以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本実施の形態によってこの発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1におけるインバータ制御装置のブロック図である。図2は同実施の形態におけるインバータ制御装置の各部の信号波形を示す図である。図3は同実施の形態におけるインバータ制御装置の動作を示すフローチャートである。
図1において、インバータ制御装置200は、商用交流電源201と電動圧縮機(図示せず)に接続されている。インバータ制御装置200は、商用交流電源201を直流電源に変換する整流部202と、電動圧縮機のブラシレスDCモータ203を駆動するインバータ回路部204を備えている。
さらに、インバータ制御装置200は、インバータ回路部204を駆動するドライブ回路205と、ブラシレスDCモータ203の端子電圧を検出する位置検出回路部206と、インバータ回路部204を制御するマイクロプロセッサ207とを備えている。
マイクロプロセッサ207は、回転速度検出部212、転流制御部211、デューティ設定部213、PWM制御部215、ドライブ制御部216、キャリア出力部214を備えている。さらに、マイクロプロセッサ207は、位置検出回路部206からの出力信号に対してブラシレスDCモータ203の磁極位置を検出する位置検出判定部209と、スパイク電圧を検出するスパイク電圧判定部218と、位置検出判定部209およびスパイク電圧判定部218からの出力に対し通電角を決定する通電角制御部210とを備えている。
ブラシレスDCモータ203は、6極の突極集中巻モータであり、3相巻線のステータ203sとロータ203rとで構成されている。ステータ203sは、6極9スロットの構造であり、各相のステータ巻線203u、203v、203wの巻数はそれぞれ189ターンである。ロータ203rは、内部に永久磁石203a、203b、203c、203d、203e、203fを配置し、リラクタンストルクを発生する磁石埋込型構造である。
インバータ回路部204は、6つの三相ブリッジ接続されたスイッチングトランジスタTru、Trx、Trv、Try、Trw、Trzと、それぞれに並列に接続された環流ダイオードDu、Dx、Dv、Dy、Dw、Dzより構成されている。
位置検出回路部206は、コンパレータ(図示せず)などから構成されており、ブラシレスDCモータ203の誘起電圧に基づく端子電圧信号と基準電圧とをコンパレータにより比較して位置検出信号を得ている。例えば、特許文献2に開示の技術と同様の構成である。
位置検出判定部209は、位置検出回路部206の出力信号から位置検出信号のみを分離してロータ203rの位置信号を得ている。一方、スパイク電圧判定部218は、位置検出回路部206の出力信号からスパイク電圧信号のみを分離する。
転流制御部211は、位置検出判定部209の位置信号と通電角制御部210の通電角により転流のタイミングを計算し、スイッチングトランジスタTru、Trx、Trv、Try、Trw、Trzの転流信号を生成する。
回転速度検出部212は、位置検出判定部209からの位置信号を一定期間カウントしたり、パルス間隔を測定したりすることによりブラシレスDCモータ203の回転速度を算出する。
デューティ設定部213は、回転速度検出部212から得られた回転速度と、回転速度指令による指令回転速度との偏差からデューティの加減演算を行い、デューティ値をPWM制御部215へ出力する。回転速度指令に対し実回転速度が低いとデューティを大きくし、逆に実回転速度が高いとデューティを小さくする。
キャリア出力部214ではスイッチングトランジスタTru、Trx、Trv、Try、Trw、Trzをスイッチングするキャリア周波数を設定する。この場合、キャリア周波数は3kHzから10kHzの間で設定している。
PWM制御部215では、キャリア出力部214で設定されたキャリア周波数と、デューティ設定部213で設定されたデューティ値から、PWM変調信号を出力する。
通電角制御部210は、位置検出判定部209およびスパイク電圧判定部218で得た位置検出情報に基づいて、転流制御部211における通電角を制御する。
ドライブ制御部216では、転流信号とPWM変調信号と通電角および進角を合成し、スイッチングトランジスタTru、Trx、Trv、Try、Trw、Trzをオン/オフするドライブ信号を生成し、ドライブ回路205へ出力する。ドライブ回路205では、ドライブ信号に基づき、スイッチングトランジスタTru、Trx、Trv、Try、Trw、Trzのオン/オフスイッチングを行い、ブラシレスDCモータ203を駆動する。
次に図2に示すインバータ制御装置の各種波形について説明する。ここで、インバータ制御装置200は、通電角は150度、進角15度でブラシレスDCモータ203を制御している状態を示している。
信号(A)〜信号(C)は、ブラシレスDCモータ203のU相、V相、W相の端子電圧Vu、Vv、Vwであり、それぞれの位相が120度ずつずれた状態で変化する。
これらの端子電圧は、インバータ回路部204による供給電圧Vua、Vva、Vwaと、ステータ巻線203u、203v、203wに発生する誘起電圧Vub、Vvb、Vwbと、転流切り換え時にインバータ回路部204の還流ダイオードDu、Dx、Dv、Dy、Dw、Dzの内のいずれかが導通することにより生じるパルス状のスパイク電圧Vuc、Vvc、Vwcとの合成波形である。
そして、これらの端子電圧Vu、Vv、Vwと整流部202からインバータ回路部204に供給される直流電源電圧の1/2の電圧たる仮想中性点電圧VNとをコンパレータで比較し、コンパレータより出力する出力信号PSu、PSv、PSwが信号(D)〜信号(F)である。
この出力信号は、供給電圧Vua、Vva、Vwaに対応するPSua、PSva、PSwaと、スパイク電圧Vuc、Vvc、Vwcに対応するPSuc、PSvc、PSwcと、誘起電圧Vub、Vvb、Vwbと仮想中性点電圧VN比較中の期間に相当するPSub、PSvb、PSwbとの合成信号である。
マイクロプロセッサ207は、各コンパレータの出力信号PSu、PSv、PSwの状態に基づいて信号(G)に示す6つのモードA〜Fを認識し、出力信号PSu、PSv、PSwの状態に応じて、ドライブ信号DSu(信号(H))〜ドライブ信号DSz(信号(M))を出力する。
次に、図3のフローチャートにより本実施の形態の詳細な動作を説明する。まず、S(以下、ステップと言う)001において、位置検出回路部206からの位置検出信号PSu、PSv、PSwの状態の検出を行なう。続いてステップ002において、スイッチングトランジスタTru、Trx、Trv、Try、Trw、Trzの出力状態、すなわち図2における動作モードの状態に応じた位置検出信号PSu、PSv、PSwの状態によって位置検出判定を行なう。
一例として、図2における動作モードがAの場合、PSubの期間中にPSuがHレベル、PSvがLレベル、PSwがHレベルを検出することによってU相端子電圧の立上り検出となる。同様に、他の動作モード状態においても、PSub、PSvb、PSwbの期間中にPSu、PSv、PSwの状態を調べることにより、仮想中性点電圧VNに対する各端子電圧の立上りまたは立下り検出を行なう。この時、位置検出がPSub、PSvb、PSwbの期間中に行なわれている理由については後述する。
ステップ002で位置検出の判定が行なわれた場合(ステップ002のY)はステップ003に移行する。ステップ003において、前回の位置検出判定からの経過時間をカウントする位置検出間隔タイマの読取りを行なった後、位置検出間隔タイマをリセットし再カウントを開始する。ここで、各端子電圧の立上り、または立下り検出による位置検出は端子電圧1周期中に6回発生するため、位置検出間隔を測定することにより電気角で60度に相当する経過時間を得ることができる。
次に、ステップ004において、通電角および進角設定に応じて転流タイミングを決定する。一例として、図2においては通電角150度、進角15度の動作を図示している。転流タイミングは位置検出間隔で得た60度を基準として、ドライブ信号DSu、DSv、DSw、DSx、DSy、DSzのオンタイミングは位置検出後0度、オフタイミングは位置検出後30度としている。
その後、ステップ005で転流タイマのカウントを行い、ステップ006において転流タイミングで設定した転流時間が経過するまで待機する。転流時間が経過した後(ステップ006のY)は、ステップ007でドライブ回路205へのドライブ信号DSu、DSv、DSw、DSx、DSy、DSzを出力し、転流動作を行なう。
