複数の記録素子を備えた記録ヘッドを用いる記録方式の一例として、記録素子としての吐出口からインクを吐出して、記録媒体にドットを形成するインクジェット記録方式が知られている。また、このようなインクジェット記録装置には、特に記録ヘッドの構成の違いによってフルライン型とシリアル型がある。
フルライン型の記録装置では、記録ヘッドが、搬送される記録媒体の幅に応じた範囲に記録素子を配列し、記録時には固定された状態で用いるものである。そして、この固定して用いられる記録ヘッドに対して記録素子の配列方向とは交差する方向に記録媒体を搬送しつつ記録ヘッドから所定の周波数でインクを吐出させて画像を形成する。このようなフルライン型の記録装置は、比較的高速に画像を形成することができ、オフィスユースなどに適している。一方、シリアル型の記録装置では、記録媒体に対して記録ヘッドを走査し、この走査の間に所定の周波数でインクを吐出するとともに、この走査の方向と交差する方向に記録媒体を搬送する搬送動作を走査ごとに行うことによって画像を形成する。このようなシリアル型の記録装置は、比較的小型かつ低コストに製造することができ、パーソナルユースに適している。
このようなフルライン型やシリアル型の記録装置のいずれでも、記録ヘッドにおいて配列する複数の記録素子は、その製造工程上ある程度のばらつきが含まれる。そして、このようなばらつきは、インクの吐出量や吐出方向のような吐出特性のばらつきとなって現れ、記録媒体に形成されるドットの形状を不揃いにし、結果として画像上に濃度むらやスジを招くことがある。
この問題に対し、例えばシリアル型のインクジェット記録装置では、いわゆるマルチパス記録方式が採用されている。マルチパス記録では、記録ヘッドが1回の記録主走査で記録可能な全画素を、搬送動作を挟んだ複数回の走査に分配して段階的に異なる記録素子を対応させて記録を行う。これにより、複数の記録素子の吐出特性のばらつきは画像を完成する複数回の走査に分散され、濃度むらなどを目立たなくすることができる。また、このマルチパス記録方式は、フルライン型の記録装置にも応用することができる。
図1に示すように、記録媒体の搬送方向に同色インクに関して2列の記録素子列を配設することにより、搬送方向に形成されるドット列を2つの記録素子で分担して記録することができる。その結果、1つの記録素子列における記録素子のばらつきは1/2に分散され、そのばらつきによる濃度むらなどを目立たなくすることができる。
ところで、このようなマルチパス記録を行う場合、画像の記録データを、その画像を完成するための複数回の記録走査または複数の記録ヘッド(記録素子列)に分配することが行われる。従来、このような分配は、個々の記録素子に対応してドットの記録を許容する画素(“1”)と許容しない画素(“0”)とを予め定めたマスクパターンを用いて行われていることが多い。
図2は、シリアル方式における2回の走査(以下、「パス」とも言う)で記録を完成するマルチパス記録で使用するマスクパターンの一例を模式的に示す図である。図2において、黒く示した領域はドットの記録を許容する画素(“1”)、白く示した領域は許容しない画素(“0”)を示し、501は1パス目の走査で用いるマスクパターン、502は2パス目の走査で用いるマスクパターンをそれぞれ示している。そして、パターン501とパターン502は、記録許容画素(あるいは記録非許容画素)について互いに補完の関係を有し、これにより、完成すべき画像を構成するそれぞれのドットは1パス目または2パス目のいずれかで形成されることになる。すなわち、完成すべき画像の記録データは、画素ごとに上記各マスクパターンとの間で論理積がとられ、その結果が、実際に個々の記録素子がそれぞれのパスで記録する2値データとなる。
しかしながら、記録すべき画像に応じて記録を行う画素の記録データ(“1”)の配列は様々である。このため、記録許容画素のパターンが定まっているマスクパターンによって、このような記録データを複数の走査あるいは複数の記録素子列に、常に均等に分配することは困難である。このため、特定の走査あるいは特定の記録素子列がドットを記録する割合が高くなることがあり、結果として、その走査あるいは記録素子列の吐出特性が画像に現れ、マルチパス記録の本来の利点が損なわれてしまうことになる。従って、マルチパス記録では、記録データをいかに均等かつ一様に、複数回の走査あるいは複数の記録素子列に分配するかが重要な課題の1つになっている。
例えば、特許文献1には、記録許容画素と記録非許容画素とをランダムに配置するマスクパターンの生成方法が記載されている。このようなランダムマスクパターンを用いれば、どのような画像の記録データであっても、複数回の走査あるいは複数の記録素子列にほぼ均等に記録データを分配することが期待できる。
また、特許文献2には、図2に示すような固定的なマスクパターンを用いるのではなく、主走査方向や副走査方向に連続する複数の記録すべき画素の記録データ(“1”)が、できるだけ異なる走査によって記録されるように分配する方法が記載されている。
図3は、2値の画像データにおける記録画素の配列と、これら記録画素を特許文献2に記載の方法に従って2回の走査に分配した結果を示す図である。このように、主走査方向および副走査方向に連続するドットが、異なる走査に均等に分配される。これにより、記録素子の吐出特性のばらつきに起因する画像弊害のみならず、インクあふれ等の弊害も効果的に緩和することができる。
ところで、以上のようなマルチパス方式を採用しても、より高画質な記録が求められるこのところの状況では、走査単位あるいはノズル列単位の記録位置(レジストレーション)のずれに起因した濃度変化ないし濃度むらが新たに問題視されるようになって来ている。走査単位あるいはノズル列単位の記録位置のずれは、記録媒体と吐出口面の距離(紙間)の変動、記録媒体の搬送量の変動などによって引き起こされ、個々の走査(あるいはノズル列)で記録するプレーン間のずれとなって現れる。
