以下に本発明の実施の形態を説明する。
図1は、実施形態における車両用の内燃機関を示す。
図1に示す内燃機関1は、2つのバンクからなるV型機関であるが、直列機関や水平対向機関などであってもよい。
内燃機関1の各気筒の燃焼室2内は、吸気ダクト3、吸気マニホールド4a,4b、吸気ポート5を介して大気側と連通している。
前記燃焼室2(シリンダ)の吸気口2aは、吸気バルブ6で開閉され、ピストン7が降下するときに前記吸気バルブ6が開くと、燃焼室2内に空気が吸引される。
一方、前記吸気バルブ6の上流側の吸気通路である、前記吸気マニホールド4a,4bのブランチ部40a,40bには、各気筒それぞれに燃料噴射弁8が配設されており、この燃料噴射弁8から噴射された燃料が空気と共に燃焼室2内に吸引される。
前記燃料噴射弁8は、その噴霧の中心軸が略吸気バルブ6(吸気口2a)を指向するように配置されている。
前記シリンダ2内の燃料は、点火プラグ9による火花点火によって着火燃焼し、これによって発生する爆発力がピストン7を押し下げ、該押し下げ力によってクランク軸10が回転駆動される。
また、前記燃焼室2(シリンダ)の排気口2bは、排気バルブ11で開閉され、ピストン7が上昇するときに前記排気バルブ11が開くと、燃焼室2内の排気ガスが排気ポート12に排出される。
尚、前記吸気バルブ6及び排気バルブ11は、クランク軸によって回転駆動されるカム軸に一体的に設けられたカムによって、軸方向に往復動し、各気筒の行程に合わせて開閉される。
但し、吸気バルブ6及び排気バルブ11が電磁アクチュエータによって開閉駆動される電磁駆動弁であってもよく、また、カム軸の回転によって開閉駆動される構成において、バルブ作動角の中心位相やバルブリフト量やバルブ作動角を可変とする可変動弁機構を備えることができる。
前記可変動弁機構としては、例えば特開2001−280167号公報や特開2007−127189号公報(米国特許出願公開第2007/0137614A1)に開示されるようなものがあり、更に、可変動弁機構に用いられるアクチュエータは、油圧アクチュエータ、モータ、電磁ブレーキなどのいずれであっても良い。
前記排気ポート12には、排気マニホールド13a,13bの各ブランチ部が接続され、更に、排気マニホールド13a,13bの各集合部は合流して、排気ダクト14に接続されている。
前記排気ダクト14には、排気を浄化するための触媒コンバータ15が介装されている。
また、前記吸気ダクト3には、電子制御スロットル16が介装されており、内燃機関1の吸入空気量が前記電子制御スロットル16で制御される。
尚、吸気バルブ6の閉時期やバルブリフト量を可変とする可変動弁機構、又は、電磁駆動式の吸気バルブを備え、内燃機関1の吸入空気量を、吸気バルブの閉時期やバルブリフト量の調整によって制御するシステムであってもよい。
前記燃料噴射弁8による燃料噴射量及び燃料噴射時期は、ECM(エンジン・コントロール・モジュール)21によって制御される。
前記ECM21は、マイクロコンピュータを含んで構成され、各種センサからの信号を入力し、該入力信号を予め記憶されているプログラムに従って演算処理して、前記燃料噴射弁8に対して噴射パルス信号を出力する。
前記燃料噴射弁8には、単位開弁時間当たりの噴射量が一定になるように、圧力調整された燃料が供給されるようになっており、前記燃料噴射弁8はその開弁時間に比例する量の燃料を噴射する。
前記各種センサとしては、アクセル開度ACCを検出するアクセル開度センサ22、内燃機関1の冷却水温度TW(機関温度)を検出する水温センサ23、内燃機関1が搭載される車両の走行速度(車速)VSPを検出する車速センサ24、クランク軸10が単位角度だけ回転する毎の単位クランク角信号POSと基準クランク角位置毎の基準クランク角信号REFとをそれぞれに出力するクランク角センサ25、各バンクの排気マニホールド13a,13bの集合部にそれぞれ配置され、排気中の酸素濃度に基づいて各バンクの空燃比AFをそれぞれに検出する空燃比センサ26a,26b、内燃機関1の吸入空気流量QAを検出するエアフローセンサ27、前記電子制御スロットル16の開度TVOを検出するスロットル開度センサ28、電子制御スロットル16下流側の吸気通路内の圧力(吸気管圧)PBを検出する圧力センサ29などが設けられている。
前記ECM21は、各気筒の1サイクル毎に、前記燃料噴射弁8による燃料噴射を複数回に分けて行わせるようになっており、以下では、係る分割噴射制御を詳細に説明する。
図2のフローチャートは、微小時間毎に割り込み実行される分割噴射制御のメインルーチンを示す。
ステップS100では、1サイクル当たりに各気筒に噴射すべき燃料総量である燃料噴射パルス幅PULS(燃料噴射量)を演算する。
具体的には、前記エアフローセンサ27で検出される吸入空気流量QAと、前記単位クランク角信号POS又は基準クランク角信号REFから算出される機関回転速度NEとから、各気筒に吸引される空気量を求め、該空気量に対して目標空燃比を形成させるために必要な燃料量に相当する噴射時間を基本噴射パルス幅PlsBとして算出する。
更に、前記基本噴射パルス幅PlsBを、冷却水温度TW等に基づいて設定される補正係数や、前記空燃比センサ26a,26bで検出される空燃比を目標空燃比に近づけるように設定される空燃比フィードバック補正係数や、燃料噴射弁8の電源電圧(バッテリ電圧)に基づいて設定される補正分などに基づいて補正することで、最終的な燃料噴射パルス幅PULSが算出される。
ステップS200では、分割噴射における分割数N(噴射回数)及び分割噴射の各回における噴射パルス幅PlsNを演算する。
上記ステップS200における処理の詳細は、図3のフローチャートに示してある。
図3のフローチャートにおいて、ステップS201では、分割噴射における各回の噴射パルス幅PlsNの最大値(上限値)である最大パルス幅Plsmaxを設定する。
前記最大パルス幅Plsmaxは、図4に示すような噴射パルス幅Plsと噴霧角θとの相関から決定される値であり、噴射パルス幅Plsと噴霧角θとの相関は、使用する燃料噴射弁8に応じて特定される。
更に、燃料噴射弁8における噴霧角θとは、図5に示すように、噴霧の中心軸Xを含む平面上で噴霧外縁SP1,SP2がなす角度である。
図4に示すように、前記噴霧角θは、噴射パルス幅Plsが0から閾値PlsSLの間は、噴射パルス幅Plsの増大に応じて増大し、閾値PlsSLを超える噴射パルス幅Plsを与えても、閾値PlsSLでの噴霧角θSを略維持する特性を有し、前記最大パルス幅Plsmaxは、最大噴霧角θmax(噴霧角θS)となる噴射パルス幅の範囲内での最小値として設定される。
より具体的には、噴霧角θを変数として噴射パルス幅Plsを求める関数をf(θ)としたときに、f(θmax−5%)≦Plsmax≦f(θmax)を満たす噴射パルス幅、換言すれば、最大噴霧角θmax乃至最大噴霧角θmax近傍の噴霧角θを実現できる噴射パルス幅のうちの最小値を、最大パルス幅Plsmaxとし、本実施形態では、最大噴霧角θmaxを実現できる噴射パルス幅のうちの最小値を最大パルス幅Plsmaxとする(Plsmax=f(θmax))。
