以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は第1実施例を示す先行待機運転ポンプの縦断面図、図2は同ポンプにおける空気導入部の横断面図である。
図1、2において、先行待機運転ポンプ1は、排水機場の吸込水槽2内に流入する雨水等の水を下流側に排水する立軸ポンプである。
鉛直方向に延びるケーシング3は、直管状の揚水管4と、揚水管4の下端に連結されたポンプケーシング5と、ポンプケーシング5の下端に連結された吸込管(吸込ベル)6と、揚水管4の上端に連結されて鉛直方向から水平方向に湾曲した吐出エルボ7とを備え、吸込管6の下端(ケーシング3の下端)に吸込口8を有し、吐出エルボ7の吐出口9(ケーシング3の上端)に吐出管(排水管)10が連結されている。
羽根車11は、主軸13を介してポンプケーシング5内に配設され、羽根車11より上方(下流側)のポンプケーシング5内に複数の案内羽根12が配設されている。
鉛直方向に延びる主軸13は、ケーシング3の中心に複数の軸受14、15、16を介して支持され、主軸13の下端近傍に羽根車11が一体回転可能に取り付けられている。主軸13の上端側は、吐出エルボ7を回転自在、かつ、水密に貫通してケーシング3の外部に突出され、エンジン、電動機等の駆動源及び減速機構からなる回転駆動機構17に連結されている。
主軸13の下端を支持する下端軸受16は、外面を4枚(複数枚)の支持板16aを介して羽根車11の直ぐ下側(上流側)で吸込管6の内面に固定されている。支持板16aは、相対する下端軸受16の外面と吸込管6の内面との間の通路を略等間隔に仕切り、水が軸方向に流れるように案内する案内板を兼ねている。残りの軸受14、15の外面も同様の支持板14a、15aによって揚水管4の内面に固定されている。
ケーシング3の上部には据え付け用のフランジ18が設けられ、吸込水槽2の上面を覆っている排水機場のコンクリート製の床19にはフランジ18より下側のポンプ1を挿通可能な孔20が設けられ、ポンプ1が、フランジ18より下側を孔20を介して吸込水槽2内に吊り下げた状態で床19にフランジ18を介して据え付けられている。
そして、先行待機運転ポンプ1は、吸込水槽2の水位WLが後述する最低水位LWL以下の状態において、羽根車11より下方のケーシング3内に空気を導入しながら揚水することで排水量を低下させるための気水混合用と、気水混合運転して吸込水槽2の水位が前記最低水位LWLより低い、後述する揚水遮断水位SWLになった時に、羽根車11より下方のケーシング3内に空気を導入することで揚水を遮断するための揚水遮断用の2系統の空気管21、22(空気管の一例)とを備え、各空気管21、22には、それぞれ、開閉手段23、24を備えている。
羽根車11より下方の吸込管6(ケーシングの一例)の管壁には、気水混合用空気管21の取付部となる内外面貫通の第一の開口(気水混合用空気導入口;ケーシング内の開口)25と、揚水遮断用空気管22の取付部となる第二の開口(揚水遮断用空気導入口;ケーシング内の開口)26が設けられている。
本実施例では、第一の開口25は、2つ(複数)、同じ高さ位置で等間隔に配置している。第二の開口26は、1つ、第一の開口25に対して高低差を設けて羽根車11の下端より下方で第一の開口25より上方に配置し、かつ、第一の開口25に対して上下方向でも重ならないように周方向位置も異ならせて配置している。しかも、第二の開口26の周方向位置は、隣接する2つの第一の開口25間の略中央に位置するように第一の開口25に対して周方向に位置ずれさせている。したがって、本実施例では、気水混合用空気管21は、2本(複数本)備えられている。
気水混合用空気管21は、上端に折返し部を有する逆U字形に曲げ形成されており、上端の折返し部が床19より上側に配置されている。そして、両端部が孔20を介して吸込水槽2内に延ばされ、一端21aが第一の開口25に接続されている。なお、折返し部は揚水に伴って第一の開口25に発生する最大負圧による吸込み揚程よりも高い位置に設定されているので、逆U字状の空気管の折返し部を越えて水が吸い上げられることがないので、空気管からゴミなどが折返し部に詰まる可能性を少なくすることができる。
