JP5151293B2 - 燃料電池の運転方法 - Google Patents

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Description

本発明は燃料電池の運転方法に係り、より詳細には、電極触媒として白金を用いた燃料電池の運転方法に関する。
近年、環境問題を背景とした社会的要求や動向と呼応して、燃料電池が注目されている。特に、イオン導電性の高分子電解質膜を用いた固体高分子型燃料電池(以下、「PEFC」と称する)は、100℃以下の低い温度で作動可能なことから、車両用駆動源や定置型電源として期待され、実用化に向けて開発が進められている。PEFCが車両用駆動源や定置型電源として実用化されるためには、長期間に渡る耐久性を備えることが必要である。
PEFCの構成は、一般的には、膜―電極接合体(以下、「MEA」と称する)をセパレータで狭持した構造となっている。MEAは、一般的には、ガス拡散層、カソード触媒層、固体高分子電解質層、アノード触媒層が順に積層した構造を有する。電池反応は、少なくとも触媒、触媒を担持する担体、およびイオン導電性高分子からなる触媒層において進行する。このため、触媒層の劣化を抑制することは、PEFCの耐久性を高める上で重要な課題となっている。
触媒の劣化を抑制する従来技術は、下記特許文献1に記載されている。特許文献1には、カーボンブラックに担持した白金合金触媒を熱処理した後に、一酸化炭素と接触させ、これを不活性ガス雰囲気下で再度熱処理する触媒の製造方法が記載されている。すなわち、白金−白金原子間距離を小さくかつ安定化させることにより、触媒活性および耐久性に優れた触媒を製造する方法が提案されている。
特開2001−52718号公報
しかし、特許文献1に記載された技術によっても、燃料電池に対する負荷の周期的変化に伴う燃料電池セルの電圧の変化により、カソード触媒層の白金が溶出することを防止することができない。
燃料電池の運転中は、燃料電池に対する負荷の変化に応じ、燃料電池の出力電圧も周期的、または、非周期的に変化する現象(以下、「負荷サイクル」と称する)が発生する。負荷サイクルの発生は、燃料電池セルの電圧の変化を伴うことから、燃料電池セルの触媒層を構成する触媒の酸化、還元反応を頻繁に反復させる。
白金による触媒は、高電位であっても一定の電位に保持されていれば触媒表面は安定しており、触媒の溶出はわずかである。ところが、触媒の酸化・還元を伴うような負荷サイクルの発生時となると、燃料電池セルの電圧の変化により触媒の電位が大きく変化する。これにより、触媒の溶出は著しくなり、触媒が劣化し、燃料電池の発電性能が低下することにより、燃料電池の耐久性低下の原因となる。
本発明は、燃料電池に対する負荷の変化が高い側から低い側へ変化することに伴う燃料電池セルの電圧変化の速度(以下、「セル電圧変化速度」と称する)が一定値を超えると、触媒である白金の溶出の速度が急激に速くなることを見出し、セル電圧変化速度を一定値以下にする制御を行うことにより、燃料電池の耐久性および信頼性を向上させることを目的とするものである。
上記目的を達成するために、本発明に係る燃料電池運転方法は、電極触媒として白金を用いた燃料電池の運転方法であって、燃料電池に対する電力の負荷の変化が高い側から低い側への変化であることを検知する段階と、負荷の変化が高い側から低い側への変化であることが検知されたときには、前記燃料電池を構成する各燃料電池セルの電圧の変化の速度であるセル電圧変化速度を200mV/s以下に制御する段階と、を含むことを特徴とする。
本発明に係る燃料電池運転方法によれば、セル電圧変化速度を一定値以下にする制御を行うことにより、触媒の溶出を防止し、燃料電池の耐久性および信頼性を向上させることができる。
以下に、本発明に係る燃料電池の制御方法について、第1実施形態〜第3実施形態に分けて、図面を参照しながら詳細に説明する。
これらの実施形態の説明をする前に、本発明の理解を容易なものとするために、燃料電池スタックの全体構成について簡単に説明しておく。図1は燃料電池スタックの全体構成を示す斜視図であり、図2は、燃料電池スタックのセル構造を示す要部拡大断面図である。
図1に示すように、燃料電池スタック1は、アノード反応ガス(本明細書では水素)とカソード反応ガス(本明細書では酸素)の反応により起電力を生じる単位電池セル(以下、単に「セル」と称する)2を所定数だけ積層して積層体3とされ、その積層体3の両端に集電板4、絶縁板5およびエンドプレート6を配置し、該積層体3の内部に貫通した貫通孔(図示は省略する)にタイロッド7を貫通させ、そのタイロッド7の端部にナット(図示は省略する)を螺合させることで構成されている。
この燃料電池スタック1においては、アノード反応ガス、カソード反応ガスおよび液状媒体(具体的には冷却水又は温水)をそれぞれ各セル2のセパレータ(図示は省略する)に形成された流路溝に流通させるためのアノード反応ガス供給口8、アノード反応ガス排出口9、カソード反応ガス供給口10、カソード反応ガス排出口11、媒体供給口12および媒体排出口13を、一方のエンドプレート6に形成している。
アノード反応ガスは、アノード反応ガス供給口8より供給されてセパレータに形成されたアノード反応ガス供給用の流路溝を流れ、アノード反応ガス排出口9より排出される。カソード反応ガスは、カソード反応ガス供給口10より供給されてセパレータに形成されたカソード反応ガス供給用の流路溝を流れ、カソード反応ガス排出口11より排出される。液状媒体は、媒体供給口12より供給されてセパレータに形成された媒体供給用の流路溝を流れ、媒体排出口13より排出される。
