本発明の積層体は、層(1)と、層(1)の少なくとも片面に層(2)を備え、最外層の少なくとも1層が層(1)であり、かつ3層以上の積層構造を有する積層体である。前記層(1)は熱可塑性樹脂(I)を含み、前記層(2)は熱可塑性樹脂(II)を含む。また、前記層(2)は熱可塑性樹脂(II)100質量部に対して可塑剤Aを4〜200質量部含み、該可塑剤Aの水酸基価をHV(A)mgKOH/gとした場合に、HV(A)≧30であることを要する。
[層(1)]
本発明の積層体は、最外層の少なくとも1層に熱可塑性樹脂(I)を含む層(1)を有する。層(1)に含まれる熱可塑性樹脂は、熱可塑性樹脂(I)単独であってもよいし、複数の熱可塑性樹脂であってもよい。
熱可塑性樹脂(I)としては、例えばポリビニルアセタール、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ポリスチレン、スチレン−ポリエンブロック共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ナイロン、ポリウレタン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコールなどが挙げられる。中でも、後述する可塑剤Aとの相溶性が良好で、可塑剤Aが他の層に移行しにくい点から、熱可塑性樹脂(I)は、水酸基およびエステル基から選ばれる一種類以上の官能基を有する熱可塑性樹脂であることが好ましい。
水酸基を有する熱可塑性樹脂としては、例えば前記熱可塑性樹脂であって水酸基を有するものが挙げられ、具体的にはポリビニルアセタールであって水酸基を有するもの、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコールなどが挙げられる。また、前記ポリ(メタ)アクリル酸エステルなどに対して水酸基を導入する変性を行ったものを用いることもできる。なお、水酸基を導入する方法としては、例えば(メタ)アクリル酸エステルを重合してポリ(メタ)アクリル酸エステルを合成する際、水酸基を有する単量体、例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどを共重合させる、あるいはグラフト重合させるなどの方法が挙げられる。
前記の水酸基を有する熱可塑性樹脂の水酸基価は50mgKOH/g以上であることが好ましく、70mgKOH/g以上であることがより好ましく、90mgKOH/g以上であることがさらに好ましく、110mgKOH/g以上であることが特に好ましく、160mgKOH/g以上であることが最も好ましい。また、前記水酸基価は1300mgKOH/g以下であることが好ましく、500mgKOH/g以下であることがより好ましく、400mgKOH/g以下であることがさらに好ましく、300mgKOH/g以下であることが特に好ましい。前記水酸基価が50mgKOH/g未満であると、可塑剤Aとの相溶性が低下して、可塑剤Aがブリードしたり、可塑剤Aが他の層に移行しやすくなったりする傾向にある。また、前記水酸基価が1300mgKOH/gを超えると、得られる積層体の耐湿性が悪くなり、吸水しやすくなったり、可塑剤Aとの相溶性が低下したりする傾向にある。
なお、水酸基価とは、試料1g中の水酸基と当量の水酸化カリウムのミリグラム(mg)数であり、JIS K1557:2007に準拠して測定することができる。
エステル基を有する熱可塑性樹脂としては、例えば上述した熱可塑性樹脂であってエステル基を有するものが挙げられ、具体的にはポリビニルアセタールであってエステル基を有するもの、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコールであってエステル基を有するものなどが挙げられる。また、上述したポリビニルアセタールなどに対してエステル基を導入する変性を行ったものを用いることもできる。エステル基を導入する方法としては、例えばポリビニルアセタールにポリ(メタ)アクリル酸エステルを有する単量体をグラフト重合させるなどの方法が挙げられる。
前記のエステル基を有する熱可塑性樹脂のエステル価は5mgKOH/g以上であることが好ましく、8mgKOH/g以上であることがより好ましく、15mgKOH/g以上であることがさらに好ましく、30mgKOH/g以上であることが特に好ましく、50mgKOH/g以上であることが最も好ましい。また、前記エステル価は700mgKOH/g以下であることが好ましく、500mgKOH/g以下であることがより好ましく、400mgKOH/g以下であることがさらに好ましく、300mgKOH/g以下であることが特に好ましく、200mgKOH/g以下であることが最も好ましい。前記エステル価が5mgKOH/g未満であると、可塑剤Aとの相溶性が低下して、可塑剤Aがブリードしたり、可塑剤Aが他の層に移行しやすくなったりする傾向にある。また、前記エステル価が700mgKOH/gを超えると、可塑剤Aとの相溶性が低下することがある。
なお、エステル価とは、試料1g中に含まれるエステルを完全にけん化するのに必要とする水酸化カリウムのmg数であり、JIS K 0070:1992に準拠して測定することができる。
上述した水酸基およびエステル基を有する熱可塑性樹脂としては、例えば上述した熱可塑性樹脂であって、水酸基およびエステル基を有するものが挙げられ、具体的にはポリビニルアセタールであって水酸基およびエステル基を有するもの、酢酸ビニルユニットを部分的にけん化したポリ酢酸ビニル、酢酸ビニルユニットを部分的にけん化したエチレン−酢酸ビニル共重合体、水酸基を有するアクリル酸エステル単量体を共重合したポリ(メタ)アクリル酸エステルなどが挙げられる。
ガラスとの接着性や、透明性、力学強度、柔軟性に優れる点から、熱可塑性樹脂(I)としてポリビニルアセタールを用いることが好ましい。以下、層(1)に含まれるポリビニルアセタールをポリビニルアセタール(1)と称し、該ポリビニルアセタール(1)について、平均残存水酸基量をH(1)、平均残存ビニルエステル基量をVE(1)、平均アセタール化度をA(1)、原料ポリビニルアルコールの重合度をP(1)とする。
なお、ポリビニルアセタールの平均残存水酸基量、平均残存ビニルエステル基量、平均アセタール化度および原料ポリビニルアルコールの重合度はJIS K6728:1977に準拠して測定することができる。
ポリビニルアセタール(1)のH(1)は15モル%以上であることが好ましく、17モル%以上であることがより好ましく、19モル%以上であることがさらに好ましく、20モル%以上であることが特に好ましい。また、H(1)は50モル%以下であることが好ましく、40モル%以下であることがより好ましく、35モル%以下であることがさらに好ましく、33モル%以下であることが一層好ましく、32モル%以下であることがより一層好ましく、31モル%以下であることが特に好ましく、30モル%以下であることが最も好ましい。H(1)が15モル%未満であると、本発明の積層体の力学強度が低下する傾向にある。また、H(1)が50モル%を超えると、本発明の積層体を保管した際に可塑剤が層間移行やブリードする傾向にある。
ポリビニルアセタール(1)のVE(1)は20モル%以下であることが好ましく、10モル%以下であることがより好ましく、5モル%以下であることがさらに好ましく、2モル%未満であることが特に好ましい。VE(1)が20モル%を超えると、本発明の積層体を長期間使用した際に着色しやすくなる傾向がある。またVE(1)は0.01モル%以上であることが好ましく、0.1モル%以上であることがより好ましい。
ポリビニルアセタール(1)のA(1)は50モル%以上であることが好ましく、60モル%以上であることがより好ましく、64モル%以上であることがさらに好ましく、67モル%以上であることが一層好ましく、68モル%以上であることがより一層好ましく、69モル%以上であることが特に好ましく、70モル%以上であることが最も好ましい。また、A(1)は85モル%以下であることが好ましく、78モル%以下であることがより好ましく、74モル%以下であることがさらに好ましい。A(1)が50モル%未満であると、本発明の積層体を保管した際に可塑剤が層間移行やブリードする傾向にある。また、A(1)が85モル%を超えると、本発明の積層体の強度が不十分となる傾向にある。
