図1は、本発明が適用される車両10の概略構成を説明する図である。図1において、車両10は、走行用の駆動力源として機能するエンジン12と、駆動輪14と、エンジン12と駆動輪14との間に設けられた車両用動力伝達装置16(以下、動力伝達装置16という)とを備えている。動力伝達装置16は、非回転部材としてのハウジング18内において、エンジン12に連結された流体式伝動装置としての公知のトルクコンバータ20、トルクコンバータ20に連結された入力軸22、入力軸22に連結された無段変速機構としての公知のベルト式無段変速機24(以下、無段変速機24)、同じく入力軸22に連結された前後進切替装置26、前後進切替装置26を介して入力軸22に連結されて無段変速機24と並列に設けられた伝動機構としてのギヤ機構28、無段変速機24及びギヤ機構28の共通の出力回転部材である出力軸30、カウンタ軸32、出力軸30及びカウンタ軸32に各々相対回転不能に設けられて噛み合う一対のギヤから成る減速歯車装置34、カウンタ軸32に相対回転不能に設けられたギヤ36に連結されたデフギヤ38、デフギヤ38に連結された1対の車軸40等を備えている。このように構成された動力伝達装置16において、エンジン12の動力(特に区別しない場合にはトルクや力も同義)は、トルクコンバータ20、無段変速機24(或いは前後進切替装置26及びギヤ機構28)、減速歯車装置34、デフギヤ38、及び車軸40等を順次介して1対の駆動輪14へ伝達される。
このように、動力伝達装置16は、エンジン12(ここではエンジン12の動力が伝達される入力回転部材である入力軸22も同意)と駆動輪14(ここでは駆動輪14へエンジン12の動力を出力する出力回転部材である出力軸30も同意)との間に並列に設けられた、無段変速機24及びギヤ機構28を備えている。よって、動力伝達装置16は、エンジン12の動力を入力軸22からギヤ機構28を介して駆動輪14側(すなわち出力軸30)へ伝達する第1動力伝達経路と、エンジン12の動力を入力軸22から無段変速機24を介して駆動輪14側(すなわち出力軸30)へ伝達する第2動力伝達経路とを備え、車両10の走行状態に応じてその第1動力伝達経路とその第2動力伝達経路とが切り替えられるように構成されている。その為、動力伝達装置16は、エンジン12の動力を駆動輪14側へ伝達する動力伝達経路を、前記第1動力伝達経路と前記第2動力伝達経路とで選択的に切り替えるクラッチ機構を備えている。このクラッチ機構は、前記第1動力伝達経路を断接する第1クラッチ(換言すれば係合されることで前記第1動力伝達経路を形成する第1クラッチ)としての前進用クラッチC1及び後進用ブレーキB1と、前記第2動力伝達経路を断接する第2クラッチ(換言すれば、係合されることで前記第2動力伝達経路を形成する第2クラッチ)としてのCVT走行用クラッチC2とを含んでいる。前進用クラッチC1、後進用ブレーキB1、及びCVT走行用クラッチC2は、断接装置に相当するものであり、何れも油圧アクチュエータによって摩擦係合させられる公知の油圧式摩擦係合装置(摩擦クラッチ)である。又、前進用クラッチC1及び後進用ブレーキB1は、各々、後述するように、前後進切替装置26を構成する要素の1つである。
トルクコンバータ20は、エンジン12と入力軸22との間の動力伝達経路に介在させられて、入力軸22回りにその入力軸22に対して同軸心に設けられており、エンジン12に連結されたポンプ翼車20p、及び入力軸22に連結されたタービン翼車20tを備えている。又、ポンプ翼車20p及びタービン翼車20tの間には、それらの間すなわちトルクコンバータ20の入出力回転部材間を直結可能なロックアップクラッチCluが設けられている。又、ポンプ翼車20pには、無段変速機24を変速制御したり、無段変速機24におけるベルト挟圧力を発生させたり、ロックアップクラッチCluの作動を制御したり、前記クラッチ機構の各々の作動を切り替えたり、動力伝達装置16の動力伝達経路の各部に潤滑油を供給したりする為の作動油圧をエンジン12により回転駆動されることにより発生する機械式のオイルポンプ42が連結されている。
ロックアップクラッチCluは、良く知られているように、摩擦材を滑らせ差回転が発生する機構を有して、後述する油圧制御回路80(図3,4参照)によって係合側油室20on内の油圧Pluonと解放側油室20off内の油圧Pluoffとの差圧ΔP(=Pluon−Pluoff)が制御されることによりフロントカバー20cに摩擦係合させられる油圧式の摩擦クラッチである。ロックアップクラッチCluの作動状態としては、車両10の走行状態に応じて、ロックアップクラッチCluが解放される所謂ロックアップオフ、ロックアップクラッチCluが滑りを伴って係合される所謂ロックアップスリップ、及びロックアップクラッチCluが完全係合される所謂ロックアップオンの3状態に切り替えられる。