セル2は、図2に示すように、膜電極接合体(以下、MEA(membrane electrode assembly)とも称する。)14と、このMEA14の両面にそれぞれ配置されるセパレータ15とから構成される。以下、MEA14のアノード側に配置されるセパレータ15を、アノードセパレータ15Aと称し、カソード側に配置されるセパレータ15をカソードセパレータ15Bと称する。
MEA14は、例えば水素イオンを通す高分子電解質膜である固体高分子電解質膜141と、アノード触媒層142Aとガス拡散層143Aからなるアノードとしてのアノード電極144Aと、電極触媒である触媒金属としてのカソード触媒層142Bとガス拡散層143Bからなるカソードとしてのカソード電極144Bとからなる。MEA14は、アノード電極144Aとカソード電極144Bによって、固体高分子電解質膜141をその両側から挟み込んだ積層構造とされている。
セパレータ15は、板厚の薄い導電性金属板を金型で所定形状に成形することにより形成される。セパレータ15は、図に示すように、発電に寄与するアクティブ領域(MEA14と接する中央部分の領域)に、凸条部16と凹条部17を交互に形成した凹凸形状(いわゆるコルゲート形状)を有している。
MEA14のアノード電極144A側に接して配置されるアノードセパレータ15Aの凸部16Aと凹部17Aは、MEA14との間にアノード反応ガス(水素;H)を流通させる流路溝となりアノード反応ガス流路(アノードの流路)18を形成する。一方、MEA14のカソード電極144B側に接して配置されるカソードセパレータ15Bの凸部16Bと凹部17Bは、MEA14との間にカソード反応ガス(酸素;O)を流通させる流路溝となりカソード反応ガス流路(カソードの流路)19を形成する。
アノード反応ガス流路18に水素を、カソード反応ガス流路19に酸素を、それぞれ流通させると、水素はアノード触媒層142Aの触媒作用で水素イオンに変わり電子を放出する。電子を放出した水素イオンは固体高分子電解質膜141を通過する。カソード触媒層142Bでは固体高分子電解質膜141を通過してきた水素と外部回路(図示せず)を経由してきた電子が酸素と反応して水を生成する。この作用によってアノード電極144Aがマイナスに、カソード電極144Bがプラスになり、図2に示すように、アノード電極144Aとカソード電極144Bとの間で直流電圧が発生する。
本明細書では、アノード電極144Aとカソード電極144Bとの間に現れる電圧(すなわちアノード電極の電位に対するカソード電極の電位)をセル電圧と称する。セル電圧は、燃料電池スタックの出力電力から既知のデータに基づく変換によって求めうる。しかし、セル電圧をセル電圧検知手段として機能するセル電圧計20によって検出してもよい。この場合は、セル電圧は、燃料電池スタック1を構成する全てのセルから検出するようにしても良いし、燃料電池スタック1を構成するセルの内の複数の代表的なセルのみから検出するようにしても良い。
以下に、第1実施形態から第3実施形態に分けて本発明に係る燃料電池の制御方法およびその制御装置を具体的に説明する。
[第1実施形態]
図3は、本発明の第1実施形態に係る燃料電池の制御方法を実施するための燃料電池システムの概略構成を示すブロック図である。図4は本発明の第1実施形態に係る燃料電池の運転方法のフローチャートを示す図である。
第1実施形態に係る燃料電池の制御方法を実施するための燃料電池システムは、図3に示すように、アノード反応ガス(水素)とカソード反応ガス(酸素)との供給によって発電する燃料電池スタック300、アノード反応ガスである水素の流量を調整する流量調整器310、カソード反応ガスである酸素を含む空気の流量を調整するコンプレッサ330、燃料電池スタック300の補助電源として機能する2次電池370、燃料電池スタックの電極間もしくはセルの電極間を短絡させる可変抵抗を有する放電回路390を備えうる。
燃料電池スタック300には電極触媒として触媒金属が用いられている。具体的にはカソード電極144Bのカソード触媒層142B(図2参照)には白金が用いられている。
流量調節器310は、燃料電池スタック300のアノード電極に水素を供給する機能を有し、同時に制御部による制御に基づき水素の供給流量を調整する機能を有しうる。
コンプレッサ330は、燃料電池のカソード電極に外部空気を供給する機能を有する。燃料電池に供給される空気の流量は制御部360がコンプレッサ330を制御することにより調整されうる。
2次電池370は、燃料電池システムに対して要求される電力と燃料電池スタック300が出力する電力に差がある場合に、燃料電池スタックが出力する電力の方が大きいときは充電され、燃料電池スタックが出力する電力の方が小さいときは放電する。すなわち、2次電池370は燃料電池スタックの補助電源としての機能を有する。
放電回路390は、燃料電池スタックの電極間もしくはセルのカソード電極とアノード電極間に接続され、これらの電極間を制御部360による制御に基づき短絡させる手段として機能しうる。放電回路390は可変抵抗とスイッチ素子からなり、可変抵抗の抵抗値および前記電極間への接続は制御部360により制御されうる。ここで、短絡とは、ある抵抗値を有する抵抗器によって電極間を電気的に接続することも含むものとする。
