以下、図面を参照しながら本発明の実施形態の幾つかを説明するが、本発明を本質的に変更しない範囲で種々に変更実施し得ることは説明を要しないであろう。
〔第1の実施形態〕
〔車椅子収納装置を搭載した車両の全体的な構成について〕
図1は本発明の第1の実施形態に係る車椅子収納装置について車両に搭載した状態を示す斜視図である。図2は図1に示す車椅子収納装置を示す斜視図である。図3は図2に示す平行リンクアームを駆動する回動機構の構成を示す図である。図中、Frは車両前方、RHは車幅右方向、Upは鉛直方向を示す記号である。
本発明の第1の実施形態に係る車椅子収納装置10は、図2に示すように、移乗用補助シート20と、車椅子5が乗り入れる車椅子搭載手段30と、移乗用補助シート20及び車椅子搭載手段30を先端側に取り付けた平行リンクアーム40と、平行リンクアーム40を車両前後方向の軸回りに回動する回動機構50と、を備えている。本発明の第1の実施形態では、平行リンクアーム40と回動機構50とで移動機構110が構成されている。
車椅子収納装置10は、図1に示すように、車両1の前列シート2と後列シート3との間において前列シート2側の車両フロアに取り付けられている。この取付けに際しては、前列シート2や後列シート3を車両1に組み付けるボルト孔などを利用し、車両に新たに孔を設ける必要がない。本発明の第1の実施形態では、図1に示すように、車両1のドライバーが車椅子5の利用者である場合を想定しており、運転席の後ろ側に車椅子収納装置10が配置されている。図1に示す例では、運転席の後部座席3Aが跳ね上げられている。しかし、本実施形態はこれに限定されずに、後部座席3Aそのものが取り外されていて後部座席3Aが設置されていなくてもよいし、後部座席3Aが跳ね上げられていない場合でも車椅子を後部座席3Aの上に収納するようにしてもよい。
〔平行リンクアーム及び回動機構〕
図2に示す平行リンクアーム40及び回動機構50について詳細に説明する。図3に示すように、平行リンクアーム40は先端側が車幅外方向に向けられ、その先端側が本体ケース60の開口60Aから張り出して設けられている。
平行リンクアーム40は、上側アーム部材41Aと、下側アーム部材41Bと、上側及び下側のアーム部材41A,41Bの先端側の姿勢を保ちながら上側アーム部材41A及び下側アーム部材41Bをそれぞれ回動可能に支持する4つの回動軸42A,42B,43A,43Bと、から構成されている。つまり、4つの回動軸42A,42B,43A,43Bが互いに平行四辺形をなす位置に配置され、平行リンクアーム40は、4節平行リンクを構成している。
上側の2つの回動軸42A,42Bはそれぞれ上側アーム部材41A,下側アーム部材41Bの先端側に貫通されている。回動軸42A,42Bは、図3に示すように、ボックス44内に設けられ、このボックス44には、後述するように、移乗用補助シート20及び車椅子搭載手段30を支持する方向転換手段70が取り付けられる。ボックス44のコーナー部44Aには開口が形成されている。上側アーム部材41A,下側アーム部材41Bの先端側がその開口に挿入されている。
下側の2つの回動軸43A,43Bはそれぞれ上側アーム部材41A,下側アーム部材41Bの回動基端側に貫通されている。回動軸43A,43Bは、図3に示すように、本体ケース60内に設けられ、この本体ケース60は、後述するように、回動機構50が収容されている。
本体ケース60は一つのコーナー部に開口60Aを有しており、その開口60Aに上側アーム部材41A及び下側アーム部材41Bの回動基端側が挿入されている。本体ケース60は開口60Aが車幅外側に向けて、図1に示す例ではRHの方向に向けて、設置金具62により車室床面に固定される。本体ケース60において前後の壁部63A,63Bには回動軸43A,43Bが架橋されている。
回動軸43A,43Bが上側アーム部材41A及び下側アーム部材41Bの回動基点側に挿通している。上側アーム部材41A,下側アーム部材41Bは、何れもターンバックル方式を採用して長手方向の寸長が調整できるようにしてよい。
ここで、回動軸42A,42B,43A,43Bは上側アーム部材41A,下側アーム部材41Bに対して回動可能に取り付けられ、各回動軸42A,42B,43A,43Bがボックス44,本体ケース60に固定されてもよい。逆に、回動軸42A,42B,43A,43Bは上側アーム部材41A,下側アーム部材41Bと一体的に固定され、各回動軸42A,42B,43A,43Bがボックス44,本体ケース60に回動可能に取り付けられていてもよい。
回動機構50は、例えば回動軸43Bの回りに回動しそれにより平行リンクアーム40全体が回動する。回動機構50の構成としては種々考えられ、例えば図3に示すように、アクチュエータ本体部51Aと、アクチュエータ本体部51Aから直線移動する作動部51Bと、作動部51Bと下側アーム部材41Bの基端側との間に設けられる伝達部材としてのレバー53とから構成することができる。作動部51Bの直線移動をレバー53の回動運動に変換して平行リンクアーム40に伝達するとよい。レバー53と作動部51Bとは回動軸52で連結されている。
詳細に説明すると、作動部51Bが車幅方向に直線移動するようアクチュエータ本体部51Aを配置し、本体ケース60の前後の壁部63A,63Bに回動軸61を架橋して、この回動軸61にアクチュエータ本体部51Aの一端部を固定する。回動軸52が作動部51Bに回動軸43Bと略平行に設けられており、作動部51Bが回動軸52によりレバー53と連結されている。この回動軸52は本体ケース60には固定されていない。アクチュエータ本体部51Aから作動部51Bが延出、没入することで作動部51Bが直線移動する。すると、回動軸61であるアクチュエータ固定軸部に対してアクチュエータ本体部51Aが揺動し、伝達部材としてのカム形状のレバー53が回動軸43Bを中心に回動する。すると、上側アーム部材41A、下側アーム部材41Bがそれぞれ回動軸43A,43Bの周りに回動する。
ここで、下側アーム部材41Bと伝達部材としてのレバー53との関係について説明すると、レバー53は、図3に示すように下側アーム部材41Bを挟んで対峙するよう一方のレバー53A及び他方のレバー53Bの一対で構成してもよいし、図示しないが下側アーム部材41Bの軸と同じ面上に一つのカムを設けて構成してもよい。ここで、伝達部材としてのレバー53は下側アーム部材41Bと所定の鈍角をなすように下側アーム部材41Bに溶接などにより取り付けられる。
