JP4980623B2 - 難燃性熱可塑性樹脂組成物及びその成形体 - Google Patents

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Description

本発明は、電線被覆材用の難燃性熱可塑性樹脂組成物に関する。更に詳細には、難燃性および耐摩耗性に優れ、かつ埋立、燃焼などの廃棄時において、重金属化合物の溶出や、多量の煙、腐食性ガスの発生がない、電線被覆材用の難燃性熱可塑性樹脂組成物に関する。
電気・電子機器の内部および外部配線に使用される絶縁電線・ケーブル・コードは、難燃性、耐熱性、機械特性(例えば、引張特性、耐摩耗性)など種々の特性が要求される。このため、これらの配線材に使用される被覆材料として、ポリ塩化ビニル(PVC)コンパウンドや、分子中に臭素原子や塩素原子を含有するハロゲン系難燃剤を配合したポリオレフィンコンパウンドが主として使用されていた。
しかし、これらは、燃焼した場合に、被覆材料に含まれるハロゲン化合物から腐食性ガスが発生することがあり、近年、ハロゲン系ガスなどの発生の恐れがないノンハロゲン難燃材料で被覆した配線材の検討がおこなわれている。
ノンハロゲン難燃材料は、ハロゲンを含有しない難燃剤を樹脂に配合することで難燃性を発現させており、例えばエチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸エチル共重合体、エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体などのエチレン系共重合体に、難燃剤として水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの金属水酸化物(金属水和物と言う場合もある)を多量に配合した材料が提案されている(例えば、特許文献1よび2)。
電気・電子機器の配線材に求められる難燃性、耐熱性、機械特性(例えば引張特性、耐摩耗性)などの規格は、UL、JISなどで規定されている。特に、難燃性に関しては、用途に応じた要求水準に従って、その試験方法が変わってくる。例えば、UL1581(電線、ケーブルおよびフレキシブルコードのための関連規格(Reference Standardfor Electrical Wires,Cables and Flexible Cords))に規定される垂直燃焼試験(Vertical Flame Test)(VW−1)や、JIS C 3005(ゴム・プラスチック絶縁電線試験方法)に規定される水平試験や傾斜試験が挙げられる。
また、電線被覆用材料には、安全性の面から、難燃性規格以外にも厳しい諸物性の規格が定められている。特に、自動車や電子機器に配線される薄肉の絶縁電線は、組み付け時の他部材との接触や、使用時の振動等に対する高い耐摩耗性が要求されている。しかし、目的の難燃性を得るために多量の金属水酸化物を添加すると、耐摩耗性が劣る。そこで、目的の難燃性を維持し且つ高い耐摩耗性を有する材料が望まれている。
一方、耐摩耗性を付与するために樹脂に硬質フィラーを添加することは一般的に知られている(例えば、特許文献3および4)。しかし、電線被覆材においては、炭酸カルシウムを増量材として使用することは行われているものの、耐摩耗性向上のための硬質フィラーの添加は今まで行われていない。硬質フィラーは、それを含む組成物の製造時に混練機等の装置を摩耗し、さらに、上記組成物からなる被覆層を導線の周りに押出して電線を製造する際にも、押出成形機、特にダイスを摩耗するからである。ダイス等の摩耗は製造の中断を余儀なくするため、電線のような細長い物品の製造において、ダイス等の摩耗は重大な問題である。
特開2001−316537号公報 特開2003−160704号公報 特開2005−152603号公報 特開平6−228362号公報
本発明の目的は、難燃性を維持しつつ優れた耐摩耗性を有しかつ混練機や成形機を摩耗させない、電線被覆材用のノンハロゲン熱可塑性樹脂組成物を提供することである。
この目的は、樹脂組成物に難燃剤としての金属水酸化物を添加するとともに、特定の硬質フィラーを特定量添加することにより達成できた。
すなわち、本発明は、
(1)(A)ポリプロピレン系樹脂20〜95質量%、
(B)不飽和カルボン酸またはその誘導体および(メタ)アクリル酸またはその誘導体からなる群から選ばれる少なくとも一種で変性した、ポリオレフィン樹脂及び/またはスチレン共重合体1〜30質量%、
(C)エチレン−αオレフィン共重合体0〜80質量%、および
(D)芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物との共重合体及び/またはその水素添加物0〜20質量%
を含む樹脂成分100質量部、ならびに
(E)金属水酸化物50〜300重量部、および
(F)15段階モース硬度計によるモース硬度が7以上でかつ球状の硬質フィラー1〜30質量部
を含有し、成分(F)における硬質フィラーがアルミナであることを特徴とする、電線被覆材用の難燃性熱可塑性樹脂組成物である。
好ましくは、本発明は、
(2)(G)有機過酸化物0.001〜1質量部をさらに含む、上記(1)の難燃性熱可塑性樹脂組成物、および
)(H)(メタ)アクリレート系および/またはアリル系架橋助剤0.003〜2.5質量部をさらに含む、上記()の難燃性熱可塑性樹脂組成物
である。
また、本発明は、上記(1)〜()のいずれか1の難燃性熱可塑性樹脂組成物からなる被覆層を有する電線をも提供する。
