以下に、本発明にかかる制動時の車輪過剰スリップを抑制する車輌用制動装置の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
〔実施の形態1〕
まず、実施の形態1について説明する。図1は、本発明による車輌制動装置の一例を示す油圧回路図である。図2は、本発明による車輌制動装置が備える電子制御装置の一例を示す図である。但し、本発明は車輌の制動装置の作動に関するソフトウェア的構成にその要旨を有しているので、図1および図2に表れているハードウェア的構成そのものは公知のものである。10にて全体的に示された制動装置は、運転者によるブレーキペダル12の踏み込み操作に応答して制動用の作動油を圧送するマスターシリンダ14を有している。ブレーキペダル12とマスターシリンダ14との間にはドライストロークシミュレータ16が設けられている。
マスターシリンダ14は、図1に示すように、第一のマスターシリンダ室14Aと第二のマスターシリンダ室14Bとを有し、これらのマスターシリンダ室14Aおよび14Bにはそれぞれ左前輪用の油圧導管18Aおよび右前輪用の油圧導管18Bの一端が接続されている。油圧導管18Aおよび18Bの他端にはそれぞれ左前輪および右前輪に制動力を発生するためのホイールシリンダ20FLおよび20FRが接続されている。
油圧導管18Aおよび18Bの途中にはそれぞれ常開型の電磁開閉弁(マスターカット弁)22Lおよび22Rが設けられている。これらの電磁開閉弁22Lおよび22Rはそれぞれ第一のマスターシリンダ室14Aおよび第二のマスターシリンダ室14Bとこれらに対応するホイールシリンダ20FLおよび20FRとの連通を選択的に遮断する遮断弁として機能する。またマスターシリンダ14と電磁開閉弁22Lとの間のブレーキ油圧供給導管18Aには常閉型の電磁開閉弁24を介してウェットストロークシミュレータ26が接続されている。
マスターシリンダ14にはリザーバ28が接続されており、リザーバ28には送油導管30の一端が接続されている。送油導管30には電動機32により駆動されるオイルポンプ34が接続されており、オイルポンプ34の吐出側の油圧供給導管36には油圧を蓄圧するアキュムレータ38が接続されている。送油導管30には油戻り導管40の一端が接続されている。リザーバ28、オイルポンプ34、アキュムレータ38等はホイールシリンダ20FL、20FR、20RL、20RR内の圧力を昇圧するための油圧源として機能する。
尚、図1には示されていないが、オイルポンプ34の吸入側の送油導管30と吐出側の油圧供給導管36とを連通接続する導管が設けられ、該導管の途上にはアキュムレータ38内の圧力が基準値を越えた場合に開弁し吐出側の油圧供給導管36より吸入側の送油導管30へ油を戻すリリーフ弁が設けられている。
オイルポンプ34の吐出側の油圧供給導管36は、常閉型の電磁開閉弁42FLおよび油圧導管44FLを経てホイールシリンダ20FLと接続されている。同様に、オイルポンプ34の吐出側の油圧供給導管36は、常閉型の電磁開閉弁42FRおよび油圧導管44FRを経てホイールシリンダ20FRと接続され、常閉型の電磁開閉弁42RLおよび油圧導管44RLを経てホイールシリンダ20RLと接続され、常閉型の電磁開閉弁42RRおよび油圧導管44RRを経てホイールシリンダ20RRと接続されている。
ホイールシリンダ20FL、20FR、20RL、20RRは、またそれぞれ油圧導管44FL、44FR、44RL、44RRおよび常閉型の電磁開閉弁46FL、46FR、46RL、46RRを経て油戻り導管40に接続されている。
電磁開閉弁42FL、42FR、42RL、42RRはそれぞれホイールシリンダ20FL、20FR、20RL、20RRに対する昇圧弁(または油圧保持弁)として機能し、電磁開閉弁46FL、46FR、46RL、46RRはそれぞれホイールシリンダ20FL、20FR、20RL、20RRに対する減圧弁(または油圧保持弁)として機能し、これらの電磁開閉弁は互いに協働してアキュムレータ38内の油圧源に基づいて各ホイールシリンダへ供給される油圧を個別に増減制御することができる。
常開型の電磁開閉弁22Lおよび22Rは、駆動電流が供給されない非制御モード時には開弁状態に維持され、常閉型の電磁開閉弁42FL、42FR、42RL、42RRおよび46FL、46FR、46RL、46RRは、駆動電流が供給されない非制御モード時には閉弁状態に維持される。また電磁開閉弁42FL、42FR、42RL、42RRおよび46FL、46FR、46RL、46RRの何れかが故障し、対応するホイールシリンダ内の圧力を正常に制御できなくなった場合には、これらの電磁開閉弁は非制御モードとされ、これにより左右前輪のホイールシリンダ内の圧力は直接マスターシリンダ14により制御される。
第一のマスターシリンダ室14Aと電磁開閉弁22Lとの間の油圧導管18Aには該油圧導管内の圧力を第一のマスターシリンダ油圧力として検出する第一の油圧センサ48Aが設けられている。同様に第二のマスターシリンダ室14Bと電磁開閉弁22Rとの間の油圧導管18Bには該油圧導管内の圧力を第二のマスターシリンダ油圧力として検出する第二の油圧センサ48Bが設けられている。ブレーキペダル12には運転者によるブレーキペダルの踏み込みストロークを検出するストロークセンサ50が設けられている。オイルポンプ34の吐出側の油圧供給導管36には該導管内の圧力をアキュムレータ圧力として検出する油圧センサ52が設けられている。更に、図示の制動装置では、ホイールシリンダ20FL、20FR、20RL、20RR内の圧力が、それぞれ油圧センサ54FL、54FR、54RL、54RRにより圧力Pwi(i=fl,fr,rl,rr)として検出されるようになっている。但し、本発明の制御に関して、ホイールシリンダ20FL、20FR、20RL、20RR内の圧力が上記の閾値に達したことをマスターシリンダ油圧によって推定する限りに於いては、油圧センサ54FL、54FR,54RL,54RRは設けられなくてもよい。各車輪の回転速度は、それぞれ車輪速センサ56FL、56FR,56RL,56RRよりVwi(i=fl,fr,rl,rr)として検出されるようになっている。以上の構成、特に各種のセンサに係る構成は、この種の制動装置の油圧回路の一般的な構成として記したものであり、その全てが本発明の実施に関与するものではない。
電磁開閉弁22Lおよび22R、電磁開閉弁24、電動機32、電磁開閉弁42FL〜42RR、電磁開閉弁46FL〜46RRは、図2に示すように、電子制御装置58により制御される。電子制御装置58はマイクロコンピュータ60と駆動回路62よりなっている。マイクロコンピュータ60には、油圧センサ48Aおよび48Bよりそれぞれ第一および第二のマスターシリンダ油圧を示す信号、ストロークセンサ50よりブレーキペダル12の踏み込みストロークを示す信号、油圧センサ52よりアキュムレータ圧力を示す信号、油圧センサ54FL〜54RRよりそれぞれホイールシリンダ20FL〜20RR内の圧力Pwi(i=fl,fr,rl,rr)を示す信号、車輪速センサ56FL、56FR,56RL,56RRより各車輪の回転速度Vwi(i=fl,fr,rl,rr)を示す信号の他に、図には示されていない車速センサより車速を示す信号、ヨーレートセンサより車体のヨーレートを示す信号、前後加速度センサより車体の前後加速度を示す信号、横加速度センサより車体の横加速度を示す信号等のその他センサからの信号が供給される。
