光干渉は、測定感度が非常に高く、物体形状を超精密に測定できる一般的な測定技術として、長年にわたって研究開発が進められてきた。中でも、マイケルソン干渉計は、光の偏光と干渉を利用し2枚のミラーの相対変位を、ナノオーダーの高精度で測定することができる測長光学干渉計であり、位置検出器として三次元形状測定装置に広く用いられている。マイケルソン干渉計のうちミラー間に2本の光路が通っているものは一般にダブルパスと言われ、参照ミラーと測定ミラーの相対変位を測定する位置検出器を構成している。図10はダブルパスの位置検出器の一例を示す。この位置検出器では、レーザーヘッド201から出射されたレーザービームは偏光ビームスプリッタ204で分離され、1/4波長板206,207を経て参照ミラー209と測定ミラー210に入射する。偏光ビームスプリッタ204と1/4波長板206及び参照ミラー209の間には光路調整用のミラー211が配置されている。それぞれのミラー209,210で反射されたレーザービームは、コーナーキューブ205と偏光ビームスプリッタ204を経由し、再度それぞれのミラー209,210に入射する。ミラー209,210で再度反射された2つのレーザービームは、偏光ビームスプリッタ204で再び同一のレーザービームとなり、レシーバー212で干渉波がレーザーパワーとして検知される。レシーバー212で検知された干渉波から参照ミラー209に対する測定ミラー210の相対変位が測定される。この図10に示す位置検出器では、単一の参照ミラー209に対する単一の測定ミラー210の相対変位を測定している。つまり、位置を測定したいミラー(測定ミラー)が1個あれば、それに対応して1個の位置検出器を設ける必要がある。そのため、この位置検出器を三次元形状測定装置に搭載する場合、測定ミラーの数を多くしようとすると、それに伴って位置検出器自体の数が多くなってしまう。
一方で近年、形状をナノオーダーで測定するニーズは光学部品の分野に多い。例えば近年、デジタルカメラ等に使用される非球面レンズの薄型化、高画質化、高倍率化等の要求に応えるため、回転対称物体であるレンズの形状、表裏面の軸の傾き・偏心に要求される精度が高まってきている。非球面レンズは、設計値に対して0.1ミクロン以下の誤差範囲で製作しなければならず、そのためには形状を0.01ミクロンオーダーで測定し、傾き・偏心を高精度に測定し、その測定結果をレンズの加工条件にフィードバックすることが求められている。
以上の背景を受け、位置検出器としてマイケルソン干渉計を搭載し、非球面レンズやその金型の形状を、表裏の片面について0.01ミクロンオーダーの超高精度で測定し、表裏の軸の傾き・偏心を測定する三次元測定装置が開発されている。例えば、特許文献1,2にこの種の三次元形状測定装置が記載されている。
図11は、特許文献1に記載された三次元形状測定装置を示す。測定対象1に、上下両面に配置された測定用プローブ501f、501bを接触させる。X方向の変位の測定を説明すると、上下の測定用プローブ501f、501bに固定されたミラーに4本のレーザービームX1u、X2u、X1d、X2dを設け、ミラー変位を各々のマイケルソン干渉計で測定している。この図11の三次元形状測定装置では、上下の測定用プローブ501f,501bの水平2方向(X方向及びY方向)についての移動距離及び傾きに加え、上下の測定用プローブ501f,501bの垂直方向の移動距離をそれぞれ測定する必要がある。つまり、個々の測定用プローブ501,501fについて5個の位置測定が必要となり、それぞれについて干渉計ないし位置検出器が必要である。そのため、三次元形状測定装置全体としては、少なくとも10個の位置検出器が必要となる。それぞれの位置検出器にはミラー、偏光ビームスプリッタ、コーナーキューブ等の高価な光学部品が必要であるので、三次元形状測定装置内部の位置検出器の数が多くなると、その分光学部品の数も多くなり、コストが莫大になる。また位置検出器が多数存在すると、それらを構成する光学部品の位置調整をする手間が長くかかるという課題があった。さらに、光学部品には個体差があり各々に光学的誤差が存在する上、光学部品の固定部材や接着材料が、熱変形等の経時変化を起こし、これらが測定誤差となって装置性能に影響する。そのため、位置検出器の数が多くなり、それに使用される光学部品が異なると、それらの個体差が足し合わされて、測定結果に誤差が生じる。以上の課題は、三次元形状装置を量産する上で精度やコストの点で極めて深刻な課題であった。特許文献1の三次元形状測定装置は、前記のようにXYZの直交座標系についてマイケルソン干渉計を合計10個も使用しているため、装置が極めて複雑、大型、高価であり、調整も煩雑な上、十分な精度が得られない。