ポリビニルアセタール(1)におけるH(1)+A(1)の値は、95モル%以上であることが好ましく、96モル%以上であることがより好ましく、98モル%以上であることがさらに好ましく、99モル%以上であることが特に好ましい。H(1)+A(1)が95モル%以上であると、本発明の積層体の耐候性や安定性が向上し、例えば長期間保管した場合に変色や臭気の発生が抑制される傾向にある。
ポリビニルアセタール(1)のP(1)は1100以上であることが好ましく、1200以上であることがより好ましく、1600以上であることがさらに好ましい。また、P(1)は3500以下であることが好ましく、3000以下であることがより好ましい。P(1)が1100未満であると、本発明の積層体の耐貫通性が低下したり、本発明の積層体が自着(ブロッキング)しやすくなったり、あるいは積層体の強度が不十分となることがあり、とりわけ本発明の積層体を合わせガラス用中間膜として使用する場合に問題となる傾向にある。また、P(1)が3500を超えると、本発明の積層体を合わせガラス用中間膜として使用する場合、合わせガラスの生産性が低下する傾向にある。
ポリビニルアセタール(1)は、通常、ポリビニルアルコールを原料として製造される。上記ポリビニルアルコールは従来公知の手法、すなわち酢酸ビニルなどのカルボン酸ビニルエステル化合物を重合し、得られた重合体をけん化することによって得ることができる。カルボン酸ビニルエステル化合物を重合する方法としては、溶液重合法、塊状重合法、懸濁重合法、乳化重合法など、従来公知の方法を適用できる。重合開始剤としては、重合方法に応じて、アゾ系開始剤、過酸化物系開始剤、レドックス系開始剤などを適宜選択できる。けん化反応は、従来公知のアルカリ触媒または酸触媒を用いた加アルコール分解反応、加水分解反応などを適用できる。
また、前記ポリビニルアルコールは本発明の趣旨に反しない限り、カルボン酸ビニルエステル化合物と他の単量体とを共重合させた共重合体をけん化したものであってもよい。他の単量体としては、例えばエチレン、プロピレン、n−ブテン、イソブチレンなどのα−オレフィン;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸i−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクタデシルなどのアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸オクタデシルなどのメタクリル酸エステル;アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、アクリルアミドプロパンスルホン酸およびその塩、アクリルアミドプロピルジメチルアミン、その塩およびその4級塩、N−メチロールアクリルアミドおよびその誘導体などのアクリルアミドおよびその誘導体;メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、メタクリルアミドプロパンスルホン酸およびその塩、メタクリルアミドプロピルジメチルアミン、その塩およびその4級塩、N−メチロールメタクリルアミドおよびその誘導体などのメタクリルアミドおよびその誘導体;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテルなどのビニルエーテル;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのニトリル;塩化ビニル、フッ化ビニルなどのハロゲン化ビニル;塩化ビニリデン、フッ化ビニリデンなどのハロゲン化ビニリデン;酢酸アリル、塩化アリルなどのアリル化合物;マレイン酸エステルまたはマレイン酸無水物、ビニルトリメトキシシランなどのビニルシリル化合物;酢酸イソプロペニルなどが挙げられる。これら他の単量体を共重合させる場合には、通常、カルボン酸ビニルエステル化合物に対して10モル%未満の割合で用いられる。
ポリビニルアセタール(1)は、例えば次のような方法によって得ることができる。まず濃度3〜30質量%のポリビニルアルコール水溶液を、80〜100℃の温度範囲で保持した後、その温度を10〜60分かけて徐々に冷却する。温度が−10〜30℃まで低下したところで、アルデヒドおよび酸触媒を添加し、温度を一定に保ちながら、30〜300分間アセタール化反応を行う。その後反応液を30〜200分かけて20〜80℃の温度まで昇温し、その温度を10〜300分保持する。次に反応液を、必要に応じて水酸化ナトリウムなどのアルカリ性の中和剤を添加して中和し、樹脂を水洗、乾燥することにより、ポリビニルアセタール(1)が得られる。
アセタール化反応に用いる酸触媒は、有機酸および無機酸のいずれも使用可能であり、例えば酢酸、パラトルエンスルホン酸、硝酸、硫酸、塩酸等が挙げられる。これらの中でも塩酸、硫酸、硝酸が好ましく用いられる。
アセタール化反応に用いるアルデヒドは、炭素数1〜8のアルデヒドを用いることが好ましい。炭素数1〜8のアルデヒドとしては、例えばホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、n−ヘキシルアルデヒド、2−エチルブチルアルデヒド、n−オクチルアルデヒド、2−エチルヘキシルアルデヒド、ベンズアルデヒド等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。これらの中でも得られるポリビニルアセタール(1)の力学特性、取り扱い性のバランスから、n−ブチルアルデヒドが好適である。
ポリビニルアセタール(1)が炭素数n個のアルデヒドを原料とする場合、nは2以上であることが好ましく、4以上であることがより好ましい。nが2未満であると、アルデヒドの取り扱い性が悪く、ポリビニルアセタール(1)の製造が困難になる傾向にある。また、nは8以下であることが好ましく、5以下であることがより好ましい。nが8を超えると、アルデヒドの水溶性が低下し、ポリビニルアセタール(1)の製造後、未反応アルデヒドを水洗により取り除くことが困難となり、残存したアルデヒドにより臭気が発生しやすくなる傾向にある。中でもnは4であることが最も好ましい。
本発明の積層体においては、層(1)に可塑剤Aが含まれていてもよい。ここで、可塑剤Aとは、その水酸基価をHV(A)mgKOH/gとした場合に、HV(A)が30以上の可塑剤を意味する。可塑剤Aは、保管時に他の層に移行しにくく、熱処理時には他の層に速やかに移行し、熱処理後には他の層に移行しにくいという性質を有する。そのため、可塑剤Aを使用することで、保管時における弱い自着性と合わせガラス作製後における高い柔軟性を両立することができる。
HV(A)は30以上であり、50以上であることが好ましく、80以上であることがより好ましく、100以上であることがさらに好ましく、150以上であることが特に好ましく、200以上であることが最も好ましい。また、HV(A)は500以下であることが好ましく、450以下であることがより好ましく、400以下であることがさらに好ましく、350以下であることが特に好ましく、300以下であることが最も好ましい。HV(A)が30以上であることは、積層体から可塑剤Aが揮発することを抑制する観点、および積層体を長期間保管した場合に、可塑剤Aが他の層に移行することによる積層体の物性低下を抑制する観点から好ましい。また、HV(A)が500以下であることは、積層体を長期間保管した場合に、可塑剤Aの層間移行やブリードを抑制する観点、および本発明の積層体の耐湿性を十分なものとする観点から好ましい。