マイクロコンピュータ60は、制動制御ルーチンを記憶しており、ブレーキペダル12が踏み込まれると電磁開閉弁24を開弁すると共に、電磁開閉弁22Lおよび22Rを閉弁し、その状態にて油圧センサ48A、48Bにより検出されたマスターシリンダ油圧およびストロークセンサ50より検出された踏み込みストロークに基づき要求されている制動力を演算し、ホイールシリンダ20FL〜20RRの各々に対する目標ホイールシリンダ圧力Pwti(i=fl,fr,rl,rr)を演算し、各ホイールシリンダの圧力Pwi(i=fl,fr,rl,rr)が目標ホイールシリンダ圧力Pwtiになるよう電磁開閉弁42FL〜42RRおよび46FL〜46RRを制御する。そうした通常のパワーアシスト制動制御の一環として、本発明に係る制動制御が行われる。
ところで、マスターシリンダや油圧オイルポンプの如き制動油圧源よりホイールシリンダへ向けて制動油が圧送されると、ブレーキディスクから引き離されていたブレーキパッドがブレーキディスクへ向けて駆動され、その間に残されていたクリアランスを解消しつつブレーキパッドがブレーキディスクへ向けて駆動されるが、このときホイールシリンダへ向けて流れる制動油の積算量、即ち上記の制動油消費量Qwと、それに対応したホイールシリンダ制動油圧Pwの増大との間の関係は、添付の図3に示すようになる。図3に示すような制動油消費量とホイールシリンダ制動油圧との間の関係は、上記のクリアランスが存在する初期油圧P1近傍に於ける急勾配の部分を一つの直線にて近似し、上記のクリアランスが実質的に解消し、ブレーキパッドがブレーキディスクに対し実質的に押し付けられた油圧以降の緩勾配の部分を一つの直線にて近似することができる。そこで、マスターシリンダ油圧の増大に対するホイールシリンダ油圧の増大の遅れは、上記の制動油消費量に相当する制動油が制動油圧源によりホイールシリンダへ向けて流れることを要するために生ずるものであることに鑑みれば、マスターシリンダ油圧の増大に対するホイールシリンダ油圧の増大遅れを上記の2つの近似直線に対応した2つの一次関数による推定値の和として簡便に推定できると考えられる。そして車輌の走行中に車輪を制動し、過度の減速により車輪に過度のスリップや後輪より前輪への荷重移動を生じさせて制動効果を却って減じる恐れが生じるのは、ホイールシリンダ制動油圧が緩勾配を近似した直線上にあるP3を越えたところからであるので、制動時には、ホイールシリンダ制動油圧がP3に達するまでは、ホイールシリンダ制動油圧をマスターシリンダ油圧の増大に追従させて可及的に速やかに増大させるが、ホイールシリンダ制動油圧がP3以上に増大するとき、ホイールシリンダ制動油圧の増大速度をマスターシリンダ油圧の上昇速度に対応する上昇速度より小さくするようその上昇速度を適度に抑制すれば、制動の性能を最大限に高めることができると考えられる。
そこで図1に例示した如き制動装置ハードウエアによるパワーアシスト制動に於いて、ホイールシリンダ制動油圧が、マスターシリンダ油圧の増大に対し、図4に例示する如く時間的遅れを持って増大することを踏まえ、ホイールシリンダ制動油圧PwがP3に達した時点tw3より、その上昇速度を2点鎖線にて示すマスターシリンダ油圧の上昇速度に対応する上昇速度から引き下げ、ホイールシリンダ制動油圧を例えば実線にて示す如く階段状に緩やかに上昇させることを、図1に示す制動装置に於ける如くホイールシリンダ制動油圧を直接検出する油圧センサ54FL〜54RRが設けられているときには、それを直接検出し、またそのようなホイールシリンダ制動油圧センサが設けられていないときには、以下の要領によりホイールシリンダ制動油圧をマスターシリンダ油圧から推定し、ホイールシリンダ制動油圧PwがP3に達したこと判断して行えばよい。
上記の如くマスターシリンダ油圧の増大に対するホイールシリンダ油圧の増大の遅れは、制動油消費量に相当する制動油が制動油圧源よりホイールシリンダへ向けて流れることを要するために生ずるものであり、制動油消費量とホイールシリンダ制動油圧との間の関係が、初期油圧P1近傍の部分を近似する一つの直線と、ブレーキパッドがブレーキディスクに対し実質的に押し付けられた油圧以降の部分を近似する一つの直線の組合せにより認識できるとすれば、マスターシリンダ油圧の増大に対するホイールシリンダ油圧の増大遅れも2つの直線の組合せにより認識でき、マスターシリンダ油圧に基づいて2つの一次関数による推定値の和として推定できるはずである。図4にその推定要領を示す。今、図3の油圧P1近傍に対する急勾配の直線と油圧P3以上の領域に対する緩勾配の直線が交わる点に於ける油圧をP2とし、マスターシリンダ油圧PmがP1、P2、P3になる時点をそれぞれtm1、tm2、tm3とする。これに対してホイールシリンダ制動油圧PwがP1、P2、P3になる時点をそれぞれtw1、tw2、tw3とする。この場合、ホイールシリンダ制動油圧PwがP1になる時点をtw1とすれば、tw1は、厳密には、tm1より少し遅れるが、そもそも圧力P1は制動開始を確認するための極低い初期値であるので、この差は省略し、ホイールシリンダ制動油圧PwがP1になる時点はtm1と同時であるとする。尚、P1を極限の0まで小さくすれば、tw1はtm1に一致するが、P1を0としたのでは、tm1の時点が特定できない。マスターシリンダ油圧に対するホイールシリンダ制動油圧の遅れの現象は、上に図3を参照して説明した制動油消費量とホイールシリンダ制動油圧の関係にもとづくものであることに鑑みれば、以下の関係が成立し、K12とK23とは、概略、各制動装置に固有の定数になると考えられる。
(tw2−tm1)/(tm2−tm1)=K12
(tw3−tw2)/(tm3−tm2)=K23
これよりマスターシリンダ油圧Pmについて、それがP1、P2、P3になる時点tm1、tm2、tm3が検出されれば、
tw2=tm1+K12(tm2−tm1)
tw3=tw2+K23(tm3−tm2)
=tm1+K12(tm2−tm1)+K23(tm3−tm2)
として時点tw3が推定される。
次に、実施の形態1にかかる車輌用制動装置の作動制御を説明する。図5は本発明による車輌用制動装置の作動制御を、特に車輌の制動が所定の度合を越える急な度合にて行われる場合に適用する一つの実施の形態ついて示すフローチャートである。かかるフローチャートに沿った制御演算は図2に示すマイクロコンピュータ60により車輌の運転中数ミリセカンド〜数十ミリセカンドの周期にて繰り返されてよく、その間マスターシリンダ油圧PmがP1、P2、P3に達する時点tm1、tm2、tm3が検出される。
