JP4992044B2 - クロメートフリー被覆溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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Description
防錆処理としては、亜鉛等のめっき処理や最表層の白錆び抑制のためのクロメート処理が従来、一般的である。しかし、近年では、環境負荷抑制の観点から同等の白錆び抑制効果を有するクロメートフリー処理が開発されている。
クロメートフリー処理技術としては、下記(1)〜(3)に示すような技術が知られている。
(1) カルボキシル基と水酸基とを有する有機樹脂とアミノ基および/またはメルカプト基を有するシリコーン樹脂を用いる方法(例えば、特許文献1)。
(2) 水分散性シリカを含むSiおよびLi系無機化合物と有機樹脂、シランカップリング剤を用いる方法(例えば、特許文献2)。
(3) チオ硫酸、亜硫酸、亜硫酸水素を含有する水性樹脂を用いる方法(例えば、特許文献3)。
しかしながら、上記したクロメートフリー処理技術は、いずれも樹脂系の皮膜であることから、従来のクロメート処理と同等の耐食性を維持しようとすると、皮膜厚みを従来に比べて厚くせざるを得ないため、表面の導電性が損なわれる。電磁波シールド性を確保するためには金属部材そのものだけでなく、表面の導電性も高いレベルに保持する必要がある。そのため、結果として、電磁波シールド性に問題になる。
これに対して、クロメートフリー処理後も電磁波シールド性を確保する手段として
(4)クロメートフリー皮膜に導電性を有する物質を用いる方法(例えば、特許文献4)
(5)クロムを含有しない皮膜を形成させた表面処理鋼板の表面の中心線平均粗さRaと皮膜平均厚さとを一定の関係に保つことで導電性を確保する方法(例えば、特許文献5)
などが提案されている。
また、特許文献5の方法では、導電性の評価を実用環境下ではあまり起こりえない強加圧状態で行なっているため、実用環境で十分な電磁波シールド特性を確保するには不十分な導電性レベルであるという問題があった。特に下地のめっき鋼板が溶融亜鉛めっき鋼板の場合には電気亜鉛めっき鋼板の場合に比べて電磁波シールド特性が劣るという傾向があった。この理由として、電気亜鉛めっき鋼板の場合は、電気めっきに特有の結晶配向性によりめっき層の表面に細かな凹凸が形成されることから、局所的な皮膜欠陥部が形成されやすく、導電性を確保し易いのに対して、溶融亜鉛めっき鋼板の表面にはそのような微細な凹凸が無いためと推定される。
1)耐食性を確保するためには鋼板表面を被覆する皮膜を通じた外部との電荷のやりとりを遮断する必要があること、言い換えれば、表面皮膜は絶縁体である必要があること。
物質の導電性を表す指標として、体積や面積に依存しない物質固有の値として体積抵抗率(単位:Ω・cm)が用いられる。一般に導体と見なされる物質の体積抵抗率は10-2Ω・cm以下、半導体は10-1〜107Ω・cm、絶縁体はそれ以上の体積抵抗率を示すものと考えられている。半導体と導体との境界となる体積抵抗率の値は必ずしも明確ではないが、耐食性付与の観点からは、1010Ω・cm超えの体積抵抗率を示すものであれば十分である。このような絶縁体からなる皮膜の場合、厚さを薄くしても、均質な皮膜である限り十分な導電性は得られない。
一方で、皮膜に欠損部があると、この欠損を通じて導電性が得られる場合がある。耐食性及び導電性はこのような欠損部のサイズと面積率に影響される。ゆえに、通常の室内環境での使用に十分なレベルの耐食性を確保するためには、これらをある一定の値以下にする必要がある。
2)他方、電磁波シールド特性を確保するのに必要な導電性を得るためには、上記欠損部のサイズ及び面積率をある一定の値以上にする必要がある。
3)上記1)および2)を鑑み、検討した結果、耐食性を確保するために必要な欠損部のサイズ及び面積率の上限は、電磁波シールド特性を確保する為に必要な欠損部のサイズ及び面積率の下限とは異なり、これらの値の間に重複する領域が存在することを知見した。