可塑剤Aとしては、例えばアジピン酸と3−メチル−1,5−ペンタンジオールの交互共重合体からなるポリエステルジオール、プロピレングリコールにε−カプロラクトンを付加重合して得られるポリエステルジオール、ポリカプロラクトンジオール、もしくはポリカプロラクトンモノオールなどのポリエステル化合物、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ビスフェノールAエチレンオキシド付加物、もしくはビスフェノールAプロピレンオキシド付加物などのポリエーテル化合物、または、ひまし油などのグリセリンエステルが挙げられる。なお、可塑剤の水酸基価は、JIS K1557:2007に準拠して測定することができる。
可塑剤Aの数平均分子量は200以上であることが好ましく、330以上であることがより好ましく、360以上であることがさらに好ましく、380以上であることが一層好ましく、420以上であることがより一層好ましく、460以上であることが特に好ましく、500以上であることが最も好ましい。また、可塑剤Aの数平均分子量は2000以下であることが好ましく、1200以下であることがより好ましく、900以下であることがさらに好ましく、750以下であることが特に好ましい。可塑剤Aの数平均分子量が200未満であると、可塑剤Aが揮発しやすくなったり、積層体を長期間保管した場合に可塑剤Aが他の層に移行しやすくなったりする傾向にある。また、可塑剤Aの数平均分子量が2000を超えると、熱可塑性樹脂との相溶性が悪く、得られるシートの透明性が損なわれることがあり、また、熱可塑性樹脂に対する可塑化効果が十分に発現しないことがある。
中でも、積層体から可塑剤Aの揮発を抑制するとともに、積層体を長期間保管した場合に、可塑剤Aが他の層に移行することによって積層体の物性が低下することを抑制する観点から、可塑剤Aの5〜100質量%が数平均分子量360以上の化合物であることが好ましく、5〜100質量%が数平均分子量380以上の化合物であることがより好ましく、5〜100質量%が数平均分子量400以上の化合物であることがさらに好ましい。また、可塑剤Aの30〜100質量%が数平均分子量360以上の化合物であることがより好ましく、50〜100質量%が数平均分子量360以上の化合物であることがさらに好ましく、70〜100質量%が数平均分子量360以上の化合物であることが特に好ましく、90〜100質量%が数平均分子量360以上の化合物であることが最も好ましい。
可塑剤Aのうち、分子量360以上の化合物としては、例えばアジピン酸と3−メチル−1,5−ペンタンジオールの交互共重合体からなるポリエステルジオール、もしくは、プロピレングリコールにε−カプロラクトンを付加重合して得られるポリエステルジオールなどのポリエステル化合物であって分子量が360以上のもの、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ビスフェノールAプロピレンオキシド付加物、もしくは、ビスフェノールAエチレンオキシド付加物などのポリエーテル化合物であって分子量が360以上のもの、または、ひまし油などのグリセリンエステルであって分子量が360以上のものなどが挙げられる。
可塑剤Aは、水酸基を1分子あたりに少なくとも1個有することが好ましく、少なくとも2個有することがより好ましい。可塑剤Aが水酸基を有していると、熱可塑性樹脂との相溶性が向上して可塑剤Aのブリードを抑制したり、可塑剤Aの他の層への移行を抑制したりする傾向にある。
層(1)に可塑剤Aが含まれる場合、可塑剤Aの含有量は、熱可塑性樹脂(I)100質量部に対して4質量部以上であることが好ましく、10質量部以上であることがより好ましく、15質量部以上であることがさらに好ましく、20質量部以上であることが一層好ましく、25質量部以上であることがより一層好ましく、30質量部以上であることが特に好ましく、40質量部以上であることが最も好ましい。また、可塑剤Aの含有量は、熱可塑性樹脂(I)100質量部に対して200質量部以下であることが好ましく、150質量部以下であることがより好ましく、130質量部以下であることがさらに好ましく、110質量部以下であることが一層好ましく、90質量部以下であることが特に好ましく、70質量部以下であることが最も好ましい。可塑剤Aの含有量が熱可塑性樹脂(I)100質量部に対して4質量部以上であると、積層体の柔軟性が向上したり、本発明の積層体が後述の可塑剤Bを含む場合、可塑剤Bの他の層への移行を抑制したり、本発明の積層体からの可塑剤Bのブリードを抑制したりする傾向にある。また、可塑剤Aの含有量が熱可塑性樹脂(I)100質量部に対して200質量部以下であると、積層体の強度や透明性が向上したり、可塑剤Aの他の層への移行を抑制したり、本発明の積層体からの可塑剤Aのブリードを抑制したりする傾向にある。
なお、複数の可塑剤Aを併用して、複数の可塑剤Aの合計量が上記範囲を満たす態様としてもよい。
本発明の積層体においては、層(1)に可塑剤Bが含まれていてもよい。ここで、可塑剤Bとは、その水酸基価をHV(B)mgKOH/gとした場合に、HV(B)が30未満の可塑剤を意味する。
HV(B)は30未満であり、10未満であることが好ましく、5未満であることがより好ましい。
可塑剤Bとしては、例えばトリエチレングリコールジ2−エチルヘキサノエート(3GO)、テトラエチレングリコールジ2−エチルヘキサノエート(4GO)、オクタエチレングリコールジ2−エチルヘキサノエート(8GO)などの1価カルボン酸と2価アルコールのジエステル化合物、またはアジピン酸ジブチル、アジピン酸ジヘキシル,アジピン酸ジ(2−(2−ブトキシ)エトキシ)エチル(DBEEA)、アジピン酸ジ(2−ブトキシエチル)、アジピン酸ジノニルなどのアジピン酸エステル、もしくはフタル酸ジオクチル、セバシン酸ジ(2−エチルヘキシル)などの2価カルボン酸と1価アルコールのジエステル化合物等が挙げられる。ポリビニルアセタールとの相溶性や、ポリビニルアセタールへの可塑化効果に優れる点から、可塑剤Bは上記したような1価カルボン酸と2価アルコールのジエステル化合物および/または2価カルボン酸と1価アルコールのジエステル化合物であることが好ましく、トリエチレングリコールジ2−エチルヘキサノエートであることがより好ましい。
可塑剤Bの数平均分子量は200以上であることが好ましく、310以上であることがより好ましく、360以上であることがさらに好ましく、380以上であることが一層好ましく、400以上であることが特に好ましく、420以上であることが最も好ましい。また、可塑剤Bの数平均分子量は2000以下であることが好ましく、1200以下であることがより好ましく、900以下であることがさらに好ましく、750以下であることが特に好ましい。可塑剤Bの数平均分子量が200未満であると、可塑剤Bが揮発しやすくなったり、積層体を長期間保管した場合に可塑剤Bが他の層に移行しやすくなったりする傾向にある。また、可塑剤Bの数平均分子量が2000を超えると、積層体の強度や透明性が低下したり、熱可塑性樹脂に対する可塑化効果が低下したりする傾向にある。
中でも、積層体からの可塑剤Bの揮発を抑制する観点からは、可塑剤Bの5〜100質量%が数平均分子量310以上の化合物であることが好ましく、5〜100質量%が数平均分子量360以上の化合物であることがより好ましく、5〜100質量%が数平均分子量380以上の化合物であることがさらに好ましく、5〜100質量%が数平均分子量400以上の化合物であることが特に好ましい。また、可塑剤Bの30〜100質量%が数平均分子量360以上の化合物であることがより好ましく、50〜100質量%が数平均分子量360以上の化合物であることがさらに好ましく、70〜100質量%が数平均分子量360以上の化合物であることが特に好ましく、90〜100質量%が360以上の化合物であることが最も好ましい。
可塑剤Bのうち、数平均分子量360以上の化合物としては、例えばトリエチレングリコールジ2−エチルヘキサノエート(3GO)、テトラエチレングリコールジ2−エチルヘキサノエート(4GO)、オクタエチレングリコールジ2−エチルヘキサノエート(8GO)、アジピン酸ジ(2−(2−ブトキシエトキシ)エチル)(DBEEA)、アジピン酸ジノニル、フタル酸ジオクチル、セバシン酸ジ(2−エチルヘキシル)などが挙げられる。
可塑剤Bは水酸基を有しない化合物であることが好ましい。可塑剤Bが水酸基を有しないことにより、本発明の積層体が水に接した際、可塑剤Bが水で抽出されにくくなる傾向にある。
