以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
図1は、本発明が適用された車両用動力伝達装置10の構成を説明する骨子図である。この車両用動力伝達装置10は横置き型自動変速機であって、FF(フロントエンジン・フロントドライブ)型車両に好適に採用されるものであり、走行用の動力源としてエンジン12を備えている。内燃機関にて構成されているエンジン12の出力は、エンジン12のクランク軸、流体式伝動装置としてのトルクコンバータ14から前後進切替装置16、ベルト式の無段変速機(CVT)18、減速歯車装置20を介して差動歯車装置22に伝達され、左右の駆動輪24L、24Rへ分配される。
トルクコンバータ14は、エンジン12のクランク軸に連結されたポンプ翼車14p、およびトルクコンバータ14の出力側部材に相当するタービン軸34を介して前後進切換装置16に連結されたタービン翼車14tを備えており、流体を介して動力伝達を行うようになっている。また、それ等のポンプ翼車14pおよびタービン翼車14tの間にはロックアップクラッチ26が設けられており、油圧制御回路100(図3参照)内のロックアップリレーバルブ104(図3参照)などによって係合側油室および開放側油室と連通する油路が切り換えられることにより、係合または開放されるようになっている。たとえばロックアップクラッチ26が完全係合させられることによって、ポンプ翼車14pおよびタービン翼車14tは一体回転させられる。また、ポンプ翼車14pには、無段変速機18の変速制御やベルト挟圧力制御、ロックアップクラッチ26の係合開放制御等を実施するための元圧を発生させる機械式のオイルポンプ28が連結されており、エンジンの回転と連動して作動させられる。
前後進切替装置16は、前進用クラッチC1および後進用ブレーキB1とダブルピニオン型の遊星歯車装置16pとを主体として構成されており、トルクコンバータ14のタービン軸34はサンギヤ16sに一体的に連結され、無段変速機18の入力軸36はキャリア16cに一体的に連結されている一方、キャリア16cとサンギヤ16sは前進用クラッチC1を介して選択的に連結され、リングギヤ16rは後進用ブレーキB1を介して非回転部材であるハウジングに選択的に固定されるようになっている。前進用クラッチC1および後進用ブレーキB1は、何れも油圧アクチュエータによって摩擦係合させられる油圧式摩擦係合装置である。なお、前後進切替装置16が本発明の切替機構に対応し、前進用クラッチC1および後進用ブレーキB1が本発明の係合装置に対応している。
そして、前進用クラッチC1が係合させられるとともに後進用ブレーキB1が開放されると、前後進切換装置16は一体回転状態とされることによりタービン軸34が入力軸36に直結され、前進用動力伝達経路が成立(達成)させられて、前進方向の駆動力が無段変速機18側へ伝達される。また、後進用ブレーキB1が係合させられるとともに前進用クラッチC1が開放されると、前後進切換装置16は後進用動力伝達経路が成立(達成)させられて、入力軸36はタービン軸34に対して逆方向へ回転させられるようになり、後進方向の駆動力が無段変速機18側へ伝達される。また、前進用クラッチC1および後進用ブレーキB1が共に開放されると、前後進切換装置16は動力伝達を遮断するニュートラル状態(動力伝達遮断状態)になる。
無段変速機18は、入力軸36に設けられた入力側部材である有効径が可変の駆動側プーリ(プライマリプーリ、プライマリシーブ)42と、出力軸44に設けられた出力側部材である有効径が可変の従動側プーリ(セカンダリプーリ、セカンダリシーブ)46と、それ等の可変プーリ42、46に巻き掛けられた伝動ベルト48とを備えており、可変プーリ42、46と伝動ベルト48との間の摩擦力を介して動力伝達が行われる。
可変プーリ42および46は、入力軸36および出力軸44にそれぞれ固定された固定回転体42aおよび46aと、入力軸36および出力軸44に対して軸まわりの相対回転不能かつ軸方向の移動可能に設けられた可動回転体42bおよび46bと、それらの間のV溝幅を変更する推力を付与する油圧アクチュエータとしての駆動側油圧アクチュエータ(プライマリプーリ側油圧アクチュエータ)42cおよび従動側油圧アクチュエータ(セカンダリプーリ側油圧アクチュエータ)46cとを備えて構成されており、駆動側油圧アクチュエータ42cへの作動油の油圧が油圧制御回路100によって制御されることにより、両可変プーリ42、46のV溝幅が変化して伝動ベルト48の掛かり径(有効径)が変更され、変速比γ(=入力軸回転速度Nin/出力軸回転速度Nout)が連続的に変化させられる。
図2は、図1の車両用動力伝達装置10などを制御するために車両に設けられた制御系統の要部を説明するブロック線図である。電子制御装置50は、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより、エンジン12の出力制御や無段変速機18の変速制御およびベルト挟圧力制御やロックアップクラッチ26のトルク容量制御等を実行するようになっており、必要に応じてエンジン制御用や無段変速機18およびロックアップクラッチ26の油圧制御用等に分けて構成される。
電子制御装置50には、エンジン回転速度センサ52により検出されたクランク軸回転角度(位置)ACR(°)およびエンジン12の回転速度(エンジン回転速度)Neに対応するクランク軸回転速度を表す信号、タービン回転速度センサ54により検出されたタービン軸34の回転速度(タービン回転速度)Ntを表す信号、入力軸回転速度センサ56により検出された無段変速機18の入力回転速度である入力軸36の回転速度(入力軸回転速度)Ninを表す信号、車速センサ(出力軸回転速度センサ)58により検出された無段変速機18の出力回転速度である出力軸44の回転速度(出力軸回転速度)Noutすなわち出力軸回転速度Noutに対応する車速Vを表す車速信号、スロットルセンサ60により検出されたエンジン12の吸気配管32に備えられた電子スロットル弁30のスロットル弁開度θTHを表すスロットル弁開度信号、冷却水温センサ62により検出されたエンジン12の冷却水温TWを表す信号、CVT油温センサ64により検出された無段変速機18等の油圧回路の油温TCVTを表す信号、アクセル開度センサ66により検出されたアクセルペダル68の操作量であるアクセル開度Accを表すアクセル開度信号、フットブレーキスイッチ70により検出された常用ブレーキであるフットブレーキの操作の有無BONを表すブレーキ操作信号、レバーポジションセンサ72により検出されたシフトレバー74のレバーポジション(操作位置)PSHを表す操作位置信号、油圧センサ75により検出される従動側油圧アクチュエータ46cのベルト狭圧Pdを表すベルト狭圧信号などが供給されている。
また、電子制御装置50からは、エンジン12の出力制御の為のエンジン出力制御指令信号SE、例えば電子スロットル弁30の開閉を制御するためのスロットルアクチュエータ76を駆動するスロットル信号や燃料噴射装置78から噴射される燃料の量を制御するための噴射信号や点火装置80によるエンジン12の点火時期を制御するための点火時期信号などが出力される。また、無段変速機18の変速比γを変化させる為の変速制御指令信号ST、伝動ベルト48の挟圧力を調整させる為の挟圧力制御指令信号SB、ロックアップクラッチ26の係合、開放、スリップ量を制御させる為のロックアップ制御指令信号SL/U、例えば油圧制御回路100内の前記ロックアップリレーバルブの弁位置を切り換える後述するソレノイドバルブ(第1ソレノイドバルブSL1、第2ソレノイドバルブSL2)を駆動するための指令信号やロックアップクラッチ26の係合力を調節するリニアソレノイドバルブSLUを駆動するための指令信号、ニュートラル制御時において前進用クラッチC1または後進用ブレーキB1を開放乃至半係合させるための信号、ガレージシフト時において前進用クラッチC1または後進用ブレーキB1の係合圧を調整するための信号などが油圧制御回路100へ出力される。
