本発明の二軸配向白色ポリプロピレンフィルム(以下、単に白色フィルムと略称する場合がある)のコア層(A層)は、実質的に無核のボイドを有する。ここで、“無核のボイド”とは、延伸などによりボイドの形成を誘発するような樹脂、粒子などに代表される、孔形成のための核(ボイド形成剤)が、その内部に観察されないボイドと定義される。
このような無核のボイドは、下記の通り、フィルム断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した際の断面像において、ボイド内に何も含有していない。一方、内部に核を有する、即ち核(ボイド形成剤)により形成された、ボイドは、そのボイド内に球状、または繊維状、または不定形状、またはその他の形状をした核が観察される。
本発明では、“実質的に無核のボイドを有する”ことを、下記測定法(1)に示す通り、特定条件で調整したフィルム断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で特定条件にて観察した際に、1000μm2当たりの全ボイド数と内部に核を有するボイド数を計測し、内部に核を有するボイドが全ボイドに占める比率(RSEM;百分率)が5%以下である場合と定義し、上記以外の場合を実質的に無核のボイドを有さないと定義する。この際、本来核を有するボイドでも、上記手法で無核のボイドとして検出される場合もあるが、上記手法で算出した内部に核を有するボイドの比率が上記範囲であれば、本発明の目的が達成される。RSEMは、4%以下であることがより好ましく、3%以下であることがさらに好ましい。
また、無核のボイドのもう一つの判定基準としては、下記の通り、フィルムの超薄切片を透過型電子顕微鏡(TEM)を用いた手法が挙げられる。無核のボイドは、TEMを用いて特定条件で観察した際に、ボイドの内部に何も観察されない。これに対して、本発明において無核のボイドに該当しないボイドは、上記TEM観察像において、ボイドの内部に球状、または繊維状、または不定形状、またはその他の形状をした核(ボイド形成剤)が観察される。
本発明では、“無核のボイドを有する”ことは、下記測定法(1)に示す通り、当該TEM観察像において、全観察視野面積(フィルムの全面積)に占める全ての核の面積の比率(RTEM;百分率)が5%以下である場合と定義し、この場合に当該微多孔フィルムが無核のボイドを有するものとする。この際、本来核を有するボイドでも、上記手法で無核のボイドとして検出される場合もあり得るが、本手法で算出した当該比率RTEMが上記範囲であれば、本発明の目的が達成されるのである。RTEMは、4%以下であることがより好ましく、3%以下であることがさらに好ましい。
本発明では、RSEM、RTEMのいずれかが上記範囲を満たせば、上記の通り、本発明の目的が達成される。
本発明の白色フィルムは、A層に実質的に無核のボイドを有することにより、ボイド形成剤として非相溶性樹脂や無機粒子もしくは有機粒子を用い、実質的に無核のボイドを有さない場合に比較して、ボイド形成剤の分散状態(分散サイズ、凝集の有無など)に起因する不均一で粗大なボイドが少なく、均一かつ緻密なボイドを形成できる。また、粗大なボイドが少ないと、低比重のフィルムとしても折れしわ耐性に優れ、さらにはボイド形成剤が製膜工程や加工工程でフィルムから脱落し、工程を汚したり、それによりフィルム破れが発生するようなトラブルを未然に防止できる。また、フィルムが劈開しにくい。ここで、フィルムが劈開するとは、フィルムがその表面におおよそ平行に複数枚以上に裂ける現象をいう。さらには、均一かつ微細なボイドを有することにより、フィルム全体のクッション率を高く、下記に定義するL、a、b値のうち、特にb値をより低く(好ましい範囲に)できる。以上のことから、本発明の白色フィルムを基材として用いた感熱転写記録用受容シートは、上記したボイド形成剤を用い、無核のボイドを有さないフィルムを基材とした場合に比較して、飛躍的に高い感度を実現できる。
A層は、ポリプロピレンからなる。ここで、A層がポリプロピレンからなることは、A層を構成する全ての樹脂がポリプロピレンであることを意味するが、本発明の効果を奏する限り、A層には、例えば、下記に例示するようなポリプロピレン以外の樹脂、添加剤などを含有せしめても構わない。以下、A層を構成する物質全体を、単にA層の樹脂全体と略称する場合がある。
A層を構成するポリプロピレンは、主としてプロピレンの単独重合体からなるが、本発明の目的を損なわない範囲でポリプロピレンと他の不飽和炭化水素の単量体成分が共重合された重合体であってもよいし、プロピレンとプロピレン以外の単量体成分が共重合された重合体がブレンドされてもよいし、プロピレン以外の不飽和炭化水素の単量体成分の(共)重合体がブレンドされてもよい。このような共重合成分やブレンド物を構成する単量体成分として、例えば、エチレン、プロピレン(共重合されたブレンド物の場合)、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチルペンテン−1、3−メチルブテン−1、1−ヘキセン、4−メチルペンテン−1、5−エチルヘキセン−1、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、ビニルシクロヘキセン、スチレン、アリルベンゼン、シクロペンテン、ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、アクリル酸およびそれらの誘導体などが挙げられるが、これらに限定される訳ではない。
本発明の白色フィルムのA層を構成するポリプロピレンは、製膜性向上の観点から、いわゆる高溶融張力ポリプロピレン(High Melt Strength−PP:以下、単にHMS−PPと略称する場合がある)を含有することが好ましい。A層を構成するポリプロピレンが、HMS−PPを含有することにより、含有しない場合に比較して、延伸時の破れが少なく、製膜性に優れる場合がある。また、縦方向に低温・高倍率延伸しても横延伸でフィルムが破れることなく安定に製膜できる場合がある。したがって、含有しない場合に比較して、キャスト工程における金属ドラムの周速が同じでも、縦高倍率延伸によりライン速度を高められることから、単位時間当たりのフィルムの生産量を高められる場合がある。このように、HMS−PPを含有することにより、製膜性を向上できるとともに生産量も高められることから、生産性を著しく高められる場合がある。これは、HMS−PPを含有することにより、未延伸シートの段階から、系内の微結晶を貫く非晶相のタイ分子の絡み合いが促進され、これによりその後の延伸過程で延伸応力が系全体に均一に伝達されるためと推定される。
HMS−PPを得る方法としては、例えば、高分子量成分を多く含むポリプロピレンをブレンドする方法、分岐構造を持つオリゴマーやポリマーをブレンドする方法、特開昭62−121704号公報に記載されているように、ポリプロピレン分子中に長鎖分岐構造を導入する方法、あるいは特許第2869606号公報に記載されているように、長鎖分岐を導入せずに溶融張力と固有粘度、結晶化温度と融点とがそれぞれ特定の関係を満たし、かつ沸騰キシレン抽出残率が特定の範囲にある直鎖状の結晶性ポリプロピレンとする方法などが好ましく用いられる。
これらHMS−PPのうち、本発明の白色フィルムのA層には、溶融押出の安定化効果、生産性の向上効果が大きいことから、主鎖骨格中に長鎖分岐を有するポリプロピレンを用いることが特に好ましい。なお、主鎖骨格中に長鎖分岐を有するポリプロピレンとは、ポリプロピレン主鎖骨格から主鎖同等の長さを有する枝分かれしたポリプロピレン鎖を有するポリプロピレンである。
上記した主鎖骨格中に長鎖分岐を有するポリプロピレンの具体例としては、Basell社製ポリプロピレン(タイプ名:PF−814、PF−633、PF−611、SD−632など)、Borealis社製ポリプロピレン(タイプ名:WB130HMSなど)、Dow社製ポリプロピレン(タイプ名:D114、D201、D206など)などが挙げられる。
上記HMS−PPの添加量は、用いるHMS−PPの性能にもよるが、A層の樹脂全体の全量に対して、1〜20重量%であることが好ましい。HMS−PPの添加量が上記範囲未満であると、製膜性向上の効果が得られない場合がある。HMS−PPの添加量が上記範囲を超えると、それ以上添加しても効果は同等であり、経済性に劣ったり、比重が高くなる場合がある。HMS−PPの添加量は、より好ましくは、1〜15重量%である。
また、特に縦方向に高倍率延伸する場合には、コア層(A層)だけでなく、スキン層(下記B層、C層など)にも上記HMS−PPを含有せしめることが好ましい。これにより、製膜工程において、スキン層がコア層に追従し、フィルム全体がより安定に延伸される(当該業者は、この状態をコア層とスキン層の共延伸性が高い状態という場合がある)場合がある。
本発明の白色フィルムのA層を構成するポリプロピレンのアイソタクチックインデックス(以下、IIと略称する場合がある)は、90〜99.8%であることが好ましい。IIが上記範囲未満であると、フィルムの強度が低下したり、折れしわ耐性が悪化する場合がある。IIが上記範囲を超えると、製膜が不安定になる場合がある。A層のポリプロピレンのIIは、より好ましくは、92〜99.5%である。
本発明の白色フィルムのA層のポリプロピレンのメルトフローレイト(MFR)は1〜20g/10分であることが好ましい。MFRが上記範囲未満であると、220℃前後の低温での溶融押出の際に押出量が変動したり、押出原料の置換に長時間を要する場合がある。MFRが上記範囲を超えると、A層とスキン層(B層)を共押出積層する場合、均一厚みで積層することが難しくなったり、キャスト工程において、口金から押出された溶融ポリマーを金属ドラム上で固化させて未延伸シートを製造する際に、溶融ポリマーの金属ドラム上での着地点が大きく変動するため、未延伸シート中に均一にβ晶を生成させることが難しくなったり、シートが波打つために得られる白色フィルムの厚みムラが大きくなったり、ボイドが不均一になる場合がある。A層のポリプロピレンのMFRは、より好ましくは1〜15g/10分である。
ここで、上記したポリプロピレンの特性値(II、MFRなど)は、製膜前の原料チップを用いて判定することが望ましいが、下記するようなβ晶核剤などの添加剤を含有する場合は、そのまま用いて測定することが好ましい。添加剤などの影響を受けやすい場合は、例外として、もしくは60℃以下の温度のn−ヘプタンで2時間抽出し、添加剤・不純物を除去後、130℃で2時間以上真空乾燥したものをサンプルとして用いて判定することもできる。
また、延伸時(本発明の白色フィルムを逐次二軸延伸により製造する場合には、特に縦延伸時)の延伸応力を低下させ、既存設備の延伸トルク容量内で製造できたり、延伸に伴うボイド形成が促進できる場合があることから、本発明の白色フィルムのA層には、上記したポリプロピレン以外の他のポリマーから選ばれる少なくとも1種を適宜添加しても構わない。ただし、上記した無核のボイドを有するのは勿論のこと、上記の効果が得られず、製膜時の延伸応力が改善(低下)されなかったり、逆に必要以上に高くなったり、粗大なボイドが形成されることによりボイド形状が不均一になる場合は、これら他のポリマーを添加しない方が好ましい場合がある。
上記したポリプロピレン以外の他のポリマー(以下、単に他のポリマーと略称する場合がある)としては、各種ポリオレフィン系樹脂を含むビニルポリマー樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、ポリイミド系樹脂などが挙げられ、特に限定されないが、所謂ポリオレフィン系エラストマー樹脂を添加することにより、上記した延伸応力低下、ボイド形成促進の効果が同時に得られる場合があることから好ましい。
上記ポリオレフィン系エラストマー樹脂としては、特に限定されないが、例えば、メタロセン触媒法による超低密度ポリエチレン(mVLDPE)もしくは直鎖状低密度ポリエチレン(mLLDPE)、エチレン・ブテンラバー、エチレン・プロピレンラバー、プロピレン・ブテンラバー、エチレン酢酸ビニル、エチレン・エタクリレート共重合体、エチレン・メチルメタクリレート共重合体、エチレン・プロピレン−ジエン共重合体、イソプレンゴム、スチレン系共重合体として、スチレン・ブタジエンラバー、水添スチレブタジエンラバー、スチレン・ブチレン・スチレン共重合体、スチレン・エチレン・ブチレン・スチレン共重合体等が挙げられるが、これらに限定される訳ではない。特に、ポリプロピレンにエチレン・プロピレンラバーを混合した、所謂エチレン・プロピレンブロック共重合体(当該業者は、インパクトポリプロピレンポリマーと称する場合もある)では、製膜後のフィルムに大量のゲルが発生する場合があるので、その選択には注意が必要である。
これらポリオレフィン系エラストマー樹脂のうち、本発明の白色フィルムのA層には、溶融押出工程でポリプロピレン中に超微分散し、その後の延伸工程で製膜性が向上し、かつボイド形成が促進され、かつ得られる白色フィルムが無核の孔を有する場合があることから、mVLDPEを用いることが特に好ましい。当該mVLDPEの具体例としては、DuPont Dow Elastomers製“Engage(エンゲージ)”(タイプ名:8411、8452、8100など)などが挙げられる。
これら他のポリマーの添加量は、樹脂により効果が異なるため、特に限定されないが、ポリプロピレン、その他のポリマー、添加剤など含めたA層の樹脂全体の全量に対して、1〜15重量%程度添加することが好ましい。添加量が上記範囲未満であると、実質的な添加効果が得られない場合がある。添加量が上記範囲を超えると、分散不良が起り、得られる白色フィルムにゲル状の突起が形成されたり、実質的に無核のボイドを有さない該白色フィルムを基材として用いた受容シートの感度が低下する場合がある。添加量は、より好ましくは2〜8重量%、さらに好ましくは2〜6重量%である。
本発明の白色フィルムは、A層に無核のボイドを形成するために、A層がβ晶活性を有することが必要である。本発明の白色フィルムのA層は、β晶活性を有することにより、その製造工程において、製膜条件を制御することにより、未延伸シート中にβ晶を生成させ、その後の延伸工程でβ晶をα晶に結晶転移させ、結晶密度差により均一かつ緻密なボイドを形成することが可能となる。
ここで、本発明では、A層がβ晶活性を有していることを、本発明の白色フィルム全体がβ晶活性を有することに対応させて、以下の基準で判定する。即ち、示差走査熱量計(DSC)を用いて、JIS K 7122(1987)に準じて窒素雰囲気下で5mgの白色フィルムを10℃/分の速度で280℃まで昇温させ、その後5分間保持した後に10℃/分の冷却速度で30℃まで冷却し、次いで5分間保持した後に再度10℃/分の速度で昇温した際に得られる熱量曲線に、140〜160℃にβ晶の融解に伴う吸熱ピークが存在し、該吸熱ピークのピーク面積から算出される融解熱量が10mJ/mg以上であれば、該白色フィルムが、(フィルム全体として)β晶活性を有すると定義する。また、以下、最初の昇温で得られる熱量曲線をファーストランの熱量曲線と称し、2回目の昇温で得られる熱量曲線をセカンドランの熱量曲線と称する場合がある。
ここで、チョウら(Cho)ら,“ポリマー”(Polymer),44,p.4053−4059(2003);高橋ら,“成形加工”,15,p.756−762(2003)などに開示されているように、ポリプロピレンのβ晶の生成能はDSCを用いて確認することができる。これらの文献では、上記に近い温度条件下でDSCを用いて熱量曲線を採取し、β晶核剤を含有したポリプロピレンのβ晶活性を確認している。ここで、フィルムが“β晶活性を有する”ことは、ポリプロピレンを結晶化させた際にβ晶が生成しうることを意味する。また、ここでいうβ晶活性の判定は、押出、キャスト、延伸、巻き取り工程後、即ち製膜後のフィルムについて測定を行う。したがって、A層が下記に例示するようなβ晶核剤を含有する場合においても、A層を含むフィルム全体に対してβ晶活性を判定することとなる。
また、上記温度範囲に吸熱ピークが存在するが、β晶の融解に起因するか不明確な場合などは、DSCの結果と併せて、当該サンプルを下記特定条件で溶融結晶化させたサンプルについて、広角X線回折法を用いてβ晶に起因する2θ=16°付近に観測される(300)面の回折ピークが存在することと、下記K値により“β晶活性を有する”と判定してもよい。すなわち、β晶に起因する2θ=16°付近に観測される(300)面の回折ピーク(Hβ1とする)と2θ=14,17,19°付近にそれぞれ観測され、α晶に起因する(110)、(040)、(130)面の回折ピーク強度(それぞれHα1、Hα2、Hα3とする)とから、下記の数式により算出されるK値が、0.3以上、より好ましくは0.5以上であることをもって“β晶活性を有する”と判定してもよい。
ここで、K値は、β晶の比率を示す経験的な値である。各回折ピーク強度の算出方法などK値の詳細については、ターナージョーンズ(A.Turner Jones)ら,“マクロモレキュラーレ ヒェミー”(Makromolekulare Chemie),75,134−158頁(1964)を参考にすればよい。
K = Hβ1/{Hβ1+(Hα1+Hα2+Hα3)}
(ただし、Hβ1 : ポリプロピレンのβ晶に起因する(300)面の回折ピーク強度、 Hα1、Hα2、Hα3 : それぞれ、ポリプロピレンのα晶に起因する(110)、(040)、(130)面の回折ピーク強度)
ここで、本発明の白色フィルムのβ晶比率は、30%以上であることが好ましい。β晶比率が上記範囲未満であると、ボイド形成量が不十分であり、フィルムの厚み方向に均一なボイドが得られにくい場合がある。また、本発明の白色フィルムのβ晶比率は、高いほど上記したボイド形成を促進でき、感熱転写記録用受容シートに加工した際に優れた感度を示す傾向にあり、特に上限は設けないが、あまりに高すぎると感度は向上するものの折れしわ耐性が悪化する場合があるため、感度と折れしわ耐性の両立の観点から、例えば、95%以下であることが好ましい。β晶比率は、より好ましくは40〜95%、さらに好ましくは45〜90%である。
ここで、β晶比率とは、上記セカンドランの熱量曲線において、140℃以上160℃未満に頂点が観測されるポリプロピレン由来のβ晶の融解に起因する吸熱ピーク(1個以上のピーク)のピーク面積から算出される融解熱量(ΔHu−1)と、160℃以上に頂点が観測されるポリプロピレン由来のβ晶以外の結晶の融解に起因し、ベースラインを越えてピークを有する吸熱ピークのピーク面積から算出される融解熱量(ΔHu−2)から、下記式を用いて求める。ここで、β晶分率とは、ポリプロピレンの全ての結晶に占めるβ晶の比率であり、特開2004−142321や上記した特開2005−171230、国際公開第02/66233、特開2000−30683などでは、本発明に近い温度条件下でDSCを用いて熱量曲線を測定し、フィルムのβ晶分率を求めている。なお、140〜160℃に吸熱ピークが存在するがβ晶の融解に起因するか不明確な場合などは、当該サンプルを下記特定条件で溶融結晶化させたサンプルについて、上記の広角X線回折法を用いてβ晶に起因する2θ=16°付近に観測される(300)面の回折ピークが存在することと、上記K値が0.3以上であることをもって該吸熱ピークがβ晶の融解に起因するものと判定してもよい。
β晶比率(%)={ΔHu−1/(ΔHu−1+ΔHu−2)}×100
このような高いβ晶活性を付与するために、本発明の白色フィルムのA層を構成するポリプロピレンには、所謂β晶核剤を添加することが好ましい。このようなβ晶核剤が添加されない場合、上記のような高いβ晶比率が得られない場合がある。本発明の白色フィルムを構成するポリプロピレンに好ましく添加できるβ晶核剤としては、例えば、ナノスケールのサイズを有する酸化鉄;1,2−ヒドロキシステアリン酸カリウム、安息香酸マグネシウム、コハク酸マグネシウム、フタル酸マグネシウムなどに代表されるカルボン酸のアルカリまたはアルカリ土類金属塩;N,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボキサミドなどに代表されるアミド系化合物;ベンゼンスルホン酸ナトリウム、ナフタレンスルホン酸ナトリウムなどに代表される芳香族スルホン酸化合物;二または三塩基カルボン酸のジもしくはトリエステル類;テトラオキサスピロ化合物類;イミドカルボン酸誘導体;フタロシアニンブルーなどに代表されるフタロシアニン系顔料;キナクリドン、キナクリドンキノンなどに代表されるキナクリドン系顔料;有機二塩基酸である成分Aと周期律表第IIA族金属の酸化物、水酸化物または塩である成分Bとからなる二成分系化合物などが挙げられるが、これらに限定される訳ではなく、1種類のみを用いても良いし、2種類以上を混合して用いても良い。
