はじめに、発明者による考察を説明する。通信サービスを提供する通信オペレータによる無線LANエリアの急速な展開によって、他の通信オペレータによる無線LANや一般のユーザによる無線LANとの干渉だけでなく、自身が展開する無線LANどうしの干渉も問題になりつつある。このような背景の下、通信インフラを提供する通信キャリアは、端末に対して、CDMAやLTE等のセルラ向け無線アクセスから無線LANへの切り替え制御をするだけでなく、無線LANの無線環境に応じて、無線LANからセルラ向け無線アクセスへの切り替え制御をすることが好ましい。
そして、無線LANからセルラ向け無線アクセスへ切り替えをする場合の指標として、無線の信号品質を使用することが考えられる。例えば、周辺の無線LANのRSSI値(Received Signal Strength Indication)や無線LANの周波数(チャネル)情報を端末が収集し、端末によって収集された情報に基づき、ネットワーク内の制御装置が、該当する端末の無線品質として、SIR値(Signal to Interference Ratio)を計算し、このSIR値を信号品質として使用する。なお、端末毎のSIR値は、端末が接続する、あるいは接続しようとする無線LANのアクセスポイントのRSSI値をSignalとし、このアクセスポイントの周辺の他のアクセスポイントのRSSI値の総和をInterference(干渉)とした場合に、SIR値=Signal/Interferenceに従って計算される。このようにして計算されたSIR値がある閾値より低い端末を、無線LANからセルラ向け無線アクセスへ切り替えたり、あるアクセスポイントに接続している複数の端末の中で、相対的にSIR値が低い端末を優先的にセルラ向け無線アクセスへ切り替えたりすることが考えられる。
ところで、無線LANの通信では、CSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access/Collision Avoidance)という通信プロトコルが採用されている。CSMA/CAの動作では、ある無線LANのアクセスポイントあるいは端末は、データを送信する前に、他の無線LANのアクセスポイントや端末のデータ送信による無線信号の有無を確認する。そして、無線信号を確認できない場合に、データを送信する。他方で、無線信号を確認できた場合には、信号の衝突を避けるために、データの送信を待機する。
なお、無線信号の有無の確認は、お互いに電波が到達できる範囲に限る。例えば、ある無線LANのアクセスポイントあるいは端末と、別の無線LANのアクセスポイントや端末が、大きく離れていた場合、お互いに無線信号の有無が確認できないため、CSMA/CAは働かない。また、ある無線LANのアクセスポイントあるいは端末が使用する周波数(チャネル)と、周辺の他の無線LANのアクセスポイントや端末が使用する周波数(チャネル)がオーバラップしない場合も、CSMA/CAは動作しない。
ところで、無線LANがCSMA/CAを採用しているひとつの背景としては、例えば、個人が使用するモバイルルータのように、無線LANのアクセスポイントの位置が移動可能であったり、他のアクセスポイントの位置を考慮せずに配置されたりする実施方法を想定しているものと考えられる。このような場合、アクセスポイントどうしでタイムスケジューリングすると、制御が複雑になることが予想されるため、他の無線LANのアクセスポイントや端末のデータ送信が無い場合に信号を送信することによって、信号の衝突を回避することが好ましいと考えられた可能性がある。
図1に、実施例の通信システムの例が示される。実施例の通信システムは、制御装置の一例であるサーバ1、CDMAやLTE等のセルラ向け基地局2、無線LANのアクセスポイント(以下、APと表すことがある。)3−5、端末(以下、UEと表すことがある)6−8を含む。基地局2の無線カバーエリアがエリア9で示され、このエリア9内に位置する端末6−8が、CDMAやLTE等に準拠して、基地局2を介して無線通信が可能である。また、AP3−5の無線カバーエリアが各々エリア10−12で示され、エリア内に位置していれば該当するAPを介して、端末6−8は無線LANによる無線通信が可能である。サーバ1は、基地局2やAP3−5を介して、端末6−8に対して、基地局2によるCDMAやLTE等のセルラ向け無線アクセスから、AP3−5による無線LANへの切り替え制御をしたり、AP3−5による無線LANの無線環境に応じて、AP3−5による無線LANから、基地局2によるセルラ向け無線アクセスへの切り替え制御をしたりする。なお、基地局2の数や位置、AP3−5の数や位置、そしてそれらの無線カバーエリアや、端末6−8の数や位置は実施例を説明するためのものであり、実施例を限定的に解釈させるものではない。
上述したSIR値による無線信号の品質測定を、図1の通信システムに沿って説明する。端末6は、エリア10及び11内に位置しており、AP3及びAP4が送信する無線信号を受信可能な位置にいる。ここで、端末6は、AP3を介して通信を実行しているとする。この端末6は、AP3から送信された無線信号のRSSI値を測定し、また、AP4から送信された無線信号のRSSI値を測定する。そして、測定したRSSI値の各々を、サーバ1に通知する。サーバ1は、通知された各RSSI値に基づき、端末6のSIR値を計算する。この例では、端末6はAP3に接続しているので、AP3から送信された無線信号のRSSI値をsignalとし、AP4から送信された無線信号のRSSI値をinterferenceとして、上述の計算式に従い、SIR値を計算する。なお、端末6は、端末7が送信する無線信号を受信可能であるが、ここでは説明のために、APが送信する無線信号を対象としたSIR値の計算を例示する。
他方、端末7は、エリア10内に位置しており、AP3が送信する無線信号を受信可能な位置にいる。ここで、端末7は、AP3を介して通信を実行しているとする。この端末7は、AP3から送信された無線信号のRSSI値を測定して、サーバ1に通知する。サーバ1は、通知されたRSSI値に基づき、端末7のSIR値を計算する。
また、端末8は、エリア10及び12内に位置しており、AP3及びAP5が送信する無線信号を受信可能な位置にいる。ここで、端末8は、AP3を介して通信を実行しているとする。この端末8は、AP3から送信された無線信号のRSSI値を測定し、また、AP5から送信された無線信号のRSSI値を測定する。そして、測定したRSSI値の各々を、サーバ1に通知する。サーバ1は、通知された各RSSI値に基づき、端末8のSIR値を計算する。この例では、端末8はAP3に接続しているので、AP3から送信された無線信号のRSSI値をsignalとし、AP5から送信された無線信号のRSSI値をinterferenceとして、上述の計算式に従い、SIR値を計算する。
