JP5270278B2 - 圧電素子の製造方法 - Google Patents
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Description
基板に所定のパターンのマスクを密着させた状態で蒸着を行うことで、所定のパターンの誘電体膜を形成するマスク法(特許文献2等)、
及び、レジストパターンを形成した基板上に誘電体膜を成膜し、その後レジストパターンを除去することで、レジストパターン上に位置する誘電体膜部分をレジストパターンと共に除去して、誘電体膜をパターニングするリフトオフ法(特許文献3,4等)が知られている。
本発明は、上記パターニング技術を用いた圧電素子の製造方法、及び該製造方法により製造された圧電素子を提供することを目的とするものである。
前記下部電極が形成された前記基板上に、パターニングされていないベタ圧電体膜を成膜する工程(A)と、
前記ベタ圧電体膜上に、前記ベタ圧電体膜の不要部分に対応したパターンを有し、前記ベタ圧電体膜の不要部分を除去するための除去用電極を形成する工程(B)と、
前記下部電極と前記除去用電極との間に電界を印加して、前記除去用電極及び前記ベタ圧電体膜の不要部分にクラックを発生させる工程(C)と、
前記除去用電極及び前記ベタ圧電体膜の不要部分を除去する工程(D)とを有することを特徴とするものである。
工程(D)後に、前記所定のパターンを有する圧電体膜に対応したパターンを有する前記上部電極を形成する工程(E)をさらに有する構成としてもよい。
工程(A)において、前記ベタ圧電体膜として、Thornton zone modelにおけるzone Iの柱状構造膜を成膜することが好ましい。
柱状構造膜からなる圧電体膜は、結晶構造を有していてもアモルファス構造を有していても構わないが、結晶構造を有することが好ましい。
本明細書において、「表面粗さRa」はAFMによりタッピングモードにて2μm×2μmの範囲をスキャンして測定するものとする。
工程(A)において、気相法により前記ベタ圧電体膜を成膜することが好ましい。
前記下部電極が形成された前記基板上に、パターニングされていないベタ圧電体膜を成膜する工程(A)と、
前記ベタ圧電体膜上に、前記ベタ圧電体膜の不要部分に対応したパターンを有し、前記ベタ圧電体膜の不要部分を除去するための除去用電極を形成する工程(B)と、
前記下部電極と前記除去用電極との間に電界を印加して、前記除去用電極及び前記ベタ圧電体膜の不要部分にクラックを発生させる工程(C)と、
前記除去用電極及び前記ベタ圧電体膜の不要部分を除去する工程(D)とを有する製造方法により製造されたものであることを特徴とするものである。
本発明の第1の圧電素子において、前記圧電体膜は、Thornton zone modelにおけるzone Iの柱状構造膜であることが好ましい。
本発明の第1の圧電素子において、前記圧電体膜は、表面粗さRa≧200Åであることが好ましい。
前記圧電体膜は、Thornton zone modelにおけるzone Iの柱状構造膜からなることを特徴とするものである。
一般式ABO3・・・(P)
(A:Aサイトの元素であり、Pb,Ba,Sr,Bi,Li,Na,Ca,Cd,Mg,K,及びランタニド元素からなる群より選ばれた少なくとも1種の元素を含む。
B:Bサイトの元素であり、Ti,Zr,V,Nb,Ta,Cr,Mo,W,Mn,Mg,Sc,Co,Cu,In,Sn,Ga,Zn,Cd,Fe,Ni,Hf,及びAlからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素を含む。
O:酸素。
Aサイト元素とBサイト元素と酸素元素のモル比は1:1:3が標準であるが、これらのモル比はペロブスカイト構造を取り得る範囲内で基準モル比からずれてもよい。)
本明細書において、「主成分」は80モル%以上の成分と定義する。
本発明によれば、上記パターニング技術を用いた圧電素子の製造方法、及び該製造方法により製造された圧電素子を提供することができる。
図面を参照して、本発明に係る一実施形態の圧電素子、及びこれを備えたインクジェット式記録ヘッド(液体吐出装置)の構造について説明する。図1はインクジェット式記録ヘッドの要部断面図(圧電素子の厚み方向の断面図)である。視認しやすくするため、構成要素の縮尺は実際のものとは適宜異ならせてある。
一般式ABO3・・・(P)
(A:Aサイトの元素であり、Pb,Ba,Sr,Bi,Li,Na,Ca,Cd,Mg,K,及びランタニド元素からなる群より選ばれた少なくとも1種の元素を含む。
B:Bサイトの元素であり、Ti,Zr,V,Nb,Ta,Cr,Mo,W,Mn,Mg,Sc,Co,Cu,In,Sn,Ga,Zn,Cd,Fe,Ni,Hf,及びAlからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素を含む。
O:酸素。
