JP5731128B2 - 感光性樹脂凸版印刷版の製造方法 - Google Patents
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Description
印刷版の版面汚れ防止に関しては、種々の方法が提案されている。特許文献1には、版表面に有機フッ素化合物を、はけ塗りやスプレー方式で付着させる技術が記載されている。
特許文献3には、フッ素、塩素及び珪素を含有した疎水性化合物を含有した水性現像可能な組成物が提案されている。
特許文献4には、熱現像性フレキソ印刷版用に適した多層フレキソ版および該版用の追加の添加剤として、フッ素系界面活性剤が記載されている。
例えば、特許文献1に記載の方法では、後露光後に塗布するために、版面汚れ防止の効果が小さく、持続効果も低い。特にロングラン又はリピート印刷においてこれらの効果は継続しがたく、効果を維持させる為には繰り返し塗布する必要があり、作業・コストがかかってしまう。
特許文献3及び4に記載の組成物は、版面汚れ防止の持続性が必ずしも十分ではない。
本発明における技術的課題は、版面のインキ汚れを長期間防止する感光性樹脂凸版印刷版の製造方法、それに適した処理液および感光性樹脂凸版印刷版用組成物を提供することである。
本実施形態における感光性樹脂凸版印刷版とは、感光性樹脂を露光、現像することによりレリーフ画像を形成する印刷版(例えば、フレキソ印刷用感光性樹脂凸版印刷版を含む。)を包含する。
本実施形態の感光性樹脂凸版印刷版の製造方法は、露光工程、現像工程を含む感光性樹脂凸版印刷版の製造方法において、露光工程後に、版面にパーフルオロアルキル基鎖を2つ以上有し、水に不溶な、ノニオン系のフッ素系界面活性剤(A)を付着させる工程を含む感光性樹脂凸版印刷版の製造方法である。本実施の形態の製造方法は、撥インキ作用を示すフッ素系界面活性剤(A)の付着させることにより、版面汚れの防止の効果を奏する。
本実施形態の感光性樹脂凸版印刷版の製造方法では、版面汚れ防止効果の長期間持続性点から、感光性樹脂凸版印刷版にパーフルオロアルキル基鎖を2つ以上有し、水に不溶な、ノニオン系のフッ素系界面活性剤(A)を付着する。
フッ素系界面活性剤(A)は2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
表面張力測定は、協和界面科学社製CBVP−A3型を用いて、ウィルヘルミー法で25℃で測定した値である。
フッ素系界面活性剤(A)の付着は、溶媒に溶解して行ってもよいし、20℃で液体であればそのまま付着してもよい。
フッ素系界面活性剤(A)の付着方法は、現像液への添加、スプレーによる溶液塗布、はけ塗り、浸漬、布やスポンジで溶液を塗る方法、現像後リンス液への添加、版面への滴下等が挙げられる。これらの方法は単独で行ってもよいし、2つ以上組み合わせて行ってもよい。これらのうち、特に感光性樹脂凸版印刷版製造工程の点から、現像液に添加する方法が好ましい。溶剤現像の場合にはフッ素系界面活性剤(A)を現像液に添加することによりフッ素系界面活性剤(A)の付着を行うことが好ましい。
感光性樹脂凸版印刷版の製造に用いられる露光工程、現像工程、後処理工程は、通常の感光性樹脂版の製造方法で使用される公知の条件で実施することができる。
例えば、露光工程に使用する露光光源としては、高圧水銀灯、紫外線蛍光灯、カーボンアーク灯、キセノンランプ、ジルコニウムランプ、太陽光等が挙げられる。露光の際の強度は特に制限はないが、例えば3〜70mW/cm2が挙げられる。このときの露光強度はオーク製作所製のUV照度計MO−2型機でUV−35フィルターを用いた数値である。
(i)版を現像液に浸漬させた状態でブラシを用いて未露光部を溶解、または掻き落とす現像方式、
(ii)スプレーなどで版面に現像液を振りかけながらブラシで未露光部を溶解、または掻き落とす現像方式、
(iii)40〜200℃で樹脂を加熱することにより不織布などの基材で吸収させる基材接触式現像方式、