制御部360は、制御装置、演算装置、記憶装置、入出力装置、タイマーにより構成され、流量調節器310、コンプレッサ330、2次電池370、放電回路390を制御する機能を有しうる。また、流量調節器310から水素の流量を、コンプレッサ430から空気の流量を、2次電池から蓄電量を、検知する機能を有しうる。そして、燃料電池スタック300に対し要求される電力を検知し、セル電圧変化速度を求め、これに基づき燃料電池スタックに対する電力負荷を制御する機能を有しうる。
燃料電池スタック300に供給される水素ガスは水素ボンベ320に高圧充填されており、燃料電池スタック300に供給する水素ガスの流量は流量調整器310により調整される。燃料電池スタック300に供給する空気の流量はコンプレッサ330により調整され、圧送される。燃料電池スタック300を通過した空気はそのまま大気に排出される。
図4に示すフローチャートにしたがって、第1実施形態に係る燃料電池の運転方法について詳細に説明する。まず、燃料電池の運転時に、燃料電池スタックに対する電力負荷の変化(以下、単に「電力負荷変化」と称する)を検知する(S400)。電力負荷変化は、アクセル開度に基づいて算出した燃料電池スタックに要求される電力により検知してもよい。また、燃料電池スタックに、セル電圧を検知する電圧計と、燃料電池スタックから出力される電流を検知する電流計を設けて、該電圧計と電流計により求めた電力から検知してもよい。
次に、電力負荷変化が減少したかどうかを制御部において判断する(S401)。燃料電池スタックに対する電力負荷が減少していないと判断した場合は、ステップ番号S400に戻り、電力負荷変化の検知および電力負荷が減少したかどうかの判断を継続する。
燃料電池スタックに対する電力負荷変化が減少したと判断した場合は、セル電圧変化速度を制御部において演算する(S402)。セル電圧変化速度は、以下の方法により演算しうる。すなわち、燃料電池セルに対する電力負荷が大きいと、セル電圧は小さく、燃料電池セルに対する電力負荷が小さいと、セル電圧は大きいという関係がある。そこで、あらかじめ燃料電池スタックに対する電力負荷とセル電圧との関係を測定し、制御部の記憶装置に記憶させておく(以下、これを「マップ化」と称する)。検知した電力負荷変化を、マップ化した電力負荷とセル電圧との関係を用いて、セル電圧変化速度に変換する。あらかじめ燃料電池燃料電池に対する電力の負荷とセル電圧の関係を測定し、マップ化しておくことにより、セル電圧変化速度を燃料電池の出力により制御できるため、現有システムに新たな要素を追加する必要がなく、現有システムを有効利用できる。ただし、燃料電池スタックに各燃料電池セルの電圧を検知する電圧計を設けた場合は、当該電圧計により検知したセル電圧を用いてセル電圧変化速度を演算してもよい。
次に、セル電圧変化速度が所定値よりも大きいかどうかを制御部において判断する(S403)。セル電圧変化速度が所定値より大きくない場合は、フローチャートは終了する。しかし、本フローチャートは燃料電池スタックを運転している間は常に動作させうる。
セル電圧変化速度が所定値よりも大きい場合は、次のステップS404に移行する。セル電圧変化速度が所定値よりも大きいということは、燃料電池スタックに対する電力負荷の高負荷から低負荷に変化する速度が所定値を超えていることを意味する。この場合は、カソード触媒層から触媒である白金が溶出する速度が急激に増大する。そこで、第1実施形態においては、2次電池と燃料電池スタックがそれぞれ負担する電力負荷の割合を変えることにより、セルの電圧変化の速度を所定値よりも小さくする制御を行う。所定値は、200mV/sでありうる。また、さらに望ましくは100mV/sでありうる。セル電圧変化速度が前記所定値を超えると、カソードからの白金溶出の速度がより増大するという現象についての詳細な説明は後述する。燃料電池スタックに対する電力の負荷が高負荷から低負荷に変化することに伴うセル電圧変化速度を所定値以下とする制御を行うため、白金溶出の進行を抑制することができ、燃料電池スタックの耐久性、信頼性を向上することができる。
ステップ番号S404においては、燃料電池スタックと2次電池に要求される総電力を考慮し、2次電池の出力電力を低減することが可能かどうか制御部において判断する。すなわち、燃料電池スタックと2次電池が負担すべき電力の負担割合を変え、2次電池が負担すべき電力の割合を減少させ、燃料電池スタックが負担すべき電力の割合を増加させることが可能かどうか判断する。2次電池の出力電力を低減することが可能であると判断した場合は、セル電圧変化速度が所定値よりも小さくなるまで2次電池の出力電力を低減する(S405)。2次電池の出力電力を低減することにより、燃料電池スタックと2次電池に要求される総電力のうち2次電池が負担する電力負荷の割合が減少するため燃料電池に対する電力負荷は大きくなる。燃料電池に対する電力負荷が大きくなると、セルの電流密度が大きくなるため、分極による過電圧が大きくなり、セル電圧が低下する。ここで、過電圧とは電極の電位と白金溶出/析出の平衡電位の差をいう。したがって、セル電圧変化速度を小さくすることができる。上述したように、燃料電池に対する電力負荷を大きくすることは、燃料電池と2次電池が負担する電力負荷の割合を変えることによってもよいが、燃料電池システムを構成するコンプレッサや流量調整器といった補機を燃料電池に駆動させることによってもよい。すなわち、燃料電池を実装した自動車を駆動することの他、自動車に実装した補機を駆動することによって燃料電池に対する電力負荷を大きくしてもよい。セルの電流密度が大きくなることによりセル電圧が小さくなる理由については後述する。
