つぎに、この発明の油圧制御装置の実施の形態を説明する。この発明の油圧制御装置において、動力源は車輪に伝達する動力を発生する動力装置であり、単数の動力源または、動力の発生原理が異なる複数種類の動力源を用いることが可能である。動力の発生原理が異なる複数種類の動力源としては、例えば、エンジン、電動モータ、油圧モータ、フライホイールシステムなどを用いることが可能である。また、油圧制御装置は、動力源の動力が、前輪または後輪の何れか一方に伝達される構成のパワートレーンを有する車両、すなわち、二輪駆動車、または動力源の動力が、前輪および後輪の両方に伝達される構成のパワートレーンを有する車両、すなわち、四輪駆動車のいずれにも適用可能である。
さらに、流体伝動装置と並列に、ロックアップクラッチが設けられている。このロックアップクラッチは、摩擦力により動力伝達をおこなう動力伝達装置である。また、動力伝達経路で、流体伝動装置よりも下流に伝達トルク制御機構が設けられている。また、伝達トルク制御機構は、伝達トルクもしくはトルク容量を制御可能な装置である。さらに、油圧制御装置は、動力伝達経路に、前後進切換装置および無段変速機が設けられている車両に適用可能である。この場合は、前後進切換装置が伝達トルク制御機構に相当する。この前後進切換装置は、入力回転部材の回転方向に対して、出力回転部材の回転方向を正逆に切り換える装置であり、遊星歯車機構を用いた装置、または平行軸歯車式の装置のいずれでもよい。前後進切換装置として遊星歯車機構を用いる場合、シングルピニオン式の遊星歯車機構またはダブルピニオン式の遊星歯車機構のいずれでもよい。また、遊星歯車機構を用いて前後進切換装置を構成する場合、遊星歯車機構の回転要素の回転・停止、および回転要素同士の係合・解放を制御するために、摩擦式のクラッチおよびブレーキを用いることが可能である。前後進切換装置として平行軸歯車式を用いる場合、噛み合い式のクラッチおよびブレーキを用いることが可能である。上記無段変速機は、入力回転数と出力回転数との比である変速比を無段階に(連続的に)変更することの可能な変速機であり、例えば、ベルト式無段変速機またはトロイダル式無段変速機が挙げられる。さらに、油圧制御装置は、動力源から車輪に至る動力伝達経路に有段変速機が設けられている車両にも適用可能である。この有段変速機は、遊星歯車機構および摩擦係合装置を有する公知のものであり、摩擦係合装置の係合・解放を制御することにより、入力回転部材と出力回転部材との間における変速比が制御され、かつ、入力回転部材と出力回転部材との間で伝達されるトルクが制御される。この有段変速機が、伝達トルク制御機構に相当する。
また、伝達トルク制御機構およびロックアップクラッチの伝達トルク、トルク容量、係合圧などが油圧室の油圧により制御されるように構成されている。すなわち、油圧制御式のアクチュエータにより制御される構成となっている。また、高圧油路の圧油の油圧は高圧に制御され、低圧油路の油圧は低圧に制御される。ここで、高圧および低圧とは、高圧油路と低圧油路との圧力関係を意味しており、具体的な圧力や圧力範囲(領域)を意味するものではない。また、高圧油路の油圧が上昇されるか低下されるかほぼ一定に制御されるかは問われない。さらに、低圧油路の油圧が上昇されるか低下されるかほぼ一定に制御されるかは問われない。さらに、高圧油路および低圧油路の油圧を制御するため、高圧用圧力制御弁および低圧用圧力制御弁が設けられる。
さらに、高圧用圧力制御弁の出力油圧を制御するための信号油圧を出力する高圧用ソレノイドバルブが設けられる。さらに、低圧用圧力制御弁の出力油圧を制御するための信号油圧を出力する低圧用ソレノイドバルブが設けられる。さらに、高圧用ソレノイドバルブおよび低圧用ソレノイドバルブは、通電電流値によって信号油圧が調整され、予め電子制御装置などに記憶されているデータおよび電子制御装置に入力される信号に基づいて、通電電流値が制御されるように構成されている。また、油圧制御装置において、切替機構としては、切替弁を用いることができる。そして、ロックアップクラッチの伝達トルクを低トルクまたは高トルクに切り換える場合に、この切替弁が切替制御されて、高圧油路または低圧油路の何れか一方の圧油が、選択的に伝達トルク制御機構に供給される。また、ロックアップクラッチの伝達トルクが低トルクまたは高トルクのいずれであっても、切替弁は、低圧油路の圧油を、ロックアップクラッチに供給する構成を有している。
さらに、動力伝達経路に、ロックアップクラッチおよび伝達トルク制御装置およびベルト式無段変速機が配置されている。このベルト式無段変速機は、プライマリプーリおよびセカンダリプーリにベルトを巻き掛けて構成されており、入力回転数と出力回転数との比である変速比を、無段階に(連続的)に変更可能な変速機である。具体的に説明すると、第2の油圧制御装置は、動力源から車輪に至る動力伝達経路に、ロックアップクラッチおよび伝達トルク制御機構およびベルト式無段変速機が、直列に配置されている構成のドライブトレーンを有する車両に適用可能である。すなわち、油圧制御装置においては、動力源から車輪に至る動力伝達方向において、ロックアップクラッチおよび伝達トルク制御機構およびベルト式無段変速機の配置順序は問われない。
さらに、前後進切換装置は、入力回転部材の回転方向に対して、出力回転部材の回転方向を正逆に切り換える装置であり、遊星歯車機構を用いた装置、または平行軸歯車式の装置のいずれを用いてもよい。油圧制御装置では、前後進切換装置として遊星歯車機構を用いる場合、シングルピニオン式の遊星歯車機構またはダブルピニオン式の遊星歯車機構のいずれでもよい。また、遊星歯車機構を用いて前後進切換装置を構成する場合、遊星歯車機構の回転要素の回転・停止、および回転要素同士の係合・解放を制御するために、摩擦式のクラッチおよびブレーキを用いることが可能である。これに対して、前後進切換装置として平行軸歯車式を用いる場合、噛み合い式のクラッチおよびブレーキを用いることが可能である。これらのクラッチやブレーキなどを制御することにより、前後進切換装置における伝達トルクが制御される。
