JP4992044B2 - クロメートフリー被覆溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は自動車、家電、OA機器等の部品として主に車内や室内の環境で使用されるに際して十分な耐食性を有するとともに、製品中に環境・人体に有害なクロムを全く含まないクロメートフリー被覆が施された金属材料に関するものである。特に、電気・電子機器など、電磁波漏れ(EMI)を防止する必要がある用途に好適な、電磁波シールド性に優れたクロメートフリー被覆溶融亜鉛めっき鋼板及びその製造方法に関するものである。
一般に電磁波シールドとは、金属や導電塗料のような導電性材料で電子機器全体を覆うことにより、電磁波の放射や侵入を防止することである。かような電磁波シールド性をそなえる部材を、一般に電磁波シールド部材と呼ぶ。電磁波シールド部材としては、導電率の高い材料ほど電磁波の反射係数が高くなることが知られており、金属や導電化したプラスチックが用いられる。近年、材料の高機能化が進み、プラスチックでは、表面への導電コートやフィラーの混入成形といった形で導電、複層化が進んでいる。
金属材料は、導電率が高く反射係数が高いことから、優れた電磁波シールド部材として用いられてきた。特に鋼板は、安価なだけでなく流通性に優れることから多用されてきたそして、屋内用途の場合、流通段階での発錆防止の目的で防錆処理が一般的に行われている。
防錆処理としては、亜鉛等のめっき処理や最表層の白錆び抑制のためのクロメート処理が従来、一般的である。しかし、近年では、環境負荷抑制の観点から同等の白錆び抑制効果を有するクロメートフリー処理が開発されている。
クロメートフリー処理技術としては、下記(1)〜(3)に示すような技術が知られている。
(1) カルボキシル基と水酸基とを有する有機樹脂とアミノ基および/またはメルカプト基を有するシリコーン樹脂を用いる方法(例えば、特許文献1)。
(2) 水分散性シリカを含むSiおよびLi系無機化合物と有機樹脂、シランカップリング剤を用いる方法(例えば、特許文献2)。
(3) チオ硫酸、亜硫酸、亜硫酸水素を含有する水性樹脂を用いる方法(例えば、特許文献3)。
しかしながら、上記したクロメートフリー処理技術は、いずれも樹脂系の皮膜であることから、従来のクロメート処理と同等の耐食性を維持しようとすると、皮膜厚みを従来に比べて厚くせざるを得ないため、表面の導電性が損なわれる。電磁波シールド性を確保するためには金属部材そのものだけでなく、表面の導電性も高いレベルに保持する必要がある。そのため、結果として、電磁波シールド性に問題になる。
これに対して、クロメートフリー処理後も電磁波シールド性を確保する手段として
(4)クロメートフリー皮膜に導電性を有する物質を用いる方法(例えば、特許文献4)
(5)クロムを含有しない皮膜を形成させた表面処理鋼板の表面の中心線平均粗さRaと皮膜平均厚さとを一定の関係に保つことで導電性を確保する方法(例えば、特許文献5)
などが提案されている。
特開2000−199070号公報 特開2000−45078号公報 特開2000−17466号公報 特開2002−30255号公報 特開2004−156081号公報
しかしながら、特許文献4の方法では、電磁波シールド特性を確保するために必要なレベルの導電性を確保することは出来なかった。
また、特許文献5の方法では、導電性の評価を実用環境下ではあまり起こりえない強加圧状態で行なっているため、実用環境で十分な電磁波シールド特性を確保するには不十分な導電性レベルであるという問題があった。特に下地のめっき鋼板が溶融亜鉛めっき鋼板の場合には電気亜鉛めっき鋼板の場合に比べて電磁波シールド特性が劣るという傾向があった。この理由として、電気亜鉛めっき鋼板の場合は、電気めっきに特有の結晶配向性によりめっき層の表面に細かな凹凸が形成されることから、局所的な皮膜欠陥部が形成されやすく、導電性を確保し易いのに対して、溶融亜鉛めっき鋼板の表面にはそのような微細な凹凸が無いためと推定される。
本発明は、かかる事情に鑑みなされたもので、耐食性が低下することなく、電磁波シールド特性に優れたクロメートフリー被覆溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために本発明者らが鋭意検討を行った。その結果、以下を知見した。
1)耐食性を確保するためには鋼板表面を被覆する皮膜を通じた外部との電荷のやりとりを遮断する必要があること、言い換えれば、表面皮膜は絶縁体である必要があること。
物質の導電性を表す指標として、体積や面積に依存しない物質固有の値として体積抵抗率(単位:Ω・cm)が用いられる。一般に導体と見なされる物質の体積抵抗率は10-2Ω・cm以下、半導体は10-1〜107Ω・cm、絶縁体はそれ以上の体積抵抗率を示すものと考えられている。半導体と導体との境界となる体積抵抗率の値は必ずしも明確ではないが、耐食性付与の観点からは、1010Ω・cm超えの体積抵抗率を示すものであれば十分である。このような絶縁体からなる皮膜の場合、厚さを薄くしても、均質な皮膜である限り十分な導電性は得られない。
一方で、皮膜に欠損部があると、この欠損を通じて導電性が得られる場合がある。耐食性及び導電性はこのような欠損部のサイズと面積率に影響される。ゆえに、通常の室内環境での使用に十分なレベルの耐食性を確保するためには、これらをある一定の値以下にする必要がある。
2)他方、電磁波シールド特性を確保するのに必要な導電性を得るためには、上記欠損部のサイズ及び面積率をある一定の値以上にする必要がある。
