JP7338237B2 - 赤外線吸収ランプおよび赤外線吸収ランプカバー - Google Patents
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Description
これらの提案を機能的観点から俯瞰してみる。すると、例えば、各種建築物や車両の窓材等の分野において、可視光線を十分に取り入れながら近赤外領域の光を遮蔽し、明るさを維持しつつ室内の温度上昇を抑制することを目的としたものがある。また、PDP(プラズマディスプレイパネル)から前方に放射される赤外線が、コードレスフォンや家電機器のリモコンに誤動作を引き起こしたり、伝送系光通信に悪影響を及ぼしたりすることを防止することを目的としたもの、等もある。
このような状況の下、近年の技術進歩に伴い、照明等に使われるランプから放射される赤外線に起因するリモコンの誤動作や伝送系光通信への影響等が、解決すべき課題となってきた。
すると、例えば窓材等に使用される遮光部材として、可視光領域から近赤外線領域に吸収特性があるカーボンブラック、チタンブラック等の無機顔料、そして、可視光領域のみに強い吸収特性のあるアニリンブラック等の有機顔料等を含む黒色系顔料を含有する遮光フィルム、さらに、アルミ等の金属を蒸着したハーフミラータイプ、といった各種の遮光部材が提案されている。
しかしながら発明者らの検討によると、上述したタングステン酸化物微粒子、または/および、複合タングステン酸化物微粒子を含む光学部材(透明基材、フィルム、樹脂シート等)は、使用状況や方法により、空気中の水蒸気や水分が当該光学部材のコーティング層や固体状樹脂中へ徐々に浸透することを知見した。そして、水蒸気や水分がコーティング層や固体状樹脂中へ浸透すると、前記タングステン酸化物微粒子、または/および、複合タングステン酸化物微粒子の表面が分解し、波長200~2600nmの光の透過率が経時的に上昇してしまい、前記光学部材の赤外線吸収性能が徐々に低下するという課題があることを知見した。特に、表面活性の高いタングステン酸化物微粒子や複合タングステン酸化物微粒子ほど、当該分解劣化による赤外線吸収効果の損失割合は大きいということも知見した。
尚、本発明において「コーティング層」とは、基材上に所定の膜厚をもって形成された室温で固体の媒質膜のことである。
また、本発明において「固体状樹脂」とは室温で固体の高分子媒質のことであり、三次元架橋したもの以外の高分子媒質も含む。また、本発明において室温で固体の高分子媒質を「マトリクス樹脂」と記載する場合もある。
そして、当該表面処理赤外線吸収微粒子として、タングステン酸化物微粒子または/および複合タングステン酸化物微粒子が好ましいことを知見し、さらに、当該表面処理赤外線吸収微粒子を用いて製造したランプおよびランプカバーは、湿熱環境に曝されても優れた赤外線の放出抑制を維持するものであることを知見して、本発明に至った。
ランプの表面に、表面処理赤外線吸収微粒子を含有している層が形成されている赤外線吸収ランプあって、
前記表面処理赤外線吸収微粒子は、赤外線吸収微粒子の表面が、金属キレート化合物の加水分解生成物、金属キレート化合物の加水分解生成物の重合物、金属環状オリゴマー化合物の加水分解生成物、金属環状オリゴマー化合物の加水分解生成物の重合物、から選択される1種類以上を含む膜で被覆されていることを特徴とする赤外線吸収ランプである。
第2の発明は、
前記金属キレート化合物または前記金属環状オリゴマー化合物が、Al、Zr、Ti、Si、Znから選択される1種類以上の金属元素を含むことを特徴とする第1の発明に記載の赤外線吸収ランプである。
第3の発明は、
前記金属キレート化合物または前記環状オリゴマー化合物が、エーテル結合、エステル結合、アルコキシ基、アセチル基から選択される1種類以上を有することを特徴とする第1または第2の発明に記載の赤外線吸収ランプである。
第4の発明は、
前記赤外線吸収微粒子が、一般式WyOz(但し、Wはタングステン、Oは酸素、2.2≦z/y≦2.999)で表記されるタングステン酸化物微粒子、または/および、一般式MxWyOz(但し、Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、I、Ybのうちから選択される1種類以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦x/y≦1、2.0≦z/y≦3.0)で表記される複合タングステン酸化物微粒子であることを特徴とする第1から第3の発明のいずれかに記載の赤外線吸収ランプである。
第5の発明は、
前記複合タングステン酸化物微粒子のMが、Cs、K、Rb、Tl、In、Baのうちから選択される1種類以上の元素であることを特徴とする第4の発明に記載の赤外線吸収ランプである。
第6の発明は、
前記複合タングステン酸化物微粒子が、六方晶構造を有することを特徴とする第1から第5の発のいずれかに記載の赤外線吸収ランプである。
第7の発明は、
前記ランプの表面に形成されている表面処理赤外線吸収微粒子を含有している層が、固体媒質を含む層であることを特徴とする第1から第6の発明のいずれかに記載の赤外線吸収ランプである。
第8の発明は、
前記固体媒質が、固体状樹脂であることを特徴とする第7の発明に記載の赤外線吸収ランプである。
第9の発明は、
前記固体状樹脂がフッ素樹脂、PET樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂、オレフィン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、から選択される1種以上の樹脂であることを特徴とする第8の発明に記載の赤外線吸収ランプである。
第10の発明は、
ランプからの赤外線放射を抑制する赤外線吸収ランプカバーであって、
前記赤外線吸収ランプカバーの表面には、表面処理赤外線吸収微粒子を含有する層が形成されており、
前記表面処理赤外線吸収微粒子は、赤外線吸収微粒子の表面が、金属キレート化合物の加水分解生成物、金属キレート化合物の加水分解生成物の重合物、金属環状オリゴマー化合物の加水分解生成物、金属環状オリゴマー化合物の加水分解生成物の重合物、から選択される1種類以上を含む膜で被覆されていることを特徴とする赤外線吸収ランプカバーである。
第11の発明は、
カバー部材として、表面処理赤外線吸収微粒子が分散した赤外線吸収基材を用いたランプカバーであって、
前記表面処理赤外線吸収微粒子は、赤外線吸収微粒子の表面が、金属キレート化合物の加水分解生成物、金属キレート化合物の加水分解生成物の重合物、金属環状オリゴマー化合物の加水分解生成物、金属環状オリゴマー化合物の加水分解生成物の重合物、から選択される1種類以上を含む膜で被覆されていることを特徴とする赤外線吸収ランプカバーである。
第12の発明は、
前記金属キレート化合物または前記金属環状オリゴマー化合物が、Al、Zr、Ti、Si、Znから選択される1種類以上の金属元素を含むことを特徴とする第10または第11の発明に記載の赤外線吸収ランプカバーである。
第13の発明は、
前記金属キレート化合物または前記環状オリゴマー化合物が、エーテル結合、エステル結合、アルコキシ基、アセチル基から選択される1種類以上を有することを特徴とする第10から第12の発明のいずれかに記載の赤外線吸収ランプカバーである。
第14の発明は、
前記赤外線吸収微粒子が、一般式WyOz(但し、Wはタングステン、Oは酸素、2.2≦z/y≦2.999)で表記されるタングステン酸化物微粒子、または/および、一般式MxWyOz(但し、Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、I、Ybのうちから選択される1種類以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦x/y≦1、2.0≦z/y≦3.0)で表記される複合タングステン酸化物微粒子であることを特徴とする第10から第13の発明のいずれかに記載の赤外線吸収ランプカバーである。
