JP5094064B2 - 水性分散体及びそれを用いた積層フィルム - Google Patents

水性分散体及びそれを用いた積層フィルム Download PDF

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Description

本発明は水性分散体及びそれを用いた積層フィルムに関し、特に、帯電防止コーティング剤として利用され長期保存安定性に優れた水性分散体、及びそれを塗工することで透明帯電防止フィルム等として利用される積層フィルムに関する。
一般にフィルムやシートは単体で使われることは少なく、何らかの表面改質処理が施される。表面改質要項としては、帯電防止性、耐ブロッキング性、耐スクラッチ性(表面の擦りによる傷が付き難い性質)、滑り性等が挙げられる。特に、一般的な工業材料や磁気記録材料として用いられている熱可塑性樹脂フィルムは、表面抵抗率が高く、摩擦などによって容易に帯電して、フィルム表面にほこり、ごみなどが付着するといった問題が生じているため、帯電防止性能を付与することが必要である。そこで、帯電防止性をはじめとする上述の要項を満たす表面改質の手法として、機能材料を含む塗剤を塗工し、被膜を形成する方法が挙げられる。
フィルム表面に帯電防止被膜を形成するために使用可能な帯電防止剤として、本出願人は、先に、特定量の水分散性ポリエステル樹脂と酸化スズ超微粒子と水とを含む混合物を主成分とする帯電防止コーティング剤を見出している(特許文献1)。このコーティング剤を用いることで、透明性が高く、耐水性、基材との密着性、特にポリエステル樹脂基材との密着性に優れた、透明帯電防止性の被膜を得ることができるうえ、水性媒体を使用するため、環境問題の解消、作業環境の改善にも寄与することができる。
特開2002−265860号公報
しかしながら、使用するポリエステル樹脂の組成によっては樹脂中にオリゴマーが混在し、帯電防止コーティング剤として長期保存した際にそのオリゴマーが沈降するという問題が発生する場合がある。
本発明は、特定量の水分散性ポリエステル樹脂と酸化スズ超微粒子と水とを含む混合物を主成分とするコーティング剤から得られる被膜の透明性、耐水性、基材との密着性及び帯電防止性を損なうことなく、オリゴマーの混在や沈降を抑制可能な水性分散体を得ること、及びその水性分散体を塗工した積層フィルムを得ることを目的とする。
本発明者らは、特定量の水分散性ポリエステル樹脂と酸化スズ超微粒子と水とを含む混合物を主成分とする従来のコーティング剤に対して更に詳細な検討を加えた結果、ポリエステル樹脂の組成において、全アルコール成分にしめる1,2−プロパンジオール成分の割合を70モル%以上にするとオリゴマーの発生及び混在が抑制され、結果的に水性分散体としたときに沈殿物の発生が抑制できることを見いだし、本発明に到達した。
すなわち、本発明の要旨は下記の通りである。
(1)ポリエステル樹脂と酸化スズ系超微粒子とが水性媒体中に分散されてなり、固形分濃度が1〜40質量%であり、親水性有機溶剤を5〜60質量%の割合で含む水性分散体であって、前記ポリエステル樹脂は、多塩基酸成分と多価アルコール成分とを含むとともに、全アルコール成分にしめる1,2−プロパンジオール成分の割合が70モル%以上であり、酸化スズ系超微粒子の含有割合がポリエステル樹脂100質量部に対して30〜10000質量部であることを特徴とする水性分散体。
)塩基性化合物を含むことを特徴とする(1)の水性分散体。
)不揮発性水性化助剤を5質量%以下の割合で含有することを特徴とする(1)または(2)の水性分散体。
)熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも一方の面に、(1)から(3)までのいずれかの水性分散体を塗布、乾燥してなる被膜を積層したことを特徴とする積層フィルム。
)被膜を積層した面の表面固有抵抗値が1010Ω/□以下であることを特徴とする()の積層フィルム。
)ヘイズが5%以下であることを特徴とする(4)または()の積層フィルム。
)熱可塑性樹脂フィルムがポリエステル樹脂フィルムであることを特徴とする(4)から(6)までのいずれかの積層フィルム。
本発明の特定組成のポリエステル樹脂と酸化スズ系超微粒子を含む水性分散体は、酸化スズ系超微粒子を含むために所要の帯電防止効果を発揮可能であるとともに、前記特定組成のポリエステル樹脂は、全アルコール成分にしめる1,2−プロパンジオール成分の割合が70モル%以上であるため、沈殿物の原因となるオリゴマーの混在を抑制することができて、長期保存安定性に優れたものとすることができる。それを用いた積層フィルムは、良好な品質を有するものとなる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の水性分散体は、ポリエステル樹脂と酸化スズ系超微粒子とが水性媒体中に分散されているものである。ここで、水性媒体とは、水を主成分とする液体であり、後述する親水性有機溶剤や塩基性化合物を含有していてもよいものである。
本発明で用いられるポリエステル樹脂は、多塩基酸成分と多価アルコール成分とを含み、全アルコール成分にしめる1,2−プロパンジオール成分の割合が70モル%以上であることが必要であり、75モル%以上であることがさらに好ましい。全アルコール成分にしめる1,2−プロパンジオール成分の割合が50モル%未満では、オリゴマーの発生を抑制することが困難になる。一方、全アルコール成分にしめる1,2−プロパンジオール成分の割合には特に上限はなく、アルコール成分が1,2−プロパンジオールのみであってもかまわない。
ポリエステル樹脂には、1,2−プロパンジオール以外の、全アルコール成分にしめる割合が30モル%未満のアルコール成分として、炭素数2〜10の脂肪族グリコール、炭素数6〜12の脂環族グリコール、エーテル結合含有グリコール等が含まれていても良い。具体的な化合物では、炭素数2〜10の脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−エチル−2−ブチルプロパンジオール等が挙げられる。炭素数6〜12の脂環族グリコールとしては、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。エーテル結合含有グリコー
ルとしては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、さらにはビスフェノール類の2つのフェノール性水酸基にエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドをそれぞれ1〜数モル付加して得られるグリコール類、例えば2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン等が挙げられる。しかし、エーテル構造は被膜形成物の耐水性、耐候性を低下させることから、ポリエステル樹脂を構成する多価アルコール成分としてのエーテル結合含有グリコールの使用量は、全多価アルコール成分の10重量%以下、更には5重量%以下にとどめることが好ましい。なお、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールも必要に応じて使用することができる。