3)上記1)および2)を鑑み、検討した結果、耐食性を確保するために必要な欠損部のサイズ及び面積率の上限は、電磁波シールド特性を確保する為に必要な欠損部のサイズ及び面積率の下限とは異なり、これらの値の間に重複する領域が存在することを知見した。
本発明は、以上の知見に基づきなされたもので、その要旨は以下のとおりである。
[1]平均厚さ0.10μm以上のクロメートフリー皮膜をめっき層の表面に有するクロメートフリー被覆溶融亜鉛めっき鋼板であって、前記クロメートフリー皮膜は、体積抵抗率>1010Ω・cmの絶縁体からなり、以下の(i)〜(V)の条件を満足する欠損部を有することを特徴とするクロメートフリー被覆溶融亜鉛めっき鋼板。
(i)欠損部1箇所の面積Sd:1〜2000μm2
(ii)下記式(1)で定義される欠損部平均面積Sm:1〜2000μm2
(iii)下記式(2)で定義される皮膜表面の欠損部面積率Pd:0.010〜25%
(iv)SmとPdとが下記式(3)の関係を満足する
Figure 0004992044
[2]前記[1]において、めっき層表面は、粗さ曲線要素の平均長さ:RSmが200μm以下であり、かつ、相対負荷長さ率:Rmrが50%以上であることを特徴とするクロメートフリー被覆溶融亜鉛めっき鋼板。
[3]溶融亜鉛めっき鋼板に調質圧延を施し、引き続きクロムを含まない水系のクロメートフリー処理液を塗布し乾燥を行い、前記[1]または[2]に記載のクロメートフリー被覆溶融亜鉛めっき鋼板を製造するにあたり、前記クロメートフリー処理液の塗布はロールコーターを用いて行い、前記クロメートフリー処理液中の不揮発成分濃度は1mass%以上5mass%未満であり、クロメートフリー処理液の塗布時の液温における粘度は2.0mPa・s以下であり、前記クロメートフリー処理液の塗布に用いられ、鋼板の進行方向と逆回転するアプリケーターロールの周速はライン速度に対して1.2倍以上とし、前記クロメートフリー処理液の塗布に用いられるピックアップロールの周速比は前記アプリケーターロールの周速に対して0.1〜0.5とすることを特徴とするクロメートフリー被覆溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
本発明によれば、耐食性を低下することなく、優れた電磁波シールド性を有するクロメートフリー被覆溶融亜鉛めっき鋼板を得ることができる。
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明で用いる鋼板としては、車載用の電子機器、OA・AV機器などのシャーシ、底板などに用いられている溶融亜鉛めっき鋼板を対象とする。このような用途においては、加工性・強度・コストなどの観点から電気亜鉛めっき鋼板や溶融亜鉛めっき鋼板などの表面処理鋼板が多用されているが、溶融亜鉛めっき鋼板は冷間圧延後に行なわれる焼鈍工程とめっき工程とが連続した一つのラインの中で行なわれることから、電気めっき鋼板よりも低コストで製造できる。また、電気亜鉛めっきの製造工程では、有害なめっき液を大量に使用する必要があるが、溶融めっきではその必要が無く、環境保護の観点で望ましい。以上より、本発明では溶融亜鉛めっき鋼板を対象とする。
上記溶融亜鉛めっき鋼板のめっき層表面には、平均厚さ0.10μm以上のクロメートフリー被覆を有するものとする。平均厚さが0.10μm未満では、十分な耐食性が得られないためである。また、環境保護の観点から、クロメートフリー皮膜の形成工程での有害な廃液や排気ガスの放出のないプロセスとして、水系のクロメートフリー処理液を塗布・乾燥することで皮膜を形成する方法が好ましい。
めっき鋼板の表面を被覆するクロメートフリー皮膜の成分は特に限定されず、無機系皮膜、有機系皮膜、有機無機複合系皮膜など、用途に応じて適宜選択することができる。無機系成分として、Zn、Al、Si、Mn、Mg、Mo、V、Zr、Ca などの酸化物、フッ化物、硝酸塩、リン酸塩などが、有機系の成分としては、アクリル樹脂、オレフィン樹脂、アクリルオレフィン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリオレフィンアイオノマー、および、メラミン樹脂のうち1種類または2種類以上の混合物あるいは共重合物などが上げられ、これらを単独もしくは混合して、さらにはシランカップリング剤等を混合して皮膜成分として用いることが出来る。なお、有機樹脂のみの場合にはめっき鋼板との界面の密着力が不十分になるため、下層に無機系の皮膜を形成した上に有機系皮膜を形成するか、有機無機複合系皮膜にすることが望ましい。
本発明において、上記成分からなるクロメートフリー皮膜は、体積抵抗率>1010Ω・cmの絶縁体とする。皮膜そのものの体積抵抗率(以降、抵抗率と称することもある)が小さい場合、皮膜を通じた腐食促進物質の透過や外部との電子の授受による腐食反応が促進され、耐食性の低下を招く。
クロメートフリー皮膜の厚みは上述した通り0.10μm以上とする。厚みの上限は特に限定しないが、下記(i)〜(iv)の条件を満足する欠損部を形成できる膜厚とする。ただし、皮膜が厚くなると下記(i)〜(iv)を満足するような欠損部を形成することが困難になるため、通常は2μm程度が上限の目安となる。図1に、クロメートフリー被覆溶融亜鉛めっき鋼板の被膜表面からみた場合の欠損部の分布を模式的に示す。
(i)欠損部1箇所の面積Sd:1〜2000μm2
(ii)下記式(1)で定義される欠損部平均面積Sm:1〜2000μm2
(iii)下記式(2)で定義される皮膜表面の欠損部面積率Pd:0.010〜25%
(iv)SmとPdとが下記式(3)の関係を満足する
Figure 0004992044