この発明において、ロックアップコントロール機構は、係合用油圧室および解放用油圧室の油圧を制御する機構であり、係合用油圧室および解放用油圧室に接続された油路または通路あるいはポートなどの他に、圧油の油圧を制御するバルブ(圧力制御弁)が含まれる。この発明において、第1ソレノイド機構および第2ソレノイド機構は、共に信号油圧を発生する装置であり、第1ソレノイド機構および第2ソレノイド機構には、ソレノイドバルブ、およびソレノイドバルブの通電電流値を制御するコントローラである電子制御装置が含まれる。この発明において、切替機構には、油路同士の接続関係を切り替える切替バルブ、切替バルブに接続された油路およびポートが含まれる。この発明において、圧油供給源は、圧油を油圧回路に供給する運動エネルギを与える装置であり、圧油供給源には、オイルポンプ、アキュムレータなどが含まれる。この発明における流量制御機構には、流量制御弁、この流量制御弁に接続された油路およびポート、および流量制御弁における圧油の流通面積を制御するコントローラなどが含まれる。さらに、この発明において、予め定められた所定量とは、コントローラに記憶されている値、または各種の条件に基づいて求められる値であり、流量のしきい値である。さらに、この発明において、予め定められた所定圧とは、コントローラに記憶されている値、または各種の条件に基づいて求められる値であり、信号油圧のしきい値である。
つぎに、この発明の油圧制御装置の具体例を図面に基づいて説明する。まず、油圧制御装置を実施可能な車両のパワートレーン、およびその車両の制御系統を図2に示す。ここに示す車両1のパワートレーンにおいては、動力源2の出力側に流体伝動装置の一種であるトルクコンバータ3が設けられている。またこのトルクコンバータ3から出力されたトルクが、前後進切換装置4を介してベルト式無段変速機5に伝達されるように構成されている。すなわち、図2に示すドライブトレーンにおいては、動力の伝達方向で、トルクコンバータ3とベルト式無段変速機5との間に、前後進切換装置4が配置されている。動力源1としては、エンジンまたは電動モータのうちの少なくとも一方を用いることができる。このエンジンは燃料を燃焼させてその熱エネルギを運動エネルギに変換する動力装置であり、エンジンとしては内燃機関、具体的には、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、LPGエンジンなどを用いることができる。以下、動力源1としてガソリンエンジンを用いる場合について説明し、便宜上、動力源1を“エンジン1”と記す。このエンジン1の吸気管(図示せず)には、電子スロットルバルブ(図示せず)が設けられているとともに、エンジン1はクランクシャフト6を有している。
このクランクシャフト6の出力側にトルクコンバータ3が設けられている。このトルクコンバータ3は、入力部材と出力部材との間で作動油の運動エネルギにより動力伝達をおこなう流体伝動装置である。このトルクコンバータ3は、ケーシング7の内部にポンプインペラ8およびタービンランナ9を設けて構成されており、ポンプインペラ8がケーシング7により、クランクシャフト6と動力伝達可能に連結されている。これに対して、タービンランナ9はインプットシャフト10と一体回転するように連結されている。上記ケーシング7が入力部材であり、インプットシャフト10が出力部材である。これらのポンプインペラ8およびタービンランナ9には、多数のブレード(図示せず)が設けられており、ポンプインペラ8とタービンランナ9との間にコンバータ油室11が形成されており、そのコンバータ油室11を経由して作動油が供給されるとともに、ポンプインペラ8の回転によって発生する作動油の運動エネルギにより、タービンランナ9に動力が伝達される。また、ポンプインペラ8とタービンランナ9との内周側の部分には、タービンランナ9から送り出された作動油の流動方向を選択的に変化させてポンプインペラ8に流入させるステータ12が配置されている。このステータ12の働きにより、ポンプインペラ8とタービンランナ9との間で伝達されるトルクが増幅される。
さらに、ケーシング7とインプットシャフト10とを選択的に連結・解放するロックアップクラッチ13が設けられている。さらに、このロックアップクラッチ13は摩擦式の伝達トルク制御機構であり、インプットシャフト10と共に回転する摩擦材をケーシング7のフロントカバーに押し付けることにより、伝達トルクが制御されるように構成されている。このロックアップクラッチ13の伝達トルクを制御するために、係合用油圧室14および解放用油圧室15が設けられており、この係合用油圧室14および解放用油圧室15の圧力差に基づいて、ロックアップクラッチ13が係合または解放される。具体的には、係合用油圧室14の油圧が解放用油圧室15の油圧よりも高くなった場合は、摩擦材がフロントカバーに押し付けられて摩擦力が高められる。このようにして、ロックアップクラッチの伝達トルクが高められる(係合される)。これに対して、係合用油圧室14の油圧が解放用油圧室15の油圧よりも低くなった場合は、摩擦材がフロントカバーから離れて摩擦力が低下する。このようにして、ロックアップクラッチ13の伝達トルクが低下する(解放される)。
この実施例において、ロックアップクラッチ13が解放された場合は、そのロックアップクラッチ13の摩擦力による動力伝達は不可能である。これに対して、ロックアップクラッチ13が係合されている場合は、そのロックアップクラッチ13の摩擦力による動力伝達が可能である。また、この実施例では、「ロックアップクラッチ13の係合」には「ロックアップクラッチ13のスリップ」が含まれる。すなわち、このロックアップクラッチ13がスリップしている場合も、ロックアップクラッチ13の摩擦力による動力伝達が可能である。なお、コンバータ油室11は、係合用油圧室14と連通されており、コンバータ油室11の油圧が上昇すると、係合用油圧室14の油圧が上昇し、コンバータ11油室の油圧が低下すると、係合用油圧室14の油圧が低下するように構成されている。
一方、前後進切換装置4は、インプットシャフト10の回転方向に対して、ベルト式無段変速機5のプライマリシャフト16の回転方向を正逆に切り換える装置である。この前後進切換装置4として、図2に示す例では、ダブルピニオン型の遊星歯車機構が採用されている。すなわち、インプットシャフト10と一体回転するサンギヤ17と、このサンギヤ17と同軸上に配置されたリングギヤ18とが設けられ、このサンギヤ17に噛合したピニオンギヤ19と、このピニオンギヤ19およびリングギヤ18に噛合されたピニオンギヤ20が設けられており、この2つのピニオンギヤ19,20がキャリヤ21によって、自転かつ公転自在に保持されている。
さらに、前後進切換装置4は、インプットシャフト10と、キャリヤ21とを選択的に動力伝達可能に連結し、かつ、解放する前進用クラッチ22を有している。また前後進切換装置4は、リングギヤ18を選択的に固定することにより、インプットシャフト10の回転方向に対するプライマリシャフト16の回転方向を正・逆に切り換える後進用ブレーキ23を有している。この実施例では、前進用クラッチ22および後進用ブレーキ23として、油圧制御式のクラッチおよびブレーキが用いられている。すなわち、前進用クラッチ22の伝達トルクを制御するクラッチ用油圧室24が設けられており、後進用ブレーキ23の制動力もしくはトルク容量を制御するブレーキ用油圧室25が設けられている。ベルト式無段変速機5は、互いに平行に配置されたプライマリシャフト16およびセカンダリシャフト26を有している。そして、プライマリシャフト16と一体回転するプライマリプーリ27が設けられ、セカンダリシャフト26と一体回転するセカンダリプーリ28が設けられている。