(iv)ガスや流体により剪断力によって掻き落とす方式、
などが挙げられる。
現像液中に、フッ素系界面活性剤(A)を添加する場合、フッ素系界面活性剤(A)の濃度は、版面汚れ持続性の点から、好ましくは0.01wt%〜5wt%である。
現像工程が、不織布などの基材接触式現像工程である場合、版面に付着や塗布する工程に代えて、不織布などの基材にフッ素系界面活性剤(A)を含有させても構わない。
本実施形態で用いる感光性樹脂凸版印刷版は、露光前の樹脂が、室温で流動性があってもよいし、固体であっても構わない。通常、感光性樹脂凸版印刷版の厚みは0.5〜10mmの範囲で用いられる。本実施形態で用いる感光性樹脂凸版印刷版では、感光性樹脂版として公知の樹脂のものを使用することができる。例えば、特開平10−171111号公報、特開昭63−088555号公報、特開平05−134410号公報等に提案されている樹脂がその典型例である。フレキソ印刷用感光性樹脂版の一般的な構成として、オリゴマーもしくはポリマー成分と重合性モノマー成分と光開始剤および安定剤から構成される。版の物性に最も影響の大きいオリゴマーもしくはポリマー成分に用いられる材料も多岐にわたり、ポリウレタン系、ポリビニルアルコール系、ポリエステル樹脂系あるいはナイロン樹脂系から、極性基含有ポリマーと疎水性のポリマーを混合・分散した樹脂計系(バインダーポリマー)や、疎水性のポリマー、たとえば熱可塑性エラストマーを用いる場合まで様々である。これらのオリゴマーもしくはポリマー成分は単独で用いてもよいし2つ以上を併用してもよい。
熱可塑性エラストマーにおいて、成型加工性、製版時間の短縮化や印刷版の画像再現性の点から、より好ましくは、少なくとも1つの共役ジエンユニット(以下、単に「共役ジエン」という。)を主体とする第1の重合体ブロックと、少なくとも1つのビニル芳香族炭化水素ユニット(以下、単に「ビニル芳香族炭化水素」という。)を主体とする第2の重合体ブロックを含む熱可塑性エラストマーブロック共重合体を含有する熱可塑性エラストマーである。ここで、熱可塑性エラストマーとは、高温で可塑化されて成型可能となり、常温ではゴム弾性体としての性質を示す高分子である。なお、上記の「主体とする」とは、重合体ブロック中に50重量%以上含まれていることを指す。
熱可塑性エラストマーの分子量は、特に制限はないが、成型加工性と得られる感光性樹脂組成物の固体維持性のバランスに優れるものがよい。好ましい数平均分子量の範囲は、8万〜50万である。ここで、数平均分子量とは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて測定し、分子量既知のポリスチレン標品から換算されたものである。GPCの測定装置は、LC−10(島津製作所製、商品名)を用い、カラムにTSKgelGMHXL(4.6mmID×30cm)2本を使用し、オーブン温度40℃、溶媒にはテトラヒドロフラン(1.0ml/min)で測定を行う。
20℃でプラストマーである樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン類;ポリブタジエン、水添ポリブタジエン、ポリイソプレン、水添ポリイソプレン等の炭化水素類;アジペート、ポリカプロラクトン等のポリエステル類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体、ポリテトラメチレングリコール等のポリエーテル類;脂肪族ポリカーボネート、ポリカーボネートジオール等のポリカーボネート類;ポリジメチルシロキサン等のシリコン類;(メタ)アクリル酸及び/又はその誘導体の重合体;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のポリハロオレフィン類;ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアセタール、ポリアクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸エステル類、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリアセタール、ポリウレタン、ポリアミド、ポリウレア、ポリイミド等が挙げられる。