図12は、特許文献2に記載された三次元形状測定装置を示す。この三次元形状測定装置では、特許文献1と同様に、測定対象1に、上下両面に配置された測定用プローブ601f、601bを接触させている。測定用プローブ601f、601bは、共通のガイドレール部602に沿った上下方向の移動のみが可能な可動部にそれぞれ固定されており、測定対象1を固定しているステージ603(水平2方向に可動)に固定されたミラー604にレーザービームXを設け、このミラー604の変位をマイケルソン干渉計で測定している。特許文献2の三次元形状測定装置では、測定対象1は水平方向に可動なステージ603に乗せられている。そして、ガイドレール部602に沿った上下方向への可動部で支持されている2つの測定プローブ601f、601bが測定対象1に接触し、測定対象1を両面同時に測定する構成となっている。
特許文献2の三次元形状測定装置では、2つの可動部のガイドレール部602は、同一加工面で構成されているため、特許文献1の三次元形状測定装置とは異なり、2つの測定用プローブ601f,601bのそれぞれについて水平2方向(X方向とY方向)の変位と傾きを測定する必要はない。また、上下の測定用プローブ601f、601bのXYZ方向の位置ズレは、校正球を測定した測定データと設計値との差が最小になるようにXYZ方向に座標変換するアライメントを行う事で補正できるので、測定誤差とならない。つまり、測定対象(レンズやその金型等)の測定前に、予め形状寸法が既知である校正球を測定し、上下の測定用プローブ601f,601bの同軸度、高さ方向の基準座標を校正し、校正球を基準とした測定物の測定結果が得られる。特許文献2の三次元形状測定装置は、特許文献1のものと比較して以上の利点があった。
特許文献2に記載の三次元形状測定装置では、前述の校正作業の直後は校正球を基準とした測定結果(上下の測定用プローブ601f、601bの位置ズレを測定誤差として含まない。)が得られる。しかし、校正作業後に一定の時間が経過すると、校正された上下の測定用プローブ601f,601bの同軸度・高さ方向の基準座標は校正値から変化し、その結果正しい測定結果が出力されないという課題があった。この同軸度・高さ方向の基準座標の校正値からの変化は、温度・湿度・振動等の外部環境・測定機内部環境が経時的に変化するために、光学系のミラーが固定されている基板や接着剤が熱変形し、2つの測定用プローブ601f,601bの相対位置が変化することに起因する。具体的には、上下の測定要プローブ601f,601bの位置ズレが最大で約0.1ミクロン程度生じ、この値がそのまま測定誤差となるという課題があった。測定中に誤って触れることで測定用プローブ601f、601bの位置が変わってしまうことも度々ある。この場合には都度、校正作業を実施することが必要となり、全体の測定作業時間が非常に長くなり、作業自体も煩雑であるという課題があった。
特許第3486546号明細書
特開第2008−116279号公報
本発明は、三次元形状測定装置における前述の課題を解決するもので、単一の位置検出器で複数の測定ミラーの変位を測定可能とし、測定ミラーの数が増えても位置検出器を増やす必要をなくし、それによって小型で安価な三次元形状測定装置を提供することを目的とする。
また、本発明は、位置検出器の光学部品の個体差、光学部品の経時変化等の誤差因子の影響を受けず安価で構成しやすい三次元形状測定装置を提供することを目的とする。
さらに、本発明は、測定用プローブ間の位置ズレの校正の必要がない単純な測定作業を実現し、短時間で測定対象の傾き・偏心を高精度に測定できる三次元形状測定装置を提供することを目的とする。