多塩基酸としては、芳香族多塩基酸、脂肪族多塩基酸、脂環族多塩基酸を挙げることができる。具体的な化合物では、芳香族多塩基酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸類が挙げられる。脂肪族多塩基酸としては、シュウ酸、(無水)コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、アイコサン二酸、水添ダイマー酸等の飽和ジカルボン酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、ダイマー酸等の不飽和の脂肪族ジカルボン酸類が挙げられる。脂環族多塩基酸としては、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、2,5−ノルボルネンジカルボン酸、無水2,5−ノルボルネンジカルボン酸、テトラヒドロフタル酸、無水テトラヒドロフタル酸等の脂環族ジカルボン酸類が挙げられる。また、樹脂の耐水性を損なわない範囲で、必要に応じて少量の5−ナトリウムスルホイソフタル酸や5−ヒドロキシイソフタル酸を用いることができる。
上記した多塩基酸の中でも、芳香族多塩基酸を用いることが好ましく、ポリエステル樹脂を構成する全酸成分に占める芳香族多塩基酸成分の割合は、50モル%以上であることが、被膜形成物の硬度、耐薬品性、耐水性を向上させるうえで好ましく、70モル%以上であることが、樹脂の耐加水分解性を高めて水性分散体の貯蔵安定性を向上させるうえでより好ましい。さらに言えば、被膜形成物の他の性能とバランスをとりながらその加工性、耐水性、耐薬品性、耐候性等を向上させることができる点において、ポリエステル樹脂を構成する全酸成分のうちの65モル%以上がテレフタル酸成分であることが特に好ましい。
多塩基酸又は多価アルコールとして、3官能以上の多塩基酸又は多価アルコールを使用してもよい。そのような3官能以上の多塩基酸としては、トリメリット酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸、トリメシン酸、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、グリセロールトリス(アンヒドロトリメリテート)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸等が挙げられる。3官能以上の多価アルコールとしては、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。ただし、3官能以上の多塩基酸又は多価アルコールの使用量は、ポリエステル樹脂を構成する全酸成分又は全アルコール成分に対し10モル%以下、更には5モル%以下となる範囲にとどめることが、被膜形成物の高加工性を発現させるうえで好ましい。
本発明におけるポリエステル樹脂を構成する酸成分としては、多塩基酸以外に、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等の脂肪酸やそのエステル形成性誘導体;安息香酸、p−tert−ブチル安息香酸、シクロヘキサン酸、4−ヒドロキシフェニルステアリン酸等の高沸点のモノカルボン酸;ε−カプロラクトン、乳酸、グリコール酸、β−ヒドロキシ酪酸、p−ヒドロキシ安息香酸等のヒドロキシカルボン酸やそのエステル形成性誘導体を使用してもよい。また、ポリエステル樹脂を構成するアルコール成分としては、ステアリルアルコール、2−フェノキシエタノール等の高沸点のモノアルコールを使用してもよい。ただし、上記したモノカルボン酸成分及びモノアルコール成分の使用量は、ポリエステル樹脂を構成する全酸成分及び全アルコール成分に占める割合がそれぞれ5mol%以下となるような範囲にとどめることが好ましい。
本発明におけるポリエステル樹脂の酸価の範囲は、8〜40mgKOH/gであることが好ましく、10〜36mgKOH/gがより好ましく、10〜28mgKOH/gがさらに好ましい。本発明におけるポリエステル樹脂は、本来それ自身で水に分散又は溶解しないものである。そのため酸価が8mgKOH/g未満の場合には、後述する水性化において寄与するカルボキシル基の量が十分でなく、良好な水性分散体を得ることが困難である。一方、この酸価が40mgKOH/gを超えると、ポリエステル樹脂水性分散体から被膜を形成させて乾燥する際に、被膜形成物から水及び有機溶剤が揮発し難く、被膜形成物の耐水性及び耐薬品性が低下しやすくなる。
本発明におけるポリエステル樹脂は、DSC(示差走査熱量)分析で測定されるガラス転移温度が40℃以上であるか、またはGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー、流出液:テトラヒドロフラン、ポリスチレン換算)で測定される数平均分子量が5000以上であるかの、少なくともいずれかの条件を満たすことが好ましい。このいずれの条件をも満たさない場合、すなわち数平均分子量が5000未満でかつガラス転移温度が40℃未満の場合には、被膜形成物の耐水性や耐薬品性が低下するばかりでなく、加工性にも劣る場合がある。ガラス転移温度は、43℃以上が好ましく、47℃以上が特に好ましい。数平均分子量は、5000〜25000が好ましく、6000〜20000が特に好ましい。ただし、分子量分布については何ら制限されない。なお、ポリエステル樹脂がテトラヒドロフランに溶解せず、上記の数平均分子量を測定できない場合には、相対粘度で代用できる。
本発明におけるポリエステル樹脂を合成する方法としては、公知の方法を応用すればよい。例えば、(a)全モノマー成分及び/又はその低重合体を不活性雰囲気下で180〜250℃、2.5〜10時間程度反応させてエステル化反応を行い、引き続いてエステル交換反応触媒の存在下、133Pa(1Torr)以下の減圧下に220〜280℃の温度で所望の分子量に達するまで重縮合反応を進めてポリエステル樹脂を得る方法、(b)前記重縮合反応を、目標とする分子量に達する以前の段階で終了し、反応生成物を次工程でエポキシ系化合物、イソシアネート系化合物、ビスオキサゾリン系化合物等から選ばれる鎖長延長剤と混合し、短時間反応させることにより高分子量化を図る方法、(c)前記重縮合反応を目標とする分子量以上の段階まで進めておき、モノマー成分を更に添加し、不活性雰囲気、常圧〜加圧系で解重合を行うことで目標とする分子量のポリエステル樹脂を得る方法等を用いることができる。