図4は回動機構50による平行リンクアーム40の動作を模式的に示す図である。回動機構50は例えば前述したように、下側アーム部材41Bの基端部側に伝達部材としてのレバー53が溶接等で固着されており、アクチュエータ51が車幅方向にほぼ平行に寝た状態となるよう、アクチュエータ本体部51Aがレバー53と逆側で回動軸61により支持され、作動部51Bがレバー53の下端近傍において回動軸52で支持されている。
回動機構50が上述した構成を備えているので、アクチュエータ51における作動部51Bがアクチュエータ本体部51Aから車幅方向に延びたり引っ込んだりして図4の矢印Aの方向に往復する。すると、回動軸43Bに対してレバー43が回動軸52と共に図の矢印Bの方向に回動する。それに併せて、上側アーム部材41A,下側アーム部材41Bがそれぞれ回動軸43A,43Bの回りに回動する。よって、上側アーム部材41A及び下側アーム部材41Bが立ち上がったり倒れたりする。その際、ボックス44は、矢印Cで示すように回動するが、上側アーム部材41A及び下側アーム部材41Bの傾斜角度に拘わらず、同じ姿勢を保ち続ける。点線、実線、二点破線は、回動機構50によりレバー53、上側アーム部材41A,下側アーム部材41B及びボックス44がどのように移動するかを示している。
回動機構50は、図示した形態に限定されるものではなく、ギアを介在してもよい。作動部51Bは、空圧、油圧の何れで作動するものであってもよい。さらに、回動機構50は図示を省略するが、電動モータを備え、ギア等の減速機を介在させて、回動軸43Bを中心に上側アーム部材41A,下側アーム部材41Bを回動するものであってもよい。
〔回動機構による平行リンクアームの回動について〕
図4を参照しながら、回動機構50による平行リンクアーム40の回動について説明する。回動機構50は、車両前後方向に沿って延びる軸回りに上側アーム部材41Aと下側のアーム部材41Bを回動する。図4に示すように、回動機構50では、車幅方向に沿って延びる方向にアクチュエータ本体部51Aが設置されており、回動軸61,43A,43Bが位置を変えないで、作動部51Bがアクチュエータ本体部51Aから延出したり引っ込んだりするので、その動作に対応して伝達部材としてのレバー53が回動軸43Bを中心に回動する。
前述したように、伝達部材としてのレバー53には所定の鈍角をなすよう下側アーム部材41Bが固着されているので、レバー53の回動に伴い、平行リンクアーム40が反るように立ち上がったり(図4において点線で示す状態)、お辞儀をするように平行リンクアーム40が倒れたりする(図4において二点破線で示す状態)。その際、上下のアーム部材41A,41Bは回動軸42A,42B,43A,43Bで4節平行リンクを構成しているので、本体ケース60からみて、ボックス44は水平を保ったまま回動する。
〔車椅子搭載手段〕
図2に示す車椅子搭載手段30について詳細に説明する。車椅子搭載手段30は、車椅子5の補助輪及び車輪が乗り入れる一対のレール31と、この一対のレール31を連結すする伸縮可能な連結部32と、を備える。
一対のレール31は車椅子5の車幅方向に離隔した左レール31Lと右レール31Rとからなる。左レール31L、右レール31Rの何れも、車椅子5の補助輪(「前輪」とも呼ばれる。)及び車輪が離脱しないよう仕切り部33を備えている。仕切り部33は車椅子5が乗り入れて出し入れできるよう、前後何れか一方(図示の例では後側)を除いて、左右の側壁部33a,33bと制止部33cと、からなる。左レール31L,右レール31Rの何れもの底部34は、その大部分は前後方向に水平になっているが、仕切り部33が設けられていない前後一方側は地面と段差がないよう傾斜している。車椅子5は左右のレール31L,31Rから後側に出し入れされるため、前側に制止部33cがストッパの役目をする。さらに、左レール31Lの左側の側壁部33aと右レール31Rの右側の側壁部33bには、互いに対向するよう、柔軟性のあるパッド35L,35Rが取り付けられている。パッド35L,35Rの機能について説明すると、一対のレール31は後述するように、連結部32の縮小により左右の間隔が狭くなり、車椅子5を折り畳むわけである。その際、パッド35L,35Rが車椅子5の車輪等を他の側壁部33b,33aとで左右から押さえ付け、車椅子5を動かないように固定する。パッド35L,35Rは一対のレール31のそれぞれに少なくとも一つ付ければ十分であるが、一対のレール31のそれぞれにパッド35L,35Rを設けてもよい。
連結部32は、図2に示すように一対のレール31の間に設けられ、右レール31Rを支持するものである。連結部32は、一対のレール31の間に複数設けられている。図5は図2に示す連結部の断面図である。連結部32は図5に示すように、断面寸法の異なる複数の連結部材32a,32b,32cが同軸上に設けられ、その軸方に伸縮可能になっている。詳細には、第1の連結部材32aの右端側に第2の連結部材32bの左端側が挿入され、第2の連結部材32bの右端側に第3の連結部材32cの左端側に挿入されている。第1乃至第3の連結部材32a,32b,32cのうち一方が他方に挿入されて連結している端部には、それぞれ係止部が対応するように設けられている。例えば、挿入される側の端部として第1の連結部材32aの右端部には、係止部として軸側に爪が設けられ、挿入する側の端部として第2の連結部材32bの左端部には、係止部として外周側に鍔が設けられている。第2の連結部材32bの右端部と第3の連結部材32cとの連結関係も同様である。
左レール33Lと右レール33Rとの間隔を変更する変更手段36は、動力源としてのアクチュエータ本体部36aと、このアクチュエータ本体部36aから出没する作動部36bと、を備える。変更手段36は、一方の連結部32Fと他方の連結部32Rとの間で、一対のレール31に対して交わる方向に配設されている。具体的には、アクチュエータ本体部36aは、左レール31Lの一方の連結部32Fにブラケットを介在して、鉛直軸回りに揺動可能に取り付けられる。作動部36bは、右レール31Rの他方の連結部32Rにブラケットを介在して、鉛直軸回りに揺動可能に取り付けられる。変更手段36としての伸縮手段、すなわちアクチュエータの配設方向は図2に示す例に限定されず、アクチュエータ本体部36a及び作動部36bの配設方向が図2に示す場合と前後逆であってもよい。
