JP5228376B2 - 赤外線遮蔽微粒子およびその製造方法、赤外線遮蔽微粒子分散体、赤外線遮蔽体、ならびに赤外線遮蔽基材 - Google Patents

赤外線遮蔽微粒子およびその製造方法、赤外線遮蔽微粒子分散体、赤外線遮蔽体、ならびに赤外線遮蔽基材 Download PDF

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Description

本発明は、可視光領域の光は透過し、近赤外線領域の光は吸収するタングステン酸化物微粒子、複合タングステン酸化物微粒子であって、当該微粒子の表面が所定の被膜で被覆されたものである赤外線遮蔽微粒子およびその製造方法、当該赤外線遮蔽微粒子を含む赤外線遮蔽微粒子分散体、赤外線遮蔽体、ならびに赤外線遮蔽基材に関する。
近年、赤外線遮蔽体の需要が急増しており、赤外線遮蔽体に関する特許が多く提案されている。機能的観点からは、例えば、各種建築物や車両の窓材等の分野において、可視光線を十分に取り入れながら近赤外領域の光を遮蔽し、明るさを維持しつつ室内の温度上昇を抑制することを目的としたもの、PDP(プラズマディスプレイパネル)から前方に放射される近赤外線が、コードレスフォンや家電機器のリモコンに誤動作を引き起こしたり、伝送系光通信に悪影響を及ぼしたりすることを防止することを目的としたもの、等がある。
また、遮光部材の観点からは、例えば、窓材等に使用される遮光部材として、可視光領域から近赤外線領域に吸収特性があるカーボンブラック、チタンブラック等の無機顔料、および、可視光領域のみに強い吸収特性のあるアニリンブラック等の有機顔料等を含む黒色系顔料を含有する遮光フィルム、アルミ等の金属を蒸着したハーフミラータイプの遮光部材が提案されている。
特許文献1では、透明なガラス基板上に、基板側より第1層として周期律表のIIIa族、IVa族、Vb族、VIb族およびVIIb族から成る群から選ばれた少なくとも1種の金属イオンを含有する複合酸化タングステン膜を設け、前記第1層上に第2層として透明誘電体膜を設け、当該第2層上に第3層として周期律表のIIIa族、IVa族、Vb族、VIb族およびVIIb族から成る群から選ばれた少なくとも1種の金属イオンを含有する複合酸化タングステン膜を設け、かつ前記第2層の透明誘電体膜の屈折率を前記第1層および前記第3層の複合酸化タングステン膜の屈折率よりも低くすることにより、高い可視光透過率および良好な赤外線遮断性能が要求される部位に好適に使用することができる赤外線遮断ガラスが提案されている。
特許文献2では、特許文献1と同様の方法で、透明なガラス基板上に、基板側より第1層として第1の誘電体膜を設け、当該第1層上に第2層として酸化タングステン膜を設け、当該第2層上に第3層として第2の誘電体膜を設けた赤外線遮断ガラスが提案されている。
特許文献3では、特許文献1と同様な方法で、透明な基板上に、基板側より第1層として同様の金属元素を含有する複合酸化タングステン膜を設け、前記第1層上に第2層として透明誘電体膜を設けた熱線遮断ガラスが提案されている。
特許文献4では、水素、リチウム、ナトリウムまたはカリウム等の添加元素を含有する三酸化タングステン(WO)、三酸化モリブデン(MoO)、五酸化ニオブ(Nb)、五酸化タンタル(Ta)、五酸化バナジウム(V)および二酸化バナジウム(VO)の1種以上から選択された金属酸化物膜が、CVD法またはスプレー法で被覆され250℃程度で熱分解して形成された太陽光遮蔽特性を有する太陽光制御ガラスシートが提案されている。
特許文献5には、タングステン酸を加水分解して得られた酸化タングステンを用い、当該酸化タングステンに、ポリビニルピロリドンという特定の構造の有機ポリマーを添加することにより、太陽光が照射されると、光線中の紫外線が酸化タングステンに吸収されて励起電子とホールとが発生し、少量の紫外線量により5価タングステンの出現量が著しく増加して着色反応が速くなり、これに伴って着色濃度が高くなると共に、光を遮断することによって、5価タングステンが極めて速やかに6価に酸化されて消色反応が速くなる特性を用い、太陽光に対する着色および消色反応が速く、着色時に近赤外域の波長1250nmに吸収ピークが現れ、太陽光の近赤外線を遮断することができる太陽光可変調光断熱材料が得られることが提案されている。
また、本発明者等は、特許文献6に、六塩化タングステンをアルコールに溶解し、そのまま溶媒を蒸発させるか、または加熱還流した後溶媒を蒸発させ、その後100℃〜500℃で加熱することにより、三酸化タングステンまたはその水和物または両者の混合物からなる粉末を得ること、当該酸化タングステン微粒子を用いてエレクトロクロミック素子が得られること、多層の積層体を構成し膜中にプロトンを導入したときに当該膜の光学特性を変化させることができること、等を提案している。
また、特許文献7には、メタ型タングステン酸アンモニウムと水溶性の各種金属塩を原料とし、その混合水溶液の乾固物を約300〜700℃の加熱温度で加熱し、この加熱中に不活性ガス(添加量;約50vol%以上)または水蒸気(添加量;約15vol%以下)を添加した水素ガスを供給することにより、MWO(M;アルカリ、アルカリ土類、希土類などの金属元素、0<x<1)で表される種々のタングステンブロンズを作製する方法が提案されている。また、同様の操作を支持体上で行わせ、種々のタングステンブロンズ被覆複合体を製造する方法が提案され、燃料電池等の電極触媒材料として用いることが提案されている。
また、本発明者は、特許文献8に、赤外線遮蔽材料微粒子が媒体中に分散してなる赤外線遮蔽材料微粒子分散体であって、赤外線遮蔽材料微粒子が、一般式WyOz(但し、Wはタングステン、Oは酸素、2.2≦z/y≦2.999)で表記されるタングステン酸化物の微粒子、または/および、一般式MxWyOz(但し、Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、Iのうちから選択される1種類以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦x/y≦1、2.2≦z/y≦3.0)で表記される複合タングステン酸化物の微粒子であって、当該赤外線遮蔽材料微粒子の粒子直径が、1nm以上800nm以下であることを特徴とする赤外線遮蔽材料微粒子分散体の光学特性や導電性、製造方法について開示している。
特開平8−59300号公報 特開平8−12378号公報 特開平8−283044号公報 特開2000−119045号公報 特開平9−127559号公報 特開2003−121884号公報 特開平8−73223号公報 国際公開WO2005/37932号
赤外線遮蔽材料は、その特質から基本的には屋外で使用され、高い耐候性が要求される場合が多い。ところが、本発明者らの検討によると、前記タングステン酸化物微粒子、または/および、複合タングステン酸化物微粒子を含む一部の光学部材(フィルム、樹脂シート等)において、使用方法によっては、空気中の水蒸気や水がマトリクス中に徐々に浸透して当該タングステン含有酸化物微粒子の表面が分解し、波長200〜2600nmの透過率が経時的に上昇してしまい、赤外線遮蔽性能が徐々に低下するという問題が見出された。
ここで、本発明者らの検討により、特許文献8に開示されているタングステン酸化物微粒子や複合タングステン酸化物微粒子においても、空気中の水蒸気や水、または、樹脂などの高分子分散媒体中に発生した活性な有害ラジカル(紫外線等の外部エネルギーにより生成)によって、当該微粒子の表面が分解劣化することを見出した。特に、表面活性の高い微細粒子ほど、当該分解劣化による赤外線遮蔽効果の損失割合は大きいということも判明した。
本発明は上述の状況の下になされたものであり、その課題とするところは、耐水性に優れ、且つ、優れた赤外線遮蔽特性を有する赤外線遮蔽微粒子およびその製造方法、赤外線遮蔽微粒子分散体、赤外線遮蔽体を提供することである。
発明者は、上記課題の解決のため、優れた光学的特性を有する前記タングステン酸化物微粒子、複合タングステン酸化物微粒子の耐水性および化学安定性を向上させることを考え研究を行った。その結果、タングステン酸化物微粒子、複合タングステン酸化物微粒子表面との親和性にすぐれ、凝集したこれら微粒子の粒子間隙にまで浸透し、個々の粒子表面に対して均一に吸着し、被膜を形成する化合物を用いて、当該個々の粒子表面を強固に被覆することが肝要なことに想到した。
本発明者らはさらに研究を続け、当該個々の粒子表面に対して均一に吸着し、被膜を形成する化合物として、有機金属化合物とシラン化合物とが適していることに想到した。つまり、タングステン酸化物微粒子または/および複合タングステン酸化物微粒子の表面を、有機金属化合物で被覆するか、シラン化合物で被覆するか、さらに好ましくは、有機金属化合物とシラン化合物とで被覆することで、当該微粒子へ耐水性および化学安定性を付与できることに想到した。そして当該耐水性および化学安定性を付与したタングステン酸化物微粒子、複合タングステン酸化物微粒子を適用した赤外線遮蔽基材、赤外線遮蔽微粒子分散体等が、耐水性および化学安定性に優れ、且つ、優れた赤外線遮蔽特性を有することを見出し、本発明に至った。
すなわち、上述の課題を解決する本発明の第1の発明は、
一般式MxWyOz(但し、Mはアルカリ金属から選ばれる1種または2種以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、(0.001≦x/y≦1、2.2≦z/y≦3))で表記される複合タングステン酸化物の微粒子であって、