尚、前述のように最大噴霧角の近傍の噴霧角となる噴射パルス幅Plsを最大パルス幅Plsmaxとすることができ、最大噴霧角の近傍とは、例えばθmax−5%である。
ここで、最大噴霧角となる噴射パルス幅Plsを最大パルス幅Plsmaxとするのは、吸気通路内壁や吸気バルブ6の傘部に対する燃料の付着面積を極力大きくして気化性能を高めるためであるから、係る要求に応じて最大噴霧角近傍の領域を適宜設定でき、θmax〜θmax−5%に限定されるものではない。
更に、最大パルス幅Plsmaxを超える噴射パルス幅Plsで噴射させても噴霧角θが増えず、付着燃料の膜厚を増大させることになるが、気化性能を維持できる範囲内であれば、最大パルス幅Plsmaxを超える噴射パルス幅Plsでの分割噴射を1回行わせるように設定することができる。
また、例えば、燃料噴射弁8に対する燃料の供給圧が変化することで、前記図4に示す噴射パルス幅Plsと噴霧角θとの相関が変化する場合には、燃料供給圧に応じて前記最大パルス幅Plsmaxを変更すればよく、燃料供給圧が一定で、前記図4に示す噴射パルス幅Plsと噴霧角θとの相関が固定である場合には、前記最大パルス幅Plsmaxを固定値として予め記憶させておけばよい。
上記のように、噴霧角θが略最大となる最大パルス幅Plsmaxを設定するのは、図6に示すように、噴霧角θが大きければ、燃料噴射弁8から広範囲に向けて燃料が噴射される結果、吸気通路の内壁や吸気バルブ6の傘部などの吸気系に対する燃料の付着面積が広くなり、付着面積が広くなることで、図7に示すように付着燃料の膜厚が薄くなり、膜厚が厚い場合に比べて気化促進効果が得られるためである。
換言すれば、最大パルス幅Plsmaxは、燃料噴射弁8から噴射される燃料が、吸気通路の内壁や吸気バルブ6の傘部などの吸気系に対して付着する面積が最大なるパルス幅の最小値である。
ステップS202では、ステップS100で演算した噴射パルス幅PULSが前記最大パルス幅Plsmaxよりも大きいか否かを判断する。
前記最大パルス幅Plsmaxが第1噴射パルス幅に相当する。
噴射パルス幅PULSが最大パルス幅Plsmax以下(Plsmax≧PULS)である場合は、噴射パルス幅PULSを、最大パルス幅Plsmaxによる噴射を含む複数回に分けて噴射させることができないので、ステップS205へ進んで、分割噴射パルス幅PlsNをPULSとする1回の噴射で燃料を噴射させる設定を行う。
一方、噴射パルス幅PULSが最大パルス幅Plsmaxを超えている(Plsmax<PULS)場合は、ステップS203へ進む。
ステップS203では、分割数N(分割噴射における噴射回数)及び分割噴射の各回それぞれでの噴射パルス幅PlsN(N:1,2,3,・・・N)を決定する。
具体的には、噴射パルス幅PULSから最大パルス幅Plsmaxを減算した結果を、予め記憶した最小噴射パルス幅Plsminで除算することで、最大パルス幅Plsmaxによる分割噴射を1回行って、残りのパルス幅(燃料)を最小噴射パルス幅Plsminずつに分けて噴射させる場合における、最小噴射パルス幅Plsminでの噴射回数nを算出する。
n=(PULS−Plsmax)/Plsmin
尚、(PULS−Plsmax)/Plsminの演算結果の小数点以下(余り)は切り捨て、その結果を回数nとし、分割噴射の総回数Nは、最大パルス幅Plsmaxによる噴射の1回と、最小噴射パルス幅Plsminによる噴射のn回との加算値となる(N=n+1)。
また、前記最小噴射パルス幅Plsminは、燃料噴射弁8による燃料計量が可能な最小パルス幅(最小噴射燃料量)であり、換言すれば、パルス幅に比例して燃料噴射量が変化するパルス幅領域のうちの最小値が、前記最小噴射パルス幅Plsminであり、この最小噴射パルス幅Plsminが第2噴射パルス幅に相当する。
前記最小噴射パルス幅Plsminによる分割噴射を行わせる場合、付着面積は狭くなるものの、温度の高い吸気バルブ6を指向することになり、しかも、少ない燃料を細切れに噴射するので、連続的に噴射させる場合に比べて気化性能を向上させることができる。
ここで、(PULS−Plsmax)/Plsminの演算結果が自然数(0,1,2,3,…)ではない場合(余りが発生する場合)には、Plsmax+Plsmin×nとして算出される分割噴射の各回におけるパルス幅の総和が、前記噴射パルス幅PULSよりも少なく、その差がPlsmin未満となることを示す。
そこで、(PULS−Plsmax)/Plsminの演算結果が自然数(0,1,2,3,…)ではない場合には、PULSとPlsmax+Plsmin×nとの差分Plsrだけ、分割噴射の各回のうちの1回におけるパルス幅を増大補正する。
Plsr=PULS−(Plsmax+Plsmin×n)
Plsr<Plsmin
例えば、n=0であった場合には、最大パルス幅Plsmaxに前記差分Plsrを付加したパルス幅(=噴射パルス幅PULS)で1回だけ噴射させ、分割噴射は行わない。
また、n≧1であった場合には、最小噴射パルス幅Plsminによる噴射を少なくとも1回は行わせる設定であるので、最小噴射パルス幅Plsminによる噴射の1回に前記差分Plsrを付加し、最大パルス幅Plsmaxでの1回の噴射及び最小噴射パルス幅Plsmin+差分Plsrでの1回の噴射を少なくとも含むN回だけ分割噴射する。
例えば、n=3である場合、最大パルス幅Plsmaxによる分割噴射を1回、最小噴射パルス幅Plsminによる分割噴射を2回、最小噴射パルス幅Plsmin+差分Plsrのパルス幅による分割噴射を1回行わせる。
一方、(PULS−Plsmax)/Plsminの演算結果が自然数(0,1,2,3,…)であって、余りが出なかった場合には、Plsmax+Plsmin×nとして算出される分割噴射の各回におけるパルス幅の総和が、前記噴射パルス幅PULSに一致することになるので、最大パルス幅Plsmaxによる1回の分割噴射の他は、全て最小噴射パルス幅Plsminでの噴射をn回だけ行わせる。
ステップS204では、N回に分けて行われる分割噴射それぞれにおけるパルス幅の割り振り、即ち、最大パルス幅Plsmaxによる分割噴射による噴射を何番目に行わせ、最小噴射パルス幅Plsmin+差分Plsrのパルス幅による分割噴射を何番目に行わせるかを設定する。
前記差分Plsrが第3パルス幅に相当する。
まず、最大パルス幅Plsmaxによる分割噴射については、1回に噴射される燃料量が多く、また、付着面積が大きく比較的温度が低い部分にも付着するため、気化時間を長く確保することが望まれるので、噴射期間(全噴射回数)の前半において実行させるものとする。
本実施形態の場合、噴霧の中心軸は吸気バルブ6を指向し、吸気バルブ6は最も温度が高いが、吸気バルブ6から遠ざかるほど温度が低下するため、噴霧角θを大きくするほど、温度がより低いところまで燃料が付着することになり、温度が低いところに付着した燃料の気化には、より長い時間を要する。
