JP5155815B2 - 電動パワーステアリング装置 - Google Patents

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Description

本発明は、ラック&ピニオン式操舵装置に用いられ、転舵輪に舵角を与える操舵系に対し、手動操舵力を軽減する操舵補助力と、手動操舵力に対抗する操舵抵抗力とを共に与えることができるように構成された電動パワーステアリング装置に関するものである。
従来の電動パワーステアリング装置は、例えば、特許文献1に記載されているようにトルクセンサ信号、車速信号、モータ回転速度信号にもとづきモータの目標駆動電流値(本発明の実施形態における指示電流値に対応)を設定し、実際にモータに供給されている実駆動電流値を検出して、目標駆動電流値と実駆動電流値の偏差に応じてモータをフィードバック制御するものである。
これに対し、特許文献2には、転舵輪に舵角を与える操舵系に動力を付加するモータと、操舵系に作用する手動操舵力を検出するトルクセンサと、少なくともトルクセンサの出力にもとづいて操舵補助力と操舵抵抗力とをモータに発生させるための制御手段とを有するラック&ピニオン式操舵装置に用いられる電動パワーステアリング装置において、ラック&ピニオン式操舵装置のラック軸に加わる負荷の基準値(本発明の規範ラック軸負荷に対応)を予め設定し、かつ、その時の操向ハンドルの操舵角と車速とに応じた転舵輪の基準ラック軸負荷を出力する手段と、転舵輪の実際のラック軸負荷(本発明の実ラック軸負荷に対応)を検出する手段と、を有し、制御手段が、基準ラック軸負荷と実際のラック軸負荷との偏差に応じて操舵抵抗力を設定するようになっており、基準ラック軸負荷(本実施形態における規範ラック軸負荷に対応)と実際のラック軸負荷との偏差が大きくなるに従い操舵抵抗力を大きくするようにする技術が記載されている。この特許文献2には、特に、実際のラック軸負荷の変化率を検出する手段をさらに有し、制御手段にてラック軸負荷の変化率が大きくなるに従い操舵抵抗力を大きくし、さらに、操舵角速度が高くなるに従い操舵抵抗力を小さくする技術が記載されている。
特開平10−329740号公報(図2参照) 特許第3676543号公報(図1参照)
しかしながら、特許文献1に記載のような電動パワーステアリング装置では、操向ハンドルに伝えられる路面からの反力変動に対しては、トルクセンサ信号に応じた操舵補助力により緩和されるが、十分に路面からの反力変動を遮断できず、操舵フィーリングに違和感を与える場合があった。
特許文献2に記載のような電動パワーステアリング装置では、転舵輪の基準ラック軸負荷と実際のラック軸負荷との偏差が大きくなるほど操舵抵抗力を大きくすることで、ラック軸負荷が変化、すなわち路面反力が変化しても操舵抵抗力を調節して保舵力の変化を小さくし、保舵力と路面反力とのバランスが崩れることによる舵角の切れ込みを抑制でき、車両の安定性を向上できるが、路面から外乱入力が入った場合の操舵フィーリングの点で改善の余地があった。
本発明は、前記した従来の課題を解決するものであり、操舵フィーリングの低下を伴うことなく、路面反力の急変に対する車両の安定性を向上する電動パワーステアリング装置を提供することを目的とする。
前記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、転舵輪に舵角を与える操舵系に動力を付加するモータと、操舵系に作用する手動操舵力を検出する操舵力検出手段と、少なくとも操舵力検出手段の出力にもとづいて操舵補助力と操舵抵抗力とをモータに発生させるための制御手段とを有するラック&ピニオン式操舵装置に用いられる電動パワーステアリング装置であって、ラック&ピニオン式操舵装置のラック軸に伝えられる舵角と車速とに応じた転舵輪による規範ラック軸負荷を算出する規範ラック軸負荷算出手段と、転舵輪から実際に掛かる実ラック軸負荷を検出する実ラック軸負荷検出手段と、を備え、
制御手段が、算出された規範ラック軸負荷の変化量と検出された実ラック軸負荷の変化量との偏差に応じて操舵補助力と操舵抵抗力を設定するようになっており、実ラック軸負荷の変化量が規範ラック軸負荷の変化量より大きい場合には、舵角の増大方向の操舵補助力を操舵系に付与し、実ラック軸負荷の変化量が規範ラック軸負荷の変化量より小さい場合には、舵角の増大方向に対する操舵抵抗力が増大するように操舵補助力を操舵系に付与することを特徴とする。
請求項1の発明によれば、制御手段は、算出された規範ラック軸負荷の変化量と検出された実ラック軸負荷の変化量との偏差を取得することができるので、路面からの外乱により実ラック軸負荷が変化したとき、実ラック軸負荷の変化量と規範ラック軸負荷の変化量との偏差として検知でき、操舵力検出手段からの運転者の手動操舵力の変化よりも迅速に路面反力の変化を検知できる。そして、実ラック軸負荷の変化量が規範ラック軸負荷の変化量より大きい場合には、路面反力により操向ハンドルを戻そうとする力が増大しているので、操舵系に操舵補助力を手動操舵力が軽減する方向に(舵角の増大方向に)付与し、実ラック軸負荷の変化量が規範ラック軸負荷の変化量より小さい場合には、舵角が切り込み過ぎ状態であるので、運転者の舵角を増大させる方向に対する操舵抵抗力を増大させるように操舵補助力を操舵系に付与することにより、路面反力の急変による運転者の操舵入力の乱れを抑制することで車両の安定性を向上することができる。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明の構成に加えて、制御手段が、規範ラック軸負荷の変化量の方向と実ラック軸負荷の変化量の方向が逆の場合には、舵角の増大方向に対する操舵抵抗力が増大するように操舵補助力を操舵系に付与することを特徴とする。