当該微粒子の平均一次粒径が、1nm以上、800nm以下であり、
当該複合タングステン酸化物の微粒子が有機溶媒中に分散された分散液へ、有機金属化合物を添加し混合液とした後、当該混合液を攪拌しながらシラン化合物を添加して、当該有機金属化合物およびシラン化合物を当該複合タングステン酸化物の微粒子表面に被覆することで得られた、シラン化合物および有機金属化合物で被覆されていることを特徴とする赤外線遮蔽微粒子である。
第2の発明は、
前記微粒子表面が露出することなく、膜厚5nm以上、30nm以下の前記シラン化合物および有機金属化合物で被覆されていることを特徴とする第1の発明に記載の赤外線遮蔽微粒子である。
第3の発明は、
有機溶媒に分散された前記複合タングステン酸化物の微粒子の分散液へ、前記有機金属化合物を添加し混合液とした後、当該混合液を攪拌しながら前記シラン化合物を添加し、当該シラン化合物および有機金属化合物を複合タングステン酸化物の微粒子表面に被覆した後、当該混合液を乾固し、当該固化物を解砕処理して得られることを特徴とする第1または第2の発明のいずれかに記載の赤外線遮蔽微粒子である。
第4の発明は
前記複合タングステン酸化物の微粒子の粒子径が、5nm以上、2μm以下であることを特徴とする第1〜第3の発明のいずれかに記載の赤外線遮蔽微粒子である。
第5の発明は、
前記有機金属化合物が、
アルミニウムアルコレートまたはこの重合物、
環状アルミニウムオリゴマー、アルコキシ基含有のアルミニウムキレート、ジルコニウムアルコレートまたはこれらの重合物、
ジルコニウムキレート化合物、チタンアルコレート、またはこれらの重合物、
チタンキレート化合物、
から選ばれる1種または2種以上の化合物であることを特徴とする第1〜第4の発明のいずれかに記載の赤外線遮蔽微粒子である。
第6の発明は、
前記有機金属化合物の添加量が、前記複合タングステン酸化物の微粒子100重量部に対して、金属元素換算で0.05重量部〜300重量部であることを特徴とする第1〜第5の発明のいずれかに記載の赤外線遮蔽微粒子である。
第7の発明は、
前記シラン化合物が、一般式Si(OR)(但し、Rは、同一または異種の炭素原子数1〜6の1価炭化水素基)で表記される4官能性シラン化合物、または、その部分加水分解生成物であることを特徴とする第1〜第6の発明のいずれかに記載の赤外線遮蔽微粒子である。
第8の発明は、
前記シラン化合物の、前記複合タングステン酸化物の微粒子に対する比率が、含有する二酸化ケイ素換算で、複合タングステン酸化物の微粒子1重量部に対して、0.01〜100重量部であることを特徴とする第1〜第7の発明のいずれかに記載の赤外線遮蔽微粒子である。
第9の発明は、
前記複合タングステン酸化物の微粒子が、一般式WyOz(但し、Wはタングステン、Oは酸素、2.45≦z/y≦2.999)で表記される組成比のマグネリ相を含むことを特徴とする第1〜第8の発明のいずれかに記載の赤外線遮蔽微粒子である。
第10の発明は、
一般式MxWyOzで表記される前記複合タングステン酸化物の微粒子が、六方晶、正方晶、立方晶、から選ばれる1種または2種以上の結晶構造を有することを特徴とする第1〜第9の発明のいずれかに記載の赤外線遮蔽微粒子である。
第11の発明は、
Mが、Cs、Rb、K、Liから選ばれる1種または2種以上の元素であり、かつ、前記複合タングステン酸化物微粒子が六方晶の結晶構造を有することを特徴とする第1〜第10の発明のいずれかに記載の赤外線遮蔽微粒子である。
第12の発明は、
第1〜第11の発明のいずれかに記載の赤外線遮蔽微粒子が、液体媒質または固体媒質中に分散していることを特徴とする赤外線遮蔽微粒子分散体である。
第13の発明は、
前記固体媒質が、樹脂またはガラスのいずれかであることを特徴とする第12の発明に記載の赤外線遮蔽微粒子分散体である。
第14の発明は、
前記固体媒質中に前記赤外線遮蔽微粒子が分散している赤外線遮蔽微粒子分散体が、フィルム状またはボード状であることを特徴とする第12または第13の発明に記載の赤外線遮蔽微粒子分散体である。
第15の発明は、
前記固体媒質中に前記赤外線遮蔽微粒子が分散している赤外線遮蔽微粒子分散体が、粉状であることを特徴とする第12または第13の発明に記載の赤外線遮蔽微粒子分散体である。
第16の発明は、
第15の発明に記載の粉状の赤外線遮蔽微粒子分散体と、樹脂ペレットとの、混練成形体であることを特徴とする赤外線遮蔽微粒子分散体である。
第17の発明は、
前記液体媒質が、有機溶媒、樹脂を溶解させた有機溶媒、樹脂を分散させた有機溶媒、水、から選ばれる1種以上の媒質であることを特徴とする第12の発明に記載の赤外線遮蔽微粒子分散体である。
第18の発明は、
第12の発明に記載の液体媒質中に分散している赤外線遮蔽微粒子分散体、または、第15の発明に記載の固体媒質中に分散している赤外線遮蔽微粒子分散体を液状の溶媒と混合した赤外線遮蔽微粒子分散体、または、第17の発明に記載の赤外線遮蔽微粒子分散体、から選択される1種以上の赤外線遮蔽微粒子分散体が、基材表面に塗布膜形成していることを特徴とする赤外線遮蔽基材である。
第19の発明は、
一般式MxWyOz(但し、Mはアルカリ金属から選ばれる1種または2種以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、(0.001≦x/y≦1、2.2≦z/y≦3))で表記される複合タングステン酸化物微粒子を、有機溶媒に分散させて分散液を得る工程と、
当該分散液へ、シラン化合物を添加混合および有機金属化合物を添加混合して、当該複合タングステン酸化物微粒子の表面にシラン化合物および有機金属化合物を被覆する工程と、
当該有機溶媒を蒸発除去し、さらに加熱を行い、シラン化合物および有機金属化合物が被覆された、複合タングステン酸化物微粒子の粉状体を得る工程と、
当該粉状体を解砕して、単分散のシラン化合物および有機金属化合物が被覆された複合タングステン酸化物微粒子を得る工程とを、具備する赤外線遮蔽微粒子の製造方法であって、
前記分散液へ、シラン化合物および有機金属化合物を添加混合して、当該複合タングステン酸化物微粒子の表面に、シラン化合物および有機金属化合物を被覆する工程において、
まず、前記分散液へ、前記有機金属化合物を添加混合して、有機金属化合物を含有する分散処理物とし、
次に、当該有機金属化合物を含有する分散処理物へ水を添加混合し、さらに、シラン化合物を添加混合して、有機金属化合物とシラン化合物とを含有する分散液とすることを特徴とする赤外線遮蔽微粒子の製造方法である。
本発明により得られる赤外線遮蔽微粒子は、従来にない高い耐水性を有し、優れた赤外線遮蔽特性を有していた。さらに、当該赤外線遮蔽微粒子を用いた赤外線遮蔽微粒子分散体、赤外線遮蔽体も、従来にない高い耐水性を有し、優れた赤外線遮蔽特性を有していた。
本発明に係る赤外線遮蔽微粒子は、一般式WyOz(但し、Wはタングステン、Oは酸素、2.2≦z/y≦2.999)で表記されるタングステン酸化物、または/および、
一般式MxWyOz(但し、Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、Iのうちから選択される1種類以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、(0.001≦x/y≦1、2.2≦z/y≦3)で表記される複合タングステン酸化物であって、当該微粒子の平均一次粒径が1nm以上800nm以下であり、且つ、当該微粒子表面が、シラン化合物または/および有機金属化合物で被覆されていることを特徴としている。
尚、本発明において、「タングステン酸化物微粒子や複合タングステン酸化物微粒子へ耐水性を付与する為に、当該タングステン酸化物微粒子や複合タングステン酸化物微粒子の表面へ、均一に形成した、金属化合物被膜または/およびシラン化合物被膜による被覆」を、単に「表面被覆」と略記する場合がある。
以下、本発明を、1)タングステン酸化物微粒子、複合タングステン酸化物微粒子、2)有機金属化合物、3)シラン化合物、4)タングステン酸化物微粒子、複合タングステン酸化物微粒子への、有機金属化合物、シラン化合物の被覆方法、5)本発明に係る赤外線遮蔽微粒子を用いて得られる赤外線遮蔽微粒子分散体、赤外線遮蔽基材、並びに物品、の順で詳細に説明する。
1)タングステン酸化物微粒子、複合タングステン酸化物微粒子
一般に、自由電子を含む材料は、プラズマ振動によって波長200nmから2600nmの太陽光線の領域周辺の電磁波に反射吸収応答を示すことが知られている。このような物質の粉末を、光の波長より小さい粒径の微粒子とすると、可視光領域(380nmから780nm)の幾何学散乱が低減されて可視光領域の透明性が得られることが知られている。
尚、本明細書において、透明性とは、可視光領域の光に対して散乱が少なく透過性が高いという意味で用いている。
一般に、WO中には有効な自由電子が存在しないため、近赤外線領域の吸収反射特性が少なく、赤外線遮蔽材料としては有効ではない。
一方、酸素欠損を持つWOや、WOにNa等の陽性元素を添加したいわゆるタングステンブロンズは、導電性材料であり、自由電子を持つ材料であることが知られている。そして、これらの自由電子を持つ材料の単結晶等の分析により、赤外線領域の光に対する自由電子の応答が示唆されている。