層(1)に可塑剤Bが含まれる場合、可塑剤Bの含有量は、熱可塑性樹脂(I)100質量部に対して3質量部以上であることが好ましく、5質量部以上であることがより好ましく、10質量部以上であることがさらに好ましく、15質量部以上であることが一層好ましく、20質量部以上であることが特に好ましく、25質量部以上であることが最も好ましい。また、可塑剤Bの含有量は、熱可塑性樹脂(I)100質量部に対して100質量部以下であることが好ましく、70質量部以下であることがより好ましく、60質量部以下であることがさらに好ましく、50質量部以下であることが一層好ましく、45質量部以下であることが特に好ましく、35質量部以下であることが最も好ましい。可塑剤Bが熱可塑性樹脂(I)100質量部に対して3質量部以上であると、積層体の柔軟性が向上する傾向にある。また、可塑剤Bが熱可塑性樹脂(I)100質量部に対して100質量部以下であると、積層体の強度や透明性が向上したり、可塑剤Bの他の層への移行を抑制したりする傾向にある。
なお、複数の可塑剤Bを併用して、複数の可塑剤Bの合計量が上記範囲を満たす態様としてもよい。
本発明の積層体においては、層(1)に可塑剤Aおよび可塑剤Bのいずれもが含まれていてもよい。層(1)に可塑剤Aおよび可塑剤Bのいずれもが含まれている場合、可塑剤Aに対する可塑剤Bの質量比(可塑剤Bの含有量/可塑剤Aの含有量)は、0.05以上であることが好ましく、0.1以上であることがより好ましく、0.15以上であることがさらに好ましく、0.2以上であることが特に好ましい。また、可塑剤Aに対する可塑剤Bの質量比(可塑剤Bの含有量/可塑剤Aの含有量)は、20以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましく、7以下であることがさらに好ましく、5以下であることが特に好ましい。当該層における可塑剤Aに対する可塑剤Bの質量比(可塑剤Bの含有量/可塑剤Aの含有量)が0.05以上であると、可塑剤Bによる可塑化効果が得られ易くなる傾向にある。また、当該層における可塑剤Aに対する可塑剤Bの質量比(可塑剤Bの含有量/可塑剤Aの含有量)が20以下であると、可塑剤Bの他の層への移行を抑制したり、本発明の積層体からの可塑剤Bのブリードを抑制したりする傾向にある。
本発明の積層体においては、熱可塑性樹脂(I)100質量部に対して層(1)に含まれる可塑剤の合計量をXi質量部とした場合、Xiは、0以上であることが好ましく、10以上であることがより好ましく、20以上であることがさらに好ましく、25以上であることが特に好ましい。また、Xiは、120以下であることが好ましく、110以下であることがより好ましく、90以下であることがさらに好ましく、80以下であることが特に好ましく、70以下であることが最も好ましい。Xiが120を超えると、本発明の積層体が自着(ブロッキング)しやすくなったり、強度が不足したりする傾向にある。
層(1)の厚さは0.01mm以上であることが好ましく、0.04mm以上であることがより好ましく、0.08mm以上であることがさらに好ましく、0.1mm以上であることが特に好ましい。また、層(1)の厚さは0.5mm以下であることが好ましく、0.4mm以下であることがより好ましく、0.35mm以下であることがさらに好ましく、0.3mm以下であることが特に好ましい。層(1)の厚さが0.01mm以上であると、本発明の積層体の強度が向上したり、本発明の積層体を長期間保管したときに可塑剤Aが層(2)から層(1)に容易に移行して耐自着(ブロッキング)性や強度が低下するのを抑制したりする傾向にある。また、層(1)の厚さが0.5mm以下であると、本発明の積層体を合わせガラス用中間膜として使用して合わせガラスを製造する際に、層(1)に十分に可塑剤Aを移行させる時間を低減でき、合わせガラスの生産効率を向上できる。
[層(2)]
本発明の積層体は、層(2)を少なくとも1層有する。層(2)は、熱可塑性樹脂(II)を含み、かつ該熱可塑性樹脂(II)100質量部に対して可塑剤Aを4〜200質量部を含む。層(2)に含まれる熱可塑性樹脂は、熱可塑性樹脂(II)単独であってもよいし、複数の熱可塑性樹脂であってもよい。
熱可塑性樹脂(II)は、熱可塑性樹脂(I)で例示したものと同様のものを用いることができる。熱可塑性樹脂(II)としては、熱可塑性樹脂(I)と同様に水酸基およびエステル基から選ばれる一種類以上の官能基を有する熱可塑性樹脂であることが好ましい。水酸基を有する熱可塑性樹脂としては、熱可塑性樹脂(I)と同様のものが好ましく用いられる。また、エステル基を有する熱可塑性樹脂としては、熱可塑性樹脂(I)と同様のものが好ましく用いられる。加えて、水酸基およびエステル基を有する熱可塑性樹脂としては、熱可塑性樹脂(I)と同様のものが好ましく用いられる。
中でも、熱可塑性樹脂(II)としては、熱可塑性樹脂(I)と同様にポリビニルアセタールを用いることが好ましい。以下、層(2)にポリビニルアセタールが含まれる場合において、層(2)に含まれるポリビニルアセタールをポリビニルアセタール(2)と称し、ポリビニルアセタール(2)について、平均残存水酸基量をH(2)、平均残存ビニルエステル基量をVE(2)、平均アセタール化度をA(2)、原料ポリビニルアルコールの重合度をP(2)とする。
H(2)、VE(2)、A(2)、P(2)の好適な範囲は、それぞれ、H(1)、VE(1)、A(1)、P(1)の好適な範囲と同様である。H(2)、VE(2)、A(2)、P(2)はそれぞれH(1)、VE(1)、A(1)、P(1)と同じ値であってもよいし異なっていてもよい。
本発明の積層体においては、層(2)に、該層(2)に含まれる熱可塑性樹脂(II)100質量部に対して可塑剤Aが4〜200質量部含まれる。可塑剤Aとしては、層(1)で例示したものと同様のものを用いることができる。可塑剤Aの好適な条件および好適な含有量は、層(1)で示した可塑剤Aの好適な条件および好適な含有量と同様である。
本発明の積層体においては、層(2)にさらに可塑剤Bが含まれていてもよい。可塑剤Bとしては、層(1)で例示したものと同様のものを用いることができる。層(2)に可塑剤Bが含まれる場合において、可塑剤Bの好適な条件および好適な含有量は、層(1)で示した可塑剤Bの好適な条件および好適な含有量と同様である。
本発明の積層体においては、層(2)に可塑剤Aおよび可塑剤Bの両方が含まれていても良く、層(2)に可塑剤Aおよび可塑剤Bの両方が含まれている場合、可塑剤Aに対する可塑剤Bの質量比(可塑剤Bの含有量/可塑剤Aの含有量)の好適な範囲は、層(1)に示した好適な範囲と同様である。
本発明の積層体においては、熱可塑性樹脂(II)100質量部に対して層(2)に含まれる可塑剤の合計量をYi質量部とした場合、Yiは20以上であることが好ましく、25以上であることがより好ましく、30以上であることがさらに好ましく、40以上であることが特に好ましく、50以上であることが最も好ましい。また、Yiは190以下であることが好ましく、150以下であることがより好ましく、130以下であることがさらに好ましく、100以下であることが一層好ましく、90以下であることが特に好ましく、80以下であることが最も好ましい。Yiが20未満であると、本発明の積層体を合わせガラス用中間膜として使用した場合に十分な遮音性が発現しなくなる傾向にある。また、Yiが190を超えると、本発明の積層体の強度が不十分となる傾向にある。
層(2)の厚さは0.05mm以上であることが好ましく、0.2mm以上であることがより好ましく、0.3mm以上であることがさらに好ましく、0.4mm以上であることが特に好ましい。また、層(2)の厚さは1.5mm以下であることが好ましく、1.1mm以下であることがより好ましく、1.0mm以下であることがさらに好ましく、0.8mm以下であることが特に好ましい。層(2)の厚さが0.05mm以上であると、本発明の積層体を合わせガラス用中間膜として使用する場合に柔軟性や遮音性を発現させることができる。また、層(2)の厚さが1.5mm以下であると、本発明の積層体を合わせガラス用中間膜として使用して合わせガラスを作製する際に、層(2)が合わせガラス端部からはみ出すのを抑制し、得られる合わせガラスの歩留まりを向上させる傾向にある。