ステップ番号S404において、2次電池の出力電力を低減することが不可能と判断した場合は、2次電池の充電が可能かどうか制御部において判断する(S406)。2次電池の充電が可能であると判断した場合は、セル電圧変化速度が所定値よりも小さくなるまで2次電池を充電する(S407)。2次電池を充電するための電力は燃料電池スタックから供給されるため、燃料電池に対する電力負荷は大きくなる。燃料電池に対する電力負荷が大きくなると、セルの電流密度が大きくなるため、分極が大きくなり、セル電圧が小さくなる。したがって、セル電圧変化速度を小さくすることができる。セル電圧変化速度を所定値以下に制御することによって生じる余分電力を活用するため、燃料の無駄を省き、燃費を向上させることができる。
2次電池の充電が不可能と判断した場合は、再析出操作サブルーチンに移行する(S408)。ここで、図5にしたがって再析出操作サブルーチンについて詳細に説明する。
図5は再析出操作サブルーチンのフローチャートを示す図である。再析出操作は、カソードから溶出した白金を、セルの過電圧を大きくすることによって再析出させ、白金溶出の進行を防止するために行う。過電圧は分極を大きくすることにより大きくすることができる。
まず、セルのアノード電極とカソード電極間に放電回路を接続する(S500)。放電回路は、可変抵抗器の両端にスイッチング素子を有する回路でありうる。すなわち、制御部は、スイッチング素子の開閉を制御することによりセルの電極間に可変抵抗を接続することによりセルの電極間を短絡しうる。また、制御部は、可変抵抗器の抵抗値を変えることができうる。放電回路は、各セルのカソード電極とアノード電極間に接続してもよいし、燃料電池スタックの電極間に接続してもよい。セルのアノード電極とカソード電極間に抵抗器からなる放電回路を接続することにより、放電回路に流れる電流が発生するため、セルの電流密度が増加する。セルの電流密度の増加によって、セルの過電圧が大きくなるため、セル電圧を小さくすることができる。
次に、セルのカソード電極とアノード電極間に放電回路を接続したことにより減少したセル電圧を検知する(S501)。セル電圧は、燃料電池スタックに対する電力負荷をマップ化したデータにより変換することにより検知しうる。ただし、燃料電池スタックに各燃料電池セルの電圧を検知する電圧計を設けた場合は、当該電圧計によりセル電圧を検知してもよい。
制御部は、検知したセル電圧が所定値よりも小さいかどうかを判断する(S502)。検知したセル電圧が所定値よりも小さくないと判断した場合は、放電回路の可変抵抗の抵抗値を小さくすることによりさらに過電圧を大きくさせる(S503)。そして、再度、セル電圧を検知し(S501)、検知したセル電圧が所定値よりも小さいかどうかを判断する(S502)。検知したセル電圧が、未だ所定値よりも小さくないと判断した場合は、セル電圧が所定値よりも小さくなるまで放電回路の抵抗値を小さくしうる。ここで、セル電圧の所定値は0.7V以下でありうる。また、望ましくは、0.5V以下でありうる。セル電圧の所定値がこのような値とする理由については後述する。
検知したセル電圧が所定値よりも小さいと判断した場合は、時間の記録を開始する(S504)。そして、当該記録に基づき所定時間経過したかどうかを制御部において判断する(S505)。すなわち、ステップ番号S504とS505からなるループによりセル電圧が所定値よりも小さくなっている状態の時間を計測し、セル電圧が所定値よりも小さくなっている状態を、所定時間が経過するまで維持する。時間は制御部が有するタイマーと記憶装置により記録しうる。所定時間は、カソード触媒層において、イオン化した白金がアイオノマー内を拡散していくのに要する時間tより大きい時間としうる。所定時間をこのように設定することにより、アイーノマー内の白金イオンを再析出させうる。
所定時間tは、式(1)により与えられる。通常のセルであれば、式(1)から判るように、所定時間tは、数秒程度の値である。したがって、通常は、所定時間tは10秒以下としうる。しかし、所定時間tは、セルの触媒層の厚さや白金イオンのアイオノマー内有効拡散係数によって適宜最適な値を選択しうる。再析出操作における白金の再析出に要する時間は秒単位であるので、白金の再析出に伴う消費電力は大きくなく、効率的、経済的に燃料電池スタックの耐久性、信頼性を向上することができる。セル電圧が所定値よりも小さくなっている状態が所定時間経過することにより、再析出操作サブルーチンは終了する。
tD=d/D ・・・(1)
d:触媒層の厚さ[m]、D:白金イオンのアイオノマー内有効拡散係数[m2/s]
再析出操作により、白金の再析出を促進することができるため、白金溶出の進行が抑えられ、燃料電池スタックの耐久性、信頼性を向上することができる。また、再析出操作を行うことにより白金の有効電気化学表面積の減少を緩和できるため、白金の触媒としての機能の劣化を防止することができ、燃料電池スタックの耐久性、信頼性を向上させることができる。
