上記のように、2個のメイン刃と、2個のトリマー刃とを備えた電気かみそりによれば、切断刃の数が多い分だけ髭と切断刃との接触機会を増やすことができる。また、トリマー刃の前後に第1切刃部と第2切刃部を形成するので、髭の導入機会を増やして長毛やくせ髭を効果的に切断できる。しかし、トリマー刃の可動刃を逆ハット形に形成するので、トリマー刃の前後厚み寸法が大きくなるのを避けられず、かみそりヘッドが大形化する点に問題がある。とくに、メイン刃とトリマー刃を2個ずつ配置するマルチ刃構造の電気かみそりにおいては、かみそりヘッドの前後寸法が大きくなるのを避けられない。
また、逆ハット形に形成される前後の張り出し壁に切刃を形成するので、前後の切刃の間に無駄な空間が形成されるのを避けられず、可動刃の前後方向の全幅寸法に比べて、切刃部分が占める前後長さが短く、その分だけ髭の切断機会が減少する。さらに、前後の張り出し壁に切刃を形成するので、第2切刃部における切刃の上下長さが張り出し壁の厚み寸法分にしかならない。そのため、逆L字状の第2切刃部における縦方向の有効切刃長がごく僅かでしかなく、第2切刃部で髭切断を効果的に行なうことができない。
本発明の目的は、粗剃り用の切断刃の構造を簡素化してかみそりヘッドを小形化でき、しかも長毛やくせ髭の切断と仕上げ剃りとを効果的に行なえる電気かみそりを提供することにある。本発明の目的は、粗剃り用の第1切断刃による髭切断をより効果的に行なって、長毛やくせ髭をより確実に切断でき、とくにあご部におけるくせ髭を的確に切断できる電気かみそりを提供することにある。
本発明に係る電気かみそりは、粗剃り用の第1切断刃11と、仕上げ剃り用の第2切断刃12とを備えている。第1切断刃11を構成する固定刃18および可動刃19のそれぞれは、縦壁36・48と、縦壁36・48の上端に連続して折り曲げられる上壁37・49とで逆L字状に形成する。上壁37・49の遊端側にスリット刃状の第1切刃部38を形成し、上壁37・49から縦壁36・48にわたってスリット刃状の第2切刃部39を形成する。
第1切断刃11を構成する固定刃18および可動刃19の上壁37・49のそれぞれに、第1切刃部38・50と第2切刃部39・51とを区分する補強リブ40・52を形成する。
第1切断刃11を構成する固定刃18および可動刃19の左右両側に、それぞれ切刃を構成しない逆L字状の刃形保持壁41・57を設ける。これら刃形保持壁41・57の間に補強リブ40・52を形成する。
縦壁36・48と上壁37・49とで挟む角度θ1・θ2を鋭角に設定する。
可動刃19を構成する縦壁48と上壁49とで挟む角度θ2を、固定刃18を構成する縦壁36と上壁37とで挟む角度θ1より僅かに小さく設定する。
固定刃18は固定刃支持体59に固定し、可動刃19は可動刃支持体60に固定する。固定刃18は、縦壁36の下端に設けた取付座46を、縦壁36と対向する固定刃支持体59の装着座65に固定して、固定刃支持体59と隙間を介して対向する状態で固定する。可動刃19および可動刃支持体60は、固定刃18と固定刃支持体59との対向隙間Eに収容して、固定刃18の内面に沿って摺動可能に固定刃支持体59で支持する。
第1切断刃11を構成する固定刃18の後端において、第1切刃部38の小刃43を下向きに折り曲げる。前記小刃43の折り曲げ部の下方に隣接して、小刃43の変形を防ぐ防護壁63を固定刃支持体59に設ける。
可動刃支持体60は、可動刃19の縦壁48を支持する主面壁66と、主面壁66の両側に突設されて可動刃19の両側の刃形保持壁57を支持する逆L字状の上突壁67とを一体に備えている。縦壁48の下端中央に設けた取付座58を主面壁66に設けた装着座68に固定して、可動刃19を可動刃支持体60と一体化する。
固定刃18を構成する縦壁36と上壁37との折り曲げ部の内面および/または外面に、縦壁36と上壁37との折り曲げ線に沿う溝105を凹み形成する。
固定刃18は、エッチング処理された金属板材にプレス加工を施して形成する。溝105はハーフエッチング加工で形成する。
第1切断刃11を構成する固定刃18の第1切刃部38の遊端縁を平面視において外突湾曲線状に形成する。
第1切刃部38に形成される刃穴42と小刃43のそれぞれを、かみそりヘッド6の遊端側へ向かって拡がる向きに放射配置する。