前後進切替装置26は、前記第1動力伝達経路において入力軸22回りにその入力軸22に対して同軸心に設けられており、ダブルピニオン型の遊星歯車装置26p、前進用クラッチC1、及び後進用ブレーキB1を備えている。遊星歯車装置26pは、入力要素としてのキャリヤ26cと、出力要素としてのサンギヤ26sと、反力要素としてのリングギヤ26rとの3つの回転要素を有する差動機構である。キャリヤ26cは入力軸22に一体的に連結され、リングギヤ26rは後進用ブレーキB1を介してハウジング18に選択的に連結され、サンギヤ26sは入力軸22回りにその入力軸22に対して同軸心に相対回転可能に設けられた小径ギヤ44に連結されている。又、キャリヤ26cとサンギヤ26sとは、前進用クラッチC1を介して選択的に連結される。よって、前進用クラッチC1は、前記3つの回転要素のうちの2つの回転要素を選択的に連結するクラッチ機構であり、後進用ブレーキB1は、前記反力要素をハウジング18に選択的に連結するクラッチ機構である。
ギヤ機構28は、小径ギヤ44と、ギヤ機構カウンタ軸46回りにそのギヤ機構カウンタ軸46に対して同軸心に相対回転不能に設けられてその小径ギヤ44と噛み合う大径ギヤ48とを備えている。又、ギヤ機構28は、ギヤ機構カウンタ軸46回りにそのギヤ機構カウンタ軸46に対して同軸心に相対回転可能に設けられたアイドラギヤ50と、出力軸30回りにその出力軸30に対して同軸心に相対回転不能に設けられてそのアイドラギヤ50と噛み合う出力ギヤ52とを備えている。出力ギヤ52は、アイドラギヤ50よりも大径である。従って、ギヤ機構28は、入力軸22と出力軸30との間の動力伝達経路において、所定のギヤ比(ギヤ段)としての1つのギヤ比(ギヤ段)が形成される伝動機構である。ギヤ機構カウンタ軸46回りには、更に、大径ギヤ48とアイドラギヤ50との間に、これらの間を選択的に断接する噛合式クラッチD1が設けられている。噛合式クラッチD1は、前後進切替装置26(前記第1クラッチも同意)と出力軸30との間の動力伝達経路に配設された、前記第1クラッチと共に係合されることで前記第1動力伝達経路を形成する第3クラッチとして機能するものであり、前記クラッチ機構に含まれる。
具体的には、噛合式クラッチD1は、ギヤ機構カウンタ軸46回りにそのギヤ機構カウンタ軸46に対して同軸心に相対回転不能に設けられたクラッチハブ54と、アイドラギヤ50とクラッチハブ54との間に配置されてそのアイドラギヤ50に固設されたクラッチギヤ56と、クラッチハブ54に対してスプライン嵌合されることによりギヤ機構カウンタ軸46の軸心回りの相対回転不能且つその軸心と平行な方向の相対移動可能に設けられた円筒状のスリーブ58とを備えている。クラッチハブ54の外周面の外周歯とスプライン嵌合される、スリーブ58の内周面の内周歯は、スリーブ58がクラッチギヤ56側へ移動させられることで、クラッチギヤ56の外周歯と噛み合わされる。クラッチハブ54と常に一体的に回転させられるスリーブ58がクラッチギヤ56と噛み合わされることで、アイドラギヤ50とギヤ機構カウンタ軸46とが接続される。更に、噛合式クラッチD1は、スリーブ58とクラッチギヤ56とを嵌合する際に回転を同期させる、同期機構としての公知のシンクロメッシュ機構S1を備えている。このように構成された噛合式クラッチD1では、フォークシャフト60がアクチュエータ62によって作動させられることにより、フォークシャフト60に固設されたシフトフォーク64を介してスリーブ58がギヤ機構カウンタ軸46の軸心と平行な方向に摺動させられ、係合状態と解放状態とが切り替えられる。
動力伝達装置16では、前記第1動力伝達経路において、前進用クラッチC1(又は後進用ブレーキB1)と噛合式クラッチD1とが共に係合されることで、前進用動力伝達経路(又は後進用動力伝達経路)が成立(形成)させられて、エンジン12の動力が入力軸22からギヤ機構28を経由して出力軸30へ伝達される。動力伝達装置16では、少なくとも前進用クラッチC1及び後進用ブレーキB1が共に解放されるか、或いは少なくとも噛合式クラッチD1が解放されると、前記第1動力伝達経路は動力伝達を遮断するニュートラル状態(動力伝達遮断状態)とされる。
無段変速機24は、入力軸22と出力軸30との間の動力伝達経路上に設けられている。無段変速機24は、入力軸22に設けられた有効径が可変のプライマリプーリ66と、出力軸30と同軸心の回転軸68に設けられた有効径が可変のセカンダリプーリ70と、その一対のプーリ66,70の間に巻き掛けられた伝動ベルト72とを備え、一対のプーリ66,70と伝動ベルト72との間の摩擦力を介して動力伝達が行われる。無段変速機24では、一対のプーリ66,70のV溝幅が変化して伝動ベルト72の掛かり径(有効径)が変更されることで、変速比(ギヤ比)γ(=入力軸回転速度Nin/出力軸回転速度Nout)が連続的に変化させられる。CVT走行用クラッチC2は、無段変速機24よりも駆動輪14側に設けられており(すなわちセカンダリプーリ70と出力軸30との間に設けられており)、セカンダリプーリ70(回転軸68)と出力軸30との間を選択的に断接する。動力伝達装置16では、前記第2動力伝達経路において、CVT走行用クラッチC2が係合されることで、動力伝達経路が成立させられて、エンジン12の動力が入力軸22から無段変速機24を経由して出力軸30へ伝達される。動力伝達装置16では、CVT走行用クラッチC2が解放されると、前記第2動力伝達経路はニュートラル状態とされる。