20℃でプラストマーである樹脂は、感光性樹脂凸版印刷版の耐刷性の観点からウレタン結合を有しているものであることが好ましく、さらに凸版印刷インキ耐性の観点からエーテル結合、カーボネート結合、エステル結合からなる群より選択される少なくとも1種の結合を有しているものが好ましい。
例えば、エーテル結合、カーボネート結合、エステル結合を有し、かつ、水酸基、アミノ基、エポキシ基、カルボキシル基、酸無水物基、ケトン基、ヒドラジン残基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、環状カーボネート基、アルコキシカルボニル基等の反応性基を1つ又は2つ以上有する分子量が数千程度の化合物と、これらの反応性基と結合し得る官能基を複数有する化合物(例えば、ポリイソシアネート等)とを反応させ、分子量の調節及び分子末端の結合性基への変換等を行い、その後、この分子末端の結合性基と反応し得る官能基と重合性不飽和基を具備する有機化合物とを反応させて、末端に重合性不飽和基を導入する方法等により作製できる。
20℃でプラストマーである樹脂の製造に用いられるエーテル結合を有する化合物としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラエチレングリコール、ポリ1,2−ブチレングリコール、ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンランダムまたはブロック付加物、ポリオキシエチレン/ポリオキシテトラメチレンランダム又はブロック付加物等が挙げられる。
なお、前記ポリカーボネートジオールは、対応するジオールより、公知の方法(例えば、特公平5−29648号公報)により製造できる。
エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、ピコナール、シクロペンタンジオール、シクロヘキサンジオール、末端水酸基を有する1,4−ポリブタジエン、末端水酸基を有する水添又は非水添1,2−ポリブタジエン−アクリロニトリル共重合体等の分子内に2個以上の水酸基を有する化合物とを、縮合反応させて得られるポリエステル類、ポリカプロラクトン等のポリエステル類等が挙げられる。
20℃でプラストマーである樹脂の数平均分子量は、最終的に目的とする感光性樹脂凸版印刷版において、実用上十分な強度を確保する観点から1000以上であることが好ましく、感光性樹脂凸版印刷原版において、良好な加工性を確保する観点から20万以下が好ましい。20℃でプラストマーである樹脂の数平均分子量は、2000以上10万以下であることがより好ましく、5000以上5万以下であることがさらに好ましい。
なお、数平均分子量とは、ゲル浸透クロマトグラフィーを用いて測定し、分子量既知のポリスチレンで検量し換算した値である。
本実施形態で用いる感光性樹脂凸版印刷版に用いられる重合性モノマー成分として、以下のものに限定されないが、公知の各種のものを用いることができ、エチレン、プロピレン、ビニルトルエン、スチレン、ジビニルベンゼン等のオレフィン類;アセチレン類;(メタ)アクリル酸及び/又はその誘導体;ハロオレフィン類;アクリロニトリル等の不飽和ニトリル類;アクリルアミドやメタクリルアミドの誘導体;無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸等の不飽和ジカルボン酸及びその誘導体;酢酸ビニル類;N−ビニルピロリドン;N−ビニルカルバゾール;N−置換マレイミド化合物等が挙げられる。