ここで、端末6のSIR値の計算では、上述の無線LANにおけるCSMA/CAは考慮されていない。例えば、ある無線LANのアクセスポイントの電波の到達範囲に、別の無線LANのアクセスポイントが存在し、お互いにCSMA/CAが動作する場合、各無線LANのアクセスポイントのデータ送信時には、別の無線LANのアクセスポイントからのデータ送信を待機するため、実際には干渉が発生しない。具体的には、AP3及びAP4は、互いに電波が到達可能な位置にいるため、お互いにCSMA/CAが動作して、端末6は、AP3及びAP4から送信される信号を、干渉して受信することがない。それにもかかわらず、端末6のSIR値の計算において、AP4から送信された無線信号のRSSI値をinterferenceとして計算してしまうと、端末6のSIR値を過剰に悪く見積もってしまう。
他方で、AP3及びAP5は、互いに電波が到達可能な位置にいないため、お互いにCSMA/CAが動作せず、端末8の位置において、AP3及びAP5が送信する無線信号が干渉する。つまり、端末8のSIR値では、AP4から送信された無線信号のRSSI値をinterferenceとして計算することで、適切なSIR値を見積もることができる。
このように、適切なSIR値を測定するためには、周辺の他の無線LANのアクセスポイントが、互いにCSMA/CAが動作する関係にあるかどうかを考慮する必要がある。それにもかかわらず、周辺の他の無線LANのアクセスポイントからの電波が、全て干渉するものとしてSIR値を計算してしまうと、実際にはCSMA/CAが働くことにより、無線信号の品質が良い端末でも、信号品質が悪いと判断され、CDMAやLTE等のセルラ向け無線アクセスへの切り替え対象とされてしまい、適切な端末の切り替え制御が妨げられてしまうという課題を発明者は発見した。
そこで、実施例によれば、周辺のアクセスポイントによる信号干渉を考慮する場合に、アクセスポイントどうしが、一方の信号送信が終わるまで他方は信号送信を待機する関係にあれば、互いの信号が干渉しないとして、信号品質を適切に測定する。こうして、実際の無線環境に合わせて、適切な端末を別の無線アクセスへ切り替えることができる。
さらに例示すれば、無線LANのアクセスポイントに接続する、あるいは接続しようとする端末が監視可能な、周辺の無線LANのアクセスポイントのRSSI値および周波数(チャネル)情報を制御装置が取得する。そして、取得した情報に基づき、無線LANのアクセスポイントどうしでCSMA/CAが動作するかどうかを推定する。そして、当該端末におけるSIR値を測定する場合に、CSMA/CAが動作すると推定された無線LANのアクセスポイントとは信号の干渉が生じないとして、SIR値の計算において含めないようにする。これによって、無線LANにおけるCSMA/CAが考慮された、無線信号の品質測定が可能となり、無線信号の品質測定の精度が上がる。こうして、実際の通信環境に合わせて、適切な端末を別の無線アクセスへ切り替えることできる。例えば、無線LANにおけるCSMA/CAを考慮して測定された信号品質に基づき、信号品質が悪い端末に対して、別の無線アクセスへの接続を指示することができる。
なお、実施例では、無線LANの第1アクセスポイントと周辺の無線LANのアクセスポイントとにおけるCSMA/CAの動作を推定する場合に、第1アクセスポイントのRSSI値の測定結果のうち、例えば、最も大きい値を測定した端末の情報を参照する。そして、この端末によって測定された、周辺の無線LANのアクセスポイントのRSSI値のうち、RSSI値が大きくかつ周波数がオーバラップしている第2アクセスポイントがあれば、第1アクセスポイント及び第2アクセスポイントどうしでCSMA/CAが動作すると推定する。なお、第1アクセスポイントのRSSI値を最も大きく測定した端末とは、他の端末と比較して、第1アクセスポイントに最も近いと判断できる。そして、その端末によって測定された、第2アクセスポイントのRSSI値が高いということは、第1アクセスポイントの位置においても、第2アクセスポイントのRSSI値が大きくなると推定できる。こうして、第1アクセスポイントと第2アクセスポイントが、互いに無線信号が到達可能な位置関係にあって、CSMA/CAが動作すると推定できる。なお、実施例では、上述のような第2アクセスポイントは必ずしも1つではなく、条件に合えば、複数推定される場合がある。
図2に、実施例の制御装置のハードウェア構成の例が示される。実施例の制御装置の一例であるサーバ1は、CPU210、メモリコントローラ220、メモリ230、メモリバス240、IOバスコントローラ250、NIC260、及びIOバス270を含み、IOバス270には記憶装置280が接続される。
メモリバス240に接続されたメモリ230には、サーバ1の各種処理を実行するためのプログラムが格納されている。CPU210は、メモリコントローラ220を介して、メモリ230からプログラムを読み出し、各種処理を実行する。CPU210によって実行される各種処理の実行に伴い、メモリ230に対するデータの書き込み及び読み出しがメモリコントローラ220を介して実行される。
CPU210は、IOバスコントローラ250を介して、IOバス270に接続されたNIC260にデータを転送し、また、NIC260からデータやパケットを受け取る。CPU210は、IOバスコントローラ250を介して、IOバス270に接続された記憶装置280からデータを読み出し、また記憶装置280にデータを書き込む。
CPU210は、各種処理を実行するための1以上のCPUコアを含んでいてもよい。また、各CPUコアは1以上のプロセッサを含んでいてもよい。なお、CPU210が複数のCPUコアを含む場合には、当該各種処理を、複数のCPUコアに協業させて実行させてもよく、又はそのうちの1つのCPUコアに実行させてもよい。また、各CPUコアが複数のプロセッサを含む場合には、当該各種処理を、複数のプロセッサに協業させて実行させてもよく、又はそのうちの1つのプロセッサに実行させてもよい。
メモリ230は、例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory)などのRAMである。記憶装置240は、例えば、ROM(Read Only Memory)やフラッシュメモリなどの不揮発性メモリ、又はHDD(Hard Disk Drive)等の磁気ディスク装置である。
なお、CPU210、メモリコントローラ220、メモリ230、NIC260、及び、記憶装置280が同じバスに接続された構成をサーバ1に適用してもよい。図2に示されるハードウェア構成によって、図3に示される機能ブロックが実現され、図8−11、及び13−16に示される処理が実行される。
図3に、実施例の制御装置の機能ブロックの例が示される。図2に示された、実施例の制御装置の一例であるサーバ1は、ワーキングメモリとして使用されるメモリ230にロードされたプログラムが、CPU210によって実行されることにより、端末通知取得部300、推定部310、無線品質測定部320、及び無線アクセス指示部330として機能する。また、記憶部340は、メモリ230や記憶装置280により実現される。また、ネットワークIF350が、NIC260により実現される。
