JP5373231B1 - 遮音性に優れる積層体 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明はポリビニルアセタールを含有する積層体に関する。
ポリビニルアセタール及び可塑剤を含むシートは、ガラスとの接着性や透明性、また力学強度に優れることから合わせガラス用中間膜として広範に利用されている。
合わせガラス用中間膜は通常、少量の水を含んだ状態で使用される。合わせガラス用中間膜の含水率は合わせガラスの製造工程の種類によって適宜選択する必要がある。例えば、合わせガラスを大規模で生産する場合には、その生産性の高さから、ガラスと合わせガラス用中間膜を重ねたものをニップロールで仮接着し、オートクレーブで加熱、加圧して本接着する方法が広く用いられている。この方法は一連の工程に減圧処理工程を含まないことから、合わせガラスの製造時に水が揮発して合わせガラス用中間膜中で発泡するリスクが低い。従って、この方法では、調湿工程簡略化の観点から合わせガラス用中間膜の含水率は比較的高め(例えば0.4〜0.7%程度)に調整されたものが用いられる。
一方、オートクレーブは高価であるため、特に大型で高価な装置の導入が困難な場合には、合わせガラスの生産にバキュームバッグまたは真空ラミネーターが用いられる。これらの方法ではガラスと合わせガラス用中間膜を重ねたものを減圧下に熱処理して合わせガラスを製造するため、合わせガラス用中間膜中で水が発泡し気泡となって外観が損なわれるリスクが高い。従って、合わせガラス製造時の歩留まり性向上の観点から、通常、合わせガラス用中間膜の含水率は比較的低め(例えば、0.01〜0.3%程度)に調整したものが使用される。
近年、生活環境の質の向上を目的として、遮音、防音に関する関心が高まっている。特に自動車、鉄道、飛行機などの乗り物や、住居、商業ビルなどの建築物においては、窓ガラスからの音の侵入が問題になるため、遮音性合わせガラス用中間膜を用いた遮音性合わせガラスが使用されるケースが増えている。遮音性合わせガラス用中間膜としては、力学強度またはガラスとの接着性の発現を目的とした可塑剤含有量の低い層と、遮音性の発現のための可塑剤含有量の高い層とが積層された多層中間膜が一般的に使用されている(特許文献1、2参照)。
ところで、遮音性合わせガラス用中間膜においては、それを使用する合わせガラスの遮音性が含水率により変化することが知られている(特許文献3参照)。前記した多層中間膜の含水率を0.01〜0.3%程度に調整して合わせガラスを製造すると、含水率を0.4〜0.7%に調整した場合に比べて、遮音性が低下する。
また、合わせガラス用中間膜は一般的に可塑剤を含有するが、合わせガラスの端部で該中間膜がむき出しとなった部分に付着した水により可塑剤が抽出され、ガラスと該中間膜が剥離したり気泡が生じたりして合わせガラスの外観が損なわれる場合があった。また可塑剤の種類によっては、前記合わせガラスの製造の際に減圧工程を経る場合や、合わせガラスを長期使用した場合に、合わせガラス端部から可塑剤が揮発することがあった。
本発明は上記課題を解決するものであり、積層体に含まれる可塑剤が水によって抽出されにくく、且つ揮発しにくく、合わせガラス用中間膜として用いた場合に、含水率を変化させても遮音性の変化が起こらない積層体を提供することを目的とする。
本発明によれば、上記の目的は、平均残存水酸基量25〜45モル%のポリビニルアセタール(A)100質量部に対し一般式(I):
(式中、R1およびR2は同一でも異なっていてもよい炭素数7〜11の炭化水素基を表し、mは3〜10の自然数を表す。)で示される化合物(I)の含有量a1が20〜60質量部であり、一般式(II):
(式中、R3はR1またはR2のいずれかと同一である。nは3〜10の自然数を表す。)で示される化合物(II)の含有量がa2質量部であるA層と、平均残存水酸基量10〜35モル%のポリビニルアセタール(B)100質量部に対し前記化合物(I)の含有量b1が35〜75質量部であり、前記化合物(II)の含有量がb2質量部であるB層との積層体であって、a2が0又は(b2/b1)/(a2/a1)>1であり、(b1−a1)>0であり、a2/a1が0〜0.05であり、且つb2/b1が0.001〜0.08である、積層体を提供することで好適に達成される。
A層はポリビニルアセタール(A)100質量部に対してマグネシウム塩0.001〜0.1質量部を含有することが好ましい。
mとnは同一であることが好ましい。
R1とR2は同一であることが好ましい。
R1及びR2は3−ヘプチル基であることが好ましい。
3層以上の層から構成され、最外層の双方がA層であることが好ましい。
本発明によると、上記の目的は、前記積層体を含む合わせガラスを提供することで好適に達成される。
本発明によれば、積層体に含まれる可塑剤が水によって抽出されにくく且つ揮発しにくく、合わせガラス用中間膜として用いた場合に、含水率を変化させても遮音性の変化が起こらない積層体を提供できる。
まず、本発明の積層体を構成するA層およびB層がそれぞれ含有するポリビニルアセタール(A)およびポリビニルアセタール(B)について説明する。