この時、インバータ回路部204のスイッチングトランジスタTru、Trx、Trv、Try、Trw、Trzの内のいずれかの状態がオンからオフへの切り換えが発生した直後、直前に導通していたステータ巻線203u、203v、203wに蓄えられたエネルギーが、還流ダイオードDu、Dx、Dv、Dy、Dw、Dzの内のいずれかが導通することにより放出されるまでの期間、パルス状のスパイク電圧Vuc、Vvc、Vwcが発生する。
通常は、このスパイク電圧Vuc、Vvc、Vwcは、誘起電圧Vub、Vvb、Vwbが仮想中性点電圧VNを通過するクロスポイントの手前で終了する。ところが、このスパイク電圧Vuc、Vvc、Vwcは、ステータ巻線203u、203v、203wのインダクタンスと、オフする直前に流れていた電流などによって発生時間が変化する。そのため、スパイク電圧Vuc、Vvc、Vwcの継続時間が長くなった場合、誘起電圧Vub、Vvb、Vwbが隠されてしまい、継続時間がクロスポイントの発生タイミングを超えた場合は、正常な位置検出が不可能となってしまう。
そこで、本実施の形態では、転流動作によるスイッチングトランジスタTru、Trx、Trv、Try、Trw、Trzのオフ動作後、ステップ008において、スパイク電圧の継続時間を測定するためのスパイク測定タイマのカウントを開始する。
その後、ステップ009において、ステップ001と同様に位置検出回路部206からの位置検出信号PSu、PSv、PSwの状態の検出を行なう。続いてステップ010において、スイッチングトランジスタTru、Trx、Trv、Try、Trw、Trzの出力状態、すなわち図2における動作モードの状態に応じた位置検出信号PSu、PSv、PSwの状態によってスパイク電圧終了判定を行なう。
前述同様に、図2における動作モードがAの場合、PSucの期間中にPSuがLレベル、PSvがLレベル、PSwがHレベルを検出することによってスパイク電圧終了検出となる。同様に、他の動作モード状態においても、PSuc、PSvc、PSwcの期間中にPSu、PSv、PSwの状態を調べることにより、スパイク電圧終了検出を行なう。
ここで、位置検出信号が、スパイク電圧検出期間PSuc、PSvc、PSwcの期間中、あるいは誘起電圧検出期間PSub、PSvb、PSwbのいずれの期間中にあるのかについては、転流動作後の経過によって判断する。
すなわち、転流オフ直後は、スパイク電圧検出期間PSuc、PSvc、PSwcであり、その後、誘起電圧検出期間PSub、PSvb、PSwbとなり、更に供給電圧Vua、Vva、Vwaによる信号発生期間PSua、PSva、PSwaを経て、再度、転流オフによるスパイク電圧検出期間PSuc、PSvc、PSwcに戻るサイクルを繰り返す。
したがって、前述のステップ001においては、位置検出はPSub、PSvb、PSwbの期間に行なわれており、ステップ009においては、位置検出はPSuc、PSvc、PSwcの期間に行なわれていることとなる。
ステップ010でスパイク電圧の終了を検出した場合(ステップ010のY)、ステップ011においてスパイク測定タイマを読取り、スパイク電圧継続時間の測定を行なう。
次に、ステップ012において、ステップ003で得た位置検出間隔とステップ011で得たスパイク電圧継続時間に基づき、誘起電圧検出期間PSub、PSvb、PSwbに対する、スパイク電圧検出期間PSuc、PSvc、PSwcの大小判定を行なう。
一例として、直前に行なわれた60度毎の位置検出間隔と、位置検出後転流オフまでの転流時間およびスパイク電圧継続時間の合計時間との時間差(以下、判定時間と呼ぶ。)を、あらかじめ設定した所定時間、例えば、電気角3.75度相当時間などと比較することで、スパイク電圧の大小判定を行なうことができる。
この判定時間が所定時間以下となった場合(ステップ012のY)、すなわち、位置検出信号のスパイク電圧検出期間PSuc、PSvc、PSwcの終了タイミングが、誘起電圧検出期間PSub、PSvb、PSwbにおける仮想中性点電圧VNとのクロスポイントに接近した場合(すなわち、スパイク電圧の継続時間が大となった場合)、ステップ013に進む。
ステップ013において、通電角が下限より大であれば(ステップ013のN)、ステップ014において、通電角をあらかじめ設定した変更角だけ減少させる様に変更する。一例として、通電角150度、通電角下限120度、変更角7.5度の場合、通電角を150度から142.5度に変更する。変更後も更に判定条件が継続している場合は同様に、通電角を142.5度から135度、127.5度、120度と狭めていく。
ステップ013において通電角が既に下限に到達していた場合(ステップ013のY)、あるいはステップ014において通電角の減少を行なった場合、その後ステップ015に進む。
ステップ015において、前述判定時間が所定時間以下かつ負値であった場合(ステップ015のY)、すなわち位置検出間隔60度の経過時間をスパイク電圧継続時間の終了時間が超えた場合、ステップ016で転流タイミングの再設定を行なう。
既に述べたようにスパイク電圧の継続時間が、誘起電圧と仮想中性点電圧VNとのクロスポイントの発生タイミングを超えた場合は、正常な位置検出が不可能となるため、この場合、直前の位置検出時点から60度経過した時点を仮の位置検出ポイントとして転流タイミングを設定する。
一例として、図2における動作モードがAの場合、すなわちU相端子電圧の立上り検出の場合、直前の動作モードF、すなわちV相端子電圧の立下り検出にて得た位置検出情報に基づいて、仮の位置検出を行なう。同様に他の動作モードにおいても直前に行なわれた別相の位置検出情報により仮の位置検出を行なう。なお、ここでは直前1回前の別相による位置検出による場合を示したが、必要に応じて、判定時間が正値である数回前の位置検出情報に基づき仮位置検出を行なうことも可能である。
ステップ016で転流タイミングの再設定を行なった後は、ステップ005に戻り、以下同様の動作を繰り返す。なお、ステップ015で判定時間が正値であった場合(ステップ015のN)は、ステップ001に戻り、以下同様の動作を繰り返す。
一方、ステップ012で判定時間が所定時間以上の場合(ステップ012のN)、ステップ017に進む。前述判定と逆に、ステップ017において、判定時間があらかじめ設定した所定時間、例えば電気角7.5度相当時間などと比較し、判定時間が所定時間以上となった場合(ステップ017のY)、すなわち、位置検出信号のスパイク電圧検出期間PSuc、PSvc、PSwcの終了タイミングが、誘起電圧検出期間PSub、PSvb、PSwbにおける仮想中性点電圧VNとのクロスポイントから離れた場合(すなわち、スパイク電圧の継続時間が小となった場合)、ステップ018に進む。
ステップ018において、通電角が上限より小であれば(ステップ018のN)、ステップ019において、通電角をあらかじめ設定した変更角だけ増加させる様に変更する。前述同様、通電角120度、通電角上限150度、変更角7.5度の場合、通電角を120度から127.5度に変更する。変更後も更に判定条件が継続している場合は同様に、通電角を127.5度から135度、142.5度、150度と拡げていく。
ステップ018において通電角が既に上限に到達していた場合(ステップ018のY)、あるいはステップ019において通電角の増加を行なった場合、その後ステップ001に戻り、以下同様の動作を繰り返す。
また、ステップ012およびステップ017のいずれの判定条件も満足しない場合(ステップ012のNおよびステップ017のN)は、そのままステップ001に戻り、以下同様の動作を繰り返す。
従って、本実施の形態によれば、負荷トルク変動などによりモータ電流が変化することによってスパイク電圧幅が増加した場合においても、瞬時に通電角を狭めることによりモータ電流を減少させることとなる。その結果、位置検出区間、すなわち誘起電圧検出期間PSub、PSvb、PSwbを増大することができる。さらに、スパイク電圧幅、すなわちスパイク電圧検出期間PSuc、PSvc、PSwcを減少することができる。
また更に、スパイク電圧の影響による位置検出の誤検出の可能性が高い場合においても、前述した通電角の変更により、位置検出が回復するまでの期間、仮位置検出によって運転を継続することができる。
よって、負荷変動、電圧変動などの外的要因による位置検出の失敗、誤検知から脱調によるモータ停止を防止することができる。また、電動圧縮機にインバータ制御装置200を用いても、良好な運転が可能となる。したがって、冷蔵庫などの家庭用電気機器にインバータ制御装置200を用いても、良好なシステム運転が可能となる。
(実施の形態2)