端末通知取得部300は、端末からの通知を取得する。推定部310は、端末から取得した情報及び記憶部340に記憶されている情報に基づき、無線LANのアクセスポイント間のCSMA/CAを推定する。また、推定した結果を記憶部340に格納する。無線品質測定部320は、端末から通知される情報と、記憶部340で記憶されている、無線LANのアクセスポイント間のCSMA/CAの推定情報から、端末における無線信号の品質の測定を行う。また、測定した結果を記憶部340に格納するとともに、無線アクセス指示部330に通知する。無線アクセス指示部330は、無線品質測定部320で測定された無線信号の品質に基づき、端末に対して、接続先となる無線アクセスを指示する。記憶部340は、無線LANのアクセスポイント間のCSMA/CAの推定情報を記憶する。また、現在接続している端末の無線信号の品質測定に関する情報も記憶可能である。ネットワークIF350は、端末からの通知の受信および端末への指示の送信を行う。
なお、図3に示される各機能ブロックにより実行される通信方法を、図8−11、及び13−16に示される処理と対応させて後述する。
図4に、実施例の通信システムにおける通信方法の例が示される。図4には、実施例の通信システムにおける通信方法の例として、図1に示されたサーバ1、AP3−5、及び端末6−8との間で実行される通信のシーケンス例が示される。例えば、端末6は、AP3及びAP4の信号を検出可能であり、AP3及びAP4が送信するBeacon信号を受信して、このBeacon信号の強度に基づいてRSSI値を測定する。また、端末6は、このBeacon信号に含まれる周波数(チャネル)情報を取得する。そして、測定したRSSI値及び取得した周波数(チャネル)情報をサーバ1に通知する。他の端末7及び端末8についても、信号を受信可能なAPが送信するBeacon信号に基づいて、同様の処理を実行し、測定したRSSI値及び取得した周波数(チャネル)情報をサーバ1に通知する。なお、端末6−8からサーバ1への通知は、端末6−8が、AP3−5に接続前や接続直後に行ってもよいし、定期的に通知を行ってもよい。
サーバ1は、端末から通知されたAP3−5のRSSI値や周波数(チャネル)情報を収集して、AP3−5どうしのCSMA/CAの動作の推定を行う。CSMA/CAの動作の推定、及び、推定結果に基づく各端末の無線品質の測定については、図8−11、及び13−16に示される処理に沿って後述する。そして、サーバ1は、例えば、無線信号の品質が悪い端末に対して、無線LANによる無線アクセスから、基地局2による無線アクセス等、別の無線アクセスへの切り替えを指示する。
図5に、実施例の通信方法で使用される情報の例が示される。図5には、実施例の通信方法で使用される情報の例として、図1に示される各端末からサーバ1に通知され、サーバ1が処理801、処理901、及び処理1301等によって取得して、記憶部340に格納されるメッセージの例が示される。図5に示されるメッセージの例では、“Parameter”として管理される各識別子に対して、“Value”としてその内容が関連付けられている。なお、サーバ1に通知されるメッセージは、各端末から通知される情報であるが、説明のために、端末6からサーバ1に通知されたとして例示する。
端末6が接続する、あるいは接続しようとしている無線LANのアクセスポイントの識別するための識別子が“BSSID of Serving AP”であり、図5の例では、このアクセスポイントのBSSID(Basic Service Set Identifier)として使用されるMAC(Media Access Control)アドレス“XX−XX−XX−XX−XX−XX”が、“BSSID of Serving AP”に関連付けられている。
“Status”は、端末が無線LANへ接続しているか、又は接続していないかの状態を示す識別子であり、図5の例では、端末6が、“XX−XX−XX−XX−XX−XX”のアクセスポイント“APx”に接続しているとして、“Connected”と例示されている。
“RSSI of Serving AP”は、端末が接続する、あるいは接続しようとしている無線LANのアクセスポイントのRSSI値を示すための識別子である。図5の例では、端末6が接続するアクセスポイント“APx”から送信された信号を、端末6において測定して際のRSSI値“−33dBm”が、“RSSI of Serving AP”に関連付けられている。
“Channel of Serving AP”は、端末が接続する、あるいは接続しようとしている無線LANのアクセスポイントの周波数(チャネル)情報を示すための識別子である。図5の例では、端末6が接続するアクセスポイント“APx”がチャネル“1”を使用していることが、“Channel of Serving AP”に関連付けられている。
“Number of Neighboring APs”は、端末が検出する周辺の無線LANのアクセスポイント数を示すための識別子である。図5の例では、端末6が、n個のアクセスポイントの信号を検出したことが例示されている。
“BSSID of Neighboring AP−X”は、周辺の無線LANのアクセスポイントを識別するための識別子である。図5の例では、端末6が、アクセスポイント“APy”を周辺の無線LANのアクセスポイントとして検出したことが例示されており、“APy”のMACアドレス“YY−YY−YY−YY−YY−YY”が、“BSSID of Neighboring AP1”に関連付けられている。
“RSSI of Neighboring AP−X”は、周辺の無線LANのアクセスポイント−XのRSSI値を識別するための識別子である。図5の例では、端末6が検出したアクセスポイント“APy”から送信された信号を、端末6において測定した際のRSSI値“−42dBm”が、RSSI of Neighboring AP1”に関連付けられている。
“Channel of Neighboring AP−X”は、周辺の無線LANのアクセスポイント“APy”の周波数(チャネル)情報を識別するための識別子である。図5の例では、端末6が検出したアクセスポイント“AP1” がチャネル“2”を使用していることが、“Channel of Neighboring AP1”に関連付けられている。
そして、図5に例示されるように、周辺の無線LANのアクセスポイントの各々の情報が、“Number of Neighboring APs”に関連付けられたn個分、設定されている。
図6に、実施例の通信方法で使用される情報の他の例が示される。図6には、実施例の通信方法で使用される情報の他の例として、図3に示される記憶部340に記憶されている、無線LANのアクセスポイントどうしのCSMA/CAの推定情報の例が示される。
