JP5094064B2 - 水性分散体及びそれを用いた積層フィルム - Google Patents
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Description
(1)ポリエステル樹脂と酸化スズ系超微粒子とが水性媒体中に分散されてなり、固形分濃度が1〜40質量%であり、親水性有機溶剤を5〜60質量%の割合で含む水性分散体であって、前記ポリエステル樹脂は、多塩基酸成分と多価アルコール成分とを含むとともに、全アルコール成分にしめる1,2−プロパンジオール成分の割合が70モル%以上であり、酸化スズ系超微粒子の含有割合がポリエステル樹脂100質量部に対して30〜10000質量部であることを特徴とする水性分散体。
本発明の水性分散体は、ポリエステル樹脂と酸化スズ系超微粒子とが水性媒体中に分散されているものである。ここで、水性媒体とは、水を主成分とする液体であり、後述する親水性有機溶剤や塩基性化合物を含有していてもよいものである。
ルとしては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、さらにはビスフェノール類の2つのフェノール性水酸基にエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドをそれぞれ1〜数モル付加して得られるグリコール類、例えば2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン等が挙げられる。しかし、エーテル構造は被膜形成物の耐水性、耐候性を低下させることから、ポリエステル樹脂を構成する多価アルコール成分としてのエーテル結合含有グリコールの使用量は、全多価アルコール成分の10重量%以下、更には5重量%以下にとどめることが好ましい。なお、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールも必要に応じて使用することができる。
ポリエステル樹脂と酸化スズ系超微粒子とを含有する水性分散体を得るための方法は、特に限定されないが、ポリエステル樹脂粒子と酸化スズ系超微粒子との分散安定性の観点から、ポリエステル樹脂の水性分散体と酸化スズ系超微粒子の分散液とを別々に調製しておき、これを混合して得る方法が最も好ましい。このようにすれば、ポリエステル樹脂水性分散体の優れた貯蔵安定性と、酸化スズ系超微粒子の優れた分散性が維持され、ポリエステル樹脂及び酸化スズ系超微粒子の互いの優れた特性を発揮することができる。
まず、ポリエステル樹脂水性分散体の製造方法について説明する。
ポリエステル樹脂水性分散体を得る方法は、特に限定されず、当業者に広く知られた方法を応用することができる。例えば、ポリエステル樹脂を汎用の有機溶剤に溶解させた溶液あるいは溶融体を、界面活性剤が添加され、しかも高速で撹拌されている水性媒体中に少量ずつ添加してゆく方法(強制乳化法)や、撹拌下の該溶液あるいは溶融体中に水性媒体を少量ずつ添加して転相させて安定な水性分散体を得る方法(転相乳化法)等を用いることができる。転相乳化法においても界面活性剤を添加してもよい。界面活性剤としては、上述のものが使用できるが、その添加量は樹脂成分に対して5質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましく、1質量%以下がさらに好ましく、ゼロがもっとも好ましい。
次に、酸化スズ系超微粒子の分散液を得るための方法を説明する。
なお、各種の特性は以下の方法によって測定または評価した。
バリアン社製の分析装置を用いて、1H−NMR分析(300MHz)より求めた。なお、1H−NMRスペクトル上に帰属・定量可能なピークが認められない構成モノマーを含む樹脂については、封管中において230℃で8時間メタノール分解を行った後に、ガスクロマトグラム分析に供し、定量分析を行った。
ポリエステル樹脂10mgをサンプルとし、DSC(示差走査熱量測定)装置(パーキン エルマー社製 DSC7)を用いて、昇温速度10℃/分の条件で測定を行い、得られた昇温曲線中のガラス転移に由来する2つの折曲点の温度の中間値を求め、これをガラス転移温度とした。
GPC分析(島津製作所社製の送液ユニットLC−10ADvp型及び紫外−可視分光光度計SPD−6AV型を使用、検出波長:254nm、溶媒:テトラヒドロフラン、ポリスチレン換算)により求めた。
ポリエステル樹脂1gを50mlのジオキサン/水=9/1(容積比)混合溶媒に完全に溶解し、フェノールフタレインを指示薬としてKOHで滴定を行い、中和に消費されたKOHのmg数を酸価として求めた。