動力伝達装置16の作動について、以下に説明する。図2は、動力伝達装置16の各走行パターン(走行モード)毎の係合要素の係合表を用いて、その走行パターンの切り替わりを説明する為の図である。図2において、C1は前進用クラッチC1の作動状態に対応し、C2はCVT走行用クラッチC2の作動状態に対応し、B1は後進用ブレーキB1の作動状態に対応し、D1は噛合式クラッチD1の作動状態に対応し、「○」は係合(接続)を示し、「×」は解放(遮断)を示している。
先ず、ギヤ機構28を介してエンジン12の動力が出力軸30に伝達される走行パターン(すなわち第1動力伝達経路を通って動力が伝達される走行パターン)であるギヤ走行について説明する。このギヤ走行では、図2に示すように、例えば前進用クラッチC1及び噛合式クラッチD1が係合される一方、CVT走行用クラッチC2及び後進用ブレーキB1が解放される。
具体的には、前進用クラッチC1が係合されると、前後進切替装置26を構成する遊星歯車装置26pが一体回転させられるので、小径ギヤ44が入力軸22と同回転速度で回転させられる。又、小径ギヤ44はギヤ機構カウンタ軸46に設けられている大径ギヤ48と噛み合わされているので、ギヤ機構カウンタ軸46も同様に回転させられる。更に、噛合式クラッチD1が係合されているので、ギヤ機構カウンタ軸46とアイドラギヤ50とが接続される。このアイドラギヤ50は出力ギヤ52と噛み合わされているので、出力ギヤ52と一体的に設けられている出力軸30が回転させられる。このように、前進用クラッチC1及び噛合式クラッチD1が係合されると、エンジン12の動力は、トルクコンバータ20、前後進切替装置26、ギヤ機構28等を順次介して出力軸30に伝達される。尚、このギヤ走行では、例えば後進用ブレーキB1及び噛合式クラッチD1が係合される一方、CVT走行用クラッチC2及び前進用クラッチC1が解放されると、後進走行が可能となる。
次いで、無段変速機24を介してエンジン12の動力が出力軸30に伝達される走行パターン(すなわち第2動力伝達経路を通って動力が伝達される走行パターン)であるCVT走行(無段変速走行)について説明する。このCVT走行では、図2のCVT走行(高車速)に示すように、例えばCVT走行用クラッチC2が係合される一方、前進用クラッチC1、後進用ブレーキB1、及び噛合式クラッチD1が解放される。
具体的には、CVT走行用クラッチC2が係合されると、セカンダリプーリ70と出力軸30とが接続されるので、セカンダリプーリ70と出力軸30とが一体回転させられる。このように、CVT走行用クラッチC2が係合されると、エンジン12の動力は、トルクコンバータ20及び無段変速機24等を順次介して出力軸30に伝達される。このCVT走行(高車速)中に噛合式クラッチD1が解放されるのは、例えばCVT走行中のギヤ機構28等の引き摺りをなくすと共に、高車速においてギヤ機構28や遊星歯車装置26pの構成部材(例えばピニオンギヤ)等が高回転化するのを防止する為である。
前記ギヤ走行は、例えば車両停止中を含む低車速領域において選択される。前記第1動力伝達経路において形成されるギヤ比γ1(すなわちギヤ機構28により形成されるギヤ比EL)は、前記第2動力伝達経路において形成できる最大ギヤ比(すなわち無段変速機24により形成される最低車速側のギヤ比である最ローギヤ比)γmaxよりも大きな値(すなわちロー側のギヤ比)に設定されている。例えばギヤ比γ1は、動力伝達装置16における第1速ギヤ段のギヤ比である第1速ギヤ比γ1に相当し、無段変速機24の最ローギヤ比γmaxは、動力伝達装置16における第2速ギヤ段のギヤ比である第2速ギヤ比γ2に相当する。その為、例えばギヤ走行とCVT走行とは、公知の有段変速機の変速マップにおける第1速ギヤ段と第2速ギヤ段とを切り替える為の変速線に従って切り替えられる。又、例えばCVT走行においては、公知の手法を用いて、アクセル開度、車速などの走行状態に基づいてギヤ比γが変化させられる変速(例えばCVT変速、無段変速)が実行される。ここで、ギヤ走行からCVT走行(高車速)、或いはCVT走行(高車速)からギヤ走行へ切り替える際には、図2に示すように、CVT走行(中車速)を過渡的に経由して切り替えられる。
例えばギヤ走行からCVT走行(高車速)へ切り替えられる場合、ギヤ走行に対応する前進用クラッチC1及び噛合式クラッチD1が係合された状態から、CVT走行用クラッチC2及び噛合式クラッチD1が係合された状態であるCVT走行(中車速)に過渡的に切り替えられる。すなわち、前進用クラッチC1を解放してCVT走行用クラッチC2を係合するようにクラッチを掛け替える変速(例えばクラッチツゥクラッチ変速(以下、CtoC変速という))が実行される。このとき、動力伝達経路は前記第1動力伝達経路から前記第2動力伝達経路へ切り替えられ、動力伝達装置16においては実質的にアップシフトさせられる。そして、動力伝達経路が切り替えられた後、ギヤ機構28等の不要な引き摺りや遊星歯車装置26pにおける高回転化を防止する為に噛合式クラッチD1が解放される(図2の被駆動入力遮断参照)。このように噛合式クラッチD1は、駆動輪14側からの入力を遮断する被駆動入力遮断クラッチとして機能する。