請求項2の発明によれば、制御手段が、規範ラック軸負荷の変化量の方向と実ラック軸負荷の変化量の方向が逆の場合には、手動操舵力に対する路面からの反力が、運転者の期待に対して小さいことを意味し、舵角の増大方向に対する操舵抵抗力を増大させる方向に操舵補助力を操舵系に付与するので、転舵輪へ加えられる手動操舵力と操舵補助力の和であるラック軸推力と、転舵輪からの路面反力(ラック軸負荷)とのバランスが崩れることにより生じる操向ハンドルの切り込み過ぎ操作を、抑制することができる。
本発明によれば、操舵フィーリングの低下を伴うことなく、路面反力の急変による運転者の操舵入力の乱れを抑制し、車両の安定性を向上する電動パワーステアリング装置を提供することができる。
以下に、本発明の実施形態に係る電動パワーステアリング装置について図1から図4を参照しながら詳細に説明する。
《全体概要》
先ず、図1を参照しながら本発明に係る実施形態の電動パワーステアリング装置を適用した車両の全体概要について説明する。
図1は、本発明に係る実施形態の電動パワーステアリング装置を適用した車両の全体概念図である。図1において、電動パワーステアリング装置1は、操向ハンドル2が設けられたステアリングシャフト3と、ピニオン軸5とが、図示省略の中間シャフトと2つのユニバーサルジョイント(自在継手)によって連結され、また、ピニオン軸5の下端部に設けられたピニオンギア5aは、車幅方向に往復運動可能なラック軸8のラック歯8aに噛合し、ラック軸8の両端には、タイロッド9,9を介して左右の前輪(転舵輪)23,23が連結されている。この構成により、電動パワーステアリング装置1は、操向ハンドル2の操舵時に車両の進行方向を変えることができる。
ここで、ラック軸8、ラック歯8a、タイロッド9,9は転舵機構を構成する。また、ピニオン軸5、ピニオンギア5a、ラック軸8、ラック歯8a、タイロッド9,9がラック&ピニオン式操舵装置21を構成する。
また、電動パワーステアリング装置1は、操向ハンドル2による手動操舵力を軽減するための操舵補助力及び操向ハンドル2に操舵抵抗力を供給するモータMを備えており、このモータMの出力軸に設けられたウォームギア26が、ピニオン軸5に設けられたウォームホイールギア27に噛合している。すなわち、ウォームギア26とウォームホイールギア27とで減速機構が構成されている。また、操向ハンドル2と、ステアリングシャフト3と、前記した図示省略の中間シャフト、2つのユニバーサルジョイントと、モータMの回転子とモータMに連結されているウォームギア26と、ウォームホイールギア27と、ピニオン軸5とピニオンギア5aと、ラック軸8とラック歯8aと、タイロッド9,9等により、請求項に記載の「操舵系」が構成される。
ちなみに、符号33は、キングピン軸を示している。
また、電動パワーステアリング装置1は、制御装置(制御手段)29(以下、ECU29と称する)、例えば、直流モータであるモータMを駆動するモータ駆動回路11、車速センサ25、ピニオン軸5に加えられる操舵トルク(手動操舵力)を検出するトルクセンサ(操舵力検出手段)28、トルクセンサ28の出力を増幅する図示省略の差動増幅回路、ハンドル角センサ32、舵角センサ34等を備えている。
モータ駆動回路11は、例えば、H型ブリッジ回路のような複数のスイッチング素子を備え、ECU29からのDUTY信号を用いて、矩形波電流を生成し、モータMを駆動する電源回路である。また、モータ駆動回路11は、モータ電流センサ30Aを用いてモータ電流Imを検出する機能や、モータ電圧センサ30Bを用いてモータ電圧Vmを検出する機能を備えている。
モータMにはモータ回転角センサ31が設けられ、モータMのモータ回転角Smを検出し、角度信号を出力するものである。
これらモータ電流センサ30A、モータ電圧センサ30B、モータ回転角センサ31からの各信号はECU29に出力される。
車速センサ25は、従動輪である後輪24,24の回転速度を単位時間あたりのパルス数として回転速度センサ25s,25sで検出したものを、例えば、マイコン25aで平均値計算をして、車速Vに換算するものであり、車速Vに対応する車速信号をECU29に出力する。
トルクセンサ28は、ピニオン軸5に加えられる操舵トルクTsを検出するものであり、例えば、ピニオン軸5の軸方向2箇所に逆方向の異方性となるように磁性膜が被着され、各磁性膜の表面に検出コイルがピニオン軸5に離間して挿入されている。前記した図示しない差動増幅回路は、検出コイルがインダクタンス変化として検出した2つの磁歪膜の透磁率変化の差分を増幅し、操舵トルクTsの信号をECU29出力する。
ハンドル角センサ32は、ステアリングシャフト3の回転角度であるハンドル角を検出し、ECU29に出力する。
舵角センサ34は、例えば、ラック軸8の左右中央基準点からの左右方向への移動量を検出し、ECU29に出力するものであり、ECU29において前輪23,23の舵角θsが、ラック軸8の前記左右移動量から容易に算出できる。
《ECU29の機能構成》
次に、図2から図4に示す制御機能ブロック構成図にもとづいてECU29における制御機能について説明する。
図2は、電動パワーステアリング装置の制御機能ブロック構成図である。図3は、図2における規範路面反力算出部の詳細な機能ブロック構成図であり、図4は、図2における指示電流補正値出力部の詳細な機能ブロック構成図である。
ECU29は、例えば、CPU、ROM、RAM等を含むマイクロコンピュータと、マイクロコンピュータに各種信号を入力するための入力インタフェース回路、マイクロコンピュータからの出力信号を出力するための出力インタフェース回路等を含んで構成されている。