例えば、図3に示す例において、先行の走査で記録されるドット(○)のプレーンと、後続の走査で記録されるドット(◎)のプレーンが、主走査方向または副走査方向のいずれかに1画素分ずれた場合を考える。このとき、先行の走査で記録されるドット(○)と後続の走査で記録されるドット(◎)は完全に重なり合い、白紙の領域が生じて画像濃度が低下する。1画素分まで大きくずれない場合でも、隣接するドット同士の距離や重なり部分の変動は、白紙領域に対するドットの被覆率ひいては画像濃度に大きく影響を与える。すなわち、このようなプレーン間のずれが、記録媒体と吐出口面の距離(紙間)の変動、記録媒体の搬送量の変動などに伴って変化すると、これらに伴って、一様な画像の濃度も変動し、濃度むらとなって認識されることになる。
従って、このようなプレーン間の記録位置ずれが生じても、その位置ずれによって著しい画質の低下を生じないマルチパス記録における記録データの生成方法が求められている。本明細書では、いかなる記録条件の変動に起因するにせよ、その変動に伴ってプレーン間の記録位置ずれが生じても、それによって濃度変化ないし濃度むらが生じ難い程度である耐性を、「ロバスト性」と称する。
特許文献3には、上記ロバスト性を高めるための記録データの生成方法が記載されている。すなわち、記録位置ずれに起因した画像濃度の変動は、図3について上述したように、複数回の走査あるいは複数のノズル列に分配された2値の記録データが完全な補完関係にあることに起因したものであることに着目している。そして、上記補完の程度を低減すべく、画像データの複数回の走査あるいは複数のノズル列に対する分配を、2値化前の多値データの状態で行い、これら分配後の多値データをそれぞれ独立に2値化するとしている。
図4は、特許文献3に記載のデータ分配を実現する制御構成例を示すブロック図である。同図は、2つの記録ヘッド(ノズル列)に記録データを分配する例を示している。ホストコンピュータ2001から受信された、多値の画像データは、様々な画像処理(2004〜2006)が施された後、多値SMS部2007によって第1記録ヘッド用のデータと第2記録ヘッド用のデータが生成される。具体的には、上記画像処理を経た同じ多値画像データを第1記録ヘッド用データと第2記録ヘッド用データとして用意する。そして、第1データ変換部2008および第2データ変換部2009ではそれぞれの分配係数による変換処理が行われる。例えば、第1記録ヘッド用データには0.55の分配係数、第2記録ヘッド用データには0.45の分配係数がそれぞれ用いられて変換処理が行われる。これにより、その後に行われる2値化処理の内容を、第1記録ヘッド用データと第2記録ヘッド用データとの間で異ならせることができる。そして、図5にて後述されるように最終的に形成される第1記録ヘッドによるドットと第2記録ヘッドによるドットの重なりを一定の割合で生じさせることができる。なお、特許文献3には、第1記録ヘッド用データと第2記録ヘッド用データとの間で分配係数を異ならせる例の他、2値化処理としての誤差拡散処理における誤差拡散マトリクスあるいは誤差拡散マトリクスにおける閾値を異ならせる例も記載されている。
以上のように変換された多値データは、第1の2値化処理部2010および第2の2値化処理部2011に転送される。第1の2値化処理部2010および第2の2値化処理部2011では、誤差マトリクスと閾値を用いた誤差拡散法によって2値化処理が行われ、2値化後の画像データは、それぞれ第1バンドメモリ2012および第2のバンドメモリ2013に格納される。その後、第1および第2記録ヘッドが夫々のバンドメモリに格納された2値データに従ってインクを吐出して記録を行う。
図5は、特許文献3に記載の上述した処理に従って記録されたドットの記録媒体での配置を示す図である。図5において、黒丸21は第1の記録ヘッドによって記録されたドット、白丸22は第2の記録ヘッドによって記録されたドット、ハッチングで示した丸23は第1の記録ヘッドと第2の記録ヘッドによって重ねて記録されるドットを、それぞれ示している。
ここで、図3について説明した例と同じように、第1の記録ヘッドで記録されるドットのプレーンと、第2の記録ヘッドで記録されるドットのプレーンが、主走査方向または副走査方向のいずれかに1画素分ずれた場合を考える。この場合、第1の記録ヘッドと第2の記録ヘッドの両方で重ねて記録される部分も新たに増えるが、既に重ねて記録されていた2つのドットが離れる部分もある。よって、ある程度の広さを持つ領域で判断すれば、白紙領域に対するドットの被覆率はさほど変動しておらず、画像濃度の変化を招くこともない。すなわち、異なる走査あるいは異なる記録ヘッドによるドット形成の補完性もしくは排他性を基本的に無くして、ドットの重なりを一定の割合で生じさせている。これにより、キャリッジの走査速度の変動、記録媒体と吐出口面の距離(紙間)の変動、記録媒体の搬送量の変動などによる記録位置のずれが発生しても、それに起因した画像濃度の変動や濃度むらの程度を小さくすることができる。
さらに特許文献4には、特許文献3と同様の記録データ生成が記載されている。すなわち、特許文献3と同様、多値の画像データを複数の走査あるいは複数の記録素子列に分配する際に複数の走査あるいは複数の記録素子列間で分配係数を異ならせる。そして、特許文献4では、この分配係数を画素の位置に応じて異ならせている。例えば、主走査方向の画素位置に対して、2つの記録ヘッドの分配係数を、直線的、周期的、正弦波的、あるいは高周波および低周波の合成波的に変化させ、これにより、マルチパス記録におけるバンディングや色むらを抑制している。
特開平7−52390号公報
特開平6−191041号公報
特開2000−103088号公報
特開2006−231736号公報
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、インクジェット記録装置に係るものであるが、本発明は、複数の記録素子を用いドットアライメント方式で画像を形成する装置であれば、インクジェット記録装置以外の装置でもその効果を発揮することができる。
(実施形態1)
図6は、本発明の一実施形態で使用するシリアル型のインクジェット記録装置の概略構成を説明する斜視図である。記録ヘッド105は主走査方向に一定の速度で移動するキャリッジ104に搭載され、上記一定の速度に対応した周波数で記録データに従ってインクを吐出する。1回の走査が終了すると、搬送ローラ704および補助ローラ703が回転し、これらローラ対と給紙ローラ705および補助ローラ706に挟持された記録媒体Pは、記録ヘッド105の記録幅に対応した量だけ副走査方向に搬送される。このような走査と搬送動作とを間欠的に繰り返すことにより、記録媒体Pに段階的に画像が記録される。
