近年、フラッシュメモリに代わる高速動作可能な次世代不揮発性ランダムアクセスメモリ(NVRAM:Nonvolatile Random Access Memory)として、FeRAM(Ferroelectric RAM)、MRAM(Magnetic RAM)、PRAM(Phase Change RAM)等の様々なデバイス構造が提案され、高性能化、高信頼性化、低コスト化、及び、プロセス整合性という観点から、激しい開発競争が行われている。しかしながら、現状のこれらメモリデバイスには各々一長一短があり、SRAM、DRAM、フラッシュメモリの各利点を併せ持つ「ユニバーサルメモリ」の理想実現には未だ遠い。
これら既存技術に対して、電圧パルスを印加することによって可逆的に電気抵抗が変化する可変抵抗素子を用いた抵抗性不揮発性メモリRRAM(Resistive Random Access Memory)(登録商標)が提案されている。この構成を図6に示す。
図6に示されるように、従来構成の可変抵抗素子は、下部電極103と可変抵抗体102と上部電極101とが順に積層された構造となっており、上部電極101及び下部電極103間に電圧パルスを印加することにより、抵抗値を可逆的に変化させることができる性質を有する。この可逆的な抵抗変化動作(以下では「スイッチング動作」という)によって変化する抵抗値を読み出すことによって、新規な不揮発性半導体記憶装置が実現できる構成である。
この不揮発性半導体記憶装置は、可変抵抗素子を備える複数のメモリセルを行方向及び列方向にそれぞれマトリクス状に配列してメモリセルアレイを形成するとともに、このメモリセルアレイの各メモリセルに対するデータの書き込み、消去、及び読み出し動作を制御する周辺回路を配置して構成される。そして、このメモリセルとしては、その構成要素の違いから、1つのメモリセルが1つの選択トランジスタTと1つの可変抵抗素子Rとから構成される(1T/1R型)メモリセルや、1つの可変抵抗素子Rのみから構成される(1R型)メモリセル等が存在する。このうち、1T/1R型メモリセルの構成例を図7に示す。
図7は1T/1R型のメモリセルによるメモリセルアレイの一構成例を示す等価回路図である。各メモリセルの選択トランジスタTのゲートはワード線(WL1〜WLn)に接続されており、各メモリセルの選択トランジスタTのソースはソース線(SL1〜SLn)に接続されている(nは自然数)。各メモリセル毎の可変抵抗素子Rの一方の電極は選択トランジスタTのドレインに接続されており、可変抵抗素子Rの他方の電極はビット線(BL1〜BLm)に接続されている(mは自然数)。各ワード線WL1〜WLnはそれぞれワード線デコーダ106に接続され、各ソース線SL1〜SLnはそれぞれソース線デコーダ107に接続され、各ビット線BL1〜BLmはそれぞれビット線デコーダ105に接続されている。そして、アドレス入力(図示せず)に応じてメモリセルアレイ104内の特定のメモリセルへの書込み、消去及び読み出し動作のための特定のビット線、ワード線及びソース線が選択される。
図8は、図7におけるメモリセルアレイ104を構成する一メモリセルの断面模式図である。本構成では、選択トランジスタTと可変抵抗素子Rとでひとつのメモリセルを形成している。選択トランジスタTは、ゲート絶縁膜113、ゲート電極114、及びドレイン拡散領域115とソース拡散領域116から構成されており、素子分離領域112を形成した半導体基板111の上面に形成される。可変抵抗素子Rは、下部電極118と可変抵抗体119と上部電極120とから構成されている。
トランジスタTのゲート電極114がワード線を構成しており、ソース線配線124はコンタクトプラグ122を介してトランジスタTのソース拡散領域116と電気的に接続している。又、ビット線配線123はコンタクトプラグ121を介して可変抵抗素子Rの上部電極120と電気的に接続している一方で、可変抵抗素子Rの下部電極118はコンタクトプラグ117を介してトランジスタTのドレイン拡散領域115と電気的に接続している。
このように選択トランジスタTと可変抵抗素子Rとが直列に配置される構成により、ワード線の電位変化によって選択されたメモリセルのトランジスタがオン状態となり、更にビット線の電位変化によって選択されたメモリセルの可変抵抗素子Rのみに選択的に書き込み、或いは消去することができる。