図2に示すように、ECU29は、規範路面反力算出部(規範ラック軸負荷算出手段)101、微分部102、路面反力推定部(実ラック軸負荷検出手段)103、微分部104、比較判定部105、指示電流補正値出力部107、操舵補助力設定部111、減算部112、指示電流値設定部113、加算部114、モータ駆動回路制御部115を含んでいる。
(規範路面反力算出部)
規範路面反力算出部101は、舵角センサ34からの舵角θsの信号と車速センサ25からの車速Vの信号とにもとづいて、一定の周期で規範ラック軸負荷TLrefを算出し、微分部102に出力する。
ここで、図3を参照しながら規範路面反力算出部101の詳細について説明する。
規範路面反力算出部101は、規範ラック軸負荷算出部131、車速補正係数算出部133、乗算部134、微分部135、ラック軸負荷補正値算出部136、車速補正係数算出部137、乗算部138、加算部139から構成され、規範ラック軸負荷(規範路面反力とも言う)TLrefを算出する。
規範ラック軸負荷算出部131は、舵角θsにもとづいて、予め前記したROMに格納された規範ラック軸負荷マップ131aを参照して、規範ラック軸負荷の基準値である規範ベースラック軸負荷TLrefBaseを算出し、乗算部134に出力する。規範ラック軸負荷マップ131aは、例えば、図3に示すように、横軸を舵角θsに、縦軸を規範ベースラック軸負荷TLrefBaseにして、舵角θsが右旋回を示すときに正とし、そのときラック軸8に掛かる規範ベースラック軸負荷TLrefBaseを正とする。ちなみに、舵角θsと規範ベースラック軸負荷TLrefBaseは、舵角θsがゼロから±の所定の区間では略直線性を有し、その後は飽和傾向を示す。
車速補正係数算出部133は、規範ラック軸負荷算出部131で算出された規範ベースラック軸負荷TLrefBaseを、予め前記したROMに格納された車速補正係数マップ133aを参照して、車速Vに応じた補正係数K1を算出して、乗算部134に出力して、乗算部134において、規範ベースラック軸負荷TLrefBaseに補正係数K1を乗じて、車速Vが増大するにつれて、規範ベースラック軸負荷TLrefBaseの絶対値が減衰するように補正させるものである。これは、転舵輪である前輪23を据え切り時や、極低速状態での操舵の場合は、補正係数K1を1.0とし、規範ベースラック軸負荷TLrefBaseの絶対値を大きくし、車速Vが増大するにつれて補正係数K1が1.0からより小さく減少して、実際の路面反力が低下して実際のラック軸負荷の絶対値が低下するのを反映させるための補正である。
乗算部134において規範ベースラック軸負荷TLrefBaseと補正係数K1とを乗じた結果は、加算部139に出力される。
微分部135では、舵角センサθsを時間微分して舵角速度ωSを算出し、ラック軸負荷補正値算出部136に出力する。
ラック軸負荷補正値算出部136は、舵角速度ωSにもとづいて、予め前記したROMに格納されたラック軸負荷補正値マップ136aを参照してラック軸負荷補正値TLrefCrを算出し、乗算部138に出力する。
ラック軸負荷補正値マップ136aは、例えば、図3に示すように、横軸を舵角速度ωSに、縦軸をラック軸負荷補正値TLrefCrにして、舵角速度ωSが正のとき、つまり、右への舵角θsが増大するときは、正のラック軸負荷補正値TLrefCrを出力し、右への舵角θsが減少して中立位置に戻るときは、負のラック軸負荷補正値TLrefCrを出力する。また、左への舵角θsが増大するときは、負のラック軸負荷補正値TLrefCrを出力し、左への舵角θsが減少して中立位置に戻るときは、正のラック軸負荷補正値TLrefCrを出力する。ちなみに、舵角速度ωSとラック軸負荷補正値TLrefCrの関係は、規範ラック軸負荷マップ131aよりも非線形性が強い。
これは、舵角速度ωSの絶対値が大きいほど、舵角方向に対する規範ラック軸負荷TLrefを増大させるように、例えば、右への舵角速度ωSが大きいほど、正の方向により大きいラック軸負荷補正値TLrefCrを出力し、逆に左への舵角速度ωSが大きいほど、負の方向により大きいラック軸負荷補正値TLrefCrを出力することを意味する。
車速補正係数算出部137は、ラック軸負荷補正値算出部136で算出されたラック軸負荷補正値TLrefCrを、予め前記したROMに格納された車速補正係数マップ137aを参照して、車速Vに応じた補正係数K2を算出して、乗算部138に出力する。車速補正係数マップ137aは、例えば、車速Vが増大するにつれて補正係数K2の値がゼロから1.0に近づいて1.0に飽和する特性のものである。これは、操向ハンドル2(図1参照)への操舵抵抗力を、車速Vが小さいほど小さくし、車速Vが大きいほど大きくすることを規範ラック軸負荷TLrefに反映させるためである。
乗算部138では、ラック軸負荷補正値TLrefCrと補正係数K2を乗じて加算部139に出力する。
加算部139では、乗算部134から出力された補正係数K1で補正された規範ベースラック軸負荷TLrefBaseと、乗算部138から出力された補正係数K2で補正されたラック軸負荷補正値TLrefCrとを加算し、規範ラック軸負荷TLrefとし、前記した微分部102へ出力する。
以下では、規範ラック軸負荷TLrefを、「規範路面反力TLref」と称することにする。
図2に戻って、微分部102は、規範路面反力算出部101から一定の周期で入力される規範路面反力TLrefに対して、繰り返し周期の前回と今回の差分(規範ラック軸負荷の変化量)である規範路面反力変化量ΔTLref{ΔTLref=(今回の規範路面反力TLref)−(前回の規範路面反力TLref)}を算出し、一定の周期で比較判定部105に出力する。