電磁波シールド特性を確認するためには実際に電子機器を組み立てて調べることが最も確実な方法ではあるが、この方法で複数の金属板の優劣を比較することは大変である。そこで、簡易的な評価方法として、一般的にJIS K1794に準拠した4探針法による表面抵抗測定が行なわれている。この方法で測定した表面抵抗値が1mΩ以下であれば、実用上は十分なレベルの導電性を備えていると判断できる。図2に4探針法の測定原理を模式的に、図3に4探針法による測定回路の一例をそれぞれ示す。図2および図3によれば、外側の2探針(A−D)間に一定電流を流した際に中間の2探針(B−C)間に観測される電位差から、オームの法則にしたがって試験片の表面抵抗を求める。探針はタングステンと同等またはこれ以下の抵抗率をもつ直径0.5〜0.8mmの金属製の棒で先端は球面状に加工されたものである。隣り合う探針の間隔は5mmとし、測定中、各探針には1〜2Nの加圧を加えると規定されている。この仕様に適合した市販の測定装置として、例えば、(株)三菱化学社製の低抵抗率計ロレスタシリーズがあり、商品名:ロレスタGPに商品名:4探針ASPプローブを組み合わせて測定することが出来る。
しかしながら、JIS K1794の仕様そのままで測定した表面抵抗値で電磁波シールド特性を判断する場合には以下のような問題が起こることが分かった。すなわち、この測定方法はもともと導電性プラスチックの抵抗率を測定する手法であることから、探針の先端は球面状に加工されており、測定時の加圧によって探針の先端が一定深さまでプラスチック内にめり込むことが想定されている。したがって、クロメートフリー皮膜で表面を被覆した金属板の表面を測定する際に、探針先端が皮膜を破壊して下地の金属相に到達し、結果的に皮膜表面の抵抗でなく金属相そのものの抵抗を測定することになってしまう場合がある。この様子を模式的に示したのが図4である。クロメートフリー皮膜が軟質であったり、膜厚が薄い場合にこのような状態になりやすい。この場合、結果的に、表面抵抗の測定値は1mΩ以下になる。しかしながら、実際に電磁波シールド用の部材として使用する際には、かならずしもこのような強い加圧が働くとは限らないことから、表面抵抗測定の結果から期待されるほどの電磁波シールド特性を示さない場合がある。
そこで、検討したところ、探針先端を2mmφの円筒状に加工した4探針プローブ((株)三菱化学社製、商品名:ESPプローブ)を使用して表面抵抗を測定することで、探針の先端形状が平坦であることでサンプルとの接触面積が広くとれ、上記の問題が解決され、電磁波シールド特性をより正確に評価することが可能となることがわかった。そこで、以後は、前記ESPプローブの使用を前提とする。
上述した通り、体積抵抗率>1010Ω・cmである絶縁体からなる皮膜の場合、厚さを薄くしても均質な皮膜である限り十分な導電性は得られない。このことを模式的に示したのが図5及び式(4)である。
Figure 0004992044
図5は、ESPプローブの探針の一つとクロメートフリー皮膜で被覆された金属板とが接触している部分の断面模式図である。図5によれば、図5中の斜線で示した部分の抵抗RCFは上記式(4)で表される。ただしtはクロメートフリー皮膜の厚み(単位:cm)、ρvは体積抵抗率である。ここで、式(4)より、クロメートフリー皮膜の体積抵抗率が1010(Ω・cm)の場合に、探針と接触している部分の皮膜の抵抗値を1mΩ以下にするために必要な皮膜の厚さtは3.14×10-16(cm)以下ということになる。しかし、固体を構成する物質の原子間距離を考えると、皮膜の厚さtが3.14×10-16(cm)以下というのは現実にはありえない値である。すなわち、絶縁体から成るクロメートフリー皮膜の厚さをどんなに薄くしたとしても、1mΩ以下という表面抵抗値を得ることが不可能であることは明白である。したがって、電磁波シールド特性を確保するために必要な導電性を得るためには、皮膜中に意図的に欠損部を形成することで素地の金属相を表面に露出させることが必要となる。
以上より、本発明では、めっき層の表面に有するクロメートフリー皮膜は、皮膜中に意図的に欠損部を有することとする。
(i)欠損部1箇所の面積Sd:1〜2000μm2
本発明において、電磁波シールド特性を確保する為に必要な導電性を得るためには絶縁体からなるクロメートフリー皮膜に面積Sd:1〜2000μm2の欠損部を意図的に形成することが必要である。
欠損部の面積としては少なくとも1箇所あたり1(μm2)以上のサイズが必要である。1(μm2)未満では電磁波シールド特性を確保する為に必要な導電性を得ることができない。
このような欠損部では下地の金属相が露出しているために、その面積が大きくなるほど導電性は向上するが、一方で耐食性は低下することになる。ここで、耐食性の評価は実用環境に即した手法で行なうことが望ましいが、比較的に簡便で普及率の高い手法として、ここではJISZ2371の塩水噴霧試験がある。このJISZ2371の塩水噴霧試験で評価を行なった場合、本発明の金属板は車内や室内の穏やかな環境での使用を前提とすることから、評価時間:12時間で目立った腐食が起こらなければ合格とすると、欠損部面積の上限は1箇所あたり2000(μm2)となる。これ以上になると耐食性が急激に劣化する。耐食性の観点から好ましくは1500(μm2)以下であり、より望ましくは1000(μm2)以下である。
(ii)下記式(1)で定義される欠損部平均面積Sm:1〜2000μm2
Figure 0004992044