図9は、1R型のメモリセルの一構成例を示す等価回路図である。各メモリセルは可変抵抗素子Rのみから構成されており、可変抵抗素子Rの一方の電極はワード線(WL1〜WLn)に、他方の電極はビット線(BL1〜BLm)に接続されている。各ワード線WL1〜WLnはそれぞれワード線デコーダ133に接続され、各ビット線BL1〜BLmはそれぞれビット線デコーダ132に接続されている。そして、アドレス入力(図示せず)に応じてメモリセルアレイ131内の特定のメモリセルへの書込み、消去及び読み出し動作のための特定のビット線及びワード線が選択される構成である。
図10は図9におけるメモリセルアレイ131を構成するメモリセルの一例を示す斜視構造模式図である。図10に示されるように、上部電極配線143と下部電極配線141とがそれぞれ交差するように配列されており、これらの一方がビット線を形成し、他方がワード線を形成する。また、各電極の交点(通常、「クロスポイント」と称される)に可変抵抗体142を配した構造となっている。図10の例では便宜上、上部電極143と可変抵抗体142を同じ形状に加工しているが、可変抵抗体142のスイッチング動作に対して電気的に寄与する部分は上部電極143と下部電極141の交差するクロスポイントの領域になる。
ここで、上記図8中の可変抵抗体119或いは図10中の可変抵抗体142に利用される可変抵抗体材料としては、米国ヒューストン大のShangquing LiuやAlex Ignatiev等によって、超巨大磁気抵抗効果で知られるペロブスカイト材料に電圧パルスを印加することによって可逆的に電気抵抗を変化させる方法が下記の特許文献1及び非特許文献1に開示されている。この方法は超巨大磁気抵抗効果で知られるペロブスカイト材料を用いながらも、磁場の印加なしに室温においても数桁にわたる抵抗変化が現れるという極めて画期的なものである。なお、特許文献1に例示する素子構造では、可変抵抗体の材料としてはペロブスカイト型酸化物である結晶性プラセオジウム・カルシウム・マンガン酸化物Pr1−xCaxMnO3(PCMO)膜が用いられている。
また、他の可変抵抗体材料としては、チタン酸化(TiO2)膜、ニッケル酸化(NiO)膜、酸化亜鉛(ZnO)膜、酸化ニオブ(Nb2O5)膜などの遷移金属元素の酸化物についても、可逆的な抵抗変化を示すことが非特許文献2及び特許文献2などから知られている。このうち、NiOを用いたスイッチング動作の現象が非特許文献3に詳細に報告されている。
米国特許第6204139号明細書
特表2002−537627号公報
特開2007−27537号公報
特開平11−135736号公報
Liu,S.Q.ほか、"Electric-pulse-induced reversible Resistance change effectin magnetoresistive films",Applied Physics Letter, Vol.76,pp.2749-2751,2000年
H.Pagniaほか、"Bistable Switchingin Electroformed Metal-Insulator-MetalDevices",Phys.Stat.Sol.(a),vol.108,pp.11-65,1988年
Baek,I.G.ほか、"Highly Scalable Non-volatile Resistive Memory using Simple Binary Oxide Driven by Asymmetric Unipolar Voltage Pulses",IEDM 04,pp.587-590,2004年
ところで、例えば図8に示すような構造のメモリセルを製造するに際し、可変抵抗素子Rを形成後、配線形成工程等の各工程において水素等の還元雰囲気下に曝される。
例えば、メモリセルの周辺回路(ロジック回路)を構成するMOSFETの製造工程では、ゲート電極の界面準位、固定電荷、オン電流値、閾値電流等のトランジスタ特性を最終的に調整するために、金属配線構造を形成した後、パッシベーション膜を成膜する前に、400℃〜450℃の温度範囲で数%から50%の範囲の水素濃度の水素雰囲気内で数十分程度の水素アニール処理がウエハに対して施される。
このとき、可変抵抗体が水素雰囲気下に曝されることとなり、この水素雰囲気(還元雰囲気)の影響を受けて可変抵抗体の特性(特に抵抗特性)が変動してしまうという問題がある。
また、仮に水素アニール処理を施さない場合であっても、例えば、層間絶縁膜としてプラズマCVD法によるシリコン酸化膜を成膜する場合には、当該成膜工程時に水素が発生するため、この水素によって可変抵抗体の特性に対して影響が及ぼされる場合がある。