ポリビニルアセタール(A)の平均残存水酸基量は25〜45モル%であり、25〜40モル%であることが好ましく、25〜35モル%であることがより好ましい。平均残存水酸基量が25モル%未満であると、積層体の力学強度やガラスとの接着性が低下する場合があり、また平均残存水酸基量が45モル%を超えると、A層に含まれる化合物(I)との相溶性が低下する場合がある。ポリビニルアセタール(A)のアセタール化度は、50〜74モル%であることが好ましく、60〜74モル%であることがより好ましく、65〜74モル%であることがさらに好ましい。ポリビニルアセタール(A)のアセタール化度が50モル%未満のものは、A層に含まれる化合物(I)との相溶性が低下する場合があり、また74モル%を超えると、積層体の力学強度が不十分となる場合がある。ポリビニルアセタール(A)の平均残存ビニルエステル基量は、0.01〜5モル%であることが好ましく、0.01〜4モル%であることがより好ましく、0.01〜3モル%であることがさらに好ましい。平均残存ビニルエステル基量が0.01モル%未満のポリビニルアセタールは工業的に安価に生産することが困難である。ポリビニルアセタール(A)の平均残存ビニルエステル基量が5モル%を超えると、積層体を長期間にわたって使用した時にビニルエステル基の加水分解によってポリビニルアセタール(A)の平均残存水酸基量が増加し、化合物(I)との相溶性が経時的に変化する場合がある。
本発明で使用するポリビニルアセタール(B)の平均残存水酸基量は10〜35モル%であり、13〜30モル%であることが好ましく、15〜25モル%であることがより好ましい。平均残存水酸基量が10モル%未満のポリビニルアセタールは工業的に安価に生産することが困難である。ポリビニルアセタール(B)の平均残存ビニルエステル基量が35モル%を越えると、B層に含まれる化合物(I)との相溶性が低下する場合がある。ポリビニルアセタール(B)のアセタール化度は60〜85モル%であることが好ましく、65〜82モル%であることがより好ましく、69〜78モル%であることがさらに好ましい。ポリビニルアセタール(A)のアセタール化度が60モル%未満であると、B層に含まれる化合物(I)との相溶性が低下する場合がある。アセタール化度が85モル%を超えるポリビニルアセタールは工業的に安価に生産することが困難である。また、ポリビニルアセタール(B)の平均残存ビニルエステル基量は、0.01〜20モル%であることが好ましく、0.5〜16モル%であることがより好ましく、4〜13モル%であることがさらに好ましい。平均残存ビニルエステル基量が0.01モル%未満のポリビニルアセタールは工業的に安価に生産することが困難である。また、平均残存ビニルエステル基量が20モル%を超えるものは、長期間にわたって使用した時に加水分解によってポリビニルアセタール(B)の平均残存水酸基量が増加し、化合物(I)との相溶性が経時的に著しく変化することがある。
本発明で使用するポリビニルアセタール(A)およびポリビニルアセタール(B)は、ポリビニルアルコールを原料として製造される。ポリビニルアルコールは従来から公知の手法によって得ることができる。すなわち、ビニルエステル化合物を重合し、得られた重合体をけん化することによって得ることができる。ビニルエステル化合物を重合する方法としては、溶液重合法、塊状重合法、懸濁重合法、乳化重合法など、従来から公知の方法を適用できる。これらの重合方法で用いられる重合開始剤としてはアゾ系開始剤、過酸化物系開始剤、レドックス系開始剤などを適宜使用できる。けん化反応は、従来から公知のアルカリ触媒又は酸触媒を用いて、重合体のビニルエステル基を加アルコール分解又は加水分解させることで行われる。中でも、メタノールを溶剤として用い、苛性ソーダ(NaOH)を触媒として用いるけん化反応が簡便であり最も好ましい。
ビニルエステル化合物としては、例えばギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニルなど従来から公知のカルボン酸ビニルエステルが挙げられるが、酢酸ビニルが好ましい。
また、ポリビニルアルコールは本発明の主旨に反しない限り、ビニルエステル化合物と、ビニルエステル化合物と共重合可能な単量体とを共重合させた共重合体をけん化させて得られる変性ポリビニルアルコールを使用することもできる。ビニルエステル化合物と共重合可能な単量体は、通常、ビニルエステル化合物に対して10モル%未満の割合で用いられる。
本発明で使用するポリビニルアセタールの原料となるポリビニルアルコールの粘度平均重合度は特に限定されず、用途に応じて適宜選択できるが、通常150〜3000が好ましく、800〜2500がより好ましく、1000〜2000がさらに好ましい。ポリビニルアルコールの粘度平均重合度が150より低いと得られる積層体の力学強度が不足する傾向となり、3000より高いと得られる積層体の取り扱い性、特に合わせガラス用中間膜として使用する場合の合わせガラス製造の容易さが低下する傾向となる。
本発明で使用するポリビニルアセタールは従来から公知の方法で製造できる。例えば、次のような反応条件下で沈殿法により製造できる。まず濃度3〜40質量%のポリビニルアルコール水溶液を80〜100℃の温度範囲で保持した後、10〜60分かけて徐々に冷却する。温度が−10〜30℃まで低下したところで、アルデヒドおよび酸触媒を添加し、温度を一定に保ちながら、30〜300分間アセタール化反応を行う。その際、アセタール化度が一定水準に達したポリビニルアセタールが析出する。その後、反応液を30〜300分かけて30〜80℃の温度まで昇温し、その温度を10〜500分保持する。次に、反応溶液に塩基性の化合物を添加することで酸触媒を中和して水洗し、乾燥することによりポリビニルアセタールが得られる。