本発明においては、粗剃り用の第1切断刃11と仕上げ剃り用の第2切断刃12とを備えている電気かみそりにおいて、第1切断刃11の固定刃18および可動刃19のそれぞれを、縦壁36・48と上壁37・49とで逆L字状に形成するので、逆ハット形の可動刃を備えた従来のトリマー刃に比べて、両者の摺動部分に形成される切刃の有効長さを大きくすることができる。このように、切刃の有効長さが大きいと、切刃の有効長さが従来のトリマー刃と同じである場合には、第1切断刃11の前後厚みを小さくして、かみそりヘッドを小形化できる。また、従来のトリマー刃と第1切断刃11の前後厚みを同じとする場合には、可動刃19の切刃の有効長さを充分に大きくして、髭切断を効果的に行なうことができる。
また、上壁37・49の後端側にスリット刃状の第1切刃部38・50を形成し、上壁37・49から縦壁36・48にわたってスリット刃状の第2切刃部39・51を形成するので、肌面に倒れこんだ長毛やくせ髭を両切刃部38・39・50・51に誘い込んで、繰り返し効果的に髭切断を行なうことができる。とくに、あご部に生えた髭を切断する場合には、電気かみそりを喉もとからあごの側へ滑らせる場合と、逆向きに滑らせる場合とのいずれの場合にも、両切刃部38・39・50・51で長毛やくせ髭を繰り返し効果的に切断できる。したがって、本発明の電気かみそりによれば、粗剃り用の第1切断刃11の構造を簡素化してかみそりヘッド6のコンパクト化を実現でき、その分だけかみそりヘッド6を小形化できる。また、長毛やくせ髭の切断を粗剃り用の第1切断刃11で確実に切断して仕上げ剃りを効果的に行なえる。とくに、長毛やくせ髭が肌面に倒れ込みやすいあご部において、長毛やくせ髭を第1切断刃11で的確に切断して、仕上げ剃りを効果的に行なえる。
固定刃18および可動刃19の上壁37・49のそれぞれに、第1切刃部38・50と第2切刃部39・51とを区分する補強リブ40・52を形成すると、各切刃部38・39・50・51の構造強度を向上できる。詳しくは、上壁37・49の遊端側に形成される小刃43・54を補強リブ40・52で支持して、第1切刃部38・50の構造強度を向上し、同時に、上壁37・49から縦壁36・48にわたって形成される小刃45・56を補強リブ40・52で支持して、第2切刃部39・51の構造強度を向上できる。したがって、逆L字状の固定刃18と可動刃19を常に適正な状態で密着させて、長毛やくせ髭を第1切断刃11でより確実に切断できる。
両切刃部38・39・50・51の左右側端を刃形保持壁41・57で保形すると、補強リブ40・52の補強効果に加えて、固定刃18および可動刃19の構造強度を刃形保持壁41・57でさらに向上できる。したがって、縦壁36・48の下側を支持するしかない、逆L字状の固定刃18と可動刃19をさらに適正に密着させて、両切刃部38・39・50・51に捕捉された長毛やくせ髭をより確実に切断できる。
縦壁36・48と上壁37・49とで挟む角度θ1・θ2が鋭角に設定してあると、可動刃19が可動刃ばね61で固定刃18に密着付勢された状態において、可動刃19を固定刃18の上壁37の傾斜上端側へ移動する向きに押し付けることができる。可動刃19の上壁49に、上壁37の傾斜上端側へ向かう可動刃ばね61の付勢力の分力が作用するからである。これにより、可動刃19は、固定刃18の上壁37はもちろん、縦壁36にも密着する状態で押し付けられることとなり、したがって、第1・第2の両切刃部38・39・50・51の切れ味を向上して髭を効果的に切断できる。
可動刃19側の折曲げ角度θ2と、固定刃18側の折曲げ角度θ1とが同じに設定してある場合には、加工のばらつきによって、固定刃18側の折曲げ角度θ1が設定角度より小さい場合や、可動刃19側の折曲げ角度θ2が設定角度より大きい場合などに、両刃18・19の折り曲げ部分の内面を密着させることができず、切れ味が損なわれる。しかし、可動刃19側の折曲げ角度θ2が、固定刃18側の折曲げ角度θ1より僅かに小さく設定してあると、先のように、摺動面に隙間が生じるのを避けながら、可動刃19を固定刃18に確実に密着させて切れ味を向上することができる。
固定刃18を固定刃支持体59に隙間を介して対向する状態で固定し、両者18・59の対向隙間Eに可動刃19および可動刃支持体60を配置して固定刃支持体59で摺動可能に支持すると、第1切断刃11の前後厚み寸法を可能な限り小さくしてコンパクト化できる。これは、左右方向に往復駆動される可動刃19および可動刃支持体60を、固定刃18および固定刃支持体59で、互いに前後に入り込んだ状態で前後に挟み保持して、前後方向に無駄なスペースを生じることなく、第1切断刃11を構成できるからである。第1切断刃11の前後厚み寸法を小さくできる分だけ、かみそりヘッド6をコンパクト化できることにもなる。
