JP5227483B1 - リチウム二次電池用複合活物質およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明者らは、上述した特許文献1および2に記載の材料(複合活物質)を用いたリチウム二次電池の性能について検討を行ったところ、いずれにおいても数サイクルまたは数十サイクル後には急激な容量劣化が認められ、更なる改良が必要であった。これは、サイクルの進行とともに、例えば、Siなどのリチウムイオンと化合する電池活物質が微細化し、材料からの脱落などにより電子伝導性が失われたことが原因と考えられている。
また、本発明は、該リチウム二次電池用複合活物質を用いた電池を提供することも目的とする。
比表面積30m2/g以上の黒鉛と、リチウムイオンと化合可能な電池活物質とを混合して、混合物を得る混合工程と、
前記混合物に球形化処理を施し、黒鉛およびリチウムイオンと化合可能な電池活物質を含有する略球状のリチウム二次電池用複合活物質を製造する球形化工程とを有する、リチウム二次電池用複合活物質の製造方法。
(3) 前記リチウムイオンと化合可能な電池活物質が、シリコン、スズ、アルミニウム、アンチモン、およびインジウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を含有する、(1)または(2)に記載のリチウム二次電池用複合活物質の製造方法。
(4) 前記球形化工程が、ハンマミル、ピンミル、スクリーンミル、ターボ型ミル、遠心分級型ミルおよびサンプルミルからなる群から選ばれる高速回転衝撃式粉砕機によって行われる、(1)〜(3)のいずれかに記載のリチウム二次電池用複合活物質の製造方法。
(5) 前記リチウムイオンと化合可能な電池活物質の平均粒子径が1μm以下である、(1)〜(4)のいずれかに記載のリチウム二次電池用複合活物質の製造方法。
加速電圧10kV以下での走査型電子顕微鏡(SEM)観察により観察されるリチウム二次電池用複合活物質表面上に露出している前記黒鉛の面積率が95%以上である、リチウム二次電池用複合活物質。
(7) タップ密度が0.8g/cm3以上である、(6)に記載のリチウム二次電池用複合活物質。
(8) 比表面積が5〜100m2/gである、(6)または(7)に記載のリチウム二次電池用複合活物質。
(9) 前記リチウムイオンと化合可能な電池活物質の平均粒子径が1μm以下である、(5)〜(7)のいずれかに記載のリチウム二次電池用複合活物質。
(10) 前記リチウムイオンと化合可能な電池活物質の一部が前記リチウムイオンと化合可能な電池活物質の凝集体である2次粒子の形態で存在し、前記2次粒子の平均径が5μm以下である、(6)〜(9)のいずれかに記載のリチウム二次電池用複合活物質。
(11) (6)〜(10)のいずれかに記載のリチウム二次電池用複合活物質を含むリチウム二次電池。
(12) 満充電状態において前記リチウムイオンと化合可能な電池活物質が60%以上充電され前記黒鉛が50%以下充電された状態で使用される、請求項11に記載のリチウム二次電池。
(13) 請求項6〜10のいずれかに記載のリチウム二次電池用複合活物質を含む負極を有するリチウム二次電池であって、
前記負極の電位がリチウム参照極に対して0.4Vを下回らない範囲で使用される、請求項11または12に記載のリチウム二次電池。
(14) 三次元構造を有する集電体とその上に配置される請求項6〜10のいずれかに記載のリチウム二次電池用複合活物質とを含む電極を有する、リチウム二次電池。
また、本発明によれば、該リチウム二次電池用複合活物質を用いた電池を提供することもできる。
まず、従来技術と比較した本発明の特徴点について詳述する。
本発明の製造方法の特徴点の一つとしては、所定の比表面積の黒鉛を使用して、黒鉛およびリチウムイオンと化合する電池活物質の混合物に対して球状化処理を施している点が挙げられる。より具体的には、まず、膨張黒鉛や薄片化した黒鉛(薄片状黒鉛)などの所定の比表面積を有する黒鉛が持つ巨大な空間または表面積を利用して、黒鉛表面に電池活物質(好ましくは微粒子化した電池活物質)を高度に均一分散させる。その後、得られた電池活物質高分散黒鉛組成物に球形化処理を施すことにより、黒鉛AB面間の高い接着性に基づいて黒鉛と電池活物質との密着性を高めることが可能となる。上記手順によって得られるリチウム二次電池用複合活物質は、大きな比表面積を示す極めて薄い厚みの黒鉛シートで、電池活物質を包み込む形状を有している。よって、本発明のリチウム二次電池用複合活物質は、従来のリチウム二次電池用複合活物質と比較して、黒鉛と電池活物質との間の接触頻度と密着注が比較にならない程良好である。その結果、電池活物質に高い導電性を付与し、かつ、充放電サイクルに伴う電池活物質の粒子崩壊による導電パスの欠落をも回避することが可能となり、結果としてリチウム二次電池の高いサイクル特性を実現することが出来る。
さらに、充放電サイクルに伴い電池活物質が微粉化などの物理的変形を受けても、電池活物質は柔軟に層間距離を調節できる黒鉛層間に挟まれた状態で維持されるので、電池活物質の導電性は維持される。
さらには、本発明のリチウム二次電池用複合活物質を球形化した成型材料とすることにより、粉化した電池活物質はそれを内包する薄片状黒鉛の層からの脱落を抑制することができる。または、球形化処理を施されて得られるリチウム二次電池用複合活物質は、球形化により黒鉛エッジ面を実質的に外表面に露出しない構造を有する。さらに必要に応じて、その表面をCVD炭素で被覆することにより、電池活物質または黒鉛エッジ面がリチウム二次電池用複合活物質の表面に露出することの無いエッジレス構造とすることができる。このような構造を有するリチウム二次電池用複合活物質は、より優れた安全性を示す。