第15の発明は、
前記複合タングステン酸化物微粒子のMが、Cs、K、Rb、Tl、In、Baのうちから選択される1種類以上の元素であることを特徴とする第14の発明に記載の赤外線吸収ランプカバーである。
第16の発明は、
前記複合タングステン酸化物微粒子が、六方晶構造を有することを特徴とする第10から第15の発明のいずれかに記載の赤外線吸収ランプカバーである。
第17の発明は、
カバーの表面に形成され、表面処理赤外線吸収微粒子を含有している層、または、表面処理赤外線吸収微粒子が分散した赤外線吸収基材が、固体媒質を含むことを特徴とする第10から第16の発明のいずれかに記載の赤外線吸収ランプカバーである。
第18の発明は、
前記固体媒質が、固体状樹脂であることを特徴とする第17の発明に記載の赤外線吸収ランプカバーである。
第19の発明は、
前記固体状樹脂がフッ素樹脂、PET樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂、オレフィン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、から選択される1種以上の樹脂であることを特徴とする第18の発明に記載の赤外線吸収ランプカバーである。
また、本発明に係る赤外線吸収ランプカバーは、本発明に係る表面処理赤外線吸収微粒子を含む層がランプカバー表面に設けられたもの、または、表面処理赤外線吸収微粒子が固体媒質中に分散した赤外線吸収基材をランプカバーとしたものである。
そして、当該表面処理赤外線吸収微粒子は、赤外線吸収微粒子の表面が、金属キレート化合物の加水分解生成物、金属キレート化合物の加水分解生成物の重合物、金属環状オリゴマー化合物の加水分解生成物、金属環状オリゴマー化合物の加水分解生成物の重合物、から選択される1種以上を含む被覆膜で被覆されている表面処理赤外線吸収微粒子である。さらに、当該赤外線吸収微粒子は、タングステン酸化物微粒子または/および複合タングステン酸化物微粒子であることが好ましい。
本発明に係る赤外線吸収ランプおよび赤外線吸収ランプカバーは、本発明に係る表面処理赤外線吸収微粒子を用いることで、湿熱環境に曝されても優れた赤外線放射の抑制効果を発揮するものである。
尚、本発明において、「赤外線吸収微粒子へ耐湿熱性を付与する為に、当該微粒子の表面へ、金属キレート化合物の加水分解生成物、金属キレート化合物の加水分解生成物の重合物、金属環状オリゴマー化合物の加水分解生成物、金属環状オリゴマー化合物の加水分解生成物の重合物、から選択される1種以上を用いて形成した被覆膜」を、単に「被覆膜」と記載する場合がある。
本発明に係る赤外線吸収透明基材、表面処理赤外線吸収微粒子分散液および表面処理赤外線吸収微粒子粉末に用いられる赤外線吸収微粒子は、一般式WyOz(但し、Wはタングステン、Oは酸素、2.2≦z/y≦2.999)、または/および、一般式MxWyOz(但し、Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、I、Ybのうちから選択される1種類以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦x/y≦1、2.0≦z/y≦3.0)で表記される赤外線吸収微粒子であることが好ましい。
一般に、自由電子を含む材料は、プラズマ振動によって波長200nmから2600nmの太陽光線の領域周辺の電磁波に反射吸収応答を示すことが知られている。このような物質の粉末を、光の波長より小さい粒子にすると、可視光領域(波長380nmから780nm)の幾何学散乱が低減されて可視光領域の透明性が得られることが知られている。
尚、本発明において「透明性」とは、「可視光領域の光に対して散乱が少なく透過性が高い。」という意味で用いている。
本発明者等は、当該タングステンと酸素との組成範囲の特定部分において、赤外線吸収微粒子として特に有効な範囲があることを見出し、可視光領域においては透明で、赤外線領域においては吸収を持つタングステン酸化物微粒子、複合タングステン酸化物微粒子に想到した。
ここで、本発明に係る赤外線吸収微粒子の例であるタングステン酸化物微粒子および複合タングステン酸化物微粒子について、(1)タングステン酸化物微粒子、(2)複合タングステン酸化物微粒子、(3)タングステン酸化物微粒子および複合タングステン酸化物微粒子、の順で説明する。
本発明に係るタングステン酸化物微粒子は、一般式WyOz(但し、Wはタングステン、Oは酸素、2.2≦z/y≦2.999)で表記されるタングステン酸化物の微粒子である。
当該z/yの値が2.2以上であれば、当該タングステン酸化物中に目的以外であるWO2の結晶相が現れるのを回避することが出来ると伴に、材料としての化学的安定性を得ることが出来るので有効な赤外線吸収微粒子となる。一方、当該z/yの値が2.999以下であれば、必要とされる量の自由電子が生成され効率よい赤外線吸収微粒子となる。
上述した当該複合タングステン酸化物(WO3)へ、後述する元素Mを添加したものが複合タングステン酸化物である。そして、当該WO3に対し酸素量の制御と、自由電子を生成する元素Mの添加とを併用することで、より効率の良い赤外線吸収微粒子を得ることが出来る。当該構成をとることで、複合タングステン酸化物中に自由電子が生成され、特に近赤外線領域に自由電子由来の強い吸収特性が発現し、1000nm付近の近赤外線吸収微粒子として有効となる。
この酸素量の制御と、自由電子を生成する元素Mの添加とを併用した赤外線吸収微粒子の一般式をMxWyOz(但し、Mは、前記M元素、Wはタングステン、Oは酸素)と記載したとき、0.001≦x/y≦1、2.0≦z/y≦3.0の関係を満たす赤外線吸収微粒子が望ましい。
図1において、符号11で示すWO6単位にて形成される8面体が6個集合して六角形の空隙が構成され、当該空隙中に、符号12で示す元素Mが配置して1箇の単位を構成し、この1箇の単位が多数集合して六方晶の結晶構造を構成する。
そして、可視光領域における光の透過を向上させ、赤外領域における光の吸収を向上させる効果を得る為には、複合タングステン酸化物微粒子中に、図1を用いて説明した単位構造が含まれていれば良く、当該複合タングステン酸化物微粒子が結晶質であっても非晶質であっても構わない。
この六角形の空隙に元素Mの陽イオンが添加されて存在するとき、可視光領域における光の透過が向上し、赤外領域における光の吸収が向上する。ここで一般的には、イオン半径の大きな元素Mを添加したとき当該六方晶が形成され易い。具体的には、Cs、K、Rb、Tl、In、Ba、Li、Ca、Sr、Fe、Snの中から選択される1種類以上の元素、より好ましくはCs、K、Rb、Tl、In、Baの中から選択される1種類以上の元素を添加したとき六方晶が形成され易い。典型的な例としてはCs0.33WOz、Cs0.03Rb0.30WOz、Rb0.33WOz、K0.33WOz、Ba0.33WOz(2.0≦z≦3.0)などを、好ましく挙げることができる。勿論これら以外の元素でも、WO6単位で形成される六角形の空隙に上述した元素Mが存在すれば良く、上述の元素に限定される訳ではない。
本発明に係る赤外線吸収微粒子は、上述したタングステン酸化物微粒子および/または複合タングステン酸化物微粒子を含有する。そして本発明にかかる赤外線吸収微粒子は、近赤外線領域、特に波長1000nm付近の光を大きく吸収するため、その透過色調は青色系から緑色系となる物が多い。
ここで、粒子径とは凝集していない個々の赤外線吸収微粒子がもつ径の平均値であり、後述する赤外線吸収透明基材、表面処理赤外線吸収微粒子分散液、表面処理赤外線吸収微粒子粉末に含まれる赤外線吸収微粒子の平均粒径である。尚、粒子径は、赤外線吸収微粒子の電子顕微鏡像から算出される。
