JP5149748B2 - 感光性樹脂凸版印刷版の製造方法 - Google Patents
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Description
印刷版の版面汚れ防止に関しては、種々の方法が提案されている。特許文献4には、版表面に有機フッ素化合物を、はけ塗りやスプレー方式で付着させる技術が記載されている。
特許文献6には、版面汚れを長期間防止するために、後露光工程前に版面にシリコン系化合物および/またはフッ素系化合物を含有した溶液を付着させることを特徴とする感光性樹脂版の製造方法が提案されている。ここで、フッ素系化合物としてはポリフッ化エチレン化合物等の重合体やフッ素系モノマーが挙げられており、実施例では重合体が用いられている。
特許文献7には、凸版印刷用水現像感光性樹脂版の製版時の露光工程以降に、変性シリコーン化合物あるいはフッ素化合物を含有する液を接触させる方法が提案されており、フッ素化合物としては炭素水素化合物の水素基の一部もしくは全部をフッ素で置換した化合物が開示されており、実施例では「アサヒガードAG5850」(旭硝子製、商品名)が用いられている。
特許文献8には、レーザー彫刻版の製造方法として、数平均分子量が100以上10万以下の有機珪素化合物を含有する処理液中に浸漬する工程、あるいは処理液を塗布した後、波長200nm以上450nm以下の光で後露光する工程を含むレーザー彫刻印刷版の製造方法が提案されている。
例えば、特許文献4に記載の方法では、後露光後に塗布するために、版面汚れ防止の効果が小さく、持続効果も低い。特にロングラン又はリピート印刷においてこれらの効果は継続しがたく、効果を維持させる為には繰り返し塗布する必要があり、作業・コストがかかってしまう。
特許文献5に記載の方法では、浸透力の低い水系の溶液であることや後露光後に塗布するため、版面汚れ防止の効果は、必ずしも十分ではない。
特許文献7に記載の方法は、水現像感光性樹脂版を対象としており、具体的に開示されたフッ素化合物では、版面汚れ防止の持続性や紙粉防止性が必ずしも十分ではなかった。
特許文献8に記載の方法は現像工程を含まないレーザー彫刻製版であり、熱可塑性エラストマーではなく、20℃で液状の感光性樹脂を用いているため大気中での表面硬化性を問題としており、版面汚れ防止の持続性や紙粉防止性が必ずしも十分ではない。
本発明における技術的課題は、版面のインキ汚れを長期間防止し、かつ紙粉付着防止する感光性樹脂凸版印刷版の製造方法およびそれに適した処理液を提供することである。
1.露光工程、現像工程および後処理工程を含む感光性樹脂凸版印刷版の製造方法であって、前記後処理工程が、熱処理、活性光源による後露光処理および電子線処理からなる群から選択される処理であり、
前記後処理工程前又は後処理工程中に、前記凸版印刷版の版面に、フッ素系界面活性剤(A)を付着させる工程を含む製造方法。
2.前記現像工程における現像が溶剤現像である上記1.の製造方法。
3.前記フッ素系界面活性剤(A)の、酢酸エチル0.1wt%溶液における表面張力が25mN/m以下である上記1.または2.の製造方法。
4.前記フッ素系界面活性剤(A)の付着を、現像工程の後であって、後処理工程の前に行う上記1.〜3.いずれかの製造方法。
5.前記フッ素系界面活性剤(A)を溶媒に溶解して付着する上記1.〜4.いずれかの製造方法。
6.前記現像工程における現像が、前記フッ素系界面活性剤(A)を含有する現像液を用いて行う溶剤現像である上記1.〜5.いずれかの製造方法。
7.前記フッ素系界面活性剤(A)が、ノニオン系フッ素系界面活性剤である上記1〜6のいずれかの製造方法。
8.前記溶媒が、水および/または水に可溶な溶媒である上記5.の製造方法。
9.前記感光性樹脂凸版印刷版が、少なくとも共役ジエンを主体とする第1の重合体ブロック、およびビニル芳香族炭化水素を主体とする第2の重合体ブロックを含むブロック共重合体を含有する上記1.〜8.のいずれかの製造方法。
