JPH10273022A - 制動力制御装置 - Google Patents

制動力制御装置

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Publication number
JPH10273022A
JPH10273022A JP7841497A JP7841497A JPH10273022A JP H10273022 A JPH10273022 A JP H10273022A JP 7841497 A JP7841497 A JP 7841497A JP 7841497 A JP7841497 A JP 7841497A JP H10273022 A JPH10273022 A JP H10273022A
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JP
Japan
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pressure
control
vehicle
braking
braking force
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Application number
JP7841497A
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English (en)
Inventor
Hiroo Yoshida
浩朗 吉田
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Toyota Motor Corp
Original Assignee
Toyota Motor Corp
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 本発明は緊急ブレーキ操作が行われた際に通
常時に比して大きな制動力を発生させる制動力制御装置
に関し、所定条件下において旋回制動時にBA制御を作
動させ易くすることにより安定性の向上を図ることを課
題とする。 【解決手段】ブレーキ踏力に応じた制動力を発生させる
通常制御と、運転者によって緊急ブレーキ操作が行われ
た際に、通常制御時に比して大きな制動油圧を発生させ
るブレーキアシスト制御とを実行する制動力制御装置に
おいて、車両の旋回状態を表す旋回特性値を検出するG
センサ99と、検出された旋回特性値が所定の車両安定
化領域内である場合に、ブレーキアシスト制御の実行開
始の基準となる閾値を下げる(ステップ108,11
2)構成とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、制動力制御装置に
係り、特に、自動車用制動装置によって発生される制動
力を制御する装置として好適な制動力制御装置に関す
る。
【0002】
【従来の技術】従来より、例えば特開平4−12126
0号に開示される如く、所定値を超える操作速度でブレ
ーキペダルが操作された場合に、緊急ブレーキが要求さ
れたと判断して、ブレーキ踏力に対する制動液圧の倍力
比を通常時に比して高める装置が知られている。制動液
圧の倍力比が高められると、単位時間当たりにホイルシ
リンダに流入するブレーキフルードの流量が増加する。
このため、上記従来の装置によれば、緊急ブレーキを意
図する制動操作が行われた後に、急激にホイルシリンダ
圧の昇圧を図ること、すなわち、急激に制動力を立ち上
げることができる。以下、上述の如く、緊急ブレーキの
要求時に制動液圧の倍力比を高める制御をブレーキアシ
スト制御(BA制御)と称す。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】自動車において加速操
作または制動操作が行われると、タイヤには車両前方ま
たは後方へ向かう摩擦力が発生する。車両には、この摩
擦力が駆動力または制動力として作用する。また、自動
車において旋回操作が行われると、タイヤには、旋回方
向内側へ向かう摩擦力が発生する。車両には、この摩擦
力がコーナリングフォースとして作用する。
【0004】自動車の旋回中に加速操作または制動操作
が行われると、タイヤには、旋回方向内側へ向かう摩擦
力と車両前方または後方へ向かう摩擦力とを合成した摩
擦力が発生する。タイヤが発生し得る合成摩擦力の最大
値は、タイヤのグリップ能力、路面の摩擦μ、および、
タイヤの接地荷重によって決定される。自動車のタイヤ
は、合成摩擦力の方向によらず、ほぼ同じグリップ能力
を示す特性を有している。タイヤの接地荷重および路面
の摩擦μが一定である状況下でタイヤが発生し得る合成
摩擦力の最大値に相当するベクトルを、タイヤの接地中
心回りに一周させると、ベクトル先端部の軌跡は円を描
く。以下、この円をタイヤの摩擦円と称す。
【0005】自動車のタイヤは、車両の走行状態に応じ
て、摩擦円の範囲内で種々の方向に向かう合成摩擦力を
発生する。従って、車両の旋回中に加速操作または制動
操作が行われ、その結果タイヤに前後方向の摩擦力が発
生すると、タイヤが発生し得るコーナリングフォース
は、加速操作または制動操作が開始される以前に比して
減少する。
【0006】また、タイヤの摩擦円の半径は、路面の摩
擦μが大きいほど、また、タイヤの接地荷重が大きいほ
ど大きくなる。自動車において制動操作が行われると、
荷重移動によって前輪の接地荷重が増加し、一方、後輪
の接地荷重が減少する。このため、制動操作が開始され
ると、前輪の摩擦円は大きくなり、一方、後輪の摩擦円
は小さくなる。
【0007】上記従来の装置は、車両が旋回中であると
否とに関わらず、緊急ブレーキの要求時には、常に同様
にBA制御を実行する。自動車の旋回中にBA制御が実
行されると、前輪および後輪の双方に車両後方へ向かう
大きな摩擦力が発生する。前輪の摩擦円は、BA制御が
開始されることにより大きくなる。このため、前輪につ
いては、車両後方へ向かう摩擦力が発生しても、その影
響でコーナリングフォースが大きく減少することはな
い。
【0008】しかしながら、後輪においては、BA制御
が開始されることにより、車両後方へ向かう摩擦力が発
生することに加え、摩擦円が小さくなるという現象が生
ずる。このため、車両の旋回中にBA制御が実行される
と、後輪が発生するコーナリングフォースが減少し、車
両特性がオーバーステア側に変化することがある。本発
明は、上述の点に鑑みてなされたものであり、車両の旋
回中に緊急ブレーキが要求された場合に、車両特性がオ
ーバーステア側に変化するのを抑制すると共に、大きな
制動力を発生する制動力制御装置を提供することを目的
とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記の課題は、下記の手
段を講じることにより解決することができる。請求項1
記載の発明では、ブレーキ踏力に応じた制動力を発生さ
せる通常制御と、運転者によって緊急ブレーキ操作が行
われた際に、通常制御時に比して大きな制動油圧を発生
させるブレーキアシスト制御とを実行する制動力制御装
置において、車両の旋回状態を表す旋回特性値を検出す
る旋回状態検出手段と、検出された前記旋回特性値が所
定車両安定化領域内である場合に、前記ブレーキアシス
ト制御の実行開始の基準となる閾値を下げる閾値変更手
段と、を備えることを特徴とするものである。
【0010】また、請求項2記載の発明では、前記請求
項1記載の制動力制御装置において、前記旋回状態検出
手段において、前記車両安定化領域を超える旋回特性値
が検出された場合は、後輪についてのブレーキアシスト
制御の実行を禁止するアシスト禁止手段を備えることを
特徴とするものである。
【0011】上記した各手段は、次のように作用する。
請求項1記載の発明によれば、所定値を超える旋回特性
値が検出される程度に車両が急旋回をしている場合は、
運転者によって緊急ブレーキ操作が実行されることによ
り、前輪の制動液圧が通常時に比して大きな倍力比を有
する液圧に制御される。この際、後輪の制動液圧は、前
輪の制動液圧に比して小さな倍力比を有する液圧に制御
される。ブレーキアシスト制御が実行されることによ
り、後輪の摩擦円は小さくなる。
【0012】しかしながら、本発明者が行った実験によ
ると、旋回特性値が所定範囲(車両安定化領域)内にあ