さらに、コンタクトホールに埋め込まれるコンタクト電極の材料としては埋め込み被覆性に優れたW(タングステン)膜が一般的に用いられているが、W膜は通常、WF6とSiH4の熱反応による熱CVD法により成膜されており、該成膜時の熱反応の下で水素が生成される。このようなコンタクト電極形成工程において発生する水素によっても、可変抵抗体の特性が影響される可能性がある。
可変抵抗体を用いた不揮発性半導体記憶装置は、電気的パルスを印加することで抵抗特性を可逆的に変化させることで、各抵抗特性に対応付けられた情報の記憶を行う構成である。従って、可変抵抗体の抵抗特性は、現時点においてメモリセルに書き込まれた情報そのものを表す要素となる。しかしながら、水素が発生することで可変抵抗体の特性(抵抗特性)に対する影響が及ぼされると、読み出し時に誤って情報を読み出してしまったり、正しく書き換え処理が行えないといった問題を生じさせる。
そこで、プロセス時に発生する水素等の還元雰囲気が可変抵抗体内に流入することを防止すべく、スタック構造のRRAMにおいて水素バリア膜を用いることで、安定した抵抗特性を示す可変抵抗素子の製造を可能にする方法が見出され、本出願人によって既に出願されている(上記特許文献3参照)。
ところで、上記特許文献3では、可変抵抗体を上下2つの電極間に挟むことで形成したスタック構造を示す可変抵抗素子(図8に示す構造もその一例である)に関する記述に留まっている。同様に、上記特許文献4では、FeRAMの場合において水素バリア膜を成膜することで水素によるダメージを回避する内容が記載されているが、同文献でもスタック構造を示す記憶素子のみが想定されている。
従来のスタック構造では、電極及び可変抵抗体の表面が加工プロセスにおいて使用されるガス・薬液等に晒されるため、常に清浄な表面を有しているとは言えない。また、下部電極及び可変抵抗体成膜後の自然酸化の影響や上層に堆積される膜の成膜プロセス雰囲気の影響により、接触抵抗が安定しないという問題がある。
そこで、本発明者は、スタック構造と比べて電極や可変抵抗体の表面が曝されない別の構造(以下、適宜「コンタクト構造」という)を示す可変抵抗素子を実現することに思いを至った。
図11は、本件発明に至る過程として想到した可変抵抗素子の概略構造図である。なお、図11に示す可変抵抗素子10は、半導体基板11、配線層12、絶縁膜13(以下、「第1絶縁膜13」という)、サイドウォール絶縁膜16、第1電極17a、第2電極17b、可変抵抗体18、バリア膜19、絶縁膜20、コンタクト電極23a及び23bを備えて構成されている。
すなわち、図11に示す可変抵抗素子10は、開口部30を設けた絶縁膜13内に、底面に向かうほど膜厚が拡がるように形成されたサイドウォール絶縁膜16を有し、更にそのサイドウォール絶縁膜16に挟まれた内側において第1電極17aを有する。そして、可変抵抗体18は、この第1電極17aの上面に接するとともに、サイドウォール絶縁膜16の側壁の上面にも接し、さらに、このサイドウォール絶縁膜16の第1絶縁膜13側の側壁上方及び第1絶縁膜13上方において第2電極17bの上面と接する構成となる。すなわち、可変抵抗体18は、分断した第1電極17a及び第2電極17bの双方と接触する構成となる。これによって、スタック型構造と同様、電気的パルスを印加することで抵抗値を可逆的に変化させる可変抵抗特性を示すことができる。
図11に示されるような可変抵抗素子10を形成するには、以下のようなプロセスを経ることで実現できる。すなわち、半導体基板11上において、配線層12を形成後、基板11の上面に絶縁膜13を成膜する。その後、配線層12の一部上面が露出するように絶縁膜13に対して開口部30を形成した後、この開口部30を完全には充填しない範囲内の膜厚条件下で再び絶縁膜を成膜する。その後、配線層12の上面が露出するように絶縁膜に対してエッチバックを行って、サイドウォール絶縁膜16を形成する。
次に、第1電極17a,17bの材料となる電極膜を成膜する。このときも、開口部30内(且つ、サイドウォール絶縁膜16によって囲まれた領域)を完全には充填しない範囲内の膜厚条件下で電極膜を成膜する。これにより、サイドウォール絶縁膜16の側壁上面の一部には膜厚の薄い電極膜の領域(以下、適宜「局部薄膜領域」という)が形成される。この状況下で酸化処理を行うと、電極膜が酸化された領域に可変抵抗体18が形成される。このとき、前記局部薄膜領域において、成膜されていた電極膜の膜厚相当分が酸化されるような条件下で酸化処理を行う。これにより、局部薄膜領域に存在していた電極膜が酸化されて形成された可変抵抗体18によって、電極膜が、開口部30底面側に位置する第1電極17aと、第1絶縁膜13上面側に位置する第2電極17bとに分断されることとなる。この結果、開口部30内の、サイドウォール絶縁膜16に囲まれた領域内において、可変抵抗体18が第1電極17aと第2電極17bに挟まれる。