アクチュエータ本体部36aから作動部36bが出没して変更手段36の両端の長さが伸縮する。例えば、アクチュエータ本体部36aから作動部36bが伸び、左レール31Lへの変更手段36の取付位置から右レール31Rが斜めに押される。しかし、連結部32が前後に間隔をおいて一対平行に設けられている。そのため、アクチュエータ本体部36aから作動部36bが伸びると、右レール31Rは左レール31Lに対して平行を保ちながら左レール31Lとの間隔を広げる。このとき、変更手段36は、左右のレール31L,31Rの間隔が広がるに伴い、あたかも、アクチュエータ本体部36aの一端部が取り付けられている部位を中心軸として、作動部36bの先端が取り付けられている部位が揺動する。アクチュエータ本体部36aに作動部36bが没入する場合も同様である。これにより、後述するように、車椅子利用者Pが車椅子5に乗った状態で一対のレール31に乗り入れ、車椅子利用者Pが前列シート2に移乗した後、車椅子5を折り畳み可能なロック解除状態とする。この状態において、変更手段36が伸縮することで、右レール31Rが左レール31Lに近づき、一対のレール31の間隔が狭くなる。その際、車椅子5の右側の車輪に対して左側の車輪側に近接するよう圧力が加わる。この結果として、車椅子5が折り畳まれる。
〔方向転換機構〕
車椅子搭載手段30は方向転換機構70を介在して移動機構110に取り付けられる。方向転換機構70は、動力源と、その動力源により回動する回動軸部材と、この回動軸部材を車椅子搭載手段30に取り付けるための各種のアタッチメントなどで構成されている。以下、移動機構110が前述したように平行リンクアーム40とその回動機構50とを含んで構成されている場合を例にとって説明する。
動力源として電動モータ72Aが、図2及び図4に示すように、平行リンクアーム40の先端側のボックス44内に設けられ、この電動モータ72Aは鉛直軸に沿って平行に配設されている回動軸部材72Bを正転、逆転する。回動軸部材72Bにはアタッチメント71が装着されている。一方、取付部材73が、一対のレール31のうち例えば左レール31Lの側壁部33aから立設しており、取付部材73の後側上端部には、複数の貫通穴73aが設けられている。アタッチメント71の側面には一対の取付用穴が穿設されている。一対の取付穴に対して複数の貫通穴73aのうち、移動機構110との位置関係や搭載する車椅子5の大きさ、更には前列シート2との位置関係を併せて、適切なペアが選択され、止め具73bが貫通穴73aに挿入されて、取付部材73がアタッチメント71を介して平行リンクアーム40に取り付けられる。
方向転換機構70は、単に車椅子搭載手段30を移動機構110に取り付けるだけでなく、移動機構110に対して車椅子搭載手段30における一対のレール31の向きを変換する。詳細には、電動モータ72Aが正転することで、一対のレール31を車幅方向から車両前後方向に換え、電動モータ72Aが逆転することで、一対のレール31を車両前後方向から車幅方向に変える。なお、「正転」とは出力軸側からみて時計回りを意味し、「逆転」とは出力軸側からみて反時計回りを意味する。
〔車椅子搭載手段の変形例〕
図6は、図2に示す車椅子搭載手段30の変形例を示す図であり、図7(A)は左レール31Lと変更手段37との接続態様の一例を示す図で、(B)は右レール31Rと変更手段37との接続態様の一例を示す図である。図2とは、車椅子搭載手段30における変更手段37とそれに関連する点で異なっている。図6では、変更手段37は、動力源としての電動モータ37aと、電動モータ37aで揺動する揺動レバー37bと、を備える。変更手段37は、一方の連結部32Fと他方の連結部32Rとの間で、一対のレール31に対して交わる方向に配設されている。具体的には、左レール31Lの一方の連結部32Fにはブラケット37dが取り付けられ、ブラケット37dに電動モータ37aが取り付けられ、揺動レバー37bの一端部がベアリング37cを介在して電動モータ37aに装着されている。電動モータ37aが揺動レバー37bの一端部を支持しつつ揺動する。そのため、変更手段37は揺動手段と呼んでもよい。変更手段37と左レール31Lとの接続の仕方は図7(A)に示すものに限らず、電動モータ37aなどの動力源により揺動レバー37bを揺動することができれば、いかなる態様のものでもよい。
一方、図7(B)に示すように、右レール31Rの側壁部33aにはスライド機構38が設けられ、揺動レバー37bがスライド機構38によりスライドする。具体的には、右レール31Rの側壁部33aには右レール31Rに沿ってスライドレール38aが取り付けられ、スライダー38cがスライドレール38aにベアリング38bを介在して走行可能に取り付けられ、スライダー38cに揺動レバー37bの先端部が取り付けられ、スライダー38cと揺動レバー37bが止め具37dにより固定されている。揺動レバー37bが揺動すると、スライダー機構38によりスライダー38cがスライドレール38a上を走行して、右レール31Rが左レール31Lに並行を保って近づいたり遠ざかったりする。なお、右レール31Rと変更手段37との接続態様についても、変更手段37に含まれる揺動レバー37bの先端部が右レール31Rに沿ってスライドすることができれば、いかなる態様のものでもよい。
〔移乗用補助シート〕
移乗用補助シート20の移動機構110への取付態様、移乗用補助シート20のタイプも各種のものを適用することができる。第1の実施形態においては、図2に示すように、車椅子搭載手段30が取付部材73を備えているため、この取付部材73の前部に移乗用補助シート20が取り付けられる。この移乗用補助シート20は、車椅子搭載手段30と逆側に取付部材73に取り付けられる。移乗用補助シート20は、使用しないときに車両1に車椅子5と共に収納できるよう、例えば蝶番などを介在して取り付けられ、移乗用補助シート20を跳ね上げられるようにすることが好ましい。図1に示す車椅子収納装置10は、移乗用補助シート20を備えているので、車椅子収納兼移乗用補助装置と呼んでもよい。仮に、車椅子収納装置10自体に移乗用補助シート20を備えていなくても、車両1の前列シート2の脇に設けられている展開式などの補助シートを用いて車椅子5と前列シート2との間で移乗してもよい。