また、気水混合用空気管21の先端21b(他端;第一の給気口の一例)は、吸込水槽2の水位(以下、「吸水位」という。)LWが後述する最低水位LWL(第一の所定水位の一例)にまで上昇したときに水没するように設けられる。したがって、気水混合用空気管21の先端21bは、吸水位LWが最低水位LWLに上昇するまでは大気中で開放されて気水混合用空気管21を開いた状態に保持し、吸水位LWが最低水位LWLにまで上昇したときに吸込水槽2内の水によって塞がれて吸水位LWが最低水位LWL以上のときに気水混合用空気管21を閉じた状態に保持する。すなわち、気水混合用空気管21の開閉手段23は、気水混合用空気管21の先端21bによって構成されている。
揚水遮断用空気管22は、気水混合用空気管21と同様に、上端に折返し部を有する逆U字形に曲げ形成されており、上端の折返し部が床19より上側に配置されている。そして、両端部が孔20を介して吸込水槽2内に延ばされ、一端22aが第二の開口26に接続されている。なお、折返し部は揚水に伴って第二の開口26に発生する最大負圧による吸込み揚程よりも高い位置に設定されているので、逆U字状の空気管の折返し部を越えて水が吸い上げられることがないので、空気管からゴミなどが折返し部に詰まる可能性を少なくすることができる。
また、揚水遮断用空気管22の先端22b(他端;第二の給気口の一例)は、吸水位LWが後述する揚水遮断水位SWL(第二の所定水位の一例)にまで上昇したときに水没するように設けられる。したがって、揚水遮断用空気管22の先端22bは、吸水位LWが揚水遮断水位SWLに上昇するまでは大気中で開放されて揚水遮断用空気管22を開いた状態に保持し、吸水位LWが揚水遮断水位SWLにまで上昇したときに吸込水槽2内の水によって塞がれて吸水位LWが揚水遮断水位SWL以上のときに揚水遮断用空気管22を閉じた状態に保持する。すなわち、揚水遮断用空気管22の開閉手段24は、揚水遮断用空気管22の先端22bによって構成されている。
本実施例では、2系統の気水混合用空気管21と揚水遮断用空気管22は、2本の気水混合用空気管21から導入する空気量と1本の揚水遮断用空気管22から導入する空気量が略同じになるような管径のものが使用されている。2本の気水混合用空気管21に対し揚水遮断用空気管22が1本であるから、各気水混合用空気管21の管径は揚水遮断用空気管22の管径の略1/√2である。
吸込管6の内面には、第二の開口26部近傍の流体圧力を低減させる圧力低減手段として羽根車回転方向の流れを遮るリブ27が設けられている。ここで、図2に示すように、下端軸受16の4枚の支持板16aは、そのうち1枚の支持板16aの外端部が、軸方向から見て、第二の開口26の羽根車回転方向(矢印A方向)上流側近傍で吸込管6の内面に連結されるように、相対する下端軸受16の外面と吸込管6の内面との間に架設されている。また、下端軸受16の4枚の支持板16aは、下端が第一の開口25より上方に位置し、上端が羽根車11の下端より下方に位置して、第一の開口25は含まず第二の開口26は含む高さ範囲で、相対する下端軸受16の外面と吸込管6の内面との間に架設されている。したがって、第二の開口26の羽根車回転方向上流側近傍で吸込管6の内面に連結されている支持板16aの外端部は、第二の開口26を通過する直前で羽根車回転方向の流れを遮る。すなわち、圧力低減手段27は、第二の開口26の羽根車回転方向上流側近傍で吸込管6の内面に連結されている支持板(リブ)16aの外端部によって構成されている。なお、圧力低減手段としてのリブは、前記実施形態に限定されるものではなく、ケーシングの内面に片持ち状態で突出させた形態等であってもよい。
下端軸受16の4枚の支持板16aは、そのうち1枚の支持板16aの外端部が、軸方向から見て、第二の開口26の羽根車回転方向上流側近傍で吸込管6の内面に連結されると、その1枚の支持板16aと隣接する2枚の支持板16aの外端部は、軸方向から見て、第一の開口25の羽根車回転方向上流側近傍で吸込管6の内面に連結されるようになる。すなわち、吸込管6に設ける両開口25、26と下端軸受16の支持板16aの外端部との周方向の位置関係は、軸方向から見て、両開口25、26の羽根車回転方向上流側近傍に支持板16aの外端部が位置するようになっている。