[積層体]
本発明の積層体は、層(1)と、層(1)の少なくとも片面に層(2)を備え、最外層の少なくとも1層が層(1)であり、かつ3層以上の積層構造を有する積層体である。本発明の積層体は、両最外層が層(1)である積層構造を有することが好ましい。
本発明の積層体は、例えば層(1)、層(2)、層(1)をこの順に積層した積層構造や、層(1)、層(2)、層(1)、層(2)、層(1)をこの順に積層した積層構造であってもよい。本発明の積層体が層(1)または層(2)の少なくとも一方の層を複数含む層構成である場合、複数含まれる層の組成および厚さは、本発明の規定を満たしていれば、同一であっても異なっていてもよい。
本発明の積層体においては、熱可塑性樹脂(I)と熱可塑性樹脂(II)が同じであってもよいし異なっていてもよい。
本発明の積層体は、可塑剤Aとの相溶性が良好で、可塑剤Aが他の層に移行しにくい点から、熱可塑性樹脂(I)または熱可塑性樹脂(II)の少なくとも一方が、水酸基およびエステル基から選ばれる一種類以上の官能基を有する熱可塑性樹脂であることが好ましく、熱可塑性樹脂(I)および熱可塑性樹脂(II)のいずれもが水酸基およびエステル基から選ばれる一種類以上の官能基を有する熱可塑性樹脂であることがより好ましい。
本発明の積層体においては、ガラスとの接着性や、透明性、力学強度、柔軟性に優れる観点から、熱可塑性樹脂(I)または熱可塑性樹脂(II)の少なくとも一方がポリビニルアセタールであることが好ましく、熱可塑性樹脂(I)および熱可塑性樹脂(II)がポリビニルアセタールであることがより好ましい。熱可塑性樹脂(I)がポリビニルアセタール(1)であり、かつ熱可塑性樹脂(II)がポリビニルアセタール(2)である場合、ポリビニルアセタール(1)またはポリビニルアセタール(2)の少なくとも一方が、上述した平均残存水酸基量、平均残存ビニルエステル基量、平均アセタール化度、および重合度の好適な範囲を満たすことが好ましい。
本発明の積層体において、熱可塑性樹脂(I)がポリビニルアセタール(1)であり、かつ熱可塑性樹脂(II)がポリビニルアセタール(2)である場合、各ポリビニルアセタールの平均残存水酸基量の差の絶対値|H(1)−H(2)|は、20モル%以下であることが好ましく、10モル%以下であることがより好ましく、5モル%以下であることがさらに好ましく、3モル%以下であることが一層好ましく、2モル%以下であることが特に好ましく、1モル%以下であることが最も好ましい。|H(1)−H(2)|が20モル%を超える場合は、本発明の積層体を生産する際に発生するトリムやオフスペック品を透明な組成物としてリサイクルすることが困難になる傾向にある。
本発明の積層体において、熱可塑性樹脂(I)がポリビニルアセタール(1)であり、かつ熱可塑性樹脂(II)がポリビニルアセタール(2)である場合、各ポリビニルアセタールの平均残存ビニルエステル基量の差の絶対値|VE(1)−VE(2)|は、20モル%以下であることが好ましく、10モル%以下であることがより好ましく、5モル%以下であることがさらに好ましく、3モル%以下であることが一層好ましく、2モル%以下であることが特に好ましく、1モル%以下であることが最も好ましい。|VE(1)−VE(2)|が20モル%を超える場合は、本発明の積層体を生産する際に発生するトリムやオフスペック品を透明な組成物としてリサイクルすることが困難になる傾向にある。
本発明の積層体において、熱可塑性樹脂(I)がポリビニルアセタール(1)であり、かつ熱可塑性樹脂(II)がポリビニルアセタール(2)である場合、各ポリビニルアセタールの平均アセタール化度の差の絶対値|A(1)−A(2)|は、20モル%以下であることが好ましく、10モル%以下であることがより好ましく、5モル%以下であることがさらに好ましく、3モル%以下であることが一層好ましく、2モル%以下であることが特に好ましく、1モル%以下であることが最も好ましい。|A(1)−A(2)|が20モル%を超える場合は、本発明の積層体を生産する際に発生するトリム、オフスペック品を透明な組成物としてリサイクルすることが困難になる傾向にある。
本発明の積層体において、熱可塑性樹脂(I)がポリビニルアセタール(1)であり、かつ熱可塑性樹脂(II)がポリビニルアセタール(2)である場合、平均アセタール化度A(1)およびA(2)は、いずれも67.0モル%以上であることが好ましく、85.0モル%以下であることが好ましい。また、重合度P(1)およびP(2)のいずれもが1100以上であることが好ましい。
本発明の積層体において、熱可塑性樹脂(I)がポリビニルアセタール(1)であり、かつ熱可塑性樹脂(II)がポリビニルアセタール(2)であり、ポリビニルアセタール(1)が炭素数n個のアルデヒドを原料とし、ポリビニルアセタール(2)が炭素数m個のアルデヒドを原料とする場合、各炭素数の差の絶対値|n−m|は、2以下であることが好ましく、1以下であることがより好ましく、0であることがさらに好ましい。|n−m|が2を超えると、本発明の積層体を製造する際に発生するトリム、またオフスペック品を透明な組成物としてリサイクルすることが困難となる傾向にあり、本発明の積層体を長期間保管した場合に、その特性が変化してしまうこともある。
本発明の積層体においては、少なくとも層(2)に可塑剤Aを含む。また、本発明の積層体においては、層(1)または層(2)の少なくとも1層に可塑剤Bを含むことが、得られる積層体の柔軟性が向上する観点で好ましい。
本発明の積層体においては、層(1)および層(2)のいずれもが、可塑剤Aおよび可塑剤Bを含む場合、層(1)における可塑剤Aに対する可塑剤Bの質量比(可塑剤Bの含有量/可塑剤Aの含有量)をR1、層(2)における可塑剤Aに対する可塑剤Bの質量比(可塑剤Bの含有量/可塑剤Aの含有量)をR2としたとき、R1>R2であることが好ましい。R1>R2であると、例えば層(1)を外層として用い、層(2)を内層として用いた場合、保管中は可塑剤の移行は起きにくいが、100℃を超える温度で積層体を処理した場合に、可塑剤Aが内層から外層へ移行しやすくなり、該積層体を合わせガラス用中間膜として利用した場合に安全性能を発現できる。また、同様の理由から、層(1)に可塑剤Aが含まれず、層(2)に可塑剤Aまたは可塑剤Aおよび可塑剤Bが含まれる態様であってもよい。
本発明の積層体は、層(1)または層(2)のいずれか一方の層が可塑剤Aおよび可塑剤Bを含み、他方の層が可塑剤Aまたは可塑剤Bの一方を含むことも好適な態様である。このような態様の場合、可塑剤Aまたは可塑剤Bのいずれか一方が含まれている層において、可塑剤の添加量が少なくなるため、保管時の取り扱い性に優れる積層体となる。また、上記のような態様の場合、100℃を超える温度で積層体を処理したときに、可塑剤Aおよび可塑剤Bの両方が含まれている層から他方の層に可塑剤が移行し、該積層体を合わせガラス用中間膜として利用した場合に安全性能を発現することができる。
本発明の積層体において、熱可塑性樹脂(I)および熱可塑性樹脂(II)の合計量に対する、層(1)および層(2)に含まれる可塑剤の合計量の割合は、熱可塑性樹脂の合計量を100質量部としたとき、層(1)および層(2)に含まれる可塑剤の合計量が、20質量部以上であることが好ましく、30質量部以上であることがより好ましく、40質量部以上であることがさらに好ましく、43質量部以上であることが特に好ましく、45質量部以上であることが最も好ましい。また、熱可塑性樹脂の合計量を100質量部としたとき、層(1)および層(2)に含まれる可塑剤の合計量が、120質量部以下であることが好ましく、110質量部以下であることがより好ましく、100質量部以下であることがさらに好ましい。前記可塑剤の合計量が20質量部以上であると、本発明の積層体を合わせガラス用中間膜として使用した場合に、遮音性が十分に発揮される傾向にある。また、120質量部以下であると、本発明の積層体からの可塑剤の層間移行やブリードを抑制できる傾向にある。