本発明の白色フィルムのA層を構成するポリプロピレンに添加するβ晶核剤としては、上記のなかでは特に下記の化合物1、2が、未延伸シートのβ晶比率を高くでき、その後の延伸工程でボイドの形成を促進できるので、特に好ましい。
[化合物1]
下記化学式(1)、(2)で表される、N,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボキサミドなどに代表されるアミド系化合物。
R2−NHCO−R1−CONH−R3 (1)
ここで、式中のR1は、炭素数1〜24の飽和もしくは不飽和の脂肪族ジカルボン酸残基、炭素数4〜28の飽和もしくは不飽和の脂環族ジカルボン酸残基または炭素数6〜28の芳香族ジカルボン酸残基を表し、R2、R3は同一または異なる炭素数3〜18のシクロアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルケニル基またはこれらの誘導体である。
R5−CONH−R4−NHCO−R6 (2)
ここで、式中のR4は、炭素数1〜24の飽和もしくは不飽和の脂肪族ジアミン残基、炭素数4〜28の飽和もしくは不飽和の脂環族ジアミン残基または炭素数6〜12の複素環式ジアミン残基または炭素数6〜28の芳香族ジアミン残基を表し、R5、R6は同一または異なる炭素数3〜12のシクロアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルケニル基またはこれらの誘導体である。
[化合物2]
有機二塩基酸である成分Aと周期律表第IIA族金属の酸化物、水酸化物または塩である成分Bとからなる二成分系化合物。
かかる特に好ましいβ晶核剤もしくはβ晶核剤添加ポリプロピレンの具体例としては、新日本理化(株)製β晶核剤“エヌジェスター”(タイプ名:NU−100など)、SUNOCO社製β晶核剤添加ポリプロピレン“BEPOL”(タイプ名:B022−SPなど)などが挙げられる。
本発明のβ晶核剤の添加量は、用いるβ晶核剤のβ晶生成能にもよるが、A層の樹脂全体の全量に対して、0.001〜1重量%であることが好ましい。β晶核剤の添加量が上記範囲未満であると、得られる白色フィルムのβ晶比率が不十分となったり、比重が高くなったり、粗大なボイドが形成され、折れしわ耐性に劣る場合がある。また、感熱転写記録用受容シートに加工した際の感度に劣る場合がある。β晶核剤の添加量が上記範囲を超えると、それ以上添加しても得られる白色フィルムのβ晶比率が向上せず、経済性に劣り、核剤自体の分散性が悪化して逆にβ晶比率が低下する場合がある。β晶核剤の添加量は、より好ましくは0.005〜0.5重量%、さらに好ましくは0.05〜0.2重量%である。
次に、本発明の白色フィルムのコア層(A層)の少なくとも片面には、半結晶化時間(以下、単にt1/2と略称する場合がある)が60秒以下であるスキン層(B層)が積層される。
本発明の白色フィルムは、少なくとも片面にスキン層(B層)を積層することにより、
B層が積層されない場合に比較して、フィルム表面の平滑性、光沢を向上できる。さらに、B層上に受容層を形成して感熱転写記録用受容シートに加工する際には、B層が積層されない場合に比較して、サーマルヘッドとの密着性が向上し、熱の放散を抑制して転写シート(インクリボン)からの転写性(感度)がより向上する。
本発明の白色フィルムのB層のt1/2は、60秒以下である。ここで、t1/2とは、下記測定方法の詳細な説明で記載した通り、DSCを用い、特定条件で試料を溶融状態から冷却し、特定温度(125℃)で等温結晶化させた際に、125℃に最初に到達した時点を開始時間(=0分)とし、結晶化に伴う発熱ピークの頂点までに要する時間を意味する。
本発明の白色フィルムのB層のt1/2は、60秒以下であることにより、未延伸シート作製時にB層が金属ドラム面側であるようにすれば、ドラム温度を高く設定して未延伸シートのβ晶比率を高くしても、二軸延伸後の白色フィルム表面にクレータ状の欠点が発生することなく、フィルムに多量のボイドを形成できる。また、既存の設備で生産する際には延伸応力が高いことが問題となる場合があるが、同じ目的比重を達成するためには、未延伸シートのβ晶比率が高ければその分延伸温度を高く設定でき、結果的に延伸応力を低くでき、安定な製膜が可能となる。さらには、ドラム周速を高めてキャスト増速条件としても、未延伸シートがドラムに粘着することがなく、二軸延伸後のフィルム表面にクレータ状の欠点が発生せずに、ドラム周速が低い場合と同等の品質を有する白色フィルムを製造できることから、生産性を高めることができる。B層のt1/2は、好ましくは55秒以下、さらに好ましくは50秒以下である。また、B層のt1/2は、低いほど上記した品質、生産性向上の効果を示す傾向にある。したがって、B層のt1/2は、最も好ましくは、下記で定義される通り、〜0秒である。ただし、A層との共延伸性が悪化したり、B層上に受容層を設置して感熱転写記録用受容シートに加工する際に、受容層(もしくはアンカー層)との接着性が悪化する場合は、t1/2が〜0秒である必要はない。t1/2は、例えば、下記に例示するような結晶核剤、HMS−PPの種類や添加量を適宜選択することにより制御できる。
本発明の白色フィルムのB層は、ポリプロピレンからなる。ここで、B層がポリプロピレンからなることは、B層を構成する全ての樹脂がポリプロピレンであることを意味するが、本発明の効果を奏する限り、B層には、例えば、下記に例示するようなポリプロピレン以外の樹脂、添加剤、粒子などを含有せしめても構わない。ただし、上記したt1/2は、これらB層を構成する物質全体(以下、単にB層の樹脂全体と略称する場合がある)に関して測定した値である。
上記B層を構成するポリプロピレンは、主としてプロピレンの単独重合体からなるが、本発明の目的を損なわない範囲でポリプロピレンと他の不飽和炭化水素の単量体成分が共重合された重合体であってもよいし、プロピレンとプロピレン以外の単量体成分が共重合された重合体がブレンドされてもよいし、プロピレン以外の不飽和炭化水素の単量体成分の(共)重合体がブレンドされてもよい。このような共重合成分やブレンド物を構成する単量体成分として、例えば、エチレン、プロピレン(共重合されたブレンド物の場合)、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチルペンテン−1、3−メチルブテン−1、1−ヘキセン、4−メチルペンテン−1、5−エチルヘキセン−1、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、ビニルシクロヘキセン、スチレン、アリルベンゼン、シクロペンテン、ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、アクリル酸およびそれらの誘導体などが挙げられる。これらのうち、B層を構成するポリプロピレンとしては、特にホモポリプロピレンやエチレンを1〜5重量%共重合させたエチレン・プロピレンランダム共重合体などを用いることが、コア層(A層)との共延伸性と受容層(もしくはアンカー層)との接着性(B層上に受容層(もしくはアンカー層)を設置して感熱転写記録用受容シートに加工する場合)を両立できるので好ましいが、これらに限定される訳ではない。
上記のようにt1/2が60秒以下のポリプロピレンを得る方法としては、例えば、ポリプロピレンにα晶核剤、もしくはβ晶核剤を添加したり、ポリプロピレンに所謂高溶融張力ポリプロピレン(以下、HMS−PPと略称する場合がある)を添加するなどの方法が好ましく用いられる。
ここで、上記α晶核剤としては、ソルビトール系核剤、有機リン酸エステル金属塩系核剤、有機カルボン酸金属塩系核剤、ロジン系核剤などが挙げられる。なかでも、ロジン系核剤が結晶化促進による品質、生産性向上の効果が高いことから、特に好ましい。かかる特に好ましいロジン系核剤の具体例としては、荒川化学(株)製“パインクリスタル”(タイプ名:KM−1300、KM−1500、KM−1600など)などが挙げられる。
上記β晶核剤としては、上記同様の核剤が挙げられる。
これら結晶核剤のうち、B層を構成するポリプロピレンにβ晶核剤を添加すると、得られる白色フィルムにフィルム表裏に貫通したボイド(いわゆる貫通孔)が形成される場合があるので、その選択には注意が必要である。貫通孔が形成されると、平滑性が悪化したり、表面光沢度が低下する場合がある。また、このために、B層上に受容層を設置して受容シートに加工した際の感度が悪化したり、受容層(アンカー層)を予め調整した溶液を塗布して設置する際には、塗布した溶液がフィルム内部に浸透し、うまく受容層(アンカー層)を形成できない場合がある。以上のことから、本発明の白色フィルムのB層は、β晶活性を有さないことが好ましい場合がある。
上記した結晶核剤の添加量は、用いる結晶核剤の性能にもよるが、B層の樹脂全体の全量に対して、0.001〜1重量%であることが好ましい。結晶核剤の添加量が上記範囲未満であると、t1/2低下の効果が得られない場合がある。結晶核剤の添加量が上記範囲を超えると、それ以上添加してもt1/2が低くならず、経済性に劣り、核剤自体の分散性が悪化して表面欠点が発生する場合がある。結晶核剤の添加量は、より好ましくは、0.01〜0.8重量%である。
HMS−PPを得る方法としては、例えば、高分子量成分を多く含むポリプロピレンをブレンドする方法、分岐構造を持つオリゴマーやポリマーをブレンドする方法、特開昭62−121704号公報に記載されているように、ポリプロピレン分子中に長鎖分岐構造を導入する方法、あるいは特許第2869606号公報に記載されているように、長鎖分岐を導入せずに溶融張力と固有粘度、結晶化温度と融点とがそれぞれ特定の関係を満たし、かつ沸騰キシレン抽出残率が特定の範囲にある直鎖状の結晶性ポリプロピレンとする方法などが好ましく用いられる。
これらHMS−PPのうち、本発明の白色フィルムのB層には、溶融押出の安定化効果、結晶化促進による上記した品質、生産性の向上効果が大きいことから、主鎖骨格中に長鎖分岐を有するポリプロピレンを用いることが特に好ましい。なお、主鎖骨格中に長鎖分岐を有するポリプロピレンとは、ポリプロピレン主鎖骨格から主鎖同等の長さを有する枝分かれしたポリプロピレン鎖を有するポリプロピレンである。
上記した主鎖骨格中に長鎖分岐を有するポリプロピレンの具体例としては、Basell社製ポリプロピレン(タイプ名:PF−814、PF−633、PF−611、SD−632など)、Borealis社製ポリプロピレン(タイプ名:WB130HMSなど)、Dow社製ポリプロピレン(タイプ名:D114、D201、D206など)などが挙げられる。
上記したHMS−PPの添加量は、用いるHMS−PPの性能にもよるが、B層の樹脂全体の全量に対して、0.1〜10重量%であることが好ましい。HMS−PPの添加量が上記範囲未満であると、t1/2低下や共延伸性向上の効果が得られない場合がある。HMS−PPの添加量が上記範囲を超えると、それ以上添加してもt1/2が低くならず、経済性に劣る場合がある。HMS−PPの添加量は、より好ましくは、0.5〜5重量%である。
本発明の白色フィルムのB層の結晶化温度(Tc)は、115℃以上であることが好ましい。ここで、Tcはt1/2同様、B層の樹脂全体について測定した値である。B層のTcが上記範囲未満であると、キャスト工程において、溶融ポリマーを100℃を超える高温に保持された金属ドラム上で固化させた際に、特にドラムの周速が高い場合、シートを剥離するまでに固化が完了せず、未延伸シートがドラムに粘着する場合がある。Tcは、より好ましくは119℃以上である。また、B層のTcは、高いほど高温・高速キャストでも粘着や欠点が発生しにくく、ドラムの温度・周速が低い場合と同様の品質を有する白色フィルムを製造できる傾向にあり、特に上限は設けないが、あまりに高すぎると、A層との共延伸性が悪化したり、B層上に受容層を設置して感熱転写記録用受容シートに加工する際には、受容層(もしくはアンカー層)との接着性が悪化する場合があるため、例えば、150℃以下であることが好ましい。B層のTcは、B層を構成するポリプロピレンの結晶性(IIなど)、上記に例示した結晶核剤やHMS−PPなどの添加量、下記に例示する非相溶性樹脂、無機粒子、有機粒子などの添加量により制御できる。B層のTcは、さらに好ましくは120〜145℃、最も好ましくは123〜130℃である。
B層を構成するポリプロピレンのアイソタクチックインデックス(II)は、95〜99.8%であることが好ましい。IIが上記範囲未満であると、B層上に受容層を形成して感熱転写記録用受容シートとして用いる際に、サーマルヘッドからの熱に対する耐熱性に劣り、転写エネルギーによっては、感度が低くなるなど、フィルムまたはその加工品の表面の耐熱性に劣る場合がある。IIが上記範囲を超えると、白色フィルムの製造工程において、破れが発生し、延伸性に劣る場合がある。B層を構成するポリプロピレンのIIは、より好ましくは96〜99.5%である。
本発明の白色フィルムのB層は、空隙率が0.01〜5%であることが好ましい。ここで、B層の空隙率は、下記の通り、特定条件で調整したフィルム断面を特定条件にてSEMで観察した際に、ボイドがスキン層に占める割合を求めたものである。B層の空隙率が上記範囲未満であると、B層上に受容層を設置して感熱転写記録用受容シートとして用いる際に、低エネルギーでの転写性が悪化する、即ちプリンターのサーマルヘッドの熱量を低下した際に、転写シート(インクリボン)から受容層への転写性が悪化し、感度が低下したり、これが原因で高速印画性に劣る場合がある。B層の空隙率が上記範囲を超えると、白色フィルムのB層表面が、劈開しやすくなり、(B層上に受容層を設置して感熱転写記録用受容シートに加工する際には)受容層(もしくはアンカー層)との見掛けの接着性が悪化する(凝集破壊)場合がある。B層の空隙率は、より好ましくは0.1〜3%である。
B層に上記態様のボイドを形成するためには、その製造工程において、未延伸シート製造時の金属ドラム温度を、例えば、100〜130℃程度の高い温度に設定することが重要であるが、ボイドの形成を促進させるために、下記に例示する非相溶性樹脂、無機粒子、有機粒子などをB層を構成するポリプロピレンに添加してもよい。ここで、これらを添加することは、ボイド形成促進はもちろんのこと、フィルム表面に微細な凹凸を形成して滑り性を向上させることにも有効な場合がある。
B層に好ましく添加できる非相溶性樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリメチルペンテン、環状ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリサルホン、ポリアリレート、アイソタクチックポリスチレン、シンジオタクチックポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、飽和ポリエステル、液晶樹脂(LCP)等から選ばれる少なくとも1種の樹脂が挙げられる。本発明の白色フィルムのB層に用いる非相溶性樹脂としては、取り扱い性、製造コスト(原料価格)、ポリプロピレンへの分散性、ボイド形成などの観点から、各種ポリメチルペンテン、ポリカーボネート、飽和ポリエステルを用いることが特に好ましい。
上記ポリメチルペンテンのメルトフローレイト(MFR;260℃、5kgの条件下で測定する)は、5〜100g/10分であることが好ましい。MFRが上記範囲未満であったり、上記範囲を超えると、ポリプロピレン中に粗大に分散したポリメチルペンテン成分が形成され、B層に粗大なボイドが形成される場合があり、B層が劈開しやすくなる場合がある。ポリメチルペンテンのMFRは、より好ましくは8〜80g/10分、更に好ましくは10〜60g/10分である。
上記ポリカーボネートは、芳香族ジヒドロキシ化合物、またはこれと少量のポリヒドロキシ化合物を、ホスゲンと反応させることによって製造される重合体であって、芳香族ジヒドロキシ化合物、またはこれと少量のポリヒドロキシ化合物を炭酸ジエステルでエステル交換反応しても製造することができる。さらに、必要により分岐剤として三官能化合物、分子量調節剤も反応に供することができる。このポリカーボネートは、直鎖状または分岐鎖状の熱可塑性芳香族ポリカーボネートである。本発明の白色フィルムのB層に非相溶性樹脂として用いるポリカーボネートとしては、ビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカン系化合物、特に好ましくはビスフェノールAを主原料に用いることが好ましい。また、2種以上のジヒドロキシ化合物を併用して得られるポリカーボネート共重合体、3価のフェノール系化合物を少量併用して得られる分岐ポリカーボネートも好ましい。他の樹脂、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリスチレンなどを共重合したものでもよい。
上記ポリカーボネートのMFR(300℃、1.2kgの条件下で測定する)は、10〜100g/10分であることが好ましい。MFRが上記範囲未満であったり、上記範囲を超えると、ポリプロピレン中に粗大に分散したポリカーボネート成分が形成され、B層に粗大なボイドが形成される場合があり、B層が劈開しやすくなる場合がある。MFRは、より好ましくは20〜80g/10分である。
また、上記ポリカーボネートのガラス転移温度(Tg)は、100〜180℃であることが好ましい。Tgが上記範囲未満であると、二軸延伸の過程でB層にボイドを形成する際に、ポリカーボネートがつぶれて、ボイドが形成されない場合がある。Tgが上記範囲を超えると、ポリプロピレン中にポリカーボネートが粗大に分散し、B層に粗大なボイドが形成される場合があり、B層が劈開しやすくなる場合がある。Tgは、より好ましくは120〜170℃である。また、非相溶性樹脂として、他の非晶性樹脂を用いる場合も同様に、そのTgが上記範囲を満たすことが好ましい。
上記飽和ポリエステルは、エステル結合を有する重合体であって、例えばジカルボン酸成分とグリコール成分とからなる縮合重合体またはビスフェノールAとテレ/イソ混合フタル酸クロリドとからなる重合体である。ジカルボン酸成分として、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、フタル酸などの芳香族ジカルボン酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、マレイン酸、フマール酸などの脂肪族ジカルボン酸、シクロへキサンジカルボン酸などの脂肪族ジカルボン酸などを例示することができる。一方、グリコール成分としては、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、などの脂肪族グリコール、シクロへキサンジメタノールなどの脂環族グリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールSなどの芳香族グリコール、ジエチレングリコールなどを例示することができる。また、ジカルボン酸成分、グリコール成分は2種以上併用してもよい。また、p−オキシ安息香酸などのオキシカルボン酸を一部に用いることができる。
特に、好ましい飽和ポリエステルとしては、テレフタル酸とブタンジオールとからなるポリエステル、テレフタル酸、イソフタル酸とブタンジオール、ビスフェノールAよりなるポリエステルを例示できるが、もちろんこれに限定されるものではない。
