JP5050207B2 - カーボンナノチューブを含む水溶液の製造方法 - Google Patents

カーボンナノチューブを含む水溶液の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、カーボンナノチューブを含む水溶液の製造方法に関し、より詳細には、バンドル状のカーボンナノチューブから、カーボンナノチューブを安定的に含む水溶液を製造する方法に関する。更に、本発明は、本発明の方法で得られるカーボンナノチューブを含む水溶液を用いて製造される部材に関する。
カーボンナノチューブは、六角網目状の炭素原子配列のグラファイトシートが円筒状に巻かれた構造を有する炭素同素体の1つであり、その直径がナノメートルのオーダーを有している。生成されるカーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブ(SWNTs:single−walled carbon nanotubes)および多層カーボンナノチューブ(MWNTs:multiwalled carbon nanotubes)の2種類が知られている。単層カーボンナノチューブは、グラファイトシートが一枚だけ円筒状に巻かれたものであるのに対して、多層カーボンナノチューブは、グラファイトシートが同心円状に略等間隔に何重にも重なったものである。このようなカーボンナノチューブは、そのユニークな構造に起因して特異な機能を有することから、種々の分野での応用が期待されている。特に単層カーボンナノチューブは、その比表面積が比較的大きいことから、例えば、水素等などのガスの吸蔵材または電極部材等の用途に適するものと考えられている。
しかしながら、常套の製法で製造された単層カーボンナノチューブは、種々の用途に必ずしも好都合とは言えない。例えば、単層カーボンナノチューブと水媒体とから成る混合物では、水溶媒に対して単層カーボンナノチューブが時間的に安定して分散しておらず、時間の経過に伴って単層カーボンナノチューブが凝集/沈殿してしまう。例えば、かかる混合物では、長くとも2〜3日でカーボンナノチューブの沈殿物が見られる。それゆえ、そのような安定性に乏しい単層カーボンナノチューブを含む混合物を溶液として扱うことが困難であり、その結果、単層カーボンナノチューブの応用範囲が必然的に制限されてしまう。
また、上述のような単層カーボンナノチューブを含む混合物では、単層カーボンナノチューブは水中で自己会合により数本〜数百本程度が束になった状態で存在するので、単層カーボンナノチューブの比表面積が理論値と比べて相当に減少してしまう。それゆえ、このようなバンドル状の単層カーボンナノチューブを含む混合物から製造されるガス吸蔵材では、理論値よりもガス吸蔵量が少なくなる。また、こうしたバンドル状の単層カーボンナノチューブを含む混合物を用いて製造した電極は、カーボンナノチューブと電極との接触面積が小さくなるので、理論値と比べて電極効率が低くなる。
ジー・リウ(Jie Liu)、アンドリュー・ジー・リンズラー(Andrew G.Rinzler)、外13名、「フラーレン・パイプス(Fullerene Pipes)」、サイエンス(Science)、1998年5月22日、第280号、p1253−1256 イケダ・アツシ(Ikeda,A.)、ハヤシ・ケンタロウ(Hayashi,K.)、コニシ・トシフミ(Konishi,T.)、キクチ・ジュンイチ(Kikuchi,J.)「ケミカル・コミュニケーションズ(Chemi.Commun.)2004」、p1334−1335
従って、本発明の課題は、カーボンナノチューブを安定的に含む水溶液の製造方法を提供することである。また、本発明の課題は、そのような本発明の方法で得られるカーボンナノチューブを含む水溶液から製造される部材を提供することである。
上記課題を解決するため、本発明は、
カーボンナノチューブを含む水溶液を製造する方法であって、
(i)カーボンナノチューブ、可溶化剤としてプリン環を有するヌクレオチド、および硬球を容器内に供した後、5〜120s−1の振動数で容器に対して硬球を相対的に振動させること、ならびに
(ii)振動処理に付された後のカーボンナノチューブに水を加えて、カーボンナノチューブを含む水溶液を得ること
を含んで成る方法を提供する。
この本発明の方法は、振動操作に付すことによって、カーボンナノチューブのバンドルを少なくとも部分的に解離させる点で特徴を有しているだけでなく、可溶化剤としてプリン環を有するヌクレオチドが用いられている点でも特徴を有している。
本発明の方法を実施することによって、約1.0×10−2重量%〜約15×10−2重量%のカーボンナノチューブを安定的に含む水溶液が提供される。
また、本発明では、カーボンナノチューブ膜を表面に有する基材から成る部材が提供される。その部材のカーボンナノチューブ膜は、本発明の製造方法で得られるカーボンナノチューブ水溶液を、基材の表面に塗布した後、乾燥させることによって形成された膜であることを特徴としている。