本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物は、難燃性とともに耐摩耗性に優れ、かつ混練機や成形機を摩耗させないので、上記組成物を被覆層として有する自動車用配線材及び電気・電子機器用配線材、例えばワイヤーハーネスなどの製造に有用である。また、本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物は、ノンハロゲン難燃材料であるので、埋立や燃焼などの廃棄時に、有害な重金属化合物の溶出や、多量の煙、有害ガス(腐食性ガス)の発生がなく、環境上も好ましい。
以下、本発明について詳細に説明する。
まず、本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物の各成分について説明する。
(A)ポリプロピレン系樹脂
成分(A)としては、ホモポリプロピレン、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−エチレンブロック共重合体、およびプロピレンと他の少量のα−オレフィン(例えば1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン等)との共重合体が挙げられる。ここで、プロピレン−エチレンランダム共重合体とは、プロピレン系の結晶性ランダム共重合体を指し、プロピレン−エチレンブロック共重合体とは、結晶性ポリプロピレン成分(ホモポリプロピレン、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレンと他の少量のα−オレフィンとの共重合体)とエチレン及びα−オレフィンの共重合ゴム成分との混和物を指す。
成分(A)は、得られる樹脂組成物の成形性および耐摩耗性の点から、好ましくは、MFR(ASTM−D−1238、L条件、230℃)が0.1〜20g/10分、より好ましくは0.2〜5g/10分、さらに好ましくは0.3〜2g/10分である。
(B)不飽和カルボン酸またはその誘導体および(メタ)アクリル酸またはその誘導体からなる群から選ばれる少なくとも一種で変性された、ポリオレフィン系樹脂及び/またはスチレン共重合体
成分(B)におけるポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン(直鎖状ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン)、ポリプロピレン(ホモポリプロピレン、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−エチレンブロック共重合体や、プロピレンと他の少量のα−オレフィン(例えば1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン等)との共重合体)との共重合体が挙げられる。スチレン共重合体としては、例えば、スチレン−エチレン・ブテン−ブチレン共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン・プロピレン−スチレ共重合体(SEPS)、スチレン−エチレン・エチレン・プロピレン−スチレン共重合体(SEEPS)、スチレン−ブタジエン・ブテン−スチレン共重合体(SBBS)等の水添共重合体やスチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体(SIS)等の非水添共重合体等が挙げられる。中でも、水添共重合体が好ましい。
成分(B)は、上記ポリオレフィン系樹脂またはスチレン共重合体を不飽和カルボン酸またはその誘導体(以下、これらを併せて不飽和カルボン酸(誘導体)という)および(メタ)アクリル酸またはその誘導体(以下、これらを併せて(メタ)アクリル酸(誘導体)という)からなる群から選ばれる少なくとも一種で変性したものである。変性に用いられる不飽和カルボン酸としては、例えば、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸等が挙げられ、不飽和カルボン酸の誘導体としては、マレイン酸モノエステル、マレイン酸ジエステル、無水マレイン酸、イタコン酸モノエステル、イタコン酸ジエステル、無水イタコン酸、フマル酸モノエステル、フマル酸ジエステル、無水フマル酸などを挙げることができる。変性に用いられる(メタ)アクリル酸としては、アクリル酸、メタクリル酸等が挙げられ、(メタ)アクリル酸の誘導体としては、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルなどを挙げることができる。
変性は、例えば、ポリオレフィン系樹脂またはスチレン共重合体を不飽和カルボン酸(誘導体)および(メタ)アクリル酸(誘導体)から選ばれる少なくとも1と有機パーオキサイドの存在下に加熱、混練することにより行うことができる。変性量は特に制限されない。例えばマレイン酸または(メタ)アクリル酸で変性した場合には、通常、0.1〜7質量%程度である。
成分(B)として市販品を用いることもでき、例えば、旭化成ケミカルズ株式会社製のタフテックM1911(商品名、無水マレイン酸変性SEBS)が挙げられる。
成分(B)は、高充填された金属水酸化物による機械特性(引張特性、耐摩耗性)の低下を緩和する効果や樹脂組成物の耐摩耗性を向上させる効果がある。
(C)エチレン−αオレフィン共重合体