再析出操作サブルーチンの終了に伴い、図4に示す本発明の第1実施形態に係る燃料電池の運転方法のフローチャートも終了となる。しかし、本フローチャートは燃料電池スタックを運転している間は常に動作させうる。
図6の(A)は再析出操作におけるセル電圧(すなわち、所定値)と、再析出操作実施後の白金溶出速度の関係を示したものである。この図に示すように、所定値を0.7V以下として再析出操作を行うことにより白金溶出速度がかなり抑えられる。また、所定値を0.5V以下にすることにより、さらに白金溶出速度を抑えることができる。したがって、第1実施形態においては、セル電圧を0.7V、望ましくは0.5Vにして白金の再析出を行うことにより、その後の白金溶出の進行を抑え、燃料電池スタックの耐久性、信頼性を向上させることができる。
図6の(B)は、再析出操作をした場合(再析出操作あり)と、再析出操作をしない場合(再析出操作なし)の、白金の有効電気化学表面積のセル電圧の変化サイクル数依存性を示したものである。再析出操作をすることにより、セル電圧の変化サイクルに伴う白金の有効電気化学表面積の減少の程度を小さくすることができる。白金の有効電気化学表面積が大きい状態が維持されれば、白金の触媒としての機能は高いまま維持される。したがって、第1実施形態においては、再析出操作をすることにより、白金の触媒としての機能の劣化を防止し、燃料電池スタックの耐久性、信頼性を向上させることができる。
ここで、図4のステップ番号S403において説明した、セル電圧変化速度が所定値を超えると、カソードからの白金溶出の速度がより増大する現象について詳細に説明する。
図7(A)は、低電圧から高電圧へのセル電圧変化速度とカソード触媒層における白金溶出速度の関係を示す図であり、図7(B)は、セル電圧変化速度と白金溶出速度の大小の関係を、時間とセル電位の関係において示す図である。
図7(A)は、電気化学水晶振動子ナノ天秤(Electrochemical Quartz Crystal Nanobalance、以下、「EQCN」と称する)装置を用いて測定したデータをプロットしたものである。白金が溶出すると、電極が軽くなり、共振周波数が高くなる。したがって、共振周波数の変化により、電極の重量変化を計算できる。EQCN装置は、このような原理により、重量の変化を高精度に測定できる。そこで、多種類のセル電圧サイクルを印加した後、EQCN装置を用いて、白金の溶出速度を測定した。その結果、図7(A)に示すように、セル電圧変化速度が200mV/sより大きくなると、白金溶出速度が急激に増大することが判った。一方、セル電圧変化速度が200mV/sより小さい場合は、セル電圧速度の増大による白金溶出速度の増大の割合が小さいことが判った。
この現象は次に説明する原理によって生じる。すなわち、カソード電位を高い状態を維持すれば白金が酸化され、触媒層の表面の白金は安定性のある酸化白金となる。一方、カソード電位を低い状態に維持すれば酸化白金が還元され、触媒層の表面は白金が露出する。しかし、低電位から高電位に変化する時間が短いと、白金が酸化白金とはならず、イオン化して白金イオンとなって溶出する割合が大きくなる。したがって、セル電圧変化速度が大きくなることにより白金溶出速度が増大する。本発明は、セル電圧速度を200mV/sより小さくする制御を行うことにより、白金溶出の進行を抑制するというものである。すなわち、図7(B)に示した白金溶出速度の小さい領域で燃料電池を運転させるようにするために、セル電圧変化速度を小さくする制御を行うものである。
次に、図4のステップ番号S405において説明した、セルの電流密度が大きくなることによりセル電圧が小さくなる理由について詳細に説明する。
図8(A)は、セルの電流密度とセル電圧との関係(実線)と、セルの電流密度とセル出力電力との関係(点線)を示す図である。セルの電流密度とセル電圧との関係において、セルの電流密度が増加するにしたがいセルの電圧が低下するのは、セルの電流密度が増加するにしたがいセルの過電圧が増大するためである。セルの過電圧は、活性化分極、抵抗分極、拡散分極が原因で発生する。ここで、活性化分極とは、アノード電極における水素の酸化とカソードにおける酸素の還元における化学反応において、水素と酸素が一度活性化した状態になることによるエネルギーの消費に、セルの起電力の一部が使用されることによる損失をいう。抵抗分極とは、セル内の内部抵抗に電流が流れることによるエネルギーの消費に、セルの起電力の一部が使用されることによる損失をいう。拡散分極とは、電極上における化学反応によって発生する濃度差に基づく拡散移動のためのエネルギーの消費に、セルの起電力の一部が使用されることによる損失をいう。これらの分極はセルの電流密度の増加に伴い増大する。したがって、セルの電流密度が増加するにしたがって過電圧は増大し、セル電圧は減少する。
セルの電流密度とセルの出力電力との関係においては、セルの電流密度が比較的小さいときはセルの電流密度の増加に伴い、セルの出力電力も増大する。しかし、セルの出力電力がピークに達し、さらにセルの電流密度を増加させると、セルの電流密度の増加に伴い、セルの出力電力は低下する。セルの電流密度が比較的大きい領域で、セルの電流密度の増加に伴いセルの出力電力が低下するのは、セルの電流密度が増加するのに伴い分極による過電圧が増大し、セルの電圧が低下するからである。第1実施形態に係る燃料電池の運転方法においては、原則として、図8の(A)(B)で通常運転領域として示した領域において燃料電池を運転させうる。しかし、前記再析出操作においては、図8の(A)(B)で通常運転領域として示した領域以外の領域において燃料電池を運転させうる。