る場合には、返ってブレーキアシスト制御を実行した方
が車両状態が安定化することが判明した。これは、次の
理由によると推定される。即ち、旋回特性値は前輪のコ
ーナリングフォースCFFL,CFFRと後輪のコーナリン
グフォースCFRL,CFRRとの関係により決定され、ま
た前輪の制動状態と後輪の制動状態は完全に独立したも
のではなく、ある程度相互に影響を及ぼすものである。
このため、車両の旋回状態によっては、後輪にも制動力
を印加した方が却って車両安定性が向上する状態を実現
できるものと推定される。
【0013】よって、各輪に対し制動力を印加した方が
車両安定性が向上する領域(即ち、車両安定化領域)に
ある場合には、ブレーキアシスト制御の実行開始の基準
となる閾値を下げ、各輪に対し有効に制動力を付加する
ことにより、車両安定性の向上を図ることができる。ま
た、請求項2記載の発明によれば、車両安定化領域を超
える旋回特性値が検出された場合は、後輪についてのブ
レーキアシスト制御が禁止される。この場合、ブレーキ
アシスト制御の実行に伴う倍力比の変更は、前輪につい
てのみ実行される。よって、後輪に発生するコーナリン
グフォースの減少量が抑制され、車両のオーバーステア
傾向を抑制することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】図1は、本発明の第1実施例に対
応するハイドロブースタ式制動力制御装置(以下、単に
制動力制御装置と称す)のシステム構成図を示す。本実
施例の制動力制御装置は、電子制御ユニット10(以
下、ECU10と称す)により制御されている。
【0015】制動力制御装置は、ブレーキペダル12を
備えている。ブレーキペダル12の近傍には、ブレーキ
スイッチ14が配設されている。ブレーキスイッチ14
は、ブレーキペダル12が踏み込まれることによりオン
信号を出力する。ブレーキスイッチ14の出力信号はE
CU10に供給されている。ECU10は、ブレーキス
イッチ14の出力信号に基づいてブレーキペダル12が
踏み込まれているか否かを判別する。
【0016】ブレーキペダル12は、マスタシリンダ1
6に連結されている。マスタシリンダ16の上部にはリ
ザーバタンク18が配設されている。リザーバタンク1
8には、ブレーキフルードをリザーバタンク18に還流
させるためのリターン通路20が連通している。リザー
バタンク18には、また、供給通路22が連通してい
る。供給通路22はポンプ24の吸入側に連通してい
る。ポンプ24の吐出側には、アキュムレータ通路26
が連通している。アキュレータ通路26と供給通路22
との間には、アキュムレータ通路26に過剰な圧力が生
じた場合に開弁する定圧開放弁27が配設されている。
【0017】アキュムレータ通路26には、ポンプ24
から吐出される油圧を蓄えるためのアキュムレータ28
が連通している。アキュムレータ通路26には、また、
上限側圧力スイッチ30および下限側圧力スイッチ32
が接続されている。上限側圧力スイッチ30は、アキュ
ムレータ通路26の圧力(以下、アキュムレータ圧P
ACC と称す)が所定の上限値を超える場合にオン出力を
発生する。一方、下限側圧力スイッチ32は、アキュム
レータ圧PACC が所定の下限値を超える場合にオン出力
を発生する。
【0018】ポンプ24は、下限側圧力スイッチ32か
らオン出力が発せられた後、上限側圧力スイッチ30に
よってオン出力が発せられるまで、すなわち、アキュム
レータ圧PACC が下限値を下回った後、上限値に到達す
るまでオン状態とされる。このため、アキュムレータ圧
ACC は常に上限値と下限値との間に維持される。マス
タシリンダ16には、レギュレータ34が一体に組み込
まれている。レギュレータ34には、アキュムレータ通
路26が連通している。以下、マスタシリンダ16とレ
ギュレータ34とを総称してハイドブースタ36と称
す。
【0019】図2は、ハイドロブースタ36の断面図を
示す。ハイドロブースタ36は、ハウジング38を備え
ている。ハウジング38の内部には第1ピストン40が
配設されている。第1ピストン40は、大径部42およ
び小径部44を備えている。ハウジング38の内部に
は、第1ピストン40のブレーキペダル12側にアシス
ト油圧室46が形成されていると共に、小径部44の周
囲に大気圧室48が形成されている。大気圧室48は、
リザーバタンク18と常時連通している。
【0020】ハウジング38の内部には、第2ピストン
50が配設されている。第2ピストン50は、大径部5
2とスプール部54とを備えている。ハウジング38の
内部には、第1ピストン40と第2ピストン50との間
に第1油圧室56が形成されていると共に、スプール部
54を取り巻くように第2油圧室58が形成されてい
る。第1油圧室56には、第1ピストン40および第2
ピストン50を離間方向に付勢するスプリング60が配
設されている。第2油圧室58は、液圧通路62を介し
てアシスト油圧室46と連通している。
【0021】ハウジング38の内部には、また、一端が
アキュムレータ通路26に連通し、かつ、他端がスプー
ル部54の外周面に開口する高圧通路64が形成されて
いる。スプール部54は、図1に於ける左方向に変位す
ることにより高圧通路64と第2油圧室58とを導通状
態とし、図1に於ける右方向に変位することにより高圧
通路64と第2油圧室58とを遮断状態とする。
【0022】ハウジング38の内部には、弁機構66が
配設されている。弁機構66は、弁座68、弁体70、
および、スプリング72を備えている。弁座68の周囲
には、リザーバタンク18に連通する大気圧室74が形
成されている。また、弁座68の端面には、第2油圧室
58に連通する調圧通路76が開口している。弁座68
の内部には、大気圧室74と調圧通路76とを連通する
油路が形成されている。弁体70は、第2ピストン50
が図1に於ける右側変位端、すなわち、原位置に位置す
る場合にその油路を導通状態とし、かつ、第2ピストン
50が原位置から図1に於ける左方向へ変位している場
合にその油路を遮断状態とする。
【0023】ハウジング38の内部には、弁機構66の
端面から僅かに離間した位置にリアクションディスク7
8が配設されている。リアクションディスク78は、ハ
ウジング38の内部に、調圧通路76に連通する反力室
80を隔成している。リアクションディスク78は弾性
を有する部材で構成されており、反力室80に高圧の油
圧が導かれると、弾性変形することにより弁機構66と
当接する。
【0024】ブレーキペダル12にブレーキ踏力Fが加
えられていない場合は、第1ピストン40および第2ピ
ストン50が共に原位置、すなわち、図2に於ける右側
変位端に保持される。この場合、弁機構66を介して調
圧通路76とリザーバタンク18とが導通状態とされる
ため、第2油圧室58が大気圧に調圧される。第2油圧
室58が大気圧に調圧されると、液圧通路62を介して
第2油圧室に連通するアシスト油圧室46、および、第
1ピストン40と第2ピストン50との間に形成される
第1油圧室56は同様に大気圧に調圧される。
【0025】ブレーキペダル12にブレーキ踏力Fが加
えられると、第1ピストン40および第2ピストン50
は、それらの原位置から図2に於ける左方向へ変位す
る。第2ピストン50に左向きの変位が生ずると、先ず
弁機構66が閉弁状態となり、調圧通路76とリザーバ
タンク18とが遮断状態とされる。第2ピストン50が
更に左向きに変位すると、スプール部54を介して高圧
通路64と第2油圧室58とが導通状態とされる。
【0026】高圧通路64と第2油圧室58とが導通状
態となると、アキュムレータ圧PAC C が第2油圧室58
に導かれることにより第2油圧室58の内圧(以下、こ
の圧力をレギュレータ圧PREと称す)が昇圧する。レギ
ュレータ圧PREはアシスト油圧室46に導かれる。この
ため、レギュレータ圧PREが昇圧すると、第1ピストン
40には、ブレーキ踏力Fに加えてそのレギュレータ圧
REに応じたアシスト力Faが加えられる。
【0027】アシスト油圧室46に導かれたレギュレー
タ圧PREが第1ピストン40に作用する面積をS1 とす
ると、アシスト力Faは次式の如く表すことができる。 Fa=S1 ×PRE ・・・(1) この場合、第1油圧室56には、ブレーキ踏力Fとレギ
ュレータ圧PREとに応じた油圧(以下、この圧力をマス