本発明の積層体において、熱可塑性樹脂(I)100質量部に対して層(1)に含まれる可塑剤の合計量をXi質量部、熱可塑性樹脂(II)100質量部に対して層(2)に含まれる可塑剤の合計量をYi質量部とする。
Yi−Xiは、0<Yi−Xiであることが好ましく、10≦Yi−Xiであることがより好ましく、10<Yi−Xiであることがさらに好ましく、15≦Yi−Xiであることが一層好ましく、20≦Yi−Xiであることがより一層好ましく、25≦Yi−Xiであることが特に好ましく、30≦Yi−Xiであることがとりわけ好ましく、35≦Yi−Xiであることが最も好ましい。Yi−Xiが、0≧Yi−Xiであると、積層体の強度は好適であるものの、自着(ブロッキング)しやすくなる傾向にある。
本発明の積層体において、層(1)と、層(1)の少なくとも片側に層(2)を積層した積層体を23℃、50%RHで5週間保管した場合、熱可塑性樹脂(I)100質量部に対して層(1)に含まれる可塑剤の合計量をXii質量部、熱可塑性樹脂(II)100質量部に対して層(2)に含まれる可塑剤の合計量をYii質量部とする。
Xii−Xiは、Xii−Xi<20であることが好ましく、Xii−Xi<15であることがより好ましく、Xii−Xi<10であることがさらに好ましく、Xii−Xi<5であることが特に好ましい。Xii−Xi<20であると、積層体を長期に保管しても、可塑剤が移行しにくいため、自着性を低く保つことができる。Yi−Yiiは、Yi−Yii<20であることが好ましく、Yi−Yii<15であることがより好ましく、Yi−Yii<10であることがさらに好ましく、Yi−Yii<5であることが特に好ましい。Yi−Yii<20であると、積層体を長期に保管しても、可塑剤が移行しにくいため、自着性を低く保つことができる。
本発明の積層体において、140℃で30分処理した後、1時間以内に23℃まで冷却し、23℃、50%RHで5週間保管した場合、熱可塑性樹脂(I)100質量部に対して層(1)に含まれる可塑剤の合計量をXiii質量部、熱可塑性樹脂(II)100質量部に対して層(2)に含まれる可塑剤の合計量をYiii質量部とする。
Xiii−Xiは、3<Xiii−Xiであることが好ましく、10<Xiii−Xiであることがより好ましく、15<Xiii−Xiであることがさらに好ましく、20<Xiii−Xiであることが特に好ましい。3<Xiii−Xiである場合は、100℃を超える温度で積層体を処理することで、層(2)から層(1)へ可塑剤が速やかに移行し、柔軟性に優れる積層体を得ることができる。同様に、Yi−Yiiiは、3<Yi−Yiiiであることが好ましく、5<Yi−Yiiiであることがより好ましく、10<Yi−Yiiiであることがさらに好ましく、15<Yi−Yiiiであることが一層好ましく、20<Yi−Yiiiであることが特に好ましい。3<Yi−Yiiiである場合は、100℃を超える温度で積層体を処理することで、層(2)から層(1)へ可塑剤が速やかに移行し、柔軟性に優れる積層体を得ることができる。
Xiii−Xiiは、0<Xiii−Xiiであることが好ましく、5<Xiii−Xiiであることがより好ましく、10<Xiii−Xiiであることがさらに好ましく、15<Xiii−Xiiであることが特に好ましい。0<Xiii−Xiiである場合は、本発明の積層体を長期間保管した場合に可塑剤の移行が起こりにくいという特性と、100℃を超える温度で積層体を処理することで層(2)から層(1)へ可塑剤が速やかに移行して柔軟性に優れる積層体を得ることができるという特性とのバランスに優れる点で好ましい。同様に、Yii−Yiiiは、0<Yii−Yiiiであることが好ましく、5<Yii−Yiiiであることがより好ましく、10<Yii−Yiiiであることがさらに好ましく、15<Yii−Yiiiであることが特に好ましい。0<Yii−Yiiiである場合は、本発明の積層体を長期間保管した場合に可塑剤の移行が起こりにくいという特性と、100℃を超える温度で処理することで層(2)から層(1)へ可塑剤が速やかに移行して柔軟性に優れる積層体を得ることができるという特性とのバランスに優れる点で好ましい。
本発明の積層体においては、層(1)と、層(1)の少なくとも片側に層(2)を積層した積層体を23℃、50%RHで1週間保管した場合、熱可塑性樹脂(I)100質量部に対して層(1)に含まれる可塑剤の合計量をXiv質量部、熱可塑性樹脂(II)100質量部に対して層(2)に含まれる可塑剤の合計量をYiv質量部とする。
Xiv−Xiは、Xiv−Xi<10であることが好ましく、Xiv−Xi<8であることがより好ましく、Xiv−Xi<6であることがさらに好ましく、Xiv−Xi<4であることが一層好ましく、Xiv−Xi<2であることが特に好ましい。Xiv−Xi<10であると、積層体を保管しても、可塑剤が移行しにくいため、自着性を低く保つことができる。同様に、Yi−Yivは、Yi−Yiv<10であることが好ましく、Yi−Yiv<8であることがより好ましく、Yi−Yiv<6であることがさらに好ましく、Yi−Yiv<4であることが一層好ましく、Yi−Yiv<2であることが特に好ましい。Yi−Yiv<10であると、積層体を保管しても、可塑剤が移行しにくいため、自着性を低く保つことができる。
Xii−Xivは、Xii−Xiv<7であることが好ましく、Xii−Xiv<5であることがより好ましく、Xii−Xiv<4であることがさらに好ましく、Xii−Xiv<3であることが特に好ましい。Xii−Xiv<7であると、積層体を長期に保管しても、可塑剤が移行しにくいため、自着性を低く保つことができる。同様に、Yiv−Yiiは、Yiv−Yii<3であることが好ましく、Yiv−Yii<2であることがより好ましい。Yiv−Yii<3であると、積層体を長期に保管しても、可塑剤が移行しにくいため、自着性を低く保つことができる。
Xiii−Xivは、0<Xiii−Xivであることが好ましく、5<Xiii−Xivであることがより好ましく、10<Xiii−Xivであることがさらに好ましく、15<Xiii−Xivであることが特に好ましく、20<Xiii−Xivであることが最も好ましい。0<Xiii−Xivである場合は、本発明の積層体を長期間保管した場合に可塑剤の移行が起こりにくいという特性と、100℃を超える温度で積層体を処理することで層(2)から層(1)へ可塑剤が速やかに移行して柔軟性に優れる積層体を得ることができるという特性とのバランスに優れる点で好ましい。同様に、Yiv−Yiiiは、0<Yiv−Yiiiであることが好ましく、5<Yiv−Yiiiであることがより好ましく、10<Yiv−Yiiiであることがさらに好ましく、15<Yiv−Yiiiであることが特に好ましく、20<Yiv−Yiiiであることが最も好ましい。0<Yiv−Yiiiである場合は、本発明の積層体を長期間保管した場合に可塑剤の移行が起こりにくいという特性と、100℃を超える温度で処理することで層(2)から層(1)へ可塑剤が速やかに移行して柔軟性に優れる積層体を得ることができるという特性とのバランスに優れる点で好ましい。
本発明の積層体において、可塑剤の合計量が上記条件を満たす場合、長期間保管をした際の取り扱い性に優れ、合わせガラス用中間膜として用いた際に高い柔軟性を発揮する積層体を得ることができる。
本発明の積層体は、保管時には自着(ブロッキング)しにくく、また、高い強度を有し、取り扱い性に優れる。また、その一方で、十分な熱処理、例えば合わせガラスの作製工程で使用するオートクレーブによって本発明の積層体を高温・高圧で処理することで、層(2)に含まれる可塑剤が層(1)に移行するため、本発明の積層体は、合わせガラス用中間膜に要求される柔軟性や遮音性を好適に発揮できるものである。
本発明の積層体は、50℃で15日間熱処理した後の層(1)に含まれる可塑剤の合計量が、熱処理前の層(1)に含まれる可塑剤の合計量より多いことが好ましい。本発明の積層体がこのような規定を満たす場合には、本発明の積層体を合わせガラスの作製工程で使用するオートクレーブにより、高温・高圧で熱処理することで、層(2)に含まれる可塑剤が層(1)に速やかに移行し、また移行後の積層体を保管している際に、一度層(1)に移行した可塑剤Aが層(2)に再移行することが少なくなる傾向にある。