また、プライマリプーリ27は、軸線方向には固定された固定片(図示せず)と、軸線方向に移動可能に構成された可動片(図示せず)とを有している。そして、固定片と可動片との間に溝が形成されており、可動片を軸線方向に動作させて、溝の幅を制御するプライマリ油圧室29が設けられている。これに対して、セカンダリプーリ28は、軸線方向には固定された固定片(図示せず)と、軸線方向に移動可能に構成された可動片(図示せず)とを有している。そして、固定片と可動片との間に溝が形成されており、可動片を軸線方向に動作させて、溝の幅を制御するセカンダリ油圧室30が設けられている。さらに、セカンダリシャフト26には歯車伝動装置31を介在させてデファレンシャル32が連結されており、デファレンシャル32には車輪(前輪)33が動力伝達可能に連結されている。
つぎに、図2に示された車両の制御系統を説明する。まず、電子制御装置(ECU)34が設けられており、この電子制御装置34には、エンジン回転数、プライマリシャフト16の回転数、セカンダリシャフト26の回転数、車速、加速要求、制動要求、油温、外気温、シフトポジションなどを示す信号が入力される。この電子制御装置34からは、エンジンを制御する信号、油圧制御装置35を制御する信号などが出力される。この油圧制御装置35の制御により、ロックアップクラッチ13の伝達トルクが制御され、前後進切換装置4の前進用クラッチ22の伝達トルクおよび後進用ブレーキ23の制動力が制御され、ベルト式無段変速機5における変速比および伝達トルクが制御される。そのために、電子制御装置34には、車速および加速要求に基づいて、ロックアップクラッチ13の係合・解放・スリップを制御するロックアップクラッチ制御マップ、ベルト式無段変速機5の変速比を制御する変速比制御マップなどが記憶されている。
上記のように構成された車両1において、エンジン2から出力されたトルクは、トルクコンバータ3、前後進切換装置4、ベルト式無段変速機5を経由して車輪33に伝達される。ロックアップクラッチ13の制御について説明すると、係合用油圧室14の油圧が高められて、ロックアップクラッチ13が係合された場合は、摩擦力により動力伝達がおこなわれる。これとは逆に、解放用油圧室15の油圧が高められて、ロックアップクラッチ13が解放された場合は、作動油の運動エネルギにより動力伝達がおこなわれる。このように、ロックアップクラッチ13が解放されている場合、トルクコンバータ3においては、ケーシング7とインプットシャフト10との速度比が、1.0未満の領域(トルクコンバータレンジ)にある場合、ステータ12の機能によるトルク増幅がおこなわれる。これに対して、ケーシング7とインプットシャフト10との速度比が、トルクコンバータレンジよりも1.0に近い領域では、(流体継手レンジ)にある場合、トルク増幅はおこなわれない。
このようにして、エンジントルクがインプットシャフト10に伝達される。つぎに、前後進切換装置4の制御について説明する。シフトポジションとして前進ポジション、例えば、D(ドライブ;走行)ポジションが選択された場合は、クラッチ用油圧室24の油圧が高められて、前進用クラッチ22が係合されるとともに、ブレーキ用油圧室25の油圧が低下されて、後進用ブレーキ23が解放される。すると、インプットシャフト10とキャリヤ21とが一体回転し、インプットシャフト10のトルクがプライマリシャフト16に伝達される。これに対して、後進ポジションが選択された場合は、クラッチ用油圧室24の油圧が低下されて、前進用クラッチ22が解放されるとともに、ブレーキ用油圧室25の油圧が高められて、後進用ブレーキ23が係合される。すなわち、リングギヤ18が固定される。そして、エンジントルクがサンギヤ17に伝達されると、リングギヤ18が反力要素となって、サンギヤ17のトルクがキャリヤ21を経由してプライマリシャフト16に伝達される。ここで、プライマリシャフト16の回転方向は、前進ポジションの場合とは逆になる。
つぎに、ベルト式無段変速機5の制御を説明する。前記のように、エンジントルクがプライマリシャフト16に伝達されるとともに、電子制御装置34に入力される各種の信号、および電子制御装置34に予め記憶されているデータに基づいて、ベルト式無段変速機5の変速比およびトルク容量が制御される。まず、ベルト式無段変速機5の変速比の制御について説明すると、プライマリプーリ27の溝幅が調整されると、そのプライマリプーリ27に対するベルト36の巻掛け半径が連続的に変化し、変速比が無段階に変化する。また、セカンダリプーリ28の溝幅が調整されて、ベルト36に対するセカンダリプーリ28の挟圧力が調整される。このようにして、プライマリプーリ27とセカンダリプーリ28との間で、ベルト36を経由して伝達されるトルクが制御される。上記のように構成されたロックアップクラッチ13および前後進切換装置4およびベルト式無段変速機5を制御する油圧制御装置35の具体例を説明する。
(具体例1)
図1は、油圧制御装置35の具体例1である。この図1に示す油圧制御装置35は、請求項1の発明に対応している。まず、オイルパン37のオイルを吸入するオイルポンプ38が設けられている。このオイルポンプ38は、駆動力源としてのエンジン2により駆動される構成、または専用の電動モータ(図示せず)により駆動される構成のいずれでもよい。オイルポンプ38の吐出口39には油路40が接続されており、この油路40の油圧を制御する圧力制御弁111が設けられている。圧力制御弁111は、スプール111Aおよび入力ポート113および出力ポート114およびフィードバックポート115および信号圧ポート116およびバネ111Bを有する公知のものである。スプール111Aは直線状に往復動可能に構成されている。圧力制御弁111は、この信号圧ポート116にはソレノイドバルブ98の信号油圧が入力されるように構成されている。さらに、信号圧ポート116の油圧に応じた押圧力およびバネ111Bの押圧力が、スプール111Aに対して同じ向きで加えられるように構成されている。また、フィードバックポート115は油路40に接続されており、このフィードバックポート115の油圧に応じた押圧力が、信号圧ポート116の油圧に応じた押圧力およびバネ111Bの押圧力とは逆向きに、スプール111Aに加えられるように構成されている。さらにまた、入力ポート113が油路40に接続されているとともに、出力ポート114には油路47が接続されている。このように、油路40から油路47に供給される油圧を、圧力制御弁111およびソレノイドバルブ98によって制御することが可能となっている。具体的には、ソレノイドバルブ98から出力される信号圧が高くなることに比例して、油路40の油圧が上昇するように、圧力制御弁111の圧力制御特性が決定されている。そして、油路47の圧油の一部が、圧力制御弁41に供給され、油路40の圧油の一部が圧力制御弁42に供給されるように構成されている。