B層に添加する非相溶性樹脂の添加量は、B層の樹脂全体の全量に対して、1〜10重量%であることが好ましい。非相溶性樹脂の添加量が上記範囲未満であると、B層に実質的な量のボイドが形成されない場合がある。非相溶性樹脂の添加量が上記範囲を超えると、B層に必要以上の量のボイドが形成され、B層が劈開しやすくなる場合がある。非相溶性樹脂の添加量は、好ましくは1〜8重量%、さらに好ましくは2〜5重量%である。
また、上記した非相溶性樹脂の平均分散径は、0.2〜2μmであることが好ましい。平均分散径が上記範囲未満であると、実質的な量のボイドが形成されない場合がある。平均分散径が上記範囲を超えると、白色フィルムやその後のフィルム加工品(例えば感熱転写記録用受容シート)の製造工程において非相溶性樹脂が脱落したり、粗大なボイドが形成され、B層が劈開しやすくなる場合がある。非相溶性樹脂の平均分散径は、より好ましくは0.3〜1.5μmである。
B層に好ましく添加できる無機粒子としては、特に限定されないが、例えば、湿式および乾式シリカ、コロイダルシリカ、珪酸アルミ、酸化チタン、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナ、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、酸化チタン、酸化亜鉛(亜鉛華)、酸化アンチモン、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化錫、酸化ランタン、酸化マグネシウム、炭酸バリウム、炭酸亜鉛、塩基性炭酸鉛(鉛白)、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸鉛、硫化亜鉛、マイカ、雲母チタン、タルク、クレー、カオリン、フッ化リチウム、フッ化カルシウム等から選ばれる少なくとも1種の粒子が挙げられる。
有機粒子とは、高分子化合物を架橋剤により架橋した粒子である。B層に好ましく添加できる有機粒子としては、特に限定されないが、例えば、ポリメトキシシラン系化合物の架橋粒子、ポリスチレン系化合物の架橋粒子、アクリル系化合物の架橋粒子、ポリウレタン系化合物の架橋粒子、ポリエステル系化合物の架橋粒子、フッ化物系化合物の架橋粒子等から選ばれる少なくとも1種の粒子が挙げられる。
無機粒子および有機粒子の添加量は、B層の樹脂全体の全量に対して、0.03〜5重量%であることが好ましい。添加量が上記範囲未満であると、B層に実質的な量のボイドが形成されなかったり、未添加の場合に比較して滑り性がそれほど向上しない場合がある。添加量が上記範囲を超えると、白色フィルムやその後のフィルム加工品(例えば感熱転写記録用受容シート)の製造工程において、粒子が脱落して工程を汚す場合がある。無機粒子および有機粒子の添加量は、より好ましくは0.05〜3重量%である。
また、これら無機粒子および有機粒子は、B層に実質的な量のボイドを形成する必要がない場合でも、フィルムの滑り性を向上させることを目的として、添加しても構わない。この場合の添加量は、0.02〜1重量%であることが、ブロッキング防止、滑り性向上などの観点から好ましい。より好ましくは0.05〜0.5重量%である。
無機粒子および有機粒子は、白色フィルムやその後のフィルム加工品(例えば感熱転写記録用受容シート)の製造工程において、脱落が少ないことから、球状であることが好ましい。本発明の白色フィルムのB層に添加する無機粒子および有機粒子の平均粒径は、0.5〜5μmであることが好ましい。平均粒径が上記範囲未満であると、B層に実質的な量のボイドが形成されなかったり、未添加の場合に比較して滑り性がそれほど向上しない場合がある。平均粒径が上記範囲を超えると、白色フィルムやその後のフィルム加工品(例えば感熱転写記録用受容シート)の製造工程において、粒子が脱落して工程を汚したり、白色フィルムを重ねて擦った時にフィルム表面が傷つきやすくなる場合がある。無機粒子および有機粒子の平均粒径は、より好ましくは0.8〜3μmである。
上記した非相溶性樹脂、無機粒子、有機粒子は、添加することにより、白色フィルムや感熱転写記録用受容シートの製造工程において、これらが脱落して工程を汚す傾向にある場合には、実質的に添加しない方が好ましく、適宜その種類や添加量を選択すればよい。
本発明の白色フィルムのB層の厚みは、0.1〜5μmであることが好ましい。B層の厚みが上記範囲未満であると、均一な厚みで積層することが困難になったり、フィルムの強度が必要以上に低下したり、折れしわ耐性が悪化する場合がある。B層の厚みが上記範囲を超えると、B層上に受容層を設置して感熱転写記録用受容シートに加工した際に、感度が低下する場合がある。B層の厚みは、より好ましくは2〜5μmである。
本発明の白色フィルムは、表面光沢度が30〜140%であるB層が積層されている。このことは、本発明の白色フィルムのB層の表面光沢度が30〜145%であることに対応する。ここで、B層の表面光沢度とは、白色フィルムのB層表面について測定した値である。また、感熱転写記録用受容シートに加工して画像を印画する場合、印画面はフィルムのどちらか一方の面であることが大半であるため、B層がA層の両面に積層されている場合には、いずれか一方のB層の表面光沢度が上記範囲を満たせば、本発明の目的が達成される。表面光沢度を上記範囲とすることにより、本発明の白色フィルムに優れた美観を付与できる。また、当該白色フィルムを基材とした感熱転写記録用受容シートに画像を印画した際に、画像や文字がぼやけたり、受容シート表面で光が反射され、画像や文字が見えにくくならず、優れた画像の視認性を実現できる。表面光沢度は、対象となる層(A層、B層、C層)を構成するポリプロピレン(もしくはポリプロピレン系樹脂)の結晶性(IIやmmmmなど)や原料組成、キャスト工程における溶融ポリマーを固化させる際の結晶化条件(金属ドラム温度、金属ドラムの周速、得られる未延伸シートの厚みなど)や延伸工程における延伸条件(延伸方向(縦もしくは横)、延伸方式(縦−横もしくは横−縦逐次二軸延伸、同時二軸延伸、二軸延伸後の再延伸など)、延伸倍率、延伸速度、延伸温度など)などにより制御できる。これらのうち、特にB層にβ晶核剤を添加する場合には、上記の通り、得られる白色フィルムにフィルム表裏に貫通したボイド(いわゆる貫通孔)が形成され、表面光沢度が低下する場合があるので、その選択には注意が必要である。B層の表面光沢度は、より好ましくは70〜130%、さらに好ましくは85〜128%である。
本発明の白色フィルムのB層の平均表面粗さ(Ra)は、0.01〜0.5μmであることが好ましい。Raが上記範囲未満であると、白色フィルムの滑り性が悪化し、白色フィルムやその後のフィルム加工品(例えば感熱転写記録用受容シート)の製造工程で白色フィルムもしくは受容シートにしわが入る場合がある。Raが上記範囲を超えると、表面光沢度が必要以上に低くなったり、白色フィルム製造時の巻き取り工程や例えば感熱転写記録用受容シート製造時の加工工程で、金属ロールを通過した際に白色フィルムもしくは受容シートに傷が付く場合がある。B層のRaは、B層を構成するポリプロピレン(もしくはポリプロピレン系樹脂)の結晶性(IIやmmmmなど)やキャスト工程における溶融ポリマーを固化させる際の結晶化条件(金属ドラム温度、金属ドラムの周速、得られる未延伸シートの厚みなど)や延伸工程における延伸条件(延伸方向(縦もしくは横)、延伸方式(縦−横もしくは横−縦逐次二軸延伸、同時二軸延伸、二軸延伸後の再延伸など)、延伸倍率、延伸速度、延伸温度など)などにより制御できる。Raは、より好ましくは0.15〜0.45μmである。
本発明の白色フィルムには、B層以外の他の層(以下、単にC層と略称する場合がある)を積層しても構わない。C層を積層し、3層積層フィルムとする場合は、そのフィルム構成は、B層/A層/C層(/は、積層界面を示す)となる。この構成の白色フィルムを、例えば感熱転写記録用受容シートに加工する際には、受容層(アンカー層)は、B層上に設置しても、C層上に設置してもよいが、白色フィルムの製造工程において、未延伸シート製造時にB層側の面を金属ドラムに密着させて高速製膜し、感熱転写記録用受容シートの製造工程において、B層の反対面に積層したC層上に受容層を設置することが特に好ましい。これにより、白色フィルムを高速で製膜でき、同時にC層を適宜選択することにより、受容層の密着力も向上できる。
C層を構成する樹脂は、ポリオレフィン系樹脂であることが、C層と隣接する層との接着性などの観点から好ましく、ポリプロピレン系樹脂であることが、フィルムの耐熱性などの観点からより好ましい。
C層を構成するポリプロピレン系樹脂は、主としてプロピレンの単独重合体から構成されることが好ましいが、本発明の目的を損なわない範囲で、ポリプロピレンと他の不飽和炭化水素の単量体成分が共重合された重合体であってもよいし、プロピレンとプロピレン以外の単量体成分が共重合された重合体がブレンドされてもよいし、プロピレン以外の不飽和炭化水素の単量体成分の(共)重合体がブレンドされてもよい。このような共重合成分やブレンド物を構成する単量体成分としては、特に限定されないが、例えば、エチレン、プロピレン(共重合されたブレンド物の場合)、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチルペンテン−1、3−メチルブテン−1、1−ヘキセン、4−メチルペンテン−1、5−エチルヘキセン−1、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、ビニルシクロヘキセン、スチレン、アリルベンゼン、シクロペンテン、ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、アクリル酸およびそれらの誘導体などが挙げられる。
C層上に受容層(アンカー層)を設置する場合には、これらのうち、低立体規則性ポリプロピレンやエチレン・プロピレンランダム共重合体などを用いることが、コア層(A層)との共延伸性と受容層(アンカー層)との接着性を両立させるために特に好ましい。
上記低立体規則性ポリプロピレンの立体規則性(mmmm)は、受容層(アンカー層)との接着性の観点から、70〜90%であることが好ましい。mmmmが上記範囲未満であると、例えば、B層上に受容層を形成して感熱転写記録用受容シートとして用いる際に、サーマルヘッドからの熱に対する耐熱性に劣り、転写エネルギーによっては、感度が低くなる場合がある。mmmmが上記範囲を超えると、例えば、B層上に受容層を形成して感熱転写記録用受容シートとして用いる際に、受容層(アンカー層)との接着力が実質的に向上しない場合がある。mmmmは、より好ましくは72〜85%である。また、例えば、受容層(アンカー層)との接着力が更に向上する場合があるので、この低立体規則性ポリプロピレンには、エチレンが共重合されていてもよい。
上記エチレン・プロピレンランダム共重合体のエチレン共重合量は、1〜5重量%であることが好ましい。エチレン共重合量が上記範囲未満であると、例えば、B層上に受容層を形成して感熱転写記録用受容シートとして用いる際に、受容層(アンカー層)との接着力が実質的に向上しない場合がある。エチレン共重合量が上記範囲を超えると、例えば、B層上に受容層を形成して感熱転写記録用受容シートとして用いる際に、サーマルヘッドからの熱に対する耐熱性に劣り、転写エネルギーによっては、感度が低くなる場合がある。エチレン共重合量は、より好ましくは1〜3重量%である。
C層の厚みは、0.1〜5μmであることが好ましい。C層の厚みが上記範囲未満であると、均一な厚みで積層することが困難になる場合がある。C層の厚みが上記範囲を超えると、C層上に受容層を設置して感熱転写記録用受容シートに加工した際に、感度が低下する場合がある。C層の厚みは、好ましくは0.5〜4μm、さらに好ましくは1〜4μmである。
C層の積層方法としては、共押出、インライン・オフライン押出ラミネート、インライン・オフラインコーティング、物理蒸着、化学蒸着、スパッタリングなどが挙げられるが、これらのうちいずれかに限定されるわけではなく、随時最良の方法を選択すればよい。単にB層/A層/C層の構成で積層する場合には、低コストで積層できるため、共押出法を用いることが好ましい。
本発明の白色フィルムのA層、B層、C層には、上記した以外の各種添加剤、例えば酸化防止剤、熱安定剤、帯電防止剤、滑り剤、ブロッキング防止剤、充填剤などを本発明の目的が損なわれない程度に含有させてもよい。
本発明の白色フィルムの比重は、0.3〜0.7である。比重をこの範囲に制御することにより、力学強度が適度に高く、白色フィルムや感熱転写記録用受容シートの製造工程において、巻き取り性や加工性に優れ、該白色フィルムを基材として用いた感熱転写記録用受容シートの感度が高くなる。本発明の白色フィルムの比重は、A層のポリプロプロピレンに好ましく添加するβ晶核剤の添加量やコア層(A層)とスキン層(B層、C層)の厚みの比率、その製造工程においては、キャスト工程における溶融ポリマーを固化させる際の結晶化条件(金属ドラム温度、金属ドラムの周速、得られる未延伸シートの厚みなど)や延伸工程における延伸条件(延伸方向(縦もしくは横)、延伸方式(縦−横もしくは横−縦逐次二軸延伸、同時二軸延伸、二軸延伸後の再延伸など)、延伸倍率、延伸速度、延伸温度など)、熱処理条件などにより制御できる。これらのうち、キャスト工程では、A層に均一かつ多量のβ晶を形成させ、延伸工程では面積倍率、特に縦延伸倍率などが重要である。本発明の白色フィルムの比重は、低いほど、例えば感熱転写記録用受容シートに加工した際の感度が高い傾向にあり好ましいが、低すぎると、白色フィルムやその後のフィルム加工品(例えば感熱転写記録用受容シート)の製造工程において、フィルムが伸びたり、シワが入ったり、破断したり(当該業者は、これらの現象がみられた場合、そのフィルムを加工性に劣るという)、折れしわ耐性が悪化する場合がある。本発明の白色フィルムの比重は、より好ましくは0.33〜0.69、さらに好ましくは0.38〜0.65、最も好ましくは0.38〜0.62である。
本発明の白色フィルムは、白色度が50%以上で、L値が50以上で、a値が−2〜5で、b値が−6〜−0.01であることが、感熱転写記録用受容シートの感度を高くする上で好ましい。
色差は、JIS Z 8722(2000)やJIS Z 8730(2002)に記載されているように、Richard S.Hunterの色差式を基に設計された、日本電色工業(株)製の分光式色彩計SE−2000を用いて、反射法により測定した試料の白色度、L値、a値、b値である。白色度は、色の3刺激値を示すX、Y、Z値から、下記式にて求めた。
白色度(%)=4×0.847×Z−3×Y
L、a、bなる尺度はRichard S.Hunterにより工夫され、色差計で使用する尺度であり、色差計は色の品質管理に適当なるもので、米国及び国内で多く用いられている。色差計では、色立体における試料の色の位置をL、a、b値により定めることができる。L値が大きいほど明度が高く、すなわち明るいことを示す。a値が(+)側に大きいほど、赤の度合いが大きく、(−)側に大きいほど、緑の度合いが大きいことを示す。b値が(+)側に大きいほど、黄の度合いが大きく、(−)側に大きいほど、青の度合いが大きいことを示す。
本発明の白色フィルムの白色度は、50%以上であることが好ましい。白色度が上記範囲未満であると、本発明の白色フィルムを用いた感熱転写記録用受容シートに画像を印画した時に、画像が全体的に暗くなる場合がある。白色度は、高ければ高いほど、受容シートに加工した際の感度が高くなる傾向にあるが、あまりに高すぎると、折れしわ耐性が悪化する場合がある。白色度は、より好ましくは60〜100%である。
本発明の白色フィルムのL値は、50以上であることが好ましい。L値が上記範囲未満であると、感熱転写記録用受容シートに加工した時に、画像が不鮮明となる場合がある。L値は、高ければ高いほど、受容シートに加工した際の感度が高くなる傾向にあるが、あまりに高すぎると、折れしわ耐性が悪化する場合がある。L値は、より好ましくは60〜100である。
本発明の白色フィルムのa値は、−2〜5であることが好ましい。a値が上記範囲より+側に高いと、本発明の白色フィルムを用いた感熱転写記録用受容シートに画像を印画した時に、全体的に画像が赤みがかって見える場合がある。a値が上記範囲よりも−側に低いと、画像が緑がかって見える場合がある。a値は、より好ましくは−3〜3である。
本発明の白色フィルムのb値は、−6〜−0.01であることが好ましい。b値が上記範囲よりも+側に高いと、本発明の白色フィルムを用いた感熱転写記録用受容シートに画像を印画した時に、全体的に画像の黄色みがかって見え、特に肌色などの低色彩色が黄色く見える場合がある。b値が上記範囲よりも−側に低いと、画像の青みがかって見える場合がある。b値は、より好ましくは−5.5〜−2.7である。
本発明の白色フィルムの光学濃度(OD)は、0.4〜1であることが好ましい。ODが上記範囲未満であると、本発明の白色フィルムを用いた感熱転写記録用受容シートに画像を印画した時に、画像の印象が暗い場合がある。ODは、フィルムの厚みによって変化し、本発明では、フィルムの厚みが35μmで上記範囲以下であることが、フィルムの白色度とL、a、b値を好ましい範囲とできる場合がある。本発明の白色フィルムのODは、より好ましくは0.65〜0.82である。
本発明の白色フィルムの白色度、L、a、b値、ODは、A層のポリプロピレンに好ましく添加するβ晶核剤の添加量やコア層(A層)とスキン層(B層、C層)の厚みの比率、その製造工程においては、キャスト工程における溶融ポリマーを固化させる際の結晶化条件(金属ドラム温度、金属ドラムの周速、得られる未延伸シートの厚みなど)や延伸工程における延伸条件(延伸方向(縦もしくは横)、延伸方式(縦もしくは横の一軸延伸、縦−横もしくは横−縦逐次二軸延伸、同時二軸延伸、二軸延伸後の再延伸など)、延伸倍率、延伸速度、延伸温度など)などにより制御できる。
本発明の白色フィルムのクッション率は、15〜30%であることが好ましい。クッション率が上記範囲未満であると、本発明の白色フィルムを用いた感熱転写記録用シートがサーマルヘッドに密着しにくくなり、サーマルヘッドからの熱が放散して転写シート(インクリボン)からの転写性が悪化する(感度が低下する)場合がある。クッション率が上記範囲を超えると、白色フィルムやその後のフィルム加工品、例えば感熱転写記録用受容シートの折れしわ耐性が悪化する場合がある。クッション率は、A層のポリプロピレンに好ましく添加するβ晶核剤の添加量やコア層(A層)とスキン層(B層、C層)の厚みの比率、A層、B層、C層を構成するポリプロピレン(もしくはポリプロピレン系樹脂)の結晶性(IIやmmmmなど)、その製造工程においては、キャスト工程における溶融ポリマーを固化させる際の結晶化条件(金属ドラム温度、金属ドラムの周速、得られる未延伸シートの厚みなど)や延伸工程における延伸条件(延伸方向(縦もしくは横)、延伸方式(縦−横もしくは横−縦逐次二軸延伸、同時二軸延伸、二軸延伸後の再延伸など)、延伸倍率、延伸速度、延伸温度など)などにより制御できる。クッション率は、より好ましくは17〜25%である。
本発明の白色フィルムの厚みは、10〜100μmであることが、白色フィルムの製膜安定性や、例えば感熱転写記録用受容シートの感度と折れしわ耐性の両立の観点から好ましい。本発明の白色フィルムの厚みは、より好ましくは20〜60μmである。
本発明の白色フィルムの少なくとも片面にコロナ放電処理を施し、フィルム表面の濡れ張力を35mN/m以上とすることは、処理面と受容層(アンカー層)との接着力、処理面と下記に例示するその他素材との接着力を高めるために好ましく採用することができる。この際、コロナ放電処理時の雰囲気ガスとしては、空気、酸素、窒素、炭酸ガス等から選ばれる少なくとも1種のガスが挙げられる。これらのうち、経済性の観点からは空気を用いることが好ましく、上記した接着性向上の観点からは窒素雰囲気下、または窒素/炭酸ガスの混合雰囲気下で表面処理することが好ましく、受容層(アンカー層)の組成に応じて適宜選択すればよい。表面濡れ張力は、より好ましくは37mN/m以上である。表面濡れ張力の上限は、特に設けないが、過度な表面処理は表面を劣化させ、上記した接着性が逆に悪化する場合があるので、60mN/m以下であることが好ましい。