複数の欠損部が存在し、サイズが様々である場合には、上記式(1)で定義される欠損部平均面積Sm:1〜2000μm2であることが必要となる。1μm2未満では、導電性が得られない。一方、2000μm2超えでは耐食性が低下する。欠損部平均面積Smに関しても、耐食性の観点から好ましくは1500(μm2)以下であり、より望ましくは1000(μm2)以下である。
ここで、隣接する欠損部同士の間隔は1(μm)以上とする。1(μm)未満では、異なる欠損かどうかの判別が困難であるため、そのような場合には連続する一つの欠損として解釈する。
(iii)下記式(2)で定義される皮膜表面の欠損部面積率Pd:0.010〜25%
Figure 0004992044
本発明において、欠損部一箇所あたりのサイズとともに、皮膜表面全体に占める欠損部分の比率も重要である。この比率を欠損部面積率Pdとして上記式(2)で定義する。導電性を確保するためには、少なくとも皮膜全面積の0.010%以上は欠損部が存在する必要がある。すなわちPd≧0.010(%)が必要である。好ましくはPd≧0.1(%)であり、より好ましくはPd≧1(%)である。一方で、皮膜表面全体に占める欠損部分の比率が25%を超えると耐食性が低下する。
(iv)SmとPdとが下記式(3)の関係を満足する
Figure 0004992044
欠損部分の比率が増加すると耐食性が劣化する。特に、欠損部一箇所のサイズが大きい場合には、Pdの増加による耐食性低下が激しくなる。一方で、小さい欠損の場合は、欠損が多数あって結果としてPdが大きくなっても耐食性の低下は比較的穏やかである。このため、導電性と耐食性とを両立するためには、欠損部面積率と欠損部平均面積との間の関係が上記式(3)を満足する必要がある。
以上のように、上記(i)〜(iv)の関係をすべて満足する欠損部を有する皮膜で溶融亜鉛めっき鋼板を被覆することにより、耐食性を低下することなく、電磁波シールド特性に優れたクロメートフリー被覆溶融亜鉛めっき鋼板を得ることができる。
なお、欠損部のサイズや欠損部面積率の算出は以下の方法で行なう。
(1)供試材表面のZn及びクロメートフリー皮膜に含有される成分元素を、EPMAにてマッピング分析する。電子線の加速電圧は15kV、分析径1μmとし、縦200点×横200点の40000点(200μm角)を1視野として測定する。Znの分析はLIF分光結晶を用いて特性X線としてKα線の強度から分析する。皮膜成分として有機樹脂を含有する皮膜の分析の場合は、LDEC分光結晶を用いて特性X線としてKα線の強度から分析を行なう。その他元素に関しても、適宜、適切な条件で測定する。
(2)あらかじめ、クロメートフリー皮膜無しのめっき鋼板表面で同様の測定を行い、この測定で得られた値をZn及びクロメートフリー皮膜中の各成分元素のバックグラウンドレベルとする。
(3)供試材の分析結果で、Zn強度及びクロメートフリー皮膜成分の強度が縦横5μm以上の領域でバックグラウンドレベルと一致する部分があった場合は、その場所を皮膜欠損部と判定する。ただし、欠損部がそれよりも小さい場合には、以下の判断基準での判定とする。これは照射された電子線が供試材の表面で拡散するために、欠損部周辺の皮膜からの特性X線の強度の影響を完全には排除できないためである。
(4)あらかじめ、厚さ1μm相当のクロメートフリー皮膜を形成した検体について、(1)と同様の測定を行い、クロメートフリー皮膜成分のカウントの平均値を求めておく。
(5)供試材において、縦横5μm未満の領域で(5)値の1/10未満の強度の部分があった場合にはこの場所を皮膜欠損部と判断する。
(6)以上の基準に従い欠損部と判断された場所のサイズ及び視野内における面積率を求める。
(7)1検体について、任意の3視野で同様の測定を行い、その3測定の平均値で判定する。
なお、クロメートフリー皮膜の膜厚t(μm)は以下の方法のどちらかで測定することとする。どちらの方法を適用するかは状況に応じて適宜選択可能である。
(A)皮膜の密度が分かっている場合:形成した皮膜の付着量CW(単位:g/m2)と密度ρ(g/cm3)とから下記式(5)に従って求める。
Figure 0004992044
(B)皮膜の密度が不明の場合:断面観察用の試験片を作成し、走査型電子顕微鏡を用いて断面観察を行なう。観察用の試験片は、エポキシ系の樹脂に埋め込み研磨する方法や、集束イオンビーム(FIB)を用いた加工法等、金属の断面組織を観察する際に通常用いられている方法で作成する。図6に模式的に示したように、皮膜の厚さが均一で無い場合は、全長600μmの区間を観察し、下記式(6)に従って算出した平均膜厚をその皮膜厚と見なす。
Figure 0004992044
次いで、本発明の電磁波シールド性に優れたクロメートフリー被覆溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法について説明する。
本発明においては、溶融亜鉛めっき鋼板に調質圧延を行い、引き続きクロムを含まない水系のクロメートフリー処理液を塗布し乾燥を行い、めっき層表面に厚さ0.10μm以上のクロメートフリー皮膜を有するクロメートフリー被覆溶融亜鉛めっき鋼板を製造する。この時、溶融亜鉛めっき鋼板に引き続き調質圧延を行うことでめっき層の表面に凹凸の形状を付与し、さらに水系のクロメートフリー処理液をロールコーターを用いて鋼板に塗布した後、乾燥することでクロメートフリー皮膜を鋼板表面に形成する。さらに、クロメートフリー処理液中の不揮発成分濃度は1mass%以上5mass%未満であり、クロメートフリー処理液の塗布時の液温における粘度は2.0mPa・s以下とする。また、本発明で用いるロールコーターとして、ピックアップロールおよびアプリケーターロールを用いる場合、アプリケーターロールの周速はライン速度に対して1.2倍以上とし、ピックアップロールの周速比は前記アプリケーターロールの周速に対して0.1〜0.5とする。