そこで、N回の分割噴射のうち、パルス幅PlsNが比較的大きな噴射は、なるべく早い順番で行わせることが好ましく、少なくとも、噴射期間(全噴射回数)の前半に割り振るようにする。
また、最小噴射パルス幅Plsmin+差分Plsrのパルス幅も、最小噴射パルス幅Plsminでの噴射に比べて気化時間を長く確保することが望まれるため、少なくとも噴射期間(全噴射回数)の前半において実行させるものとする。
前記噴射期間(全噴射回数)の前半とは、1番目から「N/2+1」番目以下の順番までとし、例えば、N=5であれば、N/2+1=3.5(整数+0.5)であるから、1番目、2番目、3番目のいずれかにおいて最大パルス幅Plsmaxによる分割噴射を行わせるようにする。
換言すれば、N/2が整数であれば(Nが偶数であれば)、1番目からN/2+1番目までを前半と規定し、N/2が整数+0.5であれば(Nが奇数であれば)、1番目からN/2+0.5番目までを前半と規定する。
また、1番目からN/2番目までを前半とし、比較的大きなパルス幅の噴射がなるべく前に設定されることが好ましいから、例えばN=5であれば、1番目又は2番目において最大パルス幅による分割噴射を行わせるようにしても良い。
尚、噴射の回数で分割噴射の前半・後半を規定する代わりに、分割噴射の開始時期から分割噴射の終了時期までの期間で、開始時期からの時間又は開始時期からのクランク角で前半を規定することができる。
この場合、例えば分割噴射の開始や直前のインターバル期間が中間位置(前記噴射期間の50%)よりも前であれば、その分割噴射を前半での噴射と見なしたりすることができ、更に、中間位置で噴射される分割噴射パルスを前半での噴射パルスと見なすことができる。
ここで、噴射パルス幅PlsNが長いほど、より長い気化時間が要求されるので、噴射パルス幅PlsNが長いほど、より前の順番で分割噴射を行わせることがより好ましく、本実施形態では、最大パルス幅Plsmaxによる分割噴射を1番目に行わせ、差分Plsrが生じた場合には、最小噴射パルス幅Plsmin+差分Plsrのパルス幅による分割噴射を2番目に行わせて、3番目以降は最小噴射パルス幅Plsminでの分割噴射を行わせ、差分Plsrが生じなかった場合には、2番目以降は最小噴射パルス幅Plsminでの分割噴射を行わせるものとする。
即ち、上記のように、各分割噴射のパルス幅を設定した場合には、分割噴射の各噴射における噴射パルス幅が、噴射順の後になるほどより小さくなるように設定されることになる。
図8のタイムチャートは、1番目の分割噴射におけるパルス幅Pls1が最大パルス幅Plsmaxで、2番目の分割噴射におけるパルス幅Pls2から最後の分割噴射におけるパルス幅PlsNまでが、最小噴射パルス幅Plsminに設定される場合における噴射パルス信号の出力パターンを示すものであり、吸気バルブ6の開時期IVO以前に設定される噴射終了タイミングで、分割噴射の最後の噴射が終了するように、分割噴射の開始時期が可変に設定される。
ここで、吸気バルブ6の閉時期IVC以前に分割噴射を開始させると、噴射された燃料が前のサイクルでシリンダ内に吸引されてしまうことになるので、分割噴射の開始は、閉時期IVC以降に設定され、分割噴射は、吸気バルブ6の閉弁中(吸気行程の開始前、排気行程中)に行われるようになっている。
また、図9のタイムチャートは、1番目の分割噴射におけるパルス幅Pls1が最大パルス幅Plsmaxで、1番目の分割噴射におけるパルス幅Pls2が最小噴射パルス幅Plsmin+差分Plsrのパルス幅で、3番目の分割噴射におけるパルス幅Pls3から最後の分割噴射におけるパルス幅PlsNまでが、最小噴射パルス幅Plsminに設定される場合における噴射パルス信号の出力パターンを示す。
前記最大パルス幅Plsmaxによる分割噴射は、前半のなるべく早い順で行わせることが好ましいが、前記最大パルス幅Plsmaxによる分割噴射を必ずしも1番目に行わせる必要はない。
例えば、最小噴射パルス幅Plsmin或いは最小噴射パルス幅Plsmin+差分Plsrでの分割噴射を1番目に行わせ、最大パルス幅Plsmaxによる分割噴射を2番目に行わせ、3番目以降では最小噴射パルス幅Plsminで分割噴射させることができ、また、最小噴射パルス幅Plsminでの分割噴射を1番目に行わせ、最大パルス幅Plsmaxによる分割噴射を2番目に行わせ、最小噴射パルス幅Plsmin+差分Plsrによる分割噴射を3番目に行わせ、4番目以降では最小噴射パルス幅Plsminで分割噴射させることができる。
即ち、最小噴射パルス幅Plsminよりも大きなパルス幅での分割噴射を前半に行わせるようにすればよいが、噴射パルス幅が大きく噴射量が多いほど、気化時間を長くとることが望まれるため、噴射パルス幅の大きな分割噴射ほど、より早い順番で行わせることが好ましい。
図10のタイムチャートは、最大パルス幅Plsmaxによる分割噴射を2番目に行わせ、2番目以外の順番では、全て最小噴射パルス幅Plsminで分割噴射を行わせる場合における噴射パルス信号の出力パターンを示す。
尚、前記最小噴射パルス幅Plsminに代えて、最小噴射パルス幅Plsminよりも大きく最大パルス幅Plsmaxよりも小さい任意のパルス幅を用いることができ、この場合、前記の任意のパルス幅に満たないパルス幅分だけ、分割噴射の総パルス幅が噴射パルス幅PULSよりも少ない場合であって、不足分が最小噴射パルス幅Plsmin以上であれば、不足分のパルス幅で噴射する分割噴射を余分に1回行わせることで、分割噴射の総パルス幅を噴射パルス幅PULSに一致させることができる。
また、分割噴射の総パルス幅が噴射パルス幅PULSよりも少ない場合であって、不足分が前記任意のパルス幅未満の場合、前記不足分を前記任意のパルス幅に付加し、最大パルス幅Plsmaxによる噴射と、任意のパルス幅+不足分による噴射と、任意のパルス幅による複数回の噴射とで、分割噴射を行わせることができる。
上記のように、パルス幅の大きな分割噴射を噴射期間の前半に行わせるようにすれば、大きな噴霧角によって燃料が付着する面積が広く、付着燃料の膜厚を平均的に薄くすることができ、かつ、気化時間を長くすることができる。
従って、大きなパルス幅で噴射させても燃料の気化を向上させることができる。
また、排気性能、特にHC(ハイドロカーボン)の排出を低減することができる。
分割噴射において、短い噴射パルス幅での噴射を繰り返すようにすると、噴射間隔の回数が多くなる分だけ分割噴射の開始から終了までが長くなり、噴射期間内に噴射を完了させることが難しくなる。また、吸気バルブ6付近に燃料が付着することになって、周囲の吸気通路内壁の温度を利用しての燃料気化を行えず、効率的に燃料を気化させることが難しい。