吸込口8と第一の開口25との間の吸込管6の外面には、渦発生防止板28が設けられている。渦発生防止板28は、吸水位LWが揚水遮断水位SWL付近まで低下したときにその水面と面接触する水平板で構成されている。水平板は、吸込口8より大きく、かつ、床19の孔20よりも小さく形成されている。なお、渦発生防止板28は、第一の開口25より下方の吸込管6の外面に放射状に設ける複数の垂直板で構成しても良い。また、孔20よりも大きな水平板や垂直板を用いても良い。
次に、図1を参照して先行待機運転ポンプ1の高さ方向の構造と吸水位LWの関係を説明する。
まず、吸込水槽2にはその許容水位として、吸込水槽2に固有の最高水位HWLが設定されている。
最高水位HWLより下方にはポンプ1(ここでのポンプは、空気管21、22や渦発生防止板28を備えていない立軸ポンプをいう。)に固有の最低水位LWL(第一の所定水位の一例)が設定されている。最低水位LWLはそれ以下では吸込口8から渦、すなわち、空気を吸い込み、振動や騒音が発生し、運転が継続できなくなる吸水位WLに相当する。そして、ポンプ1は、気水混合用空気管21を通して羽根車11より下方のケーシング3内に空気を導入しながら揚水し排水量を低下させて運転することで、最低水位LWLより低い吸水位WLでの始動及び連続運転を可能にしたものであるから、気水混合用空気管21の先端21bは、少なくとも吸水位WLが最低水位LWLより低下したときに大気中に開放される位置に設けておけば良い。本実施例では、気水混合用空気管21にも開閉手段23を備えており、開閉手段23は、気水混合用用空気管21の先端21bによって構成されている。したがって、上記のとおり、気水混合用空気管21の先端21b(第一の給気口の一例)は、吸水位LWが最低水位LWLにまで上昇したときに水没するように設けられ、吸水位LWが最低水位LWLに上昇するまでは大気中で開放されて気水混合用空気管21を開いた状態に保持し、吸水位LWが最低水位LWLにまで上昇したときに吸込水槽2内の水によって塞がれて吸水位LWが最低水位LWL以上のときに気水混合用空気管21を閉じた状態に保持するのである。
羽根車11は最低水位LWLより下方に配置されている。最低水位LWLであれば羽根車11の全体又は少なくとも羽根車11の下端部が水没するように配置されている。
最低水位LWLの下方には揚水開始水位RWLが設定されている。揚水開始水位RWLは羽根車11の下端の吸水位WLに相当し、ポンプ1の始動後に一番最初(羽根車11より上方のケーシング3内に水がない場合)に揚水を開始する吸水位WLである。
揚水開始水位RWLの下方には第二の開口26と圧力低減手段27(下端軸受16の支持板16a)が配置され、その下方には第一の開口25が配置されている。
揚水開始水位RWLの下方には再揚水開始水位CWLが設定されている。再揚水開始水位CWLは第一の開口25の上端の吸水位WLに相当し、一旦排水を行い揚水遮断運転(待機運転)になった後(羽根車11より上方のケーシング3内に水がある場合)に再揚水できる吸水位WLである。
再揚水開始水位CWLの下方には揚水遮断水位SWL(第二の所定水位の一例)が設定されている。揚水開始水位SWLは、気水混合運転して吸水位WLが第一の開口25より低下したときに開閉手段24により揚水遮断用空気管22を開き、揚水遮断用空気管22を通して羽根車11より下方のケーシング3内に空気を導入して揚水を遮断し、揚水遮断運転に切り替える吸水位WLである。したがって、上記のとおり、揚水遮断用空気管22の先端22b(第二の給気口の一例)は、吸水位LWが揚水遮断水位SWLにまで上昇したときに水没するように設けられ、吸水位LWが揚水遮断水位SWLに上昇するまでは大気中で開放されて揚水遮断用空気管22を開いた状態に保持し、吸水位LWが揚水遮断水位SWLにまで上昇したときに吸込水槽2内の水によって塞がれて吸水位LWが揚水遮断水位SWL以上のときに揚水遮断用空気管22を閉じた状態に保持するのである。