また、X線回折においては、黒鉛層間にインターカレーションした層間化合物に起因するピークはほとんど認められず、この複合活物質が黒鉛と電池活物質との機械的混合物からなる複合体であることがわかる。このように薄い厚みの黒鉛シートによって微細な電池活物質を包み込むことにより、黒鉛シート間内での電池活物質の高度な分散と密な接着が図られる。その結果、本来、非導電性または導電性の低い電池活物質から大きな電池容量を引き出し、さらには微細な電池活物質に起因する物質内のリチウムイオンの拡散距離が小さいという特性を生かし、極めて高い充放電レート特性、および、良好なサイクル特性を有するリチウム二次電池を作製可能なリチウム二次電池用複合活物質を提供することができる。
本発明のリチウム二次電池用複合活物質の製造方法は、所定の黒鉛およびリチウムイオンと化合可能な電池活物質を混合する混合工程と、得られた混合物に球形化処理を施す球形化工程とを備える。
以下に、工程ごとに、使用される材料、および、その手順について詳述する。
混合工程は、比表面積30m2/g以上の黒鉛と、リチウムイオンと化合可能な電池活物質(以後、単に電池活物質も称する)とを混合して、混合物を得る工程である。本工程を実施することによって、極めて広い黒鉛表面に電池活物質が均一に混じり合い、極めて高度に電池活物質が分散した混合物を得ることができる。後述するように、黒鉛は大きな面積を有しているため、混合物中の黒鉛表面に分散し付着した電池活物質は、黒鉛に僅かな圧力を加えるだけで黒鉛に挟みこまれる形で、黒鉛間に包み込まれる(言い換えれば内包される)。
まず、本工程で使用される材料(黒鉛、電池活物質など)について詳述し、その後本工程の手順について詳述する。
本工程で使用される黒鉛は、比表面積が30m2/g以上を示す。上記範囲内であれば、高表面積(好ましくは、厚みの薄い)の黒鉛表面に高度に電池活物質が分散したリチウム二次電池用複合活物質が得られる。その結果として、本発明のリチウム二次電池用複合活物質を用いた電池材料は、大充放電容量および良好なサイクル特性を示す。なかでも、該複合活物質を用いたリチウム二次電池のサイクル特性がより優れる点で、40m2/g以上が好ましく、60m2/g以上がより好ましい。上限は特に制限されないが、製造の手順が煩雑となり、合成が困難な点で、比表面積は200m2/g以下が好ましい。
黒鉛の比表面積が30m2/g未満の場合、黒鉛と電池活物質との混合が不均一となり、成型時の電池活物質の脱落や成型複合物表面への電池活物質の露出などが起こり、結果として、リチウム二次電池用複合活物質を用いたリチウム二次電池の充放電量およびサイクル特性に劣る。
なお、黒鉛の比表面積は、窒素吸着によるBET法(JIS Z 8830、一点法)を用いて測定したものである。
上記所定の比表面積を示す黒鉛中に含まれる積層したグラフェンシートの層の平均厚みは、リチウム二次電池用複合活物質を用いたリチウム二次電池の充放電量およびサイクル特性がより優れる点で、29nm以下が好ましく、22nm以下がより好ましい。下限は特に制限されないが、製造手順が煩雑になることから、通常、4.4nm以上である場合が多い。
なお、一般的に、単一のグラフェンシートの厚みは0.34nmという薄さといわれており、平均厚みが18nmより薄い場合には比表面積は約50m2/gより大きくなると計算される。また、グラフェン単一シートは、2630m2/gに達する比表面積の理論値を有する。
なお、上記平均厚みの測定方法としては、電子顕微鏡観察(TEM)によって黒鉛を観察し、黒鉛中の積層したグラフェンシートの層の厚みを10個以上測定して、その値を算術平均することによって、平均厚みが得られる。
なお、嵩比重の測定方法としては、500mlのガラス製メスシリンダーに試料を圧縮しないように挿入し、その試料重量を試料体積で除して求める。
該黒鉛としては、いわゆる膨張黒鉛や、薄片状黒鉛を使用することができる。
膨張黒鉛の製造方法としては、例えば、酸中に黒鉛(例えば、鱗片状黒鉛)を室温で浸漬した後、得られた酸処理黒鉛に加熱処理(好ましくは、700〜1000℃で処理)を施すことにより製造することができる。より具体的には、硫酸9重量部と硝酸1重量部の混酸に鱗片状天然黒鉛を1時間程度浸漬後、酸を除去し、水洗・乾燥を行う。その後、得られた酸処理黒鉛を850℃程度の炉に投入することで膨張黒鉛が得られる。なお、酸処理黒鉛の代わりに、アルカリ金属など黒鉛と層間化合物を形成した黒鉛を使用しても、膨張黒鉛を得ることが出来る。
なお、嵩密度の測定方法としては、100mlのガラス製メスシリンダーに試料を圧縮しないように挿入し、その試料重量を試料体積で除して求める。
なお、上記比表面積を示す膨張黒鉛を構成するグラフェンシートの枚数と、それを解砕した薄片状黒鉛を構成するグラフェンシートの枚数は、基本的にほぼ同一と推測される。
本工程で使用される電池活物質としては、リチウムイオンと化合可能な電池活物質(好ましくは、負極活物質)である。言い換えれば、リチウムイオンと化合して、リチウムイオンを吸蔵及び放出し得る物質(例えば、金属、金属の炭化物、窒化物、酸化物など)であればよい。例えば、リチウムイオンの吸収および放出が可能な金属もしくは非金属、または、リチウムと合金化可能な金属酸化物である。