なお、ポリエステル樹脂において、後述する水性化に必要なカルボキシル基は、樹脂骨格中に存在するよりも樹脂分子鎖の末端に偏在していることが、形成される被膜の耐水性、耐薬品性等の面から好ましい。副反応やゲル化等を伴わずに、そのようなポリエステル樹脂を得る方法としては、上記した方法(a)において、重縮合反応開始時以降に3官能以上の多塩基酸またはそのエステル形成性誘導体を添加するか、あるいは、重縮合反応の終了直前に多塩基酸の酸無水物を添加する方法、上記した方法(b)において、大部分の分子鎖末端がカルボキシル基である低分子量ポリエステル樹脂を鎖長延長剤により高分子量化させる方法、上記した方法(c)において解重合剤として多塩基酸またはそのエステル形成性誘導体を使用する方法等を用いることができる。
本発明の水性分散体は、酸化スズ系超微粒子を、ポリエステル樹脂100質量部に対して30〜10000質量部含有していることが必要であり、50〜5000質量部含有していることがより好ましく、100〜1000質量部含有していることがさらに好ましい。酸化スズ系超微粒子の割合が30質量部未満ではこの水性分散体を用いて得られる被膜の帯電防止性が不十分になり、一方10000質量部を超えると、塗工性や、被膜と基材との密着性が低下する
酸化スズ系超微粒子としては、その数平均粒子径が50nm以下のものが好ましく使用される。より好ましくは20nm以下、特に好ましくは10nm以下である。水性分散体中において酸化スズ系超微粒子の数平均粒子径が50nmを超えると、分散安定性や被膜の透明性が低下するおそれがある。
酸化スズ系超微粒子の具体例としては、酸化スズ、アンチモンドープ酸化スズ、インジウムドープ酸化スズ、酸化スズドープインジウム、アルミニウムドープ酸化スズ、タングステンドープ酸化スズ、酸化チタン−酸化セリウム−酸化スズの複合体、酸化チタン−酸化スズの複合体などが挙げられ、それらの溶媒和物や配位化合物も用いることができる。なかでも導電性などの性能に優れかつそれとコストとがバランスのとれた酸化スズ、アンチモンドープ酸化スズ、酸化スズドープインジウム及びそれらの溶媒和物や配位化合物が好ましく用いられる。
上記の酸化スズ系超微粒子の製造方法は、特に限定されない。たとえば、金属スズやスズ化合物を加水分解または熱加水分解する方法や、スズイオンを含む酸性溶液をアルカリ加水分解する方法や、スズイオンを含む溶液をイオン交換膜やイオン交換樹脂によりイオン交換する方法など、何れの方法も用いることができる。
酸化スズ系超微粒子は、市販のものを使用することもできる。例えば、酸化スズ超微粒子水分散体として山中化学工業社製 EPS−6があり、アンチモンドープ酸化スズ系超微粒子水分散体として石原産業社製 SN100Dがあり、酸化スズドープインジウム超微粒子としてシーアイ化成社製 ITOがある。
本発明の水性分散体は、塩基性化合物を含有していることが好ましい。塩基性化合物を用いると、ポリエステル樹脂中のカルボキシル基が中和され、中和によって生成したカルボキシルアニオン間の静電気的反発力によって、水性分散体中でのポリエステル樹脂粒子間の凝集が防がれ、水性分散体に安定性が付与される。さらに塩基性化合物を用いると、前述の酸化スズ系超微粒子に水性分散体中での分散安定性を付与することができる。したがって、塩基性化合物としては、ポリエステル樹脂中のカルボキシル基を良好に中和でき、かつ酸化スズ系超微粒子を良好に分散安定化できるものが、好適に用いられる。塩基性化合物の必要量は、ポリエステル樹脂の種類や、酸化スズ系超微粒子の種類や、ポリエステル樹脂と酸化スズ系超微粒子との比率や、水性分散体の固形分濃度などによっても異なるが、水性分散体のpHが8.0〜12.0になる量が好ましく、さらに好ましくはpHが9.0〜11.0になる量である。pHが8.0未満では水性分散体の安定性が乏しくなる場合がある。一方でpHが12.0を越えると、コストアップの原因となったり、被膜形成時の乾燥時間が長くなったり、水性分散体が着色したりする場合がある。pHが上記範囲を逸脱すると、分散安定性に優れた水性分散体を得にくくなる。
塩基性化合物は、ここでは揮発性のものが用いられる。ここでいう揮発性とは、例えば300℃未満の沸点を有することである。特に、沸点が30〜250℃、さらには50〜200℃の塩基性化合物が好ましい。沸点が30℃未満の場合は、後述する樹脂の水性化時に揮発する割合が多くなり、水性化が完全に進行しない場合がある。反対に沸点が300℃以上であると、被膜の乾燥時に塩基性化合物を飛散させることが困難になり、被膜の耐水性が悪化する場合がある。
上記のような性質を有する塩基性化合物として、具体的には、アンモニア又は有機アミン化合物が好ましい。有機アミン化合物の具体例としては、トリエチルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、アミノエタノールアミン、N−メチル−N,N−ジエタノールアミン、イソプロピルアミン、イミノビスプロピルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、3−エトキシプロピルアミン、3−ジエチルアミノプロピルアミン、sec−ブチルアミン、プロピルアミン、メチルアミノプロピルアミン、3−メトキシプロピルアミン、モノエタノールアミン、モルホリン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン等が挙げられる。これらを2種以上混合して使用しても良い。
本発明においては、水性分散体の塗工性向上や、塗工後の乾燥の促進のために、親水性有機溶剤を添加することが好ましい。この親水性有機溶剤は、安定性の観点から、後述するポリエステル樹脂の水性化を促進させる成分として使用する有機溶剤を用いることが好ましい。そのような親水性有機溶剤としては、ポーリング(Pauling)の電気陰性度が3.0以上の原子(具体的には酸素、窒素、フッ素、塩素)を分子内に1個以上有しているものを用いることが、良好な水性分散体を得るという点から好ましい。さらに、それ自身が被膜形成物から揮発し易く、しかも水と共沸して水の揮発を促進させる作用を有するものが好ましい。具体的には、アルコール、ケトン、グリコール誘導体が挙げられる。さらにその中でも、沸点が30〜250℃の有機溶剤であることが好ましい。この沸点は、40〜200℃であることがより好ましく、50〜150℃であることがいっそう好ましい。沸点が250℃以上のものを用いた場合は、水性分散体をコーティングする際にハジキや泡が発生したり、水性分散体の安定性が損なわれたりする場合がある。一方、沸点が30℃未満の場合は、樹脂の水性化時に揮発する割合が多くなり、水性化が完全に進行しない場合がある。
上記の有機溶剤の含有率は、水性分散体に対して5〜60質量%であることが必要であり、10〜40質量%であることがより好ましく、20〜30質量%であることが特に好ましい。有機溶剤の含有率が5質量%未満では、コーティング時にハジキや泡が発生する。一方、含有率が60質量%を超えると、固形分濃度によっては水性分散体が凝集する。