溶融亜鉛めっき鋼板の場合には、めっき層表面の形状が電気亜鉛めっき鋼板とは全く異なり、めっきしたままの表面は平坦である。しかしながら、一般的に、溶融亜鉛めっきラインの中では、機械的な特性の制御を目的として、めっき処理後に調質圧延が行なわれる。調質圧延のワークロールの表面には、ショットブラストや放電加工などによって凹凸がつけられており、この凹凸が転写されることによって調質圧延後の溶融亜鉛めっき表面には凹凸形状が付与される。この凹凸形状を制御し、引き続きクロメートフリー皮膜を形成する際に適切な条件で行なうことで本発明の狙いとする欠損部を意図的に形成することが出来る。ワークロール表面の突起部で押し込まれた部分のめっき層表面は凹みとなり、ワークロール表面で凹んでいた部分と接触しためっき表面はほとんど変形せず、結果的に凸部となって残る。このような凹凸を有するめっき層の表面に、水系のクロメートフリー処理液を塗布してから乾燥することでクロメートフリー皮膜を形成する場合に、めっき層表面の被覆状態は図7に模式的に示すように3種類に大別される。図7はミクロ的に見た断面の拡大模式図であるが、分かりやすくするために横倍率よりも縦倍率を大きくしてある。実際には図7のように単純にはならず、これらの組み合わせになるが、これら3種類が基本パターンであると考えられる。(1)はめっき層表面の凹凸に比べてクロメートフリー皮膜の膜厚が十分に厚い場合である。この場合は、皮膜に欠損が存在しないことから、導電性が得られない。(2)は、めっき層表面の凹部に皮膜が形成され、凸部には皮膜が形成されず、欠損になっている場合である。通常の塗布条件で、単に膜厚を薄くしようとした場合に、このような状態になり易い。このような場合には、めっき層表面の凸部のサイズと面積率が本発明で必要とする欠損部の条件に適合するように制御することで、本案発明のクロメートフリー被覆を得ることが原理的には可能である。ただし、ショットブラストや放電加工などの現存するロール表面加工技術によって、これを達成することは容易ではない。さらに、(2)のような皮膜を形成するためには、水系のクロメートフリー処理液を塗布する段階で、塗布された薬剤のウェット膜厚を薄くする必要があることから、ローピング等のマクロ的に見た不均一が起こりやすく、耐食性の低下を招きやすい。このため、(2)のような状態で本発明の要件を満足する表面皮膜を形成することは難しい。(3)は、めっき層表面の凹部及び凸部にはクロメートフリー皮膜が均一に形成され、凹凸の境界となる急勾配の部分で皮膜欠損が生成している場合である。(3)の状態は、めっき層表面の凹凸パターンと水系のクロメートフリー処理液の塗布条件を制御することで比較的安定的に作り出すことが可能である。そこで、本発明においては、(3)の状態を作り出すことで、すなわち、ローピング等のマクロ的に見た不均一の発生を防止し、マクロ的な観点からは均一な皮膜を形成しつつ、ミクロ的には、調質圧延によってめっき層の表面に形成された凹凸の境界となる急勾配の部分に皮膜欠損を生じさせることで耐食性を損なうことなく導電性を有することが達成可能となる。
以上より、本発明においては、めっき層表面の被覆の状態は図7の(3)が好ましく、このような皮膜を形成させる手段としては、ロールコーターによるクロメートフリー処理液の塗布を行なうことが好ましい。
本発明で用いるロールコーターとしては、ピックアップロールとアプリケーターロールからなる2ロールコーターか、ピックアップロール、トランスファーロール及び及びアプリケーターロールからなる3ロールコーター、あるいは、ピックアップロール、アプリケーターロール及びドクターロールからなる3ロールコーターのいずれを用いても良い。いずれの場合においても、均一な皮膜を形成させるために、アプリケーターロール(以下、APRと称することもある)とピックアップロール(以下、PURと称することもある)の周速を適切に制御することが必要である。図8は、2ロールコーター方式において、コーターパンからPURにピックアップされた処理液が、APRを通じて鋼板の表面に塗布される様子を示した模式図である。乾燥後のクロメートフリー皮膜をマクロ的に見て均一にするためには、図8によれば、鋼板に塗布された処理液のウェット膜厚を、乾燥後の膜厚にくらべて十分に厚くしておく必要がある。このような観点から、塗布する処理液中の不揮発成分濃度を5mass%未満とすることが必要であり、より望ましくは4mass%以下である。ただし、塗布する処理液のウェット膜厚が厚くなりすぎると、乾燥工程で必要な入熱量が大きく、生産性が悪くなることから、不揮発成分濃度の下限は1mass%とする。また、低粘度の処理液を用いることで、凹凸の境界となる急勾配の部分に皮膜欠損を生じさせることができる。よって、本発明では処理液を塗布する際の温度における粘度は2.0mPa・s以下とする。
また、図8において、鋼板に塗布された処理液のウェット膜厚を、均一にするためには、APRから鋼板への転写率を十分に確保する必要がある。このため、鋼板のライン速度に対するAPRの周速比は1.2倍以上とする。1.2倍未満であるとAPRから鋼板への均一な処理液の供給が不足し、ローピング模様が発生し耐食性の低下をもたらす。また、APRから鋼板に処理液を安定的に転写するためには、PURからAPRへの処理液の供給も安定化する必要がある。このような観点から、APRの周速に対するPURの周速比が0.1〜0.5となるようにすることが必要である。PURの周速比が0.1未満では、処理液のピックアップ量が不十分となり、APRへの処理液の供給が不十分となる。一方、PURの周速比が0.5以上になると、PURからAPRへの薬液のすり抜け量が増加しすぎて、APR上でローピングが発生し、結果的に鋼板にもローピングが転写されてしまう。