本発明に係る赤外線吸収微粒子を、透明性を保持したい応用に使用する場合は、800nm以下の分散粒子径を有していることが好ましい。これは、分散粒子径が800nmよりも小さい粒子は、散乱により光を完全に遮蔽することが無く、可視光線領域の視認性を保持し、同時に効率良く透明性を保持することができるからである。特に可視光領域の透明性を重視する場合は、さらに粒子による散乱を考慮することが好ましい。
さらに分散粒子径が100nm以下になると、散乱光は非常に少なくなり好ましい。光の散乱を回避する観点からは、分散粒子径が小さい方が好ましく、分散粒子径が1nm以上あれば工業的な製造は容易である。
尚、赤外線吸収微粒子の分散粒子径は、動的光散乱法を原理とした大塚電子株式会社製ELS-8000等を用いて測定することができる。
また、優れた赤外線吸収特性を発揮させる観点から、赤外線吸収微粒子の結晶子径は1nm以上200nm以下であることが好ましく、より好ましくは1nm以上100nm以下、さらに好ましくは10nm以上60nm以下である。結晶子径の測定には、粉末X線回折法(θ―2θ法)によるX線回折パターンの測定と、リートベルト法による解析を用いる。X線回折パターンの測定には、例えばスペクトリス株式会社PANalytical製の粉末X線回折装置「X’Pert-PRO/MPD」などを用いて行うことができる。
本発明に係る赤外線吸収微粒子の表面被覆に用いる表面処理剤は、金属キレート化合物の加水分解生成物、金属キレート化合物の加水分解生成物の重合物、金属環状オリゴマー化合物の加水分解生成物、金属環状オリゴマー化合物の加水分解生成物の重合物、から選択される1種以上である。
そして、当該金属キレート化合物、金属環状オリゴマー化合物は、金属アルコキシド、金属アセチルアセトネート、金属カルボキシレートであることが好ましい観点から、エーテル結合、エステル結合、アルコキシ基、アセチル基から選択される1種以上を有することが好ましい。
ここで、本発明に係る表面処理剤について、(1)金属キレート化合物、(2)金属環状オリゴマー化合物、(3)金属キレート化合物や金属環状オリゴマー化合物の加水分解生成物、および、それらの重合物、(4)表面処理剤の添加量、の順で説明する。
本発明に用いる金属キレート化合物は、アルコキシ基を含有するAl系、Zr系、Ti系、Si系、Zn系のキレート化合物から選ばれる1種以上であることが好ましい。
これらの化合物は、アルミニウムアルコレートを非プロトン性溶媒や、石油系溶剤、炭化水素系溶剤、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、アミド系溶剤等に溶解し、この溶液に、β-ジケトン、β-ケトエステル、一価または多価アルコール、脂肪酸等を加えて、加熱還流し、リガンドの置換反応により得られた、アルコキシ基含有のアルミニウムキレート化合物である。
また、4官能性シラン化合物の加水分解生成物(4官能性シラン化合物の加水分解生成物全体の意味である。)としては、アルコキシ基の一部あるいは全量が加水分解して、シラノール(Si-OH)基となったシランモノマー、4~5量体のオリゴマー、および、重量平均分子量(Mw)が800~8000程度の重合体(シリコーンレジン)が挙げられる。尚、アルコキシシランモノマー中のアルコキシシリル基(Si-OR)は、加水分解反応の過程において、その全てが加水分解してシラノール基(Si-OH)になるわけではない。
本発明に係る金属環状オリゴマー化合物としては、Al系、Zr系、Ti系、Si系、Zn系の環状オリゴマー化合物から選ばれる1種以上であることが好ましい。中でも、環状アルミニウムオキサイドオクチレート、環状アルミニウムオキサイドイソプロピレート、環状アルミニウムオキサイドステアレート等、の環状アルミニウムオリゴマー化合物を好ましく例示することができる。
本発明では、上述した金属キレート化合物や金属環状オリゴマー化合物における、アルコキシ基、エーテル結合、エステル結合の全量が加水分解し、ヒドロキシル基やカルボキシル基となった加水分解生成物、一部が加水分解した部分加水分解生成物、または/および、当該加水分解反応を経て自己縮合した重合物を、本発明に係る赤外線吸収微粒子の表面に被覆して被覆膜とし、本発明に係る表面処理赤外線吸収微粒子を得るものである。
即ち、本発明における加水分解生成物は、部分加水分解生成物を含む概念である。
その結果、被覆膜には、未分解の金属キレート化合物または/および金属環状オリゴマー化合物が含有される場合があるが、微量であれば特に問題はない。
上述した金属キレート化合物や金属環状オリゴマー化合物の添加量は、赤外線吸収微粒子100質量部に対して、金属元素換算で0.05質量部以上、1000質量部以下であることが好適である。より好ましくは5質量部以上500質量部以下、最も好ましくは5質量部以上50質量部以下の範囲である。
また、金属キレート化合物または金属環状オリゴマー化合物が1000質量部以下であれば、赤外線吸収微粒子に対する吸着量が過剰になることを回避出来る。また、表面被覆による耐湿熱性の向上が飽和せず、被覆効果の向上が望めるからである。
さらに、金属キレート化合物または金属環状オリゴマー化合物が1000質量部以下であることで、赤外線吸収微粒子に対する吸着量が過剰になり、媒質除去時に当該金属キレート化合物または金属環状オリゴマー化合物の加水分解生成物や、当該加水分解生成物の重合物を介して微粒子同士が造粒し易くなることを回避出来るからである。当該微粒子同士による望まれない造粒の回避によって、良好な透明性を担保することが出来る。
加えて、金属キレート化合物または金属環状オリゴマー化合物の過剰による、添加量および処理時間の増加による生産コスト増加も回避出来る。よって工業的な観点からも金属キレート化合物や金属環状オリゴマー化合物の添加量は、1000質量部以下とすることが好ましい。
本発明に係る赤外線吸収微粒子の表面被覆方法においては、まず、赤外線吸収微粒子を適宜な媒質中に分散させた被覆膜形成用の赤外線吸収微粒子分散液(本発明において「被覆膜形成用分散液」と記載する場合がある。)を調製する。そして、調製された被覆膜形成用分散液中へ表面処理剤を添加して混合攪拌を行う。すると、赤外線吸収微粒子の表面が、金属キレート化合物の加水分解生成物、金属キレート化合物の加水分解生成物の重合物、金属環状オリゴマー化合物の加水分解生成物、金属環状オリゴマー化合物の加水分解生成物の重合物、から選択される1種以上を含む被覆膜で被覆される。
ここで、本発明に係る表面被覆方法について、(1)被覆膜形成用分散液の調製、(2)水を媒質とする被覆膜形成用分散液を用いた赤外線吸収微粒子の表面処理方法、(3)水を含む有機溶剤を用いた被覆膜形成用分散液を用いた赤外線吸収微粒子の表面被覆方法、(4)被覆膜の膜厚、(5)被覆膜形成用分散液における混合攪拌後の処理、の順で説明する。
本発明に係る赤外線吸収微粒子の表面へ被覆を施し、表面処理赤外線吸収微粒子を製造するには、まず、赤外線吸収微粒子を水、または、水を含む有機溶媒中に分散させて被覆膜形成用の赤外線吸収微粒子分散液(本発明において「被覆膜形成用分散液」と記載する場合がある。)を調製する。
一方、「[2]赤外線吸収微粒子の表面処理剤」にて説明した表面処理剤を調製する。
そして被覆膜形成用分散液を混合攪拌しながら、ここへ表面処理剤を添加する。すると、赤外線吸収微粒子の表面が、金属キレート化合物の加水分解生成物、金属キレート化合物の加水分解生成物の重合物、金属環状オリゴマー化合物の加水分解生成物、金属環状オリゴマー化合物の加水分解生成物の重合物、から選択される1種以上を含む被覆膜で被覆されるものである。
そして、この粉砕、分散処理工程中において分散状態を担保し、微粒子同士を凝集させないことが肝要である。これは、次工程である赤外線吸収微粒子の表面処理の過程において、当該赤外線吸収微粒子が凝集を起こして凝集体の状態で表面被覆され、ひいては、後述する赤外線吸収微粒子分散体中においても当該凝集体が残存し、後述する赤外線吸収微粒子分散体や赤外線吸収基材の透明性が低下する事態を回避する為である。