なお、該合金については、上記した金属の組み合わせからなる合金の他、リチウムイオンを吸蔵および放出しない金属を含む合金であってもよい。この場合、合金中の上記リチウムと合金化可能な金属の含有量はより多いほうが好ましい。SEM観察で得られる2次電子像で判断する粒子の均一性やサイクル特性などから判断すると、金属含有量の上限は70質量%であるこどが好ましく、60質量%以下がより好ましい。
使用される電池活物質の平均粒子径としては、黒鉛と電池活物質との複合化時の電池活物質の脱落やサイクルに伴う電池活物質の膨張破壊などがより抑制される点で、1μm以下が好ましく、0.5μm以下がより好ましく、0.1μm以下がさらに好ましい。下限値については、特に制限はなく小さいほうが好ましい。通常の粉砕方法では、平均粒子径0.01μm程度までの微粉末を製造することが可能であり、この程度の粒径の粉末を有効に用いることができる。
なお、平均粒子径の測定方法としては、レーザー回折式の粒度分布測定器が用いられる。より具体的には、D50:50%体積粒径を平均粒子径とする。
上述した黒鉛と電池活物質との混合方法は特に制限されず、公知の方法を採用することができ、いわゆる乾式処理または湿式処理などが挙げられる。なお、得られる混合物中での黒鉛と電池活物質とがより均一に混合する点より、湿式処理の態様が好ましい。
乾式処理としては、例えば、公知の攪拌機(例えば、ヘンシェルミキサー)に上述した黒鉛と電池活物質とを加え、混合する方法がある。
湿式処理の際に使用される溶媒の種類は特に制限されず、黒鉛と電池活物質とを分散させることができる溶媒であればよい。例えば、アルコール系溶媒(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール)、ケトン系溶媒(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン)、アミド系溶媒(例えば、ホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン)、ニトリル系溶媒(例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル)、エステル系溶媒(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル)、カーボネート系溶媒(例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート)、エーテル系溶媒(例えば、セロソルブ)、ハロゲン系溶媒、水およびこれらの混合物などが挙げられる。
なかでも、得られるリチウム二次電池用複合活物質を用いたリチウム二次電池のサイクル特性がより優れる点で、アルコール系溶媒が好ましい。
また、必要に応じて、攪拌処理時に超音波を加えてもよい。
球形化工程は、混合物に球形化処理を施し、黒鉛およびリチウムイオンと化合可能な電池活物質を含有する略球状のリチウム二次電池用複合活物質を製造する工程である。
本工程を実施することにより、黒鉛のシートがその内部に電池活物質を取り込むように折り畳まれて球形化する。その際、黒鉛のエッジ部は内部に折り畳まれ、形成されるリチウム二次電池用複合活物質の表面には実質的に露出しない構造が得られる。
例えば、特開2008−27897に記載されるように、鱗片状の黒鉛と電池活物質とを高速気流中に置くと、黒鉛の長軸方向、即ち黒鉛のAB面は気流の方向に配列し、気流と垂直に設けられたピンまたは衝突板に衝突し、黒鉛AB面は圧縮変形し、結果的に電池活物質を挟み込む形で球形化する。この場合、黒鉛表面に存在する電池活物質の多くは衝突時の衝撃で黒鉛表面から離れ、たまたま黒鉛AB面間に挟まれた状態の電池活物質のみが黒鉛層間に挟み込まれる。
また、薄片状黒鉛の場合、黒鉛AB面に平行方向の圧縮と垂直方向の圧縮を同時に受けるが、黒鉛AB面の弾性率が低いため、黒鉛AB面に垂直方向の圧縮により黒鉛AB間で容易に接着して変形し、薄片状黒鉛表面に付着した電池活物質は黒鉛AB面内に挟み込まれる作用が先行する。その後、弾性率の高い黒鉛AB面の変形が起こり、球形化が進行する。
また、膨張黒鉛または薄片状黒鉛は、それを構成する積層したグラフェンシートの層の厚みが小さいため、より小さなAB面方向の圧縮力でAB面の変形が容易に行われることはいうまでもない。
また、球形化処理は空気中で行うことが好ましい。窒素気流同処理を行うと、大気開放時に発火する危険がある。
上述した工程を経て得られるリチウム二次電池用複合活物質(以後、単に複合活物質とも称する)は、略球状であり、黒鉛と電池活物質とを含有する。
以下、得られた複合活物質について詳述する。
より具体的には、略球状とは、長径と短径との比率であるアスペクト比(長径/短径)が1〜3の範囲程度(本発明の効果がより優れる点で、1〜2がより好ましい)の複合活物質粒子の形状を表す。上記アスペクト比は、少なくとも100の粒子について一つ一つの粒子の長径/短径を求め、それらの算術平均した値(算術平均値)を意味する。
なお、上記における短径とは、走査型電子顕微鏡などによって観察される粒子の外側に接し、粒子を挟み込む二つの平行線の組み合わせのうち最短間隔になる二つの平行線の距離である。一方、長径とは、該短径を決定する平行線に直角方向の二つの平行線であって、粒子の外側に接する二つの平行線の組み合わせのうち、最長間隔になる二つの平行線の距離である。これらの四つの線で形成される長方形は、粒子がちょうどその中に納まる大きさとなる。
上記面積率が上記範囲外(95%未満)の場合、電池活物質の脱落などが生じやすく、サイクル特性に劣る。