まず、一方の圧力制御弁41は油路47の油圧を制御する機能を有している。この圧力制御弁41は、入力ポート43および出力ポート44およびフィードバックポート45Aおよび信号圧ポート46およびスプール41Aおよびバネ41Bなどを有する公知のものである。スプール41Aは直線状に往復動可能に構成されている。信号圧ポート46にはソレノイドバルブ51の信号油圧が入力されるように構成されている。さらに、信号圧ポート46の油圧に応じた押圧力およびバネ41Bの押圧力が、スプール41Aに対して同じ向きで加えられるように構成されている。また、フィードバックポート45Aは油路47に接続されており、このフィードバックポート45Aの油圧に応じた押圧力が、信号圧ポート46の油圧に応じた押圧力およびバネ41Bの押圧力とは逆向きに、スプール41Aに加えられるように構成されている。さらにまた、入力ポート43が油路47に接続されているとともに、出力ポート44には油路103が接続されている。このように、油路47の油圧を、圧力制御弁41およびソレノイドバルブ51によって制御することが可能となっている。具体的には、ソレノイドバルブ51から出力される信号圧が高くなることに比例して、油路47の油圧が上昇するように、圧力制御弁41の圧力制御特性が決定されている。
一方、油路47にはロックアプコントロールバルブ48を介在させて、係合用油圧室14および解放用油圧室15が接続されている。このロックアプコントロールバルブ48は、2つの入力ポート49,50と、2つの出力ポート52,53と、信号圧ポート54とを有している。入力ポート49は油路47に接続されており、入力ポート50には油路103が接続されており、油路103にはオリフィス55が配置されている。また、油路103は、オリフィス55と入力ポート50との間に相当する部分が潤滑系統56に接続されている。この潤滑系統56は、エンジン2から車輪33に動力を伝達する経路に設けられた潤滑油必要部位、例えば、発熱・焼き付き・摩耗・摺動などが発生する可能性がある部位に、潤滑油を供給する油路である。上記潤滑油必要部位としては前後進切換装置4を構成する各ギヤ同士の噛み合い部分、ベルト式無段変速機5において、プライマリプーリ27およびセカンダリプーリ28にベルト36が巻き掛けられた部分、歯車伝動装置31を構成する各ギヤの噛み合い部分、各種の回転部材を支持する軸受(図示せず)などがある。また、出力ポート52が、係合用油路101を経由してコンバータ油室11および係合用油圧室14に接続され、出力ポート53が解放用油路102を経由して解放用油圧室15に接続されている。
さらに、ロックアップコントロールバルブ48および切替弁62(後述する)を制御するソレノイドバルブ57が設けられている。まず、ソレノイドバルブ57から出力される信号圧が信号圧ポート54に入力されて、ロックアップコントロールバルブ48の動作が切り替えられるように構成されている。ロックアップコントロールバルブ48の動作が切り替えられると、油路47または油路103が、係合用油路101,102に対して選択的に接続される。この具体例1におけるソレノイドバルブ57およびロックアップコントロールバルブ48の特性を説明すると、ロックアップクラッチ13を係合させる条件が成立した場合は、ソレノイドバルブ57から出力される信号圧が高圧に制御されて、油路47と解放用油路102とが接続され、油路103と解放用油路102とが接続される。これに対して、ロックアップクラッチ13を解放させる条件が成立した場合は、ソレノイドバルブ57から出力される信号圧が低圧に制御されて、油路47と解放用油路102とが接続され、かつ、油路103と係合用油路101とが接続される。
つぎに、圧力制御弁42の構成について説明する。この圧力制御弁42は、入力ポート127および出力ポート58およびフィードバックポート59および信号圧ポート60およびスプール42Aおよびバネ42Bなどを有する公知のものである。この信号圧ポート60にはソレノイドバルブ51の信号油圧が入力されるように構成されている。さらに、入力ポート127が油路40に接続されているとともに、出力ポート58には油路61が接続されている。さらに、信号圧ポート60の油圧に応じた押圧力およびバネ42Bの押圧力が、スプール42Aに対して同じ向きで加えられるように構成されている。また、フィードバックポート59は油路61に接続されており、このフィードバックポート59の油圧に応じた押圧力が、信号圧ポート60の油圧に応じた押圧力およびバネ42Bの押圧力とは逆向きに、スプール42Aに加えられるように構成されている。
このように構成された圧力制御弁42は、スプール42Aの動作に応じて油路40から油路61に供給される圧油の油圧が制御される。この圧力制御弁42は、油路40から油路61に供給される圧油の油圧を、ソレノイドバルブ51によって制御することが可能である。具体的には、ソレノイドバルブ51から出力される信号圧が高くなることに比例して、油路61の油圧が上昇するように、圧力制御弁42の圧力制御特性が決定されている。また、この具体例1では、圧力制御弁41,42に対して共通のソレノイドバルブ51から同一圧の信号圧が入力される構成となっているが、油路103の油圧と油路61の油圧とが異なることとなるように、圧力制御弁41,42の圧力制御特性が決定されている。具体的には、油路61の油圧の方が油路47の油圧よりも高圧となる圧力制御特性を、圧力制御弁41,42が有している。このような圧力制御特性は、圧力制御弁41のフィードバックポート45Aの油圧を受けるスプール41Aの受圧面積、圧力制御弁42のフィードバックポート59の油圧を受けるスプール42の受圧面積、スプール41Aに押圧力を与えるバネ41Bのばね定数、スプール42に押圧力を与えるバネ42Bのばね定数などの設計変更により調整可能である。