なお、移乗用補助シート20は車椅子利用者が車椅子と車両シートとの間を移乗することができればどのようなタイプでもよい。第1実施形態では、平行リンクアーム40が車幅方向に配置されるよう移動機構110が運転席の後方に設置され、平行リンクアーム40の先端側の一部が車両外側に張り出し可能となっている。そのため、移乗用補助シート20が、平行リンクアーム40のうち車両外側に張り出す部位に取り付けられている。移乗用補助シート20は、運転席前端付近まで延びているほうが車椅子と車両シートとの間を移乗しやすくする。そのため、移乗用補助シート20は一枚シートである必要はなく、複数枚のシートが折り畳み可能に連結して構成されてもよい。移乗用補助シート20が活用されない状況、即ち、移乗用補助シート20が跳ね上げられている状況では、移乗用補助シート20がその大きさを可変できないとすると、移乗用補助シート20の先端が、車両のスライドドア開口部の上端と干渉することになり、仮に、移乗用補助シート20を車室内に収納したとしても、車室内の天井付近まで延びるため、後方の視界の妨げとなるからである。
本発明の第1の実施形態では、移乗用補助シート20を前列シート2の高さまで上昇させることで、車椅子利用者Pが移乗用補助シート20から前列シート2に容易に乗り移ることが可能になる。その際、移乗用補助シート20は、前列シート2側に限りなく寄り、移乗用補助シート20と前列シート2との間の水平方向の隙間を可及的になくすことが好ましい。
〔車椅子収納装置の動作〕
図2に示す車椅子収納装置10の動作を説明する。図8及び図9は図2に示す車椅子収納装置10の動作を示す図であり、図8(A)は車両1内に設置されて移動機構110が動作しておらず収納されている状態、図8(B)は移動機構110が作動して車幅方向に平行リンクアーム40の先端側が張り出している状態、図9(A)は方向転換機構70が動作した状態、図9(B)は変更手段36,37が動作した状態を示す図である。Fr,Up及びRHは図1に示す車両1における各方向を示すものである。
図8(A)に示すように、車両1に車椅子収納装置10が取り付けられ、平行リンクアーム40が動作していない状態では、平行リンクアーム40は反った状態で、取付部材73を含めて車椅子搭載手段10及び移乗用補助シート20を支持する。回動機構50は、平行リンクアーム40を、車両後方にみて反時計回り(図8(A)に示す矢印の向き)に回動する。すると、図8(B)に示すように、平行リンクアーム40があたかもお辞儀をするように倒れ、車両の開口から平行リンクアーム40の先端側を張り出す。
その後、方向転換機構70が平面視で反時計回り(図8(B)に示す矢印の向き)に取付部材73を約90度回転する。すると、図9(A)に示すように、一対のレール31が車幅方向から車両前後方向に方向を変える。次に、変更手段36,37が図9(B)に示すように連結部32を伸ばす。すると、右レール31Rが左レール31Lと平行を保ちつつ遠ざかり、一対のレール31の幅は車椅子5における一対の車輪の幅とほぼ同じとなるので、一対のレール31に車椅子5が乗り入れ可能な状態となる。
このように車外に張り出した状態から車室内へ収納する場合には、逆の手順を踏めばよい。
以上説明した車椅子収納装置10により、車椅子利用者Pが車椅子5に乗った状態から前列シート2に移乗する手順について説明する。図10乃至図12は車椅子利用者が車椅子に乗った状態から前列シートに移乗して車椅子を車両に収納する一連の流れを示す図であり、図10(A)は車椅子収納装置10が車両1内にある状態を、図10(B)は平行リンクアーム40を張り出して車椅子搭載手段10に車椅子5を乗り入れた状態を示す。図11(A)は平行リンクアーム40を僅かに回動して車椅子5の高さが前列シート2とほぼ同じ高さになった状態を、図11(B)は車椅子利用者Pが移乗用補助シート20を用いて前列シート2に乗り移った状態を示す。また、図12は車椅子を搭載した状態で車両1に収納されている状態を示す図である。Fr,Up及びRHは図1に示す車両1における各方向を示す。
車椅子収納装置10は、例えば図1や図9乃至図11に示すように、車両1のドライバーシートである前列シート2の後ろ側に車椅子収納装置10が取り付けられている。この状態で、車椅子利用者Pは車椅子5の乗った状態でスライドドア1Aのほぼ真横に位置し、スライドドア1Aを開ける。そのとき、車椅子収納装置10は、図8(A)に示すように、本体ケース60から平行リンクアーム40が反るように立ち上がっており、取付部材73が本体ケース60のほぼ真上で、取付部材73の後側に車椅子搭載手段30が配置され、逆に前側に移乗用補助シート20が跳ね上げられた状態でやや車両前方側を向くように立ち上がっている。
この状態で、車椅子利用者Pは、例えばシート脇に取り付けられている操作入力部85を手にしてこれを操作することで、回動機構50が作動し平行リンクアーム40が車両の前側からみて反時計回りに回転し、平行リンクアーム40の先端部が車外に張り出す。この状態では車椅子搭載手段30における一対のレール31は地面等に着地していない。その後、車椅子利用者Pは方向転換機構70を動作させる。すると、一対のレール31が車幅方向から車両前後方向に向くよう方向転換する。その後、車椅子利用者Pは必要に応じてさらに回動機構50を同様に動作させて平行リンクアーム40が車両後方からみて時計回りに回転し一対のレール31を地面に着地させる。すると、車椅子利用者Pは、図10(B)に示すように、車椅子5に乗ったままで車椅子5を一対のレールに乗り入れる。
次に、車椅子利用者Pは操作入力部85を操作して、図11(A)に示すように、平行リンクアーム40を車両後方からみて反時計回りに回動して、移乗用補助シート20を車椅子5の座席と略同じ高さか又は車椅子利用者Pの希望する高さまで上昇させる。その後、車椅子利用者Pは、移乗用補助シート20を車両1側に倒して略水平状態とし、移乗用補助シート20に一旦乗り移って、変更手段36,37を作動する。それにより、右レール31Rが左レール31Lに平行を保って近接する。それと相前後して車椅子利用者Pは、移乗用補助シート20から前列シート2に乗り移る。
その際、移乗用補助シート20は、前列シート2と同じ高さである必要はなく、車椅子利用者Pが前列シート2に乗り移るのに支障のない範囲で上下の位置を調整することができる。これは、車椅子利用者Pは、低いところに移乗することに不便さを感じない人もいるし、また逆に、高いところに移乗することに不便さを感じない人もいるからである。