本発明者等は、当該タングステンと酸素との組成範囲の特定部分において、赤外線遮蔽材料として特に有効な範囲があることを見出し、可視光領域においては透明で、近赤外線領域においては吸収を持つタングステン酸化物、または/および、複合タングステン酸化物微粒子を媒体に分散させた赤外線遮蔽材料微粒子分散体、または当該赤外線遮蔽材料微粒子分散体より製造した赤外線遮蔽体に想到した。
本発明の赤外線遮蔽材料微粒子は、一般式WyOz(但し、Wはタングステン、Oは酸素、2.2≦z/y≦2.999)で表記されるタングステン酸化物、または/および、一般式MxWyOz(但し、Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、Iのうちから選択される1種類以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、(0.001≦x/y≦1、2.2≦z/y≦3)で表記される複合タングステン酸化
物である。
一般式WyOzで表記されるタングステン酸化物において、当該タングステンと酸素との組成範囲は、タングステンに対する酸素の組成比が3よりも少なく、さらには、当該赤外線遮蔽材料をWyOzと記載したとき、2.2≦z/y≦2.999である。このz/yの値が、2.2以上であれば、当該赤外線遮蔽材料中に目的以外であるWOの結晶相が現れるのを回避することが出来ると伴に、材料としての化学的安定性を得ることが出来るので有効な赤外線遮蔽材料として適用できる。一方、このz/yの値が、2.999以下であれば必要とされる量の自由電子が生成され効率よい赤外線遮蔽材料となる。
また、当該WOへ、後述する元素Mを添加することで、当該WO中に自由電子が生成され、近赤外線領域に自由電子由来の吸収特性が発現し、1000nm付近の近赤外線吸収材料として有効となるため好ましい。
ここで、当該WOに対し、上述した酸素量の制御と、自由電子を生成する元素の添加とを併用することで、より効率の良い赤外線遮蔽材料を得ることが出来る。この酸素量の制御と、自由電子を生成する元素の添加とを併用した赤外線遮蔽材料の一般式を、MxWyOz(但し、Mは、前記M元素、Wはタングステン、Oは酸素)と記載したとき、0.001≦x/y≦1、2.2≦z/y≦3.0の関係を満たす赤外線遮蔽材料が望ましい。
まず、元素Mの添加量を示すx/yの値について説明する。
x/yの値が0.001より大きければ、十分な量の自由電子が生成され目的とする赤外線遮蔽効果を得ることが出来る。そして、元素Mの添加量が多いほど、自由電子の供給量が増加し、赤外線遮蔽効率も上昇するが、x/yの値が1程度で当該効果も飽和する。また、x/yの値が1より小さければ、当該赤外線遮蔽材料中に不純物相が生成されるのを回避できるので好ましい。
また、元素Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、Iのうちから選択される1種類以上であることが好ましい。
ここで、元素Mを添加された当該MxWyOzにおける、安定性の観点からは、元素Mは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Reのうちのうちから選択される1種類以上の元素であることがより好ましく、赤外線遮蔽材料としての光学特性、耐候性を向上させる観点からは、前記元素Mにおいてアルカリ土類金属元素、遷移金属元素、4B族元素、5B族元素に属するものが、さらに好ましい。
次に、酸素量の制御を示すz/yの値について説明する。z/yの値については、MxWyOzで表記される赤外線遮蔽材料においても、上述したWyOzで表記される赤外線遮蔽材料と同様の機構が働くことに加えz/y=3.0においても、上述した元素Mの添加量による自由電子の供給があるため、2.2≦z/y≦3.0が好ましく、さらに好ましくは2.45≦z/y≦3.0である。
さらに、上述の複合タングステン酸化物微粒子が六方晶の結晶構造を有する場合、当該
微粒子の可視光領域の透過が向上し、近赤外領域の吸収が向上する。この六方晶の結晶構造の模式的な平面図である図1を参照しながら説明する。図1において、符号1で示すWO単位にて形成される8面体が、6個集合して六角形の空隙が構成され、当該空隙中に、符号2で示す元素Mが配置して1箇の単位を構成し、この1箇の単位が多数集合して六方晶の結晶構造を構成する。
本発明に係る、可視光領域の透過を向上させ、近赤外領域の吸収を向上させる効果を得るためには、複合タングステン酸化物微粒子中に、図1で説明した単位構造(WO単位で形成される8面体が6個集合して六角形の空隙が構成され、当該空隙中に元素Mが配置した構造)が含まれていれば良く、当該複合タングステン酸化物微粒子が、結晶質であっても非晶質であっても構わない。
この六角形の空隙に元素Mの陽イオンが添加されて存在するとき、可視光領域の透過が向上し、近赤外領域の吸収が向上する。ここで、一般的には、イオン半径の大きな元素Mを添加したとき当該六方晶が形成され、具体的には、Cs、K、Rb、Tl、In、Ba、Snを添加したとき六方晶が形成されやすい。勿論これら以外の元素でも、WO単位で形成される六角形の空隙に上述した元素Mが存在すれば良く、上記元素に限定される訳ではない。
六方晶の結晶構造を有する複合タングステン酸化物微粒子が均一な結晶構造を有するとき、添加元素Mの添加量は、x/yの値で0.2以上0.5以下が好ましく、更に好ましくは0.33である。x/yの値が0.33となることで、上述した元素Mが六角形の空隙の全てに配置されると考えられる。
また、六方晶以外で、正方晶、立方晶のタングステンブロンズも赤外線遮蔽材料として有効である。結晶構造によって、近赤外線領域の吸収位置が変化する傾向があり、立方晶<正方晶<六方晶の順に、吸収位置が長波長側に移動する傾向がある。また、それに付随して可視光線領域の吸収が少ないのは、六方晶、正方晶、立方晶の順であり、よって、より可視光領域の光を透過して、より赤外線領域の光を遮蔽する用途には、六方晶のタングステンブロンズを用いることが好ましい。ただし、ここで述べた光学特性の傾向は、あくまで大まかな傾向であり、添加元素の種類や、添加量、酸素量によって変化するものであり、本発明がこれに限定されるわけではない。
本発明に係る、タングステン酸化物微粒子、または/および、複合タングステン酸化物微粒子を含有する赤外線遮蔽材料は、近赤外線領域、特に1000nm付近の光を大きく吸収するため、その透過色調は青色系から緑色系となる物が多い。
また、当該赤外線遮蔽材料の粒子の粒子径は、その使用目的によって、各々選定することができる。まず、透明性を保持した応用に使用する場合は、800nm以下の粒子径を有していることが好ましい。これは、800nmよりも小さい粒子は、散乱により光を完全に遮蔽することが無く、可視光線領域の視認性を保持し、同時に効率良く透明性を保持することができるからである。特に可視光領域の透明性を重視する場合は、さらに粒子による散乱を考慮することが好ましい。
この粒子による散乱の低減を重視するとき、粒子径は200nm以下、好ましくは100nm以下が良い。この理由は、粒子の粒子径が小さければ、幾何学散乱もしくはミー散乱による、400nm〜780nmの可視光線領域の光の散乱が低減される結果、赤外線遮蔽膜が曇りガラスのようになり、鮮明な透明性が得られなくなるのを回避できるからである。即ち、粒子径が200nm以下になると、上記幾何学散乱もしくはミー散乱が低減し、レイリー散乱領域になる。レイリー散乱領域では、散乱光は粒子径の6乗に反比例し
て低減するため、粒子径の減少に伴い散乱が低減し透明性が向上するからである。さらに粒子径が100nm以下になると、散乱光は非常に少なくなり好ましい。光の散乱を回避する観点からは、粒子径が小さい方が好ましい、粒子径が1nm以上あれば工業的な製造は容易である。
上記粒子径を800nm以下と選択することにより、赤外線遮蔽材料微粒子を媒体中に分散させた赤外線遮蔽材料微粒子分散体のヘイズ値は、可視光透過率85%以下でヘイズ30%以下とすることができる。ヘイズが30%よりも大きい値であると、曇りガラスのようになり、鮮明な透明性が得られない。
また、タングステン酸化物微粒子、または/および、複合タングステン酸化物微粒子において、一般式WyOzにおいて、2.45≦z/y≦2.999で表される組成比を有する、所謂「マグネリ相」は化学的に安定であり、近赤外線領域の吸収特性も良いので、赤外線遮蔽材料として好ましい。
2)有機金属化合物
本発明に用いる有機金属化合物は、アルミニウム系有機金属化合物としてアルミニウムアルコレート化合物およびその重合物、アルミニウムキレート化合物、ジルコニア系有機金属化合物としてジルコニウムアルコレート化合物およびその重合物、ジルコニウムキレート化合物、チタン系有機金属化合物としてチタンアルコレート化合物およびその重合物、チタンキレート化合物、から選ばれる一種又は二種以上であることが好ましい。
