示すフローチャートは、通信装置100の通信に関する設定を行う設定者によって設定された回数、通信端末200からデータ信号を受信した場合に開始されてよい。また、通信端末200からデータ信号を受信する毎に開始されてもよい。
図8は、通信状況登録テーブルの一例を示す。通信状況登録テーブルには、通信端末200のMACアドレス、データ信号を受信した日時、ステップS702で取得した位置情報、およびステップS704で取得したスループットが、設定情報記憶部114によって記憶される。設定情報記憶部114は、通信端末200の位置情報として、通信装置100からの距離および方角を記憶する。
設定情報記憶部114は、通信装置100と通信端末200との間のスループットが予め定められた基準値を下回ったことによって、通信装置100と通信端末200との間の通信が切断された場合にも、通信端末200の識別情報および位置情報と、スループットと、スループットを判定した日時または通信を切断した日時とを通信状況登録テーブルに記憶してよい。
通信装置100は、通信状況登録テーブルに登録されたデータに基づいて、通信確立可能エリア170を制限するスケジュールを生成してよい。通信装置100は、通信状況登録テーブルの解析結果によって、通信可能エリア150内の一部のエリアにおいて周期的にスループットが低下すること示された場合に、その周期に合わせてその一部のエリアに制御信号を含む電波が到達しないように、通信確立可能エリア170を制限するスケジュールを生成してよい。
例えば、駅に通信装置100が設置された場合、電車が到着して、通信機能を有する機器を保有する乗客が数多く下車した場合に、ノイズ源が増加することから通信のスループットが低下する。このような場合に、本実施形態に係る通信装置100によれば、スループットが低下してしまうエリアにおいて、通信装置100と通信端末200との間で通信が確立することを防止できる。
また、通信装置100は、外部から取得したデータに基づいて、通信確立可能エリア170を制限するスケジュールを生成してもよい。通信装置100は、例えば、通信可能エリア150内におけるノイズ源の発生状況を外部から取得して、スケジュールを生成する。具体的には、通信装置100は、電車到着時刻データを取得して、スケジュールを生成してよい。
また、通信装置100は、通信サービスの提供を希望するエリアを示すデータに基づいて、通信確立可能エリア170を制限してもよい。例えば、飲食店などの店舗において、店舗内のエリアに通信サービスの提供を限定するために、制御信号を含む電波およびデータ信号を含む電波の到達可能エリアを店舗内に制限した場合、店舗の端では、通信が不安定になってしまう。それに対して、本実施形態に係る通信装置100によれば、制御信号を含む電波のみについて到達可能エリアを店舗内に制限することにより、通信の確立を店舗内に制限しつつ、店舗の端でも比較的高い品質の通信を提供できる。
本実施形態においては、通信装置100の他の通信装置の一例として、無線通信網を構成する基地局を挙げて説明した。しかし、通信装置100の他の通信装置は、通信端末200と無線通信を確立できる装置であればよく、例えば、無線LANのアクセスポイントであってもよい。
また、本実施形態において、通信制御部106が、通信品質が予め定められた基準値を下回ったことによって通信端末200との間の通信を切断した場合に、予め定められた時間が経過するまでの間、当該通信端末200との通信の確立を禁止する実施形態について説明した。ここで、予め定められた時間は、例えば、通信装置100の通信に関する設定を行う設定者によって設定されてよいが、通信端末200の移動速度に基づいて設定されてもよい。
通信制御部106は、通信品質取得部110が取得した通信品質が予め定められた基準値を下回ったことによって通信端末200との間の通信を切断した場合に、通信端末200の移動速度を取得してよい。通信制御部106は、通信端末200の位置情報を取得しておき、位置情報の変化から通信端末200の移動速度を取得してよい。また、通信制御部106は、通信切断前に、通信端末200から、移動速度を示すデータを取得してもよい。
通信制御部106は、取得した移動速度が速いほど、予め定められた時間を短く設定してよい。通信端末200の移動速度が速い場合には、通信端末200が短時間で通信安定エリア160に入る可能性が高い。よって、予め定められた時間を短く設定することによって、通信端末200がすでに通信安定エリア160内に移動しているにも関わらず、通信の確立が禁止されてしまう可能性を低減できる。