第1の発明は、互いに異なる方向から測定対象の表面を走査する第1及び第2の測定用プローブと、前記第1及び第2の測定用プローブの特定の可動方向の位置を検出する位置検出器とを備える三次元形状測定装置であって、それぞれ前記第1及び第2の測定用プローブに固定され、かつ前記可動方向に対して垂直な第1及び第2の測定ミラーと、前記可動方向の位置が固定され、かつ前記可動方向に対して垂直な参照ミラーとを備え、前記位置検出器は、互いに平行な第1及び第2のレーザービームを発生するレーザー光源部と、前記レーザー光源部からの前記第1及び第2のレーザービームが偏光面の異なる位置に入射し、前記レーザー光源部から入射した前記第1のレーザービームを前偏光面で2つに分岐させて前記第1の測定ミラーと前記参照ミラーに入射させると共に、前記レーザー光源部から入射した前記第2のレーザービームを前偏光面で2つに分岐させて前記第2の測定ミラーと前記参照ミラーに入射させる偏光ビームスプリッタと、前記第1の測定ミラー、前記第2の測定ミラー、及び前記参照ミラーと、前記偏光ビームスプリッタとの間にそれぞれ配置された1/4波長板と、前記偏光ビームスプリッタと前記第1の測定ミラーの間の前記第1のレーザービームと、前記偏光ビームスプリッタと前記第2の測定ミラー間の前記第2のレーザービームとのうち、一方を反射して他方を通過させる部分反射ミラーと、前記第1の測定ミラーと前記参照ミラーで反射された前記第1のレーザービームを、前記部分反射ミラーと前記偏光ビームスプリッタを介して受光し、受光した前記第1のレーザービームの干渉から前記第1の測定ミラーの前記参照ミラーに対する相対位置を算出する第1の受光・演算部と、前記第2の測定ミラーと前記参照ミラーで反射された前記第2のレーザービームを、前記部分反射ミラーと前記偏光ビームスプリッタを介して受光し、受光した前記第2のレーザービームの干渉から前記第2の測定ミラーの前記参照ミラーに対する相対位置を算出する第2の受光・演算部とを備える、三次元形状測定装置を提供する。
具体的には、前記第1及び第2の測定用プローブのうち、一方は前記測定対象の上面を走査し、他方は測定対象の下面を走査する。
この三次元形状測定装置が備える位置検出器は、偏光ビームスプリッタの偏光面の異なる位置に第1及び第2のレーザービームを入射させ、かつ偏光ビームスプリッタと第1及び第2の測定ミラーの間に第1及び第2のレーザービームのうち一方を反射して他方を通過させる部分反射ミラーを設けている。この位置検出器では共通の参照ミラーに対する第1及び第2の測定ミラーの相対位置を測定する。つまり、単一の位置検出器で複数の測定ミラーの変位が測定可能である。従って、測定ミラーの数が増えても位置検出器を増やす必要がなく、この点で三次元形状測定装置は小型で安価なものとなる。
また、少ない光学部品からなるシンプルな構成の単一の位置検出器で複数の測定ミラー(第1及び第2の測定ミラー)の変位を測定できるため、光学部品の光学特性の個体差、光学部品の接着条件の差異、光学部品接着基板の熱膨張、外部雰囲気のゆらぎによるレーザービームの波長の変化等の誤差因子の影響を排除ないし軽減でき、さらに位置検出器自体がシンプルであるため容易に光学部品を配置、組み立てることが可能である。
さらに、第1及び第2の測定用プローブの位置を共通の位置検出器で検出するので、第1及び第2の測定用プローブ間の位置ズレの校正が必要なく、測定作業を単純化でき、短時間で測定対象の傾き・偏心を高精度に測定できる。
第2の発明は、測定対象の表面を走査する測定用プローブと、前記測定用プローブの特定の可動方向の位置を検出する位置検出器とを備える三次元形状測定装置であって、前記測定用プローブに固定され、かつ前記可動方向に対して垂直な反射面を有する測定ミラーと、前記可動方向の位置が固定され、かつ前記可動方向に対して垂直な反射面を有する参照ミラーとを備え、前記位置検出器は、互いに平行な第1及び第2のレーザービームを発生するレーザー光源部と、前記レーザー光源部からの前記第1及び第2のレーザービームが偏光面の異なる位置に入射し、前記レーザー光源部から入射した前記第1のレーザービームを前偏光面で2つに分岐させて前記測定ミラーの一部である第1の領域と前記参照ミラーに入射させると共に、前記レーザー光源部から入射した前記第2のレーザービームを前偏光面で2つに分岐させて前記測定ミラーのうちの前記第1の領域とは異なる部分である第2の領域と前記参照ミラーに入射させる偏光ビームスプリッタと、前記測定ミラー及び前記参照ミラーと、前記偏光ビームスプリッタとの間にそれぞれ配置された1/4波長板と、前記偏光ビームスプリッタと前記測定ミラーの前記第1の領域間の前記第1のレーザービームと、前記偏光ビームスプリッタと前記測定ミラーの前記第2の領域間の前記第2のレーザービームとのうち、一方