島津製作所社製、ガスクロマトグラフGC−8A[FID検出器使用、キャリアーガス:窒素、カラム充填物質(ジーエルサイエンス社製):PEG−HT(5%)−Uniport HP(60/80メッシュ)、カラムサイズ:直径3mm×3m、試料投入温度(インジェクション温度):150℃、カラム温度:60℃、内部標準物質:n-ブタノール]を用い、水性分散体または水性分散体を水で希釈したものを直接装置内に投入して、有機溶剤の含有率を求めた。検出限界は0.01質量%であった。
水性分散体を適量秤量し、これを150℃で残存物(固形分)の質量が恒量に達するまで加熱し、固形分濃度を求めた。
日機装社製、マイクロトラック粒度分布計UPA150(MODEL No.9340、動的光散乱法)を用い、数平均粒子径を求めた。粒子径算出に用いる樹脂の屈折率は1.57、酸化スズの屈折率は1.99とした。
調製した水性分散体を5℃の条件下で半年静置しその外観を以下の2段階で評価した。 ○:外観に変化なし。
×:凝集や沈殿物の発生が顕著に見られる。
あらかじめ面積と質量を計測した基材に本発明の水性分散体を塗工液として所定量塗工し所定条件で乾燥して得られた積層体の質量を測定し、塗工前の基材の質量を差し引くことで、全塗工量を求めた。全塗工量と塗工面積から単位面積当りの塗工量(g/m2)を計算した。
JIS−K6911に基づき、アドバンテスト社製のデジタル超高抵抗/微少電流計、R8340を用いて、積層フィルムの被膜の表面固有抵抗値を次の3つの条件下で測定することで、それぞれについて評価した。
温度23℃、湿度65%雰囲気下で測定した。
(10-b)耐流水性評価
積層フィルムを流水中に60秒間さらした後、10-aと同一条件で測定した。
積層フィルムを40℃の温水中に24時間浸した後、10-aと同一条件で測定した。
積層フィルムの被膜面をn−ヘプタンを染込ませた布で10回擦り、被膜表面の状態を以下のように評価した。
△:やや白化
×:白化
JIS−K7361−1に基づいて、濁度計(日本電色工業社製、NDH2000)を用いて、積層フィルムのヘイズ測定を行った。ただし、この評価値は、基材フィルムの濁度を含んだものであった。
積層フィルムの被膜面に粘着テープ(ニチバン社製TF−12)を貼り付けた後、このテープを勢いよく剥離した。そして、被膜面の状態を目視で観察して、以下のように評価した。
△:一部に剥がれが生じた
×:全て剥がれた
積層フィルムの被膜面と基材フィルム面とを重ね合わせた状態で、200g/cm2の負荷をかけ、40℃の雰囲気下で24時間放置した後、その耐ブロッキング性を以下の基準により評価した。
△:フィルムを引っ張ることで剥離
×:ブロッキングにより剥離せず
ポリエステル樹脂を構成する酸成分としてテレフタル酸1661gを用意し、アルコール成分として1,2−プロパンジオール1026gとエチレングリコール155gとを用意し、これらの混合物をオートクレーブ中で240℃で3時間加熱してエステル化反応を行った。続いて230℃に降温後、テトラブチルチタネートを触媒として1.36g添加し、系の圧力を徐々に減じて1.5時間後に13Paとした。この条件で重縮合反応を行い、2時間後に無水トリメリット酸60gを投入し1時間撹拌して解重合反応を行った。その後、系を窒素ガスで加圧状態にしてシート状に払い出した。そしてこれを室温まで十分に冷却した後、クラッシャーで粉砕し、篩を用いて目開き1〜6mmの分画を採取し、粒状のポリエステル樹脂P−1を得た。同様の方法で、アルコール成分の構成が下記表1に示される条件となるようにして、ポリエステル樹脂P−2〜P−6を得た。得られたポリエステル樹脂の物性を表1に示す。
ポリエステル樹脂を構成する酸成分としてテレフタル酸1163gとイソフタル酸498gとを用意し、アルコール成分としてエチレングリコール435gとネオペンチルグリコール625gとを用意し、これらの混合物をオートクレーブ中で260℃で4時間加熱してエステル化反応を行った。次いで触媒としての三酸化アンチモンを1質量%含有するエチレングリコール溶液を73g添加し、系の温度を280℃に昇温し、その後に系の圧力を徐々に減じて1.5時間後に13Paとした。この条件下でさらに重縮合反応を続け、2時間後に系を窒素ガスで常圧にし、系の温度を下げ、270℃になったところで無水トリメリット酸35gを加え、250℃で1時間撹拌して解重合反応を行った。その後、系を窒素ガスで加圧状態にしてシート状に払い出した。そしてこれを室温まで十分に冷却した後、クラッシャーで粉砕し、篩を用いて目開き1〜6mmの分画を採取し、粒状のポリエステル樹脂P−7を得た。得られたポリエステル樹脂の物性を表1に示す。