以上により、図11(B)に示すように、車椅子利用者Pは前列シート2に乗り移り、変更手段36,37により連結部32が縮まって左右のレール31L,31Rの間隔が狭くなると、車椅子5が自動で折り畳まれる。その際、車椅子5の展開状態を維持するためのロック機構は、解除されている。
その後、車椅子利用者Pは、必要に応じて移乗用補助シート2を跳ね上げた後、操作入力部85を操作することで方向転換機構70を逆に動作させる。これにより、一対のレール31が車両前後方向から車幅方向に向きを換える。
次に、車椅子利用者Pは操作入力部85を操作して、平行リンクアーム40を車両後方からみて時計回りに回動して、図12に示すように車椅子5を車両1に完全に収納する。
以上の過程は車椅子5から前列シート2に移乗する場合を説明したが、逆に、前列シート2から車椅子5に移乗する場合はほぼ逆のステップを踏めばよい。
本発明の第1の実施形態では、移動機構110は、移乗用補助シート20及び車椅子搭載手段30を先端側に取り付けた平行リンクアーム40と、平行リンクアーム40を車幅前後方向の軸回りに回転する回動機構50と、を備える。よって、回動機構50が平行リンクアーム40の回転を制御することで車椅子搭載手段30及び移乗用補助シート20を車両室内から車幅外方向に張り出し、平行リンクアーム40が倒れた状態から立ち上がる状態になるに伴い、車椅子搭載手段30が浮上すると共に移乗用補助シート20を前列シート2の脇に近づけながら上昇することができる。
よって、平行リンクアーム40が倒れ込んだ状態においては、車椅子搭載手段30及び移乗用補助シート20が車室外に張り出しているので、移乗用補助シート20に車椅子利用者Pが一旦乗り移って車椅子5を車椅子搭載手段30に容易に収容することができる。さらにその状態から平行リンクアーム40を回動機構50により回転すると、車椅子搭載手段30と移乗用補助シート20が上昇し、移乗用補助シート20が車両のシートと略同じ高さなどの車椅子利用者Pの利用し易い高さになった状態においては、車椅子2を車椅子搭載手段30に乗り入れた状態と比べて移乗用補助シート20が前列シート2の脇に近づき、車椅子利用者Pは移乗用補助シート20から前列シート2に容易に乗り移ることができる。車椅子利用者Pが車両1の前列シート2から車椅子5に乗り移る場合も、車両シートと車椅子5との高低差による移乗の困難性を解消するとともに、車両シートと移乗用補助シート20との隙間を減らすことで、車椅子利用者Pの移乗を容易にすることができる。
さらに、回動機構50は制御部(図示しない)から入力される信号に応じて平行リンクアーム40を回転し、平行リンクアーム40が立ち上がった第1の状態では、移乗用補助シート20及び車椅子搭載手段30を車両室内に収容しており、平行リンクアーム40が倒れ込んだ第2の状態では、移乗用補助シート20及び車椅子搭載手段30を車幅外方向に張り出し、平行リンクアーム40が第1の状態と第2の状態との中間の状態では、車椅子搭載手段30を車室外で浮上させ、移乗用補助シート20を前列シート2と略同じレベルの高さか又は前列シート2より上下何れかの高さに合わせかつ移乗用補助シート20の前列シート2に対する水平距離を狭めることができる。
本発明の第1の実施形態の車両によれば、車椅子5を収納する機能と車椅子5と前列シート2との間の移乗を補助する機能とを車椅子収納装置10として一つの装置にコンパクトに組み込み、この装置を前列シート2の後方床面に、平行リンクアーム40を車幅外向きの方向に向けて取り付けているので、車両室内における車椅子収納装置10に要する領域をできるだけ小さくできる。それにより、車椅子収納装置10を設置していない側の後列シート3やその他の後列シート、例えば第三列シートを有効に利用することができる。
このように、本発明の第1の実施形態によれば、平行リンクアーム40を車幅方向に沿って配置しており、平行リンクアーム40の基端側に回転機構を設けて、平行リンクアーム40の先端側に方向転換機構70を介在して移乗用補助シート20と車椅子搭載手段30とを取り付けている。つまり、前列シート2の後側にこれらの車椅子収納装置10を取り付けているので、非常にコンパクトとなり、車両1の空間を有効利用することができる。
車椅子収納装置10は高さ方向や横方向に張り出す部分がなく非常にコンパクトになるため、運転者は後方確認を容易にすることができる。車椅子収納装置10は個別の車椅子5や車両1によらず後付けできるので、製造コストがかからず、車椅子5や車両1を改造する必要がなく、車椅子利用者Pの好みの車両1や車椅子5を選択することができる。
また、回動機構50が平行リンクアーム40の回転を制御することで、車椅子搭載手段30及び移乗用補助シート20を車幅外方向に張り出すことができ、しかも平行リンクアーム40が倒れた状態から立ち上がる状態になるに伴い、車椅子搭載手段30が浮上するとともに移乗用補助シート20を前列シート2の高さまで上昇する。そのとき、移乗用補助シート20は単に上昇するだけでなく、車両1側、特に前列シート2の脇まで近づき、前列シート2と移乗用補助シート20との間に大きな隙間が生じることがなく、車椅子利用者Pは移乗用補助シート20と前列シート2との間を容易に移乗することができる。
このとき、回動機構50による平行リンクアーム40の回転の向きと回転角度を車椅子5や車両1の種類や寸法、移乗用補助シート20の大きさ、車椅子利用者Pの障害度合い、身長等を考慮して制御部に登録しておき、操作入力部85に対する車椅子利用者Pによる入力指示に応じて、車椅子5の収納と移乗の補助を一台の装置で実現することができる。
なお、制御部は必須ではなく、電源からリモコンスイッチを介して動力源を正回転、逆回転するという非常に簡単な回路を設けておいても良い。この場合には、車椅子利用者Pが適宜停止させたい位置でリモコンスイッチを操作して移乗用補助シート20及び車椅子搭載手段30を所望の高さで停止することができ、さらに一対のレール31の向きを所定の方向で停止することができる。