また、通信端末200の移動速度が遅い場合には、通信端末200が短時間で通信安定エリア160に入る可能性が低い。よって、予め定められた時間を長く設定することによって、通信端末200がまだフリンジエリアにいるにも関わらず、通信が確立されてしまうことを防止できる。
また、通信制御部106は、通信端末200の移動方向が、通信安定エリア160に向かっている場合に、通信安定エリア160に向かっていない場合に比べて、予め定められた時間を短く設定してもよい。通信端末200の移動方向が通信安定エリア160に向かっている場合には、通信端末200が短時間で通信安定エリア160に入る可能性が高い。よって、予め定められた時間を、短く設定することによって、通信端末200がすでに通信安定エリア160内に移動しているにも関わらず、通信の確立が禁止されてしまう可能性を低減できる。
図9は、通信装置100および通信装置510の通信環境の一例を概略的に示す。通信装置100および通信装置510は、ネットワーク600を介して接続されている。通信装置100および通信装置510は、有線通信によってネットワーク600に接続されていてよく、また、無線通信によってネットワーク600に接続されていてもよい。また、通信装置100および通信装置510は、有線通信または無線通信によって、直接接続されていてもよい。通信可能エリア512は、通信装置510の通信可能エリアを示す。
図9に示す例において、通信装置100は、通信端末200との間の通信品質を取得する。通信装置100と通信端末200との間で通信が確立している場合には、通信装置100が備える通信品質取得部110が、例えば、通信端末200から受信したデータ信号の信号強度を、通信端末200との間の通信品質として取得する。通信品質取得部110は、pingコマンドの応答を解析することによって、通信端末200との間の通信品質を取得してもよい。
通信品質取得部110は、通信端末200と通信を確立していない場合には、例えば、通信端末200が通信を確立している他の通信装置に向けて発信したデータ信号を受信して、そのデータ信号の信号強度を通信品質として取得する。通信品質取得部110は、データ信号の信号強度を、通信装置100と通信端末200との間のスループットに変換して、変換したスループットを通信品質として取得してもよい。例えば、通信装置100は、データ信号の信号強度とその信号強度での通信装置100と通信端末200との間のスループットとを対応付けたテーブルを参照することによって、データ信号の信号強度をスループットに変換する。通信装置100は、データ信号のヘッダに含まれる通信端末200の識別情報によって、データ信号を発信した通信端末200を識別してよい。通信装置510は、通信装置100と同様の機能を有する。
ここでは、通信装置100と通信端末200との間で通信が確立している場合について説明する。通信装置100は、通信装置100と通信端末200との間の通信品質を取得する。また、通信装置100は、通信装置510と通信端末200との間の通信品質を、ネットワーク600を介して通信装置510から受信する。
そして、通信装置100は、取得した通信装置100と通信端末200との間の通信品質が、通信装置510から受信した通信装置510と通信端末200との間の通信品質を下回っていると判定した場合に、通信装置100と通信端末200との間の通信を切断する。これにより、通信端末200に、通信装置510と通信を確立する機会を与えることができる。
例えば、通信端末200が、通信装置100から遠ざかり、通信装置510に近づく方向に移動した場合、通信装置100との間の通信品質は低下し、通信装置510との間の通信品質は向上することになる。本実施形態によれば、通信端末200と通信装置100との間の通信品質が、通信端末200と通信装置510との間の通信品質を下回った場合に、通信装置100と通信端末200との間の通信が切断される。これにより、通信端末200は、通信装置510と通信を確立できるようになり、通信装置510と通信を確立することによって、通信装置100との間の通信品質よりも高い通信品質で通信を実行できるようになる。
図10は、通信装置100、通信装置510および通信装置520の通信環境の一例を概略的に示す。通信装置520は、通信装置100および通信装置510と同様の機能を有する。通信装置100、通信装置510および通信装置520を区別せずに説明する場合は、まとめて単に通信装置と呼ぶ場合がある。通信可能エリア512、522は、それぞれ、通信装置510、520の通信可能エリアを示す。
通信端末210および通信端末220は、通信装置と通信を確立できる装置である。通信端末200、通信端末210および通信端末220を区別せずに説明する場合は、まとめ単に通信端末と呼ぶ場合がある。