又、例えばCVT走行(高車速)からギヤ走行へ切り替えられる場合、CVT走行用クラッチC2が係合された状態から、ギヤ走行への切替準備として更に噛合式クラッチD1が係合される状態であるCVT走行(中車速)に過渡的に切り替えられる(図2のダウンシフト準備参照)。このCVT走行(中車速)では、ギヤ機構28を介して遊星歯車装置26pのサンギヤ26sにも回転が伝達された状態となる。このCVT走行(中車速)の状態からCVT走行用クラッチC2を解放して前進用クラッチC1を係合するようにクラッチを掛け替える変速(例えばCtoC変速)が実行されると、ギヤ走行へ切り替えられる。このとき、動力伝達経路は前記第2動力伝達経路から前記第1動力伝達経路へ切り替えられ、動力伝達装置16においては実質的にダウンシフトさせられる。
ここで、入力軸22と出力軸30との間に無段変速機24及びギヤ機構28を並列に備える動力伝達装置16では、エンジンの動力がトルクコンバータ、前後進切替装置、無段変速機、出力軸等を順次介して駆動輪へ伝達されるような、ギヤ機構28を備えない動力伝達装置と比べて、過渡状態の制御も必要な油圧制御対象である、噛合式クラッチD1やCVT走行用クラッチC2が追加されており、噛合式クラッチD1やCVT走行用クラッチC2の各制御用に過渡状態の油圧を制御できるリニアソレノイド弁が必要となる。ギヤ走行とCVT走行(中車速)との切替えではCVT走行用クラッチC2と前進用クラッチC1との間でCtoC変速が実行されたり、車両10の走行状態に応じてロックアップクラッチCluの作動状態を切り替えたりすることなどを考慮すれば、過渡状態の制御も必要な油圧制御対象毎に各制御用のリニアソレノイド弁を備えることが考えられる。このことは、動力伝達装置16が備える油圧制御回路80の質量増加や搭載性悪化につながる恐れがある。
これに対して、噛合式クラッチD1とロックアップクラッチCluとは過渡状態を制御する場面(走行状態)が異なることに着眼し、噛合式クラッチD1とロックアップクラッチCluとの各制御用のリニアソレノイド弁を共用できることを見出した。本実施例は、質量増加や搭載性悪化を抑制できる、動力伝達装置16の油圧制御回路80を提案する。
図3は、噛合式クラッチD1とロックアップクラッチCluとの各制御用のリニアソレノイド弁を共用する構成を説明する為の油圧制御回路80の一部を示す図である。図3において、第2ライン油圧Pl2は、例えば第1ライン油圧の調圧の為に後述のプライマリレギュレータ弁から排出された油圧を元圧として、例えば不図示のリリーフ型のセカンダリレギュレータ弁により所定のリニアソレノイド弁の出力油圧に基づいて調圧された油圧である。又、モジュレータ油圧Pmは、例えば第1ライン油圧を元圧として不図示のモジュレータ弁により所定のリニアソレノイド弁の出力油圧に基づいて一定油圧に調圧された油圧である。上記第1ライン油圧は、例えばオイルポンプ42から出力(発生)される作動油圧を元圧として、例えば不図示のリリーフ型のプライマリレギュレータ弁により所定のリニアソレノイド弁の出力油圧に基づいて入力トルクTin(入力軸22上のトルク)等に応じた値に調圧された油圧である。又、アクチュエータ62は、サーボピストン62aに付与されるリターンスプリング62bの付勢力により、スリーブ58を解放側へ押し付ける押付力を、サーボピストン62aに固設されたフォークシャフト60、及びシフトフォーク64を介してスリーブ58に常時作用させる。アクチュエータ62は、油圧Pd1が油室62cに供給されることで発生させられる上記付勢力に対抗するサーボピストン62aの押圧力により、上記押付力に対抗してスリーブ58を係合側へ移動させる係合力をフォークシャフト60及びシフトフォーク64を介してスリーブ58に作用させる。
油圧制御回路80は、リニアソレノイド弁SLUと、シンクロメッシュ制御弁82と、ロックアップクラッチ制御弁84と、第1切替弁86と、第2切替弁88と、第1切替用ソレノイド弁としてのオンオフソレノイド弁SGと、第2切替用ソレノイド弁としてのオンオフソレノイド弁SLとを備えている。
リニアソレノイド弁SLUは、後述する電子制御装置100(図4参照)からの指令に従って、モジュレータ油圧Pmを元圧として出力油圧Psluを出力(供給)する。例えば、リニアソレノイド弁SLUは、モジュレータ油圧Pmを減圧して出力油圧Psluを出力する電磁制御弁であって、電子制御装置100から供給される油圧指令値Ssluに対応する駆動電流(励磁電流)Isluに比例した出力油圧Psluを発生する。
シンクロメッシュ制御弁82は、シンクロメッシュ機構S1を作動させる油圧アクチュエータであるアクチュエータ62へモジュレータ油圧Pmを元圧として制御油圧Pcond1に基づいて調圧した油圧Pd1を出力したり、制御油圧Pcond1に基づいてアクチュエータ62の油室62cを排出油路(例えば大気開放油路)EXへ連通させる。