さらに、油路47,61が共に接続された切替弁62が設けられている。この切替弁62は、2つの入力ポート63,64と、1つの出力ポート65と、2つの信号圧ポート66,67と、スプール62Aと、バネ62Bとを有している。スプール62Aは直線状に往復動可能に構成されている。また、信号圧ポート66の信号圧によりスプール62Aに加えられる押圧力と、信号圧ポート67の信号圧によりスプール62Aに加えられる押圧力とが逆向きとなるように、信号圧ポート66,67の位置が決定されている。さらに、バネ62Bの押圧力が、信号圧ポート66の信号圧に応じた押圧力と同じ向きにスプール62Aに加えられるように構成されている。そして、入力ポート63は油路47に接続され、入力ポート64は油路61に接続されている。また、信号圧ポート67にはソレノイドバルブ57の信号圧が入力され、信号圧ポート66に信号圧を入力するソレノイドバルブ68が設けられている。そして、2つの信号圧ポート66,67の信号圧が共に高圧または低圧である場合は、信号圧ポート66,67の信号圧によりスプール62Aに加えられる逆向きの押圧力同士が相殺されて、バネ62Bの押圧力によりスプール62Aが動作し、入力ポート63と出力ポート65とが接続され、かつ、入力ポート64が遮断される。また、信号圧ポート66の信号圧が高圧であり、かつ、信号圧ポート67の信号圧が低圧である場合は、信号圧ポート66の信号圧に応じてスプール62Aに加えられる押圧力、およびバネ62Bによりスプール62Aに加えられる押圧力によりスプール62Aが動作する。その結果、入力ポート64と出力ポート65とが接続される一方、入力ポート63が遮断される。さらに、信号圧ポート67の信号圧が高圧であり、かつ、信号圧ポート66の信号圧が低圧である場合は、信号圧ポート67の信号圧に応じてスプール62Aに加えられる押圧力により、バネ62Bの押圧力に抗してスプール62Aが動作する。その結果、入力ポート63と出力ポート65とが接続される一方、入力ポート64が遮断されるように、切替弁62の動作特性が決定されている。このように、ソレノイドバルブ57から出力される信号圧は、ロックアップコントロールバルブ48および切替弁62の制御に共用される。
このように構成された切替弁62の出力ポート65は、マニュアルバルブ99を介して、クラッチ用油圧室24およびブレーキ用油圧室25に接続されている。このマニュアルバルブ99は、1つの入力ポート69と、2つの出力ポート70,71と、1つのドレーンポート72とを有している。入力ポート69は油路100を経由して、切替弁62の出力ポート65に接続され、出力ポート70はクラッチ用油圧室24に接続され、出力ポート71はブレーキ用油圧室25に接続されている。このマニュアルバルブ99は、選択されるシフトポジションに応じて動作および停止し、その停止位置でいずれかのポード同士を接続する構成を有している。まず、ニュートラルポジションまたはパーキングポジションが選択された場合は、出力ポート70,71が共にドレーンポート72に接続され、入力ポート69が遮断される。これに対して、ドライブポジションが選択された場合は、入力ポート69と出力ポート70とが接続され、出力ポート71がドレーンポート72に接続される。さらに、リバースポジションが選択された場合は、入力ポート69と出力ポート71とが接続され、出力ポート70がドレーンポート72に接続される。
つぎに、ベルト式無段変速機5の変速比を制御するための油圧回路の構成を説明する。まず、油路40からプライマリ油圧室29に至る経路に、増速用の変速比制御弁73が設けられている。この変速比制御弁73は、直線状に往復動可能なスプール74と、このスプール74を一方向に押圧するバネ75と、スプール74の動作により開口面積が制御される入力ポート76および出力ポート77と、バネ75と同じ向きの力をスプール74に与える信号圧ポート78と、バネ75とは逆向きの力をスプール74に与える信号圧ポート79とを有している。そして、ソレノイド68の信号油圧が信号圧ポート79に入力され、油路40が入力ポート76に接続され、出力ポート77が油路80を経由してプライマリ油圧室29に接続されている。
さらに、油路80には、減速用の変速比制御弁81が接続されている。この変速比制御弁81は、直線状に往復動可能なスプール82と、このスプール82を一方向に押圧するバネ83と、スプール82の動作により開口面積が制御される入力ポート84およびドレーンポート85と、バネ83と同じ向きの力をスプール82に与える信号圧ポート86と、バネ83とは逆向きの力をスプール82に与える信号圧ポート87とを有している。そして、ソレノイド68の信号油圧が信号圧ポート86に入力され、油路80が入力ポート84に接続され、ドレーンポート85がオイルパン37に接続されている。さらに、信号圧ポート78,87に入力される信号圧を出力するソレノイドバルブ88が設けられている。上記のように構成された変速比制御弁73,81は、共に流量制御弁としての機能を有しており、その変速比制御弁73の制御により、プライマリ油圧室29に供給される圧油の流量が制御され、変速比制御弁81の制御により、プライマリ油圧室29から排出される圧油の流量が制御される。
さらに、油路40からセカンダリ油圧室30に至る経路には圧力制御弁89が設けられている。この圧力制御弁89は、直線状に往復動可能なスプール90と、スプール90を一方向に押圧するバネ91と、スプール90の動作により開口面積が制御される入力ポート92および出力ポート93と、バネ91と同じ向きの力をスプール90に与える信号圧ポート94と、バネ91とは逆向きの力をスプール90に与えるフィードバックポート95と、ドレーンポート96とを有している。そして、油路40が入力ポート92に接続され、出力ポート93が油路97を経由してセカンダリ油圧室30に接続され、フィードバックポート95が出力ポート93に接続され、ドレーンポート96がオイルパン37に接続されている。さらに、信号圧ポート94に信号圧を入力するソレノイドバルブ98が設けられている。このソレノイドバルブ98はベルト式無段変速機5の伝達トルクに基づいて信号圧が制御される。具体的には、伝達路トルクが高くなることに比例して、信号圧を高くする制御が実行される。このように、ソレノイドバルブ98から出力される信号圧は、圧力制御弁89および圧力制御弁111の制御に共用される。
つぎに、油圧制御装置35の具体的な制御を説明する。オイルポンプ38の駆動により油路40に圧油が吐出される。そして、圧力制御弁111により油路40の油圧が調圧される。この実施例では、ソレノイドバルブ98から圧力制御弁111の信号圧ポート116に入力される信号圧が高くなることに比例して、油路40の油圧が上昇する。なお、圧力制御弁111はリリーフ弁としての機能をも有している。すなわち、圧力制御弁111は、油路40のオイルを油路47に排出することで、油路40の油圧上昇を抑制するリリーフ弁として機能し、油路47の油圧は油路40の油圧よりも低圧となる。さらに、油路47の油圧は、ソレノイドバルブ51および圧力制御弁41により制御される。この具体例1では、ソレノイドバルブ51から出力される信号圧が高くなることに比例して、油路47の油圧が上昇する。なお、圧力制御弁41は、油路47のオイルを油路103に排出することで、油路47の油圧上昇を抑制するリリーフ弁として機能し、油路103の油圧は油路47の油圧よりも低圧となる。