サーバ装置530は、ネットワーク600を介して通信装置と接続される装置である。サーバ装置530および通信装置は、有線通信によりネットワーク600に接続されていてよく、また、無線通信によりネットワーク600に接続されていてもよい。また、サーバ装置530および通信装置は、有線通信または無線通信によって、直接接続されていてもよい。
サーバ装置530は、通信端末200、通信端末210および通信端末220が、それぞれ、通信装置100、通信装置510および通信装置520のうちのいずれの通信装置と通信を確立しているかを管理する。サーバ装置530は、通信装置から、通信装置と通信を確立した通信端末の識別情報、および通信を確立した旨を示す情報を受信することにより、それぞれの通信端末が、いずれの通信装置と通信を確立しているかを管理してよい。なお、通信装置は、通信端末と通信を確立した場合に、通信端末の識別情報と、通信を確立した旨を示す情報とをサーバ装置530に送信してよい。
サーバ装置530は、通信装置から受信した通信装置と通信端末との間の通信品質を、通信端末の識別情報に対応付けて、通信管理テーブルに登録する。また、サーバ装置530は、通信端末200、通信端末210および通信端末220が、それぞれ、通信装置100、通信装置510および通信装置520のうちのいずれと通信を確立しているかを、通信管理テーブルに登録する。
図11は、通信管理テーブルの一例を示す。通信管理テーブルには、複数の通信端末の識別情報が登録されている。また、通信管理テーブルには、通信端末の識別情報のそれぞれに対応付けて、その通信端末が通信を確立している通信装置の識別情報、およびその通信端末と複数の通信装置のそれぞれとの間の通信品質が登録されている。図11では、通信品質として、通信装置と通信端末との間のスループットを登録した例を示す。サーバ装置530は、通信装置から、定期的に通信装置と通信端末との間の信品質を受信して、受信した通信品質によって通信管理テーブルを更新してよい。
サーバ装置530は、通信管理テーブルを参照して、各通信端末について、通信を確立している通信装置との通信品質が、通信を確立していない通信装置との通信品質を下回っているか否かを判定する。そして、サーバ装置530は、いずれかの通信端末について、下回っていると判定した場合に、当該通信端末と通信を確立している通信装置に対して、当該通信端末との間の通信を切断する指示を含む切断指示信号を送信する。切断指示信号を受信した通信装置は、通信を確立している通信端末との間の通信を切断する。これにより、通信端末に対して、より通信品質が高い通信装置と通信を確立する機会を与えることができる。
例えば、図11に示す通信管理テーブルの例においては、サーバ装置530は、通信端末210について、通信を確立している通信装置100との通信品質が、通信装置510との通信品質を下回っていると判定する。そして、サーバ装置530は、通信端末210に対して、切断指示信号を送信する。通信端末210は、受信した切断指示信号に従って、通信装置520との間の通信を切断する。これにより、通信端末210は、通信装置510と通信を確立することができるようになる。
なお、サーバ装置530は、通信品質に対応付けて、通信品質が取得された日時情報を、通信管理テーブルに登録してもよい。通信品質を取得してから時間が経過するほど、通信端末の位置が変化すること等によって、通信品質が変化する可能性が高い。そこで、サーバ装置530は、例えば、通信品質を取得してから一定の時間が経過した場合に、その通信品質を無効とするべく、削除してよい。
図12は、サーバ装置530の機能構成を概略的に示す。サーバ装置530は、受信部532、記憶部534、管理部536、判定部538、および送信部540を備える。受信部532は、複数の通信装置のそれぞれと複数の通信端末のそれぞれとの間の通信品質、および通信端末の識別情報を、複数の通信装置から受信する。記憶部534は、通信管理テーブルを記憶する。
管理部536は、複数の通信端末のそれぞれが、複数の通信装置のうちのいずれの通信装置と通信を確立しているかを管理する。管理部536は、複数の通信端末のそれぞれが、複数の通信装置のうちのいずれの通信装置と通信を確立しているかを、通信管理テーブルに登録することによって、管理してよい。
判定部538は、複数の通信端末のそれぞれについて、通信を確立している通信装置との通信品質が、通信を確立していない通信装置との通信品質を下回っているかを判定する。送信部540は、複数の通信端末のうち、通信を確立している通信装置との通信品質が、通信を確立していない通信装置との通信品質を下回っている通信端末がある場合に、当該通信端末と通信を確立している通信装置に対して、当該通信端末との通信を切断する指示を含む切断指示信号を送信する。
