以下、本発明のバルブ構造を図に基づいて説明する。図1は、一実施の形態における緩衝器のバルブ構造が具現化された緩衝器のピストン部の一部における縦断面図である。図2は、一実施の形態の緩衝器のバルブ構造が具現化した緩衝器における減衰特性を示す図である。図3は、他の実施の形態における緩衝器のバルブ構造が具現化された緩衝器のピストン部の一部における縦断面図である。図4は、他の実施の形態の変形例における緩衝器のバルブ構造が具現化された緩衝器のピストン部の一部における縦断面図である。
一実施の形態における緩衝器のバルブ構造は、図1に示すように、緩衝器Dのピストン部の伸側減衰バルブに具現化されており、緩衝器D内に一方室41と他方室42とを隔成するとともに上記一方室41と他方室42とを連通するポート2を備えたバルブディスクたるピストン1と、ピストン1の軸心部から立ち上がる軸部材を形成する軸たるピストンロッド5の先端5aおよび該先端5aに螺着されるガイド部材たるピストンナット4と、上記ピストンナット4の外周に摺動自在に装着されるととともに上記ピストン1の他方室側面となる底部1aに積層されてポート2を閉塞する環状のリーフバルブ10と、上記軸部材の一部を形成するガイド部材たるピストンナット4の外周に摺動自在に装着されるとともにリーフバルブ10に積層される環状のバルブ抑え部材11と、ポート2を閉塞する方向にバルブ抑え部材11を介してリーフバルブ10を附勢する附勢手段たるコイルスプリング15と、内部の圧力によってバルブ抑え部材11にリーフバルブ10をピストン1側に押し付ける推力を与える圧力室16と、一方室41と圧力室16とを連通する連通路17と、連通路17の途中に設けられ圧力室16内の圧力を制御する圧力制御弁20とを備えて構成されている。
他方、バルブ構造が具現化される緩衝器Dは、周知であるので詳細には図示して説明しないが、具体的にたとえば、シリンダ40と、シリンダ40の上端を封止するヘッド部材(図示せず)と、ヘッド部材(図示せず)を摺動自在に貫通するピストンロッド5と、ピストンロッド5の端部に設けた上記ピストン1と、シリンダ40内にピストン1で隔成される図1中上方側の一方室41と下方側の他方室42と、シリンダ40の下端を封止する封止部材(図示せず)と、シリンダ40から出没するピストンロッド5の体積分のシリンダ内容積変化を補償する図示しないリザーバあるいはエア室とを備えて構成され、シリンダ40内には流体、具体的には作動油が充填されている。
そして、上記バルブ構造にあっては、シリンダ40に対してピストン1が図1中上方に移動するときに、一方室41内の圧力が上昇して一方室41から他方室42へポート2を介して作動油が移動するときに、その作動油の移動にリーフバルブ10で抵抗を与えて所定の圧力損失を生じせしめて、緩衝器Dに所定の減衰力を発生させる減衰力発生要素として機能する。
以下、このバルブ構造について詳しく説明すると、バルブディスクたるピストン1は、有底筒状に形成され、底部1aの軸心部に緩衝器Dのピストンロッド5が挿通される挿通孔1bと、ポート2と、ポート2に連通する窓3と、ポート2の出口端となる窓3の外周側に形成されピストン1の底部1aよりリーフバルブ10側に突出する環状の弁座1cと、外周側に延設される筒部1fを備えて構成されている。
なお、このピストン1には、緩衝器Dが収縮するときに他方室42から一方室41へと向かう作動油の流れを許容する圧側のポート1dが底部1aの伸側のポート2より外周側に設けられている。
このピストン1の挿通孔1b内には上述のようにバルブディスクたるピストン1の軸芯部を貫通するピストンロッド5が挿通され、ピストンロッド5の先端5aはピストン1の図1中下方側に突出させてあり、このピストンロッド5は、軸部材における軸とされている。なお、ピストンロッド5の先端5aの外径は、先端5aより図1中上方側の外径より小径に設定され、上方側と先端5aとの外径が異なる部分に段部5bが形成されている。
また、このピストンロッド5には、その先端面5cから開口する縦穴5dと、一方室41に面する側部から開口して上記縦穴5dに連通される横穴5eとが設けられ、この縦穴5dおよび横穴5eとで先端面5cから開口して一方室41に連通される軸通路17aが形成されている。ピストンロッド5の横穴5eの内周には、オリフィス30aを備えたオリフィス部材30が螺着され、軸通路17aは、オリフィス30aを介して一方室41内に連通されている。なお、オリフィス部材30には、六角レンチを使用して当該オリフィス部材30を横穴5eに螺着することが可能なように、六角形の孔30bが設けられており、この孔30bとオリフィス30aとでピストンナット4の内外が連通するようになっている。
つづいて、軸部材におけるガイド部材となるピストンナット4は、筒部4aと、筒部4aの図1中下端を閉塞する底部4bとを備えて有底筒状とされ、また、底部4bの図1中上部には凹部4cが設けられ、この底部4bから図1中上方に立ち上がり内周面が凹部4cの側面と面一となる筒状のソケット4dが設けられている。そして、このソケット4dの内周と凹部4cの側部は、ピストンロッド5の先端5aに設けた螺子部5fに螺着される。