タシリンダ圧PM/C と称す)が発生する。第1ピストン
40の小径部44の断面積をS2 とすると、マスタシリ
ンダ圧PM/C は、ブレーキ踏力F、および、レギュレー
タ圧PREを用いて次式の如く表すことができる。
【0028】 PM/C =(F+S1 ×PRE)/S2 ・・・(2) この際、第1油圧室56内のブレーキフルードが第2ピ
ストン58を押圧する力FM/C は、第2ピストン50の
大径部52の面積をS2 とすると、次式の如く表すこと
ができる。 FM/C =PM/C ×S2 =F+S1 ×PRE ・・・(3) また、第2油圧室58にレギュレータ圧PREが発生した
場合に、第2油圧室58内のブレーキフルードが第2ピ
ストン50を押圧する力FREは、第2油圧室58内のレ
ギュレータ圧PREが第2ピストン50に作用する面積を
3 とすると、次式の如く表すことができる。
【0029】 FRE=PRE×S3 ・・・(4) 第2油圧室58に発生するレギュレータ圧PREは、反力
室80にも導かれる。第2ピストン50が、弁機構66
とリアクションディスク78とが当接するまで図2に於
ける右向きに変位すると、第2ピストン50には、リア
クションディスク78を介してレギュレータ圧PREに応
じた反力Frが伝達される。反力Frは、所定値Kを用
いて次式の如く表すことができる。
【0030】 Fr=K×PRE ・・・(5) ブレーキペダル12にブレーキ踏力Fが加えられた後、
上記(3)〜(5)式に示すFM/C 、FRE、および、F
rに次式の関係が成立する間は第2ピストン50が原位
置から図2に於ける左方向に変位する。 FM/C >FRE+Fr ・・・(6) この場合、第2油圧室58が高圧通路64と導通状態に
維持されるため、レギュレータ圧PREは徐々に上昇す
る。
【0031】ブレーキペダル12にブレーキ踏力Fが加
えられた後、上記(3)〜(5)式に示すFM/C
RE、および、Frに次式の関係が成立する状態が形成
されると、第2ピストン50は原位置に向けて押し戻さ
れる。 FM/C <FRE+Fr ・・・(7) 第2ピストン50が原位置に向けて押し戻されると、第
2油圧室58が高圧通路64から遮断されるため、レギ
ュレータ圧PREの昇圧が停止される。このため、ハイド
ロブースタ36によれば、ブレーキペダル12にブレー
キ踏力が加えられた後、次式の関係が満たされるように
レギュレータ圧PREが調圧される。
【0032】 FM/C =FRE+Fr ・・・(8) 上記(8)式の関係は、上記(3)〜(5)式の関係を
用いて次式の如く書き換えることができる。 PRE=F/(S3 +K−S1 ) ・・・(9) 本実施例において、ハイドロブースタ36は、上記
(9)式中“1/(S3 +K−S1 )”が所定の倍力比
となるように、かつ、レギュレータ圧PREとマスタシリ
ンダ圧PM/C とがほぼ等圧となるように設計されてい
る。このため、ハイドロブースタ36によれば、ブレー
キペダル12にブレーキ踏力Fが加えられた場合に、第
1油圧室56および第2油圧室58に、ブレーキ踏力F
に対して所定の倍力比を有する液圧(マスタシリンダ圧
M/C およびレギュレータ圧PRE)を発生させることが
できる。
【0033】尚、以下の記載においては、ハイドロブー
スタ36によって生成される液圧、すなわち、第1油圧
室56で生成されるマスタシリンダ圧PM/C 、および、
第2油圧室58で生成されるレギュレータ圧PREを総称
して、マスタシリンダ圧PM/ C と称す。図1に示す如
く、ハイドロブースタ36の第1油圧室56、および、
第2油圧室58には、それぞれ第1液圧通路82、およ
び、第2液圧通路84が連通している。第1液圧通路8
2には、第1アシストソレノイド86(以下、SA-1
6と称す)および第2アシストソレノイド88(以下、
SA-288と称す)が連通している。一方、第2液圧通
路84には、第3アシストソレノイド90(以下、SA
-390と称す)が連通している。
【0034】SA-186およびSA-288には、また、
制御圧通路92が連通している。制御圧通路92は、レ
ギュレータ切り換えソレノイド94(以下、STR94
と称す)を介してアキュムレータ通路26に連通してい
る。STR94は、オフ状態とされることでアキュムレ
ータ通路26と制御圧通路92とを遮断状態とし、か
つ、オン状態とされることでそれらを導通状態とする2
位置の電磁弁である。
【0035】SA-186には、右前輪FRに対応して設
けられた液圧通路96が連通している。同様に、SA-2
88には、左前輪FLに対応して設けられた液圧通路9
8が連通している。SA-186は、オフ状態とされるこ
とで液圧通路96を第1液圧通路82に導通させる第1
の状態を実現し、かつ、オン状態とされることで液圧通
路96を制御圧通路92に導通させる第2の状態を実現
する2位置の電磁弁である。また、SA-288は、オフ
状態とされることで液圧通路98を第1液圧通路82に
導通させる第1の状態を実現し、かつ、オン状態とされ
ることで液圧通路98を制御圧通路92に導通させる第
2の状態を実現する2位置の電磁弁である。
【0036】SA-390には、左右後輪RL,RRに対
応して設けられた液圧通路100が連通している。SA
-390は、オフ状態とされることで第2液圧通路84と
液圧通路100とを導通状態とし、かつ、オン状態とさ
れることでそれらを遮断状態とする2位置の電磁弁であ
る。第2液圧通路84と液圧通路100との間には、第
2液圧通路84側から液圧通路100側へ向かうフルー
ドの流れのみを許容する逆止弁102が配設されてい
る。
【0037】右前輪FRに対応する液圧通路96には、
右前輪保持ソレノイド104(以下、SFRH104と
称す)が連通している。同様に、左前輪FLに対応する
液圧通路96には左前輪保持ソレノイド106(以下、
SFLH106と称す)が、左右後輪RL,RRに対応
する液圧通路100には右後輪保持ソレノイド108
(以下、SRRH108と称す)および左後輪保持ソレ
ノイド110(以下、SRLH110と称す)が、それ
ぞれ連通している。以下、これらのソレノイドを総称す
る場合は「保持ソレノイドS**H」と称す。
【0038】SFRH104には、右前輪減圧ソレノイ
ド112(以下、SFRR112と称す)が連通してい
る。同様に、SFLH106、SRRH108およびS
RLH110には、それぞれ左前輪減圧ソレノイド11
4(以下、SFLR114と称す)、右後輪減圧ソレノ
イド116(以下、SRRR116と称す)および左後
輪減圧ソレノイド118(以下、SRLR118と称
す)が、それぞれ連通している。以下、これらのソレノ
イドを総称する場合には「減圧ソレノイドS**R」と
称す。
【0039】SFRH104には、また、右前輪FRの
ホイルシリンダ120が連通している。同様に、SFL
H106には左前輪FLのホイルシリンダ122が、S
RRH108には右後輪RRのホイルシリンダ124
が、また、SRLH110には左後輪RLのホイルシリ
ンダ126がそれぞれ連通している。更に、液圧通路9
6とホイルシリンダ120との間には、SFRH104
をバイパスしてホイルシリンダ120側から液圧通路9
6へ向かうフルードの流れを許容する逆止弁128が配
設されている。同様に、液圧通路98とホイルシリンダ
122との間、液圧通路100とホイルシリンダ124
との間、および、液圧通路100とホイルシリンダ12
6との間には、それぞれSFLH106、SRRH10
8およびSRLH110をバイパスするフルードの流れ
を許容する逆止弁130,132,134が配設されて
いる。
【0040】SFRH104は、オフ状態とされること
により液圧通路96とホイルシリンダ120とを導通状
態とし、かつ、オン状態とされることによりそれらを遮
断状態とする2位置の電磁弁である。同様に、SFLH
106、SRRH108およびSRLH110は、それ
ぞれオン状態とされることにより液圧通路98とホイル
シンダ122とを結ぶ経路、液圧通路100とホイルシ
ンダ124とを結ぶ経路、および、液圧通路100とホ
イルシンダ126とを結ぶ経路を遮断状態とする2位置
の電磁弁である。
【0041】SFRR112、SFLR114、SRR
R116およびSRLR118にはリターン通路20が
連通している。SFRR112は、オフ状態とされるこ
とによりホイルシリンダ120とリターン通路20とを