図6の例には、各端末からサーバ1に通知されたメッセージに基づいて、例えば、BSSIDが“APx”である無線LANのアクセスポイントのRSSI値が“−33dBm”であり、“APx”のチャネルが“1”であり、BSSIDが“APy”である無線LANのアクセスポイントのRSSI値が“−42dBm”であり、“APy”のチャネルが“2”であることが管理され、これらの情報が、“APx”と“APy”との間のCSMA/CAの推定に利用されることが例示されている。そして、サーバ1が処理802、図9に示される処理等を実行することによって、CSMA/CAが動作すると推定された場合に、CSMA/CAが動作すると推定された無線LANのアクセスポイントのペアの情報と、推定に利用された情報が保持されることとなる。
図7に、実施例の通信方法で使用される情報の他の例が示される。図7には、実施例の通信方法で使用される情報の他の例として、図3に示される記憶部340に記憶されている、各端末UE1−nにおける無線信号の品質情報の例が示される。なお、図6の例では、端末における無線信号の品質情報として、SIR値を採用している。例えば、端末UE1における無線信号の品質が“12dB”であり、このSIR値が、端末UE1が接続する、あるいは接続しようとしているアクセスポイント“APx”のRSSI値“−33dBm”と、周辺のアクセスポイント“APz”のRSSI値“−56dBm”とに基づいて、測定されたことが示されている。なお、各端末におけるSIR値は、処理803、図10に示される処理、図16に示される処理がサーバ1によって実行されることによって測定され、これらの処理においては、端末から通知された情報、及び、記憶部340で記憶している、無線LANのアクセスポイントどうしのCSMA/CAの推定情報が参照される。
図8に、実施例の通信方法における処理の例が示される。図8には、実施例の通信方法における処理の例として、端末から通知される情報に基づいてサーバ1において実行される処理の全体フローの例が示される。図8に示される処理が、処理800により開始される。
端末からの通知を取得する処理801が、端末通知取得部300によって実行される。処理801では、各端末から通知された、アクセスポイントによるBeacon信号に基づくRSSI値及び周波数(チャネル)情報を取得する。なお、取得された情報は、図5に例示されるメッセージであり、このメッセージは処理801により記憶部340に格納される。
アクセスポイント間のCSMA/CAの推定を更新する処理802が、推定部310によって実行される。処理802では、処理801により取得された情報(図5の例示)と、記憶部340に記憶されている無線LANのアクセスポイント間のCSMA/CAの推定情報(図6の例示)とに基づいて、無線LANのアクセスポイント間のCSMA/CAの推定を行い、無線LANのアクセスポイント間のCSMA/CAの推定情報を更新する。なお、処理802の詳細な例が、図9に例示される。
端末における無線信号の品質を測定する処理803が、無線品質測定部320によって実行される。処理803では、処理801により取得された情報(図5の例示)と、更新された、無線LANのアクセスポイント間のCSMA/CAの推定情報(図6の例示)とに基づき、端末における無線信号の品質を測定する。なお、処理803の詳細な例が、図10に例示される。
端末へ無線アクセスの指示をする処理804が、無線アクセス指示部によって実行される。処理804では、処理803により測定された無線信号の品質に基づいて、端末へ無線アクセスの指示をする。そして、図8に示される処理が処理805によって終了する。なお、処理804の詳細な例が、図11に例示される。
図9に、実施例の通信方法における処理の詳細例が示される。図9には、図8に示される、アクセスポイント間のCSMA/CAの推定を更新する処理802の詳細な例が示される。図9に示される処理は、推定部310によって実行される処理であって、処理900によって開始され、処理914によって終了する。なお、図9に示される処理の説明のために、端末が接続する、あるいは接続しようとしている無線LANのアクセスポイントをAP(S)と表し、処理の対象となる周辺の無線LANのアクセスポイントをAP(N)と表す。
アクセスポイントAP(S)のRSSI値及び周波数(チャネル)情報を読み出す処理901が実行される。処理901では、処理801により記憶部340に格納されている、RSSI値及び周波数(チャネル)情報に参照し、対象となる端末のAP(S)に関するRSSI値及び周波数(チャネル)情報を読み出す。
接続するアクセスポイントAP(S)のRSSI値が閾値X値よりも大きいかどうかを判定する処理902が実行される。処理902では、処理901により読み出されたRSSI値と閾値X値とを比較して、AP(S)のRSSI値が閾値X値よりも大きいかどうかを判定する。AP(S)のRSSI値が閾値X値よりも大きくない場合には、処理914に移り図9に示される処理を終える。
なお、AP(S)のRSSI値と閾値X値との比較は、間接的に、AP(S)と、対象となる端末との距離を推測していることに相当する。従って、AP(S)のRSSI値が閾値X値よりも大きい場合には、対象となる端末がAP(S)の近くに位置することを意味しているため、AP(S)と周辺の無線LANのアクセスポイント間のCSMA/CAの推定を行うために処理903に移る。なお、閾値X値は、無線LANの電波の到達距離や、CSMA/CAが動作する際の電波強度の閾値等の従って、適宜設定すればよい。
通知された周辺のアクセスポイントAP(N)のうち未選択の1つを選択する処理903が実行される。処理903では、AP(S)と、周辺の無線LANのアクセスポイント各々とのCSMA/CAの推定を行うために、通知された周辺のアクセスポイントのうち未選択の1つを選択する。後述するが、通知された周辺のアクセスポイントに対して、処理903及び処理913との間の処理が繰り返し実行される。
周辺のアクセスポイントAP(N)のRSSI値及び周波数(チャネル)情報を読み出す処理904が実行される。処理904では、処理801により記憶部340に格納されている、RSSI値及び周波数(チャネル)情報に参照し、対象となる端末の周辺に位置する無線LANのアクセスポイントのうち、処理903で選択されたAP(N)に関するRSSI値及び周波数(チャネル)情報を読み出す。
AP(S)のチャネルとAP(N)のチャネルとの差分の絶対値が閾値Y値よりも小さいかどうかを判定する処理905が実行される。処理905では、処理901により読み出されたAP(S)の周波数(チャネル)情報と、処理904により読み出されたAP(N)の周波数(チャネル)情報とに基づき、AP(S)のチャネルとAP(N)のチャネルとの差分の絶対値を算出する。そして、この差分の絶対値と閾値Y値とを比較する。差分の絶対値が閾値Y値より小さくない場合は、通知された周辺のアクセスポイント全てに対して処理を完了したかどうかを確認する処理913を実行する。処理を完了している場合には処理903に移り、処理を完了していない場合には、周辺の他の無線LANのアクセスポイントを対象にした処理を実行するために処理903に戻る。他方、差分の絶対値が閾値Y値より小さい場合は、AP(S)が利用している周波数と、処理の対象となっているAP(N)が利用している周波数とが、互いに重複しているため、CSMA/CAが動作する可能性があるとして、CSMA/CAが動作するかどうかをさらに判定をするために処理906に移る。なお、閾値Y値は、無線LANの周波数帯域とチャネルの周波数間隔に応じてチャネル間での干渉が生じるかどうかに従い適宜設定すればよい。