成分(C)は任意成分である。成分(C)は、好ましくは、エチレンと炭素数4〜12のα−オレフィンとの共重合体であり、α−オレフィンの具体例としては、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセンなどが挙げられる。
成分(C)の具体例としては、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、エチレン・ブテンゴム(EBR)及びメタロセン系触媒の存在下に重合されたエチレン−α−オレフィン共重合体等が挙げられる。この中でもメタロセン系触媒の存在下に重合されたエチレン−α−オレフィン共重合体が好ましい。その製法としては、特開平6−306121号公報や特表平7−500622号公報などに記載されている公知の方法を用いることができる。
メタロセン触媒の存在下に重合されたエチレン−α−オレフィン共重合体としては、市販品を使用することもできる。その具体例として、例えば、Dow Chemical社製の「AFFINITY」「ENGAGE」(商品名)、日本ポリケム(株)製の「カーネル」(商品名)、三井住友ポリオレフィン社製の「エボリュー」(商品名)が挙げられる。
メタロセン系触媒は、重合活性点が単一であり、高い重合活性を有するものであり、カミンスキー触媒とも呼ばれており、この触媒を用いて合成したエチレン−α−オレフィン共重合体は、分子量分布と組成分布が狭いという特徴がある。
このようなメタロセン系触媒存在下に重合されたエチレン−α−オレフィン共重合体は、高い引張強度、引裂強度、衝撃強度などを有することから、金属水和物を高充填する必要があるノンハロゲン難燃材料(配線材の被覆材料)に使用した場合、高充填された金属水和物による機械特性の低下を小さくすることができるという利点がある。
反面、メタロセン系触媒を用いて重合したエチレン−α−オレフィン共重合体を用いる場合、通常のエチレン−α−オレフィン共重合体を用いる場合と比べて、溶融粘度の上昇や溶融張力の低下がおこり、成形加工性に問題が生ずる。この点については、メタロセン系触媒として非対称な配位子を用いて長鎖分岐を導入し(Constrained Geometory Catalystic Technology)、または重合の際に2つの重合槽を連結することで分子量分布に2つのピークをつくる(Adavnced PerformanceTerpolymer)ことで、その成形加工性を改良したものもある。
成分(C)は、得られる組成物の柔軟性や引張伸びの点から、密度が950kg/m3以下であるのが好ましく、さらに好ましくは945kg/m3以下、特に好ましくは940kg/m3以下である。また、この密度は、耐摩耗性を考慮すると、880kg/m3以上が好ましく、さらに好ましくは900kg/m3以上、特に好ましくは920kg/m3以上である。
さらに、成分(C)は、メルトフローレート(以下、MFRと記す)(ASTM D−1238に準拠)が0.5〜30g/10分であるものが好ましい。
(D)芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物との共重合体及び/またはその水素添加物
成分(D)は、任意に使用され、以下に述べる(D−1)および(D−2)を包含する。
(D−1)芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体及び/又はその水素添加物:
成分(D−1)は、芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックAの少なくとも2個と、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBの少なくとも1個とからなるブロック共重合体及び該ブロック共重合体を水素添加して得られる水添ブロック共重合体である。例えば、A−B−A、B−A−B−A、A−B−A−B−A等の構造を有する芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体及びその水素添加物である。
上記(水添)ブロック共重合体(以下、(水添)ブロック共重合体とは、ブロック共重合体及び/又は水添ブロック共重合体を意味する。)は、芳香族ビニル化合物を5〜60重量%、好ましくは、20〜50重量%含む。
芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックAは、好ましくは芳香族ビニル化合物のみから成るか、または芳香族ビニル化合物50重量%以上、好ましくは70重量%以上と共役ジエン化合物との共重合体ブロックである。
共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBは、好ましくは共役ジエン化合物のみから成るか、または共役ジエン化合物50重量%以上、好ましくは70重量%以上と芳香族ビニル化合物との共重合体ブロックである。
重合体ブロックAおよび重合体ブロックBのそれぞれにおいて、分子鎖中の芳香族ビニル化合物または共役ジエン化合物の分布は、ランダム、テーパード(分子鎖に沿ってモノマー成分が増加または減少するもの)、一部ブロック状またはこれらの任意の組合せであってもよい。
重合体ブロックAあるいは重合体ブロックBが2個以上ある場合には、それぞれが同一構造であっても異なる構造であってもよい。