吸水位WLが揚水遮断水位SWL付近の低水位でポンプ1を運転すると、渦が発生し易く、渦、すなわち、空気を吸い込み易いので、渦発生防止手段28は、上記のとおり、吸込口8と第一の開口25との間の吸込管6の外面に配置されている。
揚水遮断水位SWLの下方には吸込口8が配置されている。例えば、吸込口8は吸込水槽2の底面2aに対しケーシング3の胴部である揚水管4の管径(内径)に略等しい寸法の高さ位置に開口されている。
次に、図1を参照して先行待機運転ポンプ1の運転状態(排水状態)の推移を説明する。
先行待機運転ポンプ1であるので、降雨情報等に基づいて、吸水位WLが最低水位LWL(第一の所定水位の一例)にまで上昇する前に始動する。本実施例では、吸込水槽2への雨水等の水により吸水位WLが揚水遮断水位SWL(第二の所定水位の一例)にまで上昇し、揚水遮断用空気管22が開閉手段24により閉じられたときにポンプ1を始動する。
ポンプ1を始動して吸水位WLが揚水開始水位RWLに上昇するまでは、羽根車11が気中で空転する空運転になる。
吸水位WLが上昇して揚水開始水位RWLに到達すると、羽根車11は揚水を開始し、排水を開始するが、このとき、第一の開口25部の圧力は羽根車11の流入側の水の流れによって低下して大気圧よりも低くなる。そして、気水混合用空気管21の先端21b(第一の給気口の一例)は開閉手段23により開状態に保持されているので、気水混合用空気管21を通して第一の開口25から空気が吸い込まれ、羽根車11は水とともに空気を吸い込みながら揚水するので、排水量は定格の排水量より低下した状態で排水が開始する。すなわち、気水混合運転の開始である。
気水混合運転状態において、吸水位WLがさらに上昇し、最低水位LWL(第一の所定水位の一例)に到達すると、それまで開状態に保持されていた気水混合用空気管21の先端21b(第一の給気口の一例)が開閉手段23により閉じられ、第一の開口25からの空気の吸い込みがなくなるので、定格の排水量における排水が開始する。すなわち、全量運転の開始である。
全量運転して吸水位WLがさらに上昇している場合には全量運転を継続する。
一方、全量運転してポンプ1の排水量が吸込水槽2への雨水等の水の流入量を上回り吸水位WLが下降に転じて最低水位LWL(第一の所定水位の一例)を下回った時点で、それまで閉状態に保持されていた気水混合用空気管21の先端21b(第一の給気口の一例)が開閉手段23により開かれ、第一の開口25からの空気の吸い込みが開始され、全量運転から気水混合運転へと移行する。
気水混合運転して吸水位WLがさらに低下すると、吸水位WLの低下に応じて空気の吸込量が徐々に増加し、代わりに水量が徐々に減少するので、排水量は徐々に減少して行く。そして、吸水位WLがさらに低下し、揚水開始水位RWL、再揚水開始水位CWLを下回り、ついに揚水遮断水位SWL(第二の所定水位の一例)を下回った時点で、それまで閉状態に保持されていた揚水遮断用空気管22の先端22b(第二の給気口の一例)が開閉手段24により開かれる。第二の開口26部の圧力は羽根車11の流入側の水の流れによって低下して大気圧よりも低く負圧になっているので、揚水遮断用空気管22を通して第二の開口26からも空気が吸い込まれ、水と空気の混合割合が非常に高くなり、羽根車11は水を吸い込むことができなくなって、排水が停止する。すなわち、気水混合運転から揚水遮断運転に切り替えられる。なお、揚水遮断用空気管22の先端22bと水面の間に一定以上の隙間を生じた時点で揚水遮断に必要な空気がケーシング内に吸込まれるようになるので、実際に揚水が遮断される水位は揚水遮断用空気管22の先端22bが水没する水位よりもやや低い水位となるが、本明細書の揚水遮断用水位SWLをはじめとする水位は、これらを包含した幅を持った吸水位WLを表す概念である。