AP(S)とAP(N)に関してCSMA/CAの推定情報があるかどうかを判定する処理906が実行される。処理906では、記憶部340に、AP(S)と、対象となるAP(N)とに関するCSMA/CAの推定情報があるかどうかを判定する。CSMA/CAの推定情報があると判定された場合には処理907に移り、CSMA/CAの推定情報がないと判定された場合には処理911に移る。
通知情報のAP(S)のRSSI値が推定情報のAP(S)のRSSI値よりも大きいかどうかを判定する処理907が実行される。処理907では、記憶部340に記憶されている推定情報と、端末から通知された通知情報とを比較する。より具体的には、推定情報におけるAP(S)のRSSI値と、通知情報におけるAP(S)のRSSI値とを比較する。推定情報におけるAP(S)のRSSI値の方が大きい場合には、AP(S)に対してより近い端末の情報であると判断できる。そのため、推定情報の更新を行わずに処理913を実行する。そして、通知された周辺のアクセスポイント全てに対して処理を完了していない場合には、周辺の他の無線LANのアクセスポイントを対象にした処理を実行するために処理903に戻る。他方、通知情報におけるAP(S)のRSSI値の方が大きい場合には、情報を通知した端末がAP(S)のより近くに位置すると判断でき、処理908に移る。この処理907により、AP(S)に対してより近い端末が通知するRSSI値に従ってCSMA/CAを推定できるようになるため、互いに電波の到着範囲にあるアクセスポイントの組み合わせの抽出精度が高まる。なお、推定情報におけるAP(S)のRSSI値と、通知情報におけるAP(S)のRSSI値とが同じ大きさの場合には、処理908又は処理913のどちらに移ってもよい。
AP(N)のRSSI値が閾値Z値よりも大きいかどうかを判定する処理908が実行される。処理908では、無線LANの電波の到達距離や、CSMA/CAが動作する際の電波強度の閾値等の従って適宜設定された閾値Z値と、AP(N)のRSSI値とを比較することで、間接的に、AP(S)と、対象となるAP(N)との距離を推測する。
そして、処理908において、AP(N)のRSSI値が閾値Z値よりも大きいと判定された場合には、通知情報に従い推定情報を更新する処理909が実行される。処理909では、AP(S)と、対象となるAP(N)とが、互いに電波が到達する距離に位置しているとして、端末から通知された情報を用いて、図6におけるUE infoを更新する。
処理908において、AP(N)のRSSI値が閾値Z値よりも大きくないと判定された場合には、AP(S)と、処理の対象であるAP(N)のCSMA/CAが動作しないとして、推定情報から削除する処理910が実行される。なお、処理910において推定情報から削除される理由は、通知情報に従い、処理の対象となっているAP(N)のRSSI値が小さく、AP(S)とAP(N)とが、互いに電波の届かない距離に位置していると推定されたことによる。
処理906に次いで、AP(N)のRSSI値が閾値Z値よりも大きいかどうかを判定する処理911が実行される。この処理911は、AP(S)のチャネルと、処理の対象となっているAP(N)のチャネルとの差分の絶対値が閾値Y値より小さく、AP(S)と、処理の対象となっているAP(N)との間のCSMA/CAの推定情報が存在しない場合に実行される処理である。そこで、AP(N)のRSSI値が閾値Z値よりも大きいと判定された場合には、処理912に移り、AP(S)とAP(N)とが、互いに電波が届く距離に位置していてCSMA/CAが動作すると推定して、図6におけるUE infoに追加する処理を実行する。他方で、AP(N)のRSSI値が閾値Z値よりも大きくないと判定された場合には、AP(S)とAP(N)とが、互いに電波の届かない距離に位置していると推定できるので、処理913を実行する。そして、通知された周辺のアクセスポイント全てに対して処理を完了していない場合には、周辺の他の無線LANのアクセスポイントを対象にした処理を実行するために処理903に戻る。
図10に、実施例の通信方法における処理の他の詳細例が示される。図10には、図8に示される、端末の無線品質を測定する処理803の詳細な例が示される。図10に示される処理は、無線品質測定部320によって実行される処理であって、処理1000によって開始され、処理1009によって終了する。なお、図10に示される処理の説明のために、端末が接続する、あるいは接続しようとしている無線LANのアクセスポイントをAP(S)と表し、処理の対象となる周辺の無線LANのアクセスポイントをAP(N)と表す。また、無線品質としてSIR値を採用している場合に沿って例示する。
接続するアクセスポイントAP(S)のRSSI値に基づきSignal値を設定する処理1001が実行される。処理1001では、記憶部340に記憶されている、AP(S)のRSSI値をSignal値として設定する。
Interference値を初期化する処理1002が実行される。処理1002では、雑音を考慮して初期値を設定してもよい。
通知された周辺のアクセスポイントAP(N)のうち未選択の1つを選択する処理1003が実行される。なお、後述するが、AP(S)に対する、周辺の無線LANのアクセスポイント各々による電波干渉の影響を考慮するために、通知された周辺のアクセスポイント数だけ、処理1003及び処理1007との間の処理が繰り返し実行される。
AP(S)とAP(N)に関してCSMA/CAの推定情報があるかどうかを判定する処理1004が実行される。CSMA/CAの推定情報があると判定された場合には、図9に示される処理の結果、AP(S)及びAP(N)どうしのデータ送信において干渉が発生しないと推定されているため、信号品質の計算にAP(N)による信号を含めないようにするため、通知された周辺のアクセスポイント全てに対して処理を完了したかどうかを確認する処理1007が実行される。処理を完了している場合には処理1008に移り、処理を完了していない場合には、周辺の他の無線LANのアクセスポイントを対象にした処理を実行するために処理1003に戻る。他方で、CSMA/CAの推定情報がないと判定された場合には、処理1005に移る。なお、信号品質の計算にAP(N)による信号を含めないようにするとは、Interference値の計算に含めないようにしてもよいし、全体の信号品質から、該当するAP(N)の信号強度の影響を差し引いて信号品質の測定をするようにしてもよい。