(水添)ブロック共重合体を構成する芳香族ビニル化合物としては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、1,1−ジフェニルスチレン、N,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレン、ビニルトルエン、p−第3ブチルスチレンなどのうちから1種または2種以上が選択され、中でもスチレンが好ましい。また共役ジエン化合物としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエンなどのうちから1種または2種以上が選ばれ、中でもブタジエン、イソプレンおよびこれらの組合せが好ましい。
重合体ブロックBにおける共役ジエン化合物の結合位置は任意に選ぶことができる。ブタジエンブロックにおいては、1,2−結合が好ましくは1%以上、より好ましくは5%以上、更に好ましくは10%以上であり、上限は好ましくは95%以下、より好ましくは80%以下、更に好ましくは75%以下である。
水添ブロック共重合体における水添率は、任意に選択することができる。未水添ブロック共重合体の特性を維持しながら耐熱劣化性等を向上させる場合には、共役ジエンに基づく脂肪族二重結合を85%未満、好ましくは80%未満水添することが好ましい。また、水添前の1,2−ビニル結合の量に対する水添後の1,2−ビニル結合の割合が0.5〜12%であるのが好ましく、より好ましくは10%未満である。
また、耐熱劣化性及び耐候性を向上させる場合には、共役ジエンに基づく脂肪族二重結合の80%以上、好ましくは90%以上を水添することが推奨される。また、ポリイソプレンブロックにおいては、イソプレンの70〜100重量%が1,4−結合しており、かつイソプレンに基づく脂肪族二重結合の少なくとも90%が水素添加されたものが好ましい。
本発明で用いる(水添)ブロック共重合体の重量平均分子量は、好ましくは5,000〜1,500,000であり、より好ましくは10,000〜550,000、さらに好ましく50,000〜400,000の範囲である。分子量分布(重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn))は好ましくは10以下、更に好ましくは5以下、より好ましくは2以下である。水添ブロック共重合体の分子構造は、直鎖状、分岐状、放射状あるいはこれらの任意の組合せのいずれであってもよい。なお、本明細書における分子量はGPCにより、分子量が既知であるポリスチレンを基準として求めた値である。従って、該値は相対的な値であり、絶対値ではなく、さらに、基準サンプル、装置、データ処理方法等GPCの各条件により±30%程度のばらつきが有り得る。
これらの(水添)ブロック共重合体の製造方法としては数多くの方法が提案されているが、代表的な方法としては、例えば特公昭40−23798号公報に記載された方法により、リチウム触媒またはチーグラー型触媒を用い、不活性溶媒中にてブロック重合を行うことによりブロック共重合体を得ることができる。また、上記方法により得られたブロック共重合体を、不活性溶媒中で水素添加触媒の存在下にて水素添加することにより水添ブロック共重合体が得られる。
上記(水添)ブロック共重合体の具体例としては、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体(SIS)、スチレン−エチレン・ブテン−スチレン共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン・プロピレン−スチレン共重合体(SEPS)、スチレン−エチレン・エチレン・プロピレン−スチレン共重合体(SEEPS)、部分水添スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SBBS)等を挙げることができる。本発明においては、該(水添)ブロック共重合体は、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
(D−2)芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのランダム共重合体及び/又はその水素添加物:
成分(D−2)における芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、1,1−ジフェニルスチレン、N,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレン、ビニルトルエン、p−第3ブチルスチレンなどのうちから1種または2種以上が選択でき、中でもスチレンが好ましい。また、共役ジエン化合物としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエンなどのうちから1種または2種以上が選ばれ、中でもブタジエン、イソプレンおよびこれらの組合せが好ましい。
芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物は、ランダムに結合しており、また、ランダム共重合体の水素添加物は、共役ジエン化合物に基づく脂肪族二重結合の少なくとも90%が水素添加されたものが好ましい。
成分(D−2)は、数平均分子量が好ましくは5,000〜1,000,000であり、より好ましくは10,000〜350,000である。また、好ましくは、多分散度(Mw/Mn)の値が10以下であり、且つ、その共役ジエン部の1,2−結合あるいは3,4−結合などのビニル結合含有量が5%以上、より好ましくは20〜90%である。