なお、本実施形態では、サーバ装置530が、通信端末と通信装置との間の通信品質を通信装置から受信して、受信した通信品質に基づいて、切断指示信号を通信装置に送信する例を挙げて説明した。しかし、これに限られない。サーバ装置530が、複数の通信装置の位置情報と複数の通信端末の位置情報とを取得して、取得した位置情報に基づいて、切断指示信号を通信装置に送信してもよい。
サーバ装置530は、複数の通信装置の位置情報を取得する。例えば、サーバ装置530は、複数の通信装置のそれぞれから、GPS情報を取得する。また、サーバ装置530は、複数の通信端末の位置情報を受信する。サーバ装置530は、通信装置または通信端末から、通信端末の位置情報を受信してよい。通信装置は、通信端末とデータ通信を行ったときに、通信端末から位置情報を取得して、サーバ装置530に送信してよい。また、サーバ装置530は、複数の通信端末のそれぞれが、複数の通信装置のいずれと通信を確立しているかを管理する。
サーバ装置530は、通信装置の位置情報、および通信端末の位置情報から、通信装置と通信端末との距離を算出する。そして、サーバ装置530は、算出した距離に基づいて、通信装置と通信端末との間の通信品質を取得する。サーバ装置530は、例えば、通信装置と通信端末との距離と、通信品質とを対応付けるテーブルを参照することによって、距離に基づいて通信品質を取得してよい。
サーバ装置530は、複数の通信端末のうち、通信を確立している通信装置との通信品質が、通信を確立していない通信装置との通信品質を下回っている通信端末がある場合に、当該通信端末と通信を確立している通信装置に対して、切断指示信号を送信する。これにより、これにより、通信端末に対して、より通信品質が高い通信装置と通信を確立する機会を与えることができる。
なお、本実施形態では、通信装置100、通信装置510および通信装置520にネットワーク600を介して接続されるサーバ装置530を例に挙げて説明したが、サーバ装置530の役割を、通信装置100が担ってもよい。
図13は、本実施形態に係る通信装置100のハードウェア構成の一例を示す。本実施形態に係る通信装置100は、ホストコントローラ902により相互に接続されるCPU904、RAM906を有するCPU周辺部と、入出力コントローラ908によりホストコントローラ902に接続されるROM910、通信インターフェイス912、およびアンテナ914を有する入出力部とを備える。入出力部は、ハードディスクドライブ、CD−ROMドライブ、およびUSBインターフェイスをさらに有してよい。
ホストコントローラ902は、RAM906と、高い転送レートでRAM906をアクセスするCPU904とを接続する。CPU904は、ROM910およびRAM906に格納されたプログラムに基づいて動作して、各部を制御する。入出力コントローラ908は、ホストコントローラ902と、比較的高速な入出力装置である通信インターフェイス912と、ROM910とを接続する。
通信インターフェイス912は、ネットワークを介して他の通信装置と通信する。また、通信インターフェイス912は、アンテナ914を介して、制御信号およびデータ信号を送受信する。制御信号の送信とデータ信号の送信とで、異なるアンテナ914を用いてもよい。また、制御信号の受信とデータ信号の受信とで、異なるアンテナ914を用いてもよい。ハードディスクドライブは、通信装置100内のCPU904が使用するプログラムおよびデータを格納する。CD−ROMドライブは、CD−ROMからプログラムまたはデータを読み取り、RAM906を介してハードディスクドライブに提供する。また、ROM910は、通信装置100が起動時に実行するブート・プログラム、通信装置100のハードウェアに依存するプログラム等を格納する。
RAM906を介してハードディスクドライブに提供されるプログラムは、CD−ROM、またはUSBメモリ等の記録媒体に格納されて利用者によって提供される。プログラムは、記録媒体から読み出され、RAM906を介して通信装置100内のハードディスクドライブにインストールされ、CPU904において実行される。
通信装置100にインストールされて実行されるプログラムは、CPU904等に働きかけて、通信装置100を、図1から図8にかけて説明したデータ信号送信部102、受信部104、通信制御部106、端末情報記憶部108、通信品質取得部110、エリア制御部112、設定情報記憶部114、および制御信号送信部120として機能させる。
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。