遮断状態とし、かつ、オン状態とされることによりホイ
ルシリンダ120とリターン通路20とを導通状態とす
る2位置の電磁弁である。同様に、SFLR114、S
RRR116およびSRLR118は、それぞれオン状
態とされることによりホイルシリンダ122とリターン
通路20とを結ぶ経路、ホイルシリンダ124とリター
ン通路20とを結ぶ経路、および、ホイルシリンダ12
6とリターン通路20とを結ぶ経路を導通させる2位置
の電磁弁である。
【0042】右前輪FRの近傍には、車輪速センサ13
6が配設されている。車輪速センサ136は、右前輪F
Rの回転速度に応じた周期でパルス信号を出力する。同
様に、左前輪FLの近傍、右後輪RRの近傍、および、
左後輪RLの近傍には、それぞれ対応する車輪の回転速
度に応じた周期でパルス信号を出力する車輪速センサ1
38,140,142が配設されている。車輪速センサ
136〜142の出力信号はECU10に供給されてい
る。ECU10は、車輪速センサ136〜142の出力
信号に基づいて各車輪の回転速度VW を検出する。
【0043】ハイドロブースタ36の第2油圧室58に
連通する第2液圧通路84には、液圧センサ144が配
設されている。液圧センサ144は、第2油圧室58の
内部に発生する液圧、すなわち、ハイドロブースタ36
によって生成されるマスタシリンダ圧PM/C に応じた電
気信号を出力する(以下、液圧センサ144をM/C圧
センサ144という)。このM/C圧センサ144の出
力信号はECU10に供給されている。ECU10は、
M/C圧センサ144の出力信号に基づいてマスタシリ
ンダ圧PM/C を検出する。
【0044】また、本実施例のシステムにおいては、E
CU10は加速度センサ99が接続されている。この加
速度センサ99は、車両に作用する車幅方向の加速度
(以下、横Gという)に応じた信号、及び車両の前後方
向に作用する前後方向の加速度(以下、前後Gという)
に応じた信号を出力する。ECU10は、加速度センサ
99の出力信号に基づいて、車両の旋回状態を検出す
る。
【0045】次に、本実施例の制動力制御装置の動作を
説明する。本実施例の制動力制御装置は、油圧回路内に
配設された各種の電磁弁の状態を切り換えることによ
り、通常のブレーキ装置としての機能、アンチロッ
クブレーキシステムとしての機能、および、制動力の
速やかな立ち上がりが要求される場合に通常時に比して
大きな制動力を発生させる機能(ブレーキアシスト機
能)を実現する。
【0046】図1は、通常のブレーキ装置としての機
能(以下、通常ブレーキ機能と称す)を実現するための
制動力制御装置の状態を示す。すなわち、通常ブレー
キ機能は、図1に示す如く、制動力制御装置が備える全
ての電磁弁をオフ状態とすることにより実現される。以
下、図1に示す状態を通常ブレーキ状態と称す。また、
制動力制御装置において通常ブレーキ機能を実現させる
ための制御を通常ブレーキ制御と称す。
【0047】図1において、左右前輪FL,FRのホイ
ルシリンダ120,122は、第1液圧通路82を介し
てハイドロブースタ34の第1油圧室56に連通してい
る。また、左右後輪RL,RRのホイルシリンダ12
4,126は、第2液圧通路84を介してハイドロブー
スタ36の第2油圧室58に連通している。この場合、
ホイルシリンダ120〜126のホイルシリンダ圧P
W/C は、常にマスタシリンダ圧PM/C と等圧に制御され
る。従って、図1示す状態によれば、通常ブレーキ機能
が実現される。
【0048】図3は、アンチロックブレーキシステム
としての機能(以下、ABS機能と称す)を実現するた
めの制動力制御装置の状態を示す。すなわち、ABS
機能は、図3に示す如く、SA-186およびSA-288
をオン状態とし、かつ、ABSの要求に応じて保持ソレ
ノイドS**Hおよび減圧ソレノイドS**Rを適当に
駆動することにより実現される。以下、図3に示す状態
をABS作動状態と称す。また、制動力制御装置におい
てABS機能を実現させるための制御をABS制御と称
す。
【0049】ECU10は、車両が制動状態にあり、か
つ、何れかの車輪について過剰なスリップ率が検出され
た場合にABS制御を開始する。ABS制御中は、前輪
に対応して設けられた液圧通路96,98が、後輪に対
応して設けられた液圧通路100と同様にハイドロブー
スタ36の第2油圧室58に連通する。従って、ABS
制御中は、全ての車輪のホイルシリンダ圧PW/C が第2
油圧室58を液圧源として昇圧される。
【0050】ABS制御の実行中に、保持ソレノイドS
**Hを開弁状態とし、かつ、減圧ソレノイドS**R
を閉弁状態とすると、各車輪のホイルシリンダ圧PW/C
を増圧することができる。以下、この状態を (i)増圧モ
ードと称す。また、ABS制御中に保持ソレノイドS*
*Hおよび減圧ソレノイドS**Rの双方を閉弁状態と
すると、各車輪のホイルシリンダ圧PW/C を保持するこ
とができる。以下、この状態を(ii)保持モードと称す。
更に、ABS制御中に保持ソレノイドS**Hを閉弁状
態とし、かつ、減圧ソレノイドS**Rを開弁状態とす
ると、各車輪のホイルシリンダ圧PW/C を減圧すること
ができる。以下、この状態を (iii)減圧モードと称す。
【0051】ECU10は、ABS制御中に、各車輪の
スリップ状態に応じて、各車輪毎に適宜上記の (i)増圧
モード、(ii)保持モード、および、 (iii)減圧モードが
実現されるように、保持ソレノイドS**Hおよび減圧
ソレノイドS**Rを制御する。保持ソレノイドS**
Hおよび減圧ソレノイドS**Rが上記の如く制御され
ると、全ての車輪のホイルシリンダ圧PW/C は、対応す
る車輪に過大なスリップ率を発生させることのない圧力
に制御される。従って、上記の制御によれば、制動力制
御装置においてABS機能を実現することができる。
【0052】ABS制御中は、各車輪で減圧モードが行
われる毎にホイルシリンダ120〜126内のブレーキ
フルードがリターン通路20に排出される。そして、各
車輪で増圧モードが行われる毎にハイドロブースタ36
からホイルシリンダ120〜126にブレーキフルード
が供給される。このため、ABS制御中は通常ブレーキ
時に比して多量のブレーキフルードがハイドロブースタ
36から流出する。
【0053】ハイロドブースタ36の第1油圧室56に
は、アキュムレータ28のような液圧源が連通していな
い。このため、ABS制御の実行中に第1油圧室56が
液圧源として用いられると、第1油圧室56内部のブレ
ーキフルードが多量に流出して、その結果、ブレーキペ
ダル12に過大なストロークが生ずる事態が生ずる。こ
れに対して、本実施例のシステムにおいては、ABS制
御中に、スプール部54を介してアキュムレータ28に
連通する第2油圧室58が液圧源として用いられる。こ
のため、本実施例のシステムによれば、ABS制御の実
行中にブレーキペダル12に過大なストロークが生ずる
ことはない。
【0054】図4乃至図6は、ブレーキアシスト機能
(以下、BA機能と称す)を実現するための制動力制御
装置の状態を示す。ECU10は、運転者によって制動
力の速やかな立ち上がりを要求するブレーキ操作、すな
わち、緊急ブレーキ操作が実行された後に図4乃至図6
に示す状態を適宜実現することでBA機能を実現する。
以下、制動力制御装置において、BA機能を実現させる
ための制御をBA制御と称す。
【0055】図4は、BA制御の実行中に実現されるア
シスト圧増圧状態を示す。アシスト圧増圧状態は、BA
制御の実行中に各車輪のホイルシリンダ圧PW/C を増圧
させる必要がある場合に実現される。本実施例のシステ
ムにおいて、アシスト圧増圧状態は、図4に示す如く、
SA-186、SA-288、SA-390およびSTR94
をオン状態とすることで実現される。
【0056】アシスト圧増圧状態では、全てのホイルシ
リンダ120〜126がSTR94を介してアキュムレ
ータ通路26に連通する。従って、アシスト圧増圧状態
を実現すると、全ての車輪のホイルシリンダ圧P
W/C を、アキュムレータ28を液圧源として昇圧するこ
とができる。アキュムレータ28には、高圧のアキュム
レータ圧PACC が蓄えられている。このため、アシスト
圧増圧状態によれば、全ての車輪のホイルシリンダ圧P
W/C を、マスタシリンダ圧PM/C に比して高圧に昇圧す
ることができる。