本発明の方法では、カーボンナノチューブを安定的に含む水溶液を得ることができる。それゆえ、その水溶液では、カーボンナノチューブが水性媒体中で時間的に安定して分散しており、長期的な安定性が優れている。従って、そのような液を溶液として扱うことが可能となる(本明細書で「水溶液」と呼ぶ根拠となっている)。また、そのようなカーボンナノチューブを安定的に含む水溶液は、バンドルが解離したカーボンナノチューブを少なくとも含んで成るので、カーボンナノチューブが束となっている場合よりもカーボンナノチューブの比表面積が増加する。従って、そのような水溶液を用いて製造される部材をガス吸蔵品として用いると、バンドル状のカーボンナノチューブを用いる場合よりもガス吸蔵量が増加し、より理論値に近づくことになる。また、バンドル状のものに比べて、バンドルが解離したカーボンナノチューブの方が電極表面との接触面積が増加するので、本発明の方法で得られる水溶液を用いて製造された部材を電極として用いたものは高効率となり、その効率がより理論値に近づくことになる。なお、ここでいう「理論値」とは、かかる部材に含まれるカーボンナノチューブの全てがバンドルの解離したものであるという仮定に基づいた理想状態の水素吸蔵量または電極効率をいう。
図1は、本発明のカーボンナノチューブを含む水溶液を製造する方法を模式的に示す。 図2は、本発明の方法に従って得られたカーボンナノチューブを含む水溶液を示す。 図3は、可溶化剤として7種類(GMP、ADP、ATP、AMP、R5P、CMPおよびUMP)の物質を用いた場合に得られたカーボンナノチューブを含む液体の可視−紫外吸収スペクトルを示す。 図4は、本発明の製造方法で得られた水溶液(即ち、可溶化剤およびSWNTを含む溶液)のRamanスペクトルを示す。 図5は、容器および硬球(中央切断図)を模式的に示しており、容器内の中空部の長手方向長さLおよび短手方向長さSを示すと共に、硬球の直径Rを模式的に示している。 図6は、本発明の製造方法で得られたカーボンナノチューブ水溶液に含まれる単層カーボンナノチューブを示したTEM写真である。図6(a)はGMP、図6(b)はADP、図6(c)はATPを可溶化剤として用いている。
符号の説明
1…カーボンナノチューブ、2…硬球、3…容器、4…カーボンナノチューブを含む水溶液、5…容器内の中空部。
以下にて、本発明のカーボンナノチューブを含む水溶液の製造方法を説明する。
本発明において「カーボンナノチューブ(具体的には工程(i)で用いられ得るカーボンナノチューブ)」とは、例えばアーク放電法、レーザー蒸発法、レーザーアブレーション法およびCVD法(または化学気相成長法、Chemical Vapor Deposition)などの常套の製法で製造された束(バンドル)状のカーボンナノチューブを意味する。束状の単層カーボンナノチューブが好ましいものの、束状の多層カーボンナノチューブであってもかまわない。なお、このような「カーボンナノチューブ」は、乾燥状態(即ち、内部に空隙を有するような綿状形態)で用いることが好ましく、例えば、一般的に市販されているカーボンナノチューブであってよい。市販のカーボンナノチューブは、本発明の方法に用いるに際して、精製処理および凍結乾燥に付すことなく用いることができるので有利である。つまり、市販のカーボンナノチューブを用いる場合では、カーボンナノチューブを酸性溶液中で超音波処理した後、中和させて水で希釈するという精製処理を必要としないだけでなく、精製処理後に凍結乾燥処理を必要としない(「精製処理」および「凍結乾燥」については、非特許文献1および非特許文献2を参照のこと)。このため、本発明の方法では、カーボンナノチューブを、精製処理および凍結乾燥に付すことなく用いることができることを意図している。
工程(i)では、カーボンナノチューブを可溶化剤および硬球と共に容器内に供した後、容器に対して硬球を振動させる。より具体的には、カーボンナノチューブと可溶化剤と硬球とを容器本体の中空部(以後、「容器中空部」ともいう)に供して蓋をした後、容器に対して硬球を振動させる。ここで本明細書にいう「容器に対して硬球を振動させる」とは、硬球と容器中空部の壁面との衝突が経時的に繰り返して行われる態様を実質的に指している。従って、「容器に対して硬球を振動させる」は、容器自体を往復運動させて、その中に含まれる硬球を往復運動させる態様のみならず、容器自体を固定させた状態で硬球を外部から往復運動させる態様をも含んでいる。つまり、本明細書で用いる「振動」は、カーボンナノチューブに機械的な衝撃を直接的に与えてカーボンナノチューブに対して機械的な剪断力を直接作用させる操作を実質的に意味していることに留意されたい。
容器を往復運動させる態様の場合、その往復運動させる方向は、容器中空部の長手方向であることが一般的に好ましく、その容器中空部の長手方向が水平方向となるように容器を振動機に設置する場合には、その水平方向にて容器を左右に往復するように運動させることが好ましい。ただし、硬球と容器中空部の壁面との衝突が繰り返して行われるのであれば、容器自体の振動方向には特に制限はなく、容器および/もしくは容器中空部の形態または容器の振動機への設置の仕方等に応じて振動させる方向を適宜変更してもよく、例えば、往復運動する方向が経時的に変化するものであってもよい。
容器自体を固定させた状態で硬球を往復運動させる態様の例としては、磁性材料から成る硬球、非磁性材料から成る容器を用い、容器の外部から硬球に対して磁力を作用させて硬球を容器内で往復運動させる態様が考えられる。
尚、「振動」は、ある点を中心に往復運動する現象を一般に意味するところ、本明細書で用いる「振動」とは、容器がある方向にのみ往復運動する態様に必ずしも限定される必要はなく、硬球と容器中空部の壁面との衝突が経時的に繰り返して行われるのであれば(つまり、カーボンナノチューブに機械的な衝撃を直接的に与えて機械的な剪断力がカーボンナノチューブに対して作用するのであれば)、容器が回転運動および/または揺動運動する態様であってもかまわない。容器が回転運動する場合、容器が回転するだけでなく、例えば容器が設置される架台自体も回転し、容器の回転方向が時間的に変化(例えば「反転」)すると共に、架台の回転方向も容器とは独立に時間的に変化するものであることが好ましい。