揚水遮断運転時(待機運転)に吸水位WLが上昇すると、今度は羽根車11より上方のケーシング3内に水があるので、吸水位WLが揚水遮断水位SWL(第二の所定水位の一例)を上回り(それまで開状態に保持されていた揚水遮断用空気管22の先端22bが開閉手段24により閉じられ、第二の開口26からの空気の吸い込みがなくなる。)、再揚水開始水位CWLに到達した時点で、羽根車11は水とともに空気(気水混合用空気管21を通して第一の開口25から吸い込む空気)を吸い込みながら揚水を開始する。気水混合運転の再開である。
このようにして、ポンプ1は、吸水位WLに関係なく始動後の空運転及び一旦排水後の空運転(揚水遮断運転)と全量運転との間で運転を継続することができ、しかも、空運転と全量運転との間の移り変わりはなめらかで、渦の発生、ポンプ1の振動、軸トルクの過大な変化が抑えられている。
以上から明らかなように、吸込水槽2内で開口する吸込口8を下端に有するケーシング3と、ケーシング3内部に配置する羽根車11と、吸水位WLが最低水位LWL(第一の所定水位の一例)以下の状態において羽根車11より下方のケーシング3内に空気を導入しながら揚水することで排水量を低下させるための気水混合用空気管21の先端21b(第一の給気口の一例)と、吸水位WLが前記最低水位LWLより低い揚水遮断水位SWL(第二の所定水位の一例)になった時に、羽根車11より下方のケーシング3内に空気を導入することで揚水を遮断するための揚水遮断用空気管22の先端22b(第二の給気口の一例)を設け、二種類の気水混合用空気管21の先端21b及び揚水遮断用空気管22の先端22bとケーシング3内とを連通させる気水混合用空気管21と揚水遮断用空気管22(空気管の一例)とを備える本実施例の先行待機運転ポンプ1、及び吸込水槽2内で開口する吸込口8を下端に有するケーシング3と、ケーシング3内部に配置する羽根車11と、気水混合用空気管21の先端21b及び揚水遮断用空気管22の先端22b(第一及び第二の二種類の給気口の一例)を設け、気水混合用空気管21の先端21b及び揚水遮断用空気管22の先端22bとケーシング3内部とを連通させる気水混合用空気管21と揚水遮断用空気管22(空気管の一例)を備え、吸水位WLが最低水位LWL以下の状態において羽根車11より下方のケーシング3内に気水混合用空気管21の先端21bから気水混合用空気管21を通して空気を導入しながら揚水することで排水量を低下させた気水混合運転を行い、気水混合運転して吸水位WLが最低水位LWLより低い揚水遮断水位SWLになった時に、羽根車11より下方のケーシング3内に揚水遮断用空気管22の先端22bから揚水遮断用空気管22を通して空気を導入することで揚水を遮断し、揚水遮断運転に切り替える本実施例の先行待機運転ポンプでは、揚水遮断に十分な空気量を揚水遮断時にのみ導入することができるとともに、気水混合運転時に導入する空気量の適正化を容易に図ることができ、気水混合用空気管21の先端21bだけで空気を導入する場合よりも確実に揚水を遮断できるので渦の発生や振動を抑えることができる。この結果、ポンプ1の強度を上げる必要がなくポンプ1を軽量化することや、排水機場の床19強度も上げる必要がなくなる場合がある。
本実施例の先行待機運転ポンプでは、気水混合用空気管21の先端21bとケーシング3内部とを連通させる気水混合用空気管21と、揚水遮断用空気管22の先端22bとケーシング3内部を連通させる揚水遮断用空気管22とを備えるので、気水混合運転時に導入する空気量と揚水遮断時に導入する空気量が、それぞれ、設定し易くなり、上記作用効果を容易に実現できる。
また、揚水遮断用空気管22に開閉手段24を備えるので、吸水位WLが揚水遮断水位SWLになった時に揚水を遮断でき、揚水遮断水位にバラツキを生じるのを防止できるので、上記作用効果を助長して実現できる。
また、揚水遮断用空気管22の先端22bを揚水遮断水位SWLで水没するように設けるので、この構成が開閉手段24になり、吸込水槽2内の水で揚水遮断用空気管22の先端22bを開閉することができるので、揚水遮断用空気管22の先端22bを開閉するための制御機構等が不要になる。
