JP5109129B2 - カーボンナノチューブ分散液の製造方法 - Google Patents
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Description
カーボンナノチューブを含んで成る分散液を製造する方法であって、
(i)カーボンナノチューブと環式有機化合物とを5〜120s−1の振動数で振動粉砕に付し、カーボンナノチューブ混合物を得る工程(以下、「工程(i)」ともいう)、および
(ii)カーボンナノチューブ混合物に有機溶媒を加えて、カーボンナノチューブを含んで成る分散液を得る工程(以下、「工程(ii)」ともいう)
を含んで成り、
工程(i)で用いる環式有機化合物が工程(ii)で用いる有機溶媒に対して可溶性を有する、カーボンナノチューブ分散液の製造方法を提供する。
カーボンナノチューブ膜を表面に有する基材を含む部材であって、
カーボンナノチューブ膜が、本発明の方法によって得られるカーボンナノチューブを含んだ分散液を、基材の表面に塗布した後、乾燥させることによって形成される膜であることを特徴とする部材が提供される。
本発明において、振動粉砕に付されるカーボンナノチューブは、精製されたものや、精製後に凍結乾燥処理を施したものであってもよいが、より簡便には市販のカーボンナノチューブである。また、振動粉砕に付されるカーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブまたは多層カーボンナノチューブのいずれであってもよく、いずれの場合でも分散液が短時間に簡便に得られ、分散液の分散安定性が高いものとなる。
環式有機化合物は、例えば、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリスチレンスルホネートおよびポリチオフェンからなる群から選択される少なくとも1種以上の合成高分子であることが好ましい。
また、環式有機化合物がπ系化合物であることも好ましい。ここで「π系化合物」とは、広い共役系を有し、より強いπ−π相互作用を有する化合物を指しており、例えば、ポルフィリン誘導体、ピレン誘導体、アントラセン誘導体およびポリチオフェン誘導体から成る群から選択される少なくとも1種以上の化合物であることが好ましい。環式有機化合物がπ系化合物である場合には、カーボンナノチューブがπ系化合物であるために、環式有機化合物とカーボンナノチューブとの間でπ−π相互作用が生じ、その結果、カーボンナノチューブと環式有機化合物とが互いに引き合う力が生じるので、カーボンナノチューブのバンドルの解離を助力する作用がもたらされ得る。
尚、当然のことながら、環式有機化合物は、合成高分子であって、なおかつ、π系化合物であるものでもよく、例えば、3−(2−メトキシエトキシ)−エトキシメチルチオフェン(PMET)を例示することができる。
上記で例示した環式有機化合物が本発明に用いる分散剤として好ましいものの、有機溶媒に対して可溶性を有し、カーボンナノチューブを安定的に分散させる化合物であれば、本発明に用いられる分散剤は、特に限定されない。例えば、分散剤としてナフィオン(登録商標、Nafion)またはポリエチレングリコール等も用いることができる。
容器を往復運動させる態様の場合(図7参照)、その往復運動させる方向は、容器中空部の長手方向であることが一般的に好ましく、その容器中空部の長手方向が水平方向となるように容器を振動機に設置する場合には、その水平方向にて容器を左右に往復するように運動させることが好ましい。ただし、硬球と容器中空部の壁面との衝突が繰り返して行われるのであれば、容器自体の振動方向には特に制限はなく、容器および/もしくは容器中空部の形態または容器の振動機への設置の仕方等に応じて振動させる方向を適宜変更してもよく、例えば、往復運動する方向が経時的に変化するものであってもよい。
例えば横断面直径20mm、長手方向長さ65mmの容器(その中空部の胴体部分の横断面直径12mm、中空部の長手方向長さ50mm)を用いる場合を例にとると、振幅が小さすぎると、容器中空部内でカーボンナノチューブと環式有機化合物とを効率よく混合できない一方、振幅が大きすぎると、硬球が容器中空部の壁面(例えば、円筒形状の容器中空部の頂部または底部における壁面)に衝突した後も容器自体が動き続けることになり、時間的にもエネルギー的にも損失が大きいので、5〜100mmの振幅、好ましくは10〜80mmの振幅、より好ましくは20〜50mmの振幅でもって中空部長手方向に容器を往復運動させる。