本発明に用いることのできる親水性有機溶剤をより具体的に例示すれば、アルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−アミルアルコール、イソアミルアルコール、sec−アミルアルコール、tert−アミルアルコール、1−エチル−1−プロパノール、2−メチル−1−ブタノール、3−メトキシ−3−メチルブタノール、3−メトキシブタノール等が挙げられ、ケトンとしては、アセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン等が挙げられ、グリコール誘導体としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。なお、有機溶剤は、単一で用いてもよいし、複数種類のものを混合して用いてもよい。
本発明の水性分散体は、不揮発性水性化助剤を実質的に含有しないことが好ましい。不揮発性水性化助剤は、被膜形成後にもポリエステル樹脂中に残存し、被膜を可塑化することにより、ポリエステル樹脂の特性、例えば耐水性等を悪化させるおそれがある。
ここで、「水性化助剤」とは、水性分散体の製造において、水性化の促進や水性分散体の安定化の目的で添加される薬剤や化合物のことをいう。「不揮発性」とは、常圧での沸点を有さないか、もしくは、常圧で高沸点(例えば300℃以上)であることを指す。
「不揮発性水性化助剤を実質的に含有しない」とは、不揮発性水性化助剤を積極的には系に添加しないことにより、結果的にこれらを含有しないことを意味する。こうした不揮発性水性化助剤は、含有量がゼロであることが特に好ましいが、本発明の効果を損ねない範囲で、ポリエステル樹脂成分に対して5質量%以下程度含まれていても差し支えない。
本発明でいう不揮発性水性化助剤としては、例えば、後述する界面活性剤、保護コロイド作用を有する化合物、変性ワックス類、高酸価の酸変性化合物、水溶性高分子等が挙げられる。
界面活性剤としては、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、ノニオン性(非イオン性)界面活性剤、両性界面活性剤、フッ素系界面活性剤、反応性界面活性剤が挙げられ、一般に乳化重合に用いられるもののほか、乳化剤類も含まれる。例えば、カチオン性界面活性剤としては、4級アンモニウム塩、アルキルアミンオキサイド等が挙げられる。アニオン性界面活性剤としては、高級アルコールの硫酸エステル塩、高級アルキルスルホン酸及びその塩、オレイン酸、ステアリン酸、パルチミン酸等の高級カルボン酸及びその塩、アルキルベンゼンスルホン酸及びその塩、ポリオキシエチレンアルキルサルフェート塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルサルフェート塩、ビニルスルホサクシネート等が挙げられる。ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、エチレンオキサイドプロピレンオキサイドブロック共重合体、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体等のポリオキシエチレン構造を有する化合物やポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等のソルビタン誘導体等が挙げられる。両性界面活性剤としては、ラウリルベタイン、ラウリルジメチルアミンオキサイド等が挙げられる。フッ素系界面活性剤としては、ペルフルオロオクタンスルホン酸及びその塩、ペルフルオロオクタンスルホンアミド及びその塩等が挙げられる。反応性界面活性剤としては、アルキルプロペニルフェノールポリエチレンオキサイド付加物やこれらの硫酸エステル塩、アリルアルキルフェノールポリエチレンオキサイド付加物やこれらの硫酸エステル塩、アリルジアルキルフェノールポリエチレンオキサイド付加物やこれらの硫酸エステル塩等の反応性2重結合を有する化合物が挙げられる。
保護コロイド作用を有する化合物、変性ワックス類、高酸価の酸変性化合物、水溶性高分子としては、ポリビニルアルコール、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、変性デンプン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸及びその塩、カルボキシル基含有ポリエチレンワックス、カルボキシル基含有ポリプロピレンワックス、カルボキシル基含有ポリエチレン−プロピレンワックス等の重量平均分子量が通常は5000以下の酸変性ポリオレフィンワックス類及びその塩、アクリル酸−無水マレイン酸共重合体及びその塩、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、イソブチレン−無水マレイン酸交互共重合体、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体等の不飽和カルボン酸含有量が20質量%以上のカルボキシル基含有ポリマー及びその塩、ポリイタコン酸及びその塩、アミノ基を有する水溶性アクリル系共重合体、ゼラチン、アラビアゴム、カゼイン等、一般に微粒子の分散安定剤として用いられている化合物が挙げられる。
次に、本発明の水性分散体の製造方法について述べる。
ポリエステル樹脂と酸化スズ系超微粒子とを含有する水性分散体を得るための方法は、特に限定されないが、ポリエステル樹脂粒子と酸化スズ系超微粒子との分散安定性の観点から、ポリエステル樹脂の水性分散体と酸化スズ系超微粒子の分散液とを別々に調製しておき、これを混合して得る方法が最も好ましい。このようにすれば、ポリエステル樹脂水性分散体の優れた貯蔵安定性と、酸化スズ系超微粒子の優れた分散性が維持され、ポリエステル樹脂及び酸化スズ系超微粒子の互いの優れた特性を発揮することができる。
以下、この方法について詳述する。
まず、ポリエステル樹脂水性分散体の製造方法について説明する。
ポリエステル樹脂水性分散体を得る方法は、特に限定されず、当業者に広く知られた方法を応用することができる。例えば、ポリエステル樹脂を汎用の有機溶剤に溶解させた溶液あるいは溶融体を、界面活性剤が添加され、しかも高速で撹拌されている水性媒体中に少量ずつ添加してゆく方法(強制乳化法)や、撹拌下の該溶液あるいは溶融体中に水性媒体を少量ずつ添加して転相させて安定な水性分散体を得る方法(転相乳化法)等を用いることができる。転相乳化法においても界面活性剤を添加してもよい。界面活性剤としては、上述のものが使用できるが、その添加量は樹脂成分に対して5質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましく、1質量%以下がさらに好ましく、ゼロがもっとも好ましい。
しかしながら本発明においては、特開平9−296100号公報に記載の方法が特に推奨される。すなわち、既述の特定組成のポリエステル樹脂、塩基性化合物、有機溶剤、及び水を、好ましくは密閉可能な容器中で加熱、撹拌する方法である。この方法は、界面活性剤を必要とせず、また樹脂を一旦有機溶剤に溶解する必要もない。しかも特殊な設備を使用せず、比較的単純な工程で安定した品質で生産できる方法であるため、ポリエステル樹脂水性分散体の製造方法として適している。