本発明者らは、上述した被覆膜形成用分散液の調製において、水を媒質とする被覆膜形成用分散液を攪拌混合しながら、ここへ、本発明に係る表面処理剤を添加し、さらに、添加された金属キレート化合物、金属環状オリゴマー化合物の加水分解反応を即座に完了させるのが好ましいことを知見した。
尚、赤外線吸収微粒子を均一に表面被覆する観点から、表面処理剤は滴下添加することが好ましい。
これは、添加した本発明に係る表面処理剤の反応順序が影響していると考えられる。即ち、水を媒質とする被覆膜形成用分散液中においては、表面処理剤の加水分解反応が必ず先立ち、その後に、生成した加水分解生成物の重合反応が起こる。この結果、水を媒質としない場合に比較して、被覆膜中に存在する表面処理剤分子内の炭素C残存量を低減することが出来るからであると考えられる。当該被覆膜中に存在する表面処理剤分子内の炭素C残存量を低減することで、個々の赤外線吸収微粒子の表面を高密度に被覆する被覆膜を形成することが出来たと考えている。
この表面処理剤の滴下添加の際、当該表面処理剤の時間当たりの添加量を調整する為に、表面処理剤自体を適宜な溶剤で希釈したものを滴下添加することも好ましい。希釈に用いる溶剤としては、当該表面処理剤と反応せず、被覆膜形成用分散液の媒質である水とも相溶性の高いものが好ましい。具体的にはアルコール系、ケトン系、グリコール系等の溶剤が好ましく使用出来る。
表面処理剤の希釈倍率は特に限定されるものではない。尤も、生産性を担保する観点から、希釈倍率は100倍以下とするのが好ましい。
一方、当該水を媒質とする被覆膜形成用分散液中において、本発明に係る赤外線吸収微粒子は静電反発によって分散を保っている。
その結果、全ての赤外線吸収微粒子の表面は、金属キレート化合物の加水分解生成物、金属キレート化合物の加水分解生成物の重合物、金属環状オリゴマー化合物の加水分解生成物、金属環状オリゴマー化合物の加水分解生成物の重合物、から選択される1種以上を含む被覆膜で被覆され、本発明に係る表面処理赤外線吸収微粒子が生成すると考えられる。
上述した水を媒質とする被覆膜形成用分散液の調製法の変形例として、被覆膜形成用分散液の媒質として水を含む有機溶剤を用い、添加する水量を適宜な値に調整しながら上述した反応順序を実施する方法も好ましい。
当該調製方法は、後工程の都合により被覆膜形成用分散液中に含まれる水分量を低減したい場合に好適である。
具体的には、有機溶剤を媒質とする被覆膜形成用分散液を攪拌混合しながら、本発明に係る表面処理剤と純水とを並行滴下するものである。このとき、反応速度に影響する媒質温度や、表面処理剤と純水との滴下速度を適宜に制御する。尚、有機溶剤としては、アルコール系、ケトン系、グリコール系等、の室温で水に溶解する溶剤であれば良く、種々のものを選択することが可能である。
そして、当該「(3)水を含む有機溶剤を用いた被覆膜形成用分散液を用いた赤外線吸収微粒子の表面被覆方法」においても、表面処理剤の滴下添加の際、当該表面処理剤の時間当たりの添加量を調整する為に、表面処理剤自体を適宜な溶剤で希釈したものを滴下添加することが好ましい。この場合、希釈に用いる溶剤としては、当該表面処理剤と反応せず、被覆膜形成用分散液の媒質である水を含む有機溶剤と相溶性の高いものが好ましい。具体的にはアルコール系、ケトン系、グリコール系等の溶剤が好ましく使用出来る。
尚、表面処理剤として市販品の金属キレート化合物、金属環状オリゴマー化合物を用いる場合の対応や、表面処理剤の希釈倍率については、前記「(2)水を媒質とする被覆膜形成用分散液を用いた赤外線吸収微粒子の表面処理方法」の場合と同様である。
本発明に係る表面処理赤外線吸収微粒子の被覆膜の膜厚は0.5nm以上あることが好ましい。これは、当該被覆膜の膜厚が0.5nm以上あれば、当該表面処理赤外線吸収微粒子が十分な耐湿熱性および化学安定性を発揮すると考えられるからである。一方、当該表面処理赤外線吸収微粒子が所定の光学的特性を担保する観点から、当該被覆膜の膜厚は100nm以下であることが好ましいと考えられる。
以上より、当該被覆膜の膜厚は0.5nm以上20nm以下であることがより好ましく、1nm以上10nm以下であればさらに好ましい。
上述した表面被覆方法にて得られた本発明に係る表面処理赤外線吸収微粒子は、赤外線吸収微粒子分散体や赤外線吸収基材の原料として、微粒子状態、液体媒質または固体媒質に分散された状態で用いることが出来る。
即ち、生成した表面処理赤外線吸収微粒子は、さらに加熱処理を施して被覆膜の密度や化学的安定性を高めるといった操作は必要ない。当該加熱処理をせずとも既に所望の耐湿熱性を得られる程、当該被覆膜の密度や密着性は十分に高まっているからである。
これは、本発明に係る表面処理赤外線吸収微粒子が、最終的に用いられる赤外線吸収微粒子分散体や赤外線吸収基材においては、それらの用途から、多くの場合は透明性が求められる為である。しかしながら、赤外線吸収材料として凝集体を用いて、赤外線吸収微粒子分散体や赤外線吸収基材を作製すると、曇り度(ヘイズ)の高いものが得られてしまう場合がある。
そこで、当該事態を回避する為には、当該状凝集体を乾式または/および湿式で解砕して再分散させることとなる。そこで、表面処理赤外線吸収微粒子の表面にある被覆膜が傷付いたり、被覆膜が剥離したりしないよう、再分散条件を検討することが好ましい。
以下、本発明に係る表面処理赤外線吸収微粒子を用いて得られる赤外線吸収微粒子分散体、赤外線吸収基材、について、(1)赤外線吸収微粒子分散液、(2)赤外線吸収微粒子分散体、(3)赤外線吸収基材、の順に説明する。
本発明に係る赤外線吸収微粒子分散液は、本発明に係る表面処理赤外線吸収微粒子が液体媒質中に分散しているものである。当該液体媒質としては、有機溶媒、油脂、液状可塑剤、硬化により高分子化される化合物、水、から選択される1種以上の液体媒質を用いることが出来る。
本発明に係る赤外線吸収微粒子分散液について(i)製造方法、(ii)使用する有機溶剤、(iii)使用する油脂、(iv)使用する液状可塑剤、(v)使用する硬化により高分子化される化合物、(vi)使用する分散剤、(vii)赤外線吸収微粒子分散液の使用方法、の順に説明する。
本発明に係る赤外線吸収微粒子分散液を製造するには、上述した被覆膜形成用分散液を、表面処理赤外線吸収微粒子の凝集を回避出来る条件での加熱、乾燥、または、例えば室温下における真空乾燥、等によって乾燥し、本発明に係る表面処理赤外線吸収微粒子粉末を得る。そして、当該表面処理赤外線吸収微粒子粉末を、上述した液体媒質中に添加して分散させればよい。また、被覆膜形成用分散液を、表面処理赤外線吸収微粒子と媒質とに分離し、溶媒置換の操作によって、被覆膜形成用分散液の媒質を、赤外線吸収微粒子分散液の媒質へ置き換え(所謂、溶媒置換)て、赤外線吸収微粒子分散液を製造することも好ましい構成である。
一方、予め、被覆膜形成用分散液の媒質と、赤外線吸収微粒子分散液の媒質とを一致させておき、表面処理後の被覆膜形成用分散液を、そのまま赤外線吸収微粒子分散液とすることも好ましい構成である。
本発明に係る赤外線吸収微粒子分散液に使用する有機溶媒としては、アルコール系、ケトン系、炭化水素系、グリコール系、水系、等を使用することが出来る。
具体的には、メタノール、エタノール、1-プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノール、ベンジルアルコール、ジアセトンアルコールなどのアルコール系溶剤;
アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロンなどのケトン系溶剤;
3-メチル-メトキシ-プロピオネートなどのエステル系溶剤;
エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテートなどのグリコール誘導体;
フォルムアミド、N-メチルフォルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドンなどのアミド類;
トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;
エチレンクロライド、クロルベンゼン、等を使用することが出来る。
そして、これらの有機溶媒中でも、特に、ジメチルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸n-ブチル、等を好ましく使用することが出来る。
本発明に係る赤外線吸収微粒子分散液に使用する油脂としては、植物油脂または植物由来油脂が好ましい。
植物油としては、アマニ油、ヒマワリ油、桐油、エノ油等の乾性油、ゴマ油、綿実油、菜種油、大豆油、米糠油、ケシ油等の半乾性油、オリーブ油、ヤシ油、パーム油、脱水ヒマシ油等の不乾性油、等を使用することが出来る。
植物油由来の化合物としては、植物油の脂肪酸とモノアルコールを直接エステル反応させた脂肪酸モノエステル、エーテル類、等を使用することが出来る。
また、市販の石油系溶剤も油脂として用いることが出来る。
市販の石油系溶剤として、アイソパー(登録商標)E、エクソール(登録商標)Hexane、Heptane、E、D30、D40、D60、D80、D95、D110、D130(以上、エクソンモービル社製)、等を使用することが出来る。
本発明に係る赤外線吸収微粒子分散液に使用する液状可塑剤としては、例えば、一価アルコールと有機酸エステルとの化合物である可塑剤、多価アルコール有機酸エステル化合物等のエステル系である可塑剤、有機リン酸系可塑剤等のリン酸系である可塑剤、等を使用することが出来る。尚、いずれも室温で液状であるものが好ましい。
なかでも、多価アルコールと脂肪酸から合成されたエステル化合物である可塑剤を好ましく使用することが出来る。当該多価アルコールと脂肪酸とから合成されたエステル化合物は特に限定されないが、例えば、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリプロピレングリコール等のグリコールと、酪酸、イソ酪酸、カプロン酸、2-エチル酪酸、ヘプチル酸、n-オクチル酸、2-エチルヘキシル酸、ペラルゴン酸(n-ノニル酸)、デシル酸等の一塩基性有機酸との反応によって得られた、グリコール系エステル化合物、等を使用することが出来る。
また、テトラエチレングリコール、トリプロピレングリコールと、前記一塩基性有機とのエステル化合物等も挙げられる。
なかでも、トリエチレングリコールジヘキサネート、トリエチレングリコールジ-2-エチルブチレート、トリエチレングリコールジ-オクタネート、トリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノネート等のトリエチレングリコールの脂肪酸エステル、等を使用することが出来る。さらに、トリエチレングリコールの脂肪酸エステルも好ましく使用することが出来る。
本発明に係る赤外線吸収微粒子分散液に使用する、硬化により高分子化される化合物は、重合等により高分子を形成する単量体やオリゴマーである。
具体的には、メチルメタクリレート単量体、アクレリート単量体、スチレン樹脂単量体、等を使用することが出来る。
本発明に係る赤外線吸収微粒子分散液中において、表面処理赤外線吸収微粒子の分散安定性を一層向上させ、再凝集による分散粒子径の粗大化を回避する為に、各種の分散剤、界面活性剤、カップリング剤などの添加も好ましい。
当該分散剤、カップリング剤、界面活性剤は用途に合わせて選定可能であるが、アミンを含有する基、水酸基、カルボキシル基、または、エポキシ基を官能基として有するものであることが好ましい。これらの官能基は、表面処理赤外線吸収微粒子の表面に吸着して凝集を防ぎ、均一に分散させる効果を持つ。これらの官能基のいずれかを分子中にもつ高分子系分散剤は、さらに好ましい。
ビックケミー・ジャパン(株)製Disperbyk(登録商標)-101、103、107、108、109、110、111、112、116、130、140、142、145、154、161、162、163、164、165、166、167、168、170、171、174、180、181、182、183、184、185、190、2000、2001、2020、2025、2050、2070、2095、2150、2155、Anti-Terra(登録商標)-U、203、204、BYK(登録商標)-P104、P104S、220S、6919等;
エフカアディティブズ社製EFKA(登録商標)-4008、4046、4047、4015、4020、4050、4055、4060、4080、4300、4330、4400、4401、4402、4403、4500、4510、4530、4550、4560、4585、4800、5220、6230、BASFジャパン(株)社製JONCRYL(登録商標)-67、678、586、611、680、682、690、819、JDX5050等;
大塚化学(株)製TERPLUS(登録商標)MD 1000、D 1180、D 1330等;
味の素ファインテクノ(株)製アジスパー(登録商標)PB-711、PB-821、PB-822、等を使用することが出来る。
上述のようにして製造された本発明に係る赤外線吸収微粒子分散液は、適宜な基材の表面に塗布し、ここに被覆膜を形成して赤外線吸収基材として利用することが出来る。
また、当該赤外線吸収微粒子分散液を乾燥し、粉砕処理して、赤外線吸収微粒子粉末とし、赤外線吸収製品へ添加する原料として用いることも出来る。即ち、本発明に係る表面処理赤外線吸収微粒子が、固体媒質中に分散された粉末状の分散体を得、当該粉末状の分散体を、再度、液体媒質中に分散させ、赤外線吸収製品用の分散液として使用しても良いし、後述するように樹脂中に練り込んで使用しても良い。
本発明に係る赤外線吸収微粒子分散体は、本発明に係る表面処理赤外線吸収微粒子が固体媒質中に分散しているものである。尚、当該固体媒質としては、樹脂、ガラス、等の固体媒質を用いることが出来る。
固体媒質として樹脂を用いた場合、例えば、厚さ0.1μm~50mmのフィルムまたはボードを構成する形態であってもよい。
この場合、さらに、当該表面処理赤外線吸収微粒子を樹脂に混合してペレット化し、当該ペレットを各方式でフィルムやボードを形成することも可能である。例えば、押し出し成形法、インフレーション成形法、溶液流延法、キャスティング法等により形成可能である。この時のフィルムやボードの厚さは、使用目的によって適宜設定すればよく、樹脂に対するフィラー量(すなわち、本発明に係る表面処理赤外線吸収微粒子の配合量)は、基材の厚さや必要とされる光学特性、機械特性に応じて可変であるが、一般的に樹脂に対して50質量%以下が好ましい。
樹脂に対するフィラー量が50質量%以下であれば、固体状樹脂中での微粒子同士が造粒を回避出来るので、良好な透明性を保つことが出来る。また、本発明に係る表面処理赤外線吸収微粒子の使用量も制御出来るのでコスト的にも有利である。
本発明に係る赤外線吸収基材は、所定の基材表面に、本発明に係る表面処理赤外線吸収微粒子を含有する被覆膜が形成されているものである。
所定の基材表面に、本発明に係る表面処理赤外線吸収微粒子を含有する被覆膜が形成されていることにより、本発明に係る赤外線吸収基材は、耐湿熱性および化学安定性に優れ、且つ赤外線吸収材料として好適に利用出来るものである。