尚、上記の遠心分離によって得られる上澄みをフィルター濾過に付してもよい。この場合、フィルター濾過で得られる残渣に対して有機溶媒を加えると、カーボンナノチューブが安定的に分散した分散液を得ることができる。この残渣に対して加えられる有機溶媒は、振動粉砕に付された後のカーボンナノチューブ混合物に加えられる有機溶媒と同じでよく、または、その有機溶媒と同じ主成分から成る溶媒であってもよい。フィルター濾過でのカーボンナノチューブ回収率が低すぎると(例えば回収率が2%よりも少ない場合)、最終的に得られる分散液に含まれるカーボンナノチューブが少なくなってしまい所望のカーボンナノチューブ濃度を達成するには非効率・不経済である一方、フィルター濾過でのカーボンナノチューブ回収率が高すぎると(例えば回収率が95%よりも大きい場合)、バンドルの解離したカーボンナノチューブの他にも、バンドルの解離していないカーボンナノチューブもより多く含まれてしまう可能性がある点で好ましくない。従って、フィルター濾過に用いられるメンブレンフィルターは、平均膜孔径が好ましくは0.02〜5.0μmであって、上澄みに含まれているカーボンナノチューブを好ましくは2〜95%、より好まししくは5〜95%回収できるもの(上澄みから回収できるもの)が好ましい。例えば、そのようなメンブレンフィルターとしては、PTFEメンブレンフィルター(アドバンテック製、型式:T020A025A[カタログ番号]、孔径:0.20μm)を挙げることができる。
(i)カーボンナノチューブと環式有機化合物とを5〜120s−1の振動数で振動粉砕に付し、カーボンナノチューブ混合物を得る工程、および
(ii)カーボンナノチューブ混合物に有機溶媒を加えて、カーボンナノチューブを含んで成る分散液を得る工程
を含んで成り、
工程(i)で用いる環式有機化合物が工程(ii)で用いる有機溶媒に対して可溶性を有する、カーボンナノチューブ分散液の製造方法。
第2の態様:上記第1の態様において、カーボンナノチューブ、環式有機化合物および硬球を容器内に供した後、容器に対して硬球を振動させることよって、振動粉砕を実施することを特徴とする方法。
第3の態様:上記第2に態様において、容器を一定方向に往復運動させることによって、容器に対して硬球を振動させており、
容器を往復運動させる際の振幅Wbと容器を往復運動させる方向の容器中空部長さLbとの比Wb:Lbが1:1.3〜15:1であることを特徴とする方法。
第4の態様:上記第2または3の態様において、硬球の個数が1〜6個であって、容器中空部体積に対する硬球の総体積の割合が0.5〜10%であることを特徴とする方法。
第5の態様:上記第1〜4の態様のいずれかにおいて、環式有機化合物が、ポリビニルピロリドン、ポリスチレンスルホネートおよびポリチオフェンからなる群から選択される合成高分子であることを特徴とする方法。
第6の態様:上記第1〜4の態様のいずれかにおいて、環式有機化合物が、π系化合物であることを特徴とする方法。
第7の態様:上記第6の態様において、π系化合物が、ポルフィリン誘導体、ピレン誘導体、アントラセン誘導体およびポリチオフェン誘導体から成る群から選択されることを特徴とする方法。
第8の態様:上記第1〜7の態様のいずれかにおいて、有機溶媒が、アルコール、エーテル系有機溶媒、アミド系有機溶媒、スルホキシドまたはハロゲン系有機溶媒であることを特徴とする方法。
第9の態様:上記第8の態様において、アルコールが、メタノール、エタノール、イソプロパノールおよびt−ブタノールから成る群から選択されることを特徴とする方法。
第10の態様:上記第8の態様において、エーテル系有機溶媒が、ジエチルエーテルおよびテトラヒドロフランから成る群から選択されることを特徴とする方法。
第11の態様:上記第8の態様において、アミド系有機溶媒が、1−メチル−2−ピロリドンおよびN,N−ジメチルホルムアミドから成る群から選択されることを特徴とする方法。
第12の態様:上記第8の態様において、スルホキシドがジメチルスルホキシドであることを特徴とする方法。
第13の態様:上記第8の態様において、ハロゲン系有機溶媒が、クロロホルム、塩化メチレンおよび1,1,2,2−テトラクロロエタンから成る群から選択されることを特徴とする方法。
第14の態様:上記第1〜13の態様のいずれかにおいて、振動数が20〜50s−1であることを特徴とする方法。