具体的には、ポリエステル樹脂や水性媒体などの原料を装置に投入し、好ましくは40℃以下の温度で撹拌混合しておく。次いで、槽内の温度を60〜90℃の温度に保ちつつ、好ましくは粗大粒子が無くなるまで(例えば、5〜120分間)撹拌を続けることによりポリエステル樹脂を十分に水性化させ、その後、好ましくは撹拌下で40℃以下に冷却することにより、水性分散体を得ることができる。槽内の温度が60℃未満の場合は、ポリエステル樹脂の水性化が困難になる。槽内の温度が90℃を超える場合は、ポリエステル樹脂の分子量が低下する恐れがある。
塩基性化合物の添加量は、ポリエステル樹脂中に含まれるカルボキシル基の量に応じて、少なくともこれを部分中和し得る量、すなわち、カルボキシル基に対して0.2〜1.5倍当量であることが好ましく、0.4〜1.3倍当量であることがより好ましい。0.2倍当量未満では塩基性化合物添加の効果が認められない場合があり、一方、1.5倍当量を超えると、ポリエステル樹脂水性分散体が著しく増粘する場合がある。
有機溶剤の添加量は、ポリエステル樹脂水性分散体に対して0.5〜50質量%であることが好ましく、5〜45質量%であることがより好ましく、10〜40質量%であることが特に好ましい。有機溶剤の含有率が0.5質量%未満では、ポリエステル樹脂の水性化が困難になる傾向にある。一方、含有率が50質量%を超えると、分散体の安定性を損なう場合がある。
ポリエステル樹脂水性分散体の製造時に用いた有機溶剤は、樹脂の水性化の後に、その一部を、一般に「ストリッピング」と呼ばれる脱溶剤処理によって系外へ留去させることができ、これによって有機溶剤量の低減を図ることができる。ストリッピングにより、水性分散体中の有機溶剤含有量は、10質量%以下とすることができ、5質量%以下とすれば環境上好ましい。ストリッピングの工程では、装置の減圧度を高めたり、操業時間を長くしたりする必要があるため、こうした生産性を考慮すると、最終的に得られるポリエステル樹脂水性分散体に含まれる有機溶剤量の下限は0.01質量%程度である。しかし、含有率が0.01質量%程度あっても、特に性能面での影響はなく、良好に使用することができる。
ストリッピングの方法としては、常圧または減圧下で水性分散体を撹拌しながら加熱し、有機溶剤を留去する方法を挙げることができる。なお、ストリッピングを行うと水性媒体がともに留去されることにより固形分濃度が高くなるため、例えば、粘度が上昇し作業性が悪くなるような場合には、ポリエステル樹脂水性分散体に予め水を添加しておいてもよい。
本発明に用いるポリエステル樹脂粒子の数平均粒子径は、低温造膜性及び保存安定性の観点から1μm以下であることが好ましく、0.5μm以下であることがより好ましく、0.3μm以下であることがさらに好ましい。数平均粒子径が1μmを超えると、低温造膜性が著しく悪化したり、水性分散体の保存安定性が低下したりする。上述した特開平9−296100号公報に記載の方法により、この条件を満たしたポリエステル樹脂水性分散体を得ることができる。
ここで、ポリエステル樹脂の数平均粒子径は、微粒物質の粒子径を測定するために一般的に使用されている動的光散乱法等によって測定される。
次に、酸化スズ系超微粒子の分散液を得るための方法を説明する。
この方法も特に限定されないが、例えば、酸化スズ系超微粒子、塩基性化合物、水、さらに必要に応じて有機溶剤を、容器中で加熱、撹拌する方法を採用することができる。このとき使用される塩基性化合物や有機溶剤は、前述したものから選ぶことができる。水分散液中の酸化スズ系超微粒子の含有率は、特に限定されるものではないが、分散安定性を保つため、1〜40質量%であることが好ましく、10〜30質量%であることが特に好ましい。この場合に必要な塩基性化合物の添加量は、酸化スズ系超微粒子の種類によっても異なるが、酸化スズ系超微粒子1モルに対して0.01〜5.00モルであることが好ましく、さらに好ましくは0.10〜4.00モルである。このとき、温度としては、酸化スズ系超微粒子の解膠促進のために、25℃以上とすることが好ましく、30℃以上であることがさらに好ましい。撹拌方法は、特に限定されず、一般的な撹拌子や撹拌羽を用いる撹拌方法以外に、ホモミキサーやホモジナイザーを用いる分散法や、高圧分散器や超音波分散器などを用いる方法を採用することも可能である。
こうして得られる酸化スズ系超微粒子の分散液としては、酸化スズ系超微粒子がほぼその1次粒子径すなわち数平均粒子径を保ったまま分散されたものが好ましい。具体的には、上述のように数平均粒子径が50nm以下であることが好ましく、より好ましくは20nm以下、特に好ましくは10nm以下である。水性分散体中において酸化スズ系超微粒子の数平均粒子径が50nmを超えると、分散安定性や被膜の透明性が低下するおそれがある。ここで、酸化スズ系超微粒子の数平均粒子径は、前述のポリエステル樹脂の微粒子と同様の動的光散乱法等によって測定される。
このようにして別々の操作によって得られたポリエステル樹脂水性分散体と酸化スズ系超微粒子の分散液とを混合する際には、必要に応じて酸化スズ系超微粒子分散液に所定量の親水性有機溶剤を添加して撹拌した後、上記ポリエステル樹脂水性分散体を加える方法が好ましい。ポリエステル樹脂水性分散体に有機溶剤を添加すると凝集物が発生する可能性があるが、上述の手順によりその問題を抑制することができる。具体的には、酸化スズ系超微粒子分散液に所定量の親水性有機溶剤を添加すると一時的に酸化スズ系超微粒子の凝集物ができ濁りが生じるが、撹拌により速やかに濁りが解消される。この濁りの解消を確認したうえで、ポリエステル樹脂水性分散体を添加することが好ましい。このとき、液/液撹拌装置として広く知られている装置を使用することが可能であり、混合液の分散性が良好であるため、極めて短時間かつ簡単な混合操作を行うだけでよい。混合液の分散安定性を維持するために、必要に応じて、混合液のpHが8〜12になるようにpH調整を行うことが好ましい。混合後の固形分濃度の調整方法としては、例えば、所望の固形分濃度となるように水性媒体を留去したり、水により希釈したりする方法が挙げられる。
本発明の水性分散体における固形分濃度すなわちポリエステル樹脂と酸化スズ系超微粒子の総濃度は、1〜40質量%であることが必要である。固形分濃度が1質量%未満では、基材に塗布する際に十分な厚さの被膜を形成しにくく、一方40質量%を越えると、粒子の分散安定性が低下する。
本発明の水性分散体に架橋剤を混合することで、被膜の硬度や耐薬品性を向上させることができる。架橋剤としては、ポリエステル樹脂が有する官能基、例えばカルボキシル基との反応性を有するものが用いられる。例えば、フェノール樹脂、アミノ樹脂、多官能エポキシ樹脂、多官能イソシアネート化合物及びその各種ブロックイソシアネート化合物、多官能アジリジン化合物、カルボジイミド基含有化合物、オキサゾリン基含有化合物などが挙げられる。このような架橋剤は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