そこで、本実施形態では、長いパルス幅での分割噴射を、分割噴射期間の前半、より好ましくは、パルス幅が長いほど早い順番で行わせることで、付着燃料の気化を向上させることができるようにしている。また、噴射期間を短縮することが可能となり、噴射期間内に噴射を完了させることができる。
また、長いパルス幅での分割噴射を繰り返すと、広い範囲への付着が繰り返され、付着燃料が気化しないまま、次の噴射によって燃料が更に付着する結果となってしまうが、本実施形態では、パルス幅を段階的に短くすることにより付着領域が段階的に狭まり、前回の付着領域のうちの温度がより高い領域に燃料が付着することになるので、比較的温度が低い領域には重ねて燃料が付着することが抑制されるので、温度が低い領域に付着した燃料の気化時間を確保できることになる。
また、分割噴射の後半及び前半の一部では、短いパルス幅が設定されることで、噴霧角θが狭くなって、吸気バルブ6を指向して断続的に噴射されることになるので、吸気バルブ6に到達するまでの比較的長い輸送時間において気化が促進され、また、吸気バルブ6は、上流側の吸気通路(吸気ポート5)に比較して温度が高く、かつ、温度上昇も速いので、吸気バルブ6に燃料を付着させることで、気化性能を向上させることができる。
また、短いパルス幅での噴射を複数回繰り返すから、吸気バルブ6に付着した燃料の気化が進んでから次の噴射が行われるようになり、吸気バルブ6に対する燃料の付着量を少なく(膜厚を薄く)でき、狭い噴霧角で連続的に噴射させる場合よりも、気化性能を向上させることができる。
上記のようにして、分割噴射の回数N(分割数)と、各分割噴射におけるパルス幅PlsNとを設定すると、次のステップS300では、分割噴射の間隔(周期)Cyの設定を行う。
前記分割噴射間隔Cyとは、前回の分割噴射の終了から次の分割噴射を開始させるまでの時間である。
上記の分割噴射間隔Cyの設定処理は、図11のフローチャートに詳細に示してある。
ステップS301では、まず、分割噴射の1番目と2番目との間隔Cy1を、予め記憶されている最小間隔Cyminに設定する。
前記最小間隔Cyminは、燃料噴射弁8を閉弁させ、再度開弁させるまでに要する最小時間であって、燃料噴射弁8の種類・仕様毎に定められる固定値であり、この最小間隔Cyminを下回る噴射間隔CyMを設定すると、燃料噴射弁8が完全に閉弁しないまま次の噴射(開弁動作)が開始されることになり、燃料の計量精度が低下してしまうと共に、燃料が連続的に噴射されることになり、分割噴射による気化性能の改善効果が得られなくなってしまう。
分割噴射の1番目と2番目との間隔を最小間隔Cyminに設定すると、次回以降の間隔は、前回値Cy(M−1)に係数CNE(CNE>1.0)を乗算して設定され、噴射順が後になるほど噴射間隔CyMがより長く設定されるようにしてある。
前記係数CNEは一定値であっても良いが、そのときの機関回転速度NEに応じて変更することが好ましく、機関回転速度NEが高くなるほど、分割噴射を行わせることができる期間が短くなることから、機関回転速度NEが高くなるほど係数CNEを小さくして、より短い間隔で分割噴射されるようにする。
これにより、吸気バルブ6が閉弁状態を維持する時間が長くなる低回転時には、なるべく噴射間隔Cyを長くして、気化時間を最大限に長く確保できる一方、吸気バルブ6が閉弁状態を維持する時間が短くなる高回転時には、分割噴射の開始から終了までの時間が、吸気バルブ6が閉弁状態を維持する時間を超えて長くなることを抑制でき、結果、吸気バルブ6の閉弁中での分割噴射を、なるべく噴射間隔Cyを長くして行わせることができる。
尚、前記係数CNEを、吸入空気流量や吸気管負圧や燃料噴射パルス幅PULSなどで代表される機関負荷や、冷却水温度TWなどで代表される機関温度に基づいて可変に設定させることができる。
高負荷運転時には、噴射させる必要がある燃料量が多くなる一方で、吸気ポートなどの温度が高くなるから、気化時間の確保よりも噴射間隔CyMを短くして必要燃料量を噴射期間内(吸気バルブ6の閉弁中)で噴射させることが優先されるので、高負荷ほど係数CNEを小さくして、分割噴射間隔の増大変化代を縮小させるようにする。
また、機関温度が低いと、それだけ燃料が気化し難くなり、気化時間をより長くする必要があるので、機関温度が低いほど係数CNEを大きくして、分割噴射間隔の増大変化代を拡大するようにする。
尚、機関回転速度NE、機関負荷、機関温度のうちのいずれか1つに基づいて、係数CNEを設定させることができる他、機関回転速度NE、機関負荷、機関温度のうちの2つ以上を組み合わせて係数CNEを設定させることができる。
上記のように、分割噴射によって燃料噴射を周期的に行わせる場合、噴射された燃料が吸気管や吸気バルブなどに付着し、付着部位の熱を奪って気化し、気化に伴う吸気管や吸気バルブなどの温度低下は、シリンダにおける燃焼熱によってある程度は回復する。しかし、短い周期のまま燃料噴射を繰り返すと、吸気管や吸気バルブの温度が充分に回復されないで徐々に温度低下し、燃料を充分に気化させることができなくなってしまう。
そこで、分割噴射の後期ほど噴射間隔CyMを長くし、長い噴射間隔CyMの間で吸気管や吸気バルブなどの温度の回復を図ることで、吸気管や吸気バルブの温度低下を抑制し、また、温度低下の回復を早め、吸気管や吸気バルブの温度を、気化性能を確保できる温度以上に維持できるようにする。
また、短い周期のまま燃料噴射を繰り返すと、先に噴射され吸気管や吸気バルブに付着した燃料が充分に気化しないまま、次の分割噴射がなされて、吸気管や吸気バルブに付着している燃料の上から更に燃料が付着するようになってしまい、吸気管や吸気バルブに付着する燃料の膜厚が徐々に厚くなり、気化量が低下してしまう。
そこで、膜厚が徐々に厚くなる傾向となる噴射期間の後半ほど、噴射の間隔を長くすることで、先に付着している燃料の気化時間を長く確保し、先に噴射され吸気管や吸気バルブに付着している燃料が充分に気化し、付着燃料の膜厚が薄くなってから、次の分割噴射を行わせるようにすることで、付着燃料の膜厚の増大を抑制し、充分な気化量を維持できるようにする。
ここで、分割噴射の前半から長い周期で噴射を行わせれば、噴射間隔CyMの間で、吸気管や吸気バルブなどの温度を充分に回復させることができ、また、付着燃料を気化させて付着燃料の膜厚を薄く維持できるが、その場合、全体の噴射期間が過剰に長くなってしまうので、全体の噴射期間をなるべく短くしつつ、気化性能を維持できるように、噴射期間の後半で噴射間隔CyMを長くする。
図12のタイムチャートは、噴射順が後になるほど噴射間隔CyMがより長く設定される場合における噴射パルス信号の出力パターンを示す。
図12(A)は、1番目の分割噴射のパルス幅を最大パルス幅Plsmaxとし、2番目以降の分割噴射のパルス幅を最小パルス幅Plsminとし、かつ、噴射順が後になるほど噴射間隔CyMがより長く設定されるようにした噴射パルス信号の出力パターンを示す。