特に、種類の豊富さ、価格の観点から(メタ)アクリル酸及び/又はその誘導体が好ましい。
これらの重合性モノマー成分は、単独でも2種以上の併用でもよい。
本実施形態で用いる感光性樹脂凸版印刷版に用いられる光重合開始剤として、以下のものに限定されないが、公知の各種のものを用いることができ、好ましい形態は各種の有機カルボニル化合物や、特に芳香族カルボニル化合物等が挙げられる。
これらの光開始剤は、単独でも2種以上の併用でもよい。また崩壊型光重合開始剤および水素引抜き型光開始剤を併用しても構わない。
また、本実施形態で用いる感光性樹脂凸版印刷版用組成物には、種々の補助添加成分、例えば可塑剤、極性基含有ポリマー、熱重合防止剤、紫外線吸収剤、ハレーション防止剤、光安定剤、シリコンオイルなどの表面処理剤、光ルミネセンスタグ(外部エネルギー源によって励起され、得られたエネルギーを光および/または放射線の形で放出する物質)などを添加することができる。
本発明は、別の実施形態として、感光性樹脂凸版印刷版の版面用処理液であって、前記フッ素系界面活性剤(A)を含有する処理液を包含する。
前記フッ素系界面活性剤(A)及びその好ましい態様は上記のとおりである。
本実施の形態の処理液は、フッ素系界面活性剤(A)を感光性樹脂凸版印刷版に適度に浸透させるため、有機溶媒を含有することが好ましい。このような溶媒の好適な例は上記のとおりである。溶媒として現像工程で用いられる現像液を用いる場合には、処理液は現像液としての機能も兼ねる。
フッ素系界面活性剤(A)を含有する処理溶液は、ラジカル開始剤を含有することも可能である。なお、ラジカル開始剤は、溶液を付着させる感光性樹脂凸版印刷版に含まれていてもよい。ラジカル開始剤は後処理工程でラジカルを発生する開始剤であり、活性光線源でラジカルを発生する光重合開始剤や熱でラジカルを発生する熱重合開始剤が挙げられる。
また、熱重合開始剤には公知の各種のものを用いることができるが、アゾ化合物や過酸化物などの化合物が好適である。生産性・コストの点から光重合開始剤を用いる方が好ましい。
本発明の別の実施形態は、前記熱可塑性エラストマーおよび/または前記20℃の条件下でプラストマーである樹脂と、前記重合性モノマーと、前記光重合開始剤と、フッ素系界面活性剤(B)と、を含む感光性樹脂凸版印刷版用組成物である。
溶剤現像型の未露光の感光性樹脂凸版印刷原版AFP−SH(旭化成イーマテリアルズ製、商品名、厚み1.14mm用、スチレンを主体とする重合体ブロックとブタジエンを主体とする重合体ブロックを含む数平均分子量10万の熱可塑性エラストマーを含有する)のカバーシートをはぎとり、感光性樹脂層の上にある保護膜層の上にネガフィルムを密着させ、AFP−1500露光機(旭化成イーマテリアルズ製、商品名)上で370nmに中心波長を有する紫外線蛍光灯を用いて、まず支持体側から800mJ/cm2の全面露光を行なった後、引き続きネガフィルムを通して5000mJ/cm2の画像露光を行なった。このときの露光強度をオーク製作所製のUV照度計MO−2型機でUV−35フィルターを用いて、バック露光を行う側である下側ランプからの紫外線をガラス板上で測定した強度は4.0mW/cm2、レリーフ露光側である上側ランプからの紫外線を測定した強度は7.8mW/cm2であった。
ネガフィルムの画像は、100・133・150lpi各線数で1・2・3・5・10・30・50・60・70・80・90・95%・ベタ部の網点を含むものを使用した。
またSurflon S611のトルエン0.5質量(wt)%の溶液を調製し、ウィルヘルミー法(使用装置:協和界面科学株式会社製CBVP−A3型)により、25℃の室温で表面張力(mN/m)を測定したところ、19mN/mであった。
ソルビットにパーフルオロアルキル基鎖を2つ以上有し、水に不溶な、オリゴマー構造のノニオン系のフッ素系界面活性剤Surflon S651(AGCセイミケミカル製、商品名)を0.5wt%添加した混合溶液を現像液とした以外は、実施例1と同様の方法で感光性樹脂凸版印刷版を得た。