工程(i)で用いる「容器」は、容器本体と蓋とを一般的に有して成り、好ましくは、容器中空部に供されるカーボンナノチューブ、可溶化剤および硬球を外界雰囲気から遮断して密閉する容器である。容器は、好ましくは、ステンレス等の硬い材料から主として形成されるが、振動処理に付されることにより生じる衝撃、例えば、容器中空部で往復運動する硬球が中空部壁面(即ち、容器内の中空部壁部)と衝突することで生じる衝撃に耐え得るものであれば、いずれの種類の材料から形成してもよい。なお一般的に、容器は、振動処理に付される間で密閉状態を維持するものが好ましい。従って、適当な密閉が供されるように、容器本体と蓋との間の接触面にガスケットを挟み込み、容器本体と蓋とを外部からクリップまたはホルダーで締め付けてもよい。
容器中空部は、例えば円筒形状を有し、振動処理に付される間、その円筒形中空部の一方の端部から他方の端部へと硬球が中空部の長手方向に往復運動できる形状およびサイズを有していることが好ましい。しかしながら、硬球が容器中空部内を実質的に往復して運動するような形状およびサイズであれば、容器中空部はいずれの形状およびサイズであってもよい。例えば容器中空部の長手方向における端部(即ち、円筒形状の容器中空部ではその頂部および底部)は平面状に形成されていることは必ずしも必要でなく、半球形状に形成されていてもよい。以下の記載では、容器中空部の形状が、半球形状の頂部および底部を有した円筒形状であることを前提として説明を行う。
容器中空部で硬球が往復運動し、その結果、好ましくはカーボンナノチューブと可溶化剤とが混ざるような振動数および/または往復運動する硬球と中空部壁面との間でカーボンナノチューブが粉砕されるような振動数で容器を往復運動させることが好ましい。ここで、本明細書で用いる「粉砕」という用語は、粉状に砕く現象・作用を意味しているのではなく、あくまでもカーボンナノチューブのバンドルを解離させる現象・作用を実質的に意味していることに留意されたい。振動数が5s−1以下であると、振動時間が非常に長くなってしまう可能性がある一方、振動数120s−1以上となると、カーボンナノチューブ同士が化学反応を起こしてカーボンナノチューブの溶解度が低下してしまう可能性がある。従って、振動数は、5〜120s−1であり、好ましくは10〜60s−1、より好ましくは振動数20〜50s−1である。容器を回転運動に付すことによって、硬球を容器に対して振動させる場合には、容器を往復運動させる場合と同様に解して、容器の回転数は、好ましくは5〜120回/sであり、より好ましくは10〜60回/s、より好ましくは振動数20〜50回/sとなり得る。
振動時間は、好ましくは1分〜5時間、より好ましくは1.5分〜3時間、更に好ましくは2分〜2時間程度である。振動時間が短すぎるとカーボンナノチューブの溶解度が低下し、また、振動時間が長すぎるとカーボンナノチューブ同士が反応しカーボンナノチューブの溶解度が低下するからである。但し、振動時間は、振動数または振幅等の振動条件に応じて変わり得る可能性があることを留意されたい。上述したような好適な振動数および振動時間に加えて、好適な振幅も考慮することが好ましい。具体的には、容器中空部で硬球が往復運動し、その結果、カーボンナノチューブと可溶化剤とが混ざるような振幅および/または往復運動する硬球と中空部壁面との間でカーボンナノチューブが粉砕されるような振幅でもって容器に対して硬球を振動させることが好ましい。容器を一定方向に往復運動させることによって、容器に対して硬球を振動させる場合、容器を往復運動させる際の振幅Wと容器を往復運動させる方向の容器中空部長さLとの比(W:L)は、好ましくは1:1〜50:1であり、より好ましくは1:1.2〜20:1、更に好ましくは1:1.3〜15:1である。なお、ここでいう「振幅」とは、往復運動に付される容器が往復運動の中心点を基準にして最大に変位した場合において、その中心点から最大変位点までの長さをいう。また、容器中空部が円柱形状である場合では容器中空部の長手方向に容器を往復運動させることが好ましいので、その場合には「容器を往復運動させる方向の容器中空部長さL」は、容器中空部の長手方向長さを実質的に意味している(図5参照)。
例えば横断面直径20mm、長手方向長さ65mmの容器(その中空部の胴体部分の横断面直径12mm、中空部の長手方向長さ50mm)を用いる場合を例にとると、振幅が小さすぎると、容器中空部内でカーボンナノチューブと可溶化剤とを効率よく混合できない一方、振幅が大きすぎると、硬球が容器中空部の壁面(例えば、円筒形状の容器中空部の頂部または底部における壁面)に衝突した後も容器自体が動き続けることになり、時間的にもエネルギー的にも損失が大きいので、5〜100mmの振幅、好ましくは10〜80mmの振幅、より好ましくは20〜50mmの振幅でもって中空部長手方向に容器を往復運動させる。
工程(i)にて容器内に供される硬球は好ましくは球形を有するものの、容器に対して硬球が振動する間、硬球が中空部にて往復運動するのに適した形状であればいずれの形状であってもかまわない。例えば横断面直径12mm、長手方向長さ50mmの容器中空部サイズの場合、硬球は、直径2〜10mm、好ましくは直径4〜6mm、より好ましくは直径5mmのサイズを有する球体である。また、容器に対して硬球が振動する間、容器中空部にて硬球が往復運動し、その結果、好ましくは当該硬球と容器中空部の壁面との間でカーボンナノチューブが粉砕されるような硬さを硬球および容器中空部の壁面が有することが好ましい。例えば、硬球の硬さおよび容器中空部の壁面の硬さがモース硬度4以下であると、硬球の変形および混合効率の低下(カーボンナノチューブと可溶化剤との混合効率の低下)を引き起こす可能性がある。従って、硬球の硬さは、好ましくはモース強度4〜9.5であり、より好ましくはモース強度5〜9.5、更に好ましくはモース硬度6〜9.5である。