アセタール化反応に用いる酸触媒としては特に限定されず、酢酸、パラトルエンスルホン酸などの有機酸又は硝酸、硫酸、塩酸等などの無機酸のいずれも使用可能であり、特に塩酸、硫酸、硝酸が好ましく用いられる。
アセタール化反応に用いるアルデヒドは特に限定されないが、炭素数1〜8のアルデヒドでアセタール化することが好ましい。中でも炭素数4〜6のアルデヒドを用いることが好ましく、n−ブチルアルデヒドを用いることが特に好ましい。本発明においては、アルデヒドを2種類以上併用して得られるポリビニルアセタールを使用することもできる。
式中、R1およびR2は同一でも異なっていてもよい炭素数7〜11の炭化水素基を表す。炭化水素基の炭素数は7〜10であることがより好ましく、7〜9であることがより好ましい。炭素数が7未満であると化合物(I)の揮発性が高くなり問題となる場合があり、炭素数が11を超えると化合物(I)とポリビニルアセタールとの相溶性が低下したり、化合物(I)のポリビニルアセタールへの可塑化効果が低下したりする場合がある。
炭化水素基は直鎖状でも分岐構造を有していてもよく、不飽和結合を有していてもよい。また、炭化水素基中の水素原子の一部が水素原子以外の他の原子や置換基で置換されていてもよい。R1及びR2の具体例としては、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デカニル基、イソデカニル基、3−ヘプチル基などのアルキル基;3−ヘプト−3−エン基などのアルケニル基;1−クロロオクチル基などが挙げられる。中でも、分岐構造を有する炭化水素基であると加水分解を受けにくい点で好ましく、特にR1、R2が共に3−ヘプチル基であると、ポリビニルアセタールとの相溶性、ポリビニルアセタールへの可塑化効果の観点からも特に好ましい。
R1とR2は同一である方が、化合物(I)を安価に得られる観点から好ましい。本発明においてA層が含有する化合物(I)とB層が含有する化合物(I)は同一であっても異なっていても良いが、入手容易性などの観点から同一であることが好ましい。なお、A層及びB層が含有する化合物(I)は1種類単独でも、2種類以上を混合したものでも良い。
また、mは3〜10、好ましくは3〜8、さらに好ましくは3〜4の自然数を表す。このような化合物(I)は低極性であり、A層と水が接触した場合に抽出されにくい点で好適である。mが3未満であると化合物(I)の揮発性が高くなり問題になることがあり、mが10を超えると化合物(I)とポリビニルアセタールとの相溶性が低下したり、化合物(I)のポリビニルアセタールへの可塑化効果が低下したりすることがある。
化合物(I)の具体例としては、トリエチレングリコールジ2−エチルヘキサノエート、テトラエチレングリコールジ2−エチルヘキサノエート、オクタエチレングリコールジ2−エチルヘキサノエート、トリエチレングリコールジ2−オクタノエート、トリエチレングリコールジドデカノエートなどが挙げられる。中でも、ポリビニルアセタールとの相溶性に優れ、ポリビニルアセタールへの可塑化効果に優れ、かつ容易に加水分解されない点で、トリエチレングリコールジ2−エチルヘキサノエートが好ましい。
A層における化合物(I)の含有量a1は、ポリビニルアセタール(A)100質量部に対して20〜60質量部であり、好ましくは25〜55質量部であり、より好ましくは30〜50質量部である。ポリビニルアセタール(A)100質量部に対してa1が20質量部未満であると、得られる積層体を合わせガラスに使用した場合に十分な遮音性が発現しないことがある。一方、a1が60質量部を超えると、得られる積層体を合わせガラスに使用した場合に十分な力学強度が発現しないことがある。
B層における化合物(I)の含有量b1は、ポリビニルアセタール(B)100質量部に対し35〜75質量部であり、好ましくは40〜72質量部であり、より好ましくは52〜70質量部である。ポリビニルアセタール(B)100質量部に対してb1が35質量部未満であると、得られる積層体を合わせガラスに使用した場合に十分な遮音性が発現しないことがある。一方、b1が70質量部を超えると、B層においてポリビニルアセタール(B)と化合物(I)との相溶性が低下して、得られる積層体の透明性が損なわれたり、十分な力学強度が発現しなかったりする場合がある。
また、本発明においては、(b1−a1)>0であり、好ましくは40>(b1−a1)>7であり、さらに好ましくは40>(b1−a1)>15であり、最適には40>(b1−a1)>20である。(b1−a1)>0であると、積層体を合わせガラスに使用した際に十分な遮音性が発現する。ただし、(b1−a1)が40以上であると遮音性が不十分となる場合がある。
式中、R3はR1またはR2のいずれかと同一であり、nは3〜10の自然数を表す。化合物(II)は、化合物(I)の化学構造と類似し、化合物(I)との相溶性に優れるため、積層体が水と接した場合にも抽出されにくく、例えば積層体を合わせガラス用中間膜として長期間使用する場合にも好適である。上記観点から、化合物(I)のmと化合物(II)のnが同一であることが特に好ましい。
化合物(II)の具体例としては、トリエチレングリコールモノ2−エチルヘキサノエート、テトラエチレングリコールモノ2−エチルヘキサノエート、オクタエチレングリコールモノ2−エチルヘキサノエート、トリエチレングリコールモノ2−オクタノエート、トリエチレングリコールモノドデカノエートなどがあげられる。中でも、本発明で使用する好適な化合物(I)がトリエチレングリコールジ2−エチルヘキサノエートであるので、化合物(II)としてトリエチレングリコールモノ2−エチルヘキサノエートを用いるのが好ましい。