またSurflon S651のトルエン0.5質量(wt)%の溶液を調製し、ウィルヘルミー法(使用装置:協和界面科学株式会社製CBVP−A3型)により、25℃の室温で表面張力(mN/m)を測定したところ、24mN/mであった。
ソルビットにパーフルオロアルキル基鎖を1つ有し、水に不溶な、モノマー構造のノニオン系のフッ素系界面活性剤Surflon S420を0.5wt%添加した混合溶液を現像液とした以外は、実施例1と同様の方法で感光性樹脂凸版印刷版を得た。
またSurflon S420のトルエン0.5質量(wt)%の溶液を調製し、ウィルヘルミー法(使用装置:協和界面科学株式会社製CBVP−A3型)により、25℃の室温で表面張力(mN/m)を測定したところ、26mN/mであった。
ソルビットにパーフルオロアルキル基鎖を2つ以上有し、水に可溶な、オリゴマー構造のノニオン系のフッ素系界面活性剤Surflon S386を0.5wt%添加した混合溶液を現像液とした以外は、実施例1と同様の方法で感光性樹脂凸版印刷版を得た。
またSurflon S386のトルエン0.5質量(wt)%の溶液を調製し、ウィルヘルミー法(使用装置:協和界面科学株式会社製CBVP−A3型)により、25℃の室温で表面張力(mN/m)を測定したところ、27mN/mであった。
ソルビットにパーフルオロアルキル基鎖を1つ有し、水に不溶な、モノマー構造のアニオン系のフッ素系界面活性剤Surflon S211を0.5wt%添加した混合溶液を現像液とした以外は、実施例1と同様の方法で感光性樹脂凸版印刷版を得た。
ソルビットにパーフルオロアルキル基鎖を1つ有し、水に可溶な、モノマー構造のカチオン系のフッ素系界面活性剤Surflon S221を0.5wt%添加した混合溶液を現像液とした以外は、実施例1と同様の方法で感光性樹脂凸版印刷版を得た。
20℃でプラストマーである樹脂成分を含有する樹脂組成物を作製した。
温度計、攪拌機、還流器を具備する1Lのセパラブルフラスコに、旭化成ケミカルズ株式会社製ポリカーボネートジオール 商品名:「PCDL L4672」、数平均分子量1990、OH価56.4)とトリレンジイソシアナートとを加え、80℃に加温した条件下で約3時間反応させて、両末端が水酸基のポリカーボネートポリウレタンを得た。
このポリウレタン系不飽和プレポリマーは20℃では水飴状であり、外力を加えると流動し、かつ外力を除いても元の形状を回復しなかった。
AWF−213E型製版機(旭化成イーマテリアルズ(株)製、商品名)の樹脂バケットに、上記樹脂組成物を充填し、全体版厚が1.2mmになるように設定し、その他装置上定められたウォームアップを行い、以下の手順で成型工程を実施した。
まず、下ガラス上に、厚さ100μmのシリコン処理されたポリエステルフィルム(三菱樹脂製、商品名「MR−100」)を載置し、樹脂組成物を積層塗工し、さらに上部からBF−444(上側支持体フィルム)によりラミネートを施した。
なお、上記露光量は、UV−MO2のUV−35フィルター(オーク製作所製、商品名)を用いて算出した。
スチレンとイソプレンのブロック共重合体である熱可塑性エラストマー「D−1161」(クレイトンポリマージャパン株式会社製 商品名 Mn18万、スチレン含有量15質量%)を81質量部、可塑剤である液状ポリブタジエン「B2000」(株式会社日本曹達製 商品名)10質量部、重合性モノマーである1,9−ノナンメチレンジアクリレート5質量部、光重合開始剤である2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン3質量部、熱重合防止剤である2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール1質量部、ソルビットにパーフルオロアルキル基鎖を2つ以上有し、水に可溶な、オリゴマー構造のノニオン系のフッ素系界面活性剤Surflon S386を0.1質量部を130℃に熱したニーダーを用いて均一に混練し、樹脂凸版印刷原版の原料となる組成物を得た。