硬球の材質としては、メノウ、スレンレス、アルミナ、ジルコニア、タングステンカーバイド、クロム鋼およびテフロン(登録商標)から成る群から選択される少なくとも1種以上の材料を挙げることができる。同様に、容器中空部の壁面の材質としては、例えば、メノウ、スレンレス、アルミナ、ジルコニア、タングステンカーバイド、クロム鋼およびテフロン(登録商標)から成る群から選択される少なくとも1種以上の材料を挙げることができる。容器に供される硬球の数は、1〜6個、好ましくは1〜4個、より好ましくは2個であるものの、容器に対して硬球が振動する間、容器中空部にて硬球が往復運動し、その結果、好ましくはカーボンナノチューブと可溶化剤とが混ざるのに適した個数および/または往復運動する硬球と容器中空部の壁面との間でカーボンナノチューブが粉砕されるのに適した個数であれば、いずれの個数を用いてもかまわない。なお、2個以上の硬球が容器に供される場合は、往復運動する硬球間でもカーボンナノチューブが粉砕されることになる。
硬球と容器中空部との関係について具体的に説明すると次のようになる。まず、硬球が容器中空部で往復運動する必要がある点を考慮した場合、容器中空部の長手方向長さLに対して硬球の直径Rが小さすぎると、次の点で不都合である。つまり、容器が小さい場合(即ち、容器中空部の長手方向長さLが小さい場合)、硬球が小さくなってしまい、衝突エネルギーが小さくなるためにうまく混合(カーボンナノチューブと可溶化剤との混合)できない可能性があり、逆に容器が大きい場合(即ち、容器中空部の長手方向長さLが大きい場合)には必然的に振幅が大きくなり振動機への負担および消費エネルギーが大きくなる可能性がある点で不都合である。一方、容器中空部の長手方向長さLに対して硬球の直径Rが大きすぎると、ストロークが短くなるために硬球が容器中空部の壁面と衝突した際のエネルギーが小さくなり混合が不充分となる可能性がある。従って、硬球の直径Rと容器中空部の長手方向長さLとの比(R:L)は、好ましくは1:1.5〜1:100であり、より好ましくは1:2.0〜1:75、更に好ましくは1:2.5〜1:50である(図5参照)。また、硬球の直径Rと容器中空部の短手方向長さS(=円筒形状の容器中空部の胴体部分の横断面直径S)との比(R:S)は、好ましくは1:1.1〜1:30であり、より好ましくは1:1.2〜1:20、更に好ましくは1:1.3〜1:15である(同様に図5参照)。尚、ここでいう「直径R」とは、硬球の形状が球形である場合を指している。しかしながら、硬球の形状は特に限定されず、球形以外の形状であってもよいので、その場合には、硬球が上記の「直径」に相当するような相当直径を有していることが好ましい。この「相当直径」とは、非球形の硬球の体積を変えずにその形状を球形にした場合に想定される直径を意味している。
また、硬球の総体積と容器中空部の体積との好ましい関係については次のようになる。例えば硬球の個数が1〜6個の場合、容器中空部体積Vに対する硬球の総体積Vの割合(=V/V×100(%))は、好ましくは0.2〜40%、より好ましくは0.3〜20%、更に好ましくは0.5〜10%である。これにより、硬球と容器中空部の壁面との衝突が増加してカーボンナノチューブがより粉砕されるような効果がもたらされ得る。
工程(i)に用いられる「可溶化剤」とは、工程(ii)でカーボンナノチューブを安定的に含む水溶液を得るために、工程(i)にてカーボンナノチューブおよび硬球と共に容器内に供される物質であり、好ましくは、水等の溶媒に対してカーボンナノチューブを安定的に分散させる物質である。従って、容器内に供される可溶化剤は、水溶性化合物であることが好ましく、例えば、プリン環を有するヌクレオチドである。「プリン環を有するヌクレオチド」としては、例えば、アデノシン三リン酸(ATP)、アデノシン二リン酸(ADP)、アデノシン一リン酸(AMP)、グアノシン三リン酸(GTP)、グアノシン二リン酸(GDP)、およびグアノシン一リン酸(GMP)等が具体的に挙げられる。なお、ATP、ADP、AMP、GTP、GDPまたはGMPは、塩の形態または水和物の形態であってもかまわない。また、ATP、ADP、AMP、GTP、GDPまたはGMPは、単量体のみならず、二量体または三量体等の重合体を含む形態であってもかまわない。更には、ATP、ADP、AMP、GTP、GDPまたはGMPの代わりに、それらの誘導体を用いてもかまわない。
なお、「プリン環を有するヌクレオチド」に限らず、工程(i)に用いられる「可溶化剤」としては、広い共役系を有しており、より強いπ−π相互作用を有する水溶性のπ系化合物も好ましい。π系化合物としては、例えば、ポルフィリンおよびその誘導体であってよく、例えば、5,10,15,20−テトラキス(1−メチル−4−ピリジニオ)ポルフィリン、テトラ(p−トルエンスルフォネート)(「p−トルエンスルフォネート」の部分は、他のアニオン、例えばI、Clであってもよい)、5,10,15,20−テトラキス(4−トリメチルアンモニオフェニル)ポルフィリン、テトラ(p−トルエンスルフォネート)、5,10,15,20−テトラキス(4−スルホナートフェニル)ポルフィリン、およびそれらの金属錯体(金属としては、亜鉛、鉄、マグネシウム、コバルト、ニッケル、銅、ルチウム等)を挙げることができる。また、工程(i)に用いられる「可溶化剤」は、ピレンおよびその誘導体であってもよく、例えば、1−ピレンブチリックアシッド、1−ピレンメチルアミンハイドロクロライド、1−ピレンカルボキシリックアシッド、および1−ピレンスルホニックアシッドを挙げることができる。更に、工程(i)に用いられる「可溶化剤」は、アントラセンおよびその誘導体であってもよく、例えば、9−アントラセンカルボキシリックアシッドおよび9−アントラセンメタノール等を挙げることができる。