なお、ケーシング内の開口位置が羽根車11に近い方の空気管の方が、低水位時には空気をより多く吸い込む。また、揚水を遮断するためには、羽根車11より下方のケーシング3の断面(通路)に空気を満たすことで羽根車11と水の接触を断つ必要があり、そのためには水流により羽根車11より下方のケーシング3内の空気が上方に移動することを踏まえて、短時間に大量に空気を導入する必要がある。本実施例では、揚水遮断用空気管22のケーシング3内の開口26位置が気水混合用空気管21のケーシング3内の開口25位置より上方であるので、揚水遮断時に羽根車11より下方のケーシング3内に揚水遮断用空気管22からより羽根車11に近い位置で効率良くかつ効果的に空気を導入(吸気)することができるので、水位下降局面(気水混合運転時)において、精度良くかつ安定して揚水を遮断できる。さらに、揚水遮断水位SWLは気水混合用空気管21のケーシング3内の開口25高さにて決定する要素がある(開口25高さが低ければ、より低水位で揚水を遮断する)。ゆえにより低水位で揚水を遮断させる場合には、気水混合用空気管21のケーシング3内の開口25位置は、より下側にすることが望ましい。そして、気水混合用空気管21のケーシング3内の開口25位置は揚水遮断用空気管22のケーシング3内の開口26位置より下方で、より低くすることができるので、揚水遮断水位SWLをより低水位化し易くなる。すなわち、このような気水混合用空気管21のケーシング3内の開口25位置と揚水遮断用空気管22のケーシング3内の開口26位置の位置関係は低水位での揚水遮断に適している。
また、ケーシング3の内面に揚水遮断用空気管22の開口26部近傍の流体圧力を低減させる圧力低減手段27を設けるので、揚水遮断用空気管22を通して安定的に空気を導入することができ、より確実に揚水遮断運転に切り替えることができる。
また、圧力低減手段27が羽根車11を取り付ける主軸13の下端軸受16をケーシング3の内面に固定する支持板(リブ)16a(支持部材の一例)であるので、羽根車11より下方のケーシング3構造を簡略化して、ポンプ1を軽量化できる。
また、気水混合用空気管21に開閉手段23を備えるので、気水混合運転して吸水位WLが最低水位LWL以上で開閉手段23により気水混合用空気管23を閉じて空気の導入を完全に止めることができ、最低水位LWL以上でポンプ1の定格排水量における全量運転を行うことができる。ここで、気水混合用空気管21の先端21bを最低水位LWLで没水するように設けると、この構成が開閉手段23になり、吸込水槽2内の水で気水混合用空気管21の先端21bを開閉することができるので、気水混合用空気管21の先端21bを開閉するための制御機構等が不要になる。
また、羽根車11より下方のケーシング3の外面に渦発生防止板28を設けるので、吸水位WLが揚水遮断水位SWL以下の低水位のときに渦の発生をより抑えることができ、揚水遮断水位SWLをより低水位化でき、吸込水槽2のより低水位まで排水することができる。
続いて、図3を参照して第2実施例の先行待機運転ポンプ1Aを説明する。なお、第1実施例の先行待機運転ポンプ1と同一部分には同一符号を付して重複する説明を省略する。
図3において、先行待機運転ポンプ1Aは、略直管状の気水混合用空気管21Aと揚水遮断用空気管22Aを備えている。気水混合用空気管21Aは、上端近傍が床19より上側に配置されている。そして、孔20を介して吸込水槽2内に延ばされ、下端21Aaが第一の開口25に接続されている。床19より上側に配置されている気水混合用空気管21Aは逆U状に曲げ形成されて、気水混合用空気管21Aの上端21Abが下向きで大気中に常時開放されている。
一方、揚水遮断用空気管22Aは、上端近傍が床19より上側に配置されている。そして、孔20を介して吸込水槽2内に延ばされ、下端22Aaが第二の開口26に接続されている。床19より上側に配置されている揚水遮断用空気管22Aには、開閉手段として開閉弁(電磁弁)24Aを備えており、揚水遮断用空気管22Aの上端22Abが開閉弁24Aを介して大気中に開放されている。
