JP5290951B2 - 塗料用水性樹脂組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、塗料用水性樹脂組成物に関する。より詳しくは、金属、ガラス、磁器タイル、コンクリート、サイディングボード、押出成型板、プラスチック等の各種素材の表面仕上げに使用することができ、自動車、建築物、土木構造物等の躯体保護に好適であり、特に窯業系無機建材へのトップコートに好適な塗料用水性樹脂組成物、特に顔料を含む塗料に比べて耐汚染性、耐温水白化性の要求レベルが高いクリヤートップコート用塗料として好適に使用できる塗料用水性樹脂組成物に関するものである。
塗料用樹脂組成物は、金属、ガラス、磁器タイル、コンクリート、サイディングボード、押出 成型板、プラスチック等の各種素材の表面仕上げに使用されるものである。また、塗料用樹脂組成物は、屋外の建築物に塗装される塗膜を形成するために用いられるものでもある。このような塗料用樹脂組成物の中でも、特に、塗料用水性樹脂組成物は、塗装作業者や居住者の健康被害を低減することができ、また、水質汚濁及び大気環境汚染等の環境汚染を防ぐことができるため、建築・土木構造物に使用する塗料分野において好適に用いることができるものである。
塗料用樹脂組成物は、有機溶剤を溶媒とする溶剤型塗料の原料として、壁、屋根、門扉、シャッタ、表示板などの屋外の建築物に使用される。しかしながら、従来の塗料用樹脂組成物を使用して形成される塗膜は、屋外使用の間に、砂塵、鉄粉、雨(酸性雨)、煤、太陽光線などの影響によって塗膜表面が汚れ、塗膜の美観が損われるという欠点があった。近年、屋外建築物等に使用する塗膜には、耐候性とともに、美観を維持する機能が求められることから、長期間の屋外での使用においても、美観を維持する塗膜を形成することができる塗料が求められている。また、有機溶剤型塗料をベースとした塗料は、建築物において使用されると、塗装作業者や居住者の健康被害及び環境汚染等を起こすおそれがあるものであることから、このような健康被害及び環境汚染等を低減することができる塗料が求められている。
上記のような理由から、近年、建築・土木構造物に使用する塗料分野においては、有機溶剤を溶媒とする溶剤型塗料から、有機溶剤を溶媒を必須としない水性樹脂組成物を用いた水性塗料への転換が図られつつある。しかしながら、従来の水性塗料は、耐汚染性が充分ではなく、低汚染型と唱われる水性塗料でさえ、有機溶剤型の低汚染型塗料のレベルには遠く及ばないのが現状である。
水性塗料による塗膜は、一般的に溶剤型の塗料による塗膜に比べて、塗膜硬度が低く、汚染物質が付着した時の染み込み性が高い傾向にある。特に、顔料分の少ないクリヤー塗料においては、塗膜硬度の低下が顕著であり、一度汚染物質が付着すると、塗膜表面からその汚れを除去することは困難な場合が多かった。また、クリヤー塗料は、意匠性付与剤として艶消し剤を使用することが多く、この艶消し剤の使用により耐温水白化性が低下し、クリヤー塗料において耐汚染性と耐温水白化性とを高レベルで両立することは従来困難であった。
このような塗料用樹脂組成物及び塗料用水性樹脂組成物の問題点について、塗料に界面活性剤を添加して、得られる塗膜表面を親水性にして汚れを防止する方法が提案されている。しかしながら、界面活性剤の配合による塗膜硬度の低下の問題や比較的短期間の屋外使用で界面活性剤が流亡し短期間のうちに塗膜表面の親水性が低下する等の問題があった。
従来の塗料用樹脂組成物として、塗料中にオルガノシリケート又はオルガノシリケートの縮合物を配合したものを上塗塗料として用いる方法が開示されている(例えば、特許文献1及び2参照。)。これらの技術は、特定のオルガノシリケート及び/又はその縮合物を配合し、塗膜形成後酸処理することによって、塗膜表面を親水性にし、油性の汚染物質を付着しにくくし、また付着した汚染物質を降雨等の水滴とともに洗い流してしまうとするものである。しかしながら、この塗料から形成される塗膜が汚れを防止する機能を発揮するためには、配合されたシリケートが加水分解されて塗膜表面が親水性になることが必要であるため、少なくとも塗装後数か月間は、汚れを防止することができないという問題があった。
また、単にオルガノシリケート及び/又はその縮合物を添加するものであるため、オルガノシリケート及び/又はその縮合物を水性塗料に添加した際に起こる加水分解縮合反応を制御できないために、短時間で急激に塗料粘度が上昇し、さらには塗料全体がゲル化してしまい、通常の塗装作業をすることさえできないものであった。更に、たとえ混合後直ちに塗装を行い、塗膜を形成した場合においても、汚染物質の染み込み抵抗性に劣るという欠点があった。そのうえ、水性塗料とオルガノシリケート及び/又はその縮合物との相溶性が悪く、混合後に凝集物を生じるという問題もあった。このように、単にオルガノシリケート及び/又はその縮合物を水性塗料に添加するのみでは、実用上無視することのできない種々の問題があり、低汚染性に優れた塗膜を得ることは困難であった。
従来の塗料用途に用いられる化合物として、塗料添加剤等に用いられる、親水性基含有高分子鎖及び樹脂と親和性を有する高分子鎖とを併せ持つ親水性基含有AB型ブロック共重合体が開示されている(例えば、特許文献3参照。)。この重合体は、親水性基含有高分子鎖、及び、樹脂と親和性を有する高分子鎖を併せ持つ親水性基含有AB型ブロック共重合体であって、改質すべき高分子材料の表面あるいは界面に、親水性基の有する諸特性、例えば、吸水性、帯電防止性、導電性、防汚性、防曇性等を与えるとするものである。しかしながら、この共重合体を塗料添加剤として用いた塗料は、充分な耐汚染性を有するものではないことから、より耐汚染性に優れた塗料とする工夫の余地があった。
従来の塗料としては、また、水に不溶性の樹脂1〜99重量%と、分子内にN−ビニル環状アミドまたはイミド結合を有する単量体の重合物、もしくは上記単量体と遊離のカルボキシル基またはヒドロキシル基をもたない他の単量体との共重合物である水可溶性樹脂99〜1重量%からなる混合樹脂をビヒクルとして含有する防汚染塗料が開示されている(例えば、特許文献4参照。)。この塗料は、船舶等の海中投入部分に用いるための防汚染塗料であって、塗料が水中に溶解することによって海中投入部分の汚染を防ぐものであり、屋外の建築物等に使用する塗料として適用できるものではないことから、屋外の建築物等で使用された場合に優れた耐汚染性を発揮する塗料とする工夫の余地があった。
更に、従来の塗料組成物として、バインダーと水性ビヒクルとからなる塗料組成物において、上記バインダーは、70〜98重量%の立体的に安定化された熱硬化性アクリル重合体の分散体と、2〜30重量%のビスフェノールA−エピクロルヒドリン縮合物又はノボラックエポキシ樹脂と、バインダーの合計重量に基づいて0.1〜10重量%の酸触媒とからなるものであり、アクリル酸系単量体とグラフトされているポリビニルピロリドンであって、2000〜500000の分子量を有するものをシード工程で立体的安定化剤として用いる塗料組成物が開示されている(例えば、特許文献5参照。)。しかしながら、耐汚染性、耐温水白化性等の各種特性をより向上させる工夫の余地があった。
また、塗料用顔料分散剤等として用いることができる化合物として、N−ビニル環状ラクタム単位を有する基幹ポリマーに対してカルボキシル基含有不飽和単量体が2重量%以上グラフト重合されてなり、かつ、グラフト鎖として導入されていないカルボキシル基含有不飽和単量体を含む不純物ポリマーの含有量がグラフト鎖重量に対して40重量%以下である、N−ビニル環状ラクタム系グラフト重合体が開示されている(例えば、特許文献6参照。)。しかしながら、屋外の建築物等に使用される塗料に要求される耐汚染性等の各種特性により優れた塗料とする工夫の余地があった。
特開平6−145453号公報(第1−2頁) 国際公開第94/06870号パンフレット 特開平1−138217号公報(第1−2頁) 特開昭59−36166号公報(第1−2頁) 特開昭63−95273号公報(第1−2頁) 特開2001−278922号公報(第1−2頁)
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、良好な塗膜性能を損なうことなく、耐候性、耐温水白化性、耐凍害性、及び、耐ブロッキング性等が良好であり、塗布直後から、長期に渡って特に屋外での耐汚染性に優れた塗膜を形成することができる塗料用水性樹脂組成物、特に、顔料を含む塗料に比べて耐汚染性、耐温水白化性の要求レベルが高いクリヤー塗料として好適に使用できる塗料用水性樹脂組成物を提供することを目的とするものである。
本発明者は、塗料用水性樹脂組成物について検討し、汚れを防止するためには、塗膜表面を親水性にすることが好ましく、親水性成分が塗膜表面に配向することが効果的であることに着目した。また、長期間にわたって汚れを防止するためには、親水性成分が塗膜表面から容易に流亡しないことが重要であることに着目した。そして、塗料用組成物の構成成分について種々検討したところ、乳化重合によって得られる(メタ)アクリルエマルションと水溶性樹脂とを必須とし、(メタ)アクリルエマルションと水溶性樹脂とが架橋構造を形成するものを構成成分とすると、人への健康被害や環境汚染を低減することができる水性の塗料組成物であって、耐候性、耐汚染性に優れた塗膜を形成する組成物となること、及び、このような組成物から得られる塗膜は、架橋による塗膜への固定化により、経時でのブリードアウトを抑え、長期に渡ってこれらの特性を維持することができることを見出した。
更に、水溶性樹脂がN−ビニル環状ラクタム単位を有する重合体を含むものであったり、(メタ)アクリルエマルション及び水溶性樹脂が含む重合体がそれぞれ特定の官能基を有し、これらが直接に、又は、更に特定の官能基を有する化合物を介して架橋構造を形成するものであったりすると、これらの特性が更に向上するとともに、耐温水白化性も大幅に向上された優れた塗膜を形成する組成物となることを見出した。この塗料組成物は、従来の水性塗料、特にクリヤー塗料、更には、艶消し剤を使用した艶消しクリヤー塗料では両立が困難であった耐汚染性と耐温水白化性の2つの性能を高レベルで両立させるものであるだけでなく、耐候性、耐凍害性、及び、耐ブロッキング性等が良好であり、塗布直後から、長期に渡って耐汚染性等の各種特性を発揮する塗膜を形成することができるものである。本発明者等は、更に、この塗料組成物が、各種特性に優れるものであるだけでなく、従来技術の耐汚染性塗料と異なり、1液安定性良好で、かつ、1塗装工程で低汚染性と、各種特性に優れた塗膜を形成できるものであることを見出し、上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明に到達したものである。
すなわち本発明は、乳化重合によって得られる(メタ)アクリルエマルション(A)と、水溶性樹脂(B)とを必須として構成される塗料用水性樹脂組成物であって、上記塗料用水性樹脂組成物は、(メタ)アクリルエマルション(A)と水溶性樹脂(B)とが架橋構造を形成し得るものである塗料用水性樹脂組成物である。
以下に本発明を詳述する。
本発明の塗料用水性樹脂組成物は、本発明の効果を妨げない限り、(メタ)アクリルエマルション(A)及び水溶性樹脂(B)以外の成分を含んでもよいが、(メタ)アクリルエマルション(A)及び、水溶性樹脂(B)が塗料用水性樹脂組成物の主成分であることが好ましい。主成分であるとは、上記塗料用水性樹脂組成物100質量%中、(メタ)アクリルエマルション(A)及び水溶性樹脂(B)の合計質量が50質量%以上であることを意味する。この質量比は、樹脂組成物に要求される物性によって異なるが、70質量%以上であることが好ましい。より好ましくは、80質量%以上であり、更に好ましくは、90質量%以上である。
上記塗料用水性樹脂組成物は、(メタ)アクリルエマルション(A)及び水溶性樹脂(B)をそれぞれ別々に調製した後、混合することによって得ることが好ましい。具体的には、(メタ)アクリルエマルション(A)を重合する工程において、全単量体成分の重合率が96%以上になったところで、水溶性樹脂(B)を混合することが好ましい。重合率は、より好ましくは98%以上、更に好ましくは99%以上である。重合率が96%未満であると、未反応モノマーと水溶性樹脂(B)が有する重合体との反応制御ができず、造膜性や安定性が低下するおそれがある。
なお、塗料用水性樹脂組成物の製造方法において用いる(メタ)アクリルエマルション(A)は、後述する(メタ)アクリルエマルション(A)の製造方法によって製造されたものであることが好ましい。
上記塗料用水性樹脂組成物は、(メタ)アクリルエマルション(A)と水溶性樹脂(B)との質量比が99.9:0.1〜60:40であることが好ましい。より好ましくは、99:1〜70:30であり、更に好ましくは、97:3〜75:25である。特に好ましくは、95:5〜80:20であり、最も好ましくは、95:5〜90:10である。
なお、上記質量比は、固形分による質量比を表す。
本発明の塗料用水性樹脂組成物は、単量体成分を重合してなる重合体が分散している水系のものである。重合体が分散している溶媒としては、水又は水/有機溶媒混合溶媒を用いることができるが、水が主成分であることが好ましい。水が主成分であるとは、溶媒100質量%中、水が50質量%以上であることを意味する。溶媒中における水の質量比は、樹脂組成物に要求される物性によって異なるが、70質量%以上であることが好ましい。より好ましくは、80質量%以上であり、更に好ましくは、90質量%以上である。