本発明の水性分散体には、その特性が損なわれない範囲で、レベリング剤、消泡剤、ワキ防止剤、顔料分散剤、紫外線吸収剤、滑剤等の各種薬剤や、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック等の顔料あるいは染料などを添加することができる。また、水性分散体の安定性を損なわない範囲で上記以外の有機もしくは無機の化合物を添加することも可能である。
本発明の水性分散体は、被膜形成能に優れているので、公知の成膜方法、例えばグラビアロールコーティング、リバースロールコーティング、ワイヤーバーコーティング、リップコーティング、エアナイフコーティング、カーテンフローコーティング、スプレーコーティング、浸漬コーティング、はけ塗り法等により、各種基材表面に均一にコーティングし、必要に応じて室温付近でセッティングした後、乾燥又は乾燥と焼き付けのための加熱処理に供することにより、均一な被膜を各種基材表面に密着させて形成することができる。このときの加熱装置としては、通常の熱風循環型のオーブンや赤外線ヒーター等を使用すればよい。加熱温度や加熱時間は、被コーティング物である基材の特性や硬化剤の種類、配合量等により適宜選択されるものであるが、経済性を考慮した場合、加熱温度は、30〜250℃が好ましく、60〜230℃がより好ましく、80〜210℃が特に好ましい。加熱時間は、1秒〜20分が好ましく、5秒〜15分がより好ましく、10秒〜10分が特に好ましい。架橋剤を添加した場合は、ポリエステル中のカルボキシル基と架橋剤との反応を十分進行させるために、加熱温度及び時間は、架橋剤の種類によって適宜選定することが望ましい。
本発明の水性分散体を用いて形成される被膜の塗工量は、その用途によって適宜選択されるものであるが、強度及び傷が付きにくい均一な厚さの被膜が得られる0.01〜3g/mの範囲であることが好ましく、0.05〜2g/mであることがより好ましく、0.1〜1g/mであることがさらに好ましい。
基材として用いられる熱可塑性樹脂フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリトリメチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸などのポリエステル樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン、変性ポリプロピレン、変性ポリエチレン、環状ポリオレフィンなどのポリオレフィン樹脂、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46などのポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂またはそれらの混合物によりなるフィルムまたはそれらのフィルムの積層体が挙げられる。中でも、被膜との密着性の点からポリエステル樹脂フィルムを用いるのがよい。熱可塑性樹脂フィルムは、未延伸フィルムでも延伸フィルムでも良く、その製法は限定されない。熱可塑性樹脂フィルムの厚さは、特に限定されるものではないが、通常0.5〜2000μm、好ましくは1〜1000μm、より好ましくは1〜500μmである。なお、フィルム表面にコロナ処理などの物理的表面処理が施されていることが好ましい。
本発明の水性分散体を塗布して得られる積層フィルムは、表面固有抵抗値が1010Ω/□以下と低く、優れた帯電防止能を有し、また同時に耐水性にも優れる。さらに、ヘイズが5%以下となる。すなわち非常に高い透明度を有している。被膜の透明性は、ポリエステル樹脂水性分散体と酸化スズ系超微粒子分散液との組み合わせにより変化するが、上記のようにヘイズが5%以下であることが好ましく、3%以下であることがより好ましい。
こうして得られた積層フィルムは、例えば、包装材料、磁気テープや磁気ディスク等の磁気記録材料、電子材料、グラフィックフィルム、製版フィルム、OHPフィルム等の用途に供することができる。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、各種の特性は以下の方法によって測定または評価した。
(1)ポリエステル樹脂の組成
バリアン社製の分析装置を用いて、1H−NMR分析(300MHz)より求めた。なお、1H−NMRスペクトル上に帰属・定量可能なピークが認められない構成モノマーを含む樹脂については、封管中において230℃で8時間メタノール分解を行った後に、ガスクロマトグラム分析に供し、定量分析を行った。
(2)ポリエステル樹脂のガラス転移温度
ポリエステル樹脂10mgをサンプルとし、DSC(示差走査熱量測定)装置(パーキン エルマー社製 DSC7)を用いて、昇温速度10℃/分の条件で測定を行い、得られた昇温曲線中のガラス転移に由来する2つの折曲点の温度の中間値を求め、これをガラス転移温度とした。
(3)ポリエステル樹脂の数平均分子量
GPC分析(島津製作所社製の送液ユニットLC−10ADvp型及び紫外−可視分光光度計SPD−6AV型を使用、検出波長:254nm、溶媒:テトラヒドロフラン、ポリスチレン換算)により求めた。
(4)ポリエステル樹脂の酸価
ポリエステル樹脂1gを50mlのジオキサン/水=9/1(容積比)混合溶媒に完全に溶解し、フェノールフタレインを指示薬としてKOHで滴定を行い、中和に消費されたKOHのmg数を酸価として求めた。
(5)水性分散体の有機溶剤含有率
島津製作所社製、ガスクロマトグラフGC−8A[FID検出器使用、キャリアーガス:窒素、カラム充填物質(ジーエルサイエンス社製):PEG−HT(5%)−Uniport HP(60/80メッシュ)、カラムサイズ:直径3mm×3m、試料投入温度(インジェクション温度):150℃、カラム温度:60℃、内部標準物質:n-ブタノール]を用い、水性分散体または水性分散体を水で希釈したものを直接装置内に投入して、有機溶剤の含有率を求めた。検出限界は0.01質量%であった。
(6)水性分散体の固形分濃度
水性分散体を適量秤量し、これを150℃で残存物(固形分)の質量が恒量に達するまで加熱し、固形分濃度を求めた。
(7)ポリエステル樹脂微粒子及び酸化スズ系超微粒子の平均粒子径
日機装社製、マイクロトラック粒度分布計UPA150(MODEL No.9340、動的光散乱法)を用い、数平均粒子径を求めた。粒子径算出に用いる樹脂の屈折率は1.57、酸化スズの屈折率は1.99とした。
(8)水性分散体のポットライフ
調製した水性分散体を5℃の条件下で半年静置しその外観を以下の2段階で評価した。 ○:外観に変化なし。
△:かすかに凝集や沈殿物の発生が見られる。
×:凝集や沈殿物の発生が顕著に見られる。
(9)塗工量
あらかじめ面積と質量を計測した基材に本発明の水性分散体を塗工液として所定量塗工し所定条件で乾燥して得られた積層体の質量を測定し、塗工前の基材の質量を差し引くことで、全塗工量を求めた。全塗工量と塗工面積から単位面積当りの塗工量(g/m)を計算した。
(10)積層フィルムの帯電防止特性
JIS−K6911に基づき、アドバンテスト社製のデジタル超高抵抗/微少電流計、R8340を用いて、積層フィルムの被膜の表面固有抵抗値を次の3つの条件下で測定することで、それぞれについて評価した。
(10-a)標準特性評価