アルミニウム系有機金属化合物としては、アルミニウムエチレート、アルミニウムイソプロピレート、アルミニウムsec−ブチレート、モノ−sec−ブトキシアルミニウムジイソプロピレートなどのアルミニウムアルコレートまたはこれら重合物、環状アルミニウムオキサイドオクチレートなどの環状アルミニウムオリゴマー、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、オクチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロプレート、ステアリルアセトアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)のように、アルミニウムアルコレートを非プロトン性溶媒や、石油系溶剤、炭化水素系溶剤、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、アミド系溶剤等に溶解し、この溶液に、β−ジケトン、β−ケトエステル、一価または多価アルコール、脂肪酸等を加えて、加熱還流し、リガンドの置換反応により得られるアルコキシ基含有のアルミニウムキレート化合物を例示することができる。
また、本発明で用いられるジルコニア系有機金属化合物としては、ジルコニウムエチレート、ジルコニウムブチレートなどのジルコニウムアルコレートまたはこれら重合物、ジルコニウムトリブトキシステアレート、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムトリブトキシアセチルアセトネート、ジルコニウムジブトキシビス(アセチルアセトネート)、ジルコニウムトリブトキシエチルアセトアセテート、ジルコニウムブトキシアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)などのジルコニウムキレート化合物を例示することができる。
また、本発明で用いられるチタン系有機金属化合物としては、メチルチタネート、エチルチタネート、イソプロピルチタネート、ブチルチタネート、2−エチルヘキシルチタネートなどのチタンアルコレートやこれら重合物、チタンアセチルアセトネート、チタンテトラアセチルアセトネート、チタンオクチレングリコレート、チタンエチルアセトアセテート、チタンラクテート、チタントリエタノールアミネートなどのチタンキレート化合物を例示することができる。
上記有機金属化合物の添加量は、前記タングステン酸化物微粒子または/および複合タングステン酸化物微粒子100重量部に対して、金属元素換算で0.05重量部以上、300重量部以下であることが好適である。更に好ましくは、0.3重量部以上、150重量部以下の範囲である。
有機金属化合物が0.05重量部以上あれば表面を被覆する効果が発揮され耐水性向上の効果が得られるからである。
また、有機金属化合物が300重量部以下であれば、前記タングステン酸化物微粒子、複合タングステン酸化物微粒子に対する吸着量が過剰になることを回避出来る。
これは、有機金属化合物の、タングステン酸化物微粒子または/および複合タングステン酸化物微粒子に対する吸着量が過剰になると、溶媒除去時に当該有機金属化合物を介して微粒子同士が造粒し易くなることを回避したいからである。当該望まれない微粒子同士の造粒によって、用途によっては良好な透明性が得られなくなる場合があるからである。加えて、有機金属化合物の過剰によって、相当の有機金属化合物添加量および処理時間を要することとなる為、生産コスト的にも不利となる。よって工業的な観点から有機金属化合物の添加量は、300重量部以下とすることが好ましい。
3)シラン化合物
本発明に用いるシラン化合物は、一般式:Si(OR)(但し、Rは同一または異種の炭素原子数1〜6の一価炭化水素基)で示される4官能性シラン化合物またはその部分加水分解生成物である。
例えば、シラザン系処理剤、クロロシラン系処理剤、アルコキシ基を分子構造中に有する無機系処理剤、および、アルコキシ基を分子末端または側鎖に有する有機系処理剤から選択されたケイ素を含有する表面処理剤が挙げられる。
上記シラザン系処理剤は、タングステン酸化物微粒子、または/および、複合タングステン酸化物微粒子との反応性が強く、微粒子の界面で共有結合して微粒子表面を被覆することが可能となる。さらに、シラザンは親油性で分子構造が小さいため、緻密に微粒子表面を被覆でき、最外殻は疎水性となるので耐水性向上に有効である。
具体的には、ヘキサメチルジシラザン、サイクリックシラザン、N,N−ビス(トリメチルシリル)ウレア、N−トリメチルシリルアセトアミド、ジメチルトリメチルシリルアミン、ジエチルトリメチルシリルアミン、トリメチルシリルイミダゾール、N−トリメチルシリルフェニルウレア等が挙げられ、かつ、これ等の加水分解物またはその重合物の適用も可能である。
また、上記クロロシラン系処理剤は、そのクロル基が、タングステン酸化物微粒子または/および複合タングステン酸化物微粒子と微粒子表面で共有結合を形成する。これによって粒子表面はクロロシラン系処理剤に被覆され、耐水性が向上する。
クロロシラン系処理剤の代表的なものは、メチルトリクロロシラン、メチルジクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、トリフロロプロピルトリクロロシラン、ヘプタデカフロロデシルトリクロロシラン、ビニルトリクロルシラン等が挙げられ、かつ、これ等の加水分解物またはその重合物の適用も可能である。
次に、アルコキシ基を分子構造中に有する無機系処理剤は、そのアルコキシ基が、タングステン酸化物微粒子または/および複合タングステン酸化物微粒子と微粒子表面で共有結合を形成する。これによって微粒子表面は無機系表面処理剤で被覆され、また、最外殻は無機系処理剤、無機系処理剤の親油性基または疎水基で被覆されるので耐水性が向上する。
代表的なものとしては、シラン系カップリング剤等が挙げられる。具体的には、ビニル
トリエトキシシラン、ビニルトリス(βメトキシエトキシ)シラン、β―(3、4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ―グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ―グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ―グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ―メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ―メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ―アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ―アミノプロピルトリメトキシシラン、γ―アミノプロピルトリメトキシシラン、γ―アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニルーγ―アミノプロピルトリメトキシシラン、γ―クロロプロピルトリメトキシシラン、γ―メルカプトプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
更に、アルコキシシラン表面処理剤として分類される以下の化合物、すなわち、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、トリウルオロプロピルトリメトキシシラン、ヘプタデカトリフルオロデシルトリメトキシシラン等が挙げられる。さらに、これらの化合物の加水分解物、または、その重合物の適用も可能である。
また、アルコキシ基を、分子末端または側鎖に有し、主鎖がエポキシ、アクリル、ウレタン等の親油性高分子である有機系処理剤等も有効であるがこの限りではない。
本発明において、前記シラン化合物の前記タングステン酸化物微粒子または/および複合タングステン酸化物微粒子に対する比率が、含有する二酸化ケイ素換算で、タングステン酸化物微粒子または/および複合タングステン酸化物微粒子1重量部に対して、0.01重量部以上、100重量部以下であることが好ましい。これは、比率が0.01重量部以上であればタングステン酸化物微粒子または/および複合タングステン酸化物微粒子表面を被覆する効果が発揮され耐水性向上の効果が得られるからである。一方、比率が100重量部を超えると表面被覆による耐水性の向上が飽和し、被覆効果の向上が小さい場合があるからである。
4)タングステン酸化物微粒子、複合タングステン酸化物微粒子への、有機金属化合物、シラン化合物の被覆方法
本発明に係る赤外線遮蔽微粒子は、前記タングステン酸化物微粒子または/および複合タングステン酸化物微粒子の表面に、前記有機金属化合物または/およびシラン化合物が、好ましくは前記有機金属化合物およびシラン化合物の被膜が、被覆として形成されたものである。
具体的には、平均一次粒子径が1nm〜800nmのタングステン酸化物微粒子または/および複合タングステン酸化物微粒子を適宜な溶媒中に分散させておき、当該溶媒中へ表面処理剤として、前記シラン化合物または/および有機金属化合物を添加して混合攪拌を行う。すると、タングステン酸化物微粒子または/および複合タングステン酸化物微粒子の表面が、前記シラン化合物または/および有機金属化合物の被膜で被覆される。当該被覆の後、溶媒を蒸発除去し、さらに、被膜の密度や化学的安定性を高める目的で、被覆されている前記シラン化合物や有機金属化合物の熱分解温度以上の温度まで加熱処理して粉状体を得る。得られた粉状体に被覆された被膜を傷つけないよう、乾式または/および湿式で解砕して再分散させたものである。
本発明においては、赤外線遮蔽粒子である前記タングステン酸化物または/および複合タングステン酸化物を予め細かく粉砕して、平均一次粒子径を1nm〜800nmとし、適宜な溶媒中に分散させておくことで、予めタングステン酸化物微粒子または/および複合タングステン酸化物微粒子微粒子を単分散の状態にしておくことが好ましい。そして、この粉砕、分散処理工程中に分散状態がくずれ、微粒子同士が凝集することがないように