まず、下引き層を有する厚さ188μmのポリエチレンテレフタレートフィルム支持体を作製した。
続いて、エチレングリコール93g、ネオペンチルグリコール374g、及びフタル酸382gを空気雰囲気中、反応温度180℃、1330Paの減圧下で6時間縮合反応させた後、4,4−ジフェニレンジイソシアネート125gを加え、更に80℃で5時間反応させて樹脂を得た。
この樹脂を10%水溶液とし、上記厚さ188μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗布し、塗布後、2軸延伸し、下引き層を有するポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。下引き層の厚みは0.05μmであった。
ネオペンチルグリコール624g、エチレングリコール93g、セバシン酸485g、及びイソフタル酸382gを空気雰囲気中、反応温度180℃、1330Paの減圧下で6時間縮合反応させ、その後、トリメチレンジイソシアネートを87g加えて、更に5時間反応させてポリオールを得た。
このポリオール15質量部に対して、キシレンジイソシアネート1質量部を加え、酢酸エチルに溶解させ、均一な溶液とし、ナイフコーターを用いて下引き層を有するポリエチレンテレフタレートフィルムに塗布し、80℃で3分間乾燥させ、厚さ10μmの接着剤層を形成した。これにより、接着剤層の厚さを合わせて198μmのポリエチレンテレフタレートフィルム支持体が得られた。
なお、このときの露光強度について、オーク製作所製のUV照度計MO−2型機でUV−35フィルターを用いて紫外線の測定を行ったところ、強度は7.8mW/cm2であ
った。
現像直後は、版が現像液に膨潤しているため、後露光の前に、60℃で1時間乾燥した後に、ALF−200UP後露光機(旭化成イーマテリアルズ製、商品名)を用いて、254nmに中心波長をもつ殺菌灯を用いて版表面全体に、2000mJ/cm2、続いて紫外線蛍光灯を用いて1000mJ/cm2の後露光を行って感光性樹脂凸版印刷版を得た。なお、ここで殺菌灯による後露光量は、MO−2型機のUV−25フィルター(オーク製作所製、商品名)を用いて測定された照度から算出したものである。
フッ素系界面活性剤Surflon S386を用いなかったこと以外は、実施例4と同様の方法で感光性樹脂凸版印刷版を得た。
<評価方法>
(a)版面汚れの実印刷評価
得られた感光性樹脂凸版印刷版を用いて版面汚れの実印刷評価を行った。AI−3型フレキソ印刷機(伊予機械製、商品名)を用いて、インキとして溶剤系のFBキング(藍色、東洋インキ製)を使用し、被印刷体にはコロナ処理された厚さ30umのポリプロピレンフィルム(サントックス社製PA30、商品名)を用いた。アニロックスロールは800lpi(セル容積3.8cm3/m2)、クッションテープには3M 1020(3M製、商品名)を使用して、200m/分の速度で、15万部の印刷を実施した。評価する感光性樹脂凸版印刷版を製造した際の、ネガフィルムの画像は、100・133・150lpi各線数で1・2・3・5・10・30・50・60・70・80・90・95%・ベタ部の網点を含むものを使用した。15万部刷了前に特に網点部に版面汚れが生じ、印刷をとめなければならない状態になった場合を“C”、刷了はできたがベタ濃度の低下や網点部の太りを生じた場合を“B”、刷了できベタ濃度の低下や網点部の太りも生じなかった場合を“A”とした。A、B、Cの順で好ましい。