【0057】ところで、図4に示すアシスト圧増圧状態
において、液圧通路96,98,100は、上記の如く
アキュムレータ通路26に連通していると共に、逆止弁
102を介して第2液圧通路84に連通している。この
ため、第2液圧通路84に導かれるマスタシリンダ圧P
M/C が各車輪のホイルシリンダ圧PW/C に比して大きい
場合は、アシスト圧増圧状態においてもハイドロブース
タ36を液圧源としてホイルシリンダ圧PW/C を昇圧す
ることができる。
【0058】図5は、BA制御の実行中に実現されるア
シスト圧保持状態を示す。アシスト圧保持状態は、BA
制御の実行中に各車輪のホイルシリンダ圧PW/C を保持
する必要がある場合に実現される。アシスト圧保持状態
は、図5に示す如く、SA-186、SA-288、SA-3
90およびSTR94をオン状態とした状態で、更に、
全ての保持ソレノイドS**Hをオン状態(閉弁状態)
とすることで実現される。
【0059】アシスト圧保持状態では、ハイドロブース
タ36とホイルシリンダ120〜126とが遮断状態と
され、リターン通路20とホイルシリンダ120〜12
6とが遮断状態とされ、かつ、アキュムレータ28から
ホイルシリンダ120〜126へ向かうフルードの流れ
が阻止される。このため、アシスト圧保持状態によれ
ば、全ての車輪のホイルシリンダ圧PW/C を一定値に保
持することができる。
【0060】図6は、BA制御の実行中に実現されるア
シスト圧減圧状態を示す。アシスト圧減圧状態は、BA
制御の実行中に各車輪のホイルシリンダ圧PW/C を減圧
する必要がある場合に実現される。アシスト圧減圧状態
は、図6に示す如く、SA-186およびSA-288をオ
ン状態とすることで実現される。アシスト圧減圧状態で
は、アキュムレータ28とホイルシリンダ120〜12
6とが遮断状態とされ、リターン通路20とホイルシリ
ンダ120〜126とが遮断状態とされ、かつ、ハイド
ロブースタ36とホイルシリンダ120〜126とが導
通状態とされる。このため、アシスト圧減圧状態によれ
ば、全ての車輪のホイルシリンダ圧PW/C を、マスタシ
リンダ圧PM/C を下限値として減圧することができる。
【0061】図7は、本実施例の制動力制御装置におい
て、運転者によって緊急ブレーキ操作が実行された場合
に実現されるタイムチャートの一例を示す。図7(A)
に示す曲線は、運転者によって緊急ブレーキ操作が行わ
れた場合に、単位時間当たりのマスタシリンダ圧PM/C
の変化量ΔPM/C (以下、変化速度ΔPM/C と称す)に
生ずる変化の一例を示す。また、図7(B)中に破線で
示す曲線および実線で示す曲線は、同様の状況下で、そ
れぞれマスタシリンダ圧PM/C およびホイルシリンダ圧
W/C に生ずる変化の一例を示す。本実施例のシステム
において、マスタシリンダ圧PM/C およびその変化速度
ΔPM/C は、それぞれブレーキペダル12の操作量、お
よび、ブレーキペダル12の操作速度の特性値である。
このマスタシリンダ圧PM/C は、前記したようにM/C
圧センサ144により検出することができる。
【0062】運転者によって緊急ブレーキ操作が行われ
ると、図7(B)中に破線で示す如く、マスタシリンダ
圧PM/C は、ブレーキ操作が開始された後適当な圧力ま
で速やかに昇圧される。この際、マスタシリンダ圧P
M/C の変化速度ΔPM/C は、図7(A)に示す如く、ブ
レーキ操作が開始された後マスタシリンダ圧PM/C が急
増する時期と同期して最大値ΔPMAX に向かって増加
し、また、マスタシリンダ圧PM/C が適当な圧力に収束
する時期と同期して“0”近傍の値に減少する。
【0063】上述の如く、ECU10は、運転者による
緊急ブレーキ操作が検出された場合にBA制御を実行す
る。ECU10は、運転者によって緊急ブレーキ操作が
実行されたか否かを判別するに当たり、先ず、所定速度
を超えるブレーキペダル12の操作を、具体的には、第
1の所定速度THΔP1を超える変化速度ΔPM/C を検
出する。ECU10は、ΔPM/C >THΔP1を満たす
変化速度ΔPM/C を検出すると、緊急ブレーキ操作が実
行された可能性があると判断して、第1スタンバイ状態
へ移行する(図7(B)中期間)。
【0064】ECU10は、第1スタンバイ状態に移行
した後、マスタシリンダ圧PM/C の変化速度ΔPM/C
第2の所定速度THΔP2以下となるまでの時間t1
0=CSTANBY1を計数する。そして、ECU1
0は、経過時間CSTANBY1が所定範囲内にある場
合は、運転者によって緊急ブレーキ操作が実行されたと
判断して第2スタンバイ状態に移行する(図7(B)中
期間)。
【0065】本実施例の制動力制御装置において、マス
タシリンダ圧PM/C に急激な昇圧が生じている間は、マ
スタシリンダ圧PM/C とホイルシリンダ圧PW/C との間
に大きな偏差Pdiffが発生する。かかる状況下では、ハ
イドロブースタ36を液圧源とする方が、アキュムレー
タ28を液圧源とするよりもホイルシリンダ圧PW/C
速やかに立ち上げることができる。
【0066】従って、運転者によって緊急ブレーキ操作
が行われた後、偏差Pdiffが十分に小さな値となるまで
の間は、通常ブレーキ制御を維持する方がBA制御を開
始するよりも、速やかにホイルシリンダ圧PW/C を立ち
上げることができる。このため、ECU10は、上述し
た第2スタンバイ状態に移行した後、偏差Pdiffが十分
に小さな値となった時点でBA制御を開始する。BA制
御がかかるタイミングで開始されると、緊急ブレーキ操
作が開始された後、ホイルシリンダ圧PW/C を効率良く
速やかに昇圧させることができる。
【0067】本実施例の制動力制御装置において、BA
制御が開始されると、先ず (I)開始増圧モードが実行さ
れる(図7(B)中期間)。 (I)開始増圧モードは、
所定の増圧時間TSTA の間、上記図4に示すアシスト圧
増圧状態を維持することにより実現される。上述の如
く、アシスト圧増圧状態によれば、各車輪のホイルシリ
ンダ圧PW/C がアキュムレータ28を液圧源としてマス
タシリンダ圧PM/C を超える圧力に昇圧される。従っ
て、BA制御が開始されると、 (I)開始増圧モードの実
行に伴って、各車輪のホイルシリンダ圧PW/C が速やか
にマスタシリンダ圧PM/C を超える圧力に昇圧される。
以下、BA制御の実行中に、ホイルシリンダ圧PW/C
マスタシリンダ圧PM/C との間に生ずる差圧をアシスト
圧Paと称す。
【0068】本実施例において、増圧時間TSTA は、緊
急ブレーキ操作の過程でマスタシリンダ圧PM/C に生じ
た変化速度ΔPM/C の最大値ΔPMAX に基づいて演算さ
れる。具体的には、増圧時間TSTA は、変化速度ΔP
M/C の最大値ΔPMAX が大きいほど長時間に設定され、
また、その最大値ΔPMAX が小さいほど短時間に設定さ
れる。
【0069】変化速度ΔPM/C の最大値ΔPMAX は、運
転者が制動力を速やかに立ち上げることを意図するほど
大きな値となる。従って、最大値ΔPMAX が大きな値で
ある場合は、BA制御が開始された後、ホイルシリンダ
圧PW/C をマスタシリンダ圧PM/C に比して大きく増圧
させることが適切である。増圧時間TSTA が、最大値Δ
MAX に基づいて上記の如く設定されると、運転者が制
動力を速やかに立ち上げること意図するほど、緊急ブレ
ーキ操作が検出された後、ホイルシリンダ圧PW/C をマ
スタシリンダ圧PM/C に比して大きく増圧させること、
すなわち、大きなアシスト圧Paを発生させることがで
きる。従って、本実施例の制動力制御装置によれば、
(I)開始増圧モードの実行が開始された後、運転者の意
図が正確に反映されたホイルシリンダ圧PW/C を速やか
に発生させることができる。
【0070】本実施例の制動力制御装置において、 (I)
開始増圧モードが終了すると、以後、運転者のブレーキ
操作に対応して、(II)アシスト圧増圧モード、 (III)ア
シスト圧減圧モード、(IV)アシスト圧保持モード、 (V)
アシスト圧緩増モード、および、(VI)アシスト圧緩減モ
ードの何れかが実行される。BA制御の実行中に、マス
タシリンダ圧PM/C が急激に増圧されている場合は、運
転者が更に大きな制動力を要求していると判断できる。
本実施例の制動力制御装置では、この場合、(II)アシス