前述したように、移乗用補助シート20は車椅子とほぼ同じ高さ、車両のシートとほぼ同じ高さとなるようそれぞれの位置で停止した後にさらに上昇又は下降することで、車椅子と車両のシートとの高低差と隙間とが解消される。本発明の第1の実施形態では、車両の前列シート2と車椅子5のシートとの高さが異なる場合を想定して説明している。前列シート2が車椅子5のシートに対して僅かな高さしか違わないような場合には、左右のレール31L,31Rを地面に接触させたまま車椅子5を左右のレール31L,31Rに乗り入れ、左右のレール31L,31Rを地面に接触させたままで、車椅子5のシートから前列シート2に移乗してもよい。この場合、左右のレール31L,31Rがいわば踏み台として働く。車椅子利用者Pは前列シート2に移乗すると、移動機構110のアーム部40により車椅子搭載手段30を持ち上げ、左右のレール31L,31Rの間隔を狭めて車椅子5を折り畳み、その後、方向転換機構70により平面視で時計回りに回動して、車椅子5を車椅子搭載手段30に載せたまま車両1に格納する。
本発明の第1の実施形態では、図1に示すように、車椅子利用者P自らが運転する場合を例にとっているが、補助席に車椅子から移乗する場合にも有効である。また、本発明の第1の実施形態に係る車椅子収納装置10を搭載した車両1にあっては、運転席は何ら変更されていないので、健常者が運転したり乗降したりする際に障害となるような部品が前列シート2の周りに配備されていない。これらの点は、後述する他の実施形態においても当てはまる。
本発明の第1の実施形態においては、移動機構110が、平行リンクアーム40と回動機構50とで構成されているが、これに限ることなく、平行リンクアーム40のような平行リンク機構のほかに、後述の他の実施形態で説明するような回動機構若しくは直線機構又はそれら各機構の組み合わせで構成されていてもよい。一つの移動機構で移乗用補助シート20と車椅子搭載手段30とを車両開口から搬入搬出することができればよいからである。即ち、車両シートと車椅子5のシートとの水平方向及び高さ方向の双方の隙間を小さくするために移乗用補助シート20を必要なときに必要な領域に配置することができ、かつ、車椅子搭載手段30を車両から出し入れして地面上の車椅子を車両内に収容することができれば、本発明の課題が解決される。
従って、移動機構による移乗用補助シート20及び車椅子搭載手段30は、第1の実施形態で示すように略鉛直面内で円弧状の軌跡を描いても、後述する他の実施形態で示すように略鉛直面内で車幅方向に平行な直線状の第1の軌跡とこの第1の軌跡上で鉛直方向に平行な直線状の第2の軌跡との組み合わせとなるような軌跡を描いてもよい。つまり、移動機構は、第1の実施形態のように移動機構110が平行リンクアーム40と回動機構50との組み合わせ、第2及び第3の実施形態のように移動機構120,130の先端が二つの回動機構の組み合わせ、第4乃至第6の実施形態のように移動機構140〜160の先端が二つの直線移動機構の組み合わせとなるように構成してもよい。
〔第2の実施形態〕
図13は、本発明の第2の実施形態に係る車椅子収納装置における移動機構を模式的に示す斜視図である。第2の実施形態の移動機構120は、図3に示す平行リンクアーム40及び回動機構50の代わりに、図13に示すように、回動機構121と、回動機構121により回動するアーム122と、アーム122の先端側に回転可能に取り付けた歯車123と、歯車123に固定されたブラケット124と、歯車123に回転力を付与するためのベルト又はチェーン125と、ベルト又はチェーン125の両端を固定する第1及び第2の固定支持部材126a,126bと、からなる。
回動機構121は、例えば、一端側が回動軸に取り付けられたアクチュエータ本体部127aと、このアクチュエータ本体部127aから出没する作動部127bと、で構成されたアクチュエータ127を有している。アーム122は、回動支持部材122aを挟んで長い第1アーム部122bと短い第2アーム部122cとが鈍角をなすよう一体化されてなり、第2アーム部122cの先端側が作動部127b側に取り付けられて、アクチュエータ127により、第1アーム部122bが首振りする。回動支持部材122aを挟んで互いに平行に第1及び第2の固定支持部材126a,126bが車両前後方向にほぼ平行に取り付けられており、ベルト又はチェーン125が歯車123に取り付けられており、ベルト又はチェーン125の両端がそれぞれ第1及び第2の固定支持部材126a,126bに固定されている。歯車123には歯車123の回動と併せて回動するブラケット124が取り付けられている。ブラケット124の所定の位置に、図3に示すボックス44のようなボックス75が取り付けられ、そのボックス75に電動モータ72Aが収容される。移乗用補助シート20と車椅子搭載手段30と方向転換手段70は第1の実施形態と同様であるので、図13には示していない。
本発明の第2の実施形態によれば、アクチュエータ本体部127aから作動部127bが出没することで、第1アーム部122bがあたかもお辞儀をするように揺動するとともにベルト又はチェーン125により歯車123が回転するためブラケット124が所定の角度(例えば水平状態)を保ちながら、回動する。これにより、ブラケット124の所定の位置に取り付けたボックス75を介して方向転換機構70が設けられ、その方向転換機構70を介して移乗用補助シート20及び車椅子搭載手段30を取り付けることで、移乗用補助シート20及び車椅子搭載手段30を車両開口から搬入搬出することができる。
〔第3の実施形態〕
図14は、本発明の第3の実施形態に係る車椅子収納装置における移動機構を模式的に示す斜視図である。第3の実施形態における移動機構130は、図14に示すように、回動機構131と、回動機構131により回動するアーム132と、アーム132の先端側に回動可能に取り付けられたブラケット134と、ブラケット134が車両1に対して一定の角度をなし略水平状態を保つよう駆動する駆動機構135と、からなる。移乗用補助シート20、車椅子搭載手段30、方向転換手段70は第1の実施形態と同様であるので、図14には示していない。
回動機構131は、例えば、一端側が回動軸に取り付けられたアクチュエータ本体部137aと、アクチュエータ本体部137aから出没する作動部137bと、で構成されたアクチュエータ137を有している。アーム132は、回動支持部材132aを挟んで長い第1アーム部132bと短い第2アーム部132cとが鈍角をなすよう一体化されてなり、第2アーム部132bの先端側が作動部137b側に取り付けられて、アクチュエータ137により、第1アーム部132bが首振りする。