その後は、必要に応じて第2電極17bと可変抵抗体18をパターニングした後、この可変抵抗体18の上面並びに側面を覆うように全面にバリア膜19を成膜する。そして、絶縁膜20を成膜した後、通常のプロセスによってコンタクトプラグ23a、23bを形成して図11に示す構成を得る。
通常のスタック型構造の場合、下部電極を形成後に酸化処理を行って、当該下部電極の上面から下方に向かう一部分を可変抵抗体に変化させた後、この可変抵抗体の上面に電極膜を成膜することで上部電極を形成する。従って、上部電極形成前の可変抵抗体の上面はプロセス雰囲気下に曝されており、その上面に電極膜が成膜されることで上部電極が形成されるため、可変抵抗体と上部電極の界面にはプロセス時に生じる不純物が付着してしまう。また、下部電極の一部を酸化することで可変抵抗体を形成しているため、可変抵抗体と下部電極間の電気的特性は酸化時のプロセス条件で調整される。これに対し、上部電極は可変抵抗体の上面に電極膜を成膜することで形成されるため、上部電極と可変抵抗体間の電気的特性は電極膜成膜時のプロセス条件で調整される。すなわち、上部電極、可変抵抗体、及び下部電極で構成される可変抵抗素子の電気的特性は、酸化時のプロセス条件と電極膜成膜時のプロセス条件の二つの条件に応じて決定されることとなる。このため、可変抵抗素子の電気的特性はプロセス条件の影響を受けやすく、設計時の電気的特性を満たすような素子を安定的に製造しにくいという問題を有する。
これに対し、前述のようなプロセスを経て図11に示すような構造の可変抵抗素子10を形成した場合、可変抵抗体と電極との接触面が雰囲気下に露出するということがない。そして、一の工程内で成膜された電極膜の一部を一の酸化工程で酸化することで、前記電極膜から、第1電極17a、第2電極17b、及び可変抵抗体18を形成する。これによって、第1電極17aと可変抵抗体18の界面、及び第2電極17bと可変抵抗体18の界面は、いずれも同一のプロセス条件下で形成される。従って、酸化処理を予め定められたプロセス条件に保つことで、両界面の接触抵抗は安定し、可変抵抗素子の電気的特性を素子間で安定させることが可能となる。
ところで、図11は、可変抵抗体18内に水素等の還元雰囲気を流入させないように、上記特許文献3に記載の方法を用いてバリア膜19を成膜した状態を図示している。可変抵抗体18の上面並びに側面にバリア膜19を成膜することで、可変抵抗体18の上方及び側方から還元雰囲気が流入することを防止している。
しかしながら、図11を見れば明らかなように、第1絶縁膜13及びサイドウォール絶縁膜16を介して矢印D1の方向から可変抵抗体18内に還元雰囲気が流入し得る。上記特許文献3や4は、コンタクト構造の可変抵抗素子をそもそも想定しないため、コンタクト構造特有の本課題を解決する手段についての開示や示唆はされていない。
例えば、一つの対処法としては、サイドウォール絶縁膜16と第2電極17bの間に別途バリア膜を形成することも考えられる。しかし、この方法の場合、可変抵抗体18と第2電極17bの界面にバリア膜が直接接触してしまうため、特性変動が起き、所望の電気的特性を示す可変抵抗素子を安定的に製造することが難しくなってしまう。また、実際にサイドウォール絶縁膜16と第2電極17bの間にバリア膜を成膜しようとした場合、サイドウォール絶縁膜16を形成後に、バリア膜の材料を全面にスパッタすることになるが、このとき、露出していた配線層12の上面がバリア膜で覆われてしまう。このため、後に形成される第1電極17aと配線層12の間の導通を確保するために、サイドウォール絶縁膜16に挟まれた領域内のバリア膜をエッチングして配線層12を露出させる必要がある。しかし、このエッチング工程によって、サイドウォール絶縁膜16の側壁部もエッチングされてしまい、膜厚が減少したり、エッチングダメージを受ける恐れもある。このようなサイドウォール絶縁膜16への作用は、可変抵抗素子の特性を変化させる恐れがあり、望ましくない。