本発明の白色フィルムを感熱転写記録用受容シートの基材として用いる場合、本発明の白色フィルムの少なくとも片面には、白色フィルムと受容層の間の接着力を高めるために、アンカー層を設置しても構わない。この際の受容シートの構成は、白色フィルム/アンカー層/受容層となる。また、白色フィルムのコア層(A層;B層のみの片面積層の場合)、スキン層(B層、C層;両面積層の場合)のいずれの層の上に設置しても構わないが、樹脂組成を適宜選択することにより接着力を制御できることから、スキン層上に設置することが特に好ましい。
該アンカー層を構成する樹脂は、白色フィルムと受容層の間の接着力を実質的に高めることができるものであれば、特に限定されないが、例えば、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂等から選ばれる少なくとも1種の樹脂であることが好ましい。これらの樹脂は、白色フィルムとの接着性の観点から、有機溶剤もしくは水に溶解または分散させたコーティング剤として調整することが好ましく、これを白色フィルム上にコーティング法により設置することが好ましい。
上記アクリル系樹脂としては、特に限定されないが、例えば、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸エステル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体等から選ばれる少なくとも1種の樹脂が挙げられる。
上記ポリエステル系樹脂としては、特に限定されないが、例えば、芳香族ポリエステルであることが好ましい。
上記ポリウレタン系樹脂としては、特に限定されないが、例えば、アイオノマー型のポリエーテル系ウレタン、ポリエステル系ウレタン等から得らればれる少なくとも1種の樹脂が挙げられる。アンカー層を構成する樹脂として当該ポリウレタン系樹脂を用いる場合、当該アンカー層を積層するコア層またはスキン層の表面は、窒素ガス雰囲気下でコロナ放電処理を行うことが、特に好ましい。
これらのなかでも、水溶性および/または水分散性の、架橋性ポリエステルウレタン系樹脂と水溶性の有機溶剤との混合塗剤を塗布、乾燥することにより設置したものであることが特に好ましい。ここで、ポリエステルウレタン系樹脂とは、ジカルボン酸とジオール成分をエステル化したポリエステルポリオールとポリイソシアネート、また必要によって鎖伸張剤などからなるものである。
ポリエステルウレタン系樹脂のジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、トリメチルアジピン酸、セバシン酸、マロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、グルタール酸、ピメリン酸、2,2−ジメチルグルタール酸、アゼライン酸、フマール酸、マレイン酸、イタコン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−ナフタール酸、ジフェニン酸、4,4’−オキシ安息香酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸などを用いることができる。
また、ポリエステルウレタン系樹脂のジオール成分としては、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールなどの脂肪族グリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどの芳香族ジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリ(オキシアルキレン)グリコールなどが挙げられる。
また、ポリエステルウレタン系樹脂は、ジカルボン酸成分、ジオール成分の他にp−オキシ安息香酸等のオキシカルボン酸やアクリル酸(およびその誘導体)等が共重合されていても良く、さらに、これらは線状構造であるが、3価以上のエステル形成成分を用いて分枝状ポリエステルとすることもできる。
また、上記ポリイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンの付加物、ヘキサメチレンジイソシアネートとトリメチロールエタンの付加物などを挙げることができる。
また、鎖伸張剤としては、ペンダントカルボキシル基含有ジオール類や例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコールなどのグリコール類、あるいはエチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、フェニレンジアミン、トリレンジアミン、ジフェニルジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノシクロヘキシルメタンなどのジアミン類などが挙げられる。
ポリエステルウレタン系樹脂の具体例としては、大日本インキ化学工業(株)製“ハイドラン”(タイプ名:AP−40Fなど)などが挙げられる。
また、アンカー層を形成する際、膜の成形性や白色フィルムとの接着力を高めるために、上記コーティング剤に水溶性の有機溶剤として、N−メチルピロリドン、エチルセロソルブアセテート、ジメチルホルムアミド等から選ばれる少なくとも1種以上の有機溶剤を添加することが好ましい。特に、N−メチルピロリドンが、膜の成形性と接着力向上の効果が大きいので好ましい。
上記有機溶剤の添加量は、ポリエステルウレタン系樹脂100重量部に対して、1〜15重量部であることが、コーティング剤の引火を防止し、臭気を抑制する観点から好ましく、さらに好ましくは3〜10重量部である。
さらに、水分散性ポリエステルウレタン系樹脂に架橋構造を導入して、アンカー層と白色フィルムの接着力を高めることができる。このようなコーティング剤を調整する手法としては、特開昭63−15816号公報、特開昭63−256651号公報、特開平5−152159号公報などの方法が挙げられる。
このような架橋剤としては、イソシアネート系化合物、エポキシ系化合物、アミン系化合物などから選ばれる少なくとも一種の架橋剤が挙げられ、コーティング剤に適宜添加する。
上記イソシアネート系化合物としては、特に限定されないが、例えば、前記した、トルエンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシネート、イソホロンジイソシアネートなどが挙げられる。
上記エポキシ系化合物としては、特に限定されないが、例えば、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルおよびそのオリゴマー、水素化ビスフェノールAのジグリシジルエーテルおよびそのオリゴマー、オルトフタル酸ジグリシジルエーテル、イソフタル酸ジグリシジルエーテル、テレフタル酸ジグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエーテルなどが挙げられる。
上記アミン系化合物としては、特に限定されないが、例えば、メラミン、尿素、ベンゾグアナミン等のアミン化合物および、上記アミノ化合物にホルムアルデヒドや炭素数が1〜6のアルコールを付加縮合させたアミノ樹脂、ヘキサメチレンジアミン、トリエタノールアミンなどが挙げられる。
白色フィルムとの接着力を高めるためには、アンカー層(コーティング剤)にはアミン系化合物を添加することが好ましい。架橋剤として用いるアミン系化合物の具体例としては、大日本インキ化学工業(株)製“ベッカミン”(タイプ名:APMなど)などが挙げられる。
上記架橋剤の添加量は、水溶性ポリエステルウレタン系樹脂と水溶性有機溶剤の混合コーティング剤100重量部に対して、1〜15重量部であることが、耐薬品性を向上させたり、耐水性の悪化を抑制できることから好ましく、さらに好ましくは3〜10重量部である。架橋剤の添加量が上記範囲未満であると、接着性の改善効果が得られない場合があり、上記範囲を超えると、未反応で残存する架橋剤によると推定される、アンカー層と白色フィルムの間の接着力が低下する場合がある。
また、本発明の白色フィルムを縦−横逐次二軸延伸法で製膜し、縦延伸フィルム上に塗剤を塗布し、引き続きテンターに導入して横延伸、乾燥・架橋硬化するインラインコーティング法を用いる場合、製膜時間内で、上述のスキン層組成を完全に架橋して硬化させるために、アンカー層(塗剤)には、少量の架橋促進剤を添加してもよい。
アンカー層に添加する架橋促進剤は、架橋促進の効果が高いので、水溶性の酸性化合物であることが好ましい。架橋促進剤としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、トリメチルアジピン酸、セバシン酸、マロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、グルタール酸、スルホン酸、ピメリン酸、2,2−ジメチルグルタール酸、アゼライン酸、フマール酸、マレイン酸、イタコン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−ナフタール酸、ジフェニン酸、4,4’−オキシ安息香酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸などが挙げられる。
これらの架橋促進剤の具体例としては、大日本インキ化学工業(株)製“キャタリスト”(タイプ名:PTSなど)などが挙げられる。
コーティング手法としては、リバースロールコーター、グラビアコーター、ロッドコーター、エアードクターコーターあるいはこれら以外の各種塗布装置を用いて塗布する方法が好ましい。
本発明の白色フィルムを感熱転写記録用受容シートの基材として用いる場合、本発明の白色フィルムに受容層を塗布した後の感熱転写記録用受容シートの受容層表面の光沢度は、50%以上であることが、受容シートに画像を印画した時に、画像が鮮明となるので好ましい。受容層表面の光沢度は、より好ましくは70%以上である。受容層表面の光沢度は、高いほど上記の効果が大きいので好ましいので、特に上限は設けない。
本発明の白色フィルムを感熱転写記録用受容シートの基材として用いる場合、当該感熱転写記録用受容シートは、白色フィルムを単独で用いた受容シートであっても、他の素材と貼合せた受容シートであってもよい。上記他の素材としては、特に限定されないが、例えば、普通紙、上質紙、中質紙、コート紙、アート紙、キャストコート紙、樹脂含浸紙、エマルジョン含浸紙、ラテックス含浸紙、合成樹脂内添紙、グラシン紙、ラミネート紙などの紙、合成紙、不織布、あるいは他種フィルム等が挙げられる。また、本発明の白色フィルムを他の素材と貼合せる場合、フィルムの受容層を設置する面と反対の面に貼合せることが、感熱転写記録用受容シートのカールが小さいので好ましい。
本発明の二軸配向白色ポリプロピレンフィルムの製造には、縦−横もしくは横−縦逐次二軸延伸法、同時二軸延伸法、さらには二軸延伸後の再延伸などを用いることができ、特に限定されないが、生産性、装置の拡張性に優れた縦−横逐次二軸延伸法を用いることが好ましい。以下には、縦−横逐次二軸延伸法を用いた本発明の白色フィルムの製造方法の一例を説明するが、本発明は、かかる例のみに限定されるものではない。
コア層(A層)樹脂として、β晶活性を有するポリプロピレンを、加熱された押出機(a)に供給し、180〜300℃で溶融混練させ、フィルターで濾過した後、複合口金に導入する。一方、スキン層(B層)樹脂として、半結晶化時間(t1/2)が60秒以下であるポリプロピレン、例えば、α晶核剤や高溶融張力ポリプロピレン(HMS−PP)などを添加したポリプロピレンを、加熱された押出機(b)に供給し、180〜280℃で溶融混練させ、フィルターで濾過した後、複合口金内に導入し、A層の片面あるいは両面に積層する。この際、上記した他の層(C層)を積層する際には、別途押出機(c)を用意し、C層の樹脂を、180〜280℃で溶融混練させ、フィルターで濾過した後、複合口金内でA層の、B層と反対の面に積層すればよい。また、コア層(A層)とスキン層(B層、C層)の厚み構成およびフィルム厚みは、各押出機からの溶融ポリマーの押出量により制御できる。
この溶融ポリマーを積層した複合シートを口金から押出し、表面温度を70〜130℃に保持したドラム上に密着させながら固化させる(当該業者は、この工程をキャスト工程という)。従来、ドラム温度とシートの実際の温度(以下、単にシート温度と略称する場合がある)がほぼ同等である場合、上記の温度範囲内ではドラム温度が高ければ高いほど、A層のβ晶比率が高くなるため、二軸延伸後のフィルムの比重が低くなる傾向にある。しかしながら、あまりに高すぎるとシートがドラムに粘着したり、二軸延伸後に、シートが金属ドラムと接触した面(以下、単にD面と略称する場合がある)にクレータ状の欠点が発生する場合があった。これに対して、未延伸シートのB層が金属ドラムと接触するようにドラムに密着させれば(シートのB層側の面がD面に対応すれば)、ドラム温度を高くしたり、ドラム周速を高くしても、シートがドラムへ粘着せず、未延伸シートのβ晶比率を高く保持できる。また、二軸延伸後のB層表面にクレータ状の欠点が発生しない。さらに、β晶比率が高い未延伸シートを延伸するので、縦延伸温度を高く設定でき、縦延伸工程における延伸応力を低くできる。
この際、金属ドラムへの接触時間は3〜60秒であることが好ましい。ここで、金属ドラムへの接触時間とは、上記キャスト工程において、溶融ポリマーがドラム上に最初に着地した時点を開始時間(=0秒)とし、未延伸シートがドラムから剥離した時点までに要する時間を意味する。また、上記温度範囲に保持した複数のドラム上でシートを固化させる場合、接触時間は最初のドラム上に着地した時点を開始時間(=0秒)とし、未延伸シートが最後のドラムから剥離した時点までに要する時間を意味する。ここには、各ドラム間におけるシート両面が実質的にドラムと接触しない時間も含まれる。これは、各ドラム間ではシートの両面は熱伝達係数が低い空気と接触することになり、実質的に上記したβ晶生成に好ましいシート温度に保持され続けるためである。金属ドラムへの接触時間が上記範囲未満であると、上記剥離時点において未延伸シートがドラムに粘着したり、未延伸シートに生成するβ晶が少ない(未延伸シートのβ晶比率が低い)ために、二軸延伸後のフィルムの比重が必要以上に高くなる場合がある。金属ドラムへの接触時間が上記範囲を超えると、金属ドラムの大きさにもよるが、必要以上に金属ドラムの周速が低く、生産性が著しく悪化する場合がある。金属ドラムへの接触時間は、より好ましくは、5〜45秒、さらに好ましくは、7〜20秒である。
上記冷却ドラムへの密着方法としては静電印可(ピンニング)法、水の表面張力を利用した密着方法、エアーナイフ法、プレスロール法、水中キャスト法などのうちいずれの手法を用いてもよいが、本発明の白色フィルムを得る手法としては、厚み制御性が良好で、その吹き付けエアーの温度によりフィルム表面の冷却速度を制御可能であるエアーナイフ法を用いることが好ましい。ここで、エアーナイフ法では、エアーはシートの金属ドラムと接触しない面(以下、単にND面と略称する場合がある)に吹き付けられる。このエアー温度は、10〜130℃とすることが好ましく、エアー温度により表面光沢度を制御でき、低温ほど光沢度が向上する。
次に、フィルムのA層に無核のボイドを形成し、フィルムの少なくとも片面の表面光沢度を高くするために、上記未延伸積層シートを70〜160℃に加熱したロール群またはオーブンに導入して、予熱し、フィルム温度を80〜150℃にした後、表面温度を80〜140℃に保たれたハードクロムメッキした金属ロールとゴムロールのロール対(延伸ロール)と、表面温度を30〜100℃に保たれたハードクロムメッキした金属ロールとゴムロールのロール対(冷却ロール)の間を通過させ、延伸ロールと冷却ロールの周速差で縦方向(フィルムの進行方向)に3〜7倍延伸し、30℃〜100℃のロール群で冷却する。ここで、上記フィルム温度や延伸倍率は、二軸延伸後のフィルムの比重を制御する上で重要である。即ち、フィルム温度が低いほど、比重は低くなり、延伸倍率が高いほど、比重は低くなる。また、ロールを駆動させるモーターには容量が存在する。延伸応力を低く抑えることにより、容量が低いモーターを用いても延伸できるため、設備投資が不要となる。本発明の白色フィルムでは、上記のように、キャスト増速時にも粘着や欠点を抑制して、未延伸シートのβ晶比率を高く保持できるため、フィルム温度を高く、もしくは縦延伸倍率を低くしても目的とする二軸延伸後の比重を達成できるため、延伸応力を低く抑えることができる。
続いて、縦方向に延伸したフィルムの両端をクリップで把持しながらテンターに導き、120〜190℃に加熱した雰囲気中(フィルム温度:100℃〜165℃)で縦方向に垂直な方向(横方向)に5〜12倍に延伸する。
ここで、縦−横二軸延伸の面積倍率(縦延伸倍率×横延伸倍率)は15〜84倍、製膜安定性から30〜50倍であることが好ましい。面積倍率が上記範囲未満であると、二軸延伸後の白色フィルムの表面光沢度が低かったり、ボイドの形成量が不十分で本発明のフィルムの特性が得られない場合がある。面積倍率が上記範囲を超えると、延伸時に破れが多発する場合がある。
このようにして得られた二軸延伸白色フィルムの結晶配向を完了させて平面性、寸法安定性を向上させるために、引き続きテンター内で140〜170℃で1〜30秒間の熱処理を行い、その後均一に徐冷後、室温まで冷却して巻き取ることにより、本発明の白色フィルムを得ることができる。なお、上記熱処理工程中では、必要に応じて横方向あるいは縦方向に3〜12%の弛緩処理を施してもよい。
このようにして得られた本発明の白色フィルムの表面には、受容層の塗布または他基材と貼り合わせる際に、層間接着力を高めるために、上記に例示した雰囲気ガス中で適宜コロナ放電処理を行い、巻き取る。
ここで、白色フィルムの製造工程中でアンカー層を設置することも可能である。即ち、上記縦延伸フィルム上にアクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂などを塗布し、引き続きテンターに導入して横延伸、乾燥するインラインコーティング法は、低コストでアンカー層を設置できることから、好ましく用いられる。インラインコーティング法では、縦延伸フィルムのアンカー層を設置する面には、アンカー層を塗布する前に、予めコロナ放電処理を行うことが、白色フィルムとアンカー層の間の接着力を高められるので好ましい。勿論、アンカー層はオフラインコーティング法を用いて設置することもできる。
[特性の測定方法および評価方法]
本発明の特性値は、次の評価方法、評価基準により求められる。
(1)A層が実質的に無核のボイドを有することの判定
下記に示す方法1、方法2により判定した。
<方法1:SEM法>
凍結ミクロトーム法を用い、−100℃で白色フィルムの横方向−厚み方向断面を採取した。得られた白色フィルムの断面に、Ptをコートした後、下記条件にて走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて断面を観察し、断面像を採取した。なお、サンプル調製および断面観察は、(株)東レリサーチセンター(TRC)にて行った。
・装置 :(株)日立製作所製超高分解能電解放射型走査電子顕微鏡(UHR−FE−SEM)S−900H
・加速電圧:2kV
・観察倍率:5000倍。
得られた断面像を用いて、断面の1000μm2当たりに存在する全てのボイド(境界線を有する単独ボイド)を計測した。さらに、全ボイドのうち、内部に核を有するボイドを計測し、全ボイド数に占める内部に核を有するボイド数の割合を百分率で算出した(単位:%)。なお、断面像は、1000μm2の観察面積が得られるように必要な枚数を、観察箇所を変えて採取した。
本発明では、コア層(A層)を上記手法で観察し、全ボイド数に占める内部に核を有するボイド数の割合が、5%以下である場合、該A層が実質的に無核のボイドを有すると判定した。
なお、“核を有する”ことは、ポリプロピレンにボイドを形成しうる、球状、または繊維状、または不定形状、またはその他の形状をした、非相溶性樹脂、または無機粒子、または有機粒子が、1個の境界線を有する単独ボイド中に、1個以上存在することを意味する。