図4は、本発明の実施の形態2におけるインバータ制御装置のブロック図である。図5は、同実施の形態における各部の信号波形を示す図である。図6は、同実施の形態における動作を示すフローチャートである。
図4において、インバータ制御装置200は、商用交流電源201と電動圧縮機(図示せず)に接続されている。インバータ制御装置200は、商用交流電源201を直流電源に変換する整流部202と、電動圧縮機のブラシレスDCモータ203を駆動するインバータ回路部204を備えている。
さらに、インバータ制御装置200は、インバータ回路部204を駆動するドライブ回路205と、ブラシレスDCモータ203の端子電圧を検出する位置検出回路部206と、インバータ回路部204を制御するマイクロプロセッサ207とを備えている。
マイクロプロセッサ207は、位置検出回路部206からの出力信号に対してブラシレスDCモータ203の磁極位置を検出する位置検出判定部209と、磁極位置検出のサンプリング開始を決定する位置検出待機部208と、通電角を決定する通電角制御部210と、転流信号を生成する転流制御部211とを備えている。
さらに、マイクロプロセッサ207は、位置検出判定部209からの出力に対し回転速度を算出する回転速度検出部212と、回転速度に応じて転流信号に対しPWM変調を行なうためのデューティ設定部213と、キャリア出力部214と、PWM制御部215を備えている。また、マイクロプロセッサ207は、転流制御部211およびPWM制御部215の出力によりドライブ回路205を駆動するためのドライブ制御部216を備えている。
ブラシレスDCモータ203は、6極の突極集中巻モータであり3相巻線のステータ203sとロータ203rとで構成されている。ステータ203sは6極9スロットの構造であり、各相のステータ巻線203u、203v、203wの巻数はそれぞれ189ターンである。ロータ203rは、内部に永久磁石203a、203b、203c、203d、203e、203fを配置し、リラクタンストルクを発生する磁石埋込型構造である。
インバータ回路部204は、6つの三相ブリッジ接続されたスイッチングトランジスタTru、Trx、Trv、Try、Trw、Trzと、それぞれに並列に接続された環流ダイオードDu、Dx、Dv、Dy、Dw、Dzより構成されている。
位置検出回路部206は、コンパレータ(図示せず)などから構成されており、ブラシレスDCモータ203の誘起電圧に基づく端子電圧信号と基準電圧とをコンパレータにより比較して位置検出信号を得ている。
位置検出待機部208は、位置検出回路部206の出力信号からスパイク電圧信号を分離し位置検出信号のみを抽出するためにスパイク電圧信号を無視するためのウェイト時間を設定する。
位置検出判定部209は、位置検出回路部206の出力信号からロータ203rの位置信号を得て位置検出信号を生成する。通電角縮小回数判定部209aは、位置検出判定部209による位置検出間隔と、位置検出待機部208によるウェイト時間の時間差が基準時間より短くなったことに対する判定を行なう。
通電角制御部210は、位置検出判定部209で得た位置検出情報に基づいて、転流制御部211における通電角を制御する。通電角更新タイマ210aは、通電角制御部210による通電角の更新周期を設定する。
転流制御部211は、位置検出判定部209の位置信号と通電角制御部210の通電角により転流のタイミングを計算し、スイッチングトランジスタTru、Trx、Trv、Try、Trw、Trzの転流信号を生成する。
回転速度検出部212は、位置検出判定部209からの位置信号を一定期間カウントしたり、パルス間隔を測定したりすることによりブラシレスDCモータ203の回転速度を算出する。
デューティ設定部213は、回転速度検出部212から得られた回転速度と、回転速度指令との偏差からデューティの加減演算を行い、デューティ値をPWM制御部215へ出力する。回転速度指令に対し実回転速度が低いとデューティを大きくし、逆に実回転速度が高いとデューティを小さくする。
キャリア出力部214ではスイッチングトランジスタTru、Trx、Trv、Try、Trw、Trzをスイッチングするキャリア周波数を設定する。この場合、キャリア周波数は3kHzから10kHzの間で設定している。
PWM制御部215では、デューティ設定部213で設定されたデューティ値と、キャリア出力部214で設定されたキャリア周波数から、PWM変調信号を出力する。
ドライブ制御部216では、転流信号とPWM変調信号と通電角、および進角を合成し、スイッチングトランジスタTru、Trx、Trv、Try、Trw、Trzをオン/オフするドライブ信号を生成し、ドライブ回路205へ出力する。ドライブ回路205では、ドライブ信号に基づき、スイッチングトランジスタTru、Trx、Trv、Try、Trw、Trzのオン/オフスイッチングを行い、ブラシレスDCモータ203を駆動する。
次に図5に示すインバータ制御装置の各種波形について説明する。ここで、インバータ制御装置200は、通電角は150度、進角15度でブラシレスDCモータ203を制御している状態を示している。
信号(A)〜信号(C)は、ブラシレスDCモータ203のU相、V相、W相の端子電圧Vu、Vv、Vwであり、それぞれの位相が120度ずつずれた状態で変化する。
これらの端子電圧は、インバータ回路部204による供給電圧Vua、Vva、Vwaと、ステータ巻線203u、203v、203wに発生する誘起電圧Vub、Vvb、Vwbと、転流切り換え時にインバータ回路部204の還流ダイオードDu、Dx、Dv、Dy、Dw、Dzの内のいずれかが導通することにより生じるパルス状のスパイク電圧Vuc、Vvc、Vwcとの合成波形である。
そして、これらの端子電圧Vu、Vv、Vwと整流部202からインバータ回路部204に供給される直流電源電圧の1/2の電圧たる仮想中性点電圧VNとをコンパレータで比較し、コンパレータより出力する出力信号PSu、PSv、PSwが信号(D)〜信号(F)である。
この出力信号は、供給電圧Vua、Vva、Vwaに対応するPSua、PSva、PSwaと、スパイク電圧Vuc、Vvc、Vwcに対応するPSuc、PSvc、PSwcと、誘起電圧Vub、Vvb、Vwbと仮想中性点電圧VN比較中の期間に相当するPSub、PSvb、PSwbとの合成信号である。
ここで、パルス状のスパイク電圧Vuc、Vvc、Vwcは、特許文献2におけるウェイトタイマと同様に、位置検出待機部208により設定するウェイト時間(信号(G))によって無視する。そのため、コンパレータの出力信号PSu、PSv、PSwは、結果として誘起電圧Vub、Vvb、Vwbの正および負ならびに位相を示す。
マイクロプロセッサ207は、各コンパレータの出力信号PSu、PSv、PSwの状態に基づいて信号(H)に示す6つのモードA〜Fを認識し、出力信号PSu、PSv、PSwの状態に応じて、ドライブ信号DSu(信号(I))〜ドライブ信号DSz(信号(N))を出力する。
つまり、信号(H)に示すA〜Fの各モードにおける経過時間は、マイクロプロセッサ207が認識する位置検出信号の状態変化の発生間隔、即ち位置検出間隔(信号(O))を示している。
次に、図6のフローチャートにより詳細な動作を説明する。図6において、位置検出待機部208の動作は、ステップ103の後からステップ202までである。また、位置検出判定部209の動作は、ステップ202の後ろからステップ306までである。通電角縮小回数判定部209aの動作はステップ401以降である。
まず、ステップ101でタイマのカウント動作を開始し、ステップ102で転流時間が経過するまで待機する。次に、ステップ102で転流時間がタイマ値より大きくなり転流時間が経過したと判断された場合(ステップ102のN)、ステップ103でドライブ回路205へのドライブ信号DSu、DSv、DSw、DSx、DSy、DSzを出力し、転流動作を行なう。
ここで、位置検出待機部208の動作について説明する。転流動作を行なった際、インバータ回路部204のスイッチングトランジスタTru、Trx、Trv、Try、Trw、Trzの内のいずれかの状態がオンからオフへの切り換えが発生した直後に、直前に導通していたステータ巻線203u、203v、203wに蓄えられたエネルギーが還流ダイオードDu、Dx、Dv、Dy、Dw、Dzの内のいずれかが導通することにより放出されるまでの期間、パルス状のスパイク電圧Vuc、Vvc、Vwcが発生する。