第15の態様:上記第1〜14の態様のいずれかにおいて、振動粉砕を2分〜2時間行うことを特徴とする方法。
第16の態様:上記第1〜15の態様のいずれかにおいて、カーボンナノチューブ混合物を得る工程(i)において、カーボンナノチューブのバンドルを少なくとも部分的に解離させることを特徴とする方法。
第17の態様:上記第1〜16の態様のいずれかにおいて、分散液を得る工程(ii)において、カーボンナノチューブ混合物に有機溶媒aを加えた後、得られる混合物を遠心分離に付すことを特徴とする方法。
第18の態様:上記第17の態様において、前記遠心分離に付すことによって得られる上澄みをフィルター濾過し、得られる残渣に対して有機溶媒aと同じ成分から成る溶媒を加える工程を更に含んで成り、
フィルター濾過に用いるメンブレンフィルターが、上澄みに含まれているカーボンナノチューブを5〜95%回収することを特徴とする方法。
第19の態様:上記第6の態様において、分散液を得る工程(ii)において、カーボンナノチューブ混合物に有機溶媒aを加え、得られる混合物を遠心分離に付した後、その混合物中の沈殿物を分取し、沈殿物に対して有機溶媒aと同じ主成分から成る有機溶媒を加えることを特徴とする方法。
第20の態様: カーボンナノチューブ膜を表面に有する基材を含む部材であって、
カーボンナノチューブ膜が、上記第1〜19の態様のいずれかの方法で得られるカーボンナノチューブ分散液を、基材の表面に塗布することによって形成される膜である部材。
第21の態様:上記第20の態様において、ガス吸蔵品として用いられることを特徴とする部品。
第22の態様:上記第20の態様において、電極として用いられることを特徴とする部材。
第23の態様: 上記第1〜22の態様のいずれかの方法で得られるカーボンナノチューブ分散液を含有する高分子材料。
第24の態様: カーボンナノチューブを含有する有機高分子材料からなる部材であって、上記第1〜22の態様のいずれかの方法で得られるカーボンナノチューブ分散液を、他の有機高分子材料に混合し成型することによって得られる部材。
第25の態様:カーボンナノチューブ、ポリビニルピロリドンおよび上記第8の態様に記載の有機溶媒を含んで成る、カーボンナノチューブ分散液。
第26の態様:カーボンナノチューブ、3−(2−メトキシエトキシ)−エトキシメチルチオフェンおよび上記第8の態様に記載の有機溶媒を含んで成る、カーボンナノチューブ分散液。
(1)1mgの単層カーボンナノチューブ、分散剤として10mgのポリビニルピロリドン(PVP:平均分子量360,000)および2個のメノウボール(球直径5mm)を20mmの底面直径、65mmの長手方向長さを有する円筒形状の密閉容器(当該容器に形成されている円筒形中空部:胴体部分の横断面直径12mm、長手方向長さ50mm)に仕込んだ。
(2)振動機(レッチェ(Retsch)製、MM200)において、密閉容器中空部の長手方向をほぼ水平にした状態で、約30mmの振幅、約30s−1の振動数で当該密閉容器を水平方向に往復運動させた。
(3)約20分間密閉容器を往復運動させた後、密閉容器の中空部から黒色粉末を取り出した。
(4)得られた約11mgの黒色粉末に約1mlのエタノールを加え、遠心分離機(ベックマン・コールター(Beckman Coulter)社製、マイクロフュージ22アール(Microfuge 22R)により、回転数8000rpmで10分間遠心分離を行った後、上澄み液を分取してカーボンナノチューブを安定的に含む分散液を得た。
(5)得られた分散液は、少なくとも4週間まではカーボンナノチューブの凝集、沈殿がみられなかった。
(1)1mgの単層カーボンナノチューブ、分散剤として5mgのPMET(3−(2−メトキシエトキシ)−エトキシメチルチオフェン)および2個のメノウボール(球直径5mm)を20mmの底面直径、65mmの長手方向長さを有する円筒形状の密閉容器(当該容器に形成されている円筒形中空部:胴体部分の横断面直径12mm、長手方向長さ50mm)に仕込んだ。
(2)振動機(レッチェ(Retsch)製、MM200)において、密閉容器中空部の長手方向をほぼ水平にした状態で、約30mmの振幅、約30s−1の振動数で当該密閉容器を水平方向に往復運動させた。
(3)約20分間密閉容器を往復運動させた後、密閉容器の中空部から黒色粉末を取り出した。
