ダウンドロー法では、溶融ガラスが成形体から下方に向かって流下するため、長い徐冷炉を成形体の下に配置するためには、成形体を高所に配置しなければならない。しかしながら、実際上は、工場の天井の高さ制約などにより、成形体を配置できる高さには制約がある。このため、ダウンドロー法では、徐冷炉の長さ寸法に制約があり、十分に長い徐冷炉を配置することが困難である場合もある。徐冷炉の長さが短い場合、ガラスリボンの冷却速度が高くなるため、熱収縮率の小さなガラス基板を成形することが困難となる。
このため、一般的に、ダウンドロー法を用いて熱収縮率の小さなガラス基板を製造する場合、成形後に、熱収縮率を小さくするための熱処理(オフラインアニール)が行われていた。よって、製造工程が煩雑であり、かつ製造に長い時間を要するという問題がある。従って、ダウンドロー法を用いて熱収縮率の小さなガラス基板を直接製造し得る方法が切望されている。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、ダウンドロー法により熱収縮率の小さなガラス基板を直接製造し得るガラス基板の製造方法を提供することにある。
なお、熱収縮率に関しては、例えば、上記の特許文献1に、(徐冷点+50℃)の温度から(徐冷点−100℃)の温度の範囲における冷却速度が熱収縮率に大きく関与することが記載されている。また、特許文献1には、上記温度範囲における冷却速度を高くすることによって、幅方向における熱収縮率のばらつきを小さくできる旨が記載されている。具体的には、徐冷点から(徐冷点−100℃)の温度の範囲におけるガラスリボンの平均冷却速度を200℃/分以上、好ましくは300℃/分以上、より好ましくは350℃/分以上、さらに好ましくは400℃/分以上、特に好ましくは500℃/分以上にすることにより幅方向における熱収縮率のばらつきを小さくできる旨が記載されている。しかしながら、この場合に成形されるガラス基板の幅方向中央部における熱収縮率は、40ppm以上となり、特許文献1に記載の方法では、熱収縮率が十分に小さなガラス基板を直接製造することは困難である。
本発明者らは、鋭意研究の結果、以下の事項(1)〜(3)を見出し、その結果、本発明をなすに至った。
(1)ガラス基板の熱収縮率は、主として、徐冷点から徐冷点よりも50℃低い温度までの間の温度範囲におけるガラスリボンの冷却速度によって決まること
(2)上記温度範囲におけるガラスリボンの冷却速度と、ガラス基板の熱収縮率との関係は、ガラスリボンの徐冷点(Ta)によって変化すること
(3)上記温度範囲におけるガラスリボンの冷却速度を、ガラスリボンの徐冷点(Ta)に相関する所定の速度範囲内にすることにより、上記温度範囲以外の温度範囲におけるガラスリボンの冷却速度を速くした場合であっても熱収縮率の小さなガラス基板が得られること
すなわち、本発明に係るガラス基板の製造方法は、オーバーフローダウンドロー法やスロット(スリット)ダウンドロー法などのダウンドロー法により溶融ガラスをリボン状のガラスリボンに形成する形成工程と、ガラスリボンを徐冷する徐冷工程と、徐冷工程の後に、ガラスリボンを切断してガラス基板を得る切断工程とを備えるガラス基板の製造方法であって、徐冷工程において、ガラスリボンの徐冷点からガラスリボンの徐冷点よりも50℃低い温度までの間の温度範囲におけるガラスリボンの平均冷却速度が下記式(1)を満たすようにガラスリボンを冷却することを特徴とする。
log10R≦0.00018361Ta2−0.23414Ta+75.29 ……(1)
但し、
R:ガラスリボンの平均冷却速度(℃/分)、
Ta:ガラスリボンの徐冷点(℃)、
である。
なお、本発明において、「徐冷点」とは、ガラスが1013dPa・sの粘度を示す温度であり、ASTM C336−71に規定の方法により測定した温度である。
また、「平均冷却速度」とは、所定の温度領域をガラスリボンの幅方向中央部分が通過するのに要する時間を算出し、上記所定の温度領域内の温度差を通過に要した時間で除算して求めた速度である。
本発明では、ガラス基板の熱収縮率の大きさを最も大きく左右する温度範囲である、ガラスリボンの徐冷点からガラスリボンの徐冷点よりも50℃低い温度までの間の温度範囲におけるガラスリボンの平均冷却速度が上記式(1)を満たす低い範囲に設定されている。このため、熱収縮率の小さなガラス基板を製造することができる。具体的には、熱収縮率が30ppm以下のガラス基板を製造することができる。なお、徐冷工程において、ガラスリボンの徐冷点からガラスリボンの徐冷点よりも50℃低い温度までの間の温度範囲におけるガラスリボンの平均冷却速度が下記式(1)を満たすと共に、ガラスリボンの徐冷点(Ta)が、上記式(1)の臨界を表す二次関数(log10R=0.00018361Ta2−0.23414Ta+75.29)の極値(638℃)よりも高いことが好ましい。
熱収縮率のさらに小さなガラス基板を製造する観点からは、ガラスリボンの徐冷点からガラスリボンの徐冷点よりも50℃低い温度までの間の温度範囲におけるガラスリボンの平均冷却速度がさらに低いことが好ましい。
具体的には、ガラスリボンの徐冷点からガラスリボンの徐冷点よりも50℃低い温度までの間の温度範囲におけるガラスリボンの平均冷却速度が下記式(2)を満たすようにガラスリボンの徐冷を行うことが好ましい。そうすることにより、熱収縮率が23ppm以下のガラス基板を製造することができる。
log10R≦0.00013786Ta2−0.17422Ta+55.53 ……(2)
また、徐冷工程において、ガラスリボンの徐冷点からガラスリボンの徐冷点よりも50℃低い温度までの間の温度範囲におけるガラスリボンの平均冷却速度が下記式(2)を満たすと共に、ガラスリボンの徐冷点(Ta)が、上記式(1)の臨界を表す二次関数(log10R=0.00013786Ta2−0.17422Ta+55.53)の極値(632℃)よりも高いことがより好ましい。
さらには、ガラスリボンの徐冷点からガラスリボンの徐冷点よりも50℃低い温度までの間の温度範囲におけるガラスリボンの平均冷却速度が下記式(3)を満たすようにガラスリボンの徐冷を行うことが好ましい。そうすることにより、熱収縮率が20ppm以下のガラス基板を製造することができる。
log10R≦0.00011821Ta2−0.14847Ta+47.03 ……(3)
また、徐冷工程において、ガラスリボンの徐冷点からガラスリボンの徐冷点よりも50℃低い温度までの間の温度範囲におけるガラスリボンの平均冷却速度が下記式(3)を満たすと共に、ガラスリボンの徐冷点(Ta)が、上記式(1)の臨界を表す二次関数(log10R=0.00011821Ta2−0.14847Ta+47.03)の極値(628℃)よりも高いことがより好ましい。
さらには、ガラスリボンの徐冷点からガラスリボンの徐冷点よりも50℃低い温度までの間の温度範囲におけるガラスリボンの平均冷却速度が下記式(4)を満たすようにガラスリボンの徐冷を行うことが好ましい。そうすることにより、熱収縮率が10ppm以下のガラス基板を製造することができる。
log10R≦0.000054326Ta2−0.064985Ta+19.56 ……(4)