上記有機溶媒としては、水と混合することができるものである限り特に制限されず、例えば、メタノールのような低級アルコール等の親水性溶媒等を用いることができる。
本発明の塗料用水性樹脂組成物は、(メタ)アクリルエマルション(A)と水溶性樹脂(B)とが、架橋構造を形成し得るものである。(メタ)アクリルエマルション(A)と水溶性樹脂(B)とが架橋構造を形成し得るものであると、得られる塗膜が硬質化し、耐汚染性に優れたものとなる。また、親水性成分を塗膜表面に配向させ、かつ、親水性成分が塗膜表面から容易に流亡しないものとすることができるため、塗料用水性樹脂組成物から形成される塗膜が、耐汚染性に優れたものとなり、また、その特性を長期に渡って維持することが可能となる。
(メタ)アクリルエマルション(A)と水溶性樹脂(B)とが架橋構造を形成する形態としては、(メタ)アクリルエマルション(A)と水溶性樹脂(B)とが直接、架橋構造を形成する形態(第1の形態)、(メタ)アクリルエマルション(A)と水溶性樹脂(B)とが他の化合物(C)を介して架橋構造を形成する形態(第2の形態)がある。
本発明の塗料用水性樹脂組成物において、(メタ)アクリルエマルション(A)と水溶性樹脂(B)とが直接、架橋構造を形成するものであること、すなわち、(メタ)アクリルエマルション(A)が官能基(α)を有する重合体を含むものであり、水溶性樹脂(B)が該官能基(α)と架橋構造を形成し得る官能基(β)を有する重合体を含むものであること(第1の形態)は、本発明の好適な実施形態の1つである。
上記第1の形態において、官能基(α)を有する重合体と官能基(β)を有する重合体との質量比は、99.9:0.1〜60:40であることが好ましい。より好ましくは、99.5:0.5〜70:30であり、更に好ましくは、99:1〜80:20である。特に好ましくは、97:3〜85:15であり、最も好ましくは、95:5〜90:10である。
なお、上記質量比は、固形分による質量比を表す。
上記官能基(β)を有する重合体は、N−ビニル環状ラクタム単位を有する重合体であることが好ましい。架橋構造を形成する重合体がN−ビニル環状ラクタム単位を有する重合体であると、組成物から得られる塗膜の耐候性、耐汚染性を更に高めることができる。
また、水溶性樹脂(B)が、N−ビニル環状ラクタム単位を有する重合体を含む場合、(メタ)アクリルエマルション(A)と水溶性樹脂(B)とが架橋構造を形成しないものである場合であっても、(メタ)アクリルエマルション(A)と水溶性樹脂(B)とを含む組成物から得られる塗膜が耐候性や耐汚染性に優れたものとなる。
このような、乳化重合によって得られる(メタ)アクリルエマルション(A)と、N−ビニル環状ラクタム単位を有する重合体を含む水溶性樹脂(B)とを必須として構成される塗料用水性樹脂組成物もまた、本発明の1つである。
本発明の塗料用水性樹脂組成物において、(メタ)アクリルエマルション(A)と水溶性樹脂(B)とが他の化合物(C)を介して架橋構造を形成するものであること(第2の形態)もまた、本発明の好適な実施形態の1つである。この場合、化合物(C)は、(メタ)アクリルエマルション(A)が含む重合体が有する官能基と架橋構造を形成する官能基、及び、水溶性樹脂(B)が含む重合体が有する官能基と架橋構造を形成する官能基を有していればよく、化合物(C)が有する2つ以上の官能基は、同一であっても異なっていてもよい。また、(メタ)アクリルエマルション(A)が含む重合体が有する官能基と水溶性樹脂(B)が含む重合体が有する官能基も、同一であっても異なっていてもよい。
上記第2の形態において、(メタ)アクリルエマルション(A)が含む架橋する官能基を有する重合体と水溶性樹脂(B)が含む架橋する官能基を有する重合体と化合物(C)との質量比は、99.8:0.1:0.1〜60:20:20であることが好ましい。より好ましくは、99:0.5:0.5〜70:15:15であり、更に好ましくは、98:1:1〜80:10:10である。特に好ましくは、95:2.5:2.5〜84:8:8であり、最も好ましくは、92:4:4〜88:6:6である。
なお、上記質量比は、固形分による質量比を表す。
上記第2の形態においては、(メタ)アクリルエマルション(A)が含む重合体が有する官能基と水溶性樹脂(B)が含む重合体が有する官能基が同一であり、また、化合物(C)が有する(メタ)アクリルエマルション(A)及び水溶性樹脂(B)との間で架橋構造を形成する2つの官能基が同一であることが好ましい。すなわち、(メタ)アクリルエマルション(A)及び水溶性樹脂(B)が官能基(α)を有する重合体を含むものであり、化合物(C)が、該官能基(α)と架橋構造を形成し得る官能基(β)を2つ以上有するものであることが好ましい。このような形態であると、(A)と(B)が化学式に結合し、経時でのブリードアウトを抑え、耐汚染性を高めることができる。
上記第2の形態において、水溶性樹脂(B)含む官能基(α)を有する重合体は、N−ビニル環状ラクタム単位を有する重合体であることが好ましい。架橋構造を形成する重合体がN−ビニル環状ラクタム単位を有する重合体であると、組成物から得られる塗膜の耐候性、耐汚染性を更に高めることができる。
上記架橋構造を形成し得る官能基としては、例えば、エポキシ基、炭素原子に結合した水酸基、カルボキシル基、アミノ基、アルコキシカルボニル基、シクロカーボネート基、N−ヒドロキシメチル酸アミド基、N−アルコキシメチル酸アミド基、N−(アルコキシカルボニル−ヒドロキシ)メチル酸アミド基、N−(アルコキシカルボニル−アルコキシ)メチル酸アミド基、イソシアネート基、ブロックイソシアネート基、ブロック水酸基、ブロックカルボキシル 基、ブロックアミノ基、オキサゾリン基、オキサゾリジン基、カルボン酸無水基、アセトアセトキシ基、ヒドラジノ基、カルボニル基等が挙げられる。これらの1種のみを有していてもよく、2種以上を有していてもよい。
これらの中でも、エポキシ基、カルボキシル基、アミノ基、水酸基、イソシアネート基、オキサゾリン基、ヒドラジノ基、カルボニル基が好ましい。より好ましくは、オキサゾリン基、カルボキシル基、ヒドラジノ基、カルボニル基である。
すなわち、上記架橋構造を形成し得る官能基(α)及び(β)は、オキサゾリン基、カルボキシル基、ヒドラジノ基、カルボニル基のいずれかであることが好ましい。
上記架橋構造を形成し得る官能基の組み合わせとしては、例えば、エポキシ基と水酸基、エポキシ基とカルボキシル基、エポキシ基とブロックカルボキシル基、エポキシ基とアミノ基、エポキシ基とブロックアミノ基、シクロカーボネート基とカルボキシル基、水酸基とアルコキシカルボニル基、水酸基とイソシアネート基、ブロック水酸基とイソシアネート基、水酸基とブロックイソシアネート基、水酸基とN−ヒドロキシメチル酸アミド基、水酸基とN−アルコキシメチルアミド酸基、水酸基とN−(アルコキシカルボニル−ヒドロキシ)メチル酸アミド基、水酸基とN−(アルコキシカルボニル−アルコキシ)メチル酸アミド基、水酸基とヒドロキシメチルアミノ基、水酸基とアルコキシメチルアミノ基、水酸基とカルボン酸無水基、アセトアセトキシ基とイソシアネート基、アセトアセトキシ基とブロックイソシアネート基、オキサゾリン基とカルボキシル基、ブロック水酸基とカルボン酸無水基、オキサゾリジン基とイソシアネート基もしくはオキサゾリジン基とカルボン酸無水基、ヒドラジノ基とカルボニル基等、各種の組み合わせが挙げられる。これらの組み合わせの1つのみを用いてもよく、2つ以上を併用してもよい。
上記架橋構造を形成し得る官能基の組み合わせの中でも、エポキシ基とカルボキシル基、エポキシ基とアミノ基、水酸基とイソシアネート基、オキサゾリン基とカルボキシル基、ヒドラジノ基とカルボニル基の組み合わせが好ましい。より好ましくは、オキサゾリン基とカルボキシル基との組み合わせ、エポキシ基とカルボキシル基との組み合わせ、又は、ヒドラジノ基とカルボニル基の組み合わせである。更に好ましくは、オキサゾリン基とカルボキシル基との組み合わせ、ヒドラジノ基とカルボニル基との組み合わせである。すなわち、上記架橋構造を形成し得る官能基(α)及び(β)は、一方がオキサゾリン基、他方がカルボキシル基であるか、又は、一方がヒドラジノ基、他方がカルボニル基であることが好ましい。より好ましくは、官能基(α)がオキサゾリン基又はカルボニル基であり、官能基(β)がカルボキシル基又はヒドラジノ基であることである。
架橋構造がオキサゾリン基とカルボキシル基との組み合わせ、又は、ヒドラジノ基とカルボニル基の組み合わせで形成されると、塗料組成物から得られる塗膜の低温硬化性が向上し、塗膜の物性が更に優れたものとなる。
本発明の第1の形態の塗料用水性樹脂組成物としては、上述したものの中でも特に、(メタ)アクリルエマルション(A)が含む重合体がオキサゾリン基を有し、水溶性樹脂(B)が含む重合体がN−ビニル環状ラクタム単位を有するものであって、更にカルボキシル基を有するものであることが好ましい。また、本発明の第2の形態の塗料用水性樹脂組成物としては、上述したものの中でも特に、(メタ)アクリルエマルション(A)が含む重合体がカルボニル基を有し、水溶性樹脂(B)が含む重合体がN−ビニル環状ラクタム単位を有するものであって、更にカルボニル基を有し、化合物(C)が2つのヒドラジノ基を有するものであることが好ましい。
塗料用水性樹脂組成物がこのようなものであると、通常、耐温水白化性に関しては、溶剤系塗料のほうが優れるものであるところ、環境に配慮した水系の塗料組成物で優れた耐温水白化性を発揮する塗膜を形成することができるものとなり、耐汚染性と耐温水白化性という従来両立が困難であった2つの性能を高いレベルで両立することができるものとなる。更に、この塗料用水性樹脂組成物から形成される塗膜は、耐候性、耐凍害性、及び、耐ブロッキング性等にも優れ、しかも、これらの物性を長期に渡って維持することが可能である。更に、この塗料用水性樹脂組成物は1液安定性が良好であり、かつ、塗装時に1工程で低汚染性塗膜を形成することができることから、塗工時の作業性や、経済性にも優れたものとなる。
通常の顔料等を含む塗料の場合、顔料を含むことで塗膜が硬質化して耐汚染性が向上することになり、また、着色塗料であるため、温水白化が目立ち難い。これに対し、クリヤー塗料の場合には、顔料が少なく、着色していないため、塗料として使用される樹脂組成物に高いレベルの耐汚染性、耐温水白化性が要求されることになり、特に意匠性付与剤としシリカ・樹脂ビーズ等の艶消し剤を使用した艶消しクリヤー塗料においては、更に高いレベルの耐汚染性、耐温水白化性が要求されることになる。この塗料用水性樹脂組成物は、顔料を含む通常の塗料に比べて耐汚染性や耐温水白化性の要求レベルが高いクリヤー塗料、特に、艶消しクリヤー塗料として充分に使用できるものであり、耐汚染性や耐温水白化性を長期に渡って維持でき、しかも、塗工時の作業性や、経済性にも優れた高耐久性クリヤー塗料、特に、高耐久性艶消しクリヤー塗料として好適に用いることができる。
本発明の塗料用水性樹脂組成物は、特に、窯業系無機建材へのトップコート塗料の原料として好適に使用されるものである。このような、本発明の塗料用水性樹脂組成物を含む窯業系無機建材用トップコート塗料用水性樹脂組成物もまた、本発明の1つである。
なお、上記架橋構造を形成し得る官能基及びその組み合わせを有するものは、後述する単量体成分及び単量体比を用いることによって、得ることができる。
ここで、本発明において、ブロッキングとは、各種被塗物、例えば、金属、木材、紙、プラスチック、無機建材等の基材に水性樹脂分散体が塗装されたものが積み重ねられた際に、塗膜同士が接着する現象を指す。ブロッキングが生じると、塗膜の破損や基材の破壊が生じ、塗装本来の目的である被塗物の保護や美観を向上させるという目的が達成されないため、工場塗装用等に用いられる水性樹脂分散体には耐ブロッキング性が必要になる。
なお、上記耐ブロッキング性は、後述する耐ブロッキング性試験により評価するものとする。
本発明の塗料用水性樹脂組成物は、それによって形成される膜の耐温水白化性が、ΔL≦3であることが好ましい。
より好ましくは、ΔL≦2であり、更に好ましくは、ΔL≦1.5である。このように水性であるにもかかわらず耐温水白化性の良好な膜を形成することができる塗料用水性樹脂組成物は、低汚染性塗膜を形成することができる高耐久性クリヤー塗料、特に、高耐久性艶消しクリヤー塗料として好適に用いることができる。
耐温水白化性は、後述する耐温水白化性試験により評価するものとする。なお、耐温水白化性試験において、ΔL≦3であると、充分な耐温水白化性を有するため、建築建材の塗料として用いる際に、色調の変化を防止することで鮮やかな色彩を保つことができる。
本発明の塗料用水性樹脂組成物は、クリヤー塗料として好適に用いることができるが、必要に応じて、溶剤、可塑剤、無機又は有機充填剤、着色顔料、艶消し剤、コロイド状無機粒子、染料、増粘剤、分散剤、湿潤剤、消泡剤、防腐剤、防カビ剤、防錆剤等を含んでいても同様の優れた耐温水白化性、低汚染性を発揮する塗膜を形成することができる。
また、塗料用水性樹脂組成物のMFT(Minimum Film−forming Temperature;最低造膜温度)は、0℃以上、80℃未満であることが好ましい。より好ましくは、10℃以上、60℃未満であり、更に好ましくは、20℃以上、50℃未満である。0℃未満であると、十分な塗膜硬度を発現することができないおそれがある。また、80℃を超えると、充分に成膜することができないおそれがある。