(4)得られた約11mgの黒色粉末に約10mlの1−メチル−2−ピロリドンを加え、遠心分離機(ベックマン・コールター(Beckman Coulter)社製、マイクロフュージ22アール(Microfuge 22R))により、回転数14000rpmで20分間遠心分離を行った後、生じた沈殿物を分取した。
(5)得られた沈殿物に対して、約1 mlの1−メチル−2−ピロリドンを加え、卓上型超音波洗浄器(ブランソン(Branson Ultrasonic)社製、ブランソニック5510(Bransonic 5510))超音波処理を5分間行なった後、遠心分離機(ベックマン・コールター(Beckman Coulter)社製、マイクロフュージ22アール(Microfuge 22R)によって回転数14000rpmで60分間遠心分離を行った。そして、生じた上澄み液を分取してカーボンナノチューブを安定的に含む分散液を得た。
(6)得られた分散液は、少なくとも4週間まではカーボンナノチューブの凝集、沈殿がみられなかった。
分散剤としてPVP(ポリビニルピロリドン)を用いた条件下、実施例1と同様の操作を種々の溶媒で実施した(尚、PVPを用いない条件下でも実施を行った)。その結果を以下の表1に示す。なお、表中のCNT濃度(mg/1mL)とは、得られた分散液1mL当たりに含まれるカーボンナノチューブの質量(mg)を意味する。CNTの濃度は、分散液を5倍に希釈した後、1mmセルを用いたときの可視吸収スペクトルにおける500nmの波長の吸光度(A500)から、以下のような式のように分散液中におけるCNTの吸光係数(ε500=2.86×104cm2/g)を用いることによって得られる:
CNT濃度(mg/1mL)=A500[−]×5[−]/(ε500[cm2/g]×0.1[cm]×10−3[−])。
上記表1中、SWNT2はCarboLex, Inc.製単層カーボンナノチューブである。 上記表1中、MWNT1はNanocyl S.A.製多層カーボンナノチューブである。
上記表1中、PVPはポリビニルピロリドン(平均分子量360,000)である。
上記表1中、「注」の数値は全て分散または溶解したことを示す。
・分散剤としてPVPを用いた場合では、CNT濃度を確認できたのに対して、PVPを用いなかった場合ではCNT濃度が0であった。従って、本発明の製造方法では、PVPが分散剤として重要な役割を果たしている。
・本発明の製造方法では、単層カーボンナノチューブおよび多層カーボンナノチューブの種類に依存することなく、カーボンナノチューブ分散液を製造することができる。
・有機溶媒として用いたメタノール、エタノーおよびイソプロパノールといったアルコールは、本発明でのカーボンナノチューブ分散液の形成に資する。
・有機溶媒として用いた1−メチル−2−ピロリドンおよびN,N−ジメチルホルムアミドといったアミド系有機溶媒は、本発明でのカーボンナノチューブ分散液の形成に資する。
・カーボンナノチューブの分散液を得るには、原料として有機溶媒およびPVPを用いるのみであり、その他の更なる添加剤を特に用いなくてもよい。
・振動粉砕処理自体は、約20分であることを鑑みると、比較的短時間でカーボンナノチューブ分散液を得ることができる。
分散剤としてPMET(3−(2−メトキシエトキシ)−エトキシメチルチオフェン)を用いた条件下、実施例2と同様の操作を種々の溶媒で実施した。その結果を以下の表2に示す。なお、表中のCNT濃度(mg/1mL)とは、得られた分散液1mL当たりに含まれるカーボンナノチューブの質量(mg)を意味する。CNTの濃度は、分散液を10倍に希釈した後、1mmセルを用いたときの可視吸収スペクトルにおける700nmの波長の吸光度(A700)から、以下のような式のように分散液中におけるCNTの吸光係数(ε700=2.35×104cm2/g)を用いることによって得られる:CNT濃度(mg/1mL)=A700[−]×10[−]/(ε700[cm2/g]×0.1[cm]×10−3[−])。
上記表2中、PMETは、分散剤として用いた(3−(2−メトキシエトキシ)−エトキシメチルチオフェン)を示しており、いずれも5mg用いた。
・分散剤として用いたPMETは、本発明でのカーボンナノチューブ分散液の形成に資する。
・有機溶媒として用いたクロロホルムといったハロゲン系有機溶媒は、本発明でのカーボンナノチューブ分散液の形成に資する。
・有機溶媒として用いたジメチルスルフォキシドといったスルホキシドは、本発明でのカーボンナノチューブ分散液の形成に資する。