温度23℃、湿度65%雰囲気下で測定した。
(10-b)耐流水性評価
積層フィルムを流水中に60秒間さらした後、10-aと同一条件で測定した。
(10-c)耐温水性評価
積層フィルムを40℃の温水中に24時間浸した後、10-aと同一条件で測定した。
(11)耐溶剤性
積層フィルムの被膜面をn−ヘプタンを染込ませた布で10回擦り、被膜表面の状態を以下のように評価した。
○:変化なし
△:やや白化
×:白化
(12)ヘイズ
JIS−K7361−1に基づいて、濁度計(日本電色工業社製、NDH2000)を用いて、積層フィルムのヘイズ測定を行った。ただし、この評価値は、基材フィルムの濁度を含んだものであった。
(13)被膜の密着性評価
積層フィルムの被膜面に粘着テープ(ニチバン社製TF−12)を貼り付けた後、このテープを勢いよく剥離した。そして、被膜面の状態を目視で観察して、以下のように評価した。
○:全く剥がれがなかった
△:一部に剥がれが生じた
×:全て剥がれた
(14)耐ブロッキング性
積層フィルムの被膜面と基材フィルム面とを重ね合わせた状態で、200g/cmの負荷をかけ、40℃の雰囲気下で24時間放置した後、その耐ブロッキング性を以下の基準により評価した。
○:フィルムに軽く触れる程度で剥離
△:フィルムを引っ張ることで剥離
×:ブロッキングにより剥離せず
[ポリエステル樹脂の製造−1]
ポリエステル樹脂を構成する酸成分としてテレフタル酸1661gを用意し、アルコール成分として1,2−プロパンジオール1026gとエチレングリコール155gとを用意し、これらの混合物をオートクレーブ中で240℃で3時間加熱してエステル化反応を行った。続いて230℃に降温後、テトラブチルチタネートを触媒として1.36g添加し、系の圧力を徐々に減じて1.5時間後に13Paとした。この条件で重縮合反応を行い、2時間後に無水トリメリット酸60gを投入し1時間撹拌して解重合反応を行った。その後、系を窒素ガスで加圧状態にしてシート状に払い出した。そしてこれを室温まで十分に冷却した後、クラッシャーで粉砕し、篩を用いて目開き1〜6mmの分画を採取し、粒状のポリエステル樹脂P−1を得た。同様の方法で、アルコール成分の構成が下記表1に示される条件となるようにして、ポリエステル樹脂P−2〜P−6を得た。得られたポリエステル樹脂の物性を表1に示す。
[ポリエステル樹脂の製造−2]
ポリエステル樹脂を構成する酸成分としてテレフタル酸1163gとイソフタル酸498gとを用意し、アルコール成分としてエチレングリコール435gとネオペンチルグリコール625gとを用意し、これらの混合物をオートクレーブ中で260℃で4時間加熱してエステル化反応を行った。次いで触媒としての三酸化アンチモンを1質量%含有するエチレングリコール溶液を73g添加し、系の温度を280℃に昇温し、その後に系の圧力を徐々に減じて1.5時間後に13Paとした。この条件下でさらに重縮合反応を続け、2時間後に系を窒素ガスで常圧にし、系の温度を下げ、270℃になったところで無水トリメリット酸35gを加え、250℃で1時間撹拌して解重合反応を行った。その後、系を窒素ガスで加圧状態にしてシート状に払い出した。そしてこれを室温まで十分に冷却した後、クラッシャーで粉砕し、篩を用いて目開き1〜6mmの分画を採取し、粒状のポリエステル樹脂P−7を得た。得られたポリエステル樹脂の物性を表1に示す。
Figure 0005094064
(ポリエステル樹脂水性分散体 E−1の調製)
ジャケット付きの密閉できる2リットル容ガラス容器を備えた撹拌機(特殊機化工業社製、T.K.ロボミックス)を用いて、300gのポリエステル樹脂P−1と、水性化を促進させるための成分としての220gのイソプロピルアルコールと、水性化の際に用いる塩基性化合物としての11.4gのトリエチルアミンと、468.6gの蒸留水とをガラス容器内に仕込み、撹拌翼(ホモディスパー)の回転速度を7000rpmとして撹拌したところ、容器底部には樹脂粒状物の沈澱は認められず、完全浮遊状態となっていることが確認された。そこでこの状態を保ちつつ、10分後にジャケットに熱水を通して加熱した。そして系内温度を73〜75℃に保ってさらに1時間撹拌した。その後、ジャケット内に冷水を流し、回転速度を4000rpmに下げて撹拌しつつ室温(約25℃)まで冷却した。さらに、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧 196kPa(2kg/cm))し、均一なポリエステル樹脂水性分散体E−1を得た。濾過後のフィルター上には樹脂はほとんど残存していなかった。得られた分散体の数平均粒子径は0.020μmであった。
(ポリエステル樹脂水性分散体 E−2の調製)
ポリエステル樹脂P−1に代えてP−2を用いた。そして、それ以外はE−1の調製方法に準じて、ポリエステル樹脂水性分散体E−2を得た。得られた分散体の数平均粒子径は0.022μmであった。
(ポリエステル樹脂水性分散体 E−3の調製)
ポリエステル樹脂P−1に代えてP−3を用いた。そして、それ以外はE−1の調製方法に準じて、ポリエステル樹脂水性分散体E−3を得た。得られた分散体の数平均粒子径は0.024μmであった。
(ポリエステル樹脂水性分散体 E−4の調製)
ポリエステル樹脂P−1に代えてP−4を用いた。そして、それ以外はE−1の調製方法に準じて、ポリエステル樹脂水性分散体E−4を得た。得られた分散体の数平均粒子径は0.026μmであった。
(ポリエステル樹脂水性分散体 E−5の調製)
ポリエステル樹脂P−1に代えてP−5を用いた。そして、それ以外はE−1の調製方法に準じて、ポリエステル樹脂水性分散体E−5を得た。得られた分散体の数平均粒子径は0.027μmであった。
(ポリエステル樹脂水性分散体 E−6の調製)
ポリエステル樹脂P−1に代えてP−6を用いた。そして、それ以外はE−1の調製方法に準じて、ポリエステル樹脂水性分散体E−6を得た。得られた分散体の数平均粒子径は0.030μmであった。
(ポリエステル樹脂水性分散体 E−7の調製)
ポリエステル樹脂P−1に代えてP−7を用いた。そして、それ以外はE−1の調製方法に準じて、ポリエステル樹脂水性分散体E−7を得た。得られた分散体の数平均粒子径は0.060μmであった。
得られたポリエステル樹脂水性分散体E−1〜E−7の評価結果を、表2に示す。
Figure 0005094064
(酸化スズゾル S−1の調製)
塩化第二スズ五水和物0.1モルを200mlの水に溶解して0.5Mの水溶液とし、撹拌しながら28%のアンモニア水を添加することでpH1.5の白色酸化スズ超微粒子含有スラリーを得た。得られた酸化スズ超微粒子含有スラリーを70℃まで加熱した後、50℃前後まで自然冷却したうえで純水を加えて1Lの酸化スズ超微粒子含有スラリーとし、遠心分離器を用いて固液分離を行った。得られた含水固形分に800mlの純水を加えて、ホモジナイザーにより撹拌・分散を行った後、遠心分離器を用いて固液分離を行うことで、洗浄を行った。洗浄後の含水固形分に純水を75ml加えて酸化スズ超微粒子含有スラリーを調製した。得られた酸化スズ超微粒子含有スラリーにトリエチルアミン3.0mlを加え撹拌し、透明感が出てきたところで70℃まで昇温した後、加温をやめ自然冷却することで、固形分濃度11.5質量%の有機アミンを分散安定剤とする酸化スズゾル S−1を得た。その数平均粒子径は0.009μmであった。