(路面反力推定部)
路面反力推定部103は、舵角センサ34からの舵角θsの信号、モータ電流センサ30Aやモータ電圧センサ30Bからのモータ電流Im、モータ電圧Vmの信号、モータ回転角センサ31からのモータ回転角Smの信号、トルクセンサ28及び図示省略の作動増幅回路からの操舵トルクTsの信号にもとづいて、一定の周期で実路面反力TLestを算出し、微分部104に出力する。
ここで、実路面反力TLestが請求項に記載の「実ラック軸負荷」に対応し、「実路面反力TLestを算出する」が請求項に記載の「実ラック軸負荷を検出する」に対応する。
実路面反力TLestは、路面から前輪23,23への転舵抵抗、つまり、実ラック軸負荷であり、それに吊り合うラック軸推力が、ステアリングシャフト3回りの粘性項、慣性項、フリクション項およびモータM回りのフリクション項は微小なので省略すると、運転者により操向ハンドル2からステアリングシャフト3及びピニオン軸5を介してラック軸8に加えられるラック軸推力FHと、モータMからのピニオン軸5を介してラック軸8に加えられるラック軸推力Fmとの和であり、つまり、次式(1)で実路面反力TLestが表わせる。
TLest=FH+Fm ・・・・・・・・・・・・・・・・(1)
先ず、操向ハンドル2からピニオン軸5を介してのラック軸推力FHは、トルクセンサ28からの信号にもとづく操舵トルクTsをピニオンギア5aのピッチ円半径rPで割った値、つまり、次式(2)で表わされる。
H=Ts/rP ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(2)
次に、モータMによるラック軸推力Fmは、モータMの出力軸トルクTmにウォームギア26とウォームホイールギア27とのギア比Nをかけた値を、さらにピニオンギア5aのピッチ円半径rPで割った値、つまり、次式(3)で表わされる。
Fm=N・Tm/rP ・・・・・・・・・・・・・・・・・(3)
ところで、モータMの出力軸トルクTmは次式(4)で与えられる。
Tm=Kt・Im−Jm・θm″−Cm・θm′±Tf ・・・(4)
ここで、
Kt:モータトルク定数
Im:モータ電流(モータ電流センサ30Aの出力)
Jm:モータMの回転部分の慣性モーメント(設計値・定数)
θm′:モータ回転角速度
θm″:モータ回転角加速度(モータ回転角速度θm′の微分値)
Cm:モータ粘性係数
Tf:フリクショントルク
なお、モータ回転角速度θm′は、モータ回転角センサ31からのモータ回転角Smの信号により求めることができるが、モータ回転角センサ31を用いなくても、モータMのモータ逆起電力から次式(5)により求めることができる。
θm′=(Vm−Im・Rm)/Km ・・・・・・・・・・・(5)
ここで、
Vm:モータ電圧(モータ電圧センサ30Bの出力)
Rm:モータ抵抗(設計値・定数)
Km:モータの誘導電圧定数
または、ステアリングシャフト3の回転角であるハンドル角θHを検出するハンドル角センサ32の出力信号にもとづくハンドル角θHの微分値θH′から次式(6)により求めることができる。
θm′=(θH′−Ts′/Ks)N ・・・・・・・・・・・・(6)
Ks:トルクセンサ28のばね定数
Ts′:操舵トルクの微分値
従って、モータ回転角速度θm′をモータMのモータ逆起電力から検出する場合には、モータ回転角センサ31やハンドル角センサ32は、不要である。
以上により求めた操向ハンドル2からのラック軸推力FHとモータからのラック軸推力Fmの和として表わされる実路面反力TLestは、実用上は図示しない位相補償フィルタを通すことにより、ラック軸推力FH,Fm間の位相ずれを補正すると良い。
そして、路面反力推定部103から一定の周期で実路面反力TLestが入力され、微分部104において、実路面反力TLestに対して、繰返し周期の前回と今回の差分(実ラック軸負荷の変化量)である実路面反力変化量ΔTLest{ΔTLest=(今回の実路面反力TLest)−(前回の実路面反力TLest)}を算出し、一定の周期で比較判定部105に出力する。
(比較判定部)
比較判定部105は、規範路面反力変化量ΔTLref及び実路面反力変化量ΔTLestにもとづいて、切り込み方向にモータ指示電流を補正する、又は、切り込み抑制方向にモータ指示電流を補正の判定をし、その判定結果を示すフラグIFLAG、規範路面反力変化量ΔTLref及び実路面反力変化量ΔTLestを指示電流補正値出力部107に出力する。比較判定部105の詳細な制御は、後記する図5に示すフローチャートの説明の中で詳細に説明する。
(指示電流補正値出力部)
指示電流補正値出力部107は、比較判定部105における判定結果を示すフラグIFLAGに応じて、規範路面反力変化量ΔTLref及び実路面反力変化量ΔTLestにもとづいて後記するモータMへの指示電流値ImTに対する指示電流補正値ΔImCrを加算部114に出力する。