成分(D−2)の具体例としては、スチレン・ブタジエンランダム共重合体(SBR)および水素添加スチレン・ブタジエンランダム共重合体(HSBR)を挙げることができ、これらを単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物は、上記成分(A)〜(D)を樹脂成分として含む。樹脂成分における成分(A)〜(D)の配合量は、成分(A)が20〜95質量%、好ましくは25〜90質量%、さらに好ましくは30〜85質量%であり、成分(B)が、1〜30質量%であり、好ましくは5〜20質量%であり、成分(C)が0〜80質量%であり、好ましくは10〜70質量%であり、成分(D)が0〜20質量%、好ましくは5〜10質量%である。
成分(A)の配合量が上記上限を超えると硬くなり、また引張伸びが低下し、下限未満の場合には、耐摩耗性が低下する。成分(B)の配合量が上記上限を超えると、電線の押し出し特性が大幅に低下したり、引張伸びが著しく低下する。下限未満の場合には、耐摩耗性が低下する。成分(C)の配合量が上記上限を超えると、耐摩耗性が低下する。成分(D)の配合量が上記上限を超えると、耐摩耗性が低下する。
(E)金属水酸化物
成分(E)は難燃剤として作用し、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水和珪酸アルミニウム、水和珪酸マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイトなどの水酸基あるいは結晶水を有する化合物を単独もしくは2種以上組み合わせて使用することができる。これらの金属水酸化物のうち、水酸化アルミニウムおよび水酸化マグネシウムが好ましい。金属水酸化物は、表面処理剤で表面処理されていてもいなくてもよい。表面処理剤は、好ましくはシランカップリング剤である。
シランカップリング剤としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等の、ビニル基、(メタ)アクロイル基またはエポキシ基を末端に有するシランカップリング剤、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メルカプトプロピルトリエトキシシラン等の、メルカプト基を末端に有するシランカップリング剤、アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリプロピルメチルジメトキシシラン等の、アミノ基を有するシランカップリング剤などの架橋性のシランカップリング剤が好ましい。これらのシランカップリング剤は、単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
このようなシランカップリング剤の中でも、末端にエポキシ基、ビニル基、(メタ)アクロイル基またはアミノ基を有するシランカップリング剤が好ましく、さらに好ましくは、末端にエポキシ基、ビニル基または(メタ)アクロイル基を有するものである。
金属水酸化物をシランカップリング剤で処理する場合には、予めシランカップリング剤を金属水酸化物とブレンドして行うことが必要である。このときシランカップリング剤は、表面処理するのに十分な量が適宜加えられるが、具体的には金属水酸化物に対し0.2〜2質量%が好ましい。シランカップリング剤は原液でもよいし、溶剤で希釈されたものを使用してもよい。
本発明で用いることができる金属水酸化物は市販されており、例えば、表面無処理の水酸化マグネシウムとして「キスマ5」(商品名、協和化学工業(株)製)が挙げられ、シランカップリング剤により表面処理された水酸化マグネシウムとして「キスマ5L」、「キスマ5P」(いずれも商品名、協和化学工業(株)製)が挙げられる。
また、予め脂肪酸やリン酸エステルなどで表面の一部が前処理された水酸化マグネシウムや水酸化アルミニウムに、ビニル基やエポキシ基等の官能基を末端に有するシランカップリング剤を用いてさらに表面処理を行ったものを用いることができる。
成分(E)の配合量は、樹脂成分100質量部に対して、50〜300質量部であり、好ましくは、60〜250質量部である。上記上限より多いと、得られた樹脂組成物の引張伸びや耐摩耗性が著しく低下する。上記下限未満では、充分な難燃性が得られない。
(F)モース硬度7以上の球状硬質フィラー
成分(F)は、耐摩耗性を著しく向上させる効果がある。本発明において用いられる硬質フィラーは、15段階モース硬度計によるモース硬度が7以上であり、好ましくは9以上であり、かつ形状が球状のものである。硬質フィラーの硬度が7未満のものでは、充分な耐摩耗性が得られない。
また、本発明における硬質フィラーは、球状の形状を有する。球状以外のもの、例えば、塊状のフィラーを粉砕したような不定形状や、板状、鱗片状などの場合には、十分な耐摩耗性が得られない。針状のものは、耐摩耗性向上効果を有するが、フィラーの硬度が7以上と高いため、樹脂組成物を混練する装置や、樹脂組成物を成形する際に使用する押出機の摩耗を生じるという問題がある。十分な耐摩耗性を付与するとともに、混練装置や押出機の摩耗を引き起こさない硬質フィラーは、形状が球状のものに限られることが見出された。
本発明において、「球状」とは、円形度が0.8〜1であることを意味する。円形度は、真球にどれだけ近いかを表す度合であり、真球の円形度は1である。
円形度は、電子顕微鏡によるフィラーの撮影像を画像処理し、下記式を用いて計算することにより得られる。
円形度=(4・π・S)1/2/L
S:画像処理で得られた粒子の面積
L:粒子の周囲長
本発明における硬質フィラーは、上記式を用いて算出した円形度が0.8〜1であり、好ましくは0.9〜1、さらに好ましくは0.93〜1である。