本発明の積層体は、その厚さが0.2mm以上であることが好ましく、0.25mm以上であることがより好ましく、0.3mm以上であることがさらに好ましい。また、その厚さが2.0mm以下であることが好ましく、1.3mm以下であることがより好ましく、1.0mm以下であることがさらに好ましい。本発明の積層体の厚さが0.2mm未満であると、本発明の積層体を合わせガラス用中間膜として使用した場合にその耐貫通性が低下する傾向にある。また、本発明の積層体の厚さが2.0mmを超えると、本発明の積層体を使用した合わせガラスの重量が増加する傾向にある。
本発明の積層体において、層(1)と層(2)の厚さの組み合わせは、例えば層(1)の厚さの和が、層(2)の厚さの和の3倍より小さいことが好ましく、2倍より小さいことがより好ましく、1.2倍より小さいことがさらに好ましく、0.7倍より小さいことが特に好ましく、0.5倍より小さいことが最も好ましい。層(1)の厚さの和が層(2)の厚さの3倍以上であると、本発明の積層体を保管した場合に可塑剤が層間移行やブリードする傾向にあり、かつ本発明の積層体を合わせガラス用中間膜として使用した場合、得られる合わせガラスの耐貫通性や遮音性が損なわれる傾向にある。
本発明の積層体の表面は、平らであっても、凹凸構造が形成されていても構わないが、合わせガラス製造時の泡抜け性向上の観点では凹凸構造が形成されていることが好ましい。
本発明の積層体は、本発明の効果を損なわない範囲で、層(1)または層(2)に熱可塑性樹脂および可塑剤以外の、従来公知の酸化防止剤、紫外線吸収剤、その他の添加剤をさらに含有していてもよい。
本発明の積層体を合わせガラス用中間膜など、ガラスとの接着性を適切に調節して使用する場合には、接着性改良剤(接着性調整剤)がさらに添加されていてもよい。かかる接着性改良剤としては酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸マグネシウム、酪酸マグネシウムなどのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩などの従来公知の接着性改良剤を使用できる。接着性改良剤の添加量は、例えばパンメル試験により得られるパンメル値が目的に応じた値になるように添加量を調節することができる。接着性改良剤を用いる場合は、層(1)に含ませることが好ましい。
層(1)における熱可塑性樹脂(I)および可塑剤の合計量は40質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましく、85質量%以上であることがいっそう好ましく、90質量%以上であることが特に好ましく、95質量%以上であることが最も好ましい。熱可塑性樹脂(I)および可塑剤の合計量が40質量%以上であると、本発明の目的を好適に達成できる。また、層(2)における熱可塑性樹脂(II)および可塑剤の合計量は40質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましく、85質量%以上であることがいっそう好ましく、90質量%以上であることが特に好ましく、95質量%以上であることが最も好ましい。熱可塑性樹脂(II)および可塑剤の合計量が40質量%以上であると、本発明の目的を好適に達成できる。
本発明の積層体は、その含水率を0.1質量%以上とすることが好ましく、0.2質量%以上とすることがより好ましい。本発明の積層体は、その含水率を1質量%以下とすることが好ましく、0.8質量%以下とすることがより好ましい。含水率が上記範囲を満たすことで、本発明の積層体を合わせガラス用中間膜として使用する場合に、ガラスとの接着力を適切な値とすることができる。
本発明の積層体は、例えばポリビニルアセタール、可塑剤、その他添加剤を従来公知の方法で混合して得られた混合物をシート状に成型し、それらを積層することで得られる。シート状に成型する方法、積層する方法は、従来公知の方法で実施可能である。
[合わせガラス]
本発明の積層体は、特に合わせガラス用中間膜として好適に使用できる。
本発明の積層体を合わせガラス用中間膜として使用する場合、該合わせガラス用中間膜を2枚のガラスで挟持し、100℃を超える温度で10分以上処理して得られる合わせガラスは、層(1)および層(2)に含まれる可塑剤、特に可塑剤Aが層間で移行し、柔軟な合わせガラス用中間膜を含む安全性に優れる合わせガラスを得るという観点において好適なものとなる傾向にある。
本発明の積層体を合わせガラス用中間膜として使用する場合、本発明の積層体と積層させるガラスは、例えばフロート板ガラス、磨き板ガラス、型板ガラス、網入り板ガラス、熱線吸収板ガラスなどの無機ガラスのほか、ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネートなどの従来公知の有機ガラス等を使用できる。これらは無色または有色のいずれであってもよい。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、ガラスの厚さは、通常、100mm以下であることが好ましい。
本発明の積層体を合わせガラス用中間膜として用いて得られる合わせガラスもまた、本発明を構成する。かかる合わせガラスは従来公知の方法で製造できる。例えば真空ラミネーター装置を用いる方法、真空バッグを用いる方法、真空リングを用いる方法、ニップロールを用いる方法等が挙げられる。また上記方法により仮圧着した後に、オートクレーブに投入して本接着する方法も挙げられる。オートクレーブで処理する場合、その条件は、例えば100〜150℃、1.0〜1.3MPaで10〜120分間熱処理することが好ましい。特に本発明の積層体を遮音性に優れる合わせガラス用中間膜として使用する場合には、本発明の積層体を2枚のガラスに挟んで仮接着後、100〜150℃、1.0〜1.3MPaで10〜120分間オートクレーブで熱処理して合わせガラスを作製した場合、2000〜6000Hzにおける20℃または40℃での損失係数が0.15以上、好ましくは0.20以上となるような積層体を使用することが好ましい。また、同様に前記条件で合わせガラスのヘイズが0.01%〜1.0%となるような積層体を使用することが好ましい。
以下、実施例等により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されない。
[評価方法]
(熱可塑性樹脂の物性評価)
製造例1〜4で得られたPVB−1〜PVB−4の平均アセタール化度、平均残存ビニルエステル基量および平均残存水酸基量は、JIS K6728:1977に準拠して測定した。
製造例1〜4で得られたPVB−1〜PVB−4の水酸基価は、JIS K1557:2007に準拠して測定した。
製造例1〜4で得られたPVB−1〜PVB−4のエステル価は、JIS K0070:1992に準拠して測定した。平均アセタール化度、平均残存ビニルエステル基量、平均残存水酸基量、水酸基価およびエステル価の測定結果を表1に示す。
(積層体の保管時における可塑剤の移行性評価)
本実施例および比較例で得られた積層体を23℃、50%RHで1週間保管した。その後、それぞれの層に含有される可塑剤の量を測定するために、層(1)と層(2)を剥離し、それぞれ3%の濃度で重DMSOに溶解させ(内部標準TMS)、FT−NMR(日本電子株式会社製、JMTC−400/54/SS)を用いて、1H−NMRの測定(積算回数256回)を23℃で行った。
得られた測定結果から、層(1)に含まれるポリビニルアセタール(1)の合計量を100質量部とした場合の、層(1)に含まれる可塑剤Aおよび可塑剤Bの含有量をそれぞれ算出した。算出された可塑剤Aおよび可塑剤Bの含有量を合計して、層(1)に含まれる可塑剤の合計量Xivを算出した。また、層(2)についても同様に、可塑剤Aおよび可塑剤Bの各含有量と、可塑剤の合計量Yivを算出した。