面積率の測定方法としては、加速電圧10kV以下での走査型電子顕微鏡(SEM)(好ましくは、倍率2000倍以上)によって、少なくとも100個以上の複合活物質を観察し、各複合活物質表面上に占める黒鉛の面積率を測定し、それらを算術平均した値である。
面積率の測定方法としては、加速電圧10kV以下での走査型電子顕微鏡(SEM)(好ましくは、倍率2000倍以上)によって、少なくとも100個以上の複合活物質を観察し、各複合活物質表面上に占める電池活物質の面積率を測定し、それらを算術平均した値である。
リチウム二次電池用複合活物質の断面を観察する方法としては、例えば、複合活物質を顕微鏡試料固定用樹脂にて硬化させた後、1種類以上のサンドペーパーで研磨を繰り返し(複数種類のサンドペーパーを用いる場合は目の粗いものから順に使用する)、その後、2000番サンドペーパーで研磨を行い、その後、0.5μmアルミナ研磨剤で研磨し、最後に0.02μmのダイヤモンドペーストで研磨することで、複合活物質の断面を露出させ、その後、スパッタリング法で複合活物質の断面を導電化する等の方法がある。
また、2次粒子か否かの判断は、加速電圧10kV以下での走査型電子顕微鏡(SEM)観察により観察されるリチウム二次電池用複合活物質の断面において観察される1次粒子が別の1次粒子と一部でも接触しているか否かにより判断する。すなわち、1次粒子が別の1次粒子と一部でも接触していれば2次粒子に該当すると判断する。
なかでも、得られる複合活物質を使用したリチウム二次電池のサイクル特性がより優れる点で、電池活物質の含有量は、複合活物質全量に対して、10質量%以上が好ましく、20質量%がより好ましく、30質量%以上が特に好ましい。上限としては、70質量%以下が好ましく、60質量%以下がより好ましい。
なお、得られる複合活物質において電池活物質の含有量が上記範囲内である場合でも、複合活物質表面に露出する黒鉛の面積率は上記範囲内となる。
なお、電池活物質をSiとする場合、複合活物質中のSiの含有量を30質量%とした場合、Siのみに由来する充放電容量は1200mAh/g程度となる。
なお、粒径(D90:90%体積粒径)は特に制限されないが、得られる複合活物質を用いたリチウム二次電池のサイクル特性より優れる点で、10〜60μmが好ましく、20〜45μmがより好ましい。
さらに、粒径(D10:10%体積粒径)は特に制限されないが、得られる複合活物質を用いたリチウム二次電池のサイクル特性がより優れる点で、1〜20μmが好ましく、2〜10μmがより好ましい。
なお、測定に際しては、複合活物質を液体に加えて超音波などを利用しながら激しく混合し、作製した分散液を装置にサンプルとして導入し、測定を行う。液体としては作業上、水やアルコール、低揮発性の有機溶媒を用いることが好ましい。この時、得られる粒度分布図は正規分布を示すことが好ましい。
嵩密度の測定方法は、25mlのメスシリンダーを用いる以外、上述した黒鉛の嵩密度の測定方法と同じである。
タップ密度の測定方法は、試料を25mlメスシリンダーには入れ、タッピングを行い、容量変化がなくなった時点の試料重量を試料体積で除して求める。
複合活物質の比表面積(BET比表面積)の測定方法は、試料を300℃で30分真空乾燥後、窒素吸着1点法で測定する。
炭素で被覆する方法は特に制限されないが、例えば、CVD法が挙げられる。より具体的には、トルエン等のガスを流し、750〜1100℃でCVD処理を行うことが好ましい。
上述した複合活物質は、リチウム二次電池で使用される電池材料(電極材料)に使用される活物質として有用である。
上記複合活物質を用いた電池材料の特徴として、電池材料の理論値に近い容量が得られること、サイクル特性が良好なこと、レート特性が優れていることが挙げられる。電池材料の理論値に近い容量が得られる理由としては、微細化した電池活物質の周囲に導電性の優れた黒鉛が十分に存在できることが挙げられる。また、サイクル特性が良好な理由としては、サイクルに伴い電池活物質が粉化しても、電池活物質は薄い黒鉛層に密着して包まれているために導電パスを失うことがないことが挙げられる。さらに、レート特性が優れている理由としては、電池活物質が微細化している結果、Liイオンの拡散距離が小さいことが挙げられる。特に、レート特性は粒子径が小さくなるほど良好になることは理論的に明らかであるが、サイクルに伴いさらに微細化した電池活物質が脱落することなく、薄い黒鉛層に確実に保持された環境下で十分に導電パスが確保されて初めて達成されるものである。
例えば、複合活物質と結着剤とを混合し、加圧成形または溶剤を用いてペースト化し、銅箔上に塗布してリチウム二次電池用負極とすることができる。より具体的には、複合活物質92g、13%PVDF/NMP溶液62g、導電用カーボンブラック0.5g、およびNMP29gを混合し、通常用いられる双腕型ミキサーを用いて良好なスラリーが得られる。
なお、集電体としては銅箔以外に、電池のサイクルがより優れる点で、三次元構造を有することが好ましい。三次元構造を有する集電体の材料としては、例えば、炭素繊維、スポンジ状カーボン(スポンジ状樹脂にカーボンを塗工したもの)、金属などが挙げられる。
三次元構造を有する集電体(多孔質集電体)としては、金属や炭素の導電体の多孔質体として、平織り金網、エキスパンドメタル、ラス網、金属発泡体、金属織布、金属不織布、炭素繊維織布、または炭素繊維不織布などが挙げられる。
また、溶剤としては、例えば、水、イソプロピルアルコール、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミドなどが挙げられる。