10.前記感光性樹脂凸版印刷版がフレキソ印刷用感光性樹脂版である上記1.〜9.のいずれかの製造方法。
11.上記1.〜10.のいずれかの方法により製造される、感光性樹脂凸版印刷版。
12.感光性樹脂凸版印刷版の版面用処理液であって、フッ素系界面活性剤(A)を含有する処理液。
13.前記フッ素系界面活性剤(A)が、ノニオン系フッ素系界面活性剤である上記12.の処理液。
14.水および/または水に可溶な溶媒を含有する上記12.または13.の処理液。
15.前記フッ素系界面活性剤(A)の、酢酸エチル0.1wt%溶液における表面張力が24mN/m以下である上記12.〜14.のいずれかの処理液。
本実施形態の製造方法は、感光性樹脂凸版印刷版としてのフレキソ印刷用感光性樹脂凸版印刷版を例に説明するが、何らこれに限定されるものではなく、印刷やパターニングに使用される感光性樹脂凸版印刷版に適用可能である。中でも、インキの粘度が比較的低く、版面汚れが生じ易いフレキソ印刷版に用いられることが好ましい。
本実施形態における感光性樹脂凸版印刷版とは、感光性樹脂を露光、現像することによりレリーフ画像を形成する印刷版(例えば、フレキソ印刷用感光性樹脂凸版印刷版を含む。)を包含する。
フッ素系界面活性剤(A)とはフッ素系の化合物であって、疎水性基と親水性基とを有する化合物であり、具体例としては、例えば、疎水性基としてフルオロアルキルまたはパーフルオロアルキル鎖を有し、親水性基としてカルボン酸、リン酸、スルホン酸、アミン、アンモニウム塩、アミンオキサイド、ベタイン、スルホベタイン、ポリオキシエチレングリコール、多価アルコールを有する化合物等が挙げられる。このような化合物としては、例えば、フルオロアルキルカルボン酸(C2〜C20)、パーフルオロアルキルカルボン酸((C7〜C13)、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、モノパーフルオロアルキルエチルリン酸エステルや、ポリオキシエチレンパーフルオロアルキルエーテル、パーフルオロアルキルモノグリセリルエーテルや、パーフルオロオクタンスルホン酸ジエタノールアミドなどのスルホン酸アミド基を有するものが挙げられる。前記フルオロアルキルまたはパーフルオロアルキル鎖は直鎖状でも分岐上でも構わない。例えば、ネオス社製フタージェント、DIC社製メガファック、3M社製Novec、AGCセイミケミカル社製Surflon(いずれも商品名)などが挙げられる。
フッ素系界面活性剤(A)は、版面汚れ防止持続性の点から、酢酸エチルの0.1質量(wt)%溶液における表面張力が25mN/m以下であることが好ましく、23mN/m以下であることがより好ましく、21mN/m以下であることがさらにより好ましい。表面張力測定は、協和界面科学社製CBVP−A3型を用いて、ウィルヘルミー法で25℃で測定した値である。
感光性樹脂凸版印刷版の版面への塗布性の点から、好ましくは溶媒に溶解して使用した方がよい。溶媒は、感光性樹脂凸版印刷版の版面に付着し、表面近傍に適度に浸透するものがよい。感光性樹脂凸版印刷版の版面に浸透する溶媒を選択した上で、後処理工程に処することで、一層、フッ素系界面活性剤(A)が樹脂表面(近傍)に強固に固着されるので好ましい。特に、水および/または水に可溶な溶媒を使用するのが、感光性樹脂凸版印刷版を過度に膨潤させず、適度に浸透するため好ましい。
フッ素系界面活性剤(A)は、後述のとおり、現像液に添加して付着することが好ましいが、現像液中に添加せず、溶液状態で版面に付着させる場合の濃度は、付着時間が現像液の場合より短いので、処理溶液中の濃度を高くした方がよく、0.05wt%〜50wt%が好ましい。
感光性樹脂凸版印刷版の製造に用いられる露光工程、現像工程、後処理工程は、通常の感光性樹脂版の製造方法で使用される公知の条件で実施することができる。