[1]平均厚さ0.10μm以上のクロメートフリー皮膜をめっき層の表面に有するクロメートフリー被覆溶融亜鉛めっき鋼板であって、前記クロメートフリー皮膜は、体積抵抗率>1010Ω・cmの絶縁体からなり、以下の(i)〜(V)の条件を満足する欠損部を有することを特徴とするクロメートフリー被覆溶融亜鉛めっき鋼板。
(i)欠損部1箇所の面積Sd:1〜2000μm2
(ii)下記式(1)で定義される欠損部平均面積Sm:1〜2000μm2
(iii)下記式(2)で定義される皮膜表面の欠損部面積率Pd:0.010〜25%
(iv)SmとPdとが下記式(3)の関係を満足する
[3]溶融亜鉛めっき鋼板に調質圧延を施し、引き続きクロムを含まない水系のクロメートフリー処理液を塗布し乾燥を行い、前記[1]または[2]に記載のクロメートフリー被覆溶融亜鉛めっき鋼板を製造するにあたり、前記クロメートフリー処理液の塗布はロールコーターを用いて行い、前記クロメートフリー処理液中の不揮発成分濃度は1mass%以上5mass%未満であり、クロメートフリー処理液の塗布時の液温における粘度は2.0mPa・s以下であり、前記クロメートフリー処理液の塗布に用いられ、鋼板の進行方向と逆回転するアプリケーターロールの周速はライン速度に対して1.2倍以上とし、前記クロメートフリー処理液の塗布に用いられるピックアップロールの周速比は前記アプリケーターロールの周速に対して0.1〜0.5とすることを特徴とするクロメートフリー被覆溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
本発明で用いる鋼板としては、車載用の電子機器、OA・AV機器などのシャーシ、底板などに用いられている溶融亜鉛めっき鋼板を対象とする。このような用途においては、加工性・強度・コストなどの観点から電気亜鉛めっき鋼板や溶融亜鉛めっき鋼板などの表面処理鋼板が多用されているが、溶融亜鉛めっき鋼板は冷間圧延後に行なわれる焼鈍工程とめっき工程とが連続した一つのラインの中で行なわれることから、電気めっき鋼板よりも低コストで製造できる。また、電気亜鉛めっきの製造工程では、有害なめっき液を大量に使用する必要があるが、溶融めっきではその必要が無く、環境保護の観点で望ましい。以上より、本発明では溶融亜鉛めっき鋼板を対象とする。
めっき鋼板の表面を被覆するクロメートフリー皮膜の成分は特に限定されず、無機系皮膜、有機系皮膜、有機無機複合系皮膜など、用途に応じて適宜選択することができる。無機系成分として、Zn、Al、Si、Mn、Mg、Mo、V、Zr、Ca などの酸化物、フッ化物、硝酸塩、リン酸塩などが、有機系の成分としては、アクリル樹脂、オレフィン樹脂、アクリルオレフィン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリオレフィンアイオノマー、および、メラミン樹脂のうち1種類または2種類以上の混合物あるいは共重合物などが上げられ、これらを単独もしくは混合して、さらにはシランカップリング剤等を混合して皮膜成分として用いることが出来る。なお、有機樹脂のみの場合にはめっき鋼板との界面の密着力が不十分になるため、下層に無機系の皮膜を形成した上に有機系皮膜を形成するか、有機無機複合系皮膜にすることが望ましい。
本発明において、上記成分からなるクロメートフリー皮膜は、体積抵抗率>1010Ω・cmの絶縁体とする。皮膜そのものの体積抵抗率(以降、抵抗率と称することもある)が小さい場合、皮膜を通じた腐食促進物質の透過や外部との電子の授受による腐食反応が促進され、耐食性の低下を招く。
クロメートフリー皮膜の厚みは上述した通り0.10μm以上とする。厚みの上限は特に限定しないが、下記(i)〜(iv)の条件を満足する欠損部を形成できる膜厚とする。ただし、皮膜が厚くなると下記(i)〜(iv)を満足するような欠損部を形成することが困難になるため、通常は2μm程度が上限の目安となる。図1に、クロメートフリー被覆溶融亜鉛めっき鋼板の被膜表面からみた場合の欠損部の分布を模式的に示す。
(i)欠損部1箇所の面積Sd:1〜2000μm2
(ii)下記式(1)で定義される欠損部平均面積Sm:1〜2000μm2