制御が開始されると、ステップ(S)10にてフラグF1が1であるか否かが判断される。フラグF1は制御の開始時に0にリセットされ、制御が後述のステップ140に至ったとき1にセットされ、制御が後述のステップ160に至ったとき0にリセットされるものであるので、この場合一先ず答はノー(No)であり、制御はステップ20へ進む。ステップ20に於いては、フラグF2が1であるか否かが判断される。フラグF2もまた制御の開始時に0にリセットされ、制御が後述のステップ100に至ったとき1にセットされ、制御が後述のステップ160に至ったとき0にリセットされるものであるので、ここでも一先ず答はノーであり、制御はステップ30へ進む。
ステップ30に於いては、マスターシリンダ油圧Pmが制動の開始を示すに十分な或る小さな限界値Pms以上に増大したか否かが判断される。Pmsは、例えば上記のP1とされてよい。答がノーであれば、それ以上の制御は本発明に於いては行われないので、制御はステップ40へ進み、マイクロコンピュータ60の一部に組み込まれているカウンタのカウント値Cが0にセットされ、この回の制御はこれにて終了する。尚、カウント値Cもまた制御の開始時には0にリセットされるので、制御が開始された後ステップ30よりそのままステップ40へ進んだときには、カウント値Cは元々0にリセットされている。ステップ30の答がイエス(Yes)になると、制御はステップ50へ進む。
ステップ50に於いては、上記のカウンタのカウント値Cが1だけ増分される。次いで制御はステップ60へ進み、マスターシリンダ油圧Pmが上述のP3を越えたか否かが判断される。マスターシリンダ油圧の上昇速度の如何によらず当初の答はノーであり、しばらく制御はこれよりステップ70へ進み、カウント値Cがある比較的大きい設定値Cmeを越えたか否かが判断される。この設定値Cmeは、マスターシリンダ油圧Pmが制動の開始を示すに十分な限界値Pms以上に増大した状態が、Cmeにこのフローチャートを巡る制御の繰り返し周期△tをかけたCmeΔtなる時間だけ継続したにも拘わらず、Pmの値が依然としてP3に達しないという状態、即ち制動が急制動ではないという状態を確認するための適当な値である。ステップ70の答がイエスであるとき、即ち制動が急制動ではないときには、この実施の形態では、制動制御には及ばないとして、制御はステップ40へ進み、それまでカウントされていたカウント値Cを0にリセットした後、これにて今回の制御は初期状態に戻される。一方、ステップ70の答がノーであれば、その間は、カウント値Cのカウントアップを続けつつ制御はリターンされる。
ステップ60の答がイエスとなったときには、制御はステップ80へ進み、カウント値Cが所定の設定値Cmoを越えたか否かが判断される。この設定値Cmoは、マスターシリンダ油圧PmがP3を越えるまでの時間がCmoΔtを越えてはいないことにより制動がこの実施の形態では制動制御の対象とすべき急制動であることを確認するための値とされる。答がノーのとき、即ち、現在の制動がこの実施の形態では制動制御の対象とする急制動であるときには、制御はステップ90へ進み、図4について説明した要領にてマスターシリンダ油圧PmがP1、P2、P3に達した時点tm1、tm2、tm3に基づいてホイールシリンダ制動油圧PwがP3に達する時点tw3の推定が行われる。次いで制御はステップ100へ進み、フラグF2が1にセットされる。ステップ80の答がイエスであるとき、即ちマスターシリンダ油圧PmがP3には達したが、その時までの経過時間はすでにCmoΔtを越えているときには、やはりこの制動はこの実施の形態による制動制御の対象となる急制動ではないので、制御はステップを110へ進み、カウント値Cが0にリセットされ、制御は初期状態に戻される。フラグF2が1にセットされた後は、制御はステップ20よりステップ120へ進むようになる。
ステップ120に於いては、ステップ90に於いて推定された時点tw3に達したか否かが判断される。答がノーである間、制御はこれよりリターンしてステップ120を巡るフローにて繰り返される。そしてステップ120の答がイエスとなったところで、制御はステップ130へ進み、図4に於けるホイールシリンダ制動油圧の2点鎖線部を階段状の実線部に変更するような、ホイールシリンダ制動油圧をマスターシリンダ油圧に対応するホイールシリンダ制動油圧より低減させる制御が行われる。この油圧低減制御は、開始から例えば200ミリセカンドの如き所定時間だけ行われてよい。ステップ130の制御が行われる間、制御はステップ140を通り、フラグF1が1にセットされ、次いでステップ150に於いて油圧低減制御を終了すべきか否かが監視され、制御はステップ10より直接ステップ130へ進むと共に、低減制御の終了時期が待たれる。そして低減制御を終了すべき時期に達したときには低減制御が終了される。ステップ150の答がイエスになると、制御はステップを160へ進み、カウント値C、フラグF1およびフラグF2が0にリセットされ、制御は初期状態に戻される。
以上の図5に示すフローチャートによる制動制御は、図4に示す如くマスターシリンダ油圧がP1、P2、P3に達した時点tm1、tm2、tm3からホイールシリンダ制動油圧がP3に達する時点tw3を推定して作動するものであるが、図1に示す制動装置に於ける如くホイールシリンダの制動油圧を直接検出するセンサか設けられている場合には、ホイールシリンダ制動油圧がP3に達する時点tw3はセンサより直接得られるので、図5に示す如き制御は図6に示す如くより簡単になる。図6に於いて、図5に示すステップと同じステップは図5に於けると同じステップ番号により示されており、また図5に於けるステップと同じではないがこれに対応するステップは図5に於けるステップ番号より大きいステップ番号により示されている。
この場合、カウントの設定値Cweは、Cweにこのフローチャートを巡る制御の繰り返し周期ΔtをかけたCweΔtなる時間だけ継続したにも拘わらず、Pwの値が依然としてP3に達しないことによって制動が急制動ではないという状態を確認するための適当な値であり、またカウントの設定値Cwoは、ホイールシリンダ制動油圧PwがP3を越えるまでの時間がCwoΔtを越えてはいないことにより制動が制動制御の対象とする急制動であることを確認するための値とされる。
以上の捕足説明をもって、図6に示す制御は、図5についての説明から明らかであると思われるので、図6に示す制御についての更なる重複的説明は明細書の冗長化を避けるため省略する。
〔実施の形態2〕