例えば、露光工程に使用する露光光源としては、高圧水銀灯、紫外線蛍光灯、カーボンアーク灯、キセノンランプ、ジルコニウムランプ、太陽光等が挙げられる。露光の際の強度は特に制限はないが、例えば3〜70mW/cm2が挙げられる。このときの露光強度はオーク製作所製のUV照度計MO−2型機でUV−35フィルターを用いた数値である。
(i)版を現像液に浸漬させた状態でブラシを用いて未露光部を溶解、または掻き落とす現像方式、
(ii)スプレーなどで版面に現像液を振りかけながらブラシで未露光部を溶解、または掻き落とす現像方式、
(iii)40〜200℃で樹脂を加熱することにより不織布などの基材で吸収させる基材接触式現像方式、
(iv)ガスや流体により剪断力によって掻き落とす方式、
などが挙げられる。
有機溶剤としては、例えばヘプチルアセテート、3−メトキシブチルアセテート等のエステル類;石油留分、トルエン、デカリン等の炭化水素類;石油留分、トルエン、デカリン等の炭化水素類にプロパノール、ブタノール、ペンタノール等のアルコール類を混合した溶媒;テトラクロルエチレン等の塩素系有機溶剤に、プロパノール、ブタノール、ペンタノール等のアルコール類を混合した溶媒;等を使用することができ、好ましくは現像性の点から炭化水素類又は炭化水素類にアルコール類を混合した溶媒である。炭化水素類にアルコール類を混合した溶媒を含む現像液中にフッ素系界面活性剤(A)を添加する場合、版面汚れ持続性の点や紙粉汚れ防止の点から、現像液中の炭化水素類とアルコール類の比率は、炭化水素類80〜5質量部に対してアルコール類20〜95質量部であることが好ましく、より好ましくは、炭化水素類70〜20質量部に対してアルコール類30〜80質量部、更に好ましくは炭化水素類60〜40質量部に対してアルコール類40〜60質量部である。
現像液中に、フッ素系界面活性剤(A)を添加する場合、フッ素系界面活性剤(A)の濃度は、版面汚れ持続性の点や紙粉汚れ防止の点から、好ましくは0.01wt%〜5wt%である。
現像工程が、不織布などの基材接触式現像工程である場合、感光性樹脂凸版印刷版の版面に付着や塗布する工程に代えて、不織布などの基材にフッ素系界面活性剤(A)を含有含有させても構わない。
電子線処理方法としては、例えば感光性樹脂凸版印刷版の凹凸形状を持つ表面側を、10〜5MeVの高エネルギー電子線照射装置や5MeV〜300keVの中エネルギー電子線照射装置、300keV未満の低エネルギー電子線照射装置で処理する方法等が挙げられ、低コストの点から低エネルギー電子線照射装置での処理が好ましい。
本実施形態で用いる感光性樹脂凸版印刷版は、露光前の樹脂が、室温で流動性があったり、固体であっても構わない。通常、感光性樹脂凸版印刷版の厚みは0.5〜10mmの範囲で用いられる。本実施形態で用いる感光性樹脂凸版印刷版では、感光性樹脂版として公知の樹脂のものを使用することができる。例えば、前述の特許文献1、特許文献2、特許文献3等に提案されている樹脂がその典型例である。フレキソ印刷用感光性樹脂版の一般的な構成として、オリゴマーもしくはポリマー成分と重合性モノマー成分と光開始剤および安定剤から構成される。版の物性に最も影響の大きいオリゴマーもしくはポリマー成分に用いられる材料も多岐にわたり、ポリウレタン系、ポリビニルアルコール系、ポリエステル樹脂系あるいはナイロン樹脂系から、極性基含有ポリマーと疎水性のポリマーを混合・分散した樹脂計系(バインダーポリマー)や、疎水性のポリマー、たとえば熱可塑性エラストマーを用いる場合まで様々である。これらのオリゴマーもしくはポリマー成分は単独で用いてもよいし2つ以上を併用してもよい。
ビニル芳香族炭化水素の具体例としては、以下のものに限定されないが、スチレン、t−ブチルスチレン、ジビニルベンゼン、1,1−ジフェニルスチレン、N,N−ジメチル−p−アミノエチルスチレン、N,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレン、ビニルピリジン、p−メチルスチレン、第三級ブチルスチレン、α−メチルスチレン、1,1−ジフェニルエチレン等の単量体が挙げられ、特にスチレンが好ましい。これらの単量体は、単独でも2種以上の併用でもよい。