AP(S)のチャネルとAP(N)のチャネルとの差分の絶対値が閾値W値よりも小さいかどうかを判定する処理1005が実行される。処理1005では、記憶部340に記憶された情報に基づいて、AP(S)のチャネルとAP(N)のチャネルとの差分の絶対値を算出する。そして、この差分の絶対値と閾値W値とを比較する。差分の絶対値が閾値W値より小さくない場合は、処理1007を実行する。そして、通知された周辺のアクセスポイント全てに対して処理を完了していない場合には、周辺の他の無線LANのアクセスポイントを対象にした処理を実行するために処理1003に戻る。他方、差分の絶対値が閾値W値より小さい場合は、AP(S)が利用している周波数と、処理の対象となっているAP(N)が利用している周波数とが、互いに重複しているため、AP(S)及びAP(N)どうしのデータ送信において干渉が発生すると判定されて、処理1006に移る。閾値W値は、無線LANの周波数帯域とチャネルの周波数間隔に応じてチャネル間での干渉が生じるかどうかに従い適宜設定すればよい。
AP(N)のRSSI値をInterference値に加算する処理1006が実行される。処理1006では、処理1005の判定の結果、AP(S)及びAP(N)どうしのデータ送信において干渉が発生すると判定されているため、AP(N)のRSSI値をInterferenceとして加算する。
通知された周辺のアクセスポイントAP(N)の数だけ処理が繰り返されると、SIR値を算出する処理1008が実行される。処理1008では、通知された周辺のアクセスポイント数だけ処理が繰り返された結果、AP(S)とデータ送信において干渉が発生すると判定されたAP(N)の各々のRSSI値が加算されたInterference値に用いて、SIR値=Signal値/Interference値、という式により、SIR値を算出する。
図11に、実施例の通信方法における処理の他の詳細例が示される。図11には、図8に示される、端末への無線アクセスの指示をする処理804の詳細な例が示される。図11に示される処理は、無線アクセス指示部330によって実行される処理であって、処理1100によって開始され、測定したSIR値に基づいて無線アクセスの切り替えを指示する処理1101が実行され、処理1102によって終了する。
処理1101では、無線品質測定部320によって測定されたSIR値に基づき、端末に対する無線アクセスの設定をして、端末に指示を行う。例えば、SIR値と、電波品質が悪いかどうかを決定するための閾値V値と比較して、SIR値が閾値V値よりも小さい端末は、無線信号の品質が悪いとして、この端末に対して、別の無線アクセスへ接続させる設定をし、端末への切り替え指示をする。また、SIR値が閾値V値より小さくない場合は、端末への無線アクセスの指示を行わなくてもよいが、例えば、いずれの場合でも端末へのメッセージ送信による指示を行い、メッセージの情報を利用して指示してもよい。また、他の適用例として、アクセスポイントに接続する端末数が閾値を超えている場合に、SIR値が最も小さい端末、又はSIR値が小さい所定数の端末に対して、別の無線アクセスへ切り替えるよう指示をしてもよい。
図12に、実施例の通信方法で使用される情報の他の例が示される。図12には、図6に示される、無線LANのアクセスポイントどうしのCSMA/CAの推定情報の例に加えて、さらに、無線LANのアクセスポイントどうしのCSMA/CAが動作すると推定した回数“Count”及び推定情報が有効であるかどうかを示すフラグ“Flag”が関連付けられている例である。例えば、“APx”と“APy”との間でCSMA/CAが動作すると推定した回数が“3”であり、その結果、端末におけるSIR値を計算する際に“APx”及び“APy”のRSSI値が対象になる場合には、互いに電波干渉が生じないとして計算させるために、この推定情報が有効であることを示す“ON”が関連付けられている。なお、図12に示される推定情報の更新については、図13〜15に示される処理の説明に合わせて後述する。
図13〜15に、実施例の通信方法における処理の他の詳細例が示される。図13〜15では、表示のために処理フローが複数の図に分割されているが、アクセスポイント間のCSMA/CAの推定を更新する処理802の他の詳細例である。図13〜15に示される処理は、推定部310によって実行される処理であって、処理1300によって開始され、処理1320によって終了する。
なお、図13〜15に示される処理には、図9に示された処理と同じ処理を含むが、図9に示された処理との違いは、推定情報を削除するのではなく推定情報を保持しつつ、CSMA/CAが動作すると推定された回数に従って推定情報を有効にするか無効にするかを管理している点である。これにより、アクセスポイント間のCSMA/CAの推定の更新において、端末からRSSI値及びチャネルの情報が繰り返し通知された場合に、AP(S)のRSSI値が今回より低い場合にもかかわらず、AP(S)とAP(N)との間でCSMA/CAが動作すると判断して、推定情報が新しく生成し直されることを防ぐことも可能である。つまり、AP(S)のRSSI値が高い場合をより信頼して、AP(N)とのCSMA/CAの推定を行うことができる。
アクセスポイントAP(S)のRSSI値及び周波数(チャネル)情報を読み出す処理1301が実行される。処理1301では、処理801により記憶部340に格納されている、RSSI値及び周波数(チャネル)情報を参照し、対象となる端末のAP(S)に関するRSSI値及び周波数(チャネル)情報を読み出す。
接続するアクセスポイントAP(S)のRSSI値が閾値X値よりも大きいかどうかを判定する処理1302が実行される。処理1302では、処理1301により読み出されたRSSI値と閾値X値とを比較して、AP(S)のRSSI値が閾値X値よりも大きいかどうかを判定する。AP(S)のRSSI値が閾値X値よりも大きくない場合には、処理1319に移り図13〜15に示される処理を終える。
なお、AP(S)のRSSI値と閾値X値との比較は、間接的に、AP(S)と、対象となる端末との距離を推測していることに相当する。従って、AP(S)のRSSI値が閾値X値よりも大きい場合には、対象となる端末がAP(S)の近くに位置することを意味しているため、AP(S)と周辺の無線LANのアクセスポイント間のCSMA/CAの推定を行うために処理1303に移る。なお、閾値X値は、無線LANの電波の到達距離や、CSMA/CAが動作する際の電波強度の閾値等の従って、適宜設定すればよい。
通知された周辺のアクセスポイントAP(N)のうち未選択の1つを選択する処理1303が実行される。なお、後述するが、AP(S)と、周辺の無線LANのアクセスポイント各々とのCSMA/CAの推定を行うために、通知された周辺のアクセスポイント数だけ、処理1303及び処理1319との間の処理が繰り返し実行される。