ロックアップクラッチ制御弁84は、制御油圧Pconluに基づいて、係合側油室20onと解放側油室20offとに対する第2ライン油圧Pl2の供給状態や排出油路(或いはクーラー油路等)との連通状態を切り替えることで、ロックアップクラッチCluへ供給する油圧(Pluon、Pluoff)を制御する。これにより、ロックアップクラッチCluの作動状態が切り替えられる。
第1切替弁86は、スプリングSP、第1入力ポートPin1、第2入力ポートPin2、排出ポートPex、第1,第2入力ポートPin1,Pin2と択一的に連通する第1出力ポートPout1、及び第1入力ポートPin1及び排出ポートPexと択一的に連通する第2出力ポートPout2を有している。第1切替弁86は、バルブボデー内において、所定の移動ストロークで摺動可能に収容され且つスプリングSPによって一方向に付勢されたスプール弁子を備え、そのスプール弁子が摺動ストロークの一端及び他端へ移動させられることに応じて、第1入力ポートPin1と第1出力ポートPout1とを連通させ且つ排出ポートPexと第2出力ポートPout2とを連通させるか、或いは第2入力ポートPin2と第1出力ポートPout1とを連通させ且つ第1入力ポートPin1と第2出力ポートPout2とを連通させる型式の良く知られたスプール弁により構成されている。第1入力ポートPin1には、リニアソレノイド弁SLUの出力油圧Psluが供給される第1油路90が接続される。第2入力ポートPin2には、モジュレータ油圧Pmが供給される定圧油路92が接続される。排出ポートPexには、排出油路EXが接続される。第1出力ポートPout1には、シンクロメッシュ制御弁82に対する制御油圧Pcond1を供給する第2油路94が接続される。第2出力ポートPout2には、ロックアップクラッチ制御弁84に対する制御油圧Pconluを供給する第3油路96が接続される。
第2切替弁88は、スプリングSP、第1入力ポートPin1、第2入力ポートPin2、及び第1,第2入力ポートPin1,Pin2と択一的に連通する出力ポートPoutを有している。第2切替弁88は、バルブボデー内において、所定の移動ストロークで摺動可能に収容され且つスプリングSPによって一方向に付勢されたスプール弁子を備え、そのスプール弁子が摺動ストロークの一端及び他端へ移動させられることに応じて、出力ポートPoutを第1入力ポートPin1及び第2入力ポートPin2のうちの一方又は他方と択一的に連通させる型式の良く知られたスプール弁により構成されている。第2切替弁88は、第3油路96中に介在させられており、スプール弁子が何れか一方の端へ移動させられることで第3油路96を形成する。第1入力ポートPin1は、第1切替弁86の第2出力ポートPout2と接続される。第1入力ポートPin1には、第3油路96中の第1切替弁86側の油路96aが接続される。このことは、第1切替弁86の第2出力ポートPout2には、油路96aが接続されるということである。第2入力ポートPin2には、定圧油路92が接続される。出力ポートPoutには、第3油路96中のロックアップクラッチ制御弁84側の油路96bが接続される。
このように構成された第1切替弁86及び第2切替弁88において、第1切替弁86は、第1油路90を第2油路94へ接続する弁位置(実線に示すOFF側位置参照)と、第1油路90を第3油路96(特には96a)へ接続する弁位置(破線に示すON側位置参照)とが択一的に切り替えられる。第1切替弁86は、第1油路90を第2油路94へ接続する弁位置へ切り替えられている状態では、油路96aを排出油路EXへ接続し、第1油路90を第3油路96へ接続する弁位置へ切り替えられている状態では、第2油路94を定圧油路92へ接続する。第2切替弁88は、第3油路96を形成する弁位置(実線に示すOFF側位置参照)と、定圧油路92を油路96bへ接続する弁位置(破線に示すON側位置参照)とが択一的に切り替えられる。従って、油圧制御回路80では、制御油圧Pcond1として、出力油圧Pslu及びモジュレータ油圧Pmの何れか一方の油圧が供給される。モジュレータ油圧Pmを減圧した出力油圧Psluは噛合式クラッチD1を係合させる為の制御油圧Pcond1となり得るので、定圧油路92は噛合式クラッチD1が係合される制御油圧Pcond1以上の大きさの油圧が供給される油路である。又、油圧制御回路80では、制御油圧Pconluとして、出力油圧Pslu及びモジュレータ油圧Pmの何れか一方の油圧が供給される。モジュレータ油圧Pmを減圧した出力油圧PsluはロックアップクラッチCluを係合させる為の制御油圧Pconluとなり得るので、定圧油路92はロックアップクラッチCluが係合される制御油圧Pconlu以上の大きさの油圧が供給される油路でもある。