熱可塑性エラストマーには、必要に応じて、本発明の目的を損なわない範囲で、共役ジエンブロックの完全水素添加物のスチレン−エチレン−ブチレンブロック共重合体やスチレン−エチレン−プロピレンブロック共重合体等を併用してもよい。
本実施形態で用いる感光性樹脂凸版印刷版に用いられる重合性モノマー成分として、以下のものに限定されないが、公知の各種のものを用いることができ、エチレン、プロピレン、ビニルトルエン、スチレン、ジビニルベンゼン等のオレフィン類;アセチレン類;(メタ)アクリル酸及び/又はその誘導体;ハロオレフィン類;アクリロニトリル等の不飽和ニトリル類;アクリルアミドやメタクリルアミドの誘導体;無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸等の不飽和ジカルボン酸及びその誘導体;酢酸ビニル類;N−ビニルピロリドン;N−ビニルカルバゾール;N−置換マレイミド化合物等が挙げられる。
特に、種類の豊富さ、価格の観点から(メタ)アクリル酸及び/又はその誘導体が好ましい。
これらの重合性モノマー成分は、単独でも2種以上の併用でもよい。
光重合開始剤の具体例としては、ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、3,3’,4,4’−テトラメトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;t−ブチルアントラキノン、2−エチルアントラキノンなどのアントラキノン類;2,4−ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン等のチオキサントン類;ミヒラーケトン;ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン、2−メチル−2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルホリノ−プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン、トリクロロアセトフェノン等のアセトフェノン類;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインエーテル類;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6− トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド類;メチルベンゾイルホルメート;1,7−ビスアクリジニルヘプタン;9 −フェニルアクリジン;アゾビスイソブチロニトリル、ジアゾニウム化合物、テトラゼン化合物等のアゾ化合物類が挙げられる。
また、本実施形態で用いる感光性樹脂凸版印刷版には、種々の補助添加成分、例えば可塑剤、極性基含有ポリマー、熱重合防止剤、紫外線吸収剤、ハレーション防止剤、光安定剤、シリコンオイルなどの表面処理剤、光ルミネセンスタグ(外部エネルギー源によって励起され、得られたエネルギーを光および/または放射線の形で放出する物質)などを添加することができる。
感光性樹脂凸版印刷原版の製造方法は特に制限はないが、例えば、原料を適当な溶媒、例えばクロロホルム、テトラクロルエチレン、メチルエチルケトン、トルエン等の溶剤に溶解させて混合し、型枠の中に流延して溶剤を蒸発させることにより板状にする方法や、溶剤を用いず、ニーダ、ロールミルあるいはスクリュウ押出機で混練後、カレンダーロールやプレスなどにより支持体上で所望の厚さに成型する方法が挙げられる。支持体に成型された樹脂塑性物を、ロールラミネートにより密着させた後、別の支持体上で加熱プレスすると一層厚み精度の良い感光性樹脂凸版印刷原版を得ることができる。