(iii)下記式(2)で定義される皮膜表面の欠損部面積率Pd:0.010〜25%
(iv)SmとPdとが下記式(3)の関係を満足する
しかしながら、JIS K1794の仕様そのままで測定した表面抵抗値で電磁波シールド特性を判断する場合には以下のような問題が起こることが分かった。すなわち、この測定方法はもともと導電性プラスチックの抵抗率を測定する手法であることから、探針の先端は球面状に加工されており、測定時の加圧によって探針の先端が一定深さまでプラスチック内にめり込むことが想定されている。したがって、クロメートフリー皮膜で表面を被覆した金属板の表面を測定する際に、探針先端が皮膜を破壊して下地の金属相に到達し、結果的に皮膜表面の抵抗でなく金属相そのものの抵抗を測定することになってしまう場合がある。この様子を模式的に示したのが図4である。クロメートフリー皮膜が軟質であったり、膜厚が薄い場合にこのような状態になりやすい。この場合、結果的に、表面抵抗の測定値は1mΩ以下になる。しかしながら、実際に電磁波シールド用の部材として使用する際には、かならずしもこのような強い加圧が働くとは限らないことから、表面抵抗測定の結果から期待されるほどの電磁波シールド特性を示さない場合がある。
以上より、本発明では、めっき層の表面に有するクロメートフリー皮膜は、皮膜中に意図的に欠損部を有することとする。
本発明において、電磁波シールド特性を確保する為に必要な導電性を得るためには絶縁体からなるクロメートフリー皮膜に面積Sd:1〜2000μm2の欠損部を意図的に形成することが必要である。
欠損部の面積としては少なくとも1箇所あたり1(μm2)以上のサイズが必要である。1(μm2)未満では電磁波シールド特性を確保する為に必要な導電性を得ることができない。
このような欠損部では下地の金属相が露出しているために、その面積が大きくなるほど導電性は向上するが、一方で耐食性は低下することになる。ここで、耐食性の評価は実用環境に即した手法で行なうことが望ましいが、比較的に簡便で普及率の高い手法として、ここではJISZ2371の塩水噴霧試験がある。このJISZ2371の塩水噴霧試験で評価を行なった場合、本発明の金属板は車内や室内の穏やかな環境での使用を前提とすることから、評価時間:12時間で目立った腐食が起こらなければ合格とすると、欠損部面積の上限は1箇所あたり2000(μm2)となる。これ以上になると耐食性が急激に劣化する。耐食性の観点から好ましくは1500(μm2)以下であり、より望ましくは1000(μm2)以下である。
(iv)SmとPdとが下記式(3)の関係を満足する
以上のように、上記(i)〜(iv)の関係をすべて満足する欠損部を有する皮膜で溶融亜鉛めっき鋼板を被覆することにより、耐食性を低下することなく、電磁波シールド特性に優れたクロメートフリー被覆溶融亜鉛めっき鋼板を得ることができる。
(1)供試材表面のZn及びクロメートフリー皮膜に含有される成分元素を、EPMAにてマッピング分析する。電子線の加速電圧は15kV、分析径1μmとし、縦200点×横200点の40000点(200μm角)を1視野として測定する。Znの分析はLIF分光結晶を用いて特性X線としてKα線の強度から分析する。皮膜成分として有機樹脂を含有する皮膜の分析の場合は、LDEC分光結晶を用いて特性X線としてKα線の強度から分析を行なう。その他元素に関しても、適宜、適切な条件で測定する。
(2)あらかじめ、クロメートフリー皮膜無しのめっき鋼板表面で同様の測定を行い、この測定で得られた値をZn及びクロメートフリー皮膜中の各成分元素のバックグラウンドレベルとする。
(3)供試材の分析結果で、Zn強度及びクロメートフリー皮膜成分の強度が縦横5μm以上の領域でバックグラウンドレベルと一致する部分があった場合は、その場所を皮膜欠損部と判定する。ただし、欠損部がそれよりも小さい場合には、以下の判断基準での判定とする。これは照射された電子線が供試材の表面で拡散するために、欠損部周辺の皮膜からの特性X線の強度の影響を完全には排除できないためである。
(4)あらかじめ、厚さ1μm相当のクロメートフリー皮膜を形成した検体について、(1)と同様の測定を行い、クロメートフリー皮膜成分のカウントの平均値を求めておく。