本発明は、上記の問題点に鑑み、所望の電気的特性を安定的に示す可変抵抗素子を提供し、またこのような可変抵抗素子の製造方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するための本発明に係る可変抵抗素子は、半導体基板上において、前記基板面に垂直な方向に貫通する開口部を有して形成された第1絶縁膜と、前記開口部内において前記第1絶縁膜の側壁に接して形成された第1バリア部、並びに前記開口部の底面上において外周から内側に向かって環状に形成された第2バリア部、を備える第1バリア膜と、前記第2バリア部の上面及び前記開口部の内側に係る前記第1バリア部の側壁に接し、底面に向かうほど膜厚が拡がるように形成された前記第1バリア膜と異なる材料のサイドウォール絶縁膜と、前記開口部の底面上において、少なくとも一部が前記第2バリア部に囲まれるように形成された第1電極と、前記第1バリア部側に位置する前記サイドウォール絶縁膜の一部上面、前記第1バリア部の上面、及び前記第1絶縁膜の上面にわたって形成された第2電極と、前記第1電極の上面、前記第2電極が形成されていない前記サイドウォール絶縁膜の一部上面、及び前記第2電極の上面にわたって形成されることで、前記第1電極と前記第2電極とを分断する可変抵抗体と、前記可変抵抗体の上面に形成された第2バリア膜と、を備え、
前記可変抵抗体と前記第2電極の接触面の前記第1電極側の端部が、前記サイドウォール絶縁膜の上面上で終端し、
前記第1電極と前記第2電極の間に電圧パルスが印加されることで前記両電極間の電気抵抗が変化し、前記第1バリア膜及び前記第2バリア膜は、前記可変抵抗体の還元種との還元反応、及び前記可変抵抗体の酸化種との酸化反応の少なくとも何れか一方の反応を抑制するために、前記還元種または前記酸化種またはこれらの双方の前記可変抵抗体への拡散を阻止する膜で構成されることを特徴とする。
本発明に係る可変抵抗素子の上記特徴によれば、まず、サイドウォール絶縁膜と第1絶縁膜の境界にバリア膜が形成されているため、サイドウォール絶縁膜の外側(第1絶縁膜側)からサイドウォール絶縁膜を介して可変抵抗体内に還元種や酸化種が拡散するのを抑制できる。また、サイドウォール絶縁膜の底面にもバリア膜が形成されているため、下方からサイドウォール絶縁膜内を介して可変抵抗体内に還元種や酸化種が拡散するのも抑制できる。
そして、従来のスタック構造とは異なり、開口部内の底面に第1電極を形成し、その第1電極の外側に第2電極を形成し、そして、第1電極の上面、第2電極が形成されていないサイドウォール絶縁膜の一部上面、及び第2電極の上面にわたって可変抵抗体が形成されることで可変抵抗素子が実現される。従って、このような構造であれば、成膜された電極膜を酸化することで電極膜の一部を可変抵抗体に変化させ、これによって電極を2つに分断することで可変抵抗素子を実現できる。すなわち、可変抵抗体と電極との界面を雰囲気下に曝露することなく可変抵抗素子を製造することができる。従って、電極と可変抵抗体の界面に不純物が付着するということがないため、従来のスタック構造よりも所望の抵抗特性を示す可変抵抗素子を製造することができる。
このとき、前記第1バリア膜及び前記第2バリア膜は、AlまたはTiを含む酸化物で構成するものとしても構わない。
また、本発明に係る可変抵抗素子は、上記特徴に加えて、前記第2電極は、前記第1絶縁膜の一部上面に形成されており、前記第2バリア膜は、前記第2電極の上面に位置する前記可変抵抗体の上面及び外側面、前記第2電極の外側面、並びに、上面に前記第2電極が形成されていない前記第1絶縁膜の上面にわたって形成されることを別の特徴とする。
また、本発明に係る可変抵抗素子の製造方法は、上記特徴を備えた可変抵抗素子の製造方法であって、絶縁膜を成膜後、前記開口部を形成することで前記第1絶縁膜を形成する工程と、その後に、前記開口部の底面及び内側面を覆うように、前記開口部を完全には充填しない膜厚条件下で前記還元種または前記酸化種またはこれらの双方の拡散を防止する拡散防止性を備えたバリア膜を成膜する工程と、その後に、前記バリア膜の上面に、前記開口部を完全には充填しない膜厚条件下で絶縁膜を成膜した後、前記開口部の一部底面が現れるまで当該絶縁膜と前記バリア膜に対してエッチバックを行うことで、前記第1バリア膜及び前記サイドウォール絶縁膜を形成する工程と、その後に、前記サイドウォール絶縁膜に囲まれた領域を完全には充填しない膜厚条件下で、露出された前記開口部の底面、前記開口部内側に係る前記サイドウォール絶縁膜の側壁、及び前記第1絶縁膜の上面にわたって電極膜を成膜することで、前記開口部内側に係る前記サイドウォール絶縁膜の側壁の少なくとも一部に局部薄膜領域を有する電極膜を形成する工程と、その後に、酸化処理を行って、少なくとも前記局部薄膜領域を酸化させることで、酸化されて前記可変抵抗体に変化した前記局部薄膜領域によって前記開口部の底面側に形成されている前記電極膜と前記局部薄膜領域より外側の領域に形成されている前記電極膜とを分断して前記第1電極及び前記第2電極を形成する工程と、その後に、少なくとも前記可変抵抗体の上面を覆うように前記拡散防止性を備えたバリア膜を成膜することで前記第2バリア膜を形成する工程と、を有することを特徴とする。