このスパイク電圧Vuc、Vvc、Vvwを無視した後、誘起電圧Vub、Vvb、Vwbが仮想中性点電圧VNを通過するクロスポイントにより位置検出を行なう。即ち、ステップ201でタイマがウェイト時間を経過するまで待機し、ウェイト時間が経過した後(ステップ201のN)、ステップ202で位置検出を開始する。すなわち、位置検出待機部208において、ウェイト時間が経過するまで位置検出の開始を待機させて、スパイク電圧Vuc、Vvc、Vvwを無視した後に位置検出を行う。
次に、位置検出判定部209の動作について説明する。ステップ301において、位置検出回路部206からの出力信号PSu、PSv、PSwの状態の検出を行なう。続いてステップ302において、スイッチングトランジスタTru、Trx、Trv、Try、Trw、Trzの出力状態、すなわち図5における動作モードの状態に応じた出力信号PSu、PSv、PSwの状態によって位置検出判定を行なう。
一例として、図5における動作モードがAの場合、PSuがHレベル、PSvがLレベル、PSwがHレベルを検出することによってU相端子電圧の立上り検出となる。同様に、他の動作モード状態においても、PSu、PSv、PSwの状態を調べることにより、仮想中性点電圧VNに対する各端子電圧の立上りまたは立下り検出を行なう。
ステップ302において位置検出の判定が行なわれた場合(ステップ302のY)、ステップ303に移行する。
ステップ303では、タイマ値の読取りを行ない、前回の位置検出からの経過時間を測定する。ここで、各端子電圧の立上り、または立下り検出による位置検出は端子電圧1周期中に6回発生するため、位置検出間隔を測定することにより電気角で60度に相当する経過時間を得ることができる。
ところで、通常は、スパイク電圧Vuc、Vvc、Vwcは、誘起電圧Vub、Vvb、Vwbが仮想中性点電圧VNを通過するクロスポイントの手前で終了する。ところが、このスパイク電圧Vuc、Vvc、Vwcは、ステータ巻線203u、203v、203wのインダクタンスと、オフする直前に流れていた電流などによって発生時間が変化する。そのため、スパイク電圧Vuc、Vvc、Vwcの継続時間が長くなった場合、誘起電圧Vub、Vvb、Vwbが隠されてしまい、継続時間がクロスポイントの発生タイミングを超えた場合は、正常な位置検出が不可能となってしまう。
そこで、本実施の形態では、過去の位置検出間隔に応じて設定されたウェイト時間による位置検出開始のタイミングから、実際に位置検出信号が発生するまでの時間差を測定することにより、前述のクロスポイントの変動の判定を行なう。
ステップ304は、ステップ303で得られた直前に行なわれた60度毎の位置検出間隔であるタイマ値と、ステップ201におけるウェイト時間との時間差を判定時間として算出する。
すなわち、位置検出判定部209において、位置検出判定部209における位置検出間隔と、位置検出待機部208におけるウェイト時間との時間差を算出する。その時間差が大きければ、スパイク電圧の終了タイミングから誘起電圧と仮想中性点電圧のクロスポイントの発生タイミングまで時間余裕が残されていると判定する。逆に、この時間差が小さければ、スパイク電圧の終了タイミングから誘起電圧と仮想中性点電圧のクロスポイントの発生タイミングまでの時間余裕が不足していると判定する。
そして、さらに時間差が小さいと判定した回数が多い場合に、次の通電角縮小回数判定部209aにおいて、インバータ回路部204における通電角を小さくする。
次に、ステップ305において、得られた位置検出間隔に応じて次回の転流時間とウェイト時間を設定する。
一例として、図5においては通電角150度、進角15度の動作を図示している。転流タイミングは位置検出間隔で得た60度を基準として、ドライブ信号DSu、DSv、DSw、DSx、DSy、DSzのオンタイミングは位置検出後0度、オフタイミングは位置検出後30度としている。また、次回の位置検出を開始するまでのウェイト時間は位置検出後45度としている。
続いて、ステップ306で、位置検出判定の回数をカウントする。すなわち、ステップ306を経過するごとに位置検出判定を+1カウントする。
次に、通電角縮小回数判定部209aの動作について説明する。通電角縮小回数判定部209aでは、ステップ304で得た判定時間に基づき、誘起電圧検出期間PSub、PSvb、PSwbに対するスパイク電圧検出期間PSuc、PSvc、PSwcの大小判定を行なう。
まず、ステップ401において、ステップ304で得られた判定時間が、あらかじめ設定した基準時間である縮小設定時間以下となった場合(ステップ401のY)、ステップ402に進む。例えば、ステップ304で得られた判定時間が、電気角3.75度相当時間以下となった場合、すなわち、誘起電圧検出期間PSub、PSvb、PSwbにおける仮想中性点電圧VNとのクロスポイントが、ウェイト時間経過による位置検出開始タイミングに接近した場合、ステップ402に進む。ステップ402で通電角を縮小するための広角縮小判定の回数をカウントする。すなわち、ステップ402を経過するごとに広角縮小判定を+1カウントする。
一方、ステップ401において、判定時間が縮小設定時間より大きい場合は(ステップ401のN)、ステップ403に進む。
次に、ステップ403では、ステップ306でカウントした位置検出判定の回数があらかじめ設定した検出設定回数を超えた場合は(ステップ403のY)、ステップ402で設定した広角縮小判定の回数とあらかじめ設定した縮小設定回数とを比較し、通電角を小さくするかどうかの判断を行う次ステップに進む。
すなわち、ステップ403において、位置検出判定の回数があらかじめ設定した検出設定回数、例えば、電気角3回転に相当する18回を超えた時(ステップ403のY)、ステップ404で位置検出判定の回数をクリアした後、ステップ405に進む。ステップ403で位置検出判定の回数が検出設定回数未満の場合は(ステップ403のN)、ステップ501に進む。
ステップ405では、広角縮小判定の回数があらかじめ設定した縮小設定回数、例えば、6回以上の場合(ステップ405のY)、ステップ406で、広角縮小要求をセットし、ステップ408に進む。すなわち、上記の例の場合では、位置検出回数18回中に広角縮小判定の回数が6回以上の時、広角縮小要求となる。
一方、ステップ405で、広角縮小判定の回数が縮小設定回数未満ならば(ステップ405のN)、ステップ407で広角縮小要求をクリアし、ステップ408に進む。ステップ408では、広角縮小判定の回数をクリアし、その後ステップ501に進む。
ステップ501は、通電角の更新周期を判定するステップであり、通電角の更新周期を経過している場合は(ステップ501のY)、ステップ502に進み、更新周期以内の場合は(ステップ501のN)、ステップ101に戻り、以下同様の動作を繰り返す。
ステップ502において、広角縮小要求の状態である場合(ステップ502のY)は、ステップ503に進む。該当しない場合(ステップ502のN)は、ステップ101に戻り、以下同様の動作を繰り返す。
ステップ503において、通電角が下限の120度よりも大きければ(ステップ503のN)、ステップ504において、通電角をあらかじめ設定した変更角だけ小さくする様に変更する。
一例として、通電角150度、通電角下限120度、変更角7.5度の場合、通電角を150度から142.5度に変更する。通電角を小さく変更した後も更に広角縮小要求が継続している場合は同様に、通電角を142.5度から135度、127.5度、120度と狭めていく。
ステップ503において、通電角が既に下限の120度に到達していた場合(ステップ503のY)、あるいはステップ504において通電角の減少を行なった場合、ステップ101に戻り、以下同様の動作を繰り返す。
以上のように、通電角縮小回数判定部209aにおいては、位置検出判定部209における位置検出間隔と位置検出待機部208におけるウェイト時間との時間差が、あらかじめ設定した基準時間である縮小設定時間よりも短くなった場合、広角縮小判定の回数をカウントする。そして、あらかじめ設定した位置検出判定の回数中に、カウントした広角縮小判定の回数があらかじめ設定した縮小設定回数以上となった際に、スパイク電圧の終了タイミングから誘起電圧と仮想中性点電圧のクロスポイントの発生タイミングまでの時間余裕が不足している回数が多いと判定する。その結果、インバータ回路部204における通電角を電気角で120度以上の範囲で小さくする。
なお、ブラシレスDCモータ203を駆動するインバータ回路部204は、通電角を電気角120度以上に広げる広角制御を行うものであり、インバータ回路部204における通電角を最小の電気角で120度以上の範囲で小さくするものである。