さらに、ピストンナット4には、このソケット4dの外周と底部4bの外周とで段部4eが形成され、ソケット4dで軸部材の小径外周部が形成され、底部4bで軸部材の大径外周部が形成される。さらに、筒部4aの図1中下端外周からは鍔4fが延設されるとともに、底部4bの軸芯部には、凹部4cに連なる孔4gが設けられ、この凹部4cと孔4gとでピストンナット4の底部4bを貫通する底部通路17bが形成され、この底部通路17bでピストンナット4の内外が連通されている。
なお、この底部通路17bは、後述する圧力制御弁20を設ける都合上、ピストンナット4の底部4bを貫通するように形成されているが、同じく後述するパイロット通路18とピストンロッド5に設けた軸通路17aとを連絡する役割を果たせばよいので、必ずしも、ピストンナット4の内外を連通するように形成されずともよい。
また、鍔4fの外周の形状は、ピストンナット4をピストンロッド5の先端5aに設けた螺子部5fに螺着する際におけるピストンナット4にレンチ等の係合が可能なように、円形以外の形状とされている。
さらに、大径外周部を形成する底部4bには、段部4eから底部4bを貫通してピストンナット4の内外を連通するパイロット通路18が形成され、このパイロット通路18は、ピストンナット4内を通じて上記底部通路17bに連通される。
また、ピストンナット4の筒部4aの側部には、ピストンナット4の内外を連通する開口4hが設けられ、この開口4h内周には、オリフィス31aを備えたオリフィス部材31が螺着され、ピストンナット4内は、オリフィス31aを介して他方室42内に連通されている。したがって、また、パイロット通路18は、底部通路17bの他、上記オリフィス31aを介して他方室42にも連通されている。なお、オリフィス部材31にも六角レンチの係合が可能なように六角形の孔31bが設けられており、この孔31bとオリフィス31aとでピストンナット4の内外が連通するようになっている。
そして、ピストンナット4をピストンロッド5の螺子部5fに螺着すると、ピストンロッド5に設けた軸通路17aとピストンナット4の底部4bに設けた底部通路17bとが連通されて、上記軸通路17aとパイロット通路18とが連通される。したがって、連通路17は、上記した軸通路17aと底部通路17bとパイロット通路18とで形成されている。
さらに、ピストンナット4内には、圧力室16内の圧力を制御する圧力制御弁20が設けられている。詳しくは、圧力制御弁20は、底部通路17bの一部を形成する孔4gの開口縁で形成される環状弁座21と、ピストンナット4内に収容されて環状弁座21に離着座するポペット型の弁体22と、ピストンナット4の開口端部を閉塞するキャップ23と、弁体22とキャップ23との間に介装されて弁体22を環状弁座21へ向けて附勢するバネ24とを備えて構成されている。
そして、キャップ23は、ピストンナット4の筒部4aの内周に螺着してピストンナット4の開口部を閉塞する環状のキャップ本体23aと、キャップ本体23aの弁体22側となる図1中上端から立ち上がる筒体23bを備え、この筒体23bは、弁体22の背面側となる図1中下面側から開口する穴22a内に摺動自在に挿入されている。
また、キャップ本体23aの内周側には、オリフィス32aを備えたオリフィス部材32が螺着され、筒体23b内は、オリフィス32aを介して他方室42内に連通されている。したがって、弁体22の背面に形成した他方室側受圧面には穴22aの横断面の面積を受圧面積として他方室42の圧力が作用するようになっている。なお、このオリフィス部材31にあっても、オリフィス部材30,31と同様に、六角レンチを使用して当該オリフィス部材32をキャップ本体23aに螺着することが可能なように、六角形の孔32bが設けられており、この孔32bとオリフィス32aとで筒体23b内が他方室42へ連通するようになっている。さらに、キャップ本体23aの内周であって図1中下端側も断面が六角形状とされ、六角レンチの係合が可能なようになっている。
さらに、弁体22は、ピストンナット4の筒部4aの内周に摺接する円盤部22bと、円盤部22bの正面側となる図1中上面側に環状弁座21に離着座する弁頭22cと、円盤部22bの背面側となる図1中下面側から垂下されるガイド22dとを備えている。
さらに、弁体22の正面側に一方室41の圧力を作用させる正面側受圧面が形成され、弁体22の背面側には前記した他方室側受圧面に加えて、圧力室16内の圧力を作用させる圧力室側受圧面が形成されている。
そして、上記圧力室側受圧面の受圧面積を上記他方室側受圧面の受圧面積を差し引いた分上記正面側受圧面の受圧面積より小さくさせている。
また、ガイド22dの図1中下面側から穴22aが開口し、この穴22a内に挿入された筒体23bの外周に弁体22が摺動自在に挿入されている。
なお、弁体22のガイド22dは、その外周側に配置されるバネ24の上端側が弁体22に対して軸ぶれすることを防止する機能を発揮し、また、キャップ23の筒体23bの図1中下端外周が拡径されて、この拡径部分によってバネ24の下端側がキャップ23に対して軸ぶれすることをも防止している。