図4を参照して指示電流補正値出力部107の構成を詳細に説明する。図4に示すように指示電流補正値出力部107は、規範路面反力変化量ΔTLrefの絶対値|ΔTLref|を算出する絶対値算出部151、実路面反力変化量ΔTLestの絶対値|ΔTLest|を算出する絶対値算出部152、絶対値|ΔTLest|と絶対値|ΔTLref|の差分{|ΔTLest|−|ΔTLref|}を算出する差分算出部153、差分{|ΔTLest|−|ΔTLref|}にもとづいて、その差分が正値のときのみ指示電流補正値ΔImCrを算出する指示電流補正値算出部154、規範路面反力変化量ΔTLrefと実路面反力変化量ΔTLrefとの差分の絶対値|ΔTLest−ΔTLref|を算出する差分絶対値算出部155、差分の絶対値|ΔTLest−ΔTLref|にもとづいて指示電流補正値ΔImCrを算出する指示電流補正値算出部156、並びに、比較判定部105から入力される比較判定結果のフラグIFLAGの値にもとづいて、指示電流補正値算出部154から入力される指示電流補正値ΔImCr及び指示電流補正値算出部156から入力される指示電流補正値ΔImCrのうちの一方を選択して指示電流補正値ΔImCrとして、フラグIFLAGの値に応じて切り込み方向にモータ指示電流を補正するか、又は、切り込み抑制方向にモータ指示電流を補正するか、指示電流補正値の正負を付加して加算部114に出力する出力選択部157を有している。
ここで、絶対値|ΔTLest|と絶対値|ΔTLref|の差分{|ΔTLest|−|ΔTLref|}、及び、規範路面反力変化量ΔTLrefと実路面反力変化量ΔTLrefとの差分の絶対値|ΔTLest−ΔTLref|が、請求項に記載の「偏差」に対応する。
指示電流補正値算出部154は、差分{|ΔTLest|−|ΔTLref|}をパラメータにして、予めROMに格納された指示電流補正値マップ154aを参照し、指示電流補正値ΔImCrを算出する。
なお、図4における指示電流補正値マップ154aの横軸は、差分{|ΔTLest|−|ΔTLref|}の絶対値を示している。
同様に、指示電流補正値算出部156は、差分の絶対値|ΔTLest−ΔTLref|をパラメータにして、予めROMに格納された指示電流補正値マップ156aを参照し、指示電流補正値ΔImCrを算出する。
指示電流補正値マップ154aと指示電流補正値マップ156aとは、差分{|ΔTLest|−|ΔTLref|}の絶対値、又は、差分の絶対値|ΔTLest−ΔTLref|の増加に対して、指示電流補正値ΔImCrを増加させる特性は同じであるが、数値的にはそれぞれ異なる設定である。
(操舵補助力設定部)
再び、図2に戻って、操舵補助力設定部111は、トルクセンサ28及び前記差動増幅回路からの操舵トルクTsの信号と、車速センサ25からの車速Vの信号にもとづいて操舵補助力TaSを設定し、減算部112に出力する。
具体的には、操舵補助力TaSは、ROMに予め操舵トルクTsと車速Vの二次元の操舵補助力設定マップ111aとして格納されているものを、操舵補助力設定部111が参照することによって求められる。
減算部112は、操舵補助力設定部111からの操舵補助力TaSとトルクセンサ28及び前記差動増幅回路からの操舵トルクTsとの偏差ΔTを算出し、指示電流値設定部113に出力する。
(指示電流値設定部)
指示電流値設定部113は、例えば、特開平10−329740号公報の図2から図4及び、段落[0014]〜[0017]に記載されている公知の技術のように、偏差ΔTと操舵トルクTsとにもとづいて指示電流値ImTを設定する。具体的には、偏差ΔTと操舵トルクTsの変化加速度(操舵トルクTsに対する時間の2階微分)d2Ts/dt2とにもとづき判定される運転者の操舵意図、つまり、操舵補助力の促進、操舵補助力の抑制、通常の操舵補助力との判定結果にもとづき、単にΔTに対応する付加トルクを発生するように指示電流値を設定するだけでなく、前記判定結果に応じてΔTに対応する付加トルクを発生する指示電流値ImTを変える。
指示電流値設定部113から出力される指示電流値ImTは加算部114に出力され、加算部114において指示電流補正値出力部107から出力された指示電流補正値ΔImCrと加算され、補正された指示電流値ImT *として、モータ駆動回路制御部115に出力される。
モータ駆動回路制御部115は、補正された指示電流値ImT *に応じたPWM指令信号を発生してモータ駆動回路11に出力する。
(比較判定部及び指示電流補正値出力部における制御)
次に、図2、図5を参照しながら適宜図1、図4を参照して比較判定部105及び指示電流補正値出力部107における制御の流れについて説明する。図5は、規範路面反力変化量と実路面反力変化量の挙動に応じてモータ指示電流値を補正する制御の流れを示すフローチャートである。
この一連の処理は、微分部102,104から一定周期で規範路面反力変化量ΔTLrefと実路面反力変化量ΔTLestが比較判定部105に入力されるのと同期して、同一の周期で比較判定部105及び指示電流補正値出力部107において処理される。
ステップS01では、比較判定部105が、指示電流値の補正方向を示すフラグIFLAGをゼロにリセットし、ステップS02では、規範路面反力変化量ΔTLrefと実路面反力変化量ΔTLestの積が正値か否かをチェックする。積が正値の場合(Yes)、つまり、操向ハンドル2(図1参照)の切り込み操作(切り増し操作とも言う)の場合は、ステップS03へ進み、積が正値でない場合(No)、つまり、操向ハンドル2(図1参照)の切り戻し操作又は停止の場合は、ステップS04へ進む。
ステップS03では、比較判定部105が、規範路面反力変化量の絶対値|ΔTLref|と実路面反力変化量の絶対値|ΔTLest|の差分{|ΔTLref|−|ΔTLest|}が負値か否かをチェックする。前記差分が負値の場合(Yes)は、ステップS05へ進み、前記差分が負値でない場合(No)は、ステップS06へ進む。
ステップS05では、比較判定部105が、切り込み方向にモータ指示電流を補正する指示を出力する(IFLAG=1)。