図12(B)は、1番目の分割噴射のパルス幅を最大パルス幅Plsmaxとし、2番目の分割噴射のパルス幅を最小パルス幅Plsmin+差分Plsrとし、3番目以降の分割噴射のパルス幅を最小パルス幅Plsminとし、かつ、噴射順が後になるほど噴射間隔CyMがより長く設定されるようにした噴射パルス信号の出力パターンを示す。
図12(C)は、2番目の分割噴射のパルス幅を最大パルス幅Plsmaxとし、1番目及び3番目以降の分割噴射のパルス幅を最小パルス幅Plsminとし、かつ、噴射順が後になるほど噴射間隔CyMがより長く設定されるようにした噴射パルス信号の出力パターンを示す。
尚、3番目以降の前半の順番において最大パルス幅Plsmaxでの噴射を行わせ、それ以外では、最大パルス幅Plsmax未満のパルス幅で分割噴射を行わせる場合も、噴射順が後になるほど噴射間隔CyMがより長く設定することで、同様な効果が得られる。
また、上記では、噴射期間の後半ほど、換言すれば、分割噴射回数の積算数が増えるほど、噴射間隔CyMをより長く設定したが、例えば、噴射期間の前半における噴射間隔CyMを一定とし、噴射期間の後半における噴射間隔CyMを前半よりも長い一定間隔或いは前半よりも長く徐々に増大する噴射間隔CyMとすることができ、更には、噴射期間の前半において、前回よりも短くかつ後半での噴射間隔CyMよりも短い噴射間隔CyMを設定させることができ、噴射期間の前半における少なくとも1つの噴射間隔CyMを、噴射期間の後半における噴射間隔CyMよりも短く設定すればよい。
図13のタイムチャートは、最初の噴射間隔から複数回連続して最小間隔Cyminに設定し、その後、最小間隔Cyminから段階的に噴射間隔Cyを増大変化させる場合の噴射パルス信号の出力パターンを示す。
図13(A)は、1番目の分割噴射のパルス幅を最大パルス幅Plsmaxとし、2番目以降の分割噴射のパルス幅を最小パルス幅Plsminとし、かつ、最初の噴射間隔から複数回連続して最小間隔Cyminに設定し、その後、最小間隔Cyminから段階的に噴射間隔Cyを増大変化させるようにした噴射パルス信号の出力パターンを示す。
図13(B)は、1番目の分割噴射のパルス幅を最大パルス幅Plsmaxとし、2番目の分割噴射のパルス幅を最小パルス幅Plsmin+差分Plsrとし、3番目以降の分割噴射のパルス幅を最小パルス幅Plsminとし、かつ、最初の噴射間隔から複数回連続して最小間隔Cyminに設定し、その後、最小間隔Cyminから段階的に噴射間隔Cyを増大変化させるようにした噴射パルス信号の出力パターンを示す。
図13(C)は、2番目の分割噴射のパルス幅を最大パルス幅Plsmaxとし、1番目及び3番目以降の分割噴射のパルス幅を最小パルス幅Plsminとし、かつ、最初の噴射間隔から複数回連続して最小間隔Cyminに設定し、その後、最小間隔Cyminから段階的に噴射間隔Cyを増大変化させるようにした噴射パルス信号の出力パターンを示す。
上記のようにして、図2のフローチャートにおけるステップS200で分割噴射における複数回の噴射それぞれでの噴射パルス幅を演算し、更に、ステップS300で噴射間隔(分割噴射の周期)CyMを演算すると、次のステップS400では、分割噴射の期間内で噴射を終わらせることができるように、分割噴射の各噴射における噴射パルス幅PlsN、及び、噴射間隔CyM(噴射周期)を補正する。
上記の噴射パルス幅PlsN、及び、噴射間隔CyMの補正処理については、図14のフローチャートに従って詳細に説明する。
図14のフローチャートにおいて、ステップS401では、分割噴射の開始限界タイミングから終了限界タイミングまでの時間である許容噴射時間TIMEINJを演算する。
前記開始限界タイミングは、分割噴射の開始が許容される最も早い時期であり、例えば吸気バルブ6の閉時期IVC又は閉時期IVC直後のクランク角位置に設定される。
更に、前記終了限界タイミングは、分割噴射の終了が許容される最も遅い時期であり、例えば、吸気バルブ6の開時期IVO又は開時期IVO直前に設定される。
即ち、本実施形態では、吸気バルブ6の閉弁中に燃料噴射弁8による分割噴射を行わせるようになっており、開始限界タイミングから終了限界タイミングまでのクランク角度(分割噴射許容角度)を記憶しておき、前記クランク角度をそのときの機関回転速度NEに基づいて時間に換算して、前記許容噴射時間TIMEINJを求めることができる。
更に、前記終了限界タイミングを、分割噴射の最後に噴射された燃料が吸気バルブ6の開時期IVO若しくは開時期IVO直前に吸気バルブ6に到達する時期として設定することができる。
燃料噴射弁8から吸気バルブ6までの燃料の輸送時間は、そのときの機関回転速度NEに応じて異なるので、例えば、吸気バルブ6の開時期IVOから、そのときの機関回転速度NEに基づいて求めた燃料の輸送時間だけ前のタイミングを、前記終了限界タイミングとすることができる。
また、吸気バルブ6の開時期IVO及び/又は閉時期IVCを可変する可変動弁機構を備える場合には、前記開始限界タイミング及び/又は終了限界タイミングを、前記可変動弁機構による開時期IVO及び/又は閉時期IVCの変更に応じて設定すればよい。
更に、燃料の気化特性を左右する機関温度(冷却水温度TW)に応じて前記開始限界タイミング及び/又は終了限界タイミングを設定させることができる。
また、本実施形態における開時期IVOは、吸気バルブ6が閉弁状態(リフト量=0の状態)から開弁し始めた時点であり、閉時期IVCは、吸気バルブ6が開弁している(リフト量≠0の状態)から閉弁状態(リフト量=0の状態)になった時点とするが、リフト量が増大変化に伴って閾値(リフト量零<閾値<最大リフト量)を横切った時点を開時期IVOとし、リフト量が減少変化に伴って前記閾値を横切った時点を閉時期IVCとすることができる。
次のステップS402では、前記分割噴射の各噴射における噴射パルス幅PlsNの積算値ΣPlsN(1番目からN番目までの各噴射パルス幅PlsNの総和)と、噴射間隔CyMの積算値ΣCyM(1番目からM番目までの各噴射間隔CyMの総和)とを加算することで、ステップS200及びステップS300で設定された噴射パルス幅PlsN及び噴射間隔CyMで、分割噴射に要する時間(分割噴射の1番目の噴射開始から最後のN番目の噴射終了までの時間であり、以下では、総分割噴射時間と称する)を求め、この総分割噴射時間(総分割噴射時間=ΣPlsN+ΣCyM)と前記許容噴射時間TIMEINJとを比較する。
ここで、前記総分割噴射時間が許容噴射時間TIMEINJ以下であれば、ステップS200及びステップS300での設定のまま、分割噴射を許容噴射時間TIMEINJ内で行わせることができるので、そのまま、ステップS415へ進んで、前記終了限界タイミングで分割噴射を終了させるべく、分割噴射開始タイミングを可変に設定する。
即ち、終了限界タイミングから前記総分割噴射時間だけ前の時点を、分割噴射の開始タイミングに設定すれば、吸気バルブ6の閉時期IVC或いは閉時期IVC直前の終了限界タイミングで、分割噴射が終了することになり、終了限界タイミングまでに噴射され気化された燃料が、噴射終了直後に吸気バルブ6が開くことで、空気と共にシリンダ内に吸引される。