また、弁体22の円盤部22bの外周はピストンナット4の筒部4aの内周に摺接しており、さらに、弁体22は、キャップ23の筒体23bによって調芯されるので、弁体22は、ピストンナット4に対して軸ぶれすることなく、スムーズに環状弁座21から進退することが可能なようになっている。
そして、上記円盤部22bには、その正面側と背面側とを連通する通孔22eが設けられており、円盤部22bの背面側における圧力室側受圧面にも、正面側と同様に、圧力制御弁20で減圧された圧力が作用するようになっており、弁体22の開弁速度が急にならないように配慮され、円盤部22bの圧力室側受圧面の受圧面積は、円盤部22bの背面側の面積から穴22aの横断面の面積を引いた面積となり、また、この円盤部22bの正面側受圧面および圧力室側受圧面に作用する圧力は、パイロット通路18を介して圧力室16にも作用する。
すなわち、この実施の形態における圧力制御弁20は、直動型のポペット弁とされており、この圧力制御弁20が連通路17、本実施の形態において具体的には、底部通路17bを開放しない場合、すなわち、弁体22が環状弁座21に着座した状態では、パイロット通路18には、一方室41内の圧力が導かれることが無いようになっている。
そして、この圧力制御弁20は、一方室41内の圧力が所定の圧力となる場合に、当該圧力が作用して弁体22が環状弁座21から後退して離座して底部通路17bを開放すると、パイロット通路18に一方室41内の圧力を減圧して導き、圧力室16内の圧力を制御することができるようになっている。
この弁体22が環状弁座21から離座する圧力制御弁20の開弁圧は、ピストン1がシリンダ40に対して図1中上方側に移動する場合のピストン速度が高速領域に達するときに生じる一方室41内の圧力に設定されている。
つづき、上記ピストンロッド5の先端5aは、圧側のリーフバルブ100、間座101、バルブストッパ102とともにピストン1の挿通孔1bに挿入される。そして、ピストン1の図1中下方からピストンナット4をこのピストンロッド5の先端5aに設けた螺子部5fに螺着することによって、ピストン1がピストンロッド5の段部5bとピストンナット4の上端とで挟持されピストンロッド5に固定される。
そして、ピストン1の底部1aには、上記ピストンナット4のソケット4dに摺接するリーフバルブ10より小径であって環状の間座7が複数積層され、この間座7の下方からソケット4dに摺接するリーフバルブ10が積層され、さらに、このリーフバルブ10の下方からリーフバルブ10より小径であってソケット4dに摺接する環状の間座8が複数積層されるとともに、またさらに、この間座8の下方からソケット4dおよび底部4bの外周に摺接するバルブ抑え部材11が積層されている。
リーフバルブ10は、環状に形成された板を複数枚積層して積層リーフバルブとして構成されており、この図1中上面を弁座1cに当接させて、ピストン1のポート2を閉塞することができるようになっている。さらに、詳しくは図示しないが、弁座1cに着座するリーフの外周に設けた切欠あるいは弁座1cに打刻されて形成される周知のオリフィスが設けられている。なお、この実施の形態においては、リーフバルブ10は、積層リーフバルブとして構成されているが、上記環状の板の枚数は、本バルブ構造で実現する減衰特性(ピストン速度に対する減衰力の関係)によって任意とされてよく、緩衝器Dに発生させる減衰特性によって複数枚とされても一枚のみでも差し支えなく、また、緩衝器Dに発生させ減衰特性によって各リーフの外径を異なるように設定することができる。
なお、ピストン1の底部1aに設けた挿通孔1bにおける下端開口部が拡径され拡径部1eが設けられて段部が形成され、この段部に筒部4aにおける小径外周部4dの図1中上端の挿入が可能なようになっている。
また、上述のように、ピストン1を有底筒状の形状とすることによって、リーフバルブ等のバルブ構造を構成する部材をピストン1内に収納することが可能となって、ピストン1の図1中上端からピストンナット4の図1中下端までの長さを短くすることができ、ピストン部を小型化することができる。
戻って、図1中一番最下方に積層されるバルブ抑え部材11は、筒状であって、内周に段部11aが形成されて図1中上方側の小径内周部11bと下方側の大径内周部11cとを備えるとともに、図1中上端外周にリーフバルブ10の外径より大きな内径を持つとともにピストン1側に突出するように設けられた環状部12とを備えて構成されている。
このバルブ抑え部材11は、その小径内周部11bをピストンナット4のソケット4dの外周に、その大径内周部11cをピストンナット4の底部4bの外周にそれぞれ摺接させて、ピストンナット4の外周に摺動自在に嵌合されており、バルブ抑え部材11の段部11aとガイド部材たるピストンナット4の段部4eとの間の隙間で環状の圧力室16が形成されている。
この圧力室16は、上述のように、上記したパイロット通路18、底部通路17bおよび軸通路17aを介して一方室41内に連通されている。
また、上記バルブ抑え部材11の図1中下端とピストンナット4の鍔4fとの間には、附勢手段たるコイルスプリング15が介装され、このコイルスプリング15でバルブ抑え部材11を介して上記リーフバルブ10を弁座1c側に押し付けている。