オンオフソレノイド弁SGは、電子制御装置100(図4参照)からの指令に従って、モジュレータ油圧Pmを元圧として切替油圧Pon1を第1切替弁86へ出力(供給)することで、第1切替弁86の弁位置を切り替える。第1切替弁86のスプリングSPは、第1切替弁86をOFF側位置(実線参照)に切り替える為の付勢力を発生する。切替油圧Pon1は、スプリングSPの付勢力に抗して、そのスプリングSPの付勢力により生じる切替方向とは反対方向へ第1切替弁86を切り替える為の推力が生じるように、第1切替弁86に作用させられており、第1切替弁86をON側位置(破線参照)に切り替える為の油圧である。
オンオフソレノイド弁SLは、電子制御装置100(図4参照)からの指令に従って、モジュレータ油圧Pmを元圧として切替油圧Pon2を第2切替弁88へ出力(供給)することで、第2切替弁88の弁位置を切り替える。第2切替弁88のスプリングSPは、第2切替弁88をOFF側位置(実線参照)に切り替える為の付勢力を発生する。切替油圧Pon2は、スプリングSPの付勢力に抗して、そのスプリングSPの付勢力により生じる切替方向とは反対方向へ第2切替弁88を切り替える為の推力が生じるように、第2切替弁88に作用させられており、第2切替弁88をON側位置(破線参照)に切り替える為の油圧である。
図4は、動力伝達装置16における各種制御の為の制御機能及び制御系統の要部を説明する図である。図4において、車両10には、例えば動力伝達装置16の走行パターンを切り替えたり、ロックアップクラッチCluの作動状態を切り替えたりする動力伝達装置16の制御装置(特には油圧制御回路80の油圧制御装置)を含む電子制御装置100が備えられている。電子制御装置100は、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより動力伝達装置16の各種制御を実行する。
電子制御装置100には、車両10が備える各種センサ(例えば各種回転速度センサ102,104,106、アクセル開度センサ80など)による検出信号に基づく各種実際値(例えばエンジン回転速度Ne、タービン回転速度Ntである入力軸回転速度Nin、車速Vに対応する出力軸回転速度Nout、アクセル開度θaccなど)が、それぞれ供給される。又、電子制御装置100からは、エンジン12の出力制御の為のエンジン出力制御指令信号Se、無段変速機24の変速に関する油圧制御の為の油圧制御指令信号Scvt、動力伝達装置16の走行パターンの切替えに関連する前後進切替装置26、CVT走行用クラッチC2、及び噛合式クラッチD1を制御する為の油圧制御指令信号Sswt、ロックアップクラッチCluの作動状態を切り替える為の油圧制御指令信号Slu等が、それぞれ出力される。
図5は、噛合式クラッチD1とロックアップクラッチCluとの各制御用に、リニアソレノイド弁SLUを共用する油圧制御回路80としたことを説明する為の図表である。図5において、「N・ガレージ」は、ニュートラル制御時或いはガレージ制御時を示している。上記ニュートラル制御では、例えば前記第1動力伝達経路が形成された状態での車両停止中に、係合状態とされている噛合式クラッチD1が解放状態とされる。又、上記ニュートラル制御の解除では、解放状態とされた噛合式クラッチD1が係合状態へ復帰させられる。又、上記ガレージ制御では、例えばニュートラル状態での車両停止中にシフトレバーがガレージシフト(N→Dシフト或いはN→Rシフト)されたことに伴い、解放状態とされている噛合式クラッチD1が係合状態とされる。この「N・ガレージ」を含む車両停止時には、上述したように噛合式クラッチD1は係合状態に維持されたり、係合状態と解放状態との間で切り替えられるので、エンジンストールを回避する為にロックアップクラッチCluはロックアップオフに維持される。「低速」は、例えば動力伝達装置16の走行パターンがギヤ走行時或いはCVT走行(中車速)時を示している。この「低速」時には、噛合式クラッチD1は係合状態に維持され、ロックアップクラッチCluは車両10の走行状態に応じて作動状態が切り替えられる。「高速」は、例えば動力伝達装置16の走行パターンがCVT走行(高車速)時を示している。この「高速」時には、例えば燃費向上等の為にロックアップクラッチCluはロックアップオンに維持され、噛合式クラッチD1は係合状態と解放状態との間で切り替えられる。リニアソレノイド弁SLUの「△」は、出力油圧PsluによりロックアップクラッチClu或いは噛合式クラッチD1の作動を制御する状態を示している。各オンオフソレノイド弁SG,SLの「×」は、各々、切替油圧Pon1,Pon2を出力しない状態を示し、「○」は、各々、切替油圧Pon1,Pon2を出力する状態を示している。
「N・ガレージ」時には、電子制御装置100からの指令に従って、オンオフソレノイド弁SGから切替油圧Pon1が出力されず且つオンオフソレノイド弁SLから切替油圧Pon2が出力されないことで、第1切替弁86及び第2切替弁88は共にOFF側位置(実線)に切り替えられる。これにより、第3油路96が排出油路EXに接続されるので、ロックアップクラッチCluはロックアップオフに維持される。加えて、第2油路94が第1油路90に接続されるので、リニアソレノイド弁SLUの出力油圧Psluによりシンクロメッシュ機構S1の作動が制御されて、噛合式クラッチD1は係合状態と解放状態との間で切り替えられる。