樹脂ボード、樹脂シート、樹脂フィルムに用いる樹脂としては、必要とするボード、シート、フィルムの表面状態や耐久性に不具合を生じないものであれば特に制限はない。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー、ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体等のスチレン系ポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ないしノルボルネン構造を有するポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体等のオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマーや、さらにこれらの二元系、三元系各種共重合体、グラフト共重合体、ブレンド物等の透明ポリマーからなるボード、シート、フィルムが挙げられる。特に、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートあるいはポリエチレン-2,6-ナフタレート等のポリエステル系2軸配向フィルムが、機械的特性、光学特性、耐熱性および経済性の点より好適である。当該ポリエステル系2軸配向フィルムは共重合ポリエステル系であっても良い。
本発明に係る赤外線吸収ランプは、表面処理赤外線吸収微粒子を含む層がランプ表面(電球表面)に設けられたものである。即ち、本発明に係る赤外線吸収ランプは、当該ランプの例えばガラス球の部分に上述した表面処理赤外線吸収微粒子透明基材を用いたランプも実施形態の一つである。
例えばガラス球の部分に、表面処理赤外線吸収微粒子を含む層を設けるには浸漬法等の公知の方法を用いることが出来る。
カバーの形に成形された透明基材に表面処理赤外線吸収微粒子を含む層を設けることや、表面処理赤外線吸収微粒子分散体をカバーの形に成形するには、公知の方法を用いることが出来る。
以下、(1)赤外線吸収ランプおよび赤外線吸収ランプカバーとそれらの構成、(2)製造方法、(3)耐湿熱性、の順に説明する。
赤外線吸収ランプや赤外線吸収ランプカバーは、白熱ランプ、LEDランプ等の各種ランプから放出される可視光線を透過しつつ赤外線を吸収することで、ランプからの赤外線放射を抑制するものである。そして当該赤外線放射の抑制効果により、ランプ外に存在する赤外線受信機や環境光センサー等の誤作動を防止するために用いられるものである。
本発明に係る赤外線吸収ランプや赤外線吸収ランプカバーは、赤外線放射抑制の具体的な性能として、可視光透過率80%に設定した赤外線吸収ランプまたは赤外線吸収ランプカバーの場合、波長800~1000nmの範囲における透過率の平均値が35%以下となるといった、赤外線の放射を抑制する性能を発揮することが出来る。
そして、可視光透過率を80%よりも低下させて可視光透明性を落とすことにより、赤外線の放射を抑制する性能を大きく上昇させることも可能である。
さらに、湿熱環境下の具体的な性能としては、可視光透過率80%に設定した当該赤外線吸収ランプまたは赤外線吸収ランプカバーを、温度85℃相対湿度90%の湿熱雰囲気中に9日間暴露したとき、当該暴露前後における波長800nm~1000nmの透過率の平均値の変化量が3.0%以下であり、ヘイズの変化が0.2%以下であるような耐湿熱性を発揮した。
本発明に係る赤外線吸収ランプや赤外線吸収ランプカバーの製造方法は、上述した表面処理赤外線吸収透明基材や表面処理赤外線吸収微粒子分散体と同様である。以下、具体的な製造方法について説明する。
また、スプレーコーティング法、フローコーティング法、コーティングロッドを用いたコーティング法によって、ランプ表面やランプカバー表面に表面処理赤外線吸収微粒子を含む層を形成することも好ましい方法である。
他にも、ディップコーティング法によって、ランプ表面やランプカバー表面に表面処理赤外線吸収微粒子を含む層を形成することも好ましい方法である。ディップコーティング法では、大量のランプを一度に表面処理赤外線吸収微粒子分散液中に浸漬し、引き上げることによって、全てのランプ表面に表面処理赤外線吸収微粒子を含む層を均一に形成することが出来る。
各種コーティング法を用いる場合は、コーティング層を硬化させるためにコーティング工程後に乾燥工程や硬化工程を設けることが好ましい。より具体的には、コーティング液へ適宜な溶媒とUV硬化樹脂とを混合し、乾燥処理により溶媒を除去し、UV照射によりコーティング膜を硬化させることが好ましい。
固体媒質である熱可塑性樹脂と表面処理赤外線吸収微粒子との混合物や、表面処理赤外線吸収微粒子を含有するマスターバッチを溶融状態で金型に充填(射出)し、次いで冷却後、成形された成形体である赤外線吸収ランプカバーを金型から剥離することにより成形することが出来る。具体的には、例えば、表面処理赤外線吸収微粒子が分散した熱可塑性樹脂をホッパーから投入し、スクリューを回転させながら後退させて、シリンダー内にて樹脂組成物を計量する。当該樹脂組成物を溶融させ、圧力をかけながら溶融した樹脂組成物を金型内に充填し、金型が充分に冷めるまで一定時間保圧する。その後、型を開いて成形体を取り出すことにより、赤外線吸収ランプカバーを作製することができる。なお、赤外線吸収ランプカバーを作製する際の諸条件(例えば、成形材料の溶融温度、成形材料を金型に射出する際の金型温度、樹脂組成物を金型に充填した後保圧する際の圧力など)については、適宜設定すればよく、特に限定されない。
本発明に係る表面処理赤外線吸収微粒子が分散した固体媒質を用いた赤外線吸収ランプおよび赤外線吸収ランプカバーを、例えば温度85℃相対湿度90%の湿熱雰囲気中に9日間暴露したとき、当該暴露前後における波長800nm~1000nmの透過率の平均値の変化量が3.0%以下であり、ヘイズ値の変化は0.2%以下を満足する。このことから、本発明に係る赤外線吸収ランプおよび赤外線吸収ランプカバーは、湿熱環境に曝されても優れた赤外線放射の抑制効果を発揮するものであることが判明した。
実施例および比較例における分散液中の微粒子の分散粒子径は、動的光散乱法に基づく粒径測定装置(大塚電子株式会社製ELS-8000)により測定した平均値をもって示した。また、結晶子径は、粉末X線回折装置(スペクトリス株式会社PANalytical製X’Pert-PRO/MPD)を用いて粉末X線回折法(θ―2θ法)により測定し、リートベルト法を用いて算出した。
表面処理赤外線吸収微粒子の被覆膜の膜厚は、透過型電子顕微鏡(日立製作所株式会社社製 HF-2200)を用いて得た当該表面処理赤外線吸収微粒子の30万倍の写真データより、赤外線吸収微粒子の格子縞の観察されない部分を被覆膜として、当該被覆膜の膜厚を読み取って求めた。
赤外線吸収シートの光学特性は、分光光度計(日立製作所株式会社製 U-4100)を用いて波長200nm~2600nmの範囲において5nmの間隔で測定し、可視光透過率はJISR3106に従って算出した。また、波長800nm~1000nmの透過率の平均値も算出した。当該赤外線吸収シートのヘイズ値は、ヘイズメーター(村上色彩
株式会社製 HM-150)を用いて測定し、JISK7105に従って算出した。
赤外線吸収シートの耐湿熱性の評価方法は、可視光透過率80%前後の当該赤外線吸収シートを温度85℃相対湿度90%の湿熱雰囲気中に9日間暴露する。
そして、例えば、赤外線吸収微粒子として六方晶セシウムタングステンブロンズ微粒子を用いた場合は、当該暴露前後における波長800nm~1000nmにおける光の透過率の平均値の変化量が3.0%以下のものを耐湿熱性が良好と判断し、変化量が3.0%を超えるものは耐湿熱性が不足と判断した。
Cs/W(モル比)=0.33の六方晶セシウムタングステンブロンズ(Cs0.33WOz)粉末(住友金属鉱山株式会社製YM-01)25質量%と純水75質量%とを混合して得られた混合液を、0.3mmφZrO2ビーズを入れたペイントシェーカーに装填し10時間粉砕・分散処理し、実施例1に係るCs0.33WOz微粒子の分散液を得た。得られた分散液中のCs0.33WOz微粒子の分散粒子径を測定したところ、100nmであった。尚、粒径測定の設定として、粒子屈折率は1.81とし、粒子形状は非球形とした。また、バックグラウンドは純水を用いて測定し、溶媒屈折率は1.33とした。また、得られた分散液の溶媒を除去したあと、結晶子径を測定したところ32nmであった。得られたCs0.33WOz微粒子の分散液と純水を混合し、Cs0.33WOz微粒子の濃度が2質量%である実施例1に係る被覆膜形成用分散液Aを得た。