また、徐冷工程において、ガラスリボンの徐冷点からガラスリボンの徐冷点よりも50℃低い温度までの間の温度範囲におけるガラスリボンの平均冷却速度が下記式(3)を満たすと共に、ガラスリボンの徐冷点(Ta)が、上記式(1)の臨界を表す二次関数(log10R=0.000054326Ta2−0.064985Ta+19.56)の極値(598℃)よりも高いことがより好ましい。
また、熱収縮率が小さいガラス基板をより確実に得る観点からは、ガラスリボンの徐冷点からガラスリボンの徐冷点よりも50℃低い温度までの間の温度範囲におけるガラスリボンの最大冷却速度(log10RMAX)が下記の式(5)を満たしていることが好ましく、下記の式(6)を満たしていることがより好ましく、下記の式(7)を満たしていることがさらに好ましく、下記式(8)を満たしていることがなお好ましい。
また、それと同時に、log10RMAXの範囲を規定する式(5)〜(8)の臨界を示す二次関数の極値よりも、ガラスリボンの徐冷点が高いことが好ましい。
log10RMAX≦0.00018361Ta2−0.23414Ta+75.29 ……(5)
log10RMAX≦0.00013786Ta2−0.17422Ta+55.53 ……(6)
log10RMAX≦0.00011821Ta2−0.14847Ta+47.03 ……(7)
log10RMAX≦0.000054326Ta2−0.064985Ta+19.56 ……(8)
上述のように、得られるガラス基板の熱収縮率の大きさは、ガラスリボンの徐冷点からガラスリボンの徐冷点よりも50℃低い温度までの間の温度範囲におけるガラスリボンの冷却速度に大きく左右される。それに対して、ガラスリボンの徐冷点からガラスリボンの徐冷点よりも50℃低い温度までの間の温度範囲以外の温度範囲におけるガラスリボンの冷却速度は、ガラス基板の熱収縮率の大きさにそれほど影響を及ぼさない。従って、本発明において、ガラスリボンの徐冷点からガラスリボンの徐冷点よりも50℃低い温度までの間の温度範囲以外の温度範囲におけるガラスリボンの冷却速度は、設置可能な徐冷炉の長さなどに応じて適宜設定することができる。
例えば、徐冷工程において、ガラスリボンの徐冷点より高い温度域におけるガラスリボンの平均冷却速度と、ガラスリボンの徐冷点よりも50℃低い温度よりも低い温度域におけるガラスリボンの平均冷却速度とのそれぞれが、ガラスリボンの徐冷点からガラスリボンの徐冷点よりも50℃低い温度までの間の温度範囲におけるガラスリボンの平均冷却速度よりも高くなるようにガラスリボンを冷却することができる。この場合であっても、熱収縮率の小さなガラス基板を製造することができる。
すなわち、本発明に従い、ガラスリボンの徐冷点からガラスリボンの徐冷点よりも50℃低い温度までの間の温度範囲におけるガラスリボンの平均冷却速度を、ガラスリボンの徐冷点の関数で定義される所定の速度以下とすることにより、ガラスリボンの徐冷点からガラスリボンの徐冷点よりも50℃低い温度までの間の温度範囲以外の温度範囲におけるガラスリボンの平均冷却速度を高くすることが可能となる。従って、本発明によれば、短い徐冷炉を有するガラス製造装置を用いて、ダウンドロー法により、熱収縮率の小さなガラス基板を直接製造することが可能となる。
上述のように、ガラスリボンの徐冷点からガラスリボンの徐冷点よりも50℃低い温度までの間の温度範囲以外の温度範囲におけるガラスリボンの冷却速度は、ガラスリボンの徐冷点からガラスリボンの徐冷点よりも50℃低い温度までの間の温度範囲におけるガラスリボンの冷却速度ほどは、ガラス基板の熱収縮率の大きさに大きく影響を及ぼさない。しかしながら、ガラスリボンの徐冷点からガラスリボンの徐冷点よりも50℃低い温度までの間の温度範囲以外の温度範囲のなかでも、ガラスリボンの徐冷点よりも50℃低い温度からガラスリボンの徐冷点よりも200℃低い温度範囲におけるガラスリボンの冷却速度は、ガラスリボンの徐冷点よりも200℃低い温度よりも低い温度域におけるガラスリボンの冷却速度や、ガラスリボンの徐冷点よりも高い温度域におけるガラスリボンの冷却速度よりも、得られるガラス基板の熱収縮率の大きさに及ぼす影響が大きい。特に、ガラスリボンの徐冷点よりも50℃低い温度からガラスリボンの徐冷点よりも200℃低い温度範囲内の高温側の温度範囲におけるガラスリボンの冷却速度ほど、得られるガラス基板の熱収縮率の大きさに及ぼす影響が大きい。従って、ガラスリボンの徐冷点よりも50℃低い温度からガラスリボンの徐冷点よりも200℃低い温度までの温度範囲内の高温側の温度範囲におけるガラスリボンの平均冷却速度も、上記式(1)を満たすことが好ましく、上記式(2)を満たすことがより好ましく、上記式(3)を満たすことがさらに好ましく、上記式(4)を満たすことがなお好ましい。また、ガラスリボンの徐冷点よりも50℃低い温度からガラスリボンの徐冷点よりも200℃低い温度までの温度範囲全体におけるガラスリボンの平均冷却速度が上記式(1)を満たすことがなお好ましく、上記式(2)を満たすことがさらになお好ましく、上記式(3)を満たすことが特に好ましく、上記式(4)を満たすことがなお好ましい。
すなわち、徐冷工程において、Txをガラスリボンの徐冷点よりも50℃低い温度より低く、ガラスリボンの徐冷点よりも200℃低い温度以上である温度としたときに、ガラスリボンの徐冷点からTxまでの温度範囲におけるガラスリボンの平均冷却速度が上記式(1)を満たすようにガラスリボンを冷却することが好ましく、式(2)を満たすようにガラスリボンを冷却することがより好ましく、式(3)を満たすようにガラスリボンを冷却することがさらに好ましく、上記式(4)を満たすようにガラスリボンを冷却することがなお好ましい。そうすることにより、より熱収縮率の小さなガラス基板を製造することができる。さらには、ガラスリボンの徐冷点からTxまでの温度範囲におけるガラスリボンの最大冷却速度(RMAX)が上記式(5)を満たすようにガラスリボンを冷却することが好ましく、上記式(6)を満たすようにガラスリボンを冷却することがより好ましく、上記式(7)を満たすようにガラスリボンを冷却することがさらに好ましく、上記式(8)を満たすようにガラスリボンを冷却することがなお好ましい。
また、それと同時に、log10Rの範囲を規定する式(1)〜(8)の臨界を示す二次関数の極値よりも、ガラスリボンの徐冷点が高いことが好ましい。
なお、ガラスリボンの徐冷点からガラスリボンの徐冷点よりも50℃低い温度までの温度範囲におけるガラスリボンの平均冷却速度の下限は特に限定されないが、ガラス製造装置の高さ寸法の制約を考えると、ガラスリボンの徐冷点からガラスリボンの徐冷点よりも50℃低い温度までの温度範囲におけるガラスリボンの平均冷却速度は、0.34℃/分以上であることが好ましく、1℃/分以上であることがより好ましく、2℃/分以上であることがさらに好ましく、5℃/分以上であることがなお好ましい。同様に、ガラスリボンの徐冷点よりも50℃低い温度からTxまでの温度範囲におけるガラスリボンの平均冷却速度も、0.34℃/分以上であることが好ましく、1℃/分以上であることがより好ましく、2℃/分以上であることがさらに好ましく、5℃/分以上であることがなお好ましい。