本発明の塗料用水性樹脂組成物に含まれる乳化重合によって得られる(メタ)アクリルエマルション(A)とは、(メタ)アクリル酸系単量体を必須成分として含む単量体成分を乳化重合して得られる重合体を含むエマルションを意味する。(メタ)アクリル酸系単量体とは、(メタ)アクリル酸、又は、(メタ)アクリル酸エステル等の(メタ)アクリル酸誘導体である。
上記(メタ)アクリルエマルション(A)における(メタ)アクリル酸系単量体を必須成分として含む単量体成分を乳化重合して得られる重合体の含有割合は、(メタ)アクリルエマルション(A)100重量部に対して、60質量%以上であることが好ましい。より好ましくは、80質量%以上である。含有割合が60質量%未満であると、本発明の塗料用水性樹脂組成物から得られる塗膜が充分な耐候性、耐汚染性等を発揮しないおそれがある。
上記(メタ)アクリルエマルション(A)は、分子量が1万〜300万であるものが好ましいより好ましくは5万〜50万であるものである。分子量が1万未満であると、耐水性が低下する。また、300万より大きいと、造膜性が低下する。
上記(メタ)アクリルエマルション(A)は、ガラス転移温度(Tg)が−10〜100℃であることが好ましい。より好ましくは、0〜70℃である。更に好ましくは、10〜50℃である。ガラス転移温度が−10℃未満であると、塗膜硬度が不足する。また、100℃より大きいと、造膜性が低下する。
(メタ)アクリルエマルション(A)のガラス転移温度は、エマルションを構成する各単量体成分のホモポリマーのガラス転移温度を用いて、下記Foxの式より計算される。
1/Tg=Σ(Wn/Tgn)/100
ここで、Wnは単量体nの質量%、Tgnは単量体nからなるホモポリマーのTg(K:絶対温度)を示す。
上記(メタ)アクリルエマルション(A)は、本発明の効果を発揮する限り、粒子構造は特に制限されず、コア−シェル構造、パワーフィード構造、均一構造のいずれの構造であってもよいが、コア−シェル構造であることが好ましい。このような粒子構造を有するものであると、硬度と造膜性とを両立することができる。
上記(メタ)アクリルエマルション(A)が、Tgの異なる2種類以上の重合体から構成されるものであることは、本発明の好ましい実施形態の1つである。また、本発明における、(メタ)アクリルエマルション(A)が含む重合体は、後述するように、オキサゾリン基を有する単量体(a)及び反応性基含有単量体(b)を必須とする単量体成分を含むものであることが好ましい。
すなわち、本発明における(メタ)アクリルエマルション(A)が、オキサゾリン基含有単量体(a)及び反応性基含有単量体(b)を必須とする単量体成分を重合して得られる重合体(A0)を含み、該重合体(A0)は、Tgの異なる2種類以上の重合体から構成されるものであることは、本発明の好ましい実施形態の1つである。
(メタ)アクリルエマルション(A)がTgの異なる2種類以上の重合体から構成されるものである場合、硬さを付与する成分(硬質部)と軟らかさを付与する成分(軟質部)とが、それぞれ少なくとも1種類ずつ存在すればよい。硬質部のTgとしては、好ましくは60〜150℃、より好ましくは70〜120℃、最も好ましくは80〜106℃であり、軟質部のTgとしては、好ましくは−40〜40℃、より好ましくは−25〜30℃、最も好ましくは−10〜20℃である。硬質部のTgと軟質部のTgの差としては、好ましくは30℃以上、より好ましくは50℃以上、最も好ましくは70℃以上である。中でも、異なるTgからなる多段重合により得られる重合体が好ましく、最終段のTgがそれ以前の少なくとも1つの重合体を形成する段のTgよりも低いことが成膜性の観点から特に好ましい。
なお、Tgは、上述したFox式による計算値であるが、実測値の場合にも、同様の範囲が好ましい。Tgの実測値は、例えば、Tgは水性樹脂組成物を示差熱走査熱量分析することによって得ることができる。
示差熱走査熱量分析を行う測定装置としては特に限定されず、例えば、DSC220C(セイコーインストゥルメンツ社製)等、市販品を挙げることができる。また、DSC曲線を描画する方法、DSC曲線から一次微分曲線を得る方法、スムージング処理を行う方法、目的のピーク点の温度を求める方法として特に限定されず、上記測定装置によって得られたデータから作図する方法を挙げることができる。上記方法は、通常の数学的処理を行うことができる解析ソフトウェアを用いて行うことが好ましい。上記解析ソフトウェアとしては特に限定されず、例えば、EXSTAR6000(セイコーインストゥルメント社製解析ソフトウェア)等を挙げることができる。なお、このようにして求められたピーク点の温度は、作図による誤差として上下5℃程度の誤差を含む場合がある。
上記重合体(A0)において、硬質部と軟質部との質量比は、80:20〜10:90であることが好ましい。より好ましくは、60:40〜20:80である。更に好ましくは、45:55〜30:70である。
上記(メタ)アクリルエマルション(A)は、平均粒子径が30〜300nmであることが好ましい。より好ましくは、50〜200nmである。更に好ましくは70〜160nmである。平均粒子径が30nm未満であると、粒子安定性が低下する。また、300nmより大きいと、耐水性が低下する。
上記(メタ)アクリルエマルション(A)は、全単量体成分100質量%に対して(メタ)アクリル系単量体の含有量が50質量%以上である単量体成分を乳化重合して得られる重合体を含むものであることが好ましい。より好ましくは、(メタ)アクリル系単量体の含有量が70質量%以上である単量体成分を乳化重合して得られる重合体を含むものである。
また、重合体を合成する際には、架橋構造を形成し得る官能基を有する単量体は最終段に重合することが好ましい。ただし、それ以前の重合工程に含まれてもよい。(メタ)アクリルエマルション(A)としてパワーフィード構造をもつものを製造する場合は、徐々に架橋構造を形成し得る官能基を有する単量体を増加していくことが好ましい。
上記(メタ)アクリル系単量体としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、n−ラウリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−(アセトアセトキシ)エチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル類;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリレート類;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、無水マレイン酸等の酸性官能基を有する(メタ)アクリレート類;(メタ)アクリル酸エチレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、(メタ)アクリル酸ジエチレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸ジエチレングリコール等のオキソ基を有する重合性単量体類が挙げられるが、その他の使用可能な重合性単量体としては、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート等のフッ素含有重合性単量体類;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジアセトンアクリルアミド等の窒素原子含有重合性単量体類;グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基を有する重合性単量体類;2−〔2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(2−(メタ)アクロイルオキシエトキシ)ベンゾフェノン等の紫外線吸収性重合性単量体類;4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン等の紫外線安定性重合性単量体類;等がある。これらの単量体は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
これらの中でも、(メタ)アクリル酸アルキルエステル類、紫外線吸収性重合性単量体、紫外線安定性重合性単量体が、耐侯性の観点からも特に好ましい。(メタ)アクリル酸アルキルエステル類としては、上記例示の中でも特に、シクロアルキル基、t−ブチル基およびイソブチル基のうちの1種以上を有する重合性単量体が好ましい。このような重合性単量体を重合性単量体成分として含むことにより、耐ブロッキング性を好適に発現させうるとともに、耐侯性、耐温水白化性を更に向上させることができる。中でも、シクロアルキル基が特に好ましい。シクロアルキル基含有単量体の使用量は、特に限定はされないが、例えば、全単量体成分100重量部に対し、5〜60質量%であることが好ましく、より好ましくは10〜50質量%、最も好ましくは20〜40質量%であるのがよい。
上記(メタ)アクリルエマルション(A)は、上述のように、官能基(α)を有する重合体を含むものであることが好ましいが、この場合、(メタ)アクリルエマルション(A)における官能基(α)を有する重合体の含有割合は、(メタ)アクリルエマルション(A)100重量部に対して、50質量%以上であることが好ましい。より好ましくは、70質量%以上である。更に好ましくは、90質量%以上であり、最も好ましくは、100質量%、すなわち、(メタ)アクリルエマルション(A)が官能基(α)を有する重合体のみから構成されていることである。全ての含有割合が50質量%未満であると、本発明の塗料用水性樹脂組成物から得られる塗膜が充分な耐候性、耐汚染性等を発揮しないおそれがある。
上記第1の形態の塗料用水性樹脂組成物に用いられる(メタ)アクリルエマルション(A)が含む重合体の原料となる単量体成分は、オキサゾリン基含有単量体(a)、反応性基含有単量体(b)を含むものであることが好ましい。オキサゾリン基含有単量体(a)を含むものであると、(メタ)アクリルエマルション(A)が、上述した本発明の塗料用水性樹脂組成物の構成成分として好ましいものとなる。また、反応性基含有単量体(b)を含むものであると、オキサゾリン環を開環させることかできると考えられる。
オキサゾリン基含有単量体(a)、反応性基含有単量体(b)は、それぞれ1種又は2種以上を用いることができる。
上記単量体成分において、オキサゾリン基含有単量体(a)としては、下記一般式(1);
Figure 0005290951
(式中、R、R、R及びRは、同一又は異なって、水素、ハロゲン、アルキル、フェニル又は置換フェニル基を表す。Rは、付加重合性不飽和結合をもつ非環状有機基を表す。)で表される化合物であることが好ましい。
上記オキサゾリン基含有単量体(a)の具体例としては、例えば、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロぺニル−5−エチル−2−オキサゾリン等が挙げられる。中でも、工業的に入手容易性の観点から、2−イソプロペニル−2−オキサゾリンが好ましい。
上記オキサゾリン基含有単量体(a)の配合割合は、全単量体成分100重量部に対して0.1〜30質量%であることが好ましい。0.1質量%未満であると、充分な架橋が進行せず硬度が発現しないおそれがあり、30質量%を超えると、過度に架橋が進行することで成膜することができないおそれがある。好ましくは、0.5〜20質量%であり、より好ましくは、1〜10質量%である。
なお、上記重合体中のオキサゾリン基の含有量は、1質量%以上であることが好ましい。1質量%未満であると、オキサゾリン基が有する架橋性能が不充分となるおそれがある。
上記単量体成分において、反応性基含有単量体(b)とは、オキサゾリン基と反応性を有する官能基を含有した単量体を意味するが、このような単量体としては、オキサゾリン基と反応して共有結合を形成し得る反応性基を含むものであることが好ましい。このような反応性基とオキサゾリン基とが反応すると、オキサゾリン環を開環させ架橋構造を形成することができる。
上記反応性基は、反応性水素原子を含むものであることが好ましい。反応性水素原子を含む反応性基としては、強酸基、弱塩基、脂肪族アルコール基、芳香族アルコール基(フェノール基)、アミノ基等が挙げられる。このような反応性が高い基は、一般にアミンや脂肪族アルコールのような反応性が低い基よりも温和な条件下で迅速にオキサゾリン基と反応する。好ましくは、カルボン酸基である。カルボン酸基含有単量体の好適な単量体の例として、イタコン酸、アクリル酸、メタアクリル酸、フマル酸、マレイン酸、ビニル安息香酸及びイソプロペニル安息香酸が挙げられる。更に好ましいものとして、アクリル酸、メタアクリル酸が挙げられる。無水マレイン酸もまた、好適な単量体の例である。
上記反応性基含有単量体(b)の配合割合は、全単量体成分100重量部に対して、0.1〜30質量%であることが好ましい。0.1質量%未満であると、充分な架橋が進行せず硬度が発現しないおそれがあり、30質量%を超えると、未反応分の反応性基により塗膜の耐水性が低下するおそれがある。好ましくは、0.5〜20質量%であり、より好ましくは、1〜10質量%である。