従って、負荷トルク変動などによりモータ電流が変化することによってスパイク電圧幅が増加した場合においても、通電角を狭めることによりモータ電流を減少させることとなる。その結果、位置検出区間、すなわち誘起電圧検出期間PSub、PSvb、PSwbを増大することができるとともに、スパイク電圧幅、すなわちスパイク電圧検出期間PSuc、PSvc、PSwcを減少することができる。したがって、負荷変動、電圧変動などの外的要因による位置検出の失敗、誤検知から脱調によるモータ停止を防止することができる。
また、負荷トルクの変動が大きく、ロータ203rの1回転中における位置検出間隔が変化する場合においても、スパイク電圧の継続時間の増加を判断することができる。そのため、負荷変動、電圧変動などの外的要因による位置検出の失敗、誤検知から脱調によるモータ停止を防止することができる。
また、ロータ203rの内部に永久磁石203a、203b、203c、203d、203e、203fを配置した構成とすることにより、リラクタンストルクを有効に活用している。そのため位置検出区間が狭くなる進角制御を行うものに対しても、さらに、負荷変動、電圧変動などの外的要因による位置検出の失敗、誤検知から脱調によるモータ停止を防止することができる。
また、ブラシレスDCモータ203のステータ巻線203u、203v、203wの巻数が多いもの(160ターン以上)としている。このことにより、インダクタンスが大きく、スパイク電圧幅が増大し位置検出区間を狭くするモータに対しても、さらに、負荷変動、電圧変動などの外的要因による位置検出の失敗、誤検知から脱調によるモータ停止を防止することができる。
さらに、ブラシレスDCモータ203の極数を6極以上(従来4極)としている。このことにより、極数増加による機械的角度で位置検出区間を狭くするモータに対しても、さらに、負荷変動、電圧変動などの外的要因による位置検出の失敗、誤検知から脱調によるモータ停止を防止することができる。
また、電動圧縮機220に上記インバータ制御装置200を用いても、良好な運転が可能となる。さらに、冷蔵庫などの家庭用電気機器に上記インバータ制御装置200を用いても、良好なシステム運転が可能となる。
なお、本実施の形態において、通電角は150度から7.5度の変更角で120度へ遷移させたが、変更角をさらに小さくしてよりリニアに変化させても良く、逆に変更角を大きくしても良い。
また、本実施の形態において、検出設定回数と縮小設定回数をそれぞれ18回と6回としているが、それぞれの回数を適宜変えても同様に実施可能である。
さらに、本実施の形態において、まず、位置検出判定部による位置検出間隔と位置検出待機部によるウェイト時間との時間差があらかじめ設定した基準時間よりも短くなったことを検知する。その後、あらかじめ設定した位置検出判定の回数中に広角縮小判定の回数があらかじめ設定した縮小設定回数以上となった際に、インバータ回路部における通電角を電気角で120度以上の範囲で小さくしている。しかし、位置検出判定部による位置検出間隔と位置検出待機部によるウェイト時間との時間差があらかじめ設定した基準時間よりも短くなったことを検知して、インバータ回路部における通電角を電気角で120度以上の範囲で小さくするものであれば、検知した後の制御ステップは他のものであっても同様に実施可能である。
また、本実施の形態において、位置検出判定部による位置検出間隔と位置検出待機部によるウェイト時間との時間差とを比較する基準時間(縮小設定時間)を電気角3.75度相当時間としている。しかし、スパイク電圧の終了タイミングから誘起電圧と仮想中性点電圧のクロスポイントの発生タイミングまでの時間余裕を的確に判定できるよう、基準時間を適宜変更しても良い。
(実施の形態3)
図7は、本発明の実施の形態3におけるインバータ制御装置のブロック図である。図8は、同実施の形態における各部の信号波形を示す図である。図9は、同実施の形態における動作を示すフローチャートである。
図7において、インバータ制御装置200は、商用交流電源201と電動圧縮機(図示せず)に接続されている。インバータ制御装置200は、商用交流電源201を直流電源に変換する整流部202と、電動圧縮機のブラシレスDCモータ203を駆動するインバータ回路部204を備えている。
さらに、インバータ制御装置200は、インバータ回路部204を駆動するドライブ回路205と、ブラシレスDCモータ203の端子電圧を検出する位置検出回路部206と、インバータ回路部204を制御するマイクロプロセッサ207とを備えている。
マイクロプロセッサ207は、位置検出回路部206からの出力信号に対してブラシレスDCモータ203の磁極位置を検出する位置検出判定部209と、磁極位置検出のサンプリング開始を決定する位置検出待機部208と、通電角を決定する通電角制御部210と、転流信号を生成する転流制御部211とを備えている。
さらに、マイクロプロセッサ207は、位置検出判定部209からの出力に対し回転速度を算出する回転速度検出部212と、回転速度に応じて転流信号に対しPWM変調を行なうためのデューティ設定部213と、キャリア出力部214と、PWM制御部215を備えている。また、マイクロプロセッサ207は、転流制御部211およびPWM制御部215の出力によりドライブ回路205を駆動するためのドライブ制御部216を備えている。
ブラシレスDCモータ203は、6極の突極集中巻モータであり3相巻線のステータ203sとロータ203rとで構成されている。ステータ203sは6極9スロットの構造であり、各相のステータ巻線203u、203v、203wの巻数はそれぞれ189ターンである。ロータ203rは、内部に永久磁石203a、203b、203c、203d、203e、203fを配置し、リラクタンストルクを発生する磁石埋込型構造である。
インバータ回路部204は、6つの三相ブリッジ接続されたスイッチングトランジスタTru、Trx、Trv、Try、Trw、Trzと、それぞれに並列に接続された環流ダイオードDu、Dx、Dv、Dy、Dw、Dzより構成されている。
位置検出回路部206は、コンパレータ(図示せず)などから構成されており、ブラシレスDCモータ203の誘起電圧に基づく端子電圧信号と基準電圧とをコンパレータにより比較して位置検出信号を得ている。
位置検出待機部208は、位置検出回路部206の出力信号からスパイク電圧信号を分離し、位置検出信号のみを抽出するためにスパイク電圧信号を無視するためのウェイト時間を設定する。
位置検出判定部209は、位置検出回路部206の出力信号からロータ203rの位置信号を得て位置検出信号を生成する。通電角拡大回数判定部209bは、位置検出判定部209による位置検出間隔と、位置検出待機部208によるウェイト時間の時間差が基準時間より長くなったことに対する判定を行なう。
通電角制御部210は、位置検出判定部209で得た位置検出情報に基づいて、転流制御部211における通電角を制御する。通電角更新タイマ210aは、通電角制御部210による通電角の更新周期を設定する。
転流制御部211は、位置検出判定部209の位置信号と通電角制御部210の通電角により転流のタイミングを計算し、スイッチングトランジスタTru、Trx、Trv、Try、Trw、Trzの転流信号を生成する。
回転速度検出部212は、位置検出判定部209からの位置信号を一定期間カウントしたり、パルス間隔を測定したりすることによりブラシレスDCモータ203の回転速度を算出する。
デューティ設定部213は、回転速度検出部212から得られた回転速度と、回転速度指令との偏差からデューティの加減演算を行い、デューティ値をPWM制御部215へ出力する。回転速度指令に対し実回転速度が低いとデューティを大きくし、逆に実回転速度が高いとデューティを小さくする。
キャリア出力部214ではスイッチングトランジスタTru、Trx、Trv、Try、Trw、Trzをスイッチングするキャリア周波数を設定する。この場合、キャリア周波数は3kHzから10kHzの間で設定している。
PWM制御部215では、デューティ設定部213で設定されたデューティ値と、キャリア出力部214で設定されたキャリア周波数から、PWM変調信号を出力する。
ドライブ制御部216では、転流信号とPWM変調信号と通電角、および進角を合成し、スイッチングトランジスタTru、Trx、Trv、Try、Trw、Trzをオン/オフするドライブ信号を生成し、ドライブ回路205へ出力する。ドライブ回路205では、ドライブ信号に基づき、スイッチングトランジスタTru、Trx、Trv、Try、Trw、Trzのオン/オフスイッチングを行い、ブラシレスDCモータ203を駆動する。
次に図8に示すインバータ制御装置の各種波形について説明する。ここで、インバータ制御装置200は、通電角は150度、進角15度でブラシレスDCモータ203を制御している状態を示している。