固定刃18の後端において第1切刃部38の小刃43を下向きに折り曲げ、小刃43の折り曲げ部の下方に隣接する個所に防護壁63を設けると、かみそりヘッド6に落下衝撃や衝突衝撃が作用するような状況において、衝撃力を防護壁63で受け止めて、小刃43の突端に大きな外力が作用するのをよく防止できる。したがって、逆L字状の固定刃18後端の小刃43が変形し、あるいは第1切断刃11が破損するのを防止して、電気かみそりの耐久性を向上できる。
可動刃19を可動刃支持体60に組み付けた状態において、左右の刃形保持壁57を上突壁67で支持し、さらに可動刃19の縦壁48に設けた取付座58を可動刃支持体60の装着座68に固定する可動刃構造によれば、可動刃19と可動刃支持体60とを互いに補強しあう状態で一体して、可動刃構造を堅牢化できる。しかも、可動刃19と可動刃支持体60とを、スペースの無駄がない状態でコンパクトに構成して、第1切断刃11を小形化するのに寄与できる。
固定刃18の縦壁36と上壁37との折り曲げ部の内面および/または外面に溝105を凹み形成すると、平板状の固定刃18のブランク材を逆L字状に折り曲げる際の折り曲げ抵抗を、溝105によって小さくできる。したがって、先のブランク材のプレス加工をより簡単にしかも正確に行なって、固定刃18の形状や寸法のばらつきを抑止できる。また、凹みからなる溝105を設ける分だけ、固定刃18の内外面壁の表面積を大きくして、可動刃19の摺動摩擦で発生する熱の放熱効果を向上できる。
エッチング処理された金属板材にプレス加工を施して固定刃18を形成する場合には、エッチング処理過程において溝105をハーフエッチング加工で形成することにより、余分な手間をかける必要もなく溝105を正確に形成できる。さらに、他の加工法に比べて、溝105の形状および形成位置を正確に形成できるので、以後のプレス加工をより正確に行なって、固定刃18の形状や寸法のばらつきを最小限化できる。
固定刃18の第1切刃部38の後端縁を平面視において外突湾曲線状に形成すると、下あごなどの凹んだ肌面の髭を切断する際に、第1切断刃11の第1切刃部38を肌面にフィットさせて髭切断を的確に行なえる。
第1切刃部38に形成される刃穴42と小刃43のそれぞれを、かみそりヘッド6の後ろ側へ向かって拡がる向きに放射配置すると、横臥姿勢の電気かみそりを下あごに沿って起立させながら髭切断を行なうとき、肌面に倒れこんだ髭を放射配置された刃穴42で効果的に捕捉して切断できる。また、刃穴42に誘い込んだ髭を小刃43の基端側へ案内して、捕捉した髭を確実に切断できる。
(実施例) 図1ないし図15は本発明に係るマルチ刃構造の電気かみそりの実施例を示す。図2において、電気かみそりは、本体ケース1と、本体ケース1に組み付けられる作動ユニットとを有する。本体ケース1の前面にはスイッチパネル2が設けてあり、その上下にモーター起動用のスイッチノブ3と、電気かみそりの運転状態を表示する表示部4が設けてある。本体ケース1の後面には、きわ剃り刃ユニット5が設けてある。なお、実施例の内容は、理解を容易化しさらに説明の便宜上、図1、図2および図4に示す交差矢印と前後、左右、上下の表示を一応の基準として説明するが、この方向の特定は電気かみそりの絶対的な前後、左右、上下を意味するものではない。
作動ユニットは、その下半側を占める電装品ユニットと、電装品ユニットの上部に設けられるかみそりヘッド6とで構成してある。電装品ユニットは、内ケースに回路基板と2次電池7などを組み込んで構成してあり、回路基板には、先のスイッチノブ3で切り換え操作されるスイッチや、制御回路を構成する電子部品、および表示部4の光源となるLEDなどが実装してある。
かみそりヘッド6は、ヘッドフレーム8と、その下面に固定されるモーター9およびモーターホルダ10と、かみそりヘッド6の上部に配置される4個の切断刃11〜14と、モーター9の動力を往復動力に変換して各切断刃11〜14に伝動する駆動構造と、ヘッドフレーム8に対して着脱される外刃ホルダー15などで構成してある。かみそりヘッド6の全体は、先の内ケースで上下フロート可能に、しかも左右傾動、および前後傾動可能に支持されている。また、モーター9および回路基板を含む電装品ユニットは、かみそりヘッド6と内ケースとの間に設けたシール体で密封してある。
各切断刃11〜14は、粗剃り用の第1切断刃11と、仕上げ剃り用の第2切断刃12と、粗剃り用の第3切断刃13と、仕上げ剃り用の第4切断刃14とからなり、かみそりヘッド6の後側から前側へ向かって記載順に配置してある(図5参照)。粗剃り用の第1切断刃11と第3切断刃13は、主に長毛やくせ髭を切断するために設けられており、いずれも固定刃18・22および可動刃19・23のそれぞれがスリット刃として形成してある。仕上げ剃り用の第2切断刃12と第4切断刃14は、短毛を仕上げ切断するために設けられており、いずれも固定刃20・24が網刃で形成され、可動刃21・25がスリット刃で形成してある。