駆動機構135は、例えば回動機構131におけるアクチュエータ137と同様のアクチュエータからなり、駆動機構135の支点側、即ちアクチュエータ本体部135a側が第1アーム部132bに揺動可能に取り付けられ、作動部135bの先端側がブラケット134に揺動可能に取り付けられている。
本発明の第3の実施形態によれば、回動機構131における作動部137bの出没状態に応じて駆動機構135における作動部135bが出没することで、第1アーム部132bの回動に併せてブラケット134が第1アーム部132bに対して回動し、ブラケット134が略水平状態を保ちながら車両開口から張り出すことができる。これにより、ブラケット134の所定の位置に取り付けたボックス75を介して方向転換機構70が設けられ、その方向転換機構70を介して移乗用補助シート20及び車椅子搭載手段30を取り付けることで、移乗用補助シート20及び車椅子搭載手段30を車両開口から搬入搬出することができる。
〔第4の実施形態〕
図15は、本発明の第4の実施形態に係る車椅子収納装置における移動機構を模式的に示す斜視図である。第4の実施形態における移動機構140は、図15に示すように、二つの直線移動機構140A,140Bの組み合わせからなり、一方の直線移動機構140Aは車幅方向への移動を実現し、他方の直線移動機構140Bは車高方向の上下への移動を実現する。
一方の直線移動機構140Aについて説明する。車両前後方向に離隔した二本のガイドレール141F,141Rが車幅方向に配設され、可動プレート142が二本のガイドレール141F,141R間に車幅方向に移動可能に設けられている。二本のガイドレール141F,141Rの左右側にはそれぞれ歯車143L,143Rが配置され、各歯車143L,143Rの軸が車両前後方向に略平行となっている。周状のベルトやチェーン144が左右の歯車に取り付けられ、ベルト又はチェーン144と可動プレート142とが少なくとも一箇所で連結されている。二つの歯車143L,143Rのうち一方(図では143R)には動力源145としてのモータが取り付けられている。よって、動力源145としてのモータが正転すると、ベルト又はチェーン144が車両後方からみて時計回りに回転し、可動プレート142がガイドレール141F,141Rに沿って右側にスライドする。
他方の直線移動機構140Bについて説明する。他方の直線移動機構140Bは前述の可動プレート142の先端側に取り付けられている。二本のガイドレール146L,1446Rが車両前後方向に離隔して鉛直方向に配設され、二本のガイドレール146L,146Rの上下端がそれぞれ連結部146a,146bで接続されている。各連結部146a,146bにはブラケットが一方の直線移動機構140A側に張り出しており、各ブラケットには歯車147U,147Lが回転可能に取り付けられている。二本のガイドレール145F,145R間には、上下に移動可能に可動プレート148がスライド可能に取り付けられている。可動プレート148には、移乗用補助シート20及び車椅子搭載手段30が方向転換手段70を介在して取り付けられる。周状のベルトやチェーン149が上下の歯車147U,147Lに取り付けられ、ベルト又はチェーン149と可動プレート148とが少なくとも一箇所で連結されている。二つの歯車147U,147Lのうち一方(図では147U)には動力源149Aとしてのモータが取り付けられている。よって、動力源149Aとしてのモータが正転、逆転すると、ベルト又はチェーン149が回転し、可動プレート148がガイドレール146F,146Rに沿って上下にスライドする。
ここで、一方の直線移動機構140Aにおいて、可動プレート142の先端側には、他方の直線移動機構140Bにおける二本のガイドレール146F,146Rが可動プレート142と垂直をなすように取り付けられ、可動プレート142の先端側には切り欠き部142aを有しており、その切り欠き部142aには他方の直線移動機構140Bにおける周状のベルト又はチェーン149が貫通されている。
第4の実施形態における移動機構140は、二つの直線移動機構140A,140Bによりそれぞれ別々の動力源145,149Aによってそれぞれ歯車143L,143R,147U,147Lが正転、逆転して、それぞれベルト又はチェーン144,149が対応する方向に回り、それにより、一方の可動プレート142が左右に移動し他方の可動プレート148が上下に移動する。よって、別々の動力源145,149Aが連携して稼動する。従って、可動ブラケット148の所定の位置に取り付けたボックス75を介して方向転換機構70が設けられ、その方向転換機構70を介して移乗用補助シート20及び車椅子搭載手段30を取り付けることで、移乗用補助シート20及び車椅子搭載手段30を車両開口から搬入搬出することができる。
〔第5の実施形態〕
図16は、本発明の第5の実施形態に係る車椅子収納装置における移動機構を模式的に示す斜視図である。第5の実施形態における移動機構150は、図3に示す平行リンクアーム40及び回動機構50の代わりに、図16に示すように、二つの直線移動機構150A,150Bの組み合わせからなり、一方の直線移動機構150Aは車幅方向への移動を実現し、他方の直線移動機構150Bは車高方向の上下への移動を実現する。
一方の直線移動機構150Aについて説明する。車両前後方向に離隔した二本のガイドレール151F,151Rが車幅方向に配設され、可動プレート152が二本のガイドレール151F,151R間に車幅方向に移動可能に設けられている。可動プレート152の底面にはラック152bが取り付けられている。このラック152bに噛み合うよう、ピニオン153が車両前後方向に軸を向けて配置され、ピニオン153は動力源155としてのモータにより回転する。よって、動力源155としてのモータが正転すると、可動プレート152がガイドレール151F,151Rに沿って右側にスライドする。
他方の直線移動機構150Bは前述の可動プレート152の先端側に取り付けられている。二本のガイドレール156F,156Rが車両前後方向に離隔して鉛直方向に配設され、二本のガイドレール156F,156Rの上下端がそれぞれ連結部156a,156bで接続されている。二本のガイドレール156F,156R間には、上下に移動可能に可動プレート158が取り付けられている。可動プレート158には、移乗用補助シート20及び車椅子搭載手段30が方向転換手段70を介在して取り付けられる。可動プレート158にはその一方の直線移動機構150A側にラック158aが上下方向に配設されている。このラック158aに噛み合うよう、ピニオン158bが車両前後方向に軸を向けて例えばガイドレール156Fに固定して取り付けられ、ピニオン158bは動力源159Aとしてのモータにより回転する。よって、動力源159Aとしてのモータが回転すると、可動プレート158がガイドレール156F,156Rに沿って上下にスライドする。