記録ヘッド105は、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)およびイエロー(Y)の記録ヘッドが、図のように主走査方向に配置され、各色の記録ヘッドには、複数の吐出口が副走査方向に配置されている。
図7は、上述したインクジェット記録装置における制御構成を示すブロック図である。図7に示すように、プリンタ600は、コントローラ601とプリンタエンジン618によって概略構成される。コントローラ601は、パーソナルコンピュータ等のホスト装置から記録指示および記録用の画像データを受信し、受信した画像データをプリンタエンジン618で記録可能な構成の2値データに変換して出力する。このコントローラ601は、CPU602、画像処理部603、プリンタエンジンインターフェース部604、通信インターフェース部605、拡張バス回路部606、RAMコントローラ607、およびROMコントローラ608を備える。さらに、これらの各ブロックはそれぞれバスライン610a〜610gを介してシステムバスブリッジ609に接続されている。本実施形態では、これらのブロックはシステムLSIとして一つのパッケージに封止された画像形成コントローラASIC(Application Specified Integrated Circuit)611として実現されている。また、コントローラ601は、機能拡張ユニットを装着する拡張スロット612、RAM部615、およびROM部617を備える他、図示しない操作部や表示部、電源回路部等を有して構成される。
CPU602は、コントローラ601全体の制御を司るものであり、ROM部617またはRAM部615に格納された制御手順などのプログラムを順次読み出し実行する。例えば、ホスト装置から受信した画像データを2値データである記録データに変換するための画像処理部603の制御を行う。また、CPU602は、通信インターフェース部605の制御や通信プロトコルの解釈、画像処理部603で生成された記録データをプリンタエンジン618へ転送するためのプリンタエンジンインターフェース部604の制御等を行う。
画像処理部603は、ホスト装置から受信した画像データをプリンタエンジン618で記録可能な記録データに変換するものであり、その詳細な構成については図8以降で後述する。プリンタエンジンインターフェース部604は、コントローラ601とプリンタエンジン118との間でデータの送受信を行うブロックである。すなわち、プリンタエンジンインターフェース部604は、DMAC(ダイレクトメモリアクセスコントローラ)を有する。これにより、画像処理部603で生成されRAM部615に格納されている2値データを、RAMコントローラ607を介して順次読み出してプリンタエンジン618に転送することができる。
通信インターフェース部605は、パーソナルコンピュータやワークステーション等のホスト装置との間でデータの送受信を行い、ホスト装置から受信した画像データを、RAMコントローラ607を介してRAM部615に格納する。通信インターフェース部605の通信方式としては、USBやIEEE1394などの高速シリアル通信、IEEE1284などのパラレル通信、あるいは100BASE−TX等のネットワーク通信などいずれの方式であってもよい。また、これらの複数の通信方式を有していてもよい。さらには、有線による通信方式に限らず、無線による通信方式であってもよい。
拡張バス回路部606は、拡張スロット612に装着した機能拡張ユニットを制御する。例えば、拡張バス613を介して、機能拡張ユニットにデータを送信する制御および機能拡張ユニットが出力するデータを受信する制御を行う。拡張スロット612には、USBやIEEE1394、IEEE1284、あるいはネットワーク通信などホスト装置との通信機能を提供する通信ユニットや、大容量記憶機能を提供するハードディスクドライブユニットなどを装着することができる。
なお、画像処理部603、通信インターフェース部605、および拡張バス回路部606は、プリンタエンジンインターフェース部604と同様にDMACを有し、メモリアクセス要求を発行することができる。
RAMコントローラ607は、RAMバス614を介して画像形成コントローラASIC611に接続されたRAM部615の制御を行う。RAMコントローラ607はCPU602およびDMACを有する各ブロックとRAM部615との間で、書き込みまたは読み出しされるデータの中継を行う。RAMコントローラ607は、CPU602および各ブロックからの読み出し要求や書き込み要求に応じて必要な制御信号を生成してRAM部615への書き込みやRAM部615からの読み出しを実現する。
ROMコントローラ608は、ROMバス616を介して画像形成コントローラASIC611に接続されたROM部617の制御を行う。ROMコントローラ608は、CPU602からの読み出し要求に応じて必要な制御信号を生成して、予めROM部617に格納された制御手順やデータを読み出し、システムバスブリッジ609を介してCPU602に読み出した内容を送り返す。また、ROM部617がフラッシュメモリ等の電気的に書き換え可能なデバイスで構成される場合、ROMコントローラ608は必要な制御信号を発生してROM部617の内容を書き換える。
システムバスブリッジ609は、画像形成コントローラASIC611を構成する各ブロック間を接続する機能を備えるほか、複数のブロックから同時にアクセス要求が発行された場合に、バス権を調停する。CPU602およびDMACを有する各ブロックがRAMコントローラ607を介してRAM部615へのアクセス要求をほぼ同時に発行する場合があり、システムバスブリッジ609は予め指定されたプライオリティーに従って適切に調停を行うことができる。
RAM部615は、同期DRAM等で構成され、CPU602が実行する制御手順プログラムを格納し、また、画像処理部603において生成された画像形成データの一時的な記憶を行い、およびCPU602のワークメモリなどの機能を提供する。また、RAM部615は、通信インターフェース部605がホスト装置から受信した画像データの一時的なバッファリングや拡張バス613を介して接続された機能拡張ユニットとの間で受け渡しされるデータの一時保存などを行う。