すなわち、コイルスプリング15の附勢力を上記バルブ抑え部材11を介してリーフバルブ10の内周側に作用させて、コイルスプリング15でポート2を閉塞する方向にリーフバルブ10を附勢している。
したがって、リーフバルブ10は、ピストン1が図1中上方に移動して、一方室41内の圧力と他方室42内の圧力との差が大きくなると、上記附勢力に抗してコイルスプリング15を圧縮してリーフバルブ10の全体がピストン1から軸方向に後退、つまり、図1中下方にリフトするようになっている。
なお、ピストン1の底部1aから弁座1cの下端までの軸方向長さよりも、間座7全体の軸方向の厚みを短く設定してあり、内周側に附勢力が作用しているリーフバルブ10に初期撓みを与えている。
この初期撓みの撓み量の設定によって、リーフバルブ10が弁座1cから離れてポート2を開放する時の開弁圧を調節することができ、この初期撓みの撓み量は、間座7の全体の厚みで変更可能であるとともに、緩衝器Dが適用される車両に最適となるように設定されている。なお、ピストン1の底部1aから弁座1cの下端までの軸方向長さによっては、間座7を省略することも可能である。
さらに、上記したところでは、附勢手段をコイルスプリング15としているが、リーフバルブ10に所定の附勢力を作用させればよいので、これを例えば、皿バネやリーフスプリングとしたり、ゴム等の弾性体としたりしてもよい。
つづいて、バルブ構造の作用について説明すると、上述したように、ピストン1がシリンダ40に対して図1中上方側に移動すると、一方室41内の圧力が高まり、一方室41内の作動油はポート2を通過して他方室42内に移動しようとする。
そして、ピストン速度が低速領域にある場合、作動油は、ピストン速度が極低速のうちは、上述のリーフバルブ10の弁座1cに着座するリーフの外周に設けた切欠あるいは弁座1cに打刻によって形成されるオリフィスを通過し、その後の速度の上昇に伴って、リーフバルブ10の外周を撓ませるが、リーフバルブ10をコイルスプリング15の附勢力に抗してピストン1から後退させてリフトさせることができず、リーフバルブ10はコイルスプリング15によって附勢されてポート2を閉塞するように押し付けられて間座8の外周縁を支点として撓むのみとなる。したがって、このときの減衰特性(ピストン速度に対する減衰力の関係)は、図2中実線で示すが如くとなり、この低速領域では、減衰係数は比較的大きいものとなる。
なお、この場合、ピストン速度が低速領域にあり、一方室41内の圧力は圧力制御弁20の開弁圧に達しないので、連通路17が圧力制御弁20よって閉塞されたままとなり、圧力室16には、一方室41内の圧力が作用しないので、上記圧力室16内の圧力によってはバルブ抑え部材11をピストン1側に向けて附勢しない状態になっている。
他方、ピストン1の速度が中速領域に達して、一方室41内の圧力と他方室42内の圧力との差が大きくとなると、ポート2を通過する作動油のリーフバルブ10を図1中下方へ押し下げる力が大きくなる。しかしながら、この場合にあっても、圧力制御弁20は開弁しないので、圧力室16内には一方室41内の圧力は作用しない。
したがって、ポート2を通過する作動油のリーフバルブ10を図1中下方へ押し下げる力がコイルスプリング15の附勢力に打ち勝って、リーフバルブ10の全体をピストン1から軸方向に後退させるようになって、リーフバルブ10を図1中下方へ移動させることになる。
なお、上記バルブ抑え部材11にあっては、リーフバルブ10が弁座1cから離座してポート2が開放されて一方室41からポート2を通過してきた作動油の流れ方向を環状部12によって強制的にピストン1側へ向けることができるようになっており、環状部12によって作動油の動圧をバルブ抑え部材11に積極的に作用させることができる。つまり、環状部12の上記作用によって、バルブ抑え部材11を図1中下方に押し下げる力が従来緩衝器のそれに比較して大きくなる。
また、圧力室16は、バルブ抑え部材11がリーフバルブ10とともに後退することから、圧縮されることになるが、連通路17がオリフィス31aを介して他方室42に連通されている、具体的には、圧力室16がパイロット通路18とオリフィス31aを介して直接に他方室42に連通されているので、上記バルブ抑え部材11がピストンナット4に対して後退しても、圧力室16内の圧力はさほど上昇せず、バルブ抑え部材11にその後退を妨げる力を作用させることがない。
すなわち、ピストン1の速度が中速領域に達した状態では、一方室41内の圧力と他方室42内の圧力との差が大きくなり、作動油のリーフバルブ10を図1中下方へ押し下げる力が大きくなるので、該力がコイルスプリング15の附勢力に打ち勝って、リーフバルブ10の全体をピストン1から軸方向に後退させる、すなわち、図1中下方へ移動させてリーフバルブ10をリフトさせることになり、弁座1cとリーフバルブ10との間の隙間は、ピストン速度の上昇とともに大きくなる。
したがって、ピストン速度が中速領域にあるときの減衰特性は、図2中実線で示すが如くとなり、ピストン速度の増加に対して比例はするものの低速領域より減衰係数は低くなり、減衰特性の傾きが小さくなる。