A層における化合物(II)の含有量a2はポリビニルアセタール(A)100質量部に対して0〜2.5質量部が好ましく、0.005〜2.2質量部がより好ましく、0.035〜2質量部がさらに好ましい。a2が上記範囲内であると、水分量が変化した場合であっても積層体とガラスとの接着性が変化しにくい。また、積層体を合わせガラス用中間膜に使用した際、積層体が水に接しても化合物(II)が水に抽出されにくい。また、B層における化合物(II)の含有量b2は0.01〜3質量部が好ましく、0.02〜2.4質量部がより好ましく、0.1〜2.2質量部がさらに好ましい。b1が0.01質量部より少ないと、積層体の含水率を変化させたときに遮音性が低下することがある。また、b1が3質量部より多いと、例えば積層体を合わせガラス用中間膜に使用した際に、積層体が水に接すると化合物(II)の一部が水に抽出され、合わせガラスに外観上の欠点が生じることがある。
A層が含有する化合物(II)とB層が含有する化合物(II)は同一でも異なっていても良いが、入手容易性などの観点から同一であることが好ましい。また、A層及びB層のそれぞれが含有する化合物(II)は、1種類単独でも2種類以上を混合したものでも良い。
本発明の積層体においては、a2/a1は0〜0.05であり、好ましくは0.0007〜0.045であり、より好ましくは0.001〜0.04である。a2/a1がこれらの数値範囲外であると、合わせガラス用中間膜として使用する際、積層体の含水率を変化させたときに遮音性が低下することがある。b2/b1は0.001〜0.08であり、好ましくは0.0015〜0.07、より好ましくは0.002〜0.06である。b2/b1が前記数値範囲外である場合、積層体の含水率を変化させて合わせガラス用中間膜として使用する際、積層体の含水率を変化させたときに遮音性が低下することがある。
本発明の積層体では、a2が0であるか(b2/b1)/(a2/a1)>1.0である。好ましくはa2が0であるかまたはa2が0でないときは(b2/b1)/(a2/a1)>1.1である。より好ましくはa2が0であるかまたはa2が0でないときは[(b2/b1)/(a2/a1)]>1.4である。a2が0でなくかつ[(b2/b1)/(a2/a1)]が1.0以下であると、積層体の含水率を変化させて合わせガラス用中間膜として使用した場合に、遮音性が低下することがある。
本発明の積層体は、酸化防止剤、紫外線吸収剤、接着性改良剤、その他添加剤をさらに含有していても良い。
本発明の積層体が含有していてもよい酸化防止剤の種類に特に限定はない。例えば、従来から公知のフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤などを使用できる。中でも、フェノール系酸化防止剤が好ましい。酸化防止剤は単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。酸化防止剤を含有させる場合、その量は特に限定されないが、積層体の質量に対して通常0.0001〜5質量%、好ましくは0.001〜1質量%の範囲である。0.0001質量%より少ないと酸化防止剤としての十分な効果が得られないことがあり、また5質量%より多くしても格段の効果は望めない。
本発明の積層体が含有していてもよい紫外線吸収剤の種類に特に限定はない。例えば、従来から公知のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、シュウ酸アニリド系紫外線吸収剤、ベンゾエート系紫外線吸収剤などを使用できる。紫外線吸収剤は単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。紫外線吸収剤を含有させる場合、その量は特に限定されないが、積層体の質量に対して通常0.0001〜5質量%、好ましくは0.001〜1質量%の範囲である。0.0001質量%より少ないと紫外線吸収剤としての十分な効果が得られないことがあり、また5質量%より多くしても格段の効果は望めない。
本発明の積層体は合わせガラス用中間膜として特に好適に使用される。その場合、ガラスと接着する層には接着性調整剤が添加されていることが好ましい。接着性調整剤としては、例えば酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ヘキサン酸、2−エチルブタン酸、2−エチルヘキサン酸などの有機酸のナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩などが用いられ、これらは2種類以上が添加されていてもよい。特にガラスと接着する層がA層である場合、含水率が変化した場合にも接着性が変化しない積層体を得る観点から、A層に酢酸マグネシウム、酢酸マグネシウム4水和物、ブタン酸マグネシウム、2−エチルブタン酸マグネシウム、2−エチルヘキサン酸マグネシウムなどのマグネシウム塩が添加されていることが好ましく、A層に酢酸マグネシウム4水和物が添加されていることが好ましい。
接着性調整剤の添加量は、合わせガラスの耐貫通性および合わせガラス破損時のガラス片飛散防止性の観点から、ポリビニルアセタール(A)100質量部に対して0.001〜0.1質量部が好ましく、0.005〜0.08質量部がより好ましく、0.01〜0.06質量部がさらに好ましく、0.03〜0.055質量部が特に好ましい。