ROM部617は、フラッシュメモリ等で構成され、CPU602が実行する制御手順およびプリンタ制御に必要なパラメータを格納する。フラッシュメモリは電気的に書き換え可能で不揮発性のデバイスであり、決められたシーケンスに従うことにより制御手順やパラメータを書き換えることができる。
以上の他、各回路ブロックは動作モード等を設定するレジスタを備え、CPU602は図示しないレジスタアクセスバスを介して各回路ブロックの動作モード等を設定することができる。
プリンタエンジン618は、その主要な構成を図6に示したように、コントローラ601から送出される2値データに基づいて記録媒体上に画像を記録する記録機構である。
図8は、図7に示した主に画像処理部603の詳細な構成を示すブロック図である。
ホスト装置から記録すべき画像データを受信すると、画像データはメモリバッファ801に格納される。この画像データは、1画素につき例えば8ビット256階調で表現されるレッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B)の多値データである。メモリバッファ801に格納されたデータは、所定のタイミングで1画素ずつCMYK色変換部802に転送され、記録装置が使用するインク色に対応した多値(8ビット256階調)の濃度値を有した画像データに変換される。これにより、図6に示したインクジェット記録装置において同一領域の記録を2回の走査で完成するマルチパス記録で用いる2回の走査それぞれで用いる記録データが生成されることになる。
チャネル選択部803は、画像データのチャネル情報に応じてその画像データに対するその後の処理を、画像分配先行処理(第1の処理)によって行うか、または低階調化先行処理(第2の処理)によって行うかを選択する。すなわち、チャネル選択部803は、その選択に応じて上記画像データを、画像分配先行処理部804または低階調化先行処理部805に渡す。
ここで、チャネルとは、画像データを特定する情報であり、本実施形態では、記録に用いるインクの色やインク吐出量によって区別される情報である。例えば、記録に用いるインク色をブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)およびイエロー(Y)であり、これらのインク色ごとに画像データが規定される場合は、4つのチャネルが存在することになる。また、同じインク色でもインク吐出量が異なる場合は、この吐出量によってチャネルを区別することもできる。例えば、インク吐出量が1pl、1.5pl、2plのように3種類で画像データがこれら吐出量ごとに規定される場合は、3つのチャネルが定められることになる。また、上記のインク色による区別を合せると、チャネル数は4色×3種類の合計12となる。本実施形態では、インク色で区別されるチャネルの例について説明する。
図9は、チャネル選択部803による選択処理を示すフローチャートである。チャネル選択部803は、先ずステップS701において、選択に係る画像データのチャネルが設定したインク色のチャネルであるか否かを判断する。選択処理に係る画像データのチャネルが設定したインク色のチャネルであると判定したときは、ステップS702へ進み、その画像データを画像分配先行処理部804へ転送する。一方、選択処理に係る画像データのチャネルが設定したインク色のチャネルでないと判断したときは、ステップS703へ進み、その画像データを低階調化先行処理部805へ転送する。
ここで、チャネルに係るインク色の設定は次のようなものである。インクを構成する物質によって一概には言えないが、例えば、濃度が高いインク色の記録では、ドットの記録位置がずれると記録される画像の濃度の変化が大きくなる傾向がある。従って、本実施形態では、C、M、K、Yのインクのうち、比較的濃度が高いC、M、Kのチャネルについては、ロバスト性に優れた画像分配先行処理804を選択する。
一方、明度が高い色や濃度の低い色のインクは、ドットの記録位置がずれてもそれによる濃度変化はそれほど大きくない。従って、このような色のチャネルについては、低階調化先行処理805を選択する。本実施形態では、C、M、K、Yのインクのうち、比較的明度が高いYのチャネルについては、低階調化先行処理805を選択する。
図8を再び参照すると、低階調化先行処理部805に転送された多値の画像データは、低階調化部8051(第2の低階調手段)によって低階調化(量子化)される。本実施形態では2値データに変換される。すなわち、8ビット256階調値のデータが1ビット2階調値のデータに低階調化される。そして、この2値記録データは、画像分配部8052(第2の分配手段)によって、記録を完成する記録ヘッドの2回の走査に対応した2つのプレーンの画像データに分配ないし分割される。
なお、上述の低階調化処理では、一般的に知られる誤差拡散法やディザ法など量子化方法を用いることができる。また、画像分配部8052における画像分配方法についても特に規定されるものではない。例えば、図2に示したようなマスクパターンを使用してもよいし、特許文献1に記載のランダムマスクパターンを用いても良い。また、系列乱数でも良いし、正規乱数であっても良い。さらに、特許文献2に記載のように、主走査方向や副走査方向に連続する記録画素を記録するプレーンを確認しながら、いずれのプレーンに分配するかを個々の画素ごとに判断しても良い。
一方、画像分配先行処理部804に転送された多値画像データは、先ず、画像分配部8041(第1の分配手段)によって、記録を完成する記録ヘッドの2回の走査に対応した2つのプレーンのデータの画像(第1の分割画像と第2の分割画像)に分割される。なお、多値画像データを複数のプレーンに分割することを、多値画像データを複数のプレーンに分配するともいう。この分配は、記録される画像に一定のロバスト性を持たせるべく、前述した特許文献3や特許文献4に記載の分配方法、例えば、分配係数をプレーン間で異ならせる方法を用いて行うことができる。以上のように分配された多値画像データは、低階調化部8042(第1の低階調化手段)によって、それぞれのプレーンにおける低階調化処理が施される。この際、用いる低階調化の方法は、一般的に知られる誤差拡散法やディザ法などとすることができる。なお、上記分配処理で均等(等しい分配係数)に分配し、この低階調化の段階で、特許文献3に記載のように、誤差拡散における閾値あるいは誤差拡散の内容そのものをプレーン間で異ならせることにより、記録データにロバスト性を持たせてもよい。