図3は、油圧制御回路100のうち、主にロックアップクラッチ26のロックアップ制御、およびシフトレバー74の操作に伴う前進用クラッチC1および後進用ブレーキB1の係合油圧制御に関連する要部を示す油圧回路図である。図3において、油圧制御回路100は、例えばエンジン12によって駆動されるオイルポンプ102から吐出された作動油の吐出圧を調圧してライン圧PLを出力するリリーフ式の第1レギュレータバルブ104、第1レギュレータバルブ104の調圧時に排出される余剰油を元圧としてライン圧PLよりも低圧であるセカンダリ圧PL2を出力する第2レギュレータバルブ106、第1レギュレータバルブ104によって調圧されたライン圧PLを元圧にして、出力圧を高圧モジュレータ圧PLPMHおよび低圧モジュレータ圧PLPMLのいずれかに調圧する元圧調圧バルブ108、元圧調圧バルブ108によって調圧されたモジュレータ圧PLPMを元圧にソレノイドモジュレータ圧PSMを調圧するソレノイドモジュレータバルブ110、ソレノイドモジュレータバルブ110によって調圧されたソレノイドモジュレータ圧PSMを元圧にして第1切替圧PSL1を出力する第1ソレノイドバルブSL1、ソレノイドモジュレータバルブ110によって調圧されたソレノイドモジュレータ圧PSMを元圧にして第2切替圧PSL2を出力する第2ソレノイドバルブSL2、前記第1ソレノイドバルブSL1および第2ソレノイドバルブSL2の出力状態に従って前進用クラッチC1および後進用ブレーキB1へ供給される作動油を切替えるクラッチアプライコントロールバルブ112、前記第1ソレノイドバルブSL1および第2ソレノイドバルブSL2の出力状態に従ってロックアップクラッチ26を開放状態(非作動状態)とする開放側位置(オフ側位置)およびロックアップクラッチ26を係合状態(作動状態)とする係合側位置(オン側位置)の何れか択一的に切り替えるロックアップリレーバルブ114、電子制御装置50から供給される駆動電流に対応した制御圧PSLUを出力するリニアソレノイドバルブSLU、ロックアップリレーバルブ114が係合側位置に切り替えられた状態でリニアソレノイドバルブSLUの制御圧PSLUに従ってロックアップクラッチ26の係合力を制御するためのロックアップコントロールバルブ116、前進用クラッチC1および後進用ブレーキB1が選択的に係合或いは開放されるようにシフトレバー74の操作に従って油路が機械的に切り換えられるマニュアルバルブ118等を備えている。
オイルポンプ102は、例えばベーンポンプや歯車ポンプで構成され、エンジン12の駆動に伴って駆動させられ、オイルパン120に貯留されている作動油を汲み上げて吐出ポートから吐出する。
第1レギュレータバルブ104は、元圧調圧バルブ108、駆動側プーリ42の駆動側油圧アクチュエータ42c、および従動側プーリ46の従動側アクチュエータ46c等の元圧となるライン圧PLを調圧するためのリリーフ式の調圧弁である。なお、第1レギュレータバルブ104は、図示しないリニアソレノイドバルブの制御圧PSLSを受け入れる油室を備えており、制御圧PSLSによってライン圧PLが最適な油圧に制御される。
第2レギュレータバルブ106は、ロックアップクラッチ26等に供給されるセカンダリ圧PL2を調圧するためのリリーフ式の調圧弁である。なお、第2レギュレータバルブ106は、リニアソレノイドバルブSLUの制御圧PSLUを受け入れる油室を備えており、制御圧PSLUによってセカンダリ圧PL2が最適な油圧に制御される。
元圧調圧バルブ108は、第1レギュレータバルブ104によって調圧されたライン圧PLを元圧にして、出力圧を高圧モジュレータ圧PLPMHおよび低圧モジュレータ圧PLPMLのいずれか(以下、特に区別しない場合にはモジュレータ圧PLPMと記載する)に調圧する調圧弁である。元圧調圧バルブ108は、軸方向に移動させられることにより、高圧モジュレータ圧PLPMHを出力する高圧位置(図において左側)、低圧モジュレータ圧PLPMLを出力する低圧位置(図において右側)のいずれかに位置させられるスプール弁子122と、ライン圧PLが入力される入力ポート124と、スプール弁子122の切替位置に応じて選択的に入力ポート124と連通される出力ポート126と、出力されたモジュレータ圧PLPMを受け入れるフィードバックポート128と、第2ソレノイドバルブSL2からの第2切替圧PSL2を受け入れる油室130と、後進用ブレーキB1へ供給される油圧を受け入れる油室132と、スプール弁子122を高圧位置側に常時付勢するスプリング134とを、備えている。なお、モジュレータ圧PLPMが本発明の元圧に対応し、高圧モジュレータ圧PLPMHが本発明の高圧に対応し、低圧モジュレータ圧PLPMLが本発明の低圧に対応している。
元圧調圧バルブ108では、下式(1)によって出力ポート126から出力されるモジュレータ圧PLPMが決定される。ここで、Fがスプリング134の付勢力を示し、PB1が後進用ブレーキB1に供給される作動油の油圧を示し、A1が油室132においてスプール弁子122が受ける受圧面積を示し、PSL2が第2ソレノイドバルブSL2から出力される第2切替圧PSL2を示し、A2が油室130においてスプール弁子122が受ける受圧面積を示し、ΔAがフィードバックポート128内の油室に形成されているスプール弁子122の受圧面積差を示している。
PLPM=(F+PB1×A1-PSL2×A2)/ΔA・・・・(1)
ここで、シフトレバー74が後進ポジション以外のポジションにある場合、すなわち油室132に後進用ブレーキB1の油圧PB1が供給されない場合を前提とすると、第2ソレノイドバルブSL2から第2切替圧PSL2が出力されない場合には、モジュレータ圧PLPMは、式(1)より、F/ΔAとなる。このモジュレータ圧PLPM(=F/ΔA)が高圧モジュレータ圧PLPMHとなる。一方、第2ソレノイドバルブSL2から第2切替圧PSL2が出力される場合には、モジュレータ圧PLPMは、式(1)より、(F−PSL2×A2)/ΔAとなる。このモジュレータ圧PLPM(=F−PSL2×A2)/ΔAが低圧モジュレータ圧PLPMLとなる。したがって、第2ソレノイドバルブSL2から出力される第2切替圧PSL2によって、モジュレータ圧PLPMが高圧モジュレータ圧PLPMHおよび低圧モジュレータ圧PLPMLのいずれかに調圧される。具体的には、第2切替圧PSL2が出力される際には、低圧モジュレータ圧PLPMLに調圧される。なお、元圧調圧バルブ108によって調圧されたモジュレータ圧PLPMは、リニアソレノイドバルブSLUの元圧、前進用クラッチC1、後進用ブレーキB1、駆動側油圧アクチュエータ42cの油圧を制御する図示しないリニアソレノイドバルブSLP、従動側油圧アクチュエータ46cの油圧を制御する図示しないリニアソレノイドバルブSLS等の元圧として使用される。
ソレノイドモジュレータバルブ110は、元圧調圧バルブ108によって調圧されたモジュレータ圧PLPMを元圧にして、一定圧であるソレノイドモジュレータ圧PSMを調圧する。このソレノイドモジュレータバルブ110によって調圧されたソレノイドモジュレータ圧PSMが、第1ソレノイドバルブSL1および第2ソレノイドバルブSL2の元圧として供給される。