信号(A)〜信号(C)は、ブラシレスDCモータ203のU相、V相、W相の端子電圧Vu、Vv、Vwであり、それぞれの位相が120度ずつずれた状態で変化する。
これらの端子電圧は、インバータ回路部204による供給電圧Vua、Vva、Vwaと、ステータ巻線203u、203v、203wに発生する誘起電圧Vub、Vvb、Vwbと、転流切り換え時にインバータ回路部204の還流ダイオードDu、Dx、Dv、Dy、Dw、Dzの内のいずれかが導通することにより生じるパルス状のスパイク電圧Vuc、Vvc、Vwcとの合成波形となる。
そして、これらの端子電圧Vu、Vv、Vwと整流部202からインバータ回路部204に供給される直流電源電圧の1/2の電圧たる仮想中性点電圧VNとをコンパレータで比較し、コンパレータより出力する出力信号PSu、PSv、PSwが信号(D)〜信号(F)である。
この出力信号は、供給電圧Vua、Vva、Vwaに対応するPSua、PSva、PSwaと、スパイク電圧Vuc、Vvc、Vwcに対応するPSuc、PSvc、PSwcと、誘起電圧Vub、Vvb、Vwbと仮想中性点電圧VN比較中の期間に相当するPSub、PSvb、PSwbとの合成信号である。
ここで、パルス状のスパイク電圧Vuc、Vvc、Vwcは、特許文献2におけるウェイトタイマと同様に、位置検出待機部208により設定するウェイト時間(信号(G))によって無視する。そのため、コンパレータの出力信号PSu、PSv、PSwは、結果として誘起電圧Vub、Vvb、Vwbの正および負ならびに位相を示す。
マイクロプロセッサ207は、各コンパレータの出力信号PSu、PSv、PSwの状態に基づいて信号(H)に示す6つのモードA〜Fを認識し、出力信号PSu、PSv、PSwの状態に応じて、ドライブ信号DSu(信号(I))〜ドライブ信号DSz(信号(N))を出力する。
つまり、信号(H)に示すA〜Fの各モードにおける経過時間は、マイクロプロセッサ207が認識する位置検出信号の状態変化の発生間隔、即ち位置検出間隔(信号(O))を示している。
次に、図9のフローチャートにより詳細な動作を説明する。図9において、位置検出待機部208の動作は、ステップ103の後からステップ202までである。また、位置検出判定部209の動作は、ステップ202の後ろからステップ306までである。通電角拡大回数判定部209bの動作はステップ601以降である。
まず、ステップ101でタイマのカウント動作を開始し、ステップ102で転流時間が経過するまで待機する。次に、ステップ102で転流時間がタイマ値より大きくなり転流時間が経過したと判断された場合(ステップ102のN)、ステップ103でドライブ回路205へのドライブ信号DSu、DSv、DSw、DSx、DSy、DSzを出力し、転流動作を行なう。
ここで、位置検出待機部208の動作について説明する。転流動作を行なった際、インバータ回路部204のスイッチングトランジスタTru、Trx、Trv、Try、Trw、Trzの内のいずれかの状態がオンからオフへの切り換えが発生した直後に、直前に導通していたステータ巻線203u、203v、203wに蓄えられたエネルギーが還流ダイオードDu、Dx、Dv、Dy、Dw、Dzの内のいずれかが導通することにより放出されるまでの期間、パルス状のスパイク電圧Vuc、Vvc、Vwcが発生する。
このスパイク電圧Vuc、Vvc、Vvwを無視した後、誘起電圧Vub、Vvb、Vwbが仮想中性点電圧VNを通過するクロスポイントにより位置検出を行なう。即ち、ステップ201でタイマ値がウェイト時間を経過するまで待機し、ウェイト時間が経過した後(ステップ201のN)、ステップ202で位置検出を開始する。すなわち、位置検出待機部208において、ウェイト時間が経過するまで位置検出の開始を待機させて、スパイク電圧Vuc、Vvc、Vvwを無視した後に位置検出を行うものである。
次に、位置検出判定部209の動作について説明する。ステップ301において、位置検出回路部206からの出力信号PSu、PSv、PSwの状態の検出を行なう。続いてステップ302において、スイッチングトランジスタTru、Trx、Trv、Try、Trw、Trzの出力状態、すなわち図8における動作モードの状態に応じた出力信号PSu、PSv、PSwの状態によって位置検出判定を行なう。
一例として、図8における動作モードがAの場合、PSuがHレベル、PSvがLレベル、PSwがHレベルを検出することによってU相端子電圧の立上り検出となる。同様に、他の動作モード状態においても、PSu、PSv、PSwの状態を調べることにより、仮想中性点電圧VNに対する各端子電圧の立上りまたは立下り検出を行なう。
ステップ302において位置検出の判定が行なわれた場合(ステップ302のY)、ステップ303に移行する。
ステップ303では、タイマ値の読取りを行ない、前回の位置検出からの経過時間を測定する。ここで、各端子電圧の立上り、または立下り検出による位置検出は端子電圧1周期中に6回発生するため、位置検出間隔を測定することにより電気角で60度に相当する経過時間を得ることができる。
ところで、通常は、スパイク電圧Vuc、Vvc、Vwcは、誘起電圧Vub、Vvb、Vwbが仮想中性点電圧VNを通過するクロスポイントの手前で終了する。ところが、このスパイク電圧Vuc、Vvc、Vwcは、ステータ巻線203u、203v、203wのインダクタンスと、オフする直前に流れていた電流などによって発生時間が変化する。そのため、スパイク電圧Vuc、Vvc、Vwcの継続時間が長くなった場合、誘起電圧Vub、Vvb、Vwbが隠されてしまい、継続時間がクロスポイントの発生タイミングを超えた場合は、正常な位置検出が不可能となってしまう。
そこで、本実施の形態では、過去の位置検出間隔に応じて設定されたウェイト時間による位置検出開始のタイミングから、実際に位置検出信号が発生するまでの時間差を測定することにより、前述のクロスポイントの変動の判定を行なう。
ステップ304は、ステップ303で得られた直前に行なわれた60度毎の位置検出間隔であるタイマ値と、ステップ201におけるウェイト時間との時間差を判定時間として算出する。
すなわち、位置検出判定部209において、位置検出判定部209における位置検出間隔と、位置検出待機部208におけるウェイト時間との時間差を算出する。その時間差が大きければ、スパイク電圧の終了タイミングから誘起電圧と仮想中性点電圧のクロスポイントの発生タイミングまで時間余裕が残されていると判定する。逆に、この時間差が小さければ、スパイク電圧の終了タイミングから誘起電圧と仮想中性点電圧のクロスポイントの発生タイミングまでの時間余裕が不足していると判定する。
そして、さらに時間差が大きいと判定した回数が多い場合に、次の通電角拡大回数判定部209bにおいて、インバータ回路部204における通電角を大きくする。
次に、ステップ305において、得られた位置検出間隔に応じて次回の転流時間とウェイト時間を設定する。
一例として、図8においては通電角150度、進角15度の動作を図示している。転流タイミングは位置検出間隔で得た60度を基準として、ドライブ信号DSu、DSv、DSw、DSx、DSy、DSzのオンタイミングは位置検出後0度、オフタイミングは位置検出後30度としている。また、次回の位置検出を開始するまでのウェイト時間は位置検出後45度としている。
続いて、ステップ306で、位置検出判定の回数をカウントする。すなわち、ステップ306を経過するごとに位置検出判定を+1カウントする。
次に、通電角拡大回数判定部209bの動作について説明する。通電角拡大回数判定部209bでは、ステップ304で得た判定時間に基づき、誘起電圧検出期間PSub、PSvb、PSwbに対するスパイク電圧検出期間PSuc、PSvc、PSwcの大小判定を行なう。
まず、ステップ601において、ステップ304で得られた判定時間が、あらかじめ設定した基準時間である拡大設定時間以上となった場合(ステップ601のY)、ステップ602に進む。例えば、ステップ304で得られた判定時間が、電気角7.5度相当時間以上となった場合、すなわち、誘起電圧検出期間PSub、PSvb、PSwbにおける仮想中性点電圧VNとのクロスポイントが、ウェイト時間経過による位置検出開始タイミングから離れた場合、ステップ602に進む。ステップ602で通電角を拡大するための広角拡大判定の回数をカウントする。すなわち、ステップ602を経過するごとに広角拡大判定を+1カウントする。
一方、ステップ601において、判定時間が拡大設定時間より小さい場合は(ステップ601のN)、ステップ603に進む。