上述したところから明らかなように、本実施の形態のバルブ構造にあっては、従来の緩衝器のバルブ構造に比較して、環状部12の上記作用によって、リーフバルブ10の全体をピストン1から軸方向に後退させやすくなっているので、コイルスプリング15のバネ定数を小さく設定することなしに、ピストン速度が中高速領域にあるときの減衰係数を従来の緩衝器のバルブ構造に比較して小さくすることが可能である。
また、コイルスプリング15の初期荷重、すなわち、リーフバルブ10がピストン1に当接した状態におけるコイルスプリング15の附勢力についても従来の緩衝器のバルブ構造におけるスプリングSと同様に設定しておくことによって、ピストン速度が低速領域における減衰係数を大きくしながら、ピストン速度が中高速領域における減衰係数を従来の緩衝器のバルブ構造に比較して小さくすることが可能であるので、車両における乗り心地を向上することができるのである。
さらに、コイルスプリング15のバネ定数を小さくすることなしに、ピストン速度が中高速領域にあるときの減衰係数を従来の緩衝器のバルブ構造に比較して小さくすることが可能であるので、バルブ構造を含んだピストン部の軸方向長さを従来の緩衝器のバルブ構造と同等に維持することができ、バルブ構造を構成する各部を含んだ全体のピストン部も長くなってしまうことも無く、緩衝器Dの伸縮可能範囲であるストローク長が短くなる不具合がなく、車両への搭載性が悪化することがない。
さらに、コイルスプリング15の線条径の小径化を招くことが無いので、強度面の不安も無く、緩衝器Dの車両への搭載性および乗心地を満足させつつ、緩衝器Dのバルブ構造および緩衝器Dの信頼性および実用性が向上することができる。なお、附勢手段をコイルスプリング以外のもの、たとえば、筒状のゴム等の弾性体とする場合にも、バネ定数を小さくするには、断面積を小さくすることから、強度的に低下する傾向となるが、本発明では、附勢手段のバネ定数を小さくする必要が無いので、附勢手段の強度低下を招くようなことが無い。
さらに、環状部12の内周面12aを先端12bが先細りとなるように傾斜させて、弁座1cと環状部12との間の隙間が小さくなるように設定しているので、環状部12と弁座1cとの隙間による絞り効果を期待することができ、この絞り効果によって、バルブ抑え部材11とピストン1の底部1aおよび弁座1cとで囲まれる空間内の圧力を高めることができる。
したがって、この場合にも、当該空間内の圧力上昇により大きな力をバルブ抑え部11に作用させることができるので、この点でも、より小さな作動油圧力でバルブ抑え部材11を後退させ易くなるので、ピストン速度が中高速領域にある場合の減衰係数を小さくすることができ、より一層車両における乗心地を向上させることができる。
つづいて、ピストン速度が高速領域に達すると、作動油のリーフバルブ10を図1中下方へ押し下げる力はさらに大きくなる。これに対し、一方室41内の圧力も大きくなって、連通路17を閉塞していた圧力制御弁20が連通路17を開放して、この連通路17を介して圧力室16内に一方室41内の圧力が導かれる。なお、圧力室16と他方室42とはオリフィス31aを介して連通されているので、圧力室16内の圧力が他方室42に逃げてしまって、圧力室16内の圧力上昇が不能となってしまう事態が防止されている。
したがって、圧力室16内の圧力は上昇し、この圧力室16内の圧力は、バルブ抑え部材11にピストン1側に押し付ける方向の推力を与えることになり、バルブ抑え部材11のピストン1からの後退を妨げるようになる。
したがって、ピストン速度が高速領域にある場合、リーフバルブ10の後退を妨げる力は、コイルスプリング15の附勢力に圧力室16内の圧力による推力が付加されることになって、ピストン速度が中側領域にある場合におけるリーフバルブ10の後退を妨げる力より大きくなり、その分リーフバルブ10の後退が抑制される。
すなわち、ピストン速度が高速領域にある場合におけるリーフバルブ10のピストン1からの後退量のピストン速度に対する増加割合は、ピストン速度が中速領域にある場合におけるリーフバルブ10のピストン1からの後退量のピストン速度に対する増加割合より小さくなる。
つまり、ピストン速度が高速領域にあるときは、ピストン速度が高くなるにつれて弁座1cとリーフバルブ10との間の隙間が大きくなりづらくなることになり、ピストン速度が高速領域にあるときの減衰特性は、図2中実線で示すように、中速領域より減衰係数は大きくなるので、傾きが大きくなる。
そして、ピストン速度が大きくなるにつれて、ピストン速度の上昇度合いに対する圧力室16内の圧力上昇の度合いは大きくなるので、圧力室16内の圧力がバルブ抑え部材11に与えるリーフバルブ10をピストン1側に押し付ける推力も大きくなって、ますます、ピストン速度の増加に対するリーフバルブ10の後退量の増加を抑制するから、上記減衰係数の傾きはピストン速度の上昇に対して大きくなる傾向を示す。
したがって、本実施の形態における緩衝器Dのバルブ構造にあっては、ピストン速度が高速領域に達すると、ピストン速度が中速領域にある場合よりも減衰係数を大きくすることができ、ピストン速度が高速領域に達する場合にあっても減衰力が不足することがなく、振動抑制が充分に行われ、車両における乗り心地を向上することができる。