クラッチアプライコントロールバルブ112は、マニュアルバルブ118を介して前進用クラッチC1および後進用ブレーキB1へ供給される作動油の供給状態を、元圧調圧バルブ108から出力されるモジュレータ圧PLPMまたはリニアソレノイドバルブSLUの制御圧PSLUの何れかに切替える切替弁として機能する。クラッチアプライコントロールバルブ112は、軸方向に移動させられることにより、前進用クラッチC1および後進用ブレーキB1に供給される作動油を元圧調圧バルブ108から出力されるモジュレータ圧PLPMとするnormal位置(図において、左側)、リニアソレノイドバルブSLUの制御圧PSLUとするfail/ガレージ位置(図において右側)のいずれかに位置させられるスプール弁子140と、元圧調圧バルブ108によって調圧されたモジュレータ圧PLPMが入力される第1入力ポート142と、リニアソレノイドバルブSLUの制御圧PSLUが入力される第2入力ポート144と、マニュアルバルブ118の入力ポート160に接続され、スプール弁子140の切替位置に応じて第1入力ポート142および第2入力ポート144の何れかと連通される第1出力ポート146と、図示しない調圧弁によって調圧された制御圧PLPM2が入力される第3入力ポート148と、従動側油圧アクチュエータ46cの油圧Pdが入力される第4入力ポート150と、駆動側油圧アクチュエータ42cに接続され、スプール弁子140の切替位置に応じて第3入力ポート148および第4入力ポート150の何れかと連通される第2出力ポート152と、スプール弁子140をnormal位置側に常時付勢するスプリング154と、スプール弁子140にfail/ガレージ位置側に向かう推力を付与するために第1ソレノイドバルブSL1の第1切替圧PSL1を受け入れる油室156と、スプール弁子140にnormal位置側に向かう推力を付与するために第2ソレノイドバルブSL2の第2切替圧PSL2を受け入れる油室158とを、備えている。なお、クラッチアプライコントロールバルブ112が、本発明のクラッチ元圧切替バルブに対応している。
クラッチアプライコントロールバルブ112において、例えば第1ソレノイドバルブSL1の第1切替圧PSL1が油室156に供給されると、スプール弁子140がスプリング154の付勢力に抗ってfail/ガレージ位置側(図において右側)に移動させられる。このとき、第2入力ポート144と第1出力ポート146とが連通させられ、リニアソレノイドバルブSLUの制御圧PSLUがマニュアルバルブ118の入力ポート160に供給される。また、第4入力ポート150と第2出力ポート152とが連通させられ、従動側油圧アクチュエータ46cの油圧Pdが駆動側油圧アクチュエータ42cに供給される。
また、第2ソレノイドバルブSL2の第2切替圧PSL2が油室158に供給されると、スプール弁子140がnormal位置側(図において左側)に移動させられる。このとき、第1入力ポート142と第1出力ポート146とが連通させられ、モジュレータ圧PLPMがマニュアルバルブ118の入力ポート160に供給される。また、第3入力ポート148と第2出力ポート152とが連通させられ、制御圧PLPM2が駆動側油圧アクチュエータ42cに供給される。
また、第1ソレノイドバルブSL1の第1切替圧PSL1および第2ソレノイドバルブSL2の第2切替圧PSL2共に出力される場合、第2切替圧PSL2に基づく推進力およびスプリング154の付勢力によって、スプール弁子140が第1切替圧PSL1に基づく推進力に抗ってnormal位置側(図において左側)に移動させられる。したがって、モジュレータ圧PLPMがマニュアルバルブ118の入力ポート160に供給されると共に、制御圧PLPM2が駆動側油圧アクチュエータ42cに供給される。
また、第1ソレノイドバルブSL1の第1切替圧PSL1および第2ソレノイドバルブSL2の第2切替圧PSL2共に出力されない場合には、スプリング154の付勢力によって、スプール弁子140がnormal位置側(図において左側)に移動させられる。したがって、モジュレータ圧PLPMがマニュアルバルブ118の入力ポート160に供給されると共に、制御圧PLPM2が駆動側油圧アクチュエータ42cに供給される。このように、クラッチアプライコントロールバルブ112は、第1ソレノイドバルブSL1の第1切替圧PSL1および第2ソレノイドバルブSL2の第2切替圧PSL2に応じて、マニュアルバルブ118の入力ポート160すなわち前進用クラッチC1または後進用ブレーキB1に供給される係合圧を切り替える。
マニュアルバルブ108において、入力ポート160には、クラッチアプライコントロールバルブ112の第1出力ポート146から出力された係合油圧Pa(制御圧PSLUまたはモジュレータ圧PLPM)が供給される。そして、シフトレバー74が「D」ポジション或いは「L」ポジションに操作されると、係合油圧Paが前進用出力ポート162を経て前進用クラッチC1に供給され、前進用クラッチC1が係合させられる。また、シフトレバー74が「R」ポジションに操作されると、係合油圧Paが後進用出力ポート164を経て後進用ブレーキB1に供給され、後進用ブレーキB1が係合させられる。また、シフトレバー74が「P」ポジションおよび「N」ポジションに操作されると、入力ポート160から前進用出力ポート162および後進用出力ポート164への油路がいずれも遮断され、前進用クラッチC1および後進用ブレーキB1が共に開放させられる。
トルクコンバータ14のロックアップクラッチ26は、係合側油路170を介して供給される係合側油室172内の油圧Ponと開放側油路174を介して供給される開放側油室176内の油圧Poffとの差圧ΔP(=Pon-Poff)によりフロントカバー178に摩擦係合させられる油圧式摩擦クラッチである。そして、トルクコンバータ14の運転条件としては、例えば差圧ΔPが負とされてロックアップクラッチ26が開放される所謂ロックアップオフ、差圧ΔPが零以上とされてロックアップクラッチ26が半係合される所謂スリップ状態、および差圧ΔPが最大値とされてロックアップクラッチ26が完全係合される所謂ロックアップオンの3条件に大別される。また、ロックアップクラッチ26のスリップ状態においては、差圧ΔPが零とされることによりロックアップクラッチ26のトルク分担がなくなって、トルクコンバータ14は、ロックアップオフと同様の運転状態とされる。
ロックアップリレーバルブ114は、ロックアップクラッチ26を作動および非作動とするための作動側および非作動側に切り替えられる切替弁である。ロックアップリレーバルブ114は、ロックアップクラッチ26の係合位置(ON位置:図において右側)および開放位置(OFF位置:図において左側)を切替えるスプール弁子180と、そのスプール弁子180の一方の軸端側に設けられてスプール弁子180に開放位置(OFF位置)側へ向かう推力を付与するスプリング182と、スプール弁子180を開放位置(OFF位置)へ移動させるための第1ソレノイドバルブSL1の第1切替圧PSL1を受け入れる油室184と、スプール弁子180を係合位置(ON位置)側へ移動させるための第2ソレノイドバルブSL2の第2切替圧PSL2を受け入れる油室186と、第2レギュレータバルブ106によって調圧されたセカンダリ圧PL2が入力される入力ポート188と、ロックアップコントロールバルブ116の制御ポート212と連通される迂回ポート190と、係合側油路170と連通されている係合側ポート192と、開放側油路174と連通されている開放側ポート194とを、備えている。
ロックアップコントロールバルブ116は、ロックアップクラッチ26を半係合状態とするスリップ位置(SLIP位置)、または完全係合状態とする完全係合位置(ON位置)の何れか切替えるためのスプール弁子200と、そのスプール弁子200にスリップ位置(SLIP位置)側へ向かう推力を付与するスプリング202と、そのスプール弁子200をスリップ側位置へ向かって付勢するためにトルクコンバータ14の係合側油室172内の油圧Ponを受け入れる油室204と、そのスプール弁子200を完全係合位置(ON位置)へ向かって付勢するためにトルクコンバータ14の開放側油室176内の油圧Poffを受け入れる油室206と、スプール弁子200を完全係合位置へ向かって付勢するために制御圧PSLUを受け入れる油室208と、セカンダリ圧PL2が入力される入力ポート210と、ロックアップリレーバルブ114の迂回ポート190と連通される制御ポート212とを、備えている。