画像分配先行処理部804または低階調化先行処理部805のいずれかによって低階調化された2つのプレーンの記録データは、それぞれのプレーンに相当するプリントバッファ806に一端格納される。その後、それぞれのプリントバッファ806に格納される記録データに基づいてプリンタエンジン618の記録ヘッドからインクが吐出されて記録が行われる。
以上のように、総てのチャネルについて、ロバスト性を考慮した画像分配先行処理804が選択されないことにより、分配処理の後の低階調化処理を、複数の分割画像それぞれに対して行うことによる処理負荷の増大を抑制することができる。すなわち、画像分配先行処理では1つの画像データに対して分割画像ごとに低階調化処理が行われるため、画像処理システムに求められる処理性能ないし処理負荷が高くなる。一方、低階調化先行処理では1つの画像データに対して一度の低階調化処理でよいため、低階調化先行処理の方が画像処理システムに求められる性能ないし負荷が低くなる。つまり、本実施形態のように指定したインク色のデータのみを画像分配先行処理をすることで、画像処理システムに求められる性能ないし負荷を低減できる。このように、本実施形態の画像処理方法によれば、画像処理システムの負荷を抑制しつつロバスト性に優れた一様な画像の記録が可能となる。
なお、以上説明した例は、2パスのマルチパス記録に関するものであるが、本発明は、さらに多くのマルチパス数による記録にも適用することができる。例えば、4パスのマルチパス記録の場合、画像分配先行処理部804の画像分配部8041では、多値画像(例えば256値)を、分配係数を相互に異ならせて4つのプレーンに分配する。また、低階調化先行処理部805の画像分配部8052では、例えば、図10に示すような互いに補完の関係にある4つのマスクパターンを用いて低階調化された画像データを4つのプレーンに分配することができる。
(実施形態2)
本発明の第2の実施形態は、インク吐出量によって区別されるチャネルの画像データの処理に関するものであり、上述した実施形態1の図6で示した記録装置において、図8で示した画像処理の工程と同様の処理を行うものである。
図11は、本実施形態のチャネル選択部803が実行する処理を示すローチャートである。同図に示すように、チャネル選択部803は、ステップS901で、選択に係る画像データのチャネルが設定したインク吐出量のチャネルであるか否かを判断する。本実施形態では、インク吐出量が1pl、1.5pl、2plの3種類を吐出可能とする。具体的には、画像処理部603の処理は、上記吐出量1pl、1.5pl、2plそれぞれの記録ヘッド(もしくは吐出口列)を用いて記録する場合に、これら記録ヘッドそれぞれの記録データを生成する処理に関するものである。そして、この記録データ生成において、チャネル選択部803の判断では、上記の3種の吐出量のうち、インク吐出量の2plのチャネルが判断基準として設定されている。
ステップ901で、設定したインク吐出量2plのチャネルであると判断したときは、ステップS902へ進み、選択対象の画像データを画像分配先行処理部804へ転送する。一方、ステップ901で、設定したインク吐出量のチャネルでない、すなわち、吐出量1plまたは1.5plのチャネルであると判断されたときは、ステップS903へ進み、選択対象の画像データを、低階調化先行処理部805へ転送する。
以上説明したように、本実施形態では、インク吐出量が比較的多い吐出量のチャネルについては、記録されるドットの位置がずれるとそれによる記録濃度の変化が大きい傾向があることから、ロバスト性に優れた画像分配先行処理を選択するようにする。これに対して、記録位置のずれがあってもそれによる濃度の変化それほど大きくならない比較的少量のインク吐出量であるチャネルについては、低階調化先行処理を選択するようにする。このように、設定したインク吐出量に係る画像データのみを画像分配先行処理をすることにより、画像処理システムの負荷を抑制しつつ、ロバスト性に優れた一様な画像を出力することが可能となる。
なお、上述の第2の実施形態では、設定するインク吐出量を2plの1つとしたが、複数設定してもよく、また、インク色との組合せに応じて設定するインク吐出量のチャネルを定めることにより、さらに上述した効果を高めることができる。例えば、図12に示すように、画像データを処理する複数のチャネルをインク色とインク吐出量の組に応じて、画像分配先行処理と低階調化先行処理のどちらを選択するようにしてもよい。図12に示す例は、明度が高い例えばYインクで、吐出量が1plの記録ヘッドの画像データに係るチャネルについて低階調化先行処理部804に選択し、それ以外のチャネルは、画像分配先行処理部804を選択するものである。
(実施形態3)
本発明の第3の実施形態は、フルライン型の記録ヘッドを用いた記録装置において、2つの記録ヘッドでマルチパス記録と同様の記録を行うものに関する。
図1は、本実施形態に係るフルライン型のインクジェット記録装置の概略構成を示す斜視図である。図1において、記録媒体Pは、給紙ローラ705および補助ローラ706によって給紙された後、搬送ローラ704および補助ローラ703の方向に搬送され、これら2対のローラに挟持されながら矢印で示す副走査方向に所定の速度で搬送される。このように搬送される記録媒体に対して、記録ヘッド105の主走査方向に配列する個々の吐出口から、搬送速度に対応した一定の周波数でインクが吐出される。記録ヘッド105は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)およびブラック(K)のインクを吐出するフルラインタイプの記録ヘッドが、図のように各色2列ずつ副走査方向において所定の間隔で配置されている。すなわち、K、C、MおよびYのそれぞれの画像データは、各色2つの記録ヘッドに対応した2つのプレーン(分割画像のデータ)に分配され、副走査方向に連なる各画素のラインは、各色2つの記録ヘッドの吐出口からのインクによってドットが形成される。