Aサイト元素とBサイト元素と酸素元素のモル比は1:1:3が標準であるが、これらのモル比はペロブスカイト構造を取り得る範囲内で基準モル比からずれてもよい。)
チタン酸鉛、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、ジルコニウム酸鉛、チタン酸鉛ランタン、ジルコン酸チタン酸鉛ランタン、マグネシウムニオブ酸ジルコニウムチタン酸鉛、ニッケルニオブ酸ジルコニウムチタン酸鉛、亜鉛ニオブ酸ジルコニウムチタン酸鉛等の鉛含有化合物、及びこれらの混晶系;
チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウムバリウム、チタン酸ビスマスナトリウム、チタン酸ビスマスカリウム、ニオブ酸ナトリウム、ニオブ酸カリウム、ニオブ酸リチウム等の非鉛含有化合物、及びこれらの混晶系が挙げられる。
本明細書において、「柱状体の平均柱径」は断面SEM像を観察し、ランダムに選んだ計10個の柱状体の柱径の平均値により求めるものとする。
従来は、グレイン成長が抑制された緻密な膜が良いとされており、zone Iの柱状構造膜を積極的に用いることはなされていない。従来の常識とは異なり、本実施形態において、圧電体膜30はThornton zone modelにおけるzone Iの柱状構造膜であることが好ましい。
本実施形態の圧電素子1及びインクジェット式記録ヘッド3は、以上のように構成されている。
図2を参照して、圧電素子1及びインクジェット式記録ヘッド3の製造方法について説明する。図2は工程図であり、図1に対応した断面図である。
はじめに、図2(a)に示す如く、公知の気相法等により基板10上の略全面に下部電極20を成膜し、この基板上にパターニングされていないベタ圧電体膜30Pを成膜する。ベタ圧電体膜30Pの成膜方法は特に制限なく、スパッタ法、MOCVD法、プラズマCVD法、PLD(パルスレーザデポジッション)法、及び放電プラズマ焼結法等の気相法;ゾルゲル法及び有機金属分解法等の液相法;及びエアロゾルデポジション法等が挙げられる。圧電体膜30の厚みは、通常1μm以上、例えば1〜5μmである。
結晶配向性を有するベタ圧電体膜30Pを成膜することが好ましい。例えば、(100)方向に結晶配向性を有するベタ圧電体膜30Pを成膜することができる。
組成に応じて、基板温度、成膜圧力、及びプラズマ条件等の成膜条件を調整することで、所望の平均柱径の柱状体を所望の方向に成長させることができる。成膜温度は、多数の柱状体からなるベタ圧電体膜30Pを安定的に成膜できる温度に設定され、例えば、PZT、及びPZTのAサイト及び/又はBサイトの一部を他の元素で置換したPZT系では500〜600℃が好ましい。
次いで、図2(b)に示す如く、ベタ圧電体膜30P上に、所定のパターンを有する圧電体膜30に対応したパターンの上部電極40と、ベタ圧電体膜30Pの不要部分30Nに対応したパターンを有し、ベタ圧電体膜30Pの不要部分30Nを除去するための除去用電極41とを形成する。
次いで、図2(c)に示す如く、下部電極20と上部電極40との間に電界を印加せず、下部電極20と除去用電極41との間に選択的に電界を印加して、除去用電極41及びベタ圧電体膜30Pの不要部分30Nにクラックを発生させる(図7(b)を参照)。例えば、除去用電極41にのみプローブ42を接触させることで、下部電極20と除去用電極41との間に選択的に電界を印加することができる。
下部電極20と除去用電極41との間の電界印加によってベタ圧電体膜30Pの不要部分30Nが伸縮して、ベタ圧電体膜30Pの不要部分30N及びその上に位置する除去用電極41にストレスがかかり、クラックが発生すると考えられる。
次いで、図2(d)に示す如く、除去用電極41及びベタ圧電体膜30Pの不要部分30Nを除去する。除去用電極41及びベタ圧電体膜30Pの不要部分30Nにはクラックが形成されているので、除去用電極41及びベタ圧電体膜30Pの不要部分30Nを選択的に容易に除去することができる。この工程後に、複数の凸部31からなる所定のパターンの圧電体膜30が形成される。
図4及び図5を参照して、上記実施形態のインクジェット式記録ヘッド3を備えたインクジェット式記録装置の構成例について説明する。図4は装置全体図であり、図5は部分上面図である。
印字部102をなすヘッド3K,3C,3M,3Yが、各々上記実施形態のインクジェット式記録ヘッド3である。
ロール紙を使用する装置では、図4のように、デカール処理部120の後段に裁断用のカッター128が設けられ、このカッターによってロール紙は所望のサイズにカットされる。カッター128は、記録紙116の搬送路幅以上の長さを有する固定刃128Aと、該固定刃128Aに沿って移動する丸刃128Bとから構成されており、印字裏面側に固定刃128Aが設けられ、搬送路を挟んで印字面側に丸刃128Bが配置される。カット紙を使用する装置では、カッター128は不要である。