周辺のアクセスポイントAP(N)のRSSI値及び周波数(チャネル)情報を読み出す処理1304が実行される。処理1304では、処理801により記憶部340に格納されている、RSSI値及び周波数(チャネル)情報を参照し、対象となる端末の周辺に位置する無線LANのアクセスポイントのうち、処理1303で選ばれたAP(N)に関するRSSI値及び周波数(チャネル)情報を読み出す。
AP(S)のチャネルとAP(N)のチャネルとの差分の絶対値が閾値Y値よりも小さいかどうかを判定する処理1305が実行される。処理1305では、処理1301により読み出されたAP(S)の周波数(チャネル)情報と、処理1304により読み出されたAP(N)の周波数(チャネル)情報とに基づき、AP(S)のチャネルとAP(N)のチャネルとの差分の絶対値を算出する。そして、この差分の絶対値と閾値Y値とを比較する。差分の絶対値が閾値Y値より小さくない場合は、通知された周辺のアクセスポイント全てに対して処理を完了したかどうかを確認する処理1319を実行する。そして、処理を完了している場合には処理1320に移り、処理を完了していない場合には、周辺の他の無線LANのアクセスポイントを対象にした処理を実行するために処理1303に戻る。他方、差分の絶対値が閾値Y値より小さい場合は、AP(S)が利用している周波数と、処理の対象となっているAP(N)が利用している周波数とが、互いに重複しているため、CSMA/CAが動作する可能性があるとして、CSMA/CAが動作するかどうかをさらに判定をするために処理1306に移る。なお、閾値Y値は、無線LANの周波数帯域とチャネルの周波数間隔に応じてチャネル間での干渉が生じるかどうかに従い適宜設定すればよい。
AP(S)とAP(N)に関してCSMA/CAの推定情報があるかどうかを判定する処理1306が実行される。処理1306では、記憶部340に、AP(S)と、対象となるAP(N)とに関するCSMA/CAの推定情報があるかどうかを判定する。CSMA/CAの推定情報があると判定された場合には処理1307に移り、CSMA/CAの推定情報がないと判定された場合には処理1317に移る。
通知情報のAP(S)のRSSI値が推定情報のAP(S)のRSSI値よりも大きいかどうかを判定する処理1307が実行される。処理1307では、記憶部340に記憶されている推定情報と、端末から通知された通知情報とを比較する。より具体的には、推定情報におけるAP(S)のRSSI値と、通知情報におけるAP(S)のRSSI値とを比較する。通知情報におけるAP(S)のRSSI値の方が大きい場合には、処理1308に移る。他方、推定情報におけるAP(S)のRSSI値の方が大きくない場合には、処理1314に移る。この処理1307により、AP(S)に対してより近い端末が通知するRSSI値に従ってCSMA/CAを推定できる。
AP(N)のRSSI値が閾値Z値よりも大きいかどうかを判定する処理1308が実行される。処理1308では、無線LANの電波の到達距離や、CSMA/CAが動作する際の電波強度の閾値等の従って適宜設定された閾値Z値と、AP(N)のRSSI値とを比較することで、間接的に、AP(S)と、対象となるAP(N)との距離を推測する。
処理1308において、AP(N)のRSSI値が閾値Z値よりも大きくないと判定された場合には、AP(S)と、処理の対象であるAP(N)のCSMA/CAが動作しないとして、推定情報を無効にしてCount値を初期化する処理1309が実行される。具体的には、図12に示される推定情報における該当するアクセスポイントのペアについて、“Flag”を“OFF”にして、“Count”を“0”に設定する。このように設定する理由は、通知情報に従い、処理の対象となっているAP(N)のRSSI値が小さく、AP(S)とAP(N)とが、互いに電波の届かない距離に位置していると推定されたことによる。なお、処理1309を終えると処理1313に移る。
処理1308において、AP(N)のRSSI値が閾値Z値よりも大きいと判定された場合には、推定情報が無効かどうかを判定する処理1310が実行される。処理1310では、図12に示される推定情報における該当するアクセスポイントのペアについて、“Flag”を“OFF”かどうかを判定する。推定情報が無効であると判定された場合には処理1311に移り、推定情報が有効であると判定された場合には処理1312に移る。
推定情報を有効にしてCount値を増やす処理1311が実行される。処理1311では、処理1305及び1308の結果、該当するアクセスポイントのペアについてCSMA/CAが動作すると推定されており、図12に示される推定情報に、該当するアクセスポイントのペアが既に登録されているので、アクセスポイントのペアの“Flag”を“ON”に変更し、“Count”の値を1つ増やす。
推定情報のCount値を増やす処理1312が実行される。処理1311では、図12に示される推定情報において、“Flag”が既に“ON”に設定されているため、“Flag”の設定はそのままにして、“Count”の値を1つ増やす。
処理1309、処理1311、又は処理1312に次いで、通知情報に従い推定情報を更新する処理1313が実行される。処理1313では、処理1309、処理1311、又は処理1312の処理結果に従い、AP(S)及び対象となるAP(N)どうしの電波の到達距離に合わせて、端末から通知された情報を用いて、図12の推定情報を更新する。
処理1307において、推定情報におけるAP(S)のRSSI値の方が大きくなると判定された場合に、AP(N)のRSSI値が閾値Z値よりも大きいかどうかを判定する処理1314が実行される。AP(N)のRSSI値が閾値Z値よりも大きいと判定された場合には処理1315に移り、AP(N)のRSSI値が閾値Z値よりも大きくないと判定された場合には処理1319に移る。そして、通知された周辺のアクセスポイント全てに対して処理を完了していない場合には、周辺の他の無線LANのアクセスポイントを対象にした処理を実行するために処理1303に戻る。
推定情報が無効かどうかを判定する処理1315が実行される。推定情報が有効であると判定された場合には、該当するアクセスポイントのペアについて、図12の“Count”の値を1つ増やし、処理1319に移る。推定情報が無効であると判定された場合には、処理1319に移り、通知された周辺のアクセスポイント全てに対して処理を完了していない場合には、周辺の他の無線LANのアクセスポイントを対象にした処理を実行するために処理1303に戻る。