本発明における硬質フィラーは、十分な耐摩耗性を付与するために、平均粒径が0.5〜50μmであるのが好ましく、より好ましくは1〜30μmである。
成分(F)としては、シリカ、アルミナ、窒化ホウ素などが挙げられ、これらを単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。
成分(F)の市販品としては、例えば、トクヤマ製のエクセリカSE−5V(商品名、球状シリカ)およびマイクロン製のマイクロンAX3−15(商品名、球状アルミナ)が挙げられる。
成分(F)の配合量は、樹脂成分100質量部に対して1〜30質量部、好ましくは、2〜20質量部である。上記上限を超えると、得られる樹脂組成物の引張伸びおよび耐摩耗性が低下する。上記下限未満の場合には、耐摩耗性が不十分である。
(G)有機過酸化物
成分(G)は任意成分であり、耐熱性の向上のために添加される。成分(G)は、成分(C)および/または(D)の存在下で添加されると特に効果的である。
成分(G)としては、例えば、ジクミルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、1,3−ビス(tert−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルパーオキシ)バレレート、ベンゾイルパーオキサイド、p−クロロベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイドなどを挙げることができる。
これらのうち、臭気性、着色性、スコーチ安定性の点で、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3が最も好ましい。
成分(G)の配合量は、配合する場合、樹脂成分100質量部に対して、0.001〜1.0質量部の範囲であり、好ましくは0.01〜0.5質量部である。上記上限を超えると、架橋が進みすぎて押し出し加工性が著しく低下する。
(H)(メタ)アクリレート系および/またはアリル系架橋助剤
成分(H)は架橋助剤であり、成分(G)を含む本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物に任意成分として添加される。
ここで(メタ)アクリレート系架橋助剤とはアクリレート系およびメタクリレート系架橋助剤をさす。具体的には、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、アリルメタクリレートが挙げられる。
アリル系架橋助剤は、ジアリルフマレート、ジアリルフタレート、テトラアリルオキシエタン、トリアリルシアヌレートのような末端にアリル基を有するものを包含する。
(メタ)アクリレート系架橋助剤は、例えば、下記式で示される。
Figure 0004980623

ここで、RはH又はCH3であり、nは1〜9の整数である。これらの中でも、nが1〜6の整数である(メタ)アクリレート系架橋助剤が好ましい。
具体的には、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレートを挙げることができる。特に、トリエチレングリコールジメタクリレートが好ましい。この化合物は、取り扱いが容易であると共に、有機過酸化物可溶化作用を有し、有機過酸化物の分散助剤として働くため、架橋を均一かつ効果的にすることができる。
成分(H)の配合量は、配合する場合、樹脂成分100質量部に対して、0.003〜2.5質量部の範囲が好ましく、さらに好ましくは0.05〜1.6質量部である。上記上限値を超えると架橋が進みすぎて、架橋物の分散が悪くなる。架橋助剤(G)の配合量は、質量比で有機過酸化物(G)の配合量の約1.5〜4.0倍とすることが好ましい。
本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物には、電線、ケーブル、コード、チューブ、電線部品、シート等において、一般的に使用されている各種の添加剤、例えば、銅害防止剤、酸化防止剤、難燃(助)剤、充填剤、滑剤などを本発明の目的を損なわない範囲で適宜配合することができる。酸化防止剤としては、4,4’−ジオクチル・ジフェニルアミン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリンの重合物などのアミン系酸化防止剤、ペンタエリスリチル−テトラキス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン等のフェノール系酸化防止剤、ビス(2−メチル−4−(3−n−アルキルチオプロピオニルオキシ)−5−t−ブチルフェニル)スルフィド、2−メルカプトベンヅイミダゾールおよびその亜鉛塩、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−ラウリル−チオプロピオネート)などのイオウ系酸化防止剤などが挙げられる。
本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物は、上記成分を溶融混練することにより得られる。溶融混練の方法は特に制限がなく、通常公知の方法を使用することができる。例えば単軸押出機、二軸押出機、ロール、バンバリーミキサーまたは各種ニーダー等を使用することができる。溶融混練の温度は、樹脂成分の溶融温度以上である。