縁無しプリント等を印字するとベルト133上にもインクが付着するので、ベルト133の外側の所定位置(印字領域以外の適当な位置)にベルト清掃部136が設けられている。
印字検出部124の後段には、印字された画像面を乾燥させる加熱ファン等からなる後乾燥部142が設けられている。印字後のインクが乾燥するまでは印字面と接触することは避けたほうが好ましいので、熱風を吹き付ける方式が好ましい。
インクジェット記記録装置100は、以上のように構成されている。
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、適宜設計変更可能である。
Si基板上にスパッタ法により、基板温度350℃の条件で10nm厚のTi膜と150nm厚のIr下部電極とを順次成膜した。得られた基板上に、スパッタ法により2μm厚のベタPZT膜(ベタ圧電体膜)を成膜した。成膜条件は以下の通りとした。
スパッタ装置:Rfスパッタリング装置、
ターゲット組成:Pb1.3(Zr0.52Ti0.48)O3、
基板温度:550℃、
成膜圧力:1.0Pa、
成膜パワー密度:4.3W/cm2、
成膜ガス:Ar/O2=100/1(モル比)。
得られたベタPZT膜のXRD分析を実施したところ、ペロブスカイト構造を有する(100)配向膜であった。XRDパターンを図10に示す。
下部電極と除去用電極との間に電界を印加する前、下部電極と除去用電極との間に電界を印加した後、及びテープ剥離を実施した後の光学顕微鏡写真を各々図7(a)〜図7(c)に示す。
最後に、PZT膜上にPt/Ti上部電極(Pt:150nm厚/Ti:50nm厚)を蒸着して、本発明の圧電素子を得た。
ベタPZT膜を成膜する際の基板温度及び成膜圧力を表1に示す条件とした以外は実施例1と同様にして、本発明の圧電素子を得た。
実施例1と同様にXRD分析を実施したところ、得られたベタPZT膜はいずれもペロブスカイト構造を有する(100)配向膜であった。XRDパターンを図10に示す。
実施例1と同様にSEM観察を実施したところ、得られたベタPZT膜は、Thornton zone modelにおけるzone Iの柱状構造膜であり、得られたベタPZT膜は多数のグレインからなり、グレイン間に間隙が見られた。ベタPZT膜の表面粗さRaを表1に示す。
ベタPZT膜を成膜する際の基板温度及び成膜圧力を表1に示す条件とした以外は実施例1と同様にして、3.3μm厚のベタPZT膜の成膜を実施した。
実施例1と同様にXRD分析を実施したところ、得られたベタPZT膜はいずれもペロブスカイト構造を有する(100)配向膜であった。XRDパターンを図10に示す。
得られたベタPZT膜の断面SEM写真及び表面SEM写真を図9(a)及び図9(b)に各々示す。得られたベタPZT膜は、基板面に対して略垂直方向に延びる多数の柱状体からなる柱状構造膜であり、その平均柱径は0.3μmであった。
3,3K,3C,3M,3Y インクジェット式記録ヘッド(液体吐出装置)
10 基板
20 下部電極
30 圧電体膜
30P ベタ圧電体膜
30N ベタ圧電体膜の不要部分
31 凸部
31S 凸部の側面
40 上部電極
41 除去用電極
60 インクノズル(液体貯留吐出部材)
61 インク室(液体貯留室)
62 インク吐出口(液体吐出口)
Claims (3)
- 基板上に下部電極と単数又は複数の凸部からなる所定のパターンを有する圧電体膜と上部電極とが順次形成され、前記下部電極と前記上部電極との間に電界が印加されて駆動される圧電素子の製造方法において、
前記下部電極が形成された前記基板上に、パターニングされていないベタ圧電体膜を成膜する工程(A)と、
前記ベタ圧電体膜上に、前記ベタ圧電体膜の不要部分に対応したパターンを有し、前記ベタ圧電体膜の不要部分を除去するための除去用電極を形成する工程(B)と、
前記下部電極と前記除去用電極との間に電界を印加して、前記除去用電極及び前記ベタ圧電体膜の不要部分にクラックを発生させる工程(C)と、
前記除去用電極及び前記ベタ圧電体膜の不要部分を除去する工程(D)とを有し、
前記工程(A)において、前記ベタ圧電体膜として、前記基板の基板面に対して非平行方向に延びる多数の柱状体からなる、Thornton zone modelにおけるzone Iの柱状構造膜である、表面粗さ420Å≧Ra≧200ÅのPZT膜を気相法により成膜することを特徴とする圧電素子の製造方法。 - 工程(B)において、前記除去用電極と同時に、前記所定のパターンを有する圧電体膜に対応したパターンを有し、前記除去用電極とは非導通の前記上部電極を形成することを特徴とする請求項1に記載の圧電素子の製造方法。
- 工程(D)後に、前記所定のパターンを有する圧電体膜に対応したパターンを有する前記上部電極を形成する工程(E)をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の圧電素子の製造方法。
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