ジャケット付きの密閉できる2リットル容ガラス容器を備えた撹拌機(特殊機化工業社製、T.K.ロボミックス)を用いて、300gのポリエステル樹脂P−1と、水性化を促進させるための成分としての220gのイソプロピルアルコールと、水性化の際に用いる塩基性化合物としての11.4gのトリエチルアミンと、468.6gの蒸留水とをガラス容器内に仕込み、撹拌翼(ホモディスパー)の回転速度を7000rpmとして撹拌したところ、容器底部には樹脂粒状物の沈澱は認められず、完全浮遊状態となっていることが確認された。そこでこの状態を保ちつつ、10分後にジャケットに熱水を通して加熱した。そして系内温度を73〜75℃に保ってさらに1時間撹拌した。その後、ジャケット内に冷水を流し、回転速度を4000rpmに下げて撹拌しつつ室温(約25℃)まで冷却した。さらに、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧 196kPa(2kg/cm2))し、均一なポリエステル樹脂水性分散体E−1を得た。濾過後のフィルター上には樹脂はほとんど残存していなかった。得られた分散体の数平均粒子径は0.020μmであった。
(ポリエステル樹脂水性分散体 E−2の調製)
ポリエステル樹脂P−1に代えてP−2を用いた。そして、それ以外はE−1の調製方法に準じて、ポリエステル樹脂水性分散体E−2を得た。得られた分散体の数平均粒子径は0.022μmであった。
ポリエステル樹脂P−1に代えてP−3を用いた。そして、それ以外はE−1の調製方法に準じて、ポリエステル樹脂水性分散体E−3を得た。得られた分散体の数平均粒子径は0.024μmであった。
ポリエステル樹脂P−1に代えてP−4を用いた。そして、それ以外はE−1の調製方法に準じて、ポリエステル樹脂水性分散体E−4を得た。得られた分散体の数平均粒子径は0.026μmであった。
ポリエステル樹脂P−1に代えてP−5を用いた。そして、それ以外はE−1の調製方法に準じて、ポリエステル樹脂水性分散体E−5を得た。得られた分散体の数平均粒子径は0.027μmであった。
ポリエステル樹脂P−1に代えてP−6を用いた。そして、それ以外はE−1の調製方法に準じて、ポリエステル樹脂水性分散体E−6を得た。得られた分散体の数平均粒子径は0.030μmであった。
ポリエステル樹脂P−1に代えてP−7を用いた。そして、それ以外はE−1の調製方法に準じて、ポリエステル樹脂水性分散体E−7を得た。得られた分散体の数平均粒子径は0.060μmであった。
塩化第二スズ五水和物0.1モルを200mlの水に溶解して0.5Mの水溶液とし、撹拌しながら28%のアンモニア水を添加することでpH1.5の白色酸化スズ超微粒子含有スラリーを得た。得られた酸化スズ超微粒子含有スラリーを70℃まで加熱した後、50℃前後まで自然冷却したうえで純水を加えて1Lの酸化スズ超微粒子含有スラリーとし、遠心分離器を用いて固液分離を行った。得られた含水固形分に800mlの純水を加えて、ホモジナイザーにより撹拌・分散を行った後、遠心分離器を用いて固液分離を行うことで、洗浄を行った。洗浄後の含水固形分に純水を75ml加えて酸化スズ超微粒子含有スラリーを調製した。得られた酸化スズ超微粒子含有スラリーにトリエチルアミン3.0mlを加え撹拌し、透明感が出てきたところで70℃まで昇温した後、加温をやめ自然冷却することで、固形分濃度11.5質量%の有機アミンを分散安定剤とする酸化スズゾル S−1を得た。その数平均粒子径は0.009μmであった。
・2軸延伸ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と称する)フィルム
ユニチカ社製 エンブレットPET12、厚み:12μm、ヘイズ:2.8%
・2軸延伸ナイロン6(以下「Ny6」と称する)フィルム
ユニチカ社製 エンブレム、厚み:15μm、ヘイズ:3.2%
・延伸ポリプロピレン(以下「PP」と称する)フィルム
東セロ社製、OP U−1、厚み:20μm、ヘイズ:2.4%
酸化スズゾルS−1に、得られる水性分散体の20質量%になるよう親水性有機溶剤としてのイソプロピルアルコールを加え、撹拌することで、透明な水性分散体を得た。これに、ポリエステル樹脂水性分散体E−1(樹脂P−1)を、ポリエステル樹脂固形分100質量部に対して酸化スズ超微粒子が800質量部となるように添加し、撹拌することによって、ポリエステル樹脂と酸化スズ超微粒子とを含有した水性分散体を得た。その固形分濃度は10.0質量%であった。