以上より、本第1実施形態は、請求項1〜3、5〜8に係る燃料電池の運転方法の発明を実施化したものである。ステップ番号S400とS401は本発明の、燃料電池に対する電力の負荷が高負荷から低負荷へ変化することを検知する段階、に相当する。また、ステップ番号S402〜S407は、本発明の、燃料電池を構成する各燃料電池セルの電極間の電圧の変化の速度であるセル電圧変化速度を200mV/s以下に制御する段階、に相当する。ステップ番号S500〜S505は、本発明の、検出した前記セル電圧変化速度が200mV/s以下に制御することができないと判断した場合に、前記電極触媒をなす層における白金イオンの拡散係数と、前記電極触媒をなす層の厚さと、により定まる白金イオンの拡散時定数よりも長い時間前記セル電圧を0.7V以下に下げる段階、に相当する。
以下に、本発明の第1実施形態に係る燃料電池の運転方法の効果を示す。
・燃料電池スタックに対する電力の負荷が高負荷から低負荷に変化することに伴うセル電圧変化速度を所定値以下とする制御を行うため、白金溶出の進行を抑制することができ、燃料電池スタックの耐久性、信頼性を向上することができる。
・あらかじめ燃料電池燃料電池に対する電力の負荷とセル電圧の関係を測定し、マップ化しておくことにより、セル電圧変化速度を燃料電池の出力により制御できるため、現有システムに新たな要素を追加する必要がなく、現有システムを有効利用できる。
・セル電圧変化速度を所定値以下に制御することによって生じる余分電力を活用するため、燃料の無駄を省き、燃費を向上させることができる。
・再析出操作により、白金の再析出を促進することができるため、白金溶出の進行が抑えられ、燃料電池スタックの耐久性、信頼性を向上させることができる。
・再析出操作における白金の再析出に要する時間は秒単位であるので、白金の再析出に伴う消費電力は大きくなく、効率的、経済的に燃料電池スタックの耐久性、信頼性を向上させることができる。
・再析出操作を行うことにより白金の有効電気化学表面積の減少を緩和できるため、白金の触媒としての機能の劣化を防止することができ、燃料電池スタックの耐久性、信頼性を向上させることができる。
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態に係る燃料電池の運転方法は、第1実施形態に係る燃料電池の制御方法に対し、さらにセル電圧を所定の範囲内にするための制御を加えたものである。第2実施形態を実施するための燃料電池システムの構成は、第1実施形態と同様であるので(図3参照)、説明は省略する。図9は第2実施形態に係る燃料電池の運転方法のフローチャートを示す図である。
図9に示すフローチャートにしたがって、第2実施形態に係る燃料電池の運転方法について詳細に説明する。ただし、第2実施形態は第1実施形態と同様の部分を含むため、その部分については、説明を省略もしくは簡略化する。まず、第1実施形態と同様に、燃料電池スタックに対する電力負荷変化を検知する(S600)。次に、電力負荷変化が減少したかどうかを制御部により判断する(S601)。燃料電池スタックに対する電力負荷変化が減少していないと判断した場合は、ステップ番号S600に戻り、燃料電池スタックに対する電力負荷変化の検知および当該電力負荷が減少したかどうかの判断を継続する。燃料電池スタックに対する電力負荷変化が減少したと判断した場合は、セル電圧変化速度を演算により求める(S602)。
次に、検知したセル電圧が第1基準電圧より小さいかどうかを制御部において判断する(S603)。検知したセル電圧が第1基準電圧より小さくないと判断した場合は、2次電池の出力電力を低減することが可能かどうか判断する(S605)。すなわち、燃料電池スタックと2次電池が負担すべき電力の負担割合を変えて、2次電池が負担すべき電力の割合を減少させ、燃料電池スタックが負担すべき電力の割合を増加させることが可能かどうか判断する。2次電池の出力電力を低減することが可能であると判断した場合は、セル電圧が第2基準電圧よりも小さく、かつ、セルの電圧変化の速度が所定値よりも小さくなるまで2次電池の出力電力を低減させる(S606)。ここで、所定値は、第1実施形態と同様200mV/sであり、さらに望ましくは100mV/sでありうる。また、第1基準電圧は0.9V、第2基準電圧は、0.6Vでありうる。第1基準電圧、第2基準電圧がこのような値とするのは、白金は、酸化還元のサイクルにより溶出が促進されるほか、セル電圧の最大値が大きいほど白金溶出の進行が激しいため、セル電圧の範囲を制限し、白金の溶出速度をさらに抑えるためである。すなわち、セル電圧を0.6V〜0.9Vの範囲になるように制御することにより、白金の溶出速度をさらに抑え、燃料電池スタックの耐久性、信頼性を向上するためである。
セル電圧が第1基準電圧より小さいと判断した場合は、セルの電圧変化の速度が所定値よりも大きいかどうかを制御部において判断する(S604)。セルの電圧変化の速度が所定値よりも大きい場合、すなわち、燃料電池スタックに対する電力負荷の高負荷から低負荷に変化する速度が所定値を超えている場合は、カソード触媒層から触媒である白金が溶出する速度が増大する。したがって、セルの電圧変化の速度が所定値よりも大きい場合は、2次電池と燃料電池スタックがそれぞれ負担する電力負荷の割合を変えることにより、セルの電圧変化の速度を所定値よりも小さくする。