本実施例および比較例で得られた積層体を23℃、50%RHで5週間保管した以外は、上記と同様の方法で、層(1)に含まれる可塑剤Aおよび可塑剤Bの各含有量と、可塑剤の合計量Xiiを算出した。また、層(2)についても同様に、可塑剤Aおよび可塑剤Bの含有量と、可塑剤の合計量Yiiを算出した。
(積層体の熱処理後における可塑剤の移行性評価)
本実施例および比較例で得られた積層体を2枚のPETフィルムに挟み、プレス機を用いて、30℃の温度下、100kg/cm2の荷重で10分間プレスした。さらに、その外側を2枚のフロートガラスで挟み、合わせガラス用オートクレーブを使用して140℃で30分間処理した。得られた合わせガラスを60分間で23℃まで冷却し、そのまま23℃、50%RHの雰囲気下で5週間保管した。
その後、それぞれの層に含有される可塑剤の量を測定するために、層(1)と層(2)を剥離し、それぞれ3%の濃度で重DMSOに溶解させ(内部標準TMS)、FT−NMRを用いて、1H−NMRの測定(積算回数256回)を23℃で行った。
得られた測定結果から、層(1)に含まれるポリビニルアセタール(1)の合計量を100質量部とした場合の、層(1)に含まれる可塑剤Aおよび可塑剤Bの含有量をそれぞれ算出した。算出された可塑剤Aおよび可塑剤Bの含有量を合計して、層(1)に含まれる可塑剤の合計量Xiiiを算出した。また、層(2)についても同様に、可塑剤Aおよび可塑剤Bの含有量と、可塑剤の合計量Yiiiを算出した。
なお、初期の層(1)に含まれるポリビニルアセタール(1)の合計量を100質量部とした場合の、層(1)に含まれる可塑剤Aおよび可塑剤Bの含有量の合計量をXi、初期の層(2)に含まれるポリビニルアセタール(2)の合計量を100質量部とした場合の、層(2)に含まれる可塑剤Aおよび可塑剤Bの含有量の合計量をYiとした。
(積層体の自着性評価)
本実施例および比較例における作製直後の積層体を10cm×3cmの大きさに切断して、積層体片を2枚作製した。上記2枚の積層体片を重ねて、その上に6kgの重りを載せ、23℃、50%RHの条件下で24時間処理した。処理後の2枚の積層体片をオートグラフ(株式会社島津製作所製、AG−IS)を用いて、速度100mm/minでT型剥離強度試験を行った。剥離力の最大値を積層体片の幅(3cm)で除した値を自着力(N/3cm)とした。同様の試験を合計5回行い、その平均値を平均自着力(N/3cm)とした。
本実施例および比較例において、23℃、50%RHの雰囲気下で作製から5週間保管した積層体についても、上記と同様の方法で、平均自着力を測定した。
(積層体の柔軟性評価)
本実施例および比較例において、作製した積層体を1cm×10cmの大きさに切断し、オートグラフを使用して100mm/minで引張試験を行い、作製初期における積層体の10%伸長時の応力(MPa)を算出した。
また、作製した積層体を2枚のPETフィルムに挟み、プレス機を用いて、30℃の温度下、100kg/cm2の荷重で10分間プレスした。さらに、その外側を2枚のフロートガラスで挟み、合わせガラス用オートクレーブを使用して140℃で30分間処理した。熱処理した積層体を60分間で23℃まで冷却し、そのまま23℃、50%RHの雰囲気下で5週間保管した。保管後の積層体を1cm×10cmの大きさに切断し、オートグラフを使用して100mm/minで引張試験を行い、熱処理後における積層体の10%伸長時の応力を算出した。
なお、10%伸長時の応力が低いほど、柔軟性に優れる積層体であるといえる。そのため、10%伸長時の応力が低い積層体は、合わせガラス用中間膜として使用した場合に、安全性能を発現させる観点から好適なものとなる。
[ポリビニルブチラール]
(製造例1)
還流冷却器、温度計、イカリ型攪拌翼を備えた5リットルガラス容器に、イオン交換水4050g、ポリビニルアルコール(PVA−1:重合度1700、けん化度99モル%)330gを仕込み、95℃に昇温してポリビニルアルコールを完全に溶解させた。得られた溶液を160rpmで攪拌下、10℃まで約30分かけて徐々に冷却後、n−ブチルアルデヒド189gおよび20%塩酸水溶液200mLを添加し、ブチラール化反応を50分間行った。その後、60分かけて65℃まで昇温し、65℃にて120分間保持した後、室温まで冷却した。得られた樹脂をイオン交換水で洗浄後、水酸化ナトリウム水溶液を添加して残存する酸を中和し、さらに過剰のイオン交換水で洗浄して乾燥させ、ポリビニルブチラール(PVB−1)を得た。
(製造例2)
PVA−1の代わりにポリビニルアルコール(PVA−2:重合度1700、けん化度92モル%)330gを仕込み、ブチルアルデヒドの使用量を195gに変更した以外は製造例1と同様にしてPVB−2を得た。
(製造例3)
n−ブチルアルデヒドの使用量を165gに変更した以外は製造例1と同様にしてPVB−3を得た。
(製造例4)
n−ブチルアルデヒドの使用量を139gに変更した以外は製造例1と同様にしてPVB−4を得た。
[可塑剤Aおよび可塑剤B]
本実施例および比較例で用いた可塑剤Aおよび可塑剤Bをそれぞれ表2および表3に示す。
(実施例1)
(層(1)の作製)
PVB−1を100質量部、可塑剤B−1を25質量部用意し、ラボプラストミル(株式会社東洋精機製作所製、20R200)を用いて、150℃で5分間溶融混錬し、得られた組成物を、熱プレス機(株式会社神藤金属工業製、SFA−37)を用いて、150℃の温度下、100kgf/cm2の荷重で10分間プレスして、厚さ0.1mmの層(1)を作製した。
(層(2)の作製)
PVB−1を100質量部、可塑剤A−1を97質量部、可塑剤B−1を35質量部用意し、ラボプラストミルを用いて、150℃で5分間溶融混錬し、得られた組成物を熱プレス機で120℃の温度下、100kgf/cm2の荷重で10分間プレスして、厚さ0.6mmの層(2)を作製した。
(積層体の作製)
層(1)、層(2)、層(1)をこの順に重ね、プレス機を用いて、30℃の温度下、100kgf/cm2の荷重で10分間プレスして、積層体を得た。層(1)および層(2)の組成および厚さを表4−1に示す。
得られた積層体について、前記評価方法に従って可塑剤の移行性および積層体の自着性について評価した。可塑剤の移行性評価結果を表5−1に、積層体の自着性の評価結果を表6に示す。
(実施例2〜27および比較例1〜4)
層(1)および層(2)の組成および厚さを、表4−1または表4−2に記載の通りとした以外は、実施例1と同様の方法で、実施例2〜27および比較例1〜4の積層体を作製した。また、実施例1と同様に可塑剤の移行性評価および積層体の自着性評価を行った。可塑剤の移行性評価の結果を表5−1〜表5−4に、積層体の自着性評価および柔軟性(応力)評価の結果を表6に示す。
熱可塑性樹脂(I)100質量部に対して層(1)に含まれる可塑剤の合計量をXi質量部、熱可塑性樹脂(II)100質量部に対して層(2)に含まれる可塑剤の合計量をYi質量部とする。本実施例および比較例で得られた積層体を23℃、50%RHで1週間保管した場合、熱可塑性樹脂(I)100質量部に対して層(1)に含まれる可塑剤の合計量をXiv質量部、熱可塑性樹脂(II)100質量部に対して層(2)に含まれる可塑剤の合計量をYiv質量部とする。本実施例および比較例で得られた積層体を23℃、50%RHで5週間保管した場合、熱可塑性樹脂(I)100質量部に対して層(1)に含まれる可塑剤の合計量をXii質量部、熱可塑性樹脂(II)100質量部に対して層(2)に含まれる可塑剤の合計量をYii質量部とする。本実施例および比較例で得られた積層体を、140℃で30分処理した後、1時間以内に23℃まで冷却し、23℃、50%RHで5週間保管した場合、熱可塑性樹脂(I)100質量部に対して層(1)に含まれる可塑剤の合計量をXiii質量部、熱可塑性樹脂(II)100質量部に対して層(2)に含まれる可塑剤の合計量をYiii質量部とする。Yi−Xi、Xii−Xi、Yi−Yii、Xiii−Xi、Yi−Yiii、Xiii−Xii、およびYii−Yiiiの値を表7−1に、ならびに、Xiv−Xi、Yi−Yiv、Xii−Xiv、Yiv−Yii、Xiii−Xiv、およびYiv−Yiiiの値を表7−2に示す。