を反射して他方を通過させる部分反射ミラーと、前記測定ミラーの前記第1の領域と前記参照ミラーで反射された前記第1のレーザービームを、前記部分反射ミラーと前記偏光ビームスプリッタを介して受光し、受光した前記第1のレーザービームの干渉から前記第1の測定ミラーの第1の領域の前記参照ミラーに対する相対位置を算出する第1の受光・演算部と、前記測定ミラーの前記第2の領域と前記参照ミラーで反射された前記第2のレーザービームを、前記部分反射ミラーと前記偏光ビームスプリッタを介して受光し、受光した前記第2のレーザービームの干渉から前記測定ミラーの第2の領域の前記参照ミラーに対する相対位置を算出する第2の受光・演算部と、
前記第1及び第2の受光・演算部が算出した前記測定ミラーの前記第1及び第2の領域の前記参照ミラーに対する相対位置から前記測定ミラーの前記可動方向に対する傾きを算出する傾き演算部とを備える、三次元形状測定装置を提供する。
この三次元形状測定措置が備える位置検出器は、偏光ビームスプリッタの偏光面の異なる位置に第1及び第2のレーザービームを入射させ、かつ偏光ビームスプリッタと測定ミラーの第1及び第2の領域の間に第1及び第2のレーザービームのうちの一方を反射して他方を通過させる部分反射ミラーを設けている。この位置検出器では共通の参照ミラーに対する測定ミラーの第1及び第2の領域の相対位置を測定する。つまり、単一の位置検出器で単一の測定ミラーの異なる領域の変位が測定し、単一の位置検出器で測定ミラーの変位と傾きの両方を測定可能である。従って、測定ミラーの変位と傾きのそれぞれについて位置検出器を設ける必要がなく、この点で三次元形状測定装置は小型で安価なものとなる。
また、少ない光学部品からなるシンプルな構成の単一の位置検出器で測定ミラーの複数の領域の変位を測定し、それによって測定ミラーの変位と傾きの両方を測定できるため、光学部品の光学特性の個体差、光学部品の接着条件の差異、光学部品接着基板の熱膨張、外部雰囲気のゆらぎによるレーザービームの波長の変化等の誤差因子の影響を排除ないし軽減でき、さらに位置検出器自体がシンプルであるため容易に光学部品を配置、組み立てることが可能である。
本発明の三次元形状測定装置が備える位置検出器は、共通の参照ミラーに対する第1及び第2の測定ミラーや、測定ミラーの第1及び第2の領域に対する相対位置を測定できる。つまり、単一の位置検出器で複数の測定ミラーや測定ミラーの複数の領域の相対位置を測定可能である。従って、測定ミラーの数の増加や測定ミラーの傾き測定のために位置検出器を増やす必要がなく、小型で安価な三次元形状測定装置を実現できる。
また、少ない光学部品からなるシンプルな構成の単一の位置検出器で複数の測定ミラーや測定ミラーの複数の変位を測定できるため、光学部品の光学特性の個体差、光学部品の接着条件の差異、光学部品接着基板の熱膨張、外部雰囲気のゆらぎによるレーザービームの波長の変化等の誤差因子の影響を排除ないし軽減でき、さらに位置検出器自体がシンプルであるため容易に光学部品を配置、組み立てることが可能である。
さらに、第1及び第2の測定用プローブの位置を共通の位置検出器で検出できるので、第1及び第2の測定用プローブ間の位置ズレの校正が必要なく、測定作業を単純化でき、短時間で測定対象の傾き・偏心を高精度に測定できる。
以下に本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
本発明の実施形態を図1から図9を用いて説明する。図1は、本発明の実施形態の三次元形状測定装置を示す。
この三次元形状測定装置は、石定盤11上をXY方向移動装置12によって水平2方向(X方向及びY方向)に移動するガイドレール13(Z方向に延びる)を備える。このガイドレール13上をZ方向に昇降する測定用プローブ2,3が設けられている。上側の測定プローブ2は下向きに延びるスタイラス2aを備え、下側の測定プローブ3は上向きに延びるスタイラス3aを備える。測定用プローブ2,3はスタイラス2a,3aの先端が微小な接触圧で測定対象1の上下面に接触した状態を維持するように、測定プローブ移動装置14,15によりガイドレール13上をZ方向に移動する。例えば軸対称非球面レンズやその金型である測定対象1は、石定盤11に対して固定されたステージ16に保持される。