以下で用いた基材フィルムは、次のとおりであった。
・2軸延伸ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と称する)フィルム
ユニチカ社製 エンブレットPET12、厚み:12μm、ヘイズ:2.8%
・2軸延伸ナイロン6(以下「Ny6」と称する)フィルム
ユニチカ社製 エンブレム、厚み:15μm、ヘイズ:3.2%
・延伸ポリプロピレン(以下「PP」と称する)フィルム
東セロ社製、OP U−1、厚み:20μm、ヘイズ:2.4%
(実施例1)
酸化スズゾルS−1に、得られる水性分散体の20質量%になるよう親水性有機溶剤としてのイソプロピルアルコールを加え、撹拌することで、透明な水性分散体を得た。これに、ポリエステル樹脂水性分散体E−1(樹脂P−1)を、ポリエステル樹脂固形分100質量部に対して酸化スズ超微粒子が800質量部となるように添加し、撹拌することによって、ポリエステル樹脂と酸化スズ超微粒子とを含有した水性分散体を得た。その固形分濃度は10.0質量%であった。
得られた水性分散体をPETフィルムのコロナ処理面にフィルムアプリケーター(安田精機製作所社製、542−AB)を使用して塗布した後、130℃で30秒間乾燥することにより、フィルム面に0.5g/mの被膜を形成した積層フィルムを得た。
得られた水性分散体及び積層フィルムについて、各種評価を行った。
(実施例2)
実施例1に比べ、ポリエステル樹脂水性分散体と酸化スズゾルとを混合する際に、ポリエステル樹脂固形分100質量部に対して酸化スズ超微粒子が400質量部となるように変更した。そして、それ以外は実施例1と同様にして水性分散体及び積層フィルムを得て、各種評価を行った。
(実施例3)
実施例1に比べ、ポリエステル樹脂水性分散体と酸化スズゾルとを混合する際に、酸化スズゾルを水で希釈して固形分濃度を8.5質量%にしたうえで、ポリエステル樹脂固形分100質量部に対して酸化スズ超微粒子が6400質量部となるように混合した。そして、それ以外は実施例1と同様にして水性分散体及び積層フィルムを得た。なお、実施例1と比べて固形分濃度を低くしたため、塗工量は0.2g/mと実施例1よりも少なくなった。得られた水性分散体及び積層フィルムについて、各種評価を行った。
(実施例4)
実施例1に比べ、ポリエステル樹脂水性分散体E−1(樹脂P−1)に代えてE−2(樹脂P−2)を用いた。そして、それ以外は実施例1と同様にして水性分散体及び積層フィルムを得て、各種評価を行った。
(実施例5)
実施例1に比べ、ポリエステル樹脂水性分散体E−1(樹脂P−1)に代えてE−3(樹脂P−3)を用いた。そして、それ以外は実施例1と同様にして水性分散体及び積層フィルムを得て、各種評価を行った。
参考例1
実施例1に比べ、ポリエステル樹脂水性分散体E−1(樹脂P−1)に代えてE−4(樹脂P−4)を用いた。そして、それ以外は実施例1と同様にして水性分散体及び積層フィルムを得て、各種評価を行った。
(実施例7)
実施例1に比べ、基材フィルムとして、PETフィルムに代えてNy6フィルムを用いた。そして、それ以外は実施例1と同様にして水性分散体及び積層フィルムを得て、各種評価を行った。
(実施例8)
実施例1に比べ、基材フィルムとして、PETフィルムに代えてPPフィルムを用い、乾燥条件を90℃、1分間に変更した。そして、それ以外は実施例1と同様にして水性分散体及び積層フィルムを得て、各種評価を行った。
(実施例9)
実施例1で用いた酸化スズゾルS−1に代えて、アンチモンドープ酸化スズ超微粒子水分散液(石原産業社製、SN100D、固形分濃度:30質量%、数平均粒子径0.058μm)を、ポリエステル樹脂固形分100質量部に対してアンチモンドープ酸化スズ超微粒子が100質量部となるように混合した。そして、それ以外は実施例1と同様の方法にして水性分散体及び積層フィルムを得て、各種評価を行った。
(比較例1)
実施例1に比べ、ポリエステル樹脂水性分散体E−1(樹脂P−1)に代えてE−5(樹脂P−5)を用いた。そして、それ以外は実施例1と同様にして水性分散体及び積層フィルムを得て、各種評価を行った。
(比較例2)
実施例1に比べ、ポリエステル樹脂水性分散体E−1(樹脂P−1)に代えてE−6(樹脂P−6)を用いた。そして、それ以外は実施例1と同様にして水性分散体及び積層フィルムを得て、各種評価を行った。
(比較例3)
実施例1に比べ、ポリエステル樹脂水性分散体E−1(樹脂P−1)に代えてE−7(樹脂P−7)を用いた。そして、それ以外は実施例1と同様にして水性分散体及び積層フィルムを得て、各種評価を行った。
実施例1〜9及び比較例1〜3の水性分散体及び積層フィルムの評価結果を表3に示す。
Figure 0005094064
実施例1〜9によって得られた水性分散体からは沈殿物は確認されなかった。また積層フィルムの特性は、表3に示したようにいずれも透明性に優れ、高い帯電防止性を示し、流水処理、温水処理によっても表面固有抵抗値が大きく変化せず、耐溶剤性にも優れ、各基材に対する密着性、耐ブロッキング性も優れていた。参考例1ではごくわずかな浮遊が確認できた。
これに対して、ポリエステル樹脂の組成が本発明の範囲外である比較例1〜3では、沈殿物が生じていることが確認された。

Claims (7)

  1. ポリエステル樹脂と酸化スズ系超微粒子とが水性媒体中に分散されてなり、固形分濃度が1〜40質量%であり、親水性有機溶剤を5〜60質量%の割合で含む水性分散体であって、前記ポリエステル樹脂は、多塩基酸成分と多価アルコール成分とを含むとともに、全アルコール成分にしめる1,2−プロパンジオール成分の割合が70モル%以上であり、酸化スズ系超微粒子の含有割合がポリエステル樹脂100質量部に対して30〜10000質量部であることを特徴とする水性分散体。
  2. 塩基性化合物を含むことを特徴とする請求項1記載の水性分散体。
  3. 不揮発性水性化助剤を5質量%以下の割合で含有することを特徴とする請求項1または2記載の水性分散体。
  4. 熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも一方の面に、請求項1からまでのいずれか1項に記載の水性分散体を塗布、乾燥してなる被膜を積層したことを特徴とする積層フィルム。
  5. 被膜を積層した面の表面固有抵抗値が1010Ω/□以下であることを特徴とする請求項記載の積層フィルム。
  6. ヘイズが5%以下であることを特徴とする請求項または記載の積層フィルム。
  7. 熱可塑性樹脂フィルムがポリエステル樹脂フィルムであることを特徴とする請求項からまでのいずれか1項記載の積層フィルム。
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