得られるガラス基板の熱収縮率の大きさに及ぼす影響が少ない温度域、すなわち、ガラスリボンの徐冷点より高い温度域と、Txより低い温度域とのそれぞれにおけるガラスリボンの冷却速度は、高い方が好ましい。これらの温度域におけるガラスリボンの冷却速度を高くすることにより、ガラスリボンの徐冷に要する時間を短くできるため、徐冷炉の長さを短くできるためである。具体的には、Txより低い温度域におけるガラスリボンの平均冷却速度は、50℃/分以上であることが好ましい。また、徐冷点より高い温度域におけるガラスリボンの平均冷却速度は、30℃/分以上であることが好ましい。
本発明において、形成工程においてガラスリボンを形成する方法は、ダウンドロー法である限り特に限定されないが、ダウンドロー法のなかでもオーバーフローダウンドロー法によりガラスリボンを形成することが好ましい。オーバーフローダウンドロー法によりガラスリボンを形成することにより、表面の平滑性が高く、表面に異物が付着していないガラス基板を直接製造することができるためである。
本発明において、形成工程において形成されるガラスリボンの幅は、500mm以上であることが好ましく、600mm以上であることがより好ましく、700mm以上であることがさらに好ましく、800mm以上であることがなお好ましく、900mm以上であることがさらになお好ましく、1000mm以上であることが特に好ましい。この場合、本発明の効果がより顕著に得られる。具体的には、ガラスリボンの幅が大きくなるほど、ガラス基板の表面の研磨が困難になるが、本発明に従いガラス基板を製造した場合は、表面研磨の必要がないため、ガラス基板を容易かつ安価に製造することができる。また、ガラスリボンの幅が大きくなるほど、ガラス基板に反りや歪みが生じやすいが、本発明に従いガラス基板を製造することにより、幅の大きなガラス基板であっても、反りや歪みの発生を効果的に抑制することができる。
本発明において、溶融ガラスの液相温度における粘度(液相粘度)は、104.5dPa・s以上であることが好ましく、105.0dPa・s以上であることがより好ましく、105.5dPa・s以上であることがさらに好ましく、106.0dPa・s以上であることがなお好ましい。この構成によれば、オーバーフローダウンドロー法によるガラスリボンの成形に適した温度にまで溶融ガラスの温度を低下させた場合でも、溶融ガラスが失透しない。すなわち、溶融ガラスがオーバーフローダウンドロー法に適した粘度となるまで溶融ガラスの温度を下げることができる。このため、オーバーフローダウンドロー法によりガラスリボンを好適に成形することができる。
なお、液相粘度は、以下の手順で求めることができる。まず、ガラスを粉砕し、標準篩30メッシュ(50μm)を通過し、50メッシュ(300μm)を通過しないガラス粉末を用意する。そのガラス粉末を白金ボードに入れ、所定の温度で24時間保持し、その後、結晶の有無を目視により確認する。これを複数の温度について行い、結晶が析出する最も高い温度(液相温度)を求める。また、白金球引き上げ法により、各温度における溶融ガラスの粘度を測定し、粘度曲線を作成する。この粘度曲線と液相温度とから、液相温度における溶融ガラスの粘度(液相粘度)を算出する。
また、本発明において、ガラスリボンの徐冷点(Ta)は、600℃以上であることが好ましい。ガラスリボンの徐冷点(Ta)は、ガラス基板の熱収縮率と相関し、具体的には、徐冷点(Ta)が高いほど、ガラス基板の熱収縮率が小さくなる。従って、ガラスリボンの徐冷点(Ta)を600℃以上とすることにより、熱収縮率がより小さなガラス基板を製造することができる。熱収縮率がさらに小さなガラス基板を得る観点からは、ガラスリボンの徐冷点(Ta)は、630℃以上であることがより好ましく、650℃以上であることがさらに好ましい。なお、ガラスリボンの徐冷点(Ta)の上限は、例えば、1000℃であることが好ましく、900℃であることがより好ましい。
液相温度が低く、液相粘度が高く、かつ歪点が高いガラスリボンを得ることができる溶融ガラスとしては、例えば、質量百分率で、SiO2:50〜70%、Al2O3:10〜25%、B2O3:3〜15%、MgO:0〜10%、CaO:0〜10%、SrO:0〜15%、BaO:0〜15%及びNa2O:0〜5%を含有する溶融ガラスが挙げられる。また、このような溶融ガラスを用いることにより、例えば、フラットパネルディスプレイ用のガラス基板に要求される特性、例えば、耐薬品性、比ヤング率、化学的耐久性などの特性に優れたガラス基板を製造することができる。
本発明に係る製造方法は、電気回路パターンなどが表面に形成されるガラス基板など、熱収縮率が小さいことが求められるガラス基板一般の製造に好適に用いることができる。具体的には、本発明に係る製造方法は、例えば、液晶ディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプレイ、プラズマディスプレイなどのフラットパネルディスプレイ用のガラス基板、電荷結合素子(CCD:Charge Coupled Device)や相補型金属酸化膜半導体(CMOS:Complementary Metal−Oxide Semiconductor device)などの撮像素子用のガラス基板などに好適に用いることができる。なかでも、本発明に係る製造方法は、高精細な電気回路パターンが形成され、かつガラス基板の面積が大きな、フラットパネルディスプレイ用ガラス基板の製造に好適であり、さらには、低温ポリシリコン膜を有する薄膜トランジスタが表面に形成されているガラス基板を備えるフラットパネルディスプレイのガラス基板の製造に特に好適である。
本発明では、ガラス基板の熱収縮率の大きさを最も大きく左右する温度範囲である、ガラスリボンの徐冷点からガラスリボンの徐冷点よりも50℃低い温度までの間の温度範囲におけるガラスリボンの平均冷却速度が上記式(1)を満たすように設定されているため、ダウンドロー法により、熱収縮率の小さなガラス基板を直接製造することができる。
以下、本実施形態では、本発明を実施した好ましい形態の一例について詳細に説明する。
図1は、本実施形態におけるガラス製造装置の一部分を表す模式的構成図である。図1に示すガラス製造装置1は、オーバーフローダウンドロー法によってガラス基板を製造するための装置である。図1に示すように、ガラス製造装置1は、成形炉10を備えている。成形炉10の内部には、横断面が略楔状の成形体(forming body)11が配置されている。この成形体11には、図示しないガラス溶融炉において溶融された溶融ガラス12が供給される。供給された溶融ガラス12は、成形体11の両側からあふれ出し、成形体11の下端部の下方において合流する。その結果、ガラスリボン13が成形される。なお、成形体11の下方には、ローラー対14が配置されている。ガラスリボン13がこのローラー対14の間を通過することによって、ガラスリボン13の形状が整えられる。