・表1の結果をも併せて参照すると、有機溶媒として用いた1−メチル−2−ピロリドンおよびN,N−ジメチルホルムアミドといったアミド系有機溶媒は、分散剤がPVPであるかPMETであるか否かに依らず、本発明でのカーボンナノチューブ分散液の形成に資する。
・表1の結果と同様、カーボンナノチューブの分散液を得るには、原料として有機溶媒およびPMETを用いるのみであり、その他の更なる添加剤を特に用いなくてもよい。
・表1の結果と同様、振動粉砕処理自体は、約20分であることを鑑みると、比較的短時間でカーボンナノチューブ分散液を得ることができる。
(1)1mgの単層カーボンナノチューブ、分散剤として10mgのポリビニルピロリドン(PVP:平均分子量360,000)および2個のメノウボール(球直径5mm)を20mmの底面直径、65mmの長手方向長さを有する円筒形状の密閉容器(当該容器に形成されている円筒形中空部:胴体部分の横断面直径12mm、長手方向長さ50mm)に仕込んだ。
(2)振動機(レッチェ(Retsch)製、MM200)において、密閉容器中空部の長手方向をほぼ水平にした状態で、約30mmの振幅、約30s−1の振動数で当該密閉容器を水平方向に往復運動させた。
(3)約20分間密閉容器を往復運動させた後、密閉容器の中空部から黒色粉末を取り出した。
(4)得られた約11mgの黒色粉末に約1mlのエタノールを加え、遠心分離機(ベックマン・コールター(Beckman Coulter)社製、マイクロフュージ22アール(Microfuge 22R)により、回転数8000rpmで10分間遠心分離を行った後、上澄み液を分取した。
(5)上澄み液を、メンブレンフィルター(アドバンテック社製、型式:T020A025A[カタログ番号]、平均膜孔径0.20μm)でもって濾過した。かかる濾過によって、上澄み液に含まれていたカーボンナノチューブが10%回収された。
(6)濾過で得られた残渣に対して、エタノールを加えることによって、カーボンナノチューブを安定的に含む分散液を得た。
(7)得られた分散液は、少なくとも4週間まではカーボンナノチューブの凝集、沈殿がみられなかった。
図2には、各種溶媒条件下で行った本発明の製造方法で得られたPVP(ポリビニルピロリドン)−単層カーボンナノチューブ(SWNT)および多層ナノチューブ(MENT)の分散液の可視−紫外吸収スペクトルを示している。カーボンナノチューブによる吸収が今回の測定領域250〜800nmすべての範囲で観測されており、単層カーボンナノチューブが分散していることを確認した。
図3には、本発明の製造方法で得られたPVP(ポリビニルピロリドン)−単層カーボンナノチューブ(SWNT)の分散液(有機溶媒:イソプロパノール)のRaman吸収スペクトルを示している。150〜300cm−1付近のラジアルブリージングモード(RBM)と、炭素原子の六員環ネットワーク内の格子振動に起因する1550cm−1付近のGバンドが観測されており、単層カーボンナノチューブが分散していることを確認した。150〜300cm−1付近のラジアルブリージングモードは半導体単層カーボンナノチューブに対応し、230〜300cm−1付近のラジアルブリージングモードは金属単層カーボンナノチューブに対応していることから、半導体性単層カーボンナノチューブおよび金属性単層カーボンナノチューブの双方が分散しているものと考えられる。
図4には、各種溶媒条件下で行った本発明の製造方法で得られたPMET(3−(2−メトキシエトキシ)−エトキシメチルチオフェン)−単層カーボンナノチューブ(SWNT)の分散液の外観を示している。図1と同様に、分散液が黒色を示しており、カーボンナノチューブが用いた有機溶媒に分散していることを確認した。
図5には、各種溶媒条件下で行った本発明の製造方法で得られたPMET(3−(2−メトキシエトキシ)−エトキシメチルチオフェン)−単層カーボンナノチューブ(SWNT)の分散液の可視−紫外吸収スペクトルを示している。カーボンナノチューブによる吸収が今回の測定領域300〜800nmすべての範囲で観測され、単層カーボンナノチューブが分散していることを確認した。
図6には、各種溶媒条件下で行った本発明の製造方法で得られたPMET(3−(2−メトキシエトキシ)−エトキシメチルチオフェン)−単層カーボンナノチューブ(SWNT)の分散液の近赤外吸収スペクトルを示している。カーボンナノチューブによる吸収が今回の測定領域800〜1600nmの近赤外領域のすべての範囲で観測され、単層カーボンナノチューブが分散していることを確認した。