このようにして、油路47の油圧が制御され、その油路47の圧油が、ロックアプコントロールバルブ48を経由して、コンバータ油室11および係合用油圧室14および解放用油圧室15に供給される。ここで、ソレノイドバルブ57の信号圧の制御、ロックアプコントロールバルブ48の切替動作、ロックアップクラッチ13を係合および解放させる制御について説明する。まず、ロックアップクラッチ13を係合させる条件が成立した場合は、ソレノイドバルブ57から出力される信号圧が高圧に制御される。すると、ロックアップコントロールバルブ48の切替動作により、入力ポート49の圧油がコンバータ油室11および係合用油圧室14に供給されるとともに、入力ポート50の圧油が、解放用油圧室15に供給される。ここで、油路49からオリフィス55を通過して入力ポート50に供給される圧油の油圧は、油路49の油圧よりも低い。このようにして、係合用油圧室14の油圧の方が、解放用油圧室15の油圧よりも高くなり、ロックアップクラッチ13が係合される。
これに対して、ロックアップクラッチ13を解放させる条件が成立した場合は、ソレノイドバルブ57から出力される信号圧が低圧に制御される。すると、ロックアプコントロールバルブ48の切替動作により、入力ポート49の圧油が解放用油圧室15に供給され、かつ、入力ポート50の圧油が、コンバータ油室11および係合用油圧室14に供給される。このようにして、係合用油圧室14の油圧の方が、解放用油圧室15の油圧よりも低下し、ロックアップクラッチ13が解放される。なお、ロックアップクラッチ13を係合させる場合において、その伝達トルクは、油路47を経由して係合用油圧室14に供給される圧油の油圧により決定される。すなわち、ソレノイドバルブ57の信号圧を制御することにより、ロックアップクラッチ13の伝達トルクが制御される。この場合、ロックアップクラッチ13を完全係合させること、またはロックアップクラッチ13をスリップ制御すること(摩擦材に滑りを生じさせること)が可能である。なお、油路103でオリフィス55を通過した圧油の一部は、潤滑系統56に供給される。
つぎに、切替弁62の切替動作、マニュアルバルブ99の切替動作、前後進切換装置4の制御について説明する。油路40の圧油は、圧力制御弁42により調圧されて油路61に供給される。この油路61の油圧は油路47の油圧よりも高圧に制御されている。これは、前述のように、圧力制御弁41,42の圧力制御特性が異なるからである。また、圧力制御弁42は減圧弁として機能しており、油路61の油圧は油路40の油圧よりも低圧である。そして、ロックアップクラッチ13を係合させる条件が成立している場合と、ロックアップクラッチ13を解放させる条件が成立している場合とで、切替弁62の切替がおこなわれる。
まず、ロックアップクラッチ13を係合させる条件が成立した場合は、ソレノイドバルブ57から出力され、かつ、切替弁62の信号圧ポート67に入力される信号圧が増加する。すると、切替弁62では入力ポート64が遮断され、かつ、入力ポート63と出力ポート65とが接続される。すなわち、油路47の低油圧が、切替弁62を経由して油路100に供給される。これに対して、ロックアップクラッチ13を解放させる条件が成立した場合は、ソレノイドバルブ57から出力され、かつ、切替弁62の信号圧ポート67に入力される信号圧が低下する。すると、切替弁62の入力ポート63が遮断され、かつ、入力ポート64と出力ポート65とが接続される。すなわち、油路61の高油圧が、切替弁62を経由して油路100に供給される。
このようにして、油路47または油路61の何れか一方の圧油が、油路100に供給される。ところで、マニュアルバルブ99は、選択されるシフトポジションによって動作が切り替えられる。まず、ドライブポジションが選択された場合は、入力ポート69と出力ポート70とが接続され、出力ポート71がドレーンポート72に接続される。すると、切替弁62から供給される圧油が、クラッチ用油圧室24に供給されてその油圧が高まる一方、ブレーキ用油圧室25の油圧が低下する。その結果、前進用クラッチ22が係合され、かつ、後進用ブレーキ23が解放される。これに対して、リバースポジションが選択された場合は、入力ポート69と出力ポート71とが接続され、出力ポート70がドレーンポート72に接続される。すると、切替弁62から供給される圧油が、ブレーキ用油圧室25に供給されてその油圧が高まる一方、クラッチ用油圧室24の油圧が低下する。その結果、前進用クラッチ22が解放され、かつ、後進用ブレーキ23が係合される。なお、ニュートラルポジションまたはパーキングポジションが選択された場合は、出力ポート70,71が共にドレーンポート72に接続され、入力ポート69が遮断される。すると、クラッチ用油圧室24およびブレーキ用油圧室25の油圧が共に低下し、前進用クラッチ22および後進用ブレーキ23が共に解放される。
ところで、この実施例ではロックアップクラッチ13が解放された場合は、トルクコンバータ3において、ステータ12の働きによりトルクの増幅がおこなわれる。これに対して、ロックアップクラッチ13が係合された場合は、トルクコンバータ3でトルクの増幅はおこなわれない。一方、この実施例では、エンジン2から車輪33に至る動力伝達経路において、トルクコンバータ3よりも下流側に前後進切換装置4が配置されている。このため、トルクコンバータ3でトルク増幅がおこなわれた場合、前後進切換装置4に伝達されるトルクは、トルクコンバータ3でトルク増幅がおこなわれない場合に、前後進切換装置4に伝達されるトルクよりも高容量となる。そこで、この実施例では、トルクコンバータ3でトルク増幅がおこなわれる場合は、油路61の高油圧が油路100に供給される。したがって、ロックアップクラッチ13が解放され、かつ、トルクコンバータ3でトルク増幅がおこなわれて、前後進切換装置4で伝達するトルクが高まった場合に、前進用クラッチ22または後進用ブレーキ23のトルク容量不足および滑りを回避でき、その耐久性の低下を抑制できる。