<方法2:TEM法>
エポキシ樹脂を用いた樹脂包埋法により、ウルトラミクロトームを用い、微多孔フィルムの横方向−厚み方向に断面を有する超薄切片を採取した。採取した切片をRuO4で染色し、下記条件にて透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて断面を観察した。なお、サンプル調製および断面観察は、(株)東レリサーチセンターにて行った。
・装置 :(株)日立製作所製 透過型電子顕微鏡(TEM)H−7100FA
・加速電圧:100kV
・観察倍率:40000倍。
フィルムのA層について、写真の一辺がフィルムの横方向に平行となるように、かつ厚み方向に平行に連続して観察した写真を採取する。この際、各写真における横方向に平行な一辺と厚み方向に平行な一辺のサイズは、フィルムの実寸にして各々6μm、5μmとなるように調整し、厚み方向に平行に10μm(写真2枚分に相当)観察することとする。なお、A層の厚さが10μm未満である場合は、適宜横方向に平行に連続して観察した写真を採取すればよい。
得られた複数の画像の上にOHPシート(セイコーエプソン(株)製EPSON専用OHPシート)を乗せた。次に、観察したボイドのうち、ボイドの内部に観察された核が有れば、核のみをOHPシート上にマジックペンで黒く塗りつぶした。得られたOHPシートの画像を、下記条件で読み込んだ。
・スキャナ :セイコーエプソン(株)製GT−7600U
・ソフト :EPSON TWAIN ver.4.20J
・イメージタイプ:線画
・解像度 :600dpi。
得られた画像を、(株)プラネトロン製Image−Pro Plus、Ver.4.0 for Windouwsを用いて、画像解析を行った。この際、取り込んだ断面像のスケールを使用して空間校正を行った。なお、測定条件は、以下の通りに設定した。
・カウント/サイズオプション内の表示オプション設定で、アウトラインの形式を塗りつぶしにする。
・オブジェクト抽出オプション設定で、境界上の除外をなし(None)にする。
・測定の際の輝度レンジ選択設定を暗い色のオブジェクトを自動抽出にする。
上記条件下で、写真で観察したフィルムの全面積、即ち測定の対象とした横方向×厚み方向=5μm×10μmに対する、核(黒く塗りつぶした部分)の面積の比率を百分率で算出した。同じサンプルについて観察位置を変えて同様の測定を3回行い、得られた面積比の平均値を当該サンプルの核の面積率(RTEM)とした(単位:%)。これより、核がフィルムの全面積に占める比率が、5%以下である場合を当該フィルムが無核の孔を有すると定義し、○とした。また、当該比率RTEMが5%を越えるフィルムは、無核の孔を有さないため、×とした。
(2)半結晶化時間(t1/2)
Seiko Instruments製熱分析装置RDC220型を用いて、JIS K 7122(1987)に基づいて測定した。窒素雰囲気下で5mgのB層の樹脂全体(サンプル)を、50℃/分の速度で280℃まで昇温した。昇温完了後、280℃で5分間待機させた。引き続き、50℃/分の速度で125℃まで冷却した。冷却完了後、125℃で待機させ、試料を等温結晶化させた。この際、125℃に最初に到達した時点を開始時間(=0分)とした。その後、サンプルの結晶化に伴い、発熱ピークが現れる。本発明では、横軸を時間とした熱量曲線において、上記開始時間から発熱ピークの頂点までの時間を半結晶化時間(t1/2)として測定した(単位:秒)。なお、横軸を時間とした熱量曲線において、発熱ピークの頂点が上記開始時間前に現れる、即ち本手法で測定できない場合は、〜0(極めて結晶化速度が高い)と表す。なお、サンプルの形状は、B層の樹脂全体であれば、何を用いても構わないが、取り扱いが容易なので、チップ状であることが好ましい。また、白色フィルムのスキン層(B層)から、カッターナイフなどでB層を必要量削り取ることにより、サンプルを準備してもよい。同じサンプルについて同様の測定を5回行い、得られたt1/2の平均値を当該サンプルのt1/2とした。
(3)比重
白色フィルムの比重は、高精度電子比重計SD−120L(ミラージュ貿易(株)製)を用い、30mm×40mmのサイズに切り出したサンプルについて、JIS K 7112(1999)のA法(水中置換法)に準じて23℃、65%RHにて測定した。同じサンプルについて同様の測定を5回行い、得られた比重の平均値を当該サンプルの比重とした。
(4)β晶活性の確認
[フィルム全体に関する確認]
Seiko Instruments製熱分析装置RDC220型を用いて、JIS K 7122(1987)に基づいて測定した。5mgの白色フィルム(サンプル)をアルミニウムパンに封入して装填し、当該装置にセットした。窒素雰囲気下で、10℃/分の速度で30℃から280℃まで昇温した(以下、この際得られる熱量曲線をファーストランの熱量曲線と略称する場合がある)。昇温完了後、280℃で5分間待機させた。引き続き、10℃/分の速度で30℃まで冷却した。冷却完了後、30℃で5分間待機させた。次いで、再度10℃/分の速度で280℃まで昇温した(以下、この際得られる熱量曲線をセカンドランの熱量曲線と略称する場合がある)。この際に得られるセカンドランの熱量曲線において、140℃以上160℃未満に頂点を有するβ晶の融解に伴う吸熱ピークが観測される場合に、該フィルム(原料ポリプロピレン)がβ晶活性を有するものと判定した。なお、ここでいう吸熱ピークとは、融解熱量が10mJ/mg以上であるものをいう。また、融解熱量は、熱量曲線が昇温に伴いベースラインから吸熱側にずれ、次いでベースラインの位置に戻るまでのベースラインと熱量曲線で囲まれる面積であり、融解開始温度位置からベースライン上に熱量曲線の交点まで高温側に直線を引き、この面積をコンピュータ処理して求めた。なお、熱量曲線が吸熱側にずれ、完全にベースラインの位置に戻らず、再び吸熱側にずれる場合には、再び吸熱側にずれ始める極大点からベースラインに垂線を下ろし、熱量曲線とベースラインと垂線で囲まれる面積とすればよい。
また、上記の手法で140〜160℃に頂点を有する融解ピークが存在するが、β晶の融解に起因するものか不明確な場合は、140〜160℃に頂点を有する融解ピークが存在することと、下記条件で調製したサンプルについて、広角X線回折法による2θ/θスキャンで得られる回折プロファイルでβ晶に起因する回折ピークが存在し、各回折ピーク強度から算出されるK値が0.3以上であることをもってβ晶活性を有するものと判定すればよい。
下記に広角X線回折法の測定条件を示す。
・サンプル:本発明のフィルムを、方向を揃えて、熱プレス調整後のサンプル厚さが1mm程度になるよう重ね合わせた後、これを0.5mm厚みの2枚のアルミ板で挟み、280℃で熱プレスして融解・圧縮させ、ポリマー鎖をほぼ無配向化した。得られたシートを、アルミ板ごと取り出した直後に100℃の沸騰水中に5分間浸漬して結晶化させ、その後25℃の雰囲気下で冷却して得られるシートを幅1mmに切り出したサンプルを測定に供した。
・X線回折装置:理学電気(株)製 4036A2
・X線源 :CuKα線(Niフィルター使用)
・出力 :40kV、20mA
・スリット系 :2mmφ−1°−1°
・検出器 :シンチレーションカウンター
・計数記録装置:理学電気(株)製 RAD−C型
・測定方法 :2θ/θスキャン(ステップスキャン、2θ範囲10〜55°、0.05°ステップ、積算時間2秒)。
ここで、K値は、2θ=16°付近に観測され、β晶に起因する(300)面の回折ピーク強度(Hβ1とする)と2θ=14,17,19°付近にそれぞれ観測され、α晶に起因する(110)、(040)、(130)面の回折ピーク強度(それぞれHα1、Hα2、Hα3とする)とから、下記の数式により算出できる。K値はβ晶の比率を示す経験的な値であり、各回折ピーク強度の算出方法などK値の詳細については、ターナージョーンズ(A.Turner Jones)ら,“マクロモレキュラーレ ヒェミー”(Makromolekulare Chemie),75,134−158頁(1964)を参考にすればよい。
K = Hβ1/{Hβ1+(Hα1+Hα2+Hα3)}
なお、ポリプロピレンの結晶型(α晶、β晶)の構造、得られる広角X線回折プロファイルなどは、例えば、エドワード・P・ムーア・Jr.著、“ポリプロピレンハンドブック”、工業調査会(1998)、p.135−163;田所宏行著、“高分子の構造”、化学同人(1976)、p.393;ターナージョーンズ(A.Turner−Jones)ら, “マクロモレキュラー ヒェミー”(Makromolekulare Chemie),75,p.134−158や、これらに挙げられた参考文献なども含めて多数の報告があり、それを参考にすればよい。
上記確認は、二軸延伸後のフィルムは勿論のこと、対応する未延伸シートについて測定しても構わない。
本発明では、β晶活性を有するものを○、有さないものを×とした。
[B層に関する確認]
上記同様の手法により、DSCを用いてB層の樹脂全体について熱量曲線を採取し、判定した。なお、サンプルの形状は、B層の樹脂全体であれば、何を用いても構わないが、取り扱いが容易なので、チップ状であることが好ましい。また、白色フィルムのスキン層(B層)から、カッターナイフなどでB層を必要量削り取ることにより、サンプルを準備してもよい。
(5)二軸配向の判別
フィルムの配向状態を、フィルムに対して以下に示す3方向からX線を入射したX線回折写真から判別する。
・Through入射:フィルムの縦方向(MD)・横方向(TD)で形成される面に垂直に入射
・End入射 :フィルムの横方向・厚み方向で形成される面に垂直に入射
・Edge入射 :フィルムの縦方向・厚み方向で形成される面に垂直に入射。
なお、サンプルは方向を揃えて重ね合わせ、厚さ1mm程度に調整した後、幅1mm程度に切り出し、測定に供した。
X線回折写真は以下の条件でイメージングプレート法により測定した。
・X線発生装置 :理学電気(株)製 4036A2型
・X線源 :CuKα線(Niフィルター使用)
・出力 :40Kv、20mA
・スリット系 :1mmφピンホールコリメータ
・イメージングプレート:FUJIFILM BAS−SR
・撮影条件 :カメラ半径40mm、露出時間5分。
ここで、フィルムの無配向、一軸配向、二軸配向の別は、例えば、松本喜代一ら、“繊維学会誌”、第26巻、第12号、1970年、p.537−549;松本喜代一著、“フィルムをつくる”、共立出版(1993)、p.67−86;岡村誠三ら著、“高分子化学序論(第2版)”、化学同人(1981)、p.92−93などで解説されているように、以下の基準で判別できる。
・無配向 :いずれの方向のX線回折写真においても実質的にほぼ均等強度を有するデバイ・シェラー環が得られる
・縦一軸配向:End入射のX線回折写真においてほぼ均等強度を有するデバイ・シェラー環が得られる
・二軸配向 :いずれの方向のX線回折写真においてもその配向を反映した、回折強度が均等ではない回折像が得られる。
本発明では、フィルムが上記の二軸配向の基準を満たせばよい。
(6)結晶化温度(Tc)
Seiko Instruments製熱分析装置RDC220型を用いて、JIS K 7122(1987)に基づいて測定した。窒素雰囲気下で5mgのB層の樹脂全体(サンプル)を、10℃/分の速度で280℃まで昇温した。昇温完了後、280℃で5分間待機させた。引き続き、10℃/分の速度で30℃まで冷却した。この際、溶融状態からの結晶化に伴う発熱ピークの頂点温度を結晶化温度(Tc)とした(単位:℃)。なお、サンプルは、B層の樹脂全体であれば、チップ形状であることが好ましいが、白色フィルムのスキン層(B層)から、カッターナイフなどで必要量削り取ることにより、準備してもよい。同じサンプルについて同様の測定を5回行い、得られたTcの平均値を当該サンプルのTcとした。
(7)スキン層(B層、C層)の空隙率
観察倍率を10000倍にしたこと以外は、(1)の方法1:SEM法と同様の方法で、白色フィルムのスキン層の断面を横方向に平行に連続観察し、観察位置を変えて断面像を10点採取した。
得られた各断面像の上にOHPシート(セイコーエプソン(株)製EPSON専用OHPシート)を乗せた。次に、OHPシート上にスキン層のボイド(空隙)のみをマジックペンで黒く塗りつぶした。得られたOHPシートの画像を、下記条件で読み込んだ。
・スキャナ :セイコーエプソン(株)製GT−7600U
・ソフト :EPSON TWAIN ver.4.20J
・イメージタイプ:線画
・解像度 :600dpi。
得られた画像を、(株)プラネトロン製Image−Pro Plus、Ver.4.0 for Windouwsを用いて、画像解析を行った。この際、取り込んだ断面像のスケールを使用して空間校正を行った。なお、測定条件は、以下の通りに設定した。
・カウント/サイズオプション内の表示オプション設定で、アウトラインの形式を塗りつぶしにする。
・オブジェクト抽出オプション設定で、境界上の除外をなし(None)にする。
・測定の際の輝度レンジ選択設定を暗い色のオブジェクトを自動抽出にする。
上記条件下で、10枚の断面像のスキン層の全面積、即ち測定の対象とした矩形対象領域(Rectangular AOI)の面積に対する、ボイド(黒く塗りつぶした部分)の面積の比を百分率で算出し、スキン層の空隙率とした(単位:%)。
(8)B層の平均表面粗さ(Ra)
JIS B 0601(2001)に基づいて、触針式表面粗さ計を用いて測定した。なお、小坂研究所(株)製、高精度薄膜段差測定器(型式:ET−30HK)および三次元粗さ分析装置(形式:SPA−11)を使用し、白色フィルムのB層の表面について、以下の条件より求めた。
・触針走査方向:フィルムの横方向
・測定モード :触針式(STYLUS)
・処理モード :8(ROUGHNESS)
・測定長さ :1mm
・触針径 :円錐型0.5μmR
・荷重 :16mg
・カットオフ :250μm
・測定ライン数 :30本
・走査速度 :100μm/秒
・ピッチ :X方向4μm、Y方向10μm
・SLOPE COMP:ON
・GAIN :×1
・測定面積 :0.2988mm2
・標準面積 :0.1mm2。
測定に当たって、適宜レコーダーを用いて粗さ曲線を記録した。その際の条件は以下の通りである。
・X・Y軸方向記録倍率:100倍
・Z軸方向倍率 :10000倍(レコーダー上で粗さ曲線の倍率が大きすぎて場合は、適宜5000倍としてもよい)
・レコーダー速度 :40μm/秒
・Y記録ピッチ :2mm。
この際、中心線平均表面粗さ(Ra)は、粗さ曲線から測定長さLの部分を抜き取り、この抜き取り部分の中心線をX軸、縦方向をY軸とし、粗さ曲線をy=f(x)で表した時、次の式によって求められる値である(単位:μm)。
同じサンプルについて同様の測定を5回行い、得られたRaの平均値を該サンプルのRaとした。
(9)光学濃度(OD)
マクベス製光学濃度計TR−927を用いて測定した。同じサンプルについて同様の測定を5回行い、得られたODを該サンプルのODとした。
(10)B層の表面光沢度
JIS Z 8741(1997)に基づいて、スガ試験機(株)製デジタル変角光沢度計UGV−5Dを用い、入出角度60°の条件下で、白色フィルムのB層の表面について、表面光沢度を測定した(単位:%)。同じサンプルについて同様の測定を5回行い、得られた表面光沢度の平均値を該サンプルの表面光沢度とした。
(11)白色度、L、a、b値
日本電色工業(株)製の分光式色彩計SE−2000を用いて、反射法の条件下、フィルムの受容層を形成する面について、L、a、b値とX、Y、Z値を測定する。白色度はY、Z値を用いて下記式にて求めた(単位:%)。
白色度(%)=4×0.847×Z−3×Y
同じサンプルについて同様の測定を5回行い、得られた白色度、L、a、b値の平均値を該サンプルの白色度、L、a、b値とした。
(12)アイソタクチックインデックス(II)
アイソタクチックインデックス(II)は、沸騰n−ヘプタン抽出残分から求める。試料を沸騰n−ヘプタンで一定時間抽出し、抽出されない部分の重量(%)を求めてアイソタクチックインデックスを算出する。
詳しくは、円筒濾紙を110±5℃で2時間乾燥し、23℃、65%RHの室内で2時間以上放置してから、円筒濾紙中にサンプル(粉体またはフレーク状などのポリプロピレン)10gを入れ、秤量カップ、ピンセットを用いて直示天秤にて精秤(小数点4桁まで)する。
これをヘプタン80ccが入った抽出器の上部にセットし、抽出器と冷却器を組み立てる。これをオイルバスまたは電機ヒーターで加熱し、12時間抽出する。加熱は冷却器からの滴下数が1分間130滴以上であるように調節する。抽出残分が入った円筒濾紙を取り出し、真空乾燥器に入れて80℃、100mmHg以下の真空度で5時間乾燥する。乾燥後23℃、65%RHの室内で2時間放置した後精秤し、下記式で算出する(単位:%)。ここで、Poは抽出前のサンプルの重量(g)、Pは抽出後のサンプルの重量(g)である。
II(%)=(P/Po)×100
同じサンプルについて同様の測定を5回行い、得られたIIの平均値を該サンプルのIIとした。
(13)メルトフローレイト(MFR)
ポリプロピレンおよび熱可塑性エラストマーは、JIS K 7210(1995)の条件Mに準拠して測定する(230℃、2.16kg)。エチレン系樹脂は、JIS K 7210(1995)の条件Dに準拠して測定する(190℃、2.16kg)。ポリカーボネートは、JIS K 7210(1995)の条件Wに準拠して測定する(300℃、1.2kg)。ポリメチルペンテンは、ASTM D 1238に従って測定する(260℃、5.0kg)。
(14)β晶比率
[未延伸シートのβ晶比率]
上記(4)において、サンプルを未延伸シートとして、ファーストランの熱量曲線を採取する。
[二軸配向白色ポリプロピレンフィルムのβ晶比率]
上記(4)において、サンプルを白色フィルムとして、セカンドランの熱量曲線を採取する。
[β晶比率の算出]
それぞれ得られた熱量曲線において、140℃以上160℃未満に頂点を有するβ晶の融解に伴う1本以上の吸熱ピークの面積から算出される融解熱量(ΔHu−1)と、160℃以上に頂点を有するポリプロピレン由来のβ晶以外の結晶の融解に起因し、ベースラインを超えてピークを有する吸熱ピークの面積から算出される融解熱量(ΔHu−2)から、次式で求める。この際、ΔHu−1の融解ピークとΔHu−2融解ピークの間に、微少な発熱もしくは吸熱ピークが観測される場合があるが、このピークの面積は無視してもよい。それぞれ、同じサンプルについて同様の測定を5回行い、得られたβ晶比率の平均値を当該サンプルのβ晶比率とした。なお、未延伸シートのβ晶比率は、キャスト工程内でいかに多くのβ晶が生成されたかを評価するために重要である。このためには、β晶比率は、製膜時にサンプルが受けた熱履歴を反映した、ファーストランの熱量曲線から算出することが妥当である。また、フィルムのβ晶比率は各フィルムがどの程度のボイド形成能力を有するかを評価するために重要である。このためには、フィルムが受けた熱履歴の影響を受けない、セカンドランの熱量曲線から算出することが妥当である。本発明では、特に断りがない限り、β晶比率はフィルムについてセカンドランの熱量曲線から算出した値を用いる。
β晶比率(%)= {ΔHu−1/(ΔHu−1+ΔHu−2)}×100
(15)ガラス転移点温度(Tg)
Seiko Instruments製熱分析装置RDC220型を用いて、JIS K 7122(1987)に基づいて測定した。5mgのサンプルをアルミニウムパンに封入して装填し、当該装置にセットした。窒素雰囲気下で、20℃/分の速度で30℃から280℃まで昇温した。昇温完了後、280℃で5分間待機させた。引き続き、20℃/分の速度で30℃まで冷却した。冷却完了後、30℃で5分間待機させた。次いで、再度20℃/分の速度で280℃まで昇温した。この際に得られる熱量曲線において、ガラス転移の開始点をガラス転移温度(Tg)とした(温度:℃)。なお、解析にはSeiko Instruments製熱分析システムSSC5200の内蔵プログラムを用いた。同じサンプルについて同様の測定を5回行い、得られたTgの平均値を当該サンプルのTgとした。
(16)非相溶性樹脂の平均分散径