本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物は、難燃性および耐摩耗性に優れ、自動車用配線材及び電気・電子機器用配線材、例えばワイヤーハーネス、のための被覆材として有用である。本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物を配線材の被覆材として使用する場合には、好ましくは、本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物を、汎用の押出被覆装置を用いて、導体周囲や絶縁電線周囲に押出被覆することにより製造することができる。導体としては、軟銅の単線又は撚線などの公知のものの中から任意に選択して用いることができる。また、導体としては、裸線の他に、錫メッキしたものやエナメル被覆絶縁層を有するものを用いてもよい。押出被覆装置の温度は、シリンダー部で約200℃、クロスヘッド部で約220℃程度にすることが好ましい。本発明においては、難燃性熱可塑性樹脂組成物に軟化剤が配合されていないが、容易に押出被覆することができる。
本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物からなる被覆層を有する配線材において、被覆層の肉厚は、特に限定されないが、通常0.10mm〜5mm程度である。
また、本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物は、それを押出被覆してそのまま被覆層を形成することが好ましいが、さらに耐熱性を向上させることを目的として、押出後の被覆層を架橋させることも可能である。但し、この架橋処理を施すと、被覆層の押出材料としての再利用は困難になる。
上記架橋処理を行う場合の方法として、常法による電子線照射架橋法や化学架橋法が採用できる。電子線架橋法の場合には、本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物を押出成形して被覆層とした後に常法により電子線を照射することにより架橋を行う。電子線の線量は1〜30Mradが適当であり、効率よく架橋を行うために、被覆層を構成する難燃性熱可塑性樹脂組成物に、トリメチロールプロパントリアクリレートなどのメタクリレート系化合物、トリアリルシアヌレートなどのアリル系化合物、マレイミド系化合物、ジビニル系化合物などの多官能性化合物を架橋助剤として配合してもよい。
化学架橋法の場合は、本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物に有機過酸化物を架橋剤として配合し、押出成形して被覆層とした後、常法により加熱処理して架橋をおこなう。
以下、実施例及び比較例により本発明を更に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例および比較例で使用した評価方法及び材料を以下に示す。
評価方法
(1)比重:
JIS K 7112に準拠し、1mm厚のプレスシートを試験片として使用した。
(2)硬さ:
JIS K 7215に準拠し、6mm厚のプレスシートを試験片として使用した。硬度はD硬度とし、荷重保持時間は、室温にて5秒とした。
(3)引張強さおよび引張伸び:
JIS K 7113に準拠し、1mm厚のプレスシートを2号ダンベル型試験片に打ち抜いて使用した。引張速度は、室温にて200mm/分とした。引張伸びは100%以上であることが望ましい。
(4)耐摩耗性(スクレープ摩耗性):
0.5mm厚のプレスシートを試験片とし、これを金属の台の上にクランプし、この試験片の上に、高荷重(14N)をかけたブレードのエッジ(スクレープ刃0.125R、幅3mm)を垂直に当て、エッジを左右に動かして往復運動(60往復/分)させることにより、試験片表面を強く擦りつける。往復運動を続けていくと、エッジと試験片表面との摩擦によって、試験片表面が徐々に摩耗し、ついにはエッジが試験片を貫通する。その結果、試験片の下の金属面とエッジとが接触する。この接触は、電気的短絡によって検知される。接触するまでの往復運動の回数を読み取り、これを耐摩耗性の尺度とする。この回数が多いほど、耐摩耗性に優れていることを示し、この回数は5000回以上であることが望ましい。
(5)機械摩耗:
難燃性熱可塑性樹脂組成物の製造に使用した混練機の材料接触面を、使用前の材料接触面と目視にて比較した。色の変化および摩滅が確認された場合を○、確認されなかった場合を×とした。
(6)耐熱性:
上記(3)と同じ試験片を使用して136℃のギアオーブン中にて熱老化させ、試験片の状態を見ながら任意の時間経過後に数回試験片を取り出して上記(3)の条件で引張試験を行った。熱老化後の引張伸び値(%)が50%になるまでに要した熱老化時間を測定し、これを耐熱性の尺度とした。
(7)円形度:
硬質フィラーの形状は、走査型電子顕微鏡の撮影像により確認した。円形度は、上記の撮影像を画像解析装置で処理し、下記式を用いて求めた。画像処理するサンプル数は200個以上とした。
円形度=(4・π・S)1/2/L
S:画像処理で得られた粒子の面積
L:粒子の周囲長
材料
成分(A):
(A−1)プロピレン系ブロック共重合体:PB270A(サンアロマー社製)、結晶性プロピレン系ブロック共重合体、MFR0.7g/10分(230℃、荷重21.18N)、Tm168℃;
(A−2)ホモプロピレン系重合体:PX201N(サンアロマー社製)、結晶性ホモプロピレン系重合体、MFR0.6g/10分(230℃、荷重21.18N)、Tm168℃;
成分(B):