なお、ペースト化する際には、上記のように必要に応じて、公知の攪拌機、混合機、混練機、ニーダーなどを用いて攪拌混合してもよい。
カーボンブラック、カーボンナノチューブまたはその混合物の配合量は特に制限されないが、複合活物質100質量部に対して、0.2〜4質量部であることが好ましく、0.5〜2質量部であることがより好ましい。カーボンナノチューブの例としては、シングルウォールカーボンナノチューブ、マルチウォールカーボンナノチューブがある。
上記複合活物質を使用して得られる負極を有するリチウム二次電池に使用される正極としては、公知の正極材料を使用した正極を使用することができる。
正極の製造方法としては公知の方法が挙げられ、正極材料と結合剤および導電剤よりなる正極合剤を集電体の表面に塗布する方法などが挙げられる。正極材料(正極活物質)としては、酸化クロム、酸化チタン、酸化コバルト、五酸化バナジウムなどの金属酸化物や、LiCoO2、LiNiO2、LiNi1−yCoyO2、LiNi1−x−yCoxAlyO2、LiMnO2、LiMn2O4、LiFeO2などのリチウム金属酸化物、硫化チタン、硫化モリブデンなどの遷移金属のカルコゲン化合物、または、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリピロールなどの導電性を有する共役系高分子物質などが挙げられる。
上記複合活物質を使用して得られる負極を有するリチウム二次電池に使用される電解液としては、公知の電解液を使用することができる。
例えば、電解液中に含まれる電解質塩として、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiClO4、LiB(C6H5)、LiCl、LiBr、LiCF3SO3、LiCH3SO3、LiN(CF3SO2)2、LiC(CF3SO2)3、LiN(CF3CH2OSO2)2、LiN(CF3CF3OSO2)2、LiN(HCF2CF2CH2OSO2)2、LiN{(CF3)2CHOSO2}2、LiB{(C6H3(CF3)2}4、LiN(SO2CF3)2、LiC(SO2CF3)3、LiAlCl4、LiSiF6などのリチウム塩を用いることができる。特にLiPF6およびLiBF4が酸化安定性の点から好ましい。
電解質溶液中の電解質塩濃度は0.1〜5mol/lであるのが好ましく、0.5〜3mol/lであるのがより好ましい。
上記複合活物質を使用して得られる負極を有するリチウム二次電池に使用されるセパレータとしては、公知の材料を使用できる。例えば、織布、不織布、合成樹脂製微多孔膜などが例示される。合成樹脂製微多孔膜が好適であるが、中でもポリオレフィン系微多孔膜が、膜厚、膜強度、膜抵抗などの点から好適である。具体的には、ポリエチレンおよびポリプロピレン製微多孔膜、またはこれらを複合した微多孔膜などである。
本発明のリチウム二次電池は、各種携帯電子機器に用いられ、特にノート型パソコン、ノート型ワープロ、パームトップ(ポケット)パソコン、携帯電話、携帯ファックス、携帯プリンター、ヘッドフォンステレオ、ビデオカメラ、携帯テレビ、ポータブルCD、ポータブルMD、電動髭剃り機、電子手帳、トランシーバー、電動工具、ラジオ、テープレコーダー、デジタルカメラ、携帯コピー機、携帯ゲーム機などに用いることができる。また、さらに、電気自動車、ハイブリッド自動車、自動販売機、電動カート、ロードレベリング用蓄電システム、家庭用蓄電器、分散型電力貯蔵機システム(据置型電化製品に内蔵)、非常時電力供給システムなどの二次電池として用いることもできる。
(膨張黒鉛の調製)
平均粒子径1mmの鱗片状天然黒鉛を硫酸9重量部、硝酸1重量部の混酸に室温で1時間浸漬後、No3ガラスフィルターで混酸を除去して酸処理黒鉛を得た。さらに酸処理黒鉛を水洗後、乾燥した。乾燥した酸処理黒鉛5gを蒸留水100g中で攪拌し、1時間後にpHを測定したところ、pHは6.7であった。乾燥した酸処理黒鉛を850℃に設定した窒素雰囲気下の縦型電気炉に投入し、膨張黒鉛を得た。酸処理黒鉛の嵩密度は0.78g/cm3であった。膨張黒鉛の比表面積は42m2/g、嵩比重は0.023g/cm3、積層したグラフェンシートの層の平均厚みは21nmであった。
平均粒子径0.23μmの金属Si(15質量部)をビーカー中で3000質量部のエタノールに投入し、2分間の撹拌を行った。
金属Siが分散したエタノールに上記膨張黒鉛(35質量部)を加え、膨張黒鉛と金属Si微粉末を含む均一混合スラリーを調製した。エバポレーターを用い、このスラリーからエタノールを回収し、粉末の混合物を得た。
ピンミル(フリッチェ社製)(ローター直径10cm、回転速度:8000rpm、処理時間:2分)を用いて、上記で得られた粉末の混合物を球形状に造粒成形して、黒鉛の含有量70質量%、金属Siの含有量30質量%からなる略球形のリチウム二次電池用複合活物質を得た。
その物性は以下の通りである。嵩密度:0.65g/cm3、タップ密度;1.15g/cm3、粒度分布D90:45μm、D50:28μm、D10:6.7μm、XRD:図1A参照、比表面積:10.7m2/g、形状:図2のSEM参照、平均アスペクト比:1.45であった
また、図1BにSiとの複合化前の膨張黒鉛と標準珪素物質の混合材料の回折パターンを示す。図1Aと図1Bとを比較すると、複合化した後の膨張黒鉛の回折パターンに変化は見られない。このことから、黒鉛の層間には金属Si微粒子がインターカレーションすることなく、折りたたまれた黒鉛によって金属Si微粒子が内包された状態であることが分かる。