上記単量体成分において、オキサゾリン基含有単量体(a)と反応性基含有単量体(b)のモル比は、反応性基含有単量体(b)1モルに対し、オキサゾリン基含有単量体(a)0.2〜5モルであることが好ましく、より好ましくは0.5〜2モルである。この範囲内で単量体成分を配合することにより、本発明の効果を充分に発揮することが可能となる。
上記第2の形態の塗料用水性樹脂組成物に用いられる(メタ)アクリルエマルション(A)が含む重合体の原料となる単量体成分は、カルボニル基含有単量体を含むものであることが好ましい。カルボニル基含有単量体を含むものであると、(メタ)アクリルエマルション(A)が、上述した本発明の塗料用水性樹脂組成物の構成成分として好ましいものとなる。カルボニル基含有単量体は1種又は2種以上を用いることができる。
上記カルボニル基含有単量体としては、分子中に少なくとも1個のアルド基又はケト基を有し、かつ、少なくとも1個の重合可能な二重結合を有する単量体を用いることができる。これらの中でも、重合可能なモノエチレン系不飽和アルド化合物及びモノエチレン系不飽和ケト化合物であって、かつエステル基及びカルボキシル基のみを有する化合物を除くものが好ましい。カルボニル基含有単量体の具体例としては、アクロレイン、ジアセトンアクリルアミド、ホルミルスチロール、4〜7個の炭素原子を有するビニルアルキルケトン(ビニルエチルケトン等)、(メタ)アクリルオキシアルキルプロペナール、ジアセトンアクリレート、アセトニルアクリレート、ジアセトンメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレートアセチルアセテート、ブタンジオール−1,4−アクリレートアセチルアセテート等が挙げられる。これらの中でも、ジアセトンアクリルアミド、アクロレインが好ましい。
上記カルボニル基含有単量体の配合割合は、全単量体成分100重量部に対して0.1〜30質量%であることが好ましい。0.1質量%未満であると、充分な架橋が進行せず硬度が発現しないおそれがあり、30質量%を超えると、過度に架橋が進行することで成膜することができないおそれがある。好ましくは、0.5〜20質量%であり、より好ましくは、1〜10質量%である。
なお、上記重合体中のカルボニル基の含有量は、1質量%以上であることが好ましい。1質量%未満であると、カルボニル基が有する架橋性能が不充分となるおそれがある。
上記第1及び第2の形態における(メタ)アクリル系エマルション(A)は、(メタ)アクリル系単量体を含む単量体成分を乳化重合して得られるものであるが、乳化重合に用いられる乳化剤としては、アニオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤、カチオン性乳化剤、両性乳化剤、又は、高分子乳化剤を使用することができる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
上記アニオン性乳化剤としては、例えば、アンモニウムドデシルサルフェート、ナトリウムドデシルサルフェート等のアルキルサルフェート塩;アンモニウムドデシルスルフォネート、ナトリウムドデシルスルフォネート等のアルキルスルフォネート塩;アンモニウムドデシルベンゼンスルフォネート、ナトリウムドデシルナフタレンスルフォネート等のアルキルアリールスルフォネート塩;ポリオキシエチレンアルキルサルフェート塩;ポリオキシエチレンアルキルアリールサルフェート塩;ジアルキルスルホコハク酸塩;アリールスルホン酸ホルマリン縮合物;アンモニウムラウリレート、ナトリウムステアリレート等の脂肪酸塩;等が挙げられる。
上記ノニオン性乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル;ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールの縮合物;ソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;脂肪酸モノグリセライド;ポリアミド;エチレンオキサイドと脂肪族アミンの縮合生成物;等が挙げられる。
上記カチオン性乳化剤としては、例えば、ドデシルアンモニウムクロライド等のアルキルアンモニウム塩;等が挙げられる。
上記両性乳化剤としては、例えば、ベタインエステル型乳化剤;等が挙げられる。
上記高分子乳化剤としては、例えば、ポリアクリル酸ナトリウム等のポリ(メタ)アクリル酸塩;ポリビニルアルコール;ポリビニルピロリドン;ポリヒドロキシエチルアクリレート等のポリヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;またはこれらの重合体を構成する重合性単量体のうちの1種以上を共重合成分とする共重合体;等が挙げられる。
中でも、特に耐水性を重視する場合には、重合性基を有する乳化剤、いわゆる反応性乳化剤を使用するのが好ましく、(メタ)アクリルエマルション(A)が含む重合体の原料となる単量体成分が上述した好ましい単量体を含むものであり、更に、反応性乳化剤を使用することがより好ましい。
すなわち、(メタ)アクリルエマルション(A)が、オキサゾリン基含有単量体(a)、反応性基含有単量体(b)及び反応性乳化剤(c)を必須とする単量体成分を重合して得られる重合体(A1)や、カルボニル基含有単量体及び反応性乳化剤(c)を必須とする単量体成分を重合して得られる重合体(A2)を含むことは、本発明の好適な実施形態の1つである。
上記(メタ)アクリルエマルション(A)をオキサゾリン基含有単量体(a)、反応性基含有単量体(b)及び反応性乳化剤(c)を必須成分として得られる重合体(A1)や、カルボニル基含有単量体及び反応性乳化剤(c)を必須とする単量体成分を重合して得られる重合体(A2)を含むものとすることにより、これを乾燥硬化させた硬化物の耐候性、耐熱性(熱硬化温度)、耐ブロッキング(硬度)を向上させることができるのみならず、塗料用途において、耐温水白化性を大きく向上させることもできる。反応性乳化剤(c)を用いて製造された重合体は、乳化剤自身が重合体粒子に化学結合を行うため、塗膜化後の外的要因(水等との接触)による経時溶出が抑制され、非反応性乳化剤を用いた場合に比べ、塗膜の耐水性が向上することになる。更に、重合体(A1)を用いた場合には、オキサゾリン基含有単量体(a)と反応性基含有単量体(b)の架橋により塗膜内への水の侵入を抑制する効果が加わり、大幅な耐水性の向上が可能となる。
上記反応性乳化剤(c)とは、単量体中に不飽和二重結合を有する、その他の単量体と重合可能な界面活性剤を意味する。具体的には、分子中にビニル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基、プロペニル基等のラジカル重合性の二重結合を有し、非反応性乳化剤と同様に乳化、分散機能を持つ乳化剤である。重合安定性や塗膜性能の観点から、ポリオキシアルキレン鎖を分子構造中に持つものが特に好ましい。
上記反応性乳化剤(c)としては、例えば、ビス(ポリオキシアルキレン多環フェニルエーテル)メタクリレート化スルフォネート塩(例えば、日本乳化剤社製、アントックスMS−60等)、プロペニル−アルキルスルホコハク酸エステル塩、(メタ)アクリル酸ポリオキシアルキレンスルフォネート塩(例えば、三洋化成工業社製、エレミノールRS−30等)、(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレンホスフォネート塩ポリオキシアルキレンアルキルプロペニルフェニルエーテルスルフォネート塩(例えば、第一工業製薬社製、アクアロンHS−10等)、アリルオキシメチルアルキルオキシポリオキシアルキレンのスルフォネート塩(例えば、第一工業製薬社製、アクアロンKH−10等)やアリルオキシメチルノニルフェノキシエチルヒドロキシポリオキシアルキレンのスルフォネート塩(例えば、旭電化工業社製、アデカリアソープSE−10等)、アリルオキシメチルアルコキシエチルヒドロキシポリオキシアルキレン硫酸エステル塩(例えば、旭電化工業社製、アデカリアソープSR−10、SR−30等)、アリルオキシメチルアルコキシエチルヒドロキシポリオキシエチレン(例えば、旭電化工業社製、アデカリアソープER−20等)、ポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテル(例えば、第一工業製薬社製、アクアロンRN−20等)、アリルオキシメチルノニルフェノキシエチルヒドロキシポリオキシエチレン(例えば、旭電化工業社製、アデカリアソープNE−10等)等が挙げられる。特に環境面を重視する場合には、非ノニルフェニル型の乳化剤を用いるのが好ましい。なお、上記反応性乳化剤は1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
このような反応性乳化剤の例を以下に示す。
Figure 0005290951
上記(I)〜(VIII)の化学式において、R及びR〜Rは、アルキル基を表す。A及びA〜Aは、アルキレン基を表す。Mは、軽金属又はアンモニウムイオンを表す。m及びnは、整数である。なお、(III)のR〜Rは、アルキル基又は水素原子を表す。
上記反応性乳化剤(c)の配合割合は、特に限定はされないが、例えば、全単量体成分100重量部に対し、0.5〜10質量%とするのが好ましい。より好ましくは1.0〜5.0質量%、更に好ましくは2.0〜4.0質量%とするのがよい。反応性乳化剤の使用量が多すぎると、塗膜の耐水性を低下させるおそれがあり、一方、少なすぎると、重合安定性が低下しやすい。
上記反応性乳化剤以外の乳化剤を使用する場合の配合割合は、特に限定されないが、塗膜の耐水性及び重合安定性の双方を低下させない観点から、例えば、全単量体成分100重量部に対して、0.5〜10質量%とすることが好ましい。より好ましくは、1〜5質量%であり、更に好ましくは、2〜4質量%である。
上記(メタ)アクリルエマルション(A)が含む重合体を合成する際に、シランカップリング剤を使用することも好ましい。
すなわち、(メタ)アクリルエマルション(A)が、オキサゾリン基含有単量体(a)、反応性基含有単量体(b)及びシランカップリング剤(d)を必須とする単量体成分を重合して得られる重合体(A3)や、カルボニル基含有単量体及びシランカップリング剤(d)を必須とする単量体成分を重合して得られる重合体(A4)を含むことは、本発明の好適な実施形態の1つである。
上記(メタ)アクリルエマルション(A)がオキサゾリン基含有単量体(a)、反応性基含有単量体(b)及びシランカップリング剤(d)を必須成分として得られる重合体(A3)や、カルボニル基含有単量体及びシランカップリング剤(d)を必須とする単量体成分を重合して得られる重合体(A4)を含むものであると、塗料用途において、耐温水白化性、耐ブロッキング性、耐候性、耐汚染性を大きく向上させることができる。
上記シランカップリング剤(d)としては、ビニル重合性シラン化合物、エポキシ基含有シラン化合物等が挙げられ、具体的にはメチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン等のアルコキシシラン類、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等のビニルシラン類、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の(メタ)アクリルシラン類、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシシラン類、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジエトキシシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノシラン類、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等のチオシラン類等が挙げられる。
上記シランカップリング剤(d)としては、また、下記一般式(2)
(R10)n−Si−(R11)4−n (2)
(式(2)中、R10は、ラジカル重合性を有する基であり、R11は、水酸基、アルキル基、エポキシ基、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシロキシ基、フェノキシ基、メルカプト基のうちから選択される1種以上を有する置換基であり、nは、1〜3の整数である。)で示されるSi含有単量体を含むことが好ましい。これによりアクリルポリマー鎖をシロキサン結合によって強固に架橋した構造を形成し、例えば、光酸化触媒反応によるポリマー劣化の抑制や、耐温水白化性、更に耐ブロッキング性を向上させることができる。更に、オキサゾリン基含有単量体(a)と反応性基含有単量体(b)の架橋により、耐候性、耐水白化性、耐ブロッキング性、耐汚染性を大幅に向上させることができる。