セルの電圧変化の速度が所定値よりも大きくない場合は、本フローチャートは終了する。しかし、本フローチャートは燃料電池スタックを運転している間は常に動作させうる。
セルの電圧変化の速度が所定値よりも大きい場合は、燃料電池スタックと2次電池に要求される総電力を考慮し、2次電池の出力電力を低減することが可能かどうか制御部において判断する(S605)。2次電池の出力電力を低減することが可能であると判断した場合は、セル電圧が第2基準電圧よりも小さく、かつ、セルの電圧変化の速度が所定値よりも小さくなるまで2次電池の出力電力を低減する(S606)。
2次電池の出力電力を低減することが不可能と判断した場合は、2次電池の充電が可能かどうか制御部において判断する(S607)。2次電池の充電が可能であると判断した場合は、セル電圧が第2基準電圧よりも小さく、かつ、セルの電圧変化の速度が所定値よりも小さくなるまで2次電池を充電する(S407)。
2次電池の充電が不可能と判断した場合は、再析出操作サブルーチンに移行する(S609)。
以上より、本第2実施形態は、請求項4、5〜8に係る燃料電池の運転方法の発明を実施化したものである。ステップ番号S606、608は、本発明の、前記セル電圧を0.6V〜0.8Vの間の電圧に制御する段階に相当する。
本発明の第2実施形態に係る燃料電池の運転方法は、第1実施形態が有する効果に加えて、以下の効果を有する。
・第1実施形態に対し、さらにセル電圧の変化範囲を制限することにより、白金の溶出速度をさらに抑え、燃料電池スタックの耐久性、信頼性を向上することができる。
[第3実施形態]
本発明の第3実施形態に係る燃料電池の運転方法は、第1実施形態および第2実施形態に係る燃料電池の制御方法における再析出操作に代え、カソード電極に供給するカソード反応ガス(酸素)のストイキ比(Stoichiometric Ratio、以下、「SR」と称する)を低下させることによって再析出操作を行うものである。SRとは、要求される発電量に基づいて算出された最低限必要な反応ガス量を必要反応ガス量として、この必要反応ガス量に対する燃料電池に供給されている反応ガス量の割合をいう。第3実施形態を実施するための燃料電池システムの構成は、第1実施形態と同様であるので(図3参照)、説明は省略する。また、再析出操作サブルーチン以外の第3実施形態に係る燃料電池の運転方法のフローチャートは、第1実施形態および第2実施形態のいずれかと同様である。したがって、ここでは、第3実施形態に係る燃料電池の運転方法の再析出操作サブルーチンについてのみ説明する。
図10は、第3実施形態に係る燃料電池の運転方法の再析出操作サブルーチンのフローを示す図である。再析出操作は、第1実施形態および第2実施形態と同様、イオン化することによりカソードから溶出した白金を、燃料電池の過電圧を大きくすることによって再析出させ、白金溶出の進行を防止するために行う。
まず、セル電圧を検知する(S700)。セル電圧は、燃料電池スタックに対して要求された電力負荷をマップ化したデータにより変換することにより検知しうる。ただし、燃料電池スタックに各燃料電池セルの電圧を検知する電圧計を設けた場合は、当該電圧計によりセル電圧を検知してもよい。
制御部は、検知したセル電圧が所定値よりも小さいかどうかを判断する(S701)。検知したセル電圧が所定値よりも小さくないと判断した場合は、SRを低下させることにより拡散過電圧を増大させる(S702)。そして、再度、セル電圧を検知し(S700)、検知したセル電圧が所定値よりも小さいかどうかを判断する(S502)。検知したセル電圧が、未だ所定値よりも小さくないと判断した場合は、セル電圧が所定値よりも小さくなるまでSRを小さくしうる。ここで、SRは1.2より小さい値まで低下させうる。また、セル電圧の所定値は、第1実施形態および第2実施形態と同様0.7V以下でありうる。また、望ましくは、0.5V以下でありうる。再析出操作は、SRを小さくすることによって行い、新たな部品を必要としないので、コスト低減効果を有する。
検知したセル電圧が所定値よりも小さいと判断した場合は、ステップ番号S703とS704からなるループによりセル電圧が所定値よりも小さくなっている状態の時間を計測し、セル電圧が所定値よりも小さくなっている状態を、所定時間が経過するまで維持する。所定時間は、第1実施形態および第2実施形態と同様の値としうる。すなわち、カソード触媒層において、イオン化した白金がアイオノマー内を拡散していくのに要する時間tより大きい時間としうる。所定時間をこのように設定することにより、白金イオンを再析出させうる。
図11はカソードに供給する空気のSRとカソードの拡散過電圧の関係を示す図である。SRを1.2以下とすることによってカソードの拡散過電圧を急激に増加させることができる。すなわち、SRを1.2以下とすることによって、セル電圧を所定値である0.7V以下、望ましくは0.5V以下まで容易に低下させることができ、溶出した白金の再析出を促進することができる。
以上より、本第3実施形態は、請求項9に係る燃料電池の運転方法の発明を実施化したものである。ステップ番号S700〜702は、本発明の、カソード反応ガスのストイキ比を1.2以下にする段階、に相当する。