処理液塗布後の乾燥方法は特に限定せず、公知の方法、たとえば熱風乾燥炉、誘導過熱炉、近赤外加熱炉、電気炉などで行なえばよい。
以上の製造方法により、本発明の所望の体積抵抗率および欠損部のサイズと面積率を有したクロメートフリー被覆溶融亜鉛めっき鋼板が得られる。
ここで、皮膜欠損部のサイズと面積率を本発明で必要とする条件に適合させるためには、上述したように、溶融亜鉛めっき層の表面の凹凸の境界となる急勾配の部分を多数形成することが有効である。いいかえれば、凹凸のピッチを小さくすることが有効である。これは、JIS B0633で規定されている粗さ曲線における横方向のパラメーターである「粗さ曲線要素の平均長さ」RSmを短くすることに相当する。よって、本発明においては、RSm≦200μmが好ましい。また、調質圧延を連続して行なうことにより、めっき表面から削り取られたZn粉による目詰まりなどによってワークロール表面の凹凸は変化する。結果として、めっき層表面につけられた凹凸の境界部分の勾配は徐々に低下することになり、クロメートフリー皮膜の欠損部が形成されにくくなる。そこで、凹凸の境界部分の勾配が一定以上の状態で皮膜を形成する必要がある。この勾配の目安として、JIS B0633で規定されている粗さ曲線における相対負荷長さ率で判断することが出来る。凹凸の境界部分の勾配が急であるほど、相対負荷長さ率の値が大きくなるからである。本発明においては、Rmr≧50%が好ましい。同じワークロールを用いて調質圧延した溶融亜鉛めっき鋼板でも、Rmr<50では、本発明に適合する欠損部を有するクロメートフリー皮膜を形成することは困難になる場合がある。なお、上記のRSm及びRmrを測定する方法は特に限定せず、触針式の粗さ計を用いても良いし、走査型電子顕微鏡と熱電界放出型の電子線源を搭載した電子線三次元粗さ解析装置等を用いても良い。
以下、本発明の実施例について説明する。
以下に述べる手順で評価用サンプルの作成(実施例および比較例)した。
溶融亜鉛めっきラインにて、板厚0.8mmの冷延鋼板に対して焼鈍後に溶融亜鉛めっきを施し、ガスワイピングで片面辺りのZn付着量60g/m2とした。引き続き、調質圧延を行い、めっき層表面に凹凸を付与した。調質圧延のワークロールは表面をショットブラストもしくは放電加工により加工し、加工直後のロール表面の粗さをRa=2.0μmとした。同一ロットのコイルの一部でクロメートフリー処理なしの部分を作成し、サンプルを採取して、走査型電子顕微鏡を用いて検体表面の凹凸形状を観察するとともに、熱電界放出型の電子線源を搭載した電子線三次元粗さ解析装置(エリオニクス社ERA-8800FE;以下3D-SEM)を使用して、表面形状の測定を行い、めっき表面のRSm及びRmrを測定した。測定領域は縦1200μm×横1200μmとした。連続して調質圧延を行なうことで、ワークロール表面のへたりやZnのビルドアップ等により、めっき表面に望ましい形状を付与することができなくなることから、試作したすべてのコイルに関して、上記手法でめっき表面の形状を確認し、本願発明の条件に適合しているものを実施例及び比較例の一部に使用し、適合していないものを比較例の一部として使用した。
<実施例1>
調質圧延後のめっき表面のRsmが180μm、Rmrが55%であるコイルを用いて、調質圧延後、引き続きクロメートフリー処理液を塗布、乾燥し、膜厚0.11μmのクロメートフリー皮膜を形成した。
なお、この時の調質圧延のワークロールはショットブラストで加工したものを用いた。
また、クロメートフリー処理液の塗布は、2ロール方式のロールコーターを用いて、Zn、Al、Mg、Mn、V及び燐酸を成分として含有する無機系のクロメートフリー処理液(以下に原料および混合、調合方法を示す)を用い、乾燥は、熱風オーブンで到達最高板温100℃で行った。
ロールコーター部を通過する際の鋼板のライン速度は100mpm、ライン速度に対するAPRの周速比は1.6、PURとAPRとの周速比は0.4とした。
無機系処理液原料
ア)水:イオン交換樹脂を用いて、比抵抗=1〜10MΩ・cmとした脱イオン水
イ)金属塩:市販の水酸化アルミニウム、炭酸マンガン、水酸化マグネシウム、塩基性水酸化亜鉛、メタバナジン酸ナトリウム
ウ)酸:市販の80%燐酸
混合比
金属塩成分の重量比 Al:Mn:Zn:Mg:VO3=1:10:10:5:5で上記原料と燐酸を混合して水に溶解し、乾燥後の固形分中PO4濃度を70mass%とした。さらに、不揮発分が4mass%となるように濃度を調整した。なお、塗布時の処理液温度は25℃とし、この温度における粘度は1.3 mPa・sであった。
<実施例2>
調質圧延後のめっき表面のRsmが150μm、Rmrが60%であるコイルを用いて、調質圧延後、引き続きクロメートフリー処理液を塗布、乾燥し、膜厚0.18μmのクロメートフリー皮膜を形成した。
なお、この時の調質圧延のワークロール表面は放電加工したものを用いた。
また、クロメートフリー処理液の塗布は、2ロール方式のロールコーターを用いて実施例1と同様の無機系のクロメートフリー処理液を用い、乾燥は、誘電加熱炉を用いて到達最高板温100℃で行った。無機系処理液の不揮発分は4.9mass%とした。塗布時の処理液温度は25℃とし、この温度における粘度は1.5 mPa・sであった。
ロールコーター部を通過する際の鋼板のライン速度は100mpm、ライン速度に対するAPRの周速比は1.7、PURとAPRとの周速比は0.4とした。
<実施例3>