図9(a)および(b)には、本発明の製造方法で得られたカーボンナノチューブ分散液に含まれる単層カーボンナノチューブのTEM写真を示す。図9(a)および(b)は、それぞれ異なる有機溶媒を用いた場合のTEM写真であり、図9(a)では、CHCl3、図9(b)では、NMP(1−メチル−2−ピロリドン)を有機溶媒として用いている。かかるTEM写真からは、本発明の製造方法で得られる分散液には、バンドルの解離した単層カーボンナノチューブが含まれることが理解できる。また、このTEM写真から、本発明の製造方法で行う振動粉砕処理の効果は、カーボンナノチューブのバンドルを完全とは言えないまでも解離させる効果があるに留まっており(振動処理によって、カーボンナノチューブが元の形態・形状から細くなっていることから、そのバンドルが少なくとも解離していることが分かる)、カーボンナノチューブ自体の構造を破壊する効果まではないことが理解できるであろう。
本発明の製造方法で行う振動粉砕処理の効果を従来技術との比較で確認するために、本発明の製造方法と超音波法との2つの製造方法を実施した。
(1)本発明の製造方法によるカーボンナノチューブ分散液の製造
有機溶媒としてNMP(1−メチル−2−ピロリドン)、DMF(N,N−ジメチルホルムアミド)、CHCl3(クロロホルム)、DMSO(ジメチルスルホキシド)をそれぞれ用いて本発明の製造方法でカーボンナノチューブ分散液(試料A)を製造した。具体的には、
(i)1mgの単層カーボンナノチューブ(Carbon Nanotechnologies Incorporated製)、5mgの分散剤(具体的にはポリチオフェン)および2個のメノウボール(球直径5mm)を20mmの底面直径、65mmの長手方向長さを有する円筒形状の密閉容器(当該容器に形成されている円筒形中空部:胴体部分の横断面直径12mm、長手方向長さ50mm)に仕込んだ。
(ii)振動機(レッチェ(Retsch)製、MM200)において、密閉容器中空部の長手方向をほぼ水平にした状態で、約30mmの振幅、約30s−1の振動数で当該密閉容器を水平方向に往復運動させた。
(iii)約20分間密閉容器を往復運動させた後、密閉容器中空部から黒色粉末を取り出した。
(iv)得られた約6mgの黒色粉末に約1mLの有機溶媒を加えることによって、単層カーボンナノチューブを安定的に含む分散液の試料Aを得た(単層カーボンナノチューブの沈殿物は、遠心分離(18000rpm,20分、約25℃(室温))により水溶液から除去した)。
(2)超音波法の実施
従来技術の超音波法でカーボンナノチューブ分散液の製造を試みた。有機溶媒は、上述の本発明の製造方法と同じくNMP(1−メチル−2−ピロリドン)、DMF(N,N−ジメチルホルムアミド)、CHCl3(クロロホルム)、DMSO(ジメチルスルホキシド)をそれぞれ用いて試料Bを調製した。操作方法・実験条件は次の通りである。
(i)まず、10mLガラスバイアルに対して、1.0mgの単層カーボンナノチューブ(Carbon Nanotechnologies Incorporated製)および5mgの分散剤(具体的にはポリチオフェン)を仕込んだ後、約1mLの有機溶媒を仕込むことによって混合物を得た。
(ii)超音波バス(40W、42KHz、5510 Branson Ultrasonic Corp.)を用いて、(i)で得られた混合物を90分超音波処理に付した。
(iii)その後、(ii)で得られた混合物をマイクロ遠心管(Eppendorf AG)に仕込んで遠心処理に付し、沈殿物を除去することよって試料Bを得た。
(3)結果
本発明の製造方法で得られた試料Aおよび超音波法で得られた試料Bについて、カーボンナノチューブ濃度を可視吸収スペクトルにおける500nmの波長の吸光度(A500)から算出した(実施例3参照)。結果を表3に示す。
Claims (19)
- カーボンナノチューブを含んで成る分散液を製造する方法であって、 (i)カーボンナノチューブと環式有機化合物とを5〜120s−1の振動数で振動粉砕に付し、カーボンナノチューブ混合物を得る工程、および
(ii)カーボンナノチューブ混合物に有機溶媒を加えて、カーボンナノチューブを含んで成る分散液を得る工程 を含んで成り、 工程(i)で用いる環式有機化合物が工程(ii)で用いる有機溶媒に対して可溶性を有し、