本発明の第3実施形態に係る燃料電池の運転方法は、第1実施形態、第2実施形態が有する効果に加えて、以下の効果を有する。
・再析出操作に新たな部品が必要ないので、第1実施形態、第2実施形態に対し、コスト低減効果を有する。
以上、本発明に係る燃料電池の運転方法について説明したが、本発明の範囲は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者であれば本発明の思想と精神を離れることなく、本発明を修正または変更し得る。
本発明に係る燃料電池の運転方法は、主として車両用駆動源として用いる燃料電池の運転方法として利用することができる。
燃料電池スタックの全体構成を示す斜視図である。 燃料電池スタックのセル構造を示す要部拡大断面図である。 本発明の第1実施形態に係る燃料電池の運転方法を実施するための燃料電池システムの概略構成を示すブロック図である。 本発明の第1実施形態に係る燃料電池の運転方法のフローチャートを示す図である。 本発明の第1実施形態に係る燃料電池の運転方法のフローチャートの再析出操作サブルーチンを示す図である。 再析出操作におけるセル電圧と再析出操作実施後の白金溶出速度の関係を示す図(A)と、白金の有効電気化学表面積のセル電圧の変化サイクル数依存性を示す図(B)である。 低電圧から高電圧へのセル電圧変化速度と白金溶出速度の関係を示す図(A)と、セル電圧変化速度と白金溶出速度の大小の関係を時間とセル電位の関係において示す図(B)である。 セルの電流密度とセル電圧との関係、および、セルの電流密度とセルの出力電力の関係を示す図(A)と、セル電圧とセルの出力電力の関係を示す図(B)である。 本発明の第2実施形態に係る燃料電池の運転方法のフローチャートを示す図である。 本発明の第3実施形態に係る燃料電池の運転方法のフローチャートの再析出操作サブルーチンを示す図である。 カソードに供給する空気のSRとカソードの拡散過電圧の関係を示す図である。
符号の説明
1 燃料電池スタック、
2 燃料電池セル、
300 燃料電池スタック、
310 流量調整器、
320 水素ボンベ、
330 コンプレッサ、
360 制御部、
370 2次電池、
390 放電回路。

Claims (9)

  1. 電極触媒として白金を用いた燃料電池の運転方法であって、
    前記燃料電池に対する電力の負荷の変化が高い側から低い側への変化であることを検知する段階と、
    前記負荷の変化が高い側から低い側への変化であることが検知されたときには、前記燃料電池を構成する各燃料電池セルの電極間の電圧の変化の速度であるセル電圧変化速度を200mV/s以下に制御する段階と、
    を含むことを特徴とする燃料電池の運転方法。
  2. 前記セル電圧変化速度を200mV/s以下に制御する段階は、
    前記検知した燃料電池に対する電力の負荷の変化を、あらかじめ求めた前記電力の負荷と前記セル電圧との関係により、前記セル電圧変化速度に変換する段階と、を含み、
    前記変換された前記セル電圧変化速度に基づき前記燃料電池から出力される電力を制御することにより前記セル電圧変化速度を200mV/s以下に制御することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池の運転方法。
  3. 前記セル電圧変化速度を200mV/s以下に制御する段階は、
    さらに、前記燃料電池を実装した自動車を駆動すること、前記自動車に実装した補機を駆動すること、前記燃料電池の出力を補填するために設けた二次電池を充電すること、のいずれか一つ、もしくは二以上を行うことにより、前記燃料電池から出力される電力を大きくする段階を含むことを特徴とする請求項1もしくは請求項2に記載の燃料電池の運転方法。
  4. 前記セル電圧変化速度を200mV/s以下に制御する段階は、
    さらに、前記セル電圧を0.6V〜0.8Vの間の電圧に制御する段階と、
    を含むことを特徴とする請求項1〜請求項3に記載の燃料電池の運転方法。
  5. 前記セル電圧変化速度を200mV/s以下に制御することができないと判断した場合に、前記電極触媒をなす層における白金イオンの拡散係数と前記電極触媒をなす層の厚さとにより定まる白金イオンの拡散時定数よりも長い時間前記セル電圧を0.7V以下に下げる段階と、
    を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の燃料電池の運転方法。
  6. 前記セル電圧を0.7V以下に下げる段階は、
    前記燃料電池セルの過電圧を大きくする段階を含むことを特徴とする請求項5に記載の燃料電池の運転方法。
  7. 前記燃料電池セルの過電圧を大きくする段階は、
    前記燃料電池に対する負荷を大きくする段階を含むことを特徴とする請求項6に記載の燃料電池の運転方法。
  8. 前記燃料電池セルの過電圧を大きくする段階は、
    前記燃料電池の電極間、もしくは、前記燃料電池セルのアノード電極とカソード電極間を短絡する段階を含むことを特徴とする請求項6に記載の燃料電池の運転方法。
  9. 前記燃料電池セルの過電圧を大きくする段階は、
    カソード反応ガスのストイキ比を1.2以下にする段階を含むことを特徴とする請求項6に記載の燃料電池の運転方法。
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