このように構成されたロックアップリレーバルブ114およびロックアップコントロールバルブ116により、係合側油室172および開放側油室174への作動油圧の供給状態が切り換えられてロックアップクラッチ26の作動状態が切り替えられる。
まず、ロックアップクラッチ26が開放状態を含むスリップ状態乃至ロックアップオン状態に切り換えられた場合を説明する。ロックアップリレーバルブ114において、第2ソレノイドバルブSL2の切替圧PSL2が油室186に供給されてスプール弁子180が係合位置(ON位置)へ移動させられ、入力ポート188に供給されたセカンダリ圧PL2が係合側ポート192から係合側油路1700を通り係合側油室172へ供給される。この係合側油室172へ供給されるセカンダリ圧PL2が油圧Ponとなる。同時に、開放側油室176は、開放側油路174を通り開放側ポート194から迂回ポート190を経てロックアップコントロールバルブ116の制御ポート212に連通させられる。そして、開放側油室176の油圧Poffがロックアップコントロールバルブ116によって調整されるに従い、差圧ΔP(=Pon-Poff)が調整されて、ロックアップクラッチ26の作動状態がスリップ状態乃至ロックアップオンの範囲で切り替えられる。
具体的には、ロックアップリレーバルブ114のスプール弁子180が係合位置(ON位置)へ付勢されているときに、すなわちロックアップクラッチ26が係合側状態に切り換えられたときに、ロックアップコントロールバルブ116において、スプール弁子200を完全係合位置(ON位置)へ付勢させるための制御圧PSLUが油室208へ供給されずスプリング202の推力によってそのスプール弁子200がスリップ位置(SLIP位置)とされると、入力ポート210に供給されたセカンダリ圧PL2が制御ポート212から迂回ポート190を経て開放側ポート194から開放側油路172を通り開放側油室176へ供給される。これにより、油圧Ponと油圧Poffとが同圧とされることから差圧ΔPが零とされて、ロックアップリレーバルブ114が係合位置へ切り換えられた状態であっても、ロックアップクラッチ26がロックアップオフと同等の状態とされる。
また、ロックアップリレーバルブ114のスプール弁子180が係合位置(ON位置)へ付勢されているときに、ロックアップコントロールバルブ116において、スプール弁子200を完全係合位置(ON位置)へ付勢するための予め定められた制御圧PSLUが(ロックアップオン時)が油室208へ供給されてスプール弁子200が完全係合位置へ付勢されると、入力ポート210から制御ポート212への油路が遮断され、開放側油室176にはセカンダリ圧PL2が供給されないと共に、開放側油室176内の作動油が制御ポート212を経てドレーンポートEXから排出される。これにより、油圧Poffが零とされることから差圧ΔPが最大とされてロックアップクラッチ26がロックアップオンとされる。
また、ロックアップリレーバルブ114のスプール弁子180が係合位置(ON位置)へ付勢されているときに、ロックアップコントロールバルブ116において、スプール弁子200をスリップ位置(SLIP位置)と完全係合位置(ON位置)との間の状態へ位置させるための予め定められた制御圧PSLU が油室208へ供給されると、入力ポート210に供給されたセカンダリ圧PL2が制御ポート212を経て開放側油室176へ供給される状態と開放側油室176内の作動油が制御ポート212を経てドレーンポートEXから排出される状態とが、上記制御圧PSLUに基づいて調整される。つまり、油圧Poffは、ロックアップクラッチ26の回転速度差NSLP(Ne-Nt)が目標回転速度差NSLP *となる差圧ΔPとされるように制御圧PSLU に基づいてロックアップコントロールバルブ116によって調圧される。
次に、ロックアップクラッチ26が開放状態に切り換えられた場合を説明する。ロックアップリレーバルブ114において、第2切替圧PSL2が油室186に供給されず、第1切替圧PSL1が油室184に供給されると、その第1切替圧PSL1に基づく推力およびスプリング172の付勢力によってスプール弁子180が開放位置(OFF位置)に移動させられ、入力ポート188に供給されたセカンダリ圧PL2が開放側ポート194からトルクコンバータ14の開放側油路174を通り、開放側油室176へ供給される。そして、係合側油室172を経てトルクコンバータ14の係合側油路170を通り係合側ポート192に排出された作動油が排出ポート214から潤滑回路216へ供給される。これにより、差圧ΔPが負とされてロックアップクラッチ26がロックアップオフとされる。
上記のように構成される油圧制御回路100において、第1ソレノイドバルブSL1から第1切替圧PSL1が出力される一方、第2切替バルブSL2から第2切替圧PSL2が出力されない状態では、クラッチアプライコントロールバルブ112において、スプール弁子140がfail/ガレージ位置に移動させられる。なお、上記fail/ガレージ位置は、車両において何らかの故障が発生した場合、またはシフトレバー74を「N」ポジションから「D」、「R」、「L」ポジションのいずれかに切り替える際に実施されるガレージ制御時に切り替えられるものであり、この状態において、リニアソレノイドバルブSLUの制御圧PSLUが第2入力ポート144から第1出力ポート146を経てマニュアルバルブ118の入力ポート160に供給される。そして、前進用クラッチC1および後進用ブレーキB1の一方にその制御圧PSLUが供給され、その制御圧PSLUに基づいて前進用クラッチC1または後進用ブレーキB1が滑らかに係合される。また、駆動側油圧アクチュエータ42cには従動側油圧アクチュエータ46cの油圧Pdが供給されることで、予め設定されている変速比γaに調整される。
このとき、ロックアップリレーバルブ114においては、第1ソレノイドバルブSL1の切替圧PSL1が油室184に供給されるに従い、スプール弁子180が開放位置(OFF位置)に切り替えられるため、ロックアップリレーバルブ114の迂回ポート190は遮断された状態となる。したがって、ロックアップリレーバルブ114とロックアップコントロールバルブ116とは、遮断された状態となり、リニアソレノイドバルブSLUの制御圧PSLUが油室208に供給されてもロックアップクラッチ26には影響が生じない。上記より、第1ソレノイドバルブSL1から第1切替圧PSL1が出力された状態では、リニアソレノイドバルブSLUの制御圧PSLUは、前進用クラッチC1および後進用ブレーキB1の係合圧となる。
また、元圧調圧バルブ108では、油室130に第2ソレノイドバルブSL2の第2切替圧PSL2が供給されないため、スプール弁子122が高圧位置(図において左側)に位置させられる。この状態では、上述したように、出力ポート126から高圧モジュレータ圧PLPMHが出力される。
また、第1ソレノイドバルブSL1から第1切替圧PSL1が出力されない一方、第2ソレノイドバルブSL2から第2切替圧PSL2が出力される状態では、ロックアップリレーバルブ114において、スプール弁子180が係合位置(ON位置)側に位置させられる。この状態において、上述したように、ロックアップコントロールバルブ116の油室208にリニアソレノイドバルブSLUの制御圧PSLUが供給されることで、スプール弁子200がSLIP位置乃至ON位置の範囲で制御され、ロックアップクラッチ26の係合状態(スリップ状態)が制御される。このとき、クラッチアプライコントロールバルブ112においては、第2切替圧PSL2が油室138に供給されることで、スプール弁子140がnormal位置に位置させられるため、リニアソレノイドバルブSLUの制御圧PSLUが供給される第2入力ポート144が遮断された状態となる。上記より、第2ソレノイドバルブSL2から切替圧PSL2が出力された状態では、リニアソレノイドバルブSLUの制御圧PSLUは、ロックアップクラッチ26の係合状態を制御するための制御圧として機能する。