調質圧延後のめっき表面のRsmが110μm、Rmrが60%であるコイルを用いて、調質圧延後、引き続きクロメートフリー処理液を塗布、乾燥し、膜厚0.22μmのクロメートフリー皮膜を形成した。
なお、この時の調質圧延のワークロール表面はショットブラストにより加工したものを用いた。
また、クロメートフリー処理液の塗布は、2ロール方式のロールコーターを用いて、実施例1で用いた無機系の水溶液と市販のエポキシ系樹脂エマルジョンを、樹脂と無機系成分の質量比が7:3になるようにして混合し処理液とした。乾燥は、熱風オーブンで到達最高板温120℃で行った。処理液の不揮発分は4mass%とした。塗布時の処理液温度は25℃とし、この温度における粘度は1.3 mPa・sであった。
ロールコーター部を通過する際の鋼板のライン速度は120mpm、ライン速度に対するAPRの周速比は1.6、PURとAPRとの周速比は0.4とした。
<実施例4>
調質圧延後のめっき表面のRsmが110μm、Rmrが75%であるコイルを用いて、調質圧延後、引き続きクロメートフリー処理液を塗布、乾燥し、膜厚0.18μmのクロメートフリー皮膜を形成した。
なお、この時の調質圧延のワークロール表面は放電加工により加工したものを用いた。
また、クロメートフリー処理液の塗布は、2ロール方式のロールコーターを用いて、実施例1で用いた無機系の水溶液と、市販のアクリル系樹脂エマルジョンを、樹脂と無機系成分の質量比が7:3になるようにして混合し処理液とした。乾燥は、誘電加熱炉で到達最高板温140℃で行った。処理液の不揮発分は3.8mass%とした。塗布時の処理液温度は25℃とし、この温度における粘度は1.2 mPa・sであった。
ロールコーター部を通過する際の鋼板のライン速度は100mpm、ライン速度に対するAPRの周速比は1.5、PURとAPRとの周速比は0.30とした。
<実施例5>
調質圧延後のめっき表面のRsmが110μm、Rmrが75%であるコイルを用いて、調質圧延後、引き続きクロメートフリー処理液を塗布、乾燥し、膜厚0.13μmのクロメートフリー皮膜を形成した。
なお、この時の調質圧延のワークロール表面はショットブラストにより加工したしたものを用いた。
また、クロメートフリー処理液の塗布は、2ロール方式のロールコーターを用いて、実施例1で用いた無機系の水溶液と、市販のウレタン系樹脂エマルジョンを、樹脂と無機系成分の質量比が7:3になるようにして混合し処理液とした。乾燥は、誘電加熱炉で到達最高板温80℃で行った。処理液の不揮発分は3.5mass%とした。塗布時の処理液温度は25℃とし、この温度における粘度は1.1 mPa・sであった。
ロールコーター部を通過する際の鋼板のライン速度は100mpm、ライン速度に対するAPRの周速比は1.4、PURとAPRとの周速比は0.25とした。
<実施例6>
調質圧延後のめっき表面のRsmが110μm、Rmrが75%であるコイルを用いて、調質圧延後、引き続きクロメートフリー処理液を塗布、乾燥し、膜厚0.20μmのクロメートフリー皮膜を形成した。
なお、この時の調質圧延のワークロール表面はショットブラストにより加工したしたものを用いた。
また、クロメートフリー処理液の塗布は、2ロール方式のロールコーターを用いて、実施例1で用いた無機系の水溶液と、市販の水溶性のアクリル系高分子の質量比が3:7になるようにして混合し処理液とした。乾燥は、誘電加熱炉で到達最高板温110℃で行った。処理液の不揮発分は3.8mass%とした。塗布時の処理液温度は25℃とし、この温度における粘度は1.2 mPa・sであった。
ロールコーター部を通過する際の鋼板のライン速度は100mpm、ライン速度に対するAPRの周速比は1.5、PURとAPRとの周速比は0.5とした。
<比較例1>
調質圧延後のめっき表面のRsmが110μm、Rmrが60%であるコイルを用いて、調質圧延後、引き続きクロメートフリー処理液を塗布、乾燥し、膜厚0.05μmのクロメートフリー皮膜を形成した。
なお、この時の調質圧延のワークロール表面はショットブラストにより加工したしたものを用いた。
また、クロメートフリー処理液の塗布は、2ロール方式のロールコーターを用いて、実施例1で用いた無機系の水溶液と市販のエポキシ系樹脂エマルジョンを、樹脂と無機系成分の質量比が7:3になるようにして混合し処理液とした。乾燥は、熱風オーブンで到達最高板温120℃で行った。処理液の不揮発分は0.09mass%とした。塗布時の処理液温度は25℃とし、この温度における粘度は0.9 mPa・sであった。
ロールコーター部を通過する際の鋼板のライン速度は120mpm、ライン速度に対するAPRの周速比は1.1、PURとAPRとの周速比は0.6とした。
<比較例2>
調質圧延後のめっき表面のRsmが210μm、Rmrが50%であるコイルを用いて、調質圧延後、引き続きクロメートフリー処理液を塗布、乾燥し、膜厚0.05μmのクロメートフリー皮膜を形成した。
なお、この時の調質圧延のワークロール表面はショットブラストにより加工したしたものを用いた。
また、クロメートフリー処理液の塗布は、2ロール方式のロールコーターを用いて、実施例1で用いた無機系の水溶液と市販のエポキシ系樹脂エマルジョンを、樹脂と無機系成分の質量比が7:3になるようにして混合し処理液とした。乾燥は、熱風オーブンで到達最高板温120℃で行った。処理液の不揮発分は8mass%とした。塗布時の処理液温度は25℃とし、この温度における粘度は2.1 mPa・sであった。
ロールコーター部を通過する際の鋼板のライン速度は120mpm、ライン速度に対するAPRの周速比は1.1、PURとAPRとの周速比は0.1とした。