図3および図5に示すように、モーター9の回転動力は、ヘッドフレーム8の内部に配置した前後一対の振動子28・29で往復動力に変換されたのち、第2切断刃12と第4切断刃14の可動刃21・25に伝動される。さらに、前後の各振動子28・29の駆動軸30・31に固定した駆動ピース32・33を介して、第1切断刃11と第3切断刃13の可動刃19・23に伝動される。駆動ピース32には、きわ剃り刃ユニット5に往復動力を伝動する駆動アーム34が一体に設けてある。振動子28・29は、回転動力を往復動力に変換する過程で、左右方向に往復変位する。
図6および図7に示すように、第1切断刃11の固定刃18は、垂直の縦壁36と、縦壁36に連続して後向きに鋭角に折り曲げられる上壁37とで逆L字状に形成してあり、上壁37の全体が第2切断刃12へ向かって上り傾斜させてある。固定刃18には、第1切刃部38と第2切刃部39とが形成されており、両切刃部38・39は、上壁37の前後中途部において左右方向に連続する補強リブ40で前後に区分されている。また、固定刃18の左右両側には、切刃を構成しない刃形保持壁41が逆L字状に形成してあり、これらの刃形保持壁41は先の補強リブ40を介して繋がっている。縦壁36の下部両側には、一対の取付座46が階段状に折り曲げ形成してある(図7参照)。
図8に示すように、第1切刃部38は、上壁37の後端側(遊端側)にスリット状の刃穴42とリブ状の小刃43を交互に形成して構成してある。刃穴42を区分する小刃43で肌面が傷付けられるのを防ぐために、各小刃43の後端は下向きに折り曲げてある(図7参照)。この折り曲げ部分、すなわち第1切刃部38の後端縁(遊端縁)と、第2切刃部39の後端縁(遊端縁)とは、それぞれ平面視において外突湾曲線状に形成してある(図8参照)。第2切刃部39の前端縁(折曲縁)は、平面視において直線状に形成してある。
上記のように、第2切刃部39の前端縁を直線状に形成し、その後端縁を外突湾曲状に形成すると、左右中央部付近における第2切刃部39の前後長さを充分に確保して、髭の切断機会を向上しながら、左右両端付近の切刃の前後長さを短くして切刃の構造強度を向上できる。これは、各切断刃11〜14においては、左右両端で髭が切断される状況に比べて、左右中央部で髭が切断される状況のほうが圧倒的に多く、しかも左右中央部付近における切刃の前後長さが長い分だけ、髭の切断機会を増加できるからである。
第2切刃部39は、縦壁36から上壁37の補強リブ40にわたって髭導入用のスリット状の刃穴44とリブ状の小刃45を交互に形成して構成する。小刃45は、逆L字状に折り曲げられており、縦壁36側の刃面と上壁37側の刃面の両者で髭切断を行なえる。第2切刃部39の刃穴44の隣接ピッチと、先の第1切刃部38の刃穴42の隣接ピッチとは同じであるが、両刃穴42・44と小刃43・45が互い違いになるように配置してある。このように、補強リブ40を境界にして、刃穴42・44および小刃43・45を互い違いに配置すると、刃穴42・44および小刃43・45の前後方向の切刃長を大きくして、その分だけ髭切断を効果的に行なえる。各刃穴42・44と各小刃43・45は、第1切刃部38の後端縁の湾曲中心を通る半径線に沿って放射状に形成してある。つまり、各刃穴42・44と各小刃43・45は、かみそりヘッド6の後ろ側(遊端側)へ向かって拡がる向きに放射配置してある。
固定刃18は、ステンレス板材にエッチング処理を施したのち、プレス機で折り曲げ加工を施して形成するが、刃形保持壁41の折り曲げ加工を容易化するために、縦壁36と上壁37の折り曲げ部の内面に溝105が形成してある。この溝105は、エッチング処理によって各刃穴42・44と各小刃43・45を形成する過程で、ハーフエッチングすることにより形成され、図6に示すように各刃穴43と平行になる状態で、一定間隔おきに凹み形成してある。溝105は折り曲げ部の内面である必要はなく、外面側に形成してあってもよい。
第1切断刃11の可動刃19は、垂直の内縦壁(縦壁)48と、内縦壁48に連続して後向きに鋭角に折り曲げられる内上壁(上壁)49とで逆L字状に形成する(図7参照)。内上壁49の後部には、固定刃18の第1切刃部38に対応する第1切刃部50が形成してあり、内縦壁48と内上壁49との隣接部分には、固定刃18の第2切刃部39に対応する第2切刃部51が形成してある。両切刃部50・51は、内上壁49の前後中途部において左右方向に連続する補強リブ52で前後に区分されている。