本実施形態において使用するガラス材料は特に限定されないが、ガラスリボン13の徐冷点(Ta)は、600℃以上であることが好ましい。徐冷点(Ta)は、ガラス基板25の熱収縮率と相関し、具体的には、徐冷点(Ta)が高いほど、ガラス基板25の熱収縮率が小さくなる。従って、ガラスリボン13の徐冷点(Ta)を600℃以上とすることにより、熱収縮率がより小さなガラス基板25を製造することができる。熱収縮率がさらに小さなガラス基板25を得る観点からは、ガラスリボン13の徐冷点(Ta)は、630℃以上であることがより好ましく、650℃以上であることがさらに好ましい。ガラスリボン13の徐冷点の上限は、1000℃であることが好ましく、900℃であることがより好ましい。
また、溶融ガラス12の液相温度における粘度(液相粘度)が104.5dPa・s以上であることが好ましく、105.0dPa・s以上であることがより好ましく、105.5dPa・s以上であることがさらに好ましく、106.0dPa・s以上であることがなお好ましい。この場合、オーバーフローダウンドロー法によるガラスリボン13の成形に適した温度にまで溶融ガラスの温度を低下させた場合でも、溶融ガラス12が失透しない。すなわち、溶融ガラス12がオーバーフローダウンドロー法に適した粘度となるまで溶融ガラス12の温度を下げることができる。従って、オーバーフローダウンドロー法によりガラスリボン13を好適に成形することができる。
液相温度が低く、液相粘度が高く、かつ歪点が高いガラスリボン13を得ることができる溶融ガラス12としては、例えば、質量百分率で、SiO2:50〜70%、Al2O3:10〜25%、B2O3:3〜15%、MgO:0〜10%、CaO:0〜15%、SrO:0〜15%、BaO:0〜10%及びNa2O:0〜5%を含有する溶融ガラスが挙げられる。また、このような溶融ガラスを用いることにより、例えば、フラットパネルディスプレイ用のガラス基板に要求される特性、例えば、耐薬品性、比ヤング率、化学的耐久性などの特性に優れたガラス基板25を製造することができる。
なお、上記各組成の範囲の好ましい理由の詳細は以下の通りである。
SiO2は、ガラスのネットワークフォーマーとなる成分である。SiO2の含有量が多すぎると、溶融ガラス12の粘性が高くなりすぎる傾向にあり、また、溶融ガラス12が失透しやすくなる傾向にある。一方、SiO2の含有量が少なすぎると、ガラス基板25の化学的耐久性が低下する傾向にある。
Al2O3は、ガラス基板25の歪点や徐冷点を高くするための成分である。Al2O3の含有量が多すぎると、溶融ガラス12が失透しやすくなり、また、ガラス基板25のバッファードフッ酸に対する化学的耐久性が低下する傾向にある。一方、Al2O3の含有量が少なすぎると、ガラス基板25の歪点及び徐冷点が低くなり、熱収縮率が大きくなる傾向にある。
B2O3は、融剤として作用し、ガラスの溶融性を改善する成分である。B2O3の含有量が多すぎるとガラス基板25の歪点及び徐冷点が低くなり、熱収縮率が大きくなる傾向にある。また、ガラス基板25の塩酸に対する耐薬品性が低下する傾向にある。一方、B2O3の含有量が少なすぎると、溶融ガラス12の粘度が高くなり、溶融性が低下する傾向にある。B2O3のより好ましい含有量は、5〜15重量%である。
MgO、CaO、SrO、BaOは、溶融ガラス12の粘度を低下させ、ガラスの溶融性を改善する任意成分である。また、SrO及びBaOは、ガラス基板25の化学的耐久性を向上する成分でもある。MgO、CaO、SrO、BaOの含有量が多すぎると、溶融ガラス12が失透しやすくなり、ガラス基板25のバッファフードフッ酸に対する化学的耐久性も低下する傾向にある。また、BaOの含有量が多すぎると、ガラス基板25の密度が高くなりすぎる傾向にある。MgOのより好ましい含有量は、0〜5重量%である。CaOのより好ましい含有量は、0〜12重量%である。SrOのより好ましい含有量は、0〜10重量%である。BaOのより好ましい含有量は、0〜5重量%である。
Na2Oは、溶融ガラス12の粘度を低下させ、ガラスの溶融性を改善する成分である。Na2Oの含有量が多すぎると、ガラス基板25の歪点が低くなり、熱収縮率が低くなる傾向にある。また、ガラス基板25からのNa成分の溶出が問題となる場合がある。
なお、上記の成分以外にも、必要に応じて、清澄剤などの各種成分を溶融ガラス12に含ませてももちろん構わない。
本実施形態において、ガラスの溶融工程は特に限定されない。例えば、所望の比率で混合されたガラス原料、またはガラスカレットを、例えばPt製の坩堝や耐火物製の坩堝などに投入し、例えば1500℃〜1650℃程度の所定の温度にまで加熱した後に、攪拌し、清澄することにより、溶融ガラス12を得ることができる。
本実施形態において、成形工程において成形されるガラスリボン13の幅は、500mm以上であることが好ましく、600mm以上であることがより好ましく、700mm以上であることがさらに好ましく、800mm以上であることがなお好ましく、900mm以上であることがさらになお好ましく、1000mm以上であることが特に好ましい。このようにガラスリボン13の幅が大きい場合に、オーバーフローダウンドロー法の効果がより顕著に現れる。具体的には、ガラスリボン13の幅が大きくなるほど、ガラス基板25の表面の研磨が困難になるが、本実施形態のガラス基板の製造方法によりガラス基板25を製造した場合は、ガラス基板25の表面を研磨する必要がないため、ガラス基板25を容易かつ安価に製造することができる。また、ガラスリボン13の幅が大きくなるほど、ガラス基板25に反りや歪みが生じやすいが、本実施形態のガラス基板の製造方法によりガラス基板25を製造した場合は、幅の大きなガラス基板25であっても、反りや歪みの発生を効果的に抑制することができる。
また、ガラスリボン13の厚みに関しても、特に制約はなく、ガラス基板25の用途などに応じて適宜設定することができる。例えば、モバイル用のディスプレイに用いられるガラス基板25を製造する場合は、ガラス基板25の厚みが0.1〜0.5mm程度となるようにガラスリボン13の厚みを設定することができる。また、モニタやテレビなどのフラットパネルディスプレイ用のガラス基板25を製造する場合には、ガラス基板25の厚みが0.3〜1.1mm程度となるようにガラスリボン13の厚みを設定することができる。
成形されたガラスリボン13は、成形炉10の下方に配置されている徐冷炉20に導かれる。この徐冷炉20において、ガラスリボン13を所定の温度にまでゆっくりと冷却する徐冷工程が行われる。具体的には、徐冷炉20には、複数のヒーター21が配置されている。これら複数のヒーター21によって徐冷炉20内の温度が制御されている。具体的には、上流側に配置されているヒーター21ほど高い温度に設定されており、下流側に配置されているヒーター21ほど低い温度に設定されている。そして、上流側から下流側に向かって、ヒーター21の設定温度を徐々に低くしていくことにより、徐冷炉20内に温度勾配が形成され、後述する所望のガラスリボン13の冷却条件が実現されている。