次に、実施の形態2について説明する。実施の形態2にかかる車輌用制動装置が実施の形態1にかかる車輌用制動装置と異なる点は、前輪に対応するホイールシリンダ制動油圧の上昇速度をマスターシリンダ油圧の上昇速度に対応する上昇速度より小さくする制御、すなわちピッチング抑制制御(上記実施の形態1における低減制御)を異なる2つのピッチング抑制制御実行条件のいずれか一方を満たすと実行する点である。ここで、異なるピッチング抑制制御実行条件ごとに実行されるピッチング抑制制御を第1ピッチング抑制制御と第2ピッチング抑制制御と称する。なお、実施の形態2にかかる車輌用制動装置の基本的構成は、実施の形態1にかかる車輌用制動装置の基本的構成とほぼ同一であるのでその説明は省略する。
第1ピッチング抑制制御におけるピッチング抑制制御実行条件(以下、単に「第1制御実行条件」と称する。)は、車輌の制動時に、前輪のホイールシリンダの制動油圧が所定の閾値に達することである。実施の形態2では、第1制御実行条件は、マスターシリンダ油圧Pmが所定の閾値であるP3(例えば、6.0MPa程度)以上となること、急踏み状態であること、前輪に対応するホイールシリンダ制動油圧PwがP3以上となることのすべてを満たすことである。ここで、急踏み状態であるか否かの判定は、マスターシリンダ油圧に基づいて行われる。具体的には、急踏み状態であるか否かの判定は、車輌の制動時においてマスターシリンダ油圧Pmが所定の閾値であるP3に達する時点tm3までのマスターシリンダ油圧Pmの変化に基づいて行われる。急踏み状態であると判定される場合は、例えば、マスターシリンダ油圧Pmが第1急踏み状態判定圧(例えば、4MPa程度)に達した時点tm4から時点tm3までの時間が第1急踏み状態判定時間以下であること、マスターシリンダ油圧Pmが第2急踏み状態判定圧(例えば、4.5MPa程度)に達した時点tm5から第3急踏み状態判定圧(例えば、5.5MPa程度)に達した時点tm6までの時間が第2急制動時判定時間以下であることのすべてを満たした場合である。また、急踏み状態であると判定される場合は、上記実施の形態1と同様に、C(時点tm1から時点tm3までのカウント値)がCme以下であることを満たした場合であっても良い。
第2ピッチング抑制制御におけるピッチング抑制制御実行条件(以下、単に「第2制御実行条件」と称する。)は、車輌の制動時に、第1ピッチング抑制制御が行われない状態で、マスターシリンダ油圧が制御実行圧に達し、マスターシリンダ油圧の変化に関する関連値が制御実行値に達している、すなわち踏み増し状態であることである。実施の形態2では、第2制御実行条件は、上記急踏み状態でないこと、マスターシリンダ油圧Pmが制御実行圧であるP3以上となること、踏み増し状態である、すなわちマスターシリンダ油圧Pmの変化に関する関連値であるマスターシリンダ油圧Pmの微分値ΔPmが制御実行値ΔP4を越えることのすべてを満たすことである。ここで、踏み増し状態である否かの判定は、実施の形態2では、マスターシリンダ油圧が制御実行圧に達した状態、すなわちマスターシリンダ油圧PmがP3に達した状態で判定される。また、制御実行値ΔP4は、マスターシリンダ油圧PmがP3に達した状態で、急踏み状態であることを判定することができる値である。制御実行値ΔP4は、例えば、20MPa/s程度である。なお、制御実行圧を所定の閾値と同一のP3としたが本発明はこれに限定されるものではなく所定の閾値よりも大きい値であってもよい。
次に、実施の形態2にかかる車輌用制動装置の作動制御を説明する。図7は、本発明の車輌用制動装置の作動を例示するフローチャート図である。図8は、マスターシリンダ油圧と前輪に対応するホイールシリンダ制動油圧の間の関係を示す図である。図7に示すフローチャートに沿った制御演算は図2に示すマイクロコンピュータ60により車輌の運転中数ミリセカンド〜数十ミリセカンドの周期にて繰り返されてよく、その間マスターシリンダ油圧PmがP1、P2、P3に達する時点tm1、tm2、tm3が検出される。
まず、マイクロコンピュータ60は、図7に示すように、マスターシリンダ油圧PmがP3以上となったか否かを判定する(ステップST200)。ここでは、マイクロコンピュータ60は、第1制御実行条件の1つであるマスターシリンダ油圧Pmが所定の閾値に達したことおよび第2制御実行条件の1つである制御実行圧であるP3に達したことを満たすか否かを判定する。
次に、マイクロコンピュータ60は、マスターシリンダ油圧PmがP3以上であると判定する(ステップST200肯定)と、急踏み状態であるか否かを判定する(ステップST201)。ここでは、マイクロコンピュータ60は、第1ピッチング抑制制御および第2制御実行条件の1つであるマスターシリンダ油圧PmがP3に達したことを満たすと、第1制御実行条件の1つである急踏み状態であること、あるいは第2制御実行条件の1つである急踏み状態でないことのいずれかを満たすかを判定する。なお、マイクロコンピュータ60は、マスターシリンダ油圧PmがP3未満であると判定する(ステップST200否定)と、マスターシリンダ油圧PmがP3以上となるまで、ステップST200を繰り返す。
次に、マイクロコンピュータ60は、急踏み状態であると判定する(ステップST201肯定)と、前輪に対応するホイールシリンダ制御油圧PwがP3となる時点tw3を推定する(ステップST202)。ここでは、マイクロコンピュータ60は、第1制御実行条件の1つである急踏み状態であることを満たすと、マスターシリンダ油圧Pmに基づいて前輪に対応するホイールシリンダ制動油圧PwがP3に達する時点tw3の推定を行う。時点tw3の推定は、上記実施の形態1と同様に、マスターシリンダ油圧PmがP1、P2、P3に達した時点tm1、tm2、tm3に基づいて行われる。
次に、マイクロコンピュータ60は、推定された時点tw3となったか否かを判定する(ステップST203)。ここでは、マイクロコンピュータ60は、第1制御実行条件の1つである前輪に対応するホイールシリンダ制動油圧PwがP3以上となることを満たすか否かを判定する。
次に、マイクロコンピュータ60は、推定された時点tw3となったと判定する(ステップST203肯定)と、ピッチング抑制制御を実行する(ステップST204)。つまり、マイクロコンピュータ60は、第1制御実行条件を満たすことでピッチング抑制制御を実行する第1ピッチング抑制制御を実行する。ピッチング抑制制御は、実施の形態1と同様に、図4に示すように、前輪に対応するホイールシリンダ制動油圧Pwの2点鎖線部を階段状の実線部に変更するような、前輪に対応するホイールシリンダ制動油圧Pwをマスターシリンダ油圧Pmに応じた前輪に対応するホイールシリンダ制動油圧Pwより低減させる(以下、単に「前輪に対応するホイールシリンダ制動油圧Pwの昇圧を低減させる」と称する。)制御であり、ピッチング抑制制御終了条件を満たすまで実行される。なお、マイクロコンピュータ60は、推定された時点tw3となっていないと判定する(ステップST203否定)と、推定された時点tw3となるまで、ステップST203を繰り返す。