上記一般式(2)において、R10で表されるラジカル重合性を有する基の具体例としては、例えば、(メタ)アクリロキシ基、ビニル基等が挙げられる。また、一般式(2)において、n又は4−nの数が2以上となる場合、複数となるR10、R11は、それぞれ、同一であっても良いし、異なっていてもよい。一般式(2)で示されるSi含有モノマーそのものの具体例としては、例えば、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリイソプロポキシシラン等が挙げられる。中でも、耐汚染性、耐温水白化性を考慮すると、(メタ)アクリルシラン類が好ましい。特に好ましくは、γ−メタクリロイルオキシエチルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシエチルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシエチルトリエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシランである。なお、Si含有単量体は1種のみを用いてもよいし、2種以上であってもよい。
上記Si含有モノマーの含有割合は、特に制限されないが、例えば、全単量体成分100重量部に対し、好ましくは0.1〜10質量%、より好ましくは0.3〜5質量%、最も好ましくは0.5〜3質量%であるのがよい。Si含有単量体の含有割合が、範囲より少ないと、耐温水白化性や耐水白化性等の耐水性が充分に向上しない傾向があり、一方、範囲よりも多いと、過度に架橋が進行することで、成膜することができないおそれがある。
上記シランカップリング剤(d)の配合割合は、特に限定はされないが、例えば、全単量体成分100重量部に対し、0.1〜10質量%とするのが好ましい。より好ましくは0.3〜5質量%、更に好ましくは0.5〜3質量%とするのがよい。
上記重合体(A3)や(A4)の重合工程としては、上述した重合体(A1)や(A2)の重合と同様に乳化重合により行うことが好ましいが、用いられる乳化剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、上述した反応性乳化剤(b)や、アニオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤、カチオン性乳化剤、両性乳化剤、高分子乳化剤等を使用することができる。これら乳化剤は1種類のみを用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
上記(メタ)アクリルエマルション(A)が含む重合体(A1)や(A3)は、2段階以上で段階的に重合させることにより製造されることが好ましい。これにより、得られるエマルションの物性制御が容易になる。具体的には硬化制御が可能となる。段階的重合工程としては、まずカルボキシル基含有単量体を含む重合性単量体(i)を重合し、ここにオキサゾリン基含有単量体を含む重合性単量体(ii)を更に加えて重合を行うものであることが好ましい。また(ii)の重合を行う前の反応系内のpHを6以上とすることで、カルボキシル基とオキサゾリン基の架橋反応を抑制(ブロック)し、硬化制御を行うことが可能となる。これにより、長期保存安定性がよく、塗膜形成時には反応系内のpHを6以上とするために使用した中和剤が揮発すると共に粒子内での架橋反応が進行する、いわゆる自己架橋性エマルションを得ることができる。
このような、塗料用水性樹脂組成物が含む(メタ)アクリルエマルション(A)の製造方法であって、カルボキシル基含有単量体を含む重合性単量体(i)を重合する工程と、オキサゾリン基含有単量体を含む重合性単量体(ii)を重合する工程との、少なくとも2つの工程を含み、該重合性単量体(ii)を重合する工程前の反応系内のpHが6以上である(メタ)アクリルエマルション(A)の製造方法もまた、本発明の1つである。
本発明の(メタ)アクリルエマルション(A)の製造方法は、重合性単量体(i)を重合する工程と、重合性単量体(ii)を重合する工程との、少なくとも2つの工程を含むものである限り、その他の工程を含むものであってもよい。なお、単量体(i)が含むカルボキシル基含有単量体としては、上述した(メタ)アクリル酸系単量体が好ましい。
上記反応系内のpHを6以上とする際に用いることのできる中和剤としては、例えば、アンモニア、トリエチルアミン等の有機アミン類、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸カルシウム等のアルカリ金属やアルカリ土類金属の炭酸化物等のアルカリ性物質を用いることができる。これらの中でもアンモニア、トリエチルアミン等の有機アミン類といった揮発性をもつアルカリ性物質が好ましく、アンモニアが特に好ましい。
上記重合性単量体(ii)を重合する工程前の反応系のpHは、6以上10未満の範囲に設定することが好ましい。より好ましくは、7以上9.5未満で、更に好ましくは8以上9未満である。pHが6未満であると(i)から得られる重合体と(ii)から得られる重合体との反応制御ができず、得られたエマルションの造膜性が低下する。また、10以上であると塗膜形成時の架橋の進行が遅延し、硬度が発現し難いおそれがある。
上記(メタ)アクリルエマルション(A)は、乳化重合により得られるものであるが、ここで行われる乳化重合としては特に限定されず、例えば、多段階フィード法、パワーフィード法等の通常よく知られている方法を用いて行うことができる。具体的には、水、又は、必要に応じてアルコール等のような有機溶剤を含む水性媒体中に乳化剤を溶解させ、加熱撹拌下、原料となる単量体成分及び重合開始剤を滴下する方法や、乳化剤と水とを用いて予め乳化した原料となる単量体成分を同様に滴下する方法等を挙げることができる。(メタ)アクリルエマルション(A)の合成時には上記反応性乳化剤を使用することが好適である。
上記乳化重合工程で用いることのできる水性媒体としては、通常、水が使用されるが、必要に応じて、例えばメタノールのような低級アルコール等の親水性溶媒を併用することもできる。なお、水性媒体の使用量は、得ようとするエマルションの所望の樹脂固形分を考慮して適宜設定すればよい。
上記乳化重合工程で用いることのできる重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば、2,2−アゾビス(2―ジアミノプロパン)ハイドロクロライド等のアゾ化合物;過硫酸カリウム等の過硫酸塩;過酸化水素等の過酸化物;等が挙げられる。具体的には、例えば、アゾ系の油性化合物(例えば、アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等)、水性化合物(例えば、アニオン系の4,4−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、カチオン系の2,2−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン));レドックス系の油性過酸化物(例えば、ベンゾイルパーオキサイド、パラクロロベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、t−ブチルパーベンゾエート等)、水性過酸化物(例えば、過硫酸カリ及び過酸化アンモニウム等);等を挙げることができる。なお、重合開始剤は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記重合開始剤の使用量は、特に限定されないが、好ましくは、全単量体成分100重量部に対し、0.05〜1質量%とするのがよく、より好ましくは0.1〜0.5質量%とするのがよい。重合開始剤の使用量が0.05質量%未満であると、重合速度が遅くなって未反応の重合性単量体が残存しやすくなり、一方、1質量%を超えると、形成される塗膜の耐水性が低下する傾向がある。
上記添加方法は、特に制限はなく、例えば、一括仕込み、分割仕込み、連続滴下等のいずれの方法であってもよい。さらに、重合の完了を速めるためには、最終段の重合性単量体成分の滴下終了前後に、重合開始剤の一部を添加してもよい。
上記乳化重合工程においてはまた、重合開始剤の分解を促進する目的で、例えば、亜硫酸水素ナトリウム等の還元剤や硫酸第一鉄等の遷移金属塩を添加してもよい。乳化重合工程においては、さらに必要に応じて、pH緩衝剤、キレート剤、連鎖移動剤、成膜助剤等の公知の添加剤を添加してもよい。連鎖移動剤としては、t−ドデシルメルカプタン等のチオール基を有する化合物等が挙げられる。上記連鎖移動剤や調節剤の使用量は、特に制限されないが、例えば、全単量体成分100重量部に対し、0.01〜5質量%、より好ましくは0.1〜3質量%とするのがよい。
上記重合工程における重合温度としては、特に限定はなく、好ましくは0〜100℃、より好ましくは40〜95℃とするのがよい。重合温度は一定であってもよいし、重合途中でもしくは各段階によって変化させてもよい。重合時間についても、特に限定はなく、反応の進行状況に応じて適宜設定すればよいが、例えば、重合開始から終了まで2〜8時間の範囲とするのが好ましい。重合時の雰囲気については、重合開始剤の効率を高めるため窒素等の不活性ガス雰囲気下で行うのが一般的である。
本発明における水溶性樹脂(B)としては、(メタ)アクリルエマルション(A)と架橋構造を形成し得るものであればよいが、上述のように、(メタ)アクリルエマルション(A)が含む重合体が有する官能基(α)と架橋構造を形成し得る官能基(β)を有する重合体を含むものであることが好ましい。
この場合、水溶性樹脂(B)における官能基(β)を有する重合体の含有割合は、水溶性樹脂(B)100重量部に対して、50質量%以上であることが好ましい。より好ましくは、70質量%以上である。更に好ましくは、90質量%以上であり、最も好ましくは、100質量%、すなわち、水溶性樹脂(B)が官能基(β)を有する重合体のみから構成されていることである。含有割合が50質量%未満であると、本発明の塗料用水性樹脂組成物から得られる塗膜が充分な耐候性、耐汚染性等を発揮しないおそれがある。
なお、本発明において、水溶性樹脂(B)には、アルカリ可溶性樹脂が含まれる。
上記官能基(β)を有する重合体は、単量体成分100重量部に対して官能基(β)を有する単量体を1〜50質量%含む単量体成分から得られるものであることが好ましい。より好ましくは、官能基(β)を有する単量体を10〜40質量%含む単量体成分から得られるものである。
上記官能基(β)を有する重合体は、上述のように、N−ビニル環状ラクタム単位を有する重合体であることが好ましい。N−ビニル環状ラクタム単位を有する重合体は、少なくともN−ビニル環状ラクタム単位を有するものであればよく、例えば、N−ビニルピロリドンやN−ビニルカプロラクタムを重合又は共重合させて得られるホモポリマー又はコポリマー等を用いることができる。
なお、水溶性樹脂(B)は、N−ビニル環状ラクタム単位を有する重合体を含むものである限り、その他の成分を含んでいてもよい。
上記コポリマーとしては、N−ビニルピロリドンやN−ビニルカプロラクタムを、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸やそのエステル、マレイン酸やそのエステル、アクリロニトリル、スチレン、アルキルビニルエーテル、N−ビニルイミダゾール、ビニルピリジン、アリルアルコール、オレフィン類等と共重合させて得られるコポリマーが挙げられる。これらの中でも、N−ビニルピロリドンやN−ビニルカプロラクタムを酢酸ビニルと共重合させて得られるコポリマーが好ましい。これらのコポリマーは、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
なお、(メタ)アクリル酸、マレイン酸のエステルとしては、炭素数1〜20のアルキルエステル、ジメチルアミノアルキルエステル及びその四級塩、ヒドロキシアルキルエステル等が挙げられる。
上記N−ビニル環状ラクタム単位を有する重合体は、N−ビニルピロリドンやN−ビニルカプロラクタム等由来のN−ビニル環状ラクタム単位を20質量%以上有するものであることが好ましい。より好ましくは、40質量%以上有するものである。N−ビニル環状ラクタム単位が20質量%以下であると、塗料組成物から得られる塗膜の親水性が不充分となり、塗膜が充分な耐汚染性を有するものではなくなるおそれがある。
上記官能基(β)を有する重合体の分子量は、1000〜300万であることが好ましい。より好ましくは、3000〜100万であり、更に好ましくは、5000〜50万である。また、特に好ましくは、7000〜30万であり、最も好ましくは、1万〜10万である。
上記官能基(β)を有する重合体の形態は特に制限されず、重合体の主鎖に架橋構造を形成し得る官能基(β)を有する構成単位がランダム、ブロック等のいずれの形態で組み込まれたのものであってもよく、官能基(β)を有する構成単位が重合体の主鎖にグラフト重合した形態のものであってもよいが、グラフト重合した形態のものが好ましい。グラフト重合した形態のものであると、架橋効率がよく、少ない使用量でも効果を発揮することができる。
上記官能基(β)を有する重合体の合成は、溶液重合、乳化重合、懸濁重合、沈殿重合等の重合方法によって行うことができるが、溶液重合が好ましく、水を溶媒とする水溶液重合がより好ましい。
また、重合反応の反応温度は、特に限定されないが、0〜200℃が好ましい。より好ましくは、50〜150℃である。
反応圧力は、特に限定されるものではなく、常圧下、減圧下、加圧下のいずれで反応させてもよいが、常圧下又は減圧下で溶媒を沸騰させながら反応させると、効果的に除熱ができ、反応制御が容易となるので好ましい。