(5)供試材において、縦横5μm未満の領域で(5)値の1/10未満の強度の部分があった場合にはこの場所を皮膜欠損部と判断する。
(6)以上の基準に従い欠損部と判断された場所のサイズ及び視野内における面積率を求める。
(7)1検体について、任意の3視野で同様の測定を行い、その3測定の平均値で判定する。
(A)皮膜の密度が分かっている場合:形成した皮膜の付着量CW(単位:g/m2)と密度ρ(g/cm3)とから下記式(5)に従って求める。
本発明においては、溶融亜鉛めっき鋼板に調質圧延を行い、引き続きクロムを含まない水系のクロメートフリー処理液を塗布し乾燥を行い、めっき層表面に厚さ0.10μm以上のクロメートフリー皮膜を有するクロメートフリー被覆溶融亜鉛めっき鋼板を製造する。この時、溶融亜鉛めっき鋼板に引き続き調質圧延を行うことでめっき層の表面に凹凸の形状を付与し、さらに水系のクロメートフリー処理液をロールコーターを用いて鋼板に塗布した後、乾燥することでクロメートフリー皮膜を鋼板表面に形成する。さらに、クロメートフリー処理液中の不揮発成分濃度は1mass%以上5mass%未満であり、クロメートフリー処理液の塗布時の液温における粘度は2.0mPa・s以下とする。また、本発明で用いるロールコーターとして、ピックアップロールおよびアプリケーターロールを用いる場合、アプリケーターロールの周速はライン速度に対して1.2倍以上とし、ピックアップロールの周速比は前記アプリケーターロールの周速に対して0.1〜0.5とする。
以上より、本発明においては、めっき層表面の被覆の状態は図7の(3)が好ましく、このような皮膜を形成させる手段としては、ロールコーターによるクロメートフリー処理液の塗布を行なうことが好ましい。
本発明で用いるロールコーターとしては、ピックアップロールとアプリケーターロールからなる2ロールコーターか、ピックアップロール、トランスファーロール及び及びアプリケーターロールからなる3ロールコーター、あるいは、ピックアップロール、アプリケーターロール及びドクターロールからなる3ロールコーターのいずれを用いても良い。いずれの場合においても、均一な皮膜を形成させるために、アプリケーターロール(以下、APRと称することもある)とピックアップロール(以下、PURと称することもある)の周速を適切に制御することが必要である。図8は、2ロールコーター方式において、コーターパンからPURにピックアップされた処理液が、APRを通じて鋼板の表面に塗布される様子を示した模式図である。乾燥後のクロメートフリー皮膜をマクロ的に見て均一にするためには、図8によれば、鋼板に塗布された処理液のウェット膜厚を、乾燥後の膜厚にくらべて十分に厚くしておく必要がある。このような観点から、塗布する処理液中の不揮発成分濃度を5mass%未満とすることが必要であり、より望ましくは4mass%以下である。ただし、塗布する処理液のウェット膜厚が厚くなりすぎると、乾燥工程で必要な入熱量が大きく、生産性が悪くなることから、不揮発成分濃度の下限は1mass%とする。また、低粘度の処理液を用いることで、凹凸の境界となる急勾配の部分に皮膜欠損を生じさせることができる。よって、本発明では処理液を塗布する際の温度における粘度は2.0mPa・s以下とする。
また、図8において、鋼板に塗布された処理液のウェット膜厚を、均一にするためには、APRから鋼板への転写率を十分に確保する必要がある。このため、鋼板のライン速度に対するAPRの周速比は1.2倍以上とする。1.2倍未満であるとAPRから鋼板への均一な処理液の供給が不足し、ローピング模様が発生し耐食性の低下をもたらす。また、APRから鋼板に処理液を安定的に転写するためには、PURからAPRへの処理液の供給も安定化する必要がある。このような観点から、APRの周速に対するPURの周速比が0.1〜0.5となるようにすることが必要である。PURの周速比が0.1未満では、処理液のピックアップ量が不十分となり、APRへの処理液の供給が不十分となる。一方、PURの周速比が0.5以上になると、PURからAPRへの薬液のすり抜け量が増加しすぎて、APR上でローピングが発生し、結果的に鋼板にもローピングが転写されてしまう。