ト圧増圧モードが実行される(図7(B)中期間)。
(II)アシスト圧増圧モードは、上述した (I)開始増圧モ
ードと同様に、制動力制御装置をアシスト圧増圧状態と
することで実現される。アシスト圧増圧状態によれば、
各車輪のホイルシリンダ圧PW/C をアキュムレータ圧P
ACC に向けて速やかに昇圧させることができる。従っ
て、上記の処理によれば、運転者の意図を正確にホイル
シリンダ圧PW/C に反映させることができる。
【0071】BA制御の実行中に、マスタシリンダ圧P
M/C が急激に減圧されている場合は、運転者が制動力を
速やかに低下させることを意図していると判断できる。
本実施例では、この場合、 (III)アシスト圧減圧モード
が実行される(図7(B)中期間)。 (III)アシスト
圧減圧モードは、上記図6に示すアシスト圧減圧状態を
維持することにより実現される。アシスト圧減圧状態に
よれば、上述の如く、各車輪のホイルシリンダ圧PW/C
をマスタシリンダ圧PM/C に向けて速やかに減圧させる
ことができる。従って、上記の処理によれば、運転者の
意図を正確にホイルシリンダ圧PW/C に反映させること
ができる。
【0072】BA制御の実行中にマスタシリンダ圧P
M/C がほぼ一定値に維持されている場合は、運転者が制
動力を保持することを意図していると判断できる。本実
施例では、この場合、(IV)アシスト圧保持モードが実行
される(図7(B)中期間および)。(IV)アシスト
圧保持モードは、上記図5に示すアシスト圧保持状態を
維持することにより実現される。アシスト圧保持状態に
よれば、上述の如く、各車輪のホイルシリンダ圧PW/C
を一定値に維持することができる。従って、上記の処理
によれば、運転者の意図を正確にホイルシリンダ圧P
W/C に反映させることができる。
【0073】BA制御の実行中にマスタシリンダ圧P
M/C が緩やかに増圧されている場合は、運転者が制動力
を緩やかに立ち上げることを意図していると判断でき
る。本実施例では、この場合、 (V)アシスト圧緩増モー
ド(図示せず)が実行される。 (V)アシスト圧緩増モー
ドは、上記図4に示すアシスト圧増圧状態と上記図5に
示すアシスト圧保持状態とを繰り返すことにより実現さ
れる。 (V)アシスト圧緩増モードによれば、各車輪のホ
イルシリンダ圧PW/C をアキュムレータ圧PACC に向け
て段階的に昇圧させることができる。従って、上記の処
理によれば、運転者の意図を正確にホイルシリンダ圧P
W/C に反映させることができる。
【0074】BA制御の実行中にマスタシリンダ圧P
M/C が緩やかに減圧されている場合は、運転者が制動力
を緩やかに低下させることを意図していると判断でき
る。本実施例では、この場合(VI)アシスト圧緩減モード
が実行される(図7(B)中期間)。(VI)アシスト圧
緩減モードは、上記図6に示すアシスト圧減圧状態と上
記図5に示すアシスト圧保持状態とを繰り返すことによ
り実現される。(VI)アシスト圧緩減モードによれば、各
車輪のホイルシリンダ圧PW/C をマスタシリンダ圧P
M/C に向けて段階的に減圧させることができる。従っ
て、上記の処理によれば、運転者の意図を正確にホイル
シリンダ圧PW/C に反映させることができる。
【0075】上記の処理によれば、運転者によって緊急
ブレーキ操作が実行された後速やかに、運転者の意図が
正確に反映されたアシスト圧Paを発生させることがで
きる。このため、本実施例の制動力制御装置によれば、
運転者の意図に応じて制動力の立ち上がり傾向を変化さ
せることができる。また、上記の処理によれば、 (I)開
始増圧モードによってアシスト圧Paが発生された後、
運転者によってブレーキ操作がなされた場合に、そのブ
レーキ操作に対応してホイルシリンダ圧PW/C を増減さ
せることができる。このため、上記の処理によれば、B
A制御の実行中常に、アシスト圧Paをほぼ一定の値に
維持しつつ、ホイルシリンダ圧PW/C に適正に運転者の
意図を反映させることができる。
【0076】制動力制御装置においてBA制御が開始さ
れると、その後、各車輪のホイルシリンダ圧PW/C が速
やかに昇圧されることにより、何れかの車輪について過
剰なスリップ率が生ずる場合がある。ECU10は、こ
のような場合には、BA制御に加えてABS制御を実行
する。以下、この制御をBA+ABS制御と称す。BA
+ABS制御は、上記図4乃至図6に示す何れかの状態
を実現しつつ、過剰なスリップ率の生じた車輪(以下、
ABS対象車輪と称す)について、適宜上述した(i) 増
圧モード、(ii)保持モード、および、(iii) 減圧モード
が実現されるように、保持ソレノイドS**Hおよび減
圧ソレノイドS**Rを制御することで実現される。
【0077】すなわち、上記図4に示すアシスト圧増圧
状態、または、上記図5に示すアシスト圧保持状態が実
現されている場合は、保持ソレノイドS**Hの全てに
アキュムレータ圧PACC が供給される。このような状況
下では、保持ソレノイドS**Hおよび減圧ソレノイド
S**Rを適当に制御することで、全ての車輪につい
て、(ii)保持モード、 (iii)減圧モード、および、ホイ
ルシリンダ圧PW/C をマスタシリンダ圧PM/C を超える
圧力に昇圧することを目的とする (i)増圧モードを実現
することができる。従って、上記図4および図5に示す
何れかの状態が実現されている場合は、ABS制御の要
求に応じて保持ソレノイドS**Hおよび減圧ソレノイ
ドS**Rを制御することで、BA+ABS制御を実現
することができる。
【0078】また、上記図6に示すアシスト圧減圧状態
が実現されている場合は、保持ソレノイドS**Hの全
てにマスタシリンダ圧PM/C が供給されている。この場
合、全ての車輪について(ii)保持モードおよび (iii)減
圧モードを実現することができる。ところで、上記図6
に示すアシスト圧減圧状態は、運転者が制動力の減少を
意図している場合に、すなわち、何れの車輪のホイルシ
リンダ圧PW/C も増圧する必要がない場合に実現され
る。従って、上記図6に示すアシスト圧減圧状態が実現
されている場合に、ABS対象車輪について(ii)保持モ
ードおよび (iii)減圧モードが実現できれば、適正にB
A+ABS制御の要求を満たすことができる。
【0079】このように、本実施例の制動力制御装置に
よれば、BA制御が開始された後、上記図4乃至図6に
示す何れかの状態を実現しつつ、ABS制御の要求に応
じて保持ソレノイドS**Hおよび減圧ソレノイドS*
*Rを制御することにより、BA+ABS制御を実現す
ることができる。上述したBA+ABS制御によれば、
アキュムレータ28を液圧源として、全ての車輪のホイ
ルシリンダ圧PW/C を対応する車輪に過大なスリップ率
を発生させることのない適当な圧力に制御することがで
きる。
【0080】次に、本実施例の制動力制御装置の特徴部
について説明する。図8は、車両の旋回中に4つの車輪
FL,FR,RL,RRのそれぞれに発生するコーナリ
ングフォースCFFL,CFFR,CFRL,CFRR(以下、
これらを総称する場合はコーナリングフォースCF**
称す)を示す。車両の旋回中に加速操作および減速操作
のいずれも行われていない場合は、4つの車輪FL,F
R,RL,RRには、旋回方向内側へ向かう摩擦力のみ
が発生する。この場合、図8に示す如く、各車輪FL,
FR,RL,RRに発生する摩擦力が、全てコーナリン
グフォースCF**となる。
【0081】4つの車輪FL,FR,RL,RRで発生
するコーナリングフォースCF**のうち、左右前輪F
L,FRで発生するコーナリングフォースCFFL,CF
FRは、重心Gを中心として車両を旋回方向に回転させよ
うとするモーメント、すなわち、スピンモーメントとし
て車両に作用する。一方、各車輪FL,FR,RL,R
Rで発生するコーナリングフォースCF**のうち、左右
後輪RL,RRで発生するコーナリングフォースC
RL,CFRRは、重心Gを中心として、車両を旋回方向
と逆向きに回転させようとするモーメント、すなわち、
アンチスピンモーメントとして車両に作用する。
【0082】車両の旋回時に、アンチスピンモーメント
に比して大きなスピンモーメントが発生すると、車両は
更に旋回内方へ向かってその姿勢を変化させる。一方、
車両の旋回時に、スピンモーメントに比して大きなアン
チスピンモーメントが発生すると、車両は、旋回方向外