また、徐冷炉20には、複数の引張ローラー対22が設けられており、ガラスリボン13は、これら複数の引張ローラー対22によって引っ張られる。これにより、ガラスリボン13が、ガラスリボン13の幅方向に収縮することが抑制されている。なお、徐冷炉20の長さ(高さ)は、特に限定されないが、徐冷炉20の長さ(高さ)は、例えば、200〜3000cm程度に設定である。
徐冷炉20の下方には、冷却室23が配置されている。徐冷炉20において徐冷されたガラスリボン13は、この冷却室23において、室温近くまで、自然冷却によって冷却される。なお、冷却室23の長さ(高さ)も特に限定されないが、冷却室23の長さ(高さ)は、例えば、200〜1000cm程度に設定することができる。
冷却室23の下方には、切断室24が配置されている。この切断室24においてガラスリボン13を所定寸法に切断することにより、ガラス基板25が完成する。なお、ガラスリボン13の切断方法は特に限定されず、既知の切断方法によりガラスリボン13を切断することができる。
(徐冷工程)
図2は、徐冷工程におけるガラスリボンの温度変化を表すグラフである。図2において、横軸は、ガラスリボン13が徐冷炉20に進入してからの経過時間であり、縦軸は、ガラスリボン13の温度である。図2において、実線が本実施形態における徐冷工程を表し、一点破線は、一定速度でガラスリボンを徐冷したときの徐冷工程を表している。
次に、主として図1及び図2を参照しながら徐冷工程の詳細について説明する。本実施形態では、図1に示すように、徐冷炉20の内部に、上流側から下流側に向かって、第1の徐冷ゾーン20aと、第2の徐冷ゾーン20bと、第3の徐冷ゾーン20cとが設けられている。
最も上流側に配置されている第1の徐冷ゾーン20aでは、第1の徐冷工程A1が行われる。図2に示すように、第1の徐冷工程A1は、ガラスリボン13の温度が、ガラスリボン13の徐冷点(Ta)となるまでガラスリボン13を徐冷する工程である。
図1に示すように、第1の徐冷ゾーン20aの下流側に配置されている第2の徐冷ゾーン20bでは、第2の徐冷工程A2が行われる。図2に示すように、第2の徐冷工程A2は、ガラスリボン13の温度が、ガラスリボン13の徐冷点(Ta)からTxとなるまでガラスリボン13を徐冷する工程である。ここで、Txは、ガラスリボン13の徐冷点(Ta)から50℃低い温度以下であって、ガラスリボン13の徐冷点(Ta)から200℃低い温度以上である。
図1に示すように、第2の徐冷ゾーン20bの下流側に配置されている第3の徐冷ゾーン20cでは、第3の徐冷工程A3が行われる。図2に示すように、第3の徐冷工程A3は、ガラスリボン13の温度がTxから、Txよりもさらに低い温度にまでガラスリボン13を徐冷する工程である。第3の徐冷工程A3においてガラスリボン13を何度まで冷却するかは、ガラスリボン13の特性や徐冷炉20の長さの制約などに応じて適宜設定することができるが、例えば、第3の徐冷工程A3は、ガラスリボン13の温度がTxよりも250℃低い温度となるまで行うことが好ましい。第3の徐冷工程A3を経たガラスリボン13は、図1に示す冷却室23に搬送され、冷却室23において自然冷却される。
本実施形態では、第2の徐冷工程A2におけるガラスリボン13の平均冷却速度は、下記の式(1)を満たすようにされている。
log10R≦0.00018361Ta2−0.23414Ta+75.29 ……(1)
但し、
R:ガラスリボン13の平均冷却速度
Ta:ガラスリボン13の徐冷点(℃)、
である。
それに対して、第2の徐冷工程A2以外の第1の徐冷工程A1及び第3の徐冷工程A3では、平均冷却速度が第2の徐冷工程A2におけるガラスリボン13の平均冷却速度よりも高く設定されている。
このように、ガラス基板25の熱収縮率を大きな影響を及ぼす第2の徐冷工程A2におけるガラスリボン13の平均冷却速度をガラスリボン13の徐冷点(Ta)から導き出される所定の冷却速度よりも低くし、それ以外のガラス基板25の熱収縮率にそれほど影響しない第1及び第3の徐冷工程A1,A3におけるガラスリボン13の平均冷却速度を高くすることにより、ガラスリボン13の冷却に要する時間を短くしつつ、熱収縮率の小さなガラス基板25を製造することができる。具体的には、第2の徐冷工程A2におけるガラスリボン13の平均冷却速度を、上記式(1)を満たすように設定することによって、ガラス基板25のガラス組成に関わらず、ガラス基板25の熱収縮率を30ppm以下とすることができる。
ガラス基板25の熱収縮率をより小さくする観点からは、第2の徐冷工程A2におけるガラスリボン13の平均冷却速度をより低くすることが好ましい。具体的には、第2の徐冷工程A2におけるガラスリボン13の平均冷却速度を、下記の式(2)を満たすように設定することにより、ガラス基板25の熱収縮率を23ppm以下とすることができる。また、第2の徐冷工程A2におけるガラスリボン13の平均冷却速度を、下記式(3)を満たすように設定することにより、ガラス基板25の熱収縮率を20ppm以下とすることができる。さらには、第2の徐冷工程A2におけるガラスリボン13の平均冷却速度を、下記式(4)を満たすように設定することにより、ガラス基板25の熱収縮率を10ppm以下とすることができる。
log10R≦0.00013786Ta2−0.17422Ta+55.53 ……(2)
log10R≦0.00011821Ta2−0.14847Ta+47.03 ……(3)
log10R≦0.000054326Ta2−0.064985Ta+19.56 ……(4)
また、より確実にガラス基板25の熱収縮率を小さくするためには、第2の徐冷工程A2におけるガラスリボン13の最大冷却速度が、下記の式(5)を満たすことが好ましく、下記の式(6)を満たすことがより好ましく、下記の式(7)を満たすことがさらに好ましく、下記の式(8)を満たすことがなお好ましい。
log10RMAX≦0.00018361Ta2−0.23414Ta+75.29 ……(5)
log10RMAX≦0.00013786Ta2−0.17422Ta+55.53 ……(6)
log10RMAX≦0.00011821Ta2−0.14847Ta+47.03 ……(7)
log10RMAX≦0.000054326Ta2−0.064985Ta+19.56 ……(8)
但し、
RMAX:ガラスリボンの最大冷却速度(℃/分)、
Ta:ガラスリボンの徐冷点(℃)、
である。
なお、第2の徐冷工程A2におけるガラスリボン13の平均冷却速度を、式(1)〜(8)を満たすように設定すると同時に、式(1)〜(8)の臨界を示す二次関数の極値よりも、ガラスリボンの徐冷点が高いことが好ましい。具体的には、第2の徐冷工程A2におけるガラスリボン13の平均冷却速度を式(1)、(5)を満たすように設定する場合は、ガラスリボン13の徐冷点を638℃以上とすることが好ましい。第2の徐冷工程A2におけるガラスリボン13の平均冷却速度を式(2)、(6)を満たすように設定する場合は、ガラスリボン13の徐冷点を632℃以上とすることが好ましい。第2の徐冷工程A2におけるガラスリボン13の平均冷却速度を式(3)、(7)を満たすように設定する場合は、ガラスリボン13の徐冷点を628℃以上とすることが好ましい。第2の徐冷工程A2におけるガラスリボン13の平均冷却速度を式(4)、(8)を満たすように設定する場合は、ガラスリボン13の徐冷点を598℃以上とすることが好ましい。