上側の測定用プローブ2には、X測定ミラー4、Y測定ミラー(図示せず)、及びZ測定ミラー8が固定されている。同様に下側の測定用プローブ3には、X測定ミラー5、Y測定ミラー(図示せず)、及びZ測定ミラー9が固定されている。つまり、X測定ミラー4,5、2個のY測定ミラー、及びZ測定ミラー8,9は、それぞれ測定用プローブ2,3のX軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向の変位に伴って変位する。X測定ミラー4,5、2個のY測定ミラー、及びZ測定ミラー8,9の反射面は、それぞれX方向、Y方向、及びZ方向に対して垂直である。X測定ミラー4,5に対応して、X方向に対して垂直な反射面を有するX参照ミラー6が設けられている。このX参照ミラー6は石定盤11から鉛直方向上向きに延びる固定壁17に固定されている。同様に、前述した2個のY測定ミラー(図示せず)に対応して、Y方向に対して垂直な反射面を有し、かつ石定盤11に対して固定されてY参照ミラー(図示)が設けられている。2つのY測定ミラーとそれに対応するY参照ミラーの配置は、X測定ミラー4,5とX参照ミラー6の配置をZ軸周りに90度回転させた配置である。Z測定ミラー8,9に対応して、Z方向に対して垂直な反射面を有するZ参照ミラー10が設けられている。このZ参照ミラー10は石定盤11に対して固定されている。
図1の三次元形状測定装置は、測定対象1に対する測定用プローブ2,3の相対位置を、X、Y、Z方向について測定する構成となっている。X方向の位置測定は、ダブルパスのマイケルソン干渉計である位置検出器7により実行される。具体的には、位置検出器7はX測定ミラー4に対しレーザービームX1を、X測定ミラー5に対しレーザービームX2を、X参照ミラー6に対しレーザービームX3を、それぞれ入射させる(図1では、レーザーの経路が重複したダブルパスを図示しているが、各ミラーで反射するレーザーを1本としてレーザー名称をつけている)。レーザービームX1〜X3は位置検出器7のレシーバー212,213で受光され、演算部18がレシーバー212,213で検知された干渉波から単一のX参照ミラー6に対するX測定ミラー4,5のX方向の変位を算出する。なお、レーザービームX3は、測定用プローブ2,3と測定対象1が接触する点を通る延長線上に出来るだけ配置し、アッベの誤差を可能な限り軽減することが望ましい。
Z方向の位置測定も、同様に、マイケルソン干渉計である位置検出器11により実行される。具体的には、位置検出器11は、Z測定ミラー8に対しレーザービームZ1を、X測定ミラー9に対しレーザービームZ2を、X参照ミラー10に対しレーザービームZ3を、それぞれ入射させる。レーザービームZ1〜Z3は位置検出器11の演算部18がレシーバー212,213で検知された干渉波から単一のZ参照ミラー10に対するZ測定ミラー8,9のZ方向の変位を算出する。
Y方向の測定に関しては、X方向及びY方向の位置検出器7,11全く同様の位置検出器が2個の単一のY参照ミラーに対する2枚のY測定ミラーのY方向の変位を測定する。
位置検出器7,11の詳細を、図2を参照して説明する。位置検出器7,11は、レーザーヘッド201、レシーバー212,213、参照ミラー9、測定ミラー210,211、1/4波長板206,207,208、ミラー203,220,221(ミラー221は図1にのみ図示する。)、無偏光ビームスプリッタ202、偏光ビームスプリッタ204、コーナーキューブ205、及び部分反射ミラー214を備える。図2における測定ミラー210,211は位置検出器7の場合のX測定ミラー4,5と位置検出器11の場合のZ測定ミラー8,9とを代表している。また、図2における参照ミラー209は位置検出器7の場合のX参照ミラー6と位置検出器11の場合のZ参照ミラー10とを代表している。
レーザーヘッド201から発信周波数安定化レーザー(波長λ)が発信され、無偏光ビームスプリッタ202でレーザービームL1,L2に2分割される。レーザービームL2はミラー203によって反射され、レーザービームL1,L2は平行光となって偏光ビームスプリッタ204に入射する。その他、コーナーキューブ205、1/4波長板(λ/4波長板)206〜208、参照ミラー209、測定ミラー210、211を配置し、干渉計を構成する。レーザービームのパワーを検知できるよう2個のレシーバー212、213を配置している。また、偏光ビームスプリッタ204と測定ミラー210,211の間には、部分反射ミラー214を配置している。