側に向かってその姿勢を変化させる。従って、旋回時に
おける車両の姿勢は、左右前輪FL,FRに発生するコ
ーナリングフォースCFFL,CFFRと、左右後輪RL,
RRに発生するコーナリングフォースCFRL,CFRR
のバランスにより変化する。
【0083】図9は、車両の旋回中に制動操作が行われ
た場合、4つの車輪FL,FR,RL,RRのそれぞれ
に一般的に発生するコーナリングフォースCF**および
制動力BFFL,BFFR,BFRL,BFRR(以下、これら
を総称する場合は制動力BF **と称す)を示している。
車両において制動操作が行われると、車両の荷重が前方
へ移動する。車両の荷重が前方へ移動すると、前輪F
L,FRの摩擦円が大きくなると共に、後輪RL,RR
の摩擦円が小さくなる。このため、車両の制動中は、前
輪FL,FRで発生させ得る合成摩擦力が大きくなる反
面、後輪RL,RRで発生させ得る合成摩擦力が小さく
なる。
【0084】車両の旋回中に制動操作が行われると、4
つの車輪FL,FR,RL,RRには、コーナリングフ
ォースCF**と制動力FB**とを合成してなる合成摩擦
力が発生する。この際、前輪FL,FRにおいては、大
きな摩擦円が確保されていることから、十分に大きなコ
ーナリングフォースCFFL,CFFRを得ることができ
る。一方、後輪RL,RRにおいては、摩擦円が小さい
ことから、大きなコーナリングフォースCFRL,CFRR
を得ることが困難となる。このため、旋回中に制動操作
が行われた場合は、一般にスピンモーメントの増大とア
ンチスピンモーメントの減少とが生じ易い。
【0085】図10は、旋回している車両において制動
操作が行われた場合、その後所定時間(1sec )後に生
ずるヨーレートγの大きさを、制動操作に伴って車両に
作用する前後Gとの関係で表したヨーレート特性を示し
ている。このヨーレート特性は、旋回時に車両に発生し
ている横Gにより変化する。図10には、3種類の横G
が発生している場合のヨーレート特性を示しており、矢
印A1 で示す特性は大きな値(GRL1 )の横Gが発生し
ている場合のヨーレート特性、矢印A2 で示す特性はG
RL1 より小さい値(GRL2 )の横Gが発生している場合
のヨーレート特性、また矢印A3 で示す特性はGRL2
り小さい値(GRL3 )の横Gが発生している場合のヨー
レート特性を夫々示している(GRL1>GRL2
RL3 )。
【0086】ここで、本実施例の原理について、図10
に示された3つのヨーレート特性の内、矢印A2 で示す
特性を例に挙げて説明する。同図において、ヨーレート
値がγ0(2)である直線状の破線は、横Gの値がGRL 2
あつた場合に如何なる前後Gが作用した場合にも、操舵
特性が常にニュートラル特性に維持される時に実現され
るヨーレート特性である。従って、矢印A2で示すヨー
レート特性値がニュートラル特性値γ0(2)と一致する点
(その近傍領域を含む)においては、操舵特性はニュー
トラル特性を示すこととなる。
【0087】また、BA制御開始時における前後Gの値
がGFR2 であったとすると、BA制御開始により制動力
は増大し、これに伴い前後Gの値GFR2 は変化する。い
ま、BA制御開始により発生した前後Gの変化量をΔG
FR2 とすると、この変化量ΔGFR2 の大きさは、運転者
のブレーキペダル操作により変化する。即ち、運転者に
よるブレーキペダル12の操作量が大きい程、前後Gの
変化量ΔGFR2 は大きくなる。ここでは、説明の便宜
上、運転者のブレーキペダル操作により、3タイプの変
化量ΔGFR2(1), ΔGFR2(2), ΔGFR2(3)が発生したと
仮定する(ΔGFR 2(1)<ΔGFR2(2)<ΔGFR2(3))。
【0088】先ず、BA制御開始により発生した前後G
の変化量がΔGFR2(1)であった場合に注目する。変化量
がΔGFR2(1)である場合、図10に示されるように、ヨ
ーレート特性値(図中、点B1 で示す)はニュートラル
特性値γ0(2)より大きくなっている。よって、この状態
では、車両の操舵特性はオーバーステアとなってしま
う。また、変化量がΔGFR2(3)である場合、ヨーレート
特性値(図中、点B3 で示す)はニュートラル特性値γ
0(2)より小さくなっている。よって、この状態では、車
両の操舵特性はアンダーステアとなってしまう。
【0089】これに対し、変化量がΔGFR2(2)である場
合、ヨーレート特性値(図中、点B 3 で示す)はニュー
トラル特性値γ0(2)と一致しており、よってこの状態で
は車両の操舵特性がニュートラル特性となっている。従
って、BA制御を実施することにより上記変化量がΔG
FR2(2)(この近傍を含む))となる場合には、車両旋回
中にBA制御を実施することにより、却って車両安定性
を向上させることができることが判る。
【0090】上記の現象が発生するのは、旋回特性は前
輪のコーナリングフォースCFFL,CFFRと後輪のコー
ナリングフォースCFRL,CFRRとの関係により決定さ
れ、また前輪の制動状態と後輪の制動状態は相互に影響
を及ぼすものであるため、車両の旋回状態によっては後
輪にも制動力を印加した方が却って車両安定性が向上す
る状態を実現できるものと推定される。
【0091】本実施例では、上記の現象に注目し、各輪
に対し制動力を印加した方が車両安定性が向上する領域
(即ち、車両安定化領域)にある場合には、BA制御の
実行開始の基準となる閾値を下げ、各輪に対し有効に制
動力を付加することにより、車両安定性の向上を図る構
成としたことを特徴とするものである。以下、上記した
原理に基づきECU10が実施する旋回時BA制御処理
について図11を用いて説明する。尚、本実施例におい
ては、車両安定化領域として、前記したヨーレート特性
値がニュートラル特性値γ0 より小さい領域(即ち、車
両旋回安定性の高い、ニュートラル領域及びアンダース
テア領域)を採用している。
【0092】図11に示す旋回時BA制御処理は、所定
時間(例えば6ms)毎に実施される割り込みルーチン
処理である。同図に示す処理が起動するとも先ずステッ
プ100において、加速度センサ99によって検出され
ている横Gの値GRLの絶対値|GRL|が、所定値Kを超
えているか否かが判別される。|GRL|は、車両の旋回
状態が激しいほど大きな値となる。このため|GRL
は、車両の旋回状態の程度を表す特性値として扱うこと
ができる。本ステップ100で、|GRL|>Kが成立す
ると判別される場合は、通常の手法でBA制御を実行す
ると、車両の操舵特性が運転者の予想を超えてオーバー
ステア傾向に変化すると判断することができる。
【0093】この場合、本ステップ100の処理に次い
でステップ102の処理が実行される。一方、|GRL
>Kが成立しないと判別される場合は、通常の手法でB
A制御を実行しても操舵特性が不当に変化することがな
いと判断することができる。この場合、本ステップ10
0の処理が終了すると、以後、何ら処理が進められるこ
となく今回のルーチンが終了される。
【0094】ステップ102では、加速度センサ99に
より、BA制御開始時における前後Gの値GFRが検出さ
れる。この処理は、図10を用いて前記した原理説明に
おいて、GFR(2) を求めたことと等価となる。続くステ
ップ104では、BA制御開始により得られる変化量Δ
FRを求める。前記したように、この変化量ΔGFRはブ
レーキペダル12の操作量により推定することが可能で
ある。具体的には、本実施例では、M/C圧センサ14
4により検出されるマスタシリンダ圧PM/C により、ブ
レーキペダル12の操作量を検出する構成としている。
従って、当然ではあるがブレーキペダル12の操作量に
応じて変化量ΔGFRは変化するものであり、一定値とな
るものではない。
【0095】ステップ104で変化量ΔGFRが求められ
ると、続くステップ106において、加速度センサ99
によって検出されている横Gの値GRLに基づき、横Gマ
ップの決定処理が行われる。ここで、横Gマップについ
て説明する。図10を用いた原理説明で述べたように、
車両のヨーレート特性は車両に印加されている横Gの値
RLにより異なる特性となる。
【0096】即ち、図10に示した例では、横GがG
RL1 の時は車両のヨーレート特性は矢印A1 で示す特性
となり、同様に横GがGRL2 の時は車両のヨーレート特