ここで、ステップS05に到るということは、規範路面反力変化量ΔTLrefと実路面反力変化量ΔTLestが正値又は負値同士であり、かつ、規範路面反力変化量の絶対値|ΔTLref|よりも実路面反力変化量の絶対値|ΔTLest|の方が大きいことを意味し、操舵トルクTsが増大し、操向ハンドル2の運転者に与える反力(操舵抵抗力)が増大して戻される傾向であることを意味するので、切り込み方向にモータ指示電流を補正するものである。その後、一連の繰り返し処理を終えて最初に戻る。
指示電流補正値出力部107は、切り込み方向にモータ指示電流を補正する指示(IFLAG=1)を受けて、出力選択部157(図4参照)において、指示電流補正値算出部154(図4参照)から出力される指示電流補正値ΔImCrを選択し、切り込み方向の正負の符号を付した指示電流補正値ΔImCrとして、加算部114に出力する。その結果、操向ハンドル2の運転者に与える反力が増大するのを抑制できる。
この「指示電流補正値算出部154から出力される指示電流補正値ΔImCrを選択し、切り込み方向の正負の符号を付した指示電流補正値ΔImCrとして、加算部114に出力する。」が請求項に記載の「前記舵角の増大方向の前記操舵補助力を前記操舵系に付与」に対応する。
ステップS06では、比較判定部105が、規範路面反力変化量の絶対値|ΔTLref|と実路面反力変化量の絶対値|ΔTLest|の差分{|ΔTLref|−|ΔTLest|}が正値か否かをチェックする。前記差分が正値の場合(Yes)は、ステップS07へ進み、前記差分が正値でない場合(No)は、一連の繰り返し処理を終えて最初に戻る。
ステップS02からNoでステップS04に進むと、比較判定部105が、規範路面反力変化量ΔTLrefと実路面反力変化量ΔTLestの積が負値か否かをチェックする。積が負値の場合(Yes)、つまり、操向ハンドル2(図1参照)の切り戻し操作の場合は、ステップS07へ進み、積が負値でない場合(No)は、一連の繰り返し処理を終えて最初に戻る。
ステップS07では、比較判定部105が、切り込み抑制方向にモータ指示電流を補正する指示を出力する(IFLAG=−1)。ここで、ステップS07に到るということは、規範路面反力変化量ΔTLrefと実路面反力変化量ΔTLestが正値と負値又は負値と正値の組み合わせの場合であるか、若しくは、規範路面反力変化量ΔTLrefと実路面反力変化量ΔTLestが正値同士又は負値同士であり、かつ、規範路面反力変化量の絶対値|ΔTLref|よりも実路面反力変化量の絶対値|ΔTLest|の方が小さい場合であることを意味し、切り戻し操作、若しくは、操舵トルクTsが軽く、操向ハンドル2の運転者に与える反力(操舵抵抗力)が減少して切り込み過ぎの傾向であることを意味するので、切り込み抑制方向にモータ指示電流を補正するものである。その後、一連の繰り返し処理を終えて最初に戻る。
指示電流補正値出力部107は、切り込み抑制方向にモータ指示電流を補正する指示(IFLAG=−1)を受けて、出力選択部157(図4参照)において、指示電流補正値算出部156(図4参照)から出力される指示電流補正値ΔImCrを選択し、切り込み抑制方向の正負の符号を付した指示電流補正値ΔImCrとして、加算部114に出力する。その結果、操向ハンドル2(図1参照)の運転者に与える反力が増大するようにでき、切り込み過ぎを防止できる。
この「指示電流補正値算出部156から出力される指示電流補正値ΔImCrを選択し、切り込み抑制方向の正負の符号を付した指示電流補正値ΔImCrとして、加算部114に出力する。」が請求項に記載の「前記舵角の増大方向に対する前記操舵抵抗力が増大するように前記操舵補助力を前記操舵系に付与」に対応する。
次に図6を参照しながら適宜、図1、図2、図5を参照して、本実施形態の比較判定部105、指示電流補正値出力部107の作用を説明する。
図6は、規範路面反力及び実路面反力の時間推移の説明図であり、(a)は、規範路面反力及び実路面反力の変化方向が同じで推移していることを示す説明図、(b)は、規範路面反力及び実路面反力の変化方向がある時点で異なる方向に推移していることを示す説明図、(c)は、実路面反力が路面からのキックバックを受けて変化し、それに遅れて操向ハンドルの操作に遅れが生じることを示す説明図、(d)は、部分的に凍結した路面を走行したときの規範路面反力及び実路面反力の時間推移の説明図である。
図6の(a)に示す規範路面反力TLrefと実路面反力TLestを示す2本の曲線において、( )外の符号に示すように、時間推移において、規範路面反力変化量ΔTLrefと実路面反力変化量ΔTLestが時間の経過に従って同一方向に増減し、そして、後半部分に示すように、規範路面反力変化量の絶対値|ΔTLref|よりも実路面反力変化量の絶対値|ΔTLest|の方が大きい場合を考える。この場合、図5に示すフローチャートのステップS02において規範路面反力変化量ΔTLrefと実路面反力変化量ΔTLestの積が正値となり、ステップS03に進み、時間推移の後半部分で、ステップS03において規範路面反力変化量の絶対値|ΔTLref|よりも実路面反力変化量の絶対値|ΔTLest|の方が大きいと判定されステップS05に進む。
これは、実路面反力変化量ΔTLestの方が規範路面反力変化量ΔTLrefよりも大きく、実ラック軸負荷、すなわち、ラック軸8に加わる負荷が増加し、その結果、操向ハンドル2(図1参照)が戻されてしまうので、ステップS05の切込み方向にモータ指示電流を補正する指示出力を受け、指示電流補正値出力部107において操舵補助力TaSを増大させるように切り込み方向に指示電流補正値ΔImCrを差分{|ΔTLest|−|ΔTLref|}に応じて算出して、モータMを制御する。