注意する。これは、表面処理の過程で、タングステン酸化物微粒子または/および複合タングステン酸化物微粒子が凝集を起こし、表面処理が微粒子の凝集の上になされるような状態となった場合、後述する再分散などの粉砕工程を経た際に、表面処理がなされていない面が露出して十分な耐水性を得ることが困難となるからである。
つまり、前記粉砕・分散処理を行うことにより、シラン化合物または/および有機金属化合物を添加した時、個々の微粒子に対して均一に被覆することができるのである。
ここで、本発明者らの詳細な検討により、本発明に係る表面処理剤として、前記シラン化合物および前記有機金属化合物の中から適宜選択された材料を単独で用いることの他に、二種類以上を組み合わせて用いる構成が好ましいことが判明した。
具体的には、シラン化合物、有機金属化合物からそれぞれ1種類以上を選択し、2種類以上の化合物の混合物として用いるか、または2種類以上の化合物を別々に添加処理することによって、タングステン酸化物微粒子または/および複合タングステン酸化物微粒子の表面を、複合物による単層の被膜、または、二層以上の多層被膜により被覆することにより、さらに優れた耐水効果を得ることができる。
さらに、本発明者らの詳細な検討により、前記シラン化合物および前記有機金属化合物の添加方法や添加順序においても好ましい構成を見出した。
具体的には、まず、タングステン酸化物微粒子または/および複合タングステン酸化物微粒子を、有機溶媒に分散して分散液を調製する。次に、当該分散液へ、有機金属化合物を混合攪拌して微粒子へ被覆処理を行い、さらに攪拌を継続しながらシラン化合物を滴下混合し、さらに攪拌を継続して、シラン化合物を微粒子へ被覆処理する。
次に、有機溶媒を蒸発除去させて被覆された被膜を固化させ、さらに、有機金属化合物やシラン化合物の熱分解温度以上の温度で加熱処理し、被覆された被膜の密度や化学的安定性を高めて、被覆された微粒子の粉状体を得る。
次に、当該被覆された微粒子の被膜を傷つけないよう、乾式または/および湿式で当該粉状体を解砕して再分散させることで、本発明に係る赤外線遮蔽微粒子を得る。
当該方法によれば、詳細な機構は不明であるが、強固な被膜が、タングステン酸化物微粒子または/および複合タングステン酸化物微粒子の表面に均一に形成され被覆となる。即ち、当該方法では、シラン化合物について従来行われているように、予め、シランモノマーを加水分解し、重合反応させたシラン化合物を、タングステン酸化物微粒子または/および複合タングステン酸化物微粒子に接触させるのではない。当該方法では、タングステン酸化物微粒子または/および複合タングステン酸化物微粒子にシラン化合物を反応させながら、同時に当該シラン化合物自身を自己縮合させつつ、タングステン酸化物微粒子または/および複合タングステン酸化物微粒子表面を徐々に被覆させていく。そして、当該被覆状態が維持できるように、シラン化合物をゆっくりと滴下混合し攪拌して被覆処理を行い、かつ、加熱処理を行う。この操作と反応により、シラン化合物中に残る未反応の反応基が失われ、粉状体となったときの微粒子同士の結着を弱めることが出来るのではないかとも考えられる。
また、当該被覆された微粒子の被膜を傷つけないよう、乾式または/および湿式で当該粉状体を解砕して再分散させることは重要な工程である。被覆処理後の被覆微粒子の中には、被覆微粒子同士が凝結状態にあるものも含まれており、光学材料に使用する場合には、透明性(ヘイズ)等に影響が出ることが考えられ、解砕処理が必要となるのである。ただし、高負荷粉砕をするとタングステン酸化物微粒子または/および複合タングステン酸化物微粒子表面に形成された被膜にダメージを与えることになるため、該被膜にダメージが与えられないよう適度な条件を選定する必要がある。上記工程を経ることにより、本発明に係る赤外線遮蔽微粒子を得ることができる。
得られた本発明に係る赤外線遮蔽微粒子は、赤外線遮蔽製品の原料として微粒子状態の
まま、または、液体媒質若しくは固体媒質に分散された状態で用いることが出来る。
尚、溶媒除去方法としては、上述した蒸発法の他に、フィルタープレス法、限界ろ過法、遠心分離法等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
また、上述したように、微粒子の表面被覆後における加熱処理は、表面処理剤の熱分解温度以上で行うが、各化合物によって熱分解の温度、速度定数ともに異なる。従って、加熱雰囲気、タングステン酸化物微粒子または/および複合タングステン酸化物微粒子の耐熱温度、を考慮して適宜選択すればよい。
5)赤外線遮蔽微粒子を用いて得られる赤外線遮蔽微粒子分散体、赤外線遮蔽基材、並びに物品
a)赤外線遮蔽微粒子分散体
本発明に係る赤外線遮蔽微粒子分散体は、上記の赤外線遮蔽材料微粒子が液体媒質または固体媒質中に分散しているものである。
(イ)赤外線遮蔽微粒子が液体媒質中に分散したものである場合
本発明に係る赤外線遮蔽微粒子分散体を、赤外線遮蔽微粒子を液体媒質に分散させた状態で利用する場合、液体媒質は、有機溶媒、樹脂を溶解させた有機溶媒、樹脂を分散させた有機溶媒、水、から選択される1種以上の液体媒質を用いることが出来る。
本発明に係る赤外線遮蔽微粒子が、当該液体媒質に分散された分散体を得るには、本発明に係る赤外線遮蔽微粒子を、当該液体媒質に添加して得る方法を採ることが出来る。さらに、本発明に係る赤外線遮蔽微粒子を製造する工程において、上述した被覆処理と同時に赤外線遮蔽微粒子分散体を得る方法を採ってもよい。すなわち、表面処理前のタングステン酸化物微粒子または/および複合タングステン酸化物微粒子と、表面処理剤とを、アルコール、水等の液体媒質に分散させ、被覆処理と同時に、表面処理剤で被覆されたタングステン酸化物微粒子または/および複合タングステン酸化物微粒子が分散された分散体を得る構成を採用してもよい。
上述のようにして製造された本発明に係る赤外線遮蔽微粒子分散体は、適宜な基材の表面に塗布し、ここに被膜を形成して赤外線遮蔽基材として利用することが出来る。さらに、当該赤外線遮蔽微粒子分散体を乾燥し、且つ、加熱処理すると共に、粉砕処理して粉末状の赤外線遮蔽製品用の原料として用いることも出来る。すなわち、本発明に係る赤外線遮蔽微粒子を、固体媒質に分散された粉末状の分散体とし、当該固体媒質に分散された粉末状の分散体を、再度、液体媒質中に分散させ、赤外線遮蔽製品用の分散液として使用しても良いし、後述するように樹脂中に練り込んで使用しても良い。
(ロ)赤外線遮蔽微粒子を固体媒質に分散させた状態で利用する場合
本発明に係る赤外線遮蔽微粒子分散体を、当該赤外線遮蔽微粒子が固体媒質に分散された状態で利用する場合、当該赤外線遮蔽微粒子が、樹脂またはガラス等の固体媒質に分散した状態で赤外線遮蔽製品等として使用することができる。
本発明に係る赤外線遮蔽微粒子が固体媒質に分散した分散体は、上述した基材表面に膜状で存在する赤外線微粒子の分散体、あるいは、粉末状の分散体に限らず、例えば、厚さ0.1μm〜50mmのフィルムまたはボードを構成する形態であってもよい。そして、本発明に係る赤外線遮蔽微粒子を、樹脂に練り込み、フィルムやボードに成形する場合、当該赤外線遮蔽微粒子を直接樹脂に練り込むことが可能である。また、当該赤外線遮蔽微粒子が液体媒質に分散した分散体と樹脂を混合することも、または、当該赤外線遮蔽微粒子が固体媒質に分散された粉末状の分散体を液体媒質に添加しかつ樹脂と混合することも可能である。
一般的に、本発明に係る赤外線遮蔽微粒子を樹脂に練り込むとき、樹脂の融点付近の温度(200〜300℃前後)で加熱混合して練り込む。さらに、当該赤外線遮蔽微粒子を樹脂に混合後ペレット化し、各方式でフィルムやボードを形成することも可能である。例えば、押し出し成形法、インフレーション成形法、溶液流延法、キャスティング法等により形成可能である。この時のフィルムやボードの厚さは、使用目的によって適宜設定すればよく、樹脂に対するフィラー量(すなわち、本発明に係る赤外線遮蔽微粒子の配合量)は、基材の厚さや必要とされる光学特性、機械特性に応じて可変であるが、一般的に樹脂に対して50重量%以下が好ましい。
樹脂に対するフィラー量が50重量%以下であれば、樹脂マトリクス中での微粒子同士が造粒を回避出来るので、良好な透明性を保つことが出来る。また、フィラー使用量も制御出来るのでコスト的にも有利である。
また、上述したフィルムやボードの母体となる樹脂は、特に限定されるものではなく用途に合わせて選択可能であるが、耐候性を考慮するとフッ素樹脂が有効である。そして、フッ素樹脂に較べ、低コストで透明性が高く汎用性の広い樹脂として、PET樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂、オレフィン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂等が挙げられる。
本発明に係る、前記固体媒質中に前記赤外線遮蔽微粒子が分散しているフィルム状またはボード状である赤外線遮蔽微粒子分散体は、可視光透過率70%に設定した当該分散体へ、65℃の温水による7日間の浸漬を行ったとき、当該浸漬前後における可視光透過率の変化が5ポイント以下であり、優れた耐水性を有している。(本明細書において、例えば、可視光透過率70%の試料が上記温水浸漬試験後において可視光透過率75%に変化した場合、当該試料における温水浸漬による可視光透過率の増加量は、75−70=5から、5ポイントである、と記載する。)