可動刃19の左右両側には、切刃を構成しない刃形保持壁57が逆L字状に形成してあり、これらの刃形保持壁57は先の補強リブ52を介して繋がっている。内縦壁48の下部中央には階段状の取付座58が後向きに折り曲げ形成してある。第1・第2の両切刃部50・51は、固定刃18の第1切刃部38および第2切刃部39と同様に、刃穴53・55と小刃54・56が互い違いになるように、しかも後側へ向かって拡がる向きに放射配置した状態で形成してある。また、第1切刃部50の後端縁と先に述べた補強リブ52とが、平面視において外突湾曲線状に形成してある点も同じである。刃穴53・55および小刃54・56を互い違いに配置すると、先の固定刃18と同様に、刃穴53・55および小刃54・56の前後方向の切刃長を大きくして、その分だけ髭切断を効果的に行なえる。可動刃19も、固定刃18と同様に、ステンレス板材にエッチング処理を施したのちプレス機で折り曲げ加工を施して形成してある。
固定刃18の縦壁36と上壁37が挟む角度(折曲げ角度)θ1、および可動刃19の内縦壁48と内上壁49が挟む角度(折曲げ角度)θ2はそれぞれ鋭角に設定してある。具体的には前者角度θ1を60度とし、後者角度θ2は59度に設定している。このように、可動刃19の折曲げ角度θ2を固定刃18の折曲げ角度θ1より僅かに小さく設定すると、組み付け状態において両刃18・19を密着させて滑らかに相対摺動でき、とくに第2切刃部39の折り曲げ部分における固定刃18と可動刃19の密着度を高めて髭切断を確実に行なえる。
第1切断刃11の固定刃18は、プラスチック成形された固定刃支持体59に溶着固定してあり、同様に可動刃19はプラスチック成形されたT字状の可動刃支持体60に溶着固定してある。可動刃支持体60には、可動刃19に加えて、可動刃19を固定刃18に押し付け付勢する板ばね製の可動刃ばね61が固定してある。
図6および図7において固定刃支持体59は、左右に引き伸ばされた逆凸字状の縦壁110を主構造壁にして、その前面側の左右両側に階段状の側壁64を設け、縦壁110の前面左右に一対の装着座65を膨出形成したプラスチック成形品からなる。側壁64および装着座65の間は段落ち状に凹ませてあり、この凹み部分111に可動刃19および可動刃支持体60を収容する。縦壁110の上部が、固定刃18の小刃43の損傷を防ぐ防護壁63となっている。装着座65には、固定刃18の取付座46を溶着固定するための溶着ピン112が設けてある。符号113は固定刃支持体59の最前側に位置する側壁64の前端面である。先の装着座65は、前端面113よりも後側に位置しており、凹み部分111は装着座65よりさらに後側に位置している。
可動刃支持体60は、可動刃19の縦壁36を支持する主面壁66と、主面壁66の両側に突設されて可動刃19の左右両端の刃形保持壁57を支持する逆L字状の上突壁67とを一体に備えている。主面壁66の前面側には、可動刃19を組むための装着座68を設け、その左右2個所に溶着ピン115を前向きに突設している。図7に示すように、装着座68は、主面壁66の前面120より後側へ凹ませてある。組み立ての過程では、図7に示すように、可動刃19の取付座58を可動刃支持体60の装着座68にあてがって、装着座68に設けた係合穴121溶着ピン115で溶着固定し、さらに、可動刃支持体60後面上部のばね受溝116に可動刃ばね61を差し込み係合して溶着固定する。この組み付け状態において、階段状に折り曲げた可動刃19の取付座58を、主面壁66の前面120より後側に位置する装着座68に溶着固定するので、溶着後の溶着ピン115の溶着頭部が、主面壁66の前面120より前方へ突出するのを防止できる。したがって、可動刃19の前後寸法を小さくして、コンパクト化を実現できる。
この状態の可動刃支持体60を、固定刃支持体59の前側の凹み部分111に組み付けたのち、固定刃18の取付座46に設けた係合穴118を固定刃支持体59の装着座65の溶着ピン112に係合し、溶着ピン112の突端を溶着して、固定刃18を固定刃支持体59と一体化する。これにより第1切断刃11の全体がカセット化される。