重合反応を行う雰囲気は、反応が進行する限り特に制限されるものではないが、窒素ガス、アルゴンガス、二酸化炭素ガス等の不活性ガスの雰囲気下で行うことが好ましい。
上記官能基(β)を有する重合体の合成に用いることができる溶媒としては、重合体の原料となる単量体成分が溶解するものであれば特に限定されないが、例えば、水;アルコール類;エーテル類;ケトン類;エステル類;アミド類;スルホキシド類;炭化水素類;等が挙げられる。これらの中でも、水、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、t−ブチルアルコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、トルエン、酢酸エチル、およびこれらの混合溶媒が好ましく、水が特に好ましい。また、これら溶媒中には、カルボン酸の中和やpH制御の目的で有機アミン類やアンモニア等が添加されていてもよい。また、水を含む溶媒においては、アルカリ金属水酸化物を使用することもできる。
以下に、架橋構造を形成し得る官能基として、カルボキシル基を有するN−ビニル環状ラクタム単位を有するグラフト重合体を合成する場合について述べる。なお、カルボニル基を有するN−ビニル環状ラクタム単位を有するグラフト重合体を合成する場合にも、同様の方法を用いることができる。その場合、カルボキシル基含有不飽和単量体に代えて、カルボニル基含有不飽和単量体を同様の割合で用いて合成することができる。カルボニル基含有不飽和単量体としては、上述した(メタ)アクリルエマルション(A2)や(A4)の合成に用いるものと同様のものを用いることができる。
基幹ポリマーであるN−ビニル環状ラクタム単位を有する重合体は、N−ビニルピロリドンやN−ビニルカプロラクタム等由来のN−ビニル環状ラクタム単位を20質量%以上有するポリマーであることが、グラフト効率を向上させる点から好ましい。基幹ポリマー中のN−ビニル環状ラクタム単位が20質量%未満であると、グラフト鎖として導入されていないカルボキシル基含有不飽和単量体を含むポリマーが副生しやすくなる。
上記カルボキシル基を有するN−ビニル環状ラクタム単位を有するグラフト重合体の合成において、グラフト鎖成分として用いられるカルボキシル基含有不飽和単量体は、特に制限されるものではないが、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、およびこれらの塩等が挙げられる。これらの中でも、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、およびこれらの塩が好ましい。また、塩の場合には、ナトリウムやカリウム等のアルカリ金属塩、アンモニウム塩、アルキルアミン類やエタノールアミン類等の有機アミン塩が挙げられるが、アルカリ金属塩及びアンモニウム塩が好ましい。これらカルボキシル基含有不飽和単量体は、1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、グラフト重合を行うに際しては、グラフト鎖成分として、上記カルボキシル基含有不飽和単量体と共重合可能な他のモノマーを併用して重合することもできる。他のモノマーとしては、特に制限はないが、例えば、(メタ)アクリルアミド、アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルイミダゾール、ビニルピリジン、アルキルビニルエーテル、(メタ)アクリル酸エステル、マレイン酸エステル、アクリロニトリル、スチレン、酢酸ビニル、アリルアルコール、オレフィン類等が挙げられる。なお、(メタ)アクリル酸エステルとしては、炭素数1〜20のアルキルエステル、ジメチルアミノアルキルエステル、及び、その四級塩、ヒドロキシアルキルエステル等が挙げられる。これら他のモノマーは、1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
グラフト重合を行う際にグラフト鎖成分として上記他のモノマーを併用する場合、カルボキシル基含有不飽和単量体と他のモノマーとの割合は、特に制限されるものではないが、カルボキシル基含有不飽和単量体の割合が、グラフト鎖成分の全重量に対して25質量%以上となるようにするのが好ましい。より好ましくは40質量%以上であり、更に好ましくは60質量%以上であり、最も好ましくは100質量%である。
カルボキシル基含有不飽和単量体の割合が、グラフト鎖成分の全重量に対して25質量%未満であると、得られるグラフトポリマーにおいてカルボキシル基の性質を十分に発現されないおそれがある。
上記カルボキシル基を有するN−ビニル環状ラクタム単位を有するグラフト重合体は、カルボキシル基含有不飽和単量体が基幹ポリマー重量に対して2質量%以上の割合でグラフト重合されているものであることが好ましい。より好ましくは2〜200質量%であり、更に好ましくは2〜100質量%である。カルボキシル基含有不飽和単量体が基幹ポリマー重量に対して2質量%未満であると、カルボキシル基に基づく性能が現れないおそれがあり、200質量%を越えると、基幹ポリマーであるN−ビニル環状ラクタム単位の性質が発揮されないおそれがある。
上記カルボキシル基を有するN−ビニル環状ラクタム単位を有するグラフト重合体は、グラフト鎖として導入されていないカルボキシル基含有不飽和単量体を含む不純物ポリマーの含有量がグラフト鎖重量に対して40質量%以下であることが好ましい。該不純物ポリマーの含有量が40質量%を越えると、各種基材への相溶性が損なわれたり、カルボキシル基の反応性を利用する用途において、目的とするグラフトポリマー中のカルボキシル基の反応が妨げられるおそれがある。
上記グラフト重合を行う際、基幹ポリマーとカルボキシル基含有不飽和単量体との使用割合は、特に限定されるものではないが、基幹ポリマーに対してカルボキシル基含有不飽和単量体の使用量を2〜200質量%とすることが好ましい。なお、基幹ポリマーは、初期一括仕込みとしてもよく、逐次添加してもよいが、反応時間の短縮や生産性等を考慮すると初期一括仕込みとするほうが好ましい。カルボキシル基含有不飽和単量体の添加方法は、特に制限されるものではなく、一括仕込みとしてもよく、逐次添加してもよいが、グラフト効率および反応制御の点を考慮すると、逐次添加する方が好ましい。また、カルボキシル基含有不飽和単量体は溶媒希釈して添加してもよい。
上記グラフト重合はラジカル開始剤の存在下で行われることが好ましい。ラジカル開始剤としては、加熱等によってラジカルが発生するものであれば、特に限定されないが、グラフト効率の点からは過酸化物系開始剤がより好ましい。過酸化物系開始剤としては、具体的には、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩;過酸化水素;メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類;t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類;ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)p−ジイソプロピルヘキシン等のジアルキルパーオキサイド類;t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート等のパーオキシエステル類;n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレエート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン等のパーオキシケタール類;ジベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類;等が挙げられる。これら開始剤は、1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、上記過酸化物系開始剤と還元剤とを併用するレドックス系であってもよい。還元剤としては、具体的には、鉄(II)塩、亜ジチオン酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、アスコルビン酸等が挙げられる。また、アゾ系開始剤を用いることもできるが、過酸化物系開始剤と比べるとはグラフト効率の点からやや性能が劣るため、過酸化物系開始剤と併用して用いることが好ましい。
上記ラジカル開始剤の使用量については、特に限定されないが、グラフト鎖を構成するモノマー成分に対して0.1〜100モル%とすることが好ましい。より好ましくは、1〜20モル%である。なお、グラフト重合を行う際の前記開始剤の添加方法は、特に限定されるものではなく、例えば、初期一括仕込みする方法や、逐次添加する方法が挙げられるが、残留モノマーの低減を考慮すると、逐次添加する方が好ましい。
なお、グラフト重合反応の方法は、特に制限されるものではなく、溶液重合、乳化重合、懸濁重合、沈殿重合等の重合方法によって行うことができるが、これらの中でも溶液重合が好ましい。
上記グラフト重合における反応温度、反応圧力、使用する溶媒等は、上述したN−ビニル環状ラクタム単位を有する重合体の場合と同様である。
本発明において、上記化合物(C)としては、(メタ)アクリルエマルション(A)及び水溶性樹脂(B)との間に架橋構造を形成することができる2つ以上の官能基を有するものであればよく、官能基としては、上述した架橋構造を形成し得る官能基のいずれかであればよいが、上述したように、同じ官能基を2つ以上有する化合物であることが好ましい。より好ましくは、カルボキシル基、ヒドラジノ基のいずれかを2つ以上有する化合物であり、更に好ましくは、ヒドラジノ基を2つ以上有する化合物である。
上記化合物(C)としては、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、こはく酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジド等の炭素原子を2〜10個有するジカルボン酸ジヒドラジドや、エチレン−1,2−ジヒドラジン、プロピレン−1,3−ジヒドラジン、ブチレン−1,4−ジヒドラジン等の2〜4個の炭素原子を有する脂肪族水溶性ジヒドラジン等が挙げられる。これらの化合物は、1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、こはく酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジド等の炭素原子を4〜6個有するジカルボン酸ジヒドラジドが好ましい。より好ましくは、アジピン酸ジヒドラジドである。
本発明の塗料用水性樹脂組成物は、上述の構成よりなり、良好な塗膜性能を損なうことなく、耐候性、耐温水白化性、耐凍害性、及び、耐ブロッキング性等が良好であり、塗布直後から、長期に渡って特に屋外での耐汚染性に優れた塗膜を形成することができる塗料用水性樹脂組成物である。
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
なお、以下の製造例において、各種物性等は以下のように評価した。
<Tg>
各段で用いた単量体組成から、上述したFoxの式を用いて算出した。なお、全ての段で用いた単量体組成から算出したTgを「トータルTg」として記載した。
<不揮発分(NV)>
得られた塗料用水性樹脂組成物約1gを秤量し、熱風乾燥機にて110℃1時間乾燥させ、乾燥残量を、不揮発分として、乾燥前質量に対する比率を質量%で算出し表示した。
<pH>
pHメーター(堀場製作所社製「F−23」)により25℃での値を測定した。
<粘度>
BM型粘度計(東京計器社製)により30min−1、25℃にて測定した。粘度測定時には、粘度に応じてローターを選定した。
<平均粒子径>
動的光散乱法による粒度分布測定器(Particle Sizing Systems社製「NICOMP Model 380」)を用い、体積平均粒子径を測定した。
<最低造膜温度(MFT)>
熱勾配試験機の上に置いたガラス板上に厚さ0.2mmのアプリケーターで得られた水性樹脂分散体を塗工、乾燥し、その塗膜にクラックの生じた温度を最低成膜温度(MFT)(℃)とした。
<乳化重合によって得られる(メタ)アクリルエマルション(A)の製造例>
製造例A1
滴下ロート、攪拌機、窒素導入管、温度計、及び、還流冷却管を備えたフラスコに、脱イオン水432部を仕込んだ。滴下ロートに、脱イオン水145部、乳化剤(例:アクアロン−HS−10/第一工業製薬社製)の25%水溶液60部、2−エチルヘキシルアクリレート110部、メチルメタクリレート380部、アクリル酸10部からなる滴下用プレエマルションを調整し、そのうち全重合性単量体成分の総量の10%にあたる70.5部をフラスコに添加し、ゆるやかに窒素ガスを吹き込みながら80℃まで昇温し、過硫酸アンモニウムの5%水溶液30部を添加して重合を開始した。その後、滴下用プレエマルションの残部を240分にわたり均一に滴下した。滴下終了後、同温度で180分間維持し、続けて、25%アンモニア水7部を添加し、系のpHが6以上になったことを確認して重合を終了し、水性樹脂分散体を得た。
表1に、使用した各単量体の量を、使用した全単量体成分合計量100重量部に対する比率(重量部)で示した。得られた(メタ)アクリルエマルション(A1)について、各種物性を評価した。評価結果を表1に示す。