また、元圧調圧バルブ108では、油室130に第2ソレノイドバルブSL2の切替圧PSL2が供給されるため、スプール弁子122が低圧位置(図において右側)に位置させられる。この状態では、上述したように、出力ポート126から低圧モジュレータ圧PLPMLが出力される。すなわち、ロックアップクラッチ26の作動時では、モジュレータ圧PLPMとして低圧モジュレータ圧PLPMLが出力される。この低圧モジュレータ圧PLPMLは、クラッチアプライコントロールバルブ112およびマニュアルバルブ118を介して前後進切替装置16の前進用クラッチC1または後進用ブレーキB1に供給されるが、ロックアップクラッチ26の作動状態では、トルクコンバータ14のトルク増幅作用が生じないため、前進用クラッチC1または後進用ブレーキB1に伝達されるトルクはロックアップクラッチ26の非作動時に比べて小さくなる。したがって、前進用クラッチC1または後進用ブレーキB1に低圧モジュレータ圧PLPMLが供給されても、前進用クラッチC1または後進用ブレーキB1に伝達されるトルクが小さいため、前進用クラッチC1または後進用ブレーキB1において油圧不足すなわちトルク容量不足による滑りが発生しない。
上記低圧モジュレータ圧PLPMLが出力される場合、オイルポンプ102の駆動に消費されるエネルギが小さくなる。また、リニアソレノイドバルブSLUやソレノイドモジュレータバルブ110の調圧時において油の排出による消費流量が低減されるため、オイルポンプ102のポンプサイズを小さくすることができるに従い、燃費を向上させることができる。また、前進用クラッチC1および後進用ブレーキB1で発生する作動油の漏れを防止するシールリングによる引き摺り(シールリングロストルク)も低減されることで燃費が向上する。なお、シールリングによる引き摺りは、油圧の大きさに比例して増加する。
上記のように、第1ソレノイドバルブSL1および第2ソレノイドバルブSL2の作動状態の切替に関連して、クラッチアプライコントロールバルブ112の連通状態が切り替えられて前進用クラッチC1および後進用ブレーキB1の作動状態が制御されると共に、ロックアップリレーバルブ114の連通状態が切り替えられてロックアップクラッチ26への作動状態が制御される。なお、この第1ソレノイドバルブSL1および第2ソレノイドバルブSL2は、電子制御装置50により励磁、非励磁され、車両の走行状態に応じて適宜作動状態が切り替えられる。
ところで、上述したように、ロックアップクラッチ26が作動状態にある場合、元圧調圧バルブ108から低圧モジュレータ圧PLPMLが出力されることで、燃費を向上する効果が得られているが、ロックアップクラッチ26の非作動時であっても、高圧モジュレータ圧PLPMHを必要とする場合は、例えば車両を停止させた状態でアクセルペダルを踏み込む所謂フルストール時などに限定され、所定のモード走行を含めた大抵の走行状態では、モジュレータ圧PLPMが低圧モジュレータ圧PLPMLで賄うことができる。そこで、本実施例の油圧制御回路100では、ロックアップクラッチ26の非作動時においても、モジュレータ圧PLPMを高圧モジュレータ圧PLPMHおよび低圧モジュレータ圧PLPMLのいずれかに調圧可能に構成されている。
図4は、第1ソレノイドバルブSL1の第1切替圧PSL1および第2ソレノイドバルブSL2の第2切替圧PSL2の出力に応じた前進用クラッチC1および後進用ブレーキB1(以下、前進用クラッチC1および後進用ブレーキB1を特に区別しない場合には、前後進クラッチと記載する)の係合状態、ロックアップクラッチ26の係合状態、クラッチ元圧の油圧、およびリニア元圧の油圧を示している。なお、本実施例において、クラッチ元圧とは、元圧調圧バルブ108からクラッチアプライコントロールバルブ112を介して前後進クラッチに供給される油圧、すなわちモジュレータ圧PLPMを示しており、リニア元圧とは、リニアソレノイドバルブSLUに供給される元圧すなわちモジュレータ圧PLPMを示している。したがって、本実施例では、クラッチ元圧およびリニア元圧は、共に元圧調圧バルブ108から出力されるモジュレータ圧PLPMに対応する。また、「○」は第1ソレノイドバルブSL1・第2ソレノイドバルブSL2から切替圧(PSL1、PSL2)が出力されていることを示しており、「×」が出力されていないことを示している。
図4の一番上に示すように、例えば第1ソレノイドバルブSL1の第1切替圧PSL1および第2ソレノイドバルブSL2の第2切替圧PSL2共に出力されない場合、クラッチアプライコントロールバルブ112では、スプリング154の付勢力によってスプール弁子140がnormal位置(図において、左側)に移動させられる。したがって、第1入力ポート142と第1出力ポート146とが連通させられるため、元圧調圧バルブ108のモジュレータ圧PLPMがクラッチアプライコントロールバルブ112およびマニュアルバルブ118を介して前後進クラッチに供給され、前後進クラッチの係合が保持される。ロックアップリレーバルブ114では、スプリング182の付勢力によってスプール弁子180が開放位置(OFF位置)に移動させられるため、ロックアップクラッチ26の係合制御が不可すなわちロックアップクラッチ26が開放される。元圧調圧バルブ108では、スプリング134の付勢力によってスプール弁子122が高圧位置(図において左側)に移動させられ、元圧調圧バルブ108から高圧モジュレータ圧PLPMHが出力される。すなわちクラッチ元圧およびリニア元圧が高圧となる。
また、図4の上から2番目に示すように、第1ソレノイドバルブSL1から第1切替圧PSL1が出力される一方、第2ソレノイドバルブSL2から第2切替圧PSL2が出力されない場合、クラッチアプライコントロールバルブ112では、第1切替圧PSL1が油室156に供給されるため、スプール弁子140がスプリング154の付勢力に抗ってfail/ガレージ位置(図において右側)側に移動させられる。したがって、第2入力ポート144と第1出力ポート146とが連通させられるため、リニアソレノイドバルブSLUの制御圧PSLUがクラッチアプライコントロールバルブ112およびマニュアルバルブ118を介して前後進クラッチに供給され、前後進クラッチの係合過渡期の油圧がリニアソレノイドバルブSLUによって制御される。ロックアップリレーバルブ114では、第1切替圧PSL1が油室184に供給され、スプリング182の付勢力および第1切替圧PSL1による推力によって、スプール弁子180が開放位置(OFF位置)に移動させられるため、ロックアップクラッチ26が開放される。元圧調圧バルブ108では、スプリング134の付勢力によってスプール弁子122が高圧位置(図において左側)に移動させられ、元圧調圧バルブ108から高圧モジュレータ圧PLPMHが出力される。すなわちクラッチ元圧およびリニア元圧が高圧となる。
また、図4の上から3番目に示すように、第1ソレノイドバルブSL1から第1切替圧PSL1が出力されない一方、第2ソレノイドバルブSL2から第2切替圧PSL2が出力される場合、クラッチアプライコントロールバルブ112では、第2切替圧PSL2が油室158に供給されるため、スプリング154の付勢力および第2切替圧PSL2による推力によって、スプール弁子140がnormal位置(図において、左側)に移動させられる。したがって、元圧調圧バルブ108のモジュレータ圧PLPMがクラッチアプライコントロールバルブ112およびマニュアルバルブ118を介して前後進クラッチに供給され、前後進クラッチの係合が保持される。ロックアップリレーバルブ114では、第2切替圧PSL2が油室186に供給されるため、第2切替圧PSL2による推力によってスプール弁子180がスプリング182の付勢力に抗って係合位置(ON位置)側へ移動させられる。したがって、ロックアップクラッチ26の係合制御が実施可能となる。元圧調圧バルブ108では、油室130に第2切替圧PSL2が供給されるため、第2切替圧PSL2による推力によってスプール弁子122がスプリング134の付勢力に抗って低圧位置(図において右側)に移動させられるため、元圧調圧バルブ108から低圧モジュレータ圧PLPMLが出力される。すなわちクラッチ元圧およびリニア元圧が低圧となる。