この組み付け状態において、可動刃19と可動刃支持体60とは、図1に示すように固定刃18の縦壁36と、固定刃支持体59の縦壁110の前面との間の対向隙間Eに収容されて、可動刃ばね61のばね腕が装着座65の上面で受け止められており、したがって、可動刃19は可動刃ばね61で押し上げ付勢されて固定刃18の内面に密着している。カセット化された第1切断刃11の全体で見ると、図1に示すように、固定刃18の前後寸法W2は、固定刃支持体59の前後寸法W1より僅かに小さく設定してあり、固定刃18が固定刃支持体59の前後寸法W1の範囲内に収まるようにしてある。また、階段状に折り曲げた固定刃18の取付座46を、側壁64の前端面113よりも後側に位置する装着座65に溶着固定するので、溶着後の溶着ピン112の溶着頭部が、側壁64の前端面113より前方へ突出するのを防止できる。これにより、第1切断刃全体の前後寸法(W1)を小さくしてコンパクト化を実現できる。
カセット構造の第1切断刃11は、外刃ホルダー15の上ケース16に対して上下フロート自在に組み付けられて、両者11・15の間に配置した左右一対の第1フロートばね70で押し上げ付勢してある(図6参照)。第1フロートばね70は圧縮コイルバネで構成してある。可動刃支持体60の下端には、駆動ピース32と係合するコ字状の受動溝71が形成してある。外刃ホルダー15をヘッドフレーム8に装着した状態では、受動溝71が駆動ピース32の上端に連結されるので、モーター9の起動と同時に可動刃19を往復駆動できる。
図9に示すように、第2切断刃12の固定刃20は電鋳法で形成した網刃からなり、外刃フレーム73で逆U字状に保形されてカセット化してある。外刃フレーム73は、外刃ホルダー15に対して上下フロート自在に組み付けてある。スリット刃構造の内刃21は、逆U字状に折り曲げて形成してあり、内刃フレーム74に固定されてカセット化してある。内刃フレーム74は、駆動軸30に圧嵌係合されて振動子28と連結されている(図3参照)。この連結状態において、内刃フレーム74は、駆動軸30に対して左右傾動でき、さらに上下フロート可能に支持されて、両者30・66間に配置した第2フロートばね75で押し上げ付勢してある。したがって、外刃ホルダー15をヘッドフレーム8に装着した状態では、可動刃21が固定刃20の内面に密着する。
図10において、第3切断刃13の外刃22は、上突状に湾曲する上壁78と、上壁78の前後縁に連続する前壁79および後壁80を一体に折り曲げて逆樋体状に形成してあり、上壁78の前後縁のそれぞれにスリット状の刃穴81とリブ状の小刃82とが交互に形成してある。上壁78の前後中央には左右方向に連続する補強リブ83が形成してある。補強リブ83で前後に区分されて、同リブ75の前後縁と直交する一群の刃穴81と小刃82とは、互い違いになるように形成してある。上壁78の湾曲半径は、第2切断刃12の固定刃20の湾曲半径より充分に大きく設定してある。
図11に示すように、小刃82の内周面には微小波形の髭保持部85が形成してあり、刃穴81に導入した髭を髭保持部85で受け止めることにより、髭が小刃82にそってずれ動くのを防止できるようにしている。外刃22はその左右両端が一対の刃受ピース86で支持されて、外刃22の下面に装着される補強枠87と共に刃受ピース86に固定してある。補強枠87は、左右の刃受ピース86を繋ぐ左右横長の枠体からなり、その下面左右には内刃23を外刃22に密着させるばね腕88が一体に形成してある(図10参照)。
第3切断刃13の内刃23は逆U字状に折り曲げて形成してあり、プラスチック成形されたT字状の内刃枠90に溶着固定してある。組み立ての過程では、左右の刃受ピース86に外刃22を仮組みして、外刃22の内部に内刃23と内刃枠90を組み付ける。次に、補強枠87を外刃22の下面前後に外嵌装着し、外刃22と補強枠87を刃受ピース86に対して溶着固定することにより、第3切断刃13の全体がカセット化してある。この組み付け状態において、内刃23はばね腕88で押し上げ付勢されて、外刃22の内面に密着している。
カセット構造の第3切断刃13は、外刃ホルダー15に対して上下フロート自在に組み付けられて、両者13・15の間に配置した左右一対の第3フロートばね91で押し上げ付勢してある(図10参照)。第3フロートばね91は圧縮コイルバネからなる。内刃枠90の下端には、駆動ピース33と係合するコ字状の受動溝92が形成してある。外刃ホルダー15をヘッドフレーム8に装着した状態では、受動溝92が駆動ピース33の上端に係合連結されるので、モーター9の起動と同時に内刃23を往復駆動できる。
第4切断刃14は、第2切断刃12と同じ構造であるので、同じ部材に同じ符号を付してその説明を省略する。