<比較例3>
クロメートフリー皮膜を作成するための組成物中に、市販のカーボンブラックを分散し、体積抵抗率を未満1010Ω・cmにしたこと以外は実施例4と同様にしてサンプルを作成した。
以上より得られた実施例1〜6および比較例1〜3に対して下記の測定方法および評価方法により、性能を評価した。
<体積抵抗率の測定方法>
実施例及び比較例で用いたクロメートフリー皮膜の原料となる組成物を用いて、事前に膜厚5μm相当の皮膜を形成した試験片を作成した。この試験片を用いて、三菱化学(株)製の高抵抗率計ハイレスタUPにて、表面皮膜の体積抵抗率を測定した。
<欠損部の測定>
実施例及び比較例で用いたサンプルから15×15mmの試験片を切り出し、日本電子(株)製のJXA−8600MX型EPMA装置を用いて、電子線の加速電圧15kVにて、ビーム径1μ、縦横200、計40000ポイントでZn及びPのマッピング分析を行い、欠損のサイズSd、欠損部平均面積Sm、及び欠損部面積率Pd等を測定した。
<導電性の評価>
実施例及び比較例で用いたサンプルを用いて、三菱化学(株)製の低抵抗率計ロレスタGPにて、4探針ESPを用いて表面抵抗を測定した。測定値が1mΩ以下の場合に導通ありと判定した。そして、同一検体の中で場所を変えて計10箇所で測定を行い、導通する確率を導通率とする。本発明では導通率100%となる場合に、電磁波シールド特性確保に必要十分な導電性ありと判断した。
<耐食性の評価>
実施例及び比較例で用いたサンプルから、150×55mmの試験片を採取し、非評価面及び上下左右の端部5mmの部分をポリエステルテープでシールし、JIS Z2371に準拠した塩水噴霧試験を行い、12時間後の白錆発生状況で判定を行なった。12時間後の白錆発生面積率≦5%の場合に車内や室内での使用を想定した場合の実用環境での耐食性として必要十分なレベルであると判断した。
以上により得られた評価結果を表1に示す。
Figure 0004992044
実施例1〜6は本発明の要件を満足しており、耐食性と導電性の両立が可能になっている。一方で、比較例1では、クロメートフリー皮膜の膜厚が0.05μmと、本案発明で必要とする0.10μmよりも薄いことから、十分な耐食性が得られていない。比較例2では、クロメートフリー皮膜の欠損部面積率が本案発明で必要とする0.010%に至らないために導電性が不十分である。比較例3は、クロメートフリー皮膜の体積抵抗率が本発明で必要とする領域よりも低いことから耐食性が不十分である。
本発明のクロメートフリー被覆溶融亜鉛めっき鋼板は、耐食性を低下することなく、優れた電磁波シールド特性を確保可能な導電性を有することから、電磁波シールド特性が要求される用途、例えば、自動車、家電、OA機器等の部品として、好適に用いられる。
クロメートフリー被覆溶融亜鉛めっき鋼板の被膜表面からみた場合の欠損部の分布を示す模式図である。 4探針法の測定原理を示す模式図である。 4探針法による測定回路の一例を示す図である。 クロメートフリー皮膜で表面を被覆した金属板の表面を測定する際に、探針先端が皮膜を破壊して下地の金属相に到達する場合の模式図である。 ESPプローブの探針の一つとクロメートフリー皮膜で被覆された金属板とが接触している部分の断面模式図である。 皮膜の厚さが均一で無い場合皮膜を示す断面模式図である。 クロメートフリー皮膜を形成する場合に、めっき層表面の被覆状態を示す図である。 2ロールコーター方式において、コーターパンからPURにピックアップされた処理液がAPRを通じて鋼板の表面に塗布される様子を示した模式図である。

Claims (3)

  1. 平均厚さ0.10μm以上のクロメートフリー皮膜をめっき層の表面に有するクロメートフリー被覆溶融亜鉛めっき鋼板であって、前記クロメートフリー皮膜は、体積抵抗率>1010Ω・cmの絶縁体からなり、以下の(i)〜(iv)の条件を満足する欠損部を有することを特徴とするクロメートフリー被覆溶融亜鉛めっき鋼板。
    (i)欠損部1箇所の面積Sd:1〜2000μm2
    (ii)下記式(1)で定義される欠損部平均面積Sm:1〜2000μm2
    (iii)下記式(2)で定義される皮膜表面の欠損部面積率Pd:0.010〜25%
    (iv)SmとPdとが下記式(3)の関係を満足する
    Figure 0004992044
  2. めっき層表面は、粗さ曲線要素の平均長さ:RSmが200μm以下であり、かつ、相対負荷長さ率:Rmrが50%以上であることを特徴とする請求項1に記載のクロメートフリー被覆溶融亜鉛めっき鋼板。
  3. 溶融亜鉛めっき鋼板に調質圧延を施し、引き続きクロムを含まない水系のクロメートフリー処理液を塗布し乾燥を行い、請求項1または2に記載のクロメートフリー被覆溶融亜鉛めっき鋼板を製造するにあたり、前記クロメートフリー処理液の塗布はロールコーターを用いて行い、前記クロメートフリー処理液中の不揮発成分濃度は1mass%以上5mass%未満であり、クロメートフリー処理液の塗布時の液温における粘度は2.0mPa・s以下であり、前記クロメートフリー処理液の塗布に用いられ、鋼板の進行方向と逆回転するアプリケーターロールの周速はライン速度に対して1.2倍以上とし、前記クロメートフリー処理液の塗布に用いられるピックアップロールの周速比は前記アプリケーターロールの周速に対して0.1〜0.5とすることを特徴とするクロメートフリー被覆溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
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