本発明の積層体を製造する方法は特に限定されず、従来公知の方法を適用できる。例えばA層を構成する成分、B層を構成する成分をそれぞれ押出機で溶融混練し引き続き多層製膜機で共押出する方法;溶融混練後に熱プレスまたはキャストなどで個別に作製したA層およびB層を重ねて必要に応じて熱プレス等により接着して積層する方法などが挙げられる。
本発明の積層体は、合わせガラス用中間膜として使用する場合に、広範な含水率で一定の特性を発現するため、ニップロールで仮接着後にオートクレーブで本接着する合わせガラス用中間膜の含水率を比較的高めに調節する方法でも、バキュームバッグまたは真空ラミネータを用いて減圧下で熱処理する合わせガラス中間膜の含水率を比較的低めに調節する方法でも合わせガラスを製造できる。本発明の積層体の含水率は0.01〜1.0質量%が好ましく、0.02〜0.9質量%がより好ましく、0.03〜0.8質量%がさらに好ましい。本発明の積層体の含水率が0.01質量%未満であるものは、そのような含水率に調節することに長大な時間を要するので好ましくなく、また、本発明の積層体の含水率が1.0質量%を超えるものは、積層体のガラスとの接着性、透明性が変化することがあり、好ましくない。
本発明の積層体におけるA層およびB層の厚さに特に限定はない。A層の厚さは通常0.05〜1.2mmが好ましく、0.07〜1mmがより好ましく、0.1〜0.6mmがさらに好ましく、0.12〜0.5mmが特に好ましい。0.05mmよりも薄いと本発明の積層体の力学強度が低下する傾向となり、例えば合わせガラス中間膜としての使用に不十分な場合がある。1.2mmよりも厚いと本発明の積層体の柔軟性が不十分となる傾向となり、例えば合わせガラス中間膜としての使用において、得られる合わせガラスの安全性が低下する場合がある。
B層の厚さは通常0.01〜1mmが好ましく、0.02〜0.6mmがより好ましく、0.05〜0.4mmがさらに好ましい。0.01mmよりも薄いと本発明の積層体を中間膜とする合わせガラスの遮音性能が低下することがあり、1mmよりも厚くしても本発明の積層体の力学強度や遮音性能がそれ以上向上しない傾向にある。
本発明の積層体を合わせガラス用中間膜として使用する場合、積層体が3層以上の層から構成され、最外層が共にA層であることが、積層体とガラスとの接着性を適切に調節できる観点から好ましい。最外層が共にA層である積層体の例としては、A層/B層/A層、A層/B層/A層/B層/A層などが挙げられる。A層が2層以上含まれる場合、それぞれの層の厚さは同一でも異なっていても良く、またB層が2層以上含まれる場合、それぞれの層の厚さは同一でも異なっていても良い。
本発明の積層体を合わせガラス用中間膜として使用する場合、積層体の厚さに特に限定はないが、通常0.2〜2mmが好ましく、0.25〜1.8mmがより好ましく、0.3〜1.5mmがさらに好ましい。積層体の厚さが0.2mmよりも薄いと力学強度が不十分になる傾向にあり、2mmよりも厚いと柔軟性が不十分となる傾向にある。
本発明の積層体を合わせガラス用中間膜として使用する場合のガラス材質は特に限定されず、フロート板ガラス、熱強化ガラス、化学強化ガラスなどの無機ガラス;ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネートなどの有機ガラスなどの従来公知のガラスを使用できる。これらは無色もしくは有色、または透明もしくは非透明のいずれでもよく、また2種以上を併用してもよい。ガラスの厚さに特に限定はないが、通常20mm以下が好ましく、10mm以下がより好ましい。
本発明の積層体を合わせガラス用中間膜として使用する場合、積層体の最表面の形状は特に限定されないが、合わせガラスを製造する際の取り扱い性(例えばラミネートにおける泡抜け性)を考慮すると、積層体の最表面にメルトフラクチャーやエンボスなどの従来から公知の方法で凹凸構造を形成したものが好ましい。
本発明の積層体を合わせガラス用中間膜として用いて合わせガラスを製造する方法は特に限定されず、例えば真空ラミネーター装置やバキュームバッグを用いた減圧工程を経る方法;ニップロールで仮接着した後にオートクレーブで処理する減圧工程を経ない方法など、従来公知の方法が挙げられる。
真空ラミネーター装置を用いる場合の作製条件の一例を示すと、1×10−6〜3×10−2MPaの減圧下、100〜200℃、好ましくは130〜160℃の温度で10〜300分処理してガラスと合わせガラス用中間膜がラミネートされる。バキュームバッグを用いる場合は、例えば、2×10−4〜3×10−2MPaの圧力下、130〜145℃で10〜300分処理してラミネートされる。これら減圧工程を経る方法で合わせガラスを作製する場合には、積層体の含水率は0.01〜0.3質量%にしたものを用いることが、ラミネート中に積層体中で気泡が発生することを防ぐ観点から好ましい。
ニップロールで仮接着した後にオートクレーブで処理する方法におけるニップロールの運転条件の一例は、ガラスと積層体を赤外線ヒーターなどで50〜120℃に加熱した後、ロールで圧着して仮接着させる。オートクレーブ処理する工程は、例えば1.0〜1.5MPaの圧力下、130〜145℃の温度で30〜200分実施される。このような減圧工程を経ない方法で合わせガラスを作製する場合には、積層体の調湿(乾燥)工程を簡略化する観点から、積層体の含水率は0.4〜0.7質量%程度にしたものを使用することが好ましい。
以下、実施例などにより本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されない。