また、本発明に係る可変抵抗素子の製造方法は、上記特徴に加えて、前記電極膜を形成後、前記酸化処理を行う前に前記電極膜に対してパターニング処理を行う工程を有し、前記酸化処理終了後、前記可変抵抗体の上面及び側面、前記第2電極の側面、並びに前記第2電極が形成されていない前記第1絶縁膜の上面にわたって前記拡散防止性を備えたバリア膜を成膜することで前記第2バリア膜を形成することを別の特徴とする。
本発明の構成によれば、可変抵抗体と電極の界面を雰囲気下に曝露せず、且つ、可変抵抗体内に還元種や酸化種が流入することを防止できる。このため、所望の電気的特性を安定的に示す可変抵抗素子を実現することができる。
以下において、本発明に係る可変抵抗素子及びその製造方法の実施形態について図1〜図5の各図を参照して説明する。
なお、以下に示す各概略構造図は、模式的に図示されたものであり、図面上の寸法比と実際の寸法比とは必ずしも一致するものではない。また、上述した図11と同一の構成要素については同一の符号を付している。
図1は、本発明に係る可変抵抗素子の概略構造図である。本発明に係る可変抵抗素子1は、半導体基板11、配線層12、第1絶縁膜13、バリア膜15(以下、「第1バリア膜15」という)、サイドウォール絶縁膜16、第1電極17a、第2電極17b、可変抵抗体18、バリア膜19(以下、「第2バリア膜19」という)、第2絶縁膜20、コンタクト電極23a,23bを備えて構成される。
すなわち、可変抵抗素子1によれば、サイドウォール絶縁膜16と第1絶縁膜13の境界において、半導体基板11の基板面と直交する方向に第1バリア膜15が成膜されている。また、サイドウォール絶縁膜16の底面にも第1バリア膜15が成膜されている。以下では、サイドウォール絶縁膜16と第1絶縁膜13の境界に形成されている第1バリア膜15を「第1バリア部15a」といい、サイドウォール絶縁膜16の底面に形成されている第1バリア膜を「第2バリア部15b」という。
この第1バリア膜15並びに第2バリア膜19は、いずれも水素等の還元種、酸素等の酸化種、またはこれら双方の拡散を防止する拡散防止性を備えた材料で構成されており、例えばAlOxを用いることができる。なお、これらのバリア膜としては、前記拡散防止性を備えていればAlOxに限られるものではなく、例えばAlを含む酸化物、Tiを含む酸化物で構成されていても良い。
図11に示す可変抵抗素子10と同様、図1に示す可変抵抗素子1は、上方あるいは側方から可変抵抗体18に対して還元種や酸化種が流入するのを防止すべく、第2バリア膜19を備えている。そして、図1に示す可変抵抗素子1は、この第2バリア膜19に加えて、さらに第1バリア膜15を備える点で可変抵抗素子10と構成を異にする。
可変抵抗素子1は、第1バリア膜15(特に第1バリア部15a)を備えることで、第1絶縁膜13側から還元種や酸化種が拡散してきた場合(図1内の矢印X1)であっても、サイドウォール絶縁膜16との界面において当該拡散を遮蔽する効果を有する(図1内の矢印X2)。このため、サイドウォール絶縁膜16内を介して可変抵抗体18内に当該還元種や酸化種が流入するのを防止することができる。また、サイドウォール絶縁膜16の底面にも第1バリア膜15(第2バリア部15b)を備えることで、サイドウォール絶縁膜16の下方から還元種や酸化種が拡散してきた場合であっても、サイドウォール絶縁膜16内に流入するのを抑制する効果を有する。
図2は、図1に示す可変抵抗素子1と図11に示す可変抵抗素子10のスイッチング特性を比較したグラフであり、可変抵抗素子の抵抗値を縦軸(対数目盛)としてグラフ化したものである。
図2は、両可変抵抗素子1及び10に対し、それぞれ第1パルス電圧(電圧−2.6〔V〕、パルス幅35〔nsec〕。図面上では「Pulse1」と表記)と第2パルス電圧(電圧+2.0〔V〕、パルス幅35〔nsec〕。図面上では「Pulse2」と表記)を交互に印加し、各電圧印加後に測定される抵抗値(読み出し抵抗値)の測定結果の範囲をグラフ上に表示したものである。なお、読み出し処理は、0.5〔V〕の電圧を印加して測定された抵抗値を表記している。
また、図2において、両素子1及び10の双方に対し、低抵抗状態に変化した変化後の抵抗値の推移を点線で示している(V1,V2)。これによれば、点線V2に比べて点線V1の変動は小さいことが分かる。すなわち、この図2によれば、図11に示す可変抵抗素子10に比較して、図1に示す可変抵抗素子1の方が抵抗特性が安定的であることが分かる。