また、吸込管6の内面には、第一の開口25及び第二の開口26の両方の開口部近傍の流体圧力を低減させる圧力低減手段27Aが設けられている。圧力低減手段27Aは、下端軸受16の支持板(リブ)であって、外端部の第一の開口25及び第二の開口26に対する周方向の相対位置は図2に示す位置であり、外端部が羽根車11より下方で第一の開口25及び第二の開口26の高さ範囲をカバーする高さ(上下幅)を有する支持板16Aaのその外端部よって構成されている。
本実施例の先行待機運転ポンプ1Aでは、開閉弁24Aを吸水位WLを検出する水位センサ等に基づいて開閉制御することで、第1実施例の先行待機運転ポンプ1Aと同じ機能を発揮することができる。但し、気水混合用空気管21Aは大気中に常時開放されている。
また、第一の開口25及び第二の開口26の両方の開口部近傍の流体圧力を低減させる圧力低減手段27Aが設けられているので、第一の開口25についても、気水混合用空気管21Aを通して安定的に空気を導入することができる。
続いて、図4を参照して第1参考例の先行待機運転ポンプ1Bを説明する。なお、第1及び第2実施例の先行待機運転ポンプ1及び1Aと同一部分には同一符号を付して重複する説明を省略する。
図4において、先行待機運転ポンプ1Bは、第1及び第2実施例の先行待機運転ポンプ1及び1Aの第一の開口25と第二の開口26の位置関係とは上下逆の位置関係を有する第一の開口25Bと第二の開口26Bとが設けられている。そして、第一の開口25Bには気水混合用空気管21の一端21a(気水混合用空気管21Aの一端21Aaでも可)が接続され、第二の開口26Bには揚水遮断用空気管22の一端22a(揚水遮断用空気管22Aの一端22Aaでも可)が接続されている。
本参考例の先行待機運転ポンプ1Bでは、気水混合用空気管21又は21Aのケーシング3内の開口25B位置が揚水遮断用空気管22又は22Aのケーシング3内の開口26B位置より上方であるので、揚水遮断時における羽根車11による負圧度合いを低減でき、揚水遮断時の吸込水槽3の僅かな水位変動によるハンチング現象(揚水遮断時のケーシング3内から吸込水槽2への逆流等による吸水位WLの上昇による揚水開始とそれによる吸水位WLの低下による揚水遮断を交互に繰り返す現象)が発生し難くなる。
続いて、図5を参照して第3実施例の先行待機運転ポンプ1Cを説明する。なお、第1及び第2実施例の先行待機運転ポンプ1及び1Aと同一部分には同一符号を付して重複する説明を省略する。
図5において、先行待機運転ポンプ1Cは、吸込管6の管壁における第一の開口25部と第二の開口26部に、内面が凹、外面が凸になる凹部6aが設けられており、各凹部6aに第一の開口25と第二の開口26を設けている。各凹部6aが各開口25,26部近傍の流体圧を低減させる圧力低減手段27Cになり、該圧力低減手段27Cによっても気水混合用空気や揚水遮断用空気が吸い込み易くなる。そして、羽根車回転方向(矢印A方向)の上流側の壁面6qに開口25,26を設けることにより、各凹部6aの底部側の壁面6rに開口25,26を設ける場合よりも流体圧を低減する効果を大きくすることもできる。すなわち、気水混合用空気や揚水遮断用空気が気水混合用空気管21や揚水遮断用空気管22を通して安定的に導入することができる。また、このような圧力低減手段27Cは下端軸受16を設けない構造にも適用することができる。
続いて、図6を参照して第4実施例の先行待機運転ポンプ1Dを説明する。なお、第1ないし第3実施例の先行待機運転ポンプ1、1A、1Cと同一部分には同一符号を付して重複する説明を省略する。
図6において、先行待機運転ポンプ1Dは、上記ハンチング現象を防止するために、揚水遮断用空気管22の上端折り返し部と先端22bの間から分岐されたU字管30を備えている。U字管30は、その両端(上端)の略水平な基端(分岐端)30aの上面と先端(開口)30bが、第二の開口26の上端の吸水位WLに略等しい閉水位YWLに沿うように設けられるとともに、下端の略水平な折返し部30cの上面が、揚水遮断水位SWLに略等しい開水位XWLに沿うように設けられる。ここで、揚水遮断用空気管22の先端22bは、U字管30の折返し部30cの下面より下方に配置され、揚水遮断用空気管22は、高低差のある2つの給気口、すなわち、上側の給気口であるU字管30の先端30bと下側の給気口である揚水遮断用空気管22の先端22bを第二の開口26に連通させている。