一方、総分割噴射時間が許容噴射時間TIMEINJを超えている場合には、ステップS200及びステップS300で設定した噴射パルス幅PlsN及び噴射間隔CyMに従って分割噴射を実行させると、たとえ開始限界タイミングから分割噴射を開始させたとしても分割噴射の終了が終了限界タイミングを超え、また、終了限界タイミングで分割噴射を終了させるべく噴射開始タイミングを設定すると、その噴射開始タイミングは開始限界タイミングよりも早い時期になってしまう。
換言すれば、総分割噴射時間が許容噴射時間TIMEINJを超える場合には、吸気バルブ6の閉弁中に、分割噴射を開始させかつ終了させることができず、開始時期及び/又は終了時期が、吸気バルブ6の開期間にずれ込み、前のサイクルで燃料が吸引されてしまったり、充分な気化時間を確保できないまま直接的に燃料がシリンダ内に吸引されたりする。
そこで、総分割噴射時間が許容噴射時間TIMEINJを超えている場合には、ステップS403以降へ進み、総分割噴射時間が許容噴射時間TIMEINJ以下となるように、噴射パルス幅PlsN及び/又は噴射間隔CyMを補正する。
ステップS403では、噴射間隔CyMの全てを最小値Cyminとした場合の総分割噴射時間(総分割噴射時間=ΣPlsN+ΣCyminM)と前記許容噴射時間TIMEINJとを比較させる。
即ち、噴射間隔CyMの全てを最小値Cyminとすれば、噴射間隔CyMが最小値Cyminを超える分だけ総分割噴射時間がより短くなるので、噴射パルス幅PlsN及び分割数Nを変えずに、噴射間隔CyMを全て最小値Cyminにしたと仮定した場合に、総分割噴射時間が許容噴射時間TIMEINJ以下になるか否かを確かめる。
そして、噴射パルス幅PlsN及び分割数Nを変えずに、噴射間隔CyMの全てを最小値Cyminとした場合の総分割噴射時間が、許容噴射時間TIMEINJ以下になる場合には、ステップS404へ進む。
ステップS404〜ステップS406では、2番目以降の噴射間隔CyMのうち、どこまで最小値Cyminに切り換えれば、総分割噴射時間が許容噴射時間TIMEINJ以下になるかを判断する。
ステップS402では、ステップS200及びステップS300における設定では総分割噴射時間が許容噴射時間TIMEINJを超えると判断され、ステップS403では、噴射間隔CyMの全てを最小値Cyminにすれば、総分割噴射時間が許容噴射時間TIMEINJ以下になることが確かめられているものの、最小値Cyminを超える噴射間隔CyMのうちの1つだけを最小値Cyminに切り換えることで総分割噴射時間が許容噴射時間TIMEINJ以下になる可能性がある一方で、噴射間隔CyMの全てを最小値Cyminに切り換えないと、総分割噴射時間が許容噴射時間TIMEINJ以下にならない場合もあり得る。
そこで、ステップS404〜ステップS406では、最小値Cyminを超える噴射間隔CyMのうち、最小値Cyminに切り換えるものを1つずつ増やしていって、総分割噴射時間が許容噴射時間TIMEINJ以下になる、噴射間隔CyMの最小値Cyminへの切り換え数の最小を求める。
本実施形態の場合、分割噴射の1番目と2番目との噴射間隔Cy1が最小値Cyminに設定されるので、分割噴射の2番目と3番目との噴射間隔Cy2以降から、最小値Cyminよりも長い噴射間隔CyMに設定され、分割噴射の後半で噴射間隔CyMを長くしたいという要求がある。
そこで、ステップS404では、まず、噴射間隔Cy2のみを最小値Cyminに切り換える設定を行い、次のステップS405では、噴射間隔Cy2を最小値Cyminに切り換えた結果としての総分割噴射時間が、許容噴射時間TIMEINJ以下になったか否かを判断する。
ステップS405で、噴射間隔Cy2のみを最小値Cyminに切り換えた結果としての総分割噴射時間が、許容噴射時間TIMEINJを超えていると判断された場合には、更に、最小値Cyminに切り換える噴射間隔CyMの数を増やさないと、総分割噴射時間が、許容噴射時間TIMEINJ以下にならないので、ステップS406へ進み、最小値Cyminに切り換える噴射間隔CyMの順番Mを1つ増やしてから、ステップS404へ戻るようにして、噴射間隔Cy2の最小値Cyminへの切り換えに加えて、次の噴射間隔Cy3も最小値Cyminに切り換えるようにする。
そして、ステップS405では、噴射間隔Cy2及び噴射間隔Cy3を共に最小値Cyminに切り換えた場合の総分割噴射時間が、許容噴射時間TIMEINJ以下であるか否かを判断する。
上記のような処理を繰り返し、最小で、噴射間隔Cy2を最小値Cyminに切り換えることで、総分割噴射時間が許容噴射時間TIMEINJ以下になり、最大では、噴射間隔CyMを全て最小値Cyminに切り換えることで、総分割噴射時間が許容噴射時間TIMEINJ以下になり、その時点でステップS415に進んで、総分割噴射時間が許容噴射時間TIMEINJ以下になった時点の噴射間隔CyMの設定で、分割噴射の終了が終了限界タイミングになるように、分割噴射の開始タイミングを決定する。
図15のタイムチャートは、噴射間隔CyMを全て最小値Cyminに切り換えた場合の噴射パルス信号の出力パターンを示す。
図15(A)は、1番目の分割噴射のパルス幅を最大パルス幅Plsmaxとし、2番目以降の分割噴射のパルス幅を最小パルス幅Plsminとし、かつ、噴射間隔CyMを全て最小値Cyminに設定した噴射パルス信号の出力パターンを示す。
図15(B)は、1番目の分割噴射のパルス幅を最大パルス幅Plsmaxとし、2番目の分割噴射のパルス幅を最小パルス幅Plsmin+差分Plsrとし、3番目以降の分割噴射のパルス幅を最小パルス幅Plsminとし、かつ、噴射間隔CyMを全て最小値Cyminに設定した噴射パルス信号の出力パターンを示す。
図15(C)は、2番目の分割噴射のパルス幅を最大パルス幅Plsmaxとし、1番目及び3番目以降の分割噴射のパルス幅を最小パルス幅Plsminとし、かつ、噴射間隔CyMを全て最小値Cyminに設定した噴射パルス信号の出力パターンを示す。
尚、噴射間隔CyMの設定と、各分割噴射における噴射パターンとは、適宜組み合わせることが可能であり、図12、図13、図15に示したものに限定されない。
一方、ステップS403で、噴射間隔CyMを全て最小値Cyminに切り換えても、総分割噴射時間が許容噴射時間TIMEINJを超えると判断された場合には、噴射間隔CyMの補正のみでは、総分割噴射時間が許容噴射時間TIMEINJ以下にならないので、まず、ステップS407で噴射間隔CyMを全て最小値Cyminに切り換える設定を行ってから、ステップS408へ進む。
ステップS407で噴射間隔CyMを全て最小値Cyminに切り換える設定を行った後は、各噴射パルス幅PlsNや噴射回数Nが変更されるとしても、噴射間隔CyMは全て最小値Cyminに固定されるものとする。