そして、両素子1及び10を比較した場合、まさに第1バリア膜15が存在するか否かの違いに留まる。これは、逆に言えば、この第1バリア膜15を形成することによって可変抵抗素子の抵抗特性を安定化させることができることを表すものである。
以上によれば、図1のようないわゆるコンタクト構造の可変抵抗素子に対しても、可変抵抗体18内への還元種や酸化種の流入を防止することができ、これによって安定的な抵抗特性を実現できることが分かる。
そして、この図1に示す可変抵抗素子1は、後述するステップ#1〜#10のプロセスを経て製造することができる。この各ステップを経ることで、上述したスタック構造とは異なり、可変抵抗体と電極との界面が雰囲気下に曝露されることなく可変抵抗素子を製造することができる。従って、上記特許文献3及び4に記載の可変抵抗素子と比較して、さらに安定した抵抗特性を示す可変抵抗素子を実現することができる。
以下、可変抵抗素子1の製造方法につき、図面を参照して説明する。図3及び図4は、可変抵抗素子1を製造する際の製造工程を示す概略断面図であり、工程毎に図3(a)〜(f)、図4(a)〜(e)に分けて図示している(紙面の都合上2図面に分けている)。また、図5は、本発明方法の製造工程をフローチャートにしたものであり、以下の文中の各ステップ#1〜#10は図5に示されるフローチャートの各ステップを表している。
まず、図3(a)に示すように、トランジスタ回路等(図示せず)及び配線層12を適宜形成した半導体基板11上にSiO2膜等の絶縁膜(第1絶縁膜)13をCVD法にて例えば400nm程度の厚みで全面に堆積する(ステップ#1)。
次に、図3(b)に示すように、公知のフォトリソグラフィ技術によって形成したレジストをマスクとして、公知のエッチング技術によって、第1絶縁膜13に所定のホール直径400nm程度で配線層12の一部上面が露出するように開口部30を形成する(ステップ#2)。
次に、図3(c)に示すように、バリア膜15としてのAlOx膜を、開口部30内を完全に充填しない程度の膜厚(例えば10nm程度)でスパッタ法によって全面に堆積する(ステップ#3)。
次に、図3(d)に示すように、サイドウォール絶縁膜を形成するためのSiO2膜等の絶縁膜16を開口部30内を完全に充填しない程度の膜厚(例えば170nm程度)で全面に堆積する(ステップ#4)。
次に、図3(e)に示すように、公知のエッチング技術によって、配線層12の上面の一部が露出するまで全面にエッチバックを行う(ステップ#5)。このとき、第1絶縁膜13上の絶縁膜16及びバリア膜15をエッチング除去し、第1絶縁膜13の上面を露出する。
本ステップ#5によって、開口部30内に、底面に向かうほど膜厚が拡がるように形成されたサイドウォール絶縁膜16が形成される。また、サイドウォール絶縁膜16と第1絶縁膜13の境界、並びにサイドウォール絶縁膜16の底面にバリア膜15が残存する。サイドウォール絶縁膜16と第1絶縁膜13の境界に形成されているバリア膜15が第1バリア部15a、サイドウォール絶縁膜16の底面において環状に形成されているバリア膜15が第2バリア部15bに相当する。
次に、図3(f)に示すように、半導体基板11上に電極膜17の一例としてTiN膜をスパッタ法にて例えば60nm程度の厚みで全面に堆積する(ステップ#6)。このとき、ステップ#5において、底面に向かうほど膜厚が拡がるように形成されたサイドウォール絶縁膜16が形成されているため、電極膜17がサイドウォール絶縁膜16の側壁上面に堆積される結果、サイドウォール絶縁膜16の側壁上面の一部には膜厚の薄い電極膜の領域(以下、適宜「局部薄膜領域」という)が形成される。なお、本ステップ#6においても、開口部30が完全には充填されることのない範囲内の膜厚で電極膜17を成膜する。なお、本ステップ#6によって、配線層12が露出した開口部30の底面上に電極膜17が形成される。
次に、図4(a)に示すように、公知のフォトリソグラフィ技術によって形成したレジストをマスクに、公知のエッチング技術によって、電極膜17を必要に応じてパターニングする。
次に、図4(b)に示すように、例えば、酸素を含む250〜450℃の雰囲気下で熱酸化することにより、電極膜(TiN膜)17を酸化させて、可変抵抗体膜18としてのTiO2膜を形成する(ステップ#7)。このとき、少なくとも前記局部薄膜領域においては、成膜されていた電極膜の膜厚相当分を酸化させる。このステップ#7によって、形成された可変抵抗体18によって、電極膜17が、開口部30の底面側に位置する第1電極17aと、第1絶縁膜13上面側に位置する第2電極17bとに分断されることとなる。この結果、開口部30内の、サイドウォール絶縁膜16に囲まれた領域内において、可変抵抗体18が第1電極17aと第2電極17bに挟まれる。なお、第1電極17aは、少なくとも一部が第2バリア部15bによって囲まれるような構成となる。