以下に述べる手順で評価用サンプルの作成(実施例および比較例)した。
溶融亜鉛めっきラインにて、板厚0.8mmの冷延鋼板に対して焼鈍後に溶融亜鉛めっきを施し、ガスワイピングで片面辺りのZn付着量60g/m2とした。引き続き、調質圧延を行い、めっき層表面に凹凸を付与した。調質圧延のワークロールは表面をショットブラストもしくは放電加工により加工し、加工直後のロール表面の粗さをRa=2.0μmとした。同一ロットのコイルの一部でクロメートフリー処理なしの部分を作成し、サンプルを採取して、走査型電子顕微鏡を用いて検体表面の凹凸形状を観察するとともに、熱電界放出型の電子線源を搭載した電子線三次元粗さ解析装置(エリオニクス社ERA-8800FE;以下3D-SEM)を使用して、表面形状の測定を行い、めっき表面のRSm及びRmrを測定した。測定領域は縦1200μm×横1200μmとした。連続して調質圧延を行なうことで、ワークロール表面のへたりやZnのビルドアップ等により、めっき表面に望ましい形状を付与することができなくなることから、試作したすべてのコイルに関して、上記手法でめっき表面の形状を確認し、本願発明の条件に適合しているものを実施例及び比較例の一部に使用し、適合していないものを比較例の一部として使用した。
<実施例1>
調質圧延後のめっき表面のRsmが180μm、Rmrが55%であるコイルを用いて、調質圧延後、引き続きクロメートフリー処理液を塗布、乾燥し、膜厚0.11μmのクロメートフリー皮膜を形成した。
なお、この時の調質圧延のワークロールはショットブラストで加工したものを用いた。
また、クロメートフリー処理液の塗布は、2ロール方式のロールコーターを用いて、Zn、Al、Mg、Mn、V及び燐酸を成分として含有する無機系のクロメートフリー処理液(以下に原料および混合、調合方法を示す)を用い、乾燥は、熱風オーブンで到達最高板温100℃で行った。
ロールコーター部を通過する際の鋼板のライン速度は100mpm、ライン速度に対するAPRの周速比は1.6、PURとAPRとの周速比は0.4とした。
無機系処理液原料
ア)水:イオン交換樹脂を用いて、比抵抗=1〜10MΩ・cmとした脱イオン水
イ)金属塩:市販の水酸化アルミニウム、炭酸マンガン、水酸化マグネシウム、塩基性水酸化亜鉛、メタバナジン酸ナトリウム
ウ)酸:市販の80%燐酸
混合比
金属塩成分の重量比 Al:Mn:Zn:Mg:VO3=1:10:10:5:5で上記原料と燐酸を混合して水に溶解し、乾燥後の固形分中PO4濃度を70mass%とした。さらに、不揮発分が4mass%となるように濃度を調整した。なお、塗布時の処理液温度は25℃とし、この温度における粘度は1.3 mPa・sであった。
<実施例2>
調質圧延後のめっき表面のRsmが150μm、Rmrが60%であるコイルを用いて、調質圧延後、引き続きクロメートフリー処理液を塗布、乾燥し、膜厚0.18μmのクロメートフリー皮膜を形成した。
なお、この時の調質圧延のワークロール表面は放電加工したものを用いた。
また、クロメートフリー処理液の塗布は、2ロール方式のロールコーターを用いて実施例1と同様の無機系のクロメートフリー処理液を用い、乾燥は、誘電加熱炉を用いて到達最高板温100℃で行った。無機系処理液の不揮発分は4.9mass%とした。塗布時の処理液温度は25℃とし、この温度における粘度は1.5 mPa・sであった。
ロールコーター部を通過する際の鋼板のライン速度は100mpm、ライン速度に対するAPRの周速比は1.7、PURとAPRとの周速比は0.4とした。
<実施例3>
調質圧延後のめっき表面のRsmが110μm、Rmrが60%であるコイルを用いて、調質圧延後、引き続きクロメートフリー処理液を塗布、乾燥し、膜厚0.22μmのクロメートフリー皮膜を形成した。
なお、この時の調質圧延のワークロール表面はショットブラストにより加工したものを用いた。