RuO4染色超薄切片法により未延伸シートの横方向−厚み方向に断面を有する超薄切片(サンプル)を採取した。すなわち、ミクロトーム法を用いて上記断面を有する超薄切片を採取し、該切片をRuO4で染色し、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、下記条件で観察した。なお、サンプル調製および観察は、(株)東レリサーチセンター(TRC)にて行った。
・装置 :(株)日立製作所製 透過型電子顕微鏡(H−7100FA)
・加速電圧:100kV
・観察倍率:20000倍。
得られた像を用いて、面積1000μm2当たりに存在する全ての非相溶性樹脂の短径、長径を測定し、これら全ての平均値を非相溶性樹脂の平均分散径とした(単位:μm)。ここでいう長径、短径は、非相溶樹脂のサイズを横方向、厚み方向に沿って計測した。また、像の端で非相溶樹脂が見切れてしまっているものについては、測定する必要は無い。なお、ここでいう短径、長径とは、断面に観察される各非相溶性樹脂のサイズを横方向、厚み方向に沿って計測した値のうち、それぞれ最も小さい部分と最も大きい部分の長さである。
(17)粒子の平均粒径
堀場製作所製CAPA500を用いて、遠心沈降法により測定した体積平均粒径を平均粒径とした(単位:μm)。
(18)フィルムを構成する各層の厚み
上記(7)において、観察箇所を変えて、スキン層(B層など)の厚みを10箇所測定し、それらの平均値をそれぞれスキン層(B層など)の厚みとした(単位:μm)。すなわち、10枚の各断面写真で任意の1点をフィルムの実寸として読みとり、合計10点の値の平均値を当該フィルムのスキン層の厚みとした(単位:μm)この際、観察倍率は、できるだけ高く、即ち精度良く測定できる倍率であれば、任意に設定することができる。また、コア層の厚みは、下記(21)から求めた白色フィルム全体の厚みから、上記スキン層の厚みを差し引くことにより、算出した。
(19)メソペンタッド分率(mmmm)
ポリプロピレンを60℃以下の温度のn−ヘプタンで2時間抽出し、ポリプロピレン中の不純物・添加物を除去した。その後、130℃で2時間以上真空乾燥したものをサンプルとする。該サンプルを溶媒に溶解し、13C−NMRを用いて、以下の条件にてメソペンタッド分率(mmmm)を求めた(単位:%)。
[測定条件]
・装置 :Bruker社製DRX−500
・測定核 :13C核(共鳴周波数:125.8MHz)
・測定濃度 :10重量%
・溶媒 :ベンゼン:重オルトジクロロベンゼン=1:3混合溶液
・測定温度 :130℃
・スピン回転数 :12Hz
・NMR試料管 :5mm管
・パルス幅 :45°(4.5μs)
・パルス繰り返し時間:10秒
・データポイント :64K
・換算回数 :10000回
・測定モード :complete decoupling。
[解析条件]
LB(ラインブロードニングファクター)を1としてフーリエ変換を行い、mmmmピークを21.86ppmとした。WINFITソフト(Bruker社製)を用いて、ピーク分割を行う。その際に、高磁場側のピークから以下のようにピーク分割を行い、更にソフトの自動フィッテイングを行い、ピーク分割の最適化を行った上で、mmmmとss(mmmmのスピニングサイドバンドピーク)のピーク分率の合計をメソペンタッド分率(mmmm)とする。
(1)mrrm
(2)(3)rrrm(2つのピークとして分割)
(4)rrrr
(5)mrmm+rmrr
(6)mmrr
(7)mmmr
(8)ss(mmmmのスピニングサイドバンドピーク)
(9)mmmm
(10)rmmr。
同じサンプルについて同様の測定を5回行い、得られたmmmmの平均値を当該サンプルのmmmmとした。
(20)クッション率
ダイヤルゲージ式厚み計(JIS B 7503(1997)、PEACOCK社製UPRIGHT DIAL GAUGE(0.001×2mm)、No.25、測定子5mmφ平型)に、ダイヤルゲージスタンド(No.7001DGS−M)に設置する。これより得られるフィルム厚み(d0)を測定する。さらに、ダイヤルゲージ押さえ部分に500gfの荷重をかけた時の厚み(d500)を測定し、クッション率を下記式により算出した。
クッション率(%)={(d0−d500)/d0}×100
同じサンプルについて同様の測定を5回行い、得られたクッション率の平均値を当該サンプルのクッション率とした(単位:%)。
(21)フィルムの厚み
ダイヤルゲージ式厚み計(JIS B 7503(1997)、PEACOCK社製UPRIGHT DIAL GAUGE(0.001×2mm)、No.25、測定子5mmφ平型、125gf荷重)を用いて、フィルムの縦方向および幅方向に10cm間隔で10点測定し、それらの平均値を当該サンプルのフィルム厚みとした(単位:μm)。
(22)濡れ張力(mN/m)
ホルムアミドとエチレングリコールモノエーテルとの混合液を用いて、JIS K 6768(1999)に基づいて測定した(単位:mN/m)。
(23)折れしわ耐性
白色フィルムの表面(受容層形成面と反対面)に厚さ65μmの粘着剤付き上質紙(コクヨ(株)ワープロ用ラベルシート、タイ−2110−W)を均一に貼り合わせ、折れしわ評価用のサンプルを作製した。該サンプルを長さ200mm、幅15mmに切り出し、一端を固定し、200gの重りをワイヤーにて両サイドに繋げた直径5mmの鉄の円芯を軸に、該シートのフィルム面を内側にして180°折り返しながら、残る一端を200mm/秒で引張った。フィルム面上のしわの発生状態を、実体顕微鏡を用いて10倍で観察し、以下の基準で判定した。
A:1mm以上の長さを有するしわが0〜1個/cm発生した
B:1mm以上の長さを有するしわが2〜4個/cm発生した
C:1mm以上の長さを有するしわが5〜8個/cm発生した
D:1mm以上の長さを有するしわが9個以上/cm発生した。
工業的に実用に供することができるのは、A級、B級と判定されるフィルムである。
(24)実効延伸倍率
溶融ポリマーを口金から押し出し、金属ドラム上で固化させてシート状に冷却固化せしめた未延伸シートに、長さ1cm四方の升目をそれぞれの辺がフィルムの縦方向、幅方向に平行になるように刻印した。その後、引き続き延伸・巻き取りを行い、得られたフィルムの升目の長さ(cm)を縦方向に10升目分、幅方向に10升目分測定し、これらの平均値をそれぞれ縦方向、横方向の実効延伸倍率とした。
(25)キャスト工程における金属ドラムへの粘着の判定
キャスト工程において、未延伸シートが金属ドラムから剥離する箇所を、観察し、以下の基準で判定した。
○:ドラムに接触していた未延伸シートの表層(シートのD面側表層)の結晶化が完了しており、シートがドラムに粘着していない。
×:ドラムに接触していた未延伸シートの表層(シートのD面側表層)の結晶化が完了しておらず、シートがドラムに粘着している。
工業的に実用に供することができるのは、勿論○と判定された場合である。
(26)表面欠点の判定
二軸延伸後の白色フィルムの表面を目視により観察し、以下の基準で判定した。
○:クレータ状の欠点が観察されない。
×:クレータ状の欠点が観察される。
工業的に実用に供することができるのは、○と判定されるフィルムである。
(27)感度
本発明の白色フィルムを、厚さ150μmの紙に貼合せた。その後、マイクログラビアコーターを用いて、塗工量が乾燥時で3g/m2となるように、フィルム表面に受容層を形成するための以下のコーティング剤を塗布し、感熱転写記録用受容シートを作製した。
[受容層形成塗液]
ポリエステル樹脂(東洋紡績(株)製、バイロン200):20部
シリコーンオイル(信越化学工業(株)製、X−22−3000T):2部
トルエン:39部
メチルエチルケトン:39部。
次に、セイコー電子工業(株)製カラープリンター(Professional Color Point 1835)、および専用のインクリボンを用いて、上記受容シートの受容層を形成した面に、テストパターンを印画した。同じ受容シートについて同様の印画を10回行い、得られたシートの画像の再現性および鮮明さから、以下の基準で判定した。
A:全てのシートの色の濃度が高く、画像が鮮明であるので、極めて良好。
B:1〜2回、若干濃度が低いか、僅かに「欠け」が観察されるシートがあるが、それ以外は濃度が高く、画像が鮮明であり良好。
C:3〜5回濃度が低いか、「欠け」や「つぶれ」が観察され、また全体的に画像の赤みがかって見えたり、黄色みががって見えるシートがある。
D:6回以上濃度が低いか、「欠け」や「つぶれ」が見られ、また全体的に画像が赤みがかって見えたり、黄色みががって見えるシートがある。
(28)受容層の接着力
上記(27)において、得られた感熱転写記録用受容シートの受容層側の面、およびその反対側の面に、それぞれセロファンテープ(ニチバン(株)製、18mm幅)を互いに平行になり、同じ部分で対向するように、15cmの長さに貼り合わせた。その後、受容層側の面を利き手とは反対の手で抑え、受容層側のセロファンテープを約45°の角度の方向に利き手で急速に剥離した。この際、セロファンテープに移行した受容層(受容シートのその他の層を含む)の割合を観察し、以下の基準で評価した。
◎:受容層がセロファンテープに全く移行しない。または受容層(もしくはアンカー層)とフィルムの接着力が強力であるために、フィルム自体が凝集破壊する。
○:20%未満の受容層がセロファンテープに移行する。
△:20%以上50%未満の受容層がセロファンテープに移行する。
×:50%以上の受容層がセロファンテープに移行する。
工業的に実用に供することができるのは、◎、○と判定されるフィルムである。
(29)製膜性
5m幅の二軸配向白色ポリプロピレンフィルムを製膜し、10000m巻き取る際にフィルムの破れを観察し、以下の基準で判定した。
◎:破れが0回であり、製膜が安定していた。
○:破れが1回以下であり、製膜が安定していた。
×:破れが2回以上あり、必ずしも製膜は安定していなかった。
工業的に実用に供することができるのは、◎と○と判定されるフィルムである。
(30)工程通過性
上記(29)において、製膜機に配置された金属製ロール、特に延伸ロールに非相溶性樹脂や粒子の脱落に起因する白粉が付着していないか観察し、以下の基準で判定した。
○:延伸ロールに白粉が付着していない。
×:延伸ロールに白粉が付着しており、工程を汚した。
工業的に実用に供することができるのは、○と判定されるフィルムである。
本発明を以下の実施例を用いて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、所望の厚み構成を有するフィルムを得るためには、各押出機からのポリマー押出量を所定の値に調節した。なお、下記で工業的に製造可能であった、いずれのフィルムについても、別途上記[特性の測定方法および評価方法](5)の方法で、二軸配向していることを確認した。なお、表面光沢度、Raは、特に記載のない限り、D面側のB層について測定した。
(実施例1)
コア層(A層)の樹脂全体、スキン層(B層)の樹脂全体を以下の通りに準備した。
[A層の樹脂全体]
住友化学(株)製ホモポリプロピレンWF836DG3(MFR:7g/10分、II:97%;以下、単にhPP1と略称する場合がある)99.9重量%に、β晶核剤として、N,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボキサミド(新日本理化(株)製、NU−100)を0.1重量%の比率で混合した樹脂組成100重量部に、酸化防止剤として、チバガイギー(株)製IRGANOX1010を0.15重量部、熱安定剤として、チバガイギー(株)製IRGAFOS168を0.1重量部添加し、加熱された二軸押出機に供給した。300℃で溶融・混練した後、ガット状に押出し、20℃の水槽に通して冷却し、チップカッターで5mm長にカットした後、100℃で2時間乾燥したチップを用いた。
[B層の樹脂全体]
三井化学(株)製ホモポリプロピレンF107BV(MFR:7g/10分、II:98%;以下、単にhPP2と略称する場合がある)99.6重量%に、平均粒径1.7μmの球状シリカ粒子(水澤化学(株)製、AMT−20S;以下、単にSiO2と略称する場合がある)0.2重量%、ロジン系α晶結晶核剤(荒川化学(株)製、“パインクリスタル”KM−1600)0.2重量%を添加し、加熱された二軸押出機に供給した。280℃で溶融・混練した後、ガット状に押出し、20℃の水槽に通して冷却し、チップカッターで5mm長にカットした後、100℃で2時間乾燥したチップを用いた。
上記A層の樹脂全体を加熱された押出機(a)に供給して、210℃で溶融・混練させ、35μmカットのリーフディスク型のフィルターで濾過した後、マルチマニホールド型の2層複合口金に導入した。次に、上記B層の樹脂全体を加熱された押出機(b)に供給して、260℃で溶融・混練させ、35μmカットの金網フィルターで濾過した後、上記口金に導入した。口金内で押出機(a)の溶融ポリマーの片面に、押出機(b)の溶融ポリマーを積層してシート状に共押出成形した。
このようにして得られた溶融ポリマー積層体を、B層が金属ドラムに接するように口金からシート状に押出し、表面温度120℃に保持された金属ドラム(キャスティングドラム、キャストドラム、CD)上で固化させて、シート状に成形した。この際、シートの金属ドラムと接さない面(以下、単にND面と略称する場合がある)からエアーナイフを用いて、60℃のエアーを吹き付けてシートをドラムに密着させた。なお、金属ドラムとの接触時間は、20秒であった。
得られた未延伸積層シートを、125℃に加熱されたオーブンに導いて予熱した後、縦方向に4倍延伸し、100℃の冷却ロールで冷却した。
引き続き、上記縦延伸フィルムを、その両端をクリップで把持しながらテンターに導入し、150℃で予熱し、145℃に加熱した雰囲気中で横方向に8倍に延伸した。次いで、二軸配向白色ポリプロピレンフィルムの結晶配向を完了させて平面性、寸法安定性を付与するために、テンター内で横方向に5%の弛緩を与えつつ、160℃で熱固定し、均一に徐冷した後、室温まで冷却した。
さらに、窒素体積80%と炭酸ガス体積20%の混合雰囲気下で、得られた白色フィルムのB層表面(D面)を、空気中でB層の反対面をコロナ放電処理した。この際の処理速度は、15W・分/m2であり、B層表面の濡れ張力は42mN/m、反対面の濡れ張力は37mN/mであった。
また、得られた白色フィルムの厚み構成は、A層/B層=20/5μmである。
次に、上記[特性の測定方法および評価方法](27)の方法で、B層上に受容層を塗布して感熱転写記録用受容シートに加工した。
得られた二軸配向白色ポリプロピレンフィルム、受容シートの樹脂組成、製膜条件、フィルム特性、受容シート特性を表1〜4に示す。得られた白色フィルムは、金属ドラムに粘着せず、製膜性・工程通過性に優れていた。また、二軸延伸後のフィルム表面には、クレータ状の欠点が見られなかった。これを反映して、B層の表面粗さは小さく、光沢度は高かった。また、実質的に無核の均一かつ緻密なボイドを有することから、折れしわ耐性が悪化しない程度に比重が低く、クッション率が高く、良好な光学特性(OD、白色度、L、a、b値)を有していた。このような白色フィルムを基材として用い、B層上に受容層を形成した感熱転写記録用受容シートは、受容層の接着力が高く、極めて感度が高かった。
(実施例2)
A層の樹脂全体、B層の樹脂全体を以下の通り準備した。
[A層の樹脂全体]
実施例1において、β晶核剤を0.2重量%の比率で混合したこと以外は同様の条件で作製したチップを用いた。
[B層の樹脂全体]
実施例1において、住友化学(株)製の公知のエチレン・プロピレンランダム共重合体(エチレン共重合量:1重量%、MFR:4g/10分、II:97%;以下、単にrEPC1と略称する場合がある)98.3重量%に、SiO2粒子を1.5重量%、有機リン酸エステル金属塩系α晶結晶核剤(旭電化工業(株)製、“アデカスタブ”NA−11)を0.2重量%の比率でを添加した樹脂組成を用いたこと以外は同様の条件で作製したチップを用いた。
上記A層の樹脂全体を加熱された押出機(a)に供給して、210℃で溶融・混練させ、35μmカットのリーフディスク型のフィルターで濾過した後、マルチマニホールド型の3層複合口金に導入した。次に、上記B層の樹脂全体を加熱された押出機(b)に供給して、260℃で溶融・混練させ、35μmカットの金網フィルターで濾過した後、上記口金に導入した。口金内で押出機(a)の溶融ポリマーの両面に、押出機(b)の溶融ポリマーを積層してシート状に共押出成形した。
このようにして得られた溶融ポリマー積層体を、B層が金属ドラムに接するように口金からシート状に押出し、表面温度110℃に保持された金属ドラム上で固化させて、シート状に成形した。この際、シートの金属ドラムと接さない面(以下、単にND面と略称する場合がある)からエアーナイフを用いて、60℃のエアーを吹き付けてシートをドラムに密着させた。なお、金属ドラムとの接触時間は20秒であった。
得られた未延伸積層シートを用い、実施例1と同様の条件で二軸配向白色ポリプロピレンフィルムを作製した。また、得られた白色フィルムを基材として用い、実施例1と同様の条件でD面側のB層上に受容層を形成し、受容シートを作製した。
なお、得られた白色フィルムの厚み構成は、B層/A層/B層=3/29/3μmであった。
結果を表1〜4に示す。得られた白色フィルムは、金属ドラムに粘着せず、製膜性・工程通過性に優れていた。また、二軸延伸後のフィルム表面には、クレータ状の欠点が見られなかった。これを反映して、B層の表面粗さは小さく、光沢度は高かった。また、実質的に無核の均一かつ緻密なボイドを有することから、折れしわ耐性が悪化しない程度に比重が低く、クッション率が高かった。さらに、受容層を形成するB層に微細な空隙を形成しており、良好な光学特性(OD、白色度、L、a、b値;特にb値)を有していた。このような白色フィルムを基材として用い、B層上に受容層を形成した感熱転写記録用受容シートは、受容層の接着力が高く、極めて感度が高かった。
(実施例3)
A層の樹脂全体、B層の樹脂全体を以下の通り準備した。
[A層の樹脂全体]
実施例2で作製したチップを用いた。
[B層の樹脂全体]
実施例2において、SiO2粒子のかわりに平均粒径2μmの架橋ポリメチルメタクリレート粒子((株)日本触媒製、M1002;以下、単に架橋PMMAと略称する場合がある)を0.3重量%、α晶核剤のかわりに、主鎖骨格中に長鎖分岐を有するポリプロピレンである、Basell製ポリプロピレンPF−814(MFR:3g/10分、II:97%;以下、単にHMS−PPと略称する場合がある)を3重量%の比率で添加したこと以外は同様の条件で作製したチップを用いた。
上記A層の樹脂全体、B層の樹脂全体を用いて、金属ドラムの表面温度を120℃とし、厚み構成をB層/A層/B層=2/31/2μmとしたこと以外は実施例2と同様の条件で二軸配向白色ポリプロピレンフィルムを作製した。また、得られた白色フィルムを基材として用い、実施例1と同様の条件でD面側のB層上に受容層を形成し、受容シートを作製した。
結果を表1〜4に示す。得られた白色フィルムは、金属ドラムに粘着せず、製膜性・工程通過性に優れていた。また、二軸延伸後のフィルム表面には、クレータ状の欠点が見られなかった。これを反映して、B層の表面粗さは小さく、光沢度は高かった。また、実質的に無核の均一かつ緻密なボイドを有することから、折れしわ耐性が悪化しない程度に比重が低く、クッション率が高く、良好な光学特性(OD、白色度、L、a、b値)を有していた。このような白色フィルムを基材として用い、B層上に受容層を形成した感熱転写記録用受容シートは、受容層の接着力が高く、極めて感度が高かった。
(実施例4)
A層の樹脂全体、B層の樹脂全体を以下の通り準備した。
[A層の樹脂全体]
実施例1で作製したチップを用いた。
[B層の樹脂全体]
実施例2において、SiO2粒子を0.2重量%、α晶核剤として、ロジン系α晶結晶核剤(荒川化学(株)製、“パインクリスタル”KM−1600)を0.2重量%添加したこと以外は同様の条件で作製したチップを用いた。