位置検出器7,11は、従来の一般的なダブルパスのマイケルソン干渉計を複数個(本実施形態では2個)組み合わせたものである。図3A,Bは、位置検出器7,11に含まれる干渉計をそれぞれ抜粋した平面図である。図3Aの光学系は、参照ミラー209の光軸と平行方向の変位に対する、測定ミラー210の相対変位を測定する。また、図3Bの光学系は、参照ミラー209の変位に対する、測定ミラー211の相対変位を測定する。このように2個の干渉計を組み合わせたものである位置検出器7,11では、光学系内を光路が複雑に交錯する。そのため、図4から図6に示すように光学部品上で光軸が通過する点の名称を説明し、これらの通過点を用いて位置検出器7,11の光学系を説明する。
まず、図4、図5、図6はそれぞれ、偏光ビームスプリッタ204、コーナーキューブ205、及び部分反射ミラー214におけるレーザービームの光軸通過点の名称を示している。図4を参照すると、偏光ビームスプリッタ204の外側面を面A、面B、面C、69及び面Dとし、偏光面を面Eとする。また、図5を参照すると、コーナーキューブ205におけるレーザービーム透過面を面Fとする。さらに、図6を参照すると、部分反射ミラー214におけるレーザービームの入射面(レーザービームを反射する反射面214a,214bとレーザービームを透過する透明面214c,214dを有する。)を面Gとする。図4から図6には、各面A〜Gに対する法線ベクトルを併せて図示している。各面A〜Gは、それぞれ4本のレーザービームが通過する。各面A〜Fにおけるレーザービームの通過点は、個々の面を示す符号に右上から通し番号を1〜4を付して表す。例えば、図4に図示する偏光ビームスプリッタ204の透過面Aについては、レーザービーム通過点をA1〜A4で表す。また、各光学部品によって反射、分光されるレーザービームを符号L1〜L12で示す。
図7に位置検出器7,11のうち、参照ミラー209と測定ミラー210の相対変位を測定する干渉部分のみを抜粋したものを示す。この図7に示す干渉部分をレーザービームが通過する過程を、図8Aから図8Dを参照して説明する。
図8Aにおいて、レーザーヘッド201から出射された後に無偏光ビームスプリッタ202に入射して2つに分光されたレーザービームのうち、レーザービームL2はミラー203でさらに反射され、偏光ビームスプリッタ204に入射される。このレーザービームL2は、偏光ビームスプリッタ204の通過点A4(図4)に入射され、偏光面Eの通過点E4において、横偏光P波と縦偏光S波に分光される。横偏光P波はレーザービームL2として偏光面Eを通過して直進する一方、縦偏光S波は偏光面Eで反射されるレーザービームL8(図8Cを併せて参照)となる。レーザービームX2(横偏光P波)は、偏光ビームスプリッタ204の通過点E4(図4)を通過した後、部分反射ミラー214の透過面214dを通過点G4(図6)で透過し、1/4波長板207を通過して測定ミラー210で反射する。
図6を参照すると、部分反射ミラー214のレーザービームの入射面Gは4分割された斜面であり、レーザービームの反射面214a,214bと透過面214c,214dが点g2(例えば入射面Gの図心)に対して点対称に配置されている。図6では、透過面214c,214dに含まれる通過点G2,G4ではレーザービームは透過される。通過点G2,G4を含む透過面214c,214dでは入射面214はミラーにはなっておらず、ガラス基板をレーザービームが透過する光学部品となっている。一方、通過点G1,G3を含む反射面214a,214bには、金属が蒸着されておりミラーとして機能し、レーザービームを反射する。透過面214c,214dのうちレーザービームの通過点のみに透過性を持たせても良く、反射面214a,214bのうち通過点G1,G3にのみ金属蒸着等により反射性を持たせても良い。