また、クロメートフリー処理液の塗布は、2ロール方式のロールコーターを用いて、実施例1で用いた無機系の水溶液と市販のエポキシ系樹脂エマルジョンを、樹脂と無機系成分の質量比が7:3になるようにして混合し処理液とした。乾燥は、熱風オーブンで到達最高板温120℃で行った。処理液の不揮発分は4mass%とした。塗布時の処理液温度は25℃とし、この温度における粘度は1.3 mPa・sであった。
ロールコーター部を通過する際の鋼板のライン速度は120mpm、ライン速度に対するAPRの周速比は1.6、PURとAPRとの周速比は0.4とした。
<実施例4>
調質圧延後のめっき表面のRsmが110μm、Rmrが75%であるコイルを用いて、調質圧延後、引き続きクロメートフリー処理液を塗布、乾燥し、膜厚0.18μmのクロメートフリー皮膜を形成した。
なお、この時の調質圧延のワークロール表面は放電加工により加工したものを用いた。
また、クロメートフリー処理液の塗布は、2ロール方式のロールコーターを用いて、実施例1で用いた無機系の水溶液と、市販のアクリル系樹脂エマルジョンを、樹脂と無機系成分の質量比が7:3になるようにして混合し処理液とした。乾燥は、誘電加熱炉で到達最高板温140℃で行った。処理液の不揮発分は3.8mass%とした。塗布時の処理液温度は25℃とし、この温度における粘度は1.2 mPa・sであった。
ロールコーター部を通過する際の鋼板のライン速度は100mpm、ライン速度に対するAPRの周速比は1.5、PURとAPRとの周速比は0.30とした。
<実施例5>
調質圧延後のめっき表面のRsmが110μm、Rmrが75%であるコイルを用いて、調質圧延後、引き続きクロメートフリー処理液を塗布、乾燥し、膜厚0.13μmのクロメートフリー皮膜を形成した。
なお、この時の調質圧延のワークロール表面はショットブラストにより加工したしたものを用いた。
また、クロメートフリー処理液の塗布は、2ロール方式のロールコーターを用いて、実施例1で用いた無機系の水溶液と、市販のウレタン系樹脂エマルジョンを、樹脂と無機系成分の質量比が7:3になるようにして混合し処理液とした。乾燥は、誘電加熱炉で到達最高板温80℃で行った。処理液の不揮発分は3.5mass%とした。塗布時の処理液温度は25℃とし、この温度における粘度は1.1 mPa・sであった。
ロールコーター部を通過する際の鋼板のライン速度は100mpm、ライン速度に対するAPRの周速比は1.4、PURとAPRとの周速比は0.25とした。
<実施例6>
調質圧延後のめっき表面のRsmが110μm、Rmrが75%であるコイルを用いて、調質圧延後、引き続きクロメートフリー処理液を塗布、乾燥し、膜厚0.20μmのクロメートフリー皮膜を形成した。
なお、この時の調質圧延のワークロール表面はショットブラストにより加工したしたものを用いた。
また、クロメートフリー処理液の塗布は、2ロール方式のロールコーターを用いて、実施例1で用いた無機系の水溶液と、市販の水溶性のアクリル系高分子の質量比が3:7になるようにして混合し処理液とした。乾燥は、誘電加熱炉で到達最高板温110℃で行った。処理液の不揮発分は3.8mass%とした。塗布時の処理液温度は25℃とし、この温度における粘度は1.2 mPa・sであった。
ロールコーター部を通過する際の鋼板のライン速度は100mpm、ライン速度に対するAPRの周速比は1.5、PURとAPRとの周速比は0.5とした。
<比較例1>
調質圧延後のめっき表面のRsmが110μm、Rmrが60%であるコイルを用いて、調質圧延後、引き続きクロメートフリー処理液を塗布、乾燥し、膜厚0.05μmのクロメートフリー皮膜を形成した。
なお、この時の調質圧延のワークロール表面はショットブラストにより加工したしたものを用いた。
また、クロメートフリー処理液の塗布は、2ロール方式のロールコーターを用いて、実施例1で用いた無機系の水溶液と市販のエポキシ系樹脂エマルジョンを、樹脂と無機系成分の質量比が7:3になるようにして混合し処理液とした。乾燥は、熱風オーブンで到達最高板温120℃で行った。処理液の不揮発分は0.09mass%とした。塗布時の処理液温度は25℃とし、この温度における粘度は0.9 mPa・sであった。