さらに、図4の1番下に示すように、第1ソレノイドバルブSL1の第1切替圧PSL1および第2ソレノイドバルブSL2の第2切替圧PSL2が出力される場合、クラッチアプライコントロールバルブ112では、第1切替圧PSL1が油室156に供給されると共に、第2切替圧PSL2が油室158に供給されるため、第2切替圧PSL2による推力およびスプリング154の付勢力によってスプール弁子140が第1切替圧PSL1による推力に抗ってnormal位置(図において、左側)に移動させられる。したがって、したがって、元圧調圧バルブ108のモジュレータ圧PLPMがクラッチアプライコントロールバルブ112およびマニュアルバルブ118を介して前後進クラッチに供給され、前後進クラッチの係合が保持される。ロックアップリレーバルブ114では、第1切替圧PSL1が油室184に供給されると共に第2切替圧PSL2が油室186に供給されるため、第1切替圧PSL1による推力およびスプリング182の付勢力によってスプール弁子180が第2切替圧PSL2による推力に抗って開放位置(OFF位置)に移動させられるため、ロックアップクラッチ26が開放される。元圧調圧バルブ108では、油室130に第2切替圧PSL2が供給されるため、第2切替圧PSL2による推力によってスプール弁子122がスプリング134の付勢力に抗って低圧位置(図において右側)に移動させられるため、元圧調圧バルブ108から低圧モジュレータ圧PLPMLが出力される。すなわちクラッチ元圧およびリニア元圧が低圧となる。
上記より、本実施例の油圧制御回路100では、第1ソレノイドバルブSL1の第1切替圧PSL1および第2ソレノイドバルブSL2の第2切替圧PSL2に基づいて、ロックアップクラッチ26の係合時(作動時)において、クラッチ元圧およびリニア元圧(モジュレータ圧PLPM)が低圧に調圧され、ロックアップクラッチ26の開放時(非作動時)において、クラッチ元圧およびリニア元圧が高圧および低圧のいずれかに調圧可能に構成されている。具体的には、第1ソレノイドバルブSL1の第1切替圧PSL1および第2ソレノイドバルブSL2の第2切替圧PSL2共に出力されない場合、ロックアップクラッチ26が非作動とされ、且つ、元圧調圧バルブ108から高圧ラインモジュレータ圧PLPMHが出力される一方、第1ソレノイドバルブSL1の第1切替圧PSL1および第2ソレノイドバルブSL2の第2切替圧PSL2共に出力される場合、ロックアップクラッチ26が非作動とされ、且つ、元圧調圧バルブ108から低圧ラインモジュレータ圧PLPMLが出力される。
図5は、前後進クラッチに入力される入力に対するモジュレータ圧PLPMの関係を示している。図5において、直線L1は、前後進クラッチに入力される入力トルクに対して最低限必要な油圧を示しており、その入力トルクに比例して必要な油圧が大きくなる。モジュレータ圧PLPMがこの直線L1の油圧よりも高い油圧に設定されることにより、前後進クラッチで発生する滑りが防止される。図5に示すように、本実施例では、低圧モジュレータ圧PLPML(低圧)が、エンジン12の定格的に予め設定されているエンジン最大トルクTemaxを伝達可能な油圧に設定され、高圧モジュレータ圧PLPMH(高圧)が、予め定格的に設定されているタービン最大トルクTtmaxを伝達可能な油圧に設定されている。なお、タービン最大トルクTtmaxは、エンジン12およびトルクコンバータ14の特性に基づいて求められる。
このように低圧モジュレータ圧PLPMLが設定されると、ロックアップクラッチ26の作動時(係合時)では、前後進クラッチに入力される入力トルクがエンジン最大トルクTemaxを越えることはないため、前後進クラッチの係合保持時において前後進クラッチの滑りが防止される。また、ロックアップクラッチ26の作動時おいて低圧モジュレータ圧PLPMLが出力されるに従い、リニアソレノイドバルブSLUやソレノイドモジュレータバルブ110等の調圧時の消費流量が低減され、また、前後進クラッチでの引き摺りが低減されるため燃費が向上する。
また、ロックアップクラッチ26の非作動時(開放時)にあっても、前後進クラッチに入力される入力トルクがエンジン最大トルクTemaxまでの領域では、低圧モジュレータ圧PLPMLが出力されることで、ロックアップクラッチ26の作動時と同様に燃費が向上する。一方、ロックアップクラッチ26の非作動時(開放時)に前後進クラッチに入力される入力トルクがエンジン最大トルクTemaxを越えると、高圧モジュレータ圧PLPMHに切り替えられることで、前後進クラッチに入力された入力トルクによる前後進クラッチの滑りが防止される。
また、本実施例のベルト式の無段変速機18では、車両走行中に急停止させると、ロックアップクラッチ26が速やかに開放され、次回の車両発進に備えて減速中に無段変速機18の変速比が速やかに予め設定されている変速比γ(例えば最減速変速比γmax)に変速される。このとき、高圧モジュレータ圧PLPMHが出力されている場合、消費流量が増加するため、無段変速機18の変速比γを制御する駆動側油圧アクチュエータ42cおよび従動側油圧アクチュエータ46cに十分な作動油を供給することが困難となる。したがって、無段変速機18の変速が間に合わず、無段変速機18が不完全な変速比γとなり、次回の再発進時において駆動力が不足が発生する可能性がある。これに対して、低圧モジュレータ圧PLPMLでは、消費流量が低減されて、無段変速機18の駆動側油圧アクチュエータ42cおよび従動側油圧アクチュエータ46cに供給される作動油が確保されるため、車両急停止時の速やかな変速が可能となり、次回の車両再発進時の駆動力不足が解消される。
ところで、ロックアップクラッチ26の作動状態で走行中は低圧モジュレータ圧PLPMLが出力されるが、この状態で車両を急停止させる場合などでは、ロックアップクラッチ26が速やかに開放され、さらに、車両停止時のアクセルペダルの踏み込み(フルストール)に備えて油圧を確保するため、モジュレータ圧PLPMが高圧モジュレータ圧PLPMHに切り替えられる。図6(a)は、上記ロックアップクラッチ26を作動させた状態での走行中に車両を急停止させた際において、順次切り替えられるソレノイドパターンを示しており、図7は、図6のソレノイドパターンを具体的に示す一覧表である。なお、図7において、「○」は該当するソレノイドバルブ(第1ソレノイドバルブSL1、第2ソレノイドバルブSL2)が作動状態すなわち切替圧(PSL1、PSL2)が出力されることを示しており、「×」は該当するソレノイドバルブが非作動状態すなわち切替圧(PSL1、PSL2)が出力されないことを示している。また、「△」はリニアソレノイドバルブSLUから制御圧PSLUが出力されていることを示している。
図6(a)に示すパターン2は、ロックアップクラッチ26を作動させた状態での走行時のソレノイドパターンに対応しており、具体的には、図7に示すように第2ソレノイドバルブSL2が作動される、すなわち第2切替圧PSL2が出力されると共に、リニアソレノイドバルブSLUから制御圧PSLUが出力されることで、ロックアップクラッチ26の係合状態が制御圧PSLUによって制御され、元圧調圧バルブ108からモジュレータ圧PLPM(クラッチ元圧)として低圧モジュレータ圧PLPMLが出力されている。
また、パターン4は、車両を停止させた時のソレノイドパターンに対応しており、図7に示すように、第1ソレノイドバルブSL1、第2ソレノイドバルブSL2、およびリニアソレノイドバルブSLUが非作動状態とされる。このとき、ロックアップクラッチ26が開放され、且つ、第2ソレノイドバルブSL2から第2切替圧PSL2が出力されないため、元圧調圧バルブ108から高圧モジュレータ圧PLPMHが出力される。