このことから、複合活物質においては、薄い黒鉛層で電池活物質を挟み込んだ構造であることを直接観察することができる。また、表面に露出する電池活物質が極めて少ないこと、黒鉛エッジ面が複合材の表面に存在しないことも同時に確認できる。
より具体的には、SEM観察により観察されるリチウム二次電池用複合活物質表面上に露出している黒鉛の面積率は98%であり、露出しているSi金属の面積率は2%であった。。
図12に代表される複合活物質の断面の2次電子像を複数枚撮影し、その画像において観察される金属Si微粒子の2次粒子を120個観察し、2次粒子の平均径を画像解析により算出したところ、その値は2μm以下であり、大きな2次粒子の形成は見られなかった。
上記複合活物質92質量部、PVDF含有NMP溶液(PVDF(ポリフッ化ビニリデン)(含有量:13%)62質量部、導電用カーボンブラック0.5質量部、およびNMP29質量部を秤り取り、双腕型ミキサーを用いて3分間混合することで塗工用スラリーを調製した。
本スラリーを銅箔に塗工し、乾燥して、負極を製造した。その後、Li金属を対極とし、エチレンカーボネート:ジエチルカーボネート=1:3、1.2モル/リットルのLiPF6電解液を用いてハーフセルを作製し、以下の電池評価を行った。
上記ハーフセルを用い、得られた複合活物質の充放電容量とサイクル特性の評価を行った。
充放電のレートはともにC/20を用い、充電側でのカットオフ電圧は0.01V、放電側のカットオフ電圧は1.5Vとし、サイクル実験を行った。このハーフセルはSiの理論容量を4200mAh/gとしたとき、計算上の理論容量は1220mAh/gであるが、初期の不可逆容量は220mAh/gであるため、計算される可逆容量は1000mAh/gとなる。
図3に示すように実験により得られた値、充電容量、放電容量ともに950mAh/gと計算値に近い値が得られた。なお、計算値より実際の放電容量が小さかった理由は、複合活物質を製造する際に、一部のSi活物質が脱落したためと思われる。
該図4に示されるように、放電容量に劣化は全く見られなかった。またこのハーフセルは非常に高いクーロン効率(数サイクル後は100%を維持している)を持つことも確認された(図5参照)
先に作製したハーフセルを用い、複合活物質のレート特性の評価を行った。
充電はC/15で行い、放電はC/15、C/7.5、C/3.8、C/1.8で行った。充電側でのカットオフ電圧は0.01V、放電側のカットオフ電圧は1.5Vとした。図6に示すようにC/1.8においてもC/15で得られた放電容量の98%と非常に高い放電容量が得られ、この材料は非常に良好なレート特性を持つことが確認された。
(膨張黒鉛の調製)
実施例1と同様の方法で膨張黒鉛を得た。膨張黒鉛1質量部を80質量部のエタノールに混合し、超音波浴で10分間処理することにより、膨張黒鉛内で重なったグラフェンシートの乖離を促し、比表面積を増加させた。得られた膨張黒鉛の比表面積は98m2/g、嵩比重は0.006g/cm3であった。
実施例1と同様の方法で、混合工程、球形化工程を実施し、黒鉛の含有量70質量%、金属Siの含有量30質量%からなる略球形のリチウム二次電池用複合活物質を得た。
その物性は以下の通りである。嵩密度:0.66g/cm3、タップ密度;1.17g/cm3、粒度分布D90:24μm、D50:11μm、D10:6.5μm、比表面積:11.2m2/g、形状:図13のSEM参照、平均アスペクト比:1.56であった。
このことから、複合活物質においては、薄い黒鉛層で電池活物質を挟み込んだ構造であることを直接観察することができる。また、表面に露出する電池活物質が極めて少ないこと、黒鉛エッジ面が複合材の表面に存在しないことも同時に確認できる。
より具体的には、SEM観察により観察されるリチウム二次電池用複合活物質表面上に露出している黒鉛の面積率は98%であり、露出しているSi金属の面積率は2%であった。
なお、複合活物質の断面を観察するための手順は、実施例1と同様であった。
上記複合活物質92質量部、PVDF含有NMP溶液(PVDF(ポリフッ化ビニリデン)含有量:13%)62質量部、導電用カーボンブラック0.5質量部、およびNMP29質量部を秤り取り、双腕型ミキサーを用いて3分間混合することで塗工用スラリーを調製した。本スラリーをカーボンクロス(東レ TCC−4310)に塗工し、乾燥して、負極を製造した。
(正極製造)
LiNi1−x−yCoxAlyO284質量部、PVDF含有NMP溶液(PVDF(ポリフッ化ビニリデン)(含有量:12%)66質量部、導電用カーボンブラック8質量部、およびNMP29質量部を秤り取り、双腕型ミキサーを用いて3分間混合することで塗工用スラリーを調製した。本スラリーをアルミ箔に塗工し、乾燥して、正極を製造した。
(フルセル製造)
上記負極と正極を電極とし、エチレンカーボネート:ジエチルカーボネート=1:3、1.2モル/リットルのLiPF6電解液を用いてフルセルを作製し、以下の電池評価を行った。
上記フルセルを用い、得られた複合活物質の充放電容量とサイクル特性の評価を行った。
充放電のレートは充電、放電ともにC/5を用い、充電側でのカットオフ電圧は3.9V、放電側のカットオフ電圧は3.3Vとし、放電深度40%でサイクル実験を行った。この試験において、50サイクルごとにC/10で、充電側のカットオフ電圧を4.1V、放電側のカットオフ電圧を2.7Vとし、サイクル試験開始前の放電容量(初期容量)を基準と下放電容量維持率の評価を行った。図15に、1200サイクルまでのサイクル特性の評価の結果を示す。1200サイクル後の放電深度40%における放電容量は、サイクル試験開始直後における放電容量の89%の容量を維持した。また、1200サイクル後の50サイクルごと放電容量維持率でも、初期容量の91%を維持しており、非常に良好なサイクル特性が見られた。実施例2では、膨張黒鉛とエタノールとを混合した後に超音波浴で10分間処理を行い、膨張黒鉛の比表面積を増加させたが、これによりSi粒子の膨張黒鉛内部への分散が促進され、2次粒子の形成が少なかったことが良好なサイクル特性の一因となっているものと考えられる。