また、マイクロコンピュータ60は、図7に示すように、急踏み状態でないと判定する(ステップST201否定)と、踏み増し状態であるか否かを判定する(ステップST205)。ここでは、マイクロコンピュータ60は、第2制御実行条件の1つである急踏み状態でないことを満たすと、第2制御実行条件の1つである踏み増し状態であること、すなわちマスターシリンダ油圧PmがP3に達した状態で、マスターシリンダ油圧Pmの微分値ΔPmが制御実行値ΔP4を越えることを満たすか否かを判定する。
次に、マイクロコンピュータ60は、踏み増し状態であると判定する(ステップST205肯定)と、ピッチング抑制制御を実行する(ステップST204)。つまり、マイクロコンピュータ60は、第2制御実行条件を満たすことでピッチング抑制制御を実行する第2ピッチング抑制制御を実行する。ピッチング抑制制御は、図8に示すように、マスターシリンダ油圧PmがP3以上となり、微分値ΔPmが制御実行値ΔP4を越えると、前輪に対応するホイールシリンダ制動油圧Pwの昇圧を低減させる(例えば前輪に対応するホイールシリンダ制動油圧Pwを階段状に上昇するように変更する)制御であり、ピッチング抑制制御終了条件を満たすまで実行される(同図に示すPw(ピッチ)の部分)。なお、マイクロコンピュータ60は、微分値ΔPmが制御実行値ΔP4以下であると判定する(ステップST205否定)と、微分値ΔPmが制御実行値ΔP4を越えるまで、ステップST205を繰り返す。
以上のように、実施の形態2にかかる車輌用制動装置では、第1ピッチング抑制制御が実行できる場合は第1ピッチング抑制制御を優先して実行し、第1ピッチング抑制制御が実行されない状態において第2ピッチング抑制制御を実行する。つまり、実施の形態2にかかる車輌用制動装置では、第1ピッチング抑制制御が実行されない状態においても、ピッチング抑制制御を実行する。従って、運転者がブレーキペダル12を踏み込み操作を行っている状態から踏み増し状態となっても、車輌の制動時にマスターシリンダ油圧Pmが制御実行油圧P3に達することで、前輪に対応するホイールシリンダ制動油圧Pwの上昇速度をマスターシリンダ油圧Pmの上昇速度に対応する上昇速度より小さくすることが行われ、車輌の制動に当たって前輪に対応するホイールシリンダ制動油圧Pwをマスターシリンダ油圧Pmに応じて立ち上げつつ、前輪に対応するホイールシリンダ制御油圧Pwが急増することによる後輪のリフトアップを抑制することができる。これにより、制動を車輪スリップが過剰になったり制動距離が却って増大することのない範囲に抑制することができ、車輌の制動を最適化し、制動性能を最大限に高めることができる。
なお、上記実施の形態2にかかる車輌用制動装置では、第1制御実行条件として、マスターシリンダ油圧PmがP3以上の状態を所定時間継続することを加えてもよい。この場合における所定時間は、第1所定時間判定圧(例えば、4MPa程度)から第2所定時間判定圧(例えば、6MPa程度)までにおけるマスターシリンダ油圧Pmの変化に基づいて設定される。また、第1制御実行条件として、車輌の制動時においてマスターシリンダ油圧Pmが所定の閾値であるP3に達する時点tm3から前輪に対応するホイールシリンダ制動油圧Pwが所定の閾値であるP3に達する時点tw3までの遅れ時間が所定遅れ時間以下であることを加えてもよい。つまり、遅れ時間が長く、前輪に対応するホイールシリンダ制動油圧Pwが所定の閾値であるP3に達する時点tw3で、急制動が終了している虞がある場合は、ピッチング抑制制御を実行しなくてもよい。
また、上記実施の形態2にかかる車輌用制動装置では、第2制御実行条件の1つである踏み増し状態であることは、マスターシリンダ油圧が制御実行圧に達した状態で、すなわちマスターシリンダ油圧PmがP3に達した状態で、マスターシリンダ油圧Pmの微分値ΔPmが制御実行値ΔP4を越えることとしたが本発明はこれに限定されるものではなく、マスターシリンダ油圧が制御実行圧する前からスターシリンダ油圧Pmの微分値ΔPmが制御実行値ΔP4を越えることとしてもよい。この場合は、マイクロコンピュータ60は、マスターシリンダ油圧PmがP3以上であると判定されると、マスターシリンダ油圧Pmが制御実行圧よりも小さい踏み増し判定圧P5に達した状態でスターシリンダ油圧Pmの微分値ΔPmが制御実行値ΔP4を越えていた否かを判定することで、踏み増し状態であるか否かを判定する。図9は、低圧から踏み増した場合のマスターシリンダ油圧と前輪に対応するホイールシリンダ制動油圧の間の関係を示す図である。図10は、高圧から踏み増した場合のマスターシリンダ油圧と前輪に対応するホイールシリンダ制動油圧の間の関係を示す図である。図9に示すように、運転者によるブレーキペダル12の踏み込み操作が行われており、マスターシリンダ油圧Pmが低圧の際に、運転者によるブレーキペダルの踏み増しが行われると、マスターシリンダ油圧Pmが制御実行油圧P3に達した時点でのマスターシリンダ油圧Pmと前輪に対応するホイールシリンダ制御油圧Pwとの差圧がΔPLとなる。一方、図10に示すように、運転者によるブレーキペダル12の踏み込み操作が行われており、マスターシリンダ油圧Pmが高圧の際に、運転者によるブレーキペダルの踏み増しが行われると、マスターシリンダ油圧Pmが制御実行油圧P3に達した時点でのマスターシリンダ油圧Pmと前輪に対応するホイールシリンダ制御油圧Pwとの差圧は、マスターシリンダ油圧Pmの低圧時に踏み増しが行われたときの差圧ΔPLよりも小さいΔPHとなる。つまり、マスターシリンダ油圧Pmの低圧時に踏み増しが行われた場合は、マスターシリンダ油圧Pmの高圧時に踏み増しが行われた場合と比較して、マスターシリンダ油圧Pmが制御実行油圧P3に達した時点での前輪に対応するホイールシリンダ制御油圧Pwが低くなる。第2ピッチング抑制制御において、ピッチング抑制制御を実行する際の前輪に対応するホイールシリンダ制御油圧Pwを低くしないためには、マスターシリンダ油圧Pmの高圧時に踏み増しが行われることが好ましい。従って、踏み増し判定圧P5は、第2制御実行条件を満たして、ピッチング抑制制御を実行することで、後輪のリフトアップが行われない前輪に対応するホイールシリンダ制御油圧の際にピッチング抑制制御が実行されることを抑制することができる値とする。踏み増し判定圧P5は、例えば車輌用制動装置の諸元などで設定されるものであり、4MPa程度である。
〔実施の形態3〕
次に、実施の形態3について説明する。実施の形態3にかかる車輌用制動装置が実施の形態1、2にかかる車輌用制動装置と異なる点は、ピッチング抑制制御(実施の形態2のようなピッチング抑制制御実行条件が異なる場合も含まれる)のみならず、ブレーキアシスト制御および左右配分制御を実行することができる点である。なお、実施の形態3にかかる車輌用制動装置の基本的構成は、実施の形態1にかかる車輌用制動装置の基本的構成とほぼ同一であるのでその説明は省略する。