前記フッ素系界面活性剤(A)及びその好ましい態様は上記のとおりである。
本実施の形態の処理液は、フッ素系界面活性剤(A)を感光性樹脂凸版印刷版に適度に浸透させるため、水および/または水に可溶な溶媒を含有することが好ましい。このような溶媒の好適な例は上記のとおりである。溶媒として現像工程で用いられる現像液を用いる場合には、処理液は現像液としての機能も兼ねる。
版面用処理液の濡れ性の観点から、処理液中のアルコールの含有量は20wt%以上95wt%以下であることが好ましく、より好ましくは、アルコールの含有量が30wt%以上80wt%以下、更に好ましくはアルコールの含有量が40wt%以上60wt%以下である。
フッ素系界面活性剤(A)を含有する処理溶液には、上記フッ素系界面活性剤(A)の他、各種界面活性剤を添加して用いることもできる。必要に応じて、消泡剤、酸化防止剤あるいは防腐剤等の添加剤を加えてもよい。
フッ素系界面活性剤(A)を含有する処理溶液は、ラジカル開始剤を含有することも可能である。なお、ラジカル開始剤は、溶液を付着させる感光性樹脂凸版印刷版に含まれていてもよい。ラジカル開始剤は後処理工程でラジカルを発生する開始剤であり、活性光線源でラジカルを発生する光開始剤や熱でラジカルを発生する熱開始剤が挙げられる。
また、熱開始剤には公知の各種のものを用いることができるが、アゾ化合物や過酸化物などの化合物が好適である。生産性・コストの点から光開始剤を用いる方が好ましい。
(実施例1)
溶剤現像型の未露光の感光性樹脂凸版印刷原版AFP−SH(旭化成ケミカルズ製、商品名、厚み1.14mm用、スチレンを主体とする重合体ブロックとブタジエンを主体とする重合体ブロックを含む数平均分子量10万の熱可塑性エラストマーを含有する)のカバーシートをはぎとり、感光性樹脂層の上にある保護膜層の上にネガフィルムを密着させ、AFP−1500露光機(旭化成ケミカルズ製、商品名)上で370nmに中心波長を有する紫外線蛍光灯を用いて、まず支持体側から800mJ/cm2の全面露光を行なった後、引き続きネガフィルムを通して5000mJ/cm2の画像露光を行なった。このときの露光強度をオーク製作所製のUV照度計MO−2型機でUV−35フィルターを用いて、バック露光を行う側である下側ランプからの紫外線をガラス板上で測定した強度は4.0mW/cm2、レリーフ露光側である上側ランプからの紫外線を測定した強度は7.8mW/cm2であった。
ネガフィルムの画像は、100・133・150lpi各線数で1・2・3・5・10・30・50・60・70・80・90・95%・ベタ部の網点を含むものを使用した。
現像直後は、版が現像液に膨潤しているため、後露光の前に、60℃で1時間乾燥した後に、ALF−200UP後露光機(旭化成ケミカルズ製、商品名)を用いて、254nmに中心波長をもつ殺菌灯を用いて版表面全体に、2000mJ/cm2、続いて紫外線蛍光灯を用いて1000mJ/cm2の後露光を行って感光性樹脂凸版印刷版を得た。なお、ここで殺菌灯による後露光量は、MO−2型機のUV−25フィルター(オーク製作所製、商品名)を用いて測定された照度から算出したものである。
またSurflon S386の酢酸エチル0.1質量(wt)%の溶液を調製し、ウィルヘルミー法(使用装置:協和界面科学株式会社製CBVP−A3型)により、25℃の室温で表面張力(mN/m)を測定したところ、22.9mN/mであった。
ソルビットにノニオン系のフッ素系界面活性剤Surflon SC101(AGCセイミケミカル製、商品名)を0.5wt%添加した混合溶液を現像液とした以外は、実施例1と同様の方法で感光性樹脂凸版印刷版を得た。
またSurflon SC101の酢酸エチル0.1質量(wt)%の溶液を調製し、ウィルヘルミー法(使用装置:協和界面科学株式会社製CBVP−A3型)により、25℃の室温で表面張力(mN/m)を測定したところ、21.0mN/mであった。