処理1306において、CSMA/CAの推定情報がないと判定された場合には、AP(N)のRSSI値が閾値Z値よりも大きいかどうかを判定する処理1317が実行される。この処理1317は、AP(S)のチャネルと、処理の対象となっているAP(N)のチャネルとの差分の絶対値が閾値Y値より小さく、AP(S)と、処理の対象となっているAP(N)との間のCSMA/CAの推定情報が存在しない場合に実行される処理である。そこで、AP(N)のRSSI値が閾値Z値よりも大きいと判定された場合には、処理1318に移り、AP(S)とAP(N)とが、互いに電波が届く距離に位置していてCSMA/CAが動作すると推定して、図12におけるUE infoに追加する処理を実行する。他方で、AP(N)のRSSI値が閾値Z値よりも大きくないと判定された場合には、AP(S)とAP(N)とが、互いに電波の届かない距離に位置していると推定できるので、処理1319に移り、通知された周辺のアクセスポイント全てに対して処理を完了していない場合には、周辺の他の無線LANのアクセスポイントを対象にした処理を実行するために処理1303に戻る。
図16に、実施例の通信方法における処理の他の詳細例が示される。図16には、図8に示される、端末の無線品質を測定する処理803の他の詳細例が示される。図16に示される処理は、無線品質測定部320によって実行される処理であって、処理1600によって開始され、処理1609によって終了する。なお、図16に示される処理の説明のために、端末が接続する、あるいは接続しようとしている無線LANのアクセスポイントをAP(S)と表し、処理の対象となる周辺の無線LANのアクセスポイントをAP(N)と表す。また、無線品質としてSIR値を採用している場合に沿って例示する。
接続するアクセスポイントAP(S)のRSSI値に基づきSignal値を設定する処理1601が実行される。処理1601では、記憶部340に記憶されている、AP(S)のRSSI値をSignal値として設定する。
Interference値を初期化する処理1602が実行される。処理1602では、雑音を考慮して初期値を設定してもよい。
通知された周辺のアクセスポイントAP(N)のうち未選択の1つを選択する処理1603が実行される。後述するが、AP(S)に対する、周辺の無線LANのアクセスポイント各々による電波干渉の影響を考慮するために、通知された周辺のアクセスポイント数だけ、処理1603及び処理1607との間の処理が繰り返し実行される。
AP(S)とAP(N)に関してCSMA/CAの推定情報があって、かつ推定情報が有効でCount値が閾値N値よりも大きいかどうかを判定する処理1604が実行される。処理1604では、CSMA/CAの推定情報があるものの、推定情報が有効でない場合は、該当するアクセスポイントのペアにおいてCSMA/CAが動作するとして扱われていないため、Interference値を算出する際にAP(N)のRSSI値を考慮するかの判定を継続するために、処理1605に移る。また、推定情報が有効であっても、推定情報におけるCount値が、CSMA/CAが動作するかどうかを判定するための閾値N値より大きくない場合にも、該当するアクセスポイントのペアにおいてCSMA/CAが動作するとして扱われていないため、Interference値を算出する際にAP(N)のRSSI値を考慮するかの判定を継続するために、処理1605に移る。他方で、推定情報が有効でCount値が閾値N値よりも大きい場合には、該当するアクセスポイントどうしにおいてCSMA/CAが動作すると判定される。その結果、SIR値を算出する際に、信号品質の計算にAP(N)による信号を含めないようにする。これは、例えば、このAP(N)のRSSI値をInterfereance値に加算しないことであり、この場合、通知された周辺のアクセスポイント全てに対して処理を完了したかどうかを確認する処理1607を実行する。処理を完了している場合には処理1608に移り、処理を完了していない場合には、周辺の他の無線LANのアクセスポイントを対象にした処理を実行するために処理1603に戻る。なお、信号品質の計算にAP(N)による信号を含めないようにする例として、全体の信号品質から、該当するAP(N)の信号強度の影響を差し引いて信号品質の測定をするようにしてもよい。
AP(S)のチャネルとAP(N)のチャネルとの差分の絶対値が閾値W値よりも小さいかどうかを判定する処理1605が実行される。処理1605では、記憶部340に記憶された情報に基づいて、AP(S)のチャネルとAP(N)のチャネルとの差分の絶対値を算出する。そして、この差分の絶対値と閾値W値とを比較する。差分の絶対値が閾値W値より小さくない場合は、処理1607を実行する。そして、通知された周辺のアクセスポイント全てに対して処理を完了していない場合には、周辺の他の無線LANのアクセスポイントを対象にした処理を実行するため処理1603に戻る。他方、差分の絶対値が閾値W値より小さい場合は、AP(S)が利用している周波数と、処理の対象となっているAP(N)が利用している周波数とが、互いに重複しているため、AP(S)及びAP(N)どうしのデータ送信において干渉が発生すると判定されて、処理1606に移る。閾値W値は、無線LANの周波数帯域とチャネルの周波数間隔に応じてチャネル間での干渉が生じるかどうかに従い適宜設定すればよい。
AP(N)のRSSI値をInterference値に加算する処理1606が実行される。処理1606では、処理1605の判定の結果、AP(S)及びAP(N)どうしのデータ送信において干渉が発生すると判定されているため、AP(N)のRSSI値をInterferenceとして加算する。
通知された周辺のアクセスポイント数だけ処理が繰り返されると、SIR値を算出する処理1608が実行される。処理1608では、通知された周辺のアクセスポイントAP(N)の数だけ処理が繰り返された結果、AP(S)とデータ送信において干渉が発生すると判定されたAP(N)の各々のRSSI値が加算されたInterference値に用いて、SIR値=Signal値/Interference値、という式により、SIR値を算出する。
図17に、実施例の基地局の他の例が示される。この基地局は、例えばフェムト基地局等であり、制御装置の一例であるサーバ1の機能と、無線LANのアクセスポイントの機能と、CDMAやLTE等のセルラ向け基地局の機能とを有している。具体的には、制御処理部1700によりサーバ1の機能が実現され、無線LAN処理部1710及び無線LANインターフェース1720により無線LANのアクセスポイントAP3等の機能が実現され、セルラ処理部1730及びセルラインターフェース1740により基地局2の機能が実現されている。。なお、ネットワークIF1750は、NIC260により実現され、上述した機能は、図3に示されるハードウェア構成を使用して実現すればよい。そして、この基地局内で各端末のSIR値を測定し、このSIR値に応じて、無線LAN処理部1710及び無線LANインターフェース1720を使用した無線アクセスから、セルラ処理部1730及びセルラインターフェース1740を使用した無線アクセスへ切り替える。
以上に述べた実施例によれば、周辺のアクセスポイントによる信号干渉を考慮する場合に、アクセスポイントどうしが、一方の信号送信が終わるまで他方は信号送信を待機する関係にあれば、互いの信号が干渉しないとして、信号品質を適切に測定する。こうして、実際の無線環境に合わせて、適切な端末を別の無線アクセスへ切り替えることができる。