性は矢印A2 で示す特性、横GがGRL3 の時は車両のヨ
ーレート特性は矢印A3 で示す特性となる。このよう
に、横Gの値GRLにより、車両のヨーレート特性は異な
る特性となるため、ステップ106では現在の車両の旋
回状態に対応したヨーレート特性を選定する。
【0097】ところで、ある特定値GRLの横Gが車両に
印加された場合に車両に発生するヨーレート特性は、実
験的に求めることができる。このため、ECU10に
は、横Gの値GRLとヨーレート特性とを関連付けたマッ
プ(参照マップ)が予め記憶されている。従って、ステ
ップ106では、加速度センサ99によって検出される
横Gの値GRLをパラメータとし、対応する参照マップを
決定することができる。尚、この参照マップには、如何
なる前後GFRが車両に作用した場合にも、操舵特性が常
にニュートラル特性に維持される時に実現されるヨーレ
ート特性値γ0 (以下、このヨーレート特性値γ0 を判
定値γ0 という)も合わせて記憶されている。
【0098】続くステップ108では、ステップ102
で求められたBA制御開始時における前後Gの値G
FRと、ステップ104で求められた変化量ΔGFRを加算
し、求められた前後G値(GFR+ΔGFR)に対応するヨ
ーレート値γ(GFR+ΔGFR)を求める。このヨーレー
ト値γ(GFR+ΔGFR)は、ステップ106で決定され
た参照マップから前後G値(GFR+ΔGFR)に基づき求
められる。続いて、ECU10は、このヨーレート値γ
(GFR+ΔGFR)が、車両安定化領域内の値となってい
るか否かを判定する。具体的には、ヨーレート値γ(G
FR+ΔGFR)の値が、判定値γ0 より小さいか否かが判
定される。
【0099】そして、ステップ108でヨーレート値γ
(GFR+ΔGFR)の値が判定値γ0より大きいと判定さ
れた場合(否定判断が行われた場合)には、処理をステ
ップ110に進める。ステップ110では、後輪RL,
RRにアキュムレータ圧が供給されるのを禁止する処理
が実行される。即ち、後輪RL,RRに対しBA動作が
行われるのを禁止する。
【0100】ステップ108で否定判断が行われた場
合、車両はオーバーステア状態となっている。。このよ
うなオーバーステア状態下において、後輪RR,RLに
対するBA制御が禁止されることにより、BA制御は前
輪FR,FLについてのみ実行されるため、後輪RR,
RLに発生するコーナリングフォースの減少量が抑制さ
れる。よって、車両のオーバーステア傾向を抑制するこ
とができ、従って車両安定性の向上を図ることができ
る。
【0101】一方、ステップ108でヨーレート値γ
(GFR+ΔGFR)の値が判定値γ0 より小さいと判定さ
れた場合(肯定判断が行われた場合)は、車両がニュー
トラルステア状態或いはアンダーステア状態のである。
このような場合には、前記したように車両旋回中にBA
制御を実施することにより、却って車両安定性を向上さ
せることができる。
【0102】よって、ステップ108において肯定判断
が行われた場合には、処理はステップ112に進み、B
A制御の実行開始の基準となる閾値を下げる処理を行う
構成としている。これにより、上記した所定条件を満足
する状態において、旋回時に後輪RR,RLに制動力が
印加されるため、車両の安定性を向上することができ
る。
【0103】ところで、上記の実施例においては、EC
U10が加速度センサ99の検出値を読み取ることで前
記請求項1記載の「旋回状態検出手段」が実現されると
共に、ECU10が上記ステップ108乃至112の処
理を実行することにより、前記請求項1記載の「閾値変
更手段」および前記請求項3記載の「アシスト禁止手
段」が実現されている。
【0104】尚、上記した実施例では、操作量としてM
/C圧を用いたものを例に挙げて説明したが、操作量と
してはペダルストローク等の他の検出値をを用いること
も可能である。また、上述した実施例においては、制動
力制御装置の形式を、ハイドロブースタタイプに限定し
ているが、本発明はこれに限定されるものではなく、ポ
ンプアップタイプ及びバキュームブースタタイプのにの
各制動力制御装置に適用することも可能である。
【0105】
【発明の効果】上述の如く、本発明によれば次に述べる
種々の効果を実現することができる。請求項1記載の発
明によれば、車両旋回時において各輪に対し制動力を印
加した方が車両安定性が向上する車両安定化領域にある
場合には、ブレーキアシスト制御の実行開始の基準とな
る閾値を下げ、各輪に対し有効に制動力を付加する構成
としたことにより、旋回時における車両安定性の向上を
図ることができる。
【0106】また、請求項2記載の発明によれば、車両
安定化領域を超える旋回特性値が検出された場合は、後
輪についてのブレーキアシスト制御が禁止されるため、
後輪に発生するコーナリングフォースの減少量が抑制さ
れ、車両のオーバーステア傾向を抑制することができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例に対応する制動力制御装置
の通常ブレーキ状態を示すシステム構成図である。
【図2】図1に示す制動力制御装置に用いられるハイド
ロブースタの構成図である。
【図3】本発明の第1実施例に対応する制動力制御装置
のABS作動状態を示す図である。
【図4】本発明の第1実施例に対応する制動力制御装置
においてBA制御中またはBA+ABS制御中に実現さ
れるアシスト圧増圧状態を示す図である。
【図5】本発明の第1実施例に対応する制動力制御装置
においてBA制御中またはBA+ABS制御中に実現さ
れるアシスト圧保持状態を示す図である。
【図6】本発明の第1実施例に対応する制動力制御装置
においてBA制御中またはBA+ABS制御中に実現さ
れるアシスト圧減圧状態を示す図である。
【図7】図7(A)は、本発明の第1実施例に対応する
制動力制御装置において緊急ブレーキ操作が行われた場
合にマスタシリンダ圧PM/C の変化速度ΔPM/C に生ず
る変化を示す図である。図7(B)は、本発明の第1実
施例に対応する制動力制御装置において緊急ブレーキ操
作が行われた場合にマスタシリンダ圧PM/C およびホイ
ルシリンダ圧P W/C に生ずる変化を表す図である。
【図8】車両の旋回中に車輪に生じる小ー名リングフォ
ースを説明するめたの図である。
【図9】車両の旋回中に制動動作が行われた場合に車輪
に生じるコーナリングフォース及び制動力を説明するた
めの図である。
【図10】本発明の一実施例であるBA制御処理の原理
を説明するための図である。
【図11】本発明の一実施例であるBA制御処理ルーチ
ンのフローチャートである。
【符号の説明】
10 電子制御ユニット(ECU) 12 ブレーキペダル 36 ハイドロブースタ 86 第1アシストソレノイド(SA-1) 88 第2アシストソレノイド(SA-2) 90 第3アシストソレノイド(SA-3) 94 レギュレータ切り換えソレノイド(STR) 99 Gセンサ 104,106,108,110 保持ソレノイド(S
**H) 112,114,116,118 減圧ソレノイド(S
**R) 120,122,124,126 ホイルシリンダ

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ブレーキ踏力に応じた制動力を発生させ
    る通常制御と、 運転者によって緊急ブレーキ操作が行われた際に、通常
    制御時に比して大きな制動油圧を発生させるブレーキア
    シスト制御とを実行する制動力制御装置において、 車両の旋回状態を表す旋回特性値を検出する旋回状態検
    出手段と、 検出された前記旋回特性値が所定の車両安定化領域内で
    ある場合に、前記ブレーキアシスト制御の実行開始の基
    準となる閾値を下げる閾値変更手段と、 を備えることを特徴とする制動力制御装置。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の制動力制御装置におい
    て、 前記旋回状態検出手段において、前記車両安定化領域を
    超える旋回特性値が検出された場合は、後輪についての
    ブレーキアシスト制御の実行を禁止するアシスト禁止手
    段を備えることを特徴とする制動力制御装置。
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