先に作製したフルセルを用い、複合活物質のレート特性の評価を行った。
充電はC/10で行い、放電はC/20、C/10、C/5、C/2、1C、2C、4Cで行った。充電側でのカットオフ電圧は4.1V、放電側のカットオフ電圧は2.7Vとした。図16に示すように4CにおいてもC/20で得られた放電容量の67%と非常に高い放電容量が得られ、この材料は非常に良好なレート特性を持つことが確認された。
以下に、比較例1の態様について詳述する。なお、比較例1は、特許文献1の記載に態様に該当する。該態様では、所定の黒鉛が使用されていない。
平均粒子径0.23μmの金属Si(15質量部)をビーカー中で3000質量部のエタノールに投入し、2分間の撹拌を行った。
金属Siが分散したエタノールに市販の鱗片状黒鉛(比表面積2m2/g以下)(35質量部)を加え、鱗片状黒鉛と金属Si微粉末を含む均一混合スラリーを調製した。エバポレーターを用い、このスラリーからエタノールを回収し、粉末の混合物を得た。
ピンミル(フリッチェ社製)(ローター直径10cm、回転速度:18000rpm、処理時間:2分)を用いて、上記で得られた粉末の混合物を球形状に造粒成形して、略球形のリチウム二次電池用複合活物質を得た。
その物性は以下の通りである。タップ密度;0.9g/cm3、粒度分布D50;18μm。複合活物質全量に占める金属Siの質量割合は、TGA測定から36質量%と見積もられた。
また、10kV以下の低加速電圧でのSEM(走査型電子顕微鏡)観察では黒鉛表皮を透過して電池活物質Si金属の粒子を明瞭に観察することはできなかった。また表面にも数多くのSi粒子の存在が確認された。
より具体的には、SEM観察により観察されるリチウム二次電池用複合活物質表面上に露出している黒鉛の面積率は55%であり、露出しているSi金属の面積率は45%であった。
次に、得られた複合活物質を用いて、上記実施例1の(負極製造)と同様の手順に従って、ハーフセルを作製し、実施例1と同様の電池評価(充放電容量とサイクル特性)に従って電池評価を行った。
このハーフセルはSiの理論容量を4200mAh/gとしたとき、計算上の理論容量は1520mAh/gであるが、初期の不可逆容量は274mAh/gであるため、計算される可逆容量は1246mAh/gとなる。
初期放電容量としては、1250mAh/gと計算値に近い値が得られた。しかしながら、図8に示すようにこのハーフセルの容量は急激に劣化し、10サイクルで初期容量の66%、19サイクルで4%と大きく低下した。
該結果から分かるように、特許文献1に記載の複合活物質を使用した態様では、所望の効果が得られない。
以下に、比較例2の態様について詳述する。なお、比較例2は、特許文献2の記載に態様に該当する。該態様では、球形化工程を実施していない。
平均粒子径0.23μmの金属Si(15質量部)をビーカー中で3000質量部のエタノールに投入し、2分間の撹拌を行った。
金属Siが分散したエタノールに実施例1で用いた膨張黒鉛(35質量部)を加え、膨張黒鉛と金属Si微粉末を含む均一混合スラリーを調製した。エバポレーターを用い、このスラリーからエタノールを回収し、粉末の混合物を得た。混合物中、黒鉛の含有量は70質量%で、金属Siの含有量は30質量%であった。
上記で得られた粉末の混合物(250mg)をステンレス製のメッシュ(5cm×5cm)の上に均一に広げた後、1cm2辺り100kg重の力を2分間、加えることで圧縮し、電極を作製した。得られた電極の厚みは、0.2μmであった。
図9は、10kV以下の低加速電圧にて、SEM(走査型電子顕微鏡)を用いて上述の電極の2次電子像を観察した図である。この図に示すように、10kV以下の低加速電圧でのSEM(走査型電子顕微鏡)観察では黒鉛表皮を透過して電池活物質Si金属の粒子を観察することができた。
より具体的には、SEM観察により観察されるリチウム二次電池用複合活物質表面上に露出している黒鉛の面積率は98%であり、露出しているSi金属の面積率は2%であった。
次に、圧縮により得られた電極を用いて、Li金属を対極とし、エチレンカーボネート:ジエチルカーボネート=1:3、1.2モル/リットルのLiPF6電解液を用いてハーフセルを作製し、実施例1と同様の電池評価(充放電容量とサイクル特性)に従って電池評価を行った。
このハーフセルはSiの理論容量を4200mAh/gとしたとき、計算上の理論容量は1220mAh/gであるが、初期の不可逆容量は220mAh/gであるため、計算される可逆容量は1000mAh/gとなる。
また、図10に示すようにこのハーフセルの容量は急激に劣化し、10サイクルで初期容量の40%と大きく低下した。
該結果から分かるように、特許文献2に記載の複合活物質を使用した態様では、所望の効果が得られない。
本発明のリチウム二次電池向け複合活物質を、三次元構造を有する集電体に配置したときの効果を比較するために、集電体として、カーボンクロス、および銅箔を用いたリチウム二次電池をそれぞれ作製し、充放電試験を行った。以下、その詳細を述べる。