「低速」時には、電子制御装置100からの指令に従って、オンオフソレノイド弁SGから切替油圧Pon1が出力され且つオンオフソレノイド弁SLから切替油圧Pon2が出力されないことで、第1切替弁86はON側位置(破線)に切り替えられ且つ第2切替弁88はOFF側位置(実線)に切り替えられる。これにより、第3油路96が第1油路90に接続されるので、リニアソレノイド弁SLUの出力油圧PsluによりロックアップクラッチCluはロックアップオフ、ロックアップスリップ、及びロックアップオンの間で作動状態が切り替えられる。加えて、第2油路94が定圧油路92に接続されるので、モジュレータ油圧Pmにより噛合式クラッチD1は係合状態に維持される。
「高速」時には、電子制御装置100からの指令に従って、オンオフソレノイド弁SGから切替油圧Pon1が出力されず且つオンオフソレノイド弁SLから切替油圧Pon2が出力されることで、第1切替弁86はOFF側位置(実線)に切り替えられ且つ第2切替弁88はON側位置(破線)に切り替えられる。これにより、油路96bが定圧油路92に接続されるので、モジュレータ油圧PmによりロックアップクラッチCluはロックアップオンに維持される。加えて、第2油路94が第1油路90に接続されるので、リニアソレノイド弁SLUの出力油圧Psluによりシンクロメッシュ機構S1の作動が制御されて、噛合式クラッチD1は係合状態と解放状態との間で切り替えられる。
図5には示していないが、電子制御装置100からの指令に従うことなく大きな出力油圧Psluが出力されるリニアソレノイド弁SLUのON故障時には、電子制御装置100からの指令によって「N・ガレージ」時のように切替油圧Pon1及び切替油圧Pon2を共に出力させないことで、第3油路96を排出油路EXに接続してロックアップクラッチCluを強制的にロックアップオフに維持することができる。車両停止中や極低車速走行中のリニアソレノイド弁SLUのON故障時にロックアップクラッチCluを強制解放することで、エンジンストールを回避することができる。このように、油圧制御回路80には、リニアソレノイド弁SLUのON故障に対するフェールセーフ機能を併せ持たせることができる。
上述のように、本実施例によれば、油圧制御回路80は、リニアソレノイド弁SLUと、シンクロメッシュ制御弁82と、ロックアップクラッチ制御弁84と、2つの切替弁(第1切替弁86、第2切替弁88)と、2つのソレノイド弁(オンオフソレノイド弁SG,SL)とを備えることで、一本のリニアソレノイド弁SLUにて(見方を換えれば、シンクロメッシュ機構S1の制御用に体格の大きなリニアソレノイド弁を追加することなく、小型の2つのソレノイド弁にて)、シンクロメッシュ機構S1付の噛合式クラッチD1とロックアップクラッチCluとの各々の係合と解放とを制御することができる。よって、動力伝達装置16において、油圧制御回路80の質量増加や搭載性悪化が抑制され得る。
次に、本発明の他の実施例を説明する。尚、以下の説明において実施例相互に共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
前述の実施例1では、油圧制御回路80は、第2切替弁88の弁位置を切り替える為の第2切替用ソレノイド弁として専用のオンオフソレノイド弁SLを備えていた。本実施例では、上記第2切替用ソレノイド弁は、CVT走行用クラッチC2のトルク容量を制御する第2クラッチ制御用リニアソレノイド弁SL2(以下、リニアソレノイド弁SL2という)である。つまり、本実施例では、リニアソレノイド弁SL2を第2切替弁88の弁位置の切替用ソレノイド弁と共用する構成を採用する。
図6は、噛合式クラッチD1とロックアップクラッチCluとの各制御用のリニアソレノイド弁を共用する構成を説明する為の油圧制御回路110の一部を示す図である。この図6の油圧制御回路110は、図3の油圧制御回路80に替えて動力伝達装置16に備えられており、油圧制御回路80とは別の実施例である。油圧制御回路110は、油圧制御回路80とは、オンオフソレノイド弁SLを備えず、油圧制御回路80にも備えられているリニアソレノイド弁SL2により第2切替弁88の弁位置が切り替えられることが主に相違する。以下、この相違する点を主に説明する。
図6において、リニアソレノイド弁SL2は、電子制御装置100からの指令に従って、モジュレータ油圧Pmを元圧として出力油圧Psl2を出力(供給)する。例えば、リニアソレノイド弁SL2は、モジュレータ油圧Pmを減圧して出力油圧Psl2を出力する電磁制御弁であって、図7に示すように、電子制御装置100から供給される油圧指令値Ssl2に対応する駆動電流(励磁電流)Isl2に比例した出力油圧Psl2を発生する。