ソルビットにノニオン系のフッ素系界面活性剤Surflon S381(AGCセイミケミカル製、商品名)を0.5wt%添加した混合溶液を現像液とした以外は、実施例1と同様の方法で感光性樹脂凸版印刷版を得た。
またSurflon S381の酢酸エチル0.1質量(wt)%の溶液を調製し、ウィルヘルミー法(使用装置:協和界面科学株式会社製CBVP−A3型)により、25℃の室温で表面張力(mN/m)を測定したところ、23.5mN/mであった。
ソルビットに撥インキ成分であるフッ素系共重合体化合物を含む溶液アサヒガードAG−5850(旭硝子製、商品名)を4wt%添加した混合溶液を現像液とした以外は、実施例1と同様の方法で感光性樹脂凸版印刷版を得た。
(a)版面汚れの実印刷評価
得られた感光性樹脂凸版印刷版を用いて版面汚れの実印刷評価を行った。AI−3型フレキソ印刷機(伊予機械製、商品名)を用いて、インキとして溶剤系のFBキング(藍色、東洋インキ製)を使用し、被印刷体にはコロナ処理された厚さ30umのポリプロピレンフィルム(サントックス社製PA30、商品名)を用いた。アニロックスロールは800lpi(セル容積3.8cm3/m2)、クッションテープには3M 1020(3M製、商品名)を使用して、200m/分の速度で、5万部の印刷を実施した。評価する感光性樹脂凸版印刷版を製造した際の、ネガフィルムの画像は、100・133・150lpi各線数で1・2・3・5・10・30・50・60・70・80・90・95%・ベタ部の網点を含むものを使用した。刷了前に特に網点部に版面汚れが生じ、印刷をとめなければならない状態になった場合を“C”、刷了はできたがベタ濃度の低下や網点部の太りを生じた場合を“B”、刷了できベタ濃度の低下や網点部の太りも生じなかった場合を“A”とした。A、B、Cの順で好ましい。
撥インキ性を模擬的に評価するため、得られた感光性樹脂凸版印刷版のベタ部の接触角を、固液界面解析装置DropMaster500(協和界面科学製、商品名)の液滴法で測定した。温度23℃、相対湿度50%恒温恒湿室内に一日放置した後、解析ソフトウェアは“FAMAS ver1.8.1”を用い、プローブ溶液は精製水、エチレングリコール、ジヨウドメタン(関東化学社製)を用い、上記ソフトウェアに組み込まれているKitazaki−Hataの計算式から版面の表面張力(dyne/cm)を自動算出した。針はステンレス製22G(協和界面科学製)を用いて、吐出時間100ms、吐出電圧4000mV、各プローブ溶液が版に接触後15秒後の接触角を自動測定した値を使用した。
表面張力が低い方が撥インキ性が高く好ましい。
撥インキ性の持続性効果を模擬的に評価するため、得られた感光性樹脂凸版印刷版のベタ部を、印刷用インク及びインククリーナーに用いられる代表的な溶剤、エチルアルコールを含ませた不織布(ベンコットM3、旭化成せんい製、商品名)で、版表面を40回強く擦り、その後温度23℃、相対湿度50%恒温恒湿室内に一日放置した後、(b)と同様の方法で評価した。
印刷中の紙紛離脱性を評価するために、得られた感光性樹脂凸版印刷版を用いて、以下の印刷条件において印刷し、紙粉離脱性の評価を実施した。
AI−3型フレキソ印刷機(伊予機械製、商品名)を用いて、水性インキには、HW571AQP(東洋インキ製、商品名)を使用し、被印刷体には、コート紙パールコート(王子製紙製、商品名)を使用した。アニロックスロールは、600lpi(セル容積3.8cm3/m2)、クッションテープは、3M1020(3M製、商品名)を使用し、印刷速度は、100m/分で印刷を実施した。
印刷速度が100m/分に達した段階で、幅0.1〜2.0mm、長さ0.1〜2.0mmに裁断したコート紙パールコート0.5gを被印刷体上に散布し、強制的に版面に接触させ、3分後に印刷された印刷物上で紙紛の数を目視で計測した。