容器内に供される可溶化剤とカーボンナノチューブとの質量比は、例えば可溶化剤が0.67mmolの場合、約1:1〜約5000:1、好ましくは約1:1〜約2500:1、より好ましくは約1:1〜約2000:1である。
工程(ii)のカーボンナノチューブを安定的に含む水溶液は、振動処理に付された後のカーボンナノチューブ、より詳細には振動処理に付された後のカーボンナノチューブを含む混合物に水が加えられることによって得ることができる。従って、この水溶液は、加えられる水、カーボンナノチューブおよび可溶化剤成分を含んで成る。なお、工程(ii)では、水を加えた後に必要に応じて、得られる混合物から沈殿物(当該沈殿物は水に可溶化しなかったカーボンナノチューブを実質的に含んで成る)を除去する操作を付加的に行ってもよい。工程(ii)で加えられる水は、一般的に水を主成分とし、例えば、超純水等の精製水、または水道水等である。また、必要に応じて他の成分、例えばアルコール等を含んでいてもよい。なお、ここでいう「安定的」とは、時間的にカーボンナノチューブが水媒体中で安定して分散することをいい、少なくとも1週間、好ましくは少なくとも2週間、より好ましくは少なくとも3週間は、カーボンナノチューブの凝集/沈殿が生じないことをいう。従って、このような水溶液では、カーボンナノチューブが水溶液中に溶解しているものと考えられることが理解されよう。参考までに、本発明の方法に従って得られた水溶液を図2に示す。この図に示す4種類の水溶液は、可溶化剤としてGMP(グアノシン一リン酸)、AMP(アデノシン一リン酸)、ADP(アデノシン二リン酸)およびATP(アデノシン三リン酸)をそれぞれ用いることによって得られたものである。図示されるように、得られた水溶液は黒色透明な外観を有している。これは、得られた水溶液中ではカーボンナノチューブが安定して分散していることを示しており、プリン環を有するヌクレオチドが本発明の可溶化剤として好ましいことを確認できる。
プリン環を有するヌクレオチド等を用いて得られた水溶液は、バンドルが解離したカーボンナノチューブを少なくとも含んでいるため、バンドルが解離される度合いに比例してカーボンナノチューブの比表面積が増すものと考えられる。従って、かかる水溶液から、比表面積のより大きいカーボンナノチューブ膜を有する部材を製造することができ、その部材を例えばガス吸蔵品または電極等として用いることができる。なお、かかるガス吸蔵品は、例えば、車、船舶等の水素ガス燃料を保存するのに用いることができる。また、電極の具体例としては、例えばリチウム二次電池などの負極等が考えられる。
上述の本発明の部材は、基材、および本発明の方法で製造されるカーボンナノチューブを含む水溶液を当該基材表面に塗布した後で乾燥させることにより形成されるカーボンナノチューブ膜を有して成る。基材は、例えばガス吸蔵品または電極等に対して適当な基板または支持板等であれば、いずれの形状または材料から成るものであってよい。本発明の方法で製造されるカーボンナノチューブを含む水溶液では、少なくとも部分的にバンドルの解離したカーボンナノチューブがほぼ均一に水媒体中に存在する。その結果、その水溶液を基材表面に塗布して乾燥することにより得られるカーボンナノチューブ膜は、カーボンナノチューブをほぼ一様に含んだものとなり得る。それゆえ、そのようなカーボンナノチューブ膜では、カーボンナノチューブの比表面積が大きいものとなり、ガス吸蔵量の多いガス吸蔵品または高効率な電極がもたらされることになる。
なお、本発明の方法で得られる水溶液を上述のようにガス吸蔵品または電極などの部材を形成するのに用いる他、常套のメンブランフィルターで水溶液を濾別処理に付すことによって、その水溶液中に含まれるカーボンナノチューブのみを単独に取り出し、その取り出されたカーボンナノチューブを、電界放出ディスプレイ(FED:Field Emission Display)用エミッター、光電変換素子、複合材料(プラスティック、ゴムもしくは樹脂等を補強するために混ぜられる材料)または化粧品等の用途に用いることもできる。
図1には、本発明のカーボンナノチューブを含む水溶液の製造方法を模式的に示している。以下にて、図1を参照して、本発明のカーボンナノチューブを含む水溶液の製造方法を経時的に説明する。
まず、カーボンナノチューブ1(好ましくは乾燥状態のカーボンナノチューブ)を用意する。次に、可溶化剤および2個の硬球2と共にカーボンナノチューブ1を容器3の容器本体中空部に供し、容器本体に蓋をすることによって容器3を密閉する。そして、容器中空部で硬球が往復運動し、その結果、好ましくはカーボンナノチューブと可溶化剤とが混ざるような振動数および振幅ならびに/または往復運動する硬球と中空部壁面との間でカーボンナノチューブが粉砕されるような振動数および振幅でもって当該容器3を中空部長手方向に往復運動させる。そして、適当な時間、容器3を往復運動させた後、容器3から取り出したカーボンナノチューブを水により希釈することによって、カーボンナノチューブを安定的に含む水溶液4が得られる。