つぎに、ベルト式無段変速機5における変速比の制御および伝達トルクの制御について説明する。まず、ベルト式無段変速機5の変速比を大きくする条件が成立(ダウンシフト条件が成立)した場合について説明する。この場合は、ソレノイド68の信号圧が高められて、圧力制御弁73の出力ポート77の開口面積が減少させられる。すなわち、油路40から、油路80を経由してプライマリ油圧室29に供給される圧油の流量が減少される。また、この制御と並行して、ソレノイドバルブ88の信号圧が低下されて、ドレーンポート85の開口面積が拡大される。したがって、プライマリ油圧室29の圧油が、油路80およびドレーンポート85を経由してオイルパン37にドレーンされて、プライマリ油圧室29の油圧が低下する。このようにして、プライマリプーリ27からベルト36に加えられる挟圧力が低下し、プライマリプーリ27におけるベルト36の巻き掛け半径が小さくなり、ベルト式無段変速機5の変速比が大きくなる。
また、ソレノイドバルブ68の信号圧が、予め定められた所定圧よりも高くなった場合は、ソレノイドバルブ57の信号圧が高圧であるとしても、切替弁62の動作により、油路61の高油圧が油路100に供給され、入力ポート63が遮断される。すなわち、アクセルペダルが急激に踏み込まれてベルト式無段変速機5のダウンシフトを実行する場合のように、エンジントルクを増加するような制御が実行された場合は、ロックアップクラッチ13が係合された状態であっても、前後進切換装置4で伝達するトルクが高まる(もしくは伝達トルクに変動が生じる)。このような場合でも、この実施例では前進用クラッチ22または後進用ブレーキ23のトルク容量不足および滑りを回避できる。
つぎに、ベルト式無段変速機5の変速比を小さくする条件が成立(アップシフト条件が成立)した場合について説明する。この場合は、ソレノイド68の信号圧が低下されて、圧力制御弁73の出力ポート77の開口面積が拡大される。すなわち、油路40から、油路80を経由してプライマリ油圧室29に供給される圧油の流量が増加する。また、この制御と並行して、ソレノイドバルブ88の信号圧が低下させられて、ドレーンポート85が閉じられる。このようにして、プライマリ油圧室29の油圧が上昇する。その結果、プライマリプーリ27からベルト36に加えられる挟圧力が高められ、プライマリプーリ27におけるベルト36の巻き掛け半径が大きくなり、ベルト式無段変速機5の変速比が小さくなる。なお、油圧室29に一定量の圧油を保持すると、プライマリプーリ27におけるベルト36の巻き掛け半径が一定に維持され、変速比が略一定となる。
さらに、ベルト式無段変速機5のトルク容量(伝達トルク)の制御について説明する。ベルト式無段変速機5のトルク容量を高める場合は、ソレノイドバルブ98の信号圧が高められて、油路40から油路97を経由してセカンダリ油圧室30に供給される圧油の油圧を高める制御が実行される。その結果、セカンダリプーリ28からベルト36に加えられる挟圧力が高まり、トルク容量が増加する。これに対して、ベルト式無段変速機5のトルク容量を低下させる場合は、ソレノイドバルブ98の信号圧が低下されて、油路40から油路97を経由してセカンダリ油圧室30に供給される圧油の油圧を低下させる制御が実行される。その結果、セカンダリプーリ28からベルト36に加えられる挟圧力が低下し、トルク容量が低下する。なお、ソレノイドバルブ98の信号圧を略一定に制御すると、セカンダリ油圧室30の油圧が略一定に制御されて、トルク容量が略一定となる。
以上のように、図1に示された構成の油圧制御装置35によれば、2つの圧力制御弁41,42を単一のソレノイドバルブ51を用いて制御するように共用化している。また、切替弁62の動作を切り替えることにより、油路61の高油圧または油路47の低油圧のいずれかを、選択的にクラッチ用油圧室24およびブレーキ用油圧室25に供給することができる。そして、油路61の高油圧、または油路47の低油圧のいずれをクラッチ用油圧室24およびブレーキ用油圧室25に供給する場合であっても、油路47の低油圧がコンバータ油室11に供給される。つまり、クラッチ用油圧室24およびブレーキ用油圧室25には高油圧が供給されるが、コンバータ油室11に高油圧を供給せずに済み、オイルポンプ38の駆動負荷が増加することを抑制でき、その動力損失の増加を抑制できる。また、コンバータ油室11に供給する圧油の油圧制御と、油路100に供給する圧油の油圧制御とを別個におこなうことができるため、コンバータ油室11に供給する圧油の油圧をなるべく低下させることが可能である。したがって、潤滑系統56を経由して作動油の冷却装置に供給される圧油量の増加を抑制できる。さらに、ソレノイドバルブ57,68の信号圧が共に低圧である場合は、油路47の低油圧を、クラッチ用油圧室24およびブレーキ用油圧室25に供給することができる。したがって、これらの油圧室を形成するピストンと、このピストンの周囲に設けられたオイルシールとの摺動抵抗による引き摺り損失を低下させることができる。また、高油圧を供給する箇所が減少するため、オイルポンプ38の吐出容量を低減することができる。
ここで、図1および図2に示された構成と、この発明の構成との対応関係を説明すると、エンジン2が、この発明の動力源に相当し、トルクコンバータ3が、この発明の流体伝動装置に相当し、前後進切換装置4が、この発明の伝達トルク制御機構に相当し、油路61が、この発明の高圧油路に相当し、油路47が、この発明の低圧油路に相当し、ロックアップコントロールバルブ48が、この発明のロックアップコントロール機構に相当し、ソレノイドバルブ57および電子制御装置34が、この発明の第1ソレノイド機構に相当し、切替弁62が、この発明の切替機構に相当し、変速比制御弁73,81が、この発明における流量制御機構に相当し、ソレノイドバルブ68および電子制御装置34が、この発明の第2ソレノイド機構に相当し、オイルポンプ38が、この発明の圧油供給源に相当し、プライマリ油圧室29が、この発明のプーリ用油圧室に相当する。また、「ベルト式無段変速機5の変速比を大きくする(ダウンシフトをおこなうなう)」が、この発明の「プライマリ油圧室から排出される圧油の流量を、予め定められた所定量よりも多くする」に相当する。さらに、「ベルト式無段変速機5の変速比を小さくする(アップシフトをおこなうなう場合)、または変速比を一定に制御する」が、この発明の「プーリ用油圧室から排出される圧油の流量を、予め定められた所定量以下に減少させる」に相当する。
(具体例2)