図8Bに示すように、測定ミラー210において反射されて、再び1/4波長板207を通過した際、レーザービームL2は偏光の方向は90度回転されて縦偏光S波となる。縦偏光S波となったレーザービームL2は、偏光ビームスプリッタ214に入射して偏光面Eの通過点E4(図4)で反射してレーザービームL8となって外側面Bの通過点B1(図4)を経由後、コーナーキューブ205における通過点F4(図5)を通過する。コーナーキューブ205内部で反射した後、通過点F2(図5)から出射された戻り光であるレーザービームL6は、偏光ビームスプリッタ214の外側面Bの通過点B3(図4)に入射される。このコーナーキューブ205から戻るレーザービームL6は縦偏光S波であるため、偏光ビームスプリッタ214の偏光面Eの通過点E2(図4)において反射されてレーザービームL4となる。このレーザービームL4は、偏光ビームスプリッタ204の外側面Cの通過点C3を経由した後、部分反射ミラー214の透過面214cを通過点G2において透過され、1/4波長板207を通過して測定ミラー210に入射される。レーザレーザービームL4は測定ミラー210において反射されて再び1/4波長板207を通過した際、偏光の方向が再度90度回転され、横偏光P波となる。この横偏光P波となったレーザービームL4は、偏光ビームスプリッタ204の外側面Cの通過点C3(図4)を経由した後に偏光面Eの通過点E2(図4)を通過し、さらに外側面Aの通過点A2(図4)を経由して、レシーバー212に入射される。
一方、図8Cに示すように、レーザーヘッド201から無偏光ビームスプリッタ202とミラー203を経て偏光ビームスプリッタ204に入射して分光されたレーザービームL2のうち、偏光面Eの通過点E4(図4)で反射されたレーザービームL8(縦偏光S波)は、外側面Dの通過点D4(図4)を経由した後、1/4波長板206を通過して参照ミラー209で反射される。参照ミラー209で反射されて再び1/4波長板206を通過した際、レーザービームL8の偏光方向は90度回転され、横偏光P波となる。
図8Dに示すように、参照ミラー209で反射されて1/4波長板206を再通過したレーザービームL8(横偏光P波)は、偏光ビームスプリッタ204の外側面Dの通過点D4(図4)を経由した後、偏光面Eの通過点E4(図4)を通過し、外側面Bの通過点B1(図4)を経由してコーナーキューブ205における通過点F4(図5)に入射される。さらに、通過点F2(図5)から出射されるコーナーキューブ205からの戻り光であるレーザービームL6は、偏光ビームスプリッタ204の外側面Bの通過点B3に入射される。このレーザービームL6は横偏光P波であるため、偏光ビームスプリッタ204の偏光面Eの通過点E2(図4)を通過、外側面Dの通過点D2(図4)を経由した後、1/4波長板206を通過して参照ミラー209に入射される。参照ミラー209において反射されて再び1/4波長板206を通過する際、レーザービームL6は偏光方向が再度90度回転されて、縦偏光S波となっている。参照ミラー209で反射されたレーザービームL6(縦偏光S波)は、偏光ビームスプリッタ204の外側面Dの通過点D2(図4)を経由した後、偏光面Eの通過点E2(図4)で反射され、外側面Aの通過点A2(図4)を経由して、レーザービームL4としてレシーバー212に入射される。レシーバー212では、参照ミラー209からの縦偏光S波と測定ミラー210からの横偏光P波が干渉し、干渉波の照度を電圧に変換することで位相差を出力し、測長を行う。
全く同様の原理で、図2の複数ミラー同時位置検出器のうち、図3Bに示す測定ミラー211と参照ミラー209の相対変位を測定することができる。図2、図3A、及び図4から図8Dにおいて測定ミラー210と参照ミラー209に関するレーザービーム(光路)を実線で示すのに対し、図3B及び図4から図6において測定ミラー211と参照ミラー209に関するレーザービーム(光路)は点線で示している。
以上は、レーザーヘッド1から出射されたレーザービームがレーザービームL1,L2に分光され、それら2本のレーザービームL1,L2が偏光ビームスプリッタ204に入射される場合を説明したものである。この位置検出器7,11では、参照ミラー209、測定ミラー210、211がレーザービームに対して垂直な姿勢を維持して変位する場合、参照ミラー209の変位に対する測定ミラー210の相対変位がレシーバー212で、参照ミラー209の変位に対する測定ミラー211の相対変位がレシーバー213で、測定することが出来る。つまり、位置検出器7,11では、単一の参照ミラー209に対する2枚の測定ミラー210,211の変位を測定することが出来る。