ピッチング抑制制御は、上記実施の形態1にかかる車輌用制動装置により実行されるものおよび実施の形態2にかかる車輌用制動装置により実行されるものと同様であり、ピッチング抑制制御実行条件を満たすことで、前輪に対応するホイールシリンダ制動油圧Pwの上昇速度をマスターシリンダ油圧Pmの上昇速度に対応する上昇速度より小さくする制御である。ピッチング抑制制御実行条件としては、マスターシリンダ油圧Pmが所定の閾値であるP3(例えば、6.0MPa程度)以上となること、急踏み状態であること、前輪に対応するホイールシリンダ制動油圧PwがP3以上となることのすべてを満たすこと、あるいは上記急踏み状態でないこと、マスターシリンダ油圧Pmが制御実行圧であるP3以上となること、踏み増し状態であることのすべてを満たすことのいずれかである。
ブレーキアシスト制御(以下、単に「BA制御」と称する)は、車輌の制動時に、運転者によるブレーキペダル12の踏み込み操作では、運転者が要求する制動力を得ることができない場合に、制動力を増加するものである。BA制御は、ブレーキアシスト制御実行条件(以下、単に「BA制御実行条件」と称する。)を満たすことで、マスターシリンダ油圧Pmに基づいてホイールシリンダ制動油圧Pwを強制的に昇圧するものである。実施の形態3では、BA制御は、図1に示すように、オイルポンプ34を駆動制御することにより行われる。上述のように、オイルポンプ34により加圧され油圧供給導管36に吐出された制動油は、電磁開閉弁42FLおよび油圧導管44FLを介してホイールシリンダ20FLに供給され、電磁開閉弁42FRおよび油圧導管44FRを介してホイールシリンダ20FRに供給され、電磁開閉弁42RLおよび油圧導管44RLを介してホイールシリンダ20RLに供給され、電磁開閉弁42RRおよび油圧導管44RRを介してホイールシリンダ20RRに供給される。従って、BA制御では、オイルポンプ34と接続されているホイールシリンダ20FL、20FR、20RL、20RRに対応する、すなわち各車輪に対応するホイールシリンダ制動油圧Pwをマスターシリンダ油圧Pmに基づいてマスターシリンダ油圧Pmの上速速度に対応する上昇速度よりも大きい上昇速度で昇圧する。つまり、BA制御では、ホイールシリンダ制動油圧Pwを制御する電磁開閉弁42FL、42FR、42RL、42RRよりもオイルポンプ34側、すなわち上流側における油圧をマスターシリンダ油圧Pmの勾配よりもホイールシリンダ制動油圧Pwが高い勾配で昇圧するように制御する。ここで、BA制御における昇圧は、昇圧勾配が予め設定されているものである。また、BA制御実行条件は、マスターシリンダ油圧Pmに基づくものであり、例えばマスターシリンダ油圧PmがBA制御実行圧P6以上となること、マスターシリンダ油圧Pmの変化に関する関連値、例えばマスターシリンダ油圧Pmの微分値ΔPmがBA制御実行値ΔP7を越えることのすべてを満たすことなどである。ここで、微分値ΔPmが制御実行値ΔP7を越えるか否かは、マスターシリンダ油圧Pmが制御実行圧P6に達した状態で判定される。
左右配分制御は、車輌の制動時に、車輌の姿勢が不安定となることを抑制するものである。左右配分制御は、左右配分制御実行条件を満たすことで、車輌の姿勢に基づいて少なくとも左前輪に対応するホイールシリンダ制動油圧Pwと右前輪に対応するホイールシリンダ制動油圧Pwとの間の前輪制動差圧を発生させるものである。実施の形態3では、左右配分制御は、前輪のうち、一方の前輪に対応するホイールシリンダ制動油圧Pwaに対して他方の前輪に対応するホイールシリンダ制動油圧Pwbを車輌の姿勢に基づいて前輪制動差圧が発生するように制御、あるいは、後輪のうち、一方の後輪に対応するホイールシリンダ制動油圧Pwに対して他方の後輪に対応するホイールシリンダ制動油圧Pwを車輌の姿勢に基づいて後輪制動差圧(左後輪に対応するホイールシリンダ制動油圧Pwと右後輪に対応するホイールシリンダ制動油圧Pwとの間の差圧)が発生するように制御の少なくともいずれか一方を実行する。左右配分制御は、車輌の姿勢を各車輪速センサ56FL、56FR,56RL,56RRより検出された各車輪の回転速度Vwi(i=fl,fr,rl,rr)の回転速度差に基づいて推定する。つまり、左右配分制御は、各車輪の回転速度差に基づいて前輪制動差圧が発生するように制御、あるいは、後輪制動差圧が発生するように制御の少なくともいずれか一方を実行する。また、左右配分制御は、減圧モードと昇圧モードとからなり、これらのモードにより車輌の姿勢に基づいて前輪制動差圧あるいは後輪制動差圧の少なくともいずれか一方を発生させる。減圧モードは、車輌の姿勢に基づいて前輪制動差圧を発生させる場合に他方の前輪に対応するホイールシリンダ制動油圧Pwbを一方の前輪に対応するホイールシリンダ制動油圧Pwaに対して前輪制動差圧まで減圧させ、車輌の姿勢に基づいて後輪制動差圧を発生させる場合に他方の後輪に対応するホイールシリンダ制動油圧Pwを一方の後輪に対応するホイールシリンダ制動油圧Pwに対して後輪制動差圧まで減圧させるものである。昇圧モードは、前輪制動差圧に基づいて減圧した場合、減圧された他方の前輪に対応するホイールシリンダ制動油圧Pwbを一方の前輪に対応するホイールシリンダ制動油圧Pwaまで昇圧させ、後輪制動差圧に基づいて減圧した場合、減圧された他方の後輪に対応するホイールシリンダ制動油圧Pwを一方の後輪に対応するホイールシリンダ制動油圧Pwまで昇圧させるものである。ここで、昇圧モードにおける昇圧は、昇圧勾配が予め設定されているものであり、例えば昇圧勾配(BA制御における昇圧勾配よりも低い)に基づいた所定の上昇速度で段階状に行われる。また、左右配分制御実行条件は、車輌の姿勢に基づくものであり、例えば車輌の姿勢が不安定、特に車輌のヨー方向における姿勢が不安定となることを満たすことなどである。なお、車輌の姿勢の推定は、各車輪の回転速差のみならず、ヨーレートセンサにより検出された車体のヨーレート、前後加速度センサより検出された車体の前後加速度、横加速度センサより検出された車体の横加速度などに基づいて推定しても良い。
次に、実施の形態3にかかる車輌用制動装置の作動制御を説明する。図11は、本発明の車輌用制動装置の作動を例示するフローチャート図である。図12は、マスターシリンダ油圧とホイールシリンダ制動油圧の間の関係を示す図である。図13は、マスターシリンダ油圧とホイールシリンダ制動油圧の間の関係を示す図である。図14は、マスターシリンダ油圧とホイールシリンダ制動油圧の間の関係を示す図である。図11に示すフローチャートに沿った制御演算は図2に示すマイクロコンピュータ60により車輌の運転中数ミリセカンド〜数十ミリセカンドの周期にて繰り返されてよい。なお、図12〜図14は、マスターシリンダ油圧Pmと前輪に対応するホイールシリンダ制動油圧Pwとの間の関係を示すものである。
まず、マイクロコンピュータ60は、図11に示すように、制動が開始された後、左右配分制御を実行中であるか否かを判定する(ステップST300)。ここでは、マイクロコンピュータ60は、左右配分制御実行条件を満たしているか否かを判定する。例えば、左右配分制御実行条件を満たす場合に1となり、満たさない場合に0となる左右配分制御フラグの状態に基づいて判定しても良い。