そして、圧力制御弁20における弁体22の背面側には減圧された一方室41側の圧力以外に、他方室42の圧力が作用するようになっているので、一方室41内の圧力上昇に対して圧力室16内の圧力上昇度合いが大きくなるので、ピストン速度が高速領域にあるときの減衰係数の傾きを大きくすることが可能となり、減衰特性の設定の自由度が向上することになる。詳しくは、圧力制御弁20の弁体22の円盤部22cの背面側に他方室42内の圧力が作用せずに、弁体22の円盤部22cの正面側に作用する減圧された一方室41側の圧力と同じ圧力のみが円盤部22cの背面側に作用する場合には、一方室41内の圧力をP1とし、圧力制御弁で減圧された一方室41側の圧力(圧力室16内の圧力)をP2とし、環状弁座21の内縁で形成される面積をAとし、弁体22の釣り合い条件からA・(P1−P2)≒const(一定)となり、P1−P2で演算される差圧は略一定となり、圧力室16内の圧力は、一方室41の圧力上昇分しか上昇しないことになる。これに対して、本実施の形態における圧力制御弁20にあっては、圧力制御弁20の弁体22の円盤部22cの背面側における他方室側受圧面に他方室42内の圧力が作用することから、一方室41内の圧力をP1とし、圧力制御弁で減圧された一方室41側の圧力(圧力室16内の圧力)をP2とし、環状弁座21の内縁で形成される面積をAとし、他方室42内の圧力が作用する弁体22の他方室側受圧面の受圧面積(穴22aの断面積)をaとすると、釣り合い条件からP1−P2・(1−a/A)≒const(一定)となり、P1−P2・(1−a/A)で演算される値は略一定となる。
すなわち、本実施の形態における圧力制御弁20にあっては、圧力室16内の圧力は、一方室41の圧力上昇分に対して、A/(A−a)倍上昇することになる。なお、バネ24の附勢力が変位量によって変化するので、P1−P2の値やP1−P2・(1−a/A)の値は若干変化することになる。
このように、本実施の形態におけるバルブ構造にあっては、ピストン速度が高速領域に達すると、ピストン速度が中速領域にある場合よりも減衰係数を大きくすることができ、かつ、ピストン速度が高速領域にあるときの減衰係数の傾きを大きく設定することが可能となる。
また、一方室41の圧力上昇に対して圧力室16内の圧力上昇度合いを大きくすることができるので、圧力室16の圧力を受けるバルブ抑え部材11の受圧面積を大きくすることなく、バルブ抑え部材11に与える推力を大きくすることが可能となるので、バルブ抑え部材11やピストンナット4の外径を小型化することが可能となる。
さらに、緩衝器Dが最伸長するような振幅が大きく、かつ、ピストン速度が高速領域に達するような状況下にあっては、減衰係数を大きくして緩衝器Dの発生減衰力を大きくすることができるので、ピストン速度を速やかに低減することができ、最伸長時の衝撃を緩和することができる。なお、ピストン速度が非常に高くなって圧力室16が最圧縮される状態となる場合、段部4cと段部11aが当接することによって、バルブ抑え部材11のピストンナット4に対する図1中下方への移動を規制するようになっており、緩衝器Dに大きな減衰力を発生させて最伸長時の衝撃を緩和することを確実なものとしている。
なお、減衰係数が大きくなるピストン速度を中速領域と高速領域との境に設定することで、ピストン速度が中速領域にあるときには、圧力室16内の圧力が大きくならないので、バルブ抑え部材11にリーフバルブ10の後退を妨げる推力を作用させずに、減衰係数を比較的小さく保っておくことができるので、減衰力が大きくなり過ぎることがなく、車両における乗り心地を確保することができる。
さらに、上述のように本実施の形態におけるバルブ構造にあっては、従来のバルブ構造に対して、軸部材のガイド部材となるピストンナット4の外周に設けた段部4cとバルブ抑え部材11の内周側に設けた段部11aとの間に圧力室16を設け、軸部材の軸となるピストンロッド5に連通路17を構成する軸通路17aを設け、軸部材のガイド部材となるピストンナット4内に圧力制御弁20と連通路17を構成する底部通路17b、パイロット通路18を設けるようにしたので、その他の構成は、従来緩衝器におけるバルブ構造の各部と略同様の構成としておけばよいことになり、部品の互換性も高くなるという製造上の利点がある。
さらに、軸部材のガイド部材となるピストンナット4の外周に設けた段部4cとバルブ抑え部材11の内周側に設けた段部11aとの間に圧力室16を設けたので、圧力室16の形成が容易であり、ピストンナット4にこれの外周に摺接するリーフバルブ10、間座7,8、バルブ抑え部材11およびコイルスプリング15を組みつけてアッセンブリ化しておいて、ピストンロッド5に組み付けることが可能であるので、組み付け加工が複雑となることが無く便利である。
また、圧力制御弁20もガイド部材たるピストンナット4内に収容されて一体とされているので、圧力制御弁20もアッセンブリ化しておくことが可能であるから、この点においても組み付け加工が複雑となることが無く便利である。
さらに、弁体22の背面側に設けた穴22aに摺動自在に挿入される筒体23bを介して他方室42内の圧力を弁体22の背面側に作用させるようにしたので、弁体22の調心とぶれを防止しつつ弁体22に他方室42内の圧力を作用させることが可能である。