そして、揚水遮断水位SWL以下から吸水位WLが上昇する際は、管内に水がないので、U字管30の先端30b及び揚水遮断用空気管22の先端22bから空気を吸い、再揚水開始水位CWLまで吸水位WLが上昇し、揚水遮断用空気管22の先端22bが水没しても、U字管30の先端30bより吸気を続け、閉水位YWLになると、U字管30の先端30bが水没することで閉じられるので、第二の開口26からの空気の吸い込みがなくなり、第一の開口25からの空気のみを吸い込む気水混合運転となる。
すなわち、揚水遮断水位SWL以下からの吸水位WLの上昇局面では、閉水位YWLまでは揚水遮断用空気管22が大気中に開放保持されて、揚水遮断用空気管22を通して第二の開口26から空気が吸い込まれ、閉水位YWL以上では揚水遮断用空気管22が塞がれて、第二の開口26からの空気の吸い込みがなくなる。このように吸水位WLが上昇する方向のときにはU字管30の先端30bが開閉手段24として機能する。
一方、最低水位LWL以上から吸水位WLが下降する際は、最低水位LWLまで吸水位WLが下降しても、U字管30の先端30bと揚水遮断用空気管22の先端22bの両方とも水没している。閉水位YWLになると、U字管30の先端30bは大気中に出るが、U字管30の先端30b側に溜まっている水は抜けきらないが、揚水遮断水位SWL以下になれば、管内の水位がより低下し、U字管30の折返し部30cの上部より水面が下がればU字管30の先端30bから空気を吸う。
すなわち、最低水位LWL以上からの吸水位WLが下降局面では、揚水遮断水位SWLまでは揚水遮断用空気管22が塞がれて、第二の開口26からの空気の吸い込みがなく、揚水遮断水位SWL以下では揚水遮断用空気管22が大気中に開放保持されて、揚水遮断用空気管22を通して第二の開口26から空気が吸い込まれる。このように、吸水位WLが低下する方向のときは、U字管30の折返し部30cが開閉手段24として機能する。
本実施例の先行待機運転ポンプ1Dでは、吸水位WLの上昇時と下降時で異なる吸水位WLで揚水遮断用空気管22が大気に開放されるため、すなわち、吸水位WLの下降時には揚水遮断水位SWL(開水位XWL)で揚水遮断用空気管22が大気に開放され、吸水位WLの上昇時には揚水遮断水位SWL(開水位XWL)より高い閉水位YWLで揚水遮断用空気管22が大気に開放されるので、揚水遮断時にケーシング3内から吸込水槽2への逆流等で吸水位WLが再揚水開始水位CWLにまで上昇しても、揚水を開始せず、揚水遮断運転を続ける。従って、上記ハンチング現象を防止することができる。
なお、上記第1ないし第4実施例では、気水混合用と揚水遮断用の2系統の空気管を備えた構成であるが、図7ないし図9に示す第2ないし第4参考例の先行待機運転ポンプ1Eないし1Gは、空気管を途中から分岐させたり、空気管の管壁に孔をあけて給気口として機能させる。
図7に示す第2参考例の先行待機運転ポンプ1Eでは、揚水遮断用空気管22の途中から分岐させた逆U字形の細管でなる気水混合用空気管21Eを備えている。この気水混合用空気管21Eは、両端の分岐端部21Eaと先端21Ebが最低水位LWLで水没するように設けられている。
図8に示す第3参考例の先行待機運転ポンプ1Fでは、揚水遮断用空気管22の途中から分岐させたL字形の短い細管でなる気水混合用空気管21Fを備えている。この気水混合用空気管21Fは、全体が最低水位LWLで水没するように設けられている。すなわち、先端21Fbが最低水位LWLで水没するように設けられている。
図9に示す第4参考例の先行待機運転ポンプ1Gでは、揚水遮断用空気管22の管壁の途中に直接開設した給気口21Gaを備えている。この給気口21Gaは、最低水位LWLで水没する位置に配置されている。
上記実施例では、ケーシング内の開口が、ケーシング内壁と同じ面に形成されている例で説明を行ったが、空気管をケーシング内面より内側に突出するように配置し、空気管の開口位置をケーシングの壁面よりも中心側に配置するようにしてもよい。こうすることでケーシング内に空気が吸引されやすくなる。