本実施形態では、第2の徐冷工程A2は、最も長いときには、ガラスリボン13の温度が、ガラスリボン13の徐冷点(Ta)から、ガラスリボン13の徐冷点(Ta)よりも200℃低い温度となるまで行われることとなるが、ガラスリボン13の徐冷点(Ta)から、ガラスリボン13の徐冷点(Ta)よりも200℃低い温度までの温度範囲のなかでも、ガラスリボン13の徐冷点(Ta)から、ガラスリボン13の徐冷点(Ta)よりも50℃低い温度までの温度範囲が、ガラス基板25の熱収縮率に最も大きく影響する。ガラスリボン13の徐冷点(Ta)よりも50℃低い温度から、ガラスリボン13の徐冷点(Ta)よりも200℃低い温度までも温度範囲は、ガラスリボン13の徐冷点(Ta)から、ガラスリボン13の徐冷点(Ta)よりも50℃低い温度までの温度範囲よりかは、ガラス基板25の熱収縮率に与える影響が小さい。従って、第2の徐冷工程A2を、ガラスリボン13の温度がガラスリボン13の徐冷点(Ta)よりも200℃低い温度となるまで行う必要は必ずしもなく、少なくともガラスリボン13の温度がガラスリボン13の徐冷点(Ta)よりも50℃低い温度となるまで第2の徐冷工程A2を行っておけば、熱収縮率の小さなガラス基板25を得ることができる。
ガラス基板25の熱収縮率をさらに小さくしたい場合は、ガラスリボン13の温度が、ガラスリボン13の徐冷点(Ta)よりも50℃低い温度よりもさらに低い温度となるまで第2の徐冷工程A2を行うことが好ましい。しかしながら、ガラスリボン13の徐冷点(Ta)よりも200℃低い温度よりも低い温度域におけるガラスリボン13の冷却速度は、ガラス基板25の熱収縮率にほとんど影響を及ぼさないため、第2の徐冷工程A2は、ガラスリボン13の徐冷点(Ta)よりも200℃低い温度まで行えば十分である。
例えば、図2に一点破線で示すように、第1〜第3の徐冷工程A1〜A3の全てにおいて、ガラスリボン13の平均冷却速度を、上記式(1)を満たす速度にすることも考えられる。そうした場合であっても、熱収縮率の小さなガラス基板25を製造することができる。しかしながら、図2から明らかなように、この場合は、ガラスリボン13の冷却に多大な時間を要する。このため、徐冷炉20の長さ(高さ)を非常に大きくする必要がある。よって、ガラス製造装置1の高さ寸法が非常に大きくなり、ガラス製造装置1の建築が実際上極めて困難となる。従って、オーバーフローダウンドロー法によりガラス基板を製造する場合は、第1〜第3の徐冷工程A1〜A3の全てにおいて、ガラスリボン13の平均冷却速度を、上記式(1)を満たす速度にすることは、実際上極めて困難である。
なお、第2の徐冷工程A2におけるガラスリボン13の平均冷却速度の下限は特に限定されないが、ガラス製造装置1の高さ寸法の制約などを考慮すると、第2の徐冷工程A2におけるガラスリボン13の平均冷却速度は、0.34℃/分以上であることが好ましく、1℃/分以上であることがより好ましく、2℃/分以上であることがさらに好ましく、5℃/分以上であることがなお好ましい。
本実施形態において、第1の徐冷工程A1におけるガラスリボン13の平均冷却速度は、第2の徐冷工程A2におけるガラスリボン13の平均冷却速度よりも高い限りにおいて特に限定されないが、第1の徐冷工程A1におけるガラスリボン13の平均冷却速度は、第2の徐冷工程A2におけるガラスリボン13の平均冷却速度よりも5℃/分以上高いことが好ましく、10℃/分以上高いことがより好ましく、15℃/分以上高いことがさらに好ましく、20℃/分以上高いことがなお好ましく、25℃/分以上高いことが特に好ましい。
具体的には、第1の徐冷工程A1におけるガラスリボン13の平均冷却速度は、例えば、30℃/分以上であることが好ましく、35℃/分以上であることがより好ましく、40℃/分以上であることがさらに好ましい。これによれば、第1の徐冷工程A1に要する時間をより短くすることができる。また、第1の徐冷工程A1におけるガラスリボン13の平均冷却速度が低すぎると、溶融ガラスの形状が速やかに定まらないため、ガラスリボン13の形状をコントロールしにくくなる。その結果、ガラスリボン13に反りや歪みが生じやすくなる。
第1の徐冷工程A1におけるガラスリボン13の平均冷却速度は、例えば、300℃/分以下であることが好ましく、150℃/分以下であることがより好ましい。第1の徐冷工程A1におけるガラスリボン13の平均冷却速度が高すぎると、ガラスリボン13を均一に冷却することができず、ガラスリボン13の幅方向において冷却ムラが生じやすくなる。従って、ガラスリボン13の厚みの制御が困難になったり、ガラスリボン13に歪みや反りが生じやすくなったりする傾向にある。
また、本実施形態において、第3の徐冷工程A3におけるガラスリボン13の平均冷却速度は、第2の徐冷工程A2におけるガラスリボン13の平均冷却速度よりも高い限りにおいて特に限定されないが、第3の徐冷工程A3におけるガラスリボン13の平均冷却速度は、第2の徐冷工程A2におけるガラスリボン13の平均冷却速度よりも20℃/分以上高いことが好ましく、25℃/分以上高いことが好ましく、30℃/分以上高いことがより好ましく、35℃/分以上高いことがさらに好ましく、40℃/分以上高いことが好ましく、45℃/分以上高いことが好ましく、50℃/分以上高いことがなお好ましく、55℃/分以上高いことがよりなお好ましく、60℃/分以上高いことがさらになお好ましく、65℃/分以上高いことが好ましく、70℃/分以上高いことがよりさらになお好ましく、75℃/分以上高いことが特に好ましい。具体的には、第3の徐冷工程A3におけるガラスリボン13の平均冷却速度は、例えば、50℃/分以上であることが好ましく、70℃/分以上であることがより好ましく、90℃/分以上であることがさらに好ましい。これによれば、第3の徐冷工程A3に要する時間をより短くすることができる。但し、第3の徐冷工程A3におけるガラスリボン13の平均冷却速度が高すぎると、ガラスリボン13にクラックや割れが生じやすくなるため、なお、第3の徐冷工程A3におけるガラスリボン13の平均冷却速度は、1000℃/分以下であることが好ましく、500℃/分以下であることがより好ましい。
本実施形態のガラス基板の製造方法は、電気回路パターンなどが表面に形成されるガラス基板など、熱収縮率が小さいことが求められるガラス基板一般の製造に好適に用いることができる。具体的には、本実施形態のガラス基板の製造方法は、例えば、液晶ディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプレイ、プラズマディスプレイなどのフラットパネルディスプレイ用のガラス基板、電荷結合素子(CCD:Charge Coupled Device)や相補型金属酸化膜半導体(CMOS:Complementary Metal−Oxide Semiconductor device)などの撮像素子用のガラス基板などに好適に用いることができる。なかでも、本実施形態のガラス基板の製造方法は、高精細な電気回路パターンが形成され、かつガラス基板の面積が大きな、フラットパネルディスプレイ用ガラス基板の製造に好適であり、さらには、低温ポリシリコン膜を有する薄膜トランジスタが表面に形成されているガラス基板を備えるフラットパネルディスプレイのガラス基板の製造に特に好適である。