なお、以下において、(メタ)アクリルエマルション(A1)を水性樹脂分散体(A1)とも表記する。以下、同様に表記する。
製造例A2
下記表1に示す乳化剤及び単量体成分を用いて重合した他は、製造例A1と同様にして(メタ)アクリルエマルション(A2)を得た。これについて、製造例A1と同様に各種物性を評価した。評価結果を表1に示す。
製造例A3
滴下ロート、攪拌機、窒素導入管、温度計、及び、還流冷却管を備えたフラスコに、脱イオン水432部を仕込んだ。滴下ロートに、脱イオン水72.5部、乳化剤(例:アクアロンHS−10/第一工業製薬社製)の25%水溶液30部、2−エチルヘキシルアクリレート55部、メチルメタクリレート185部、アクリル酸10部からなる一段目のプレエマルションを調整し、そのうち全重合性単量体成分の総量の10%にあたる70.5部をフラスコに添加し、ゆるやかに窒素ガスを吹き込みながら80℃まで昇温し、過硫酸アンモニウムの5%水溶液30部を添加して重合を開始した。その後、1段目のプレエマルションの残部を120分にわたり均一に滴下した。滴下終了後、同温度で60分間維持し、一段目の重合を終了した。次に25%アンモニア水7部を添加し、系のpHが6以上になったことを確認し、引き続いて、脱イオン水72.5部、乳化剤(例:アクアロンHS−10/第一工業製薬社製)の25%水溶液30部、2−エチルへキシルアクリレート55部、メチルメタクリレート170部、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン25部からなる2段目のプレエマルションを120分間にわたって均一に滴下した。滴下終了後、同温度で180分間維持して重合を終了し、水性樹脂分散体を得た。
表1に、一段目、二段目にそれぞれ使用した各単量体の量を、両段で使用した全単量体成分合計量100重量部に対する比率(重量部)で示した。
これについて、製造例A1と同様に各種物性を評価した。評価結果を表1に示す。
製造例A4〜A13及びA19
下記表1に示す乳化剤及び単量体成分を用いて重合(製造例A4については3段重合)した他は、製造例A1と同様に操作してアクリルエマルション(A2)〜(A13)及び(A19)を得た。
これらについて、製造例A1と同様に各種物性を評価した。評価結果を表1に示す。
製造例A14
2段目滴下前の25%アンモニア水の添加を無しにした以外は、製造例A3と同様の組成、操作で重合し、水性樹脂分散体(A14)を得た。
製造例A15
2段目滴下前に25%アンモニア水2.0部を添加した以外は、製造例A3と同様の組成、操作で重合し、水性樹脂分散体(A15)を得た。
製造例A16
2段目滴下前に25%アンモニア水3.5部を添加した以外は、製造例A3と同様の組成、操作で重合し、水性樹脂分散体(A16)を得た。
製造例A17
2段目滴下前に25%アンモニア水6部を添加した以外は、製造例A3と同様の組成、操作で重合し、水性樹脂分散体(A17)を得た。
製造例A18
2段目滴下前に25%アンモニア水11部を添加した以外は、製造例A3と同様の組成、操作で重合し、水性樹脂分散体(A18)を得た。
製造例A20
表1に示す乳化剤及び単量体成分を用いて重合した他は、製造例A3と同様にして水性樹脂分散体(A20)を得た。
製造例A21
市販品の水溶性アクリル樹脂(商品名:JDX−6500(NV30%)/ジョンソンポリマー社製)を用い、A21とした。
Figure 0005290951
表1中の記載は、以下のようである。
<乳化剤>
アクアロンHS−10:第一工業製薬社製
アデカリアソープSR−10:旭電化工業社製
ハイテノールN−08:第一工業製薬社製
なお、表1で示す乳化剤の数値は、各段(各段での使用量は全て同量)で用いた乳化剤の合計量を示す。すなわち、例えば、「3(部)」と記載していた場合、2段重合の場合は、1段目及び2段目の重合にそれぞれ1.5部ずつ使用したことを示し、また3段重合の場合は、1段目〜3段目の重合にそれぞれ1部ずつ使用したことを示す。
<単量体成分>
2EHA:2−エチルヘキシルアクリレート(Tg:−70℃)
MMA:メチルメタクリレート(Tg:105℃)
St:スチレン(Tg:100℃)
CHMA:シクロヘキシルメタクリレート(Tg:83℃)
t−BMA:ターシャリーブチルメタクリレート(Tg:107℃)
AA:アクリル酸(Tg:106℃)
GMA:グリシジルメタクリレート(Tg:40℃)
IPO:2−イソプロペニル−2−オキサゾリン(Tg:100℃)
RUVA:2−[2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロイルオキシエチルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール(Tg:100℃)
HALS:4−メタクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン(Tg:130℃)
TMSMA:γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(Tg:70℃)
DAAM:ジアセトンアクリルアミド(Tg:65℃)
なお、上記単量体の化合物名の後に括弧書きにて示したTgは、当該単量体からなるホモポリマーのTg(℃)である。
<N−ビニル環状ラクタム単位を有する重合体を含む水溶性樹脂(B)の製造例>
製造例B1
冷却管、窒素導入ライン、温度計を設置した重合容器に、脱イオン水206部と、N−ビニルピロリドン90部を加え、窒素を導入して窒素雰囲気とした。室温下で攪拌しながら、0.1%の硫酸銅水溶液0.045部、25%アンモニア水溶液0.5部、30%過酸化水素水溶液2.1部を加え、重合を開始した。内温が重合熱によって上昇した後、80℃で1.5時間加熱攪拌を続けた。次に、30%過酸化水素水溶液1.0部を加えた後、更に1時間加熱攪拌を続け、ポリビニルピロリドン(PVP)ポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液はNV30.0%、K値は29.8であった。
なお、ポリビニルピロリドンポリマーのK値は、ポリビニルピロリドンポリマーを水に1質量%の濃度で溶解させた溶液の粘度を25℃において毛細管粘度計によって測定し、この測定値を用いて次のフィケンチャー式から計算した。K値が高いほど、分子量は高いと言える。
(logηrel)/C=〔(75Ko)/(1+1.5KoC)〕+KoK=1000Ko
(式中、Cは、溶液100ml中のポリビニルピロリドンのg数を表す。ηrelは、溶媒に対する溶液の粘度を表す。)
製造例B2
冷却管、窒素導入ライン、温度計を設置した重合容器に、脱イオン水39.1部と、PVPポリマー溶液(B1)400部を加え、窒素を導入して窒素雰囲気とした。室温下で攪拌しながら、85℃まで昇温し、温度が一定になったところで、80%アクリル酸水溶液37.5部、脱イオン水75.2部、25%アンモニア水溶液34.5部を混合した水溶液を90分かけて投入した。平行して過硫酸アンモニウム3.7部を脱イオン水69.5部に溶解させた開始剤水溶液を同様に90分かけて投入した。投入終了後、同温度で1時間加熱攪拌を続け、反応を終了した。得られたポリマー溶液はNV29.6%であった。
製造例B3
冷却管、窒素導入ライン、温度計を設置した重合容器に、脱イオン水39.1部と、PVPポリマー溶液(B1)305部を加え、窒素を導入して窒素雰囲気とした。室温下で攪拌しながら、85℃まで昇温し、温度が一定になったところで、80%アクリル酸水溶液73.1部、脱イオン水75.2部、25%アンモニア水溶液34.5部を混合した水溶液を90分かけて投入した。平行して過硫酸アンモニウム3.7部を脱イオン水69.5部に溶解させた開始剤水溶液を同様に90分かけて投入した。投入終了後、同温度で1時間加熱攪拌を続け、反応を終了した。得られたポリマー溶液はNV29.3%であった。
製造例B4
冷却管、窒素導入ライン、温度計を設置した重合容器に、脱イオン水39.1部と、PVPポリマー溶液(B1)400部を加え、窒素を導入して窒素雰囲気とした。室温下で攪拌しながら、85℃まで昇温し、温度が一定になったところで、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン30.0部、脱イオン水82.7部、25%アンモニア水溶液34.5部を混合した水溶液を90分かけて投入した。平行して過硫酸アンモニウム3.7部を脱イオン水69.5部に溶解させた開始剤水溶液を同様に90分かけて投入した。投入終了後、同温度で1時間加熱攪拌を続け、反応を終了した。得られたポリマー溶液はNV29.4%であった。
製造例B5
下記表2に示す単量体成分を用いた以外は、製造例B4と同様に操作してポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液はNV29.8%であった。
製造例B6
滴下ロート、攪拌機、窒素導入管、温度計及び還流冷却管を備えたフラスコに、脱イオン水1391部を仕込んだ。滴下ロートに、脱イオン水204部、乳化剤(「ハイテノールN−08/第一工業製薬社製」)の25%水溶液84部、エチルアクリレート385部、メタクリル酸315部からなるプレエマルションを調整し、そのうち全重合性単量体成分の総量の10%にあたる99部をフラスコに添加し、ゆるやかに窒素ガスを吹き込みながら75℃まで昇温し、過硫酸アンモニウムの5%水溶液29.4部添加し重合を開始した。その後、1段目のプレエマルションの残部を240分にわたり均一に滴下した。滴下終了後、同温度で180分間維持し、重合を終了した。
得られた反応液を室温まで冷却後、300メッシュの金網でろ過して水性樹脂(B7)を得た。得られたポリマー溶液は、NV30.3%であった。
製造例B7
水溶性アクリル樹脂(ジョンソンポリマー社、商品名;JDX−C3000)に脱イオン水を加え、アンモニアでpH8に調整し、80℃1時間攪拌した後、室温まで冷却後、300メッシュの金網でろ過して、不揮発分30%の水性樹脂(B8)を得た。ポリマー溶液は、NV29.5%であった。
製造例B8
市販品のコロイダルシリカ(日産化学社製、商品名:スノーテックス30、SiO含有量30%)を用い、水溶性樹脂(B5)とした。ポリマー溶液は、NV30.0%であった。
上記製造例B1〜B8について、表2に示す。
Figure 0005290951
表2中の記載は、以下のようである。
PVP:N−ビニルピロリドンを重合させて得られるホモポリマーであることを表す。
VP−AA:ポリビニルピロリドンにアクリル酸をグラフト重合させたものであることを表す。
VP−OX:ポリビニルピロリドンに2−イソプロペニル−2−オキサゾリンをグラフト重合させたものであることを表す。
VP−DM:ポリビニルピロリドンにジアセトンアクリルアミドをグラフト重合させたものであることを表す。
EA−MA:エチルアクリレートとメタクリル酸との共重合であることを表す。
その他の記載は表1と同様である。
参考例1
製造例A1で得た(メタ)アクリルエマルション(A1)に、製造例B2で得た水溶性樹脂(B1)を配合固形比が(A1):(B1)=95:5となるように配合し、塗料用水性樹脂組成物1を調整した。得られた塗料用水性樹脂組成物について、下記試験方法に従って物性を評価した。結果を表3に示す。
実施例25、27、参考例2〜4、26及び比較例1〜9
下記表3、4及び5に示されるように水性樹脂分散体(A1)〜(A21)及び水溶性樹脂(B1)〜(B8)を用いた以外は、参考例1と同様の操作を行って、記載の配合比にて塗料用水性樹脂組成物を調製した。得られた塗料用水性樹脂組成物のそれぞれについて、下記試験方法に従って物性を評価した。結果を表3、4及び5に示す。
実施例28
製造例A19で得た(メタ)アクリルエマルション(A19)に、製造例B5で得た水溶性樹脂(B5)を配合固形比が(A19):(B5)=95:5となるように配合し、得られた塗料用水性樹脂組成物100部に対して、20%アジピン酸ジヒドラジド水溶液(C1)10部を配合して、塗料用水性樹脂組成物28を調製した。下記試験方法に従って物性を評価した。結果を表4に示す。
実施例29及び30
下記表4に示されるように水性樹脂分散体(A10)及び水溶性樹脂(B6)、(B7)を用いた以外は、実施例27と同様の操作を行って、記載の配合比にて塗料用水性樹脂組成物を調製した。得られた塗料用水性樹脂組成物のそれぞれについて、下記試験方法に従って物性を評価した。結果を表4に示す。
Figure 0005290951
Figure 0005290951
Figure 0005290951
なお、上記表3〜5において、下記の方法で評価を行った。
<物性試験方法>
1、配合
(1)クリヤー塗料配合(塗料配合1)
得られた塗料用水性樹脂組成物をホモディスパー1500min−1下で成膜助剤として2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート(CS−12:チッソ社製)、及び、ブチルセロソルブの1/1混合溶液を該樹脂組成物のMFTが0〜5℃になるように添加し、希釈水、消泡剤(SNデフォーマー777(シリコン系消泡剤:ノプコ社製)を添加してNV30%に設定し、増粘剤としてアクリセットWR−503A(アルカリ可溶型増粘剤:日本触媒社製)を、クレーブス単位粘度計(VISCOMETER MODEL:KU−1、BROOK FIELD社製)により、25℃にて65±1KUとなるよう添加・調整し、同回転数にて30分間攪拌しクリヤー塗料を得た。そして1日以上経過後、下記2〜6の各試験に供した。