本発明の好適な態様として、カーボンナノチューブを振動操作に付す前に、可溶化剤とカーボンナノチューブとを予め混ぜることによって調製してもよい。また、本発明の別の好適な態様として、カーボンナノチューブに対して可溶化剤を加えた後、かつ、カーボンナノチューブを振動に付す前に、カーボンナノチューブを減圧乾燥に付してもよい。
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明はこれに限定されず、種々の改変がなされ得ることは当業者には容易に理解されよう。ちなみに、上述した本発明は、次の態様を包含することに留意されたい:
第1の態様: カーボンナノチューブを含む水溶液を製造する方法であって、
カーボンナノチューブ、可溶化剤としてプリン環を有するヌクレオチド、および硬球を容器内に供した後、5〜120s−1の振動数で容器に対して硬球を振動させて、カーボンナノチューブを振動処理に付すこと、ならびに
振動処理に付された後のカーボンナノチューブに水を加えて、カーボンナノチューブを含む水溶液を得ること
を含んで成る方法。
第2の態様: 上記第1の態様において、容器を一定方向に往復運動させることによって、容器に対して硬球を振動させており、
容器を往復運動させる際の振幅Wと容器を往復運動させる方向の容器中空部長さLとの比(W:L)が1:1.3〜15:1であることを特徴とする方法。
第3の態様: 上記第1または第2の態様において、容器に対して硬球を振動させて、容器内でカーボンナノチューブのバンドルを少なくとも部分的に解離させることを特徴とする方法。
第4の態様: 上記第1〜3の態様のいずれかにおいて、可溶化剤が、アデノシン三リン酸(ATP)、アデノシン二リン酸(ADP)、アデノシン一リン酸(AMP)、グアノシン三リン酸(GTP)、グアノシン二リン酸(GDP)、グアノシン一リン酸(GMP)、それらの塩およびそれらの水和物から成る群から選択される少なくとも1種以上のヌクレオチドであることを特徴とする方法。
第5の態様: 上記第1〜4の態様のいずれかにおいて、カーボンナノチューブが、単層カーボンナノチューブを少なくとも含んで成ることを特徴とする方法。
第6の態様: 上記第1〜5の態様のいずれかにおいて、振動数が20〜50s−1であることを特徴とする方法。
第7の態様: 上記第1〜6の態様のいずれかにおいて、容器に対して硬球を振動させる時間が、2分〜2時間であることを特徴とする方法。
第8の態様: 上記第1〜7の態様のいずれかにおいて、硬球の個数が1〜6個であって、容器中空部の体積に対する硬球の総体積の割合が0.5〜10%であることを特徴とする方法。
第9の態様: カーボンナノチューブ膜を表面に有する基材から成る部材であって、
カーボンナノチューブ膜が、上記第1〜8の態様のいずれかの方法で得られるカーボンナノチューブを含む水溶液を、基材の表面に塗布した後、乾燥させることによって形成される膜であることを特徴とする部材。
第10の態様: 上記第9の態様において、ガス吸蔵品として用いられることを特徴とする部材。
第11の態様: 上記第9の態様において、電極として用いられることを特徴とする部材。
尚、本発明の技術的思想とは本質的に異なるものであるが、念のため、特開2005−28560について付言しておく。特開2005−28560に開示されている発明は、水溶液カーボンナノチューブの製造方法である。しかしながら、その開示されている発明は、あくまでも超音波処理および遠心分離処理で製造しており、本発明のような硬球が供された容器を往復運動させる振動粉砕処理とは本質的に異なる処理を用いている。また、開示されている発明ではオリゴヌクレオチドが用いられているものの、あくまでも一般的なオリゴヌクレオチドに関してしか言及しておらず、具体的なオリゴヌクレオチドの例はおろか、好適なオリゴヌクレオチドの化学構造などについては一切言及されていない。従って、特開2005−28560では、本発明に係るプリン環を含んだヌクレオチドに関しては教示も示唆もされていないことに留意されたい。
[ヌクレオチドの塩基の種類を変化させた比較試験]
可溶化剤として種々のヌクレオチドを用いて、本発明の製造方法を実施した。以下の操作手順は、可溶剤としてGMPを用いた場合を例にとって説明する。
(操作手順)
(1)0.3mgの単層カーボンナノチューブ(Carbon Nanotechnologies Incorporated製)、272mg(0.67mmol)の可溶化剤および2個のメノウボール(球直径5mm)を20mmの横断面直径、65mmの長手方向長さを有する円筒形状の密閉容器(当該容器に形成されている円筒形中空部:胴体部分の横断面直径12mm、長手方向長さ50mm)に仕込んだ。
(2)振動機(レッチェ(Retsch)製、MM200)において、密閉容器中空部の長手方向をほぼ水平にした状態で、約30mmの振幅、約30s−1の振動数で当該密閉容器を水平方向に往復運動させた。
(3)約20分間密閉容器を往復運動させた後、密閉容器の中空部から黒色粉末を取り出した。
(4)得られた約272.3mgの黒色粉末に約1000mgの重水を加えることによって、単層カーボンナノチューブを安定的に含む水溶液を得た(溶けきらなかった単層カーボンナノチューブの沈殿物は、遠心分離(8000rpm,10分、約25℃(室温))により水溶液から除去した)。
(5)得られた水溶液は、少なくとも3週間までは単層カーボンナノチューブが凝集/沈殿しなかった。