無水マレイン酸変性SEBS:タフテックM1911(旭化成ケミカルズ株式会社製)、無水マレイン酸変性水添ブロック共重合体、MFR4g/10分(200℃、荷重49.04N)、スチレン含有量:30質量%、;
成分(C):
LLDPE:ユメリット4040F(宇部興産社製)、メタロセン系触媒の使用による直鎖状低密度ポリエチレン、密度0.937g/cm3、MFR4.0g/10分(190℃、荷重21.18N);
成分(D):
SEPS:セプトン4033(クラレ株式会社製)、水添ブロック共重合体(SEPS(スチレン−エチレン・プロピレン−スチレンブロック共重合体))、スチレン含有量:30質量%、数平均分子量:100,000、重量平均分子量:130,000、水素添加率:90%以上;
成分(E):
(E−1)水酸化マグネシウム:キスマ5L(協和化学工業株式会社製)、末端にビニル基を有するシランカップリング剤で表面処理した水酸化マグネシウム;
(E−2)水酸化マグネシウム:キスマ5(協和化学工業株式会社製)、表面未処理の水酸化マグネシウム;
成分(F):
(F−1)球状シリカ:エクセリカSE−5V(株式会社トクヤマ製)、粒子形状:球状(円形度0.96)、平均粒子径6μm、比表面積2m2/g、モース硬度7;
(F−2)球状アルミナ:マイクロンAX3−15(株式会社マイクロン製)、粒子形状:球状(円形度0.97)、平均粒子径2.5〜4.5μm、比表面積0.65m2/g、モース硬度12;
(F−3)不定形シリカ:ニップシールVN−3(東ソー・シリカ株式会社製)、粒子形状:不定形、BET表面積210m2/g、モース硬度7;
(F−4)鱗片状窒化ホウ素:HP−P1(水島合金鉄株式会社製)、粒子形状:鱗片状、平均粒子径1〜4μm、比表面積10〜15m2/g、モース硬度9;
(F−5)不定形炭酸カルシウム:NS−400(日東粉化工業株式会社製)、粒子形状:不定形、平均粒子径1、7μm、モース硬度3;
成分(G):
有機過酸化物:パーヘキサ25B(日本油脂株式会社製)、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、1分半減期温度179℃;
成分(H):
架橋助剤:NKエステルIND(新中村化学製)、トリエチレングリコールジメタクリレート;
実施例1〜7及び比較例1〜8
表1および2に示す量(質量部)の各成分を用い、室温ですべての成分をドライブレンドし、スクリュー径20mmの2軸押し出し機を用いて220℃で溶融混練を行い、ストランドカット方式のカッティングにより実施例1〜7及び比較例1〜8の樹脂組成物のペレットを得た。得られたペレットをロールによりシート化し、さらにそれを熱プレスして試験片を作成し、上記評価試験に供した。評価結果を表1及び2に示す。
Figure 0004980623
Figure 0004980623
表1から明らかなように、本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物は、いずれも優れた耐摩耗性を有し、また、混練機の摩耗もなかった。また、任意成分(G)の添加により、耐熱性が向上した。
一方、表2から明らかなように、成分(F)を含まない比較例1の組成物は、耐摩耗性に劣った。成分(F)の配合量が本発明の範囲より多い比較例2の組成物は、引張伸び及び耐摩耗性に劣った。成分(A)の配合量が本発明の範囲より少ない比較例3の組成物は、耐摩耗性に劣った。成分(F)の形状が球状でない比較例4および5の組成物は、耐摩耗性に劣り、また、混練機の摩耗が見られた。成分(F)モース硬度が7未満である比較例6の組成物は、耐摩耗性に劣った。成分(E)の配合量が本発明の範囲より多い比較例7の組成物は、引張伸び及び耐摩耗性に劣った。成分(B)を含まない比較例8の組成物は、耐摩耗性に劣った。
本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物は、難燃性とともに耐摩耗性に優れ、かつ混練機や成形機を摩耗させないので、上記組成物を被覆層として有する自動車用配線材及び電気・電子機器用配線材の製造に有用である。

Claims (4)

  1. (A)ポリプロピレン系樹脂20〜95質量%、
    (B)不飽和カルボン酸またはその誘導体および(メタ)アクリル酸またはその誘導体からなる群から選ばれる少なくとも一種で変性された、ポリオレフィン系樹脂及び/またはスチレン共重合体1〜30質量%、
    (C)エチレン−αオレフィン共重合体0〜80質量%、および
    (D)芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物との共重合体及び/またはその水素添加物0〜20質量%
    を含む樹脂成分100質量部、ならびに
    (E)金属水酸化物50〜300重量部、および
    (F)15段階モース硬度計によるモース硬度が7以上でかつ球状の硬質フィラー1〜30質量部
    を含有し、成分(F)における硬質フィラーがアルミナであることを特徴とする、電線被覆材用の難燃性熱可塑性樹脂組成物。
  2. (G)有機過酸化物0.001〜1質量部
    をさらに含む、請求項1記載の難燃性熱可塑性樹脂組成物。
  3. (H)(メタ)アクリレート系および/またはアリル系架橋助剤0.003〜2.5質量部
    をさらに含む、請求項記載の難燃性熱可塑性樹脂組成物。
  4. 請求項1〜のいずれか1項記載の難燃性熱可塑性樹脂組成物からなる被覆材を有する電線。
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