(ハ)赤外線遮蔽微粒子を固体媒質に分散させた赤外線遮蔽微粒子分散体を、さらに粉砕し粉体とした状態で利用する場合
本発明に係る赤外線遮蔽微粒子分散体を固体媒質に分散させた赤外線遮蔽微粒子分散体を、さらに粉砕し粉体とした状態でも利用することが出来る。当該粉状の赤外線遮蔽微粒子分散体においては、既に、赤外線遮蔽微粒子が固体媒質中で十分に分散している。従って、当該粉状の赤外線遮蔽微粒子分散体を所謂マスターバッチとして、適宜な液体溶媒に溶解させたり、樹脂ペレット等と混練することで、容易に、液状または固形状の赤外線遮蔽微粒子分散体を製造することが出来る。
b)赤外線遮蔽基材
本発明の赤外線遮蔽基材は、基材表面に、本発明に係る赤外線遮蔽材料微粒子を含有する被膜が形成されていることを特徴としている。
基材表面に、本発明に係る赤外線遮蔽微粒子を含有する被膜を形成すれば、耐水性および化学安定性に優れ、かつ赤外線遮蔽材料として好適に利用される赤外線遮蔽基材を得ることができる。
例えば、本発明に係る赤外線遮蔽微粒子を、アルコール等の有機溶媒や水等の液体媒質と、樹脂バインダーと、場合によっては分散剤と、混合した分散体を適宜基材表面に塗布した後、液体媒質を加熱処理して除去し、当該赤外線遮蔽微粒子が基材表面に直接積層された赤外線遮蔽基材が例示される。
尚、前記樹脂バインダー成分としては、用途に合わせて選択可能であり、紫外線硬化樹脂、熱硬化樹脂、常温硬化樹脂、熱可塑樹脂等が挙げられる。また、樹脂バインダー成分を含まない液体媒質が適用された分散体を用いた場合は、赤外線遮蔽微粒子群を基材表面に積層させた後に、樹脂等の成分を含む液体媒質を上層に塗布しても同様の赤外線遮蔽基材を得ることができる。
具体的には、赤外線遮蔽材料微粒子が、有機溶媒、樹脂を溶解させた有機溶媒、樹脂を分散させた有機溶媒、水、から選ばれる1種以上の液体媒質に分散している液状の赤外線遮蔽微粒子分散体を、基材表面に塗布膜形成している赤外線遮蔽基材が挙げられる。また、溶媒に混合した液状の赤外線遮蔽微粒子分散体を、基材表面に塗布膜形成している赤外線遮蔽基材も挙げられる。さらに、粉状である固体媒質中に前記赤外線遮蔽微粒子が分散している赤外線遮蔽微粒子分散体を、溶媒に混合した液状の赤外線遮蔽微粒子分散体を、基材表面に塗布膜形成している赤外線遮蔽基材も挙げられる。勿論、当該各種の液状の赤外線遮蔽微粒子分散体を、2種または3種混合して基材表面に塗布膜形成している赤外線遮蔽基材も挙げられる。
上記赤外線遮蔽基材においては、可視光透過率70%に設定した当該赤外線遮蔽基材へ、65℃の温水による7日間の浸漬を行ったとき、当該浸漬前後における可視光透過率の変化が5ポイント以下であり、優れた耐水性を有している。
一方、本発明における基材の材質は、透明体であれば特に限定されないが、ガラスや樹脂シート、樹脂フィルムが好ましく用いられる。樹脂フィルムとしては、必要とするフィルムの表面状態や耐久性に不具合を生じないものであれば特に制限はない。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー、ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体等のスチレン系ポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ないしノルボルネン構造を有するポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体等のオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマーや、さらにこれらの二元系、三元系各種共重合体、グラフト共重合体、ブレンド物等の透明ポリマーからなるフィルムが挙げられる。特に、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートあるいはポリエチレン−2,6−ナフタレート等のポリエステル系2軸配向フィルム
が、機械的特性、光学特性、耐熱性および経済性の点より好適である。当該ポリエステル系2軸配向フィルムは共重合ポリエステル系であっても良い。
c)赤外線遮蔽微粒子分散体を用いて形成された物品
本発明に係る赤外線遮蔽微粒子分散体を用いて、耐水性および化学安定性に優れた、フィルムやボード等の赤外線遮蔽物品が得られる。
これらの赤外線遮蔽物品は、例えば、各種建築物や車両の窓材等であって、可視光線を十分に取り入れながら近赤外領域の光を遮蔽し、明るさを維持しつつ室内の温度上昇を抑制することを目的としたもの、PDP(プラズマディスプレイパネル)に使用され、当該PDPから前方に放射される近赤外線を遮蔽するもの等、に使用することができる。
次に、本発明により表面処理されたタングステン酸化物微粒子、または/および、複合タングステン酸化物微粒子を具体的な実施例により、説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるわけではない。
本実施例において、可視光透過率(VLT、Visible light transmittance)、とは、ヒトの視器官を通して、視感覚を起こすことができる放射光(波長380nm〜780nm)の透過光量の積算値のことであり、D65光源の分光分布と標準比視感度からなる重価係数とより計算された値である。また、日射透過率(ST、Solar Transmittance)とは、可視光から近赤外線領域(波長35
0nm〜2100nm)の透過光量の積算値であり、D65光源の分光分布からなる重価係数より計算された値である。VLT、STともに、JIS A 5759に準ずる方法で測定を行っている(但し、ガラスに貼付せずフィルムのみで測定を行っている)。
膜のヘイズ値は、JIS K 7105に基づいた測定を行った。
平均分散粒子径は、動的光散乱法を用いた測定装置(大塚電子株式会社製 ELS−800)により測定した平均値とした。
耐水性の評価方法は、65℃の温水中に7日間浸漬したとき、可視光透過率70%の試料において、透過率の変化が5ポイント以下のものを良好とし、変化が5ポイントを超えるものは耐水性が不良とした。
尚、ここでいう膜の光学特性値(可視光透過率、ヘイズ値)とは基材フィルム(帝人デュポンフィルム(株)製100μm厚PETフィルム、商品名テトロン(商標)HLEW)を含む値を示し、基材フィルム自体の可視光透過率は90%、ヘイズ値は1.9%である。
[実施例1]
イソプロピルアルコール(IPA)3480gにCs0.33WO粉末(住友金属鉱山(株)製)520gを攪拌混合し、これを媒体攪拌ミルで分散処理して平均分散粒子径100nmの分散液Aを調製した。
次いで、上記分散液A200gとエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート(川研ファインケミカル(株)製、商品名アルミキレートALCH)20gとIPA540gとを混合攪拌した後、超音波ホモジナイザーを用いて分散処理した。
次いで、当該分散処理物を攪拌しながら、当該分散処理物へ、水100gを1時間かけて滴下添加し、さらに攪拌しながら、テトラエトキシシラン(多摩化学(株)製、正珪酸エチル、SiO換算量28.8%)140gを2時間かけて滴下添加した後、20℃にて15時間の攪拌を行った後、この液を70℃で2時間加熱熟成した。
次いで、この熟成液を真空乾燥して溶媒を蒸発させた後、200℃で1時間加熱処理して得られた粉状体を乾式粉砕することで、Cs0.33WO微粒子に対して約5重量%のAlおよび約2倍重量のSiOで被覆された、Cs0.33WO微粒子を得た。
このAl/SiO被覆Cs0.33WO微粒子8gと有機分散剤8gとトルエン84gとを混合し、媒体攪拌ミルで湿式分散処理を行い平均分散粒子径100nmの分散液を調製した。
この分散液中に分散しているAl/SiO被覆Cs0.33WO微粒子について、TEM観察を行ったところ、Cs0.33WO微粒子の表面が露出することなく、5nm〜30nmの範囲の被膜で均一に被覆されていた。また、エネルギ−分散型XC線分光法(以下、EDSと記す。)を用いて、分散液中に分散している個々の微粒子について組成分析を行ったところ、被膜成分(Al/SiO)のみからなる固形粒子の析出は確認されなかった。
当該分散液2gと紫外線硬化樹脂(東亞合成(株)製、商品名UV3701)2gをと混合し、塗布液とした。
上記塗布液を、基材として準備した100μm厚のPETフィルム上へ、バーコーター(♯20)を用いて成膜した。そして、70℃で1分間乾燥し、溶媒を蒸発させた後、高圧水銀ランプを用いて紫外線を照射し膜を硬化させて赤外線遮蔽膜を得た。
この赤外線遮蔽膜の光学特性を測定したところ、日射透過率は、35%で実用的な赤外線遮蔽性能を有していた。さらに、可視光透過率は70%で可視光領域の光を十分透過している事が分かった。また、ヘイズは2.4%であり、透明性が極めて高く内部の状況が外部からもはっきり確認できた。透過色調は、美しい青色となった。
この赤外線遮蔽膜を65℃の温水中に7日間浸漬後、可視光透過率を測定したところ、可視光透過率は70.5%、ヘイズは2.5%であった。温水浸漬による可視光透過率の増加量は0.5ポイントと小さく、ヘイズの変化も少ないことがわかった。
[比較例1]