上記A層の樹脂全体、B層の樹脂全体を用いて、金属ドラムの表面温度を120℃とし、厚み構成をB層/A層/B層=3/29/3μmとしたこと以外は実施例2と同様の条件で二軸配向白色ポリプロピレンフィルムを作製した。また、得られた白色フィルムを基材として用い、実施例1と同様の条件でD面側のB層上に受容層を形成し、受容シートを作製した。
結果を表1〜4に示す。得られた白色フィルムは、金属ドラムに粘着せず、製膜性・工程通過性に優れていた。また、二軸延伸後のフィルム表面には、クレータ状の欠点が見られなかった。これを反映して、B層の表面粗さは小さく、光沢度は高かった。また、実質的に無核の均一かつ緻密なボイドを有することから、折れしわ耐性が悪化しない程度に比重が低く、クッション率が高く、良好な光学特性(OD、白色度、L、a、b値)を有していた。このような白色フィルムを基材として用い、B層上に受容層を形成した感熱転写記録用受容シートは、受容層の接着力が高く、極めて感度が高かった。
(実施例5)
A層の樹脂全体、B層の樹脂全体、他の層(C層)の樹脂全体を以下の通り準備した。
[A層の樹脂全体]
実施例1において、β晶核剤のかわりに、Sunoco Chemicals製β晶核剤添加ポリプロピレン“BEPOL”B022−SP(MFR:1.8g/10分;以下、単にβPPと略称する場合がある)を50重量%の比率で混合したこと以外は同様の条件で作製したチップを用いた。
[B層の樹脂全体]
実施例3で作製したチップを用いた。
[C層の樹脂全体]
出光化学(株)製低立体規則性ホモポリプロピレンE2900(MFR:2.8g/10分、II:85%、メソペンタッド分率(mmmm):73.5%;以下、単にhPP3と略称する場合がある)99.7重量%に、架橋PMMA粒子0.3重量%を添加し、加熱された二軸押出機に供給した。280℃で溶融混・混練した後、ガット状に押出し、20℃の水槽に通して冷却し、チップカッターで5mm長にカットした後、100℃で2時間乾燥したチップを用いた。
上記A層の樹脂全体を加熱された押出機(a)に供給して、210℃で溶融・混練させ、35μmカットのリーフディスク型のフィルターで濾過した後、マルチマニホールド型の3層複合口金に導入した。次に、上記B層の樹脂全体を加熱された押出機(b)に供給して、260℃で溶融・混練させ、35μmカットの金網フィルターで濾過した後、上記口金に導入した。また、上記C層の樹脂全体を加熱された押出機(c)に供給して、260℃で溶融・混練させ、35μmカットの金網フィルターで濾過した後、上記口金に導入した。
口金内で押出機(a)の溶融ポリマーの両面に、押出機(b)、押出機(c)の溶融ポリマーをそれぞれ積層してシート状に共押出成形した。
このようにして得られた溶融ポリマー積層体を、B層が金属ドラムに接するように口金からシート状に押出し、表面温度120℃に保持された金属ドラム上で固化させ、シート状に成形した。この際、シートの金属ドラムと接さない面(以下、単にND面と略称する場合がある)からエアーナイフを用いて、60℃のエアーを吹き付けてシートをドラムに密着させた。なお、金属ドラムとの接触時間は、20秒であった。
得られた未延伸積層シートを用いて二軸延伸後、B層表面(D面側)は空気中で、C層表面(ND面側)は窒素体積80%と炭酸ガス体積20%の混合雰囲気下で、コロナ放電処理を行ったこと以外は実施例1と同様の条件で二軸配向白色ポリプロピレンフィルムを作製した。また、得られた白色フィルムを基材として用い、実施例1と同様の条件でND面側のC層上に受容層を形成し、受容シートを作製した。
なお、得られた白色フィルムのB層表面の濡れ張力は37mN/m、C層表面の濡れ張力は42mN/mであった。また、その厚み構成は、B層/A層/C層=3/29/3μmであった。
結果を表1〜4に示す。得られた白色フィルムは、金属ドラムに粘着せず、製膜性・工程通過性に優れていた。また、二軸延伸後のフィルム表面には、クレータ状の欠点が見られなかった。これを反映して、B層の表面粗さは小さく、光沢度は高かった。また、実質的に無核の均一かつ緻密なボイドを有することから、折れしわ耐性が悪化しない程度に比重が低く、クッション率が高かった。さらに、受容層を形成するB層に微細な空隙を形成しており、良好な光学特性(OD、白色度、L、a、b値)を有していた。加えて、受容層との接着性に優れたC層上に受容層を形成することにより、受容層との接着力が極めて高く、このような白色フィルムを基材として用いた感熱転写記録用受容シートは、極めて感度が高かった。
(実施例6)
A層の樹脂全体、B層の樹脂全体、C層の樹脂全体を以下の通り準備した。
[A層の樹脂全体]
hPP1、94.8重量%に、β晶核剤として、N,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボキサミド(新日本理化(株)製、NU−100)0.2重量%、ポリオレフィン系エラストマー樹脂として、メタロセン触媒法による低密度ポリエチレン(デュポンダウエラストマージャパン(株)製、“エンゲージ”8411;MFR:18g/10分(190℃);以下、単にmVLDPEと略称する場合がある)5重量%の比率で混合した樹脂組成100重量部に、酸化防止剤として、チバガイギー(株)製IRGANOX1010を0.15重量部、熱安定剤として、チバガイギー(株)製IRGAFOS168を0.1重量部添加し、加熱された二軸押出機に供給した。300℃で溶融・混練した後、ガット状に押出し、20℃の水槽に通して冷却し、チップカッターで5mm長にカットした後、100℃で2時間乾燥したチップを用いた。
[B層の樹脂全体]
実施例1で作製したチップを用いた。
[C層の樹脂全体]
住友化学(株)製エチレン・プロピレンランダム共重合体FM401G(エチレン共重合量:4重量%、MFR:7g/10分;以下、単にrEPC2と略称する場合がある)99.8重量%に、SiO2粒子0.2重量%を添加し、加熱された二軸押出機に供給した。280℃で溶融混・混練した後、ガット状に押出し、20℃の水槽に通して冷却し、チップカッターで5mm長にカットした後、100℃で2時間乾燥したチップを用いた。
上記A層の樹脂全体、B層の樹脂全体、C層の樹脂全体を用いたこと以外は実施例5と同様の条件で二軸配向白色ポリプロピレンフィルムを作製した。また、得られた白色フィルムを基材として用い、実施例1と同様の条件でND面側のC層上に受容層を形成し、受容シートを作製した。
結果を表1〜4に示す。得られた白色フィルムは、金属ドラムに粘着せず、製膜性・工程通過性に優れていた。また、二軸延伸後のフィルム表面には、クレータ状の欠点が見られなかった。これを反映して、B層の表面粗さは小さく、光沢度は高かった。また、実質的に無核の均一かつ緻密なボイドを有することから、折れしわ耐性が悪化しない程度に比重が低く、クッション率が高く、良好な光学特性(OD、白色度、L、a、b値)を有していた。加えて、受容層との接着性に優れたC層上に受容層を形成することにより、受容層との接着力が極めて高く、このような白色フィルムを基材として用いた感熱転写記録用受容シートは、極めて感度が高かった。
(実施例7)
A層の樹脂全体、B層の樹脂全体、C層の樹脂全体を以下の通り準備した。
[A層の樹脂全体]
実施例6において、β晶核剤の添加量を0.05重量%とし、mVLDPEの添加量を7重量%としたこと以外は同様の条件で作製したチップを用いた。
[B層の樹脂全体]
実施例6において、α晶核剤のかわりにHMS−PPを1重量%、SiO2粒子のかわりに、非相溶性樹脂であるポリメチルペンテン(三井化学(株)製、“TPX”MX−004;MFR:26g/10分(260℃);以下、単にPMPと略称する場合がある)を3重量%の比率で添加したこと以外は同様の条件で作製したチップを用いた。
[C層の樹脂全体]
実施例5において、架橋PMMA粒子のかわりに、PMPを3重量%の比率で添加したこと以外は同様の条件で作製したチップを用いた。
上記A層の樹脂全体、B層の樹脂全体、C層の樹脂全体を用いたこと以外は実施例5と同様の条件で二軸配向白色ポリプロピレンフィルムを作製した。また、得られた白色フィルムを基材として用い、実施例1と同様の条件でND面側のC層上に受容層を形成し、受容シートを作製した。B層、C層におけるPMPの平均分散径は、いずれも0.6μmであった。
結果を表1〜4に示す。得られた白色フィルムは、金属ドラムに粘着せず、製膜性・工程通過性に優れていた。また、二軸延伸後のフィルム表面には、クレータ状の欠点が見られなかった。これを反映して、B層の表面粗さは小さく、光沢度は高かった。また、実質的に無核の均一かつ緻密なボイドを有することから、折れしわ耐性が悪化しない程度に比重が低く、クッション率が高かった。さらに、B層、C層に微細な空隙を形成しており(C層の空隙率:1.8%)、良好な光学特性(OD、白色度、L、a、b値;特にb値)を有していた。加えて、受容層との接着性に優れたC層上に受容層を形成することにより、受容層との接着力が極めて高く、このような白色フィルムを基材として用いた感熱転写記録用受容シートは、極めて感度が高かった。
(実施例8)
実施例6において、金属ドラムの周速を上げることにより、ライン速度を上げたこと以外は同様の条件で二軸配向白色ポリプロピレンフィルムを作製した。なお、金属ドラムとの接触時間は13秒であった。また、得られた白色フィルムを基材として用い、実施例1と同様の条件でND面側のC層上に受容層を形成し、受容シートを作製した。
結果を表1〜4に示す。得られた白色フィルムは、金属ドラムとの接触時間が短くなっても、金属ドラムに粘着せず、製膜性・工程通過性に優れていた。また、二軸延伸後のフィルム表面には、クレータ状の欠点が見られなかった。これを反映して、B層の表面粗さは小さく、光沢度は高かった。また、実質的に無核の均一かつ緻密なボイドを有することから、折れしわ耐性が悪化しない程度に比重が低く、クッション率が高く、良好な光学特性(OD、白色度、L、a、b値)を有していた。加えて、受容層との接着性に優れたC層上に受容層を形成することにより、受容層との接着力が極めて高く、このような白色フィルムを基材として用いた感熱転写記録用受容シートは、極めて感度が高かった。
(実施例9)
実施例8において、金属ドラムの周速をさらに上げたこと以外は同様の条件で二軸配向白色ポリプロピレンフィルムを作製した。なお、金属ドラムとの接触時間は10秒であった。また、得られた白色フィルムを基材として用い、実施例1と同様の条件でND面側のC層上に受容層を形成し、受容シートを作製した。
結果を表1〜4に示す。得られた白色フィルムは、金属ドラムとの接触時間が極端に短くなっても、金属ドラムに粘着せず、製膜性・工程通過性に優れていた。また、二軸延伸後のフィルム表面には、クレータ状の欠点が見られなかった。これを反映して、B層の表面粗さは小さく、光沢度は高かった。また、実質的に無核の均一かつ緻密なボイドを有することから、折れしわ耐性が悪化しない程度に比重が低く、クッション率が高く、良好な光学特性(OD、白色度、L、a、b値)を有していた。加えて、受容層との接着性に優れたC層上に受容層を形成することにより、受容層との接着力が極めて高く、このような白色フィルムを基材として用いた感熱転写記録用受容シートは、極めて感度が高かった。
(実施例10)
実施例3において、金属ドラムの表面温度を125℃に上げたこと以外は同様の条件で二軸配向白色ポリプロピレンフィルムを作製した。また、得られた白色フィルムを基材として用い、実施例1と同様の条件でD面側のB層上に受容層を形成し、受容シートを作製した。
結果を表1〜4に示す。得られた白色フィルムは、金属ドラムの表面温度を上げても、金属ドラムに粘着せず、製膜性・工程通過性に優れていた。また、二軸延伸後のフィルム表面には、クレータ状の欠点が見られなかった。これを反映して、B層の表面粗さは小さく、光沢度は高かった。また、実質的に無核の均一かつ緻密なボイドを有することから、折れしわ耐性が悪化しない程度に比重が低く、クッション率が高く、良好な光学特性(OD、白色度、L、a、b値)を有していた。このような白色フィルムを基材として用い、B層上に受容層を形成した感熱転写記録用受容シートは、受容層の接着力が高く、極めて感度が高かった。
(実施例11)
実施例10において、縦延伸におけるオーブン温度を130℃に上げたこと以外は同様の条件で二軸配向白色ポリプロピレンフィルムを作製した。また、得られた白色フィルムを基材として用い、実施例1と同様の条件でD面側のB層上に受容層を形成し、受容シートを作製した。
結果を表1〜4に示す。得られた白色フィルムは、金属ドラムに粘着せず、製膜性・工程通過性に優れていた。また、二軸延伸後のフィルム表面には、クレータ状の欠点が見られなかった。これを反映して、B層の表面粗さは小さく、光沢度は高かった。縦延伸温度を上げることにより、金属ドラムの温度を上げる前と同程度の比重が得られることから、降温キャストが可能になれば、縦延伸温度を上げることができ、縦延伸機のモーターへの負荷を低減できる。また、実質的に無核の均一かつ緻密なボイドを有することから、折れしわ耐性が悪化しない程度に比重が低く、クッション率が高く、良好な光学特性(OD、白色度、L、a、b値)を有していた。このような白色フィルムを基材として用い、B層上に受容層を形成した感熱転写記録用受容シートは、受容層の接着力が高く、極めて感度が高かった。
(実施例12)
実施例6において、B層をA層の両面に積層し、フィルムの厚み構成をB層/A層/B層=2/21/2μmとしたこと以外は同様の条件で二軸配向白色ポリプロピレンフィルムを作製した。また、得られた白色フィルムを基材として用い、実施例1と同様の条件でD面側のB層上に受容層を形成し、受容シートを作製した。
結果を表1〜4に示す。得られた白色フィルムは、金属ドラムに粘着せず、製膜性・工程通過性に優れていた。また、二軸延伸後のフィルム表面には、クレータ状の欠点が見られなかった。これを反映して、B層の表面粗さは小さく、光沢度は高かった。また、実質的に無核の均一かつ緻密なボイドを有することから、折れしわ耐性が悪化しない程度に比重が低く、クッション率が高く、良好な光学特性(OD、白色度、L、a、b値)を有していた。このような白色フィルムを基材として用い、B層上に受容層を形成した感熱転写記録用受容シートは、受容層の接着力が高く、極めて感度が高かった。
(実施例13)
実施例6において、B層をA層の両面に積層し、フィルムの厚み構成をB層/A層/B層=3/44/3μmとしたこと以外は同様の条件で二軸配向白色ポリプロピレンフィルムを作製した。また、得られた白色フィルムを基材として用い、実施例1と同様の条件でD面側のB層上に受容層を形成し、受容シートを作製した。
結果を表1〜4に示す。得られた白色フィルムは、金属ドラムに粘着せず、製膜性・工程通過性に優れていた。また、二軸延伸後のフィルム表面には、クレータ状の欠点が見られなかった。これを反映して、B層の表面粗さは小さく、光沢度は高かった。また、実質的に無核の均一かつ緻密なボイドを有することから、折れしわ耐性が悪化しない程度に比重が低く、クッション率が高く、良好な光学特性(OD、白色度、L、a、b値)を有していた。このような白色フィルムを基材として用い、B層上に受容層を形成した感熱転写記録用受容シートは、受容層の接着力が高く、極めて感度が高かった。
(実施例14)
A層の樹脂全体、B層の樹脂全体を以下の通り準備した。
[A層の樹脂全体]
実施例2において、hPP1を96.8重量%、HMS−PPを3重量%、β晶核剤を0.2重量%の比率で添加した樹脂組成を用いたこと以外は同様の条件で作製したチップを用いた。
[B層の樹脂全体]
実施例7において、HMS−PPを3重量%、PMPのかわりにSiO2粒子を0.2重量%の比率で添加したこと以外は同様の条件で作製したチップを用いた。
上記A層の樹脂全体、B層の樹脂全体を用いて、縦延伸倍率を5倍に上げ、厚み構成をB層/A層/B層=3/29/3μmとしたこと以外は実施例3と同様の条件で二軸配向白色ポリプロピレンフィルムを作製した。また、得られた白色フィルムを基材として用い、実施例1と同様の条件でD面側のB層上に受容層を形成し、受容シートを作製した。
結果を表1〜4に示す。得られた白色フィルムは、金属ドラムに粘着せず、縦延伸倍率を上げても製膜性・工程通過性に優れていたことから、生産性に優れる。また、二軸延伸後のフィルム表面には、クレータ状の欠点が見られないことから、B層の表面粗さは小さく、光沢度は高かった。これを反映して、B層の表面粗さは小さく、光沢度は高かった。また、実質的に無核の均一かつ緻密なボイドを有することから、折れしわ耐性が悪化しない程度に比重が低く、クッション率が高く、良好な光学特性(OD、白色度、L、a、b値)を有していた。このような白色フィルムを基材として用い、B層上に受容層を形成した感熱転写記録用受容シートは、受容層の接着力が高く、極めて感度が高かった。
(実施例15)
実施例14において、縦延伸倍率をさらに6倍に上げたこと以外は同様の条件で二軸配向白色ポリプロピレンフィルムを作製した。また、得られた白色フィルムを基材として用い、実施例1と同様の条件でD面側のB層上に受容層を形成し、受容シートを作製した。
結果を表1〜4に示す。得られた白色フィルムは、金属ドラムに粘着せず、縦延伸倍率を上げても製膜性・工程通過性に優れていたことから、生産性に優れる。また、二軸延伸後のフィルム表面には、クレータ状の欠点が見られないことから、B層の表面粗さは小さく、光沢度は高かった。また、実質的に無核の均一かつ緻密なボイドを有することから、折れしわ耐性が悪化しない程度に比重が低く、クッション率が高く、良好な光学特性(OD、白色度、L、a、b値)を有していた。このような白色フィルムを基材として用い、B層上に受容層を形成した感熱転写記録用受容シートは、受容層の接着力が高く、極めて感度が高かった。
(実施例16)
実施例14において、縦延伸倍率を4倍としたこと以外は同様の条件で作製した二軸配向白色ポリプロピレンフィルムを作製した。
グラビアコーターを用いて、得られた白色フィルムのD面側のB層上に下記組成のアンカー層を乾燥後の厚みが2μmとなるように塗布した。
[アンカー層組成]
・大日本インキ化学工業(株)製ポリエステルウレタン系水分散性樹脂(“ハイドラン”AP−40F;固形分濃度30%):100重量部
・N−メチルピロリドン:15重量部
・大日本インキ化学工業(株)製メラミン化合物“ベッカミン”APM:5重量部
・大日本インキ化学工業(株)製水溶性酸性化合物(“キャタリスト”PTS):2重量部
・球状シリカ粒子(平均粒径0.1μm):0.2重量部
得られた白色フィルムを基材として用い、実施例1と同様の条件でアンカー層上に受容層を形成し、受容シートを作製した。
結果を表1〜4に示す。得られた白色フィルムは、金属ドラムに粘着せず、製膜性・工程通過性に優れていた。また、二軸延伸後のフィルム表面には、クレータ状の欠点が見られなかった。これを反映して、B層の表面粗さは小さく、光沢度は高かった。また、実質的に無核の均一かつ緻密なボイドを有することから、折れしわ耐性が悪化しない程度に比重が低く、クッション率が高かった。加えて、受容層との接着性に優れたアンカー層上に受容層を形成することにより、受容層との接着力が極めて高く、このような白色フィルムを基材として用いた感熱転写記録用受容シートは、極めて感度が高かった。
(実施例17)
A層の樹脂全体、B層の樹脂全体を以下の通り準備した。
[A層の樹脂全体]
hPP1を94.8重量%に、β晶核剤としてNU−100を0.2重量%、HMS−PPを3重量%、mVLDPEを3重量%の比率で混合した樹脂組成100重量部に、酸化防止剤として、チバガイギー(株)製IRGANOX1010を0.15重量部、熱安定剤として、チバガイギー(株)製IRGAFOS168を0.1重量部添加し、加熱された二軸押出機に供給した。300℃で溶融・混練した後、ガット状に押出し、20℃の水槽に通して冷却し、チップカッターで5mm長にカットした後、100℃で2時間乾燥したチップを用いた。
[B層の樹脂全体]
実施例14で作製したチップを用いた。
[C層の樹脂全体]
実施例6において、rEPC1を69.7重量%、rEPC2を30重量%、架橋PMMA粒子を0.3重量%の比率でを添加した樹脂組成を用いたこと以外は同様の条件で作製したチップを用いた。