一方、アルミニウム系のキレート化合物としてアルミニウムエチルアセトアセテートジイソプロピレート2.5質量%と、イソプロピルアルコール(IPA)97.5質量%とを混合して表面処理剤希釈液aを得た。
以上より、赤外線吸収微粒子100質量部に対する表面処理剤の量は、金属元素換算で5質量部である。
そして、湿熱雰囲気暴露前後による可視光透過率の変化量は1.2%、波長800nm~1000nmの透過率の平均値の変化量は2.2%とどちらも小さく、また、ヘイズは変化しないことが分かった。
表面処理剤希釈液aの量とその滴下添加時間とを変更したこと以外は、実施例1と同様の操作をすることで、実施例2および3に係る表面処理赤外線吸収微粒子粉末、赤外線吸収微粒子分散液、赤外線吸収微粒子分散粉、赤外線吸収シートを得て、実施例1と同様の評価を実施した。当該製造条件と評価結果とを表1および2に示す。
実施例1に係る熟成液を、1時間静置させ、表面処理赤外線吸収微粒子と媒質とを固液分離させた。次いで、上澄みである媒質のみを除去して赤外線吸収微粒子スラリーを得た。得られた赤外線吸収微粒子スラリーにイソプロピルアルコールを添加して1時間攪拌させた後、1時間静置させ、再び表面処理赤外線吸収微粒子と媒質とを固液分離させた。次いで、上澄みである媒質のみを除去し、再び赤外線吸収微粒子スラリーを得た。
ジルコニウムトリブトキシアセチルアセトネート2.4質量%とイソプロピルアルコール97.6質量%とを混合して実施例5に係る表面処理剤希釈液bを得た。表面処理剤希釈液aの代わりに表面処理剤希釈液bを用いたこと以外は、実施例1と同様の操作をすることで、実施例5に係る表面処理赤外線吸収微粒子粉末、赤外線吸収微粒子分散液、赤外線吸収微粒子分散粉、赤外線吸収シートを得て、実施例1と同様の評価を実施した。
以上より、赤外線吸収微粒子100質量部に対する表面処理剤の量は、金属元素換算で11質量部である。
当該製造条件と評価結果とを表1および2に示す。
ジイソプロポキシチタンビスエチルアセトアセテート2.6質量%とイソプロピルアルコール97.4質量%とを混合して実施例6に係る表面処理剤希釈液cを得た。表面処理剤希釈液aの代わりに表面処理剤希釈液cを用いたこと以外は、実施例1と同様の操作をすることで、実施例6に係る表面処理赤外線吸収微粒子粉末、赤外線吸収微粒子分散液、赤外線吸収微粒子分散粉、赤外線吸収シートを得て、実施例1と同様の評価を実施した。
以上より、赤外線吸収微粒子100質量部に対する表面処理剤の量は、金属元素換算で6質量部である。
当該製造条件と評価結果を表1および2に示す。
固体状樹脂としてポリカーボネート樹脂の代わりにポリメタクリル酸メチル樹脂を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作をすることで、実施例7に係る表面処理赤外線吸収微粒子粉末、赤外線吸収微粒子分散液、赤外線吸収微粒子分散粉、赤外線吸収シートを得て、実施例1と同様の評価を実施した。当該製造条件と評価結果を表1および2に示す。
Na/W(モル比)=0.33の立方晶ナトリウムタングステンブロンズ粉末(住友金属鉱山株式会社製)25質量%とイソプロピルアルコール75質量%とを混合し、得られた混合液を、0.3mmφZrO2ビーズを入れたペイントシェーカーに装填して10時間粉砕・分散処理し、実施例8に係るNa0.33WOz微粒子の分散液を得た。得られた分散液中のNa0.33WOz微粒子の分散粒子径を測定したところ、100nmであった。尚、粒径測定の設定として、粒子屈折率は1.81とし、粒子形状は非球形とした。また、バックグラウンドはイソプロピルアルコールを用いて測定し、溶媒屈折率は1.38とした。また、得られた分散液の溶媒を除去したあと、結晶子径を測定したところ32nmであった。
六方晶セシウムタングステンブロンズ粉末の代わりに、K/W(モル比)=0.33の六方晶カリウムタングステンブロンズ粉末(実施例9)や、Rb/W(モル比)=0.33の六方晶ルビジウムタングステンブロンズ粉末(実施例10)や、マグネリ相のW18O49(実施例11)を用いた以外は、実施例1と同様にして赤外線吸収微粒子の分散粒子径および結晶子径を測定し、更に被覆膜形成用分散液C~Eを得た。
被覆膜形成用分散液Aの代わりに被覆膜形成用分散液C~Eを用いたこと以外は、実施例1と同様の操作をすることで、実施例9~11に係る表面処理赤外線吸収微粒子粉末、赤外線吸収微粒子分散液、赤外線吸収微粒子分散粉、赤外線吸収シートを得て、実施例1と同様の評価を実施した。当該製造条件と評価結果を表1および2に示す。
Cs/W(モル比)=0.33の六方晶セシウムタングステンブロンズ(Cs0.33WOz)粉末(住友金属鉱山株式会社製YM-01)25質量%と純水75質量%とを混合して得られた混合液を、0.3mmφZrO2ビーズを入れたペイントシェーカーに装填し4時間(実施例12)または6時間(実施例13)の粉砕・分散処理を行い、実施例12、13に係るCs0.33WOz微粒子の分散液を得た。得られた分散液中のCs0.33WOz微粒子の分散粒子径を測定したところ、それぞれ140nm、120nmであった。尚、粒径測定の設定として、粒子屈折率は1.81とし、粒子形状は非球形とした。また、バックグラウンドは純水を用いて測定し、溶媒屈折率は1.33とした。また、得られた分散液の溶媒を除去したあと、結晶子径を測定したところ、それぞれ42nm、50nmであった。得られたCs0.33WOz微粒子の分散液と純水を混合し、Cs0.33WOz微粒子の濃度が2質量%である実施例12、13に係る被覆膜形成用分散液F、Gを得た。
被覆膜形成用分散液Aの代わりに被覆膜形成用分散液F、Gを用いたこと以外は、実施例2と同様の操作をすることで、実施例12、13に係る表面処理赤外線吸収微粒子粉末、赤外線吸収微粒子分散液、赤外線吸収微粒子分散粉、赤外線吸収シートを得て、実施例1と同様の評価を実施した。当該製造条件と評価結果を表1および2に示す。
テトラエトキシシランを実施例14に係る表面処理剤eとした。
表面処理剤希釈液aの代わりに表面処理剤eを用い、イソプロピルアルコールを添加することなく309gを滴下したこと以外は、実施例1と同様の操作をすることで、実施例14に係る表面処理赤外線吸収微粒子粉末、赤外線吸収微粒子分散液、赤外線吸収微粒子分散粉、赤外線吸収シートを得て、実施例1と同様の評価を実施した。
以上より、赤外線吸収微粒子100質量部に対する表面処理剤の量は、金属元素換算で234質量部である。
当該製造条件と評価結果を表1および2に示す。
亜鉛アセチルアセトナート4.4質量%とイソプロピルアルコール95.6質量%とを混合して実施例15に係る表面処理剤希釈液fを得た。
表面処理剤希釈液aの代わりに表面処理剤希釈液fを用いたこと以外は、実施例1と同様の操作をすることで、実施例15に係る表面処理赤外線吸収微粒子粉末、表面処理赤外線吸収微粒子分散液、赤外線吸収透明基材を得て、実施例1と同様の評価を実施した。
以上より、赤外線吸収微粒子100質量部に対する表面処理剤の量は、金属元素換算で22質量部である。
当該製造条件と評価結果を表1および2に示す。
六方晶セシウムタングステンブロンズ粉末7質量%とポリアクリレート系分散剤24質量%とトルエン69質量%とを混合し、得られた混合液を、0.3mmφZrO2ビーズを入れたペイントシェーカーに装填し4時間粉砕・分散処理し、比較例1に係る赤外線吸収微粒子分散液を得た。得られた分散液中の赤外線吸収微粒子の分散粒子径を測定したところ、100nmであった。尚、粒径測定の設定として、粒子屈折率は1.81とし、粒子形状は非球形とした。また、バックグラウンドはトルエンを用いて測定し、溶媒屈折率は1.50とした。また、得られた分散液の溶媒を除去したあと、結晶子径を測定したところ32nmであった。