(2)艶消しクリヤー塗料配合1(塗料配合2)
得られた塗料用水性樹脂組成物をホモディスパー1500min−1下で成膜助剤として2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート(CS−12:チッソ社製)、及び、ブチルセロソルブの1/1混合溶液を該樹脂組成物のMFTが0〜5℃になるように添加し、希釈水、消泡剤(SNデフォーマー777(シリコン系消泡剤:ノプコ社製)を添加してNV30%に設定し、艶消し剤としてエポスターMA1010(日本触媒社製)を該樹脂組成物100部に対し、8.8部添加し、増粘剤としてアクリセットWR−503A(アルカリ可溶型増粘剤:日本触媒社製)を、クレーブス単位粘度計(VISCOMETER MODEL:KU−1、BROOK FIELD社製)により25℃にて65±1KUとなるよう添加・調整し、同回転数にて30分間攪拌しクリヤー塗料を得た。そして1日以上経過後、下記2〜6の各試験に供した。
(3)艶消しクリヤー塗料配合2(塗料配合3)
得られた塗料用水性樹脂組成物をホモディスパー1500min−1下で成膜助剤として2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート(CS−12:チッソ社製)、及び、ブチルセロソルブの1/1混合溶液を該樹脂組成物のMFTが0〜5℃になるように添加し、希釈水、消泡剤(SNデフォーマー777(シリコン系消泡剤:ノプコ社製)を添加してNV30%に設定し、艶消し剤として、mizukasil P−50(水澤化学工業社製)を該樹脂組成物100部に対し4部添加し、増粘剤としてアクリセットWR−503A(アルカリ可溶型増粘剤:日本触媒社製)を、クレーブス単位粘度計(VISCOMETER MODEL:KU−1、BROOK FIELD社製)により25℃にて65±1KUとなるよう添加・調整し、同回転数にて30分間攪拌しクリヤー塗料を得た。そして1日以上経過後、下記2〜6の各試験に供した。
(4)エナメル塗料配合(塗料配合4)
得られた塗料用水性樹脂組成物をホモディスパー1500min−1下で成膜助剤として2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート(CS−12:チッソ社製)、及び、ブチルセロソルブの1/1混合溶液を該樹脂組成物のMFTが0〜5℃になるように添加し、希釈水、消泡剤(SNデフォーマー777(シリコン系消泡剤:ノプコ社製)を添加してNV30%に設定し、後述する白色ペーストを該樹脂組成物100部に対し45部添加し、黒色ペースト(ユニラント88、コンクブラック:横浜化成社製)5重量部を添加し、増粘剤としてアクリセットWR−503A(アルカリ可溶型増粘剤:日本触媒社製)を、クレーブス単位粘度計(VISCOMETER MODEL:KU−1、BROOK FIELD社製)により25℃にて65±1KUとなるよう添加・調整し、同回転数にて30分間攪拌しクリヤー塗料を得た。そして1日以上経過後、下記2〜6の各試験に供した。
2、耐温水白化性試験
上記1で得られた樹脂組成物を、JIS K6717(2006年)に準ずるメタクリル酸メチルを用いて押出成形により作製した黒アクリル板(75mm×150mm×3mm、日本テストパネル社製)に5milアプリケーターで塗装し、100℃の熱風乾燥機にて10分間乾燥して、試験板を作成し、23℃にて24時間養生した。養生後、該試験板のL値(L0)を色差計(日本電色工業社製、分光式色差計SE−2000)にて測定し、続けて60℃に調温した温水中に没水浸漬させ試験を開始した。同温度で240時間後、該試験板を温水から引き上げ、キムタオル(クレシア社製)で水分をふき取り、1分以内に上記色差計でL値(L1)を測定した。
ΔL=(L1)−(L0)として、L値の変化値を算出し、下記の基準に従って耐温水白化性を評価した。
−評価基準−
◎:ΔL=2.0未満
〇:ΔL=2.0以上、3.0未満
△:ΔL=3.0以上、4.0未満
×:ΔL=4.0以上、5.0未満
××:ΔL=5.0以上
3、耐侯性試験
JIS A5430(2004年)に準ずるスレート板(70mm×150mm×6mm、日本テストパネル社製)に、溶剤系シーラー(エスケー化研社製、商品名「EXシーラー」)を乾燥重量20g/m2になるようにエアスプレーにて塗装し、23℃にて24時間乾燥させた後、下記に示す配合で調整したベースコート用塗料(I)を5milアプリケーターにて塗装し、100℃の熱風乾燥機にて10分間乾燥させた。
(ベースコート用塗料(I))
(1)アクリルエマルション(アクリセットEX−41:日本触媒社製):300部
(2)白色ペースト(下記の調整ペースト):135部
・分散剤(デモールEP:花王社製):60部
(ディスコートN−14:第一工業製薬社製):50部
・湿潤剤(エマルゲンLS−106:花王社製):10部
・プロピレングリコール:60部
・脱イオン水:210部
・酸化チタン(CR−95:石原産業社製):1000重量部
・抑泡剤(ノプコ8034L:サンノプコ社製):10重量部
・ガラスビーズ(直径1mm):500重量部
上記をホモディスバー3000rpm撹拌下で配合。全て加えて60分間撹拌して調製。
(3)成膜助剤(ブチルセロソルブ):15重量部
(CS−12:チッソ社製):15重量部
(4)黒色ペースト(ユニラント88、コンクブラック:横浜化成社製):10重量部
(5)抑泡剤(ノプコ8034L:サンノプコ社製):1.5重量部
その後、上記1で得られた樹脂組成物を5milアプリケーターにて塗装し、100℃の熱風乾燥機にて10分間乾燥させ、試験板を作成し、23℃にて24時間養生した。
養生後の試験板の側面、背面をアルミテープでシールし、該試験板の色差(L0、a0、b0)を色差計(日本電色工業社製、分光式色差計SE−2000)にて測定し、下記の耐侯性試験条件にて1000h試験を行い、上記色差計で、該試験板の色差(L1、a1、b1)を測定し、下記式によりΔEを算出した。
Figure 0005290951
−試験条件−
試験機:メタルウェザー(KU−R4型:ダイプラウィンテス社製)
照射:60℃−50% 4時間(照射強度:80mW/cm2)
湿潤:35℃−98% 4時間
シャワー:湿潤前後各30秒
−評価基準−
◎:ΔE=2.0未満
〇:ΔE=2.0以上、3.0未満
△:ΔE=3.0以上、4.0未満
×:ΔE=4.0以上、5.0未満
××:ΔE=5.0以上
4、耐凍害性
耐候性試験と全く同様の条件で試験板を作製した。養生後の試験板の側面、背面を2液硬化型溶剤系樹脂でシールし、凍結融解試験機にて耐凍害性試験を行った。このとき、凍結融解条件は、気中凍結(−20℃で2時間)、水中融解(20℃で2時間)とし、4時間/1サイクルとして、30倍ルーペを用いて試験板にクラックが入るまでのサイクル数を測定し、下記の基準に従って評価した。
◎:400サイクルでクラックなし
○:300〜400サイクルでクラック発生
△:200〜300サイクルでクラック発生
×:100〜200サイクルでクラック発生
××:100サイクル未満でクラック発生
5、耐ブロッキング性試験
上記1で得られた樹脂組成物を、JIS R3202(1996年)に準ずるフロートガラス板(70mm×150mm×2mm、日本テストパネル社製)に5milアプリケーターで塗装し、100℃の熱風乾燥機にて10分間乾燥して、試験板を作成した後、直ちに該試験板を60℃の熱風乾燥機内に速やかに移動させ、1分間調温後に、該試験板上に、ガーゼ(萬星衛生材料社製、日本薬局方ガーゼタイプ1)、フロートガラス板(70mm×75mm×2mm、日本テストパネル社製)、おもりの順で積載し、同温度で10分間放置した。このとき、荷重は280g/cmになるようにした。その後、試験板を室温まで冷却した後、該試験板上のガーゼをゆっくりと剥離して塗膜の状態を目視にて観察し、下記の基準に従って評価した。
−評価基準−
◎:異常なし(ガーゼ痕なし)
○:わずかにガーゼ痕あり
△:浅くガーゼ痕あり
×:深くガーゼ痕あり
××:ガーゼの剥離が困難
6、耐汚染性試験
ベースコート用塗料(I)に代えてベースコート用塗料(II)を使用した以外は全て上記4の耐候性試験と同じ条件で試験板を作製した。なお、ベースコート用塗料(II)とは、上述したベースコート用塗料(I)のうち、(4)黒色ペーストを使用しない以外は全て同じ配合にて調製したものである。
養生後、該試験板のL値(L0)を色差計(日本電色工業社製、分光式色差計SE−2000)にて測定し、JIS Z2381(大気暴露試験方法通則)に準じ、以下の条件にて屋外暴露試験を行った。1ヶ月後、6ヶ月後に試験板を引き上げ、上記色差計でL値(L1)を測定した。
ΔL=(L1)−(L0)として、L値の変化値を算出し、1ヶ月後のL値で初期汚染性、6ヶ月後のL値で長期汚染性を評価した。
−試験条件−
南面30度、直接暴露(暴露地:大阪府吹田市/(株)日本触媒敷地内)
−評価基準−
◎:ΔL=2.0未満
〇:ΔL=2.0以上、3.0未満
△:ΔL=3.0以上、4.0未満
×:ΔL=4.0以上、5.0未満
××:ΔL=5.0以上

Claims (10)

  1. 乳化重合によって得られる(メタ)アクリルエマルション(A)と、水溶性樹脂(B)とを必須として構成される塗料用水性樹脂組成物であって、
    該塗料用水性樹脂組成物は、(メタ)アクリルエマルション(A)と水溶性樹脂(B)とが架橋構造を形成し得るものであって、
    該(メタ)アクリルエマルション(A)が官能基(α)を有する重合体を含むものであり、該水溶性樹脂(B)が該官能基(α)と架橋構造を形成し得る官能基(β)を有する重合体を含むものであり、
    該官能基(β)を有する重合体は、N−ビニル環状ラクタム単位を有する重合体であり、
    該(メタ)アクリルエマルション(A)が、カルボキシル基含有単量体を含む重合性単量体(i)を重合した後に、オキサゾリン基含有単量体を含む重合性単量体(ii)を更に加えて重合を行う段階的重合工程によって製造されるものである場合には、該(メタ)アクリルエマルション(A)は、重合性単量体(ii)を重合する工程前の反応系のpHを10未満に設定して重合性単量体(ii)を重合する工程を行うことで製造される
    ことを特徴とする塗料用水性樹脂組成物。
  2. 前記架橋構造を形成し得る官能基(α)及び(β)は、オキサゾリン基及び/又はカルボキシル基であることを特徴とする請求項1に記載の塗料用水性樹脂組成物。
  3. 前記架橋構造を形成し得る官能基(α)及び(β)は、官能基(α)がオキサゾリン基であり、官能基(β)がカルボキシル基であることを特徴とする請求項2に記載の塗料用水性樹脂組成物。
  4. 前記(メタ)アクリルエマルション(A)は、オキサゾリン基含有単量体(a)、反応性基含有単量体(b)及び反応性乳化剤(c)を必須とする単量体成分を重合して得られる重合体(A1)を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の塗料用水性樹脂組成物。
  5. 前記(メタ)アクリルエマルション(A)は、オキサゾリン基含有単量体(a)、反応性基含有単量体(b)及びシランカップリング剤(d)を必須とする単量体成分を重合して得られる重合体(A3)を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の塗料用水性樹脂組成物。
  6. 前記(メタ)アクリルエマルション(A)は、オキサゾリン基含有単量体(a)及び反応性基含有単量体(b)を必須とする単量体成分を重合して得られる重合体(A0)を含み、
    該重合体(A0)は、Tgの異なる2種類以上の重合体から構成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の塗料用水性樹脂組成物。
  7. 前記塗料用水性樹脂組成物は、それによって形成される膜の耐温水白化性がΔL≦3であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の塗料用水性樹脂組成物。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載の塗料用水性樹脂組成物によって構成されることを特徴とする窯業系無機建材用トップコート塗料用水性樹脂組成物。
  9. 請求項1〜8のいずれかに記載の塗料用水性樹脂組成物が含む(メタ)アクリルエマルション(A)の製造方法であって、
    該製造方法は、重合性単量体を2段階以上で段階的に重合させる製造方法であり、カルボキシル基含有単量体を含む重合性単量体を重合する工程と、オキサゾリン基含有単量体を含む重合性単量体を重合する工程との、少なくとも2つの工程を含み、該オキサゾリン基含有単量体を含む重合性単量体を重合する工程前の反応系内のpHが6以上であることを特徴とする(メタ)アクリルエマルション(A)の製造方法。
  10. 前記製造方法は、オキサゾリン基含有単量体を含む重合性単量体を重合する工程を行う前の反応系内のpHを6以上とすることを特徴とする請求項9に記載の(メタ)アクリルエマルション(A)の製造方法。
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