また、オリフィス30a,32aは、軸通路17aおよび底部通路17b内の圧力上昇が急激となって、圧力制御弁20の開閉動作が急激とならないようにするために設けられており、これによって減衰力が急激に変化することが防止され、車両における乗心地が向上する。そして、筒体23bを介して他方室42内の圧力を弁体22の背面側に作用させているので、オリフィス32aの設置が容易となる。
なお、オリフィス30a,32aは、上記の如く機能するが、これらオリフィス30a,32aを省略するようにしても差し支えない。
つづいて、他の実施の形態における緩衝器D’のバルブ構造について説明する。このバルブ構造においては、図3に示すように、一実施の形態における圧力制御弁の構成を変更したものである。
この圧力制御弁50は、ガイド部材たるピストンナット4の底部4bに設けられた環状窓50aと、環状窓50aと底部4bの図3中上面とを連通するポート50bとで構成される底部通路51を板状弁体たるリーフバルブ52で開閉するようにして構成されている。また、底部4bの中心部には螺子孔50cが設けてあり、この螺子孔50cに螺着されるロッド53で底部4bに積層されるリーフバルブ52と、間座54と、ピストンナット4の筒部4aの開口を閉塞するキャップ55とがピストンナット4の底部4bに固定される。
そして、キャップ55は、リーフバルブ52側を向く端部となる図3中上端に形成される環状溝55aと、当該上端の環状溝55aより内側と図3中下端とを連通する通孔55bとを備え、さらに、この環状溝55a内には、弾性体で形成される環状部材56が挿入されている。
この環状部材56は、その上端がリーフバルブ52の背面側となる図3中下面に当接し、リーフバルブ52とキャップ55との間に介装されており、環状部材56の内周側には、通孔55bを介して他方室42内の圧力が作用し、したがって、リーフバルブ52の背面側に形成した他方室側受圧面となる図3中下面には他方室42内の圧力が作用し、リーフバルブ52の背面に一方室41の圧力が作用する面積を環状部材56の外径面積分だけ減じることが可能となる。
さらに、リーフバルブ52は、軸通路17aおよび底部通路51を介して一方室41内の圧力を受けて撓む場合、環状部材56は弾性を備えているので、リーフバルブ52の背面に他方室42内の圧力を作用させつつ、その撓みを許容することが可能となっている。
このように圧力制御弁50を構成することによって、ポペット型弁体を利用するものより圧力制御弁50を小型化することができ、これにより、緩衝器D’のピストン部を小型化することが可能となり、また、リーフバルブ52の使用によりバルブ構造が低コストとなる。なお、圧力制御弁50の上下方向長さが一実施の形態の圧力制御弁20に比較して短くすることが可能となるので、バルブ抑え部材11の外周に鍔13を設け、当該鍔13とピストンナット4の鍔4fとの間にバネ15を介装するようにしている。
また、パイロット通路18は、ピストンナット4の筒部4aの側部に設けた横孔57と、ピストンナット4の段部4eから開口して横孔57に連通される縦穴58とで構成され、横孔57の筒部4aの外周側の開口端には上記したオリフィス31aと同様の機能を発揮するオリフィス59が設けられている。
したがって、この他の実施の形態におけるバルブ構造にあっても、リーフバルブ52が底部通路51を開放する。すなわち、圧力制御弁50が開いて一方室41と環状の圧力室16とを連通する状態にある場合、ピストン速度の上昇度合いに対して圧力室16内の圧力の上昇度合いが大きくなり、圧力室16内の圧力によってバルブ抑え部材11に与える推力もこれに応じてより一層大きくなるので、上記した一実施の形態におけるバルブ構造と同様の作用効果を奏し、ピストン速度が高速領域に達すると、ピストン速度が中速領域にある場合よりも減衰係数を大きくすることができ、ピストン速度が高速領域に達する場合にあっても減衰力が不足することがなく、振動抑制が充分に行われ、車両における乗り心地を向上することができる。
そして、また、リーフバルブ52の背面となる図3中下面には、環状部材56の内周側に作用した他方室42内の圧力が作用していることから、上述した一実施の形態のバルブ構造と同様に、ピストン速度が中速領域にある場合よりも減衰係数を大きくすることができ、ピストン速度が高速領域に達する場合にあっても減衰力が不足することがなく、振動抑制が充分に行われ、車両における乗り心地を向上することができ、さらに、一方室41内の圧力上昇に対して圧力室16内の圧力上昇度合いを大きく設定することができ、ピストン速度が高速領域となる場合の減衰係数の傾きを大きくすることが可能となり、減衰特性の設定の自由度が向上することになる。またさらに、バルブ抑え部材11やピストンナット4の外径を小型化することが可能となる。
最後に、他の実施の形態の変形例における緩衝器D’のバルブ構造について説明する。他の実施の形態の変形例における緩衝器D’のバルブ構造は、図4に示すように、他の実施の形態における圧力制御弁の構成を変更したものである。
この圧力制御弁は、他の実施の形態における圧力制御弁50と同様に、環状窓50aとポート50bとで構成される底部通路51を開閉するリーフバルブ52を備えて構成されている。