ステップS408では、全ての分割噴射における噴射パルス幅PlsNを最大パルス幅Plsmaxとし、かつ、噴射間隔CyMを全て最小値Cyminとした場合に、総分割噴射時間が許容噴射時間TIMEINJ以下になるか否かを判断する。
即ち、燃料噴射パルス幅PULSを最大パルス幅Plsmaxで除算した商を噴射回数nとし、余りのパルス幅Plsrが最小噴射パルス幅Plsmin以上であれば、余りのパルス幅Plsrによる噴射を余分に1回行わせるものとして、分割噴射の回数NをN=n+1とし、余りのパルス幅Plsrが最小噴射パルス幅Plsmin未満であれば、分割噴射の初回の噴射パルス幅を、最大パルス幅Plsmax+余りパルス幅Plsrとして、分割噴射の回数NをN=nとする。
更に、上記のようにして決定した分割数Nにおけるパルス幅Plsmax又はパルス幅Plsmax+Plsrでの噴射を、噴射間隔CyMを全て最小値Cyminとして行わせるものとして総分割噴射時間を求め、該総分割噴射時間と許容噴射時間TIMEINJとをステップS408で比較させる。
ステップS408で、噴射パルス幅を最大パルス幅Plsmax又はパルス幅Plsmax+Plsrとし、かつ、噴射間隔CyMを全て最小値Cyminとした場合の総分割噴射時間が許容噴射時間TIMEINJを越えると判断された場合には、噴射パルス幅を最大パルス幅Plsmaxよりも長くし、かつ、噴射回数Nを更に減らす変更を行わないと、総分割噴射時間を許容噴射時間TIMEINJ以下にできないので、ステップS409へ進む。
ステップS408からステップS409へ進んだ、ステップS409での初回処理時には、全ての分割噴射における噴射パルス幅を最大パルス幅Plsmaxとし、かつ、噴射間隔CyMを全て最小値Cyminとした場合に、許容噴射時間TIMEINJを越えて出力される噴射パルス幅の総和である余剰パルス幅PlsRを、分割噴射の1番目のパルス幅Pls1に付加し、1番目の噴射パルス幅Pls1を最大パルス幅Plsmaxよりも余剰パルス幅PlsRだけ増大させる。
そして、次のステップS410では、分割噴射の1番目の噴射パルス幅Pls1を、ステップS409で増大補正されたパルス幅とし、残りの分割噴射を最大パルス幅Plsmaxで行わせるものとし、更に、全ての噴射間隔CyMを最小値Cyminとする場合の総分割噴射時間を求め、この総分割噴射時間が許容噴射時間TIMEINJ以下になっているか否かを判断する。
そして、総分割噴射時間が許容噴射時間TIMEINJを越えている場合には、再度ステップS409へ戻り、1番目の噴射パルス幅Pls1を更に余剰パルス幅PlsRだけ増大させる処理を行わせ、再度、1番目の噴射パルス幅Pls1を増大補正後の値とし、後の分割噴射のパルス幅を最大パルス幅Plsmaxとして分割噴射させる場合の総分割噴射時間が許容噴射時間TIMEINJ以下になったか否かをステップS410で判断させる。
上記のように、1番目の噴射パルス幅Pls1を、余剰パルス幅PlsRだけ増大させる処理を繰り返すと、図16に示すように、噴射回数が減じられ、最終的には、総分割噴射時間を許容噴射時間TIMEINJ以下にまで減らせることができる。
図16のタイムチャートにおいて、(A)では、最大パルス幅Plsmaxによる分割噴射を、全ての噴射間隔CyMを最小値Cyminとして5回行わせることで、噴射パルス幅の総和が燃料噴射パルス幅PULSになっているが、総分割噴射時間が許容噴射時間TIMEINJを超えており、許容噴射時間TIMEINJを超える範囲での噴射パルス幅を余剰パルス幅PlsRとする。
そして、(B)では、(A)での余剰パルス幅PlsRを、1番目の分割噴射のパルス幅Pls1に加算したが、再度、許容噴射時間TIMEINJを超える領域での余剰パルス幅PlsRが発生し、(C)では、(B)での余剰パルス幅PlsRを更に1番目の分割噴射のパルス幅Pls1に加算する処理を行っている。
即ち、図16に示す例では、(A)の5番目の噴射パルス幅Pls5の全てを1番目の分割噴射のパルス幅Pls1に加算した結果、4回の噴射での総和が燃料噴射パルス幅PULSになり、この4回の分割噴射での総分割噴射時間が許容噴射時間TIMEINJ以下に収まったので、(C)の時点で補正処理の繰り返しを停止、(C)に示す分割噴射パターンを確定させる。
このように、分割噴射における各噴射パルス幅PlsNを全て最大パルス幅Plsmaxとしても、総分割噴射時間が許容噴射時間TIMEINJを越える場合には、許容噴射時間TIMEINJを越えて出力される噴射パルス幅を、1番目のパルス幅Pls1に付加する処理を繰り返すこことで、1番目のパルス幅Pls1を増大補正し、該補正によって分割数Nの低下を図ることで、総分割噴射時間が許容噴射時間TIMEINJ以下になるようにする。
ステップS410で、総分割噴射時間を許容噴射時間TIMEINJ以下であると判断されるようになると、ステップS415へ進み、それまでに補正設定された各噴射パルスPlsNでの噴射を、最小値Cyminの噴射間隔CyMで出力させる場合の総分割噴射時間で、前記終了限界タイミングで分割噴射が終了するように、分割噴射開始タイミングを可変に設定する。
一方、ステップS408で、全ての分割噴射におけるパルス幅を最大パルス幅Plsmaxとし、かつ、噴射間隔CyMを全て最小値Cyminとした場合の総分割噴射時間が許容噴射時間TIMEINJ以下になる判断された場合には、ステップS411へ進む。
ステップS411へ進む場合、ステップS200で演算した各分割噴射のパルス幅PlsNについて、最大パルス幅Plsmaxで分割噴射する回数を最小で1つ増やすことで総分割噴射時間が許容噴射時間TIMEINJ以下となる可能性がある一方で、全ての噴射パルス幅PlsNを最大パルス幅Plsmaxに切り換える必要がある場合があり得る。
ステップS411では、許容噴射時間TIMEINJを越えて出力されることになる噴射パルス幅の総和である余剰パルス幅PlsRを算出する。
ステップS411に進んだ初回においては、ステップS200で設定した各噴射パルス幅PlsNでの噴射を、全て最小値Cyminの噴射間隔CyM毎に行わせた場合に、許容噴射時間TIMEINJを越えて出力されることになる噴射パルス幅の総和を余剰パルス幅PlsRとして算出する。
次のステップS412では、噴射順Nの初期値を2とし、最大パルス幅PlsmaxからN番目の噴射パルス幅PlsNを減算した値が、前記余剰パルス幅PlsRよりも大きいか否か、換言すれば、噴射順Nにおける噴射パルス幅PlsNに余剰パルス幅PlsRを加算しても、最大パルス幅Plsmax未満となるかを判断する。
従って、ステップS411から初めてステップS412に進んだ場合には、最大パルス幅Plsmaxから2番目の噴射パルス幅Pls2を減算した値が余剰パルス幅PlsRよりも大きいか否かを判断することになり、ステップS411〜ステップS413の処理が繰り返される毎に、最大パルス幅Plsmaxから減算するパルス幅PlsNが、2番目のパルス幅Pls1、3番目のパルス幅Pls3、4番目のパルス幅Pls4と順番に切り換えられる。