リニアソレノイド弁SL2は、図7に示すように、駆動電流Isl2が切替駆動電流Isl20未満の範囲(領域)では(すなわち出力油圧Psl2が切替出力油圧Psl20未満の範囲では)、前述の実施例におけるオンオフソレノイド弁SLの切替油圧Pon2以上の油圧を出力(供給)することができず、第2切替弁88の弁位置を切り替えることができない。一方で、リニアソレノイド弁SL2は、駆動電流Isl2が切替駆動電流Isl20以上の範囲では(すなわち出力油圧Psl2が切替出力油圧Psl20以上の範囲では)、その切替油圧Pon2以上の油圧を出力することができるので、その切替出力油圧Psl20以上の出力油圧Psl2を第2切替弁88へ出力することで、第2切替弁88の弁位置を切り替える。尚、リニアソレノイド弁SL2は、駆動電流Isl2が切替駆動電流Isl20未満の範囲において、CVT走行用クラッチC2を解放状態と係合状態との間で切り替えるようにCVT走行用クラッチC2のトルク容量を制御することができる。
図8は、噛合式クラッチD1とロックアップクラッチCluとの各制御用に、リニアソレノイド弁SLUを共用し且つリニアソレノイド弁SL2を共用する油圧制御回路110としたことを説明する為の図表である。図8は、図5とは、オンオフソレノイド弁SLがリニアソレノイド弁SL2に替わっていることが主に相違する。図8において、リニアソレノイド弁SL2の「<Psl20」は、第2切替弁88に対して切替油圧Pon2以上の油圧を出力しない状態を示しており、図5におけるオンオフソレノイド弁SLの「×」に相当する。又、リニアソレノイド弁SL2の「≧Psl20」は、第2切替弁88に対して切替油圧Pon2以上の油圧を出力することを示しており、図5におけるオンオフソレノイド弁SLの「○」に相当する。図8の説明においては、図5の説明における「オンオフソレノイド弁SLから切替油圧Pon2が出力されない」ことを「リニアソレノイド弁SL2の出力油圧Psl2が切替出力油圧Psl20未満とされる」と読み替え、図5の説明における「オンオフソレノイド弁SLから切替油圧Pon2が出力される」ことを「リニアソレノイド弁SL2の出力油圧Psl2が切替出力油圧Psl20以上とされる」と読み替えられる。
上述のように、本実施例によれば、前述の実施例1と同様の効果が得られることに加えて、第2切替弁88の弁位置を切り替える為の第2切替用ソレノイド弁はリニアソレノイド弁SL2であるので、第2切替弁88の弁位置を切り替える為の専用のオンオフソレノイド弁SLを備えることと比較して、第2切替弁88の弁位置を切り替える為の専用の第2切替用ソレノイド弁を削減することができる。よって、油圧制御回路110の質量増加や搭載性悪化が一層抑制され得る。又、油圧制御回路110の低コスト化が図れる。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
例えば、前述の実施例において、ニュートラル制御やガレージ制御は、噛合式クラッチD1を使用した制御の一例として示しただけの制御であり、電子制御装置100はこれらの機能を有してなくても良い。図5,8における「N・ガレージ」は、「車両停止」と置き換えても良い。「車両停止」の場合、噛合式クラッチD1はリニアソレノイド弁SLUの出力油圧Psluにより係合状態に維持されても良い。
また、前述の実施例において、出力油圧Pslu、出力油圧Psl2、切替油圧Pon1、切替油圧Pon2、油圧Pd1の元圧はモジュレータ油圧Pmであり、ロックアップクラッチCluへ供給される油圧(Pluon、Pluoff)の元圧は第2ライン油圧Pl2であったが、この態様に限らない。各々の元圧は、第1ライン油圧、第2ライン油圧Pl2、モジュレータ油圧Pm等の元圧となり得る油圧であれば良い。
また、前述の実施例では、ギヤ機構28は、1つのギヤ段が形成される伝動機構であったが、これに限らない。例えば、ギヤ機構28は、ギヤ比γが異なる複数のギヤ段が形成される伝動機構であっても良い。つまり、ギヤ機構28は2段以上に変速される有段変速機であっても良い。
また、前述の実施例では、ギヤ機構28は、ギヤ比γで見れば、無段変速機24の最ローギヤ比γmaxよりもロー側のギヤ比ELを形成する伝動機構であったが、これに限らない。例えば、ギヤ機構28は、無段変速機24の最ハイギヤ比γminよりもハイ側のギヤ比EH、及びロー側のギヤ比ELを形成する伝動機構であっても良い。このようなギヤ機構28であっても、本発明は適用され得る。これについては、ギヤ機構28が複数のギヤ段が形成される伝動機構である場合も同様である。
また、前述の実施例では、前記駆動力源として、エンジン12を例示したが、この態様に限らない。例えば、前記駆動力源は、内燃機関等のガソリンエンジンやディーゼルエンジン等が用いられるが、電動機等の他の原動機をエンジン12と組み合わせて採用することもできる。又、流体式伝動装置として、トルクコンバータ20を例示したが、この態様に限らない。例えば、トルクコンバータ20に替えて、トルク増幅作用のない流体継手(フルードカップリング)などの他の流体式伝動装置が用いられても良い。
尚、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。