上記A層の樹脂全体を加熱された押出機(a)に供給して、210℃で溶融・混練させ、35μmカットのリーフディスク型のフィルターで濾過した後、マルチマニホールド型の3層複合口金に導入した。次に、上記B層の樹脂全体を加熱された押出機(b)に供給して、260℃で溶融・混練させ、35μmカットの金網フィルターで濾過した後、上記口金に導入した。口金内で押出機(a)の溶融ポリマーの両面に、押出機(b)の溶融ポリマーを積層してシート状に共押出成形した。
このようにして得られた溶融ポリマー積層体を、B層が金属ドラムに接するように口金からシート状に押出し、表面温度120℃に保持された金属ドラム上で固化させて、シート状に成形した。この際、シートの金属ドラムと接さない面(以下、単にND面と略称する場合がある)からエアーナイフを用いて、60℃のエアーを吹き付けてシートをドラムに密着させた。なお、金属ドラムとの接触時間は20秒であった。
得られた未延伸積層シートを、132℃に加熱されたオーブンに導いて予熱した後、縦方向に5倍延伸し、100℃の冷却ロールで冷却した。
引き続き、上記縦延伸フィルムを、その両端をクリップで把持しながらテンターに導入し、150℃で予熱し、148℃に加熱した雰囲気中で横方向に8倍に延伸した。次いで、二軸配向白色ポリプロピレンフィルムの結晶配向を完了させて平面性、寸法安定性を付与するために、テンター内で横方向に5%の弛緩を与えつつ、158℃で熱固定し、均一に徐冷した後、室温まで冷却した。
さらに、得られた白色フィルムのB層表面(D面)を空気中で、C層表面を窒素雰囲気下でコロナ放電処理した。この際の処理速度は、15W・分/m2であり、B層表面の濡れ張力は37mN/m、C層表面の濡れ張力は43mN/mであった。
また、得られた白色フィルムの厚み構成は、B層/A層/C層=3/29/3μmである。
得られた白色フィルムを基材として用い、実施例16と同様の条件でND面側のC層上にアンカー層、受容層を順次形成し、受容シートを作製した。
結果を表1〜4に示す。得られた白色フィルムは、金属ドラムに粘着せず、製膜性・工程通過性に優れていた。また、二軸延伸後のフィルム表面には、クレータ状の欠点が見られなかった。これを反映して、B層の表面粗さは小さく、光沢度は高かった。また、実質的に無核の均一かつ緻密なボイドを有することから、折れしわ耐性が悪化しない程度に比重が低く、クッション率が高かった。加えて、フィルム−アンカー層間の接着力が高く、かつ受容層との接着性に優れたアンカー層上に受容層を形成することにより、受容層との接着力が極めて高かった。このような白色フィルムを基材として用いた感熱転写記録用受容シートは、極めて感度が高かった。
(比較例1)
実施例1において、β晶核剤の添加量を0.05重量%としたこと以外は同様の条件で作製したA層の樹脂全体を、加熱された押出機(a)に供給して、210℃で溶融・混練させ、35μmカットのリーフディスク型のフィルターで濾過した後、単層口金に導入した。次に、溶融ポリマーをシート状に押出し、表面温度120℃に保持された金属ドラム上で固化させ、シート状に成形した。この際、ND面からエアーナイフを用いて、60℃のエアーを吹き付けてシートをドラムに密着させた。なお、金属ドラムとの接触時間は20秒であった。
得られた未延伸シートを用い、実施例1と同様の条件で、厚みが35μmである二軸配向微多孔フィルムを作製した。また、得られた微多孔フィルムを基材として用い、実施例1と同様の条件でフィルムのD面側の表面に受容層を形成し、受容シートを作製した。
結果を表5〜8に示す。得られた微多孔フィルムは、金属ドラムに粘着せず、製膜性・工程通過性に優れていた。また、二軸延伸後のフィルム表面には、クレータ状の欠点が見られなかった。しかしながら、B層が積層されていないため、光沢感が無かった。また、貫通孔を有しているため、受容層を塗布すると、コーティング剤がフィルム内部に浸透し、受容シートに加工後も光沢感が無かった。さらに、フィルム表層に大量の空隙が存在するためか、受容層の接着力が低かった。
(比較例2)
比較例1において、実施例1で用いたA層の樹脂全体を用いたこと以外は同様の条件で、厚みが35μmである二軸配向微多孔フィルムを作製した。また、得られた微多孔フィルムを基材として用い、実施例と同様の条件でフィルムのD面側表面に受容層を形成し、受容シートを作製した。
結果を表5〜8に示す。得られた微多孔フィルムは、金属ドラムに粘着せず、製膜性・工程通過性に優れていた。また、二軸延伸後のフィルム表面には、クレータ状の欠点が見られなかった。しかしながら、B層が積層されていないため、光沢感が無かった。また、貫通孔を有しているため、受容層を塗布すると、コーティング剤がフィルム内部に浸透し、受容シートも光沢感が無かった。さらに、フィルム表層に大量の空隙が存在するためか、受容層の接着力が低かった。
(比較例3)
比較例1において、実施例2で用いたA層の樹脂全体を用いたこと以外は同様の条件で、厚みが35μmである二軸配向微多孔フィルムを作製した。また、得られた微多孔フィルムを基材として用い、実施例と同様の条件でフィルムのD面側表面に受容層を形成し、受容シートを作製した。
結果を表5〜8に示す。得られた微多孔フィルムは、金属ドラムに粘着せず、製膜性・工程通過性に優れていた。また、二軸延伸後のフィルム表面には、クレータ状の欠点が見られなかった。しかしながら、B層が積層されていないため、光沢感が無かった。また、貫通孔を有しているため、受容層を塗布すると、コーティング剤がフィルム内部に浸透し、受容シートに加工後も光沢感が無かった。さらに、フィルム表層に大量の空隙が存在するためか、受容層の接着力が低かった。
(比較例4)
A層の樹脂全体、B層の樹脂全体を以下の通り準備した。
[A層の樹脂全体]
実施例2で作製したチップを用いた。
[B層の樹脂全体]
実施例1において、α晶核剤を添加しなかったこと以外は同様の条件で作製したチップを用いた。
上記A層の樹脂全体、B層の樹脂全体を用いて、厚み構成を3/29/3μmとしたこと以外は実施例3と同様の条件で二軸配向白色ポリプロピレンフィルムを作製した。また、得られた白色フィルムを基材として用い、実施例1と同様の条件でD面側のB層上に受容層を形成し、受容シートを作製した。
結果を表5〜8に示す。得られた白色フィルムは、金属ドラムに粘着した。また、二軸延伸後のフィルム表面には多数のクレータ状の欠点が見られた。これを反映して、B層の光沢度は極めて低かった。また、この白色フィルムを基材として用い、B層上に受容層を形成した感熱転写記録用受容シートは、感度が低かった。
(比較例5)
実施例3において、B層の樹脂全体に、HMS−PPを添加せず、厚み構成を3/29/3μmとしたこと以外は同様の条件で、二軸配向白色ポリプロピレンフィルムを作製した。また、得られた白色フィルムを基材として用い、実施例1と同様の条件でD面側のB層上に受容層を形成し、受容シートを作製した。
結果を表5〜8に示す。得られた白色フィルムは、金属ドラムに粘着した。また、二軸延伸後のフィルム表面には、多数のクレータ状の欠点が見られた。これを反映して、B層の光沢度は極めて低かった。また、この白色フィルムを基材として用い、B層上に受容層を形成した感熱転写記録用受容シートは、感度が低かった。
(比較例6)
比較例4において、金属ドラムの周速を上げることにより、ライン速度を上げたこと以外は同様の条件で二軸配向白色ポリプロピレンフィルムを作製することを試みた。なお、金属ドラムとの接触時間は、13秒であった。
結果を表5〜8に示す。未延伸シートが金属ドラムに粘着し、未延伸シート表面に著しい粘着跡が観察されたため、工業的に製造できないフィルムであった。
(比較例7)
比較例6において、金属ドラムの周速をさらに上げたこと以外は同様の条件で二軸配向白色ポリプロピレンフィルムを作製することを試みた。なお、金属ドラムとの接触時間は、10秒であった。
結果を表5〜8に示す。未延伸シートが金属ドラムに粘着し、剥離せずにそのまま金属ドラムに何周も巻き付いた。上記速度では金属ドラムから未延伸シートを剥離させることが困難であったため、工業的に製造できないフィルムであった。
(比較例8)
比較例4において、金属ドラムの表面温度を125℃に上げたこと以外は同様の条件で二軸配向白色ポリプロピレンフィルムを作製することを試みた。
結果を表5〜8に示す。未延伸シートが金属ドラムに粘着し、未延伸シート表面に著しい粘着跡が観察された。また、二軸延伸後の白色フィルムを何とか採取したが、金属ドラムの表面温度を上げることにより、フィルム表面にはさらに多くのクレータ状欠点が観察されたため、工業的に製造できないフィルムであった。
(比較例9)
A層の樹脂全体、B層の樹脂全体を以下の通り準備した。
[A層の樹脂全体]
実施例1において、住友化学(株)製ホモポリプロピレンFS2016(MFR:2.3g/10分、II:96.5%;以下、単にhPP4と略称する場合がある)84.9重量%に、β晶核剤として、N,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボキサミド(新日本理化(株)製、NU−100)を0.1重量%、非相溶性樹脂として、ポリカーボネート(出光化学(株)製、“タフロン”A1500;MFR:65g/10分(300℃)、Tg:150℃;以下、単にPCと略称する場合がある)を15重量%の比率で添加し、加熱された二軸押出機に供給した。270℃で溶融・混練した後、ガット状に押出し、20℃の水槽に通して冷却し、チップカッターで5mm長にカットした後、100℃で2時間乾燥したチップを用いた。
[B層の樹脂全体]
実施例1において、α晶核剤を添加しなかったこと以外は同様の条件で作製したチップを用いた。
上記A層の樹脂全体を加熱された押出機(a)に供給して、280℃で溶融・混練させ、35μmカットのリーフディスク型のフィルターで濾過した後、マルチマニホールド型の3層複合口金に導入した。次に、上記B層の樹脂全体を加熱された押出機(b)に供給して、260℃で溶融・混練させ、35μmカットの金網フィルターで濾過した後、上記口金に導入した。口金内で押出機(a)の溶融ポリマーの両面に、押出機(b)の溶融ポリマーを積層してシート状に共押出成形した。
このようにして得られた溶融ポリマー積層体を、B層が金属ドラムに接するように口金からシート状に押出し、表面温度80℃に保持された金属ドラム上で固化させ、シート状に成形した。この際、シートのND面からエアーナイフを用いて、30℃のエアーを吹き付けてシートをドラムに密着させた。なお、金属ドラムとの接触時間は20秒であった。
得られた未延伸積層シートを、150℃に加熱されたオーブンに導いて予熱した後、縦方向に5倍延伸し、30℃の冷却ロールで冷却した。
引き続き、上記縦延伸フィルムを、その両端をクリップで把持しながらテンターに導入し、165℃で予熱し、165℃に加熱した雰囲気中で横方向に9倍に延伸した。次いで、二軸配向白色ポリプロピレンフィルムの結晶配向を完了させて平面性、寸法安定性を付与するために、テンター内で横方向に8%の弛緩を与えつつ、160℃で熱固定し、均一に徐冷した後、室温まで冷却した。
さらに、窒素体積80%と炭酸ガス体積20%の混合雰囲気下で、得られた白色フィルムのD面側のB層表面を、空気中でND側のB層表面をコロナ放電処理した。この際の処理速度は、15W・分/m2であり、D面側のB層表面の濡れ張力は、42mN/m、ND面側のB層表面の濡れ張力は、37mN/mであった。
また、得られた白色フィルムの厚み構成は、B層/A層/B層=3/29/3μmであった。
次に、得られた白色フィルムを基材として用い、実施例1と同様の条件でフィルムのD面側の表面に受容層を形成し、受容シートを作製した。
結果を表5〜8に示す。得られた白色フィルムは、粘着や表面欠点は見られなかったものの、実質的に無核のボイドを有さず、ボイドが粗大であった。このため、この白色フィルムを基材として用い、B層上に受容層を形成した感熱転写記録用受容シートは、感度が低かった。
(比較例10)
A層の樹脂全体、B層の樹脂全体を以下の通り準備した。
[A層の樹脂全体]
hPP4を60重量%、β晶核剤を添加したエチレン・プロピレンブロック共重合体(Sunoco Chemicals製、“BEPOL”BI−4020−SP;エチレン共重合量40%のエチレン・プロピレンラバー(EPR)を40重量%含有、MFR:2g/10分;以下、単にβbEPCと略称する場合がある。)を40重量%の比率で混合し、加熱された二軸押出機に供給した。270℃で溶融・混練した後、ガット状に押出し、20℃の水槽に通して冷却し、チップカッターで5mm長にカットした後、100℃で2時間乾燥したチップを用いた。
[B層の樹脂全体]
上記βbEPCを用いた。
上記A層の樹脂全体を加熱された押出機(a)に供給して、210℃で溶融・混練させ、35μmカットのリーフディスク型のフィルターで濾過した後、マルチマニホールド型の3層複合口金に導入した。次に、上記B層の樹脂全体を加熱された押出機(b)に供給して、240℃で溶融・混練させ、35μmカットの金網フィルターで濾過した後、上記口金に導入した。口金内で押出機(a)の溶融ポリマーの両面に、押出機(b)の溶融ポリマーを積層してシート状に共押出成形した。
このようにして得られた溶融ポリマー積層体を、B層が金属ドラムに接するように口金からシート状に押出し、表面温度120℃に保持された金属ドラム上で固化させ、シート状に成形した。この際、シートのND面からエアーナイフを用いて、60℃のエアーを吹き付けてシートをドラムに密着させた。なお、金属ドラムとの接触時間は20秒であった。
得られた未延伸積層シートを用い、縦延伸におけるオーブン温度を110℃としたこと以外は実施例1と同様の条件で二軸配向白色ポリプロピレンフィルムを作製した。また、得られた白色フィルムを基材として用い、実施例1と同様の条件でD面側のB層上に受容層を形成し、受容シートを作製した。
なお、得られた白色フィルムの厚み構成は、B層/A層/B層=2.5/30/2.5μmであった。
結果を表5〜8に示す。得られた白色フィルムは、粘着や表面欠点は見られなかったものの、触針の針が引っ掛かってRaが測定できないほど、フィルム表面の凹凸が大きく、かつ表面光沢度が著しく低くなった。また、ゲルに起因すると思われるパーティクルが多数観察された。また、実質的に無核のボイドを有さず、ボイドが粗大であった。さらに、受容層を塗布すると、コーティング剤がフィルム内部に一部浸透し、受容シートも光沢感が無く、スキン層に大量の空隙を有するため、受容層の接着力が低かった。このため、この白色フィルムを基材として用い、B層上に受容層を形成した感熱転写記録用受容シートは、極めて感度が低かった。
(比較例11)
A層の樹脂全体を以下の通り準備した。
[A層の樹脂全体]
hPP1を70重量%、公知の無機粒子である炭酸カルシウム(白石カルシウム(株)製;平均粒径:4μm;以下、単にCaCO3と略称する場合がある)を30重量%の比率で添加し、加熱された二軸押出機に供給した。200℃で溶融・混練した後、ガット状に押出し、20℃の水槽に通して冷却し、チップカッターで5mm長にカットした後、100℃で2時間乾燥したチップを用いた。
上記A層の樹脂全体を、加熱された押出機(a)に供給して、200℃で溶融・混練させ、60μmカットの金網フィルターで濾過した後、単層口金に導入した。次に、溶融ポリマーをシート状に押出し、表面温度90℃に保持された金属ドラム上で固化させ、シート状に成形した。この際、ND面からエアーナイフを用いて、30℃のエアーを吹き付けてシートをドラムに密着させた。なお、金属ドラムとの接触時間は20秒であった。
得られた未延伸シートを、120℃に加熱されたオーブンに導いて予熱した後、縦方向に4.5倍延伸し、100℃の冷却ロールで冷却した。
引き続き、上記縦延伸フィルムを、その両端をクリップで把持しながらテンターに導入し、140℃で予熱し、135℃に加熱した雰囲気中で横方向に10倍に延伸した。次いで、二軸配向白色ポリプロピレンフィルムの結晶配向を完了させて平面性、寸法安定性を付与するために、テンター内で横方向に5%の弛緩を与えつつ、150℃で熱固定し、均一に徐冷した後、室温まで冷却した。
さらに、窒素体積80%と炭酸ガス体積20%の混合雰囲気下で、得られた白色フィルムのD面側の表面を、空気中でND面側の表面をコロナ放電処理した。この際の処理速度は、15W・分/m2であり、D面側の表面の濡れ張力は42mN/m、ND面側の表面の濡れ張力は37mN/mであった。
得られた白色フィルムの厚みは、35μmであった。
次に、得られた白色フィルムを基材として用い、実施例1と同様の条件でフィルムのD面側の表面に受容層を形成し、受容シートを作製した。
結果を表5〜8に示す。得られた白色フィルムは、粘着や表面欠点は見られなかったものの、B層が積層されていないため、光沢感が無かった。また、実質的に無核のボイドを有さず、ボイドが粗大であった。さらに、製膜工程および受容シートへの加工工程において、脱落したCaCO3粒子が白粉として工程を汚したため、工程通過性に劣っていた。
加えて、受容層を塗布すると、コーティング剤がフィルム内部に一部浸透し、受容シートも光沢感が無く、フィルム表面に大量の空隙を有するため、受容層の接着力が低かった。このため、この白色フィルムを基材として用い、B層上に受容層を形成した感熱転写記録用受容シートは、極めて感度が低かった。
(比較例12)
比較例5において、金属ドラムの表面温度を100℃に下げたこと以外は同様の条件で、二軸配向白色ポリプロピレンフィルム作製した。また、得られた白色フィルムを基材として用い、実施例1と同様の条件でD面側のB層上に受容層を形成し、受容シートを作製した。
結果を表5〜8に示す。得られた白色フィルムは、粘着や表面欠点は見られなかったものの、金属ドラムの表面温度が必要以上に低いため、比重が高かった。このため、この白色フィルムを基材として用い、B層上に受容層を形成した感熱転写記録用受容シートは、感度が極めて低かった。
(比較例13)
比較例12において、白色フィルムの比重を低くするために、縦延伸におけるオーブン温度を105℃としたこと以外は同様の条件で二軸配向白色ポリプロピレンフィルムを作製することを試みた。
結果を表5〜8に示す。二軸延伸工程、特に横延伸工程において、フィルム破れが多発したため、工業的に製造できないフィルムであった。
(比較例14)
比較例5において、縦延伸倍率を6倍に上げたこと以外は同様の条件で二軸配向白色ポリプロピレンフィルムを作製することを試みた。
結果を表5〜8に示す。縦延伸工程、横延伸工程いずれにおいても、フィルム破れが著しく多発したため、工業的に全く製造できないフィルムであった。
(比較例15)
実施例2において、以下のA層の樹脂全体、B層の樹脂全体を用いたこと以外は同様の条件で二軸配向白色ポリプロピレンフィルムを作製することを試みた。
[A層の樹脂全体]
実施例2において、β晶核剤を添加しなかったこと以外は同様の条件で作製したチップを用いた。
[B層の樹脂全体]
実施例2において、SiO2粒子を0.3重量%の比率で添加した樹脂組成を用いたこと以外は同様の条件で作製したチップを用いた。
結果を表5〜8に示す。得られた未延伸シートは、β晶活性を有さないため、二軸延伸、特に横延伸工程において、フィルム破れが多発したため、工業的に製造できないフィルムであった。
表1〜8より、本発明の白色フィルムは、β晶活性を有し、実質的に無核の均一かつ微細なボイドを有するコア層(A層)に、結晶化速度が高いスキン層(B層)が積層されており、比重が適度な範囲に制御されている。これにより、折れしわ耐性を悪化させること無く、表面粗さが小さく、光沢度が高く、クッション率が高く、光学特性に優れるフィルムを製造することができた。加えて、これらの特性は、原料組成や製膜条件により制御することができた。
さらに、キャスト増速条件で未延伸シートを作製しても、粘着や表面欠点などを生じることなく、上記同様の優れた白色フィルムが得られることから、生産性に優れていた。
このような白色フィルムを基材として用いた感熱転写記録用受容シートは、プリンターのサーマルヘッドとの密着性が向上し、サーマルヘッドから供給される熱の放散が抑制されるため、従来の白色フィルムに比較して極めて感度が高い。
さらに、B層とは反対側の面に、受容層もしくはアンカー層との密着力に優れる他の層を積層することにより、生産性の向上と受容シート特性を分けて制御することも可能である。