次に、ステップ603では、ステップ306でカウントした位置検出判定の回数があらかじめ設定した検出設定回数を超えた場合は(ステップ603のY)、ステップ602で設定した広角拡大判定の回数とあらかじめ設定した拡大設定回数とを比較し、通電角を大きくするかどうかの判断を行う次ステップに進む。
すなわち、ステップ603において、位置検出判定の回数があらかじめ設定した検出設定回数、例えば、電気角3回転に相当する18回を超えた時(ステップ603のY)、ステップ604で位置検出判定の回数をクリアした後、ステップ605に進む。ステップ603で位置検出判定の回数が検出設定回数未満の場合は(ステップ603のN)、ステップ701に進む。
ステップ605では、広角拡大判定の回数があらかじめ設定した拡大設定回数、例えば、18回以上の場合(ステップ605のY)、ステップ606で広角拡大要求をセットし、ステップ608に進む。すなわち、上記の例の場合では、位置検出回数18回連続で広角拡大判定の時、広角拡大要求となる。
一方、ステップ605で、広角拡大判定の回数が拡大設定回数未満ならば(ステップ605のN)、ステップ607で広角拡大要求をクリアし、ステップ608に進む。ステップ608は、広角拡大判定の回数をクリアし、その後ステップ701に進む。
ステップ701は、通電角の更新周期を判定するステップであり、通電角の更新周期を経過している場合は(ステップ701のY)、ステップ702に進み、更新周期以内の場合は(ステップ701のN)、ステップ101に戻り、以下同様の動作を繰り返す。
ステップ702において、広角拡大要求の状態である場合(ステップ702のY)は、ステップ703に進む。該当しない場合(ステップ702のN)は、ステップ101に戻り、以下同様の動作を繰り返す。
ステップ703において、通電角が上限、例えば、150度よりも小さければ(ステップ703のN)、ステップ704において、通電角をあらかじめ設定した変更角だけ大きくする様に変更する。
一例として、通電角120度、通電角上限150度、変更角7.5度の場合、通電角を120度から127.5度に変更する。通電角を大きく変更した後も更に広角拡大要求が継続している場合は同様に、通電角を127.5度から135度、142.5度、150度と拡げていく。
ステップ703において通電角が既に上限の150度に到達していた場合(ステップ703のY)、あるいはステップ704において通電角の増加を行なった場合、ステップ101に戻り、以下同様の動作を繰り返す。
以上のように、通電角拡大回数判定部209bにおいては、位置検出判定部209における位置検出間隔と位置検出待機部208におけるウェイト時間との時間差が、あらかじめ設定した基準時間である拡大設定時間よりも長くなった場合、広角拡大判定の回数をカウントする。そして、あらかじめ設定した位置検出判定の回数中に、カウントした広角拡大判定の回数があらかじめ設定した拡大設定回数以上となった際に、スパイク電圧の終了タイミングから誘起電圧と仮想中性点電圧のクロスポイントの発生タイミングまでの時間余裕が残されている回数が多いと判定する。その結果、インバータ回路部における通電角を電気角で180度未満の範囲で大きくする。
なお、ブラシレスDCモータ203を駆動するインバータ回路部204は、通電角を電気角120度以上に広げる広角制御を行うものであり、インバータ回路部204における通電角を最大の電気角で180度未満の範囲で大きくするものである。
従って、スパイク電圧の継続時間の増加によって通電角を小さくしたことに対して、スパイク電圧の継続時間が減少した場合には通電角を復帰させることができ、再び高回転、高トルクで運転することが可能となる。
また、負荷トルクの変動が大きく、ロータ203rの1回転中における位置検出間隔が変化する場合においてもスパイク電圧の継続時間の減少を判断することができる。そのため、スパイク電圧の継続時間が減少した場合に通電角を復帰させることができ、再び高回転、高トルクで運転することが可能となる。
また、電動圧縮機220に上記インバータ制御装置200を用いても、良好な運転が可能となる。また、冷蔵庫などの家庭用電気機器に上記インバータ制御装置200を用いても、良好なシステム運転が可能となる。
なお、本実施の形態において、通電角は120度から7.5度の変更角で150度へ遷移させたが、変更角をさらに小さくしてよりリニアに変化させても良く、逆に変更角を大きくしても良い。
また、本実施の形態において、検出設定回数と拡大設定回数を共に18回としているが、それぞれの回数を適宜変えても同様に実施可能である。
さらに、本実施の形態においては、まず位置検出判定部による位置検出間隔と位置検出待機部によるウェイト時間との時間差があらかじめ設定した基準時間よりも長くなったことを検知する。その後、あらかじめ設定した位置検出判定の回数中に広角拡大判定の回数があらかじめ設定した拡大設定回数以上となった際に、インバータ回路部における通電角を電気角で150度以下の範囲で大きくしている。しかし、位置検出判定部による位置検出間隔と位置検出待機部によるウェイト時間との時間差があらかじめ設定した基準時間よりも長くなったことを検知して、インバータ回路部における通電角を電気角で180度未満の範囲で大きくするものであれば、検知した後の制御ステップは他のものであっても同様の効果は得られる。
また、本実施の形態において、位置検出判定部による位置検出間隔と位置検出待機部によるウェイト時間との時間差とを比較する基準時間(拡大設定時間)を電気角7.5度相当時間としている。しかし、スパイク電圧の終了タイミングから誘起電圧と仮想中性点電圧のクロスポイントの発生タイミングまでの時間余裕を的確に判定できるよう、基準時間を適宜変更しても良い。
(実施の形態4)
図10は、本発明の実施の形態4におけるインバータ制御装置のブロック図である。図11は、同実施の形態における動作を示すフローチャートである。
図10において、位置検出判定部209は、実施の形態2の通電角縮小回数判定部209aと、実施の形態3の通電角拡大回数判定部209bの両方を備えている。そのため、実施の形態2と実施の形態3の両方の効果を併せて得ることができる。
すなわち、実施の形態2の効果として、負荷トルク変動などによりモータ電流が変化することによってスパイク電圧幅が増加した場合においても、通電角を狭めることによりモータ電流を減少させる。その結果、位置検出区間を増大することができるとともに、スパイク電圧幅を減少することができる。そのため、負荷変動、電圧変動などの外的要因による位置検出の失敗、誤検知から脱調によるモータ停止を防止することができる。
さらに、実施の形態3の効果として、スパイク電圧の継続時間の増加によって通電角を小さくしたことに対して、スパイク電圧の継続時間が減少した場合には通電角を復帰させることができる。したがって、再び高回転、高トルクで運転することが可能となる。
また、負荷トルクの変動が大きく、ロータ203rの1回転中における位置検出間隔が変化する場合においてもスパイク電圧の継続時間の増加を判断することができる。そのため、負荷変動、電圧変動などの外的要因による位置検出の失敗、誤検知から脱調によるモータ停止を防止することができる。
また、ロータ203rの内部に永久磁石203a、203b、203c、203d、203e、203fを配置した構成としている。したがって、このようにすることによってリラクタンストルクを有効に活用するため位置検出区間が狭くなる進角制御を行うものに対しても、さらに、負荷変動、電圧変動などの外的要因による位置検出の失敗、誤検知から脱調によるモータ停止を防止することができる。
また、ブラシレスDCモータ203のステータ巻線203u、203v、203wの巻数を多く(160ターン以上)することで、インダクタンスが大きく、スパイク電圧幅が増大し位置検出区間を狭くするモータに対しても、さらに、負荷変動、電圧変動などの外的要因による位置検出の失敗、誤検知から脱調によるモータ停止を防止することができる。
また、ブラシレスDCモータ203の極数を6極以上(従来4極)とすることで、極数増加による機械的角度で位置検出区間を狭くするモータに対しても、さらに、負荷変動、電圧変動などの外的要因による位置検出の失敗、誤検知から脱調によるモータ停止を防止することができる。
さらに、スパイク電圧の継続時間の増加によって通電角を小さくしたことに対して、スパイク電圧の継続時間が減少した場合には通電角を復帰させることができ、再び高回転、高トルクで運転することが可能となる。
また、負荷トルクの変動が大きく、ロータ203rの1回転中における位置検出間隔が変化する場合においてもスパイク電圧の継続時間の減少を判断することができる。そのため、スパイク電圧の継続時間が減少した場合に通電角を復帰させることができ、再び高回転、高トルクで運転することが可能となる。