環式有機化合物がポリビニルピロリドン又はポリチオフェンである、カーボンナノチューブ分散液の製造方法。 - カーボンナノチューブ、環式有機化合物および硬球を容器内に供した後、容器に対して硬球を振動させることよって、振動粉砕を実施することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
- 容器を一定方向に往復運動させることによって、容器に対して硬球を振動させており、容器を往復運動させる際の振幅Wbと容器を往復運動させる方向の容器中空部長さLbとの比Wb:Lbが1:1.3〜15:1であることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
- 硬球の個数が1〜6個であって、容器中空部体積に対する硬球の総体積の割合が0.5〜10%であることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
- 環式有機化合物としてポリスチレンスルホネートが更に含まれることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
- ポリチオフェンがπ系化合物であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
- π系化合物がポリチオフェン誘導体であることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
- 有機溶媒が、アルコール、エーテル系有機溶媒、アミド系有機溶媒、スルホキシドまたはハロゲン系有機溶媒であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
- アルコールが、メタノール、エタノール、イソプロパノールおよびt−ブタノールから成る群から選択されることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
- エーテル系有機溶媒が、ジエチルエーテルおよびテトラヒドロフランから成る群から 選択されることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
- アミド系有機溶媒が、1−メチル−2−ピロリドンおよびN,N−ジメチルホルムアミドから成る群から選択されることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
- スルホキシドがジメチルスルホキシドであることを特徴とする、請求項8に記載の方 法。
- ハロゲン系有機溶媒が、クロロホルム、塩化メチレンおよび1,1,2,2−テトラクロロエタンから成る群から選択されることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
- 振動数が20〜50s−1であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
- 振動粉砕を2分〜2時間行うことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
- カーボンナノチューブ混合物を得る工程 (i)において、カーボンナノチューブのバン ドルを少なくとも部分的に解離させることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
- 分散液を得る工程(ii)において、カーボンナノチューブ混合物に有機溶媒を加えた後、得られる混合物を遠心分離に付すことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
- 前記遠心分離に付すことによって得られる上澄みをフィルター濾過し、得られる残渣に対して前記有機溶媒と同じ主成分から成る溶媒を加える工程を更に含んで成り、 フィルター濾過に用いるメンブレンフィルターが、上澄みに含まれているカーボンナ ノチューブを5〜95%回収することを特徴とする、請求項17に記載の方法。
- 分散液を得る工程(ii)において、カーボンナノチューブ混合物に有機溶媒を加え、 得られる混合物を遠心分離に付した後、その混合物中の沈殿物を分取し、沈殿物に対して前記有機溶媒と同じ主成分から成る溶媒を加えることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
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