なお、可変抵抗素子1を実現するためには、本ステップ#7終了時においても当然に開口部30の底面に第1電極17aを残存させる必要がある。従って、本ステップ#7では、圧力条件、温度条件、及び処理時間を所定の条件にして酸化処理を行うことで、開口部30の底面位置(即ち配線層12の上面位置)に形成されている電極膜17を完全には酸化せず、当該領域に一部未酸化の電極膜17を残存させる。すなわち、開口部30の底面位置において、配線層12の上面と接触する部分には未酸化の電極膜17が形成されており、その上部領域には電極膜17が酸化されて形成された可変抵抗体膜18が存在することとなる。なお、本ステップ#7の一例としては、常圧(760Torr)で300℃の条件下で、40分程度の熱酸化処理を施すものとして良い。
次に、図4(c)に示すように、第2バリア膜19としてのAlOx膜をスパッタ法にて10nm程度全面に堆積する(ステップ#8)。なお、ステップ#6終了後にパターニング処理を行っている場合には、第2バリア膜19が、第2電極17bと可変抵抗体18の上面及び側面、並びに第1絶縁膜13の上面を覆うように形成される。この第2バリア膜19は、可変抵抗体18の上方や側方からの還元種や酸化種の流入を防止する機能を奏する。
次に、図4(d)に示すように、第2絶縁膜20としてのSiO2等の絶縁膜をCVD法にて例えば700nm程度成膜し(ステップ#9)、公知のCMP法等による平坦化技術で平坦化する)。
次に、図4(e)に示すように、公知のコンタクト技術によって配線層12に連絡するコンタクト電極23aと、第2電極17bに連絡するコンタクト電極23bを形成する(ステップ#10)。その後、上層の配線層を形成する。
なお、以上の説明では、フォトレジストを塗布、露光、及び現像する工程や、エッチング後にフォトレジストを除去する工程や、エッチング及びレジスト除去後の洗浄工程などの一般的な工程については省略して記述している。
上記ステップ#1〜#10を経て製造された可変抵抗素子1は、特許文献3あるいは4に記載の方法のように、下部電極と可変抵抗体を形成後、上部電極としての電極膜を可変抵抗体の上面に接触するように成膜するという工程を経ることなく実現できる。すなわち、ステップ#7に係る一の酸化処理によって、一の電極膜から、第1電極17a、第2電極17b、及び可変抵抗体18が形成される。すなわち、この酸化処理の条件を調整することで、可変抵抗体18と第1電極17a間の電気的特性、並びに可変抵抗体18と第2電極17b間の電気的特性を制御することができる。また、可変抵抗体と各電極との界面が雰囲気下に曝されるということもない。これによって、所望の電気的特性を有する可変抵抗素子1を安定的に製造することが可能となる。
そして、前述したように、サイドウォール絶縁膜16と第1絶縁膜13の境界、並びにサイドウォール絶縁膜16の底面に第1バリア膜15が形成されているため、可変抵抗体18内への還元種や酸化種の流入を防止でき、抵抗特性を安定化させることができる。この効果は図2に見た通りである。
なお、上記ステップ#1において半導体基板11はトランジスタ回路等が適宜形成されているものとしたが、必ずしも当該回路が形成されている必要はない。
また、ステップ#6に係る電極膜17の成膜工程においては、サイドウォール絶縁膜16の側壁上面に成膜する電極膜17の膜厚(すなわち局部薄膜領域における膜厚)を、開口部30の底面(配線層12)の上面や第1絶縁膜13の上面に成膜する電極膜17の膜厚よりも十分薄くするため、コリメートスパッタ、ロングスロースパッタ、イオン化スパッタ等の指向性スパッタ成膜法を使用して成膜することが好ましい。さらに、CVD法とスパッタ法の積層膜を用いることにより可変抵抗体18の膜厚を制御しても良い。
また、ステップ#7に係る酸化工程としては、ガス種にO2、O3、H2O、N2O、NO等酸素を含んだ分子を用いた熱酸化法の他、プラズマ酸化法或いはイオン注入法等を用いるものとしても構わない。
なお、ステップ#6では、電極膜17の一例としてTiN膜を用いたが、Cu、Ni,V、Zn、Nb、Ti、W、Co等の遷移金属、若しくは遷移金属の窒化物で形成することも可能である。このとき、可変抵抗体膜18は、電極膜17として用いられた材料が酸化されることで形成される金属酸化物又は金属酸窒化物で構成される。