ここで、最大パルス幅PlsmaxからN番目の噴射パルス幅PlsNを減算した値が、前記余剰パルス幅PlsR以下であると判断された場合、即ち、噴射順Nにおける噴射パルス幅PlsNに余剰パルス幅PlsRを加算すると、最大パルス幅Plsmax以上になる場合には、ステップS413へ進む。
ステップS413では、N番目の噴射パルス幅PlsNを最大パルス幅Plsmaxに変更する処理を行ったのち、次の噴射順の分割噴射について処理を行わせるべく、噴射順Nを1つ大きくしてから、ステップS411へ戻る。
ステップS411に戻ると、最大パルス幅Plsmaxでの噴射回数が増大された状態での各分割噴射それぞれでの噴射パルス幅PlsN及び噴射回数Nを計算し直して総分割噴射時間を求め、この総分割噴射時間と許容噴射時間TIMEINJとを比較して、再度、余剰パルス幅PlsRを算出する。
そして、最大パルス幅Plsmaxでの噴射回数が増大させていった結果、ステップS412で、最大パルス幅PlsmaxからN番目の噴射パルス幅PlsNを減算した値が、前記余剰パルス幅PlsRよりも大きい、即ち、噴射順Nにおける噴射パルス幅PlsNに余剰パルス幅PlsRを加算しても最大パルス幅Plsmax未満となると判断されるようになると、ステップS414へ進む。
ステップS414では、噴射順Nにおける噴射パルス幅PlsNに余剰パルス幅PlsRを加算して、ステップS415へ進む。
そして、ステップS415では、ステップS411〜414での補正設定により確定された各噴射パルス幅PlsN及び噴射回数Nによる分割噴射を、前記終了限界タイミングで終了させるべく、分割噴射開始タイミングを可変に設定する。
上記のように、ステップS411〜ステップS413の処理では、噴射パルス幅PlsNを噴射順の早い方から順次最大パルス幅Plsmaxに切り換えていって、最大パルス幅Plsmaxへの切り換え数が最小で、総分割噴射時間が許容噴射時間TIMEINJ以下になるようにするので、噴射回数が増えるに従って噴射パルス幅が増えるように分割噴射を行わせることができ、燃料噴射パルス幅PULS(燃料噴射量)が多い場合にも気化性能を維持できる。
図17のタイムチャートは、ステップS411〜ステップS414の処理によって噴射パルス幅PlsN及び噴射回数Nが補正される例を示す。
図17の(A)は、ステップS200で設定された噴射パルス幅PlsN及び噴射回数Nによる分割噴射を、最小値Cyminの噴射間隔CyMで出力させる場合の噴射パルス信号を示し、許容噴射時間TIMEINJを超えて出力されるパルス幅が前記余剰パルス幅PlsRとなる。
図17の(B)は、前記余剰パルス幅PlsRを2番目の噴射パルス幅Pls2に加算した場合に、加算結果が最大パルス幅Plsmax以上になることから、2番目の噴射パルス幅Pls2を最大パルス幅Plsmaxに置き換えた状態を示し、ここでも、余剰パルス幅PlsRが発生している。
そこで、前記余剰パルス幅PlsRを3番目の噴射パルス幅Pls3に加算した場合に、加算結果が最大パルス幅Plsmax以上になるか否かを判断し、加算結果が最大パルス幅Plsmax以上になることから、図17の(C)に示すように、3番目の噴射パルス幅Pls3も最大パルス幅Plsmaxに置き換えている。
更に、図17の(C)に示すように、1番目から3番目までを最大パルス幅Plsmaxとする設定を行っても、許容噴射時間TIMEINJを超えて出力される余剰パルス幅PlsRが発生しているため、今度は、4番目の噴射パルス幅Pls4に余剰パルス幅PlsRを加算した結果が、最大パルス幅Plsmax以上であるか否かを判断するが、4番目の噴射パルス幅Pls4に余剰パルス幅PlsRを加算した結果が、最大パルス幅Plsmax未満となることから、図17の(D)では、4番目の噴射パルス幅Pls4に余剰パルス幅PlsRを加算する補正を行い、その結果、総分割噴射時間が許容噴射時間TIMEINJ以下に収まるようになって、補正処理が完了する。
尚、ステップS411〜ステップS413の処理は、最大パルス幅Plsmaxに切り換える分割噴射を噴射順の早い方から順次増やしていって、その都度、総分割噴射時間が許容噴射時間TIMEINJ以下に収まるようになったか否かを判断して、更に、最大パルス幅Plsmaxに切り換える分割噴射を増やすか否かを判断していることになる。
上記のように、ステップS400では、総分割噴射時間が許容噴射時間TIMEINJ以下に収まるように最小限の補正を施し、分割噴射の順番が早いほど大きなパルス幅で、かつ、短い間隔での噴射を行わせる噴射パターンをなるべく維持するようにする。
従って、総分割噴射時間を許容噴射時間TIMEINJ以内としつつ、分割噴射による気化性能を向上させることができる。
総分割噴射時間が許容噴射時間TIMEINJ以下となる噴射パルス幅PlsN,分割噴射回数N及び噴射間隔CyMが確定すると、ステップS500では、確定された分割パターンの噴射パルス信号を、終了限界タイミングで分割噴射が終了するように、各燃料噴射弁8に出力する。
尚、本実施形態では、終了限界タイミングで分割噴射を終了させるべく、終了限界タイミングから総分割噴射時間だけ前の時点を分割噴射開始タイミングとして定めるようにしたが、一定の分割噴射開始タイミングから分割噴射を開始させ、総分割噴射時間の差によって分割噴射の終了タイミングが異なるように、分割噴射を行わせることができる。
また、上記実施形態による分割噴射制御は、燃料の気化性能、または、排気性能を可及的に高めることができるものであり、特に、燃料が気化し難い運転条件、また、排気性能が低下、ハイドロカーボンが排出されやすい運転条件で効果を発揮する。
以上のように、本実施形態では、排気性能を向上させることができ、また、ハイドロカーボンの排出を抑制することができる。
従って、燃料が気化し難い運転条件、具体的には、少なくとも機関温度が閾値以下である低温時(始動から始動直後)に上記実施形態に示した分割噴射を行わせ、分割噴射を行わずに充分な気化性能を維持できる暖機後には、前記燃料噴射パルス幅PULSによる噴射を1回で行わせるようにでき、また、分割噴射を行わない場合の噴射タイミングは、吸気バルブ6の閉弁中に限定されない。
前記機関温度の閾値は、分割噴射による気化性能の促進が要求される状態と、1回の噴射で必要な燃料の全てを噴射させても充分な気化性能を得られる状態との境界付近に設定される。
また、燃料噴射パルス幅PULSが大きくなり、しかも、前記許容噴射時間TIMEINJが短くなる高負荷・高回転運転時、換言すれば、前記許容噴射時間TIMEINJを補正前の総分割噴射時間が大幅に超え、たとえ総分割噴射時間を許容噴射時間TIMEINJ以下に補正できたとしても、気化性能の促進効果を充分に得られない運転条件において、1回の噴射で必要な燃料の全てを噴射させ、それ以外の運転条件では、温度条件とは無関係に分割噴射を行わせることができる。