(PVB−1の調製)
還流冷却器、温度計、イカリ型攪拌翼を備えた5L(リットル)のガラス製容器に、イオン交換水4050g、ポリビニルアルコール(PVA−1)(粘度平均重合度1700、けん化度99モル%)330gを仕込み(PVA濃度7.5%)、内容物を95℃に昇温して完全に溶解させた。次に120rpmで攪拌下、5℃まで約30分かけて徐々に冷却後、ブチルアルデヒド188gと35%の塩酸140gを添加し、ブチラール化反応を30分間行った。その後、60分かけて60℃まで昇温し、60℃にて120分間保持した後、室温まで冷却した。ポリビニルアセタール樹脂をイオン交換水で洗浄した後、水酸化ナトリウム水溶液で残存する塩酸を中和し、さらにイオン交換水で洗浄し、脱水し、乾燥してポリビニルブチラール(PVB−1)を得た。得られたPVB−1の特性をJIS K6728にしたがって測定したところ、表1に示すとおり、平均アセタール化度は68モル%、平均残存ビニルエステル基量は1モル%、平均残存水酸基量は31モル%であった。
還流冷却器、温度計、イカリ型攪拌翼を備えた5L(リットル)のガラス製容器に、イオン交換水4050g、ポリビニルアルコール(PVA−1)(粘度平均重合度1700、けん化度99モル%)330gを仕込み(PVA濃度7.5%)、内容物を95℃に昇温して完全に溶解させた。次に120rpmで攪拌下、5℃まで約30分かけて徐々に冷却後、ブチルアルデヒド188gと35%の塩酸140gを添加し、ブチラール化反応を30分間行った。その後、60分かけて60℃まで昇温し、60℃にて120分間保持した後、室温まで冷却した。ポリビニルアセタール樹脂をイオン交換水で洗浄した後、水酸化ナトリウム水溶液で残存する塩酸を中和し、さらにイオン交換水で洗浄し、脱水し、乾燥してポリビニルブチラール(PVB−1)を得た。得られたPVB−1の特性をJIS K6728にしたがって測定したところ、表1に示すとおり、平均アセタール化度は68モル%、平均残存ビニルエステル基量は1モル%、平均残存水酸基量は31モル%であった。
(PVB−2の調製)
PVB−1の調製において、ブチルアルデヒド使用量を194gに変更した以外は同様にして反応を行い、PVB−2を得た。得られたPVB−2の特性をJIS K6728にしたがって測定したところ、表1に示すとおり、平均アセタール化度は71モル%、平均残存ビニルエステル基量は1モル%、平均残存水酸基量は28モル%であった。
PVB−1の調製において、ブチルアルデヒド使用量を194gに変更した以外は同様にして反応を行い、PVB−2を得た。得られたPVB−2の特性をJIS K6728にしたがって測定したところ、表1に示すとおり、平均アセタール化度は71モル%、平均残存ビニルエステル基量は1モル%、平均残存水酸基量は28モル%であった。
(PVB−3の調製)
PVB−1の調製において、PVA−1をPVA−2(粘度平均重合度1700、けん化92モル%)330gに、ブチルアルデヒド使用量を198gに変更し、さらに5℃でブチラール化反応を実施した後、67℃まで70分かけて昇温し、67℃で120分反応を行った以外は同様にして、PVB−3を得た。得られたPVB−3の特定をJIS K6728にしたがって測定したところ、表1に示すとおり、平均アセタール化度は74モル%、平均残存ビニルエステル基量は7モル%、平均残存水酸基量は19モル%であった。
PVB−1の調製において、PVA−1をPVA−2(粘度平均重合度1700、けん化92モル%)330gに、ブチルアルデヒド使用量を198gに変更し、さらに5℃でブチラール化反応を実施した後、67℃まで70分かけて昇温し、67℃で120分反応を行った以外は同様にして、PVB−3を得た。得られたPVB−3の特定をJIS K6728にしたがって測定したところ、表1に示すとおり、平均アセタール化度は74モル%、平均残存ビニルエステル基量は7モル%、平均残存水酸基量は19モル%であった。
(PVB−4の調製)
PVB−3の調製において、PVA−2をPVA−3(粘度平均重合度1700、けん化90モル%)330gに、ブチルアルデヒド使用量を204gに変更し、さらに5℃でブチラール化反応を実施した後、67℃まで70分かけて昇温し、67℃で120分反応を行った以外は同様にして、PVB−4を得た。得られたPVB−4の特性をJIS K6728にしたがって測定したところ、表1に示すとおり、平均アセタール化度は75モル%、平均残存ビニルエステル基量は9モル%、平均残存水酸基量は16モル%であった。
PVB−3の調製において、PVA−2をPVA−3(粘度平均重合度1700、けん化90モル%)330gに、ブチルアルデヒド使用量を204gに変更し、さらに5℃でブチラール化反応を実施した後、67℃まで70分かけて昇温し、67℃で120分反応を行った以外は同様にして、PVB−4を得た。得られたPVB−4の特性をJIS K6728にしたがって測定したところ、表1に示すとおり、平均アセタール化度は75モル%、平均残存ビニルエステル基量は9モル%、平均残存水酸基量は16モル%であった。
(実施例1)
(積層体の作製)
100質量部のPVB−1、化合物(I)として36質量部のトリエチレングリコールジ2−エチルヘキサノエート、化合物(II)として0.3質量部のトリエチレングリコールモノ2−エチルヘキサノエートおよび0.048質量部の酢酸マグネシウム4水和物をラボプラストミルで160℃、8分間混練した。得られた混練物を厚さ0.38mmの型枠で160℃、50kg/cm2の条件で30分間プレスして厚さ0.38mmのシートAを得た。