同様の操作を、種々の可溶化剤(全て0.67mmol)で実施し、得られた液体のカーボンナノチューブ濃度を求めた。その結果を図3および以下の表1に示す。図3は、得られたカーボンナノチューブを含む液体の可視−紫外吸収スペクトルを示す。表1のカーボンナノチューブ濃度(mg/1000mg)とは、得られた水溶液1000mg当たりに含まれる単層カーボンナノチューブの質量(mg)を意味する。カーボンナノチューブ濃度は、1mmセルを用いたときの可視吸収スペクトルにおける500nmの波長の吸光度(A500)から、以下の式のように水溶液中におけるCNTの吸光係数(ε500=2.86×10cm/g)を用いることによって得たものである:
(結果)
表1を参照すると、可溶化剤としてGMP、AMP、ADPおよびATPを用いた場合、単層カーボンナノチューブが水溶化されるのに対して、可溶化剤としてCMPおよびUMPを用いた場合では全く水溶化されないことが分かった。これは、GMP、AMP、ADPおよびATPが、プリン環の塩基部位を有しているために、CMPおよびUMPの塩基部位のピリミジン環に比べて広い共役系を有し、より強いπ−π相互作用で単層カーボンナノチューブの表面を被覆できるからであると考えられる。また、R5Pを用いた場合でも、単層カーボンナノチューブは全く水溶化されなかったことから、本発明の製造方法に用いられる可溶化剤としては、塩基としてプリン環を有するヌクレオチドが好ましいことが分かった。
H−NMRスペクトル測定]
ATPと単層カーボンナノチューブ(SWNT)との相互作用を確認するために、H−NMRスペクトル測定を実施した。結果を表2に示す。測定に用いた「単層カーボンナノチューブを含む水溶液」は、上述の操作と同様の操作で調製した(なお、単層カーボンナノチューブおよびATPは、それぞれ3mgおよび15mg用いた)。また、H−NMRスペクトル測定に際しては、日本電子製の型式JNM−LA600を分析機器として用いた。
(結果)
表2を参照すると、プリン環のプロトンであるH-8およびH-2では比較的大きな高磁場シフトがあることが分かる。これは、単層カーボンナノチューブのπ共役系の環電流による遮蔽効果を受けたものと考えられ、アデニン部位が単層カーボンナノチューブのサイドウォールと相互作用していることを示している。一方、糖部位のプロトンH-1’、H-3’およびH-4’では低磁場シフトもしくは若干の高磁場シフトがあることが分かる。これは、糖部位が単層カーボンナノチューブ表面にあまり関与していないことを示している。以上の結果に基づくと、単層カーボンナノチューブとATPとの間の相互作用は、単層カーボンナノチューブと塩基部位とのπ−π相互作用もしくは疎水性相互作用によるものと考えられる。
[単層カーボンナノチューブを含む水溶液のRamanスペクトルの測定]
上述の操作と同様の操作で調製した「単層カーボンナノチューブを含む水溶液」の物性を評価するために、Ramanスペクトルの測定を実施した。結果を図4に示す。なお、Ramanスペクトルの測定に際しては、日本分光製の型式NRS−2100を分析機器として用いた。
(結果)
図4に示すように、全てのスペクトルにおいて、150〜300cm−1付近のラジアルブリージングモード(RBM)と、炭素原子の六員環ネットワーク内の格子振動に起因する1550cm−1付近のGバンドが観察されており、単層カーボンナノチューブが溶解していることを確認した。150〜300cm−1のラジアルブリージングモードは半導体単層カーボンナノチューブに対応し、230〜300cm−1のラジアルブリージングモードは金属単層カーボンナノチューブに対応していることから、半導体単層カーボンナノチューブおよび金属単層カーボンナノチューブの双方が溶解しているものと考えられる。
[カーボンナノチューブ水溶液中の単層カーボンナノチューブのTEM写真]
図6(a)〜(c)には、本発明の製造方法で得られたカーボンナノチューブ水溶液に含まれている単層カーボンナノチューブ(SWNT)のTEM写真を示す。図6(a)〜(c)は、それぞれ異なる可溶化剤を用いた場合のTEM写真であり、図6(a)ではGMP、図6(b)ではADP、図6(c)ではATPを可溶化剤として用いている。かかるTEM写真からは、本発明の製造方法で得られる水溶液には、バンドルの解離した単層カーボンナノチューブが含まれることが理解できる(特に図6(b)および(c)参照)。また、このTEM写真から、本発明の製造方法で行う振動処理の効果は、カーボンナノチューブのバンドルを完全とは言えないまでも解離させる効果があるに留まっており(振動処理によって、カーボンナノチューブが元の形態・形状から細くなっていることから、そのバンドルが少なくとも解離していることが分かる)、カーボンナノチューブ自体の構造を破壊する効果まではないことが理解できるであろう。
[本発明の製造方法と超音波法との比較実験]
本発明の製造方法で行う振動処理の効果を他の処理操作との比較で確認するために、本発明の製造方法と超音波法との2つの製造方法を実施した。
(1)本発明の製造方法によるカーボンナノチューブ水溶液の製造
可溶化剤としてATPおよびGMPをそれぞれ用いて本発明の製造方法でカーボンナノチューブ水溶液(試料A)を製造した。具体的には、
(i)0.3mgの単層カーボンナノチューブ(Carbon Nanotechnologies Incorporated製)、0.67mmolの可溶化剤および2個のメノウボール(球直径5mm)を20mmの横断面直径、65mmの長手方向長さを有する円筒形状の密閉容器(当該容器に形成されている円筒形中空部:胴体部分の横断面直径12mm、長手方向長さ50mm)に仕込んだ。
(ii)振動機(レッチェ(Retsch)製、MM200)において、密閉容器中空部の長手方向をほぼ水平にした状態で、約30mmの振幅、約30s−1の振動数で当該密閉容器を水平方向に往復運動させた。