つぎに、図2に示された油圧制御装置35の他の具体例を、図3に基づいて説明する。この図3において、図1の構成と同じ構成部分については、図1と同じ符号を付してある。この図3の油圧制御装置35は、第2の油圧制御装置に対応するものである。この具体例2においては、前述の圧力制御弁42が設けられていない点が、具体例1と相違する。そして、油路40の圧油が、直接に切替弁62の入力ポート64に供給される。つまり、油路40および入力ポート64の油圧は同じ値となる。また、具体例1で説明したソレノイドバルブ51も、具体例2では設けられていない。そして、ソレノイドバルブ98の信号圧が、圧力制御弁41の信号圧ポート46に入力される構成となっている。この圧力制御弁41は、信号圧ポート46に入力される信号圧が高くなることに比例して、油路47油圧が上昇する構成を有している。この圧力制御弁41は、油路47の圧油を油路103に排出するリリーフ弁であり、油路47の油圧よりも油路103の油圧の方が低圧となる。
この図3に示された油圧制御装置35においても、図1と同様の構成部分については、図1の場合と同様の機能、制御、作用効果が発生する。特に、この図3の油圧制御装置35において、ソレノイドバルブ68の信号圧が、予め定められた所定圧以下(低圧)である場合について説明する。まず、ロックアップクラッチ13を解放させるために、ソレノイドバルブ57から信号圧ポート67に入力される信号圧が低圧であり、かつ、信号圧ポート66に入力される信号圧が低圧である場合は、具体例1の場合と同様に、切替弁62の入力ポート64と出力ポート65とが接続され、入力ポート63が遮断される。このため、油路40の高油圧が、クラッチ用油圧室24またはブレーキ用油圧室25に供給される。これに対して、ロックアップクラッチ13を係合させるためにソレノイドバルブ57の信号圧が高められ、かつ、信号圧ポート66に入力される信号圧が低圧である場合は、具体例1の場合と同様に、切替弁62の入力ポート63と出力ポート65とが接続され、入力ポート64が遮断される。このため、油路47の低油圧が、クラッチ用油圧室24またはブレーキ用油圧室25に供給される。したがって、具体例1の場合と同様に前進用クラッチ22または後進用ブレーキ23の滑りを回避できる。
つぎに、ソレノイドバルブ57の信号圧が高圧である場合について説明する。まず、ベルト式無段変速機5の変速比を大きくする制御をおこなう場合、ソレノイドバルブ68の信号圧が、予め定められた所定圧(しきい値)以上に高められて、プライマリ油圧室29から排出される圧油の流量が、予め定められた所定量(しきい値)よりも多くなる。このとき、ソレノイドバルブ68の信号油圧が、予め定められた所定圧以上に高められると、切替弁62の入力ポート64と出力ポート65とが接続され、入力ポート63が遮断される。その結果、油路40の圧油が油路100を経てクラッチ用油圧室24またはブレーキ用油圧室25に供給される。
これに対して、ソレノイドバルブ68の信号圧が、予め定められた所定圧(しきい値)以下に低下されて、プライマリ油圧室29から排出される圧油の流量が減少するとともに、かつ、ソレノイドバルブ57の信号圧が、予め定められた所定圧よりも低下された場合は、バネ62Bの押圧力でスプール62Aが動作して、切替弁62の入力ポート63と出力ポート65とが接続され、入力ポート64が遮断される。その結果、油路47の圧油が、油路100を経てクラッチ用油圧室24またはブレーキ用油圧室25に供給される。このように、具体例2においては、プライマリ油圧室29から排出される圧油の流量に基づいて、油路40の圧油または油路47の圧油が選択的に油路100に供給される。なお、ソレノイドバルブ57,68の信号圧が共に高められた場合は、信号圧ポート66の信号圧による押圧力と、信号圧ポート67の信号圧による押圧力とが相殺されて、バネ62Bの押圧力でスプール62Aが動作する。その結果、入力ポート64と出力ポート65とが接続され、入力ポート63が遮断される。さらに、ソレノイドバルブ57,68の信号圧が共に低圧である場合は、油路47の低油圧を、クラッチ用油圧室24およびブレーキ用油圧室25に供給することができる。したがって、これらの油圧室をシールするオイルシールと、油圧室を形成するピストンとの摺動抵抗による引き摺り損失を低下させることができる。また、高油圧を供給する箇所が減少するため、オイルポンプ98の吐出容量を低減することができる。このように、具体例2においても、具体例1と同様の効果を得られる。さらに、油路100のシール部分からの圧油漏れを防止できる。ここで、具体例2で説明した構成と、この発明の構成との対応関係を説明すると、油路40が、この発明の高圧油路に相当する。具体例2で説明した他の構成と、この発明の構成との対応関係は、具体例1の構成と、この発明の構成との対応関係と同じである。
なお、この具体例1、2においては、ソレノイドバルブ68が発生する信号油圧により、切替弁62が切り替えられる構成となっているが、ソレノイドバルブ88が発生する信号油圧により、切替弁62が切り替えられる構成とすることも可能である。また、トルクコンバータ3から車輪33に至る経路に、前後進切換装置4およびベルト式無段変速機5が設けられている場合について説明しているが、この発明の油圧制御装置は、トルクコンバータ3から車輪33に至る経路に、遊星歯車機構および摩擦係合装置を有する公知の自動変速機を有する車両にも適用可能である。この場合、摩擦係合装置の係合・解放により自動変速機の変速比が制御されるとともに、摩擦係合装置用の油圧室に供給される圧油の油圧制御により、その自動変速機の入力軸と出力軸との間における伝達トルクが制御される。そして、摩擦係合装置用の油圧室に供給される圧油を、図1に基づいて説明した原理と同じ原理により、高油圧または低油圧に制御可能である。このような構成の場合、自動変速機が伝達トルク制御機構に相当する。
また、この発明は、トルクコンバータ3に代えて、トルク増幅機能を有しない流体継手を用いた車両にも適用可能である。さらに、この発明は、エンジン2から車輪33に至る経路に、ロックアップクラッチ、前後進切換装置、ベルト式無段変速機が直列に配置されている車両に適用可能であり、動力の伝達方向における配置位置は問われない。すなわち、ロックアップクラッチと前後進切換装置との間にベルト式無段変速機が設けられた構成のドライブトレーン、ベルト式無段変速機と前後進切換装置との間にロックアップクラッチが設けられた構成のドライブトレーンなどにも適用可能である。さらに、ベルト式無段変速機に代えて、他の無段変速機、例えばトロイダル式無段変速機を有する車両にも、この発明を適用可能である。
2…エンジン、 3…トルクコンバータ、 4…前後進切換装置、 13…ロックアップクラッチ、 22…前進用クラッチ、 23…後進用ブレーキ、 29…プライマリ油圧室、 33…車輪、 34…電子制御装置、 35…油圧制御装置、 38…オイルポンプ、 48…ロックアップコントロールバルブ、 41…圧力制御弁、 57,68…ソレノイドバルブ、 62…切替弁、 101…係合用油路、 102…解放用油路。