一方、100質量部のPVB−3、化合物(I)として58質量部のトリエチレングリコールジ2−エチルヘキサノエートおよび化合物(II)として1質量部のトリエチレングリコールモノ2−エチルヘキサノエートをラボプラストミルで160℃、8分間混練した。得られた混練物を厚さ0.15mmの型枠で160℃、50kg/cm2の条件で30分間プレスして厚さ0.15mmのシートBを得た。シートA及びシートBを、シートA/シートB/シートAの順に重ね、厚さ0.91mmの型枠で135℃、10kg/cm2の条件でプレスして、A層(0.38mm)/B層(0.15mm)/A層(0.38mm)からなる積層体−1を得た。
(積層体の作製)
100質量部のPVB−1、化合物(I)として36質量部のトリエチレングリコールジ2−エチルヘキサノエート、化合物(II)として0.3質量部のトリエチレングリコールモノ2−エチルヘキサノエートおよび0.048質量部の酢酸マグネシウム4水和物をラボプラストミルで160℃、8分間混練した。得られた混練物を厚さ0.38mmの型枠で160℃、50kg/cm2の条件で30分間プレスして厚さ0.38mmのシートAを得た。
一方、100質量部のPVB−3、化合物(I)として58質量部のトリエチレングリコールジ2−エチルヘキサノエートおよび化合物(II)として1質量部のトリエチレングリコールモノ2−エチルヘキサノエートをラボプラストミルで160℃、8分間混練した。得られた混練物を厚さ0.15mmの型枠で160℃、50kg/cm2の条件で30分間プレスして厚さ0.15mmのシートBを得た。シートA及びシートBを、シートA/シートB/シートAの順に重ね、厚さ0.91mmの型枠で135℃、10kg/cm2の条件でプレスして、A層(0.38mm)/B層(0.15mm)/A層(0.38mm)からなる積層体−1を得た。
(バキュームバッグを用いた低含水率合わせガラスの作製)
30cm×30cmの積層体−1を23℃、5〜10%RHに調節したデシケーター内に5日間保管して調湿(乾燥)した。調湿後の積層体−1を速やかに2枚のフロートガラス(30cm×30cm×2.2mm)で挟み、これをバキュームバッグに入れ、バキュームバッグ内を室温で3×10−3MPaに減圧し、その減圧度を保持しながら30分かけて135℃にまで加熱し、135℃で2時間保持して合わせガラス−1(V)を得た。得られた合わせガラス−1(V)における積層体−1の含水率は0.11%であった。なお、含水率は合わせガラス−1(V)の端部から1cmよりも離れている部分をハンマーで叩いてガラスを割って速やかに積層体−1を取り出し、当該サンプル0.5gを株式会社三菱化学アナリティック製カールフィッシャー水分計(KF−200(容量法水分計)とVA−200(水分気化装置)を組み合わせて使用)を用いて、200℃で10分間加熱し、その間に気化した水分を定量することで測定した。
30cm×30cmの積層体−1を23℃、5〜10%RHに調節したデシケーター内に5日間保管して調湿(乾燥)した。調湿後の積層体−1を速やかに2枚のフロートガラス(30cm×30cm×2.2mm)で挟み、これをバキュームバッグに入れ、バキュームバッグ内を室温で3×10−3MPaに減圧し、その減圧度を保持しながら30分かけて135℃にまで加熱し、135℃で2時間保持して合わせガラス−1(V)を得た。得られた合わせガラス−1(V)における積層体−1の含水率は0.11%であった。なお、含水率は合わせガラス−1(V)の端部から1cmよりも離れている部分をハンマーで叩いてガラスを割って速やかに積層体−1を取り出し、当該サンプル0.5gを株式会社三菱化学アナリティック製カールフィッシャー水分計(KF−200(容量法水分計)とVA−200(水分気化装置)を組み合わせて使用)を用いて、200℃で10分間加熱し、その間に気化した水分を定量することで測定した。
(ニップロールで仮接着後に、オートクレーブで本接着する、高含水率合わせガラスの作製)
30cm×30cmのシート−1を23℃、28%RHの雰囲気下で5日間保管して調湿した。調湿後の積層体−1を速やかに2枚のフロートガラス(30cm×30cm×2.2mm)で挟み、これを80℃に加熱後、ニップロールを用いて仮接着した。得られた仮接着体をオートクレーブにいれ、135℃、1.2MPaの条件で60分処理して合わせガラス−1(NA)を得た。得られた合わせガラス−1(NA)における積層体−1の含水率は0.52%であった。なお、含水率は合わせガラス−1(V)と同様の方法で求めた。
30cm×30cmのシート−1を23℃、28%RHの雰囲気下で5日間保管して調湿した。調湿後の積層体−1を速やかに2枚のフロートガラス(30cm×30cm×2.2mm)で挟み、これを80℃に加熱後、ニップロールを用いて仮接着した。得られた仮接着体をオートクレーブにいれ、135℃、1.2MPaの条件で60分処理して合わせガラス−1(NA)を得た。得られた合わせガラス−1(NA)における積層体−1の含水率は0.52%であった。なお、含水率は合わせガラス−1(V)と同様の方法で求めた。
(遮音性測定)
合わせガラス−1(V)、合わせガラス−1(NA)をそれぞれ2.5cm×30cmの大きさに切断し、25℃雰囲気下で加振機(EMIC社製、小型振動発生機512−A)により加振し、その際の周波数応答関数をFFTアナライザー(小野測器社製、DS−2100)にて検出し、サーボ解析ソフト(小野測器社製、DS−0242)を使用して3000Hzにおける損失係数を算出した。損失係数の大きいものほど合わせガラスの遮音性能が優れることを表す。