次に、マイクロコンピュータ60は、左右配分制御を実行中であると判定する(ステップST300肯定)と、BA制御を実行中であるか否かを判定する(ステップST301)。ここでは、マイクロコンピュータ60は、左右配分制御実行条件を満たしている状態で、BA制御実行条件を満たしているか否かを判定する。例えば、BA制御実行条件を満たす場合に1となり、満たさない場合に0となるBA制御フラグの状態に基づいて判定しても良い。
次に、マイクロコンピュータ60は、BA制御を実行中であると判定する(ステップST301肯定)と、左右配分制御における昇圧勾配をBA制御における昇圧勾配と同じに設定する(ステップST302)。ここで、左右配分制御実行条件を満たし、左右配分制御を実行中に、BA制御実行条件を満たす場合は、BA制御に対して左右配分制御が優先して実行される。つまり、左右配分制御およびBA制御が同時に実行される。BA制御実行条件を満たした場合は、BA制御が実行され、ホイールシリンダ制動油圧Pwが予め定められた昇圧勾配Taに基づいて強制的に昇圧される。BA制御の実行中に、左右配分制御実行条件を満たした場合は、ホイールシリンダ油圧Pwが強制的に昇圧されている状態で、左右配分制御が実行される。例えば、BA制御の実行中に、左右配分制御実行条件を満たし、車輌の姿勢に基づいて前輪制動差圧を発生させる場合は、図12に示すように、BA制御実行条件を満たした(BA制御ON)時点tw4からBA制御が実行され、前輪に対応するホイールシリンダ制動油圧Pw(同図に示す実線)が予め定められた昇圧勾配Taに基づいて強制的に昇圧される。次に、ホイールシリンダ油圧Pwが強制的に昇圧されている状態で、左右配分制御実行条件を満たした(左右配分制御ON)時点tw5から左右配分制御が実行されると、一方の前輪に対応するホイールシリンダ制動油圧Pwaは、BA制御により強制的に昇圧される(同図に示す実線のPwa(BA))。他方の前輪に対応するホイールシリンダ制動油圧Pwbは、左右配分制御の減圧モードにより一方の前輪に対応するホイールシリンダ制動油圧Pwaに対して車輌の姿勢に基づいた前輪制動差圧が発生できるまで減圧され、減圧後に昇圧モードにより一方の前輪に対応するホイールシリンダ制動油圧Pwaまで昇圧される(同図に示す実線のPwb(左右))。このとき、左右配分制御の昇圧モードの昇圧勾配Tb、すなわち他方の前輪に対応するホイールシリンダ制動油圧Pwbの昇圧勾配Tbは、予め設定された昇圧勾配ではなく、一方の前輪に対応するホイールシリンダ制動油圧Pwaの昇圧勾配、すなわちBA制御による昇圧勾配Taと同じに設定する。これにより、BA制御によりホイールシリンダ制動油圧Pwが強制的に昇圧されている状態であっても、左右配分制御が実行されることにより、発生する前輪制動差圧を車輌の姿勢に基づいたものとすることができ、BA制御による前輪制動差圧の変化を抑制することができ、車輌の姿勢が不安定となることを抑制することができる。従って、BA制御および左右配分制御が同時に実行されていても、車輌の制動時に、運転者によるブレーキペダル12の踏み込み操作では、運転者が要求する制動力を得ることができない場合に、制動力を増加すること、車輌の姿勢が不安定となることを抑制することとの両立を図ることができる。これにより、運転者の要求する制動力を発生することができるとともに、車輌の姿勢を安定して維持できるので、車輌の制動を最適化し、制動性能を最大限に高めることができる。
また、マイクロコンピュータ60は、BA制御を実行中でないと判定する(ステップST301否定)と、左右配分制御に従う(ステップST303)。ここで、左右配分制御実行条件を満たしている状態で、BA制御実行条件を満たしていない場合は、左右配分制御が実行される。従って、左右配分制御実行条件を満たすことで、左右配分制御が実行されると、一方の前輪に対応するホイールシリンダ制動油圧Pwaは、ホイールシリンダ制動油圧Pwとなる。また、他方の前輪に対応するホイールシリンダ制動油圧Pwbは、左右配分制御の減圧モードにより一方の前輪に対応するホイールシリンダ制動油圧Pwaに対して前輪制動差圧が発生できるまで減圧され、減圧後に昇圧モードにより、予め設定された昇圧勾配に基づいて一方の前輪に対応するホイールシリンダ制動油圧Pwaまで昇圧される。
また、マイクロコンピュータ60は、左右配分制御を実行中でないと判定する(ステップST300否定)と、ピッチング抑制制御を実行中であるか否かを判定する(ステップST304)。ここでは、マイクロコンピュータ60は、左右配分制御実行条件を満たしていない状態で、ピッチング抑制制御実行条件を満たしているか否かを判定する。例えば、ピッチング抑制制御実行条件を満たす場合に1となり、満たさない場合に0となるピッチング抑制制御フラグの状態に基づいて判定しても良い。
次に、マイクロコンピュータ60は、ピッチング抑制制御を実行中であると判定する(ステップST304肯定)と、BA制御を実行中であるか否かを判定する(ステップST305)。ここでは、マイクロコンピュータ60は、ピッチング抑制制御実行条件を満たしている状態で、BA制御実行条件を満たしているか否かを判定する。
次に、マイクロコンピュータ60は、BA制御を実行中であると判定する(ステップST305肯定)と、BA制御によるホイールシリンダ制御油圧Pwの昇圧を中止する(ステップST306)。ここでは、ピッチング抑制制御実行条件を満たし、ピッチング抑制制御を実行中に、BA制御実行条件を満たす場合は、ピッチング抑制制御の終了までBA制御を実行しない。つまり、ピッチング抑制制御を実行中には、BA制御実行条件を満たしBA制御を実行できる状態であっても、BA制御をホイールシリンダ制御油圧Pwの昇圧を中止することで実行しない。例えば、ピッチング抑制制御の実行中に、BA制御実行条件を満たし、BA制御によりホイールシリンダ制動油圧Pwを昇圧できる場合は、図13に示すように、ピッチング抑制制御実行条件を満たした(ピッチング抑制制御ON)時点tw3からピッチング抑制制御が実行され、前輪に対応するホイールシリンダ制動油圧Pwの昇圧を低減させる(同図に示す実線のPw(ピッチ))。ここで、ピッチング抑制制御によりホイールシリンダ制動油圧Pwbが制御されている状態で、BA制御実行条件を満たしても(時点tw7、BA制御ON)、ホイールシリンダ制御油圧Pwの昇圧を中止することで、BA制御(同図に示す一点鎖線および二点鎖線)を実行しない。そして、ピッチング抑制制御終了条件を満たす時点tw8(ピッチング抑制制御OFF)において、BA制御実行条件を満たしている場合(BA制御ON)は、中止されていたホイールシリンダ制御油圧Pwの昇圧を行うことで、BA制御を実行する。