なお、上記実施形態では、第1〜第3の徐冷工程A1〜A3のそれぞれにおいて、一定速度でガラスリボン13を冷却する例について説明したが、第1〜第3の徐冷工程A1〜A3のそれぞれにおいて、ガラスリボン13の冷却速度は一定でなくてもよい。
例えば、第2の徐冷工程A2において、ガラスリボン13の徐冷点からガラスリボン13の徐冷点よりも50℃低い温度までの温度範囲におけるガラスリボン13の冷却速度と、ガラスリボン13の徐冷点よりも50℃低い温度からTxまでの温度範囲におけるガラスリボン13の冷却速度とを異ならせてもよい。具体的には、第2の徐冷工程A2において、ガラスリボン13の徐冷点からガラスリボン13の徐冷点よりも50℃低い温度までの温度範囲におけるガラスリボン13の冷却速度を、ガラスリボン13の徐冷点よりも50℃低い温度からTxまでの温度範囲におけるガラスリボン13の冷却速度よりも低くしてもよい。
また、上記実施形態では、オーバーフローダウンドロー法によりガラス基板を製造する例について説明したが、本発明においては、例えば、スロットダウンドロー法などのオーバーフローダウンドロー法以外のダウンドロー法を用いてもよい。
(実験例1)
本実験例1では、成形されたガラス基板を用いて、熱収縮率が30ppm、20ppm、10ppmとなる場合の徐冷点と冷却速度との関係を求める実験を行った。
サンプル1〜4として、下記の表1に示す組成、歪点及び徐冷点を有し、両面が光学研磨されたガラス基板(30mm×160mm×0.7mm)を用意した。そして、各サンプルの周りを耐火物で覆い、各サンプルの徐冷点よりも100℃高い温度まで加熱し、その温度で1時間保持した。次いで8℃/分、16℃/分、30℃/分または300℃/分の冷却速度で徐冷点より50℃低い温度まで徐冷し、その後自然放冷するという熱処理を行った。
なお8℃/分の冷却速度で冷却するサンプルは、以下のようにして冷却を行った。まず、徐冷点よりも100℃高い温度に保持されたサンプルを、耐火物に覆われた状態のまま、サンプルの徐冷点の温度に維持されたアニール炉内に移した。次いで、冷却速度が8℃/分となるようにアニール炉の温度コントロールを行いながら徐冷点より50℃低い温度まで冷却した。その後、耐火物により覆われたサンプルをアニール炉から取り出し、耐火物を取り外して、サンプルをアルミ板上に載置して自然放冷した。
一方、16℃/分、30℃/分及び300℃/分の冷却速度で冷却する各サンプルは、以下のようにして冷却を行った。まず、徐冷点よりも100℃高い温度に保持された各サンプルを熱処理炉から取り出し、耐火物で覆われた状態で空気中で冷却した。次いで、各サンプルの温度が徐冷点から50℃低い温度に達したときに、耐火物を取り外し、各サンプルをアルミ板上に載置して自然放冷した。
なお、アニール炉に入れずに空気中で冷却したサンプルの冷却速度(16℃/分、30℃/分または300℃/分)は、耐火物の量により調整した。具体的には、事前に、熱電対を取り付けたサンプルの冷却を、耐火物の量を変化させて行い、耐火物の量とサンプルの冷却速度との関係を確認し、その結果に基づいて、サンプルの冷却速度が所定の冷却速度となるように耐火物の量を調整した。
次に、下記の要領にて、各サンプルの熱収縮率(Ta)を測定した。まず、図8(a)に示すように、ガラス基板25の所定の部位に、直線状のマークM1,M2を間隔をおいて2カ所記入した後に、図8(b)に示すように、ガラス基板25を、マークMと垂直な方向に分断することにより、ガラス板片25aと、ガラス板片25bとを得た。そして、ガラス板片25aのみを、常温から10℃/分の速度で450℃まで昇温し、450℃で10時間保持した後、10℃/分の速度で常温まで冷却した。その後、図8(c)に示すように、熱処理を施したガラス板片25aと、熱処理を施していないガラス板片25bとを並べて接着テープTで固定した状態で、ガラス板片25aのマークM1,M2と、ガラス板片25bのマークM1,M2とのずれ量を測定し、下記式(9)に基づいて熱収縮率を算出した。
(熱収縮率(ppm))=(Δl1(μm)+Δl2(μm))/l0(m) ……(9)
但し、
l0:ガラス基板25におけるマークM間の距離、
l1:ガラス板片25aのマークM1とガラス板片25bのマークM1との間の距離、
l2:ガラス板片25aのマークM2とガラス板片25bのマークM2との間の距離、
である。
結果を下記の表2及び図3に示す。なお、図3における直線L1は、サンプル1のデータの近似直線(一次の近似曲線)である。直線L2は、サンプル2のデータの近似直線である。直線L3は、サンプル3のデータの近似直線である。直線L4は、サンプル4のデータの近似直線である。直線L1〜L4は、下記の近似式(10)〜(13)で表される。
近似直線L1:(熱収縮率)=27.617(log10R)−10.849 ……(10)
近似直線L2:(熱収縮率)=19.388(log10R)−8.725 ……(11)
近似直線L3:(熱収縮率)=15.784(log10R)−8.8894 ……(12)
近似直線L4:(熱収縮率)=8.9062(log10R)−6.0868 ……(13)
図3に示すように、各サンプル1〜4の熱収縮率は、冷却速度(R(℃/分))の対数(log10(R(℃/分)))が増加するに従って増加する傾向にあることが分かる。具体的には、熱収縮率と、冷却速度の対数とは、ほぼ一次相関しており、熱収縮率と、冷却速度の対数との関係は、一次関数により好適に近似できることが分かる。
次に、上記近似式(10)〜(13)に基づいて、ガラス基板の熱収縮率が30ppmとなる冷却速度を算出した。その結果を下記の表3及び図4に示す。
図4に示すように、ガラス基板の熱収縮率が30ppmとなる冷却速度の対数は、徐冷点が増大するに従って増大する傾向にあることが分かる。ガラス基板の熱収縮率が30ppmとなる冷却速度の対数と、徐冷点とのデータに対する近似曲線のフィッティングを行った結果、図4に示す場合では、直線をフィッティングした場合の相関係数よりも、二次曲線をフィッティングした場合の相関係数の方が高くなった。また、三次曲線をフィッティングした場合の相関係数は二次曲線をフィッティングした場合の相関係数と同等であった(0.995以上)。具体的には、二次曲線をフィッティングした場合の相関係数は、1.000であり、直線をフィッティングした場合の相関係数は0.990であり、三次曲線をフィッティングした場合の相関係数は、1.000であった。二次曲線により十分に高い相関係数でフィッティングできているため、図4に示す場合では、下記二次関数(14)で表される近似曲線C1を採用した。
近似曲線C1:log10R=0.00018361Ta2−0.23414Ta+75.29 ……(14)