IPA−58gと、水−7.2gと10重量%のHNO−0.1gを仕込み、テトラエトキシシラン(多摩化学(株)製、正珪酸エチル、SiO換算量28.8%)34.72gを2時間かけて滴下添加し、15時間20℃で攪拌し、SiO換算で10wt%のシリケート溶液(B液)100gを得た。
次いで、実施例1とは異なりIPAと攪拌混合、媒体攪拌ミルでの分散処理を行っていないCs0.33WO粉末(住友金属鉱山(株)製)5gに前記B液を添加し、ヘンシェルミキサーを用い、室温(25℃)にて1000rpmの攪拌回転数で30分間混合し、その後、温度を60℃に上昇させると共に回転数を2000rpmに上げて1時間攪拌し、Cs0.33WO微粒子に対して約2倍重量のSiOで被覆されたCs0.33WO微粒子分散液を得た。実施例1と異なり、得られた粉状体を湿式粉砕処理を行わず、混合攪拌のみで分散処理を行った。
このときのSiOで被覆されたCs0.33WO微粒子の平均分散粒子径は、460nmであった。この分散液中に分散しているSiOで被覆されたCs0.33WO微粒子についてTEM観察を行ったところ、5nm〜30nmの範囲のシリカ被膜で被覆されたCs0.33WO微粒子が5〜30個ずつ凝集した状態が観察された。
このSiOで被覆されたCs0.33WO微粒子分散液2gと、紫外線硬化樹脂(東亞合成(株)製、商品名UV3701)2gとを混合し、塗布液とした。
上記塗布液を、基材として準備した100μm厚のPETフィルム上へ、バーコーター(♯20)を用いて成膜した。そして、70℃で1分間乾燥し、溶媒を蒸発させた後、高圧水銀ランプを用いて紫外線を照射し膜を硬化させて赤外線遮蔽膜を得た。
この赤外線遮蔽膜の光学特性を測定したところ、日射透過率は37%であり、実用的な赤外線遮蔽性能を有していた。可視光透過率は70.3%で可視光領域の光を十分透過していたが、ヘイズは25.9%であり、透明性は不良であった。
この赤外線遮蔽膜を65℃の温水中に7日間浸漬後、可視光透過率を測定したところ、可視光透過率は79.0%、ヘイズは30.3%であった。温水浸漬による可視光透過率の増加量は8.7ポイントと大きく、被覆の耐水性は不良であった。
比較例1では、個々の粒子に対して均一に被覆処理されなかったばかりか、一次粒子、二次粒子ともに粒度が大きいため、実用的な透明性が得られなかったものと考えられる。
[実施例2]
上記分散液A200gとジルコニウムトリブトキシアセチルアセトネート((株)松本交商製、商品名:ZC−540)20gとIPA540gとを混合攪拌した後、超音波ホモジナイザーを用いて分散処理した以外は、実施例1と同様にして、シリカによる表面被覆処理を行い、Cs0.33WO微粒子に対して、約5重量%のZrOおよび約2倍重量のSiOで被覆されたCs0.33WO微粒子を得た。
このZrO/SiO被覆Cs0.33WO微粒子8gと有機分散剤8gとトルエン84gとを混合し、分散処理を行い平均分散粒子径100nmの分散液を調製した。この分散液中に分散している表面処理Cs0.33WO微粒子についてTEM観察を行ったところ、Cs0.33WO微粒子の表面が露出することなく、5nm〜30nmの範囲の被膜で均一に被覆されていた。
また、EDSを用いて、分散液中に分散している個々の微粒子について組成分析を行ったところ、被膜成分(ZrO/SiO)のみからなる固形粒子の析出は確認されなか
った。
当該分散液2gと紫外線硬化樹脂(東亞合成(株)製、商品名UV3701)2gとを混合し、塗布液とした。
上記塗布液を、基材として準備した100μm厚のPETフィルム上へ、バーコーター(♯20)を用いて成膜した。そして、70℃で1分間乾燥し、溶媒を蒸発させた後、高圧水銀ランプを用いて紫外線を照射し膜を硬化させて赤外線遮蔽膜を得た。
この赤外線遮蔽膜の光学特性を測定したところ、日射透過率は35%であり、実用的な赤外線遮蔽性能を有していた。可視光透過率は70%で可視光領域の光を十分透過していることが分かった。さらにヘイズは2.6%であり、透明性が極めて高く内部の状況が外部からもはっきり確認できた。透過色調は、美しい青色となった。
この赤外線遮蔽膜を65℃の温水中に7日間浸漬後、可視光透過率を測定したところ、可視光透過率は71.3%、ヘイズは2.7%であった。温水浸漬による可視光透過率の増加量は1.3ポイントと小さく、ヘイズの変化も少ないことがわかった。
[実施例3]
上記分散液A200gとテトラノルマルブチルチタネート((株)松本交商製、商品名:TA−25)20gとIPA540gとを混合攪拌した後、超音波ホモジナイザーを用いて分散処理した以外は、実施例1と同様にして、シリカによる表面被覆処理を行い、Cs0.33WO微粒子に対して、約5重量%のTiOおよび約2倍重量のSiOで被覆されたCs0.33WO微粒子を得た。
このTiO/SiO被覆Cs0.33WO微粒子8gと有機分散剤8gとトルエン84gとを混合し、分散処理を行い平均分散粒子径100nmの分散液を調製した。
この分散液中に分散しているTiO/SiO被覆Cs0.33WO微粒子について、TEM観察を行ったところ、Cs0.33WO微粒子の表面が露出することなく、5nm〜30nmの範囲の被膜で均一に被覆されていた。
また、EDSを用いて、分散液中に分散している個々の微粒子について組成分析を行ったところ、被膜成分(TiO/SiO)のみからなる固形粒子の析出は確認されなかった。
この液2gと紫外線硬化樹脂(東亞合成(株)製、商品名UV3701)2gを混合し、塗布液とした。
基材に100μm厚のPETフィルムを使用し、バーコーター(♯20)を用いて、上記塗布液をPETフィルム上に成膜した。これを70℃で1分間乾燥し、溶媒を蒸発させた後、高圧水銀ランプを用いて紫外線を照射し、膜を硬化させた。この赤外線遮蔽膜の光学特性を測定したところ、日射透過率は35%であり、実用的な赤外線遮蔽性能を有していた。可視光透過率は70%で可視光領域の光を十分透過している事が分かった。さらにヘイズは2.6%であり、透明性が極めて高く内部の状況が外部からもはっきり確認できた。透過色調は、美しい青色となった。
この赤外線遮蔽膜を65℃の温水中に7日間浸漬後、可視光透過率を測定したところ、可視光透過率は72.1%、ヘイズは2.8%であった。温水浸漬による可視光透過率の増加量は2.1ポイントと小さく、ヘイズの変化も少ないことがわかった。
[比較例2]
上記分散液A0.4gとトルエン1.6gと紫外線硬化樹脂(東亞合成(株)製、商品名UV3701)2gとを攪拌混合し、塗布液とした。
基材に100μm厚のPETフィルムを使用し、バーコーター(♯20)を用いて、上記塗布液をPETフィルム上に成膜した。これを70℃で1分間乾燥し、溶媒を蒸発させた後、高圧水銀ランプを用いて紫外線を照射し、膜を硬化させた。この赤外線遮蔽膜の光学特性を測定したところ、日射透過率は35%であり、実用的な赤外線遮蔽性能を有して
いた。可視光透過率は70%で可視光領域の光を十分透過している事が分かった。さらにヘイズは2.3%であり、透明性が極めて高く内部の状況が外部からもはっきり確認できた。透過色調は、美しい青色となった。
この赤外線遮蔽膜を65℃の温水中に7日間浸漬後、可視光透過率を測定したところ、可視光透過率は76.2%、ヘイズは2.8%であった。温水浸漬による可視光透過率の増加量は6.2ポイントと大きく、被覆の耐水性は不良であった。
[実施例4]
上記分散液A200gとエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート(川研ファインケミカル(株)製、商品名アルミキレートALCH)20gとIPA540gとを混合攪拌した後、超音波ホモジナイザーを用いて分散処理した。
次いで、当該分散処理物を攪拌しながら、当該分散処理物へ、水100gを1時間かけて滴下添加し、さらに攪拌しながら、テトラエトキシシラン(多摩化学(株)製、正珪酸エチル、SiO換算量28.8%)140gを2時間かけて滴下添加した後、20℃にて15時間の攪拌を行った後、この液を70℃で2時間加熱熟成した。
次いで、この熟成液を真空乾燥して溶媒を蒸発させた後、200℃で1時間加熱処理して得られた粉状体を乾式粉砕することで、Cs0.33WO微粒子に対して約5重量%のAlおよび約2倍重量のSiOで被覆された、Cs0.33WO微粒子を得た。
この分散液中に分散しているAl/SiO被覆Cs0.33WO微粒子について、TEM観察を行ったところ、Cs0.33WO微粒子の表面が露出することなく、5nm〜30nmの範囲の被膜で均一に被覆されていた。また、エネルギ−分散型XC線分光法(以下、EDSと記す。)を用いて、分散液中に分散している個々の微粒子について組成分析を行ったところ、被膜成分(Al/SiO)のみからなる固形粒子の析出は確認されなかった。
このAl/SiO被覆Cs0.33WO微粒子8gと有機分散剤8gとトルエン84gとを混合し、分散処理を行い平均分散粒子径100nmの分散液を調製した。そして、ドラム乾燥機を用いて、当該分散液から溶媒を除去し、表面処理されたCs0.33WO微粒子および上記有機分散剤の加熱残分よりなる粒子径2μmの粉状体Aを得た。
この粉状体A0.01kgとETFE(テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体)樹脂8.7kgとを、Vブレンダーにて乾式混合後、ETFE樹脂の溶融温度付近である320℃で密閉混合を十分に行い、この混合物を320℃にて押出して、約100μmのフィルムに成形した。
当該フィルムの日射透過率は36%であり、実用的な赤外線遮蔽性能を有していた。可視光透過率は70.2%、ヘイズは9.8%だった。