図13は、本実施形態係る画像処理部603の機能を説明するためのブロック図である。画像分配先行処理部809以外の構成は、上述した実施形態と同様である。本実施形態でも、チャネル選択によって画像分配先行処理部809には、C、M、Kそれぞれの画像データが転送され、低階調化先行処理部805にはYの画像データが転送される。本実施形態の画像分配先行処理部は、C、M、K各色の2つの記録ヘッドによって記録が完成する画像におけるロバスト性をさらに適切にするものである。以下、本実施形態の画像分配先行処理部について説明する。
チャネル選択部803から画像分配先行処理部809に転送された多値画像データは、画像分配部8041によって2つのプレーンに分配される。この分配において、2番目のプレーンの多値(256値)データに関しては、図14以降で後述されるように、記録量バッファに格納された記録量データに基づいて制約情報演算部8044で生成された補正値が付加される。これにより、各色2プレーンの量子化されたデータ間に一定の補完関係を持たせることができる。すなわち、画像分配部8041は、後述されるように補正値を加えることによって多値データを補正し、これにより、その補正後の多値データが量子化された2値データについて他のプレーンの2値データとの間に一定の補完関係を持たせることができる。なお、1番目のプレーンに関しては、前のプレーンに係る低階調化の結果は存在しないため、補正処理が行われずにそのまま低階調化部8042に送られる。そして、その1番目のプレーンの低階調化部8042の処理結果は、プリントバッファ806に送られるとともに、記録量バッファ8043にも転送され、記録量として格納される。
画像分配部8041における分配自体は、本実施形態では、2つのプレーンに対して均等(いずれも分配係数が0.5)に分配する。なお、分配係数はこれに限られず、特許文献3に記載のように、分配係数をプレーン間で異ならせてもよく、また、特許文献4に記載されているように、画素位置に応じて、分配係数を異ならせてもよい。
低階調化部8042は、各色のプレーンごとに誤差拡散法による2値化処理を行う。すなわち、本実施形態の低階調化部8042は、8ビットの256階調値を有した多値画像を、1ビットの2階調値である、より低階調値の2値データに変換する処理を行う。なお、この低階調化によって得られる低階調値データは2値データに限られないことはもちろんである。例えば、4ビットの16階調値のいわゆるインデックスデータとしてもよい。このインデックスデータはその階調値に応じた数のドット配置パターンに対応しており、インデックスデータを求めることによって記録すべきドットの配置が定まるものである。また、この低階調化の方法は、誤差拡散法に限られず、ディザ法などの他の2値化手法であってもよい。低階調化部8042によって2値化されたC、M、Kの記録データは、プリントバッファ806へ送られる。
制約情報演算部8044は、記録量バッファ8043に格納されたCMKそれぞれの1番目のプレーンの記録データに対して、制約情報の生成、更新を行う。具体的には、制約情報演算部8044は、記録量バッファからの各色の第1のプレーン用の2値データに対してフィルタ演算を行う。
図14(a)および(b)はフィルタ演算を模式的に示す図であり、同図(a)はフィルタ演算の係数を示し、同図(b)は演算結果を示している。これらの図において、斜線で示した画素は、低階調化部8042によって処理の対象とされた注目画素であり、制約情報演算部8044は、2値化の結果を図14(a)に示す画素ごとの係数に基づいて周辺の画素へ分配する。詳しくは、2値化の結果が“1”(ドット記録)のときは、256に上記画素ごとの係数を乗じその結果をそれぞれの画素の値とする。また、2値データが“0”(ドットを記録しない)のときは、0に上記画素ごとの係数を乗じてその結果をそれぞれの画素の値とする。図14(a)に示す係数および図14(b)に示す分配結果から明らかなように、本実施形態では、それぞれの画素の値は、注目画素に対応する画素が最も大きく、その画素の上下左右に位置する画素がその次に大きな値が分配される。
図15は、低階調化部8042の出力結果(フィルタ前の2値データ)と、これに上記フィルタ処理を行なった後の結果(フィルタ後のデータ)を模式的に示す図である。この図に示す例では、比較的低い濃度のベタ画像が2値化されることによって、縦横とも一定の間隔の画素に2値データ“1”(ドット記録)が存在している(フィルタ前の2値データ)。この2値データの画素それぞれを注目画素として上述の周辺画素への分配を行うことにより、注目画素に対応する画素の値を最大とした多値(256値)データの配値が得られる。このようにして得られたフィルタ後の多値データ(図8(b))は、低階調化部8042で低階調化(2値化)する前の多値データ(画像分配部8041から低階調化部8042へ出力されるデータ)と画素単位で差分がとられる。これにより、そのときの処理対象であるプレーンに対する記録量情報が生成される。画像分配部8041から出力された多値データ(0から255の赤(R)、緑(G)、青(B)の輝度値)と低階調化部8042で2値化されたものを多値データ(0から255の(R)(G)(B)の輝度値)に変換したものは、濃度が保存される。すなわち、画素単位では差があってもプレーン全体を平均した場合濃度(ここでは平均画素値である赤(R)、緑(G)、青(B)の輝度値)が保存されている。よって、プレーン全体の両者の差分は0である。図8のフィルタ処理では濃度保存を行っているため、フィルタ後の多値データと量子化する前の多値データとの差分を取れば、プレーン全体でみれば濃度は0となる。しかし、フィルタ後の多値データと量子化する前の多値データとの差分は、画素単位では0以外の値をとりうるため、2値化後もドット記録するとなった画素(2値化データが“1”の画素)の位置では、差分が大きくなる傾向にある。これを利用してその後に量子化されるプレーンにおける2値化後のデータでドット記録する画素の位置を制御することができる。そこで、制約情報演算部8044では、フィルタ後の多値データから2値化前の多値データを減算して制約情報を生成する。生成された今回処理対象であるプレーンに対する制約情報は、それまでのプレーンで生成された制約情報に加算され、この加算結果が制約情報として更新される。なお、本実施形態の各色2つの記録ヘッドに対応した2つのプレーンに対する処理では、制約情報は、1プレーン目の2値データに基づいて生成されるだけである。