実施例1と同様の方法で、黒鉛の含有量70質量%、金属Siの含有量30質量%からなる略球形のリチウム二次電池用複合活物質を得た。この複合活物質92質量部、PVDF含有NMP溶液(PVDF(ポリフッ化ビニリデン)含有量:13%)101質量部、導電用カーボンブラック0.5質量部、およびNMP47質量部を秤り取り、双腕型ミキサーを用いて1分間混合し、その後、スパチュラを用いて撹拌した。この操作を2回行った後、さらにNMP459質量部を加え、双腕型ミキサーを用いて1分間混合し、その後、スパチュラを用いて撹拌した。その後、さらにNMP552質量部を加え、双腕型ミキサーを用いて1分間混合し、その後、スパチュラを用いて撹拌することで塗工用スラリーを調整した。カーボンクロス(東レ TCC−4310)を本スラリーに浸漬した後、引き上げ、余分なスラリーをタッピングにより除去した。その後乾燥して、負極を製造した。
実施例1と同様の方法で、黒鉛の含有量70質量%、金属Siの含有量30質量%からなる略球形のリチウム二次電池用複合活物質を得た。この複合活物質92質量部、PVDF含有NMP溶液(PVDF(ポリフッ化ビニリデン)含有量:13%)101質量部、導電用カーボンブラック0.5質量部、およびNMP47質量部を秤り取り、双腕型ミキサーを用いて1分間混合し、その後、スパチュラを用いて撹拌した。この操作を2回行った後、さらにNMP507質量部を加え、双椀型ミキサーを用いて1分間混合し、その後、スパチュラを用いて撹拌することで塗工用スラリーを調整した。本スラリーを銅箔に塗工し、乾燥して、負極を製造した。
LiNi1−x−yCoxAlyO284質量部、PVDF含有NMP溶液(PVDF(ポリフッ化ビニリデン)(含有量:12%)66質量部、導電用カーボンブラック8質量部、およびNMP29質量部を秤り取り、双腕型ミキサーを用いて3分間混合することで塗工用スラリーを調製した。本スラリーをアルミ箔に塗工し、乾燥して、正極を製造した。
上記フルセルを用い、得られた複合活物質の充放電容量とサイクル特性の評価を行った。
充放電のレートは充電、放電ともに0.3Cを用い、充電側でのカットオフ電圧は4.1V、放電側のカットオフ電圧は2.7Vとし、放電深度100%でサイクル実験を行った。試験は60サイクル実施し、1サイクル目に対する60サイクル後の容量維持率の比較を行った。表1にその結果を示す。
なお、カーボンクロスおよび銅箔を使用したサンプルはそれぞれ3つずつ用意し、測定を行った。
Claims (13)
- リチウム二次電池用複合活物質の製造方法であって、
比表面積30m2/g以上の膨張黒鉛または薄片状黒鉛と、リチウムイオンと化合可能な電池活物質とを混合して、混合物を得る混合工程と、
前記混合物に球形化処理を施し、黒鉛およびリチウムイオンと化合可能な電池活物質を含有する略球状のリチウム二次電池用複合活物質を製造する球形化工程とを有する、リチウム二次電池用複合活物質の製造方法。 - 前記リチウムイオンと化合可能な電池活物質が、シリコン、スズ、アルミニウム、アンチモン、およびインジウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を含有する、請求項1に記載のリチウム二次電池用複合活物質の製造方法。
- 前記球形化工程が、ハンマミル、ピンミル、スクリーンミル、ターボ型ミル、遠心分級型ミルおよびサンプルミルからなる群から選ばれる高速回転衝撃式粉砕機によって行われる、請求項1または2に記載のリチウム二次電池用複合活物質の製造方法。
- 前記リチウムイオンと化合可能な電池活物質の平均粒子径が1μm以下である、請求項1〜3のいずれかに記載のリチウム二次電池用複合活物質の製造方法。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の二次電池用複合活物質の製造方法より得られる、黒鉛およびリチウムイオンと化合可能な電池活物質を含有する略球状のリチウム二次電池用複合活物質であって、
加速電圧10kV以下での走査型電子顕微鏡(SEM)観察により観察されるリチウム二次電池用複合活物質表面上に露出している前記黒鉛の面積率が95%以上である、リチウム二次電池用複合活物質。 - タップ密度が0.8g/cm3以上である、請求項5に記載のリチウム二次電池用複合活物質。
- 比表面積が5〜100m2/gである、請求項5または6に記載のリチウム二次電池用複合活物質。
- 前記リチウムイオンと化合可能な電池活物質の平均粒子径が1μm以下である、請求項5〜7のいずれかに記載のリチウム二次電池用複合活物質。
- 前記リチウムイオンと化合可能な電池活物質の一部が前記リチウムイオンと化合可能な電池活物質の凝集体である2次粒子の形態で存在し、前記2次粒子の平均径が5μm以下である、請求項5〜8のいずれかに記載のリチウム二次電池用複合活物質。
- 請求項5〜9のいずれかに記載のリチウム二次電池用複合活物質を含むリチウム二次電池。
- 満充電状態において前記リチウムイオンと化合可能な電池活物質が60%以上充電され、前記黒鉛が50%以下充電された状態で使用される、請求項10に記載のリチウム二次電池。
- 請求項5〜9のいずれかに記載のリチウム二次電池用複合活物質を含む負極を有するリチウム二次電池であって、
前記負極の電位がリチウム参照極に対して0.4Vを下回らない範囲で使用される、請求項10または11に記載のリチウム二次電池。 - 三次元構造を有する集電体とその上に配置される請求項5〜9のいずれかに記載のリチウム二次電池用複合活物質とを含む電極を有する、リチウム二次電池。
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