また、電動圧縮機220に上記インバータ制御装置200を用いても、良好な運転が可能となる。さらに、冷蔵庫などの家庭用電気機器に上記インバータ制御装置200を用いても、良好なシステム運転が可能となる。
例えば、図12に概略構成図を示すように、本実施の形態の冷蔵庫300は、本体301内に設けられた複数の貯蔵室302と、本体300の後方下部または後方上部に設けられた機械室303とを備えている。機械室303には、本発明の実施の形態1〜4で示したインバータ制御装置200を備えた電動圧縮機304が設置されている。本体301の背面には、パイプ305によって結合された、電動圧縮機304を含む冷凍サイクル要素306が設けられている。
本実施の形態の冷蔵庫によれば、実施の形態1〜4で示したインバータ制御装置を備えた電動圧縮機で動作するので、負荷変動、電圧変動などが生じても運転が停止することなく、良好な運転が可能となる。
以上説明したように、本発明は、ブラシレスDCモータを駆動するインバータ回路部と、ブラシレスDCモータの誘起電圧およびインバータ回路部の転流切替時に生じるスパイク電圧を検出する位置検出回路部と、位置検出回路部で検出した誘起電圧に基づきロータの回転位置および回転数の検出を行うとともに、ロータの位置検出信号を出力する位置検出判定部と、スパイク電圧の継続時間を測定するスパイク電圧判定部と、モータ電流の通電角と誘起電圧に対するモータ電流の進角および回転数に基づきロータの位置検出信号が出力されてからインバータ回路部が転流動作を行うまでの時間を設定する転流制御部と、インバータ回路部における通電角を電気角で所定角度範囲で変化させる通電角制御部とを備え、ロータの位置検出信号が出力される時間間隔と、位置検出信号発生からインバータ回路部が転流動作を行なうまでの時間とスパイク電圧の継続時間が終了するまでの時間の合計時間との時間差が、予め設定した基準時間よりも短くなった際に、インバータ回路部における通電角を電気角で所定角度範囲の下限より大きい範囲で小さくすることとしたものである。
これにより、負荷トルク変動などによりモータ電流が変化することによってスパイク電圧幅が増加した場合においても、瞬時に通電角を狭めることによりモータ電流を減少させることができる。その結果、位置検出区間を増大することができるとともに、スパイク電圧幅を減少することができる。そのため、負荷変動、電圧変動などの外的要因による位置検出の失敗、誤検知から脱調によるモータ停止を防止することができる。
また、本発明は、位置検出信号発生からインバータ回路部が転流動作を行なうまでの時間とスパイク電圧の継続時間が終了するまでの時間の合計時間が、ロータの位置検出信号が出力される時間間隔を超えた際に、以前に転流した別相の誘起電圧によるロータの位置検出信号に基づき転流動作を行うこととしたものである。
これにより、スパイク電圧の影響による位置検出の誤検出の可能性が高い場合においても、通電角の変更により位置検出が回復するまでの期間、仮位置検出によって運転を継続することができる。そのため、負荷変動、電圧変動などの外的要因による位置検出の失敗、誤検知から脱調によるモータ停止を防止することができる。
また、本発明は、ロータの位置検出信号が出力される時間間隔と、位置検出信号発生からインバータ回路部が転流動作を行なうまでの時間とスパイク電圧の継続時間が終了するまでの時間の合計時間との時間差が、予め設定した基準時間より長くなった際に、インバータ回路部における通電角を電気角で所定角度範囲の上限より小さい範囲で大きくするものである。
これにより、スパイク電圧の継続時間の増加によって通電角を小さくしたことに対して、スパイク電圧の継続時間が減少した場合に通電角も復帰させることができる。したがって、再び高回転、高トルクで運転することが可能となる。
さらに、本発明は、ブラシレスDCモータを駆動するインバータ回路部と、ブラシレスDCモータの誘起電圧を検出する位置検出回路部と、位置検出回路部で検出した誘起電圧に基づきロータの位置検出信号を出力する位置検出判定部と、位置検出判定部が誘起電圧の検出を開始するまでのウェイト時間を設定する位置検出待機部と、モータ電流の通電角と誘起電圧に対するモータ電流の進角および回転数に基づきロータの位置検出信号が出力されてからインバータ回路部が転流動作を行うまでの時間を設定する転流制御部と、インバータ回路部における通電角を電気角で所定角度範囲で変化させる通電角制御部とを備え、位置検出判定部による位置検出間隔と位置検出待機部によるウェイト時間との時間差があらかじめ設定した基準時間よりも短くなった際に、インバータ回路部における通電角を電気角で所定角度範囲の下限より大きい範囲で小さくするものである。
これにより、負荷トルク変動などによりモータ電流が変化することによってスパイク電圧幅が増加した場合においても、通電角を狭めることによりモータ電流を減少させることができる。その結果、位置検出区間を増大することができるとともに、スパイク電圧幅を減少することができる。そのため、負荷変動、電圧変動などの外的要因による位置検出の失敗、誤検知から脱調によるモータ停止を防止することができる。
また、本発明は、位置検出判定部による位置検出間隔と位置検出待機部によるウェイト時間との時間差があらかじめ設定した基準時間よりも短くなった広角縮小判定の回数をカウントする通電角縮小回数判定部を備え、あらかじめ設定した検出設定回数中に広角縮小判定の回数があらかじめ設定した縮小設定回数以上となった際に、インバータ回路部における通電角を電気角で所定角度範囲の下限より大きい範囲で小さくするものである。
これにより、負荷トルクの変動が大きくロータ1回転中における位置検出間隔が変化する場合においてもスパイク電圧の継続時間の増加を判断することができる。そのため、負荷変動、電圧変動などの外的要因による位置検出の失敗、誤検知から脱調によるモータ停止を防止することができる。
また、本発明は、位置検出判定部による位置検出間隔と位置検出待機部によるウェイト時間との時間差があらかじめ設定した基準時間よりも長くなった際に、インバータ回路部における通電角を電気角で所定角度範囲の上限より小さい範囲で大きくするものである。
これにより、スパイク電圧の継続時間の増加によって通電角を小さくしたことに対して、スパイク電圧の継続時間が減少した場合には通電角を復帰させることができる。したがって、再び高回転、高トルクで運転することが可能となる。
また、本発明は、位置検出判定部による位置検出間隔と位置検出待機部によるウェイト時間との時間差があらかじめ設定した基準時間よりも長くなった広角拡大判定の回数をカウントする通電角拡大回数判定部を備え、あらかじめ設定した検出設定回数中に広角拡大判定の回数があらかじめ設定した回数以上となった際に、インバータ回路部における通電角を電気角で所定角度範囲の上限より小さい範囲で大きくするものである。
これにより、負荷トルクの変動が大きくロータ1回転中における位置検出間隔が変化する場合においてもスパイク電圧の継続時間の減少を判断することができる。そのため、スパイク電圧の継続時間が減少した場合に通電角を復帰させることができる。したがって、再び高回転、高トルクで運転することが可能となる。
また、本発明は、ブラシレスDCモータのロータの内部に永久磁石が埋め込まれ突極性を有することにより生じるリラクタンストルクを有効に活用するため、進角制御を行うことによって位置検出区間が狭くなるものに対しても、上記の効果が得られ、負荷変動、電圧変動などの外的要因による位置検出の失敗、誤検知から脱調によるモータ停止を防止することができる。
また、本発明は、ブラシレスDCモータのステータ巻線の巻数が160ターンよりも大きく、その結果インダクタンスが大きく、スパイク電圧幅が増大し位置検出区間を狭くするモータに対しても、上記の効果が得られ、負荷変動、電圧変動などの外的要因による位置検出の失敗、誤検知から脱調によるモータ停止を防止することができる。
また、本発明は、ブラシレスDCモータの極数は6極よりも大きく、極数増加による機械的角度で位置検出区間を狭くするモータに対しても、上記の効果が得られ、負荷変動、電圧変動などの外的要因による位置検出の失敗、誤検知から脱調によるモータ停止を防止することができる。
さらに、本発明は、上記記載のインバータ制御装置を用いた電動圧縮機であり、負荷変動や電圧変動による脱調を防止することができ、信頼性の高い電動圧縮機が得られる。
さらに、本発明は、上記記載のインバータ制御装置を用いた家庭用電気機器であり、負荷変動や電圧変動に対する耐量を向上することができ、信頼性の高い冷蔵庫などの家庭用電気機器が得られる。