(iii)約20分間密閉容器を往復運動させた後、密閉容器の中空部から黒色粉末を取り出した。
(iv)得られた約272.3mgの黒色粉末に約1000mgの重水を加えることによって、単層カーボンナノチューブを安定的に含む水溶液の試料Aを得た(溶けきらなかった単層カーボンナノチューブの沈殿物は、遠心分離(8000rpm,10分、約25℃(室温)により水溶液から除去した)。
(2)超音波法の実施
超音波法でカーボンナノチューブ水溶液の製造を試みた。可溶化剤は、上述の本発明の製造方法と同じくATPおよびGMPをそれぞれ用いて試料Bを調製した。操作方法・実験条件は次の通りである。
(i)まず、10mLガラスバイアルに対して、0.3mgの単層カーボンナノチューブ(Carbon Nanotechnologies Incorporated製)および0.67mmolの可溶化剤を仕込んだ後、約1000mgの重水を仕込んで混合物を形成した。
(ii)超音波バス(180W、42kHz、5510 Branson Ultrasonic Corp.)を用いて、(i)で得られた混合物を2時間超音波処理に付した。
(iii)次いで、(ii)で得られた混合物をマイクロ遠心管(Eppendorf AG製)に仕込んで8000rpmの条件で遠心処理に10分間付した後、沈殿物を除去することよって試料Bを得た。
(3)結果
本発明の製造方法で得られた試料Aおよび超音波法で得られた試料Bについて、カーボンナノチューブ濃度を段落[0042]および[0043]で説明したように、可視吸収スペクトルにおける500nm波長の吸光度(A500)から算出した。結果を表3に示す。
表3を参照すると、本発明の製造方法で得られた試料Aにはカーボンナノチューブが含まれているのに対して、試料Bにはカーボンナノチューブは含まれていないことが分かる。これは、本発明の製造方法ではカーボンナノチューブが溶解しているために遠心分離操作でカーボンナノチューブが除去されずに溶液中に残存したのに対して、超音波法ではカーボンナノチューブが溶解していなかったため遠心分離操作で全てが除去されたためと思われる。換言すれば、可溶化剤だけではカーボンナノチューブは可溶化することはなく、あくまで振動処理があって初めてカーボンナノチューブが可溶化することを把握することができ、本発明の製造方法で行う振動処理の効果が優れていることが理解できた。尚、振動処理では、超音波処理と違ってカーボンナノチューブに対して剪断力が大きく働くことになる点で、カーボンナノチューブのバンドルの解離に対して特に有利な効果があるものと考えられる。
本発明の方法で得られた水溶液は、ガス吸蔵品(例えば車または船舶等の水素ガス燃料を保存する水素吸蔵媒体)または電極(リチウム二次電池などに用いる負極)の製造に用いることができることができるだけでなく、電界放出ディスプレイ用エミッター、光電変換素子または化粧品の製造にも用いることができる。

Claims (11)

  1. カーボンナノチューブを含む水溶液を製造する方法であって、
    カーボンナノチューブ、可溶化剤としてプリン環を有するヌクレオチド、および硬球を容器内に供した後、5〜120s−1の振動数で容器に対して硬球を振動させること、ならびに
    振動に付された後のカーボンナノチューブに水を加えて、カーボンナノチューブを含む水溶液を得ること
    を含んで成る方法。
  2. 容器を一定方向に往復運動させることによって、容器に対して硬球を振動させており、
    容器を往復運動させる際の振幅Wと容器を往復運動させる方向の容器中空部長さLとの比W:Lが1:1.3〜15:1であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
  3. 容器に対して硬球を振動させて、容器内でカーボンナノチューブのバンドルを少なくとも部分的に解離させることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
  4. 可溶化剤が、アデノシン三リン酸、アデノシン二リン酸、アデノシン一リン酸、グアノシン三リン酸、グアノシン二リン酸、グアノシン一リン酸、それらの塩およびそれらの水和物から成る群から選択されるヌクレオチドであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
  5. カーボンナノチューブが、単層カーボンナノチューブを少なくとも含んで成る、請求項1に記載の方法。
  6. 振動数が20〜50s−1であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
  7. 容器に対して硬球を振動させる時間が、2分〜2時間であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
  8. 硬球の個数が1〜6個であって、容器中空部体積に対する硬球の総体積の割合が0.5〜10%であることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
  9. カーボンナノチューブ膜を表面に有する基材から成る部材であって、
    カーボンナノチューブ膜が、請求項1に記載の方法によって得られるカーボンナノチューブを含む水溶液を、基材の表面に塗布した後、乾燥させることによって形成される膜であることを特徴とする部材。
  10. ガス吸蔵品として用いられる、請求項9に記載の部材。
  11. 電極として用いられる、請求項9に記載の部材。
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