以上の結果から、得られるガラス基板の熱収縮率を30ppm以下にするためには、徐冷工程において、下記の式(1)を満たすようにガラスリボンを冷却すればよいことが分かる。
log10R≦0.00018361Ta2−0.23414Ta+75.29 ……(1)
但し、
R:ガラスリボンの平均冷却速度(℃/分)、
Ta:ガラスリボンの徐冷点(℃)、
である。
次に、上記近似式(10)〜(13)に基づいて、ガラス基板の熱収縮率が23ppmとなる冷却速度を算出した。その結果を下記の表4及び図5に示す。
図5に示すように、ガラス基板の熱収縮率が23ppmとなる冷却速度の対数は、徐冷点が増大するに従って増大する傾向にあることが分かる。ガラス基板の熱収縮率が23ppmとなる冷却速度の対数と、徐冷点とのデータに対する近似曲線のフィッティングを行った結果、図5に示す場合においても、上述の図4に示す場合と同様に、二次曲線をフィッティングした場合、十分な高さの相関係数が得られた。このため、図5に示す場合では、下記二次関数(15)で表される近似曲線C2を採用した。なお、近似曲線C2を採用した場合、相関係数は、1.000であった。
近似曲線C2:log10R=0.00013786Ta2−0.17422Ta+55.53 ……(15)
以上の結果から、得られるガラス基板の熱収縮率を23ppm以下にするためには、徐冷工程において、下記の式(2)を満たすようにガラスリボンを冷却すればよいことが分かる。
log10R≦0.00013786Ta2−0.17422Ta+55.53 ……(2)
次に、上記近似式(10)〜(13)に基づいて、ガラス基板の熱収縮率が20ppmとなる冷却速度を算出した。その結果を下記の表5及び図6に示す。
図6に示すように、ガラス基板の熱収縮率が20ppmとなる冷却速度の対数は、徐冷点が増大するに従って増大する傾向にあることが分かる。ガラス基板の熱収縮率が20ppmとなる冷却速度の対数と、徐冷点とのデータに対する近似曲線のフィッティングを行った結果、図6に示す場合においても、上述の図4及び図5に示す場合と同様に、二次曲線をフィッティングした場合、十分な高さの相関係数が得られた。このため、図6に示す場合では、下記二次関数(16)で表される近似曲線C3を採用した。なお、近似曲線C3を採用した場合、相関係数は、1.000であった。
近似曲線C3:log10R=0.00011821Ta2−0.14847Ta+47.03 ……(16)
以上の結果から、得られるガラス基板の熱収縮率を20ppm以下にするためには、徐冷工程において、下記の式(3)を満たすようにガラスリボンを冷却すればよいことが分かる。
log10R≦0.00011821Ta2−0.14847Ta+47.03 ……(3)
次に、上記近似式(10)〜(13)に基づいて、ガラス基板の熱収縮率が10ppmとなる冷却速度を算出した。その結果を下記の表6及び図7に示す。
図7に示すように、ガラス基板の熱収縮率が10ppmとなる冷却速度の対数は、徐冷点が増大するに従って増大する傾向にあることが分かる。ガラス基板の熱収縮率が10ppmとなる冷却速度の対数と、徐冷点とのデータに対する近似曲線のフィッティングを行った結果、図7に示す場合においても、上述の図4、図5及び図6に示す場合と同様に、二次曲線をフィッティングした場合の相関係数が最も高かった。このため、図7に示す場合では、下記二次関数(17)で表される近似曲線C4を採用した。なお、近似曲線C4を採用した場合、相関係数は、0.998であった。
近似曲線C4:log10R=0.000054326Ta2−0.064985Ta+19.56 ……(17)
以上の結果から、得られるガラス基板の熱収縮率を10ppm以下にするためには、徐冷工程において、下記の式(4)を満たすようにガラスリボンを冷却すればよいことが分かる。
log10R≦0.000054326Ta2−0.064985Ta+19.56 ……(4)
(実験例2)
本実験例2では、実験例1において算出した条件式(1)が、ダウンドロー法により成形したガラスリボンの徐冷にも適用可能であることを確認する実験を行った。具体的には、図1に示すガラス製造装置1の成形体11に溶融ガラスを供給し、ローラー対14,22を用いてガラスリボンを成形した。ガラスリボンの幅は、1500mmであり、厚みは、0.7mmとした。そして、長さLの徐冷炉にて下記の表7及び表8に示す徐冷条件で徐冷し、冷却室23にて自然冷却した後、切断し、ガラス基板を作製した。その後、ガラス基板の熱収縮率、仮想温度、平均表面粗さ(Ra)、歪み値、反り値を測定した。測定結果を、下記の表7及び表8に示す。
なお、ガラス基板の熱収縮率は、上記実験例1と同様の手順で算出した。
ガラス基板の仮想温度は、以下の要領で測定した。ガラス基板を700℃に加熱した電気炉内に投入し、1時間保持した。その後、ガラス基板をアルミ板上で急冷した後に、熱収縮率を測定した。同様の熱処理を、720℃、740℃、760℃として行い、同様に熱収縮率を測定した。そして、熱処理温度と、熱収縮率とのデータを一次の近似曲線で近似し、その一次の近似曲線から熱収縮率が0ppmとなる熱処理温度を求め、その熱処理温度を仮想温度とした。
ガラス基板の平均表面粗さ(Ra)は、SEMI D7−94「FPDガラス基板の表面粗さの測定方法」に準拠して測定した。
ガラス基板の歪み値は、ユニオプト社製歪計を用いて光ヘテロダイン法により測定した。
ガラス基板の反り値は、ガラス基板の中央部から切り出した550mm×650mmの大きさの試料を東芝社製ガラス基板反り測定機により測定した。
下記表7,8に示す板引き速度は、引張ローラーの周速度を意味する。
徐冷点(Ta)が705℃である場合、上記式(1)より、熱収縮率を30ppm以下にするためには、徐冷工程における冷却速度を30℃/分以下にする必要があることとなる。このため、上記実験例1において算出した条件式(1)が、ダウンドロー法により成形したガラスリボンの徐冷にも適用可能であるとすれば、冷却速度が30℃/分より大きな実験例2−1及び実験例2−2の熱収縮率が30ppmより大きくなり、冷却速度が30℃/分以下であるそれ以外の実験例2−3〜実験例2−7の熱収縮率が30ppm以下となるはずである。ここで、表7及び表8に示す結果を見ると、実際のガラス基板の成形を行った実験例2においても、上記式(1)と合致する結果が得られていることが分かる。この結果から、実験例1において算出した条件式(1)が、ダウンドロー法により成形したガラスリボンの徐冷にも適用可能であることが分かる。
さらに、表7及び表8に示すとおり、実験例1において算出した近似直線L1((熱収縮率)=27.617(log10R)−10.849 ……(10))より算出される熱収縮率と、実際に測定された熱収縮率とは、ほぼ一致した。この結果からも、実験例1において算出した条件式(1)が、ダウンドロー法により成形したガラスリボンの徐冷にも適用可能であることが分かる。
また、実験例2−5と実験例2−6との比較から、第1の徐冷工程における冷却速度は、熱収縮率に大きく影響していないことが分かる。
また、実験例2−4と実験例2−7との比較から、Txを低くした方が熱収縮率を小さくできることが分かる。