評価する感光性樹脂凸版印刷版を、製造した際の、ネガフィルムの画像はベタ部サイズが100×150mmのものを使用した。このベタ部範囲内に紙紛の数が50個以上計測されたものを×、20〜50個計測されたものを△、5〜20個計測されたものを○、5個以下計測されたものを◎とした。計測した紙紛は印刷不良であるので、×より△、△より○、○よりも◎の方が好ましい。
実施例1〜3並びに比較例1における各(a)〜(d)の評価結果を表1に示す。
本実施形態を、特定の実施態様を参照して詳細に説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者によって明らかである。
本発明の製造方法及び処理液は、感光性樹脂凸版印刷版、例えばフレキソ印刷版用・レタープレス印刷版用・スタンプ版用レリーフ画像の作成、エンボス加工等の表面加工パターンの形成、型取り用パターンの形成、電子部品の導体・半導体・絶縁体パターン形成、光学部品の反射防止膜、カラーフィルター、(近)赤外線カットフィルター等の機能性材料パターンの形成、さらには液晶ディスプレイまたは有機エレクトロルミッセンスディスプレイ等の表示素子の製造における配向膜、下地層、発光層、電子輸送層、封止材層の塗膜・パターン形成、あるいは、パターンを形成しないインキ転写用ブランケットまたはアニロックスロールに接して使用されるインキ量調整用ロール等に適した、感光性樹脂凸版印刷版の分野において有用である。
Claims (15)
- 露光工程、現像工程および後処理工程を含む感光性樹脂凸版印刷版の製造方法であって、前記後処理工程が、熱処理、活性光源による後露光処理および電子線処理からなる群から選択される処理であり、
前記後処理工程前又は後処理工程中に、前記凸版印刷版の版面に、フッ素系界面活性剤(A)を付着させる工程を含む製造方法。 - 前記現像工程における現像が溶剤現像である請求項1に記載の製造方法。
- 前記フッ素系界面活性剤(A)の、酢酸エチル0.1wt%溶液における表面張力が25mN/m以下である請求項1または2に記載の製造方法。
- 前記フッ素系界面活性剤(A)の付着を、現像工程の後であって、後処理工程の前に行う請求項1〜3いずれか一項に記載の製造方法。
- 前記フッ素系界面活性剤(A)を溶媒に溶解して付着する請求項1〜4いずれか一項に記載の製造方法。
- 前記現像工程における現像が、前記フッ素系界面活性剤(A)を含有する現像液を用いて行う溶剤現像である請求項1〜5のいずれか一項に記載の製造方法。
- 前記フッ素系界面活性剤(A)が、ノニオン系フッ素系界面活性剤である請求項1〜6のいずれか一項に記載の製造方法。
- 前記溶媒が、水および/または水に可溶な溶媒である請求項5に記載の製造方法。
- 前記感光性樹脂凸版印刷版が、少なくとも共役ジエンを主体とする第1の重合体ブロック、およびビニル芳香族炭化水素を主体とする第2の重合体ブロックを含むブロック共重合体を含有する請求項1〜8のいずれか一項に記載の製造方法。
- 前記感光性樹脂凸版印刷版がフレキソ印刷用感光性樹脂版である請求項1〜9のいずれか一項に記載の製造方法。
- 請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法により製造される、感光性樹脂凸版印刷版。
- 感光性樹脂凸版印刷版の版面用処理液であって、フッ素系界面活性剤(A)を含有する処理液。
- 前記フッ素系界面活性剤(A)が、ノニオン系フッ素系界面活性剤である請求項12に記載の処理液。
- 水および/または水に可溶な溶媒を含有する請求項12または13に記載の処理液。
- 前記フッ素系界面活性剤(A)の、酢酸エチル0.1wt%溶液における表面張力が24mN/m以下である請求項12〜14のいずれか一項に記載の処理液。
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