撥インキ性を模擬的に評価するため、得られた感光性樹脂凸版印刷版のベタ部の接触角を、固液界面解析装置DropMaster500(協和界面科学製、商品名)の液滴法で測定した。温度23℃、相対湿度50%恒温恒湿室内に一日放置した後、解析ソフトウェアは“FAMAS ver1.8.1”を用い、プローブ溶液はジヨウドメタン(関東化学社製)を用い、上記ソフトウェアから接触角を自動測定した。針はステンレス製22G(協和界面科学製)を用いて、吐出時間100ms、吐出電圧4000mV、各プローブ溶液が版に接触後15秒後の接触角を自動測定した値を使用した。
感光性樹脂凸版印刷版用組成物の発明に係る実施例(実施例3・4)に関しては、フッ素系界面活性剤を使用していない(比較例5)感光性樹脂凸版印刷版のベタ部の接触角との差を計算した。差が大きい方が撥インキ性が良好であり好ましい。
実施例3〜4および比較例5の上記(a)、(b)の評価結果を表2に示す。
また、表2の結果から、フッ素系界面活性剤(B)を有する感光性凸版印刷版用組成物によって、版面のインキを長時間防止することが確認された。
本実施形態を、特定の実施態様を参照して詳細に説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者によって明らかである。
本発明の製造方法、処理液及び組成物から得られる印刷版は、感光性樹脂凸版印刷版、例えばフレキソ印刷版用・レタープレス印刷版用・スタンプ版用レリーフ画像の作成、エンボス加工等の表面加工パターンの形成、型取り用パターンの形成、電子部品の導体・半導体・絶縁体パターン形成、光学部品の反射防止膜、カラーフィルター、(近)赤外線カットフィルター等の機能性材料パターンの形成、さらには液晶ディスプレイまたは有機エレクトロルミッセンスディスプレイ等の表示素子の製造における配向膜、下地層、発光層、電子輸送層、封止材層の塗膜・パターン形成、あるいは、パターンを形成しないインキ転写用ブランケットまたはアニロックスロールに接して使用されるインキ量調整用ロール等に適した、感光性樹脂凸版印刷版の分野において好適に利用できる。
Claims (10)
- 露光工程、現像工程を含む感光性樹脂凸版印刷版の製造方法において、
露光工程後に、版面にパーフルオロアルキル基鎖を2つ以上有し、水に不溶な、ノニオン系のフッ素系界面活性剤(A)を付着させる工程を含む感光性樹脂凸版印刷版の製造方法。 - 前記現像工程後に、熱処理、活性光源による後露光処理、および電子線処理からなる群から選択される少なくとも1種の後処理工程を含み、前記版面にフッ素系界面活性剤(A)を付着させる工程を露光工程後、後処理工程以前に行う請求項1に記載の感光性樹脂凸版印刷版の製造方法。
- フッ素系界面活性剤(A)を付着させる工程が、前記フッ素系界面活性剤(A)が溶解した溶媒を用いて行う請求項1または2に記載の製造方法。
- フッ素系界面活性剤(A)を付着させる工程が、前記フッ素系界面活性剤(A)を含有する現像液を用いて行う現像工程によってなされる請求項1〜3のいずれか一項に記載の製造方法。
- 前記フッ素系界面活性剤(A)の、トルエン0.5wt%溶液における表面張力が25mN/m以下である請求項1〜4のいずれか一項に記載の製造方法。
- 前記感光性樹脂凸版印刷版が、少なくとも共役ジエンを主体とする第1の重合体ブロック、およびビニル芳香族炭化水素を主体とする第2の重合体ブロックを含むブロック共重合体を含有する請求項1〜5のいずれか一項に記載の製造方法。
- 前記感光性樹脂凸版印刷版がフレキソ印刷用感光性樹脂版である請求項1〜6のいずれか一項に記載の製造方法。
- 版面にパーフルオロアルキル基鎖を2つ以上有し、水に不溶な、ノニオン系のフッ素系界面活性剤(A)を有する、感光性樹脂凸版印刷版。
- パーフルオロアルキル基鎖を2つ以上有し、水に不溶な、ノニオン系のフッ素系界面活性剤(A)を含有する感光性樹脂凸版印刷版の版面用処理液。
- 前記フッ素系界面活性剤(A)の、トルエン0.5wt%溶液における表面張力が25mN/m以下である請求項9に記載の感光性樹脂凸版印刷版の版面用処理液。
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