画像分配部8041における、上述の制約情報を用いた画像分配処理の詳細について以下に説明する。
チャネル選択部803を介して得た画像データのうち、1番目のプレーンの画像データの処理では、画像データ分配処理のみが行われる。この分配処理は、本実施形態では、色ごとの多値データ値の約半分となるように処理する。すなわち、分配係数を0.5として第1プレーンの多値画像データを得る。
一方、2番目のプレーンの分配処理では、先ず色ごとに上述した第1のプレーン用の画像データ分配処理と同じ処理を行う。すなわち、色ごとの多値データの値を半分にした分配後の多値画像データを得る。次に、この多値画像データに対して、1番目のプレーンに関して得られた制約情報をマイナス値に変換したものを、補正値として対応する画素ごとに加算する。
以上のとおり、1番目のプレーン用の多値データの量子化結果において、“1”(ドット記録)とされた画素の2値データは、その注目画素およびその周囲の画素に関して、制約情報の生成処理において0ではない値となる。そして、2番目のプレーン用の処理では、この制約情報を2番目のプレーン用の多値データにマイナス値として加算する。これにより、上記加算が行われた2番目のプレーンにおける画素の多値データの値は小さくなる。そして、この加算によって値が小さくなった2番目プレーンの画素については、その小さくなった値に応じて、低階調化部8042における量子化(低階調化)で、“1”(ドット記録)の2値データとなる確率が低くなる。すなわち、1番目のプレーンと2番目のプレーンの2値データに従ってそれぞれ記録されるドットの配置において、1番目のプレーンよるドットと2番目のプレーンよるドットが重ねて形成される割合を、上述のフィルタ演算に従って制御することが可能となる。その結果、重ねて形成されるドットの割合を、例えば特許文献3に記載の方法と比較して低く押さえることができる。
このように、図14および図15にて説明したフィルタ演算における係数によってプレーン間の補完性ないし排他性を画素ごとに制御することができる。また、フィルタの係数を配する領域のサイズ(フィルタサイズ)もプレーン間の補完性に影響を与えることができるものである。さらに、フィルタの係数は、例えば、注目画素以外の周辺画素の総ての係数を0とすることを含めて、例えば記録する画像の内容に応じて適切に定めることができる。
なお、画像分配部8041で2プレーンに分割する場合、1プレーン目の画像データに対する制約情報として、上述のフィルタ後の多値データをそのまま制約情報として記録量バッファ8043に記憶してもよい。そして、2プレーン目の分配後の画像データとして、画像分配部8041で分配前の画像データ(分配係数1.0)から1プレーン目の制約情報を減算した結果を用いてもよい。これは制約情報がフィルタ後の多値データから分配前の画像データに1プレーン目の分配係数を積算した多値データを減算したものであるため、次の演算となる理由によるものである。画像分配部8041では、分配前の画像データに2プレーン目の分配係数を積算した多値データに、1番目のプレーンに関して得られた制約情報をマイナス値に変換したものを、補正値として対応する画素ごとに加算する。ここで、制約情報の置き換えを行えば、画像分配部8041では、分配前の画像データに2プレーン目の分配係数を積算した多値データに、分配前の画像データに1プレーン目の分配係数を積算した多値データを加算する。そして、1番目のプレーンに関して得られたフィルタ後の多値データを減算することとなる。さらに、分配前の画像データに2プレーン目の分配係数を積算した多値データに、分配前の画像データに1プレーン目の分配係数を積算した多値データを加算する。これにより、分配前の画像データ(分配係数1.0)となることから、画像分配部8041では、2プレーン目に対して分配前の多値画像データから1プレーン目で得られたフィルタ後の多値データを減算すればよいことになるからである。
以上のように、複数の記録ヘッドまたは複数回の走査によって形成されるドットが重ねて記録される画素の割合を、低く抑えられることができる。その結果、ドットが重ねて記録される画素を必要以上に多く設けることなく、プレーン間の記録位置ずれなどによる濃度変動も適度に抑えることが可能となる。
このように、プレーン間の記録位置ずれに伴う濃度変動を抑えるためには、複数のプレーン間でドットが互いに補完の関係にないこと、すなわち、複数のプレーンのドットが重ねて記録される画素が存在することが効果的である。しかし、そのような画素はあまり多く必要とされるものではない。そのような画素があまり多く存在すると、被覆率が減少し、かえって濃度の低下を招く恐れがあるからである。本実施形態のように、複数のプレーン間でドットが重ねて記録される画素の割合を、低く抑えられことにより、ドットが重ねて記録される画素を必要以上に多く設けることなく、濃度変動も適度に抑えることが可能となる。
なお、上述した他のプレーンの低階調化の結果を反映させる処理では、最初のプレーンの低階調化をドットが良好に分散して配置される手法によって行うことにより、量子化の結果が反映されるプレーンのドット配置も良好に分散したものとすることができる。このドット配置が良好に分散するとは、ドット配置について測定される空間周波数の低周波数成分が少ないことを言い、従来知られるいずれかの手法によって実現することができる。一般に、プレーン間で記録位置ずれが生じると、個々のプレーン内のドット配置による模様(テクスチャ)が確認されるようになり、これが画像弊害として認識されことがある。しかし、上述のようにそれぞれのプレーンにおけるドットの配置が良好に分散した状態であれば、プレーン間でのずれが生じても、画像弊害として認識され難くなる。すなわち、一様性が重視される画像において、濃度変動を抑える効果のみでなく、テクスチャに対するロバスト性も強化され、より好ましい出力画像を得ることができる。