次に、当該フィルムを65℃の温水中に7日間浸漬後、可視光透過率を測定したところ可視光透過率は70.3%、ヘイズは10.1%であった。温水浸漬による可視光透過率の増加量は0.1ポイントであり、ヘイズの変化も少なく、フィルムの耐水性は極めて良好であった。
[実施例5]
上記粉状体A0.01kgとPET樹脂8.7kgとをVブレンダーにて乾式混合後、ETFE樹脂の溶融温度付近である300℃で密閉混合を十分に行い、この混合物を300℃にて押出して、約100μmのフィルムに成形した。このときの日射透過率は36%であり、実用的な赤外線遮蔽性能を有していた。可視光透過率は70.8%、ヘイズは1.8%だった。
これを、65℃の温水中に7日間浸漬後、可視光透過率を測定したところ、可視光透過率は71.6%、ヘイズは2.2%であった。温水浸漬による可視光透過率の増加量は0.8ポイントであり、ヘイズの変化も少なく、フィルムの耐水性は極めて良好であった。
[比較例3]
上記分散液A40gと有機分散剤4gとトルエン56gとを混合し、ドラム乾燥機を用いて溶媒を除去し、Cs0.33WO微粒子および上記有機分散剤の加熱残分よりなる粒子径2μmの粉状体Bを得た。
この粉状体B0.01kgとETFE(テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体)樹脂8.7kgとをVブレンダーにて乾式混合後、ETFE樹脂の溶融温度付近である320℃で十分に密閉混合を行い、この混合物を320℃にて押出して、約100μmのフィルムに成形した。この時の可視光透過率は69.9%でヘイズは8.8%だった。
当該フィルムを、65℃の温水中に7日間浸漬後、可視光透過率を測定したところ、
日射透過率は43%、可視光透過率は75.1%、ヘイズは14.5%であった。温水浸漬による可視光透過率の増加量は5.2ポイントであり、ヘイズの変化も比較的大きく、フィルムの耐水性は不良であった。
六方晶の結晶構造の模式的な平面図である。

Claims (19)

  1. 一般式MxWyOz(但し、Mはアルカリ金属から選ばれる1種または2種以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、(0.001≦x/y≦1、2.2≦z/y≦3))で表記される複合タングステン酸化物の微粒子であって、
    当該微粒子の平均一次粒径が、1nm以上、800nm以下であり、
    当該複合タングステン酸化物の微粒子が有機溶媒中に分散された分散液へ、有機金属化合物を添加し混合液とした後、当該混合液を攪拌しながらシラン化合物を添加して、当該有機金属化合物およびシラン化合物を当該複合タングステン酸化物の微粒子表面に被覆することで得られた、シラン化合物および有機金属化合物で被覆されていることを特徴とする赤外線遮蔽微粒子。
  2. 前記微粒子表面が露出することなく、膜厚5nm以上、30nm以下の前記シラン化合物および有機金属化合物で被覆されていることを特徴とする請求項1に記載の赤外線遮蔽微粒子。
  3. 有機溶媒に分散された前記複合タングステン酸化物の微粒子の分散液へ、前記有機金属化合物を添加し混合液とした後、当該混合液を攪拌しながら前記シラン化合物を添加し、当該シラン化合物および有機金属化合物を複合タングステン酸化物の微粒子表面に被覆した後、当該混合液を乾固し、当該固化物を解砕処理して得られることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の赤外線遮蔽微粒子。
  4. 前記複合タングステン酸化物の微粒子の粒子径が、5nm以上、2μm以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の赤外線遮蔽微粒子。
  5. 前記有機金属化合物が、
    アルミニウムアルコレートまたはこの重合物、
    環状アルミニウムオリゴマー、アルコキシ基含有のアルミニウムキレート、ジルコニウムアルコレートまたはこれらの重合物、
    ジルコニウムキレート化合物、チタンアルコレート、またはこれらの重合物、
    チタンキレート化合物、
    から選ばれる1種または2種以上の化合物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の赤外線遮蔽微粒子。
  6. 前記有機金属化合物の添加量が、前記複合タングステン酸化物の微粒子100重量部に対して、金属元素換算で0.05重量部〜300重量部であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の赤外線遮蔽微粒子。
  7. 前記シラン化合物が、一般式Si(OR)(但し、Rは、同一または異種の炭素原子数1〜6の1価炭化水素基)で表記される4官能性シラン化合物、または、その部分加水分解生成物であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の赤外線遮蔽微粒子。
  8. 前記シラン化合物の、前記複合タングステン酸化物の微粒子に対する比率が、含有する二酸化ケイ素換算で、複合タングステン酸化物の微粒子1重量部に対して、0.01〜100重量部であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の赤外線遮蔽微粒子。
  9. 前記複合タングステン酸化物の微粒子が、一般式WyOz(但し、Wはタングステン、Oは酸素、2.45≦z/y≦2.999)で表記される組成比のマグネリ相を含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の赤外線遮蔽微粒子。
  10. 一般式MxWyOzで表記される前記複合タングステン酸化物の微粒子が、六方晶、正方晶、立方晶、から選ばれる1種または2種以上の結晶構造を有することを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の赤外線遮蔽微粒子。
  11. Mが、Cs、Rb、K、Liから選ばれる1種または2種以上の元素であり、かつ、前記複合タングステン酸化物微粒子が六方晶の結晶構造を有することを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の赤外線遮蔽微粒子。
  12. 請求項1〜11のいずれかに記載の赤外線遮蔽微粒子が、液体媒質または固体媒質中に分散していることを特徴とする赤外線遮蔽微粒子分散体。
  13. 前記固体媒質が、樹脂またはガラスのいずれかであることを特徴とする請求項12に記載の赤外線遮蔽微粒子分散体。
  14. 前記固体媒質中に前記赤外線遮蔽微粒子が分散している赤外線遮蔽微粒子分散体が、フィルム状またはボード状であることを特徴とする請求項12または13に記載の赤外線遮蔽微粒子分散体。
  15. 前記固体媒質中に前記赤外線遮蔽微粒子が分散している赤外線遮蔽微粒子分散体が、粉状であることを特徴とする請求項12または13に記載の赤外線遮蔽微粒子分散体。
  16. 請求項15に記載の粉状の赤外線遮蔽微粒子分散体と、樹脂ペレットとの、混練成形体であることを特徴とする赤外線遮蔽微粒子分散体。
  17. 前記液体媒質が、有機溶媒、樹脂を溶解させた有機溶媒、樹脂を分散させた有機溶媒、水、から選ばれる1種以上の媒質であることを特徴とする請求項12に記載の赤外線遮蔽微粒子分散体。
  18. 請求項12に記載の液体媒質中に分散している赤外線遮蔽微粒子分散体、または、請求項15に記載の固体媒質中に分散している赤外線遮蔽微粒子分散体を液状の溶媒と混合した赤外線遮蔽微粒子分散体、または、請求項17に記載の赤外線遮蔽微粒子分散体、から選択される1種以上の赤外線遮蔽微粒子分散体が、基材表面に塗布膜形成していることを特徴とする赤外線遮蔽基材。
  19. 一般式MxWyOz(但し、Mはアルカリ金属から選ばれる1種または2種以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、(0.001≦x/y≦1、2.2≦z/y≦3))で表記される複合タングステン酸化物微粒子を、有機溶媒に分散させて分散液を得る工程と、
    当該分散液へ、シラン化合物を添加混合および有機金属化合物を添加混合して、当該複合タングステン酸化物微粒子の表面にシラン化合物および有機金属化合物を被覆する工程と、
    当該有機溶媒を蒸発除去し、さらに加熱を行い、シラン化合物および有機金属化合物が被覆された、複合タングステン酸化物微粒子の粉状体を得る工程と、
    当該粉状体を解砕して、単分散のシラン化合物および有機金属化合物が被覆された複合タングステン酸化物微粒子を得る工程とを、具備する赤外線遮蔽微粒子の製造方法であって、
    前記分散液へ、シラン化合物および有機金属化合物を添加混合して、当該複合タングステン酸化物微粒子の表面に、シラン化合物および有機金属化合物を被覆する工程において、
    まず、前記分散液へ、前記有機金属化合物を添加混合して、有機金属化合物を含有する分散処理物とし、
    次に、当該有機金属化合物を含有する分散処理物へ水を添加混合し、さらに、シラン化合物を添加混合して、有機金属化合物とシラン化合物とを含有する分散液とすることを特徴とする赤外線遮蔽微粒子の製造方法。
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