そして、このリーフバルブ52の背面となる図4中下面には、間座が積層されるとともに、筒部材60およびピストンナット4の筒部4aの開口部を閉塞するキャップ61が積層され、これら各部材は、底部4bの中心部に螺着されるロッド53で底部4bに固定されている。
また、筒部材60は、図4中上端側が大径とされて段部60aが形成され、筒部材60の外周側には環状部材62が摺動自在に嵌合されている。この環状部材62は、底部に開口62aを備えて有底筒状に形成され、開口62aの内周を筒部材60の小径となる外周に、筒部62bの内周を筒部材60の大径となる外周にそれぞれ摺接させ、また、筒部62bの図3中上端は、リーフバルブ52の背面となる図4中下面に当接させてある。
さらに、筒部材60と環状部材62との間に形成される空間63および環状部材61の内周側であって筒部材60とリーフバルブ52との間の空間64は、当該筒部材60に設けた孔60b、ロッド53の外周に設けた縦溝53a、およびキャップ61に設けた孔61aを介して他方室42に連通され、リーフバルブ52の背面側に形成した他方室側受圧面となる図4中下面には他方室42内の圧力が作用している。
そして、リーフバルブ52は、軸通路17aおよび底部通路51を介して一方室41内の圧力を受けて撓む場合、環状部材62は筒部材60の外周に摺動自在に嵌合されロッド53に対して移動自在とされその撓みに応じて移動可能となっているので、リーフバルブ52の背面に他方室42内の圧力を作用させつつ、その撓みを許容することが可能となっている。
なお、環状部材62は、一方室41内の圧力が他方室42内の圧力より高い場合、図4中下端側背面を受圧面積として減圧後の一方室41内の圧力を受け、環状部材62の内方側は他方室42の低い圧力が受けることから、環状部材62はリーフバルブ52の背面から離脱してしまうことがないので、確実にリーフバルブ52の背面に他方室42内の圧力を作用させる。
したがって、リーフバルブ52の背面に環状部材62の内方を介して他方室42内の圧力を作用させることによって、筒部材60の小径部の横断面積に相当する面積分だけ一方室41の圧力が作用する面積を減じることが可能となる。つまり、リーフバルブ52の背面には一方室41の圧力が環状部材62の環状の底部の面積を受圧面積として作用することになる。
このように圧力制御弁60を構成することによって、ポペット型弁体を利用するものより圧力制御弁60を小型化することができ、これにより、緩衝器D’のピストン部を小型化することが可能となり、また、リーフバルブ52の使用によりバルブ構造が低コストとなる。
したがって、この他の実施の形態におけるバルブ構造にあっても、リーフバルブ52が底部通路51を開放する、すなわち、圧力制御弁60が開いてく一方室41と環状の圧力室16とを連通する状態にある場合、ピストン速度の上昇度合いに対して圧力室16内の圧力の上昇度合いが大きくなり、圧力室16内の圧力によってバルブ抑え部材11に与える推力もこれに応じてより一層大きくなるので、上記した一実施の形態におけるバルブ構造と同様の作用効果を奏し、ピストン速度が高速領域に達すると、ピストン速度が中速領域にある場合よりも減衰係数を大きくすることができ、ピストン速度が高速領域に達する場合にあっても減衰力が不足することがなく、振動抑制が充分に行われ、車両における乗り心地を向上することができる。
そして、また、リーフバルブ52の背面となる図4中下面には、環状部材62の内周側に作用した他方室42内の圧力が作用していることから、上述した一実施の形態のバルブ構造と同様に、ピストン速度が中速領域にある場合よりも減衰係数を大きくすることができ、ピストン速度が高速領域に達する場合にあっても減衰力が不足することがなく、振動抑制が充分に行われ、車両における乗り心地を向上することができ、さらに、一方室41内の圧力上昇に対して圧力室16内の圧力上昇度合いを大きく設定することができ、ピストン速度が高速領域となる場合の減衰係数の傾きを大きくすることが可能となり、減衰特性の設定の自由度が向上することになる。またさらに、バルブ抑え部材11やピストンナット4の外径を小型化することが可能となる。
また、上記したところでは、圧力室16は、上記の如くに区画されているが、この圧力室16は上述の作用効果を奏するように設けられればよいので、感情に形成されなくともよい。
以上で緩衝器のバルブ構造の各実施の形態についての説明を終えるが、本発明のバルブ構造が緩衝器のピストン部の圧側減衰バルブに具現化することも、また、ベースバルブ部に具現化することも可能であり、およそ減衰力を発生する減衰力発生要素として機能する緩衝器のバルブに適用することが可能なことは勿論である。すなわち、バルブ構造がベースバルブ部に具現化される場合には、一方室をピストン側室あるいはリザーバ室の一方とし、他方室をピストン側室あるいはリザーバ室の他方とすればよい。また、圧側減衰バルブに具現化する場合には、原理的には図1中のバルブ構造の天地を逆とするような構成とし、圧力制御弁については、ピストンロッド5内に設けるようにすればよい。
なお、本発明の範囲は図示されまたは説明された詳細そのものには限定されない。