合わせガラス−1(V)、合わせガラス−1(NA)をそれぞれ2.5cm×30cmの大きさに切断し、25℃雰囲気下で加振機(EMIC社製、小型振動発生機512−A)により加振し、その際の周波数応答関数をFFTアナライザー(小野測器社製、DS−2100)にて検出し、サーボ解析ソフト(小野測器社製、DS−0242)を使用して3000Hzにおける損失係数を算出した。損失係数の大きいものほど合わせガラスの遮音性能が優れることを表す。
(耐貫通性評価)
上記で得られた30cm×30cmの合わせガラス−1(V)、合わせガラス−1(NA)を23℃で24時間調温した。質量2260g、直径82mmの鉄球(剛球)を、6mの高さから合わせガラスの中心部分に落下させた。同様の評価を4枚の合わせガラスについて行い、3枚以上の合わせガラスについて、剛球が衝突した後、5秒以内に剛球が貫通しなかった場合をAとし、2枚以上の合わせガラスについて、剛球が衝突した後、5秒以内に剛球が貫通しなかった場合をBとし、それ以外の場合をCとした。
上記で得られた30cm×30cmの合わせガラス−1(V)、合わせガラス−1(NA)を23℃で24時間調温した。質量2260g、直径82mmの鉄球(剛球)を、6mの高さから合わせガラスの中心部分に落下させた。同様の評価を4枚の合わせガラスについて行い、3枚以上の合わせガラスについて、剛球が衝突した後、5秒以内に剛球が貫通しなかった場合をAとし、2枚以上の合わせガラスについて、剛球が衝突した後、5秒以内に剛球が貫通しなかった場合をBとし、それ以外の場合をCとした。
(合わせガラス冷熱試験)
合わせガラス−1(V)及び合わせガラス−1(NA)を、80℃で2時間保持した後、80℃から−20℃に50分かけて冷却し、さらに−20℃で2時間保持した後、−20℃から80℃に50分かけて加熱した(この処理を1サイクルとする)。このサイクルを合計30回繰り返した後、ガラスと積層体、および積層体におけるA層とB層との間に剥離が無いか確認して、剥離がないものをAとし、剥離がガラス端部から0〜1cmの部分のみにあるものをBとし、剥離がガラス端部から1cmを超える部分にあるものをCとした。
合わせガラス−1(V)及び合わせガラス−1(NA)を、80℃で2時間保持した後、80℃から−20℃に50分かけて冷却し、さらに−20℃で2時間保持した後、−20℃から80℃に50分かけて加熱した(この処理を1サイクルとする)。このサイクルを合計30回繰り返した後、ガラスと積層体、および積層体におけるA層とB層との間に剥離が無いか確認して、剥離がないものをAとし、剥離がガラス端部から0〜1cmの部分のみにあるものをBとし、剥離がガラス端部から1cmを超える部分にあるものをCとした。
(合わせガラスの温水処理試験)
合わせガラス−1(NA)を60℃の温水で12時間浸漬後、23℃、28%RHの雰囲気下で108時間静置した(この処理を1サイクルとする)。当該処理を10回繰り返した後、各合わせガラス端部における、積層体に含まれる成分抽出による欠点(ガラスと合わせガラス用中間膜の剥がれ、中間膜の層間の剥がれ)の発生の有無を目視により確認した。
合わせガラス−1(NA)を60℃の温水で12時間浸漬後、23℃、28%RHの雰囲気下で108時間静置した(この処理を1サイクルとする)。当該処理を10回繰り返した後、各合わせガラス端部における、積層体に含まれる成分抽出による欠点(ガラスと合わせガラス用中間膜の剥がれ、中間膜の層間の剥がれ)の発生の有無を目視により確認した。
(実施例2〜33、比較例1〜9)
表2および表4に示すようにA層及びB層の組成を変更した以外は実施例1と同様にして積層体及び合わせガラスを作製した。得られた合わせガラスについて実施例1と同様に評価した。結果を表3および表5に示す。
表2および表4に示すようにA層及びB層の組成を変更した以外は実施例1と同様にして積層体及び合わせガラスを作製した。得られた合わせガラスについて実施例1と同様に評価した。結果を表3および表5に示す。
本発明の積層体を合わせガラス用中間膜として使用する場合、真空ラミネーターやバキュームバッグによって低めの含水率で作製したもの、またニップロールで仮接着後にオートクレーブにより高めの含水率で作製したもの、いずれにおいても同等の優れた特性を発現させることが可能である。
本発明の積層体は、積層体に含まれる可塑剤が水によって抽出されにくく、且つ揮発しにくく、合わせガラス用中間膜として用いた場合に、含水率を変化させても遮音性の変化が起こらない。
Claims (7)
- 平均残存水酸基量25〜45モル%のポリビニルアセタール(A)100質量部に対し一般式(I):
- A層がポリビニルアセタール(A)100質量部に対してマグネシウム塩0.001〜0.1質量部を含有する請求項1記載の積層体。
- mとnが同一である、請求項1または2に記載の積層体。
- R1とR2が同一である、請求項1〜3のいずれかに記載の積層体。
- R1及びR2が3−ヘプチル基である、請求項1〜4のいずれかに記載の積層体。
- 3層以上の層から構成され、最外層の双方がA層である請求項1〜5のいずれかに記載の積層体。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の積層体を含む合わせガラス。
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