また、図6の(a)に示す規範路面反力TLrefと実路面反力TLestを示す2本の曲線において、( )内の符号に示すように、時間推移において、規範路面反力変化量ΔTLrefと実路面反力変化量ΔTLestが時間の経過に従って同一方向に増減し、そして、後半部分に示すように、規範路面反力変化量の絶対値|ΔTLref|よりも実路面反力変化量の絶対値|ΔTLest|の方が小さい場合を考える。この場合、図5に示すフローチャートのステップS02において規範路面反力変化量ΔTLrefと実路面反力変化量ΔTLestの積が正値となり、ステップS03に進み、Noと判定されてステップS06へ進み、時間推移の後半部分で、ステップS06において実路面反力変化量の絶対値|ΔTLest|よりも規範路面反力変化量の絶対値|ΔTLref|の方が大きいと判定されステップS07に進む。
これは実路面反力変化量ΔTLestの方が規範路面反力変化量ΔTLrefよりも小さく、実ラック軸負荷、すなわち、ラック軸8に加わる負荷が減少し、その結果、操向ハンドル2が切り込み過ぎ(オーバステア気味)なので、ステップS07の切込み抑制方向にモータ指示電流を補正する指示出力を受け、指示電流補正値出力部107において操舵補助力TaSを抑制するように戻し方向に指示電流補正値ΔImCrを差分|ΔTLest−ΔTLref|に応じて算出して、モータMを制御する。
ちなみに、図6の(a)に示す時間推移の曲線の前半部分では、規範路面反力変化量ΔTLrefと実路面反力変化量ΔTLestが時間の経過に従って同一方であり、かつ、変化量が同じなので、舵角θsに対して実路面反力TLestが適正な状態を示している。
次に、図6の(b)のA部に示すように、規範路面反力TLrefと実路面反力TLestが時間の経過に従って互いに逆方向に変化する場合を考える。この場合、図5に示すフローチャートのステップS02からステップS04に進み、規範路面反力変化量ΔTLrefと実路面反力変化量ΔTLestの積が負値であるので、ステップS07に進む。
これは、そのときの舵角に対する実路面反力が、運転者の期待に対して小さくなるため、操舵補助力と実路面反力のバランスが崩れ、切り込み過ぎ(オーバステア気味)なので、ステップS07の切込み抑制方向にモータ指示電流を補正する指示出力を受け、指示電流補正値出力部107において操舵補助力TaSを抑制するように戻し方向に指示電流補正値ΔImCrを差分|ΔTLest−ΔTLref|に応じて算出して、モータMを制御する。
さらに、図6の(c)に示すように、前輪23,23が、例えば、轍に落ち込み路面からのキックバックを受けて実路面反力TLestが急増した場合を考える。そのような場合、運転者が操向ハンドル2(図1参照)を操作して、操向ハンドル2をとられないようにするには時間的な反応遅れ(図6の(c)中、tdelayで示す)を生じる。
この場合、図5のフローチャートのステップS02がYesでステップS03に進み、ステップS03がYesとなり、ステップS05へ進み、切り込み方向にモータ指示電流を補正する指示出力を出す。その結果、指示電流補正値出力部107においてモータMが操舵補助力を急昇させ、舵角θsが押し戻されることが抑制され、図6の(c)の規範路面反力TLrefの曲線に示すように変動が小さく収まる。このように、舵角θsの乱れが抑制され、操向ハンドル2を介して運転者に操向ハンドル2からの反力の急変動、つまり、操舵トルクTsの急変動を防止できるので、操舵フィーリングに違和感無く、安定した操舵ができる。
また、部分的に凍結した路面を舵角θsが付いた状態で走行した場合に、図6の(d)のB部に示すように、実路面反力TLestが一時的に急減し、運転者が操向ハンドル2に同じ反力に対抗する力を加え続けると、操向ハンドル2を大きく切り込み操作してしまうことになる場合を考える。この場合、図5に示すフローチャートのステップS04において規範路面反力変化量ΔTLrefと実路面反力変化量ΔTLestの積が負値という判定により、ステップS07へ進む。ステップS07における切込み抑制方向にモータ指示電流を補正する指示出力を受け、指示電流補正値出力部107が、操舵補助力TaSを抑制するように戻し方向に指示電流補正値ΔImCrを差分|ΔTLest−ΔTLref|に応じて算出して、モータMを制御する。
その結果、舵角θsの急増は抑制され、凍結部分を通過した直後にオーバステア状態になるのを抑制できるので、操舵フィーリングに違和感無く、安定した操舵ができる。
従来の特許文献1に記載されているような電動パワーステアリング装置においては、車速Vと操向ハンドルのハンドル角θHと伝達関数G(s)とにより、規範タイヤ横滑り角βを算出する。そして規範タイヤ横滑り角βから規範路面反力Tkを求め、又、ハンドル角θHの微分により求められるハンドル角速度と、操向ハンドルから転舵輪までの間の操舵系の粘性摩擦係数Csとから、操舵系の粘性摩擦にもとづく規範トルクTbを求め、さらに、ハンドル角θHの2階微分により求められるハンドル角加速度と、操向ハンドルから転舵輪までの間の操舵系の慣性モーメントIsとから操舵系の慣性モーメントにもとづく規範トルクTcを求める。その後、規範路面反力Tk、規範トルクTb及び規範トルクTcの和(Tk+Tb+Tc)を規範操舵トルクとし、この規範操舵トルクとトルクセンサにより検出される操舵トルクとの偏差ΔTを低減するようにモータにより操舵系に付与される付加トルクを制御するものである。このとき、偏差ΔTと操舵トルクの2階微分から操舵意図を判定して、偏差ΔTに対応する付加トルクの変化特性を切り変えたりしている。