実施例1に比べ、ポリエステル樹脂水性分散体と酸化スズゾルとを混合する際に、ポリエステル樹脂固形分100質量部に対して酸化スズ超微粒子が400質量部となるように変更した。そして、それ以外は実施例1と同様にして水性分散体及び積層フィルムを得て、各種評価を行った。
実施例1に比べ、ポリエステル樹脂水性分散体と酸化スズゾルとを混合する際に、酸化スズゾルを水で希釈して固形分濃度を8.5質量%にしたうえで、ポリエステル樹脂固形分100質量部に対して酸化スズ超微粒子が6400質量部となるように混合した。そして、それ以外は実施例1と同様にして水性分散体及び積層フィルムを得た。なお、実施例1と比べて固形分濃度を低くしたため、塗工量は0.2g/m2と実施例1よりも少なくなった。得られた水性分散体及び積層フィルムについて、各種評価を行った。
実施例1に比べ、ポリエステル樹脂水性分散体E−1(樹脂P−1)に代えてE−2(樹脂P−2)を用いた。そして、それ以外は実施例1と同様にして水性分散体及び積層フィルムを得て、各種評価を行った。
実施例1に比べ、ポリエステル樹脂水性分散体E−1(樹脂P−1)に代えてE−3(樹脂P−3)を用いた。そして、それ以外は実施例1と同様にして水性分散体及び積層フィルムを得て、各種評価を行った。
実施例1に比べ、ポリエステル樹脂水性分散体E−1(樹脂P−1)に代えてE−4(樹脂P−4)を用いた。そして、それ以外は実施例1と同様にして水性分散体及び積層フィルムを得て、各種評価を行った。
実施例1に比べ、基材フィルムとして、PETフィルムに代えてNy6フィルムを用いた。そして、それ以外は実施例1と同様にして水性分散体及び積層フィルムを得て、各種評価を行った。
実施例1に比べ、基材フィルムとして、PETフィルムに代えてPPフィルムを用い、乾燥条件を90℃、1分間に変更した。そして、それ以外は実施例1と同様にして水性分散体及び積層フィルムを得て、各種評価を行った。
実施例1で用いた酸化スズゾルS−1に代えて、アンチモンドープ酸化スズ超微粒子水分散液(石原産業社製、SN100D、固形分濃度:30質量%、数平均粒子径0.058μm)を、ポリエステル樹脂固形分100質量部に対してアンチモンドープ酸化スズ超微粒子が100質量部となるように混合した。そして、それ以外は実施例1と同様の方法にして水性分散体及び積層フィルムを得て、各種評価を行った。
実施例1に比べ、ポリエステル樹脂水性分散体E−1(樹脂P−1)に代えてE−5(樹脂P−5)を用いた。そして、それ以外は実施例1と同様にして水性分散体及び積層フィルムを得て、各種評価を行った。
実施例1に比べ、ポリエステル樹脂水性分散体E−1(樹脂P−1)に代えてE−6(樹脂P−6)を用いた。そして、それ以外は実施例1と同様にして水性分散体及び積層フィルムを得て、各種評価を行った。
実施例1に比べ、ポリエステル樹脂水性分散体E−1(樹脂P−1)に代えてE−7(樹脂P−7)を用いた。そして、それ以外は実施例1と同様にして水性分散体及び積層フィルムを得て、各種評価を行った。
Claims (7)
- ポリエステル樹脂と酸化スズ系超微粒子とが水性媒体中に分散されてなり、固形分濃度が1〜40質量%であり、親水性有機溶剤を5〜60質量%の割合で含む水性分散体であって、前記ポリエステル樹脂は、多塩基酸成分と多価アルコール成分とを含むとともに、全アルコール成分にしめる1,2−プロパンジオール成分の割合が70モル%以上であり、酸化スズ系超微粒子の含有割合がポリエステル樹脂100質量部に対して30〜10000質量部であることを特徴とする水性分散体。
- 塩基性化合物を含むことを特徴とする請求項1記載の水性分散体。
- 不揮発性水性化助剤を5質量%以下の割合で含有することを特徴とする請求項1または2記載の水性分散体。
- 熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも一方の面に、請求項1から3までのいずれか1項に記載の水性分散体を塗布、乾燥してなる被膜を積層したことを特徴とする積層フィルム。
- 被膜を積層した面の表面固有抵抗値が1010Ω/□以下であることを特徴とする請求項4記載の積層フィルム。
- ヘイズが5%以下であることを特徴とする請求項4または5記載の積層フィルム。
- 熱可塑性樹脂フィルムがポリエステル樹脂フィルムであることを特徴とする請求項4から6までのいずれか1項記載の積層フィルム。
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