ロールコーター部を通過する際の鋼板のライン速度は120mpm、ライン速度に対するAPRの周速比は1.1、PURとAPRとの周速比は0.6とした。
<比較例2>
調質圧延後のめっき表面のRsmが210μm、Rmrが50%であるコイルを用いて、調質圧延後、引き続きクロメートフリー処理液を塗布、乾燥し、膜厚0.05μmのクロメートフリー皮膜を形成した。
なお、この時の調質圧延のワークロール表面はショットブラストにより加工したしたものを用いた。
また、クロメートフリー処理液の塗布は、2ロール方式のロールコーターを用いて、実施例1で用いた無機系の水溶液と市販のエポキシ系樹脂エマルジョンを、樹脂と無機系成分の質量比が7:3になるようにして混合し処理液とした。乾燥は、熱風オーブンで到達最高板温120℃で行った。処理液の不揮発分は8mass%とした。塗布時の処理液温度は25℃とし、この温度における粘度は2.1 mPa・sであった。
ロールコーター部を通過する際の鋼板のライン速度は120mpm、ライン速度に対するAPRの周速比は1.1、PURとAPRとの周速比は0.1とした。
<比較例3>
クロメートフリー皮膜を作成するための組成物中に、市販のカーボンブラックを分散し、体積抵抗率を未満1010Ω・cmにしたこと以外は実施例4と同様にしてサンプルを作成した。
<体積抵抗率の測定方法>
実施例及び比較例で用いたクロメートフリー皮膜の原料となる組成物を用いて、事前に膜厚5μm相当の皮膜を形成した試験片を作成した。この試験片を用いて、三菱化学(株)製の高抵抗率計ハイレスタUPにて、表面皮膜の体積抵抗率を測定した。
<欠損部の測定>
実施例及び比較例で用いたサンプルから15×15mmの試験片を切り出し、日本電子(株)製のJXA−8600MX型EPMA装置を用いて、電子線の加速電圧15kVにて、ビーム径1μ、縦横200、計40000ポイントでZn及びPのマッピング分析を行い、欠損のサイズSd、欠損部平均面積Sm、及び欠損部面積率Pd等を測定した。
<導電性の評価>
実施例及び比較例で用いたサンプルを用いて、三菱化学(株)製の低抵抗率計ロレスタGPにて、4探針ESPを用いて表面抵抗を測定した。測定値が1mΩ以下の場合に導通ありと判定した。そして、同一検体の中で場所を変えて計10箇所で測定を行い、導通する確率を導通率とする。本発明では導通率100%となる場合に、電磁波シールド特性確保に必要十分な導電性ありと判断した。
<耐食性の評価>
実施例及び比較例で用いたサンプルから、150×55mmの試験片を採取し、非評価面及び上下左右の端部5mmの部分をポリエステルテープでシールし、JIS Z2371に準拠した塩水噴霧試験を行い、12時間後の白錆発生状況で判定を行なった。12時間後の白錆発生面積率≦5%の場合に車内や室内での使用を想定した場合の実用環境での耐食性として必要十分なレベルであると判断した。
Claims (3)
- めっき層表面は、粗さ曲線要素の平均長さ:RSmが200μm以下であり、かつ、相対負荷長さ率:Rmrが50%以上であることを特徴とする請求項1に記載のクロメートフリー被覆溶融亜鉛めっき鋼板。
- 溶融亜鉛めっき鋼板に調質圧延を施し、引き続きクロムを含まない水系のクロメートフリー処理液を塗布し乾燥を行い、請求項1または2に記載のクロメートフリー被覆溶融亜鉛めっき鋼板を製造するにあたり、前記クロメートフリー処理液の塗布はロールコーターを用いて行い、前記クロメートフリー処理液中の不揮発成分濃度は1mass%以上5mass%未満であり、クロメートフリー処理液の塗布時の液温における粘度は2.0mPa・s以下であり、前記クロメートフリー処理液の塗布に用いられ、鋼板の進行方向と逆回転するアプリケーターロールの周速はライン速度に対して1.2倍以上とし、前記クロメートフリー処理液の塗布に用いられるピックアップロールの周速比は前記アプリケーターロールの周速に対して0.1〜0.5とすることを特徴とするクロメートフリー被覆溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
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