また、本実施形態においても、チャネル選択部803によるチャネルに応じた選択によって、画像処理システムの負荷を低減させることができる。近年の記録装置では、多色化するとともに、記録幅が60インチといった非常に広い記録幅の記録装置が提供されている。このような装置では、記録量を格納する記録量バッファ8043の格納領域が大きくなってしまい、メモリ容量やコストを増大させる。そこで、画像分配先行処理の効果の比較的少ないインク色のチャネルについては、記録量バッファ8043を必要としない低階調化先行処理を選択するようにする。これにより、記録量バッファ804においてその分の容量を削減することができる。さらに高速な記録速度が求められている記録装置では、低階調化部8042と記録量バッファ8043の間の転送帯域と、記録量バッファ8043と制約情報演算部8044の間の転送帯域も低減することができる。
以上のように、本実施形態の画像処理方法を採用すれば、画像処理システムの負荷を抑制しつつ、ロバスト性に優れた一様な画像を出力することが出来る。
なお、以上では、2回の走査によるマルチパス記録あるいは2つの記録ヘッドの用いた例について説明したが、本発明は、多くのマルチパス数(Mパス)や記録ヘッドを用いる場合にも適用できることはもちろんである。この場合、画像分配部8041は、入力された多値の画像データを第1プレーンから第Mプレーンの、M個のプレーンに分配する。そして、低階調化部8042は、第1プレーンから第(M−1)プレーンに対する低階調化後の結果を、順次、記録量バッファ8043の所定の画素位置に累積していく。例えばMプレーンのデータの低階調化処理を行う場合、第1〜第(M−1)プレーンのいずれかで記録(1)された画素には、M回目の記録走査でドットが記録されにくくなる。すなわち、第1のプレーン(第1の記録走査)から第Mのプレーン(第Mの記録走査)の総てにおいて、ドットが互いに排他的に分散された状態で記録されるように、M回の記録走査それぞれに対応したM種類の低階調信号が出力される。また、記録量バッファ8043と制約情報演算部8044の順序が逆であってもよい。その場合は、制約情報演算部8044は、第1プレーンから第(M−1)プレーンに対するフィルタ処理後の結果を、順次記録量バッファ8043の所定の画素位置に累積していくことになる。
また、上述の第3の実施形態では、制約情報演算部8044で用いるフィルタを、図14(a)で示したように、3画素×3画素の領域を有し、係数がほぼ同心円並ぶ等方的加重平均フィルタとしたが、これに限定されるものではない。5画素×5画素や7画素×7画素など更に広い正方形でもよいが、5画素×7画素や5画素×9画素のような長方形で、フィルタ係数が楕円である非等方フィルタであってもよい。また、ローパス特性を有する形態のほか、バンドパス特性やバイパス特性のフィルタであってもよい。
さらに、本実施形態では、第1の実施形態と同様、チャネル選択部803が画像データを処理する複数のチャネルのうち設定したインク色に応じてその後の処理を選択する構成としたが、これに限定されるものではない。第2の実施形態のように設定したインク吐出量に応じてその後の処理を選択しても、インク色とインク吐出量に応じてその後の処理を選択する構成としても、同様の効果を得ることができる。
以上説明した各実施形態では、第1および第2の実施形態ではシリアル型、第3の実施形態ではフルライン型の記録装置で説明してきたが、もちろん、総ての実施形態の処理方法は、フルライン型にもシリアル型の記録装置にも好適に採用することができる。また、総ての実施形態において、インクジェット方式の記録装置を使用したが、本発明はこのような記録装置に限定されるものではない。記録媒体に対しドットを記録する複数の記録素子を有し、ドットの配置によって画像を表現するドットアライメント方式の記録装置であれば、本発明を好適に採用することができる。
また、以上では、画像処理機能を有する記録装置を例に、本発明の特徴的な画像処理を実行する画像処理装置を説明してきたが、本発明はこのような構成に限定されるものではない。本発明の画像処理が、ホスト装置で実行され、低階調化後の記録データが記録装置に入力されるような構成であっても構わない。また、ディジタルカメラなどによって撮影された画像やグラフィック画像が、ホスト装置などを介することなく直接記録装置に入力され、上記実施形態で説明した処理を含む全ての画像処理が、記録装置で実行される構成であっても構わない。前者の場合にはホスト装置が、後者の場合には記録装置が、本発明における画像処理装置となる。
(さらに他の実施形態)
本発明は、上述した実施形態の機能を実現する、図9、図11に示したフローチャートの手順を実現するプログラムコード、またはそれを記憶した記憶媒体によっても実現することができる。また、記憶媒体に格納されたプログラムコードがシステムあるいは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU)に読取られ実行されることによっても達成される。この場合、記憶媒体から読み出されたプログラムコード自体が前述した実施形態の機能を実現することになり、そのプログラムコードを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。
プログラムコードを供給するための記憶媒体としては、例えば、フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、CD−R、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROMなどを用いることができる。
また、コンピュータが読み出したプログラムコードを実行することにより、前述した実施形態の機能が実現されるだけでなく、そのプログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼動しているOSが実際の処理の一部または全部を行うものであってもよい。
更に、プログラムコードが、コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書き込まれた後、そのプログラムコードの指示に基づき、CPUなどが実際の処理の一部または全部を行うものであってもよい。