外刃ホルダー15は、先の第1〜第4の切断刃11〜14が組み付けられる上ケース16と、上ケース16を支持する下ケース17とで構成してある(図5参照)。上ケース16は下ケース17に対して着脱できる。下ケース17はヘッドフレーム8に対して着脱でき、ヘッドフレーム8に組み付けた左右一対のロック具95で装着状態にロック保持される。図12に示すようにロック具95には、下ケース17の内面の凹部96と係合する前後一対のロック爪97と、ロック解除ボタン98とが一体に形成してあり、全体がロックばね99でロック付勢してある。左右のロック解除ボタン98をロックばね99の付勢力に抗して押し込み操作すると、ロック爪97と凹部96との係合が解除されるので、外刃ホルダー15をヘッドフレーム8から取り外すことができる。この状態では図5に示すように、第2切断刃12と第4切断刃14の内刃21・25のみがヘッドフレーム8側に残る。
くせ髭の切断と仕上げ剃りとを効果的に行なうために、第1〜第4の各切断刃11〜14の配置関係と突出関係を次のように設定している。既に説明したように、外刃ホルダー15をヘッドフレーム8に装着した状態において、第1切断刃11と、第2切断刃12と、第3切断刃13と、第4切断刃14とを、かみそりヘッド6の後ろ側から前側へ向かって記載順に配置する。また、図13に示すように第2切断刃12の上端を、第1切断刃11の上端より上方へ突出させ、第3切断刃13の上端を第2切断刃12の上端より上方へ突出させ、さらに、第2切断刃12の上端を第4切断刃14の上端と同じ高さにする。
各切断刃11〜14の突出関係を上記のように設定することにより、第1切断刃11の上壁37の前部周面(外周面)と、逆U字状に湾曲する第2切断刃12の湾曲面(外周面)を結ぶ接線Lを想定するとき、第3切断刃13の上端は先の接線Lより下方に位置しており、しかも第3切断刃13の上端は第2切断刃12の上端より上方へ突出している。第1切断刃11の上壁37は、先の接線に沿って上り傾斜している。第3切断刃13を先の接線Lより下方に位置させることにより、図15に示すように喉側からあごの下面へ向かって髭を剃るとき、第3切断刃13が肌面に強く当るのを避けて、肌当りをソフトなものとすることができる。なお、上壁37は接線Lと同じ傾斜角度で傾斜することができ、その場合の接線Lは上壁37と同じ平面を通る接線とすることが好ましい。
図13に示すように、第2切断刃12の上端と第1切断刃11の上端との突出寸法差H1は、第3切断刃13の上端と第2切断刃12の上端との突出寸法差H2より大きく設定してある。このように、H1>H2とすると、口の周囲などの髭を剃る時には、他の切断刃に先行して第3切断刃13を肌面に接触させて粗剃りを行ない、第3切断刃13が突出寸法差H1の分だけ沈み込んだ状態になって始めて、第2切断刃12を肌面に接触させて仕上げ剃りを行なえることになる。また、電気かみそりを横臥姿勢にしてあごの下の髭を剃る場合には、他の切断刃に先行して第3切断刃13と第2切断刃12を同時に肌面に接触させて、粗剃りと仕上げ剃りとを連続して行なえる。つまり、従来のマルチ刃構造の電気かみそりに比べて、髭を剃るべき個所に応じて粗剃り用の第1切断刃11および第3切断刃13を有効に活用しながら、さらに効果的に髭切断を行なえることになる。
図4に示すように、各切断刃11〜14を平面からみるとき、第1切断刃11の左右幅寸法をB1とし、第2切断刃12の左右幅寸法をB2とし、第3切断刃13の左右幅寸法をB3とし、第4切断刃14の左右幅寸法をB4するとき、B1<B2<=B3<B4の関係を満足するように設定してある。
第1ないし第4の各切断刃11〜13の固定刃18・20・22・24を支持する外刃支持体、具体的には固定刃支持体59、外刃フレーム73の左右両端の上端、および左右の刃受ピース86の上端には、図4および図14に示すように、それぞれ肌押圧体59a・65a・76a・65aが設けてある。これらの肌押圧体59a・65a・76a・65aは、各固定刃18・20・22・24の上突端より僅かに突出させてあり、各肌押圧体59a・65a・76a・65aは、かみそりヘッド6の前面側へ向かって末広がり状に配置してある。
詳しくは、各肌押圧体59a・65a・76a・65aは全体としてハ字状に配列してある。また、第1切断刃11と第2切断刃12における左右の肌押圧体59a・65aは、それぞれかみそりヘッド6の前面側へ向かって末広がり状(ハ字状)に配置され、第3切断刃13と第4切断刃14における左右の肌押圧体76a・65aは、それぞれ左右平行に配置してある。このように、各肌押圧体59a・65a・76a・65aを全体としてハ字状に配列し、さらに第1切断刃11と第2切断刃12の左右の肌押圧体59a・65aを、それぞれ末広がり状に配置することにより、図15に示す状態で髭剃りを行なう場合に、肌面を左右方向へ徐々に押し拡げながら髭を切断して、深剃りすることができる。