これに対し、本実施形態ではハンドル角θHやその1階微分値やその2階微分値を用いずに算出される規範路面反力変化量ΔTLrefと実路面反力変化量ΔTLestにもとづいて、比較判定部105、指示電流補正値出力部107、及び加算部114により指示電流補正ができるので、迅速な操舵補助力TaSの制御ができる。
その結果、転舵輪である前輪23,23へのキックバックのような外乱入力による実路面反力TLestの急変にも容易に対応でき、実路面反力TLestの変化、特に急変時の運転者が操向ハンドル2に加える手動操舵力、保舵力への影響を低減でき、操舵フィーリングを向上することが可能となるとともに、特に、不整路面走行中の車両安定走行性を向上することができる。
ちなみに、規範路面反力算出部101における規範路面反力TLrefの算出方法は、前記した図3の機能ブロック構成図に示したものに限定されるものではなく、他の方法でも良い。例えば、ハンドル角センサ32からのハンドル角θHを示す信号と車速センサ25からの車速Vを示す信号を用い、電動パワーステアリング装置1が適用される車両の数学モデル(車両モデル)にもとづき、規範路面反力を算出しても良い。
また、規範路面反力TLrefの算出方法として、舵角センサ34からの舵角θsを示す信号と車速センサ25からの車速Vを示す信号を用い、舵角θsを時間微分して舵角速度ωSを算出し、舵角速度ωS及び車速Vにもとづいて、規範路面反力TLrefのゲインを求め、位相を調整する単純なモデルでも良い。
なお、本実施形態ではラック&ピニオン式操舵装置21を例に説明したが、他の形式、例えば、ボールスクリュー式操舵装置にも適用可能である。
本発明に係る実施形態の電動パワーステアリング装置を適用した車両の全体概念図である。 電動パワーステアリング装置の制御機能ブロック構成図である。 図2における規範路面反力算出部の詳細な機能ブロック構成図である。 図2における指示電流補正値出力部の詳細な機能ブロック構成図である。 規範路面反力変化量と実路面反力変化量の挙動に応じてモータ指示電流値を補正する制御の流れを示すフローチャートである。 規範路面反力及び実路面反力の時間推移の説明図であり、(a)は、規範路面反力及び実路面反力の変化方向が同じで推移していることを示す説明図、(b)は、規範路面反力及び実路面反力の変化方向がある時点で異なる方向に推移していることを示す説明図、(c)は、実路面反力が路面からのキックバックを受けて変化し、それに遅れて操向ハンドルの操作に遅れが生じることを示す説明図、(d)は、部分的に凍結した路面を走行したときの規範路面反力及び実路面反力の時間推移の説明図である。
符号の説明
1 電動パワーステアリング装置
2 操向ハンドル
5 ピニオン軸
8 ラック軸
11 モータ駆動回路
21 ラック&ピニオン式操舵装置
23 前輪(転舵輪)
24 後輪
25 車速センサ
28 トルクセンサ(操舵力検出手段)
29 ECU(制御手段)
30A モータ電流センサ
30B モータ電圧センサ
31 モータ回転角センサ
32 ハンドル角センサ
34 舵角センサ
101 規範路面反力算出部(規範ラック軸負荷算出手段)
102,104,135 微分部
103 路面反力推定部(実ラック軸負荷検出手段)
105 比較判定部
107 指示電流補正値出力部
111 操舵補助力設定部
111a 操舵補助力設定マップ
113 指示電流値設定部
115 モータ駆動回路制御部
131 規範ラック軸負荷算出部
131a 規範ラック軸負荷マップ
133,137 車速補正係数算出部
133a,137a 車速補正係数マップ
136 ラック軸負荷補正値算出部
136a ラック軸負荷補正値マップ
151,152 絶対値算出部
153 差分算出部
154,156 指示電流補正値算出部
154a,156a 指示電流補正値マップ
155 差分絶対値算出部
157 出力選択部
M モータ
Ts 操舵トルク
TaS 操舵補助力
TLref 規範路面反力(規範ラック軸負荷)
TLest 実路面反力(実ラック軸負荷)
V 車速
Vm モータ電圧

Claims (2)

  1. 転舵輪に舵角を与える操舵系に動力を付加するモータと、前記操舵系に作用する手動操舵力を検出する操舵力検出手段と、少なくとも前記操舵力検出手段の出力にもとづいて操舵補助力と操舵抵抗力とを前記モータに発生させるための制御手段とを有するラック&ピニオン式操舵装置に用いられる電動パワーステアリング装置であって、
    前記ラック&ピニオン式操舵装置のラック軸に伝えられる舵角と車速とに応じた前記転舵輪による規範ラック軸負荷を算出する規範ラック軸負荷算出手段と、
    前記転舵輪から実際に掛かる実ラック軸負荷を検出する実ラック軸負荷検出手段と、を備え、
    前記制御手段が、
    前記算出された規範ラック軸負荷の変化量と前記検出された実ラック軸負荷の変化量との偏差に応じて前記操舵補助力と前記操舵抵抗力を設定するようになっており、
    前記実ラック軸負荷の変化量が前記規範ラック軸負荷の変化量より大きい場合には、前記舵角の増大方向の前記操舵補助力を前記操舵系に付与し、
    前記実ラック軸負荷の変化量が前記規範ラック軸負荷の変化量より小さい場合には、前記舵角の増大方向に対する前記操舵抵抗力が増大するように前記操舵補助力を前記操舵系に付与することを特徴とする電動パワーステアリング装置。
  2. 前記制御手段が、前記規範ラック軸負荷の変化量の方向と前記実ラック軸負荷の変化量の方向が逆の場合には、前記舵角の増大方向に対する前記操舵抵抗力が増大するように前記操舵補助力を前記操舵系に付与することを特徴とする請求項1に記載の電動パワーステアリング装置。
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