上記パターン2からパターン4にソレノイドパターンを切り替える際、図6(a)に示すように、実線で示すパターン2’、パターン3、およびパターン2’を順次経由して切り替えられる。パターン2で走行中、例えばブレーキペダルの踏み込み等に基づいて車両の停止が判定されると、まず、ソレノイドパターン2からパターン2’に切り替えられる。パターン2’は、図7に示すように、パターン2においてリニアソレノイドバルブSLUの制御圧PSLUが停止された状態に対応している。リニアソレノイドバルブSLUの制御圧PSLUが停止されると、ロックアップコントロールバルブ116において、スプール弁子200がスリップ位置に移動させられるため、セカンダリ圧PL2がロックアップコントロールバルブ116およびロックアップリレーバルブ114を介してロックアップクラッチ26の開放側油室176に供給される。したがって、開放側油室176と係合側油室172との差圧ΔPが零となり、実質的にロックアップクラッチ26が開放された状態となる。
次いで、パターン2’からパターン3にソレノイドパターンが切り替えられる。パターン3は、図7に示すように、第1ソレノイドバルブSL1の第1切替圧PSL1および第2ソレノイドバルブSL2の第2切替圧PSL2が出力されるものであり、パターン2’の状態から第1ソレノイドバルブSL1の第1切替圧PSL1が出力されることで切り替えられる。ここで、パターン2’からパターン3への切替は、ロックアップリレーバルブ114のスプール弁子180をOFF位置側に切り替えるために実施される。パターン3では、第1ソレノイドバルブSL1の第1切替圧PSL1が出力されることによって、ロックアップリレーバルブ114のスプール弁子180がOFF位置側に移動させられることで、ロックアップクラッチ26の油路が切り替えられてロックアップクラッチ26が開放された状態となる。ロックアップクラッチ26の急開放性能を最大限発揮させるためには、パターン2’を経由せず、パターン1からパターン3としてもよい。
そして、パターン3からパターン4に切り替えるに際して、第1ソレノイドバルブSL1の第1切替圧PSL1および第2ソレノイドバルブSL2の第2切替圧PSL2が順次非作動に切り替えられるが、本実施例では、必ず実線で示すパターン3からパターン2’を経由してパターン4となるように制御される。具体的には、パターン3の状態から先ず第1ソレノイドバルブSL1の第1切替圧PSL1が停止され(パターン2’)、次いで第2ソレノイドバルブSL2の第2切替圧PSL2が停止される(パターン4)ように制御される。
パターン3からパターン2’に切り替えられると、第1ソレノイドバルブSL1の第1切替圧PSL1が停止されるが、実質的にはパターン2の状態と変わらない。すなわち、ロックアップクラッチ26は開放され、元圧調圧バルブ108からは低圧モジュレータ圧PLPMLが出力される。そして、パターン2’の状態から第2ソレノイドバルブSL2の第2切替圧PSL2が停止されることにより、パターン4に移行する。このとき、第2ソレノイドバルブSL2の第2切替圧PSL2が停止されることで、元圧調圧バルブ108のモジュレータ圧PLPMが低圧モジュレータ圧PLPMLから高圧モジュレータ圧PLPMHに切り替えられる。
ここで、パターン3からパターン4に切り替えられる際、仮に図6(a)の破線で示すように、先に第2ソレノイドバルブSL2の第2切替圧PSL2が停止されると、図7に示すパターン1となる。このとき、クラッチアプライコントロールバルブ112では、第2切替圧PSL2が停止されることにより、過渡的にスプール弁子140がfail/ガレージ位置に移動させられるため、第2入力ポート144と第1出力ポート146とが連通される。すなわち、リニアソレノイドバルブSLUの制御圧PSLUが、クラッチアプライコントロールバルブ112およびマニュアルバルブ118を介して前後進クラッチに供給される(ガレージシフト)ように油路が切り替えられる。このとき、既にリニアソレノイドバルブSLUの制御圧PSLUが出力されないため、前後進クラッチに供給される油圧が低下するに従いトルク容量が大きく低下し、前後進クラッチにおいて滑りが発生してしまう。これに対して、本実施例では、ソレノイドパターンをパターン3からパターン4へ切り替えるに際して、その過渡期にパターン1に切り替わるのを回避することにより、ガレージシフトが防止されるため、前後進クラッチの滑りが回避される。
図6(b)は、上記パターン4(第1ソレノイドバルブSL1および第2ソレノイドバルブSL2非作動)からパターン3(第1ソレノイドバルブSL1および第2ソレノイドバルブSL2作動)にソレノイドパターンを切り替える際の経路を示している。パターン4からパターン3に切り替える際には、パターン2’(第2ソレノイドバルブSL2作動)を経由して切り替えられる。パターン4で走行中、アクセルペダルが踏み込まれていないことなどに基づいて、パターン3への切替が判断されると、パターン2’に切り替えられる。パターン2’は、図7に示すように、パターン2においてリニアソレノイドバルブSLUの制御圧PSLUが停止された状態に対応している。そして、パターン2’からパターン3に切り替えられる。
ここで、パターン4からパターン3に切り替えられる過渡期に、仮に図6(b)の破線で示すように、先に第2ソレノイドバルブSL1の第1切替圧PSL1が出力されると、図7に示すパターン1となる。このとき、リニアソレノイドバルブSLUの制御圧PSLUが、クラッチアプライコントロールバルブ112およびマニュアルバルブ118を介して前後進クラッチに供給される(ガレージシフト)ように油路が切り替えられる。このより、前後進クラッチに供給される油圧が低下して前後進クラッチにおいて滑りが発生する可能性がある。これに対して、本実施例では、ソレノイドパターンをパターン4からパターン3へ切り替えるに際して、その過渡期にパターン1に切り替わるのを回避することにより、ガレージシフトが防止されるため、前後進クラッチの滑りが回避される。
電子制御装置50は、車両を停止させるに際して、図8に示す車両停止判定手段220およびソレノイド切替手段222を機能的に備えている。車両停止判定手段220は、例えばアクセルペダル68の操作量であるアクセル開度Accを表すアクセル開度信号およびフットブレーキの操作の有無BONを表すブレーキ操作信号等に基づいて、車両を停止させるか否かを判定する。
ソレノイド切替手段222は、車両停止判定手段220によって車両を停止させるものと判定されると、車両停止動作時に予め設定されているソレノイドパターンに切り替える。具体的には、ロックアップクラッチ26の作動(図7のパターン2に対応)中に車両を停止させる場合、先ず、リニアソレノイドバルブSLUの制御圧PSLUを停止してロックアップクラッチ26の開放側油路176にセカンダリ圧PL2を供給することで、ロックアップクラッチ26を実質的に開放状態とする(パターン2’)。次いで、ロックアップリレーバルブ114をOFF側位置(開放位置)に切り替えるため、第1ソレノイドバルブSL1の第1切替圧PSL1を出力する(パターン3)。このとき、第1ソレノイドバルブSL1および第2ソレノイドバルブSL2の両方から切替圧(PSL1、PSL2)が出力され、元圧調圧バルブ108から低圧モジュレータ圧PLPMLが出力されているが、車両を停止させた際のフルストールに備えて、モジュレータ圧PLPMを高圧モジュレータ圧PLPMHに切り替える(パターン4)。
ここで、ソレノイド切替手段222は、パターン3からパターン4に切り替えるに際して、先ず、第1ソレノイドバルブSL1の第1切替圧PSL1を停止させてパターン2’を形成し、次いで第2ソレノイドバルブSL2の第2切替圧PSL2を停止させてパターン4に移行する。これにより、パターン4からパターン3へ切り替わる過渡期に第1ソレノイドバルブSL1の第1切替圧PSL1のみが出力される図7に示すパターン1が一時的に形成されるのが防止される。上記パターン1の形成が回避されることにより、クラッチアプライコントロールバルブ112がガレージ位置とされることが回避され、前後進クラッチのトルク容量不足による油圧低下が防止される。