第1切断刃11から第4切断刃14は、それぞれ単独で上下フロート自在に支持されている。詳しくは、第1切断刃11と第3切断刃13は、外刃ホルダー15でそれぞれ上下フロート自在に支持されており、第2切断刃12と第4切断刃14は、振動子28・29の駆動軸30・31でそれぞれ上下フロート自在に支持されている。加えて、第3切断刃13は、第2切断刃12および第4切断刃14のフロート動作に連動して上下フロートできるように構成してある。
詳しくは、図14に示すように第3切断刃13を構成する刃受ピース86の前後面の左右両側に連動片102を突設し、刃受ピース86の前面あるいは後面と対向する第2・第4切断刃12・14の外刃フレーム73に、連動片102の上面に接当する鉤状の連動爪103を設けている。第2・第4切断刃12・14が外刃フレーム15の上方に突出した定常状態において、連動爪103は連動片102に接当しており、したがって、第2・第4切断刃12・14のいずれか一方が左右傾動し、あるいは全体が下方へ僅かでも沈み込むと、第3切断刃13は連動して左右傾動し、あるいは下方へ沈み込むことになる。但し、第3切断刃13が単独で沈み込んだとしても、第2切断刃12および第4切断刃14が沈み込み変位することはない。
上記の実施例以外に、本発明に係る第1切断刃11は図16に示す種々の形態で電気かみそりに適用でき、本発明はこれらの形態の全てを含むこととする。図16(a)では、かみそりヘッド6の上部に仕上げ剃り用の第2切断刃12を1個だけ配置し、その後ろ側に第1切断刃11を隣接配置した。
また、図16(b)に示すように、きわ剃り刃ユニット5を備えている電気かみそりにおいて、きわぞり刃を第1切断刃11で構成した。この場合には、かみそりヘッド6に仕上げ剃り用の2個の第2切断刃12と第3切断刃13が設けてある。きわ剃り刃ユニット5は、本体ケース1で上下スライド可能に支持されており、第1切断刃11の上端がかみそりヘッド6の下側の待機位置にある状態と、第1切断刃11の上端が第2・第4の切断刃12・14の上端とほぼ同じ高さにあるコンビ剃り位置と、コンビ剃り位置からさらに上側へ突出する単独使用位置とに切り換えることができる。
図16(c)では、かみそりヘッド6の上部に仕上げ剃り用の第2・第4切断刃12・14を設け、これら両者12・14の間にセンター刃として機能する第1切断刃11を配置した。
図16(d)では、図16(a)と同様にかみそりヘッド6の上部に仕上げ剃り用の第2切断刃12と第1切断刃11を隣接配置するが、第1切断刃11を第2切断刃12より前側に、しかも第1切刃部38がかみそりヘッド6の前面側へ突出する状態で第1切断刃11を配置した。つまり、図16(a)の電気かみそりの前後の概念を反転すると、図16(d)の電気かみそりが得られるわけであり、本発明はこのように前後が単純に反転された概念の電気かみそりを含むこととする。
図16(e)では、かみそりヘッド6に2個の仕上げ剃り用の第2切断刃12を配置し、本体ケース1の下部に、粗剃り用の2個の第1切断刃11を背中合わせ状に配置した。不使用時の各切断刃11・12は、それぞれ保護キャップ122・123で覆われている。
上記の実施例では、第1切断刃11を鋭角に形成したが、縦壁36・48と上壁37・49の折曲げ角度は90度であってもよい。第1切断刃11の固定刃18の上壁37は平坦壁である必要はなく、上突湾曲面状に形成することができる。溝105はハーフエッチング加工で形成する必要はなく、プレス加工や切削加工で形成することができる。第3切断刃13の外刃13は、左右に連続する前後壁79・80を備えている必要はなく、例えば、外刃13の左右方向一定間隔おきに上壁78に連続して下方に伸びる脚片を備えた外刃構造であってもよい。
上記の実施例では、第1切刃部38の前後端縁のそれぞれを、平面視において外突湾曲線状に形成したが、第1切刃部38の前端縁(補強リブ40の後端縁)は、平面視において直線状に形成することができる。その場合には、左右中央部付近における切刃の前後長さを充分に確保して、髭の切断機会を向上しながら、左右両端付近の切刃の前後長さを短くして切刃の構造強度を向上できる。第2・第4の両切断刃12・14は、それぞれ往復動式の切断刃である必要はなく、シリンダー構造の内刃が横軸回りに回転するロータリー式の切断刃であってもよい。