ここで、ピッチング抑制制御は前輪に対応するホイールシリンダ制動油圧Pwを通常よりも減圧することを目的とする制御であり、BA制御はホイールシリンダ制動油圧Pwを通常よりも昇圧することを目的とする制御である。従って、ピッチング抑制制御実行中にBA制御実行条件を満たすことでピッチング抑制制御およびBA制御が同時に実行されると、BA制御を実行することによりホイールシリンダ制動油圧Pwを昇圧しても、ピッチング抑制制御を実行しているため、電磁開閉弁42FL、42FRが制御されることで前輪に対応するホイールシリンダ制動油圧Pwが減圧される。ここで、上述のように、電磁開閉弁42FL、42FRが制御され、前輪に対応するホイールシリンダPwが減圧されても、BA制御が実行されている場合は上流側における油圧が昇圧された状態となる。従って、ピッチング抑制制御が終了した際に、BA制御が実行中であると、減圧されていた左右前輪に対応するホイールシリンダPwが急激に昇圧することとなり、後輪がリフトアップする虞が発生し、ピッチング抑制制御を実行することによる効果が低下する虞があった。
しかしながら、上述のように、ピッチング抑制制御実行条件を満たし、ピッチング抑制制御を実行中に、BA制御実行条件を満たす場合は、ピッチング抑制制御の終了までBA制御を実行しない、すなわちピッチング抑制制御とBA制御とが同時に実行できる状態では、ピッチング抑制制御のみを実行することで、ピッチング抑制制御の終了後における後輪のリフトアップを抑制することができ、ピッチング抑制制御とBA制御とが実行可能な際に、ピッチング抑制制御を実行することによる効果の低下を抑制することができる。
また、マイクロコンピュータ60は、BA制御を実行中でないと判定する(ステップST305否定)と、ピッチング抑制制御に従う(ステップST307)。ここで、左右配分制御実行条件を満たしておらず、ピッチング抑制制御実行条件を満たしている状態で、BA制御実行条件を満たしていない場合は、ピッチング抑制制御が実行される。従って、ピッチング抑制制御実行条件を満たすことで、ピッチング抑制制御が実行されると、前輪に対応するホイールシリンダ制動油圧Pwの昇圧を低減させる。
また、マイクロコンピュータ60は、ピッチング抑制制御を実行中でないと判定する(ステップST304否定)と、特に制御をしない(ステップST308)。
次に、マイクロコンピュータ60は、制動が終了したか否かを判定する(ステップST309)。ここでは、マイクロコンピュータ60は、ステップST302において左右配分制御における昇圧勾配をBA制御における昇圧勾配と同じに設定した状態、ステップST303において左右配分制御に従った状態、ステップST306においてBA制御によるホイールシリンダ制御油圧Pwの昇圧を中止した状態、ステップST307においてピッチング抑制制御に従った状態、ステップST308において特に制御しない状態で、運転者により行われていたブレーキペダル12の踏み込み操作が行われなくなったか否かを、ストロークセンサ50により検出された運転者によるブレーキペダル12の踏み込みストロークに基づいて判定する。
次に、マイクロコンピュータ60は、制動が終了したと判定する(ステップST309肯定)と、現在の周期を終了し、次の周期に移行する。
また、マイクロコンピュータ60は、制動が終了していないと判定する(ステップST309否定)と、再度ステップST300に戻り、左右配分制御を実行中であるか否かを判定する。つまり、実施の形態3にかかる車輌用制動装置の作動制御は、制動開始から制動終了まで繰り返し行われる。
ここで、上記ステップST307においてピッチング抑制制御に従った状態で、制動が終了していないと判定する(ステップST309否定)と、ステップST300においてピッチング抑制制御を実行中に、左右配分制御が実行中であるか否かが判定され、ステップST300において左右配分制御が実行中であると判定され、ステップST301においてBA制御実行中でないと判定されても、ステップST303において左右配分制御に従うこととなる。つまり、ピッチング抑制制御実行条件を満たし、ピッチング抑制制御を実行中に、左右配分制御実行条件を満たす場合は、ピッチング抑制制御に対して左右配分制御が優先して実行される。つまり、ピッチング抑制制御および左右配分制御が同時に実行される。ピッチング抑制制御実行条件を満たした場合は、ピッチング抑制制御が実行され、前輪に対応するホイールシリンダ制動油圧Pwの昇圧を低減させる。ピッチング抑制制御の実行中に、左右配分制御実行条件を満たした場合は、前輪に対応するホイールシリンダ制動油圧Pwの昇圧を低減されている状態で、左右配分制御が実行される。例えば、ピッチング抑制制御の実行中に、左右配分制御実行条件を満たし、車輌の姿勢に基づいて前輪制動差圧を発生させる場合は、図14に示すように、ピッチング抑制制御実行条件を満たした(ピッチング抑制制御ON)時点tw3からピッチング抑制制御が実行され、前輪に対応するホイールシリンダ制動油圧Pwの昇圧を低減させる。次に、前輪に対応するホイールシリンダ制動油圧Pwの昇圧を低減されている状態で、左右配分制御実行条件を満たした(左右配分制御ON)時点tw9から左右配分制御が実行されると、一方の前輪に対応するホイールシリンダ制動油圧Pwaは、ピッチング抑制制御により前輪に対応するホイールシリンダ制動油圧Pwの昇圧を低減される(同図に示す実線のPwa(ピッチ))。他方の前輪に対応するホイールシリンダ制動油圧Pwbは、左右配分制御の減圧モードにより一方の前輪に対応するホイールシリンダ制動油圧Pwaに対して車輌の姿勢に基づいた前輪制動差圧が発生できるまで減圧され、減圧後に昇圧モードにより一方の前輪に対応するホイールシリンダ制動油圧Pwaまで昇圧される(同図に示す実線のPwb(左右))。このとき、左右配分制御の昇圧モードの昇圧勾配、すなわち他方の前輪に対応するホイールシリンダ制動油圧Pwbの昇圧勾配Tdは、予め設定された昇圧勾配ではなく、一方の前輪に対応するホイールシリンダ制動油圧Pwaの昇圧勾配Tc、すなわちピッチング抑制制御による昇圧勾配と同じに設定する。これにより、ピッチング抑制制御によりホイールシリンダ制動油圧Pwが前輪に対応するホイールシリンダ制動油圧Pwの昇圧を低減されている状態であっても、左右配分制御が実行されることにより、発生する前輪制動差圧を車輌の姿勢に基づいたものとすることができ、ピッチング抑制制御による前輪制動差圧の変化を抑制することができ、車輌の姿勢が不安定となることを抑制することができる。従って、ピッチング抑制制御および左右配分制御が同時に実行されていても、後輪のリフトアップを抑制することと、車輌の姿勢が不安定となることを抑制することとの両立を図ることができる。これにより、制動を車輪スリップが過剰になったり制動距離が却って増大することのない範囲に抑制することができるとともに、車輌の姿勢を安定して維持できるので、車輌の制動を最適化し、制動性能を最大限に高めることができる。
以上に於いては本発明をいくつかの実施の形態について詳細に説明したが、これらの実施の形態について本発明の範囲内にて種々の変更が可能であることは当業者にとって明らかであろう。