次いで、この赤外線吸収微粒子分散液から真空流動乾燥により媒質を蒸発させ、比較例1に係る赤外線吸収微粒子分散粉を得た。
湿熱雰囲気暴露前後における可視光透過率の変化量は2.0%、波長800nm~1000nmの透過率の平均値の変化量は7.8%となり、実施例と比較して大きいことが分かった。また、ヘイズの変化の割合は0.2%であった。
固体状樹脂としてポリカーボネート樹脂の代わりにポリメタクリル酸メチル樹脂を用いたこと以外は、比較例1と同様の操作をすることで、比較例2に係る赤外線吸収微粒子分散液、赤外線吸収微粒子分散粉、赤外線吸収シートを得て、実施例1と同様の評価を実施した。当該製造条件と評価結果を表1および2に示す。
六方晶セシウムタングステンブロンズ粉末の代わりに、Na/W(モル比)=0.33の立方晶ナトリウムタングステンブロンズ粉末(比較例3)や、K/W(モル比)=0.33の六方晶カリウムタングステンブロンズ粉末(比較例4)や、Rb/W(モル比)=0.33の六方晶ルビジウムタングステンブロンズ粉末(比較例5)や、マグネリ相のW18O49(比較例6)を用いたこと以外は、比較例1と同様の操作をすることで、比較例3~6に係る赤外線吸収微粒子分散液、赤外線吸収微粒子分散粉、赤外線吸収シートを得て、実施例1と同様の評価を実施した。当該製造条件と評価結果を表1および2に示す。
Cs/W(モル比)=0.33の六方晶セシウムタングステンブロンズ粉末13質量%とイソプロピルアルコール87質量%とを混合し、得られた混合液を、0.3mmφZrO2ビーズを入れたペイントシェーカーに装填し5時間粉砕・分散処理し、比較例7に係るCs0.33WOz微粒子の分散液を得た。得られた分散液中のCs0.33WOz微粒子の分散粒子径を測定したところ、100nmであった。尚、粒径測定の設定として、粒子屈折率は1.81とし、粒子形状は非球形とした。また、バックグラウンドはイソプロピルアルコールを用いて測定し、溶媒屈折率は1.38とした。また、得られた分散液の溶媒を除去したあと、結晶子径を測定したところ32nmであった。
本発明に係る可視光透過率80%に設定した赤外線吸収シートを、温度85℃相対湿度90%の湿熱雰囲気中に9日間暴露したとき、当該暴露前後における波長800nm~1000nmの透過率の平均値の変化量が3.0%以下であり、ヘイズの変化が0.2%以下であるような耐湿熱性を有していることが判明した。
従って、本発明に係る赤外線吸収シートを備える赤外線吸収ランプや赤外線吸収ランプカバー、本発明に係る赤外線吸収シートを成形した赤外線吸収ランプカバーは、可視光透過率80%に設定し、温度85℃相対湿度90%の湿熱雰囲気中に9日間暴露したとき、当該暴露前後における波長800nm~1000nmの透過率の平均値の変化量が3.0%以下であり、ヘイズの変化が0.2%以下であるような耐湿熱性を有していることが判明した。
12.元素M
Claims (5)
- ランプの表面に、表面処理赤外線吸収微粒子を含有している層が形成されている赤外線吸収ランプあって、
前記表面処理赤外線吸収微粒子は、赤外線吸収微粒子の表面が、金属キレート化合物の加水分解生成物、金属キレート化合物の加水分解生成物の重合物、金属環状オリゴマー化合物の加水分解生成物、金属環状オリゴマー化合物の加水分解生成物の重合物、から選択される1種類以上を含む膜で被覆されており、
前記赤外線吸収微粒子が、一般式MxWyOz(但し、Mは、Cs、K、Rb、Tl、In、Baのうちから選択される1種類以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦x/y≦1、2.0≦z/y≦3.0)で表記され、六方晶構造を有する複合タングステン酸化物微粒子であり、
前記金属キレート化合物または前記金属環状オリゴマー化合物が、Al、Zr、Ti、Si、Znから選択される1種類以上の金属元素を含み、
前記ランプの表面に形成されている表面処理赤外線吸収微粒子を含有している層が、固体媒質を含む層であり、
前記固体媒質が、固体状樹脂であり、
前記固体状樹脂がアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、から選択される1種以上の樹脂であることを特徴とする赤外線吸収ランプ。 - 前記金属キレート化合物または前記環状オリゴマー化合物が、エーテル結合、エステル結合、アルコキシ基、アセチル基から選択される1種類以上を有することを特徴とする請求項1に記載の赤外線吸収ランプ。
- ランプからの赤外線放射を抑制する赤外線吸収ランプカバーであって、
前記赤外線吸収ランプカバーの表面には、表面処理赤外線吸収微粒子を含有する層が形成されており、
前記表面処理赤外線吸収微粒子は、赤外線吸収微粒子の表面が、金属キレート化合物の加水分解生成物、金属キレート化合物の加水分解生成物の重合物、金属環状オリゴマー化合物の加水分解生成物、金属環状オリゴマー化合物の加水分解生成物の重合物、から選択される1種類以上を含む膜で被覆されており、
前記赤外線吸収微粒子が、一般式MxWyOz(但し、Mは、Cs、K、Rb、Tl、In、Baのうちから選択される1種類以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦x/y≦1、2.0≦z/y≦3.0)で表記され、六方晶構造を有する複合タングステン酸化物微粒子であり、
前記金属キレート化合物または前記金属環状オリゴマー化合物が、Al、Zr、Ti、Si、Znから選択される1種類以上の金属元素を含み、
前記ランプカバーの表面に形成され、表面処理赤外線吸収微粒子を含有している層が、固体媒質を含み、
前記固体媒質が、固体状樹脂であり、
前記固体状樹脂がアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、から選択される1種以上の樹脂であることを特徴とする赤外線吸収ランプカバー。 - カバー部材として、表面処理赤外線吸収微粒子が分散した赤外線吸収基材を用いたランプカバーであって、
前記表面処理赤外線吸収微粒子は、赤外線吸収微粒子の表面が、金属キレート化合物の加水分解生成物、金属キレート化合物の加水分解生成物の重合物、金属環状オリゴマー化合物の加水分解生成物、金属環状オリゴマー化合物の加水分解生成物の重合物、から選択される1種類以上を含む膜で被覆されており、 前記赤外線吸収微粒子が、一般式MxWyOz(但し、Mは、Cs、K、Rb、Tl、In、Baのうちから選択される1種類以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦x/y≦1、2.0≦z/y≦3.0)で表記され、六方晶構造を有する複合タングステン酸化物微粒子であり、
前記金属キレート化合物または前記金属環状オリゴマー化合物が、Al、Zr、Ti、Si、Znから選択される1種類以上の金属元素を含み、
前記表面処理赤外線吸収微粒子が分散した赤外線吸収基材が、固体媒質を含み、
前記固体媒質が、固体状樹脂であり、
前記固体状樹脂がアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、から選択される1種以上の樹脂であることを特徴とする赤外線吸収ランプカバー。 - 前記金属キレート化合物または前記環状オリゴマー化合物が、エーテル結合、エステル結合、アルコキシ基、アセチル基から選択される1種類以上を有することを特徴とする請求項3または4に記載の赤外線吸収ランプカバー。
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