ここで、一方の直線移動機構150Aにおいて、可動プレート152の先端側には、他方の直線移動機構150Bにおける二本のガイドレール156F,156Rが可動プレート152と垂直をなすよう取り付けられている。
第5の実施形態における移動機構150は、二つの直線移動機構150A,150Bによりそれぞれ別々の動力源155,159Aによってピニオン153,158bが正転、逆転して、それぞれラック152b,158aと共に一方の可動プレート152は左右に移動し他方の可動プレート158は上下に移動する。よって、別々の動力源155,159Aが連携して稼動する。従って、可動ブラケット158の所定の位置に取り付けたボックス75を介して方向転換機構70が設けられ、その方向転換機構70を介して移乗用補助シート20及び車椅子搭載手段30を取り付けることで、移乗用補助シート20及び車椅子搭載手段30を車両開口から搬入搬出したり、車椅子搭載手段30移乗用補助シート20を上下に移動して、利便性を図ることができる。
〔第6の実施形態〕
図17は、本発明の第6の実施形態に係る車椅子収納装置における移動機構の模式図である。第6の実施形態における移動機構160は、図17に示すように、二つの直線移動機構160A,160Bの組み合わせからなり、一方の直線移動機構160Aは車幅方向への移動を実現し、他方の直線移動機構160Bは車高方向の上下への移動を実現する。
一方の直線移動機構160Aについて説明する。車両前後方向に離隔した二本のガイドレール161F,161Rが車幅方向に配設され、可動プレート162が二本のガイドレール162F,162R間に車幅方向に移動可能に設けられている。可動プレート162の下側には、駆動機構163が配置されている。駆動機構163は、例えばアクチュエータ164からなり、駆動機構163の支点側、即ちアクチュエータ本体部164a側が車両に揺動可能に固定され、作動部164bの先端側が可動プレート162の底部に揺動可能に取り付けられている。駆動機構163は、アクチュエータ164に代え、ボールねじ、即ち、ねじ軸部材とナットとの間でボールが転がり運動する送りねじとその動力源とで構成してもよい。駆動機構163により可動プレート162が車幅左右にスライドする。
他方の直線移動機構160Bは前述の可動プレート162の先端側に取り付けられている。二本のガイドレール166F,166Rが車両前後方向に離隔して鉛直方向に配設され、二本のガイドレール166F,166Rの上下端がそれぞれ連結部167a,167bで接続されている。二本のガイドレール166F,166Rには、上下に移動可能に可動プレート168が取り付けられている。可動プレート168には、移乗用補助シート20及び車椅子搭載手段30が方向転換手段70を介在して取り付けられる。上下の連結部167a,167bの何れかに駆動機構169が取り付けられ、この駆動機構169により可動プレート168が上下に移動する。駆動機構169としては、一方の直線移動機構160Aと同様にアクチュエータで構成し、上下の連結部167a,167bの何れかにアクチュエータ本体部169aが固定され、作動部169bが可動プレート168に揺動可能に接続されている。なお、駆動機構169をアクチュエータに代え、ボールねじとその動力源で構成してもよい。
ここで、一方の直線移動機構160Aにおける可動プレート162の先端側には、他方の直線移動機構160Bにおける二本のガイドレール166F,166Rが可動プレート162と垂直をなすよう取り付けられ、可動プレート162の先端側には切り欠き部162aを有しており、その切り欠き部162aは他方の直線移動機構160Bの一部(図示では作動部169b)が挿通し得るだけの大きさを有している。
第6の実施形態における移動機構160は、二つの直線移動機構160A,160Bによりそれぞれ別々の動力源としての駆動機構163,169によって、一方の可動プレート162を左右に移動し他方の可動プレート168を上下に移動する。よって、別々の動力源が連携して稼動する。これにより、可動ブラケット168の所定の位置にボックス75を取り付けそのブラケットを介して方向転換機構70が設けられ、その方向転換機構70を介して移乗用補助シート20及び車椅子搭載手段30を取り付けることで、移乗用補助シート20及び車椅子搭載手段30を車両開口から搬入搬出したり、移乗用補助シート20及び車椅子搭載手段30を上下に移動して、利便性を図ることができる。
以上説明したように、本発明の何れの実施形態においても、移動機構により、車椅子を乗り入れた車椅子搭載手段と移乗用補助シートとを同時に車両開口、例えばリアドアから搬入搬出することができる。
移動機構は、第1の実施形態のように平行リンクアーム40及び回動機構50で構成してもよいし、第2、第3の実施形態のようにアーム122,132を回動する回動機構121,131で構成してもよいし、第4乃至第6の実施形態のように、二つの直線移動機構130A,130B,140A,140B,150A,150B,160A,160Bで構成してもよい。特に、第1乃至第3の実施形態のように移乗用補助シート20は略水平を保ちながら移動することが好ましいが、車椅子収納装置10の車両1への設置状況や車両の種類等に応じて、許容範囲内で移乗用補助シート20などに脱落防止用ベルトや手すりを設けることで対処してもよい。
さらに、移動機構は、上述した以外の各種平行リンク、回動機構若しくは直線移動機構又はそれらの組み合わせで構成してもよい。その際、各種のアクチュエータ、ボールねじ及びその動力源としてのモータ、ベルト又はチェーン等、従来から知られている各種の部品を組み合わせて応用してもよい。また、方向転換手段は、移乗用補助シート及び車椅子搭載手段の方向が換えられるものであれば如何なる構成でもよい。
本発明の実施形態として様々な態様を説明したが、本発明は、上述した各実施形態に限られず、取り付けられる車両の種類、車両の大きさ、車椅子の種類、車椅子の大きさに応じて特許請求の範囲に記載した範囲内で適宜変更して実施することができる。