図9は、図8の電子制御装置50の制御作動の一部、具体的にはロックアップクラッチ26の作動時に車両を停止させるに際して、前後進クラッチの滑りを防止する制御作動を説明するためのフローチャートであり、例えば数msec乃至数十msec程度の極めて短いサイクルタイムで繰り返し実施されるものである。
先ず、ステップS1(以下、ステップを省略)において、現在の走行状態がロックアップクラッチ26の作動を伴う走行(ロックアップオン走行)、具体的には、図7に示すパターン2の走行であるか否かが判定される。S1が否定される場合、本ルーチンは終了させられる。S1が肯定される場合、車両停止判定手段220に対応するS2において、車両が停止されるか否かが判定される。S2が否定される場合、本ルーチンは終了させられる。S2が肯定される場合、ソレノイド切替手段222に対応するS3において、リニアソレノイドバルブSLUの制御圧PSLUが停止されることで、図7に示すパターン2’に切り替えられ、ロックアップクラッチ26が実質的に開放される。
次いで、ソレノイド切替手段222に対応するS4において、第1ソレノイドバルブSL1の第1切替圧PSL1が出力されることで、図7に示すパターン3に切り替えられ、ロックアップリレーバルブ114がOFF位置側に切り替えられる。次いで、ソレノイド切替手段222に対応するS5において、第1ソレノイドバルブSL1の第1切替圧PSL1が停止され、再びパターン2’に切り替えられる。そして、ソレノイド切替手段222に対応するS6において、さらに第2ソレノイドバルブSL2の第2切替圧PSL2が停止され、図7に示すパターン4に切り替えられる。このパターン3(S4)からパターン4(S6)への切替過渡期において、パターン2’(S5)を経由することで、図7のパターン1の状態が回避され、前後進クラッチの滑りが防止される。
上述のように、本実施例によれば、ロックアップクラッチ26が作動状態にある場合には、元圧調圧バルブ108から出力される元圧として機能するモジュレータ圧PLPMが低圧モジュレータ圧PLPMLに切り替えられ、ロックアップクラッチ26が非作動状態にある場合には、第1ソレノイドバルブSL1の第1切替圧PSL1および第2ソレノイドバルブSL2の第2切替圧PSL2に応じてモジュレータ圧PLPMを高圧モジュレータ圧PLPMHおよび低圧モジュレータ圧PLPMLの何れかに切り替えることができる。したがって、ロックアップクラッチ26が非作動状態にあってもモジュレータ圧PLPMを適宜低圧モジュレータ圧PLPMLとすることができるに従い、オイルポンプ102で消費されるエネルギが小さくなるため、燃費を向上させることができる。また、モジュレータ圧PLPMが供給される油圧部品である前後進クラッチ(前進用クラッチC1、後進用ブレーキB1)において、油圧の大きさに比例して増加するシールリングによる引き摺り(シールリングロストルク)も低減されるに従い燃費が向上する。
具体的には、第2ソレノイドバルブSL2から第2切替圧PSL2が出力される場合、ロックアップリレーバルブ114が作動側に切り替えられると共に、元圧調圧バルブ108から出力されるモジュレータ圧PLPMが低圧モジュレータ圧PLPMLに切り替えられる。したがって、ロックアップクラッチ26が作動状態にある場合には、モジュレータ圧PLPMが低圧モジュレータ圧PLPMLとなるため燃費を向上させることができる。また、第1ソレノイドバルブSL1の第1切替圧PSL1および第2ソレノイドバルブの第2切替圧PSL2共に出力されない場合、ロックアップリレーバルブ114が非作動側に切り替えられると共に、元圧調圧バルブ108から出力されるモジュレータ圧PLPMが高圧モジュレータ圧PLPMHに切り替えられる。したがって、例えばフルストール時など高圧のモジュレータ圧PLPMが必要な場合には、高圧モジュレータ圧PLPMHを供給することが可能となる。さらに、第1ソレノイドバルブSL1の第1切替圧PSL1および第2ソレノイドバルブSL2の第2切替圧PSL2が出力される場合、ロックアップリレーバルブ114が非作動側に切り替えられると共に、元圧調圧バルブ108から出力されるモジュレータ圧PLPMが低圧モジュレータ圧PLPMLに切り替えられる。したがって、ロックアップクラッチ26が非作動状態であってもモジュレータ圧PLPMを低圧モジュレータ圧PLPMLとすることができるに従い、燃費を向上させることができる。
また、本実施例によれば、元圧調圧バルブ108から出力されるモジュレータ圧PLPMは、リニアソレノイドバルブSLUの元圧、および前後進クラッチ(前進用クラッチC1、後進用ブレーキB1)に供給される元圧として使用されるため、リニアソレノイドバルブSLUおよび前後進クラッチで必要とされる元圧が低圧ですむ場合には、モジュレータ圧PLPMを低圧モジュレータ圧PLPMLに切り替えることで燃費を向上させることができる。
また、本実施例によれば、クラッチアプライコントロールバルブ112およびロックアップリレーバルブ114の油路の連通状態が第1ソレノイドバルブSL1の第1切替圧PSL1および第2ソレノイドバルブSL2の第2切替圧PSL2によって切り替えられることで、1つのリニアソレノイドバルブSLUによってロックアップクラッチ26の係合制御と前後進切替装置16の前後進クラッチの係合制御とを好適に実施することができる。
また、本実施例によれば、第1ソレノイドバルブSL1の第1切替圧PSL1および第2ソレノイドバルブSL2の第2切替圧PSL2が出力された状態から、その第1切替圧PSL1の第1切替圧PSL1およびその第2切替圧PSL2が出力されない状態に切り換える際には、第2ソレノイドバルブSL2の第2切替圧PSL2のみが出力された状態を経由して切り替えられるため、切替過渡期において第1ソレノイドバルブSL1の第1切替圧PSL1のみが出力される状態が回避される。第1ソレノイドバルブSL1の第1切替圧PSL1のみが出力される場合、クラッチアプライコントロールバルブ112において、前後進クラッチの係合油圧がリニアソレノイドバルブSLUの制御圧PSLUに切り替えられる。ここで、リニアソレノイドバルブSLUの制御圧PSLUは、元圧調圧バルブ108から出力されるモジュレータ圧PLPMに比べて低圧であることから、前後進クラッチの係合油圧がリニアソレノイドバルブSLUの制御圧PSLUに切り替えられると、その過渡的に前後進クラッチのトルク容量が不足して滑りが発生する可能性が生じる。これに対して、第1ソレノイドバルブSL1の第1切替圧PSL1のみが出力される状態が回避されることでその滑りが防止される。
また、本実施例によれば、第1ソレノイドバルブSL1の第1切替圧PSL1および第2ソレノイドバルブSL2の第2切替圧PSL2が出力されない状態から、その第1切替圧PSL1の第1切替圧PSL1およびその第2切替圧PSL2が出力される状態に切り換える際には、第2ソレノイドバルブSL2の第2切替圧PSL2のみが出力された状態を経由して切り替えられるため、切替過渡期において第1ソレノイドバルブSL1の第1切替圧PSL1のみが出力される状態が回避される。第1ソレノイドバルブSL1の第1切替圧PSL1のみが出力される場合、クラッチアプライコントロールバルブ112において、前後進クラッチの係合油圧がリニアソレノイドバルブSLUの制御圧PSLUに切り替えられる。この過渡的に前後進クラッチのトルク容量が不足して滑りが発生する可能性が生じる。これに対して、第1ソレノイドバルブSL1の第1切替圧PSL1のみが出力される状態が回避されることでその滑りが防止される。
つぎに、本発明の他の実施例を説明する。なお、以下の説明において前述の実施例と共通する部分には同一の符号を付してその説明を省略する。