このように、本実施形態の三次元形状測定装置が備える位置検出器7,11は、偏光ビームスプリッタ204の偏光面Eの異なる位置に2本のレーザービームL1,L2を入射させ、かつ偏光ビームスプリッタ204と測定ミラーの間に第1及び第2のレーザービームのうち一方を反射して他方を通過させる部分反射ミラー214を設け、共通の参照ミラー209に対する第1及び第2の測定ミラー210,211の相対位置を測定する。つまり、単一の位置検出器7,11で複数の測定ミラー210,211の変位が測定可能である。従って、測定ミラーの数が増えても位置検出器を増やす必要がなく、この点で三次元形状測定装置は小型で安価なものとなる。
また、少ない光学部品からなるシンプルな構成の単一の位置検出器7,11で複数の測定ミラー210,211の変位を測定できるため、光学部品の光学特性の個体差、光学部品の接着条件の差異、光学部品接着基板の熱膨張、外部雰囲気のゆらぎによるレーザービームの波長の変化等の誤差因子の影響を排除ないし軽減でき、さらに位置検出器7,11自体がシンプルであるため容易に光学部品を配置、組み立てることが可能である。
さらに、測定用プローブ2,3の位置のX方向及びY方向の位置を共通の位置検出器7,11で検出するので、測定用プローブ2,3間の位置ズレの校正が必要なく、測定作業を単純化でき、短時間で測定対象の傾き・偏心を高精度に測定できる。
複数ミラー同時位置検出器を前述の三次元形状測定装置のプローブの傾きを測定するのに応用した場合を、図9を用いて説明する。図9の三次元形状測定装置は、図1の位置検出器7と同様の構成の2つの位置検出器301,302を備える。これらの位置検出器301,302は、2個の測定ミラーの参照ミラー6に対する相対位置を測定するだけでなく、同一の測定ミラー4,5の上側領域4a,5aと下側領域4b,5bの参照ミラー6に対する相対変位が測定できる。例えば、位置検出器301では、レーザービームX1,X2が同一の測定ミラー4の上側領域4aと下側領域4bに入射し、レーザービームX3が参照ミラー6に入射する。偏心・傾き検出器303は、演算部18で算出された同一の測定ミラー4,5の上側領域4a,5aと下側領域4b,5bの相対位置から測定ミラー4,5のX方向に対する傾きと、参照ミラー6に対する測定ミラー4,5の相対変位を算出する。Y方向についてもX方向と同様の構成によって2つの位置検出器がそれぞれY方向に対して垂直な測定ミラーの上側領域と下側領域のY方向の参照ミラーに対する相対変位を測定し、それによって測定ミラーの相対変位と傾きが得られる。
図9の単一の位置検出器301,302で単一の測定ミラー4,5の異なる領域4a〜5aの変位が測定し、単一の位置検出器301,302で測定ミラー4,5の変位と傾きの両方を測定可能である。従って、測定ミラー4,5の変位と傾きのそれぞれについて位置検出器を設ける必要がなく、小型で安価な構成を実現できる。
また、図9の三次元形状測定装置では、少ない光学部品からなるシンプルな構成の単一の位置検出器301,302で測定ミラー4,5の複数の領域4a〜5bの変位を測定し、それによって測定ミラー4,5の変位と傾きの両方を測定できるため、光学部品の光学特性の個体差、光学部品の接着条件の差異、光学部品接着基板の熱膨張、外部雰囲気のゆらぎによるレーザービームの波長の変化等の誤差因子の影響を排除ないし軽減でき、さらに位置検出器301,302自体がシンプルであるため容易に光学部品を配置、組み立てることが可能である。
図9の三次元形状測定装置のその他の構成及び機能は図1のものと同様であり、同一の要素には同一の符号を付している。
本発明の三次元形状測定装置は実施形態のものに限定されず、例えば以下に列挙するような種々の変形が可能である。
個々の位置検出器7,11で参照ミラー209に対する変位を測定できる測定ミラーの枚数は2枚に限定されない。偏光ビームスプリッタ204に対し3本以上のレーザービームを入射させ、レーザービームの本数に対応して部分反射ミラー214の入射面Gにおける反射面と透過面の配置の幾何形状を変更すれば、単一の参照ミラーに対する3枚以上の測定ミラーの変位を測定することが可能である。部分反射ミラー214は物理的に一体の構造である必要はなく、特に偏光ビームスプリッタ204に対し3本以上のレーザービームを入射させる場合には、互いに分離された複数個の部分反射ミラーを使用してもよい。
図2における偏光ビームスプリッタの周辺の参照ミラー、キューブミラーならびに部分反射ミラーの位置関係は一意的ではなく他の位置関係としてもマイケルソン干渉計である位置検出器を構成できる。